(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】吸気弁システム
(51)【国際特許分類】
F04B 39/10 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
F04B39/10 A
(21)【出願番号】P 2023575339
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2022030651
(87)【国際公開番号】W WO2022260856
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2024-03-21
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】サンフォード,ジョエル ティー.
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/009402(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/251530(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/120506(WO,A2)
【文献】西独国特許出願公告第1114272(DE,B)
【文献】国際公開第2016/188800(WO,A1)
【文献】特開2004-108371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/10
F04B 7/00-7/02
F04B 53/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機のシリンダ室用の吸気弁システムであって、
圧力差に応じて、開放位置と閉鎖位置との間で
、それぞれ移動可能な
複数の吸気弁であって、前記圧縮機の前記シリンダ室とアンローダ室との間に配置された
前記複数の吸気弁と、
制御器とつなげられて、前記吸気弁を閉鎖するように、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な制御弁
であって、中央ボア内に配置されるように弁棒を備える前記制御弁と、
前記吸気弁を開放するように、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な逆止弁と、を備え、
前記逆止弁と前記制御弁は、それぞれ、制御室と流通し、この際、前記制御室は、前記シリンダ室に対して外部の圧力制御から切り離されて
おり、
前記制御室と前記中央ボアとの間で圧力境界を画定するために、前記弁棒に少なくとも1つのシールを配置し、前記制御弁の位置にかかわらず、前記少なくとも1つのシールによって、前記圧力境界を連続的に画定するようにし、
前記制御弁が前記第1の位置にあるとき、前記逆止弁は前記シリンダ室と流通し、前記複数の吸気弁の各吸気弁は、開放位置にあり、前記制御弁が前記第2の位置になると、前記複数の吸気弁の各弁が閉鎖位置になり、
前記制御弁が前記第1の位置にあるとき、前記シリンダ室内の周期的な圧力変動に応答する前記逆止弁によって、さらに前記少なくとも1つのシールによって画定される前記圧力境界によって、前記シリンダ室内の圧力低下が前記制御室内に閉じ込められるようにした、
吸気弁システム。
【請求項2】
前記制御弁は、前記シリンダ室と前記制御室との間に配置される、請求項1に記載の吸気弁システム。
【請求項3】
前記逆止弁は、前記シリンダ室と、前記吸気弁と流通する接続通路との間に配置される、請求項
1に記載の吸気弁システム。
【請求項4】
前記制御弁は
、前記制御室内で、前記弁棒の軸方向端部に配置された制御弁部分を備え、
前記制御弁の前記第1の位置では、前記弁棒は軸方向に延出して、それにより、前記制御弁部分がポートを閉鎖して、前記シリンダ室との流通を防ぐようにした、
請求項
3に記載の吸気弁システム。
【請求項5】
さらに、前記接続通路から前記シリンダ室まで延在する逆止弁通路を含み、前記逆止弁通路は、前記接続通路の近くに逆止弁座面を有し、
前記制御弁が前記第1の位置にあるとき、前記シリンダ室との流通を防ぐように、前記圧縮機の操作中に前記シリンダ室内の周期的な圧力変動に応じて、前記逆止弁座面と前記逆止弁との係合と解除によって、前記シリンダ室との流通を制御するようにした、
請求項
4に記載の吸気弁システム。
【請求項6】
前記制御弁の前記第2の位置のとき、前記弁棒が軸方向に引き込まれて、それにより、前記ポートが前記制御弁部分によって閉鎖されないようにして、前記ポートを介して、前記制御室と前記シリンダ室との間で流通を成立させるようにした、請求項
4に記載の吸気弁システム。
【請求項7】
前記制御弁と前記逆止弁は、別個で、離散した弁アセンブリを備え、前記逆止弁のポートは、前記吸気弁システムの中心軸に対して横方向にオフセットされた、請求項2に記載の吸気弁システム。
【請求項8】
前記制御弁と前記逆止弁は、共通の弁アセンブリを構成し、当該共通の弁アセンブリは、前記吸気弁システムの中心軸に対して同軸的に配置された、請求項
1に記載の吸気弁システム。
【請求項9】
前記弁棒は、前記制御室内で、前記弁棒の軸方向端部にフィンガを備え、
前記制御弁の前記第1の位置では、前記弁棒は、軸方向に引き込まれて、前記共通の弁アセンブリの前記逆止弁が、前記圧縮機の操作中に、前記シリンダ室内の周期的な圧力変動に応じるようにした、請求項
8に記載の吸気弁システム。
【請求項10】
前記共通の弁アセンブリは、前記シリンダ室と、前記吸気弁と流通する接続通路との間に配置される、請求項
9に記載の吸気弁システム。
【請求項11】
さらに、接続通路から前記シリンダ室まで延在する逆止弁通路を含み、当該逆止弁通路は、前記接続通路の近くに逆止弁座面を備え、
前記制御弁が前記第1の位置にあるとき、前記逆止弁通路により、前記シリンダ室との流通が成立するようにし、前記シリンダ室との流通は、前記圧縮機の操作中に、前記シリンダ室内の周期的な圧力変動に応じて、前記逆止弁座面と前記逆止弁との係合と解除とによって制御されるようにした、
請求項
9に記載の吸気弁システム。
【請求項12】
前記制御弁の前記第2の位置では、前記弁棒は軸方向に延出して、前記フィンガが前記共通の弁アセンブリの前記逆止弁を開放位置に強制させて、前記逆止弁通路により、前記制御室と前記シリンダ室との間で流通が成立するようにした、請求項
11に記載の吸気弁システム。
【請求項13】
前記第1の位置と前記第2の位置とに、それぞれ、前記制御弁を作動させるタイミングを選択的に制御するように前記制御器が配置された、請求項1に記載の吸気弁システム。
【請求項14】
往復動圧縮機であって、請求項1に記載の吸気弁システムを備え、その中に圧縮機を構成した、往復動圧縮機。
【請求項15】
圧縮機のシリンダ室用の吸気弁システムであって、
圧力差に応じて、開放位置と閉鎖位置との間で
、それぞれ移動可能な
複数の吸気弁であって、前記圧縮機の前記シリンダ室とアンローダ室との間に配置された
前記複数の吸気弁と、
制御器とつなげられて、前記吸気弁を閉鎖するように、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な制御弁
であって、中央ボア内に配置されるように弁棒を備える前記制御弁と、
前記吸気弁を開放するように、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な逆止弁と、を備え、
前記逆止弁と前記制御弁は、それぞれ、制御室と流通し、この際、前記制御室は、前記シリンダ室に対して外部の圧力制御から切り離されて
おり、
前記制御室と前記中央ボアとの間で圧力境界を画定するため、前記弁棒に少なくとも1つのシールを配置し、
前記制御弁が前記第1の位置にあるとき、前記逆止弁は前記シリンダ室と流通し、前記複数の吸気弁の各吸気弁は、開放位置にあり、前記制御弁が前記第2の位置になると、前記複数の吸気弁の各弁が閉鎖位置になり、
前記制御弁が前記第1の位置にあるとき、前記シリンダ室内の周期的な圧力変動に応答する前記逆止弁によって、前記シリンダ室内の圧力低下が前記制御室内に閉じ込められるようにし、
前記逆止弁は、前記吸気弁システムの中心軸に対して横方向にオフセットされた、
吸気弁システム。
【請求項16】
前記制御弁は、前記シリンダ室と前記制御室との間に配置される、請求項15に記載の吸気弁システム。
【請求項17】
前記逆止弁は、前記シリンダ室と、前記吸気弁と流通する接続通路との間に配置される、請求項15に記載の吸気弁システム。
【請求項18】
前記制御弁は、前記制御室内で、前記弁棒の軸方向端部に配置された制御弁部分を備え、
前記制御弁の前記第1の位置では、前記弁棒は軸方向に延出して、それにより、前記制御弁部分がポートを閉鎖して、前記シリンダ室との流通を防ぐようにした、
請求項17に記載の吸気弁システム。
【請求項19】
さらに、前記接続通路から前記シリンダ室まで延在する逆止弁通路を含み、前記逆止弁通路は、前記接続通路の近くに逆止弁座面を有し、
前記制御弁が前記第1の位置にあるとき、前記シリンダ室との流通を防ぐように、前記圧縮機の操作中に前記シリンダ室内の周期的な圧力変動に応じて、前記逆止弁座面と前記逆止弁との係合と解除によって、前記シリンダ室との流通を制御するようにした、
請求項18に記載の吸気弁システム。
【請求項20】
前記制御弁の前記第2の位置のとき、前記弁棒が軸方向に引き込まれて、それにより、前記ポートが前記制御弁部分によって閉鎖されないようにして、前記ポートを介して、前記制御室と前記シリンダ室との間で流通を成立させるようにした、請求項19に記載の吸気弁システム。
【請求項21】
前記制御弁と前記逆止弁とは、別個の、離散した弁アセンブリを構成する、請求項15に記載の吸気弁システム。
【請求項22】
前記第1の位置と前記第2の位置とに、それぞれ、前記制御弁を作動させるタイミングを選択的に制御するように前記制御器が配置された、請求項15に記載の吸気弁システム。
【請求項23】
圧縮機のシリンダ室用に、それぞれがシステムである吸気弁であって、
圧力差に応じて、開放位置と閉鎖位置との間で移動可能な
複数の吸気弁であって、前記圧縮機の前記シリンダ室とアンローダ室との間に配置された
前記複数の吸気弁と、
制御器とつなげられて、前記吸気弁を閉鎖するように、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な制御弁
であって、中央ボア内に配置されるように弁棒を備える前記制御弁と、
前記吸気弁を開放するように、第1の位置と第2の位置との間で移動可能な逆止弁と、を備え、
前記逆止弁と前記制御弁は、それぞれ、制御室と流通し、この際、前記制御室は、前記シリンダ室に対して外部の圧力制御から切り離されて
おり、
前記制御室と前記中央ボアとの間で圧力境界を画定するため、前記弁棒に少なくとも1つのシールを配置し、
前記制御弁が前記第1の位置にあるとき、前記逆止弁は前記シリンダ室と流通し、前記複数の吸気弁の各吸気弁は、開放位置にあり、前記制御弁が前記第2の位置になると、前記複数の吸気弁の各弁が閉鎖位置になり、
前記制御弁が前記第1の位置にあるとき、前記シリンダ室内の周期的な圧力変動に応答する前記逆止弁によって、前記シリンダ室内の圧力低下が前記制御室内に閉じ込められるようにし、
前記制御弁が第2の位置にあるとき、前記弁棒は軸方向に延出して、前記弁棒の軸方向端部が、前記逆止弁を開放位置に機械的に強制する、
吸気弁システム。
【請求項24】
前記制御弁と前記逆止弁は、共通の弁アセンブリを構成し、当該共通の弁アセンブリは、前記吸気弁システムの中心軸に対して同軸的に配置された、請求項23に記載の吸気弁システム。
【請求項25】
前記弁棒の軸方向端部にフィンガを備え、
前記制御弁の前記第1の位置では、前記弁棒は、軸方向に引き込まれて、共通の弁アセンブリの前記逆止弁が、前記圧縮機の操作中に、前記シリンダ室内の周期的な圧力変動に応じるようにした、請求項23に記載の吸気弁システム。
【請求項26】
前記共通の弁アセンブリは、前記シリンダ室と、前記吸気弁と流通する接続通路との間に配置される、請求項25に記載の吸気弁システム。
【請求項27】
さらに、前記接続通路から前記シリンダ室まで延在する逆止弁通路を含み、当該逆止弁通路は、前記接続通路の近くに逆止弁座面を備え、
前記制御弁が前記第1の位置にあるとき、前記逆止弁通路により、前記シリンダ室との流通が成立するようにし、前記シリンダ室との流通は、前記圧縮機の操作中に、前記シリンダ室内の周期的な圧力変動に応じて、前記逆止弁座面と前記逆止弁との係合と解除とによって制御されるようにした、
請求項26に記載の吸気弁システム。
【請求項28】
前記制御弁の前記第2の位置では、前記弁棒は軸方向に延出して、前記フィンガが前記共通の弁アセンブリの前記逆止弁を開放位置に強制させて、前記逆止弁通路により、前記制御室と前記シリンダ室との間で流通が成立するようにした、請求項27に記載の吸気弁システム。
【請求項29】
前記第1の位置と前記第2の位置とに、それぞれ、前記制御弁を作動させるタイミングを選択的に制御するように前記制御器が配置された、請求項23に記載の吸気弁システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される実施形態は、概して、圧縮機の弁に関し、より具体的には、往復動圧縮機などの圧縮機に適用可能な吸気弁システムに関する。
【背景技術】
【0002】
容積型ターボ機械の一例として往復動圧縮機(又はレシプロ・コンプレッサ)がある。往復動圧縮機内では、圧縮対象の流体は、入口(又は吸気口)から室(又はチャンバ)内に流入し、そして、出口(又は排気口)を介して、その室から流出している。圧縮は、周期的な工程であって、その際、ピストンヘッドの往復運動によって流体が圧縮されている。その室の周囲には、複数の圧縮機弁アセンブリが配置され得る。圧縮機弁アセンブリは、ピストンヘッドの往復運動に応じた圧縮機弁アセンブリを横切る圧力差により、閉鎖状態と開放状態の間で切り替えられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】
図1は、往復動圧縮機などの圧縮機内に適用可能な本開示内容の吸気弁システムの一実施形態の要部断面図であって、複数の吸気弁を開放/閉鎖するために協働する制御弁と逆止弁が含まれることを示した図である。
図1では、吸気弁は、開放位置で示されている。
【
図2】
図2は、吸気弁が閉鎖位置にあるときの、
図1の吸気弁システムの実施形態を示した図である。
【
図3】
図3は、本開示内容の吸気弁システムの別の実施形態の要部断面図であって、制御弁と逆止弁が共通の弁アセンブリを構成したときの図である。
図3では、吸気弁は、開放位置で示されている。
【
図4】
図4は、吸気弁が閉鎖位置にあるときの、
図3の吸気弁システムの実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
ターボ機械は、圧縮機(例えば、往復動圧縮機など)を含み得るが、これに限定されない。ターボ機械は、無限ステップ制御(ISC:infinite step control)を適用可能だが、例えば、圧縮行程の間、吸気弁を、その自然な閉鎖位置よりも長く、開放状態に保持することで、圧縮機の複数の吸気弁を非ロード(又は非負荷状態)にすることができる。このように吸気弁を遅れて閉鎖することで、作動流体の一部を圧縮機から戻すように吐き出すことができるが、このことは、圧縮機のピストンが圧縮行程の最中に、圧縮機の出力が低下した場合でも成立し得る。
【0005】
当業者には理解可能なように、「無限ステップ制御」とは、ピストンの圧縮行程の中で、吸気弁が閉鎖可能になる位置が、ピストン移動中の無限数の位置のうちから任意のものを精密に選択することができ、ピストンがその位置に到達するまで、各サイクル中に流体の圧縮が生じないことを意味し、このため、ピストンが選択された位置に到達するまで、作動流体の望ましくない量が、開放された吸気弁から吐き出され得る。このため、圧縮機の出力が、選択的に制御可能となる。このことは、従来、油圧(又は液圧)に基づくサーボ機構を利用可能な、比較的複雑なフィンガ/プランジャ組立体を押し下げることで行われていた。フィンガ/プランジャ組立体と、液圧サーボ機構とを不要とした、その後の公知の構成の中には、吸気弁を開放/閉鎖するための適切な圧力差を生じさせるために、外部制御圧を利用したものがある。
【0006】
本明細書では、さらに、ターボ機械を改良するための、信頼性があり、コスト効率の高い技術が開示される。従って、本開示内容の実施形態では、吸気弁を開放/閉鎖するための圧力差を生じさせるために、外部の制御圧力を用いることを不要にしている。さらに、本開示内容の実施形態では、シリンダ室と制御室との間でより意図的に配置された(つまり、流通又は流体接続された)逆止弁を使用する。例えば、各サイクル中で制御弁をストロークさせることなく、非ロード状態で、吸気弁システムを設定し、維持することを可能にする。つまり、本開示内容の実施形態では、シリンダ室を非ロード状態にするための制御方法を単純化している。何故なら、そのような非ロード状態(及び、所望なように、吸気弁システムを非ロード状態に維持すること)は、自動的(又は自己作用的)に実装可能だからである。
【0007】
以下の詳細な説明では、上述の実施形態についての理解を助けるために、様々な詳細な説明が記載されている。しかしながら、当業者であれば、本開示内容の実施形態は、それら詳細を用いるとなく実施可能なことを理解できるであろう。つまり、本発明の態様は、本開示内容の実施形態に限定されず、そして、本発明の態様は、様々な代替の実施形態で実装することができる。当業者であれば理解可能な他の例、方法、手順、及び構成要素については、不必要で重複する説明を避けるため、詳述されていない。
【0008】
さらに、本発明の実施形態の理解を助けるため、様々な操作について、複数の離散したステップとして説明されることがある。しかしながら、その説明の順番は、その操作が提示された順番で実行されるべきことを意味しておらず、また、その操作がその順番に依拠することを意味しないものとする。ただし、別段の説明がある場合には、その限りではない。さらに、「一実施形態での」という語句が繰り返し使用されたとしても、そのことは、必ずしも同一の実施形態を指すとは限らないものとする。ただし、同一の実施形態を示唆することは可能である。
【0009】
なお、本開示内容の複数の実施形態は、相互に排他的な実施形態として解釈される必要はないことに理解されたい。何故なら、所与の分野での必要性に応じて、それら複数の実施形態は、当業者によって適当に組み合わせることが可能だからである。
【0010】
図1には、本開示内容の吸気弁システム10の実施形態の一つの要部断面図が例示されているが、これは、例えば、往復動圧縮機の中で、アンローダ室(又はアンロード室)120とシリンダ室20との間で流通(又は流体接続)することができる。これは、本開示内容の複数の実施形態を用いることに利益のあるターボ機械の一例である。しかしながら、一般的に、圧力差に基づく弁アセンブリの作動を用いるシステムでは、本開示内容の複数の実施形態を用いることに利益があることを理解されたい。複数の吸気弁250は、開放位置(
図1参照)と閉鎖位置(
図2参照)の間で移動可能である。非限定的な一実施形態では、複数の吸気弁250は、弁アセンブリ200の一部であってもよい。
【0011】
非限定的な一実施形態では、弁アセンブリ200は、吸気弁システム10の中心軸12の周りに円周方向に配置可能なように、円筒形状の弁本体210を含むよう構成することができ、そして、第1の軸方向端部212と、それと対向する第2の軸方向端部214とを有することができる。
【0012】
非限定的な一実施形態では、円筒形状の弁本体210の第1の部分245に配置可能な複数の吸気弁ポート244の内に、複数の吸気弁250を配置することができる。例えば、各吸気弁ポート244は、複数の吸気弁250のうちの各吸気弁を、少なくとも部分的に含む。
【0013】
非限定的な一実施形態では、円筒形状の弁本体210の第1の軸方向端部212と、第1の接続通路240(例えば、中心軸12を横切る方向に延在する)との間に、複数の第1の弁通路220が延在する(例えば、中心軸12と平行な方向に延在する)。
非限定的な一実施形態では、円筒形状の弁本体210の第2の軸方向端部214と、第1の接続通路240との間に、複数の第2の弁通路230(例えば、中心軸12と平行な方向に延在する)が延在する。
非限定的な一実施形態では、複数の吸気弁ポート244の間に複数の第2の接続通路242が延在する(例えば、中心軸12を横切る方向に延在する)。
非限定的な一実施形態では、第1の弁通路220は、それぞれ、第1の接続通路240の近くに、対応する吸気弁座面224を有する。
【0014】
非限定的な一実施形態では、以下で詳述するように、各吸気弁250は、閉鎖位置と開放位置との間の圧力差に応じて移動するように構成されており、その圧力差は、例えば、各吸気弁の前方部分面253と後方部分面254との間で形成され得る。例えば、前方部分面253と比べて、後方部分面254により大きな圧力が加えられる場合には、第1の接続通路240の近くにある各第1の弁通路220の吸気弁座面224が係合されて、吸気弁が閉鎖位置になる(例えば、
図2又は
図4参照)。
【0015】
反対に、後方部分面254と比べて、前方部分面253により大きな圧力が加えられる場合には、第1の接続通路240の近くにある各第1の弁通路220の吸気弁座面224の係合が解除されて、吸気弁は開放位置になる(例えば、
図1又は
図3参照)。この結果、例えば、アンローダ室120とシリンダ室20との間で流通が可能となる。
【0016】
非限定的な一実施形態では、吸気弁250を閉鎖させるため、制御弁270(
図3及び4では、参照番号270’が付されている)が、制御器(又はコントローラ)300とつなげられていて、第1の位置と第2の位置の間で移動可能となっている。
非限定的な一実施形態では、吸気弁250を開放させるため、逆止弁(又はチェック弁)260(
図3及び4では、参照番号260’が付されている)が、第1の位置と第2の位置との間で移動可能となっている。
【0017】
逆止弁260と制御弁270とは、夫々、制御室252と流通しており、この制御室252、シリンダ室20の外部の任意の圧力制御から切り離されている。
非限定的な一実施形態では、シリンダ室20と制御室252との間には、制御弁270が配置される。
非限定的な一実施形態では、接続通路242とシリンダ室20との間には、逆止弁260が配置される。
非限定的な一実施形態では、制御室252内に圧力境界を画定するため、少なくとも1つのシール255を配置することができる。
【0018】
非限定的な一実施形態では、逆止弁260は、円筒形状の弁本体210の第2の部分247内に配置された逆止弁ポート262に配置することができ、この際、円筒形状の弁本体210の第1の部分245は、円筒形状の弁本体210の第2の部分247の上に重ねられる。例えば、まず、吸気弁250が、所与の圧力前部に晒されるが、吸気弁250をそのような圧力前部に晒すために、所定の遅れが起こり得る。
【0019】
非限定的な一実施形態では、制御弁270が第1の位置(
図1参照)にあるとき、逆止弁260はシリンダ室20と流通して、吸気弁システムが非ロード状態(又は非負荷状態)になり、(必要に応じて)その状態で維持される。この場合、複数の吸気弁250の各吸気弁は、開放位置にあり、そして、制御弁270が第2の位置(
図2参照)になると、吸気弁システムがロード状態(又は負荷状態)になり、複数の吸気弁250の各弁が閉鎖位置になる。
【0020】
非限定的な一実施形態では、制御弁270は、中央ボア248内に配置された弁棒(又はステム)272を備えることができる。非限定的な一実施形態では、中央ボア248は、円筒形状の弁本体210の第1の軸方向端部212と第2の軸方向端部214との間で、吸気弁システム10の中心軸12に沿って延在することができる。
非限定的な一実施形態では、制御弁270は、制御弁部分274を有するが、これは、弁棒272の軸方向端部に配置されて、制御室252内にある。制御弁270の第1の位置(
図1参照)では、弁棒272が軸方向に延出して、これにより制御弁部分274がポート276を閉鎖して、シリンダ室20との流通を防ぐようにする。
【0021】
非限定的な一実施形態では、逆止弁通路264は、円筒形状の弁本体210の第2の部分247内で、接続通路242からシリンダ室20まで延在する。逆止弁通路264は、接続通路242の近くに逆止弁座面266を有する。一例を挙げると、制御弁270が第1の位置(
図1参照)にあるとき、逆止弁通路264によって、シリンダ室20との流通が成立する。より具体的には、シリンダ室20との流通は、圧縮機の操作中、シリンダ室20内の周期的な圧力変化に応じて、逆止弁座面266と逆止弁260との係合と解除(例えば、周期的で、動的な係合/解除)によって制御される。
【0022】
制御弁270が第1の位置(
図1参照)にあるとき、シリンダ室20内の周期的な圧力変動に応答する逆止弁260の動的な係合と解除(例えば、閉鎖/開放)については、
図1では、双方向矢印263を用いて概略的に例示されている。基本的に、制御弁270が第1の位置にあるとき、シリンダ室20内の周期的な圧力変動に応答する逆止弁260の自動的な、動的な挙動によって、シリンダ室20内の圧力低下(つまり、吸気弁250の操作中に含まれる圧力低下)が、制御室252内に閉じ込められる(又はトラップされる)。これにより、外部の圧力制御との接続を必要とすることなく、吸気弁システムの非ロード状態が可能になる(そして、必要に応じて、吸気弁システムを非ロード状態で維持する)。
【0023】
比較として、制御弁270が第2の位置(
図2参照)にあるときを示すと、弁棒272が軸方向に引き戻されるため、それにより、制御弁部分274がポート276を閉鎖せず、このポート276によって、制御室252とシリンダ室20との間で流通が成立する。この場合、アンローダ室120内の圧力と比べて、シリンダ室20内で生じるより高い圧力により、吸気弁250を閉鎖位置まで移動させる圧力差を生じさせることが可能になる。
【0024】
図1及び
図2の内容について上述した実施形態では、制御弁270と逆止弁260とは、別個の、離散した弁アセンブリを構成し、例えば、逆止弁ポート262は、吸気弁システム10の中心軸12に対して横方向にオフセットすることが可能なことを理解されたい。
【0025】
図3及び
図4の内容についての実施形態では、制御弁270’と逆止弁260’とは、共通の弁アセンブリ271を構成するが、これは、吸気弁システム10の中心軸12に対して同軸的に配置することができる。なお、この実施形態で提供される機能は、本質的には、吸気弁250を開放/閉鎖させるための
図1及び
図2の内容で上述した実施形態によって提供されるものと同じである。従って、以下の説明は、
図1及び2の内容で上述した実施形態との構造的な違いに焦点を当てている。
【0026】
非限定的な一実施形態では、制御弁270’は弁棒272’を備え得るが、この弁棒272’は、制御室252内で、弁棒272’の軸方向端部にフィンガ(又は指状部)278を有する。非限定的な一実施形態では、制御室252内に圧力境界を画定するため、少なくとも1つのシール255を配置することができる。この実施形態では、中央ボア248に関して第1の接続通路240をシールするため、さらにシール256を用いることができる。なお、
図1及び
図2に例示した実施形態でも、さらにシール256を用いることができるが、それは、
図1及び
図2に例示したように、第1の接続通路240と中央ボア248との間での流通を防ぐ壁を備えた囲いの中に、任意の態様で、弁棒272が含まれない場合に当たる。
【0027】
非限定的な一実施形態では、制御弁270’が第1位置(
図3参照)にあるとき、弁棒272’は、軸方向に引き込まれるため、圧縮機の操作中に、共通の弁アセンブリ271の逆止弁260’が、シリンダ室20内の圧力変動に応答する。即ち、制御弁270’が第1の位置になると、逆止弁通路264によって、シリンダ室20との流通が成立する。より具体的には、シリンダ室20との流通は、圧縮機の操作中、シリンダ室20内の圧力変化に応じて、逆止弁座面266と逆止弁260’との係合と解除(例えば、周期的で、動的な係合/解除)によって制御される。
【0028】
繰り返しになるが、制御弁270’が第1の位置(
図3参照)にあるとき、シリンダ室20内の周期的な圧力変動に応答する逆止弁260’の動的な係合と解除は、
図3では、双方向矢印263を用いて、概略的に例示されている。基本的に、制御弁270’が第1の位置にあるとき、シリンダ室20内の周期的な圧力変動に応答する逆止弁260’の自動的で動的な挙動によって、シリンダ室20内の圧力低下(つまり、吸気弁250の開放中に含まれる圧力低下)が、制御室252内に閉じ込められる。これにより、外部の圧力制御との接続を必要とすることなく、吸気弁システムの非ロード状態が可能になる(そして、必要に応じて、吸気弁システムを非ロード状態に維持してもよい)。
【0029】
比較として、制御弁270’が第2の位置(
図4参照)にあるときを示すと、弁棒272’は軸方向に延出するため、フィンガ278が、共通の弁アセンブリ271の逆止弁260’を開放位置に強制して、そして、逆止弁通路264によって、制御室252とシリンダ室20との間で流通が成立する。この場合、アンローダ室120内の圧力と比べて、シリンダ室20内で生じるより高い圧力のため、吸気弁250を閉鎖位置まで移動させる圧力差を生じさせることが可能になる。上記実施形態の各場合で、各制御弁を第1の位置と第2の位置とに作動させるタイミングを合わせる制御を選択的に行うため、制御器(又はコントローラ)300を設けることができる。この場合、アンローダ室120内の圧力と比べて、シリンダ室20内に生じるより高い圧力のため、吸気弁250を閉鎖位置まで移動させる圧力差を生じさせることができる。
【0030】
上述の説明から、
図1及び
図2では、本システムの一実施形態に係る2つの動作位置が例示されていることが理解できる。
図1を参照すると(例えば、制御弁270が第1の位置にある)、この図は、ピストンの吸気行程中の位置を概念化した図として用いることができる。この位置では、シリンダ室20内の圧力は、吸気弁250を開放するように、アンローダ室120内の圧力より低い。ピストン・ストロークが進行すると、シリンダ室20内の圧力は上昇し始めるため(例えば、シリンダ容積が減少し始める)、逆止弁260を、逆止弁座面266と係合するように移動させて、制御室252内の低い圧力を効果的に閉じ込めて、吸気弁250を開放することが可能になる。ピストン・ストロークが逆行すると、シリンダ室20内の圧力が最終的に低下し始めるため(例えば、シリンダ容積が増加し始める)、逆止弁座面266を解除するように逆止弁260を移動させて、シリンダ室20内の比較的低い圧力が、制御室252内の低下する圧力と流通又は連通して、吸気弁250を連続して開放することを可能にする。このプロセスは、制御弁270が第1の位置にある限り、それ自体(例えば、閉鎖/開放を伴う逆止弁260の動的な挙動)で繰り返される。
【0031】
図2を参照すると(例えば、制御弁270が、第2の位置にある)、この図は、ピストンの排気行程中の位置を概念化した図として用いることができる。この位置では、シリンダ室20内の圧力は、アンローダ室120内の圧力よりも高いため、吸気弁250は閉鎖位置まで移動する。なお、
図3及び
図4に例示した実施形態では、
図1及び
図2の内容について上述した同一の操作関係を繰り返し記述するように、
図3及び
図4を用いることができる。
【0032】
本開示内容の複数の実施形態では、操作上、吸気弁を開放/閉鎖させるために、圧力差を生じさせる際、外部の制御圧力を利用することを不要にするように、吸気弁システムを実装している。さらに、本開示内容の実施形態では、シリンダ室を非ロード状態にすることに関する制御の仕方を単純化している。何故なら、この非ロード状態は、ここでは、自動的な仕方で実装できるからである。即ち、非ロード状態をオン/オフさせるために、各サイクル中で制御弁をストロークさせる必要がない。なお、本開示内容の複数の実施形態は、所与の往復動圧縮機に用いられる際、その圧縮機が無限ステップ制御(ISC)を利用するか否かにかかわらず適用可能なことを理解されたい。
【0033】
以上、本開示内容の複数の実施形態を例示的な態様で開示したが、当業者であれば、添付した特許請求の範囲で定められる本発明の範囲内と、その均等な範囲内とから逸脱することなく、修正、追加、削除等を行うことができるのは明らかなことを理解されたい。