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特許7521134ASMタンパク質に特異的に結合する抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ASMタンパク質に特異的に結合する抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/40 20060101AFI20240716BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240716BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240716BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240716BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240716BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240716BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240716BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240716BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
C07K16/40 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
G01N33/53 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023572866
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2022095105
(87)【国際公開番号】W WO2022250520
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0068075
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0047295
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518148227
【氏名又は名称】アイエスユー アブクシス カンパニー,リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン、スン ボム
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ミ リム
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0255839(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0101070(US,A1)
【文献】ROUSSON, R et al.,Preparation of an anti-acid sphingomyelinase monoclonal antibody for the quantitative determination and polypeptide analysis of lysosomal sphingomyelinase in fibroblasts from normal and Niemann-Pick type A patients,J Immunol Methods ,160(2),1993年04月02日,pp.199-206
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/40
C12N 15/00-15/90
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12P 21/08
G01N 33/53
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASM(acid sphingomyelinase)タンパク質に特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片であって、
配列番号25、26及び27でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号43、44及び45でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;
配列番号28、29及び30でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号46、47及び48でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;
配列番号31、32及び33でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号49、50及び51でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;
配列番号34、35及び36でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号52、53及び54でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;
配列番号37、38及び39でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、 CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号55、56及び57でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
配列番号40、41及び42でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号58、59及び60でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
上記抗体又はその抗原結合断片は、ASMタンパク質のN末端から53~72番目のアミノ酸断片、101~123番目のアミノ酸断片、135~159番目のアミノ酸断片、135~155番目のアミノ酸断片、218~228番目のアミノ酸断片、及び259~269番目のアミノ酸断片からなる群から選択されるいずれか1つ以上のエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
上記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号68~73でそれぞれ示されるポリペプチドからなる群から選択されるいずれか1つ以上のエピトープに結合する、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
上記ASMタンパク質は、哺乳動物に由来するものである、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
上記ASMタンパク質は、配列番号66又は67で示されるアミノ酸配列で構成されるポリペプチドである、請求項1に記載の抗体又はその結合断片。
【請求項6】
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする、核酸。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項8】
請求項6に記載の核酸、又は請求項7に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の宿主細胞を培養して抗体又はその抗原結合断片を生産するステップを含む、ASMタンパク質に特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片の生産方法。
【請求項10】
請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、ASMタンパク質検出用の組成物。
【請求項11】
請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、ASMタンパク質検出用のキット。
【請求項12】
請求項1~5のうちのいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片を試料と反応させるステップを含む、インビトロにおけるASMタンパク質の検出方法(但し、人間を手術する方法を除く)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ASM(acid sphingomyelinase)タンパク質に特異的に結合する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴ脂質代謝は、正常な細胞のシグナル伝達を調節し、スフィンゴ脂質代謝の異常な変化は、アルツハイマー病を含む種々の神経変性疾患に影響を及ぼす。スフィンゴ脂質代謝を調節する酵素であるASM(acid sphingomyelinase)タンパク質は、ほぼ全種類の細胞で発現されるタンパク質であり、スフィンゴ脂質代謝及び細胞膜のターンオーバー(turnover)に重要な役割をする。
【0003】
アルツハイマー病のような神経変性疾患者の脳では、健常者に比べてASMタンパク質の活性が著しく増加されている。これと関連して、韓国特許登録第10-1521117号には、過剰発現したASMタンパク質の活性を阻害したり、ASMタンパク質への発現を抑制することで、βアミロイドの蓄積が抑制され、学習能力や記憶力が改善され、神経変性疾患を治療できることが開示されている。また、近年、うつ病のような神経疾患においてもASMタンパク質の活性が増加されており、上記ASMタンパク質の発現又は活性を抑制することでうつ病を改善する効果があることが知られている。
【0004】
しかし、ASMタンパク質の発現又は活性を直接抑制する物質は開発されておらず、但し、ASMタンパク質の発現を間接的に抑制する数種類の抑制剤が同定されている。例えば、うつ病の治療に使用されている三環系抗うつ剤(tricyclic antidepressant)があり、アミトリプチリン(amitriptyline)、デシプラミン(desipramine)、ミプラミン(mipramine)などが挙げられる。このような三環系抗うつ剤は、ASMタンパク質抑制剤として開発されたものではないが、種々の研究結果から、ASMタンパク質抑制の効果を示すことが証明されている。三環系抗うつ剤の主な薬理機構は、神経細胞における神経伝達物質の再吸収を抑制し、これらの活性を増加させることであり、ASM抑制剤としての作用は付随的な作用であると確認されている。しかし、三環系抗うつ剤は、神経系及び神経細胞に作用してカスミ目、光感受性増加、嘔吐などの副作用を誘発することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ASMタンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、上記抗体又はその抗原結合断片の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明のまた他の目的は、上記抗体又はその抗原結合断片のASMタンパク質の検出用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するため、本発明は、ASM(acid sphingomyelinase)タンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0011】
また、本発明は、上記核酸又は発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0012】
また、本発明は、上記宿主細胞を培養して抗体又はその抗原結合断片を生産するステップを含む、ASMタンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の生産方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、上記抗体又はその抗原結合断片を含む、ASMタンパク質検出用の組成物及びキットを提供する。
【0014】
さらに、本発明は、上記抗体又はその抗原結合断片を試料と反応させるステップを含む、ASMタンパク質の検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、ASMタンパク質に特異的に高結合力で結合することで、ASMタンパク質の検出、又はASMタンパク質の過剰発現により発生する疾患の診断などに有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例で製造された抗体の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す模式図である。
図2】本発明の一実施例で製造された抗体のASMタンパク質との結合をELISA分析方法で確認した結果を示すグラフである。
図3】本発明の一実施例で製造された抗体が結合する抗原結合部位をASMタンパク質構造のモデルに表示した模式図である。
図4】本発明の一実施例で製造された抗体によるASMタンパク質サポシン(saposin)ドメインにおける重水素置換のヒートマップの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳述する。
【0018】
本発明は、ASM(acid sphingomyelinase)タンパク質に特異的に結合する、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0019】
本明細書中の用語「ASM(acid sphingomyelinase)タンパク質」とは、スフィンゴ脂質代謝を調節するSMase(sphingomyelinase)ファミリー中の一つである酵素を意味する。上記ASMタンパク質は、スフィンゴミエリン(sphingomyelin)をセラミド(ceramide)及びホスホリルコリン(phosphorylcholine)に分解する過程を触媒し、最適な酵素活性を示すpHによって、アルカリ性、中性又は酸性に区分することができる。
【0020】
上記ASMタンパク質は、当該技術分野で周知のあらゆる種類のASMタンパク質を含むことができる。具体的には、上記ASMタンパク質は、哺乳動物に由来するものであり、より具体的には、人間、猿、ラット又はマウスに由来するものであり得る。また、上記ASMタンパク質は、当該技術分野においてASMタンパク質として知られた全てのアミノ酸配列を含むことができる。一例として、上記ASMタンパク質は、配列番号66及び67でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成されるポリペプチド、又はこれをコードする核酸であり得る。
【0021】
上記ASMタンパク質は、これと同一又は相応する生物学的活性を維持する限り、配列番号66又は67で示されるアミノ酸配列から一つ又はそれ以上のアミノ酸が付加、欠失又は置換されたものであってもよい。なお、アミノ酸の置換は、全タンパク質の電荷、即ち、極性又は疎水性への影響がないか影響が少ない範囲内で行われる保存的置換であってもよい。また、上記ASMタンパク質は、配列番号66及び67でそれぞれ示されるアミノ酸配列と、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上又は99%以上の相同性を有することができる。また、上記ASMタンパク質は、これと同一又は相応する生物学的活性を維持する限り、ASMタンパク質の一部のみが含んでもよい。
【0022】
本明細書中の用語「抗体(antibody)」とは、抗原と結合して抗原の作用を阻害したり抗原を除去したりする免疫タンパク質を意味する。上記抗体は、当該技術分野におけるあらゆる種類の抗体を含むことができる。具体的には、上記抗体は、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEを含むことができ、これらは、それぞれ、重鎖定常領域をコードする遺伝子である、μ、δ、γ、α、及びεからなる重鎖を含むことができる。抗体技術では、通常、主にIgGが使用されるが、これは、また、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の同種(isotype)から構成され、これらのそれぞれの構造及び機能的特性は相違し得る。上記抗体は、非ヒト抗体に由来する最小の配列を含むヒト化抗体、ヒトに由来する配列で構成されたヒト抗体、又は異種由来の配列が混合されたキメラ抗体を全て含むことができる。
【0023】
上記IgGは、約50kDaの重鎖(heavy chain)タンパク質2個と、約25kDaの軽鎖(light chain)タンパク質2個とからなるY字型の非常に安定した構造(約159kDa)を形成することができる。抗体を構成する軽鎖及び重鎖は、抗体間でアミノ酸配列が異なる可変領域(variable region)、及びアミノ酸配列が同一である定常領域(constant region)に分けられる。このとき、重鎖定常領域は、CH1、ヒンジ(hinge、H)、CH2、及びCH3ドメインを含み、各ドメインは、二つのβシート(β-sheet)で構成され、分子内のジスルフィド結合(disulfide bond)で連結され得る。また、軽鎖定常領域は、CLドメインを含むことができる。なお、重鎖及び経鎖可変領域2つが組み合わされて抗原結合部位(antigen binding site)が形成され、上記抗原結合部位は、Y字型の2つの腕にそれぞれ1つずつ存在することができる。全長抗体において、抗原と結合できる領域をFab(antibody binding fragment)と、抗原と結合できない領域をFc(crystallizable fragment)と呼び、Fab及びFcは、ヒンジを介して連結され得る。本発明の一実施例において、上記IgGは、マウス由来のIgGであり、具体的には、配列番号74で示されるアミノ酸配列で構成されるマウスのIgG重鎖定常領域、及び配列番号76で示されるアミノ酸配列で構成されるマウスの軽鎖λ定常領域を含むことができる。また、上記マウス由来のIgGは、配列番号75で示される塩基配列で構成されるマウスのIgG重鎖定常領域、及び配列番号77で示される塩基配列で構成されるマウスの軽鎖λ定常領域を含むことができる。
【0024】
本発明に係る抗体は、全長抗体だけでなく、その抗原結合断片を含むことができる。具体的には、上記抗原結合断片は、抗原との結合刺激を細胞や補体などに伝達する機能をするFcを除いた部分を意味することができる。一例として、抗体の抗原結合断片は、Fab、scFv、F(ab)及びFvを含み、シングルドメイン抗体(single domain antibody)やミニボディー(minibody)などのような第3世代の抗体切片を含んでもよい。
【0025】
本発明の一側面において、上記抗体又は抗原結合断片は、ASMタンパク質のN末端から53~72番目のアミノ酸断片、101~123番目のアミノ酸断片、135~159番目のアミノ酸断片、135~155番目のアミノ酸断片、218~228番目のアミノ酸断片、及び259~269番目のアミノ酸断片からなる群から選択されるいずれか一つ以上のエピトープに結合することができる。このとき、上記ASMタンパク質は、上述のような特徴を有することができる。本発明の一実施例において、上記ASMタンパク質のN末端から53~72番目のアミノ酸断片は、配列番号68(TAINLGLKKEPNVARVGSVA)で示されるアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであり、101~123番目のアミノ酸断片は、配列番号69(VWRRSVLSPSEACGLLLGSTCGH)で示されるアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであり、135~159番目のアミノ酸断片は、配列番号70(PTVPKPPPKPPSPPAPGAPVSRILF)で示されるアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであり、135~155番目のアミノ酸断片は、配列番号71(PTVPKPPPKPPSPPAPGAPVS)で示されるポリペプチドであり、218~228番目のアミノ酸断片は、配列番号72(SGLGPAGPFDM)で示されるアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであり、259~269番目のアミノ酸断片は、配列番号73(VRKFLGPVPVY)で示されるアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであり得る。即ち、本発明の他の側面において、上記抗体又は抗原結合断片は、配列番号68~73でそれぞれ示されるポリペプチドからなる群から選択されるいずれか一つ以上のエピトープに結合することができる。
【0026】
上記「エピトープ(epitope)」とは、抗体が識別し得る抗原の特定部位のことであり、抗体が特異的に結合できる抗原決定基を意味する。上記エピトープは、抗原決定部位(determinant、antigenic determinant)と同じ意味で通用されている。上記エピトープは、化学的に活性を持つ表面分子群、例えば、アミノ酸又は糖側鎖で構成され、一般的に、特定の3次元の構造的特徴だけでなく、特定の電荷特性を有している。
【0027】
本発明の一側面において、上記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号61で示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1(XYXMS)、配列番号62で示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR2(XIX10YYADSVKG)、及び配列番号27、30、33、36、39及び42でそれぞれ示されるアミノ酸配列からなる群から選択される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号63で示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1(X11GSSSNIGX12NX13VX14)、配列番号64で示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR2(X15161718RPS)、及び配列番号65で示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR3(X1920WDX21SLX2223YV)を含む軽鎖可変領域を含むことができる。
【0028】
上記「CDR(complementarity determining region)」とは、抗体の重鎖及び軽鎖可変領域内に抗体ごとに異なるアミノ酸配列を有する部位である超可変領域(hypervariable region)であり、実際に抗原と結合する部位を意味する。抗体の立体構造において、CDRは、環状(loop)で抗体の表面に位置し、環の下にはこれを構造的に支持するFR(framework region)が存在し得る。重鎖及び軽鎖は、いずれもそれぞれ3つずつ環構造が存在し、これら6つの環構造が合わさって抗原に直接接触することができる。 上記6つの環構造を有する抗原結合部位であるCDRを、それぞれ、便宜上、重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、軽鎖CDR3と指称する。
【0029】
一例として、上記配列番号61で示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1(XYXMS)中、X及びXは、それぞれ、酸性及び中性アミノ酸から選択され得る。具体的には、上記Xは、酸性又は中性アミノ酸であり、Xは、中性アミノ酸であり得る。 例えば、上記X及びXは、それぞれ、アスパラギン(asparagine、Asn)、グリシン(glycine、Gly)、セリン(serine、Ser)、アスパラギン酸(aspartic acd、Asp)、アラニン(alanine、Ala)、及びチロシン(tyrosine、Tyr)からなる群から選択され得る。具体的には、上記Xは、アスパラギン、グリシン、セリン又はアスパラギン酸であり、Xは、アラニン又はチロシンであり得る。本発明の一実施例において、上記重鎖CDR1は、配列番号25、28、31、34、37又は40で示されるアミノ酸配列で構成され得る。
【0030】
また、上記配列番号62で示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR2(XIX10YYADSVKG)中、X~X10は、それぞれ中性及び塩基性アミノ酸から選択され得る。具体的には、上記X及びX~Xは、それぞれ中性アミノ酸であり、X10は、中性又は塩基性アミノ酸であり得る。例えば、上記X~X10は、それぞれ、グリシン、ロイシン(leucine、Leu)、アラニン、セリン、チロシン、プロリン(proline、Pro)、アスパラギン、リシン(lysine、Lys)及びイソロイシン(isoleucine、Ile)からなる群から選択され得る。具体的には、上記Xは、グリシン、ロイシン、アラニン又はセリンであり、Xは、チロシン又はセリンであり、Xは、プロリン又はチロシンであり、Xは、アスパラギン又はグリシンであり、X及びXは、それぞれ、グリシン又はセリンであり、Xは、アスパラギン又はセリンであり、X10は、リシン又はイソロイシンであり得る。本発明の一実施例において、上記重鎖CDR2は、配列番号26、29、32、35、38又は41で示されるアミノ酸配列で構成され得る。
【0031】
また、上記配列番号63で示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1(X11GSSSNIGX12NX13VX14)中、X11~X14は、それぞれ、中性アミノ酸から選択され得る。例えば、上記X11~X14は、それぞれ、トレオニン(threonine、Thr)、セリン、アスパラギン、アラニン、プロリン及びチロシンからなる群から選択され得る。具体的には、上記X11は、トレオニン又はセリンであり、X12は、アスパラギン又はセリンであり、X13は、アラニン、プロリン、トレオニン又はチロシンであり、X14は、アスパラギン、チロシン又はセリンであり得る。本発明の一実施例において、上記軽鎖CDR1は、配列番号43、46、49、52、55又は58で示されるアミノ酸配列で構成され得る。
【0032】
また、上記配列番号64で示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR2(X15161718RPS)中、X15~X18は、それぞれ、酸性、塩基性及び中性アミノ酸から選択され得る。具体的には、上記X15及びX16は、それぞれ、酸性又は中性アミノ酸であり、X17は、中性アミノ酸であり、X18は、塩基性又は中性アミノ酸であり得る。例えば、上記X15~X18は、それぞれ、チロシン、アラニン、アスパラギン酸、セリン、アスパラギン、ヒスチジン(histidine、His)、グルタミン(glutamine、Gln)、及びリシンからなる群から選択され得る。具体的には、X15は、チロシン、アラニン、アスパラギン酸又はセリンであり、X16は、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、X17は、セリン又はアスパラギンであり、X18は、ヒスチジン、グルタミン又はリシンであり得る。本発明の一実施例において、上記軽鎖CDR2は、配列番号44、47、50,53、56又は59で示されるアミノ酸配列で構成され得る。
【0033】
また、上記配列番号65で示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR3(X1920WDX21SLX2223YV)中、X19~X23は、それぞれ、中性アミノ酸から選択され得る。例えば、上記X19~X23は、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸及びアスパラギンからなる群から選択され得る。具体的には、X19は、グリシン又はアラニンであり、X20は、アラニン、セリン又はトレオニンであり、X21は、チロシン、セリン、アラニン又はアスパラギン酸であり、X22は、セリン又はアスパラギンであり、X23は、アラニン又はグリシンであり得る。本発明の一実施例において、上記軽鎖CDR3は、配列番号45、48、51,54、57又は60で示されるアミノ酸配列で構成され得る。
【0034】
本発明の他の側面において、上記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号25、28、31、34、37及び40で示されるアミノ酸配列からなる群から選択される重鎖CDR1、配列番号26、29、32、35、38及び41でそれぞれ示されるアミノ酸配列からなる群から選択される重鎖CDR2、及び、配列番号27、30、33、36、39及び42でそれぞれ示されるアミノ酸配列からなる群から選択される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに、配列番号43、46、49、52、55及び58でそれぞれ示されるアミノ酸配列からなる群から選択される軽鎖CDR1、配列番号44、47、50、53、56及び59でそれぞれ示されるアミノ酸配列からなる群から選択される軽鎖CDR2、及び、配列番号45、48、51、54、57及び60でそれぞれ示されるアミノ酸配列からなる群から選択される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域を含むことができる。
【0035】
また、上記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号25、26及び27でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号28、29及び30でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号31、32及び33でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号34、35及び36でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号37、38及び39でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、及び、配列番号40、41及び42でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域からなる群から選択される重鎖可変領域、並びに、配列番号43、44、及び45でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域、配列番号46、47及び48でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域、配列番号49、50及び51でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域、配列番号52、53及び54でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域、配列番号55、56及び57でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域、及び、配列番号58、59及び60でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域からなる群から選択される軽鎖可変領域を含むことができる。
【0036】
さらに、上記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号25、26及び27でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに、配列番号43、44及び45でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;配列番号28、29及び30でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに、配列番号46、47及び48でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;配列番号31、32及び33でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに、配列番号49、50及び51でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;配列番号34、35及び36でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに、配列番号52、53及び54でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;配列番号37、38及び39でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに、配列番号55、56及び57でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;又は、配列番号40、41及び42でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む重鎖可変領域、並びに、配列番号58、59及び60でそれぞれ示されるアミノ酸配列で構成される軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む軽鎖可変領域;を含むことができる。
【0037】
一例として、上記重鎖可変領域は、配列番号1、3、5、7、9又は11で示されるアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであり、上記軽鎖可変領域は、配列番号13、15、17、19、21又は23で示されるアミノ酸配列で構成されるポリペプチドであり得る。
【0038】
また、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片は、必要に応じて変形したものであり得る。具体的には、上記抗体又はその抗原結合断片は、接合(conjugation)、グリコシル化(glycosylation)、標識付け又はこれらの組み合わせで変形してもよい。具体的には、上記抗体又はその抗原結合断片は、HRP(horseradish peroxidase)、アルカリフォスファターゼ、ハプテン(hapten)、ビオチン、ストレプトアビジン、蛍光物質、放射性物質、量子ドット、PEG(polyethylene glycol)、ヒスチジン標識などに変形され得る。さらに、上記抗体又はその抗原結合断片は、必要に応じて他の薬物が接合されてもよい。
【0039】
上記抗体又はその抗原結合断片は、当該技術分野で周知のモノクローナル抗体の製造方法により製造することができ、上記製造方法は、当業者によって適宜変形可能である。一例として、上記抗体は、抗原で免疫化された動物から得られたBリンパ球を用いてハイブリドーマを製造することで、又は、ファージディスプレイ法を用いて製造することで得ることができる。
【0040】
また、本発明は、上記抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を提供する。
【0041】
本発明に係る核酸がコードする抗体又はその抗原結合断片は、上記のような特徴を有することができる。本発明に係る抗体又はその抗原結合断片を構成するアミノ酸配列が公知であるところ、これをコードする核酸配列は、当業者にとって自明である。また、上記核酸配列は、それから翻訳される抗体又はその抗原結合断片の活性を維持する限り、1つ又はそれ以上の塩基が付加、欠失又は置換されたものであり得る。
【0042】
一例として、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片に含まれる重鎖可変領域をコードする核酸は、配列番号2、4、6、8、10又は12で示される塩基配列で構成されるポリヌクレオチドであり、軽鎖可変領域をコードする核酸は、配列番号14、16、18、20、22又は24で示される塩基配列で構成されるポリヌクレオチドであり得る。
【0043】
また、本発明は、上記核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0044】
本発明に係る発現ベクターに含まれる核酸は、上述のような特徴を有する抗体又はその抗原結合断片がコードされたものであり得る。
【0045】
本明細書中の用語「発現ベクター(expression vector)」とは、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段であって、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクター、ウイルスベクターなどが挙げられる。上記発現ベクターは、これに含まれる核酸からペプチドを生成するために必要な要素を含むことができる。具体的には、上記発現ベクターは、シグナル配列、複製起点、マーカー遺伝子、プロモーター、転写終結配列などを含むことができる。このとき、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片をコードした核酸は、プロモーターと作動可能に連結され得る。
【0046】
一例として、原核細胞用発現ベクターは、転写を行うプロモーター、解毒の開始のためのリボソーム結合位置、及び転写と解毒の終結配列を含むことができる。なお、真核細胞用発現ベクターは、哺乳動物又は哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター、及びポリアデニル化配列を含むことができる。
【0047】
また、上記発現ベクターに含まれるマーカー遺伝子としては、当該技術分野で公知のものであれば、いずれも使用可能であり、具体的には、抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。具体的に、上記抗生物質耐性遺伝子は、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、テトラサイクリンなどのような、抗生物質に対して耐性を示す遺伝子であり得る。
【0048】
また、本発明は、上記核酸又は発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0049】
本発明に係る宿主細胞に含まれる核酸又は発現ベクターは、上述のような特徴を有することができる。一例として、上記核酸は、本発明に係るASMタンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片をコードすることができ、上記発現ベクターは、上述のような核酸を含むことができる。
【0050】
上記宿主細胞としては、当該技術分野において抗体又はその抗原結合断片を生産するために使用可能なものとして知られたあらゆる種類の細胞を使用することができる。具体的には、上記宿主細胞は、原核細胞、酵母又は真核細胞であり得る。上記原核細胞としては、大腸菌(E.coli)、バチルス属菌株、ストレプトマイセス属菌株、シュードモナス属菌株、スタフィロコッカス属菌株などが挙げられ、上記酵母としては、サッカロマイセス・セレビシエなどが挙げられる。また、上記真核細胞としては、COS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、HEK293、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL 3A、W138、Hep G2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC 5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PERC6、SP2/0、NS-0、U20S、及びHT1080などが挙げられる。
【0051】
また、上記宿主細胞は、当該技術分野で公知の常法に従って上述のような核酸又は発現ベクターが形質注入されたものであり得る。具体的には、上記形質注入は、一過性形質感染(transient transfection)、微細針、形質導入(transduction)、細胞融合、リン酸カルシウム沈殿法、リポソーム仲介性形質感染(liposome-mediated transfection)、DEAEデキストラン仲介性形成感染(DEAE dextran-mediated trasfection)、ポリブレン仲介性形質感染(polybrene-mediated trasfection)、電気穿孔法、遺伝子銃(gene gun)などの方法で行うことができる。なお、上記のような方法は、当業者によって適宜変形可能である。
【0052】
さらに、本発明は、上記宿主細胞を培養して抗体又はその抗原結合断片を生産するステップを含むASMタンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の生産方法を提供する。
【0053】
本発明に係る生産方法により生産される抗体又はその抗原結合断片は、上記のような特徴を有することができる。
【0054】
上記培養は、生産に使用される宿主細胞の種類に応じて適切な培養培地を用いて行うことができ、必要に応じて適切な補充物を含んでもよい。また、上記培養は、宿主細胞の種類によって適切な環境下で行うことができる。
【0055】
本発明に係る生産方法は、宿主細胞で生産された抗体又はその抗原結合断片を回収するステップをさらに含むことができる。上記回収は、当該技術分野で公知の常法に従って行うことができ、必要に応じて当業者によって適宜変形可能である。一例として、上記回収は、遠心分離又は限外ろ過を用いて不純物を除去し、さらに、得られた結果物をクロマトグラフィーなどで精製することで行うことができる。上記クロマトグラフィーとしては、アフィニティークロマトグラフィー、陽イオンクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0056】
また、本発明は、上記抗体又はその抗原結合断片を含むASMタンパク質検出用の組成物及びキットを提供する。
【0057】
本発明に係るASMタンパク質検出用の組成物及びキットに含まれる抗体又はその抗原結合断片は、上記のような特徴を有することができる。
【0058】
また、上記組成物は、本発明に係る抗体又はその抗原結合断片に特異的に結合し得るリガンドを含むことができる。上記リガンドは、発色酵素、蛍光物質、放射性同位体又はコロイドなどの検出体が標識された接合体、及びストレプトアビジン又はアビジン処理が施されたリガンドであり得る。本発明による検出用組成物は、上述した試薬の他に、これらの構造を安定に維持させるための蒸留水又は緩衝液をさらに含んでもよい。
【0059】
なお、上記キットは、これに含まれる抗体又はその抗原結合断片の洗浄や複合体の分離などのような後続ステップを容易にするため、固形基質に結合されてもよい。このとき、固形基質としては、合成樹脂、ニトロセルロース、ガラス基板、金属基板、ガラス繊維、微細球体、又は微細ビーズが挙げられる。また、合成樹脂としては、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、PVDF、又はナイロンなどが挙げられる。
【0060】
また、上記キットは、当該技術分野で公知の常法に従って製造することができ、緩衝液、安定化剤、不活性タンパク質などをさらに含むことができる。
【0061】
さらに、本発明は、上記抗体又はその抗原結合断片を試料と反応させるステップを含むASMタンパク質の検出方法を提供する。
【0062】
本発明に係るASMタンパク質の検出方法に使用される抗体又はその抗原結合断片は、上記のような特徴を有することができる。
【0063】
上記試料は、ASMタンパク質を検出しようとする試料であれば、あらゆる種類の試料を使用することができる。また、抗体又はその抗原結合断片を用いて標的タンパク質を検出する方法は、当該技術分野で公知であり、必要に応じて、当業者によって適宜変形可能である。
【実施例
【0064】
以下、本発明を後述の実施例に基づいて詳述する。但し、後述の実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明は、これらの実施例によって制限されない。本発明の特許請求の範囲に記載の技術的思想と実質的に同様な構成を有し、同様な作用効果を示すものであれば、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0065】
[実施例1:ASM(acid sphingomyelinase)タンパク質に特異的に結合する抗体の作製]
ヒトASMタンパク質(配列番号66)及びマウスASMタンパク質(配列番号67)に特異的に結合する抗体を、次のような方法で製造した。
【0066】
具体的には、組換えヒト及びマウスASMタンパク質、及びヒト合成scFVファージライブラリを用いて常法に従ってパンニング(panning)を行い、ヒトASMタンパク質又はマウスASMタンパク質に特異的に結合するscFvを有するファージを選別した。選別されたscFvをコードする核酸配列を分析し、これから生成されるアミノ酸配列を確認した。確認されたscFv配列の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のそれぞれのカルボキシ末端(carboxy terminus)に、配列番号75及び77でそれぞれ示される塩基配列で構成されるマウス重鎖定常領域(constant region)及びマウス軽鎖λ定常領域が連結された形態で発現されるように発現ベクターを製造した。このとき、製造された発現ベクターに含まれたscFvを構成する重鎖可変領域のアミノ酸配列及び核酸配列を下記表1に、軽鎖可変領域のアミノ酸配列及び核酸配列を下記表2に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
このとき、発現ベクターとしては、哺乳類発現ベクター(mammalian expression vector)を使用した。製造された発現ベクターをCHO又はHEK293細胞株に形質転換させてヒトASMタンパク質に結合し、又はヒト及びマウスのASMタンパク質に全て結合する全長の抗体を製造した。
【0070】
[実施例2:相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)の決定]
上記で製造されたscFVにおいて相補性決定領域を常法に従って確認し、その結果を、重鎖可変領域のCDR配列を表3に、軽鎖可変領域のCDR配列を表4に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
[実験例1:ASMタンパク質との結合確認]
上記で製造されたASMタンパク質に特異的に結合する抗体のASMタンパク質との結合をELISA分析方法で確認した。
【0074】
まず、マルチアレイ96ウェルプレート(Thermoscientific)に、1μg/mlの組換えヒトASMタンパク質(R&D systems)を100μl添加し、4℃で16時間放置し、プレートをコーティングした。コーティングされたプレートに、5%BSAが含まれた200μlのPBSを添加し、37℃で2時間反応させて前処理した後、0.05%のツイーン20(Tween20)が含まれたPBSでこれを3回洗浄した。ここに、0.0001、0.001、0.01、0.1、1、10又は100nMの抗ASM抗体を処理し、37℃で1時間反応させた。反応後、プレートを0.05%のツイーンが含まれたPBSで3回洗浄し、二次抗体として100μlのヤギ抗マウスIgG-HRP(Jackson Immunoresearch)抗体を添加した。これを37℃でさらに1時間反応させ、0.05%のツイーンが含まれたPBSで3回洗浄した。ここに、100μlのTMB基質(tetramethylbenzidine)を添加し、さらに常温で5分間反応させた後、100μlの2N硫酸溶液で反応を停止し、450nmの波長で吸光度を測定した。その結果を、測定された吸光度を図2に、吸光度値から計算された抗体のEC50値を表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
図2に示されるように、上記で製造された5種類の抗体が全て濃度依存的にASMタンパク質に結合している。特に、表5に示されるように、#9101抗体が最も低いEC50値を示し、ASMタンパク質に対する結合力が最も高かった。
【0077】
[実験例2:ASMタンパク質との結合親和性の確認]
上記で製造されたASMタンパク質に特異的に結合する抗体のASMタンパク質との結合親和性及び相互作用動力学を、Octet(商標)QK384システム(Pall Life Sciences)を用いて測定した。
【0078】
まず、AR2Gセンサー(ForteBio)に、20mMの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)及び40nMのN-ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ-NHS)溶液を処理してカルボキシ基を活性化させた。なお、10μg/mlの組換えヒトASMタンパク質又は2.5μg/mlの組換えマウスASMタンパク質は、10nMのナトリウムアセテート(pH5.0)(ForteBio)溶液に希釈して準備した。上記ASMタンパク質が希釈された溶液を、カルボキシ基が活性化されたAR2Gセンサーに加え、組換えヒト又はマウスASMタンパク質が固定されたAR2Gセンサーを得た。得られたASMタンパク質が固定されたセンサーに、1Mのエタノールアミン(ForteBio)を添加し、未反応の残存カルボキシ基を不活性化させた。ここに、0.4、2又は10nM濃度の実施例1で製造された抗体を添加し、約900秒間反応物の結合相を観察した。次に、1×動力学緩衝液(kinetics buffer)(ForteBio)を添加し、約1,200秒間反応物の分離相を観察した。Octet(商標)分析ソフトウェア(Pall Life Sciences)を用いて、各抗体に対する結合定数(association constant:Kon)、解離定数(dissociation constant:Kdis)及び平衡解離定数(equilibrium dissociation constant:KD)を決定した。その結果を、組換えヒトASMタンパク質に対する分析結果を表6に、組換えマウスASMタンパク質に対する分析結果を表7に示す。
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
表6に示されるように、実施例1で製造された5種類の抗体が、10-10~10-9Mレベルの結合力でヒトASMタンパク質に結合している。なお、表7に示されるように、マウスASMタンパク質に対しては、#9102、#9104又は#9108の抗体だけが、10-10~10-9Mレベルの結合力を示している。
【0082】
[実験例3:ASMタンパク質の抗原決定部位の確認]
本発明に係る抗体がASMタンパク質に結合する部位である抗原決定部位をHDX-MS(hydrogen deuterium exchange mass spectrometry)方法で確認した。
【0083】
まず、1,000μg/mlのASMタンパク質、1,000μg/mlの#9101mIgG1,1,250μg/mlの#9102mIgG2、1,000μg/mlの#9104mIgG4、1,000μg/mlの#9108mIgG1、3,300μg/mlの#9113mIgG1、又は2,932μg/mlの#9123mIgG1抗体を連続して2倍数ずつ希釈し、128倍の希釈液まで準備した。準備された希釈液を1μlずつ取り、同量の10mg/mlのシナピン酸マトリックス(K200 MALDI kit、CovalX)と混合し、上記混合物の1μlをSCOUT384 MALDIプレートに分注し、常温で結晶化させた。次に、上記結晶を、MALDI質量分析器(mass spectrometer)を用いて測定した。一方、非共有結合相互作用の分析のためのクロスリンク(cross-link)データのため、1μlの128倍希釈液を、同量の2mg/mlのK200安定化溶液(K200 stabilizer reagent、K200 MALDI Kit、CovalX)と混合し、これを3時間常温で反応させた。反応終了後、1μlの混合液を用いて、上記と同様にMALDI質量分析器で測定し、測定結果は、ハイマスMALDI MS(high-mass MALDI MS)モードで分析した。その結果を、ASMタンパク質内重水素挿入による顕著な差が確認された部位のアミノ酸配列を下記表8に、ヒトASMタンパク質構造モデルに各抗体の結合位置を表示した結果を図3に示す。また、ASMタンパク質のうちサポシン(saposin)ドメインにおける各抗体の重水素置換率のヒートマップを図4に示す。
【0084】
【表8】
【0085】
表8及び図3に示されるように、本発明による抗体は、ASMタンパク質のN末端から53~72番目のアミノ酸断片(配列番号68:TAINLGLKKEPNVARVGSVA)、101~123番目のアミノ酸断片(配列番号69:VWRRSVLSPSEACGLLLGSTCGH)、135~159番目のアミノ酸断片(配列番号70:PTVPKPPPKPPSPPAPGAPVSRILF)、135~155番目のアミノ酸断片(配列番号71:PTVPKPPPKPPSPPAPGAPVS)、218~228番目のアミノ酸断片(配列番号72:SGLGPAGPFDM)又は259~269番目のアミノ酸断片(配列番号73:VRKFLGPVPVY)に結合している。特に、図4に示されるように、本発明による抗体は、サポシンドメインにおけるαヘリックス1及びαヘリックス2の部位に主に結合している。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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