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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20240716BHJP
【FI】
H01L31/04 560
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023120829
(22)【出願日】2023-07-25
(65)【公開番号】P2023139204
(43)【公開日】2023-10-03
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】202310753089.8
(32)【優先日】2023-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512083920
【氏名又は名称】晶科能源股分有限公司
【氏名又は名称原語表記】JINKO SOLAR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1,Jinko Road, Shangrao Economic Development Zone Jiangxi 334100 CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】張春風
(72)【発明者】
【氏名】謝雲飛
(72)【発明者】
【氏名】郭志球
(72)【発明者】
【氏名】陶武松
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537001(JP,A)
【文献】特開2020-203381(JP,A)
【文献】特開2013-125778(JP,A)
【文献】特開2014-013876(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182503(WO,A1)
【文献】特開2014-135331(JP,A)
【文献】特開2015-119008(JP,A)
【文献】特開2013-187349(JP,A)
【文献】特開2020-177972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0152323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/048-31/049
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次積層して設置された第1カバープレート、第1接着フィルム、セルストリング、第2接着フィルム及び第2カバープレートを含み、且つ、前記第1カバープレートが前記セルストリングの受光面に近接し、
前記第1接着フィルムは、順次積層されている第1サブ接着フィルムと第2サブ接着フィルムを含み、前記第1カバープレートの前記セルストリングに向かう第1表面は、中心領域と、前記中心領域を取り囲む周辺領域とを含み、前記第1サブ接着フィルムが前記第1表面の前記周辺領域のみに位置し、前記第1サブ接着フィルムが前記第1表面の少なくとも一部の前記周辺領域に位置し、前記第2サブ接着フィルムが前記第1サブ接着フィルムの前記第1表面から離れた表面に位置し、且つ前記第2サブ接着フィルムの前記第1表面における正投影が少なくとも前記周辺領域の一部の領域と前記中心領域を覆い、
光起電力モジュールが積層成形された後、前記第2サブ接着フィルムはそれぞれ前記第1サブ接着フィルムの前記第1カバープレートから離れた表面と前記第1表面に接触し、
前記第1サブ接着フィルムの前記第2カバープレートに向かう部分の材料と前記第2接着フィルムの前記第1カバープレートに向かう部分の材料とが同じであり、且つ、前記第2サブ接着フィルムの前記セルストリングに向かう部分の材料がPOE材料である、
ことを特徴とする光起電力モジュール。
【請求項2】
前記第1表面は矩形であり、且つ前記周辺領域が対向する2つの長辺領域と対向する2つの短辺領域から構成され、前記長辺領域と前記短辺領域が重なる領域はコーナー領域であり、
前記第1サブ接着フィルムが少なくとも前記周辺領域における少なくとも1つの前記コーナー領域を覆っている、
ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力モジュール。
【請求項3】
前記第1サブ接着フィルムは、少なくとも前記周辺領域における2つの前記短辺領域を覆っている、
ことを特徴とする請求項2に記載の光起電力モジュール。
【請求項4】
前記長辺領域の延在方向において、前記第1サブ接着フィルムの幅は、10mm~70mmである、
ことを特徴とする請求項2に記載の光起電力モジュール。
【請求項5】
前記長辺領域の延在方向において、前記第2サブ接着フィルムの前記第1表面における正投影のエッジと前記第1表面のエッジとの間隔は、10mm~20mmである、
ことを特徴とする請求項2に記載の光起電力モジュール。
【請求項6】
前記長辺領域の延在方向において、前記第1サブ接着フィルムの前記第1表面における正投影と前記第2サブ接着フィルムの前記第1表面における正投影との重なり領域の幅は、5mm~12mmである、
ことを特徴とする請求項2に記載の光起電力モジュール。
【請求項7】
前記長辺領域の延在方向において、前記セルストリングのエッジと前記第2サブ接着フィルムのエッジとの間の間隔は、10mm~15mmである、
ことを特徴とする請求項2に記載の光起電力モジュール。
【請求項8】
前記第1サブ接着フィルムの前記第2カバープレートに向かう部分の材料は、EVA材料、PVB材料またはPOE材料である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力モジュール。
【請求項9】
前記第2接着フィルムは、順次積層されている第3サブ接着フィルム及び第4サブ接着フィルムを含み、前記第2カバープレートの前記セルストリングに向かう第2表面は、第2中心領域と、前記第2中心領域を取り囲む第2周辺領域と、を含み、前記第3サブ接着フィルムが前記第2表面の少なくとも一部の前記第2周辺領域に位置し、前記第4サブ接着フィルムが前記第3サブ接着フィルムの前記第2表面から離れた表面に位置し、且つ前記第1サブ接着フィルムの前記第1カバープレートにおける正投影が前記第3サブ接着フィルムの前記第1カバープレートにおける正投影と少なくとも部分的に重なっており、前記第3サブ接着フィルムの前記第1カバープレートに向かう部分の材料と前記第1サブ接着フィルムの前記第2カバープレートに向かう部分の材料とが同じである、
ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力モジュール。
【請求項10】
前記第1サブ接着フィルムは、順次積層された第1接着フィルム層及び第2接着フィルム層を含み、前記第1接着フィルム層が前記第2カバープレートに向かっており、且つ前記第1接着フィルム層の材料と前記第2接着フィルムの前記第1カバープレートに向かう部分の材料とが同じである、
ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力モジュール。
【請求項11】
前記第2接着フィルムは、順次積層された第3接着フィルム層及び第4接着フィルム層を含み、前記第3接着フィルム層が前記第1カバープレートに向かっており、且つ前記第3接着フィルム層の材料と前記第1サブ接着フィルムの前記第2カバープレートに向かう部分の材料とが同じである、
ことを特徴とする請求項1に記載の光起電力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、太陽電池の技術分野に関し、特に光起電力モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化石エネルギーは、大気汚染があって、且つ埋蔵量には限りがあり、これに対して、太陽エネルギーはクリーンで、汚染がなく、資源が豊かであるという利点があるため、太陽エネルギーは、化石エネルギーの代わりに、核心のクリーンエネルギーになりつつあり、太陽電池は、良好な光電変換効率を有し、太陽電池はクリーンエネルギーの利用の焦点となっている。
【0003】
光起電力モジュールは、セルストリングと、封止フィルムと、カバープレートと、を含み、光起電力モジュールを製造する過程において、通常、複数の電池セルを順次接続して、特定のアウトプットを有するセルストリングを形成し、その後、セルストリングの両側に積層して設置された接着フィルム層とカバープレートを順次敷設し、そして、積層成形によって、光起電力モジュールを形成する。
【0004】
しかしながら、従来の光起電力モジュールの封止フィルムは、使用中に気泡が発生しやすく、剥離するなどの問題があり、光起電力モジュールの信頼性を向上させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の実施例には、少なくとも、封止フィルムの周辺領域の性能と接着強度を向上させ、封止フィルムに気泡が発生しまたは剥離する確率を下げ、光起電力モジュールの信頼性を向上させることに有利である光起電力モジュールが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の実施例には、光起電力モジュールが提供され、この光起電力モジュールは、順次積層して設置された第1カバープレート、第1接着フィルム、セルストリング、第2接着フィルム及び第2カバープレートを含み、且つ、前記第1カバープレートが前記セルストリングの受光面に近接し、前記第1接着フィルムは、順次積層されている第1サブ接着フィルムと第2サブ接着フィルムを含み、前記第1カバープレートの前記セルストリングに向かう第1表面は、中心領域と、中心領域を取り囲む周辺領域とを含み、前記第1サブ接着フィルムが前記第1表面の少なくとも一部の周辺領域に位置し、前記第2サブ接着フィルムが前記第1サブ接着フィルムの前記第1表面から離れた表面に位置し、且つ前記第2サブ接着フィルムの前記第1表面における正投影が少なくとも前記第1表面の周辺領域の一部の領域と中心領域を覆い、前記第1サブ接着フィルムの前記第2カバープレートに向かう部分の材料と前記第2接着フィルムの前記第1カバープレートに向かう部分の材料とが同じであり、且つ、前記第2サブ接着フィルムの前記セルストリングに向かう部分の材料がPOE材料である。
【0007】
いくつかの実施例では、前記第1表面は矩形であり、且つ周辺領域が対向する2つの長辺領域と対向する2つの短辺領域から構成され、長辺領域と短辺領域が重なる領域はコーナー領域であり、前記第1サブ接着フィルムが少なくとも前記第1表面の周辺領域における少なくとも1つのコーナー領域を覆っている。
【0008】
いくつかの実施例では、前記第1サブ接着フィルムは、少なくとも前記第1表面の周辺領域における2つの前記短辺領域を覆っている。
【0009】
いくつかの実施例では、前記長辺領域の延在方向において、前記第1サブ接着フィルムの幅は、10mm~70mmである。
【0010】
いくつかの実施例では、前記長辺領域の延在方向において、前記第2サブ接着フィルムの前記第1表面における正投影のエッジと前記第1表面のエッジとの間隔は、10mm~20mmである。
【0011】
いくつかの実施例では、前記長辺領域の延在方向において、前記第1サブ接着フィルムの前記第1表面における正投影と前記第2サブ接着フィルムの前記第1表面における正投影との重なり領域の幅は、5mm~12mmである。
【0012】
いくつかの実施例では、前記長辺領域の延在方向において、前記セルストリングのエッジと前記第2サブ接着フィルムのエッジとの間の間隔は、10mm~15mmである。
【0013】
いくつかの実施例では、前記第1サブ接着フィルムの前記第2カバープレートに向かう部分の材料は、EVA材料、PVB材料またはPOE材料である。
【0014】
いくつかの実施例では、前記第2接着フィルムは、順次積層されている第3サブ接着フィルムと、第4サブ接着フィルムと、を含み、前記第2カバープレートの前記セルストリングに向かう第2表面は、中心領域と、中心領域を取り囲む周辺領域と、を含み、前記第3サブ接着フィルムが前記第2表面の少なくとも一部の周辺領域に位置し、前記第4サブ接着フィルムが前記第3サブ接着フィルムの前記第2表面から離れた表面に位置し、且つ前記第1サブ接着フィルムの前記第1カバープレートにおける正投影が前記第3サブ接着フィルムの前記第1カバープレートにおける正投影と少なくとも部分的に重なっており、前記第3サブ接着フィルムの前記第1カバープレートに向かう部分の材料と前記第1サブ接着フィルムの前記第2カバープレートに向かう部分の材料とが同じである。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記第1サブ接着フィルムは、順次積層された第1接着フィルム層及び第2接着フィルム層を含み、前記第1接着フィルム層が前記第2カバープレートに向かっており、且つ前記第1接着フィルム層の材料と前記第2接着フィルムの前記第1カバープレートに向かう部分の材料とが同じである。
【0016】
いくつかの実施例では、前記第2接着フィルムは、順次積層された第3接着フィルム層と、第4接着フィルム層と、を含み、前記第3接着フィルム層が前記第1カバープレートに向かっており、且つ前記第3接着フィルム層の材料と前記第1サブ接着フィルムの前記第2カバープレートに向かう部分の材料とが同じである。
【0017】
いくつかの実施例では、前記第2サブ接着フィルムは、POE接着フィルム、前記セルストリングに向かう部分の材料がPOE材料であるPE接着フィルムまたはPEP接着フィルムを含む。
【発明の効果】
【0018】
本願の実施例に提供された技術案は、少なくとも以下の利点を有する。
【0019】
本発明の実施例に提供された光起電力モジュールでは、接着フィルムを敷設する過程において、セルストリングの受光面に近接する第1カバープレートの第1表面に、まず、少なくとも一部の周辺領域に位置する第1サブ接着フィルムを設け、且つ第1サブ接着フィルムの第2カバープレートに向かう部分の材料と、第2接着フィルムの第1カバープレートに向かう部分の材料とが同じであり、そして、第1サブ接着フィルムの第1カバープレートから離れた表面に、第1表面における正投影が少なくとも第1表面の中心領域と一部の周辺領域を覆う第2サブ接着フィルムを積層して設置し、且つ第2サブ接着フィルムのセルストリングに向かう部分の材料がPOE材料である。第1サブ接着フィルムと第2接着フィルムの相手同士に向かう部分の材料を同じ材料に設定することで、光起電力モジュールの積層中、セルストリングの対向する両側に位置する接着フィルムは、周辺領域にて同じ材料が接触する接触界面を形成し、ひいては積層後に形成された封止フィルムの周辺領域における接着強度を向上させ、光起電力モジュールにエッジ剥離または接着剤の脱落が発生する確率を下げ、第2サブ接着フィルムのセルストリングに向かう部分の材料をPOE材料に設定することにより、光起電力モジュールの電位誘起劣化現象を大幅に低減し、光起電力モジュールの信頼性と安定性を高めている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
一つ又は複数の実施例は、対応する添付の図面における図で例示的に説明され、これらの例示的な説明は、実施例を限定するものではなく、特に断りのない限り、添付の図面における図は比例上の制限を形成しない。
図1図1は、本願の一実施例により提供される光起電力モジュール全体の構成を示す図である。
図2図2は、本願の一実施例により提供される第1サブ接着フィルムの構成を示す図である。
図3図3は、本願の一実施例により提供される別の第1サブ接着フィルムの構成を示す図である。
図4図4は、本願の一実施例により提供される第2サブ接着フィルムの構成を示す図である。
図5図5は、本願の一実施例により提供される別の第2サブ接着フィルムの構成を示す図である。
図6図6は、本願の一実施例により提供される第1接着フィルムの構成を示す図である。
図7図7は、本願の一実施例により提供されるセルストリングと第1接着フィルムの構成を示す図である。
図8図8は、本願の一実施例により提供される第1サブ接着フィルムの断面図である。
図9図9は、本願の一実施例により提供される第2接着フィルムの断面図である。
図10図10は、本願の一実施例により提供される別の光起電力モジュール全体の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
従来の光起電力モジュールの製造過程において、通常、セルストリングの対向する両側にそれぞれ接着フィルム層を敷設して、カバープレート、接着フィルム、セルストリング、接着フィルムとバックプレートが順次積層して設置される構造を形成し、そして、積層成形の方式によってカバープレート、セルストリングとバックプレートが順次積層して設置され、かつカバープレートとバックプレートの間に位置し、セルストリングを被覆する封止フィルムを形成する。封止フィルムは、通常、上下2層の接着フィルムを積層して形成されるが、現在よく使われている接着フィルムは、エチレン酢酸ビニル共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate copolymer、EVA)接着フィルムとポリオレフィンエラストマー(Poly Olefin Elastomer、POE)接着フィルムという2種類に分けられる。EVA接着フィルムは、コストが低いが、吸水率が高く、加水分解による酢酸の発生が容易になるため、光起電力モジュールに比較的深刻な電位誘起劣化(Potential Induced Degradation、PID)現象が現れる。一方、POE接着フィルムは、PID抑止効果はより高いが、コストが高い。このゆえに、通常、電池の正面にPOE接着フィルムを設け、電池の裏面にEVA接着フィルムを設ける方式で封止フィルムを構築している。
【0022】
セルストリングの正面にPOE接着フィルム、裏面にEVA接着フィルムを敷設した後、積層中に光起電力モジュールの周辺領域の接着フィルムが接触する接触界面は、POE材料とEVA材料の接触界面であり、POE材料とEVA材料が異なる種類の材料であるため、光起電力モジュールの周辺領域の接着フィルム接着強度には限りがあり、高温多湿劣化後、光起電力モジュールの周辺領域の封止フィルムは、剥離したり、接着剤が脱落したりしやすくなり、ひいては光起電力モジュールの密封性と耐用寿命に影響を与え、光起電力モジュールの信頼性を低下させてしまう。
【0023】
本発明の一実施例では、光起電力モジュールが提供され、接着フィルムを敷設する過程において、セルストリングの受光面に近接する第1カバープレートのセルストリングに向かう第1表面に、少なくとも一部の周辺領域に位置する第1サブ接着フィルムを設け、且つ第1サブ接着フィルムの第2カバープレートに向かう部分の材料と、第2接着フィルムの第1カバープレートに向かう部分の材料とが同じであることを確保し、そして、第1サブ接着フィルムの第1カバープレートから離れた表面に、第1表面における正投影が少なくとも第1表面の中心領域と一部の周辺領域を覆う第2サブ接着フィルムを積層して設置し、且つ第2サブ接着フィルムのセルストリングに向かう部分の材料がPOE材料である。第1サブ接着フィルムと第2接着フィルムの相手同士に向かう部分の材料を同じ材料に設定することで、光起電力モジュールの積層中、セルストリングの対向する両側に位置する接着フィルムは、周辺領域にて同じ材料が接触する接触界面を形成し、ひいては積層後に形成された封止フィルムの周辺領域における接着強度を向上させ、光起電力モジュールにエッジ剥離または接着剤の脱落が発生する確率を下げ、第2サブ接着フィルムのセルストリングに向かう部分の材料をPOE材料に設定することにより、光起電力モジュールの電位誘起劣化現象を大幅に低減し、光起電力モジュールの信頼性と安定性を高めている。
【0024】
以下、本願の各実施例について図面を結合して詳細に説明する。しかしながら、当業者は理解できるが、読者に本願をよりよく理解させるために、本願の各実施例において多数の技術的細部が提案されているが、これらの技術的細部及び以下の各実施例に基づく種々の変更や修正がなくても、本願が保護を要求している技術案を実現することができる。
【0025】
図1図10に示すように、本願の一実施例では、光起電力モジュールを提供している。ここで、図1は、光起電力モジュール全体の構成を示す図であり、図2は、第1サブ接着フィルムの第1表面における正投影の構成を示す図であり、図3は、第1サブ接着フィルムの第1表面における別の正投影の構成を示す図であり、図4は、第2サブ接着フィルムの第1表面における正投影の構成を示す図であり、図5は、第2サブ接着フィルムの第1表面における別の正投影の構成を示す図であり、図6は、第1接着フィルム102の第1表面における上面図であり、図7は、セルストリングと第1接着フィルムの第1表面における上面図であり、図8は、第1サブ接着フィルムの断面図であり、図9は、第2接着フィルムの断面図であり、図10は、光起電力モジュール全体の別の構成を示す図である。
【0026】
光起電力モジュールは、順次積層して設置された第1カバープレート101、第1接着フィルム102、セルストリング103、第2接着フィルム104及び第2カバープレート105を含み、且つ、第1カバープレート101がセルストリング103の受光面に近接し、第1接着フィルム102は、順次積層されている第1サブ接着フィルム121と第2サブ接着フィルム122を含み、第1カバープレート101のセルストリング103に向かう第1表面111は、中心領域と、中心領域を取り囲む周辺領域とを含み、第1サブ接着フィルム121が第1表面111の少なくとも一部の周辺領域に位置し、第2サブ接着フィルム122が第1サブ接着フィルム121の第1表面111から離れた表面に位置し、且つ第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影が少なくとも第1表面111の周辺領域の一部の領域と中心領域を覆い、第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料と第2接着フィルム104の第1カバープレート101に向かう部分の材料とが同じであり、且つ、第2サブ接着フィルム122のセルストリング103に向かう部分の材料がPOE材料である。
【0027】
なお、当面の光起電力モジュールは積層成形工程における半製品の光起電力モジュールであり、積層成形工程を経てから初めて完成品の光起電力モジュールを形成することができる。完成品の光起電力モジュールでは、第1サブ接着フィルム121、第2サブ接着フィルム122および第2接着フィルム104は、セルストリング103を被覆して、第1カバープレート101と第2カバープレート105を接着する封止フィルムを形成し、且つ封止フィルムのエッジ部分が主に第1サブ接着フィルム121と第2接着フィルム104によって接着されることで形成されている。
【0028】
光起電力モジュールの製造工程において、第1カバープレート101の第1表面111の少なくとも一部の周辺領域に第1サブ接着フィルム121を敷設してから、第1サブ接着フィルム121の第1カバープレート101から離れた表面に第2サブ接着フィルム122を敷設し、第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料と第2接着フィルム104の第1カバープレート101に向かう部分の材料が同じになるようにすることで、積層中にセルストリング103の対向する両側の接着フィルムの光起電力モジュールの周辺領域における接触界面は材料が同じである接触界面になり、ひいては接着フィルム間の接着強度を増やし、接着フィルムからなる封止フィルムの高温多湿劣化時の光起電力モジュールの接着剤脱落または剥離の確率を低減する。第2サブ接着フィルム122のセルストリング103に向かう部分の材料をPOE材料に設定し、セルストリング103に向かう部分がPOE材料である第2サブ接着フィルム122によって、光起電力モジュールのPID抑止効果を高め、ひいては光起電力モジュールの信頼性を向上させる。第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影が少なくとも第1表面111の一部の周辺領域と中心領域を覆うように設置し、第1サブ接着フィルム121と第2サブ接着フィルム122が部分的に重なるようにすることで、第2サブ接着フィルム122のPOE材料の高すぎる流動性に起因して積層中に接着剤溢れが発生してしまい、封止フィルムに接着剤が不足になってしまうという問題を回避し、光起電力モジュールの封止効果を高めることができる。
【0029】
いくつかの実施例では、セルストリング103には、複数の電池セルが含まれてもよく、複数の電池セルのうちの各電池セルは、PERC電池、PERT電池(Passivated Emitter and Rear Totally-diffused cell、不動態化エミッタおよび裏面全拡散型セル)、TOPCon電池(Tunnel Oxide Passivated Contact、トンネル酸化膜パッシベーションコンタクトセル)、HIT/HJT電池(Heterojunction Technology、ヘテロ接合型セル)、インターデジタルバックコンタクト(Interdigitated back contact、IBC)のいずれか1種を含むが、これらに限定されていない。
【0030】
いくつかの実施例では、電池セルは、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池または多元系化合物太陽電池であってもよく、多元系化合物太陽電池は、具体的には硫化カドミウム太陽電池、ガリウムヒ素太陽電池、銅インジウムセレン太陽電池またはペロブスカイト太陽電池であってもよい。
【0031】
いくつかの実施例では、電池セルは、一体化電池または分割式電池であってもよく、分割式電池とは、完全な一体化電池が切断工程を経て形成された電池セルのことである。切断工程はレーザースロット+切断工程と熱応力電池分離工程を含む。分割式電池によってセルストリングを構築するメリットは、抵抗損失を低減することでセルストリングの発電電力を高めることができることである。オームの法則から、太陽電池相互接続の電気損失は電流の大きさの二乗に正比例することがわかる。電池を半分に切断すると、切断された後の電流の大きさも半分になり、電気損失もフル寸法電池損失の1/4に低下する。
【0032】
なお、電池セルが分割式電池の場合、分割式電池は2分割電池、3分割電池、4分割電池または8分割電池などであってもよい。本願の実施例では、分割の具体的な方式について、制限しない。
【0033】
いくつの実施例では、第1表面111は矩形であり、且つ周辺領域が対向する2つの長辺領域112と対向する2つの短辺領域113から構成され、長辺領域112と短辺領域113が重なる領域はコーナー領域であり、第1サブ接着フィルム121が少なくとも第1表面111の周辺領域における少なくとも1つのコーナー領域を覆っている。
【0034】
光起電力モジュールの上下2層のカバープレートが規格の一致した直方体のカバープレートである場合、第1カバープレート101の第1表面111は矩形であり、第1表面111が対向する2つの長辺と対向する2つの短辺を含んでいるため、第1表面111の周辺領域は短辺の延在方向と一致する2つの短辺領域113と長辺の延在方向と一致する2つの長辺領域112から構成され、長辺領域112と短辺領域113が重なる領域はコーナー領域であることと見なすことができる。
【0035】
光起電力モジュールが積層成形された後、封止フィルムでは、高温多湿老化後に最も接着剤脱落または剥離が発生しやすい部分は、コーナー領域の上方に位置する封止フィルムの部分である。したがって、第1接着フィルム102を敷設する過程において、第1表面111の周辺領域の少なくとも1つのコーナー領域に第1表面111と密着する第1サブ接着フィルム121を敷設し、そして、第1サブ接着フィルム121の第1表面111から離れた表面と第1表面111に第2サブ接着フィルム122を敷設することができる。1つのコーナー領域のみに第1サブ接着フィルム121を敷設する場合、図1に示す光起電力モジュール全体の構成を示す図では、対向する2つの第1サブ接着フィルム121のうちの1つが存在せず、第2サブ接着フィルム122はそれぞれ第1サブ接着フィルム121の第1カバープレート101から離れた表面と第1表面に接触する。
【0036】
コーナー領域に敷設された第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料と第2接着フィルム104の第1カバープレート101に向かう部分の材料が同じであるため、積層中にセルストリング103の両側の接着フィルムのコーナー領域における少なくとも一部の接触界面は、同じ材料の接触界面であり、コーナー領域における封止フィルムの接着強度を効果的に増やし、第1サブ接着フィルム121が敷設されたコーナー領域における封止フィルムに接着剤脱落または剥離が発生する確率を低減し、光起電力モジュールの信頼性を高めることができる。
【0037】
なお、理解を容易にするために、本願の実施例では、第1表面111が矩形である場合を例に説明しているが、いくつかの実施例では、第1表面111は円形、楕円形またはその他の多角形であってもよく、本願の実施例ではこれについて限定しない。第1表面111が円形または楕円形などのコーナーを備えないパターンである場合、第1サブ接着フィルム121は第1表面111の中心領域を取り囲む周辺領域全体を覆っている。
【0038】
いくつかの実施例では、第1サブ接着フィルム121は、それぞれ異なる短辺領域113に位置する2つのコーナー領域を覆うことができ、いくつかの実施例では、第1サブ接着フィルム121は長辺領域112と短辺領域113が重なって形成されたすべてのコーナー領域を覆うこともできる。
【0039】
いくつかの実施例では、第1サブ接着フィルム121は、少なくとも第1表面111の周辺領域における2つの短辺領域113を覆っている。
【0040】
第1サブ接着フィルム121を敷設する過程において、第1表面111の周辺領域のうち少なくとも1つのコーナー領域にそれぞれ第1サブ接着フィルム121を敷設する場合、通常、各コーナー領域に対して1つずつ第1サブ接着フィルム121を敷設する必要があり、工程が煩雑である。また、第2サブ接着フィルム122中のPOE材料の部分は流動性が大きく、接着剤溢れによる封止フィルムの接着剤不足または気泡が発生する問題を回避するために、敷設された第2サブ接着フィルム122全体の体積が大きくなり、ひいては光起電力モジュールのコストが高くなる。
【0041】
したがって、第1サブ接着フィルム121を敷設する過程において、少なくとも第1表面111の周辺領域における2つの短辺領域113を覆う第1サブ接着フィルム121を直接敷設することができる。第1サブ接着フィルム121が少なくとも第1表面111の周辺領域の2つの短辺領域113を覆っているため、積層前の第2サブ接着フィルム122は、第1表面111に接触することなく、第1サブ接着フィルム121の第1カバープレート101から離れた表面にのみ接触する。積層中、第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影が第1表面111の中心領域にある部分は、溶融された後に第1サブ接着フィルム121と第1カバープレート101で取り囲まれた窪み内に徐々に流れ、第1サブ接着フィルム121は第2サブ接着フィルム122における流動性の高いPOE材料に対して一定の遮断能力を有し、第2サブ接着フィルム122の長辺領域112の延在方向における接着剤溢れの発生確率と溢れ出た第2サブ接着フィルム122の総量を低減し、ひいては封止フィルムの接着剤不足の発生確率と大量の気泡が発生する確率を下げ、封止フィルムの品質を高めることができる。
【0042】
また、第1サブ接着フィルム121が第1表面111の周辺領域における2つの短辺領域113を覆っているため、積層中に短辺領域113上の接着フィルムの接触界面はいずれも同じ材料の接触界面であり、短辺領域113上の封止フィルムの接着強度が大幅に向上し、短辺領域113がすべてのコーナー領域を含んでいるため、積層して形成された光起電力モジュールの周辺コーナー部における封止フィルムは、高温多湿劣化後に剥離または接着剤脱落が発生する確率が大幅に低下し、光起電力モジュールの信頼性を高めている。
【0043】
また、第1サブ接着フィルム121を敷設する過程において、第2サブ接着フィルム122の接着剤溢れに対する遮断をさらに向上させるために、第1表面111の長辺領域112にも第1サブ接着フィルム121を敷設してもよく、例えば、いずれか1つの長辺領域112にコーナー領域を除く少なくとも一部または全部の領域を覆う第1サブ接着フィルム121を敷設したり、2つの長辺領域112にそれぞれコーナー領域を除く全部の領域を覆う第1サブ接着フィルム121を敷設したりする。長辺領域112にも第1サブ接着フィルム121を敷設することにより、積層中、第1サブ接着フィルム121は第2サブ接着フィルム122における高流動性のPOE材料が溢れ出ることを可能な限り遮断し、封止フィルムの接着剤不足の確率と大量の気泡が発生する確率を下げ、光起電力モジュールの信頼性を高めることができる。
【0044】
いくつかの実施例では、長辺領域112の延在方向において、第1サブ接着フィルム121の幅は、10mm~70mmである。
【0045】
図3に示すように、長辺領域112の延在方向において、第1サブ接着フィルム121の幅とは、長辺領域112の延在方向において、第1サブ接着フィルム121の対向する両側のエッジ間の間隔w1を指す。第1サブ接着フィルム121の主な機能は、セルストリング103の両側接着フィルムの積層過程における周辺領域の接着フィルムの結合強度を高めることである。
【0046】
通常、長辺領域112の延在方向において、セルストリング103のうちのエッジ電池セルと近接する第1カバープレート101のエッジとの間隔は小さく、第1サブ接着フィルム121の幅が大きすぎる場合、第1サブ接着フィルム121は直接セルストリング103に接触し、または、積層中に接着フィルム材料の流動性によりセルストリング103の表面に流れる可能性があり、ひいては光起電力モジュールの使用中のPID抑止効果が大幅に低下し、光起電力モジュールの信頼性の低下を招く。第1サブ接着フィルム121の幅が小さすぎる場合、第1サブ接着フィルム121全体の体積が小さく、積層中に第2サブ接着フィルム122中のPOE材料の流動性が強いため、流動しているPOE材料が第1サブ接着フィルム121の全部または一部を第1カバープレート101と第2カバープレート105の間に押し出してしまい、ひいては積層中にセルストリング103の両側の接着フィルムの周辺領域における接触界面が異なる材料の接触界面になり、接着フィルム間の接着強度を効果的に高めることができなくなる。
【0047】
したがって、第1サブ接着フィルム121を敷設する過程において、敷設した第1サブ接着フィルム121の長辺領域112の延在方向における幅を10mm~70mmに設定することができ、例えば、第1サブ接着フィルム121の幅を11mm、12.5mm、15mm、20mm、25mm、32.5mm、35mm、45mm、50mm、60mmまたは65mmなどに設定してもよい。第1サブ接着フィルム121の幅を適切な範囲に設定することにより、第1サブ接着フィルム121とセルストリング103の受光面との接触を避け、第2サブ接着フィルム122におけるPOE材料の部分がセルストリング103の受光面に接触することを確保し、光起電力モジュールに強いPID抑止効果を持たせ、第2サブ接着フィルム122におけるPOE材料の溢流が光起電力モジュールの周辺領域の接着フィルム結合強度に与える影響を低減し、積層形成された封止フィルムの周辺領域の結合強度を高め、光起電力モジュールの周辺領域と片隅箇所における封止フィルムに高温多湿劣化時に接着剤脱落が発生する確率を下げる。
【0048】
なお、第1サブ接着フィルム121が2つの短辺領域113を覆っている場合、対向する2つの短辺領域113にそれぞれ位置する第1サブ接着フィルム121の幅は同じであってもよいし、異なってもよく、第1サブ接着フィルム121が少なくとも2つのコーナー領域を覆っている場合、各コーナー領域における第1サブ接着フィルム121の幅は同じであってもよいし、異なってもよい。
【0049】
いくつかの実施例では、長辺領域112の延在方向において、第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影のエッジと第1表面111のエッジとの間隔は、10mm~20mmであり、図4は、第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影の構成を示す図である。
【0050】
長辺領域112の延在方向において、第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影のエッジと第1表面111のエッジとの間の間隔とは、第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影において、長辺領域112の延在方向において第2サブ接着フィルム122の前記第1表面111に近接するエッジと近接する第1表面111のエッジとの間の距離w2を指す。第2サブ接着フィルム122の主な機能は、セルストリング103と第1カバープレート101を接着し、光起電力モジュールのPID抑止効果を確保することである。
【0051】
長辺領域112の延在方向において、第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影のエッジと第1表面111のエッジとの間隔が大きすぎると、第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影と第1表面111の面積との比が小さすぎるようになる。光起電力モジュールのPID抑止効果を確保するために、セルストリング103は第2サブ接着フィルム122中のPOE材料の一部に接触する必要がある。したがって、セルストリング103の第1表面111における正投影の面積は第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影の面積以下である。第2サブ接着フィルム122の面積割合が小さい場合、セルストリング103の受光面の面積と光起電力モジュールの受光面の面積との比も小さくなり、光起電力モジュールの光電変換効率が低い。第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影のエッジと第1表面111のエッジとの間隔が小さすぎると、第2サブ接着フィルム122と第1サブ接着フィルム121との重なり領域が大きすぎて、第2サブ接着フィルム122が第2接着フィルム104と第1サブ接着フィルム121との間の領域に溢れ出やすくなり、第1サブ接着フィルム121の第2接着フィルム104に向かう部分がPOE材料でない場合、光起電力モジュールの周辺領域に、面積が大きくて材料が異なる接着フィルムの接触界面が形成され、このため、光起電力モジュールの周辺領域の接着フィルムの接着強度に影響を与える。
【0052】
したがって、第2サブ接着フィルム122を敷設する過程において、長辺領域112の延在方向における第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影のエッジと第1表面111のエッジとの間隔を10mm~20mmに設定することができ、例えば、10.5mm、11mm、12mm、12.5mm、13.5mm、15mm、16.5mm、17.5mmまたは19mmなどに設定してもよい。第2サブ接着フィルム122のエッジと光起電力モジュールのエッジとの間隔を適切な範囲に設定することにより、セルストリング103の受光面の面積と光起電力モジュールの受光面の面積との比が大きいように確保し、セルストリング103の光起電力モジュールに照射された光に対する吸収率と光起電力モジュールの光電変換効率を向上させ、接着強度の低くて接着フィルムが異なる大面積の接触界面を光起電力モジュールの周辺領域に形成することを回避し、光起電力モジュールの周辺領域における接着フィルム間の接着強度と信頼性を高めることができる。
【0053】
また、図5に示すように、第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影は、長辺領域112のコーナー領域を除く少なくとも一部の領域だけでなく、長辺領域112のコーナー領域を除く残りのすべての領域を覆うことができ、これによって、第2サブ接着フィルム122の接着フィルム体積と第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影の被覆面積を増やし、積層中に接着剤溢れによる接着剤不足または気泡の問題を避けることができる。
【0054】
いくつかの実施例では、長辺領域112の延在方向において、第1サブ接着フィルム121の第1表面111における正投影と第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影との重なり領域の幅は、5mm~12mmである。図6は、第1サブ接着フィルム121と第2サブ接着フィルム122の第1表面111における上面図である。
【0055】
第1サブ接着フィルム121の第1表面111における正投影と第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影との重なり領域の幅とは、長辺領域112の延在方向において、第1サブ接着フィルム121の正投影と第2サブ接着フィルム122の正投影の中で、互いに近接する2つのエッジ間の間隔w3を指す。正投影の重なり領域の幅が大きすぎる場合、第2サブ接着フィルム122のPOE材料が良好な流動性を備えたため、第2サブ接着フィルム122のPOE材料が元々覆われていない第1サブ接着フィルム121の表面に流れやすく、第1サブ接着フィルム121の第1カバープレート101から離れた表面を完全に覆うことさえあり、第1サブ接着フィルム121と第2接着フィルム104の間にPOEフィルムが形成され、ひいては光起電力モジュールの周辺領域に接着フィルムの異なる大面積の接触界面が形成され、光起電力モジュールの周辺領域の接着フィルム接着強度を低下させてしまう。正投影の重なり領域の幅が小さすぎる場合、第2サブ接着フィルム122の接着フィルムの総量が少なく、第2サブ接着フィルム122が良好な流動性を有するため、積層中に、第2サブ接着フィルム122が第1表面111の中心領域とセルストリング103との間の隙間を充填する時、接着剤が不足になったり、大量の気泡が発生したりする問題が起こり、封止フィルムの品質及び光起電力モジュールの品質に影響するおそれがある。
【0056】
したがって、第1サブ接着フィルム121と第2サブ接着フィルム122を敷設する過程において、第1サブ接着フィルム121と第2サブ接着フィルム122が部分的に重なる幅、即ち、長辺領域112の延在方向において、第1サブ接着フィルム121の第1表面111における正投影と第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影との重なり領域の幅を5mm~12mmに設定することができ、例えば、5.25mm、5.5mm、6mm、6.5mm、7.5mm、8.5mm、10mmまたは11.25mmなどに設定することができる。第1サブ接着フィルム121と第2サブ接着フィルム122の重なり部分の幅を適切な範囲内に設定することにより、積層後の光起電力モジュールの周辺領域における異なる接着フィルムが接触する接触界面の面積を小さくし、光起電力モジュールの周辺領域の接着フィルムの接着強度を向上させると同時に、光起電力モジュールの封止フィルム中に大量の気泡または接着剤不足の領域があることを回避し、封止フィルムと光起電力モジュールの品質を高めることができる。
【0057】
いくつかの実施例では、長辺領域112の延在方向において、セルストリング103のエッジと第2サブ接着フィルム122のエッジとの間の間隔は、10mm~15mmである。
【0058】
セルストリング103のエッジと第2サブ接着フィルム122のエッジとの間の間隔とは、長辺領域112の延在方向において、セルストリング103の最外側の電池セルのエッジと近接する第2サブ接着フィルム122のエッジとの間の間隔w4を指す。第2サブ接着フィルム122の主な機能は、第1表面111の中心領域とセルストリング103の間の隙間を充填するとともに、光起電力モジュールのPID抑止効果を高めることである。セルストリング103のエッジと第2サブ接着フィルム122のエッジとの間の間隔が大きすぎる場合、セルストリング103の寸法が第2サブ接着フィルム122の寸法よりはるかに小さいと、セルストリング103の第1表面111における正投影の面積と第1表面111の面積との比率が低くなり、積層して形成された光起電力モジュールでは、光起電力モジュールに照射された光に対するセルストリング103の吸収率が低くなり、光起電力モジュールの光電変換効率が悪くなる。ここで、セルストリング103と第2サブ接着フィルム122の寸法とは、それぞれ、セルストリング103の第1表面111における正投影の面積の大きさと第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影の面積の大きさを指す。
【0059】
第2サブ接着フィルム122の第1表面111における正投影エッジと第1表面111のエッジとの間の間隔が小さすぎると、第1サブ接着フィルム121と第2サブ接着フィルム122が積層中に流動性を備えているため、セルストリング103の受光面が第2サブ接着フィルム122におけるPOE材料以外の材料と接触し、光起電力モジュールのPID抑止効果が低下してしまい、光起電力モジュールの信頼性に影響するおそれがある。
【0060】
したがって、第2サブ接着フィルム122とセルストリング103を設置する過程において、セルストリング103のエッジと第2サブ接着フィルム122のエッジとの間の間隔、即ち、長辺領域112の延在方向において、セルストリング103の最も外側の電池セルのエッジと近接する第2サブ接着フィルム122のエッジとの間の間隔を10mm~15mmに設定することができ、例えば、10.25mm、10.5mm、10.75mm、11mm、11.5mm、12.5mm、13.75mmまたは14.5mmなどに設定することができる。セルストリング103のエッジと第2サブ接着フィルム122のエッジとの間の間隔を適切な範囲に設定することにより、光起電力モジュールに照射された光に対するセルストリング103の吸収率を向上させ、ひいては光起電力モジュールの光電変換効率を高めるとともに、セルストリング103の受光面がPOE材料以外の他の接着フィルムに接触することを回避し、光起電力モジュールのPID抑止効果を高め、光起電力モジュールの信頼性を向上させることができる。
【0061】
いくつかの実施例では、第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料は、EVA材料、PVB材料またはPOE材料である。
【0062】
第1サブ接着フィルム121を設ける場合、通常、第2接着フィルム104の第1カバープレート101に向かう部分の材料に基づいて行うが、光起電力モジュールが単一ガラスモジュールの場合、第2接着フィルム104は、主に第2カバープレート105を接着し、湿気を防く機能を果たし、光起電力モジュールが単一ガラスモジュールの場合、セルストリング103の裏面は、直接POE材料以外の接着フィルムに接触することができ、光起電力モジュール全体のコストを削減するために、第2接着フィルム104を単層のEVA接着フィルムまたはPVB接着フィルムに選択することができる。これにより、光起電力モジュールの防水性と耐候性を高めることができる。この場合、第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料は、第2接着フィルム104と同じEVA材料またはPVB材料であってもよい。
【0063】
光起電力モジュールが二重ガラスモジュールの場合、通常、セルストリング103の裏面のPID抑止効果を考慮するが、この場合、通常、単層のPOE接着フィルムまたはセルストリング103に向かう部分がPOE材料である複合接着フィルムを第2接着フィルム104として用いる。これによって、光起電力モジュールの防水性と耐候性を確保した上で、さらに光起電力モジュールのPID抑止効果を高めることができる。この場合、第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料をPOE材料に設定することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、第1サブ接着フィルム121は、順次積層された第1接着フィルム層210及び第2接着フィルム層211を含み、第1接着フィルム層210が第2カバープレート105に向かっており、且つ第1接着フィルム層210の材料と第2接着フィルム104の第1カバープレート101に向かう部分の材料とが同じである。
【0065】
第1サブ接着フィルム121を敷設する前に、順次積層された第1接着フィルム層210と第2接着フィルム層211を備え、且つ第2カバープレート105に向かう第1接着フィルム層210の材料と第2接着フィルム104の第1カバープレート101に向かう部分の材料とが同じである複合接着フィルムを第1サブ接着フィルム121として選択することができる。複合接着フィルムを第1サブ接着フィルム121として用いることで、第1接着フィルム層210によって積層中にセルストリング103の両側に位置する接着フィルム間の接着強度を向上させるとともに、第2接着フィルム層211は、他の機能要求に応じて特定種類の接着フィルム、例えば、吸水変色粒子がドーピングされた湿気検知接着フィルム層や吸水後の架橋度が向上する封止フィルム層などに設定することもできる。これにより、光起電力モジュールの周辺領域の接着フィルムの結合強度を高めるとともに、光起電力モジュールの実用性と機能を広げることができる。
【0066】
理解できるように、第2接着フィルム層211は、機能が単一の1つの接着フィルム層であってもよいし、複数の接着フィルムが積層して設置され、且つ接着フィルムごとに異なる機能を備える複合接着フィルム層であってもよく、例えば、接着フィルム層全体が湿気検知接着フィルム層であってもよいし、積層して設置された湿気検知接着フィルム層と封止フィルム層から構成されてもよい。
【0067】
いくつかの実施例では、第2サブ接着フィルム122は、POE接着フィルム、セルストリング103に向かう部分の材料がPOE材料であるPE接着フィルムまたはPEP接着フィルムを含む。
【0068】
第2サブ接着フィルム122も第1サブ接着フィルム121と類似した構造を備えてもよく、第2サブ接着フィルム122は完全にPOE材料から構成されたPOE接着フィルムであってもよいし、積層して設置された複数の接着フィルム層を備え、且つ第2カバープレート105に向かう接着フィルム層がPOE接着フィルム層である複合接着フィルム層、例えば、セルストリング103に向かう部分の材料がPOE材料であるPE接着フィルムまたはPEP接着フィルムなどであってもよい。機能需要に応じて、セルストリング103に向かう部分の材料がPOE材料である複合接着フィルムまたは全体がPOE材料から構成されたPOE接着フィルムを第2サブ接着フィルム122として選択することにより、光起電力モジュールのPID抑止効果を効果的に向上させ、光起電力モジュールの信頼性を高めることができる。
【0069】
いくつかの実施例では、第2接着フィルム104は、順次積層された第3接着フィルム層410と、第4接着フィルム層411と、を含み、第3接着フィルム層410が第1カバープレート101に向かっており、且つ第3接着フィルム層410の材料と第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料とが同じである。
【0070】
第2接着フィルム104の主な機能は、光起電力モジュールの湿気防止能力と劣化防止能力を提供することであるが、高温多湿条件下での劣化防止能力は、セルストリング103の両側の接着フィルムの接着強度の影響を受けている。したがって、第2接着フィルム104を敷設する過程において、機能とコストの需要に応じて、同じ材料から構成された単層接着フィルムを第2接着フィルム104として選択することができ、それとともに、選択された材料が第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料と同じであることを確保すればよく、例えば、POE接着フィルム、EVA接着フィルムまたはPVB接着フィルムを第2接着フィルム104として選択することができる。
【0071】
第2接着フィルム104に対して他の機能要求がある場合、第2接着フィルム104を、積層して設置された第3接着フィルム層410と第4接着フィルム層411から構成されるように設置することができ、ここで、第3接着フィルム層410が第1カバープレート101に向かっており、且つ第3接着フィルム層410の材料と第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料が同じである。この中で、その他の機能要求は、吸水検出機能または二次封止機能などであってもよく、吸水検出機能は、接着フィルム層に吸水変色粒子をドーピングすることで実現でき、二次封止機能は、接着フィルム層に吸水後の架橋度が増大する材料をドーピングして接着フィルム層構築を行うことで実現できる。機能の需要に応じて、第2接着フィルム104を積層して設置された2つの接着フィルム層として設け、且つ第1カバープレート101に向かう第3接着フィルム層410の材料と第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料が同じであることにより、光起電力モジュールの周辺領域の接着フィルム接合強度を向上させるとともに、光起電力モジュールの機能と適用シーンを広げることができる。
【0072】
いくつかの実施例では、第2接着フィルム104は、順次積層されている第3サブ接着フィルム141と、第4サブ接着フィルム142と、を含み、第2カバープレート105のセルストリング103に向かう第2表面151は、中心領域と、中心領域を取り囲む周辺領域と、を含み、第3サブ接着フィルム141が第2表面151の少なくとも一部の周辺領域に位置し、第4サブ接着フィルム142が第3サブ接着フィルム141の第2表面151から離れた表面に位置し、且つ第1サブ接着フィルム121の第1カバープレート101における正投影が第3サブ接着フィルム141の第1カバープレート101における正投影と少なくとも部分的に重なっており、第3サブ接着フィルム141の第1カバープレート101に向かう部分の材料と第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料とが同じである。
【0073】
第2接着フィルム104を敷設する過程において、第1接着フィルム102の敷設と類似しているように、第2接着フィルム104を、積層して設置された第3サブ接着フィルム141と第4サブ接着フィルム142から構成されるように設置することができ、第2カバープレート105のセルストリング103に向かう第2表面151は第1カバープレート101の第1表面111と類似し、第3サブ接着フィルム141と第2表面151の位置関係は第1サブ接着フィルム121と第1表面111の位置関係と類似し、第4サブ接着フィルム142と第3サブ接着フィルム141および第2表面151の関係は第2サブ接着フィルム122と第1サブ接着フィルム121および第1表面111の関係と類似している。ここで、繰り返して説明する必要がない。
【0074】
第3サブ接着フィルム141と第1サブ接着フィルム121は、それぞれ第2表面151の周辺領域と第1表面111の周辺領域に位置しており、第3サブ接着フィルム141を特定の位置に設けることで、第3サブ接着フィルム141の第1表面111における正投影と第1サブ接着フィルム121の第1表面111における正投影とは、少なくとも部分的に重なっており、且つ第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料と第3サブ接着フィルム141の第1カバープレート101に向かう部分の材料とが同じであるため、積層中にセルストリング103の両側に位置する接着フィルムは、光起電力モジュールの周辺領域において同じ材料が接触する接触平面を形成することを確保し、光起電力モジュールの周辺領域の接着フィルムの結合強度を高め、光起電力モジュールの接着剤脱落の発生確率を下げることができる。
【0075】
また、第2接着フィルム104を、第3サブ接着フィルム141と第4サブ接着フィルム142で積層して構成されるように設置することで、光起電力モジュールが単一ガラスモジュールの場合、コストのより低い接着フィルム層を第4サブ接着フィルム142として選択して第2接着フィルム104を構築し、光起電力モジュール全体のコストを削減することができる。
【0076】
以上のことから、本願の一部の実施例に提供された光起電力モジュールでは、セルストリング103の受光面に近接する第1カバープレート101のセルストリング103に向かう第1表面111に、少なくとも一部の周辺領域に位置する第1サブ接着フィルム121を設け、且つ第1サブ接着フィルム121の第2カバープレート105に向かう部分の材料を第2接着フィルム104の第1カバープレート101に向かう部分の材料と同じようにし、そして、第1サブ接着フィルム121の第1カバープレート101から離れた表面に、第1表面111における正投影が少なくとも第1表面111の中心領域と一部の周辺領域を覆う第2サブ接着フィルム122が積層して設置され、且つ第2サブ接着フィルム122のセルストリング103に向かう部分の材料がPOE材料である。第1サブ接着フィルム121と第2接着フィルム104の相手同士に向かう部分の材料を同じ材料に設定することで、光起電力モジュールの積層中、セルストリング103の対向する両側に位置する接着フィルムは、周辺領域にて同じ材料が接触する接触界面を形成し、ひいては積層後に形成された封止フィルムの周辺領域における接着強度を向上させ、光起電力モジュールにエッジ剥離または接着剤脱落が発生する確率を下げ、第2サブ接着フィルム122のセルストリング103に向かう部分の材料をPOE材料に設定することで、光起電力モジュールの電位誘起劣化現象を大幅に低減し、光起電力モジュールの信頼性と安定性を高めている。
【0077】
本願は、好ましい実施例で上記のように公開されるが、請求項を限定するためのものではなく、いずれの当業者も、本願の構想を逸脱しない前提で、本願の精神と範囲からずれることなく、可能な変動と修正を若干行うことができ、従って、本願の保護範囲は本願の請求項に限定された範囲に準じるべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10