(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】電池コアサンプリング電圧の補償方法、装置及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240716BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240716BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02J7/00 P
H01M10/44 P
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2023538072
(86)(22)【出願日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2021123018
(87)【国際公開番号】W WO2023060380
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】陳紹岩
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111063944(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106100009(CN,A)
【文献】特開2015-057593(JP,A)
【文献】特開2014-157075(JP,A)
【文献】特開2002-334726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0306014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池コアサンプリング電圧の補償方法であって、電圧サンプリング装置によって前記電池コアサンプリング電圧を測定し、前記電圧サンプリング装置は、電池パックにおける直列接続された複数の電池コアと電気的に接続され、前記電池パックは、複数のモジュールを含み、各モジュールには、複数の電池コアが含まれ、少なくとも一つのモジュール間バスバーは、前記電池パックにおける異なるモジュールに接続され、且つ前記電圧サンプリング装置のサンプリングチャンネルの間に位置し、前記方法は、
前記電圧サンプリング装置に接続されたすべての電池コアが正常な状態にあることを確認した後、予め設定される電流で前記電池パックを充電又は放電し、前記電圧サンプリング装置により前記複数の電池コアのサンプリング電圧値を取得するステップと、
取得された前記複数の電池コアのサンプリング電圧値に基づいて、前記複数のモジュールにおいてサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを決定し、且つ前記モジュール間バスバーのインピーダンス電圧を計算するステップと、
前記モジュール間バスバーのインピーダンス電圧に基づいて、前記電圧補償を行う必要のある電池コアに対してサンプリング電圧補償を行うステップとを含む、電池コアサンプリング電圧の補償方法。
【請求項2】
予め設定される電流で前記電池パックを充電又は放電することは、前記電池パックにおけるすべての電池コアに前記予め設定される電流を所定時間流すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め設定される電流は、電池コアが1時間で完全に満充電するか又は完全に放電する電流値である電池コア1cで充放電する電流値よりも大きい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記予め設定される電流は、充電中又は放電中に安定した値である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のモジュールにおいてサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを決定することは、
モジュール内の各電池コアのサンプリング電圧とこのモジュールにおけるすべての電池コアの平均サンプリング電圧との差を計算し、この差が第一の予め設定される閾値よりも大きい電池コアを、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアとして決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記モジュール間バスバーのインピーダンス電圧を計算することは、
前記サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアのサンプリング電圧と、モジュールからこのサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを除外した後の残りの電池コアの平均サンプリング電圧との差を計算し、この差と前記予め設定される電流に基づいて前記モジュール間バスバーのインピーダンスを決定し、前記モジュール間バスバーを流れる電流と前記モジュール間バスバーのインピーダンスとに基づいて前記モジュール間バスバーのインピーダンス電圧を決定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記モジュール間バスバーのインピーダンスを記録し、複数回記録された前記モジュール間バスバーのインピーダンスに基づいて前記モジュール間バスバーの状態を予測する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電池コアが正常な状態にあるかどうかを判断するステップをさらに含み、
ここで、前記電池パックが静置状態にある時に、前記モジュールにおける各電池コアのサンプリング電圧と前記モジュールにおけるすべての電池コアの平均サンプリング電圧との差がいずれも第二の予め設定される閾値よりも小さい場合、前記モジュールにおけるすべての電池コアが正常な状態にあると決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電池パックが静置状態にあることは、前記電池パックのSOCが予め設定される区間にある時に、前記電池パックを流れる電流が静置電流であることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記静置電流は、5Aよりも小さい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記予め設定される区間は、前記電池パックのSOCが30-80%の間にあることである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にある時に、前記電池パックの条件試験フラグビットを1に設定する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記電池パックを使用する時に、前記電池パックの条件試験フラグビットが1である場合、前記電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にあるかどうかを決定し、少なくとも一つの電池コアが正常な状態になければ、前記電池パックの条件試験フラグビットを0と設定し、且つ前記電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にあるかどうかを再検出し、前記電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にあると決定した時に、前記電池パックの条件試験フラグビットを1にリセットする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電池パックにおけるすべての電池コアは、同じタイプの電池コアである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
電池コアサンプリング電圧の補償装置であって、メモリとプロセッサとを含み、前記メモリには、コンピュータプログラムが記憶されており、前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行する時に、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法を実現するために用いられる、電池コアサンプリング電圧の補償装置。
【請求項16】
電気エネルギーを提供するための電池パックと、請求項15に記載の装置とを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電池分野に関し、具体的には電池コアサンプリング電圧の補償方法、装置及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
新エネルギー自動車が従来の化石燃料自動車に代わることは、すでに自動車業界の発展のトレンドとなっている。ここで、リチウム電池の新エネルギー自動車は、電気自動車の電力要求を満たすために、複数の電池コアの直列接続を行って電池パック全体を比較的高い電圧範囲にする必要がある。
【0003】
現在、電池パックの電池コアをグループ化する方式は、複数の電池コアがモジュールを構成し、複数のモジュールが電池パックを構成することである。モジュールとモジュールとの間は、バスバーを採用して接続され、モジュールの間に電池パックの空間構造配置によりモジュールの間のジャンパー長さが比較的長いため、モジュールの間を接続する過程において必然的に比較的長いバスバーを導入し、バスバーインピーダンスの影響を受けたため、電流が電池パックを通過する時に電圧サンプリング装置による電池コアへの電圧サンプリングに影響を与える。そのため、電池パックにおける各電池コアのサンプリング電圧をどのように正確に取得するかは、早急な解決が待たれる問題である。
【発明の概要】
【0004】
上記の問題に鑑み、本出願は、特別な機器を必要とせずに、電圧補償を行う必要のある電池コアを動的に検出し、且つモジュール間バスバーのインピーダンス電圧に基づいて電池コアサンプリング電圧を補償できる電池コアサンプリング電圧の補償方法、装置及び電力消費装置を提供する。
【0005】
第一の態様によれば、本出願は、電池コアサンプリング電圧の補償方法を提供し、ここで、電圧サンプリング装置によって前記電池コアサンプリング電圧を測定し、前記電圧サンプリング装置は、電池パックにおける直列接続された複数の電池コアと電気的に接続され、前記電池パックは、複数のモジュールを含み、各モジュールには、複数の電池コアが含まれ、少なくとも一つのモジュール間バスバーは、前記電池パックにおける異なるモジュールに接続され、且つ前記電圧サンプリング装置のサンプリングチャンネルの間に位置し、前記方法は、前記電圧サンプリング装置に接続されたすべての電池コアが正常な状態にあることを確認した後、予め設定される電流で前記電池パックを充電又は放電し、前記電圧サンプリング装置により前記複数の電池コアのサンプリング電圧値を取得するステップと、取得された前記複数の電池コアのサンプリング電圧値に基づいて、前記複数のモジュールにおいてサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを決定し、且つ前記モジュール間バスバーのインピーダンス電圧を計算するステップと、前記モジュール間バスバーのインピーダンス電圧に基づいて、前記電圧補償を行う必要のある電池コアに対してサンプリング電圧補償を行うステップとを含む。
【0006】
本出願の実施例の技術案では、電池パックが静置状態にある時に、各電池コアが正常な状態にあるかどうかを検出する。電池パックにおける電池コアが正常である時に、安定した電流を流れて電池パックを充電又は放電することにより、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアの位置及びモジュール間バスバーのインピーダンスの大きさを決定し、且つモジュール間バスバーのインピーダンス電圧に基づいてこの電池コアのサンプリング電圧を補償し、収集された電池コア電圧が実際の電池コア電圧と一致するようにする。
【0007】
いくつかの実施例では、予め設定される電流で前記電池パックを充電又は放電することは、前記電池パックにおけるすべての電池コアに前記予め設定される電流を所定時間流すことを含む。電池パックにおけるすべての電池コアに前記予め設定される電流を所定時間流すことにより、電池パックの各電池コアの電圧とモジュールにおける電池コアの平均電圧を効果的に検出することができ、それによってサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを正確に特定することができる。
【0008】
いくつかの実施例では、ここで、前記予め設定される電流は、充電中又は放電中に安定した値である。
【0009】
いくつかの実施例では、ここで、前記複数のモジュールにおいてサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを決定することは、モジュール内の各電池コアのサンプリング電圧とこのモジュールにおけるすべての電池コアの平均サンプリング電圧との差を計算し、この差が第一の予め設定される閾値よりも大きい電池コアを、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアとして決定することを含む。
【0010】
いくつかの実施例では、ここで、前記モジュール間バスバーのインピーダンス電圧を計算することは、前記サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアのサンプリング電圧と、モジュールからこのサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを除外した後の残りの電池コアの平均サンプリング電圧との差を計算し、この差と前記予め設定される電流に基づいて前記モジュール間バスバーのインピーダンスを決定し、前記モジュール間バスバーを流れる電流と前記モジュール間バスバーのインピーダンスとに基づいて前記モジュール間バスバーのインピーダンス電圧を決定することを含む。
【0011】
いくつかの実施例では、前記モジュール間バスバーのインピーダンスを記録し、複数回記録された前記モジュール間バスバーのインピーダンスに基づいて前記モジュール間バスバーの状態を予測する。電池パックが持続的に使用されると、バスバー接触面の劣化、固定ボルトの緩みなどの状況が発生し、バスバーのインピーダンスを複数回計算して記録することにより、バスバーの非人為的な場合の状態を決定することができ、電池パックにおけるバスバーの検出とメンテナンスを容易にする。
【0012】
いくつかの実施例では、電池コアが正常な状態にあるかどうかを判断するステップをさらに含み、ここで、前記電池パックが静置状態にある時に、前記モジュールにおける各電池コアのサンプリング電圧と前記モジュールにおけるすべての電池コアの平均サンプリング電圧との差がいずれも第二の予め設定される閾値よりも小さい場合、前記モジュールにおけるすべての電池コアが正常な状態にあると決定する。
【0013】
いくつかの実施例では、ここで、前記電池パックが静置状態にあることは、前記電池パックのSOCが予め設定される区間にある時に、前記電池パックを流れる電流が静置電流であることを含む。
【0014】
いくつかの実施例では、前記予め設定される区間は、前記電池パックのSOCが30~80%の間にあることである。
【0015】
いくつかの実施例では、ここで、前記電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にある時に、前記電池パックの条件試験フラグビットを1に設定する。
【0016】
いくつかの実施例では、前記電池パックを使用する時に、前記電池パックの条件試験フラグビットが1である場合、前記電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にあるかどうかを決定し、少なくとも一つの電池コアが正常な状態になければ、前記電池パックの条件試験フラグビットを0と設定し、且つ前記電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にあるかどうかを再検出し、前記電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にあると決定した時に、前記電池パックの条件試験フラグビットを1にリセットする。
【0017】
いくつかの実施例では、ここで、前記電池パックにおけるすべての電池コアは、同じタイプの電池コアである。
【0018】
第二の態様によれば、本出願は、電池コアサンプリング電圧の補償装置を提供し、この補償装置は、メモリとプロセッサとを含み、前記メモリには、コンピュータプログラムが記憶されており、前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行する時に、本出願の上記の電池コアサンプリング電圧の補償方法を実現するために用いられる。
【0019】
第三の態様によれば、本出願は、電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、電気エネルギーを提供するための電池パックと、上記の電池コアサンプリング電圧の補償装置とを含む。
【0020】
上記説明は、本出願の技術案の概要にすぎず、本出願の技術手段をより明瞭に理解できるように、明細書の内容に従って実施することができ、且つ本出願の上記と他の目的、特徴と利点をより明らかに分かりやすくするために、以下は、特に本出願の具体的な実施の形態を挙げて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下の好ましい実施の形態の詳細な記述を読むことにより、様々な他の利点と利益が当業者にとって明瞭になる。図面は、好ましい実施の形態を示す目的のみに使用され、本出願に対する制限と認められない。そしてすべての図面において、同じ図面符号で同じ部材を表す。図面において、
【
図1】本出願のいくつかの実施例の電池システムの電気接続関係図である。
【
図2】本出願のいくつかの実施例の電池パックにモジュール間バスバーが含まれる時の電圧サンプリング装置と各電池コアとの接続方式の概略図である。
【
図3】本出願のいくつかの実施例の電池コアサンプリング電圧補償方案のフローチャートである。
【
図4】本出願のいくつかの実施例の実測データにおける電池コアサンプリング電圧の経時変化図である。
【
図5】本出願のいくつかの実施例の電池コアサンプリング電圧補償装置のブロック図である。
【
図6】本出願のいくつかの実施例の電力消費装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下は、図面を結び付けながら本出願の技術案の実施例を詳細に記述する。以下の実施例は、本出願の技術案をより明瞭に説明するためにのみ使用されるため、これで本出願の保護範囲を制限することはできず、ただの例とする。
【0023】
特に定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術的と科学的用語は、本出願の技術分野に属する当業者によって一般的に理解される意味と同じであり、本明細書に使用される用語は、具体的な実施例を記述するためのものに過ぎず、本出願を限定することを意図しておらず、本出願の明細書と特許請求の範囲及び上記図面の説明における用語である「含む」と「有する」及びそれらの任意の変形は、非排他的な「含む」を意図的にカバーするものである。
【0024】
本出願の実施例の記述において、「第一」、「第二」などの技術用語は、異なる対象を区別するためにのみ使用されており、相対的な重要性を指示又は暗示し又は指示された技術的特徴の数、特定の順序又は主従関係を示すことを暗示していると理解されることはできない。本出願の実施例の記述において、別段の明確的かつ具体的な限定がない限り、「複数の」の意味は、二つ以上である。
【0025】
本明細書に言及された「実施例」は、実施例を結び付けて記述された特定の特徴、構造又は特性が本出願の少なくとも一つの実施例に含まれ得ることを意味している。明細書における各位置でのこのフレーズの出現は、必ずしも全てが同じ実施例を指すものではなく、他の実施例と相互排他する独立した又は代替的な実施例でもない。当業者は、本明細書に記述された実施例が他の実施例と組み合わされることが可能であることを明示的かつ非明示的に理解することができる。
【0026】
本出願の実施例の記述において、用語である「及び/又は」は、ただ関連対象を記述する関連関係であり、三つの関係が存在し得ることを表し、例えばメチル及び/又はエチルは、メチルが単独で存在する、メチルとエチルとが同時に存在する、エチルが単独で存在するという3つのケースを表すことができる。また、本明細書における文字である「/」は、一般的には前後関連対象が「又は」の関係であることを表す。
【0027】
本出願の実施例の記述において、用語である「複数の」は、二つ以上(二つを含む)を指し、同様に、「複数組」は、二組以上(二組を含む)を指し、「複数枚」は、二枚以上(二枚を含む)を指す。
【0028】
本出願の実施例の記述において、技術用語である「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などにより指示される方位又は位置関係は、図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、単に本出願の実施例の記述を容易にして記述を簡略化するためのものであり、言及された装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成して操作しなければならないことを指示又は暗示するものではないため、本出願の実施例の制限として理解されることはできない。
【0029】
本出願の実施例の記述において、特に明確に規定、限定されていない限り、技術用語である「取り付け」、「繋がり」、「接続」、「固定」などの用語は、広義に理解されるべきであり、例えば固定的な接続であってもよく、取り外し可能な接続、又は一体化であってもよく、機械的な接続であってもよく、電気的な接続であってもよく、直接的な繋がりであってもよく、中間媒体による間接的な繋がりであってもよく、二つの素子内部の連通又は二つの素子の相互作用関係であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて上記用語の本出願の実施例における具体的な意味を理解することができる。
【0030】
動力電池は、電力消費装置に動力源を提供する電池である。選択的に、動力電池は、動力蓄電池であってもよい。電池の種類から言えば、この動力電池は、リチウムイオン電池、リチウム金属電池、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池又はナトリウムイオン電池などであってもよく、本出願の実施例では具体的に限定しない。電池の規模から言えば、本出願の実施例における電池は、電池コア/電池セルであってもよく、電池モジュール又は電池パックであってもよく、本出願の実施例では具体的に限定しない。選択的に、電力消費装置は、車両、船舶又は宇宙航空機などであってもよく、本出願の実施例は、これを限定しない。動力電池の電池管理システム(Battery Management System、BMS)は、動力電池の安全な使用を保護する制御システムであり、充放電管理、高圧制御、電池の保護、電池データの収集、電池状態の評估などの機能を実施する。
【0031】
現在の動力電池の電池コアをグループ化する方式は、一般的に複数の電池コアがモジュールを構成し、複数のモジュールが電池パックを構成することである。電池パックのモジュールとモジュールとの間は、バスバー(busbar)を採用して接続される。バスバーは、金属導体からなる棒状又は帯状に形成されるとともに、ねじ結合などの方式で電池パックにおけるモジュールの電極に接続される。電池パックモジュールの接続過程において、一部のモジュールとモジュールとの間のジャンパー長さが比較的長く、グループ化過程において必然的に比較的長いバスバーを導入し、モジュール間バスバーの位置がちょうど一つの電圧サンプリング装置のサンプリングチャンネルの間にある場合、バスバーインピーダンスの影響を受けるため、電流が電池パックを通過する時に電圧サンプリング装置による電池コアへの電圧サンプリングに影響を与える。ここで、電圧サンプリングチャンネルは、電圧サンプリング装置の二つのサンプリング端の間のチャンネルであり、例えば電池パックにおける電池コアをサンプリングする時に、電圧サンプリング装置の一つのサンプリング端は、電池正極における電圧をサンプリングし、別のサンプリング端は、電池負極における電圧をサンプリングすると、サンプリング装置のこの二つのサンプリング端の各端子とこのサンプリング装置との間に構成されるチャンネルは、サンプリングチャンネルである。
【0032】
現在、モジュール間バスバーによる電池コアサンプリング電圧が正確でない現象について、すでに2種類の処理方式があり、第1種の方式は、電池パックを組み立てる時に各モジュールの間バスバーのインピーダンスを試験し、電池管理システムにおける管理ソフトウェアが具体的な調整ポリシーを行う時に、電流を結び付けて電池コアの電圧を補償し、即ち、オームの法則によりバスバーの電圧を計算して電池コアに対して電圧補償を行うことである。第一種の方式の欠点は、電池パックのライフサイクル後期にバスバーのインピーダンスが大きくなる可能性があり、ライフサイクル開始BOL(Begin of Life)のデータによりライフサイクル終了EOL(End of Life)時の状態をフィードバックすることができず、後期の電池コアサンプリング電圧の補償データが不正確になり、なお、各電池パックのバスバーインピーダンスに対する試験及び管理ソフトウェアへの書き込みに多大な工数がかかることである。第二種の方式は、一部の電圧サンプリング装置(例えば:サンプリングチップであり、アナログフロントエンドAFE(Analog Front Endであってもよい)チップ、即ちアナログフロントエンドチップは、電池パックのサンプリング機能を完了する)が、バスバーの電圧収集をサポートし、バスバーの両端にサンプリングハーネス(又はサンプリングチップ内に専用のポートを予約する)をサンプリングチップに追加することにより、サンプリングチップ内部でバスバーの電圧を収集して対応する電池コア電圧に直接補償することである。第二種の方式の欠点は、サンプリングチップが、より多くのハーネスインターフェースリソースのサポートが必要であるとともに、サンプリングチップがハーネスインターフェース機能を有するチップを使用することしかできないことであり、第二種の方式は、電圧サンプリングチップに対する要求が比較的高い。
【0033】
上記の場合について、本発明の実施例は、電池コアサンプリング電圧の補償方法、装置及び電力消費装置を提供する。電池の静置状態で各電池コアが正常であるかどうかを検出し、さらに安定した電流を流れて電池コアを充電又は放電することにより、電圧補償を行う必要のある電池コアの位置及びモジュール間バスバーインピーダンスの大きさを決定し、この位置の電圧サンプリング装置が収集した電池コア電圧を補償し、収集された電池コア電圧が実際の電池コア電圧と一致するようにし、上記の検出と操作により、電池の電池コアの過不足電圧故障判断時に、収集された電池コア電圧が電池コアの真の電圧であることを確保することができる。
【0034】
以下の実施例は、説明の便宜を図るために、本出願の実施例の電池システム1000を例に説明する。
【0035】
図1に示すように、
図1は、本出願のいくつかの実施例による電池システムの電気接続関係図である。
【0036】
図1に示すように、図において、電池システム1000は、高圧制御ボックスBDU1100と、高圧ヒューズFUSE1300と、車端1200と、電池パック1400とを含み、ここで、電池パック1400には、四つのモジュールが含まれ、それぞれ1401、1402、1403と1404であり、モジュールの間は、バスバーを採用して接続され、ここで、バスバー1501は、モジュール1401とモジュール1402とを接続し、バスバー1502は、モジュール1402と1403とを接続し、バスバー1503は、モジュール1403とモジュール1404とを接続する。ここで、電池パック1400における各モジュールは、複数の直列接続された電池コアを含み、例えばモジュール1401、1402、1403、1404には、それぞれ8つの直列接続された電池コアが含まれてもよい。高圧制御ボックスBDU1100の内部は、高圧リレーで構成され、パッケージ全体の高圧回路の遮断を制御するために用いられ、高圧ヒューズFUSE1300は、短絡などの極限モードが発生する時に高圧回路を遮断するために用いられる。電池パックにおけるモジュールは、BDU1100とFUSE1300とを介して車端1200に接続され、自動車に給電する。
【0037】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、
図1における電池パックは、複数のモジュールを含んでもよく、
図1に示された四つのモジュールに限定されず、そして各モジュールには、複数の直列接続された電池コアが含まれてもよいとともに、各モジュールにおける電池コアの数は、同じであってもよく、又は異なってもよい。
【0038】
図2は、本出願のいくつかの実施例の電池パックにモジュール間バスバーが含まれる時の電圧サンプリング装置と各電池コアとの接続方式の概略
図2000である。
【0039】
図2に示すように、
図2000は、モジュール間バスバーと電圧サンプリング装置とを含む電池パック1400における接続方式図であり、
図2000は、電圧サンプリング装置2001と、電圧サンプリング装置2002と、電圧サンプリング装置2003とを含み、ここで、電圧サンプリング装置2001、2002と2003は、AFEチップであってもよく、それぞれ電池パックのモジュール1401、1402、1403と1404における電池コアをサンプリングし、電圧サンプリング装置2001は、サンプリング端S01~S09を有し、電圧サンプリング装置2002は、サンプリング端S10~S19を有し、電圧サンプリング装置2003は、サンプリング端S20~S34を有する。ここで、モジュール1401は、電池コアC11~C18を含み、モジュール1402は、電池コアC22~C28を含み、モジュール1403は、電池コアC31~C38を含み、モジュール1404は、電池コアC41~C48を含む。バスバー1501は、モジュール1401と1402との間に位置し、バスバー1502は、モジュール1402と1403との間に位置し、バスバー1503は、モジュール1403と1404との間に位置する。電圧サンプリング装置2001、電圧サンプリング装置2002と電圧サンプリング装置2003は、サンプリング端を介してモジュールにおける1401、1402、1403と1404の電池コアの正極と負極との間の電圧を収集して差を計算することにより、電池コアのサンプリング電圧を取得し、例えば電圧サンプリング装置2001は、サンプリング端S01とS02とを介して電池コアC48のサンプリング電圧を取得し、即ち電池コアC48のサンプリング電圧は、サンプリング端S01を介して電池コアC48の正極から取得されたサンプリング電圧値からサンプリング端S02を介して電池コアC48の負極から取得されたサンプリング電圧値を減算したものである。電圧サンプリング装置2001による電池コアC48のサンプリングチャンネルは、サンプリング端S01に接続された電池コアC48の正極からサンプリング端S02に接続された電池コアC48の負極までである。
【0040】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、
図2に示すように、バスバー1503は、電圧サンプリング装置2001のサンプリング端S09と電圧サンプリング装置2002のサンプリング端S10との間に位置し、バスバー1503が二つの異なる電圧サンプリング装置2001と2002との間に位置するため、モジュール1404における電池コアの電圧について、サンプリング端S01~サンプリング端S09の電圧及びサンプリング端S10のサンプリング電圧によって直接取得することができ、電圧サンプリング装置2001のすべてのサンプリング端と電圧サンプリング装置2002のサンプリング端S10のサンプリング電圧によってモジュール1404におけるすべての電池コアのサンプリング電圧を正確に取得することができるため、モジュール1404における電池コアに対してサンプリング電圧補償を行う必要がない。また、バスバー1502は、モジュール1403と1402との間に位置するとともに、バスバー1502は、電圧サンプリング装置2002のサンプリング端S17とS18との間に位置し、即ち、電圧サンプリング装置2002、サンプリング端S17、サンプリング端S18とで構成される電圧チャンネルの間に位置し、モジュール1403と1402とにおける電池コアのサンプリング電圧を取得する時に、バスバー1502におけるインピーダンス電圧を計算し、電池コアのサンプリング電圧を補償する必要があり、例えば電池パックが放電電流を流れる時に、電池コアC31における電圧を取得する際に、バスバー1502のインピーダンス電圧を考慮する必要があり、即ち電池コアC31における真の電圧が(サンプリング端S17のサンプリング電圧値-サンプリング端S18におけるサンプリング電圧値)+(バスバー1502のインピーダンス値*バスバー1502を流れる電流値)であるため、バスバー1502は、モジュール間バスバーであり、モジュール間バスバー1502のインピーダンス電圧(即ちバスバー1502のインピーダンス値*バスバー1502を流れる電流値)を取得することにより電池コアC31のサンプリング電圧を補償し、電池コアC31における真の電圧を取得する。例えば、電池パックに充電電流が流れる時、上記の電池コアC31の真の電圧の計算は、(サンプリング端S17のサンプリング電圧値-サンプリング端S18におけるサンプリング電圧値)-(バスバー1502のインピーダンス値*バスバー1502を流れる電流値)である。同様に、バスバー1501は、電圧サンプリング装置2003のサンプリング端S25とS26との間に位置し、モジュール1501と1502とにおける電池コアのサンプリング電圧を取得する時に、バスバー1501におけるインピーダンス電圧を計算し、モジュール1401における電池コアのサンプリング電圧を補償する必要がある。
【0041】
図3は、本出願のいくつかの実施例の電池コアサンプリング電圧補償方案のフローチャート3000である。
【0042】
図1~3に示すように、
図1と
図2の電池システムにおける電池コア、バスバーと電圧サンプリング装置の配置構造によれば、電圧サンプリング装置(例えば電圧サンプリング装置2001、電圧サンプリング装置2002と電圧サンプリング装置2003)によって電池パック(例えば電池パック1400)内のモジュール(例えばモジュール1401~1404)に含まれる電池コア(例えばC11~C18)のサンプリング電圧を測定し、
図2に示すように、電圧サンプリング装置(例えば電圧サンプリング装置2001、電圧サンプリング装置2002と電圧サンプリング装置2003)は、サンプリング端ポート(例えばS01-S34)を介して電池パック(例えば電池パック1400)における直列接続された電池コア(例えばC11~C48)と電気的に接続され、ここで、電池パックは、複数のモジュール(例えば電池パック1400は、モジュール1401、1402、1403と1404を含み)を含み、各モジュール(例えば1401、1402、1403と1404)には、複数の電池コア(C11~C48)が含まれ、モジュール間バスバー(例えばバスバー1501又は1502)は、前記電池パックにおける異なるモジュールに接続され(即ちモジュール間バスバー1501でモジュール1401と1402とを接続し、モジュール間バスバー1502でモジュール1402と1403とを接続し)、モジュール間バスバー(例えばバスバー1501)は、電圧サンプリング装置(例えば電圧サンプリング装置2003)のサンプリングチャンネルの間に位置する。例えば、バスバー1501は、電圧サンプリング装置2003と、サンプリング端S25、S26とで構成されるサンプリングチャンネルの間に位置し、モジュール間バスバー1502は、電圧サンプリング装置2002のサンプリングチャンネルの間、即ち電圧サンプリング装置2002と、サンプリング端S17、S18とで構成されるサンプリングチャンネルの間に位置する。
【0043】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、電池コアサンプリング電圧補償方案のフローチャート3000は、
電圧サンプリング装置(例えば電圧サンプリング装置2001、2002と2003)に接続されたすべての電池コア(例えばC11-C48)が正常な状態にあることを確認した後、予め設定される電流Iで電池パック(例えば電池パック1400)を充電又は放電するステップ3001と、
電圧サンプリング装置(例えば電圧サンプリング装置2001、2002と2003)を使用して電池コア(例えばC11~C48)のサンプリング電圧値を取得するステップ3002と、
取得された電池コア(例えばC11~C48)のサンプリング電圧値に基づいて、モジュール(例えばモジュール1401又は1402)においてサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コア(例えば
図2におけるC31又はC21)を決定し、且つモジュール間バスバー(例えば1501又は1502)のインピーダンス電圧を計算するステップ3003と、
前記モジュール間バスバー(例えば1501又は1502)のインピーダンス電圧に基づいて前記電圧補償を行う必要のある電池コア(例えばC31又はC21)のサンプリング電圧補償を行うステップ3004とを含む。
【0044】
電池パックにおけるモジュール内の各電池コアが正常であるかどうかを検出し、さらに安定した電流Iで電池パックを充電又は放電することにより、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアのモジュールにおける位置を特定することができる。モジュール間バスバーのインピーダンスとその上のインピーダンス電圧を決定することにより、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コア位置におけるサンプリング電圧を補償し、サンプリング装置によって収集された電池コア電圧が実際の電池コア電圧と一致するようにする。
【0045】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、電池パック(例えば電池パック1400)におけるすべての電池コア(例えば電池コアC11~C48)に安定した電流値を所定時間Ts流れて電池パック(例えば1400)における電池コアを充電又は放電する。ここで、予め設定される電流Iと持続時間Tsとは、電池コア特性に基づいて確認する必要があり、一般的には予め設定される電流Iは、一倍以上の電池コア電力量を満足すればよく、実際の検出過程において、具体的には異なる電池コア特性に基づいて確認する必要がある。
【0046】
比較的大きい電流、例えば一倍以上の電池コアの電力量値を流れることにより、モジュールバスバーによる電圧への影響を露出させることができ、設定時間Tsで電池コアを十分に分極させ、各電池コアの間の分極現象は、より安定になる。
【0047】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、予め設定される電流Iの値は、電池パックにおける電池コア1cで充放電する電流値よりも大きく設定されてもよい。
【0048】
ここで、予め設定される電流Iは、電池パック単体の電池コア容量1cで充放電する電流値よりも大きく設定されてもよく、1cで充放電する電流値は、電池コアが1時間で完全に満充電するか又は完全に放電する電流値である。例えば、電池パック内の電池コアが200AHの容量であれば、I≧200Aに設定されてもよい。なお、Iの値は、試験過程において安定化する必要があり、例えば単体電池コアの容量に基づいて、安定した300Aであってもよく、安定した350Aであってもよく、実際の検出過程において、一般的にTsは、10s程度である。
【0049】
以上の充放電の電流条件を満足すれば、サンプリング電圧を補償する必要のある電池コアを特定してモジュール間バスバーによるサンプリング電圧への影響を計算することができる。
【0050】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、予め設定される電流Iは、安定した電流値であり、安定した電流値を設定することにより、検出過程において電圧サンプリング装置によって各電池コアへの電圧サンプリング値を正確に検出することを容易にする。
【0051】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、モジュール(例えばモジュール1401とモジュール1402)におけるサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを補償する時に、モジュール内の各電池コアのサンプリング電圧とこのモジュールにおけるすべての電池コアの平均サンプリング電圧との差を計算し、この差が閾値よりも大きい電池コアを、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアとして決定する必要がある。
【0052】
具体的には、例えば予め設定される安定した電流Iで電池パック(例えば電池パック1400)を充電又は放電する時に、電池パックの同一モジュール(例えばモジュール1401又は1402)内のすべての電池コアの平均電圧Vavg1を計算し、且つ電圧サンプリング装置のサンプリング端(又はサンプリング点)における電圧に基づいてこのモジュール内の各電池コア電圧Vcelln(nは、このモジュール内のn番目の電池コアを表し、nは、1から始まる)を計算し、Vcellnとこのモジュールにおける電池コアサンプリング電圧の平均値Vavg1との差圧△V1が△V1>Y(mv)を満たすかどうかを計算し、ここで、Yは、第一の閾値であり、この条件を満たす電池コアは、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアと認められる。ここで、△V1がY(mv)よりも大きいことは、モジュール内のn番目の電池コアがサンプリング電圧補償を行う必要があることを表し、ここで、Yは、実験に基づいて試験された予め設定される閾値であり、Y=I*Rであり、Rは、実験試験データに基づいて取得されたインピーダンス値であり、例えばRは、0.05mΩに設定されてもよい。
【0053】
上記の計算方法により、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを正確に特定し、且つモジュール間バスバーのインピーダンス値を正確に取得することによって、モジュール間バスバーにおけるサンプリング電圧をより効果的に取得することができる。
【0054】
サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを決定した後、前記サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアのサンプリング電圧と、モジュールからこのサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを除外した後の残りの電池コアの平均サンプリング電圧との差を計算し、この差と前記予め設定される電流に基づいて前記モジュール間バスバーのインピーダンスRバスバーを決定し、前記モジュール間バスバーを流れる電流と前記モジュール間バスバーのインピーダンスRバスバーとに基づいてモジュール間バスバーのインピーダンス電圧を決定する。
【0055】
具体的には、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアにおけるモジュール間バスバーのインピーダンスRバスバー(mΩ)を計算する方法は、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを除外したモジュール内の残りの電池コアの平均サンプリング電圧Vavg2を計算し、且つサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアのサンプリング電圧と上記Vavg2との電圧差△V2を計算し、△V2に基づいてモジュール間バスバーのインピーダンスRバスバーを計算し、Rバスバー=△V2/Iであることである。なお、オームの法則により、このバスバーを流れる電流とこのモジュール間バスバーのインピーダンスRバスバーとによりモジュール間バスバーのインピーダンス電圧を決定し、このインピーダンス電圧でサンプリング補償を行う必要のある電池コアのサンプリング電圧を補償する。ここで、差圧を計算する目的は、補償する必要のある電池コア電圧を除去してバスバー誤差の導入を回避することである。
【0056】
上記の計算を行う時に、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアをモジュールから除外することは、モジュールの平均サンプリング電圧をより正確に計算することによって、電圧差△V2を決定し、それによって補償する必要のある電池コア電圧を除去し、バスバー電圧の誤差の導入を回避することを目的とする。
【0057】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、モジュール間バスバーのインピーダンスRバスバーを記録し、複数回記録されたモジュール間バスバーのインピーダンスに基づいてモジュール間バスバーの状態を予測する。
【0058】
例えば、電池管理システムのソフトウェアにより毎回計算されるモジュール間バスバーのインピーダンス値を記録し、且つ記録されたモジュール間バスバーのインピーダンス値を比較し、大きくなる傾向があるかどうかを確認し、そしてバスバー状態予測を行うことができる。一般的にはバスバー状態は、バスバー本体及びバスバー接触面の劣化、固定ボルトの緩みなどの状態である可能性がある。なお、バスバーの固定ボルトが緩むと抵抗が増加し、非人為的操作の場合に、ボルト緩みが緩慢な変化過程であるため、バスバーのインピーダンス値を複数回収集することにより、その状態の検出を実現することができる。
【0059】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、電池パックにおける電池コアが正常な状態にあるかどうかを決定又は判断するプロセスは、電池パックが静置状態にある時に、モジュールにおける各電池コアのサンプリング電圧と前記モジュールにおけるすべての電池コアの平均サンプリング電圧との差がいずれも予め設定される閾値よりも小さい場合、前記モジュールにおけるすべての電池コアが正常な状態にあると決定することである。
【0060】
具体的には、電池パックが一定時間、例えば0.5時間静置状態にあった後、初めて電池パックを使用する時に、電池パックモジュール内の各電池コアのサンプリング電圧とモジュール内のすべての電池コアの平均サンプリング電圧Vavg3との電圧差△V3を計算し、且つ△V3<X(mv)が成立するかどうかを判断し、ここで、Xは、予め設定される閾値であり、Xは、電池パックにおける電池コアの特性に基づいて電池コアが正常であるかどうかを確認する差圧値であり、この予め設定される閾値Xを使用することにより、静置状態の電池パックにおける電池コアの異常電圧をフィルタリングするために用いられてもよく、一般的には実際の検出過程において、Xは、一般的に50(mv)に設定されてもよく、その設定は、具体的に異なる電池コア特性に基づいて確認される必要がある。
【0061】
静置状態の電池パックにおける電池コアが正常な状態にあるかどうかを判断することにより、サンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを特定する正確性を確保することができ、電池パックにおける電池コアが正常な状態ではない場合、この電池パックにおける正常な状態でない電池コア自体は、サンプリング電圧の不正確を招く。
【0062】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、電池パックのSOCが予め設定される区間にある時に、電池パックを静置状態にし、静置状態とは、電池パックを流れる電流が静置電流であることを指し、この静置電流は、一般的に比較的小さい電流値である。
【0063】
ここで、電池パックを静置状態にすることは、電流がないか又は電流が比較的小さい時であり、電流による電池コアの分極効果の解消を確保し、この時の電圧は、正常な静電圧である。
【0064】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、この静置電流は、5Aよりも小さい。
【0065】
ここで、5Aは、比較的小さい静電流であり、5Aの電流を設定することにより、正常な静電圧値を得ることができ、さらに電池コアの正常な状態の判断に有利である。
【0066】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、電池パックのSOCは、電池パックを静置状態にするように、30~80%の間にある。
【0067】
電池パックのSOCを上記一定区間内にすることは、電池パックが正常な作動条件で電池コアが正常な状態にあるかどうかを検出することを確保することを目的とする。
【0068】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にある時に、電池管理システムは、電池パックの条件試験フラグビットを1に設定する。一般的には電池パックの条件試験フラグは、電池管理システムのソフトウェアに設定される。
【0069】
条件試験フラグの設定は、電池管理システムが電池パックの電池コアを操作する時に、フラグビットを検出又は設定することにより直接確認し、それによって後続の電池管理の操作を行うことを目的とする。
【0070】
電池パックを使用する時に、電池パックの条件試験フラグビットが1であることを電池管理システムのソフトウェアが検出した場合、電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にあるかどうかを決定し、少なくとも一つの電池コアが正常な状態になければ、電池パックの条件試験フラグビットを0に設定し、且つ電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にあるかどうかを再検出し、電池パックにおけるすべての電池コアが正常な状態にあると決定した時に、電池パックの条件試験フラグビットを1にリセットする。電池パック内のすべての電池コアが正常な状態にある時に、モジュール間バスバーのインピーダンス検出と計算操作を開始することができる。
【0071】
使用時に電池パックにおける条件試験フラグビットを検出するとともに、電池コアが正常な状態にあるかどうかを検出することにより、電池管理システムが電池パックを使用して後続の操作を行う時により安全で信頼的になる。
【0072】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、電池パックにおけるモジュール内の各電池コアは、同じタイプの電池コアである。
【0073】
電池パックにおける各モジュール内の電池コアが同じタイプの電池コアである場合、上述した電池コアサンプリング電圧の計算はより便利であるとともに、閾値の設定もより合理的である。
【0074】
表1は、電池コア電圧補償方案による電池パックの実測データシートである。
【0075】
表1には、実際の試験における電池パックのうち、電池コアN31-N40を例に、経時変化するサンプリング電圧値がリストアップされており、表には、電池パックの電圧、電流、電池コア電圧の最大値と最小値、及び電池のSOC状態がさらに含まれており、ここで、
図4には、実測データにおける電池コアサンプリング電圧の経時変化
図4000も示されている。
【0076】
表1に示すように、電池パックが静置状態にある時、電池パックにおける電池コア電圧(表1における左側の表の174行目)は、いずれも安定したレベルにあり、各電池コアの電圧とその電池パックモジュール内の電池コアの平均電圧Vavg1(Vavg1=3295.8mv、即ち表1における174行目の電池コアN31-N40サンプリング電圧の平均値)との差は、50mv未満である。それは、すべての電池コアが正常な状態にある時にサンプリング電圧補償を行う必要のある電池コアを決定する検出条件を満たし、この時、電池パックの条件試験フラグビットを1に設定する。ここで、表1における1列目の数字1は、電源管理ソフトウェア内部設計のマークを表し、電池コアが静置状態にある場合に電圧の一致性が高い時にこのマークビットを1に設定し、修正をトリガーできることを表す。
【0077】
電池コア電圧補償方案による電池パック実測データシート
【表1】
【0078】
表1に示すように、予め設定される電流I(
図4においてI=400A)で電池パックの充電又は放電操作を行う時、表1における204行目のデータのVavg2(Vavg2=3070.3mv)を計算する。N40番の電池コアの電圧Vcell40(Vcell40=3000mv)とVavg2との差V2=70.3mv>Y=I*R=20mvを除き、他の電池コアの電圧と電池パックモジュールにおける電池コア平均電圧との差は、いずれもYよりも小さく、この場合、N40番の電池コアのサンプリング電圧が電圧補償を行う必要があると判断することができる。
図4から分かるように、N40番の電池コアの電圧は、経時変化とともに持続的にモジュール内の他の電池コアの電圧よりも小さい。
【0079】
表1に示すように、補償する必要のあるN40番の電池コアのサンプリング電圧を除外して計算し、残りのモジュール電池コアの平均電圧をカウントすると、Vavg3(Vavg3=3078.1mv)であり、N40番の電池コアサンプリング電圧とVavg3との差圧△V3(△V3=78.1mv)を計算することによって、補償するバスバーインピーダンスRバスバー=78.1mV/400A=0.195mΩを計算することができる。
【0080】
バスバーのインピーダンス値をメモリに格納し、続いてオームの法則に基づいてバスバーの電圧を算出することができ、バスバーのインピーダンス電圧で電池コアのサンプリング電圧を補償すればよい。
【0081】
ここで、表1における204行目、N40番の電池コアのサンプリング電圧Vcell40=3000mvであり、補償後の有効電圧は、3000mv+400A*0.195mΩ=3078.1mvであり、即ちこの値は、バスバーインピーダンスの影響を除外したN40番の電池コアの実際のサンプリング電圧である。
【0082】
図5は、本出願のいくつかの実施例の電池コアサンプリング電圧補償装置のブロック図である。
【0083】
図5に示すように、本発明の電池コアサンプリング電圧の補償装置5000は、メモリ5100とプロセッサ5200とを含み、メモリ5100には、コンピュータプログラム5300が記憶されており、プロセッサ5200は、コンピュータプログラムを実行する時に、本出願の上記の電池コアサンプリング電圧の補償方法を実現するために用いられる。
【0084】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、非一時的なコンピュータ及び/又は機械可読媒体(例えば、メモリ5100は、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、リードオンリーメモリ、光ディスク、デジタル多機能磁気ディスク、キャッシュ、ランダムアクセスメモリ及び/又は任意の他の記憶機器又は記憶磁気ディスクであってもよい)に記憶されたコーディングのコンピュータプログラム5300(例えば、コンピュータ及び/又は機械可読命令)を使用して本発明の以上の方法の処理を実現し、非一時的なコンピュータ及び/又は機械可読媒体には、任意の期間(例えば、延長された時間帯、永久的、短時間のインスタンス、一時的キャッシュ及び/又は情報キャッシュ)の情報を記憶してもよい。本明細書に使用されるように、用語である「非一時的なコンピュータ可読媒体」は、任意のタイプのコンピュータ可読記憶機器及び/又は記憶ディスクを含むとともに、伝播信号を排除し且つ伝送媒体を排除するものとして明示的に定義される。
【0085】
本発明の一つ又は複数の実施例によれば、電池コアサンプリング電圧の補償装置5000のプロセッサ5200は、内部に非一時的なコンピュータ可読媒体が含まれてもよい。プロセッサ5200は、一つ又は複数のシングルコア又はマルチコアプロセッサなどであってもよいが、これらに限らない。(一つ又は複数の)プロセッサは、汎用プロセッサと専用プロセッサ(例えば、グラフィックスプロセッサ、アプリケーションプロセッサなど)の任意の組み合わせを含んでもよい。プロセッサは、それに結合されてもよく、及び/又は、メモリ/記憶装置を含んでもよいとともに、本発明における電池コアサンプリング電圧の補償装置5000上で運行する様々なアプリケーション及び/又はオペレーティングシステムを実現するために、メモリ/記憶装置に記憶された命令を実行するように構成されてもよい。
【0086】
図6は、本出願のいくつかの実施例の電力消費装置のブロック図である。
【0087】
図6に示すように、電力消費装置6000は、電池パック6100と本発明の上記の電池コアサンプリング電圧の補償装置5000とを含む。電池パックには、複数のモジュール(例えば1401、1402と1403)が含まれており、各モジュールには、複数の単体電池コア(例えばC11~C48)が含まれる。電力消費装置は、電気エネルギーを提供するために用いられる。
【0088】
最後に説明すべきこととして、以上の各実施例は、本出願の技術案を説明するためのものに過ぎず、それを限定するものではない。前述の各実施例を参照して、本出願について詳細に説明したが、当業者が理解すべきこととして、依然として前述の各実施例に記載された技術案を修正し、又はそのうちの一部又はすべての技術的特徴を同等的に置き換えることができるが、これらの修正又は置き換えは、該当する技術案の本質を本出願の各実施例の技術案の範囲から逸脱させるものではなく、いずれも本出願の請求項と明細書の範囲に含まれるべきである。特に、構造的衝突が存在しない限り、各実施例に言及された各技術的特徴は、いずれも任意の方式で組み合わされてもよい。本出願は、本文に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に含まれるすべての技術案を含む。