(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】標的タンパク質への検出可能なタグのCRISPR/Cas制御組み込みに基づく細胞の選択方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20240716BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240716BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240716BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240716BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240716BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12N15/09 110
C12N5/10 ZNA
C12N15/62 Z
C07K16/00
(21)【出願番号】P 2023024776
(22)【出願日】2023-02-21
(62)【分割の表示】P 2021538210の分割
【原出願日】2019-12-20
【審査請求日】2023-03-20
(32)【優先日】2018-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ハース アレクサンダー
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】Parasites and Vectors,2017年,10:595
【文献】ELIFE,2018年,7:e35069
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12Q 1/00-3/00
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体がその標的タンパク質に関してアゴニスト性またはアンタゴニスト性または不活性であるかどうかを決定するまたは特徴付けるための方法であり、
マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を発現する細胞であって、
a)細胞に、i)第1の選択試薬に対する耐性を付与する核酸を含む、Cas9をコードするプラスミド、ii)1)第2の選択試薬に対する耐性を付与する第1の核酸、および2)該マーカータンパク質をコードし、かつ該細胞内の組込み部位に相同な核酸が各3’側および5’側に隣接する第2の核酸を含む環状ドナープラスミドであって、該隣接する相同な核酸のうちの1つが該標的タンパク質の末端コード配列に相同である、環状ドナープラスミド、iii)適切なcrRNA、ならびにiv)適切なtracrRNAをトランスフェクトすること、
b)該第1および該第2の選択試薬の存在下で該細胞を培養すること、および
c)工程b)の条件下で細胞分裂/増殖を行う細胞を選択し、それにより、マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を発現する細胞を提供/生成すること
により得られた前記細胞を、
試験する抗体とインキュベートする工程、
該試験される抗体の存在下で該内在性標的タンパク質の生物活性がどのように変化するかを決定し、該抗体とのインキュベーションにより該生物活性が増加する場合、アゴニスト性として、および/または該抗体とのインキュベーション時に該生物活性が減少する場合、アンタゴニスト性として、および/または該抗体とのインキュベーション時に該生物活性が変化しない場合、不活性として、該抗体を特徴付ける工程
を含む、方法。
【請求項2】
第1の工程として、前記
内在性標的タンパク質の生物活性を測定する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
標的タンパク質に特異的に結合する抗体を選択するための方法であり、
マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を発現する細胞であって、
a)細胞に、i)第1の選択試薬に対する耐性を付与する核酸を含む、Cas9をコードするプラスミド、ii)1)第2の選択試薬に対する耐性を付与する第1の核酸、および2)該マーカータンパク質をコードし、かつ該細胞内の組込み部位に相同な核酸が各3’側および5’側に隣接する第2の核酸を含む環状ドナープラスミドであって、該隣接する相同な核酸のうちの1つが該標的タンパク質の末端コード配列に相同である、環状ドナープラスミド、iii)適切なcrRNA、ならびにiv)適切なtracrRNAをトランスフェクトすること、
b)該第1および該第2の選択試薬の存在下で該細胞を培養すること、および
c)工程b)の条件下で細胞分裂/増殖を行う細胞を選択し、それにより、マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を発現する細胞を提供/生成すること
により得られた前記細胞を、
試験される1つまたは別々に2つ以上の抗体とインキュベートする工程
該試験される抗体の存在下で、該内在性標的タンパク質の生物活性が変化するかどうかを決定し、該抗体とのインキュベーションによって該生物活性が変化する場合は該抗体を選択する工程
を含む、方法。
【請求項4】
前記細胞が、すべてのプラスミドおよび核酸を同時にトランスフェクトされる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程c)において、細胞分裂を行いかつ前記融合タンパク質が検出された細胞が選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)およびc)が、
b)1)前記第1の選択試薬のみの存在下で、または前記第2の選択試薬のみの存在下で前記細胞を培養する工程、
2)工程1)の条件下で分裂/増殖する細胞を選択する工程、
3)工程2)で選択された細胞を、工程1)で使用しなかった選択試薬の存在下で培養する工程、
c)工程b)3)の条件下で細胞分裂/増殖を行う細胞を選択し、それにより、マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を発現する細胞を提供/生成する工程
である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2の選択試薬が、ピューロマイシンおよびハイグロマイシンBであるか、あるいはその逆である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ハイグロマイシンBの最終濃度が50μg/mLである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ピューロマイシンの最終濃度が2μg/mLである、請求項7から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞内在性標的タンパク質が可溶性タンパク質または膜結合性タンパク質である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マーカータンパク質(タグ)の挿入可能部位が複数存在する場合、該マーカータンパク質をコードする核酸が、より多くのかつ/またはより特異的なgDNA結合部位を含む部位に挿入される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が哺乳動物細胞である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸がコードするマーカータンパク質が、前記
内在性標的タンパク質の開始コドンの直後のN末端に挿入される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
i)前記マーカータンパク質が、前記標的タンパク質のN末端に挿入され、
ii)該マーカータンパク質をコードする核酸が、前記融合タンパク質のmRNAにおいて、該標的タンパク質の最初のコドンの直前(3’側)になるように、前記内在性
標的タンパク質の遺伝子座に挿入され、かつ
iii)前記3’側に隣接する核酸が、該標的タンパク質をコードする核酸の開始コドンを含む、または/かつ前記5’側に隣接する核酸が、該標的タンパク質のN末端と相同である、
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
4~10個のアミノ酸長のリンカータンパク質が、前記マーカータンパク質と前記標的タンパク質との間に挿入される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記核酸がコードするマーカータンパク質が、前記
内在性標的タンパク質の開始コドンの直後のN末端に挿入され、かつ前記3’側に隣接する核酸が、前記標的タンパク質をコードする核酸の開始コドンを含み、かつ前記5’側に隣接する核酸が、該標的タンパク質のN末端と相同であるか、または
、
前記核酸がコードするマーカータンパク質が、前記内在性標的タンパク質の最終コドンの直後のC末端に挿入され、かつ前記5’側に隣接する核酸が、前記標的タンパク質をコードする核酸の最初のコドンを含み、かつ前記3’側に隣接する核酸が、該標的タンパク質のC末端と相同である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記マーカータンパク質をコードする核酸が、開始コドンを含まない、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記マーカータンパク質が、蛍光マーカータンパク質GFP(緑色蛍光タンパク質またはeGFP(強化緑色蛍光タンパク質)である、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記マーカータンパク質がMycタグである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記5’側に隣接する相同な核酸が、挿入部位の上流の配列の
1000ヌクレオチドを含み、かつ前記3’側に隣接する相同な核酸が、挿入部位の下流の配列の
1000ヌクレオチドを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内在性タンパク質を標識された形態で発現する細胞を生成するための、細胞DNAへの核酸の非治療的(インビトロ)標的組み込み、およびその応用の技術分野にある。
【背景技術】
【0002】
CRISPR/Cas技術は、近年、自然科学者の間で急速に人気が高まっている(1)。1987年に大腸菌(Escherichia coli)で発見されたが、CRISPR遺伝子の機能は、2007年のずっと後になるまで説明されなかった(2,3)。2012年に、Jennifer DoudnaとEmmanuelle Charpentierによって完全な機構が解読され、既存の遺伝子工学ツール(4)の優れた代替手段として提示された。ヒト細胞におけるCRISPR/Casベースのゲノム編集に関する最初の論文は、2013年にFeng Zhang(5)によって開示された。
【0003】
新規および/または未知の抗原の研究における一般的な問題は、市場から入手可能な特異的抗体がないことである。このことは、発現または細胞局在の観点から特徴付けを複雑にする。
【0004】
通常、調査対象の抗原にはタグが付与されており、細胞内で組換え生成されている。発現はウイルスプロモーターの制御下で発生し、抗原の過剰発現につながるため、実験では歪んだデータや不正確なデータがしばしば生ずる。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、細胞を提供するための新しい方法であり、これは、例えば、薬理学的に興味深い細胞タンパク質をマーカータンパク質との融合タンパク質、すなわち、タンパク質の検出可能なラベルとして発現する。このような細胞により、この細胞タンパク質の研究、ならびにこのタンパク質が細胞内または細胞表面、すなわち、その自然環境で直接関与する代謝プロセスの研究が可能となる。したがって、標識されたタンパク質は、タンパク質がマーカーとの融合タンパク質として細胞中に組換え導入される場合に一般的に発生する、自然条件下でその本来の遺伝子座から発現される、すなわち、タンパク質の自然発現レベルに関して過剰発現または過小発現はない。
【0006】
本発明による方法によって得られた細胞は、とりわけ、内在性標的タンパク質の生物活性を修飾する抗体の同定および選択に使用することができる。
【0007】
したがって、本発明の目的は、細胞内または細胞表面上で直接薬学的に興味深いタンパク質を研究するための新しい方法であり、タンパク質は、マーカータンパク質への融合によって、細胞内でその内在性遺伝子座で修飾されている。
【0008】
本明細書に記載されている発明は、CRISPR/Cas9技術を使用することにより、細胞内で直接的に、タンパク質の内在性遺伝子座において直接的に、タンパク質を検出可能なラベルまたはタグにコンジュゲートさせることが可能であり、それにより、改変細胞においてタンパク質の天然の発現レベルが得られる/得ることができる、という発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0009】
本明細書に記載されている発明は、Cas9ヌクレアーゼおよびドナープラスミドの抗生物質媒介二重選択が、マーカータンパク質(タグ)のノックインに最も適しているという発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0010】
本明細書に記載されている発明は、線状化形態のドナープラスミドを使用する場合よりも、環状構造のドナープラスミドを使用することにより、著しく高い編集率が達成できるという発見に少なくとも部分的に基づいている。
【0011】
本発明による方法において、第1の耐性カセット(例えば、ピューロマイシン耐性カセット)を含むCas9をコードするプラスミドは、修復テンプレートとしての第2の耐性カセット(例えば、ハイグロマイシンB耐性カセット)を含む環状ドナープラスミド、ならびに適切な合成crRNAおよびtracrRNAと共にトランスフェクトされる。選択は、両方の耐性に対する二重選択であり、例えば、ドナープラスミドに対する耐性にはハイグロマイシンBを、Cas9プラスミドへの耐性にはピューロマイシンを使用した。
【0012】
本発明の一態様は、マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を当該標的タンパク質の細胞内在性遺伝子座から発現する細胞を提供/生成するための(インビトロの)方法であり、方法は、次の手順で構成される。
a)i)第1の選択試薬に対する耐性を付与する核酸を含む、Cas9をコードするプラスミド、ii)a)第2の選択試薬に対する耐性を付与する第1の核酸と、b)マーカータンパク質をコードする第2の核酸とを含む、環状ドナープラスミドであって、細胞内の組込み部位に相同な核酸が該第2の核酸の3’側および5’側に隣接しており、該隣接する相同な核酸のうちの1つが標的タンパク質の末端コード配列に相同である、環状ドナープラスミド、iii)crRNA、ならびにiv)tracrRNAを、細胞にトランスフェクトする工程、
b)第1および第2の選択試薬の存在下で細胞を培養する工程、ならびに
c)工程b)の条件下で細胞分裂/増殖を行う細胞を選択し、それによりマーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を発現する細胞を提供/生成する工程
を含む。
【0013】
本発明のさらなる態様は、抗体がその標的分子に関してアゴニスト性またはアンタゴニスト性(または不活性)であるかどうかを決定/特徴付けるための(インビトロの)方法であり、方法は、
- 任意選択的に、標的タンパク質の生物活性を測定する工程と、
- マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を発現する、本発明による方法によって得られた細胞を、試験する抗体とインキュベートする工程と、
- 試験される抗体の存在下で内在性標的タンパク質の生物活性がどのように変化するかを決定し、抗体とのインキュベーションにより生物活性が増加する場合、その抗体をアゴニスト性として、および/または抗体とのインキュベーション時に生物活性が減少する場合、アンタゴニスト性(および/または抗体とのインキュベーション時に生物活性が変化しない場合は不活性)として特徴付ける工程と、を含む。
【0014】
本発明の別の態様は、標的分子に特異的に結合する抗体を選択するための(インビトロの)方法であり、方法は、
- マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を発現する、本発明による方法によって得られた細胞を、試験される1つまたは別々に2つ以上の抗体とインキュベートする工程と、
- 試験される抗体の存在下で、内在性標的タンパク質の生物活性が変化するかどうかを決定し、抗体とのインキュベーションによって生物活性が変化する場合は抗体を選択する工程と、を含む。
【0015】
好ましい実施形態において、細胞は、すべてのプラスミドおよび核酸を同時にトランスフェクトされる。
【0016】
一実施形態では、工程c)において、細胞分裂を行いかつ融合タンパク質が検出された細胞が選択される。
【0017】
好ましい一実施形態において、工程b)およびc)は、次の工程:
b)1)第1の選択試薬のみの存在下または第2の選択試薬のみの存在下で細胞を培養する工程、
2)工程1)の条件下で分裂/増殖する細胞を選択する工程、
3)工程2)で選択された細胞を、工程1)で使用しなかった選択試薬の存在下で培養する工程、
c)工程b)3)の条件下で細胞分裂/増殖を行う細胞を選択し、それによりマーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を発現する細胞を提供/生成する工程、
である。
【0018】
一実施形態において、第1および第2の選択試薬は、ネオマイシン/G418(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ)、ヒスチジノール(ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ)、ハイグロマイシンB(ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、チミジンキナーゼ、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、ブラスチシジン、ピューロマイシン、ゼオシン、およびミコフェノール酸からなる群から選択される。好ましい一実施形態において、第1および第2の選択試薬はピューロマイシンおよびハイグロマイシンBであるか、あるいはその逆である。
【0019】
好ましい一実施形態において、ハイグロマイシンBの最終濃度は50μg/mLである。
【0020】
好ましい一実施形態において、ピューロマイシンの最終濃度は2μg/mLである。
【0021】
一実施形態において、細胞内在性標的タンパク質は可溶性タンパク質または膜結合性タンパク質である。
【0022】
一実施形態において、マーカータンパク質(タグ)の挿入可能部位が複数存在する場合、マーカータンパク質をコードする核酸は、より多くのかつ/またはより特異的なgDNA結合部位を含む部位に挿入される。
【0023】
好ましい一実施形態において、細胞は哺乳動物細胞である。
【0024】
一実施形態において、マーカータンパク質は、内在性標的タンパク質のC末端またはN末端に導入される。好ましい一実施形態において、核酸がコードするマーカータンパク質は、細胞内在性タンパク質の開始コドンの直後のN末端に挿入される。
【0025】
一実施形態において、
i)マーカータンパク質が、標的タンパク質のN末端に挿入され、
ii)マーカータンパク質をコードする核酸が、それが融合タンパク質のmRNAにおいて標的タンパク質の最初のコドンの直前(3’側)に位置するように、内在性遺伝子座に挿入され、かつ
iii)3’側に隣接する核酸が、標的タンパク質をコードする核酸の開始コドンを含み、または/かつ5’側に隣接する核酸が、標的タンパク質のN末端と相同である。
【0026】
一実施形態において、最大25アミノ酸長のリンカータンパク質が、マーカータンパク質と標的タンパク質との間に挿入される。好ましい一実施形態において、リンカータンパク質は、4~10個のアミノ酸残基を含む。
【0027】
一実施形態において、核酸がコードするマーカータンパク質は、細胞内在性タンパク質の開始コドンの直後のN末端に挿入される。この実施形態において、3’隣接核酸が、標的タンパク質をコードする核酸の開始コドンを含み、かつ5’隣接核酸が、標的タンパク質のN末端と相同であるか、またはその逆である。
【0028】
好ましい一実施形態において、マーカータンパク質をコードする核酸は、開始コドンを含まない。
【0029】
一実施形態において、マーカータンパク質は蛍光マーカータンパク質である。一実施形態において、蛍光マーカータンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、TagBFP、mTagBFP、mTagBFP2、Azurite、EBFP2、mKalama1、Sirius、Sapphire (H9-40)、T-Sapphire、ECFP、Cerulean、SCFP3A、mTurquoise (improved SCFP3A)、mTurquoise2、monomeric Midoriishi-Cyan、TagCFP、mTFP1、EGFP、Emerald、Superfolder GFP、Monomeric Azami Green、TagGFP2、mUKG、mWasabi、Clover、mNeonGreen、EYFP、Citrine、Venus、SYFP2、TagYFP、monomeric Kusabira orange、mKOκ、mKO2、mOrange、mOrange2、mRaspberry、mCherry、mStrawberry、mTangerine、tdTomato、TagRFP、TagRFP-T、mApple、mRuby、mRuby2、およびUnaGからなる群から選択される。一実施形態において、蛍光マーカータンパク質はGFPである。好ましい一実施形態において、蛍光マーカータンパク質はeGFP(強化緑色蛍光タンパク質)である。
【0030】
一実施形態において、マーカータンパク質はMycタグである。
【0031】
好ましい一実施形態において、3’および5’に隣接する相同核酸は、約1000ヌクレオチドの長さを有する(5’に隣接する相同核酸は挿入部位の上流の配列の約1000ヌクレオチドを含み、3’に隣接する相同核酸は挿入部位の下流の配列の約1000ヌクレオチドを含む。)。
[本発明1001]
マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を該標的タンパク質の内在性遺伝子座から発現する細胞を生成または提供するための方法であって、
a)細胞に、
i)第1の選択試薬に対する耐性を付与する核酸を含む、Cas9をコードするプラスミド、
ii)
a)第2の選択試薬に対する耐性を付与する第1の核酸、および
b)該マーカータンパク質をコードする第2の核酸
を含む環状ドナープラスミドであって、該細胞内の組込み部位に相同な核酸が該第2の核酸の3’側および5’側に隣接しており、該隣接する相同な核酸のうちの1つが該標的タンパク質の末端コード配列に相同である、環状ドナープラスミド、
iii)crRNA、
ならびに
iv)tracrRNA
をトランスフェクトする工程と、
b)該第1および第2の選択試薬の存在下で該細胞を培養する工程と、
c)工程b)の条件下で細胞分裂を行う細胞を選択し、それにより、マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を発現する細胞を提供する工程と
を含む、方法。
[本発明1002]
工程a)の細胞が、すべてのプラスミドおよび核酸を同時にトランスフェクトされる、本発明1001の方法。
[本発明1003]
工程c)において、細胞分裂を行いかつ前記融合タンパク質が検出された細胞が選択される、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
工程b)およびc)が、
b)1)前記第1の選択試薬のみ、または前記第2の選択試薬のみの存在下で前記細胞を培養する工程、
2)工程1)の条件下で細胞分裂を行う細胞を選択する工程、
3)工程2)で選択された細胞を、工程1)で使用しなかった選択試薬の存在下で培養する工程、
c)工程b)3)の条件下で細胞分裂を行いかつ前記融合タンパク質が検出された細胞を選択し、それにより、マーカータンパク質と細胞内在性標的タンパク質との融合タンパク質を該標的タンパク質の内在性遺伝子座から発現する細胞を提供する工程
である、本発明1001から1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
前記選択試薬が、ピューロマイシンおよびハイグロマイシンBである、本発明1001から1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
工程b)または工程b)1)およびb)3)において、ハイグロマイシンBの最終濃度が50μg/mLであり、ピューロマイシンの最終濃度が2μg/mLである、本発明1005の方法。
[本発明1007]
前記マーカータンパク質をコードする核酸の挿入可能部位が複数存在する場合、該マーカータンパク質をコードする核酸が、より多くのかつ/またはより特異的なgDNA結合部位を含む部位に挿入される、本発明1001から1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記細胞が哺乳動物細胞である、本発明1001から1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
i)前記マーカータンパク質が、前記標的タンパク質のN末端に挿入され、
ii)該マーカータンパク質をコードする核酸が、前記融合タンパク質のmRNAにおいて、該標的タンパク質の最初のコドンの直前(3’側)になるように、前記内在性遺伝子座に挿入され、かつ
iii)前記3’側に隣接する核酸が、該標的タンパク質をコードする核酸の開始コドンを含む、または/かつ前記5’側に隣接する核酸が、該標的タンパク質のN末端と相同である、
本発明1001から1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記マーカータンパク質をコードする核酸が、開始コドンを含まない、本発明1001から1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
前記マーカータンパク質が、蛍光マーカータンパク質である、本発明1001から1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記蛍光マーカータンパク質が、緑色蛍光タンパク質(GFP)である、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記3’側および5’側に隣接する相同な核酸が、約1000ヌクレオチドのサイズを有する、本発明1001から1012のいずれかの方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の特定の態様の説明
定義
CRISPR:クラスタ化され規則的に間隔を置いた短鎖パリンドローム反復(Clustered Regularly interspaced Short Palindromic Repeats);一定の間隔でグループ化された短いパリンドローム反復。
【0033】
CASタンパク質:CRISPR関連タンパク質;リボヌクレアーゼ活性を有し、特定のRNA配列に結合できる。
【0034】
CAS9: エンドヌクレアーゼCas9;RNA配列
(crRNA反復)(SEQ ID NO:34)に結合し、そこでDNAを切断する。
【0035】
crRNA:crRNA反復配列と、crRNAスペーサー配列とからなり;特定の二次構造を有し;crRNAはCas9に結合し、Cas9の構造変化を誘導し、それにより、標的DNAは、crRNAスペーサー(標的DNAに相補的)によって結合でき;crRNAスペーサー配列を交換することにより、標的DNAを変更することができ(標的DNAの相補的RNA配列に);crRNA反復は20ヌクレオチドで構成され;PAMモチーフに隣接する12ヌクレオチドは、結合特異性に極めて重要である。
【0036】
PAMモチーフ:プロトスペーサー隣接モチーフ;プロトスペーサーに隣接するモチーフ;配列NGG;標的DNA内;標的DNAの切断は、PAMの3ヌクレオチド前に行われる。
【0037】
tracrRNA:トランス作用CRISPR RNA;crRNAに部分的に相補的であり;RNA二重らせんを形成し;RNaseIIIによる活性化;標的DNAに結合し;結合部位の近くでエンドヌクレアーゼ機能が切断される。
【0038】
sgRNA:シングルガイドRNA;crRNAとtracerRNAとを含む単一のRNA鎖。
【0039】
遺伝子座:染色体上の遺伝子の位置;ゲノムにおける遺伝子の位置;遺伝子の位置。
【0040】
内在性:細胞内で自然に発生し;細胞によって自然に生成され;内在性遺伝子座/細胞内在性遺伝子座:細胞内に自然に発生する遺伝子座。
【0041】
3’隣接配列:塩基配列の3’末端(下流、下方)に位置する配列。
【0042】
5’隣接配列:塩基配列の5’末端(下流、下方)に位置する配列。
【0043】
ドナー配列:5’隣接配列-標的配列-3’隣接配列。
【0044】
ドナープラスミド:ドナー配列を含むプラスミド。
【0045】
隣接するヌクレオチド配列:挿入される配列の前後にある核酸の配列セグメント(=標的配列)。
【0046】
CRISPR/Cas9技術
天然のCRISPR/Casシステムは、ウイルスの侵入者(1,6)に対する適応免疫防御の一部として、細菌の約40%と古細菌の90%に見られる。CRISPR (クラスター化された規則的に間隔をあけた短いパリンドローム反復(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)は、特定のスペーサー配列によって定期的に中断される配列の短い繰り返しである。ゲノムでは、この遺伝子座はCRISPR関連遺伝子(略してCas)に隣接している。これらは、とりわけヘリカーゼとヌクレアーゼ(1,7)をコードする。
【0047】
CRISPR/Cas9を使用した防御機構は、化膿連鎖球菌の例を使用して次のように説明できる:侵入する外来性DNAのプロトスペーサー配列は、天然CRISPR遺伝子座に統合される。この領域が翻訳されるとプレ-crRNA(pre-CRISPR RNA)が生成され、tracrRNA(トランス活性化crRNA)との塩基対形成によって複合体を形成する。これは、とりわけRNase IIIによってさらに処理され、ガイドRNA(gRNA)として機能するcrRNA:tracrRNA二本鎖がもたらされる。gRNAは、侵入する外来性DNAに相補的であり、Cas9エンドヌクレアーゼの動員および活性化によってアニールし、DNA切断に影響を与える。これには、RuvCとHNHという2つのヌクレアーゼドメインがあり、それぞれがDNAの両方の鎖に切断を生じさせ、二本鎖切断断が結果として生ずる。この機構の前提条件は、短く、保存された配列、PAM配列(プロトスペーサー隣接モチーフ)が、gRNA標的配列(3,8)の下方(下流)に位置することである。これは、Cas9のための結合信号であるため、DNA切断に不可欠である。化膿連鎖球菌の場合、Cas9エンドヌクレアーゼは特定のPAM5’-NGG-3’配列の上流3塩基を切断する。gRNAおよびDNA遺伝子座の完全に相補的な配列相同性であっても、これはPAM配列の不存在下ではヌクレアーゼによってスキップされる。これにより、免疫システムは自身のDNAと外来性DNAを区別できるようになる。細菌ゲノムのCRISPR遺伝子座の標的配列にはPAM配列が含まれていないため、ヌクレアーゼ消化(6,9)から保護される。
【0048】
一般に、さまざまなCRISPRシステムを分類することができ、それらはPAM配列、および関与するCasタンパク質の数および種類が異なる。化膿連鎖球菌由来のII型は、最も良好に特徴付けられ、遺伝子工学研究所で最も頻繁に使用されている(8,10,11)。遺伝子工学ツールとしてのこの天然システムの可能性は、DoudnaとCharpentierによって2012年に認識された。彼らはまた、crRNAとtracrRNAのシングル-ガイドRNA(sgRNA)への融合が、天然crRNA:tracrRNAの二本鎖と同程度に効率的にDNA切断を生成することを示した。その結果、分子生物学的な、sgRNAとCas9の二成分システムが実現し、非常に簡単にゲノム修飾を生成することができる(4,12)。
【0049】
DNA二本鎖切断の生成は、細胞内の修復メカニズムの活性化につながる。非相同末端結合(NHEJ)は、インデルおよびフレームシフト突然変異の形成、および遺伝子のノックアウトにつながる可能性があるため、非常にエラーが発生しやすいという特徴がある。頻度はより低いが、修復は相同組換え修復(HDR)を介して行われる。したがって、修復テンプレートの存在下で遺伝子座の定義された変更を実行でき、配列ブロック全体でさえ特定のゲノム領域に組み込むことができる(13,14)。
【0050】
本発明の例示的な特定の態様
例えば、治療用抗体の抗原としての新規および/または未知のタンパク質の研究においてしばしば発生する問題は、当該タンパク質に対する市場から入手可能な特異的抗体の欠如である。これは、例えば、発現または細胞局在に関して、タンパク質の特徴付けを複雑にする。
【0051】
これまで、検査対象のタンパク質/抗原は、ex-vivoでマーカータンパク質にコンジュゲートされ、次に細胞中に再導入され、組換えによって生成されていた。人工の、すなわち、外在性の融合タンパク質は組換えによって細胞に導入されるため、発現はウイルスプロモーターの制御下で行われ、これは、内在性発現レベルと比較して融合タンパク質の過剰発現につながる。その結果、それに基づいた実験では、歪んだデータや正しくないデータが生成されることがよくある。
【0052】
本発明は、CRISPR/Cas9技術によって、タンパク質/抗原をマーカータンパク質と内因的に融合すること、すなわち、検出可能なタグを提供することが可能であり、それによって融合タンパク質は内在性遺伝子座で発現され、それによって天然遺伝子発現率/レベルが維持されるという発見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0053】
細胞のゲノムDNAへの配列のいわゆる「ノックイン」は、重要であることが証明されている。
【0054】
本発明は、Cas9ヌクレアーゼを有する第1のプラスミドと、標的配列を有する第2のドナープラスミドでの抗生物質を介した二重選択が、マーカータンパク質のノックインに最適である、という発見に、少なくとも部分的に基づいている。Cas9ヌクレアーゼを個別に選択して正確にノックインしたクローンを取得することは可能であったが、効率は大幅に低下した。抗生物質による選択と組み合わせた、追加的に導入されたCD4マーカーによる選択は、ドナープラスミド上で完全に失敗することが証明された。
【0055】
本明細書にて開示される発明は、環状構造のドナープラスミドを使用すると、線状化形態のドナープラスミドを使用する場合よりも、大幅に高い取り込み率/編集率/効率を達成できる、という発見に、少なくとも部分的に基づいている。
【0056】
本発明による方法は、標的細胞の任意の内在性遺伝子を用いて実施できることに留意すべきである。この遺伝子の自然な発現が強ければ強いほど、融合マーカータンパク質を介して達成できる検出可能な信号もより強くなる。
【0057】
内在性タンパク質の性質、すなわちそれが可溶性、膜結合性または膜性であるかどうかは、本発明による方法において何の役割も果たさないことにも注意すべきである。
【0058】
マーカータンパク質が導入される位置も完全に可変である。これは、N末端、内部(結果としてタンパク質の生物学的機能が破壊されない場合のみ)、またはC末端に融合/導入することができる。それにもかかわらず、内在性タンパク質のN末端およびC末端が融合にとって好ましい。
【0059】
任意の検出可能なマーカータンパク質を使用できることにも注意すべきである。蛍光マーカータンパク質が特に好ましい。しかしながら、コンフォメーションマーカータンパク質を使用することもできる。検出は、標識された二次抗体を介して行われる。
【0060】
本発明による方法は、任意の細胞で実行できることに留意されたい。哺乳動物細胞が好ましい。ヒト細胞がより好ましい。
【実施例】
【0061】
内在性遺伝子としてのアルファチューブリン1ベータ(TUBA1B)
タンパク質/潜在的抗原の非限定的な例として、内在性α-チューブリン1β鎖(TUBA1B)を選択した。このタンパク質のN末端に、検出可能なラベルとしてのeGFPマーカータンパク質をタグ付けした。
【0062】
アルファチューブリン1ベータ(TUBA1B)は、アルファチューブリンのサブタイプであり、5つのチューブリンアイソフォームのうちの1つであり、細胞型、組織、および発生段階によって発現が異なる(15)。
【0063】
CRISPR/Cas9技術によって、接着成長HEK293A細胞内で、内在性TUBA1B遺伝子を、そのN末端において、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)マーカータンパク質/タグ/検出可能なラベル(SEQ ID NO::32)と融合させた。この目的のために、eGFPのコード配列(SEQ ID NO:33)を、それがmRNAレベルで内在性TUBA1B開始コドンの直後に続くように、細胞のゲノムに挿入した。
【0064】
標的遺伝子をゲノムレベルで解析した場合、開始コドンATGはエキソン1の最後のトリプレットであった。これにより、以下の2つの可能なタグ挿入部位が得られた:エキソン1の3’末端にあるATGの直後、またはエキソン2の前の5’末端。これらの2つの遺伝子座を、可能なgRNA結合部位について調べた。明らかに、より特異的なgRNA結合部位が、エキソン1のATGの後ろよりも、エキソン2の5’末端の近くに存在することが判明した。
【0065】
したがって、本発明の方法の一実施形態において、挿入可能部位が複数存在する場合、マーカータンパク質をコードする核酸は、細胞内の標的タンパク質の内在性遺伝子座の、より多くのかつ/またはより特異的なgDNA結合部位を含む部位に挿入される。
【0066】
これに基づいて、3つの特定のgRNAを使用して、エキソン2の前でノックインを行った(
図1および
図2)。Cas9ヌクレアーゼを動員することにより、これらは挿入部位から23~80塩基離れた二本鎖切断を生成した。ドナープラスミドまたは短いドナーとも呼ばれる修復テンプレートとの同時トランスフェクションにより、eGFPタグが相同組換えによって正確に組み込まれた。この目的のために、組み込まれるべき配列、正確には、内部ATGを有さず、両側に1kbの長さの相同配列(アーム)が隣接し、C末端G4Sリンカーを有する、eGFP配列を、ドナープラスミド上に配置した。5’側の相同配列は、挿入部位からの上部/上流配列の約1kbを含み、3’側の相同配列は、挿入部位からの下部/下流配列の約1kbを含んでいた(
図3)。
【0067】
3つのノックイン戦略が実行され、Cas9ヌクレアーゼ、特定のgRNA、およびドナープラスミドは、すべての戦略に必要であった。戦略は、使用される構成と選択方法が異なる。
【0068】
ノックイン戦略V1では、ピューロマイシン耐性カセットを含むCas9をコードするプラスミドを、選択マーカーのない環状ドナープラスミド、ならびに特定の合成crRNAおよびtracrRNAを用い、同時トランスフェクトした。選択は、Cas9をコードするプラスミド上でピューロマイシンのみを使用して行った。
【0069】
ノックイン戦略V2では、ピューロマイシン耐性カセットを含むCas9をコードするプラスミドを、環状ドナープラスミドを用い、ハイグロマイシンB耐性カセットならびに特定の合成crRNAおよびtracrRNAを用い同時トランスフェクトした。選択は、ドナープラスミドにはハイグロマイシンB、Cas9をコードするプラスミドにはピューロマイシンを用いた二重選択として行った。
【0070】
ノックイン戦略V3では、Cas9ヌクレアーゼとsgRNAが単一のプラスミド上で結合された。これには、選択のためのCD4マーカーが追加的に含まれていた。ドナープラスミドは戦略V2のプラスミドに対応していた。したがって、ドナープラスミドについてはハイグロマイシンBを介して、ヌクレアーゼ/gRNAプラスミドについてはCD4を介して二重選択を行った。
【0071】
V2およびV3戦略のために、さらに2つの異なるアプローチ(トランスフェクションの前にドナープラスミドの線状化を行う場合と行わない場合)が使用された。
【0072】
修復テンプレートは、相同組換えによってeGFPマーカータンパク質の特異的なノックインのために生成され:ある場合は選択マーカーのないドナープラスミドであり、他の場合はハイグロマイシンB耐性カセットを有するドナープラスミドである。
【0073】
複製起点(ori)に加えて、選択マーカーのないドナープラスミドには、アンピシリン耐性カセット、相同な3’および5’隣接配列が導入されるeGFP配列が含まれている。3’-相同配列は、ゲノムDNAからPCRによって増幅された。ゲル抽出後、これを3’-相同配列に特異的なプライマーを用いた第2のPCRのテンプレートとして使用した。すべてのPCRサンプルは、アガロースゲルで予想されるサイズのきれいなバンドを示し、ゲルから精製された。HEK293A野生型細胞からのゲノムDNAに対するPCRは、5’相同配列を生成するために、TUBA1B特異的プライマーD_5’HA fwd(SEQ ID NO:12)およびD_5’HA rev(SEQ ID NO:13)を用いて行った。TUBA1B特異的プライマーD_3’HA-Z fwd(SEQ ID NO:18)およびD_3’HA-Z rev(SEQ ID NO:19)を用いたHEK293A野生型細胞からのゲノムDNAのPCRは、中間生成物を生成するために行われた。そこから、プライマーD_3’HA fwd(SEQ ID NO::16)およびD_3’HA rev(SEQ ID NO::17)を用いたPCRによって、gRNA1およびgRNA2結合部位の点突然変異を伴う3’-相同配列が生成された。4つのフラグメント、バックボーン、5’HA、eGFP、および3’HA(HA=相同アーム/配列)は、その端に重複する配列を有していたことにより、シームレスなクローニングによって正しい順序と方向で同時ライゲーションを実行できた。正しいクローニングは、配列決定によって確認された。ドナープラスミドは、ハイグロマイシンB耐性カセットを使用して最終構築物から生成された。これは、完全な5’HA-eGFP-3’HAフラグメントを増幅するためのPCRのテンプレートとして機能した。PCR生成物を直接精製し、制限酵素で消化し、プラスミドpAH-0163のバックボーンにライゲートした。oriに加えて、アンピシリン耐性カセットとハイグロマイシンB耐性カセットが含まれている。消化したサンプルをアガロースゲルで分離し、切り出し、精製した。正しい方向でのライゲーションは、制限消化によって形成された相補的な末端を介して達成された。ハイグロマイシンB耐性カセットを持つドナープラスミドの正確性は、配列決定によっても確認された。
【0074】
HEK293A野生型細胞を、さまざまな濃度の抗生物質(a)ハイグロマイシンBおよび(b)ピューロマイシンでそれぞれ72時間処理した。細胞生存率はCellTiter-Gloアッセイで測定した。
【0075】
20μg/mLの濃度で、HEK293A(野生型)細胞の細胞生存率は20%未満に減少した。さらに濃度を300μg/mLまで上昇させると、細胞生存率は10%と30%との間で変化した。選択には、50μg/mLの最終的なハイグロマイシンB濃度を使用した。この濃度では、約12%の生存率が期待される。
【0076】
ピューロマイシンの場合、細胞生存率は最低濃度でゆっくりと減少し、2μg/mLピューロマイシンの濃度では15%未満であった。選択のために、2μg/mLの最終ピューロマイシン濃度が使用され、この濃度では、約12%の生存率が期待される。
【0077】
1)ノックイン戦略V1:抗生物質による、Cas9をコードするプラスミドの単一選択
Cas9-PuroRプラスミド
環状ドナープラスミド
crRNA1又はcrRNA2
tracrRNA
【0078】
第1のノックイン戦略では、Cas9-PuroRプラスミド、環状ドナープラスミド、ならびに特定の合成crRNAおよびtracrRNAを細胞にトランスフェクトした。選択は、ピューロマイシンを使用して10日間、Cas9プラスミドについてのみ行った。その後、crRNA1(SEQ ID NO::07)またはcrRNA2(SEQ ID NO::08)のそれぞれでトランスフェクトした細胞の単一細胞を、10個の96ウェルプレートに置いた。各crRNAについて、ゲートP3からの生存可能な単一細胞を含む9つのプレートと、ゲートP4からのFITC陽性の生存可能な単一細胞を含む1つのプレートを置いた(
図8および
図9、ヒストグラムにおいて、サンプル(青)のFITC信号は、野生型(黒)と共に正規化され、表示(拡大)されている。)。細胞に組み込まれたeGFPは、FACS(蛍光活性化セルソーティング)によってFITCチャネルを介して検出できる。拡大図では、FITC信号のヒストグラムは、細胞集団のごく一部がFITC信号の変化を示していることを示した(
図8および
図9)。増加したFITC信号は、eGFPの発現に起因する可能性があり、これは、開始コドンが欠落しているため、ドナープラスミドからのeGFP配列がゲノムの翻訳領域にインフレームで導入されている場合にのみ、可能である。
【0079】
置かれた単一細胞の増殖率は、3週間後に顕微鏡で測定したところ、合計63%であった。その後、FACSによる細胞のFITC信号の分析を行った(結果は表1)。
【0080】
(表1)各crRNAおよび各ゲートについて、単一細胞が置かれた後に、潜在的に陽性のクローンの数が同定された。検査したクローンの総数を括弧内に示す。効率は、検査したクローンの数に対する潜在的に陽性のクローンの数の比率から得られた。
【0081】
FITC信号が、野生型よりも有意に高かったクローンをさらに拡張し、特徴付けた。合計983個の分析されたクローンから、合計23個の潜在的に陽性のクローンが検出された(表1を参照)。最初のFACSスクリーニングにおいて、すべてのクローンが、約1ログステップのFITC陽性領域中へのシフトを示した。
【0082】
クローンは、連続培養中の信号の安定性をチェックするために、FACSスクリーニングによって定期的に分析された。17継代培養後のFACSデータは、クローン間でいくつかの違いを示した。多くのクローンは、最初のFACSスクリーニングに匹敵する信号を示した。2個のクローンは、FITC信号強度の大幅な低下を示した(
図10、表2)。
【0083】
(表2)成長したクローンのFACSによるeGFP信号の分析。ゲーティングは、FSCチャネルおよびSSCチャネルを介して実行可能な単一細胞で行われた。FITCチャネルを介してeGFPの存在を検出することができた。FITC-陽性領域中へのシフトによるクローンは拡張され、さらに分析された。連続培養後、17継代目にFITC信号の安定性を再度確認した。++=変化なし;+=信号におけるわずかな減少;o=信号における強い減少;-=信号なし
【0084】
FACSデータは、同定されたクローンの多くが安定したeGFP信号を有することを示している。
【0085】
ノックインはゲノムレベルで検証された。この目的のために、クローンのcDNAに対してPCRを行った。全RNAを細胞から単離し、cDNAに変換した。PCRは、eGFP領域に結合するフォワードプライマー(SEQ ID NO:30)と、TUBA1Bのエキソン4に結合するリバースプライマー(SEQ ID NO:31)を用いて行った。プライマーは、TUBA1Bのエキソン2の前にeGFP配列が正確に導入された場合にのみ特定の生成物が増幅されるように選択された。野生型細胞では、リバースプライマーのみが結合できた。リバースプライマーの結合部位が3’-相同配列の、配列の外側にあるため、フォワードプライマーのみがドナープラスミドに結合できる。したがって、プラスミドが細胞のゲノムにランダムに組み込まれる可能性がある場合でも、増幅生成物は発生しない(
図10)。
【0086】
PCRにより、アガロースゲルで目立った副生成物のないきれいなバンドが得られた(
図11)。ノックインは、PCRおよび配列決定によってDNAレベルで検証された(データは示さず)。バンドを切り出し、精製し、配列決定した。その結果、すべてのクローンのDNAに存在する3つの配列の差は、タンパク質の配列に変化を引き起こさないサイレント突然変異である。
【0087】
タンパク質の機能、すなわちeGFP-TUBA1B融合タンパク質がベータチューブリンヘテロ二量体およびそこから微小管を形成する能力は、顕微鏡的に検証された。このために、細胞を固定し、透過処理し、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗-GFP 抗体で染色した。また、細胞核をHoechst 33342で染色した。共焦点顕微鏡画像は、Operettaで撮影された。
図12は、クローン1、2、および16の代表的な画像を示している。
【0088】
すべてのクローンについて、内在性eGFP信号は顕微鏡検査に十分ではなかったため、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗-GFP抗体を使用したeGFPの追加染色を実施した。この染色により、チューブリン細胞骨格の明確に認識可能な構造が明らかになり、フィラメントといくつかの細胞突起が明らかになった(
図12)。
【0089】
クローン3および4では、一部の細胞は抗体染色の助けを借りて弱いGFP信号を示したが、GFPが検出されない細胞も見られた。一般に、クローン3と4はすべての実験で不明瞭な結果を示した。配列決定では、多様な混合配列を同定することができた。さらに、顕微鏡分析により、eGFP-TUBA1Bは一部の細胞にのみ存在することが示された。これは、両方のクローンが混合クローンであることを示唆している。
【0090】
クローン23の細胞は、内在性でも、GFP抗体による染色でも、顕微鏡でGFP信号を示さなかった。クローン23の細胞ではeGFP-TUBA1B融合タンパク質を検出できなかった。ただし、eGFP配列の正しい挿入は、DNAレベルで数回検出された。これは、遺伝子が細胞内でシャットダウンされていることを示唆している。このクローンでは、明らかにノックインが正しく行われていた。しかしながら、修飾タンパク質の発現がないと使用できなかった。
【0091】
ノックイン戦略V1の概要:
ノックイン戦略V1は、Cas9ヌクレアーゼプラスミドでのピューロマイシンによる単一選択に基づいている。単一細胞が置かれた後、FACS、イメージング分析、PCRおよび配列決定によって特徴付けられた23個のクローンを同定することができた。これらの分析により、20個のクローンにおいてゲノムレベルでノックインが発生したことが示された。所望のeGFP-TUBA1B融合タンパク質は細胞内で発現し、機能の有意な損失は見られなかった。23個のクローンの特性を表3にまとめる。
【0092】
(表3)ノックイン戦略V1のすべてのクローンと要約された結果のリスト。
【0093】
2)ノックイン戦略V2:抗生物質によるCas9とドナープラスミドの二重選択
Cas9-PuroRプラスミド
ハイグロマイシンB耐性カセットcrRNA1またはcrRNA2またはcrRNA3を有する環状および線状化ドナープラスミド
tracrRNA
【0094】
ノックイン戦略V2では、ノックイン戦略V1と同じcrRNAおよびtracrRNA、およびCas9-PuroRプラスミドを用いて細胞をトランスフェクトした。3つのcrRNA(SEQ ID NO::07-09)のそれぞれを、ハイグロマイシンB耐性カセットを有する線状化または環状ドナープラスミドと組み合わせた。Cas9プラスミドにはピューロマイシン、ドナープラスミドにはハイグロマイシンBを介して合計10日間、選択を行った。その後、FITC陽性の生存可能な単一細胞を含む4つの96ウェルプレートが、各トランスフェクションから置かれた。野生型細胞とトランスフェクト細胞との間のFITC信号の差は、ヒストグラムの拡大図で明らかであった。FITC陽性細胞の割合は0.4%と3.8%との間であった。線状および環状ドナープラスミドからのサンプルを比較すると、環状ドナープラスミドを用いたトランスフェクションにおけるFITC陽性細胞の割合は、線状化ドナープラスミドを用いたトランスフェクションよりも、3つすべてのcrRNAについて高いことがわかった。最も強い信号は、crRNA3および環状ドナープラスミドのサンプルで見つかった(
図13)。
【0095】
インキュベーター内で3週間インキュベートした後、置かれた単一細胞の増殖速度を顕微鏡で測定した。平均34.3%であった。増殖したすべてのクローンを、それらのFITC信号について、FACSによって分析した。細胞におけるeGFP発現は、野生型、すなわち非形質移入細胞と比較して増加したFITC信号の検出につながる。合計496の分析されたクローンから、合計118の潜在的に陽性のクローンが同定された。これは、24.3%の全体的な効率に相当する。環状ドナープラスミドを含むサンプル中の潜在的に陽性のクローンの割合は33.3%であり、線状化ドナープラスミドの場合の15.3%の2倍より高かった(表4)。
【0096】
(表4)単一細胞が置かれた後のFACSを使用したノックイン戦略V2からの潜在的に陽性のクローンの同定。単一細胞が置かれた後に同定された潜在的に陽性のクローンの数は、線状または環状のドナープラスミドを持つ各crRNAについて示されている。検査したクローンの総数を括弧内に示す。効率は、検査したクローンの数に対する潜在的に陽性クローンの数の比率から得られた。
【0097】
118の潜在的に陽性のクローンのうち、40のクローンがランダムに選択され、さらなる検証のために拡張された。連続培養中、FITC信号の安定性はFACSによって定期的にチェックされた。培養12継代後のスクリーニングでは、40クローン中32クローンで野生型と比較してFITC信号が増加していた。例えば、クローンV2 3Z P1 B5およびV2 3Z P2 D10の場合、これは最初のFACSスクリーニングの結果に匹敵した。いくつかのクローンは、最初のFACSスクリーニングと比較して、連続培養中にFITC信号の減少を示した。それにもかかわらず、それは野生型と比較して高かった。3つのクローンについてのみ、12継代後にFITC信号を検出できなかった。
【0098】
(表5)成長したクローンのFACSによるeGFP信号の分析。ゲーティングは、FSCチャネルおよびSSCチャネルを介して実行可能な単一細胞で行われた。FITCチャネルを介してeGFPの存在を検出することができた。FITC-陽性領域中へのシフトによるクローンは拡張され、さらに分析された。継代数12で連続培養した後、FITC信号の安定性を再度確認した。++=変化なし;+=信号におけるわずかな減少;o=信号における強い減少;-=信号なし
【0099】
FACS分析に加えて、40クローンは、PCR分析と配列決定だけでなく、イメージングによってさらに特徴付けられた。
【0100】
ゲノムレベルでのノックインを確認するために、クローンの細胞からmRNAを単離し、cDNAに転写した。cDNA上で、eGFP-TUBA1Bの完全なコード配列を増幅できるPCRを設定した。eGFP配列の挿入がTUBA1Bの前にある場合にのみ、両方のプライマーが結合できた(
図10)。PCRをアガロースゲルで分析したところ、予想されるサイズのきれいなバンドが示された。予想通り、野生型のテストでは、リバースプライマーのみが結合できたため、生成物は生成されなかった(
図14)。
【0101】
バンドを切り出し、精製し、配列決定した。DNAで検出された2つの配列の差は、タンパク質配列に変化を引き起こさないサイレント突然変異である。両方の配列バリアントは、予想されるタンパク質に対応していた。TUBA1Bの部分は野生型と同一であった。
【0102】
3つの陰性クローンのPCRおよび配列決定によって、正しいDNA配列を決定することができた。例えば、クローン1L P2 F5はすべての分析で陽性の結果を示したが、顕微鏡検査で陽性の信号を示したのは約半分の細胞だけであった。
【0103】
eGFP-TUBA1B融合タンパク質の機能を顕微鏡で分析した。タグ付けされたタンパク質がクローンの微小管の形成に引き続き関与しているかどうかを確認するために、Operettaシステムを使用して調査を行った。このために、細胞を固定し、透過処理し、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗-GFP抗体で染色した。また、細胞核をHoechst 33342で染色した。例えば、クローン10は、抗-GFP抗体を使用して染色した場合でも、信号を示さなかった。クローン41では、抗-GFP抗体による信号は弱く、非常に拡散していた。一方、クローン28は、すべての細胞で抗体染色による明確な信号を示した。細胞突起は良好な信号を示している(
図15)。
【0104】
ノックイン戦略V2の概要:
ノックイン戦略V2では、crRNAおよびtracrRNA、Cas9-PuroRプラスミド、ならびにハイグロマイシンB耐性カセットを有するドナープラスミドを細胞にトランスフェクトした。3つのcrRNAのそれぞれを、それぞれの線状または環状ドナープラスミドと組み合わせて使用した。Cas9プラスミドにはピューロマイシン、ドナープラスミドにはハイグロマイシンBを介して選択を行った。スクリーニングされた496のクローンのうち、118の陽性クローンが同定された。さらに分析するために、40のクローンをランダムに選択して拡張した。FACS分析、シーケンシング、およびイメージングの結果は、正確なeGFPノックインが29クローンで達成されたことを明らかにした。
【0105】
選択された40クローンの特性を表6にまとめる。
【0106】
(表6)ノックイン戦略V2のすべてのクローンと要約された結果のリスト。
【0107】
3)ノックイン戦略V3:抗生物質およびCD4マーカーを使用したCas9およびドナープラスミドの二重選択
pCas-Guide-EF1α-CD4プラスミド
ハイグロマイシンB耐性カセットを備えた環状および線状化ドナープラスミド
crRNA1またはcrRNA2またはcrRNA3
tracrRNA
【0108】
ノックイン戦略V3では、環状または線状ドナープラスミドおよびpCas-Guide EF1α-CD4プラスミドを細胞にトランスフェクトした。「オールインワン」と呼ばれるこのプラスミドは、Cas9ヌクレアーゼ、gRNAおよびCD4をコードする。この戦略では、ドナープラスミドにはハイグロマイシンBを使用し、Cas9ヌクレアーゼとgRNAにはCD4を使用して選択を行った。3つの異なるpCas-Guide-EF1α-CD4プラスミドが使用され、それぞれが3つのgRNAの1つをコードしている。これにより、このアプローチでは6つのトランスフェクションが行われ:3つの異なるgRNAがそれぞれ環状または線状化ドナープラスミドと組み合わされている。トランスフェクションの約48時間後、細胞はAPC-コンジュゲート抗-CD4抗体で染色した。HEK293A野生型細胞はCD4を自然に発現しないため、これらの細胞はAPCネガティブゲートを画定した。pCas-Guide-EF1α-CD4プラスミドを取り込んだ細胞のみが細胞表面にCD4を発現し、抗体で染色した後、APC信号の上昇を介してFACSで検出できた。サンプルはすべて、APC信号が大幅に増加したことを示している。トランスフェクトされた細胞は、APCポジティブゲートで63%と86%との間である。各gRNAからの線状および環状ドナープラスミドを含むサンプルを比較すると、比例して多くのAPC、したがってCD4陽性細胞が環状ドナープラスミドによるサンプルで検出されることがわかった。各トランスフェクションから、FACSソーティングを使用して、約5×10
5個のCD4陽性細胞が細胞プールとして置かれた(
図16)。
【0109】
6-ウェルプレートで24時間プールソーティング後、細胞を培養した。次に、ドナープラスミドをハイグロマイシンBで10日間選択した。その後、各トランスフェクションからの単一細胞を4つの96ウェルプレートに置いた。野生型細胞とトランスフェクトサンプルとの間のFITC信号の差は、ヒストグラムの拡大図で明らかであった。サンプル1L、1Z、および2Lは、非常に弱いFITC陽性信号のみを示し、1%を十分に下回っていた。サンプル2Zおよび3Zは、野生型と比較してFITC信号に差はなかった。サンプル3Lは、野生型よりもさらに弱いFITC信号を示した。したがって、FITC陽性細胞のゲーティングはほとんど不可能であった。可能な範囲で、生存可能な単一細胞がFITC陽性ゲートから置かれた(
図17)。
【0110】
単一細胞が置かれてから3週間後、FITC信号についてクローンの最初のスクリーニングが行われ、FACSにおけるeGFPの存在が確認された。以前は、43%の平均成長率が顕微鏡的に決定されていた。合計952個のクローンがスクリーニングされ、そのうち33個が潜在的に陽性のクローンとして同定された。これは、3.4%の効率に相当する。3つのサンプル1L、3L、および3Zでは、クローンを同定できなかった。繰り返すが、環状ドナープラスミドサンプルは、線状化ドナープラスミドを含むサンプルよりも潜在的に陽性のクローンを生成することがわかった(表7)。
【0111】
(表7)単一細胞が置かれた後のFACSを使用したノックイン戦略V3からの潜在的に陽性のクローンの同定。単一細胞が置かれた後に同定された潜在的に陽性のクローンの数は、各gRNAおよびゲートについて規定されている。検査したクローンの総数を括弧内に示す。効率は、検査したクローンの数に対する潜在的なクローンの数の比率から得られた。
【0112】
最初のFACSスクリーニングからのFITCヒストグラムは、野生型に対する信号の差が非常に小さいことを示した。一部のクローンはFITC陽性領域で比較的強いシフトを示したが、これはログステップ未満であった。
【0113】
合計で、FITC信号が上昇した33個のクローンを同定し、さらに分析するために拡張することができた。培養中、eGFP信号の安定性はFACSによって定期的にチェックされた。数回の継代後、ほとんどのクローンが以前は低かったFITC信号を完全に失っていることが判明した。オーバーレイでは、それらの信号は野生型の信号と同一であった。
【0114】
クローンのcDNAでのPCRにより、eGFP-TUBA1Bの完全なコード領域を増幅できる。この目的のために、全RNAをクローンから単離し、cDNAに転写した。PCRのプライマーは、eGFPの正確な挿入が発生した場合にのみ特定の生成物が形成されるように選択された。PCRはアガロースゲルで分析した。予想通り、野生型サンプルでは生成物を増幅できなかった。予想通り、野生型サンプルでは生成物を増幅できなかった。ノックイン戦略V1のクローン1をPCRの陽性コントロールとして使用し、2085bpの特定の生成物を生成した。DNAレベルでは、分析したどのクローンについてもeGFPの特異的なノックインは示されなかた(
図18)。
【0115】
いくつかのクローンを顕微鏡で検査した。固定および透過処理した細胞を、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗-GFP抗体およびHoechst 33342で染色した。いずれのクローンにおいてもeGFPは検出できなかった。同様に、GFP信号、したがってeGFP-TUBA1B融合タンパク質を伴うフィラメント状チューブリン構造は、抗体染色によって検出できなかった。
【0116】
ハイグロマイシンBによる選択にもかかわらずクローンが生き残った理由は、eGFPまたはハイグロマイシンB耐性カセットの特異的プライマー(SEQ ID NO::26および27)を使用したクローンのcDNAのPCRによって決定された。予想通り、野生型試験では、ハイグロマイシンB特異的プライマーでは生成物を増幅できなかった。ドナープラスミドはハイグロマイシンB耐性カセットを含んでおり、したがって陽性コントロールとして機能した。特定のバンドは、すべてのクローンのハイグロマイシンB耐性カセットのプライマーを使用したPCRで増幅できた(
図19)。クローンのcDNAに対するeGFP特異的プライマーを用いたPCRも、野生型の生成物を示さなかった。ドナープラスミドには、開始コドンATGのないeGFP配列が含まれており、選択したプライマーを使用した陽性コントロールとして機能する。いくつかのクローン、例えば、クローン4、7、14および19では、アガロースゲルに予想される高さで顕著なバンドが現れた。クローン1または12などの他のクローンは、弱い強度の1つのバンドのみを示した。クローン2、3、5、8、および27については、このPCRではアガロースゲルで特定の生成物は検出されなかった(
図20)。
【0117】
ノックイン戦略V3の概要:
ノックイン戦略V3では、細胞を2つのプラスミドでトランスフェクトした。ドナープラスミドは、挿入部位周辺の相同配列に囲まれた、導入されるeGFP配列を含んでいた。オールインワンプラスミドと呼ばれる第2のプラスミドpCas-Guide-EF1α-CD4もまた、Cas9ヌクレアーゼに加えてgRNAをコードする。さらに、プラスミド上にはCD4マーカーが存在していた。選択は、Cas9およびgRNAのCD4プールソーティングに基づいており、続いてドナープラスミドのハイグロマイシンB選択が行われた。合計、スクリーニングされた952個のクローンのうち、33個の陽性クローンが同定された。次の実験は、すべてのクローンが陰性クローンであることを示した。目的の遺伝子座での正確なノックインは、PCRによってDNAレベルで検出できなかった。
【0118】
33個のクローンの特性を表8にまとめる。
【0119】
(表8)ノックイン戦略V3のすべてのクローンと要約された結果のリスト。
【0120】
4)考察
内在性タンパク質の正確な修飾のためのCRISPR/Cas9による特異的なノックインの生成は、重要であることが証明された。例として、これは、HEK293A細胞のTUBA1Bモデル遺伝子へのeGFPのN末端ノックインによって実証された。
【0121】
このようなTUBA1BへのGFPノックインは、例えば、Znフィンガーヌクレアーゼを使用するU2O2骨肉腫細胞(16)や、CRISPR/Cas9を使用したヒト人工多能性幹細胞(iPSC)(17)など、いくつかのグループによってすでに実現されている。Roberts等は、生細胞タイムラプスイメージングで直接GFPタグを介して、ヒトiPSCにおける、N末端にタグを付加されたTUBA1Bの構造を分析した。
【0122】
ここで例示したノックインは、同じ基本戦略に基づいており、3つの異なるバリアントで実行された。V1、V2、及びV3を含む。
【0123】
ノックイン戦略V2では、クローンのFACSスクリーニングにより、eGFP信号の強度が明らかにさらに不均一であることが示された。特に、crRNA3と環状ドナープラスミドを有するクローンは、FITC陽性範囲の細胞の87%以上で長期培養した後、非常に強いeGFP信号の安定性を示した。crRNA1と環状ドナープラスミドを有するクローンは、FACSによって幅広い多様性を示し、これは、細胞の21%と75%との間がFITC陽性範囲にあったためである。
【0124】
ノックイン戦略V3では、陽性のクローンを生成することはまったくできなかった。最初のFACSスクリーニングでは、検出可能なeGFP信号を有する少ない割合の細胞(5%より多くの細胞がFITC陽性範囲にある)によって、クローンが選択された。これらのクローンでは、細胞集団全体のFITC陽性領域へのシフトは見られなかった。連続培養中の分析では、数回継代した後、eGFP信号が検出されなくなったことが示された。DNAレベルでは、TUBA1B遺伝子の前にeGFP配列のノックインは検出されなかった。最初のFACSスクリーニングでこれらの細胞で偽陽性信号が測定された可能性がある。ハイグロマイシンB特異的プライマーを使用したPCRは、すべてのクローンで肯定的な結果をもたらし、クローンが抗生物質選択を生き残ることができたことを示している。また、PCRにより多くのクローンでeGFP配列の一部が検出された。これらの結果は、同定された潜在的に陽性のクローンがドナープラスミドをゲノムにランダムに組み込んだことを示唆している。eGFP配列は、ドナープラスミド上に独自のプロモーターまたは開始コドンを担持していなかった。したがって、転写された遺伝子座の正しいリーディングフレームにランダムにeGFPが組み込まれる可能性は低い。いずれのクローンでも正確なノックインは検出されなかった。
【0125】
ノックイン戦略V1およびV2からのいくつかのクローンでは、cDNA上のPCRによってモノ対立遺伝子ノックインが検出された(データは示さず)(17も参照)。
【0126】
テストした3つのノックイン戦略V1、V2、およびV3の有効性を比較すると、ハイグロマイシンBとピューロマイシンによる二重選択が最も高い効率を示したことがわかった。40個の潜在的に陽性のクローンのうち29個について、正しいeGFPノックインを確認できた。したがって、潜在的に陽性と同定されたクローンの17.5%が偽陽性であり、72.5%が実際に陽性であった。これを、最初に同定された118個の潜在的に陽性のクローンに適用すると、496個の分析されたクローンのうち86個の陽性クローンが予想されることになる。これは、17.3%の全体的な効率に相当する。文献では、0.1%~5%の範囲で相同組換えの効率が大きく変化することがわかっている。最適化された条件下で、それぞれの遺伝子座に応じて、最大24%の効率も示されている(17、18)。
【0127】
相同組換えの効率にとって最も重要な要因の1つは、ドナーテンプレートである。テストされた戦略では、使用されたプラスミドは、NotIによる制限によって環状または線状化された。結果は、環状プラスミドよりも線状化ドナープラスミドの方がノックイン効率が低いことを示した。さまざまなドナーバリアントがテストされ、多数の記事で比較された。Stieger等は、5’-オーバーハングを有する環状または線状ドナーよりも、3’-オーバーハング線状ドナーを使用した標的遺伝子座で、より多くのインデル変異を特定できることを示した。同様の調査結果は、Liang等によって説明されている。彼らは、30ヌクレオチドのオーバーハングを有する線状二本鎖ドナーでは、オーバーハングのないドナーよりも大幅に優れたHDR効率を達成できることを示した(19)。Zhang等は、プラスミドバックボーンが完全に除去されたHEK293T細胞で、環状およびダブルカットドナーを使用した。環状ドナーでは5%のHDR効率が達成され、線状ダブルカットドナーでは21%でさえあった。ダブルカットドナーはノックイン率を大幅に高め、環状ドナープラスミドよりも大幅に短い相同配列を必要とする(20)。Chu等のワーキンググループは、HEK293細胞において、1kbの相同配列をテンプレートとして有する、生成されたPCR生成物用いて、最良のノックイン結果を達成した(21)。
【0128】
ノックインに成功した細胞を得るためには、編集されていない野生型細胞を正確に選択する必要がある。使用したバリアントでは、両方のプラスミドで行った場合に抗生物質の選択が最も効率的であった。
【0129】
PCR分析は、戦略V1では、23個のクローンのうちの2個だけがCas9配列を示さなかったことを示した。
【0130】
CD4選択はトランスフェクトされた細胞を分離するためだけに機能したため、オールインワンpCas-Guide-EF1α-CD4から利益が期待された。CD4ソーティングでは、細胞が生き残るために人為的にプラスミドを保持することはなく、約7日後に細胞はプラスミドを失った。
【0131】
Roberts等の研究では、選択はFACSによるGFP信号のみを介して行われ、抗生物質が存在しないにもかかわらず、使用したcrRNAに応じて、45%のクローンでドナープラスミドの偶発的な組み込みが検出された(17)。
【0132】
eGFPタグの利点は、抗体でさらに染色しなくても信号を提供できることであり、これは、例えば、クローンのFACSスクリーニングで時間とコストの面でより経済的である。あるいはまた、より小さいMycタグが使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図1】N末端eGFPタグを挿入する前の、ゲノム内のヒトTUBA1B遺伝子座と、それぞれの転写されたmRNAおよびそこから翻訳されたタンパク質の概略図。コード配列(濃い青)には、非翻訳領域(水色)とイントロン配列(灰色)とが隣接している。
【
図2】N末端eGFPタグを挿入した後の、ゲノム内のヒトTUBA1B遺伝子座と、転写されたmRNAおよびそこから翻訳されたタンパク質の概略図。コード配列(濃い青)には、非翻訳領域(水色)とイントロン配列(灰色)とが隣接している。
【
図3】ゲノムTUBA1B遺伝子座のエキソン2の上流にeGFP配列を導入するためのノックイン戦略。3つの特定のgRNAは、エキソン2の開始部に結合し、Cas9との二本鎖切断を生成する。ドナープラスミドは、挿入されるeGFP配列を含み、当該配列は、相同組換えのための1kbの相同配列に囲まれている。ドナープラスミドの3’-相同配列上のアスタリスク(*)は、gRNA結合部位の点突然変異領域を識別表示する。
【
図4】Cas9-PuroRプラスミド(Dharmacon)のプラスミドマップ。
【
図5】pCas9-Guide-EF1α-CD4プラスミド(Origene)のプラスミドマップ
【
図6】ハイグロマイシンB耐性カセットを有するドナープラスミドのプラスミドマップ
【
図7】ドナープラスミドの調製に使用されたプラスミドマップeGFPハイグロマイシンBプラスミド。
【
図8】HEK293A野生型細胞を、2つのTUBA1B特異的crRNA、tracrRNA、環状ドナープラスミド、およびCas9-PuroRプラスミドでトランスフェクトした。ピューロマイシンで選択した後、単一細胞を96ウェルフォーマットで置いた。ここに示されているのは、crRNA1サンプルのゲーティング戦略である。ゲーティングは、FSCチャネルおよびSSCチャネルを介して実行可能な単一細胞で行われた。FITCチャネルを介してeGFPの存在を検出することができた。サンプル(青)のFITC信号は、野生型(黒)と一緒にヒストグラムで正規化され、拡大表示されている。単一細胞は、標識されたゲートP3およびP4から置かれた。
【
図9】HEK293A野生型細胞を、2つのTUBA1B特異的crRNA、合成tracrRNA、環状ドナープラスミド、およびCas9-PuroRプラスミドでトランスフェクトした。ピューロマイシンで選択した後、単一細胞を96ウェルフォーマットで置いた。crRNA2サンプルのゲーティング戦略が示されている。ゲーティングは、FSCチャネルおよびSSCチャネルを介して実行可能な単一細胞で行われた。FITCチャネルを介してeGFPの存在を検出することができた。サンプル(青)のFITC信号は、野生型(黒)と一緒にヒストグラムで正規化され、拡大表示されている。単一細胞は、標識されたゲートP3およびP4から置かれた。
【
図10】ノックイン戦略V1のクローンのcDNAでPCRを行い、ゲノムレベルでのノックインを確認する。TUBA1BおよびeGFP-TUBA1BのcDNA、およびドナープラスミドの一部の概略図。矢印は、使用するプライマーの結合部位を示している。両方のプライマーは、TUBA1Bの前でeGFPの正確なノックインが発生した場合にのみ結合できる。コード配列は水色で、非翻訳領域は灰色で示されている。
【
図11】ノックイン戦略V1のクローンのcDNAでPCRを行い、ゲノムレベルでのノックインを確認する。クローン(1~23)および野生型(WT)のcDNAで、プライマーeGFP fwdおよびTUBA1B Exon4 revを使用したPCRをアガロースゲルに適用した。正確なノックインの場合、999bpの生成物が増幅されるべきである。
【
図12】イメージングによるノックイン戦略V1からのクローンにおけるeGFP-TUBA1Bタンパク質の機能の分析。細胞を固定し、透過処理し、GFP-Alexa Fluor 647抗体で染色した。細胞核をHoechst 33342で染色した。内在性eGFPは488nmで、GFP抗体からのAlexa Fluor 647は647nmで、結合したHoechst 33342染料は355nmで刺激された。各クローンから、40倍の対物レンズで40ピクセルを記録した。代表的な画像断面をそれぞれの場合に示す。
【
図13-1】ノックイン戦略V2からのトランスフェクトされたサンプルを単一細胞として置くこと。HEK293A野生型細胞を、3つのTUBA1B特異的crRNA、tracrRNA、環状または線状化ドナープラスミド、およびCas9-PuroRプラスミドでトランスフェクトした。ハイグロマイシンBとピューロマイシンによる二重選択の後、単一細胞を96ウェルフォーマットに置いた。crRNA1サンプル1L、crRNA2サンプル2L、crRNA3サンプル3LのFITCヒストグラムが示されており、それぞれ線状化ドナープラスミドであり、ならびにcrRNA1サンプル1Z、crRNA2サンプル2ZおよびcrRNA3サンプル3Zは、それぞれ環状ドナープラスミドを有する。ゲーティングは、FSCチャネルおよびSSCチャネルを介して実行可能な単一細胞で行われた。FITCチャネルを介してeGFPの存在を検出することができた。サンプル(青)のFITC信号は、野生型(黒)と拡大されたオーバーレイのヒストグラムで正規化される。FITC陽性ゲートからの単一細胞が置かれた。
【
図14】ノックインV2からのクローンの完全なeGFP-TUBA1B配列の分析。cDNA fwdプライマーおよびcDNA revプライマーを用いたクローンおよび野生型(WT)のcDNAのPCRが、アガロースゲルに供された。このPCRは、eGFP-TUBA1Bのコード領域全体を増幅し、ノックイン時に2085bpの生成物をもたらすように設計された。
【
図15】イメージングによるノックイン戦略V2のクローンにおけるeGFP-TUBA1Bの機能の分析。細胞を固定し、透過処理し、GFP-Alexa Fluor 647抗体で染色した。細胞核をHoechst 33342で染色した。内在性eGFPは488nmで、GFP抗体からのAlexa Fluor 647は647nmで、結合した Hoechst 33342染料は355nmで刺激された。各クローンから、20倍の対物レンズで40ピクセルを記録した。代表的な画像断面をここに示す。
【
図16】ノックイン戦略V3からのトランスフェクトされたサンプルのCD4陽性細胞のプールソーティング。HEK293A野生型細胞に、異なるgRNA配列を有する3つのpCas-Guide EF1α-CD4プラスミドのうちの1つと、環状または線状化ドナープラスミドとをトランスフェクトした。48時間後、CD4陽性細胞のプールが置かれた。gRNA1/2/3由来の、線状ドナー(1L/2L/3L)がトランスフェクトされたサンプルには、pCas-Guide-EF1α-CD4プラスミドが含まれており、環状ドナープラスミド(1Z/2Z/3Z)でトランスフェクトされた、gRNA1/2/3由来のものには、pCas-Guide-EF1α-CD4が含まれており、APC-コンジュゲート抗-CD4抗体で染色した。ヒストグラムは、染色されたサンプル(青)の正規化されたAPC信号を、染色された野生型(黒)と重ね合わせて示した。APC陽性ゲート由来の細胞は、細胞懸濁液からのプールとして分類された。
【
図17-1】ノックイン戦略V3からのCD4陽性プールサンプルを単一細胞として置くこと。サンプルは、ハイグロマイシンBによるCD4プールソーティングの24時間後に選択された。増殖した細胞からの単一細胞が96ウェルフォーマットで置かれた。gRNA1サンプル1L、gRNA2サンプル2L、gRNA3サンプル3LのFITCヒストグラムが示されており、それぞれ線状化ドナープラスミドであり、およびgRNA1サンプル1Z、gRNA2サンプル2ZおよびgRNA3サンプル3Zは、それぞれ環状ドナープラスミドを有する。ゲーティングは、FSCチャネルおよびSSCチャネルを介して実行可能な単一細胞で行われた。FITCチャネルを介してeGFPの存在を検出することができた。サンプル(青)のFITC信号は、野生型(黒)のオーバーレイのヒストグラムで正規化され、拡大されている。FITC陽性ゲートから単一細胞が置かれた。
【
図18】ノックイン戦略V3からのクローンの完全なeGFP-TUBA1B配列の分析。cDNA fwdプライマーおよびcDNA revプライマーを用いたクローンおよび野生型(WT)のcDNAのPCRが、アガロースゲルに供された。このPCRでは、eGFP-TUBA1Bのコード領域全体が増幅され、正確なノックインが発生したときに2085bpの生成物が得られるべきである。
【
図19】ノックイン戦略V3のクローンのPCR。ハイグロマイシンB耐性カセットからの領域を増幅するための、クローン(1~27)、野生型(WT)およびドナープラスミド(D)のcDNAに対する、プライマー Hygro fwd(SEQ ID NO:26)およびHygro rev(SEQ ID NO:27)を用いたPCR。特定の生成物のサイズは324bpである。
【
図20】ノックイン戦略V3のクローンのPCR。eGFP配列からの領域の増幅のための、プライマーeGFP_2 fwdおよびeGFP_2 revを用いた、クローン(1~27)のcDNA、野生型(WT)およびドナープラスミド(D)に対するPCR。特定の生成物のサイズは300bpである。
【0134】
配列
gRNA1フォワード SEQ ID NO:01
gRNA1リバース SEQ ID NO:02
gRNA2フォワード SEQ ID NO:03
gRNA2リバース SEQ ID NO:04
gRNA3フォワード SEQ ID NO:05
gRNA3リバース SEQ ID NO:06
crRNA1 SEQ ID NO:07
crRNA2 SEQ ID NO:08
crRNA3 SEQ ID NO:09
D_Hygro fwd SEQ ID NO:10
D_Hygro rev SEQ ID NO:11
D_5’ HA fwd SEQ ID NO:12
D_5’ HA rev SEQ ID NO:13
D_eGFP fwd SEQ ID NO:14
D_eGFP_rev SEQ ID NO:15
D_3’ HA fwd SEQ ID NO:16
D_3’ HA rev SEQ ID NO:17
D_3’ HA-Z fwd SEQ ID NO:18
D_3’ HA-Z fwd SEQ ID NO:19
QuickChange fwd SEQ ID NO:20
QuickChange rev SEQ ID NO:21
eGFP fwd SEQ ID NO:22
TUBA1B、exon4rev SEQ ID NO:23
cDNA fwd SEQ ID NO:24
cDNA rev SEQ ID NO:25
Hygro fwd SEQ ID NO:26
Hygro rev SEQ ID NO:27
Cas9 fwd SEQ ID NO:28
Cas9 rev SEQ ID NO:29
eGFP_2 fwd SEQ ID NO:30
eGFP_2 rev SEQ ID NO:31
eGFPタグのアミノ酸配列 SEQ ID NO:32
eGFPタグの塩基配列 SEQ ID NO:33
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
プラスミド:
Cas9プラスミドは、Dharmacon(
図4)およびOrigene(
図5)から購入した。ドナープラスミドを自己クローニングした(
図6(ハイグロマイシンB耐性カセットを使用)、
図7(pAH-0163))。すべてのプラスミドを-20℃で保存した。
【0139】
酵素:
使用したすべての酵素はNEBから購入し、-20℃で保存した。
【0140】
【0141】
オリゴヌクレオチド:
TUBA1Bに特異的なcrRNAおよびgRNA
【0142】
プライマー:
すべてのプライマーは、100μMの濃度で溶解した形でmetabionから購入し、-20℃で保存した。
【0143】
細胞株、細胞培養培地、および添加物:
すべての実験は、HEK293A細胞(Quantum Biotechnologies Inc.)を使用して実施した。
【0144】
抗体:
抗体は、製造元の指示に従って4℃または-20℃で保存した。
【0145】
【0146】
方法:
1.分子生物学的研究
1.1.合成オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション
Origene由来のオールインワンpCas-GuideEF1α-CD4プラスミドのgRNAをコードするDNA配列を、合成オリゴヌクレオチドとしてオーダーした。それらをベクターにクローン化できるようにするために、最初に相補的な一本鎖をハイブリダイズさせる必要があった。それらは、各5’-オーバーハングが線状化ベクトルの3’-オーバーハングを相補するように設計された。これにより、所望の方向で正確なライゲーションが達成される。
【0147】
ハイブリダイゼーションの反応は以下のように設定された:
【0148】
混合物を十分に混合し、以下のプログラムに従ってサーモサイクラーでインキュベートした:
【0149】
サンプルを水で1:10に希釈し、さらに使用するまで-20℃で保存した。
【0150】
1.2.ポリメラーゼ連鎖反応
ポリメラーゼ連鎖反応、略してPCRは、NovagenのKOD Hot Start DNA Polymerase Kitを使用して実行した。とりわけ、この方法を使用して、ドナープラスミドのクローニングのための相同配列およびeGFPフラグメントを生成し、後で選択されたクローンを特徴付けた。ドナープラスミドのフラグメントを生成するために、PCRプライマーを、隣接するフラグメントの末端に短い15bpの相同配列を生成するように特別に設計した。このマイクロホモロジーを使用して、InvitrogenのSeamless Cloning and Assembly Kitを使用して、正しい順序と方向で正確なライゲーションを確保した。
【0151】
さらに、3’ホモログアームD_3’HA fwdを生成するためのフォワードプライマーには、いくつかのサイレントポイント変異が含まれていた。これらは、使用されたcrRNAによって結合された配列領域に位置していた。Cas9ヌクレアーゼの前でのトランスフェクションからドナープラスミドを保護するには、crRNA結合部位を変異させる必要がある。PAM配列にサイレント変異を導入することは、リーディングフレームのために不可能であり、タンパク質配列に変化を引き起こしたであろう。したがって、後でタンパク質配列に変化をもたらさない可能性のあるすべての塩基が交換された。
【0152】
【0153】
PCRプログラムは、テンプレートの種類、PCR生成物の長さ、および使用するプライマーの性質(GC含量や融解温度など)によって異なる。デフォルトでは、次のPCRプログラムが使用された:
【0154】
1.3.制限消化
クローニングの1つの要素は、配列特異的な制限エンドヌクレアーゼによる制限消化である。一方では、クローン化されるDNAフラグメントが調整される。他方、この方法は、クローン化されたプラスミドがその正しい集合について検査される制限分析として使用することができる。NEBからの最適化された高忠実度制限酵素が好ましく使用された。
【0155】
【0156】
混合物を十分に混合し、サーモブロック内で37℃で少なくとも1時間インキュベートした。続いて、制限酵素を不活性化するために、温度を10分間で70℃に上げた。
【0157】
このようにして、ハイグロマイシンB耐性カセットを持つドナープラスミドも、トランスフェクション用のエンドヌクレアーゼNotI-HFで線状化された。次に、1μLのエビアルカリホスファターゼ(rSAP)を制限混合物に直接添加し、37℃で1時間再度インキュベートした。これによりベクター末端が脱リン酸化され、プラスミドのランダムな再結合が防止される。
【0158】
異なる温度または異なるバッファーで最大の活性を示す制限酵素を使用する場合、消化は2つの温度工程で行う必要があるか、あるいは、再緩衝の工程を組み込む必要がある。
【0159】
1.4.アガロースゲル電気泳動とゲル抽出
ゲル電気泳動により、アガロースゲル中のDNAフラグメントの混合物をそのサイズに応じて分離することができる。サンプルを6×ローディングバッファーでこれに加え、0.5μg/mLの臭化エチジウムを含む1%アガロースゲルに適用する。サンプルを適用した後、100Vの電圧を1時間印加した。その結果、負に帯電したDNAはゲルを通ってアノードに向かって移動する。DNAのサイズと構造は、ゲル内での走行挙動にとって非常に重要である。ゲル電気泳動は、分取制限消化またはPCRの標準である。プラスミドの制限消化では、したがって、所望のDNAフラグメントをプラスミドの残りの部分から分離して、特定のDNAバンドをゲルから切り出すことができる。
【0160】
PCRでは、最適には1つの特定のフラグメントのみを増幅する必要がある。ゲル電気泳動は、PCRがどれほど純粋であり、非特異的な副生成物が形成されているかどうかを明らかにする。この場合も、特定のDNAバンドを予想される高さでゲルから切り取ることができる。
【0161】
切除したアガロースゲル片から所望のDNAを抽出するために、QiagenのQIAquick Gel ExtractionKitを付属のプロトコルに従って使用した。簡単に言うと、ゲル片を50℃の結合バッファーに溶解し、イソプロパノールで処理してカラムにかけた。DNAはカラムのシリカ膜に結合し、溶出バッファーでの短い洗浄工程の後にカラムから溶出された。したがって、とりわけ、後に配列決定反応などの使用を妨害する可能性のある塩、酵素または他の不純物を反応混合物から除去することができる。精製したDNAをNanoDrop2000で分析し、-20℃で保存した。
【0162】
1.5.E. coliでのライゲーションおよび形質転換
ライゲーションでは、相補的な末端を有するDNAフラグメントが、ATP依存性DNAリガーゼを使用して結合される。ライゲーション反応には、NEBのT4DNAリガーゼを使用した。プラスミドバックボーンと挿入フラグメントは、ライゲーションバッチで1:10のモル比で使用された。
【0163】
【0164】
混合物を十分に混合し、16℃のサーモサイクラーで少なくとも1時間インキュベートした。続いて、リガーゼを70℃で10分間不活化した。
【0165】
例外は、ドナープラスミドのフラグメントのライゲーションであった。これらのフラグメントは、InvitrogenのSeamless CloningおよびAssembly Kitを使用して、付属のプロトコルに従ってアセンブルされた。使用したプライマーの結果として、隣接するフラグメントは15bpの短いマイクロホモロジーを有し、その上でフラグメントが正しい順序と方向でライゲーションされた。
【0166】
次に、得られたプラスミドを、化学的にコンピテントなE. coliに増殖させるために導入した。形質転換は、InvitrogenのChemically Competent OneShot Top10 E. coliを使用して実施した。この目的のために、-80℃で保存された細菌を氷上で解凍し、2μLのライゲーション混合物と混合し、氷上で少なくとも30分間インキュベートした次に、熱ショックが発生し、プラスミドがコンピテント細胞に導入された。この目的のために、細胞を42℃の水浴で30秒間インキュベートした後、氷上で2分間インキュベートした。200μLのSOC培地を添加した後、細胞をサーモシェーカー内で37℃、700rpmで1時間インキュベートした。50μLの形質転換混合物をLB寒天プレートにプレーティングした。耐性カセットに応じて、寒天プレートは、導入されたプラスミド100μg/mLアンピシリンまたは50μg/mLカナマイシン上に含まれていた。一晩、プレートを37℃でインキュベートし、目的のプラスミドを受容した細菌コロニーのみを増殖させた。
【0167】
1.6.プラスミドの調製
プラスミド調製は、形質転換されたE. coliからクローン化されたプラスミドDNAを単離するための方法である。このために、個々のコロニーを寒天プレートから選択し、LB培地に移し、37℃および200rpmで一晩培養した。所望の収量に応じて、異なるサイズのアプローチがLB培地で行われた。2mLのミニ調製物、150mLのミディアム調製物、400mLのマキシ調製物、最大2.5Lのギガ調製物を区別した。
【0168】
すべてのプラスミド調製は、付随するプロトコルに従って、QiagenおよびMacherey-Nagelのキットを使用して実施した。原則として、一晩培養物を遠心分離し、細菌ペレットをRNase含有バッファーで再懸濁した。細胞を溶解緩衝液で5分間溶解し、カラムに置いた。DNAはカラムのシリカ膜に結合し、溶出バッファーでの洗浄工程後に溶出された。培地およびマキシ調製物において、溶出液中のDNAを再びイソプロパノールで沈殿させ、4,500rpmで1時間遠心分離した。70%エタノールで洗浄した後、DNAペレットを室温で15分間乾燥させ、500μLのTRISバッファーで再溶解した。NanoDrop2000でのサンプルの分析により、DNAの濃度と純度が明らかになった。このようにして得られたDNAを-20℃で保存し、後に、HEK293Aトランスフェクションに使用した。
【0169】
2.ヒト細胞の培養
HEK293A細胞を、37℃および5%CO2のインキュベーターで培養した。完全培地は、10%FCSおよび2mML-グルタミンを含むRPMI1640で構成されていた。連続培養では、細胞は週に2回分割し、70%と90%との間のコンフルエンスに達した。このために、培地を吸引し、細胞をPBSで洗浄し、Accutaseで剥離した。新鮮な培地で再懸濁した後、細胞懸濁液の1/10を新しいT75細胞培養フラスコに移した。25継代に達したとき、連続培養を廃棄し、内部細胞バンクからの新鮮な細胞を解凍した。
【0170】
生成されたクローンは、野生型細胞と同じ完全培地で培養され、週に2回1:5に分割した。各クローンから、3×106個の細胞を含む少なくとも3本のクライオチューブをバックアップとして凍結した。この目的のために、細胞を300gで5分間遠心分離し、7.5%DMSOを含むFCSからなる1mLの凍結培地に再懸濁した。細胞をクライオチューブに移し、フリーザーボックスで-80℃で一晩凍結した。翌日、凍結細胞を窒素タンクに移して長期保存した。
【0171】
3.リポフェクタミンによるトランスフェクション
細胞内で特定のノックインを達成するために、さまざまなプラスミドDNAと部分的に合成されたRNAを細胞に導入する必要があった。導入するサンプルに応じて、Dharmaconの2つのトランスフェクション試薬DharmaFECT DuoおよびOrigeneのTurboFectin 8.0を使用した。
【0172】
トランスフェクションは、ノックイン実験のために6-ウェルフォーマットで実施し、トランスフェクションプロトコルの最適化は96ウェルフォーマットで実施した。トランスフェクション時に約70~80%のコンフルエンシーに達するように、前日に細胞を播種した。概して、リポフェクタミンによるトランスフェクションでは、DNAとトランスフェクション試薬を血清を減らしたOpti-MEMで混合した。バッチは、リポフェクタミンと核酸の複合体を形成するために、室温でしばらくインキュベートしなければならなかった。続いて、トランスフェクション混合物を細胞に滴下して加えた。
【0173】
トランスフェクション試薬に応じて、次の最適化されたプロトコルが6-ウェルフォーマットで使用された:
【0174】
4.CellTiter-Gloアッセイ
CellTiter-Gloアッセイを使用して、サンプル中の生細胞の数を測定した。この方法は、代謝的に活性な細胞の指標としてのATP量の定量化に基づいている。実験には、PromegaからのCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay Kitを使用した。CellTiter-Glo試薬は、各実験の前に新たに調製した。この目的のために、とりわけルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む基質を、付随するバッファーに溶解した。細胞の培地に直接添加した後、細胞の溶解が最初に起こる。生存能力を有する細胞はミトコンドリアでATPを生成し、それによって放出される。ATPの存在下で、ルシフェリンはUltraGlo r-ルシフェラーゼによって変換される。これにより、存在するATPの量、したがって生細胞の数に比例する安定した発光信号が生成される。
【0175】
アッセイを使用して、トランスフェクションを最適化し、トランスフェクション後の選択に最適な抗生物質濃度のハイグロマイシンBとピューロマイシンを滴定した。すべてのアッセイにおいて、細胞は透明な底を備えた黒い平底96ウェルプレートに播種された。抗生物質濃度を滴定する際、ウェルあたり7,500個の細胞を播種した。翌日、細胞をさまざまな濃度の抗生物質で処理した。48時間後、100μLのCellTiter-Glo試薬が各ウェルに添加されたアッセイによって細胞の生存率を測定した。続いて、プレートをプレートシェーカー上で200rpmで2分間振とうした。暗所で10分間インキュベートした後、発光信号をルミノメーターで測定した。
【0176】
5.フローサイトメトリー
5.1.FACSソーティング
FACSは、Fluorescence Activated Cell Sortingの略で、フローサイトメトリーの特殊な形式である。FACSソーティングを使用すると、細胞懸濁液から目的の細胞をソーティングできる。Falconの細胞プールとして、または96ウェルプレートの個々の細胞として、所望の細胞の保存が区別される。実験は、BDのFACS AriaIIIソーターで実施した。
【0177】
FACSソーティングを使用して、トランスフェクトされ、部分的にすでに選択された細胞がソーティングされた。これらを収集し、PBSで洗浄し、FACSバッファーで1×106細胞/mLの細胞数に調整した。所望の細胞集団がゲーティングされ、ソートのためにデバイスですべての設定が行われた後、選択された細胞を破棄することができる。96ウェルフォーマットで単一細胞を置いた。培地をテンパリングし、細胞のストレスを可能な限り低く保つため、プレートは37℃でウェルあたり200μLの培地で保存された。各ノックイントライアルは、20個と24個との間のプレートで置くことを含んでいた。その後、細胞は、37℃および5%CO2のインキュベーター内での増殖が約3週間必要であった。すべてのプレートを顕微鏡で分析して増殖速度を決定し、次にクローンをeGFP発現について調べた。
【0178】
ノックインV3では、pCas9-Guide-EF1α-CD4プラスミドに選択マーカーとしてCD4カセットが含まれている。CD4陽性細胞を選択するために、トランスフェクションの48時間後に細胞を収集し、PBSで2回洗浄した。次に、細胞を250μLのFACSバッファーに再懸濁し、5μLのα-CD4-Alexa647抗体を添加した。これは、1.5μg/mLの最終抗体濃度に相当していた。暗所で氷上で1時間インキュベートした後、細胞をFACSバッファーで3回洗浄し、測定した。プールソーティングのために、サンプルあたり約1.5×105のCD4陽性細胞を、5mLの完全培地がすでに置かれている15mLFalconにソーティングした。続いて、細胞を300gで5分間遠心分離し、3mLの新鮮な完全培地に再懸濁し、6ウェルプレートに播種した。24時間後、細胞は再び接着性となり、ドナープラスミド上のハイグロマイシンBで選択することができた。選択した細胞が成熟すると、96ウェルフォーマットで単一細胞として置くことが再び実行された。
【0179】
5.2.分析フローサイトメトリー
分析フローサイトメトリーは、FACSソーティングと同じ機能原理に基づいている。唯一の違いは、細胞をソートできないことであるが、サイズ、粒度、および場合によっては蛍光特性についてのみ調べることができる。
【0180】
この方法論は、主に生成されたクローンのスクリーニングに使用された。この目的のために、培地を96ウェルプレートから完全に除去し、細胞を25μLのアキュターゼで剥離し、40μLのFACSバッファーで再懸濁した。40μLの細胞懸濁液を96ウェルコニカルボトムプレートに移し、BDのFACS CantoIIで直接測定した。クローンのeGFP信号は、常にHEK293A野生型細胞で参照されていた。評価はFlowJov10.0.7ソフトウェアを使用して行った。明確なeGFP信号を有する潜在的に陽性のクローンが拡大され、さらに特徴づけられた。
【0181】
6.総タンパク質抽出およびBCAアッセイ
タンパク質レベルでもeGFPノックインを検証するために、総タンパク質を細胞から抽出する必要があった。この目的のために、1×106個の細胞を収集し、300gで5分間遠心分離し、氷冷PBSで洗浄した。遠心分離工程を繰り返した後、上清を細胞から完全に除去した。細胞ペレットを60μLの新たに調製したRIPAバッファーに再懸濁し、氷上で少なくとも30分間インキュベートした。次に、溶解物を14,000rpm、4℃で15分間遠心分離し、細胞破片を除去した。上澄みを新しい反応容器に移し、-20℃で保存した。
【0182】
ビシンコニン酸アッセイ、略してBCAアッセイを使用して、溶解物中のタンパク質濃度を定量化した。このアッセイは、BCAと色の複合体を形成する2価の銅イオンから1価の銅イオンへのタンパク質依存性の還元に依存している。反応による色の変化は、タンパク質濃度に正比例する。アッセイは、関連するプロトコルに従って、ThermoFisher Pierce BCA Protein Assay Kitを使用して実行された。タンパク質濃度が2mg/mL~125μg/mLの標準シリーズは、2mg/mLBSAストック溶液から調製した。96ウェル平底プレートに、10μLのBSA標準または10μLの希釈溶解物を提供し、それぞれの場合に重複した測定が行った。次に、BCA試薬AおよびBからなる200μLのBCA溶液を50:1の比率で各ウェルに添加した。プレートをプレートシェーカーで30秒間振とうした後、37℃で30分間インキュベートした。得られた色の変化は、562nmの波長で光度計で測定した。標準シリーズの値を使用して検量線を作成し、その関数方程式から溶解物中のタンパク質濃度が計算できた。
【0183】
7.SDSページとウエスタンブロット
タンパク質レベルでのeGFPノックインを検証するために、得られたタンパク質溶解物を使用してSDS-Pageを製造し、続いてウエスタンブロットを行った。
【0184】
いずれの場合も、15μgの総タンパク質をPBSで10.8μLに調整し、6μLの2.8倍LDSローディングバッファーを添加した。次に、サンプルを95℃で10分間煮沸し、12,000rpmで2分間遠心分離した。サンプルをInvitrogenのNuPAGE4-12%Bis-Trisゲルに適用し、220Vおよび120mAで50分間泳動した。ウェットブロットでは、タンパク質を30V、220mAで1時間ニトロセルロース膜にブロットする。タンパク質移動を成功させるためのコントロールとして、着色タンパク質標準を使用した。膜をシェーカー上の5%ブロック溶液中で室温で少なくとも2時間インキュベートして、タンパク質のエピトープをブロックし、その後の非特異的な抗体結合を減らした。一次抗体を5%ブロッキング溶液で希釈し、ロッキングシェーカー上で4℃で一晩インキュベートした。翌日、膜をTBSTで15分間3回洗浄して、結合していない一次抗体を除去した。続いて、膜を、5%ブロック溶液で希釈した二次抗体とともに、シェーカー上で室温で2時間インキュベートした。この場合も、未結合の二次抗体を除去するために、TBTを15分間3回洗浄する必要があった。ブロットを現像するために、RocheのLumi-Light Western Blotting Substrate Kitを使用した。ルミノールエンハンサー溶液とペルオキシダーゼ溶液を同じ比率で混合し、膜に添加し、暗所で3分間インキュベートした。二次抗体は、ルミノールの酸化を触媒する西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と結合させた。得られた発光信号は、Lumiイメージャーで検出できる。露光時間はバンド強度によって異なる。現像後、膜をRestore PLUS Western Blot Stripping Bufferで室温で15分間インキュベートし、結合した抗体を膜から除去した。次に、膜をTBSTで10分間3回洗浄し、5%ブロック溶液とともに室温で少なくとも2時間再度インキュベートした。次に、膜を50kDaマーカーバンドのすぐ下で切断した。膜の上部を、5%ブロック溶液で希釈したα-GFP HRP結合抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。膜の下部を5%ブロック溶液に一晩保存し、翌日、α-β-アクチンHRP結合抗体とともに室温で15分間インキュベートした。両方の膜部分をTBSTで15分間3回洗浄した。これら2つの一次抗体はHRP結合しているため、前日と同様に二次抗体とさらにインキュベートすることなく膜を発色させることができる。
【0185】
8.Operettaシステムにおける共焦点顕微鏡分析
共焦点顕微鏡分析により、潜在的なクローンのチューブリン細胞骨格を調べた。実験は、PerkinElmerによるOperetta CLS High-Content Imaging Systemで実行された。このシステムでは、多数のクローンを96ウェルフォーマットで短時間で自動的にスクリーニングできる。Operettaシステムでの分解のための内在性eGFP信号が非常に弱かったため、α-GFP-AlexaFluor647抗体を使用してシグナル増幅のために細胞を染色した。
【0186】
スクリーニングのために、1.2×104個の細胞を96ウェルプレートに播種した。プレートは、底が透明な黒い平底プレートであり、自家蛍光が低いことに加えて、隣接するウェルへの迷光の侵入も防いだ。翌日、細胞をPBSで洗浄し、氷冷メタノールで5分間固定した。使用したα-GFP Alexa Fluor 647抗体をヤギ血清希釈バッファー(GSDB)で1:1,000に希釈し、最終濃度を1μg/mLにした。バッファーは、とりわけTriton-X-100を含み、これは細胞膜の透過性をもたらし、したがって抗体の細胞への浸透を可能にする。暗所で室温で2時間インキュベートした後、抗体を細胞から除去した。細胞核を染色するために、Hoechst 33342をPBSで1:10,000に希釈し、暗所で室温で10分間インキュベートした。細胞から遊離抗体と未結合のヘキスト色素を除去するために、数回の洗浄を行った。最初に、高塩リン酸ナトリウムバッファーで5分間2回洗浄した。続いて、洗浄工程を低塩リン酸ナトリウム緩衝液で同様に繰り返し、細胞からの遊離抗体の輸送を促進した。Operettaシステムでの蛍光イメージングでは、200μLのPBSで洗浄した後に細胞をオーバーレイした。
【0187】
Operettaシステムで必要なすべての設定を最初に行う必要があった。目的とプレートの寸法形状のための一般的な設定の選択に加えて、これには、それぞれの露光時間とシャープニングレベルで必要な蛍光チャネルの選択も含まれていた。デバイスは、マークされた各ウェルで選択されたすべてのピクセルを実行し、チャネルごとに1枚の写真を個別に撮影した。これらは、関連するHarmony Imaging and Analysisソフトウェアで処理および評価された。
【0188】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> F. Hoffmann-La Roche AG
<120> Method for the selection of cells based on CRISPR/Cas-controlled
integration of a detectable tag to a target protein
<150> EP 18215918.6
<151> 2018-12-30
<160> 35
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 26
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> gRNA1 forward
<400> 1
gatcggagtg catctccatc cacgtg 26
<210> 2
<211> 26
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> gRNA1 reverse
<400> 2
aaaacacgtg gatggagatg cactcc 26
<210> 3
<211> 26
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> gRNA2 forward
<400> 3
gatcgggcca ggctggtgtc cagatg 26
<210> 4
<211> 26
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> gRNA2 reverse
<400> 4
aaaacatctg gacaccagcc tggccc 26
<210> 5
<211> 26
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> gRNA3 forward
<400> 5
gatcggagct ctactgcctg gaacag 26
<210> 6
<211> 26
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> gRNA3 reverse
<400> 6
aaaactgttc caggcagtag agctcc 26
<210> 7
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> crRNA1
<400> 7
gagtgcatct ccatccacgt 20
<210> 8
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> crRNA2
<400> 8
ggccaggctg gtgtccagat 20
<210> 9
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> crRNA3
<400> 9
gagctctact gcctggaaca 20
<210> 10
<211> 55
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> D_Hygro fwd
<400> 10
cgaatgcggc cgcagaagca ataagaggac tgcggaagag ctccctgtca atgta 55
<210> 11
<211> 50
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> D_Hygro rev
<400> 11
gccttaatta aagtgctcca gggtggtgtg ggtggtgagg atggagttgt 50
<210> 12
<211> 40
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> D_5'HA fwd
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gacattgatt attgaaagca ataagaggac tgcggaagag 40
<210> 13
<211> 40
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> D_5'HA rev
<400> 13
tgctcacctg cgggaaggaa aaaagatatc acaatttaaa 40
<210> 14
<211> 40
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> D_eGFP fwd
<400> 14
tcccgcaggt gagcaagggc gaggaactgt tcaccggggt 40
<210> 15
<211> 45
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> D_eGFP_rev
<400> 15
actcacggct gcctcccccg cctttgtaca gttcgtccat tccga 45
<210> 16
<211> 80
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> D_3'HA fwd
<400> 16
aaaggcgggg gaggcagccg tgaatgtata agtatacatg tgggacaagc aggagtacaa 60
atcggcaatg cctgctggga 80
<210> 17
<211> 40
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> D_3'HA rev
<400> 17
cttttgctca cggccagtgc tccagggtgg tgtgggtggt 40
<210> 18
<211> 49
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> D_3'HA-Z fwd
<400> 18
gtcatcaata gattggttta aattgtgata tcttttttcc ttcccgcag 49
<210> 19
<211> 50
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> D_3'HA-Z rev
<400> 19
aaccagaaag ctttaacgtc tgtcagttaa gctgaagctg aaattctggg 50
<210> 20
<211> 40
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> QuickChange fwd
<400> 20
tgcctgctgg gaattatatt gtttagagca tggcatccag 40
<210> 21
<211> 40
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> QuickChange rev
<400> 21
ctggatgcca tgctctaaac aatataattc ccagcaggca 40
<210> 22
<211> 34
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> eGFP fwd
<400> 22
ggccgacaag cagaaaaacg gcatcaaagt gaac 34
<210> 23
<211> 26
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> TUBA1B Exon4 rev
<400> 23
ggcggttaag gttagtgtag gttggg 26
<210> 24
<211> 34
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> cDNA fwd
<400> 24
atggtgagca agggcgagga actgttcacc gggg 34
<210> 25
<211> 28
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> cDNA rev
<400> 25
ttagtattcc tctccttctt cctcaccc 28
<210> 26
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hygro fwd
<400> 26
accgcaagga atcggtcaat 20
<210> 27
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Hygro rev
<400> 27
tgctgctcca tacaagccaa 20
<210> 28
<211> 33
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Cas9 fwd
<400> 28
ccctgctgtt cgacagcggc gaaacagccg agg 33
<210> 29
<211> 39
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Cas9 rev
<400> 29
ggcatcctcg gccaggtcga agttgctctt gaagttggg 39
<210> 30
<211> 33
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> eGFP_2 fwd
<400> 30
gacctacggc gtgcagtgct tcagcagata ccc 33
<210> 31
<211> 34
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> eGFP_2 rev
<400> 31
gttcactttg atgccgtttt tctgcttgtc ggcc 34
<210> 32
<211> 239
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> eGFP-Tag
<400> 32
Met Val Ser Lys Gly Glu Glu Leu Phe Thr Gly Val Val Pro Ile Leu
1 5 10 15
Val Glu Leu Asp Gly Asp Val Asn Gly His Lys Phe Ser Val Ser Gly
20 25 30
Glu Gly Glu Gly Asp Ala Thr Tyr Gly Lys Leu Thr Leu Lys Phe Ile
35 40 45
Cys Thr Thr Gly Lys Leu Pro Val Pro Trp Pro Thr Leu Val Thr Thr
50 55 60
Leu Thr Tyr Gly Val Gln Cys Phe Ser Arg Tyr Pro Asp His Met Lys
65 70 75 80
Gln His Asp Phe Phe Lys Ser Ala Met Pro Glu Gly Tyr Val Gln Glu
85 90 95
Arg Thr Ile Phe Phe Lys Asp Asp Gly Asn Tyr Lys Thr Arg Ala Glu
100 105 110
Val Lys Phe Glu Gly Asp Thr Leu Val Asn Arg Ile Glu Leu Lys Gly
115 120 125
Ile Asp Phe Lys Glu Asp Gly Asn Ile Leu Gly His Lys Leu Glu Tyr
130 135 140
Asn Tyr Asn Ser His Asn Val Tyr Ile Met Ala Asp Lys Gln Lys Asn
145 150 155 160
Gly Ile Lys Val Asn Phe Lys Ile Arg His Asn Ile Glu Asp Gly Ser
165 170 175
Val Gln Leu Ala Asp His Tyr Gln Gln Asn Thr Pro Ile Gly Asp Gly
180 185 190
Pro Val Leu Leu Pro Asp Asn His Tyr Leu Ser Tyr Gln Ser Ala Leu
195 200 205
Ser Lys Asp Pro Asn Glu Lys Arg Asp His Met Val Leu Leu Glu Phe
210 215 220
Val Thr Ala Ala Gly Ile Thr Leu Gly Met Asp Glu Leu Tyr Lys
225 230 235
<210> 33
<211> 717
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> eGFP-tag nuc
<400> 33
atggtgagca agggcgagga actgttcacc ggggtcgtgc ccatcctcgt tgagctggac 60
ggagatgtga acggccacaa attttccgtc tctggggaag gtgagggcga cgccacatac 120
ggaaagctta ctctgaaatt catttgcacc acagggaagt tgcctgtgcc atggcccact 180
ctcgtaacca cactgacgta tggcgtgcag tgttttagta gataccctga tcatatgaaa 240
cagcacgact ttttcaagag tgccatgcca gaaggttatg tgcaggagcg gacgatcttt 300
ttcaaggatg acggcaatta caaaaccaga gcagaggtca agtttgaagg ggatacactt 360
gtgaaccgca ttgagctgaa aggaatcgac ttcaaggaag atggcaatat actcgggcat 420
aaactggagt ataactacaa tagccacaac gtttacatca tggccgacaa gcagaagaat 480
ggtattaaag tgaacttcaa gatcaggcac aatattgagg acggctccgt ccaattggct 540
gatcattatc agcagaacac tcccatcgga gacgggcctg tgctgctccc agataatcac 600
tacctgtctt atcagtcagc acttagcaaa gacccgaacg aaaagcggga tcatatggtt 660
ctgttggagt ttgtaaccgc ggctggcata acactcggaa tggacgaact gtacaaa 717
<210> 34
<211> 22
<212> RNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Cas9
<400> 34
guuuuagagc urugyuguuu ug 22
<210> 35
<211> 83
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> eGFP exaon 2 start
<400> 35
ctgagtgcat ctccatccac gttggccagg ctggtgtcca gattggcaat gcctgctggg 60
agctctactg cctggaacac ggc 83
【配列表】