(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】合金を選択するためのシミュレーションシステム、及び非晶質特性を有する生産されるワークピースのための生産プロセス
(51)【国際特許分類】
B22D 17/00 20060101AFI20240716BHJP
B22F 10/20 20210101ALI20240716BHJP
【FI】
B22D17/00
B22F10/20
(21)【出願番号】P 2022569607
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2021063838
(87)【国際公開番号】W WO2021239703
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-15
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520131303
【氏名又は名称】ヘレウス アムロイ テクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヒター、ハンス-ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ミルケ、オイゲン
(72)【発明者】
【氏名】シャクール シャハビ、ハメド
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2023-514220(JP,A)
【文献】特表2016-501722(JP,A)
【文献】特表2014-528840(JP,A)
【文献】特開2011-056585(JP,A)
【文献】特開2012-046826(JP,A)
【文献】特開平09-323146(JP,A)
【文献】特表2016-508546(JP,A)
【文献】特表2021-516293(JP,A)
【文献】特開2010-110792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00
B22F 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質特性を有する製造されるワークピース(4)のための合金(L)及び製造方法(V)を選択するためのシミュレーションシステム(2)であって、
製造される前記ワークピース(4)についての要件プロファイル(A)を入力するための入力ユニット(6)、
情報データ(I)を記憶するように設計された少なくとも1つのメモリユニット(8)であって、前記情報データ(I)が、非晶質特性を有するワークピース(4)を生産するための複数の合金(L)の物理的及び/又は化学的及び/又は機械的特性に関する情報と、製造方法(V)に関する情報とを指定し、前記要件プロファイルが、製造される前記ワークピースの幾何学的及び/又は機械的及び/又は化学的特性を指定する、少なくとも1つのメモリユニット(8)、
シミュレーションデータを作成するために、複数のワークピース(4)を、前記要件プロファイル(A)及び前記情報データ(I)に従ってシミュレートする、
前記シミュレートされたワークピースを、前記シミュレーションデータ及び前記要件プロファイル(A)に基づいて評価する、
製造される前記ワークピース(4)のための合金(L)及び製造方法(V)を、前記評価に基づいて選択する
ように設計された分析ユニット(10)、
前記選択された合金(L)及び前記選択された製造方法(V)を出力するように設計された出力ユニット(20)
を備えるシミュレーションシステム(2)。
【請求項2】
前記分析ユニット(10)が、第1のシミュレーションユニット(14)を備え、前記第1のシミュレーションユニット(14)が、前記合金に依存して、並びに前記要件プロファイル(A)及び
計算された特性に従って、製造される前記ワークピース(4)への機械的負荷をシミュレートし、前記シミュレートされた機械的負荷に関する情報を前記シミュレーションデータに追加するように設計されている
ことを特徴とする、請求項1に記載のシミュレーションシステム(2)。
【請求項3】
前記分析ユニット(10)が、第2のシミュレーションユニット(16)を備え、前記第2のシミュレーションユニット(16)が、前記合金に依存して、並びに前記要件プロファイル(A)及び前記情報データ(I)に従って、製造される前記ワークピース(4)の化学的特性をシミュレートし、前記シミュレートされた化学的特性に関する情報を前記シミュレーションデータに追加するように設計されている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のシミュレーションシステム(2)。
【請求項4】
前記情報データ(I)が、
前記合金の熱特性、
前記合金の媒体耐性、
化学的特性、
混入度に基づく非晶質性、
負荷依存時効現象、及び/又は
前記合金の冷却挙動
から選択される少なくとも1つの物理的及び/又は化学的及び/又は機械的特性に関する情報を指定する
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム(2)。
【請求項5】
前記分析ユニット(10)が、前記少なくとも1つのメモリユニット(8)内に記憶された合金(L)からの事前選択、及び/又は前記少なくとも1つのメモリユニット(8)内に記憶された製造方法(V)からの事前選択を、前記要件プロファイル(A)に従って行うように設計されており、合金(L)及び/又は製造方法(V)の選択が、前記事前選択に基づいて行われる
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム(2)。
【請求項6】
前記分析ユニット(10)が、
前記選択された合金(L)及び前記選択された製造方法(V)を前記要件プロファイル(A)に関連付けることによって、データペアを生成する、
前記生成されたデータペアを前記少なくとも1つのメモリユニット(8)に記憶する、
前記要件プロファイル(A)に関連付けられた合金(L)及び前記要件プロファイル(A)に関連付けられた製造方法(V)を、前記メモリユニット(8)に記憶された要件プロファイル(A)が入力されたときに指定する
ように設計されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム(2)。
【請求項7】
非晶質特性を有する製造されるワークピース(4)のための合金(L)及び製造方法(V)を選択するための方法であって、
製造される前記ワークピース(4)の
要件プロファイル(A)を、入力ユニット(6)によって入力するステップであって、前記要件プロファイルが、製造される前記ワークピースの幾何学的及び/又は機械的及び/又は化学的特性を指定する、入力するステップ、
機械的及び/又は化学的及び/又は物理的パラメータを計算し、前記計算されたパラメータを記憶された情報データ(I)と比較するステップであって、前記記憶された情報データ(I)が、非晶質特性を有するワークピース(4)を生産するための複数の合金(L)の物理的及び/又は化学的及び/又は機械的特性に関する情報
と、製造方法(V)に関する情報とを含む、計算及び比較するステップ、
複数のワークピース(4)を、前記要件プロファイル(A)及び前記情報データ(I)に従ってシミュレートするステップ、
シミュレーションデータを、前記シミュレーションに基づいて作成するステップ、及び
前記シミュレートされたワークピースを、前記シミュレーションデータ及び前記要件プロファイル(A)に基づいて評価するステップ、
製造される前記ワークピース(4)のための合金(L)及び製造方法(V)を、前記評価に基づいて選択するステップ、
前記選択された合金(L)及び前記選択された製造方法(V)を出力するステップ
を含む方法。
【請求項8】
製造される前記ワークピース(4)の、前記要件プロファイル(A)によって指定される特性を計算する
ステップを更に含む
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記情報データ(I)が、
前記合金(L)の熱特性、
前記合金(L)の媒体抵抗、
化学的特性、
混入度に基づく非晶質性、
負荷依存時効現象、及び/又は
前記合金(L)の冷却挙動
から選択される少なくとも1つの物理的及び/又は化学的及び/又は機械的特性に関する情報を指定する、
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
記憶された合金(L)からの事前選択、及び/又は記憶された製造方法(V)からの事前選択を、前記要件プロファイル(A)に従って行う、
合金(L)及び/又は製造方法(V)を、前記事前選択に基づいて選択する
ことを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記選択された合金(L)及び前記選択された製造方法(V)を前記要件プロファイル(A)に関連付けることによって、データペアを生成する、
前記生成されたデータペアを記憶する、
記憶された要件プロファイル(A)に関連付けられた合金(L)、及び前記要件プロファイル(A)に関連付けられた製造方法(V)を、前記要件プロファイル(A)が既に記憶されている場合、出力する
ことを特徴とする、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
命令を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法が、少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときに、前記命令が、前記少なくとも1つのプロセッサに前記方法を実装させる、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
非晶質特性を有するワークピースを製造するための製造プラントであって、
製造される前記ワークピース(4)のための合金(L)及び製造方法(V)を選択するための、請求項1~6のいずれか一項に記載のシミュレーションシステム(2)と、
前記シミュレーションシステム(2)を使用してワークピース(4)を製造するように設計された製造ユニット(38)と
を備える製造プラント。
【請求項14】
前記製造ユニット(38)が、射出成形デバイスとして又は積層造形デバイスとして設計されている
ことを特徴とする、請求項13に記載の製造プラント。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の製造プラントを制御するための、非晶質特性を有するワークピース(4)を製造するための製造プラントを制御するための制御方法であって、
前記製造プラントが、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法を使用して選択された合金(L)及び製造方法(V)で動作する
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質特性を有する製造されるワークピースのための合金及び製造方法を選択するためのシミュレーションシステム及び方法、コンピュータ可読記憶媒体、非晶質特性を有するワークピースを製造するための製造プラント、並びに制御方法に関する。
【0002】
非晶質金属は、他の材料において実現されることがない物理的特性又は特性の組み合わせを有する新しい材料クラスである。
【0003】
「非晶質金属」という用語は、原子レベルで結晶構造を有さないが非晶質構造を有する金属合金を指す。金属にはまれである非晶質原子配列は、物理的特性の固有の組み合わせをもたらす。非晶質金属は概して、従来の金属よりも硬く、より耐食性があり、より強く、同時に高い弾性がある。粒界の非存在は、より少ない化学腐食表面をもたらし、したがって、金属ガラスは、より腐食しづらい。
【0004】
非晶質金属とも呼ばれるように、金属ガラスは、金属ガラスがCalifornia Institute of Technologyにおいて発見されて以来、広範な研究の主題である。年来、この材料クラスの加工性及び特性を改善し続けることが可能であった。第1の金属ガラスは、毎秒106ケルビン(K/秒)の範囲の冷却速度を生産に必要とした(2つの構成要素から構成されている)簡単な二元合金であった一方、より新しいより複雑な合金は、数K/秒の範囲の著しくより低い冷却速度でガラス状態に変換され得る。これは、プロセス管理及び生産され得るワークピースに著しく影響する。溶融物の結晶化が適用されなくなり溶融物がガラス状態で凝固する冷却速度は、臨界冷却速度と称される。臨界冷却速度は、系特有の変数であり、変数は、溶融物の組成に強く依存し、また、最大達成可能部品厚さを定義する。溶融物に蓄積された熱エネルギーは、システムによって十分に迅速に除去される必要があることを考慮すると、小さい厚さを有するワークピースのみが、高い臨界冷却速度を有する系から生産され得ることが明らかである。したがって、当初、金属ガラスは通常、溶融紡糸によって生産された。この場合、溶融物が、回転する銅ホイール上に取り去られ(stripped onto)、数百分の1ミリメートル~数十分の1ミリメートルの範囲の厚さを有する薄いストリップ又はフィルムの形態でガラスのように凝固する。著しくより低い臨界冷却速度を有する新しい複雑な合金の開発の結果として、他の生産方法を使用することがますます可能である。現在のバルクガラス形成金属合金は既に、溶融物を冷却された銅金型内に鋳造することによって、ガラス状態に変換され得る。この場合、実現可能な部品厚さは、合金に依存して、数ミリメートル~数センチメートルの範囲である。この種類の合金は、バルク金属ガラス(Bulk Metallic Glass、BMG)と称される。今日、多数のこのような合金系が知られている。
【0005】
バルク金属ガラスの細区分は通常、組成に基づいて行われ、重量で最も高い割合を有する合金元素は、基本要素(base element)と称される。既存の系は、例えば、金、白金及びパラジウムベースのバルク金属ガラスなどの貴金属ベースの合金、チタン又はジルコニウムベースのバルク金属ガラスなどの早期遷移金属ベースの合金、銅、ニッケル又は鉄をベースとする後期遷移金属ベースの系、また、例えばネオジム又はテルビウムなどの希土をベースとする系を含む。
【0006】
バルク金属ガラスは、典型的には、従来の結晶性金属と比較して、以下の特性、
より高い比強度、より高い比強度は、例えば、より薄い壁厚を可能にする、
より高い硬度、よって、表面は、特に耐スクラッチ性であることができる、
はるかにより高い弾性ストレッチ性及び弾力性、
熱可塑性成形性、並びに
より高い耐食性
を有する。
【0007】
高い強度及び凝固収縮の非存在などの金属ガラスの有利な特性に起因して、金属ガラス、特にバルク金属ガラスは、非常に興味深い建材であり、建材は、原理的には、成形後に必須である更なる加工ステップなしに、射出成形などの連続生産方法において部品を生産するのに好適である。溶融物からの冷却中の合金の結晶化を防止するために、臨界冷却速度が超えられなければならない。しかしながら、溶融物の体積がより大きいほど、溶融物の冷却がより遅くなる(より高い比強度、条件は、変化しないままである)。ある試料厚さが超えられた場合、合金が非晶質に凝固することができる前に、結晶化が起こる。
【0008】
金属ガラスの優れた機械的特性に加えて、固有の加工オプションがまた、ガラス状態からもたらされる。したがって、金属ガラスは、冶金溶融プロセスによってのみでなく、熱可塑性材料又はケイ酸塩ガラスと類似して比較的低い温度での熱可塑性成形によっても成形され得る。このために、金属ガラスは、最初に、ガラス転移点超で加熱されて、次いで、高い粘性の液体のように挙動し、高い粘性の液体は、比較的低い力で成形され得る。成形後に、材料は、ガラス転移温度未満で再び冷却される。
【0009】
非晶質金属を加工するときに、自然結晶化は、溶融物の急速冷却(溶融状態での凍結)によって防止され、このため、原子が結晶配列をとることができる前に、原子は、原子の移動性を失う。結晶性材料の多くの特性は、原子構造における欠陥によって、すなわち、いわゆる格子欠陥(空隙(gap)、変位(shifting)、粒界、相境界など)によって、影響又は決定される。
【0010】
急速冷却の結果として、材料の収縮は低減され、このため、より精密な部品幾何学的形状が、非晶質金属においてより達成され得る。塑性変形は、1.8%超の伸びでのみ起こる。比較すると、結晶性金属材料は、不可逆的な変形を、著しくより低い伸び(<0.5%)で示す。また、高い降伏強度と高い弾性伸びとの組み合わせは、高い弾性エネルギー蓄積能力をもたらす。
【0011】
しかしながら、部品に含まれた熱は、表面を介して環境に放出されなければならないため、使用される材料の熱伝導率は、冷却速度を物理的に制限する。これは、部品の製造性における制限、及び生産方法の適用性における制限をもたらす。
【0012】
ワークピースを非晶質金属から生産するための様々な方法が知られている。例えば、3D印刷などの積層造形法を使用してワークピースを生産することが可能である。ワークピースの非晶質特性は、走査速度、レーザビームのエネルギー、又は走査されるパターンなどのプロセスパラメータを調整することによって確実にされ得る。
【0013】
積層造形技法の1つの利点は、原理的には、任意の企図され得る幾何学的形状が実現され得ることである。更に、積層造形法の場合、有効は冷却が、ワークピースの層ごとの生産によって、並びに溶融物プールのサイズをレーザエネルギー及びレーザのスキャンパスを介して調整することによって確実にされ得るため、別個の冷却プロセスが必要でないことは、有利であり得る。
【0014】
積層造形法の欠点は、特に大きい寸法のワークピースについて、適用時の低いビルドアップ率である。更に、いくつかの用途について、すなわち、製造されるあるワークピースについて、高純度粉末材料が、積層造形プロセスのための出発材料として使用されなければならない。不純物が材料内に存在する場合、結晶化が、不純物の場所において起こり得、非晶質金属でない金属をもたらし、非晶質金属でない金属は、機械的及び化学的特性における劣化をもたらし得る。不純物に起因してワークピースの表面を仕上げる必要があり得、これは複雑である。加えて、積層造形は常に、ある粗さをワークピースの表面にもたらし、このため、ほとんどの場合、ワークピースの表面は、研削又はフライス加工によって仕上げられる必要がある。
【0015】
更なる生産可能性は、射出成形である。この場合、80g~120g以上の範囲のワークピース重量が、適用時に実現され得る。使用される材料は通常、誘導加熱によって約10秒~60秒以内で約900℃~1100℃に加熱され、均質化される。
【0016】
加熱後に、溶融材料は、パンチによって金型内に押圧される。金型が材料で完全に充填されているときに、金型内の材料が、材料融点超の温度を終始有するべきであることは、材料特性のために重要である。非晶質材料特性を達成するために、その後に、金型内の液体材料は、ガラス転移温度未満に急速に冷却されなければならない。
【0017】
射出成形における可能な幾何学的形状は、材料の冷却速度に起因して0.3mm~7.0mmの壁厚に制限されている。より大きい壁厚の場合、冷却速度は低すぎ、このため、材料がガラス転移温度未満に冷却される前に、結晶構造の形成が起こる。より小さい壁厚では、材料の冷却は、充填される長さに依存して迅速すぎ、金型が完全に充填される前に、材料は凝固する。
【0018】
材料に供給された熱の量が環境に十分に迅速に放出され得ることを、構築、寸法決め、合金材料の選択、又は生産方法の選択中などに事前に確実にするために、冷却挙動が、シミュレート及び分析され得る。
【0019】
独国特許出願公開第102015110591(A1)号には、例えば、鋳造アルミニウムベースの部品の材料特性を予測するためのデバイス及び製造製品が記載されている。この場合、コンピュータベースのシステムは、多数の計算モジュールを備え、計算モジュールは、モジュールが鋳造アルミニウムベースの部品に対応するデータを受信したときに、モジュールが材料の性能特徴を提供するように、プログラミングに関して互いに対話する。
【0020】
ここで、記載のデバイスは、合金を選択するようにのみ設計されており、製造方法を選択するように加えて設計されていないことは不利である。上記の詳細な説明のように、好適な合金及び好適な製造方法の選択は、非晶質金属の具体的な技術的知識を有さないユーザにとって困難である。
【0021】
欧州特許第3246831号には、複雑な部品の生産のためのスケーラブル及び予測3D印刷シミュレーションが、数値方法に基づいて記載されており、3D印刷シミュレーションにおいて、主に、印刷プロファイル、印刷時間、及び冷却能力が、局部加熱効果に基づいてシミュレートされる。部品の製造性分析、特に、部品の溶融状態及びその後の冷却に関する製造性分析は、実施されない。
【0022】
更に、独国特許出願公開第102006047806号には、金属ブランクを変換可能な鋼材料から熱間成形するモデルを、有限要素法によりシミュレートすることが開示されている。熱間成形シミュレーションでは、成形する鋼材料の機械的及び物理的特性が考慮されているのみでなく、特定の鋼材料の時間温度変換データセットの形態で方法に組み込まれた材料データが、複雑な熱機械結合シミュレーションの文脈において考慮されている。このようにして、関連する相組成に基づいて、決定された一時的な局所機械的特性値は、部品予後を改善するために及びプロセス最適化のために、失敗モデルに伝達され得る。
【0023】
したがって、独国特許出願公開第102006047806号には、変換可能な鋼材料からの金属ブランクの熱間成形を、有限要素法によりモデル化するためのシミュレーション方法が記載されている。この場合、一時的な局所機械的特性が焦点であり、例えば、鋼材料の局所及び一時的な相組成に基づく熱間成形シミュレーション中及び熱間成形シミュレーションの終了後の金属板の硬度及び物理的特性が焦点である。
【0024】
別の例は、国際公開第2018182513号から知られており、国際公開第2018182513号には、積層造形プロセスによって生産される物体の幾何学的変化を評価するための、コンピュータにより実装される方法が記載されており、方法において、この積層造形プロセス中に、結晶性材料が、粉末からバルク形態に変換され、プロセスにおいて、物体は、バルク形態から成形される。
【0025】
国際公開第2018182513号の方法は、
i.粉末のシミュレートされたケーキに埋め込まれた物体の有限要素モデルを含むシミュレーションドメインを準備することであって、有限要素モデルが、物体の有限要素と、粉末のシミュレートされたケーキの有限要素とを含む、準備すること、
ii.バルク結晶樹脂(resinable)材料の熱特性を、物体の有限要素のそれぞれに関連付けること、
iii.粉末結晶性材料の熱特性を、粉末のシミュレートされたケーキの有限要素のそれぞれに関連付けること、
iv.シミュレートされた第1の温度を有限要素のそれぞれに関連付けること、
v.有限要素モデルの有限要素分析を、シミュレートされた冷却条件下で実行することであって、シミュレートされた冷却条件が、シミュレートされた第2の温度をシミュレーション領域の少なくとも1つの境界に適用することを含み、シミュレートされた第2の温度が、シミュレートされた第1の温度よりも低い、実行すること
を含む。
【0026】
この場合、国際公開第2018182513号の有限要素分析は、以下、
i.シミュレートされたバルク結晶性材料のシミュレートされた結晶体積分率を、物体の有限要素のそれぞれについて決定すること、
ii.シミュレートされた結晶体積分率の関数として、シミュレートされた熱膨張係数を物体の有限要素のそれぞれについて決定することであって、結晶性材料の結晶相の熱膨張係数(<3~4)、及び結晶性材料の非晶質相の熱膨張係数、を決定すること、
iii.平衡状態が達せられるまで有限要素分析を実行すること
を含む。
【0027】
国際公開第2018182513号には、積層造形プロセスによって生産される部品の幾何学的変化を評価するための、コンピュータにより実装される方法が記載されている。ここで、体積における結晶化関連変化が焦点である。
【0028】
従来技術の記載された欠点から、目的は、非晶質特性を有する製造されるワークピースのための合金及び製造方法を簡単に選択するためのシミュレーションシステムをユーザに提供することである。
【0029】
本発明によれば、目的は、請求項1に記載の特徴を有するシミュレーションシステムによって達成される。有利な実施形態、展開及び変形形態は、従属請求項の主題を形成する。
【0030】
特に、目的は、非晶質特性を有する製造されるワークピースのための合金及び製造方法を選択するためのシミュレーションシステムによって達成され、システムは、製造されるワークピースについての要件プロファイルを入力するための入力ユニットを備える。
【0031】
更に、システムは、情報データを記憶するように設計された少なくとも1つのメモリユニットであって、情報データが、非晶質特性を有するワークピースを生産するための複数の合金物理的及び/又は化学的及び/又は機械的特性に関する情報を指定する、少なくとも1つのメモリユニットを備える。簡略さのために、1つのメモリユニットのみが、以下の説明の文脈において非限定的に言及されている。しかしながら、複数のメモリユニット、又は複数のパーティション若しくはモジュールを有するメモリユニットが提供されることも可能である。
【0032】
更に、情報データはまた、製造方法に関する情報を提供し、特に、このようなワークピースを製造するための製造方法に関する情報を提供する。
【0033】
加えて、シミュレーションシステムは、分析ユニットを備える。分析ユニットは、シミュレーションデータを作成するために、複数のワークピースを、要件プロファイル及び情報データに従ってシミュレートするように設計されている。更に、分析ユニットは、シミュレートされたワークピースを、シミュレーションデータ及び要件プロファイルに基づいて評価するように設計されている。
【0034】
分析ユニットは、製造されるワークピースのための合金及び製造方法を、評価に基づいて選択するように更に設計されている。この選択は、好ましくは、シミュレートされたワークピースの合金及び製造方法が選択されるように、すなわち、メモリユニットに記憶された製造方法で合金からシミュレートされたワークピースのこの合金及び製造方法が、生産されるワークピースのもの又は生産されるワークピースの要件プロファイルのものに実質的に対応する又は理想的には完全に対応するように、実施される。本出願の範囲内で、同一性は、製造されるワークピースの質量、体積、又は概してパラメータから1%、5%、10%、20%、25%、又は30%以下の偏差を有することを実質的に意味し得る。
【0035】
シミュレーションシステムはまた、選択された合金及び選択された製造方法をユーザのために出力するように設計された出力ユニットを備える。すなわち、出力ユニットは、選択された合金及び/又は選択された製造方法をユーザに通信する。
【0036】
したがって、本発明によるシミュレーションシステムは、非晶質特性を有する製造されるワークピースのための合金及び製造方法の選択を提供し、これにより、ワークピースのための好適な合金及び好適な製造方法が、ユーザの専門知識なしに指定され得る。したがって、要件プロファイルは、可能な限り最良に満たされ得る。
【0037】
一実施形態では、分析ユニットは、計算ユニットを備えることができ、計算ユニットは、製造されるワークピースの、要件プロファイルによって指定される特性を計算するように設計され得る。これらは、特に、製造されるワークピースの要件プロファイルから直接明らかでない特性であり得るが、好適な合金及び好適な製造方法の選択のために重要である特性であり得る。結果として、より大きい情報密度に起因して、好適な合金及び好適な製造方法のシミュレーション及びその後の選択が、より精密にされる。
【0038】
一実施形態では、分析ユニットは、第1のシミュレーションユニットを備えることができ、第1のシミュレーションユニットは、合金に依存して、並びに要件プロファイル及び計算された特性に従って、製造されるワークピースへの機械的負荷をシミュレートし、シミュレートされた機械的負荷に関する情報をシミュレーションデータに追加するように設計され得る。機械的負荷は、例えば、製造されるワークピースへの(必要とされる)剛軟度及び/又はねじれ抵抗又は負荷を意味すると理解され得る。代替として、機械的負荷はまた、製造されるワークピースの剛性などの機械的特性として理解され得る。
【0039】
更なる実施形態では、分析ユニットは、第2のシミュレーションユニットを備えることができ、第2のシミュレーションユニットは、合金に依存して、並びに要件プロファイル及び情報データに従って、製造されるワークピースの化学的特性をシミュレートし、シミュレートされた化学的特性に関する情報をシミュレーションデータに追加するように設計され得る。化学的特性は、特に、製造されるワークピースが酸及び/又は塩基に曝露されるときに、例えば、腐食的挙動又は媒体耐性であり得る。
【0040】
代替として又は加えて、更なる実施形態では、分析ユニットは、第3のシミュレーションユニットを備えることができる。第3のシミュレーションユニットは、ワークピースの製造を、少なくとも1つのメモリユニットに含まれた製造方法によって、要件プロファイルに従ってシミュレートするように設計され得る。この場合、上記のように、ワークピースは、シミュレートされ、ワークピースは、少なくとも1つのメモリユニットに含まれた製造方法で、シミュレートされたように生産される。シミュレートされた製造に関する情報はまた、上記の2つの実施形態のように、シミュレーションデータに追加され得る。
【0041】
ここでの利点は、情報データを増加させることと、情報データをより精密にすることと、したがって、情報データに関連する量を増加させることとにあることが分かり、よって、シミュレーションシステムは、好適な合金及び好適な製造方法の選択のために使用可能なより多くの情報を有し、したがって、より正確な選択が行われ得る。
【0042】
第1、第2、及び第3のシミュレーションユニットは、単一のユニットとし設計されてもよく、又は論理的に分割されてもよい。しかしながら、第1、第2、及び第3のシミュレーションユニットは、単一のデータ構造として、又はプログラムの1つ以上の関数として設計されてもよい。
【0043】
要件プロファイルは、好ましくは、製造されるワークピースの幾何学的及び/又は機械的及び/又は化学的特性を指定することができる。例えば、幾何学的特性は、製造されるワークピースの寸法及び/又は重量を意味すると理解され得る。特に、製造されるワークピースの重量は、例えば、好適な製造方法に影響する。例えば、80g~100gの間の重量を有するワークピースは、好ましくは、射出成形法によって生産され得、この上記の重量範囲から逸脱する質量を有するワークピースは、好都合には、3D印刷方法によって生産される。
【0044】
いくつかの製造方法及び/又はいくつかの合金はまた、製造されるワークピースの複雑な幾何学的構造について好ましく、他の合金及び/又は製造方法は、いくつかの幾何学的構造について不都合であり得る。しかしながら、機械的特性は、好ましくは、非網羅的に、製造されるワークピースの上記の機械的特性を意味すると理解され得る。
【0045】
製造されるワークピースの化学的特性はまた、上記の化学的特性として理解され得る。しかしながら、これはまた、例えば、選択される合金の品質、すなわち、例えば、具体的には、関連する合金の酸素含有量を意味するとして理解され得る。出発要素の品質への更により高い要求は、好ましくは、製造される大きいワークピース(例えば、Zrベースの合金の場合、2mm~6mm)の場合にあるため、この化学的特性は、好都合には、製造されるワークピースのサイズに関連して考慮される。製造されるより小さいワークピース(例えば、Zrベースの合金の場合、2mm未満)の場合、合金の品質及び特に酸素含有量は、しばしば、省コスト性に関して無視できるほどであり得る。更に、しかしながら、化学的特性はまた、合金の生体適合性を意味すると理解され得、合金の生体適合性は、特に、医療分野又は医療用途において反映される。例えば、特に、銅不含合金は、医療技術セクタにおいて有利であることが証明されている。上記の腐食的挙動に関して、また、いわゆる金属イオン放出に関して、例えば、発汗では、特に、ジルコニウム、チタン、又は白金ベースの合金が有利であることが証明されている。
【0046】
一実施形態では、したがって、情報データは、少なくとも1つの物理的及び/又は化学的及び/又は機械的特性に関する情報を指定することができる。特に、これらは、下記の特性群、
合金の熱特性、
合金の媒体耐性、
化学的特性、
混入度(酸素含有量)に基づく非晶質性、
負荷依存時効現象、及び/又は
合金の冷却挙動
である。
【0047】
特に、最後に言及された特性、すなわち、合金の冷却挙動は、好ましくは、選択される製造方法に関連し、上記の他の特性/特性群は、主に、製造されるワークピースに向けられている。メモリユニットは、例えば、データベースとして設計され得る。次いで、上記の特性は、例えば、データレコードとして、データベースに記憶可能であり得る又は記憶され得る。
【0048】
一実施形態では、加えて、情報データは、製造方法の製造ステップに関する情報を含むことができる。この場合、情報は、特に、加工される合金のパンチ速度及び/又は出発温度であり得る。しかしながら、製造方法の製造ステップに関する他のプロセス情報がまた、情報の一部分であり得る。したがって、特に、好適な製造方法の選択が、更に改善される。
【0049】
一実施形態では、分析ユニットは、メモリユニット内に記憶された事前選択合金、及び/又はメモリユニット内に記憶された製造方法からの事前選択を、要件プロファイルに従って行うように設計され得る。加えて、好適な合金及び/又は好適な製造方法は、この事前選択を使用して選択され得る。例えば、合金の上記の生体適合性などの化学的要件、また、機械的要件、例えば、耐摩耗性、硬度、及び電気的要件、及び/又は、また、磁気要件が、事前選択において考慮され得る。
【0050】
したがって、事前選択は、これらの上記の特性に基づいて、不適な合金又は製造方法が、その後の選択のためにもはや考慮されないため、ある合金及び/又は製造方法が、シミュレーションなしに既に除外され、したがって、シミュレーション労力が最小にされることを意味すると理解され得る。
【0051】
一実施形態では、分析ユニットは、選択された合金及び選択された製造方法を要件プロファイルに関連付けることによって、データペアを生成するように設計され得る。換言すれば、選択された合金及び選択された製造方法は、要件プロファイルに関連付けられ得、この関連付けは、データペアの形態でメモリユニットに記憶され得る。更に、この実施形態では、分析ユニットは、要件プロファイルに関連付けられた合金及び関連付けられた製造方法を、メモリユニットに記憶された要件プロファイルがユーザによって入力されたときに指定するように設計され得る。したがって、このような要件プロファイルが入力された場合、シミュレーションは省かれ得、好適な合金及び好適な方法が、直ちに提案及び出力される。
【0052】
ここでの利点は、著しく低減されたシミュレーション労力においてあることが分かる。同様に、シミュレーションシステム、並びに好適な合金及び/又は好適な製造方法の選択は、加速され得る一方、簡略化され得る。
【0053】
本出願の文脈において、非晶質特性を有する製造ワークピースのための合金及び製造方法を選択するための方法がまた、開示及び特許請求されており、方法は、
製造されるワークピースの要件プロファイルを、特に入力ユニットによって入力するステップ、
機械的及び/又は化学的及び/又は物理的パラメータを計算し、計算されたパラメータを記憶された情報データと比較するステップであって、記憶された情報データが、非晶質特性を有するワークピースを生産するための複数の合金の物理的及び/又は化学的及び/又は機械的特性に関する情報を含む、計算及び比較するステップ、
複数のワークピースを、要件プロファイル及び情報データに従ってシミュレートするステップ、
シミュレーションデータを、シミュレーションに基づいて作成するステップ、
シミュレートされたワークピースを、シミュレーションデータ及び要件プロファイルに基づいて評価するステップ、
製造されるワークピースのための合金及び製造方法を、評価に基づいて選択するステップ、
選択された合金及び選択された製造方法を出力するステップ
を含む。
【0054】
方法の一実施形態では、製造されるワークピースの、要件プロファイルによって指定される特性が計算され得る。
【0055】
一実施形態では、製造されるワークピースへの機械的負荷の合金依存シミュレーションが行われ得る。これは、要件プロファイル及び計算された特性に従って行われ得る。更に、シミュレートされた機械的負荷に関する情報が、シミュレーションデータに追加され得る。
【0056】
一実施形態では、加えて、製造されるワークピースの化学的特性は、合金に依存して、並びに要件プロファイル及び情報に従ってシミュレートされ得、これらのシミュレートされた化学的特性に関する情報は、シミュレーションデータに追加され得る。
【0057】
上記の実施形態の代替として又は上記の実施形態に加えて、ワークピースの製造は、記憶された製造方法によって、要件プロファイルに従ってシミュレートされ得る。次いで、シミュレートされた製造に関する情報が、シミュレーションデータに追加され得る。
【0058】
一実施形態では、情報データによって、少なくとも1つの物理的及び/又は化学的及び/又は機械的特性に関する情報が指定され得、特に、
合金の熱特性、
合金の媒体耐性、
化学的特性、
混入度に基づく非晶質性、
負荷依存時効現象、及び/又は
合金の冷却挙動
から選択され得る。
【0059】
これは、好適な合金及び/又は好適な方法を選択するために重要である特性が、少なくとも特定され、したがって、選択のための方法の基礎として使用されることを確実にする。
【0060】
更なる実施形態では、記憶された合金からの事前選択、及び/又は記憶された製造方法からの事前選択は、要件プロファイルに従って行われ得る。更に、この実施形態では、合金及び/又は製造方法の選択は、事前選択に基づいて行われ得る。
【0061】
一実施形態では、データペアが、選択された合金及び選択された製造方法を要件プロファイルに関連付けることによって生成され得る。次いで、生成されたデータペアは、メモリユニットに記憶され得る。
【0062】
メモリユニットに既に記憶された要件プロファイルが、ここで入力された場合、シミュレーションは、好ましくは、開始されず、むしろ、記憶された要件プロファイルに関連付けられた合金の出力、及び要件プロファイルに関連付けられた製造方法の出力がある。
【0063】
本発明によれば、目的はまた、命令を含むコンピュータ可読記憶媒体であって、方法が、少なくとも1つのプロセッサによって実行されたときに、命令が、少なくとも1つのプロセッサに方法を実装させる、コンピュータ可読記憶媒体によって達成される。方法は、非晶質特性を有する製造されるワークピースのための合金及び製造方法を選択するための上記の方法である。更に、非晶質特性を有するワークピースを製造するための製造プラントが、開示及び特許請求されており、製造プラントは、製造されるワークピースのための合金及び製造方法を選択するためのシミュレーションシステムを備える。シミュレーションシステムは、特に、本出願の文脈における上記のシミュレーションシステムである。更に、製造プラントは、シミュレーションシステムを使用してワークピースを製造するように設計された製造ユニットを備える。
【0064】
製造プラントの一実施形態では、製造ユニットは、射出成形デバイスとして又は積層造形デバイスとして設計され得る。ここで、積層造形デバイスは、例えば、3D印刷デバイスを意味すると理解され得る。結果として、製造プラントは、異なる要件に適合され得、特に、製造されるワークピースのサイズに関して適合され得る。
【0065】
加えて、非晶質特性を有するワークピースを製造するための製造プラントを制御するための制御方法が、開示及び特許請求されている。制御方法は、特に、上記の製造プラントを制御するために使用される。この場合、製造プラントは、合金及び製造方法で動作し、合金及び製造方法の両方が、特に、合金及び製造方法を選択するための上記の方法で選択される。
【0066】
シミュレーションシステムに関して言及された利点及び好ましい実施形態は、類似して、合金及び/又は製造方法を選択するための方法、コンピュータ可読記憶媒体、並びに製造プラント及び製造プラントの制御方法に伝達され得、逆も同様である。
【0067】
シミュレーションシステム及び製造プラントはまた、空間的に互いに分離するように配置され得る。この場合、シミュレーションシステム及び製造プラントは、次いで、通信ネットワークを介して、例えば、インターネットを介して、互いに通信することができる。好適な合金の出力及び好適な製造方法の出力、並びに/又は要件プロファイルの入力は、例えば、ウェブサイトにおいて、又はAPIなどのプログラミングインターフェースを介して行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
例示的な実施形態を参照して、本発明について、以下で更に詳細に説明する。図面において、
【
図1】非晶質特性を有する製造されるワークピースのための合金及び製造方法を選択するための概略的なシミュレーションシステムを示す図である。
【
図3】ツールの概略図である。
図1は、概略的に示されたシミュレーションシステム2を示す。シミュレーションシステム2は、非晶質特性を有する製造されるワークピース4(
図4を参照されたい)のための合金及び製造方法を選択するように設計されている。
【0069】
このために、
図1によるシミュレーションシステム2は、入力ユニット6を備え、入力ユニット6は、製造されるワークピース4についての要件プロファイルAを入力するために使用される。これは、ユーザが、製造されるワークピース4の必要とされる特性を、要件プロファイルAの形態でシミュレーションシステム2に提供する、又は要件プロファイルAをシミュレーションシステム2に供給することを可能にする。
【0070】
更に、シミュレーションシステム2は、情報データIを記憶するように設計された少なくとも1つのメモリユニット8を備え、情報データIは、ワークピース4を生産するための複数の合金Lの物理的及び/又は化学的及び/又は機械的特性に関する情報と、製造方法Vに関する情報とを指定する。このために、メモリユニット8は、例えば、複数のパーティションを有してもよく、及び/又は複数の部分において設計されてもよい、すなわち、複数のサブメモリユニットから構成されてもよい。更に、メモリユニット8は、分析ユニット10に通信可能に及び双方向に接続されている。
【0071】
この場合、分析ユニット10は、複数のワークピース4を、要件プロファイルA及び情報データIに従ってシミュレートするように設計されている。これは、シミュレーションデータを作成するために使用される。更に、分析ユニット10は、シミュレートされたワークピースを、シミュレーションデータ及び要件プロファイルAに基づいて評価するように構成されており、製造されるワークピース4の要件プロファイルAに関して特に好適である合金L及び製造方法Vの前に、評価に基づいて選択される。
【0072】
上記の方法ステップを実現するために、分析ユニット10は、計算ユニット12を備え、製造されるワークピースの、要件プロファイルAによって指定される特性が、計算ユニット12によって計算される。更に、分析ユニット10は、第1のシミュレーションユニット14を備える。第1のシミュレーションユニット14によって、製造されるワークピース4への機械的負荷のシミュレーションが、要件プロファイルA及び計算された特性に基づいて、並びに要件プロファイルA及び計算された特性に従って行われる。その後に、シミュレートされた機械的負荷に関する情報が、シミュレーションデータに追加される。
【0073】
類似して、分析ユニット10はまた、第2のシミュレーションユニット16と、第3のシミュレーションユニット18とを備える。製造されるワークピース4の化学的特性のシミュレーションは、第2のシミュレーションユニット16によって、要件プロファイルA及び情報データIに従って実施される。第3のシミュレーションユニット18によって、ワークピース4の製造は、メモリユニット8に含まれた製造方法Vによってシミュレートされる。その後に、第2のシミュレーションユニット16によって提供された化学的特性に関する情報、及び第3のシミュレーションユニット18によって生成されたシミュレートされた製造に関する情報の両方は、シミュレーションデータに追加され、分析ユニット10による評価の一部分として、好適な合金L及び好適な製造方法Vの選択のために使用される。選択及び評価は、要件プロファイルAによって定義された、製造されるワークピース4の特性を満たす又は少なくとも実質的に満たす合金L及び製造方法Vが選択されるように、実施される。複数の合金L及び/又は複数の製造方法Vが考えられる場合、分析ユニット10は、より高いレベルの優先性に関して、例えば省コスト性に関して最も好適である合金L及び製造方法Vを選択する。
【0074】
分析ユニット10による好適な合金L及び好適な製造方法Vの選択後に、選択された合金L及び選択された製造方法Vは、出力ユニット20によって出力される。出力ユニット20は、例えば、光出力ユニット10であり得、光出力ユニット10において、出力が、画面において行われる。
【0075】
一実施形態によれば、分析ユニット10は、選択された合金L及び選択された製造方法Vを要件プロファイルに関連付けることによって、データペアを生成するように設計されている。この場合、生成されたデータペアは、メモリユニット8に記憶される。メモリユニット8に記憶された要件プロファイルAが、ここで入力された場合、要件プロファイルAに関連付けられた合金L、及び要件プロファイルAに関連付けられた製造方法Vは、シミュレーションが行われずに指定される。
【0076】
一実施形態では、シミュレーションシステム2が、好適な合金L及び/又は好適な製造方法Vの選択を最適化するための人工ニューラルネットワークを有することが企図され得る。
【0077】
図2は、非晶質金属(Amorphous Metal、AMM)射出成形プラントとして設計された製造ユニット38の概略図を示す。製造ユニット38は、ツール40内の金型と、溶融チャンバ42とを備える。溶融チャンバ42には、非晶質凝固合金(ブランク)44の固体合金セグメントが、ロボットによって供給され、溶融チャンバ42は、誘導コイル46内に中央に配置されている。ブランク44(図において、「44」の代わりに「4」)は、溶融チャンバ42内で、加熱要素によって加熱され、特に、誘導コイル46によって生成された誘導電磁界によって加熱される。ブランク44は、非晶質凝固合金の固体合金セグメントである。合金セグメント44は、例えば、ある量のパラジウム、白金、ジルコニウム、チタン、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニオブ、ケイ素及び/又はイットリウムを含む。
【0078】
ブランク44は、加熱要素又は誘導コイル46によって溶融し、このため、ブランク44は、溶融形態で存在する。好ましくは、ブランク44は、1050℃の温度に加熱される。溶融材料は、プランジャ48によってツール40内に射出される。
【0079】
図3は、射出成形ツール40の概略的な構造を示す。成形チャンバ52は、ツール40の成形チャンバ52内に通じる1つの開口部50又は複数の開口部50によって、溶融物で充填される。成形チャンバ52は、生産されるワークピース4の陰性モデルとして設計されている。
図3の例示的な実施形態では、開口部50が、液体材料を成形チャンバ52内に案内するために使用され得ることが提供されている。均一な温度分布を達成するために、及び溶融物の乱流を低減するために、成形チャンバ52を充填するための複数の湯口を使用することが有利であり得る。均一な温度分布及び少数の乱流は、より良好な冷却動作、均質な冷却、したがって、均一な非晶質材料特性をもたらす。
【0080】
液体材料は、結晶化を防ぐために、成形チャンバ52内で急速に冷却されなければならない。液体材料の冷却は、生産される部品又はワークピース4の幾何学的形状に大きく依存する。
【0081】
本発明は、上記の例示的な実施形態に限定されない。むしろ、本発明の他の変形形態がまた、本発明の主題から逸脱することなく、当業者によって上記の例示的な実施形態から導出されてもよい。特に、例示的な実施形態に関連して記載の全ての個々の特徴はまた、本発明の主題から逸脱することなく、別様に互いに組み合わされてもよい。
【0082】
符号の説明
2 シミュレーションシステム
4 ワークピース
6 入力ユニット
8 メモリユニット
10 分析ユニット
12 計算ユニット
14 第1のシミュレーションユニット
16 第2のシミュレーションユニット
18 第3のシミュレーションユニット
20 出力ユニット
22 人工ニューラルネットワーク
24 入力データ
26 特徴検出器
28 第1の折り目
38 製造ユニット
40 ツール
42 溶融チャンバ
44 非晶質凝固合金のブランク
46 誘導コイル
48 プランジャ
50 開口部
52 成形チャンバ
A 要件プロファイル
I 情報データ
L 合金
V 製造方法