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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】健康器具及び健康器具セット
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/04 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
A63B23/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023192655
(22)【出願日】2023-11-12
【審査請求日】2023-11-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521180463
【氏名又は名称】堀口 兵誠
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀口 兵誠
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-069451(JP,U)
【文献】登録実用新案第3187504(JP,U)
【文献】特開2021-083799(JP,A)
【文献】特開2009-213733(JP,A)
【文献】特開平09-075414(JP,A)
【文献】特開2003-339814(JP,A)
【文献】特開2001-112581(JP,A)
【文献】米国特許第05238296(US,A)
【文献】特開2021-049274(JP,A)
【文献】独国実用新案第202013104030(DE,U1)
【文献】特開2002-085516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な平面の上に立てて前方に傾けた状態で揺動させながら使用する健康器具であり、
最上部に位置しており左右いずれか一方のふくらはぎのみを載せる載置部と、
最下部に位置しており前記平面と接する接触部と、
前記載置部と前記接触部を繋ぐ支柱部とを備え、
前記載置部は直径が10~25cmの平面視円形であり、
前記接触部は直立させた状態で水平断面形状が円形で且つ下方に凸形状の部分を備えており、
前記載置部、前記支柱部及び前記接触部の径が一致しており、
前記接触部に錘を備えており、傾斜した状態から直立状態まで自動的に復帰させることができることを特徴とする健康器具。
【請求項2】
水平な平面の上に立てて前方に傾けた状態で揺動させながら使用する健康器具であり、
最上部に位置しており左右いずれか一方のふくらはぎのみを載せる載置部と、
最下部に位置しており前記平面と接する接触部と、
前記載置部と前記接触部を繋ぐ支柱部とを備え、
前記接触部は直立させた状態で水平断面形状が円形で且つ下方に凸形状の部分を備えており、
前記接触部の下面から長手方向に沿って同心円状のスリットを備えることを特徴とする健康器具。
【請求項3】
前記接触部に錘を備えることを特徴とする請求項2に記載の健康器具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の健康器具と、
前記健康器具を立てた状態で前記平面と前記接触部との間に配置される受皿を備えており、
前記受皿は上面が水平面で縁が盛り上がった円盤状であり、
前記健康器具を揺動させている間に前記接触部は前記受皿の上面を移動していき、前記縁に接触した時点で移動が止まることを特徴とする健康器具セット。
【請求項5】
前記接触部の下面と前記受皿の上面とが磁力により着脱自在であることを特徴とする請求項4に記載の健康器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝関節及び股関節の牽引と関節揺動運動を同時に行い、これらの相乗効果で膝関節及び股関節疾患の症状改善及び予防を行うと共に、テレビの視聴や読書、食事、就寝等の日常生活の中で容易に使用でき、且つ安価な健康器具及び健康器具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
変形性膝関節症、変形性股関節症等の運動障害に対して下肢を牽引することで一定の治療効果が認められることが知られており(非特許文献1~4)、膝関節の曲げ伸ばし運動の症状改善効果については非特許文献5に記載されている。
特許文献1及び2には上記運動障害を治療するための装置が開示されている。
また、下肢の治療効果だけでなく、トレーニングやマッサージ効果を得ることを目的とした装置も開示されている。例えば特許文献3には長方形状の枠体を立てた状態で椅子に座った使用者が枠体の上部に載せた左右の膝を上下に振ると、枠体が設置部を起点として前後に揺動することで膝の屈伸運動を行うことができる膝用の運動用具が開示されている。また、特許文献4には仰向けの使用者が左右の膝裏を受け部に載せた状態で足先を後方にスライドさせると、揺動アームに連結された受け部が足先方向に移動し、これに伴い大腿部及び腰椎部が斜め上方に牽引される健康器具が開示されている。
本願発明者は大きな牽引力を得られ、牽引力の調節及び持ち運びが容易で、使用場所の制限を受けにくく、且つ安価な下肢牽引器を開発し、特許を取得した(特許文献5)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】中井保、鈴木建夫ら著 理学療法学 第19巻第5号 471~475頁(1992年)
【文献】小川大輔、竹井仁ら著 理学療法学 第39巻第2号 102~109頁(2012年)
【文献】佐藤春美著 理学療法学 第23巻 学会特別号(第31回愛知) 1996年
【文献】三谷管雄、清水正人著 理学療法学 第24巻 学会特別号(第32回埼玉) 1997年
【文献】池田浩著 順天堂医学 54巻3号 367~371頁 (2008年)
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-100025号公報
【文献】実用新案登録第3134708号公報
【文献】特開2003-102869号公報
【文献】実用新案登録第31800299号公報
【文献】特許第6946590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1及び2に開示された技術では次のような問題がある。いずれも使用者が床に座ったり或いは寝たりした状態で装置を下肢に装着するものであり、装置が大掛かりで場所を取るという問題、座ったり寝たりすることが可能な清潔な場所でしか使用できないという問題、腕で引っ張るため充分な牽引力を得るのが難しく、また使用者本人が牽引力を調節することが難しいという問題がある。
特許文献3に開示された技術では使用時に足先を前後方向に揺動させることで膝関節の曲げ伸ばし運動効果を得るものであり、前後方向以外の方向に揺動できず、股関節に有効な左右方向の揺動ができないという問題がある。
【0006】
特許文献4に開示された技術も同様に膝を前方に移動させることで大腿部及び腰椎部を斜め上方に牽引するものであり、股関節に有効な左右方向の揺動ができないという問題がある。
また、特許文献3及び4に開示された技術では使用する際の器具の向きが決められているため、使用者は体の向きに器具の向きを合わせる必要があり煩わしいという問題がある。
また、上記特許文献5に開示された技術は片足を牽引するものであり、片足を固定したまま起立して使用するので転倒して怪我するおそれがある、不安定な姿勢になるので足腰が弱い方にとって使いづらい、膝関節の曲げ伸ばし運動を同時にできない、テレビの視聴や読書等の行為と同時に牽引運動をするのが難しいという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題を考慮して、膝関節及び股関節の牽引と関節揺動運動を同時に行い、これらの相乗効果で膝関節及び股関節疾患の症状改善及び予防を行うと共に、テレビの視聴や読書、食事、就寝等の日常生活の中で容易に使用でき、且つ安価な健康器具及び健康器具セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の健康器具は、水平な平面の上に立てて前方に傾けた状態で揺動させながら使用する健康器具であり、最上部に位置しており左右いずれか一方のふくらはぎのみを載せる載置部と、最下部に位置しており前記平面と接する接触部と、前記載置部と前記接触部を繋ぐ支柱部とを備え、前記載置部は直径が10~25cmの平面視円形であり、前記接触部は直立させた状態で水平断面形状が円形で且つ下方に凸形状の部分を備えており、前記載置部、前記支柱部及び前記接触部の径が一致しており、前記接触部に錘を備えており、傾斜した状態から直立状態まで自動的に復帰させることができることを特徴とする。
本発明の健康器具は、水平な平面の上に立てて前方に傾けた状態で揺動させながら使用する健康器具であり、最上部に位置しており左右いずれか一方のふくらはぎのみを載せる載置部と、最下部に位置しており前記平面と接する接触部と、前記載置部と前記接触部を繋ぐ支柱部とを備え、前記接触部は直立させた状態で水平断面形状が円形で且つ下方に凸形状の部分を備えており、前記接触部の下面から長手方向に沿って同心円状のスリットを備えることを特徴とする。
また、前記接触部に錘を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の健康器具セットは、上記健康器具と、前記健康器具を立てた状態で前記平面と前記接触部との間に配置される受皿を備えており、前記受皿は上面が水平面で縁が盛り上がった円盤状であり、前記健康器具を揺動させている間に前記接触部は前記受皿の上面を移動していき、前記縁に接触した時点で移動が止まることを特徴とする。
また、前記接触部の下面と前記受皿の上面とが磁力により着脱自在であることを特徴とする。


【発明の効果】
【0010】
本発明の健康器具によれば、左右いずれか一方のふくらはぎを載置部に載せたまま健康器具を前方に傾けることにより膝関節及び股関節が牽引される。また、牽引が掛かった状態で膝関節及び股関節の揺動運動を筋力を使わずに同時に行うことができる。これらの相乗効果で膝関節及び股関節疾患の症状改善及び予防を行うことができる。また健康器具を使用者が日常生活の中で容易に使用できたり、構造がシンプルなので健康器具を安価に製造できたりする効果がある。
載置部を平面視円形にすることで使用者は載置部の向きを気にせずにふくらはぎを載せることができるので使用時の利便性を向上させることができる。
接触部の水平断面形状を円形にすることで使用者は接触部の向きを気にする必要がなくなり、使用時の利便性を向上させることができる。
【0011】
また、接触部を下方に凸形状にすることで使用者は健康器具を前後方向のみならず、左右方向や斜め方向にもスムーズに揺動させることができ、股関節の揺動運動を多様な方向に生じさせることができ、膝及び股関節疾患の症状改善及び予防をより効果的に行うことができる。
接触部に錘を備えることで健康器具が大きく傾斜した状態から直立状態まで自動的に復帰させることができるので、使用者がふくらはぎを載せる位置を調整している間や使用後にふくらはぎを外した時に健康器具が倒れることがなく利便性を向上させることができる。
接触部が器具長手方向に沿ったスリットを備えることで健康器具を傾いた状態で揺動させている際に生じる接触部の位置ずれに対し、接触部のスリットにより形成されたヒダ部が傾斜して平面に接するため接触部の位置がずれていく事態を防止できる。
また、支柱部が複数のブロックを嵌合して積み重ねた構造にすることで、使用者が体格と使用場所に応じてブロックの組替え(ブロックの追加・削除)を行い健康器具の全高を調節することが可能となる。
【0012】
本発明の健康器具セットによれば平面と接触部との間に周囲端部の縁が盛り上った形状の受皿を配置することにより、健康器具の揺動に伴う接触部のずれを受皿の盛り上がり部で止めることができる。
また、錘を備えた健康器具は受皿の周囲端部の盛り上り部が前記の自動直立復帰のストッパーとなり傾斜した状態で静止するので、使用者は健康器具の使用を一時的に中断してその後再開する際に、前回使用した傾斜状態からスタートできるので利便性が高まる。
接触部の下面と受皿の上面とを磁力により着脱自在にすることで健康器具セットの移動及び保管時に本体と受皿を一体化できるので利便性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】健康器具の使用状態を示す側面図
図2】健康器具の斜視図
図3】健康器具の変形例を示す斜視図(a)及び(b)
図4】健康器具の変形例を示す縦断面図(a)及び(b)
図5】健康器具の使用状態を示す側面図
図6】健康器具の使用状態を示す側面図
図7】健康器具の使用状態を示す側面図
図8】第2の実施の形態の健康器具を示す斜視図
図9】第3の実施の形態の健康器具を示す縦断面図(a)、底面図(b)及び部分拡大図(c)
図10】第4の実施の形態の健康器具を示す縦断面図(a)及び(b)、変形例を示す縦断面図(c)
図11】第5の実施の形態の健康器具の使用状態を示す側面図
図12】健康器具セットを示す斜視図(a)及び受皿の縦断面図(b)
図13】健康器具セットの動作を示す正面図(a)及び(b)
図14】健康器具セットの変形例を示す斜視図(a)及び受皿の縦断面図(b)
図15】健康器具セットの変形例を示す縦断面図
図16】第2の実施の形態の健康器具セットを示す縦断面図(a)及び(b)
図17】健康器具セットの変形例を示す縦断面図(a)及び(b)
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
本発明の健康器具の第1の実施の形態について説明する。
図1及び図2に示すように、本実施の形態の健康器具1は水平な平面100の上に立てて前方に傾けた状態で使用する。平面100としては例えば床面、床面に敷いたマットの上、ベッドの上、玄関などの段差の下面等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0015】
健康器具1は載置部10、接触部20及び支柱部30を備える。
載置部10は立てた状態の健康器具1の最上部に位置する。載置部10には座位の状態(例えば椅子に座った状態)の使用者の左右いずれか一方のふくらはぎのみを載せる。つまり、載置部10の上面は使用者の左右いずれか一方のふくらはぎを載せられる程度の最大幅を備えていればよく、左右両方のふくらはぎを同時に載せられる広い最大幅は不要である。
載置部10の形状について本実施の形態では平面視円形にしている。載置部10の形状を多角形にしても構わないが、平面視円形にするのが好ましい。図3(a)に示すように仮に平面視形状を三角形にすると角が鋭角になるのでふくらはぎに角が食い込んでしまい、使用中に痛みが生じるおそれがある。また、平面視円形にすることで使用者は載置部10の向きを気にせずにふくらはぎを載せることができるので使用時の利便性を向上させることができる。
載置部10を平面視円形にした場合、この直径は10~25cmが適値であり、円周部に面取り丸みを持たせた形状が揺動運動をスムーズに行えるため望ましい。
【0016】
接触部20は立てた状態の健康器具1の最下部に位置する。つまり健康器具1は接触部20で平面100と接触する。
接触部20の形状について本実施の形態では水平断面形状が円形で且つ下方に凸形状になっている。接触部20の水平断面形状は多角形でも構わないが円形にするのが好ましい。図3(a)に示すように仮に水平断面形状が三角形等の辺を備える形状にすると辺で平面100と接触する場合が生じてしまい、後述するように健康器具1を平面100上で揺動させる際にスムーズな揺動ができない問題が生じる。また、水平断面形状を円にすることで使用者は接触部20の向きを気にせずに健康器具1を使用できるので使用時の利便性を向上させることができる。
図3(b)に示すように接触部20が下方に突出しない平面20aであってもよい。
【0017】
支柱部30は載置部10と接触部20を繋ぐ部材である。本実施の形態では載置部10、支柱部30及び接触部20の径を一致させている。これにより支柱部30の強度が増すのでふくらはぎから載置部10に大荷重がかかった場合でも支柱部30が折れたり座屈したりする可能性を抑えることができる。本実施の形態の健康器具1によれば載置部10、支柱部30及び接触部20を一体的に形成できて製造コストを抑えることができる。
なお、支柱部30の水平断面形状について図4(a)に示すように上端及び下端と比較して中段で径が大きくなる形状にしてもよい。また逆に支柱部30の必要強度が確保できれば中央部がくびれた形状にしてもよい。
健康器具1の材質は特に制限されず、発泡スチロール、発泡ポリウレタン、プラスチック、木材、金属、紙でもよい。また断面充填構造でも中空構造でも良い。載置部10、支柱部30及び接触部20を一体的に製造してもよく、載置部10と支柱部30を別体に製造して両者をネジ止め、接着等により結合してもよい。
健康器具1の全高は使用者が椅子に座って使用する場合は椅子の座面高さと同程度がよく、35~55cmが適値である。また使用者がベッド等に横たわって使用する場合は30~15cmが適値である。
また、図4(b)に示すように支柱部30を上面に凸部、下面に凹部を備える複数のブロック30a~30dを嵌合して積み重ねた構造にしてもよい。使用者が体格と使用場所に応じてブロック30a~30dの組替え(ブロックの追加・削除)を行い健康器具1の全高を調節することが可能となる。
【0018】
健康器具1の使用方法について説明する。
図1に示すように使用者は椅子に座り、立てた健康器具1を前方に傾斜させた状態で左右いずれか一方(図1では左足102)のふくらはぎを載置部10に載せる。健康器具1の長手方向の中心線が鉛直線となす角度を傾斜角θとすると、傾斜角θは5~40°が適値である。この状態で左足102は宙に浮いており、右足は平面100に着地している。以下の説明では左のふくらはぎを載置部10に載せた場合について説明するが、右のふくらはぎを載置部10に載せた場合も左右入替えの同様の動作となり、同様の効果を得られる。
図5に示すようにふくらはぎから載置部10に掛かる鉛直方向の荷重W(下肢重量)は健康器具1の長手方向と脛骨101に沿った方向に分解することができ、脛骨101に沿った方向に作用する荷重分力W1によって膝関節103に対する牽引力が生じる。この牽引力はそのまま股関節にも働く。具体的には傾斜角θが30°の場合、荷重分力W1は荷重Wの半分の大きさとなる。
【0019】
また、図6に示すようにふくらはぎが梃の支点(図中の黒三角)となり、脛骨101が梃の棒部、足102が力点、膝関節103が作用点と見做すことができる。この時、膝関節103には斜め上方に大きな力Fが生じ、この力の平行四辺形ベクトル分解で大腿骨の延長方向の膝関節103を牽引する力F1が生じる。前記W1とF1とが合わさり膝関節に十分な牽引力が働き、この牽引力はそのまま股関節にも働く。
この状態で載置部10及び接触部20を支点として下肢各位の重量がバランスし、使用者が脱力リラックスした状態で図7のように下肢が安定静止する。この静止状態から膝の曲げ伸ばしを行うとシーソーの原理で僅かな力で動かす(揺動する)ことができ、同時に股関節も動かすことができる。また図7中の幅太矢印で示す股関節を左右に開閉する運動も同様に僅かな力で行える。つまり関節症の治療として有効性が知られている水中運動(無重力下の運動)と同じ効果を得られる。
【0020】
このように健康器具1は膝関節及び股関節が牽引された状態で膝関節及び股関節の揺動運動を筋力を使わずに同時に行うことができる。この牽引+無筋力揺動ができることが本発明の最大の特徴であり、先行技術ではできなかったことである。
また健康器具1は片脚専用であるが、同時に両脚を行いたい場合は健康器具1を二つ並べて使用すれば良い。この場合は左右の脚は独立して揺動運動ができ、このことも先行技術ではできなかったことである。
なお傾斜角θが大きい場合、接触部20は平面100に固定されておらず揺動運動に伴って接触部20が後ろ側に少しずつずれていく問題が起こるが、この問題の解決方法は後ほど説明する。
【0021】
[第2の実施の形態]
本発明の健康器具の第2の実施の形態について説明するが、上記第1の実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図8に示すように、本実施の形態の健康器具2は載置部11が平面視円形の薄い円盤状である点に特徴を有する。具体的には接触部21及び支柱部31は共に水平断面形状が同一径の円形であり、載置部11の径の方が支柱部31及び接触部21の水平断面の径よりも大きくなっている。つまり、健康器具2を正面視した場合にT形状になっている。健康器具2を正面視T形状にすることで汎用の平板材、棒材、パイプ材を組み合わせて作ることができ安価にできる。また使用者が分解組立可能な構造にし易く、分解して小さくできる旅行携行用の器具を実現できる。
【0022】
[第3の実施の形態]
本発明の健康器具1の第3の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図9(a)及び(b)に示すように、本実施の形態の健康器具3は下方に凸形状とした接触部21の下面から長手方向に沿って同心円状の複数のスリット22を備える点に特徴を有する。スリット22を備えることで健康器具3を傾斜させた使用状態では図9(c)に示すようにスリット22で形成されるヒダ部22aが傾斜して平面100に接するため、図9(c)の矢印Aの方向にはずれ易いが反対の矢印Bの方向にはずれ難くなる(リーディング&トレーディング効果)。この効果により健康器具3の揺動時に生じる接触部21の矢印Bの方向へのずれを防止できる。
【0023】
[第4の実施の形態]
本発明の健康器具の第4の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図10(a)に示すように、本実施の形態の健康器具4は接触部20に錘23を備えることを特徴とする。錘23を備えることで図10(b)に示すように健康器具1が大きく傾斜した状態から直立状態まで自動的に復帰させることができるので使用中に健康器具1が倒れることがなく利便性を向上させることができる。錘23は接触部20の下面に貼り付けてもよく、或いは接触部20の内部に埋め込んでもよい。接触部20の形状を下方に凸形状とすることで自動復帰効果をより得やすくなる。また載置部10と支柱部30の重量を軽くすることで自動復帰効果をより得やすくなる。なお、図10(c)に示すように第3の実施の形態で示したスリット22を備える健康器具3に錘23を取り付けてもよい。
【0024】
[第5の実施の形態]
本発明の健康器具の第5の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図11に示すように本実施の形態の健康器具5は仰臥位で使用する点に特徴を有する。第1~第4の実施の形態で示した座位で使用する健康器具1~4と比較して仰臥位で使用する健康器具5は全高が低い小型でよい。健康器具5の全高は15~30cmが適値である。使用者は左右いずれか一方(図11では左足102)のふくらはぎを載置部10に載せ、左足102を浮かせた状態で左の太腿を後方へ僅かに引き寄せ、次に左の太腿を前方へ押し出す。使用者はこのように左足102で健康器具5を揺動させることで左の膝関節103の曲げ伸ばし運動を繰り返し行う。この形態でも健康器具1~4と同様に膝関節103及び股関節に牽引力が働く。
【0025】
[第1の実施の形態]
本発明の健康器具セットの第1の実施の形態について説明するが、上記健康器具の各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図12に示すように、本実施の形態の健康器具セット40は上記健康器具1と円盤状の受皿50を備える点に特徴を有する。円盤状の受皿50は縁51が盛り上った形状で且つこの盛り上がり頂点から外側に傾斜して外周部に至る形状で、健康器具1を立てた状態で平面100と接触部20との間に配置される。図13(a)に示すように受皿50を使用しない場合、健康器具1を揺動させている間に接触部20の平面100上の位置が少しずつずれていってしまい、器具と使用者体との最適な位置関係が保持できず、最終的に健康器具1が倒れてしまう。
【0026】
そこで、図13(b)に示すように受皿50に健康器具1を載せると、健康器具1を揺動させている間に接触部20は受皿50の上面を少しずつ移動していくが、受皿50の盛り上った縁51に接触した時点で移動が止まる。
受皿50の直径、縁51の盛り上り高さ及び形状を適切に設定しておけば接触部20が縁51を乗り越えて受皿50の外に出てしまう事態は防止でき、且つ円滑な揺動を阻害することはない。また受皿50自体が揺動することはなく、受皿50の底面と平面100との間で最大静止摩擦力を保持できるので受皿50はずれない。受皿50を使用することで健康器具1を受皿50の上に留めた状態で安定的に揺動させることができる。受皿50の底面は平面100との摩擦係数を大きくすることが望ましく、滑りにくい材質及び表面形状にすることが望ましい。
また錘23を備えた健康器具では、接触部20が受皿50の縁51の盛り上がり部に接触した状態で載置部10からふくらはぎを外すと、盛り上がり部が自動直立復帰のストッパーとなり健康器具1は傾斜した状態で静止する(図13(b)の実線状態)。使用者が健康器具1の使用を一時的に中断してその後再開する際に健康器具1が前回使用した傾斜状態から開始できるので傾斜再調整が省略でき利便性が高まる。
また、受皿50を円盤状にすることで使用者は受皿50の向きを気にせずに健康器具セット40を使用できるので使用時の利便性を向上させることができる。
また受皿50の縁51の盛り上りの頂点は、踏みつけ怪我防止の安全面から丸みを帯びた形状にすることが望ましい。また同安全面から受皿50の材質は割れ難く、たとえ割れても鋭利な割れ口とならない軟質プラスチック、プレス成形金属板などが望ましい。
【0027】
図14に示すように、第2の実施の形態で示した健康器具2と受皿50を組み合わせても健康器具2のずれを防止でき安定的に揺動させることができる。
図15に示すように、第4の実施の形態で示した錘23及びスリット22を備える健康器具4と受皿50を組み合わせても健康器具4を受皿50の上に留めた状態で安定的に揺動させることができ、また、健康器具4は前回使用状態の傾斜を保持できる。
【0028】
[第2の実施の形態]
本発明の健康器具セットの第2の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図16に示すように本実施の形態の健康器具セット60は接触部20の下面と受皿50の上面とが磁力により着脱自在である点に特徴を有する。具体的には受皿50の上面に磁石70を備えており、錘23の材質として鉄等の磁性体(強磁性体)もしくは磁石を使用することで錘23を磁石70に磁着させることができる。これにより健康器具1を受皿50の上で直立させた状態で一体化することができ、移動及び保管時の利便性が高まる。使用する際には健康器具1を傾斜させることで錘23の磁着を解除することができる。
また錘23を磁石とし受皿50を磁性体(強磁性体)としても同様の効果を得られる。
図17に示すように、第2の実施の形態で示した健康器具2と磁性体ピース80と受皿50と磁石70を組み合わせても同様の効果を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、膝関節及び股関節の牽引と関節揺動運動を同時に行い、これらの相乗効果で膝関節及び股関節疾患の症状改善及び予防を行うと共に、テレビの視聴や読書、食事、就寝等の日常生活の中で容易に使用でき、且つ安価な健康器具及び健康器具セットであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0030】
1 健康器具
2 健康器具
3 健康器具
4 健康器具
5 健康器具
10 載置部
11 載置部
20 接触部
20a 平面
21 接触部
22 スリット
22a ヒダ部
23 錘
30 支柱部
30a ブロック
30b ブロック
30c ブロック
30d ブロック
31 支柱部
40 健康器具セット
50 受皿
51 縁
60 健康器具セット
70 磁石
80 磁性体ピース
100 平面
101 脛骨
102 左足
103 膝関節
【要約】
【課題】 膝関節及び股関節の牽引と関節揺動運動を同時に行い、これらの相乗効果で膝関節及び股関節疾患の症状改善及び予防を行うと共に、テレビの視聴や読書、食事、就寝等の日常生活の中で容易に使用でき、且つ安価な健康器具及び健康器具セットを提供する。
【解決手段】 本発明の健康器具1は、水平な平面100の上に立てて前方に傾けた状態で使用する。最上部に位置する載置部10と、最下部に位置しており平面と接する接触部20と、載置部と接触部を繋ぐ支柱部30とを備える。ふくらはぎを載置部に載せて健康器具を前方に傾けることにより膝関節及び股関節が牽引される。また、牽引された状態で無筋力の関節揺動運動を同時に行うことができる。これらの相乗効果で膝関節及び股関節疾患の症状改善及び予防を行うことができる。また健康器具を使用者が日常生活の中で容易に使用できたり、構造がシンプルなので健康器具を安価に製造できたりする効果がある。
【選択図】図1
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図6
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図16
図17