(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ステレオリソグラフィ3D印刷によって物体を製造するための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
B29C 64/40 20170101AFI20240716BHJP
B29C 64/129 20170101ALI20240716BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240716BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240716BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240716BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/129
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2023517842
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 IB2021058407
(87)【国際公開番号】W WO2022069984
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-06-05
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519053061
【氏名又は名称】クビキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バウムガートナー、 ソニャ
(72)【発明者】
【氏名】グマイナー、ロベルト
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522450(JP,A)
【文献】特開平09-024552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0265032(US,A1)
【文献】特開2015-229248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオリソグラフィ3D印刷により物体を製造する方法であって、前記物体が、構造化層の堆積を得るために構築台上に層ごとに構築され、各構造化層が、
- 感光性樹脂の未硬化層を用意するステップと、
- 所望のパターンに従って前記未硬化層上に選択的に光を投射することにより前記感光性樹脂を硬化させて、前記パターンに従って構造化された前記構造化層を得るステップと
によって得られ、
前記構造化層の堆積が、隣接する構造化層の第1の対を含み、
前記感光性樹脂とは異なる少なくとも1つの除去可能材料の第1のフィルムが、前記除去可能材料の滴をエゼクタから放出することにより、前記隣接する構造化層の第1の対のうちの第1の構造化層上に配置され、その後、前記隣接する構造化層の第1の対のうちの第2の構造化層が、前記除去可能材料の第1のフィルム上に構築され、それにより、前記隣接する構造化層の第1の対の前記第1の構造化層と前記第2の構造化層との間に前記除去可能材料の第1のフィルムが配置され、
後処理ステップにおいて、前記除去可能材料の第1のフィルムが、前記除去可能材料の第1のフィルムを分解させるか又はその安定性を失わせる物理的且つ/又は化学的な処理を受け、前記除去可能材料が前記物体から除去される、方法。
【請求項2】
前記物理的且つ/又は化学的な処理が、溶融、気化、昇華、膨潤、及び溶媒中での溶解からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構造化層の堆積が、隣接する構造化層の第2の対を含み、
前記感光性樹脂とは異なる除去可能材料の第2のフィルムが、前記除去可能材料の滴をエゼクタから放出することにより、前記隣接する構造化層の第2の対のうちの第1の構造化層上に配置され、その後、前記隣接する構造化層の第2の対のうちの第2の構造化層が、前記除去可能材料の第2のフィルム上に構築され、それにより、前記隣接する構造化層の第2の対の前記第1の構造化層と前記第2の構造化層との間に前記除去可能材料の第2のフィルムが配置され、
前記後処理ステップにおいて、前記除去可能材料の第2のフィルムが、前記除去可能材料の第2のフィルムを分解させるか又はその安定性を失わせる物理的且つ/又は化学的な処理を受け、前記除去可能材料が前記物体から除去される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記感光性樹脂で構成された支持構造が、前記除去可能材料の第1のフィルムと前記除去可能材料の第2のフィルムとの間に作り出され、前記後処理ステップにおいて、前記支持構造が前記物体から除去される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記感光性樹脂で構成された支持構造が、前記除去可能材料の第1のフィルムと前記構築台との間に作り出され、前記後処理ステップにおいて、前記支持構造が前記物体から除去される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
除去可能材料の第3のフィルムが、感光性樹脂の第1の構造化層を前記構築台上に構築する前に前記除去可能材料の滴をエゼクタから放出することにより、除去可能材料の第3のフィルムが前記構築台上に配置される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記支持構造が、複数の支柱を含む、請求項4から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記支持構造が、硬化感光性樹脂の複数の層から構築される、請求項4から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
除去可能材料のフィルムが、前記硬化感光性樹脂の層の間にそれぞれ配置される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記パターンのセクションが、前記支持構造を層ごとに構築するためにそれぞれ使用される、請求項4から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記後処理ステップが、前記物体の層ごとの構成が終了した後で行われる、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記除去可能材料が、
- 少なくとも1種類の重合性基、及
び少なくとも1種類の親水性基又は親油性基で構成され
ている、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記重合性基が、アクリレート類、メタクリレート類、アクリルアミド類、ビニル・エーテル類、ビニル・エステル類、マレイミド類、環状エーテル類、イソシアネート類、アミン類、又は他の重合可能な不飽和基若しくは飽和基から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記除去可能材料が、その重合状態又はプレ重合状態において、溶媒中で膨潤可能且つ/又は溶解可能である、請求項1から13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記除去可能材料が、その重合状態又はプレ重合状態において、ヒドロキシ基、カルボニル基、及びカルボキシ基、並びに他の電気陰性のヘテロ原子類、アミン類、イオン性液体類、及び塩類との誘導体を含む、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記除去可能材料が、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA)、アクリロイル・モルホリン(ACMO)、ポリエチレン・グリコール誘導体、ポリエーテル類、ヒドロキシ・エチレン、又はアクリル酸ラウリル類を含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記除去可能材料が、長鎖アルコール類又はワックス類のような、硬化感光性樹脂の熱分解温度未満の融点を有する材料である、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記構造化層が、前記除去可能材料の滴をエゼクタから前記構造化層上に放出する前に
、表面調整プロセスによって前処理される、請求項1から1
7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記表面調整プロセスは、プラズマ処理又はコロナ処理である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記除去可能材料のフィルムが、前記除去可能材料のフィルム上に構造化層が構築される前に、乾燥ステップ、固化ステップ、又は光硬化ステップを受ける、請求項1から1
9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記構造化層が、空洞を有するように構造化され、前記空洞内に、前記エゼクタから前記除去可能材料の前記滴が放出される、請求項1から
20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
ステレオリソグラフィ3D印刷によって物体を製造するためのデバイスであって、
構築台と、
材料キャリヤと、
感光性樹脂の未硬化層を前記構築台上に又は部分的に構築された前記物体上に適用するための手段と、
前記感光性樹脂の未硬化層上への光のパターン化のために設計された光エンジンであって、パターンに従って構造化された構造化層を得るために前記感光性樹脂を硬化させるように適合されている光エンジンと、
除去可能材料のフィルムを得るために前記構造化層上に除去可能材料の滴を放出するためのエゼクタと、
前記構築台、前記光エンジン、及び前記エゼクタの相対位置を変更するための駆動手段と、
第1の相対位置では前記構造化層を構築するために前記構築台及び前記構築台上に少なくとも部分的に構築された前記物体が前記光エンジンに割り当てられ、第2の相対位置では前記構造化層上に除去可能材料のフィルムを適用するために前記構築台及び前記構築台上に少なくとも部分的に構築された前記物体が前記エゼクタに割り当てられるように、前記駆動手段を制御するように適合された制御ユニットと
を備え、
隣接する構造化層の第1の対のうちの第1の構造化層上に除去可能材料の第1のフィルムが配置され、その後、前記隣接する構造化層の第1の対のうちの第2の構造化層が前記除去可能材料の第1のフィルム上に構築され、それにより前記隣接する構造化層の第1の対の前記第1の構造化層と前記第2の構造化層との間に前記除去可能材料の第1のフィルムが配置されるように、前記制御ユニットが、所定のシーケンスに従って前記第1の位置と前記第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされる、デバイス。
【請求項23】
隣接する構造化層の第2の対のうちの第1の構造化層上に除去可能材料の第2のフィルムが配置され、その後、前記隣接する構造化層の第2の対のうちの第2の構造化層が前記除去可能材料の第2のフィルム上に構築され、それにより前記隣接する構造化層の第2の対の前記第1の構造化層と前記第2の構造化層との間に前記除去可能材料の第2のフィルムが配置されるように、前記制御ユニットが、所定のシーケンスに従って前記第1の位置と前記第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされる、請求項
22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記感光性樹脂の少なくとも1つの構造化層で構成された支持構造が前記除去可能材料の第1のフィルムと前記除去可能材料の第2のフィルムとの間に作り出されるように、前記制御ユニットが、所定のシーケンスに従って前記第1の位置と前記第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされる、請求項
22又は
23に記載のデバイス。
【請求項25】
前記感光性樹脂の少なくとも1つの構造化層で構成された支持構造が前記除去可能材料の第1のフィルムと前記構築台との間に作り出されるように、前記制御ユニットが、所定のシーケンスに従って前記第1の位置と前記第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされる、請求
項22から
24までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項26】
感光性樹脂の第1の構造化層を前記構築台上に構築する前に除去可能材料の第3のフィルムが前記構築台上に配置されるように、前記制御ユニットが、所定のシーケンスに従って前記第1の位置と前記第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされる、請求項
25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記支持構造が前記感光性樹脂の複数の構造化層で構成されるように、前記制御ユニットが、所定のシーケンスに従って前記第1の位置と前記第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされる、請求項
24から2
6までのいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項28】
除去可能材料のフィルムが前記支持構造の前記複数の構造化層の間にそれぞれ配置されるように、前記制御ユニットが、所定のシーケンスに従って前記第1の位置と前記第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされる、請求項
27に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオリソグラフィ3D印刷によって物体を製造する方法であって、物体が、構造化層(structured layer)の堆積を得るために構築台上に層ごとに構築され、各構造化層が、
- 感光性樹脂の未構造化層を用意するステップと、
- 所望のパターンに従って未構造化層上に選択的に光を投射することにより感光性樹脂を硬化させて、パターンに従って構造化された構造化層を得るステップと
によって得られる、方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、ステレオリソグラフィ3D印刷によって物体を製造するためのデバイスであって、
構築台と、
材料キャリヤと、
感光性樹脂の未構造化層を構築台上に又は部分的に構築された物体上に適用するための手段と、
感光性樹脂の未構造化層上への光のパターン化のために設計された光エンジンであって、パターンに従って構造化された構造化層を得るために感光性樹脂を硬化させるように適合された、光エンジンと
を備える、デバイスに言及する。
【背景技術】
【0003】
本明細書において、「光(light)」は、感光性樹脂の重合を誘発することが可能な任意の電磁放射を含み得る。「光」という用語は、必ずしも可視光、例えば人の目によって認識され得るスペクトルの部分に限られるものではない。放射は、10nmから10,000nm、好ましくは100から500nmの範囲内の波長を有し得る。
【0004】
「感光性樹脂(photosenstive resin)」という用語は、硬化プロセスを通じて硬化高分子材料に整合する材料を意味し得る。感光性樹脂は、モノマー、オリゴマー、及び光開始剤の混合物を含み得るが、これに限定されない。感光性樹脂はまた、未硬化フォトポリマーと呼ばれ得る。
【0005】
感光性樹脂の「硬化(curing)」は、光を照射されることにより感光性樹脂が重合又は交差結合されるプロセスである。
【0006】
本明細書において、「光エンジン(light engine)」は、所定のパターンに従って動的光情報(dynamic light information)を生成することが可能なデバイスである。実例として、LCDディスプレイ、デジタル・ライト・プロセッシング(DLP:Digital Light Processing)、他のアクティブ・マスク・プロジェクション・システム、及び/又はレーザ・スキャナに基づくシステムが、感光性樹脂の表面に光情報を選択的に投射するために使用され得る。
【0007】
他の積層造形技術と比較すると、市販のステレオリソグラフィ(SLA:stereolithography)・プリンタは、高い解像度及び表面品質を提供する。さらに、加熱又は薄膜コーティングのような特定のプロセス応用を用いると(例えば、特許文献1及び2参照)、他のいずれの積層造形技法でも処理され得ない高粘度材料、例えば樹脂が印刷され得る。高粘度材料は、ステレオリソグラフィによって印刷される部品の機械的特性の発展をもたらし得る。
【0008】
しかし、現在のステレオリソグラフィ・プロセスは、一度に1種類の材料しか処理することができない。ステレオリソグラフィの別の欠点は、支持構造の必要性である。トップ・ダウンのシステム及びボトム・アップのシステムのどちらの場合でも、支持構造は、張出し部、アンダカット、又は主構築部によって支持されない他のセグメントを支持する働きをする。ステレオリソグラフィでは、支持構造は、本質的に構築材料と同じ材料で構成される。したがって、支持構造は、洗浄又は溶融によって容易に除去することができず、機械的に除去する必要があり、多くの場合、手作業で、例えば折り取るか又は切り取って除去する必要があり、部品の表面上に跡が残る。これは、表面の潜在的な損傷に加えて、余計な時間と作業要求とを伴う。印刷プロセス後に脱バインダ及び/又は焼結を必要とする部品、例えばセラミック又は金属充填されたフォトポリマーの場合は特に、支持構造の手作業での除去は、時間がかかるだけでなく労働集約的且つツール集約的であり、且つ、プロセス連鎖にわたって部品を損傷するさらなるリスクを追加する。
【0009】
インクジェット印刷又は溶融フィラメント造型法(FFF:Fused Filament Fabrication)などの他の積層造形技術は、一度に複数の材料を処理し得る。それらのシステムは、支持構造を印刷するための支持材料を提供できることが多く、支持材料は、本質的に構築材料とは異なる。支持材料を溶融させること、又は溶剤を使用して支持材料を洗い流すことを含めて、この支持材料を除去するためのいくつかの方法が存在する。これは、印刷された部品の表面を損傷することなしに支持材料を除去することを可能にする。しかし、溶融フィラメント造型法のための印刷システムは、現在のところ、大抵の工業用途に必要とされる正確な層接着及び表面品質を欠いている。一方で、インクジェット印刷技術は、感光性樹脂の粘度パラメータに関してかなりの制限があり、一般に、利用可能な印刷ヘッドの流体制限(fluidic restriction)に起因して、約20mPa・sに限定される。低粘度モノマーは通常、短い重合鎖を特徴とし、且つ、密な高分子網目を形成し、したがって壊れやすい高分子部品をもたらすので、上記の制限は、達成可能な機械的特性への大きな影響を有する。
【0010】
印刷プロセスのいくつかの限界を克服するために、異なる印刷方策が組み合わせられ得る。熱可塑性プラスチック(FFF)とインクジェット印刷ヘッドからのフォトポリマーとを組み合わせるための手法(例えば、特許文献3)、及び着色目的のためにSLAシステムとインクジェット印刷ヘッドとを組み合わせるための手法(例えば、特許文献3~5)が存在する。SLAのための複数材料手法は、それぞれ異なる樹脂を含む複数の大桶を含意することが多い(例えば、特許文献6)。しかし、それらの手法は、様々な材料間での相互汚染の問題に悩まされることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第3284583号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3418033号明細書
【文献】米国特許第10,486,364号明細書
【文献】米国特許第10,449,715号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/131074号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/100899号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、印刷された物体の表面を損傷することなしに後処理ステップにおいて容易に且つ制御可能に除去され得る支持構造の配置を可能にするために、ステレオリソグラフィに基づく印刷方法及びデバイスを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記その他の目的を解決するために、本発明は、その第1の態様において、ステレオリソグラフィ3D印刷によって物体を製造する方法であって、物体が、構造化層の堆積を得るために構築台上に層ごとに構築され、各構造化層が、
- 感光性樹脂の未構造化層を用意するステップと、
- 所望のパターンに従って未構造化層に選択的に光を投射することにより感光性樹脂を硬化させて、パターンに従って構造化された構造化層を得るステップと
によって得られ、
構造化層の堆積が、隣接する構造化層の第1の対を含み、
感光性樹脂とは異なる除去可能材料の第1のフィルムが、除去可能材料の滴をエゼクタから放出することにより、前述の隣接する構造化層の第1の対のうちの第1の構造化層上に配置され、その後、前述の隣接する構造化層の第1の対のうちの第2の構造化層が、除去可能材料の第1のフィルム上に構築され、それにより、前述の隣接する構造化層の第1の対の第1の構造化層と第2の構造化層との間に除去可能材料の第1のフィルムが配置され、また、
後処理ステップにおいて、前述の除去可能材料の第1のフィルムが、除去可能材料の第1のフィルムを分解させるか又はその安定性を失わせる物理的且つ/又は化学的な処理を受け、除去可能材料が物体から除去される、方法を提供する。
【0014】
本発明は、機械的に好都合なフォトポリマーの処理を可能にするステレオリソグラフィに基づく印刷プロセスを使用するものであり、また、印刷プロセス中に追加物質を選択的に追加するという考えに基づくものであり、この追加物質は、除去可能材料である。詳細には、本発明は、硬化した感光性樹脂の構造化層の間に除去可能材料のフィルムを配置することにより3D印刷された物体の異なる部品間に一時的な接合部を提供するという考えに基づくものであり、この一時的な接合部は、後処理ステップにおいて容易に分解されて除去され得る。そのような除去可能な接合部は、3D印刷された物体を2つ以上の部品に分離するために、又は、物体の表面に悪影響を与えることなしに物体から支持構造を除去するために、使用され得る。
【0015】
除去可能材料は感光性樹脂と同じ材料ではないので、除去可能材料を除去するための後処理ステップは、除去可能材料のみが反応するプロセスとして設計され、それにより、硬化感光性樹脂を無影響のままにしておくことができる。具体的には、後処理ステップは、除去可能材料の第1のフィルムを分解させるか又はその安定性を失わせる物理的且つ/又は化学的な処理に除去可能材料のフィルムをさらすように設計される。
【0016】
好ましい実施例によれば、物理的且つ/又は化学的な処理は、溶融、気化、昇華、膨潤、及び溶媒中での溶解からなる群から選択される。したがって、後処理ステップは、硬化感光性樹脂及び除去可能材料の様々な物理的且つ/又は化学的な特性を活用し、且つ、溶融、気化、昇華、膨潤、及び溶媒中での溶解などの分解反応を生じさせる物理的且つ/又は化学的な処理を、硬化した感光性樹脂においてではなく除去可能材料においてのみ適用する。
【0017】
導入部で述べられたように、ステレオリソグラフィ・プロセスにおいて複数の材料を使用することは、通常、各材料につき1つの大桶などの複数の材料貯槽の使用を必要とし、ここで、構築台又は構築台上に少なくとも部分的に構築された物体は、前述の貯槽に交互に沈められる。しかし、物体が第2の材料に沈められるときに、第1の材料の構造化層が作製された後で依然として物体に付着している第1の材料の未硬化分が第2の材料中に移されるので、また逆の場合も同様なので、上記のことは、相互汚染をもたらす。
【0018】
異なる2種類の材料間での相互汚染を回避するために、感光性樹脂から作られた構造化層上に除去可能材料の滴を放出するエゼクタにより、除去可能材料が適用される。具体的には、滴は、所望の機能を果たすために除去可能接合部が必要とされる構造化層の1つ又は複数の位置に選択的に配置される。エゼクタは、インクジェット印刷ヘッドとして、又はノズル若しくは液滴ディスペンサとして設計されることが好ましい。
【0019】
除去可能材料で作られた接合部は、硬化感光性樹脂の選択された部品を3D印刷された物体から分離する働きをすることができる。除去されるべき選択された部品が上側及び下側の両方において構造化層によって閉じ込められている場合、除去可能接合部が両方の側にあることが有利であろう。したがって、本発明の好ましい実施例は、構造化層の堆積が、隣接する構造化層の第2の対を含むことを実現し、
ここで、感光性樹脂とは異なる除去可能材料の第2のフィルムが、除去可能材料の滴をエゼクタから放出することにより、前述の隣接する構造化層の第2の対のうちの第1の構造化層上に配置され、その後、前述の隣接する構造化層の第2の対のうちの第2の構造化層が、除去可能材料の第2のフィルム上に構築され、それにより、前述の隣接する構造化層の第2の対の第1の構造化層と第2の構造化層との間に除去可能材料の第2のフィルムが配置され、また、
後処理ステップにおいて、前述の除去可能材料の第2のフィルムが、除去可能材料の第2のフィルムを分解させるか又はその安定性を失わせる物理的且つ/又は化学的な処理を受け、除去可能材料が物体から除去される。
【0020】
本発明の重要な有用性は、物体の張出し部分又はアンダカットを支持するために物体の製造中に印刷される支持構造の除去である。除去は、支持構造の上側及び下側において除去可能材料のフィルムで支持構造を閉じ込めることによって可能とされる。したがって、本発明のプロセスの好ましい実施例は、感光性樹脂で構成された支持構造が除去可能材料の第1のフィルムと除去可能材料の第2のフィルムとの間に作り出され、後処理ステップにおいて前述の支持構造が物体から除去されることを実現する。
【0021】
除去可能材料のフィルムがそれぞれ設けられている構造化層の上側及び下側の両方において構造化層によって閉じ込められる支持構造の代わりに又はそれに加えて、支持構造はまた、物体の構造化層と構築台との間に配置され得る。ここで、本発明のプロセスの好ましい実施例は、感光性樹脂で構成された支持構造が除去可能材料の第1のフィルムと構築台との間に作り出され、後処理ステップにおいて前述の支持構造が物体から除去されることを実現する。
【0022】
構築台からの支持構造の分離を容易にするために、感光性樹脂の第1の構造化層を構築台上に構築する前に除去可能材料の滴をエゼクタから放出することにより、除去可能材料の第3のフィルムが構築台上に配置され得る。このようにして、除去可能材料で作られる追加の接合部が、構築台と支持構造との間に作り出される。
【0023】
支持構造は、張出し部分又はアンダカットの下の空間全体を埋めることができる。しかし、支持構造を構築するのに必要とされる感光性樹脂の量を最小限に抑えるために、支持構造は、複数の支柱などの複数の支持要素を含み得る。
【0024】
ステレオリソグラフィ3D印刷プロセスにおいて一般に実践されるように、支持構造は実際の物体と同時に構築され、そのため、好ましい実施例は、支持構造が硬化感光性樹脂の複数の層から構築されることを実現する。この目的のために、パターンのセクションは、それぞれ、支持構造を層ごとに構築するために使用され得る。
【0025】
特定の好ましい実施例によれば、除去可能材料のフィルムは、前述の支持構造の硬化感光性樹脂の層の間にそれぞれ配置される。このようにして、支持構造は、硬化感光性樹脂及び除去可能材料で作られた交互するセクションで構成される。言い換えれば、支持構造は、少なくとも1つの除去可能材料のフィルムにより、少なくとも2つのセクションに分割される。後処理ステップ中、除去可能材料が分解されるか又はその安定性を失うときに、支持構造は、少なくとも2つのセクションに、即ちより容易に除去され得るより小さな部品に、分離するか又は崩壊する。これは、アクセスするのが難しい物体の領域からの又は物体の空洞からの支持構造の除去を可能にする。さらに、この方法は、印刷部品の幾何形状から大いに独立し得るので、この方法は、自動化された後処理及び清掃ステップにおいて除去を統合することを可能にする。
【0026】
さらに、これは、単一の印刷処理の部品組立体において、或いは印刷後に分解され得ない組立体群においてですら、部品間、下位部品間、又は組立体群間に可動のジョイント、歯車、又は他のタイプの軸受若しくは可動解決策を作り出す能力を提供する。
【0027】
除去可能材料の性質に関して、エゼクタにより滴で適用することができ、また、融点、溶解性、沸点などのような少なくとも1つの物理的及び/又は化学的特性が硬化感光性樹脂とは異なる、任意の材料が使用され得る。
【0028】
除去可能材料は、重合可能であり且つその重合状態及びプレ重合状態において溶媒中で溶解又は膨潤され得る材料であることが好ましい。したがって、そのような材料は、アクリレート類、メタクリレート類、アクリルアミド類、ビニル・エーテル類若しくはビニル・エステル類、マレイミド類、環状エーテル類、イソシアネート類、アミン類、又は他の重合可能な不飽和基若しくは飽和基などの、少なくとも1種類の重合性基で構成されてよく、また、場合により、少なくとも1種類の親水性基又は親油性基をさらに含み得る。重合材料は、水、アルコール、油、又は他の有機溶媒などの溶媒中で分解又は膨潤可能であり得る。そのような材料は、例えば、ヒドロキシ基、カルボニル基、及びカルボキシ基、並びに他の電気陰性のヘテロ原子類、アミン類、イオン性液体類、及び塩類との誘導体、例えばヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA: hydroxyethylmethacrylate)、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(EOEOEA:2-(2-ethoxyethoxy)ethyl acrylate)、アクリロイル・モルホリン(ACMO:acryloyl morpholine)、ポリエチレン・グリコール誘導体、ポリエーテル類、ヒドロキシ・エチレン、又はアクリル酸ラウリル類を含む。
【0029】
代替的な好ましい実施例によれば、除去可能材料は、印刷プロセス後に固化され且つ溶解可能であり、したがって、長鎖アルコール類又はワックス類などの、<200℃の融点などの硬化感光性樹脂の熱分解温度未満の融点を有する材料である。
【0030】
硬化感光性樹脂上の除去可能材料の付着を改善するために、構造化層は、除去材料の滴をエゼクタから構造化層上に放出する前に、例えばプラズマ又はコロナ処理といった表面調整によって前処理され得る。
【0031】
除去可能材料は液体の形態で硬化感光性樹脂層上に適用されるので、好ましい実施例は、除去可能材料のフィルム上に構造化層が構築される前に除去可能材料のフィルムが固化されることを実現する。除去可能材料のフィルムは、除去可能材料のフィルム上に構造化層が構築される前に、乾燥ステップ、固化ステップ、又は光硬化ステップを受けることが好ましい。或いは、除去可能材料のフィルムは、大気のような環境ガス又は特殊なプロセス・ガス若しくはプロセス雰囲気によってトリガされるか或いは追加のエゼクタ・デバイスによって放出され得る第2の除去可能材料化合物と接触することによってトリガされる化学反応過程によるハードニング又は硬化にさらされる。別の手法では、除去可能材料のフィルムは、硬化感光性樹脂層の表面上で液体のままでいて、その後で、次の硬化感光性樹脂の層を形成する電磁放射パターンによって少なくとも部分的に硬化され得る。代替的な手法では、除去可能材料のフィルムは、硬化感光性樹脂層の表面上、さらには硬化感光性樹脂の複数の層の間で、液体のままであり続ける。しかし、そのような構成では、除去可能材料のフィルムの粘度は、印刷プロセス全体にわたって変動するか又は持続する場合があり、また、その物理的なプロセス環境(例えば、プロセス温度)又は化学的なプロセス環境(例えば、周囲ガス雰囲気)によって影響される場合がある。
【0032】
さらに、構造化層は、空洞を有するように構造化されてよく、空洞内には、エゼクタから除去可能材料の滴が放出される。これは、所望の位置における除去可能材料の位置決めを改善する。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、ステレオリソグラフィ3D印刷によって物体を製造するためのデバイスであって、
構築台と、
材料キャリヤと、
感光性樹脂の未構造化層を構築台上に又は部分的に構築された物体上に適用するための手段と、
感光性樹脂の未構造化層上への光のパターン化のために設計された光エンジンであって、パターンに従って構造化された構造化層を得るために感光性樹脂を硬化させるように適合された、光エンジンと、
除去可能材料のフィルムを得るために構造化層上に除去可能材料の滴を放出するためのエゼクタと、
構築台、光エンジン、及びエゼクタの相対位置を変更するための駆動手段と、
第1の相対位置では構造化層を構築するために構築台及び構築台上に少なくとも部分的に構築された物体が光エンジンに割り当てられ、第2の相対位置では構造化層上に除去可能材料のフィルムを適用するために構築台及び構築台上に少なくとも部分的に構築された物体がエゼクタに割り当てられるように、駆動手段を制御するように適合された制御ユニットと、
を備え、
制御ユニットが、隣接する構造化層の第1の対のうちの第1の構造化層上に除去可能材料の第1のフィルムが配置され、その後、前述の隣接する構造化層の第1の対のうちの第2の構造化層が除去可能材料の第1のフィルム上に構築され、それにより前述の隣接する構造化層の第1の対の第1の構造化層と第2の構造化層との間に除去可能材料の第1のフィルムが配置されるように、所定のシーケンスに従って第1の位置と第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされる、デバイスが提供される。
【0034】
制御ユニットは、隣接する構造化層の第2の対のうちの第1の構造化層上に除去可能材料の第2のフィルムが配置され、その後、前述の隣接する構造化層の第2の対のうちの第2の構造化層が除去可能材料の第2のフィルム上に構築され、それにより前述の隣接する構造化層の第2の対の第1の構造化層と第2の構造化層との間に除去可能材料の第2のフィルムが配置されるように、所定のシーケンスに従って第1の位置と第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされることが、好ましい。
【0035】
制御ユニットは、感光性樹脂の少なくとも1つの構造化層で構成された支持構造が除去可能材料の第1のフィルムと除去可能材料の第2のフィルムとの間に作り出されるように、所定のシーケンスに従って第1の位置と第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされることが、好ましい。
【0036】
制御ユニットは、感光性樹脂の少なくとも1つの構造化層で構成された支持構造が除去可能材料の第1のフィルムと構築台との間に作り出されるように、所定のシーケンスに従って第1の位置と第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされることが、好ましい。
【0037】
制御ユニットは、感光性樹脂の第1の構造化層を構築台上に構築する前に除去可能材料の第3のフィルムが構築台上に配置されるように、所定のシーケンスに従って第1の位置と第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされることが、好ましい。
【0038】
制御ユニットは、支持構造が感光性樹脂の複数の構造化層で構成されるように、所定のシーケンスに従って第1の位置と第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされることが、好ましい。
【0039】
制御ユニットは、除去可能材料のフィルムが支持構造の前述の複数の構造化層の間にそれぞれ配置されるように、所定のシーケンスに従って第1の位置と第2の位置とを変更するように構成され且つプログラムされることが、好ましい。
【0040】
以下、本発明の特定の好ましい実施例を参照することにより、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】ボトム・アップ・ステレオリソグラフィ・プロセスのための材料配置方策の実例を示す図である。
【
図2】トップ・ダウン・ステレオリソグラフィ・プロセスのための材料配置方策の実例を示す図である。
【
図3a】可動SLA印刷ヘッドによるステレオグラフィ印刷プロセスのための材料配置方策の側面図である。
【
図3b】可動SLA印刷ヘッドによるステレオグラフィ印刷プロセスのための材料配置方策の上面図である。
【
図5a】空洞の内側に支持構造を含む印刷部品の図である。
【
図5b】
図5aの接触領域をより詳細に示す図である。
【
図6】可動セグメントを含む例示的な部品の図である。
【
図7】支持構造の内側の例示的な材料配置を示す図である。
【
図8】部品と支持構造との間の接合部領域における例示的な支持構造幾何形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、支持構造の除去を容易にするために除去可能材料を選択的に配置するさらなる段階を伴う、充填材入りの又は無充填の感光性樹脂の光への選択的な暴露により部品を積層的に造形する方法である。ステレオリソグラフィ印刷システムは、充填材の有無に関わらず、印刷部品自体に対してだけでなく必要な支持構造に対しても同じ材料を用いて、様々な粘度、好ましくは所定のプロセス温度において0.1Pa.sから20Pa.sの間の動的粘度の感光性樹脂の処理及び選択的な硬化を可能にする。1種類の材料のみに限定されるという市販のプリンタの欠点を克服するために、複数種の追加の材料を含む少なくとも1種類の追加の材料を選択的に配置することができる滴生成デバイス、例えばインクジェット印刷ヘッド、ノズル、又はピペットを印刷プロセスに取り入れることにより、複数材料ステレオリソグラフィ印刷が達成される。印刷物体に第2の又は追加の段階として除去可能材料を導入する本発明は、あらゆるタイプのステレオリソグラフィ印刷プロセスに適用され得る。
図1及び
図2は、そのような第2の又は追加の材料段階を追加するためにエゼクタを実装した2つの異なるステレオリソグラフィ印刷プロセスの概略図を示す。滴を放出するためのエゼクタに加えて、すでに硬化した層上を移動するユニットは、選択的に配置された液滴、滴アレイ、又は表面湿潤液滴層を硬化又は固定するための光源、例えばLED又はUVランプを含み得る。さらに、ユニットは、配置された材料を乾燥させるための、及び/或いは基質を乾燥させ且つ/又は制御された若しくは制御されない気化を実施するための、熱源を含み得る。例えばワイパ・ブレード又は定められた温度の空気流若しくはガス流を用いて基質(すでに硬化した層)を下処理して表面を乾燥させる/清掃することが必要な場合がある。液滴の定められた配置を可能にする(例えば、印刷された層基質上での液滴材料の濡れ及び結合挙動を定めるか又はそれに影響を与える)ために、例えば層表面のプラズマ処理又はコロナ処理といった表面調整処理を使用することが、さらに有益であり得る。
【0043】
図1は、複数材料ボトム・アップ・ステレオリソグラフィ印刷プロセス100の概略図及び実例である。プリンタ100は、構築台2で構成され、構築台2は、位置101と102と103との間で矢印7に従って回転可能である。位置101では、透明な大桶5が、感光性樹脂4で満たされている。この材料の高さは、数ミリメートルまでの印刷層厚さの範囲内であってよい。コータ8が、新たな感光性材料4で大桶を被覆するために設置され得る。構築台2は、構築台2(又は、構築台2上に部分的に構築された部品1)と大桶5との間の所望の層高さの距離に達するまで、感光性材料内へ下降される。硬化システム6が、透明な大桶5を通じて感光性材料4を硬化させる。これは、例えば、光源として単一の又は複数のLEDを使用する動的マスク・システム、レーザ走査システム、或いはLCD又は他の能動的若しくは受動的な露光ディスプレイであり得る。硬化後、構築台2は上昇され、大桶5は再度被覆され得る。これらのステップが繰り返されることにより、3次元的な部品1が印刷される。張出し又は空洞などの特定の構造の場合、支持構造3が必要である。支持構造は、感光性樹脂から印刷されたセクション31、可溶性材料、膨潤性材料、可融性材料、気化可能な材料、及び/又は昇華可能な材料などの除去可能材料から印刷されたセクション32、並びに部品1と支持構造3との間の接合部セクション33を含む、様々なセクションに分割され得る(
図5b参照)。セクション32及び33を印刷するために、モータ7が、印刷された部品1を所望の位置まで回転させ得る。例示的な位置102又は103では、滴生成デバイス9、例えばインクジェット印刷ヘッド若しくはピペット、又は加熱可能なノズルが、部品1の表面の上へ移動されて、選択された領域において除去可能材料を配置する。除去可能材料中の光開始剤に適合されたUV光源又は可視光源10が、材料を硬化させてそれを固定することができる。或いは、熱源11、例えば赤外線ランプ又はハロゲン・ランプが、除去可能材料を乾燥させるか又は除去可能材料の成分(例えば、溶媒)を気化させることができる。必要であれば、スクレーパ12、又は定められた温度の空気流若しくはガス流が、余分な除去可能材料を拭い落として/吹き飛ばして噴射を受ける基質を下処理するために、部品1の表面上で移動され得る。除去可能材料を配置する前に部品1の硬化感光性樹脂の表面の湿潤性及び付着性を向上させるために、例えばコロナ処理又はプラズマ処理といった表面処理デバイス13が設置され得る。除去可能材料の配置後、構築台2は、元の位置101へ回転され、そこで部品1の次の層が硬化され、前述の層はまた、支持構造のセクション31を形成する。
【0044】
図2は、複数材料トップ・ダウン印刷プロセス200を示す。構築台2が、感光性樹脂4で満たされたタンク5に沈む。位置201では、硬化システム6が、感光性材料4を上方から硬化させる。これは、例えば、光源としてLEDを使用する動的マスク・システム、レーザ走査システム、或いはLCD又は他の能動的若しくは受動的な露光ディスプレイであり得る。硬化後、構築台2は、液体樹脂に沈められ、コータ又はブレード8が、印刷された部品を次の未硬化樹脂の層で被覆し得る。これらのステップが繰り返されることにより、3次元的な部品1が印刷される。張出し又は空洞などの特定の構造の場合、支持構造3が必要である。支持構造は、感光性樹脂31から印刷されたセクション31、可溶性材料、膨潤性材料、又は可融性材料などの除去可能材料から印刷されたセクション32、及び部品1と支持構造3との間の接合部セクション33を含む、様々なセクションに分割され得る。セクション32及び33を印刷するために、層31を硬化させた後、滴生成デバイス9、例えばインクジェット印刷ヘッド若しくはピペット、又は加熱可能なノズルが、部品1の表面上で位置202まで移動されて、選択された領域において除去可能材料を配置する。除去可能材料中の光開始剤に適合されたUV光源又は可視光源10が、材料を硬化させてそれを固定することができる。熱源11、例えば赤外線ランプ又はハロゲン・ランプが、除去可能材料を乾燥させることができる。除去可能材料の配置の前に、ワイパ若しくはブレード12、又は定められた温度の空気流若しくはガス流が、未硬化樹脂の残渣を除去してもよい。表面品質を高めるために、例えばコロナ処理又はプラズマ処理といった表面処理デバイス13が、部品1の表面上を移動してよい。
【0045】
図3aは、可動印刷ヘッド15による例示的なステレオリソグラフィ・プロセスの側面図を示す。部品1は、z方向において垂直に移動可能な構築台2上に印刷される。感光性材料31は、x方向において水平に移動され得る印刷ヘッド15によって適用され且つ硬化される。印刷ヘッド15は、構築台2上への液体感光性樹脂のための移送媒体として作用する、循環又は回転フォイルを備える。例えばレーザ・スキャナ、動的マスク・システム、又はLEDモジュールといった硬化デバイス16が、移送された樹脂を印刷ヘッド15の内側からフォイルを通じて選択的に硬化させる。印刷ヘッド15の後ろでは、例えばインクジェット印刷ヘッド若しくはピペット、又は(加熱可能な)ノズルといった滴放出デバイス9が、構築台1上で移動し、且つ、可溶性、膨潤性、可融性、昇華性、又は気化性の除去可能材料を選択的に配置することができる。除去可能材料中の任意選択の光開始剤に適合されたUV光源又は可視光源10が、除去可能材料を硬化してそれを固定し得る。例えば赤外線ランプ又はハロゲン・ランプといった熱源11が、除去可能材料を乾燥させ得る。部品1の表面は、ワイパ若しくはブレード12又は定められた温度の空気流若しくはガス流、及び/或いは例えばコロナ処理又はプラズマ処理といった表面処理デバイス13を介して、下処理され得る。滴生成デバイス9、並びに硬化デバイス10及び熱処理デバイス11は、印刷ヘッド15に取り付けられるか、又は独立して移動され得る。
【0046】
図3bは、マルチ・パス印刷のための可動印刷ヘッド15による例示的なステレオリソグラフィ・プロセスの上面図を示す。滴生成デバイス9は、印刷ヘッド15上に設置されるか、又は、独立して移動することができ、且つ、構築台2上のより大きな構築領域を走査するためにy方向においてさらに移動することができる。硬化デバイス10及び熱処理デバイス11は、応じて滴生成デバイス9の前後に相応に位置決めされる。除去可能材料の配置の前に、印刷された部品1の表面を下処理するために、ワイパ若しくはブレード又は定められた温度の空気流若しくはガス流が使用されてよく、また、表面は、滴生成デバイスの前後に相応に位置決めされた例えばコロナ処理又はプラズマ処理といった表面処理デバイス13によって処理されてよい。
【0047】
図4は、構築台2に付着された、張出しセクションを含む印刷部品300を示し、張出しセクションは、ステレオリソグラフィを介して支持構造3が印刷されることを必要とする。支持構造3は、部品1と同じ感光性樹脂材料から印刷される。支持構造3と部品1との間の接合部セクション33において、及び/又は構築台2と支持構造3との間の接合部セクション34において、可溶性、膨潤性、可融性、気化性、及び/又は昇華性であり得る除去可能材料が配置され且つ固化される。印刷プロセス後、部品は後処理を受ける。印刷された部品1から支持構造3を除去するために、及び/又は構築台2から部品1を取り外すために、部品1及び/又は構築台2全体が、加熱若しくは冷却され、且つ/又は適切な溶媒に沈められ得る。これは、セクション33及び/又は34内の除去可能材料を不安定化することにより印刷部品1の表面を損傷することなしに部品1から支持構造3を除去することを可能にする。また、これは、さもなければ部品1の手作業での取外しによって生じる引っ掻き傷から構築台2を防ぐ。さらに、支持構造3の除去又は構築台2からの分離は、自動的な後処理(例えば、UV又は熱による後硬化)又は洗浄ステップに組み入れられ得る。これは、かなりの時間、労力、及び手作業を節約し得る。
【0048】
図5aは、ステレオリソグラフィを介して支持構造3が印刷されることを必要とする、部分的にアクセス不能な空洞を含む部品400を示す。支持構造3は、硬化感光性材料の層/セクション31と、可溶性、膨潤性、可融性、気化性、及び/又は昇華性の材料などの除去可能材料の層/セクション32とで構成され、且つ、セクションXをより詳細に示す
図5bに示されるように接合部セクション33を介して部品1に付着される。支持構造3が印刷されることを必要とする、アクセス不能な空洞又は張出し部は、硬化感光性材料の層/セクション31と除去可能材料の層/セクション32とが交互になった支持構造3によって支持され得る。セクション32における除去可能材料は、印刷プロセス後の後処理ステップ中に溶解、膨潤、溶融、気化、又は昇華される。このようにして、支持構造3を小さな部品に分割することができ、それらの部品は、空洞から、又はアクセスし難い領域若しくは機械的にアクセス不能な領域から、洗い流すか又は吹き飛ばすことができる。
【0049】
図6は、可動であるように意図された挿入物、例えばシャフトを有する部品500を示す。可動部品502は、印刷部品501の内側に設置され、除去可能材料セクション503により部品501から分離される。セクション503における除去可能材料は印刷プロセス後の後処理ステップ中に溶解、膨潤、溶融、気化、又は昇華などにより除去されるので、セクション503は印刷部品500から除去され得る。
【0050】
図7は、支持構造3内の除去可能材料の配置の様々な実例を示す。部品1は、感光性樹脂から印刷され、支持構造3に付着される。支持構造3のベース・セクション31が、部品1の層ごとの構成中に部品1と同じ感光性樹脂材料から構成され得る。滴生成デバイスにより、除去可能材料の滴が支持構造3に導入されて、支持構造3内にセクション32を作り出す。支持構造3のサイズ、支持構造3の材料特性、感光性樹脂の除去可能材料との適合性、表面張力などに応じて、接合部セクション33の様々な幾何形状が必要とされ得る。除去可能材料の溶融、溶解、膨潤、気化、又は昇華により、支持構造3は、部品1から除去され得る。実例601は、より多量の除去可能材料を接合部セクション33内に配置するための、また、除去可能材料の流体力学的特性を利用するための、支持構造3のベース・セクション31における空洞17を示す。実例602では、例えば接合部領域における除去可能材料の量を増やすために、感光性樹脂材料(セクション31)及び除去可能材料(セクション32)の交互になった少数の層が、接合部領域内に配置されている。実例603では、感光性樹脂材料(セクション31)の複数の層が、除去可能材料(セクション32)の層によって分離されている。これらの支持構造3は、セクション32における除去可能材料を溶解、膨潤、溶融、気化、又は昇華させることにより、小片に縮小され得る。
【0051】
図8は、構築部品1と支持構造3との間の接合部領域における幾何形状のさらなる実例を示す。支持構造3のベース・セクション31は、構築部品1と同じ感光性樹脂材料で構成される。除去可能材料から作られたセクション32及び/又は33が、例えばインクジェット印刷ヘッド又はノズルといった滴生成デバイスにより、セクション31上又はセクション31間に選択的に配置される。除去可能材料は、適用後に光源によって硬化されるか又はガス流若しくは周囲大気によって乾燥され得る。或いは、除去可能材料は、その元の形態若しくはわずかに改質された液体形態を維持し続けるか、又は固化し得る。
図8は、除去可能材料で作られたセクション32及び/又は33の様々な設計を示す。
【0052】
a.支持構造3は、平らな表面で終わる。除去可能材料は、この表面上に配置される。
b.支持構造3は、接合部セクション33内により多量の除去可能材料を配置するために、丸く且つ/又は平坦な空洞17を有する。
c.支持構造3は、接合部セクション33内により多量の除去可能材料を配置するために、角があり且つ/又は深さがある空洞17を有する。
d.セクション32が、接合部領域に加えて支持構造のいくつかの層(セクション31)の間に配置されている。
e.(b)の詳細図を示す。
f.支持構造3は、接合部セクション33内により多量の除去可能材料を配置するために、先細の空洞17を有する。このようにして、接合部領域において除去可能材料の量と比較して感光性樹脂の量が減少される。
g.選択的に配置された除去可能材料の滴は、連結していない。
h.支持構造3のセクション31が、除去可能材料で作られたセクション32によって分離されている。
i.支持構造3のセクション31が、除去可能材料で作られたセクション32によって分離されており、セクション32は、構築方向において除去可能材料によって相互接続されている。
【0053】
図9は、印刷プロセスの流れ図を示す。第1に、CADファイルが生成されて、定められた層厚さにスライスされる必要がある。混成支持構造が有益である場合、2つの選択肢が存在し得る。選択肢1は、相応にスライスされて第2の材料で印刷される支持構造の第2のCADファイルを生成することである。選択肢2は、第2の印刷システムによって2回目に使用されることになる、すでに存在する積層のうちの特定の層を決定することである。層情報は、ステレオリソグラフィ部及び滴生成デバイスのための適切なファイル・フォーマットで、例えばBMP及びPNGそれぞれで提供される必要がある。ベース層が好ましい場合、画像情報は、適切なファイル・フォーマットで提供される必要がある。ステレオリソグラフィ層を硬化させた後、表面は、噴射を受けるために下処理される必要があり得る。これは、拭い落し、乾燥、又はプラズマ処理若しくはコロナ処理などの特定の表面活性化処理を含む。例えばインクジェット印刷ヘッド又は(加熱可能な)ノズルといった1つ又は複数の滴生成デバイスによる選択的な滴配置の後、液滴は、硬化又は固定される必要があり得る。この目的のために、適切な波長の光源、又はIRランプといった熱源、又はガス流を生成するデバイスが、噴射デバイスの後ろに設置され得る。その後、液体感光性材料の次の層が配置され且つ硬化される(ステレオリソグラフィ)。