(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】信号品質監視装置および方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/309 20150101AFI20240716BHJP
H04H 20/20 20080101ALI20240716BHJP
H04H 20/12 20080101ALI20240716BHJP
H04N 17/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H04B17/309
H04H20/20
H04H20/12
H04N17/00 A
H04N17/00 C
(21)【出願番号】P 2023051062
(22)【出願日】2023-03-28
(62)【分割の表示】P 2018213239の分割
【原出願日】2018-11-13
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 賢一
(72)【発明者】
【氏名】祝田 幹彦
(72)【発明者】
【氏名】多賀 昇
(72)【発明者】
【氏名】大野 秀樹
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-143626(JP,A)
【文献】特開2011-109332(JP,A)
【文献】特開2005-045318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0158619(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/309
H04H 20/20
H04H 20/12
H04N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の原信号に基づくデジタル放送信号をそれぞれ再生する、互いに冗長化された第1送信機および第2送信機からの、エアー領域に出力される前の各々の送信前の出力信号と、TTL回線を経由して
マイクロ波受信装置から供給される放送トランスポートストリーム信号とを取り込み、前記デジタル放送信号の品質を監視する信号処理部と、
前記第1送信機からの送信前の出力信号を復調して前記原信号に基づくトランスポートストリーム信号を再生する復調部と、
再生された前記トランスポートストリーム信号と、前記放送トランスポートストリーム信号とをビット単位で比較する比較部と、
前記比較の結果に基づいて、前記デジタル放送信号の品質を判定する判定部とを具備する、信号品質監視装置。
【請求項2】
前記比較部で比較される前記トランスポートストリーム信号と前記放送トランスポートストリーム信号との遅延量を調整する遅延調整部をさらに備える、請求項1に記載の信号品質監視装置。
【請求項3】
共通の原信号に基づくデジタル放送信号をそれぞれ再生する、互いに冗長化された第1送信機および第2送信機からの、エアー領域に出力される前の各々の送信前の出力信号を取り込む信号品質監視装置に適用される方法であって、
前記信号品質監視装置が、前記第1送信機からの送信前の出力信号を復調して前記原信号に基づくトランスポートストリーム信号を再生する過程と、
前記信号品質監視装置が、再生された前記トランスポートストリーム信号と、TTL回線を経由して
マイクロ波受信装置から供給される放送トランスポートストリーム信号とをビット単位で比較する過程と、
前記信号品質監視装置が、前記比較の結果に基づいて、前記デジタル放送信号の品質を判定する過程とを具備する、信号品質監視方法。
【請求項4】
前記信号品質監視装置は、前記トランスポートストリーム信号と前記放送トランスポートストリーム信号との遅延量を調整する、請求項3に記載の信号品質監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、信号品質監視装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送システムにおいて、放送波の信号品質を監視することは重要である。例えば、放送波が維持されていても信号品質が低下している場合があり、この状態は受信難視と言われる。受信難視は、装置の誤設定や故障による信号品質の低下により引き起こされることがあり、信号品質を表す指標として、C/N(Carrier to Noise Radio)、MER(Modulation Error Rate)、あるいはBER(Bit Error Rate)などが知られている。
【0003】
地上デジタル放送では、DQPSK、QPSK、16QAM、64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの変調方式が用いられる。64QAM変調方式は、搬送波を振幅と位相が異なる64種類の状態(シンボル)に変化させて信号を伝送する方式であり、1つのシンボルあたり6ビットの情報を伝送することができる。
【0004】
各シンボルの位置を直交する軸上に表した図をコンスタレーション(信号点配置)と称する。CN比が劣化したり、雑音などの妨害波の影響を受けると、シンボルの位相や振幅が変化して、コンスタレーションの分散が大きくなる。コンスタレーションの分散の度合いを定量的に表現する指標が、MERである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
既存の装置では、例えば、アンテナ出力後のエアー領域での信号品質を検出していたので、送信所や中継装置の内部で生じた周波数偏移や遅延時間等といった項目とエアー領域で生じた項目とを区別して検知することが難しかった。また、例えばBERだけを検出できるにとどまり、多様な指標や項目を評価することは難しかった。デジタル放送信号の品質は多様な要因により低下するので、その発生箇所を切り分けることが難しく、対策が望まれる。
【0007】
そこで、目的は、信号品質の劣化要因を検出することの可能な信号品質監視装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、信号品質監視装置は、信号処理部、復調部、比較部、および判定部を具備する。信号処理部は、共通の原信号に基づくデジタル放送信号をそれぞれ再生する、互いに冗長化された第1送信機および第2送信機からの、エアー領域に出力される前の各々の出力信号と、TTL回線を経由してマイクロ波受信装置から供給される放送トランスポートストリーム信号とを取り込み、デジタル放送信号の品質を監視する。復調部は、第1送信機からの送信前の出力信号を復調して原信号に基づくトランスポートストリーム信号を再生する。比較部は、再生されたトランスポートストリーム信号と、放送トランスポートストリーム信号とをビット単位で比較する。判定部は、比較の結果に基づいて、デジタル放送信号の品質を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る地上デジタル放送システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る信号品質監視装置18の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、信号品質監視装置18の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、比較のため既存の信号品質監視装置の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る信号品質監視装置18の他の例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る信号品質監視装置18の他の例を示す機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る信号品質監視装置26の他の例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係る地上デジタル放送システムの一例を示す図である。このシステムは、送信所100と、中継所200とを具備する。送信所100は、放送局から受信したデジタルマイクロ波(原信号の一例)を地上波デジタルテレビジョン放送帯域の放送波(放送信号)に変換し、割り当て地域に向けて送信する。中継所200は、送信された放送波を中継送信する。
【0011】
送信所100において、アンテナ10で受信したデジタルマイクロ波は、分配部11を介して、運用系統(例えば、1系)、および、冗長系統(例えば、2系)に分配入力される。
【0012】
1系において、デジタルマイクロ波はマイクロ波受信部12で受信復調され、トランスポートストリーム(TS)信号が生成される。このTS信号から、送信機13により送信レベルの放送波(出力信号)が生成され、系統切替部16に入力される。2系においても同様に、分配部11からのデジタルマイクロ波はマイクロ波受信部14で受信復調され、TS信号が生成される。このTS信号から、送信機15により、送信レベルの放送波(出力信号)が生成され、系統切替部16に入力される。
【0013】
送信機13、送信機15は互いに冗長化されていて、いずれも、共通のデジタルマイクロ波に基づく放送信号をそれぞれ再生する。系統切替部16は、送信機13または送信機15のいずれか一方からの放送波を放送アンテナ17に接続し、空間(エアー領域)に出力する。
【0014】
放送アンテナ17から出力された放送波は、中継所200の受信アンテナ20で受信され、分配部21により中継装置22、23に分配入力される。ここでも、中継装置22は1系として機能し、中継装置23は2系として機能して、互いに冗長系として動作する。
【0015】
中継装置22,23は、それぞれ放送波を再生し、中継装置の出力レベルにまで増幅して系統切替部24に出力する。系統切替部24は、中継装置22または中継装置23のいずれか一方からの放送波を中継装置用アンテナ25に接続する。これにより放送波は中継される。
【0016】
ところで、送信所100は、送信される放送波の品質を監視するための信号品質監視装置18を備える。信号品質監視装置18は、送信機13および送信機15の各々から出力される放送波を取り込み、その品質を監視する。同様に、中継所200は、中継送信される放送波の品質を監視するための信号品質監視装置26を備える。信号品質監視装置26は、中継装置22および中継装置23の各々から出力される放送波を取り込み、その品質を監視する。ここで、放送波は、エアー領域に放射される前に、信号品質監視装置18または26に取り込まれる。
【0017】
信号品質監視装置18、26のいずれも、それぞれの装置出力の信号品質を監視する。すなわち1系の信号と2系の信号とを比較し、装置の異常を監視する。異常の内容によっては、系統切替部(16,24)に切り替え指示を与え、運用系統(例えば、1系)が冗長系統(例えば、2系)に切り替えることもできる。次に、上記構成を基礎として複数の実施形態について説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図2は、実施形態に係る信号品質監視装置18の一例を示す機能ブロック図である。
図2において、1系の放送波は、周波数変換部31により中間周波数(IF)帯域の信号にダウンコンバートされたのちOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex )復調される。
【0019】
すなわち、周波数変換部31からのIF信号は直交復調部32で直交復調されたのち、FFT部33で高速フーリエ変換(FFT)演算処理を施されて周波数軸信号に変換される。その後、等化処理部34において例えばパイロット信号を利用した等化処理が施され、1系の受信コンスタレーション信号が生成される。周波数変換部31、直交復調部32、FFT部33、および等化処理部34は、送信機13からの出力信号を復調して受信コンスタレーション信号を生成する、第1復調部として機能する。
【0020】
同様に2系の放送波は、周波数変換部41によりIF帯域にダウンコンバートされ、直交復調部42で直交復調されたのち、FFT部43の高速フーリエ変換(FFT)処理により周波数軸信号に変換される。さらに、等化処理部44において等化処理が施されて2系の受信コンスタレーション信号が生成される。周波数変換部41、直交復調部42、FFT部43、および等化処理部44は、送信機15からの出力信号を復調して受信コンスタレーション信号を生成する、第2復調部として機能する。
【0021】
1系および2系の受信コンスタレーション信号は、信号比較部50に入力されて互いに比較され、キャリア単位で信号の差異が判定される。1系および2系の受信コンスタレーションは、正常の状態では同一の信号になるので、両者を比較した結果としての差異は、小さな値となる。一方、いずれかの系の送信機に異常が発生した場合には、コンスタレーション信号に生じる相違が大きくなり、比較結果は大きな値となる。品質判定部60はこの比較結果を取得して、例えば既定のしきい値との大小関係に基づいて異常の有無を判定し、判定結果を出力する。
【0022】
ここで、上記の第1復調部、第2復調部は、信号処理部としての機能を実現する。信号処理部は、送信機13および送信機15の各々からの放送波を取り込み、送信機13の出力信号に基づく受信コンスタレーション信号と、送信機15の出力信号に基づく受信コンスタレーション信号とを生成する。
【0023】
図3は、信号品質監視装置18の処理手順の一例を示すフローチャートである。信号品質監視装置18は、1系のデジタル放送波と2系のデジタル放送波を取り込み(ステップS1)、IF信号に周波数変換する(ステップS2)。次に、信号品質監視装置18はIF信号を直交復調し(ステップS3)、その後、FFT処理(ステップS4)および等化処理(ステップS5)を経てそれぞれの系の受信コンスタレーションが生成される。
【0024】
その後、信号品質監視装置18は、1系および2系の受信コンスタレーションを比較し(ステップS6)、その差異がしきい値以上であるか否かを判定する(ステップS7)。差異がしきい値未満であれば、処理手順は最初に戻る。
【0025】
1系および2系の受信コンスタレーションの差異がしきい値以上であれば、信号品質監視装置18はアラームを発報する(ステップS8)。
【0026】
必要であれば(ステップS9でYes)、信号品質監視装置18は冗長切り替えを実行して(ステップS10)、1系を2系に切り替える。ステップS9でNoであれば、処理手順は最初に戻る。
【0027】
以上述べたように第1の実施形態では、1系送信機13の出力信号をOFDM復調して受信コンスタレーションを得て、同様に2系送信機15の出力信号をOFDM復調して受信コンスタレーションを得る。そして、1系、2系の受信コンスタレーションで同士を比較することにより、送信機の出力信号の品質を判定するようにした。つまりコンスタレーションを比較することで放送波(無線帯域)の同一性を監視し、信号の正当性を監視することができる。
【0028】
特に送信機や中継器は、装置故障に備えて、同一の装置が複数系統用意され冗長構成がとられている。冗長化された系統では、どの系統であってもその出力信号は同じであり、装置が正常であれば系統間の信号を比較すると常に一致しているはずである。そこで実施形態では、系統間の信号の差異を常に監視をすることで、今までに検知できていなかった原因の異常を検知することができる。
【0029】
図4は、比較のため既存の信号品質監視装置の一例を示す図である。既存の技術では、送信所100のデジタルテレビ放送波を出力する系統にOFDMモニタ300を取り付けるか、中継所200のデジタルテレビ放送波を出力する系統にOFDMモニタ400を取り付けるかして、BER、C/N、周波数精度などを監視するようにしていた。しかしながら、装置の故障や誤操作によりISDB-Tの変調パラメータが異なっていたり、装置遅延が異なっていたりする場合には、BER、C/N、周波数精度が劣化しない場合があり、そのようなケースでは異常状態を検知することができなかった。
【0030】
また、2つの放送TS信号を比較する技術も知られているが、放送TS信号を復調して放送TSに処理するには時間デインタリーブの処理が必要になる。例えばREMUX装置からの放送TSと受信機で受信した誤り訂正前の受信TSとを比較する技術では、受信TSを得るために遅延時間の大きな時間デインタリーブ処理が必要となる。このため、処理遅延がかかり、従って信号品質の判定にも時間がかかってしまう。
【0031】
これに対し第1の実施形態では、時間デインタリーブ処理前のコンスタレーション信号同士で比較することにより、異常の発生を高速に検知することができる。受信した放送波を復調してTS信号を再生するのに比べて、誤り訂正処理をせずに信号同士で比較することが出来る。従って、誤り訂正処理前のコンスタレーション信号で比較することにより、異常の検出精度を向上させることができる。
【0032】
第1の実施形態では、送信機13,15から出力された放送波をそれぞれ受信し、その受信コンスタレーション同士を比較して、キャリア単位で信号の差異を判定する。受信コンスタレーションをキャリア単位で比較することにより、TSとして時間、及びキャリア単位のいずれか、または両方で平均化された数値で異常の有無を判定していた既存の技術に比べて、瞬時的な異常が検出できるようになる。
【0033】
すなわち、冗長化された送信機のそれぞれの放送波が同一であることを利用し、それぞれの装置出力を比較、監視することで、信号品質の指標だけに頼らず、瞬時的な信号品質の異常を発見することが可能になる。また、復調処理が全て行われたTS信号同士で比較することによりTS信号を1ビットレベルで同一性を監視することもできる。
【0034】
さらに、異常の内容によっては、どの様な影響を受けて発生した異常であるかも解析可能である。これにより、信号品質が劣化する要因の特定と、その異常が発生した箇所(送信及び中継の何処で発生したか)とを詳細に特定することが可能となる。
【0035】
これらのことから、第1の実施形態によれば、信号品質の劣化要因を検出することの可能な信号品質監視装置および方法を提供することが可能となる。
【0036】
[第2の実施形態]
図5は、実施形態に係る信号品質監視装置18の他の例を示す機能ブロック図である。
図5において
図2と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
図5において、周波数変換部31、直交復調部32、FFT部33、および等化処理部34は、送信機13からの出力信号を復調して放送波に基づくトランスポートストリーム信号を再生する、復調部として機能する。すなわち、等化処理部34は、FFT部33の出力に対して等化処理を施し、1系の受信コンスタレーション信号を生成する。さらに等化処理部34は、受信コンスタレーション信号に前方誤り訂正(Forward Error Correction:FEC)処理を施し、トランスポートストリーム信号を再生する。
【0038】
他方で、信号品質監視装置18は、TTL回線などを経由して供給される放送トランスポートストリーム(TS)を、例えば1系のマイクロ波受信装置から取り込む。この放送TSは、遅延調整部71により遅延量を調整され、上記再生されたトランスポートストリーム信号と位相を合わせて信号比較部51に入力される。信号比較部51は、再生されたトランスポートストリーム信号と、放送TSとを比較する。
【0039】
正常の状態では、信号比較部51に入力される信号は互いに同じになるはずである。よって、両者を比較した結果は同じになる。一方、いずれかの系の送信機に異常が発生した場合には、トランスポートストリーム信号を比較した相違が大きくなり、比較して相違した数が大きくなる。品質判定部60はこの比較結果を取得して、例えば既定のしきい値との大小関係に基づいて異常の有無を判定し、判定結果を出力する。
【0040】
このように第2の実施形態では、放送TS信号と、1系の送信機13から出力されたデジタル放送信号を復調して再生された放送TS信号とを比較し、信号の同一性を監視するようにしている。この実施形態においても、アンテナ出力前の送信機出力信号を復調した放送TS信号を比較対象としているので、信号品質監視の精度が損なわれることがない。従って第2の実施形態によっても、信号品質の劣化要因を検出することの可能な信号品質監視装置および方法を提供することが可能となる。
【0041】
[第3の実施形態]
図6は、実施形態に係る信号品質監視装置18の他の例を示す機能ブロック図である。
図6において
図2と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
図5において、周波数変換部31、直交復調部32、FFT部33、および等化処理部34は、送信機13からの出力信号を復調して放送波に基づく受信コンスタレーション信号を生成する、復調部として機能する。すなわち、等化処理部34は、FFT部33の出力に対して等化処理を施し、1系の受信コンスタレーション信号を生成する。
【0043】
他方で、信号品質監視装置18は、TTL回線などを経由して供給される放送トランスポートストリーム(TS)を、例えば1系のマイクロ波受信装置から取り込む。この放送TSは、送信コンスタレーション生成部81に入力される。送信コンスタレーション生成部81は、放送TSを変調して送信コンスタレーション信号を生成する。この送信コンスタレーションは遅延調整部71により遅延量を調整され、上記生成された受信コンスタレーションと位相を合わせて信号比較部51に入力される。信号比較部51は、送信コンスタレーションと、受信コンスタレーションとを比較する。
【0044】
正常の状態では、信号比較部51に入力される2つのコンスタレーションは、互いに同じになるはずである。よって、両者を比較した結果としての差異は、小さな値となる。一方、いずれかの系の送信機に異常が発生した場合には、コンスタレーション信号に生じる相違が大きくなり、比較結果は大きな値となる。品質判定部60はこの比較結果を取得して、例えば既定のしきい値との大小関係に基づいて異常の有無を判定し、判定結果を出力する。
【0045】
このように第3の実施形態では、放送TS信号を変調して生成した送信コンスタレーションと、デジタル放送信号を復調して生成した受信コンスタレーションとを比較し、信号の同一性を監視するようにしている。この実施形態においても、コンスタレーション同士をサブキャリア単位で比較できるため、瞬時的な不具合の発生でも検知可能である。また、受信コンスタレーションは時間デインタリーブ処理が不要なので、高速な検知が可能となる。従って第3の実施形態によっても、信号品質の劣化要因を検出することの可能な信号品質監視装置および方法を提供することが可能となる。
【0046】
[第4の実施形態]
図7は、実施形態に係る信号品質監視装置26の一例を示す機能ブロック図である。この実施形態では、中継所200における利用を想定し、放送TSを取得することを望めない環境下での信号監視について説明する。
【0047】
図7において、周波数変換部31、直交復調部32、FFT部33、および等化処理部34は、中継装置22からの出力信号を復調して放送波に基づく受信コンスタレーション信号を生成する、復調部として機能する。すなわち、等化処理部34は、FFT部33の出力に対して等化処理を施し、1系の受信コンスタレーション信号を生成する。この受信コンスタレーションは、外部端子などから取り出されてもよい(受信コンスタレーション出力)。
【0048】
他方で、信号品質監視装置18は、冗長系統の受信コンスタレーションを取り込む。この受信コンスタレーションは遅延調整部91により遅延量を調整され、上記生成された受信コンスタレーションと位相を合わせて信号比較部52に入力される。信号比較部52は、2つの受信コンスタレーション同士を比較する。
【0049】
正常の状態では、信号比較部52に入力される2つのコンスタレーションは、互いに同じになるはずである。よって、両者を比較した結果としての差異は、小さな値となる。一方、いずれかの系の中継装置に異常が発生した場合には、コンスタレーション信号に生じる相違が大きくなり、比較結果は大きな値となる。品質判定部60はこの比較結果を取得して、例えば既定のしきい値との大小関係に基づいて異常の有無判定し、判定結果を出力する。
【0050】
このように第4の実施形態では、冗長系統の受信コンスタレーションと、デジタル放送信号を復調して生成した受信コンスタレーションとを比較し、信号の同一性を監視するようにしている。この実施形態においても、コンスタレーション同士をサブキャリア単位で比較できるため、瞬時的な不具合の発生でも検知可能である。また、受信コンスタレーションは時間デインタリーブ処理が不要なので、高速な検知が可能となる。従って第4の実施形態によっても、信号品質の劣化要因を検出することの可能な信号品質監視装置および方法を提供することが可能となる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10…アンテナ、11…分配部、12…マイクロ波受信部、13…1系送信機、14…マイクロ波受信部、15…2系送信機、16…系統切替部、17…放送アンテナ、18…信号品質監視装置、20…受信アンテナ、21…分配部、22…中継装置、23…中継装置、24…系統切替部、25…中継装置用アンテナ、26…信号品質監視装置、31…周波数変換部、32…直交復調部、33…FFT部、34…等化処理部、41…周波数変換部、42…直交復調部、43…FFT部、44…等化処理部、50…信号比較部、51…信号比較部、52…信号比較部、60…品質判定部、71…遅延調整部、81…送信コンスタレーション生成部、91…遅延調整部、100…送信所、200…中継所、300…OFDMモニタ、400…OFDMモニタ。