(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】電池セル及びその製造方法並びにシステム、電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/155 20210101AFI20240716BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20240716BHJP
H01M 50/375 20210101ALI20240716BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20240716BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240716BHJP
H01M 50/143 20210101ALI20240716BHJP
【FI】
H01M50/155
H01M50/342 101
H01M50/375
H01M50/133
H01M50/55 101
H01M50/143
(21)【出願番号】P 2022567320
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2020131576
(87)【国際公開番号】W WO2022109884
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】郭強
(72)【発明者】
【氏名】李振華
(72)【発明者】
【氏名】武新戦
(72)【発明者】
【氏名】徐佳偉
(72)【発明者】
【氏名】謝青松
(72)【発明者】
【氏名】金海族
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-115280(JP,A)
【文献】特開2016-201368(JP,A)
【文献】特開2016-096129(JP,A)
【文献】特開2012-178333(JP,A)
【文献】特開2014-229485(JP,A)
【文献】特開2011-060600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルであって、
第1の壁と、前記第1の壁に設けられ、前記電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに作動して前記内圧を逃がすための放圧手段とを含む電池ボックスと、
前記第1の壁の外側に位置する保護部材であって、前記第1の壁に接続されるための本体部と、前記放圧手段を遮蔽するための遮蔽部と、前記本体
部と前記遮蔽部とを接続するための脆弱部とを含み、前記脆弱部は、前記放圧手段が作動するときに破裂して前記本体部と前記遮蔽部との接続を遮断するように構成される保護部材とを含
み、
前記保護部材の融点は、前記放圧手段の融点よりも大きい、電池セル。
【請求項2】
前記電池セルは、接着部材を更に含み、前記保護部材は、前記接着部材によって前記第1の壁に接続される、請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
前記本体部の前記第1の壁に面する表面に前記接着部材が設けられ、前記遮蔽部の前記第1の壁に面する表面と前記脆弱部の前記第1の壁に面する表面にいずれも前記接着部材が設けられていない、請求項2に記載の電池セル。
【請求項4】
前記保護部材の融点は、600℃以上である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項5】
前記保護部材の材質は、マイカと、ゴムと、セラミックスとのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項6】
前記遮蔽部の厚さは、前記本体部の厚さよりも小さい、請求項1~
5のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項7】
前記放圧手段に第1の溝が設けられ、前記放圧手段は、前記電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに前記第1の溝で破裂して前記内圧を逃がすためのものであり、前記遮蔽部は、前記第1の溝を完全に覆う、請求項1~
6のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項8】
前記遮蔽部は、前記第1の壁に垂直な方向に沿って前記本体部から外へ突出する、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項9】
前記第1の壁の外表面に突起が設けられ、前記第1の壁に垂直な方向に沿って、前記遮蔽部は、前記突起の前記放圧手段から離れる側に位置する、請求項
8に記載の電池セル。
【請求項10】
前記電池セルは、前記突起の前記遮蔽部に面する表面に設けられ、且つ前記放圧手段を覆う保護膜を更に含む、請求項
9に記載の電池セル。
【請求項11】
前記遮蔽部は、前記保護膜を押圧する、請求項
10に記載の電池セル。
【請求項12】
前記本体部と前記遮蔽部との間に複数の貫通した開孔が設けられ、前記脆弱部は、複数のサブ脆弱領域を含み、複数の前記サブ脆弱領域と複数の前記開孔は、前記遮蔽部の周方向に沿って交互に設けられる、請求項1~
11のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項13】
前記サブ脆弱領域の厚さは、前記本体部の厚さ以下であり、及び/又は、前記サブ脆弱領域の厚さは、前記遮蔽部の厚さ以下である、請求項
12に記載の電池セル。
【請求項14】
前記保護部材の前記第1の壁から離れる側の表面に第2の溝が設けられ、前記脆弱部は、前記第2の溝の底壁であり、及び/又は、
前記保護部材の前記第1の壁に近い側の表面に第2の溝が設けられ、前記脆弱部は、前記第2の溝の底壁である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項15】
前記第2の溝は、前記遮蔽部を囲む環状の溝である、請求項
14に記載の電池セル。
【請求項16】
前記脆弱部の厚さは、0.08mmから0.3mmである、請求項
14又は
15に記載の電池セル。
【請求項17】
前記電池ボックスは、
収容室と開口とを有するケースと、
カバープレートと電極端子とを含み、前記カバープレートは、前記ケースの開口をカバーし、前記電極端子は、前記カバープレートに設けられ、前記第1の壁は、前記カバープレートであるエンドキャップアセンブリとを含む、請求項1~
16のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項18】
前記電池セルは、前記収容室に収容される電極アセンブリを更に含む、請求項
17に記載の電池セル。
【請求項19】
電池であって、筐体と、少なくとも一つの、請求項1~
18のいずれか一項に記載の電池セルとを含み、前記電池セルは、前記筐体内に収容される、電池。
【請求項20】
請求項
19に記載の電池から提供される電気エネルギーを受けるように構成される、電力消費装置。
【請求項21】
電池セルの製造方法であって、
エンドキャップアセンブリを提供し、前記エンドキャップアセンブリは、カバープレートと、電極端子と、放圧手段とを含み、前記放圧手段と前記電極端子は、前記カバープレートに設けられ、前記放圧手段は、前記電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに作動して前記内圧を逃がすためのものであることと、
電極アセンブリを提供し、前記電極アセンブリを前記電極端子に接続することと、
収容室と開口とを有するケースを提供することと、
前記電極端子に接続される前記電極アセンブリを前記収容室に置き、前記カバープレートを前記ケースに接続して前記ケースの開口を封止することと、
融点が前記放圧手段の融点よりも大きい保護部材を提供し、前記保護部材は、本体部と、遮蔽部と、脆弱部とを含み、前記脆弱部は、前記本体部と前記遮蔽部とを接続するためのものであり、前記脆弱部は、前記放圧手段が作動するときに破裂して前記本体部と前記遮蔽部との接続を遮断するように構成されることと、
前記保護部材を前記カバープレートの外側に設け、前記本体部を前記カバープレートに接続させ、前記遮蔽部に前記放圧手段を遮蔽させることとを含む、電池セルの製造方法。
【請求項22】
電池セルの製造システムであって、
エンドキャップアセンブリを提供するための第1の提供装置であって、カバープレートと、電極端子と、放圧手段とを含み、前記放圧手段と前記電極端子は、前記カバープレートに設けられ、前記放圧手段は、前記電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに作動して前記内圧を逃がすためのものである第1の提供装置と、
電極アセンブリを提供するための第2の提供装置と、
前記電極アセンブリを前記電極端子に接続するための第1の組み立て装置と、
収容室と開口とを有するケースを提供するための第3の提供装置と、
前記電極端子に接続される前記電極アセンブリを前記収容室に置き、前記カバープレートを前記ケースに接続して前記ケースの開口を封止するための第2の組み立て装置と、
融点が前記放圧手段の融点よりも大きい保護部材を提供するための第4の提供装置であって、本体部と、遮蔽部と、脆弱部とを含み、前記脆弱部は、前記本体部と前記遮蔽部とを接続するためのものであり、前記脆弱部は、前記放圧手段が作動するときに破裂して前記本体部と前記遮蔽部との接続を遮断するように構成される第4の提供装置と、
前記保護部材を前記カバープレートの外側に設け、前記本体部を前記カバープレートに接続させ、前記遮蔽部に前記放圧手段を遮蔽させるための第3の組み立て装置とを含む、電池セルの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池技術分野に関し、より具体的に、電池セル及びその製造方法並びにシステム、電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能な電池は、二次電池と呼ばれてもよく、電池が放電された後に充電の方式によって活物質を活性化して使用し続けることができる電池である。再充電可能な電池は、電子機器、例えば、携帯電話、ノートパソコン、電動スクーター、電動車両、電動飛行機、電動船舶、電動玩具車両、電動玩具船舶、電動玩具飛行機及び電動工具などに広く用いられている。
【0003】
電池技術の発展において、電池の性能の向上に加えて、安全性の問題も無視できない問題となっている。電池の安全性を確保できなければ、その電池を使用することはできない。そのため、どのように電池の安全性を向上させるかは、電池技術において早急な解決が待たれる技術課題となっている。
【発明の概要】
【0004】
本出願は、電池の安全性を向上させることができる電池セル及びその製造方法並びにシステム、電池及び電力消費装置を提供する。
【0005】
第1の態様によれば、本出願の実施例は、電池セルを提供する。前記電池セルは、第1の壁と、第1の壁に設けられ、電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに作動して内圧を逃がすための放圧手段とを含む電池ボックスと、第1の壁の外側に位置する保護部材であって、第1の壁に接続されるための本体部と、放圧手段を遮蔽するための遮蔽部と、本体部と遮蔽部とを接続するための脆弱部とを含み、脆弱部は、放圧手段が作動するときに破裂して本体部と遮蔽部との接続を遮断するように構成される保護部材とを含む。
【0006】
本出願の実施例において、単体電池の保護部材の遮蔽部は、他の電池セルから放出される排出物を阻止し、他の電池セルから放出される排出物によって放圧手段が溶け落ちる可能性を低減させ、安全リスクを低減させることができる。他方では、この単体電池に熱暴走が発生したときに、放圧手段は作動して内部の高温高圧物質を逃がすとともに、脆弱部は、高温高圧物質の作用で破裂することによって、保護部材上で高温高圧物質を排出するための通路を形成し、高温高圧物質をタイムリーに排出し、安全リスクを低減させる。
【0007】
いくつかの実施例において、電池セルは、接着部材を更に含み、保護部材は、接着部材によって第1の壁に接続される。
【0008】
いくつかの実施例において、本体部の第1の壁に面する表面に接着部材が設けられ、遮蔽部の第1の壁に面する表面と脆弱部の第1の壁に面する表面にいずれも接着部材が設けられていない。このように、脆弱部が破裂するときに接着部材が遮蔽部を本体部に接続するリスクを低減させることができる。
【0009】
いくつかの実施例において、保護部材の融点は、放圧手段の融点よりも大きい。保護部材は、より高い融点を有し、より高い温度に耐えることができ、それによって排出物によって溶け落ちるリスクを低減させ、安全性を向上させる。
【0010】
いくつかの実施例において、保護部材の融点は、600℃以上である。
【0011】
いくつかの実施例において、保護部材の材質は、マイカと、ゴムと、セラミックスとのうちの少なくとも一つを含む。
【0012】
いくつかの実施例において、遮蔽部の厚さは、本体部の厚さよりも小さい。
【0013】
いくつかの実施例において、放圧手段に第1の溝が設けられ、放圧手段は、電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに第1の溝で破裂して内圧を逃がすためのものであり、遮蔽部は、第1の溝を完全に覆う。
【0014】
いくつかの実施例において、遮蔽部は、第1の壁に垂直な方向に沿って本体部から外へ突出する。このように、第1の壁に垂直な方向において遮蔽部と放圧手段との間隔を増大することができ、それによって遮蔽部と放圧手段との熱伝達経路を延長し、放圧手段に伝達される熱を減少させることができる。
【0015】
いくつかの実施例において、第1の壁の外表面に突起が設けられ、第1の壁に垂直な方向に沿って、遮蔽部は、突起の放圧手段から離れる側に位置する。
【0016】
いくつかの実施例において、電池セルは、突起の遮蔽部に面する表面に設けられ、放圧手段を覆う保護膜を更に含む。保護膜は、外部からのほこり、水蒸気などの不純物を阻止して放圧手段を保護することができる。
【0017】
いくつかの実施例において、遮蔽部は、保護膜を押圧する。遮蔽部と突起は、保護膜を挟持し、保護膜が脱落するリスクを低減させる。
【0018】
いくつかの実施例において、本体部と遮蔽部との間に複数の貫通した開孔が設けられ、脆弱部は、複数のサブ脆弱領域を含み、複数のサブ脆弱領域と複数の開孔は、遮蔽部の周方向に沿って交互に設けられる。保護部材は、開孔を設けることで、脆弱部全体の強度を低減させることができ、高温高圧物質が遮蔽部に衝撃するとき、脆弱部のサブ脆弱領域は、タイムリーに破壊されることができる。
【0019】
いくつかの実施例において、サブ脆弱領域の厚さは、本体部の厚さ以下であり、及び/又は、サブ脆弱領域の厚さは、遮蔽部の厚さ以下である。
【0020】
いくつかの実施例において、保護部材の第1の壁から離れる側の表面に第2の溝が設けられ、脆弱部は、第2の溝の底壁であり、及び/又は、保護部材の第1の壁に近い側の表面に第2の溝が設けられ、脆弱部は、第2の溝の底壁である。第2の溝を設けることで、脆弱部の強度を低減させることができ、高温高圧物質による衝撃を受けるとき、脆弱部は、タイムリーに破裂できる。
【0021】
いくつかの実施例において、第2の溝は、遮蔽部を囲む環状の溝である。これに応じて、脆弱部は、環状であり、遮蔽部の縁に沿って周設される。遮蔽部が高温高圧物質による衝撃を受けると、脆弱部の各部分はいずれも破裂でき、高温高圧物質の排出速度を向上させる。
【0022】
いくつかの実施例において、脆弱部の厚さは、0.08mmから0.3mmである。
【0023】
いくつかの実施例において、電池ボックスは、収容室と開口とを有するケースと、エンドキャップアセンブリを含み、エンドキャップアセンブリは、カバープレートと電極端子とを含み、カバープレートは、ケースの開口をカバーし、電極端子は、カバープレートに設けられ、第1の壁は、カバープレートである。
【0024】
いくつかの実施例において、電池セルは、収容室に収容される電極アセンブリを更に含む。
【0025】
第2の態様によれば、本出願の実施例は、電池を提供し、電池は、筐体と、少なくとも一つの第1の態様の電池セルとを含み、電池セルは、筐体内に収容される。
【0026】
第3の態様によれば、本出願の実施例は、第2の態様の電池から提供される電気エネルギーを受けるように構成される電力消費装置を提供する。
【0027】
第4の態様によれば、本出願の実施例は、電池セルの製造方法を提供し、方法は、エンドキャップアセンブリを提供し、エンドキャップアセンブリは、カバープレートと、電極端子と、放圧手段とを含み、放圧手段と電極端子は、カバープレートに設けられ、放圧手段は、電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに作動して内圧を逃がすためのものであることと、電極アセンブリを提供し、電極アセンブリを電極端子に接続することと、収容室と開口とを有するケースを提供することと、電極端子に接続される電極アセンブリを収容室に置き、カバープレートをケースに接続してケースの開口を封止することと、保護部材を提供し、保護部材は、本体部と、遮蔽部と、脆弱部とを含み、脆弱部は、本体部と遮蔽部とを接続するためのものであり、脆弱部は、放圧手段が作動するときに破裂して本体部と遮蔽部との接続を遮断するように構成されることと、保護部材をカバープレートの外側に設け、本体部をカバープレートに接続させ、遮蔽部に放圧手段を遮蔽させることとを含む。
【0028】
第5の態様によれば、本出願の実施例は、電池セルの製造システムを提供する。前記システムは、エンドキャップアセンブリを提供するための第1の提供装置であって、エンドキャップアセンブリは、カバープレートと、電極端子と、放圧手段とを含み、放圧手段と電極端子は、カバープレートに設けられ、放圧手段は、電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに作動して内圧を逃がすためのものである第1の提供装置と、電極アセンブリを提供するための第2の提供装置と、電極アセンブリを電極端子に接続するための第1の組み立て装置と、収容室と開口とを有するケースを提供するための第3の提供装置と、電極端子に接続される電極アセンブリを収容室に置き、カバープレートをケースに接続してケースの開口を封止するための第2の組み立て装置と、保護部材を提供するための第4の提供装置であって、保護部材は、本体部と、遮蔽部と、脆弱部とを含み、脆弱部は、本体部と遮蔽部とを接続するためのものであり、脆弱部は、放圧手段が作動するときに破裂して本体部と遮蔽部との接続を遮断するように構成される第4の提供装置と、保護部材をカバープレートの外側に設け、本体部をカバープレートに接続し、遮蔽部に放圧手段を遮蔽させるための第3の組み立て装置とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本出願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下では、本出願の実施例で使用する必要がある図面を簡単に説明するが、明らかなことに、以下に説明する図面は、本出願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を払うことなく、図面に基づいて他の図面を入手することができる。
【
図1】本出願の一実施例による車両の構造概略図である。
【
図2】本出願の一実施例による電池の構造概略図である。
【
図3】本出願の一実施例による電池モジュールの構造概略図である。
【
図4】本出願の一実施例による電池セルの構造概略図である。
【
図6】
図4に示す電池セルの線A-Aに沿う断面概略図である。
【
図7】
図6に示す電池セルのブロックBでの拡大図である。
【
図9】本出願の一実施例による保護部材の構造概略図である。
【
図10】本出願の一実施例による別の保護部材の構造概略図である。
【
図11】
図9に示す保護部材の円形枠Dでの拡大図である。
【
図12】本出願の一実施例による保護部材の上面概略図である。
【
図13】
図12に示す保護部材の線E-Eに沿う断面概略図である。
【
図14】
図12に示す保護部材の線E-Eに沿う別の断面概略図である。
【
図15】
図12に示す保護部材の線E-Eに沿う更に別の断面概略図である。
【
図16】本出願の一実施例による電池セルの製造方法のフローチャートである。
【
図17】本出願の一実施例による電池セルの製造システムの構造概略図である。
【0030】
図面において、図面は、実際の縮尺に応じて描かれるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本出願の実施例の目的、技術案、及び利点をより明確にするために、以下、本出願の実施例の図面を結び付けながら、本出願の実施例における技術案を明確に説明する。説明される実施例は、本出願の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではないことは明らかである。本出願における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を払わない前提で得られたすべての他の実施例は、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0032】
特に定義されない限り、本出願で使用される全ての科学技術用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本出願において、明細書で使用される用語は、具体的な実施例を説明するためにのみ用いられ、本出願を制限することを意図するものではない。本出願の明細書と請求の範囲及び上記の図面の説明における用語である「含む」、「有する」及びそれらの任意の変形は、非排他的な「含む」を意図的にカバーするものである。本出願の明細書と請求の範囲又は上記の図面における用語である「第1の」、「第2の」などは、異なる対象を区別するためのものであり、特定の順序又は主副関係を説明するためのものではない。
【0033】
本出願において「実施例」と言及する場合、実施例で説明された特定の特徴、構造又は特性が本出願の少なくとも1つの実施例に含まれてもよいことを意味する。明細書における各箇所に記載されたこの語句は、必ずしも全てが同じ実施例を指すものではなく、他の実施例と相互排他する独立した又は代替的な実施例でもない。当業者は、本出願に説明された実施例が他の実施例と組み合わされてもよいことを明示的かつ暗示的に理解できる。
【0034】
本出願の記述において、説明すべきこととして、特に明記し、限定しないかぎり、「取り付け」、「繋がり」、「接続」、「外付け」という用語は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、着脱可能な接続、又は一体的な接続であってもよく、直接に接続してもよく、中間媒体を介して間接に接続してもよく、2つの素子の内部を連通させてもよい。当業者は、具体的な状況に応じて、上記用語の本出願における具体的な意味を理解することができる。
【0035】
本出願における「及び/又は」という用語は、関連対象の関連関係を記述するものに過ぎず、3つの関係が存在してもよいことを表し、例えば、A及び/又はBは、単独のA、AとBとの組み合わせ、単独のBの三つのケースを表してもよい。また、本出願における文字である「/」は、一般的には前後関連対象が「又は」の関係であることを表す。
【0036】
本出願に記載された「複数」は、2つ以上(2つを含む)を意味する。同じ理由により、「複数のグループ」は、2つのグループ以上(2つのグループを含む)を意味し、「複数枚」は、2枚以上(2枚を含む)を意味する。
【0037】
本出願において、電池セルは、リチウムイオン二次電池、リチウムイオン一次電池、リチウム硫黄電池、ナトリウムリチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池又はマグネシウムイオン電池などを含んでもよいが、本出願の実施例では、それを限定しない。電池セルは、円柱体、扁平体、長方体、又はその他の形状などを有してもよく、本出願の実施例ではこれについても限定しない。電池セルは、パッケージングの形態によって、一般的には、柱形電池セル、直方体角形電池セルとパウチ電池セルの3つの種類に分けられ、本出願の実施例では、それを限定しない。
【0038】
本出願の実施例で言及した電池は、より高い電圧と容量を提供するために1つ又は複数の電池セルを含む単一の物理的モジュールを指す。例えば、本出願に言及される電池には、電池モジュール又は電池パックなどが含まれてもよい。電池は、一般的には、1つ又は複数の電池セルをパッケージングするための筐体を含む。筐体は、液体又はその他の異物が電池セルの充電又は放電に影響を与えることを回避することができる。
【0039】
電池セルは電極アセンブリと電解液を含み、電極アセンブリは正極板、負極板及びセパレータによって構成される。電池セルは、主に金属イオンが正極板と負極板との間で移動することにより動作する。正極板は、正極集電体と正極活物質層とを含み、正極活物質層は、正極集電体の表面に塗布されており、正極活物質層が塗布されていない集電体は、正極活物質層が塗布された集電体から突出しており、正極活物質層が塗布されていない集電体は、正極タブとされる。リチウムイオン電池を例にして、正極集電体の材料はアルミニウムであってもよく、正極活物質は、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、三元リチウム又はマンガン酸リチウムなどであってもよい。負極板は、負極集電体と負極活物質層とを含み、負極活物質層は、負極集電体の表面に塗布されており、負極活物質層が塗布されていない集電体は、負極活物質層が塗布された集電体から突出しており、負極活物質層が塗布されていない集電体は、負極タブとされる。負極集電体の材料は銅であってもよく、負極活物質は、炭素又はシリコンなどであってもよい。大電流を流しても溶断が生じないように、正極タブの数は複数で積層されており、負極タブの数は複数で積層されている。セパレータの材質は、PP又はPEなどであってもよい。また、電極アセンブリは、巻回型構造であってもよいし、積層型構造であってもよく、本出願の実施例はこれに限定されるものではない。電池技術の発展は、多岐にわたる設計因子、例えば、エネルギー密度、サイクル寿命、放電容量、充放電レートなどの性能パラメータを同時に考慮しなければならず、また、電池の安全性を考慮する必要もある。
【0040】
電池セルにとって、主な安全上のリスクは充放電過程に由来するものであり、適切な環境温度設計が必要とされる。不必要な損失を効果的に回避するために、電池セルに対して、一般的には、少なくとも3重の保護手段が存在する。具体的には、保護手段は少なくとも、スイッチ素子、選択される適切なセパレータ材料及び放圧手段を含む。スイッチ素子は、電池セル内の温度又は抵抗が一定の閾値に達したときに電池の充電又は放電を停止できる素子である。セパレータは、正極板と負極板を隔離するためのものであり、一定の温度まで昇温するときにそれに付着しているミクロンオーダー(更にはナノメートルオーダー)の微細孔を自動的に溶解して除去することができ、それによって金属イオンがセパレータを通過できなくなり、電池セルの内部反応を終止する。
【0041】
放圧手段は、電池セルの内圧又は温度が予め設定された閾値に達したときに作動して内圧又は温度を逃がす素子又は部材である。この閾値の設計は、設計の需要によって異なっている。前記閾値は、電池セルにおける正極板、負極板、電解液及びセパレータのうちの一つ又は複数の材料によって決まる可能性がある。放圧手段は、防爆弁、空気弁、放圧弁又は安全弁などのような形式を用いてもよく、そして具体的には感圧又は感温性の素子又は構造を用いてもよく、即ち、電池セルの内圧又は温度が予め設定された閾値に達したときに放圧手段が動作を実行するか又は放圧手段に設けられる脆弱構造が破裂することによって、内圧又は温度を逃がすための開口又は通路を形成する。
【0042】
本出願で言及した「作動」は、放圧手段に動作が発生するか又は一定の状態まで活性化されることによって、電池セルの内圧及び温度を逃がすことである。放圧手段に発生する動作は、放圧手段の少なくとも一部が破裂、破砕、破断又は開放されることなどを含んでもよいが、それらに限らない。放圧手段が作動するとき、電池セルの内部の高温高圧物質は、排出物として、作動する部位から外へ排出される。この方式で、圧力又は温度が制御可能である場合には、電池セルの圧力を逃がすことができ、それによって潜在的なより深刻な事故の発生を回避する。
【0043】
本出願で言及した電池セルからの排出物は、電解液、溶解又は分裂された正負極板、セパレータの破片、反応によって生成された高温高圧ガス、火炎などを含むが、それらに限らない。
【0044】
電池セルにおける放圧手段は、電池の安全性に対して重要な影響を及ぼす。例えば、短絡、過充電などの現象が発生したとき、電池セル内部に熱暴走が発生することによって圧力又は温度の急上昇を引き起こす可能性がある。このような場合には、放圧手段の作動によって内圧又は温度を外へ放出し、電池セルの爆発、発火を防止することができる。
【0045】
現在の放圧手段の設計案において、電池セル内部の高圧と高熱を放出すること、即ち前記排出物を電池セルの外部に排出することに主に着目する。しかしながら、電池の出力電圧又は電流を確保するために、往々にして、複数の電池セルを必要とし、且つ複数の電池セルの間は、バスバー部材によって電気的に接続される。電池セルの内部から排出される排出物は、残りの電池セルに短絡現象が発生することを引き起こす可能性があり、例えば、排出物が他の正常な電池セルの周囲に拡散し、高温作用で排出物が正常な電池セルの放圧手段を容易に溶け落ちて電極アセンブリに入り、元々正常な電池セルの短絡、熱暴走を招き、安全上の問題を更に悪化させる。
【0046】
これに鑑み、本出願の実施例は、電池セルの放圧手段に保護部材を設け、放圧手段を保護し、放圧手段が溶け落ちることを回避し、短絡のリスクを低減させ、電池の安全性を向上させる技術案を提供する。
【0047】
本出願の実施例で説明された技術案はいずれも電池を使用する様々な装置、例えば、携帯電話、携帯型デバイス、ノートパソコン、電動スクーター、電動玩具、電動工具、電動車両、船舶及び宇宙機などに適用でき、例えば、宇宙機は飛行機、ロケット、スペースシャトル及び宇宙船などを含む。
【0048】
理解すべきこととして、本出願の実施例で説明された技術案は、上記で説明された機器のみに適用できるというわけではなく、電池を使用する全ての機器に適用できるが、説明を簡潔にするために、下記実施例では、電動車両を例にして説明する。
【0049】
例えば、
図1では、本出願の一実施例による車両1の構造概略図が示されている。車両1は、燃料油自動車、ガス自動車又は新エネルギー自動車であってもよく、新エネルギー自動車は、純電気自動車、ハイブリッド自動車やレンジエクステンダー自動車などであってもよい。車両1の内部には、電池2と、コントローラ3と、モータ4とが設けられてもよく、コントローラ3は、電池2がモータ4に給電するように制御するためのものである。例えば、車両1の底部又は先頭又は後尾に電池2を設けてもよい。電池2は、車両1への給電に用いられてもよい。例えば、電池2を車両1の動作電源とすることができ、車両1の電気回路システムに用いられ、例えば、車両1の始動、ナビゲーション及び走行時の動作電力需要に用いられる。本出願の別の実施例では、電池2は、車両1の動作電源として用いることができるだけでなく、車両1の駆動電源として、ガソリン又は天然ガスの代わりに、又はその一部の代わりに車両1に駆動動力を提供することもできる。
【0050】
異なる電力消費需要を満たすために、電池は複数の電池セルを含んでもよく、ここで、複数の電池セルの間は、直列接続又は並列接続又は直並列接続されてもよく、直並列接続は、直列接続と並列接続との混合を指す。電池は、電池パックと呼ばれてもよい。任意選択的に、複数の電池セルをまず直列接続又は並列接続又は直並列接続して電池モジュールを構成し、複数の電池モジュールを直列接続又は並列接続又は直並列接続して電池を構成する。つまり、複数の電池セルは直接的に電池を構成してもよく、又は、まず電池モジュールを構成し、更に電池モジュールで電池を構成してもよい。
【0051】
例えば、
図2は、本出願の一実施例による電池2の構造概略図である。電池2は、複数の電池セル10を含んでもよい。電池2は、筐体(又はカバーと呼ばれる)を更に含んでもよく、筐体内部が中空構造であり、複数の電池セル10が筐体内に収容される。
図2に示すように、筐体は2つの部分を含んでもよく、ここではそれぞれ第1の部分11と第2の部分12と呼び、第1の部分11と第2の部分12は、互いに係合される。第1の部分11と第2の部分12の形状は、複数の電池セル10を組み合わせた形状に基づいて決定されてもよく、第1の部分11と第2の部分12はいずれも1つの開口を有してもよい。例えば、第1の部分11と第2の部分12は、いずれも中空長方体であり、それぞれ1つの面のみが開口面であり、第1の部分11の開口と第2の部分12の開口とが対向して設けられ、且つ第1の部分11と第2の部分12とが互いに係合して、閉鎖されたチャンバを有する筐体を形成する。複数の電池セル10は、互いに並列又は直列又は直並列接続されて組み合わせた後、第1の部分11と第2の部分12とが互いに係合して形成した筐体内に置かれる。
【0052】
任意選択的に、電池2は他の構造を更に含んでもよいが、ここでは説明を省略する。例えば、この電池2は、複数の電池セル10同士の電気的接続、例えば、並列又は直列又は直並列接続を実現するためのバスバー部材を更に含んでもよい。具体的に、バスバー部材は、電池セル10の電極端子に接続されることで電池セル10同士の電気的接続を実現することができる。更に、バスバー部品は、溶接によって電池セル10の電極端子に固定することができる。複数の電池セル10の電気エネルギーは、更に導電手段により筐体を貫通して導出することができる。任意選択的に、導電手段は、バスバー部材に属するものであってもよい。
【0053】
様々な電力需要に応じて、電池セル10の数は、任意の数値に設定されてもよい。複数の電池セル10を直列、並列、又は直並列接続することにより、比較的大きい容量又は電力を実現することができる。各電池2に含まれる電池セル10の数は比較的多い場合があるため、取り付けを容易にするために、電池セル10をグループ化して設置し、各グループの電池セル10が電池モジュールを構成してもよい。電池モジュールに含まれる電池セル10の数は限定されず、需要に応じて設ければよい。例えば、
図3は電池モジュールの一例である。電池は、複数の電池モジュールを含んでもよく、これら電池モジュールは、直列、並列、又は直並列に接続することができる。
【0054】
図4は、本出願の一実施例による電池セル10の構造概略図である。
図5は、
図4に示す電池セル10の分解概略図である。
図6は、
図4に示す電池セル10の線A-Aに沿う断面概略図である。
図7は、
図6に示す電池セル10のブロックBでの拡大図である。
【0055】
図4から
図7に示すように、電池セル10は、電極アセンブリ101と、電極アセンブリ101を収容するための電池ボックスを含み、電池ボックスは、エンドキャップアセンブリ100と、ケース102とを含む。ケース102は、収容室と開口とを有し、電極アセンブリ101は、収容室に収容される。例えば、ケース102が中空長方体又は立方体である場合、ケース102のうちの1つの平面が開口面である。即ち、この平面は壁体を有さず、ケース102の内外を連通させる。ケース102が中空の円柱体であり得る場合、ケース102の端面が開口面である。即ち、この端面は壁体を有さず、ケース102の内外を連通させる。エンドキャップアセンブリ100は、カバープレート110を含み、カバープレート110は、開口を覆い、且つケース102に接続され、更にケース102の開口を封止し、電極アセンブリ101を、封止したチャンバ内に置かせる。ケース102内には、電解質、例えば、電解液が充填されている。
【0056】
このエンドキャップアセンブリ100は、2つの電極端子を更に含んでもよく、2つの電極端子は、カバープレート110上に設けられてもよい。カバープレート110は、一般的には平板形状であり、2つの電極端子は、カバープレート110の平板表面上に固定され、2つの電極端子は、それぞれ正極端子121と負極端子122である。各電極端子に対応してそれぞれ1つの接続部材103が設けられ、又は集電部材と呼ばれてもよいが、それはカバープレート110と電極アセンブリ101との間に位置し、電極アセンブリ101と電極端子との電気的接続を実現するためのものである。
【0057】
各電極アセンブリ101は、第1のタブ101aと第2のタブ101bとを有する。第1のタブ101aと第2のタブ101bとは、極性が逆である。例えば、第1のタブ101aが正極タブである場合、第2のタブ101bは負極タブである。1つ又は複数の電極アセンブリ101の第1のタブ101aは1つの接続部材103を介して1つの電極端子に接続され、1つ又は複数の電極アセンブリ101の第2のタブ101bはもう1つの接続部材103を介してもう1つの電極端子に接続される。例えば、正極端子121は1つの接続部材103を介して正極タブに接続され、負極端子122はもう1つの接続部材103を介して負極タブに接続される。
【0058】
この電池セル10において、実際の使用上の需要に応じて、電極アセンブリ101は、1つ又は複数設けられてもよい。いくつかの例において、電池セル10内に2つの独立した電極アセンブリ101が設けられる。
【0059】
いくつかの実施例において、このエンドキャップアセンブリ100は、下絶縁部材130を更に含んでもよく、下絶縁部材130は、カバープレート110の電極アセンブリ101に面する側に設けられ、下絶縁部材130は、カバープレート110と接続部材103とを仕切り、カバープレート110と電極アセンブリ101とを仕切り、短絡のリスクを低減させることができる。
【0060】
電池ボックスは、第1の壁と放圧手段140とを含み、放圧手段140は、第1の壁上に設けられる。いくつかの例において、第1の壁は、ケース102の1つの壁であってもよく、例えば、ケース102は、4つの側壁と、この4つの側壁に接続される底壁とを含み、第1の壁は、底壁であってもよく、1つの側壁であってもよい。別のいくつかの例において、第1の壁は、カバープレート110である。放圧手段140は、第1の壁の一部であってもよく、第1の壁と別体で、例えば溶接の方式によって第1の壁に固定されてもよい。
【0061】
本出願の実施例のカバープレート110は、貫通孔111を有し、貫通孔111は、カバープレート110の厚さ方向に沿ってカバープレート110を貫通する。放圧手段140は、カバープレート110に接続され、貫通孔111を覆う。電池セル10において、放圧手段140は、貫通孔111を封止して、カバープレート110の内外の両側の空間を仕切り、電解液が貫通孔111を経由して流出することを回避し、電池セル10の封止性を向上させることができる。
【0062】
放圧手段140は、電池セル10の内圧又は温度が閾値に達したときに作動して内圧を逃がすためのものである。電池セル10に発生したガスが多すぎることによって、ケース102の内圧が上昇して閾値に達したとき又は電池セル10の内部の反応によって生成した熱によって電池セル10の内部の温度が上昇して閾値に達したときに、放圧手段140は動作を実行するか又は放圧手段140に設けられる脆弱構造が破裂され、ガスの圧力又は温度が放圧手段140の裂けた開口と貫通孔111によって外へ放出され、更に電池セル10の爆発を回避する。
【0063】
放圧手段140はいかなる可能な放圧構造であってもよいが、本出願の実施例では、それを限定しない。例えば、放圧手段140は、放圧手段140を設けた電池セル10の内部温度が閾値に達する時に溶融できるように構成されている感温性放圧手段であってもよく、及び/又は、放圧手段140は、放圧手段140を設けた電池セル10の内部気圧が閾値に達する時に破裂できるように構成されている感圧性放圧手段であってもよい。
【0064】
本出願の実施例の電池セルは、保護部材150を更に含み、保護部材150は、カバープレート110の外側に設けられ、即ち、保護部材150は、カバープレート110の電極アセンブリ101から離れる側に設けられる。保護部材150は、外側から放圧手段140と貫通孔111を遮蔽するためのものである。保護部材150は、貫通孔111を完全に遮蔽してもよく、貫通孔111の一部のみを遮蔽してもよい。
【0065】
電池において、ある電池セルの放圧手段が作動して排出物を放出するとき、排出物が他の正常な電池セルの周囲に拡散し、正常な電池セルにおける保護部材150は、排出物を阻止する役割を果たし、排出物と放圧手段140とが接触して放圧手段140を溶け落ちるリスクを低減させ、排出物が電極アセンブリ101内に入ることを低減又は防止し、安全リスクを低減させることができる。
【0066】
発明者らは、電池セル10の保護部材150が外側から放圧手段140を遮蔽し、他の電池セルから放出される排出物によって放圧手段140が溶け落ちるリスクを低減させることができるが、この電池セル10に熱暴走が発生したことによって内部の高温高圧物質を放出する必要があるとき、保護部材150が速く開放しにくく、高温高圧物質をタイムリーに排出できなくなり、安全リスクを引き起こすことを更に発見した。
【0067】
これに鑑み、本出願の実施例による保護部材150は、本体部151と、遮蔽部152と、脆弱部153とを含む。本体部151は、カバープレート110に接続され、保護部材150をカバープレート110に固定するためのものであり、遮蔽部152は、放圧手段140を遮蔽し、他の電池セルから放出される排出物を阻止し、他の電池セルから放出される排出物によって放圧手段140が溶け落ちるリスクを低減させるためのものである。脆弱部153は、本体部151と遮蔽部152とを接続するためのものであり、脆弱部153は、放圧手段140が作動するときに破裂して本体部151と遮蔽部152との接続を遮断するように構成される。
【0068】
遮蔽部152は、放圧手段140の貫通孔111に対応する部分を遮蔽するためのものである。遮蔽部152は、貫通孔111を完全に遮蔽してもよく、貫通孔111の一部のみを遮蔽してもよい。カバープレート110の厚さ方向において、遮蔽部152の正投影と貫通孔111の正投影とは、少なくとも部分的に重なり合う。貫通孔111の正投影は、貫通孔111の孔壁がこの厚さ方向の正投影に沿って囲まれた領域を指す。
【0069】
脆弱部153は、高温高圧物質の破壊を容易にする様々な設置を用いてもよく、本出願の実施例では、それを限定しない。脆弱部153の強度は、遮蔽部152の強度と本体部151の強度よりも小さく、このように、放圧手段140が作動するときに脆弱部153が破裂して本体部151と遮蔽部152との接続を遮断することができる。保護部材150は、開口、溝、打痕などの構造を設けることで脆弱部153の強度を減少させることができる。無論、脆弱部153は、強度の低い材料を採用してもよい。
【0070】
放圧手段140が作動するとき、脆弱部153が高温高圧物質の作用で破壊され、更に、本体部151と遮蔽部152との接続を遮断する。高温高圧物質は、脆弱部153上に直接的に作用してもよく、遮蔽部152によって熱と圧力を脆弱部153上に伝達してもよい。いくつかの例において、脆弱部153全体が破壊されてもよく、遮蔽部152は、本体部151による拘束を失い、更に高温高圧物質によって押し開かれる。このとき、遮蔽部152は、高温高圧物質を阻止することなく、保護部材150に、高温高圧物質を排出するための通路が形成され、高温高圧物質は、電池セル10の外へ速く排出される。別のいくつかの例において、脆弱部153は、部分的に破壊されてもよく、保護部材150は、脆弱部153の破壊された箇所で通路を形成でき、高温高圧物質は、この通路によって排出される。また、遮蔽部152と本体部151との接続力が減少し、遮蔽部152は、高温高圧物質による衝撃で外へ反転することによって、この通路の寸法を大きくし、高温高圧物質の排出効率を高める。
【0071】
一方では、単体電池10の保護部材150の遮蔽部152は、他の電池セルから放出される排出物を阻止し、他の電池セルから放出される排出物によって放圧手段140が溶け落ちるリスクを低減させることができる。他方では、この単体電池10に熱暴走が発生したときに、放圧手段140は作動して内部の高温高圧物質を逃がすとともに、脆弱部153は、高温高圧物質の作用で破裂し、保護部材150上で高温高圧物質を排出するための通路を形成し、高温高圧物質をタイムリーに排出し、安全リスクを低減させる。
【0072】
本出願のいくつかの実施例において、保護部材150の融点は、放圧手段140の融点よりも大きい。放圧手段140に対して、保護部材150は、より高い融点を有し、より高い温度に耐えることができ、それによって排出物によって溶け落ちるリスクを低減させ、安全性を向上させる。
【0073】
本出願の一実施例において、保護部材150の融点は、600℃以上である。このとき、保護部材150の融点が高く、排出物によって溶け落ちにくい。任意選択的に、保護部材150の融点は、1000℃以上である。
【0074】
本出願のいくつかの実施例において、保護部材150の材質は、マイカと、ゴムと、セラミックスとのうちの少なくとも1つを含む。任意選択的に、保護部材150は、マイカペーパ又はマイカ板であり、マイカペーパ又はマイカ板は、絶縁、耐高温の特性を有し、高温排出物を効果的に阻止し、放圧手段140を保護する役割を果たすことができる。マイカペーパ又はマイカ板は、薄く、高温高圧物質による衝撃を受けるとき、脆弱部153でタイムリーに破裂できる。それとともに、マイカペーパ又はマイカ板の厚さが小さく、重量が低く、電池セルのエネルギー密度への影響が小さい。
【0075】
本出願のいくつかの実施例において、保護部材150は、断熱の役割を更に果たすことができる。保護部材150は少なくとも、一部の排出物とカバープレート110を仕切ることができ、それによってカバープレート110上に伝達される熱を減少させ、電池セル10の昇温を低減させ、電極アセンブリ101を適切な温度範囲内に作動させ、電極アセンブリ101の充放電性能を改善する。
【0076】
本出願のいくつかの実施例において、カバープレート110の厚さ方向に沿って、遮蔽部152は、貫通孔111を完全に覆い、このように、遮蔽部152は、排出物を可能な限り阻止し、排出物が貫通孔111に入るリスクを低減させることができる。
【0077】
本出願の実施例の電池セルは、接着部材170を更に含み、保護部材150は、接着部材170によってカバープレート110に接続される。接着部材170は、接着剤であってもよい。カバープレート110に組み立てる前に、保護部材150は、接着部材170によって離型紙に接着されてもよく、必要なときに、保護部材150と接着部材170を離型紙から剥離し、そしてカバープレート110上に接着する。
【0078】
いくつかの実施例において、本体部151のカバープレート110に面する表面に接着部材170が設けられる。接着部材170は、本体部151をカバープレート110に固定する。接着部材170は、粘着性を有し、高温で柔らかくなり、且つ破断しにくく、遮蔽部152と脆弱部153にも接着部材170を設ければ、脆弱部153が破裂するときに、接着部材170が遮蔽部152を本体部151に接続する可能性があることによって、高温高圧物質をタイムリーに排出できなくなるため、遮蔽部152のカバープレート110に面する表面と脆弱部153のカバープレート110に面する表面にいずれも接着部材170が設けられていない。
【0079】
いくつかの実施例において、接着部材170は、1つであってもよく、別のいくつかの実施例において、接着部材170は、非連続的に設けられる複数であってもよい。
【0080】
図8は、
図7の円形枠Cでの拡大図である。
図8に示すように、本出願のいくつかの実施例において、いくつかの実施例では、放圧手段140に第1の溝141が設けられ、放圧手段140は、電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに第1の溝141で破裂して内圧を逃がすためのものである。第1の溝141の底壁は、放圧手段140上に形成される脆弱構造であり、電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに、第1の溝141の底壁が裂けて開口を形成し、ガスの圧力及び温度は、放圧手段140の裂けた開口と貫通孔111によって外へ放出され、更に電池セルの爆発を回避する。
【0081】
第1の溝141の底壁は、弱くて、排出物によって溶け落ちることがより容易である。そのため、いくつかの実施例において、遮蔽部152は、第1の溝141を完全に覆い、つまり、カバープレート110の厚さ方向において、遮蔽部152の正投影は、第1の溝141の正投影を完全に覆う。このように、排出物が放圧手段140の第1の溝141内に落とされるリスクが低減させ、放圧手段140が溶け落ちる可能性を低減させることができる。
【0082】
遮蔽部152は、カバープレート110に垂直な方向に沿って本体部151から外へ突出する。このように、本出願の実施例は、カバープレート110に垂直な方向(即ち、カバープレート110の厚さ方向)において遮蔽部152と放圧手段140との間隔を増大することができ、それによって遮蔽部152と放圧手段140との熱伝達経路を延長し、放圧手段140に伝達される熱を減少させることができる。また、いくつかの例において、電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに、放圧手段140は、第1の溝141の底壁で破裂でき、放圧手段140の、破裂部に沿って設けられる部分は、上へ折り返して開口を形成し、高温高圧物質を逃がす。遮蔽部152と放圧手段140との間隔が小さすぎると、遮蔽部152は、放圧手段140の折り返しを阻止する可能性があることによって、放圧手段140の開口が小さくなり、高温高圧物質が遮蔽部152をタイムリーに押し開くことができない。そのため、遮蔽部152を本体部151から突出させることで、遮蔽部152と放圧手段140との間隔を増大し、遮蔽部152が放圧手段140の折り返しを阻止することを回避することができる。
【0083】
本出願のいくつかの実施例において、脆弱部153は、遮蔽部152の縁から、カバープレート110に近い方向へ延在し、本体部151に接続される。保護部材150は、遮蔽部152のカバープレート110に面する側に凹部を形成する。本体部151と遮蔽部152は、いずれも平板形状であり、且つカバープレート110の厚さ方向にほぼ垂直である。脆弱部153は、遮蔽部152に対して、予め設定された角度で屈曲し、
図8に示すように、脆弱部153は、遮蔽部152にほぼ垂直である。無論、脆弱部153と遮蔽部152との夾角は、製品の需要に応じて設定されてもよく、例えば、80度-160度であってもよく、具体的には、90度、120度、150度などであってもよく、ここで限定しない。
【0084】
本出願のいくつかの実施例において、カバープレート110は、収容溝112を更に有し、収容溝112は、カバープレート110の電極アセンブリ101に面する表面から凹み、且つ収容溝112は、貫通孔111を囲んで設けられる。放圧手段140は、少なくとも部分的に収容溝112に収容される。収容溝112は、位置決めの役割を果たし、放圧手段140とカバープレート110との組み立てを容易にすることができる。
【0085】
本出願のいくつかの実施例において、カバープレート110は、カバープレート本体114と、カバープレート本体114に接続される突起113とを含む。カバープレート110に垂直な方向に沿って、遮蔽部152は、突起113の放圧手段140から離れる側に位置する。いくつかの例において、突起113は、遮蔽部152とカバープレート本体114との間に位置し、この「間」は、突起113、遮蔽部152及びカバープレート本体114の、カバープレート110の厚さ方向での空間的位置関係を指し、遮蔽部152と突起113がこの厚さ方向において重なり合うことが求められていない。カバープレート本体114は、ほぼ平板形状である。突起113は、カバープレート本体114の保護部材150に面する表面に対して突出する。貫通孔111は、カバープレート本体114と突起113を貫通する。貫通孔111は、カバープレート本体114を貫通する内側段と、突起113を貫通する外側段とを含み、突起113は、この外側段を囲む側壁を含む。突起113は、保護部材150の凹部内に伸び込む。
【0086】
本出願のいくつかの実施例において、カバープレート本体114に平行な方向に沿って、脆弱部153は、突起113の貫通孔111から離れる側に位置し、突起113は、脆弱部153と貫通孔111を仕切ることができ、脆弱部153の一部が排出物によって溶け落ちても、突起113は、排出物を阻止する役割を果たし、排出物が貫通孔111に入ることを低減させるか又は回避することができる。
【0087】
突起113は、カバープレート110の、貫通孔111での強度を強化し、カバープレート110の変形を低減させることもできる。いくつかの例において、収容溝112は、カバープレート110を押圧する方式で形成されてもよく、カバープレート110を押圧した後、カバープレート110上に突起113が形成される。
【0088】
本出願のいくつかの実施例において、電池セル10は、保護膜160を更に含み、保護膜160は、遮蔽部152と放圧手段140との間に設けられ、貫通孔111と放圧手段140を覆う。いくつかの例において、保護膜160は、突起111の遮蔽部152に面する表面に設けられ、貫通孔111と放圧手段140を覆う。保護膜160は、貫通孔111を封止し、貫通孔111に入る外部からのほこり、水蒸気などの不純物を減少させることができる。保護膜160は、薄膜構造であり、強度が低く、高温高圧物質による衝撃で破裂しやすく、高温高圧物質の排出に影響を及ぼさない。任意選択的に、保護膜160は、透明なPETパッチである。
【0089】
本出願のいくつかの実施例において、遮蔽部152は、保護膜160を押圧する。遮蔽部152と突起113は、保護膜160を挟持し、保護膜160が脱落するリスクを低減させる。
【0090】
図9は、本出願の一実施例による保護部材150の構造概略図であり、カバープレート110に組み立てられる前の保護部材150の形状を示している。
図10は、本出願の一実施例による別の保護部材150の構造概略図であり、カバープレート110に組み立てられる前の保護部材150の形状を示している。
【0091】
図9を参照すると、いくつかの実施例において、保護部材150の製造プロセスでは、本体部151から突出する遮蔽部152を直接的に形成する。本体部151と遮蔽部152は、ほぼ平板形状であり、且つ互いに平行に設けられ、脆弱部153は、本体部151と遮蔽部152にほぼ垂直である。保護部材150は、遮蔽部152の内側に凹部を形成する。保護部材150とカバープレート110を組み立てるとき、本体部151をカバープレート本体114に接続し、保護部材150の凹部は、カバープレート110の突起113のための収容空間を確保する。
【0092】
図10を参照すると、別のいくつかの実施例において、保護部材150は、まず平板形状に製造されてもよい。このとき、本体部151、遮蔽部152及び脆弱部153は、ほぼ1つの平面内にある。平板形状の保護部材150の成形プロセスは、相対的に簡単である。保護部材150とカバープレート110を組み立てるとき、まず、遮蔽部152を突起113又は保護膜160上に貼り付け、そして本体部151を押圧する。脆弱部153の強度が小さく、本体部151を押圧するとき、脆弱部153が変形可能であることによって、本体部151をカバープレート110に近接させ、本体部151をカバープレート本体114に接続する。平板形状の保護部材150がカバープレート110上に組み立てられた後、突起113は、遮蔽部152を本体部151から突出するように持ち上げることができる。
【0093】
脆弱部153は、需要に応じて様々な方式で形成されてもよく、脆弱部153の強度を低減させ、放圧手段140が作動するときに脆弱部153が破裂できればよい。
【0094】
図11は、
図9に示す保護部材150の円形枠Dでの拡大図である。
図11に示すように、本出願のいくつかの実施例において、本体部151と遮蔽部152との間に複数の貫通した開孔154が設けられ、脆弱部153は、複数のサブ脆弱領域153aを含み、複数のサブ脆弱領域153aと複数の開孔154は、遮蔽部152の周方向に沿って交互に設けられる。保護部材150は、開孔154を設けることで、脆弱部153全体の強度を低減させることができ、高温高圧物質が遮蔽部152に突き当たるとき、脆弱部153のサブ脆弱領域153aは、速やかに破壊される。いくつかの例において、電池セル10に熱暴走が発生したときに、高温高圧物質による衝撃で、全てのサブ脆弱領域153aが破壊され、遮蔽部152が本体部151による拘束から完全に外れて高温高圧物質によって押し開かれる。別のいくつかの例において、高温高圧物質による衝撃で、一部のみのサブ脆弱領域153aが破壊されてもよく、別の一部のサブ脆弱領域153aが依然として遮蔽部152を本体部151に接続する。このとき、遮蔽部152に対する本体部151の拘束力が小さく、遮蔽部152が高温高圧物質による衝撃で変形する可能性があり、破壊されていないサブ脆弱領域153aを軸として外へ反転する可能性もあり、このように、本体部151と遮蔽部152との間に、高温高圧物質を速やかに排出するための通路を形成することができる。電池セル10に熱暴走が発生したときに、破壊されるサブ脆弱領域153aの数は、電池セル10の容量によって決まり、全てのサブ脆弱領域153aがいずれも破裂するかそれとも一部のサブ脆弱領域153aが破裂するかに関わらず、一定の期間内に単体電池10内部の温度と圧力を安全な範囲内に放出することができればよい。
【0095】
いくつかの実施例において、サブ脆弱領域153aは、4つであり、2つのサブ脆弱領域153aは、保護部材150の長手方向に沿って対向して設けられ、別の2つのサブ脆弱領域153aは、保護部材150の幅方向に沿って対向して設けられる。
【0096】
いくつかの実施例において、遮蔽部152の周方向には、脆弱部153と遮蔽部152との接続箇所の寸法と遮蔽部152の周長との比は、50%よりも小さい。遮蔽部152が高温高圧物質による衝撃を受けるときに脆弱部153と遮蔽部152との接続箇所は、破裂しやすくなる。
【0097】
いくつかの実施例において、サブ脆弱領域153aの厚さは、本体部151の厚さ以下である。サブ脆弱領域153aの厚さが本体部151の厚さよりも小さいとき、サブ脆弱領域153aと本体部151との接続箇所の強度が低く、高温高圧物質が保護部材150に衝撃するとき、サブ脆弱領域153aと本体部151との接続箇所は、破断しやすくなる。
【0098】
いくつかの実施例において、サブ脆弱領域153aの厚さは、遮蔽部152の厚さ以下である。サブ脆弱領域153aの厚さが遮蔽部152の厚さよりも小さいとき、サブ脆弱領域153aと本体部152との接続箇所の強度が低く、高温高圧物質が保護部材150に衝撃するとき、サブ脆弱領域153aと遮蔽部152との接続箇所は、破断しやすくなる。
【0099】
いくつかの実施例において、サブ脆弱領域153aの厚さは、本体部151の厚さよりも小さいだけでなく、遮蔽部152の厚さよりも小さい。
【0100】
いくつかの例において、本体部151と遮蔽部152の厚さは同じである。別のいくつかの例において、遮蔽部152の厚さは、本体部151の厚さよりも小さくてもよい。
【0101】
いくつかの実施例において、本体部151、遮蔽部152及びサブ脆弱領域153aの三者の厚さは等しく、このとき、保護部材150全体の厚さが均一であり、成形しやすい。
【0102】
図12は、本出願の一実施例による保護部材150の構造概略図である。
図13は、
図12に示す保護部材150の線E-Eに沿う断面概略図である。
図14は、
図12に示す保護部材150の線E-Eに沿う別の断面概略図である。
図15は、
図12に示す保護部材150の線E-Eに沿う更に別の断面概略図である。
【0103】
いくつかの実施例において、
図12から
図15を参照すると、保護部材150に第2の溝154が設けられる。第2の溝154の位置は、製品の需要に応じて設定されてもよい。いくつかの例において、
図13を参照すると、第2の溝154は、保護部材150の内側表面(即ち、保護部材150のカバープレート110に近い側の表面)に設けられる。別のいくつかの例において、
図14を参照すると、第2の溝154は、保護部材150の外側表面(即ち、保護部材150のカバープレート110から離れる側の表面)に設けられる。更にいくつかの例において、
図15を参照すると、第2の溝154は、保護部材150の内側表面と外側表面に同時に設けられる。
【0104】
図12から
図15を参照すると、脆弱部153は、第2の溝154の底壁である。第2の溝154を設けることで、脆弱部153の厚さを低減させることができ、即ち、脆弱部153の強度を低減させることができ、高温高圧物質による衝撃を受けるとき、脆弱部153は、速やかに破裂できる。
【0105】
いくつかの実施例において、第2の溝154は、遮蔽部152を囲む環状の溝である。これに応じて、脆弱部153は、環状であり、遮蔽部152の縁に沿って周設される。遮蔽部152が高温高圧物質による衝撃を受けるとき、脆弱部153の各部分はいずれも破裂でき、高温高圧物質の排出速度を向上させることができる。
【0106】
いくつかの例において、環状の第2の溝154は、1つである。任意選択的に、環状の第2の溝154は、複数であってもよく、複数の第2の溝154は、本体部151から遮蔽部152に向かう方向に沿って間隔をあけて設けられる。第2の溝154の数は、電池セル10の容量に応じて設定されてもよく、一定の期間内に単体電池10内部の温度と圧力を安全な範囲内に放出することができればよい。
【0107】
いくつかの実施例において、第2の溝154は、複数のストリップ状溝であり、複数の第2の溝154は、遮蔽部152の周方向に沿って間隔をあけて設けられる。
【0108】
脆弱部153の厚さが小さいほど、脆弱部153の強度は、低くなり、脆弱部153の厚さが小さすぎれば、電池セルに振動が発生したときに、脆弱部153は、破断しやすいことによって、保護部材150の故障を引き起こす。逆に、脆弱部153の厚さが大きいほど、脆弱部153の強度は、高くなり、脆弱部153の厚さが大きすぎれば、高温高圧物質が遮蔽部152に衝撃するとき、脆弱部153の破裂に必要な時間が長すぎ、高温高圧物質の排出に影響を及ぼす。そのため、いくつかの実施例において、脆弱部153の厚さは、0.08mmから0.3mmである。
【0109】
いくつかの実施例において、本体部151の厚さは、遮蔽部152の厚さに等しくてもよい。別のいくつかの実施例において、遮蔽部152の厚さは、本体部151の厚さよりも小さくてもよい。
【0110】
図15に示すように、保護部材150は、内側の第2の溝154と、外側の第2の溝154とを含み、脆弱部153の厚さ方向に沿って、内側の第2の溝154と外側の第2の溝154とは少なくとも部分的に重なり合い、このように脆弱部153の最小厚さを低減させることができる。
【0111】
図16は、本出願の一実施例による電池セルの製造方法のフローチャートを示す。
図16に示すように、この製造方法は、以下を含んでもよい。
【0112】
S210:エンドキャップアセンブリ100を提供し、エンドキャップアセンブリ100は、カバープレート110と、電極端子と、放圧手段140とを含み、ここで、放圧手段140と電極端子は、カバープレート110上に設けられ、放圧手段140は、電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに作動して内圧を逃がすためのものである。
【0113】
S220:電極アセンブリ101を提供し、電極アセンブリ101を電極端子に接続する。
【0114】
S230:収容室と開口とを有するケース102を提供する。
【0115】
S240:電極端子に接続される電極アセンブリ101を収容室に置き、そしてカバープレート110をケース102に接続してケース102の開口を封止する。
【0116】
S250:保護部材150を提供し、保護部材150は、本体部151と、遮蔽部152と、脆弱部153とを含み、脆弱部153は、本体部151と遮蔽部152とを接続するためのものであり、脆弱部153は、放圧手段140が作動するときに破裂して本体部151と遮蔽部152との接続を遮断するように構成される。
【0117】
S260:保護部材150をカバープレート110の外側に設け、本体部151をカバープレート110に接続し、遮蔽部152に放圧手段140を遮蔽させる。
【0118】
本実施例の製造方法によって製造される電池セルの関連構造は、前記
図1-
図15に対応する実施例に記述された関連内容を参照してもよく、ここでは説明を省略する。
【0119】
図17は、本出願の一実施例による電池セルの製造システムの構造概略図を示す。
図17に示すように、本出願の実施例の電池セルの製造システム300は、第1の提供装置310と、第2の提供装置320と、第3の提供装置330と、第4の提供装置340と、第1の組み立て装置350と、第2の組み立て装置360と、第3の組み立て装置370とを含んでもよい。
【0120】
第1の提供装置310は、エンドキャップアセンブリ100を提供するためのものであり、エンドキャップアセンブリ100は、カバープレート110と、電極端子と、放圧手段140とを含み、ここで、放圧手段140と電極端子は、カバープレート110上に設けられ、放圧手段140は、電池セルの内圧又は温度が閾値に達したときに作動して内圧を逃がすためのものである。
【0121】
第2の提供装置320は、電極アセンブリ101を提供するためのものである。第1の組み立て装置350は、電極アセンブリ101を電極端子に接続するためのものである。第3の提供装置330は、収容室と開口とを有するケース102を提供するためのものである。第2の組み立て装置360は、電極端子に接続される電極アセンブリ101を収容室に置き、カバープレート110をケース102に接続してケース102の開口を封止するためのものである。第4の提供装置340は、保護部材150を提供するためのものであり、保護部材150は、本体部151と、遮蔽部152と、脆弱部153とを含み、脆弱部153は、本体部151と遮蔽部152とを接続するためのものであり、脆弱部153は、放圧手段140が作動するときに破裂して本体部151と遮蔽部152との接続を遮断するように構成される。第3の組み立て装置370は、保護部材150をカバープレート110の外側に設け、本体部151をカバープレート110に接続させ、遮蔽部152に放圧手段140を遮蔽させるためのものである。
【0122】
本実施例の製造システムによって製造される電池セルの関連構造は、前記
図1-
図15に対応する実施例に記述された関連内容を参照してもよく、ここでは説明を省略する。
【0123】
最後に説明すべきこととして、上述の実施例は、本出願の技術案を説明するためのみに用いられ、それを制限するものではない。前述した各実施例を参照して本出願を詳細に説明したが、当業者であれば理解できるように、それは依然として前述した各実施例に記載の技術案を修正し、又はそのうち一部の技術的特徴に対して等価置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術案の本質を本出願の各実施例の技術案の精神及び範囲から逸脱させるものではない。