IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東亜建設工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図1
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図2
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図3
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図4
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図5
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図6
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図7
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図8
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図9
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図10
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図11
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図12
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図13
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図14
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図15
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図16
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図17
  • 特許-洗掘防止構造の構築方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】洗掘防止構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/04 20060101AFI20240716BHJP
   E02D 15/10 20060101ALI20240716BHJP
   E02D 23/02 20060101ALI20240716BHJP
   E02D 27/52 20060101ALN20240716BHJP
【FI】
E02B3/04 301
E02D15/10
E02D23/02 G
E02D27/52 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023160328
(22)【出願日】2023-09-25
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】川又 義徳
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-19515(JP,A)
【文献】特開2011-137365(JP,A)
【文献】特開2018-40224(JP,A)
【文献】特開2022-19177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04ー 3/14
E02D 15/00-15/10
E02D 23/02
E02D 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底地盤に立設されている水中構造体の周囲に、フィルター層とこのフィルター層上に積層されたアーマー層とを有する洗掘防止構造を構築する洗掘防止構造の構築方法において、
前記フィルター層を形成する際には、中詰め材が袋体に収容されたフィルター層用根固めユニットを用いて、吊り枠によって一度に複数個の前記フィルター層用根固めユニットを上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げて、前記水底地盤上にそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットを設置する工程を繰返して、多数の前記フィルター層用根固めユニットを上面視で隣り合うどうしを接触させて前記水底地盤上に設置し、
一度に吊り下げる前記フィルター層用根固めユニットは、同じ吊下げレベルの三個の前記フィルター層用根固めユニットを一単位として、その一単位でのそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットの吊り位置は上面視で正三角形を形成する位置に設定して、少なくとも1つの前記一単位を一度に吊り下げ、複数の前記一単位を一度に吊り下げる場合にはそれぞれの前記一単位の上面視の重心位置どうしを一致させ、
前記アーマー層を形成する際には、中詰め材が袋体に収容されたアーマー層用根固めユニットを用いて、吊り枠によって一度に複数個の前記アーマー層用根固めユニットを上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げて、前記フィルター層上にそれぞれの前記アーマー層用根固めユニットを設置する工程を繰返して、多数の前記アーマー層用根固めユニットを、上面視で隣り合う前記フィルター層用根固めユニットどうしを跨ぐように前記フィルター層上に設置する洗掘防止構造の構築方法。
【請求項2】
前記フィルター層を形成する際に、2つの前記一単位を一度に吊り下げて、一方の前記一単位でのそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットの前記吊り位置が上面視で形成する正三角形と、他方の前記一単位でのそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットの前記吊り位置が上面視で形成する正三角形とを、一致させた前記重心位置を中心にして180°回転した反対向きにする請求項1に記載の洗掘防止構造の構築方法。
【請求項3】
それぞれの前記一単位毎に、吊下げレベルを異ならせる請求項1または2に記載の洗掘防止構造の構築方法。
【請求項4】
一度に吊り下げる前記フィルター層用根固めユニットとして、同じ吊下げレベルの三個の前記フィルター層用根固めユニットを有してそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットの吊り位置を上面視で一直線上に設定して、その重心位置を、それぞれの前記一単位の上面視の前記重心位置と一致させた1つの直線配置ユニット群を追加し、この直線配置ユニット群の吊下げレベルを、それぞれの前記一単位の吊下げレベルよりも高くする請求項3に記載の洗掘防止構造の構築方法。
【請求項5】
それぞれの前記アーマー層用根固めユニットは、隣り合うどうしを接触させて設置する請求項1または2に記載の洗掘防止構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗掘防止構造の構築方法に関し、さらに詳しくは、中詰材が袋体に収容された根固めユニットを用いて、洗掘防止効果の高い洗掘防止構造を効率的に構築できる洗掘防止構造の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着床式の洋上風力発電設備などは、水底地盤に立設されるモノパイルを有している。モノパイルのような水底地盤に立設される水中構造体の周囲の水底地盤には、洗掘防止構造を構築することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で提案されている方法では、水底地盤に対して、トレミー管を通じて砕石を投入し、投入した砕石を均すことでフィルター層を構築する。次いで、このフィルター層を貫通させてモノパイルを水底地盤に打設する。次いで、フィルター層上に、砕石類が袋体に充填された砕石ユニット(根固めユニット)を多数設置して、モノパイルの周囲に多数の砕石ユニットを敷き詰めて洗掘防止構造を構築する。この洗掘防止構造では、隣り合う砕石ユニットが上面視で重なり合うように設置される。このように砕石ユニットを設置するために、吊り治具に複数の砕石ユニットを吊り下げる工程では、この複数の砕石ユニットは上面視において互いに重なり合うように配置される。
【0004】
上述した方法では、吊り下げている複数の砕石ユニットが同時に着底しなければ、吊っている重心位置が変化するので、これに伴い、最初に着底した砕石ユニットに対する他の砕石ユニットの上面視での位置が変化して着底位置も変化する。そのため、吊り下げられている段階で複数の砕石ユニットどうしが上面視で互いに重なるように配置されていると、水底地盤(フィルター層)に設置された時に、砕石ユニットどうしの重なり量が過大になったり、過大なすき間が生じることが懸念される。特許文献1に提案されている発明では、砕石ユニットの下にフィルター層を設置することは必須ではないので(特許文献1の段落0104)、フィルター層を形成しない場合は砕石ユニットどうしにすき間が生じることで洗掘防止効果が低減する。一方、フィルター層を形成する場合には、水底地盤に投入した砕石を均すための大規模な均し作業が必要になるため、作業効率を向上させるには障害になる。それ故、中詰材が袋体に収容された根固めユニットを用いて洗掘防止構造を構築するに際して、作業効率および洗掘防止効果をより向上させるには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-19515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、中詰材が袋体に収容された根固めユニットを用いて、洗掘防止効果の高い洗掘防止構造を効率的に構築できる洗掘防止構造の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の洗掘防止構造の構築方法は、水底地盤に立設されている水中構造体の周囲に、フィルター層とこのフィルター層上に積層されたアーマー層とを有する洗掘防止構造を構築する洗掘防止構造の構築方法において、前記フィルター層を形成する際には、中詰め材が袋体に収容されたフィルター層用根固めユニットを用いて、吊り枠によって一度に複数個の前記フィルター層用根固めユニットを上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げて、前記水底地盤上にそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットを設置する工程を繰返して、多数の前記フィルター層用根固めユニットを上面視で隣り合うどうしを接触させて前記水底地盤上に設置し、一度に吊り下げる前記フィルター層用根固めユニットは、同じ吊下げレベルの三個の前記フィルター層用根固めユニットを一単位として、その一単位でのそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットの吊り位置は上面視で正三角形を形成する位置に設定して、少なくとも1つの前記一単位を一度に吊り下げ、複数の前記一単位を一度に吊り下げる場合にはそれぞれの前記一単位の上面視の重心位置どうしを一致させ、前記アーマー層を形成する際には、中詰め材が袋体に収容されたアーマー層用根固めユニットを用いて、吊り枠によって一度に複数個の前記アーマー層用根固めユニットを上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げて、前記フィルター層上にそれぞれの前記アーマー層用根固めユニットを設置する工程を繰返して、多数の前記アーマー層用根固めユニットを、上面視で隣り合う前記フィルター層用根固めユニットどうしを跨ぐように前記フィルター層上に設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記フィルター層と前記アーマー層とを、前記根固めユニットを用いて形成するので、大規模な均し作業が不要になり、洗掘防止構造を効率的に構築するには有利になる。また、一度に複数個の前記フィルター層用根固めユニットを上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げて、この一度に吊り下げる前記フィルター層用根固めユニットは、同じ吊下げレベルの三個の前記フィルター層用根固めユニットを一単位として、それぞれの前記フィルター層用根固めユニットの吊り位置は上面視で正三角形を形成する位置に設定して、複数の前記一単位を一度に吊り下げる場合にはそれぞれの前記一単位の上面視の重心位置どうしを一致させるので、一度に吊り下げたそれぞれの前記根固めユニットが同時に着底しなくても、吊下げている前記根固めユニット全体としての上面視の重心位置を安定させ易くなる。そのため、形成された前記フィルター層においては、隣り合う前記フィルター層用根固めユニットどうしの重なり量のばらつきを抑制できる。これに伴い、隣り合う前記フィルター層用根固めユニットどうしの間に過大なすき間が生じることを防止できる。そして、上面視で隣り合う前記フィルター層用根固めユニットどうしを跨ぐように前記アーマー層用根固めユニットを前記フィルター層上に設置するので、隣り合う前記フィルター層用根固めユニットどうしの間にすき間が生じていても、このすき間を前記アーマー層用根固めユニットによって塞ぐことができる。そのため、高い洗掘防止効果を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明により構築された洗掘防止構造を正面視で例示する説明図である。
図2図1の洗掘防止構造を上面視で例示する説明図である。
図3】根固めユニットを例示する説明図であり、図3Aは平坦面に載置した状態を正面視で例示し、図3Bは平坦面に載置した状態を上面視で例示し、図3Cは吊り下げた状態を正面視で例示する。
図4】吊り下げたフィルター層用根固めユニットの配置を正面視で例示する説明図である。
図5図4の根固めユニットの配置を上面視で例示する説明図である。
図6図4の根固めユニットを着底させた状態を例示する説明図である。
図7図6の根固めユニットを上面視で例示する説明図である。
図8】形成されたフィルター層を正面視で例示する説明図である。
図9図8のフィルター層を上面視で例示する説明図である。
図10図8の水底地盤にモノパイルを打設した状態を正面視で例示する説明図である。
図11図10のモノパイルおよびフィルター層を上面視で例示する説明図である。
図12】フィルター層上に形成されたアーマー層を上面視で例示する説明図である。
図13】吊り下げたアーマー層用根固めユニットの配置を正面視で例示する説明図である。
図14図13の根固めユニットの配置を上面視で例示する説明図である。
図15図13の根固めユニットを着底させた状態を例示する説明図である。
図16図15の根固めユニットを上面視で例示する説明図である。
図17】吊り下げたフィルター層用根固めユニットの配置の変形例を正面視で例示する説明図である。
図18図17の根固めユニットの配置を上面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の洗掘防止構造の構築方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図2に例示する洗掘防止構造1は本発明によって構築されている。この洗掘防止構造1は、フィルター層2とこのフィルター層2の上に積層されたアーマー層6とを有していて、水底地盤Bに立設されているモノパイル(水中構造体)14の周囲を覆うように形成されている。水中構造体14としては、着床式の洋上風力発電設備を構成するモノパイル構造やジャケット式構造などの杭状体や、各種構造体を支えるために水底地盤Bに立設されている支持杭などが例示される。
【0012】
フィルター層2は、水底地盤Bの洗掘防止(地盤土砂の吸出し防止)を主目的にして設置されている。アーマー層6は、潮流などによるフィルター層2の移動防止(重石機能)を主目的にして設置されている。
【0013】
フィルター層2は、図3に例示する多数のフィルター層用根固めユニット3(以下、ユニット3という)によって形成され、アーマー層6は、多数のアーマー層用根固めユニット7(以下、ユニット7という)によって形成されている。図3に例示するように、ユニット3は、袋体4に中詰め材5が収容されて構成されている。ユニット7も、袋体8に中詰め材9が収容されて構成されている。
【0014】
中詰め材5、9には、割栗石(JIS G 5006)などの石類やこれらと同等の部材が使用される。袋体4、8には、例えば合成繊維や天然繊維からなる網状の袋が使用される。袋体4、8の上端部には係止部4a、8aが付設されている。ユニット3とユニット7との主な相違点は大きさであり、ユニット7はユニット3よりも大きい。図3A、3Bに例示するように、無負荷状状態で平坦面に載置した場合、ユニット3、7は上面視で円形状になり、ユニット3の上面視の外径D1は例えば1.5m~2.5m、高さH1は0.5m~0.8m、ユニット7の上面視の外径D1は例えば2.5m~3.5m、高さH1は0.8m~1mである。尚、ユニット3、7の大きさは、現場海象環境条件や水底地盤Bの状況、水中構造体14の規模などに応じて適切に設定されるので、例示した大きさに限定されることはない。
【0015】
図3Cに例示するように、ユニット3、7は係止部4a、8aを介して吊り下げられると、中詰め材5、9の重さによって袋体4、8が上下方向に延在するので、平置時に比してユニット3、7の高さH2は大きくなり(H2>H1)、上面視の外径D2は小さくなる(D2<D1)ことが確認されている。フィルター層2を形成する工程では一度に複数個のユニット3がそれぞれの係止部4aを介して吊り下げられ、アーマー層6を形成する工程では一度に複数個のユニット7がそれぞれの係止部8aを介して吊り下げられる。
【0016】
詳述すると、図4図5に例示するように、吊りワイヤ13に連結された吊り枠10に複数本の吊り索11が接続されている。それぞれの吊り索11の下端部にはフック12が連結されている。1つのフック12に一個のユニット3(3A、3B)の係止部4aが係止することで、ユニット3が吊り下げられる。フック12としては、水上からの操作で係止部4aとの係止解除を行える公知の種々の仕様が採用される。吊りワイヤ13はクレーンの操作によって繰り出しおよび巻取りされる。ユニット7もユニット3と同様に吊り下げられる。
【0017】
次に、この洗掘防止構造1の構築する手順の一例を説明する。
【0018】
まず、水底地盤B上にユニット3を用いてフィルター層2を形成した後に、フィルター層2を貫通させてモノパイル14を水底地盤Bに打設する。その後、フィルター層2の上にユニット7を用いて1層から複数層のアーマー層6を形成して洗掘防止構造1が完成する。ユニット3、7の設置には例えば台船などに搭載されたクレーンを用いる。
【0019】
フィルター層2を形成する際には、図4図5に例示するように、吊り枠10を用いて一度に複数個のユニット3を上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げて、水底地盤B上に設置する工程を繰返して、多数のユニット3を上面視で隣り合うどうしを接触させて水底地盤B上に設置する。吊下げたユニット3が、上面視で互いに重ならない範囲で近接させた状態とは、上面視で隣接するユニット3どうしのすき間(最小すき間)が例えば0cm超以上10cm以下程度の状態である。
【0020】
一度に吊り下げるユニット3は、同じ吊下げレベルの三個のユニット3を一単位とする。この一単位においてはそれぞれのユニット3の吊り位置は上面視で正三角形を形成する位置に設定する。そして、少なくとも1つの一単位を一度に吊り下げる。複数の一単位を一度に吊り下げる場合にはそれぞれの一単位の上面視の重心位置Gどうしを一致させる。
【0021】
この実施形態では、2つの一単位を一度に吊り下げている。即ち、三個のユニット3Aにより構成される一単位と、三個のユニット3Bにより構成される一単位とを同時に吊り下げている。図5に例示する一点鎖線は、一方の一単位を構成する三個のユニット3Aの上面視での吊り位置を結んでいる。この一点鎖線により正三角形が形成されていて、この一単位の上面視の重心位置Gが示されている。図5に例示する二点鎖線は、他方の一単位を構成する三個のユニット3Bの上面視での吊り位置を結んでいる。この二点鎖線により正三角形が形成されていて、この一単位の上面視の重心位置Gが示されている。2つの一単位の上面視の重心位置Gは一致している。互いの重心位置Gが一致しているとは、上面視で互いの重心位置Gどうしの離間距離が例えば5cm以内の状態であり、実質的に一致していることを意味する。
【0022】
複数の一単位を一度に吊り下げる場合は、それぞれの一単位の上面視の重心位置Gどうしを一致させて、吊り下げているそれぞれのユニット3が上面視で互いに重ならない範囲で近接していればよ。一度に吊り下げるユニット3の数は特に限定されないが、三個~十二個程度である。この実施形態では、それぞれの一単位での吊り位置が上面視で形成する正三角形を、一致させた重心位置Gを中心にして180°回転した向きにしている。即ち、一方の一単位(ユニット3A、3A、3A)の吊り位置が上面視で形成する正三角形と、他方の一単位(ユニット3B、3B、3B)の吊り位置が上面視で形成する正三角形と、が重心位置Gを中心にして正反対の方向に向いていて、6個のユニット3が一度に吊り下げられている。
【0023】
吊下げレベルとは、吊り枠10からのユニット3の吊り下げ長さである。換言すると、吊下げた状態のユニット3の最下点の上下位置である。そして、同じ吊下げレベルとは、吊下げた状態のそれぞれのユニット3の最下点の上下位置が実質的に同じ(±10cm以内)であることを意味する。
【0024】
複数の一単位を一度に吊り下げる場合には、それぞれの一単位毎に、ユニット3の吊下げレベルを異ならせることが好ましい。この実施形態では、一方の一単位のユニット3Aの吊下げレベルが他方の一単位のユニット3Bの吊下げレベルよりも低くなっている。上下に隣接する一単位間の吊下げレベルの差異Sの大きさは例えば、0.3m~0.5m程度である。この実施形態では、吊下げレベルが異なる2つの一単位が使用されているが、吊下げレベルが異なる3つの一単位、或いは、4つ一単位を使用することもできる。
【0025】
図6図7に例示するように、一度に吊り下げたそれぞれのユニット3は、吊り枠10を下方移動させることで水底地盤Bに着底させる。これにより、上面視でそれぞれのユニット3を、隣り合うどうしを接触させて水底地盤B上に設置する。設置した隣り合うどうしのユニット3は突き合わせて接触した状態、より好ましくは一部が上下に重複して接触した状態にする。
【0026】
この実施形態では、一度に吊り下げるユニット3を、同じ吊下げレベルの三個のユニット3を一単位にして、その一単位でのそれぞれのユニット3の吊り位置を上面視で正三角形を形成する位置に設定している。そして、吊り枠10によって一度にそれぞれのユニット3を上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げることで、一度に吊り下げられているユニット3が上面視で細密に配置されている。そのため、水底地盤Bに設置した際に、上面視で隣り合うどうしのユニット3のすき間を最小限にすることができ、ユニット3どうしが過大に重複することも回避できる。
【0027】
ユニット3が着底すると、そのユニット3の重さは吊り枠10に作用しなくなるので、吊り枠10のバランスが崩れて揺動し易くなる。これに伴い、ユニット3を所望の位置に配置するには不利になる。この実施形態では、一度に吊り下げるユニット3を、同じ吊下げレベルの三個のユニット3を一単位にして、その一単位でのそれぞれのユニット3の吊り位置を上面視で正三角形を形成する位置に設定している。そのため、仮に、一単位のそれぞれのユニット3が同時に着底しなくても、この一単位の他のユニット3が直ぐに着底して吊り枠10が大きく揺動することを抑制できる。したがって、それぞれのユニット3を所望の位置に配置し易くなるので、優れた洗掘防止効果を有する洗掘防止構造1を構築するには有利になる。
【0028】
この実施形態では、順次、一方の一単位(ユニット3A、3A、3A)、他方の一単位(ユニット3B、3B、3B)が着底する。そして、一方の一単位(ユニット3A、3A、3A)と他方の一単位(ユニット3B、3B、3B)との上面視の重心位置Gどうしが一致している。そのため、一方の一単位が着底して他方の一単位が着底していない状態でも、一方の一単位が着底する前と比較して、上面視の重心位置Gは殆ど変化しないので、吊り枠10が大きく揺動することを抑制できる。
【0029】
この実施形態では、一方の一単位(ユニット3A、3A、3A)は、他方の一単位(ユニット3B、3B、3B)よりも上面視で重心位置Gの近くに配置されて、より狭い範囲に集中して配置されている。他方の一単位(ユニット3B、3B、3B)のように、より広い範囲に分散してそれぞれのユニット3B、3B、3Bが配置されていると、同時に着底し難くなる。換言すると、より狭い範囲に集中して配置されている一方の一単位のユニット3A、3A、3Aは同時に着底させ易い。それ故、吊り下げレベルが異なる複数の一単位を吊り下げる場合は、吊り枠10の揺動を抑制するには、より狭い範囲に集中して配置されている一単位を先に着底させるとよい。したがって、一度に吊り下げた際に、最も吊下げレベルを低くする一単位は、この実施形態にように、上面視で最も狭い範囲に集中して配置されている一単位(ユニット3A、3A、3A)にすることが好ましい。
【0030】
それぞれのユニット3を水底地盤B上に設置した後は、それぞれの係止部4aに係止しているそれぞれのフック12を、水上からの操作によって係止解除する。ユニット3の設置は、予め設定されているモノパイル14の打設位置に近接する領域から始めて離れた領域に向かって進める。モノパイル14の打設位置は演算装置に記憶されているので、この打設位置のデータに基づいて、それぞれのユニット3を上面視の位置を調整して水底地盤B上に設置する。このようにして、図8図9に例示するように、上面視でモノパイル14の打設位置を中心にした円形のフィルター層2を形成する。フィルター層2の上面視形状は円形に限定されない。それぞれのユニット3の設置位置は演算装置に記憶するとよい。
【0031】
次いで、図10図11に例示するように、予め設定されている打設位置でフィルター層2を貫通させてモノパイル14を水底地盤Bに打設する。モノパイル14は公知の方法で打設すればよい。尚、図10では、図2と同様にユニット3の図示を省略している。
【0032】
次いで、図12に例示するアーマー層6を形成する。アーマー層6を形成する際には、図13図14に例示するように、吊り枠10によって一度に複数個のユニット7を上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げて、フィルター層2上にそれぞれのユニット7を設置する工程を繰返して、多数のユニット7をフィルター層2上に設置する。それぞれのユニット7は、上面視で隣り合うユニット3どうしを跨ぐように設置して、1層~複数層のアーマー層6を形成する。
【0033】
吊下げたユニット7が、上面視で互いに重ならない範囲で近接させた状態とは、上面視で隣接するユニット7どうしのすき間(最小すき間)が例えば50cm程度の状態である。ユニット7は、ユニット3の移動を防止することを主目的にしているので、一度に吊下げるユニット3に比して、一度に吊下げるユニット7は上面視で隣接するどうしのすき間を若干大きく設定することができる。ユニット7どうしが重なると上下に過大なすき間が生じ易くなるので、隣接するユニット7どうしは突き合わせるように接触させて配置することが好ましい。
【0034】
この実施形態では、同じ吊下げレベルの四個のユニット7が一度に吊り下げられていて、それぞれのユニット7の上面視の吊り下げ位置は、ひし形を形成する位置に設定されている。即ち、それぞれのユニット7の吊り位置を上面視で結ぶと、ひし形(隣接する2つの正三角形を連結した形状)が形成される。一度に吊り下げるユニット7は四個に限らず、例えば一度に三個のユニット7を上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げて、それぞれのユニット7の上面視の吊り下げ位置を、上面視で正三角形を形成する位置に設定してもよい。
【0035】
一度に吊り下げるそれぞれのユニット7は、吊下げレベルを異ならせることもできるが、この実施形態にように吊下げレベルは同じでよい。一度に吊り下げるユニット7の数は特に限定されないが、二個~八個程度である。この実施形態では、ユニット3を吊り下げる吊り枠10と、ユニット7を吊り下げる吊り枠10とを、互いに別々にしているが共用することもできる。
【0036】
図15図16に例示するように、一度に吊り下げたそれぞれのユニット7は、吊り枠10を下方移動させることでフィルター層2に着底させる。これにより、上面視で隣り合うユニット3どうしを跨ぐように、それぞれのユニット7をフィルター層2上に設置する。設置した上面視で隣り合うどうしのユニット7は突き合わせて接触した状態にすることが好ましい。フィルター層2を形成している隣り合うユニット3どうしの間にすき間が生じていても、このすき間はユニット7によって塞ぐことができる。そのため、高い洗掘防止効果を確保することが可能になる。
【0037】
それぞれのユニット7をフィルター層2上に設置した後は、それぞれの係止部8aに係止しているそれぞれのフック12を、水上からの操作によって係止解除する。ユニット7の設置は、モノパイル14に近接する領域から始めて離れた領域に向かって進める。このようにして、図1図2に例示するように、上面視でモノパイル14の打設位置を中心にした円形のフィルター層2を形成する。モノパイル14の打設位置およびそれぞれのユニット3の設置位置が演算装置に記憶されていると、記憶されているこれらの位置情報に基づいて、吊り下げているそれぞれのユニット7の上面視の位置を調整することで、上面視で隣り合うユニット3どうしを跨ぐように精度よく設置できる。
【0038】
この実施形態によれば、フィルター層2とアーマー層6とをそれぞれ、上述したユニット3、7を用いて形成する。ユニット3、7は設置位置を概ね制御できるので、大規模な均し作業が不要になる。そのため、洗掘防止構造1を効率的に構築するには有利になる。ユニット3、7は、個別の砕石などに比して潮流などによって移動し難い。そのため、長期に渡ってフィルター層2、アーマー層6を維持するには有利である。また、上述したように、一度に吊り下げられるユニット3が細密に配置されているので、高品質のフィルター層2を迅速に形成するには有利になる。
【0039】
さらには、一度に吊り下げたそれぞれのユニット3が同時に着底しなくても、吊下げているユニット3全体としての上面視の重心位置Gを安定させ易くなる。そのため、吊り枠10の揺動が抑制されて、それぞれのユニット3を所望位置に設置し易くなるので、形成されたフィルター層2においては、隣り合うユニット3どうしの重なり量のばらつきを抑制できる。これに伴い、隣り合うユニット3どうしの間に過大なすき間が発生することを防止できる。仮に、フィルター層2を形成しているユニット3どうしの間にすき間が生じていても、後から設置するユニット7によって塞ぐことができる。そのため、構築した洗掘防止構造1では高い洗掘防止効果を得ることが可能になる。
【0040】
図17図18に例示するように、一度に吊り下げるユニット3として、同じ吊下げレベルの三個のユニット3Cを有してそれぞれのユニット3Cの吊り位置を上面視で一直線上に設定した1つの直線配置ユニット群を追加することもできる。この実施形態では、一方の一単位(ユニット3A、3A、3A)と他方の一単位(ユニット3B、3B、3B)とが上面視で互いの重心位置Gを一致させて、吊り枠10に吊り下げられている。図17に例示する一点鎖線は、一方の一単位を構成する三個のユニット3Aの上面視での吊り位置を結んでいる。この一点鎖線により正三角形が形成されていて、この一単位の上面視の重心位置Gが示されている。図18に例示する二点鎖線は、他方の一単位を構成する三個のユニット3Bの上面視での吊り位置を結んでいる。この二点鎖線により正三角形が形成されている。一方の一単位(ユニット3A、3A、3A)の吊下げレベルが、他方の一単位(ユニット3B、3B、3B)の吊下げレベルよりも低くなっている。
【0041】
1つの直線配置ユニット群(3C、3C、3C)の重心位置は、それぞれの一単位の上面視の重心位置Gと一致させる。そして、この直線配置ユニット群(3C、3C、3C)の吊下げレベルを、2つの一単位の吊下げレベルよりも高くする。即ち、一度に吊下げるユニット3の中では、直線配置ユニット群(3C、3C、3C)の吊り下げレベルを最も高くする。それぞれの9個のユニット3(3A、3B、3C)は、吊り枠10によって、上面視で互いに重ならない範囲で近接させて一度に吊り下げられる。
【0042】
このように1つの直線配置ユニット群(3C、3C、3C)を追加して一度に複数のユニット3を吊り下げた場合も、先の実施形態と同様に、吊り枠10を下方移動させることで、それぞれのユニット3を水底地盤Bに着底させる。これにより、それぞれのユニット3は、上面視で隣り合うどうしを接触させて水底地盤B上に設置してフィルター層2を形成する。
【0043】
この実施形態によっても、先の実施形態と同様の効果を得ることが可能になる。図18に例示するように、上面視で多数のユニット3が正三角形を基本にして細密に配置されているので、上面視で隣り合うどうしのユニット3のすき間を最小限にして設置するには有利になる。また、一方の一単位(ユニット3A、3A、3A)と、他方の一単位(3B、3B、3B)と、直線配置ユニット群(3C、3C、3C)との上面視の重心位置Gが一致していて、一方の一単位(ユニット3A、3A、3A)と他方の一単位(3B、3B、3B)とが順次着底するので、吊り枠10の揺動を抑制することもできる。
【0044】
2つの一単位が着底すれば、直線配置ユニット群(3C、3C、3C)が着底していなくても、吊り枠10の揺動はある程度抑制される。したがって、2つの一単位よりも吊下げレベルを高くした直線配置ユニット群(3C、3C、3C)は、配置の自由度をある程度高くすることができる。
【0045】
尚、図17図18に例示する上面視でひし形の吊り枠10は、図13図15に例示したユニット7を吊り下げるために使用した吊り枠10と同じである。即ち、ユニット3の吊下げる際とユニット7の吊下げる際とで吊り枠10を共用している。吊り枠10を共用することで、洗掘防止構造1を構築する際に使用する器具を最小限にするには有利になる。
【0046】
フィルター層2を上述したように形成して、アーマー層6はトレミー管などを用いて砕石類をフィルター層2の上に投入して形成することもできる。この場合は、投入した砕石類は、上面視で隣り合うユニット3どうしのすき間を埋めるようにフィルター層2上に設置する。
【0047】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明1:
水底地盤に立設されている水中構造体の周囲に、フィルター層とこのフィルター層上に積層されたアーマー層とを有する洗掘防止構造を構築する洗掘防止構造の構築方法において、
前記フィルター層を形成する際には、中詰め材が袋体に収容されたフィルター層用根固めユニットを用いて、吊り枠によって一度に複数個の前記フィルター層用根固めユニットを上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げて、前記水底地盤上にそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットを設置する工程を繰返して、多数の前記フィルター層用根固めユニットを上面視で隣り合うどうしを接触させて前記水底地盤上に設置し、
一度に吊り下げる前記フィルター層用根固めユニットは、同じ吊下げレベルの三個の前記フィルター層用根固めユニットを一単位として、それぞれの前記フィルター層用根固めユニットの吊り位置は上面視で正三角形を形成する位置に設定して、少なくとも1つの前記一単位を一度に吊り下げ、複数の前記一単位を一度に吊り下げる場合にはそれぞれの前記一単位の上面視の重心位置どうしを一致させ、
前記アーマー層を形成する際には、中詰め材が袋体に収容されたアーマー層用根固めユニットを用いて、吊り枠によって一度に複数個の前記アーマー層用根固めユニットを上面視で互いに重ならない範囲で近接させて吊り下げて、前記フィルター層上にそれぞれの前記アーマー層用根固めユニットを設置する工程を繰返して、多数の前記アーマー層用根固めユニットを、上面視で隣り合う前記フィルター層用根固めユニットどうしを跨ぐように前記フィルター層上に設置する洗掘防止構造の構築方法。
発明2:
前記フィルター層を形成する際に、2つの前記一単位を一度に吊り下げて、一方の前記一単位でのそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットの前記吊り位置が上面視で形成する正三角形と、他方の前記一単位でのそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットの前記吊り位置が上面視で形成する正三角形とを、一致させた前記重心位置を中心にして180°回転した反対向きにする発明1に記載の洗掘防止構造の構築方法。
発明3:
それぞれの前記一単位毎に、吊下げレベルを異ならせる発明1または2に記載の洗掘防止構造の構築方法。
発明4:
一度に吊り下げる前記フィルター層用根固めユニットとして、同じ吊下げレベルの三個の前記フィルター層用根固めユニットを有してそれぞれの前記フィルター層用根固めユニットの吊り位置を上面視で一直線上に設定して、その重心位置を、それぞれの前記一単位の上面視の前記重心位置と一致させた1つの直線配置ユニット群を追加し、この直線配置ユニット群の吊下げレベルを、それぞれの前記一単位の吊下げレベルよりも高くする発明2または3に記載の洗掘防止構造の構築方法。
発明5:
それぞれの前記アーマー層用根固めユニットは、隣り合うどうしを接触させて設置する発明1~4のいずれかに記載の洗掘防止構造の構築方法。
【符号の説明】
【0048】
1 洗掘防止構造
2 フィルター層
3(3A、3B、3C) フィルター層用根固めユニット
4 袋体
4a 係止部
5 中詰め材
6 アーマー層
7 アーマー層用根固めユニット
8 袋体
8a 係止部
9 中詰め材
10 吊り枠
11 吊り索
12 フック
13 吊りワイヤ
14 モノパイル(水中構造体)
B 水底地盤
【要約】
【課題】中詰材が袋体に収容された根固めユニットを用いて、洗掘防止効果の高い洗掘防止構造を効率的に構築できる洗掘防止構造の構築方法を提供する。
【解決手段】同じ吊下げレベルの三個のユニット3を一単位として、各ユニット3の吊り位置は上面視で正三角形を形成する位置に設定して、2つの一単位を、各一単位の上面視の重心位置Gどうしを一致させて、各ユニット3が上面視で互いに重ならない範囲で近接させて一度に吊下げて、各ユニット3を水底地盤B上に設置する工程を繰返して、多数のユニット3を上面視で隣り合うどうしを接触させてフィルター層2を形成し、複数のユニット7を、上面視で互いに重ならない範囲で近接させて一度に吊り下げて、上面視で隣り合うユニット3どうしを跨いで各ユニット7を設置する工程を繰返してアーマー層6を形成する。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18