(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-12
(45)【発行日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ケーソンの避難通路構造
(51)【国際特許分類】
E02D 23/06 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
E02D23/06 B
(21)【出願番号】P 2024039903
(22)【出願日】2024-03-14
【審査請求日】2024-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】福田 淳二
(72)【発明者】
【氏名】小陽 哲也
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭53-006770(JP,B2)
【文献】特公昭54-026809(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/00-23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューマチックケーソン工法におけるケーソン躯体の作業室内からケーソン用シャフトのボトムドア室のマンロックへ避難するケーソンの避難通路構造であって、
前記ケーソン用シャフトは、円筒状のマテリアルシャフトとその周りの断面ドーナツ状のマンシャフトが一体化したペアシャフト形式のシャフトであり、
前記作業室内の天井には、ケーソンショベルが走行する円形の走行レールが取り付けられており、
前記ケーソン躯体には、
前記マンロックの直下に加え、前記マテリアルシャフトの軸芯を中心に回転対称となる位置の前記走行レール間に、前記作業室から前記マンロックに通じる昇降路が複数設けられていること
を特徴とするケーソンの避難通路構造。
【請求項2】
前記複数の昇降路の開口は、前記マテリアルシャフトの軸芯を中心に回転対称となる位置に設けられていること
を特徴とする請求項1に記載のケーソンの避難通路構造。
【請求項3】
前記ケーソン用シャフトのボトムドア室と前記ケーソン躯体との間に介装される前記ケーソン用シャフトの最下段に位置するスペシャルシャフトが
前記マンロックを下方に開くために必要な高さの2段分以上の高さとなっていること
を特徴とする請求項1又は2に記載のケーソンの避難通路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーソンの避難通路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューマチックケーソン工法では、圧縮空気を高圧作業室内に送り込み、高圧作業室内で掘削した土砂は、マテリアルシャフトを通じてアースバケット等の排土設備で外部へ排出することで排土作業を行っている。また、アースバケット通過時には、上下一対のドアラを開閉することで土砂搬出と気圧保持の両立を図っている。
【0003】
また、スリムケーソンと呼ばれるシャフト断面積が40m2未満の小口径ケーソンでも機械化掘削が可能な円筒状のマテリアルシャフトとその周りの断面ドーナツ状のマンシャフトが一体化したペアシャフト形式のケーソンも知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、材料用出入室システム及び人用出入室システムを横断面二重構造の筒体とし、該材料用出入室システム及び該人用出入室システムの艤装用シャフトを、横断面中央部にマテリアルシャフト及びマテリアルロックを配置し、その外周に同心状にマンシャフト及びマンロックを配置することで材料用・人用出入室一体構造とし、且つ、該材料用・人用出入室一体構造を設備容易とするために多分割可能な構造としたニューマチックケーソン工法における艤装設備が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0033]~[0065]、図面の
図1~
図4等参照)。
【0005】
特許文献1に記載の艤装設備は、横断面積の小さいケーソンの作業室内でも機械掘削を可能としている。しかし、特許文献1に記載の艤装設備は、
図1等に示すように、狭い作業室内の天上面に設置された円形のレール上をケーソンショベルが移動して掘削する関係上、ケーソンショベルを直接操作する場合の人員が昇降するシャフト孔が、ケーソンショベルの故障で塞がれてしまい、脱出不能になり得るおそれがあるという問題があった。
【0006】
一方、特許文献2には、開閉体の横断面を略U字形とすると共に該開閉体の内周面の曲率を中空筒状体の開口部の横断面の曲率とほぼ等しくし、前記開閉体を全開した状態では前記開口部の横断面積内を前記開閉体が遮ることがないように構成した作業者の緊急避難を容易に行える中空筒状体の開閉構造を有したピアケーソンが開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0033]~[0051]、図面の
図1,
図2等参照)。
【0007】
また、特許文献3には、作業員の出入りと物資運搬共用の通路が設けられ、上下に継ぎ足し自在に構成される中空のシャフト本体と、該シャフト本体内壁に取り付けられる垂直梯子と、該垂直梯子の開放面側に設けられる折り畳み可能の背もたれと、を備え、掘削土砂等の物資通過範囲を制約することなく、垂直梯子の昇降を安全かつ迅速に行うことができるニューマチックケーソン用シャフトが開示されている(特許文献3の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0016]~[0053]、図面の
図1~
図3等参照)。
【0008】
しかし、特許文献2に記載の中空筒状体の開閉構造や特許文献3に記載のニューマチックケーソン用シャフトは、ケーソンの昇降施設に関する安全確保に関する発明ではあるものの、前述のケーソンショベルの故障で昇降用のシャフト孔(昇降路)が塞がれて脱出不能になり得るおそれがあるという問題を考慮しているものではなく、このような問題を解決できるものでは無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-282077号公報
【文献】特開2001-107369号公報
【文献】特開2001-241046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ケーソンショベルが停止して昇降路が塞がれた場合でも人員が脱出不能となることを防ぐことができるケーソンの避難通路構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係るケーソンの避難通路構造は、ニューマチックケーソン工法におけるケーソン躯体の作業室内からケーソン用シャフトのボトムドア室のマンロックへ避難するケーソンの避難通路構造であって、前記ケーソン用シャフトは、円筒状のマテリアルシャフトとその周りの断面ドーナツ状のマンシャフトが一体化したペアシャフト形式のシャフトであり、前記作業室内の天井には、ケーソンショベルが走行する円形の走行レールが取り付けられており、前記ケーソン躯体には、前記マンロックの直下に加え、前記マテリアルシャフトの軸芯を中心に回転対称となる位置の前記走行レール間に、前記作業室から前記マンロックに通じる昇降路が複数設けられていることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係るケーソンの避難通路構造は、第1発明において、前記複数の昇降路の開口は、前記マテリアルシャフトの軸芯を中心に回転対称となる位置に設けられていることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係るケーソンの避難通路構造は、第1発明又は第2発明において、前記ケーソン用シャフトのボトムドア室と前記ケーソン躯体との間に介装される前記ケーソン用シャフトの最下段に位置するスペシャルシャフトが前記マンロックを下方に開くために必要な高さの2段分以上の高さとなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明~第3発明によれば、ケーソンショベルが故障で停止し、昇降路がケーソンショベルで塞がれた場合であっても人員が脱出不能となることを防ぐことができる。
【0015】
特に、第3発明によれば、ケーソン用シャフトの最下段に位置するスペシャルシャフトが従来の2段分の高さ以上となっているので、マンロックの直下にない昇降路からのマンロックへ短時間で容易に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るケーソンの避難通路構造を適用したケーソン用シャフト全体を模式的に示す透視側面図である。
【
図2】
図2は、同上のケーソン用シャフトの一般シャフト単体を示す透視正面図である。
【
図3】
図3は、同上の一般シャフト単体を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るケーソンの避難通路構造を適用したケーソン躯体の最下段を示す鉛直断面図である。
【
図5】
図5は、同上のケーソン躯体の最下段の作業室内を示す底面図である。
【
図6】
図6は、従来のケーソンの避難通路構造のスペシャルシャフト及び昇降路付近を示す鉛直断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るケーソンの避難通路構造のスペシャルシャフト及び昇降路付近を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るケーソンの避難通路構造の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[ケーソン用シャフト]
先ず、
図1を用いて、本発明の実施形態に係るケーソンの避難通路構造1を適用したケーソン用シャフト100について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るケーソンの避難通路構造1を適用したケーソン用シャフト100全体を模式的に示す透視正面図である。なお、符号G1は、ケーソン躯体200を埋設する地盤を示している。
【0019】
本実施形態として説明するケーソン用シャフト100は、スリムケーソンと呼ばれるシャフト断面積が40m2未満の小口径ケーソンでも機械化掘削が可能な円筒状のマテリアルシャフト2とその周りの断面ドーナツ状のマンシャフト3が一体化したペアシャフト形式のケーソン用シャフトを例示して説明する。
【0020】
ケーソン用シャフト100は、
図1に示すように、マテリアルシャフトの周りにマンシャフトが形成されて一体化したペアシャフト形式の一般シャフト10を基本形態とするシャフトである。このケーソン用シャフト100は、ケーソン躯体200に接続する下端から説明すると、避難経路のためのスペースを確保するスペシャルシャフト11と、ボトムドア12aを有するボトムドア室12を備えている。このボトムドア12aは、マテリアルシャフト2及びマンシャフト3の両方を封止する封止ドアである。
【0021】
そして、ケーソン用シャフト100には、ロック部として下部ロックドア13aを有する下ロック室13、上部ロックドア14aを有する上ロック室14が設けられるとともに、その上に、上部ロックドア14aの開閉機構の動作スペースを確保するためのロック室上部シャフト15が備えられている。
【0022】
この下部ロックドア13a及び上部ロックドア14aは、マテリアルシャフト2を封止する封止ドアとなっている。また、下ロック室13、上ロック室14、及びロック室上部シャフト15が、ロック機構であるロック部を構成する。
【0023】
そして、このロック部の最上段であるロック室上部シャフト15より上方(上段)には、ケーソン用シャフト100の一般シャフト10を基本形態とする一般シャフト部が設けられている。この一般シャフト部の最下段には、一般シャフト10にシャフト内から外部へ連通して圧縮空気を逃がすことが可能な開口部10a’(
図4参照)が形成されている本発明の特徴部分であるスリットシャフト10’が設けられている。
【0024】
また、スリットシャフト10’の上方(上段)には、一般シャフト10が3段積み重ねて設けられている。
【0025】
なお、ケーソン用シャフト100の最上段には、油圧ユニットや操作機器類が設置された上部シャフト16が設けられ、この上部シャフト16の周りには、踊り場16aが形成されている。
【0026】
(一般シャフト)
次に、
図2,
図3を用いて、前述のケーソン用シャフト100の一般シャフト10についてさらに詳細に説明する。
図2は、ケーソン用シャフト100の一般シャフト10単体を示す透視正面図であり、
図3は、一般シャフト10単体を示す平面図である。
【0027】
図2,
図3に示すように、一般シャフト10は、マテリアルシャフト2を構成する厚さ9mmの鋼板からなる筒状の内筒部20と、その内筒部20の上端に溶接で接合された幅75mm厚さ19mmのフラットバーからなる上フランジ21と、内筒部20の下端に溶接で接合された幅75mm厚さ19mmのフラットバーからなる下フランジ22を備えている。なお、本実施形態に係る一般シャフト10では、内筒部20は、高さ2000mm×内径D1=860mmに設定されている。
【0028】
この上フランジ21及び下フランジ22は、
図3に示すように、他のシャフトとボルト接合するための複数のボルト孔21a(22a)がそれぞれ穿設されている。また、
図2,
図3に示すように、上フランジ21及び下フランジ22は、補剛材としてフランジリブ23,24を介して内筒部20に直交するように接合されている。
【0029】
さらに、一般シャフト10は、厚さ12mmの鋼板からなる筒状の外筒部30と、その外筒部30の上端に溶接で接合された幅90mm厚さ25mmのフラットバーからなる上フランジ31と、外筒部30の下端に溶接で接合された幅90mm厚さ25mmのフラットバーからなる下フランジ32を備えている。この外筒部30は、高さ2000mm×外形D2=2100mmに設定されている。
【0030】
この上フランジ31及び下フランジ32は、
図3に示すように、他のシャフトとボルト接合するための複数のボルト孔31a(32a)がそれぞれ穿設されているとともに、
図2,
図3に示すように、上フランジ31及び下フランジ32は、補剛材としてフランジリブ33,34を介して外筒部30に直交するように接合されている。
【0031】
そして、一般シャフト10は、前述の内筒部20と外筒部30との間の断面ドーナツ状の空間がマンシャフト3となっており、このマンシャフト3には、タラップではなく、一定幅の踏板(踏面)や蹴上を有する螺旋階段35が形成されている。このため、垂直タラップと相違して落下事故のおそれが少なく作業員が安全かつ迅速に昇降して高圧作業室に出入りすることができる。
【0032】
なお、符号36は、ケーソン用シャフト100の組立及び一般シャフト10の揚重の際にシャックル等を掛け止めるための厚さ16mmの鋼板からなる吊り金具36である。また、符号Pは、マンシャフト3に設置されている各種の配管Pを示している。
【0033】
[ケーソンの避難通路構造]
次に、
図4~
図7を用いて、本発明の実施形態に係るケーソンの避難通路構造1を適用したケーソン躯体200について、詳細に説明する。
図4は、本発明の実施形態に係るケーソンの避難通路構造1を適用したケーソン躯体200の最下段201を示す鉛直断面図であり、
図5は、ケーソン躯体200の最下段201の作業室203内を示す底面図である。
【0034】
図4,
図5に示すように、ケーソン躯体200の最下段201には、刃口202が設けられ、その刃口202内が高圧の作業室203となっている。そして、作業室203内の天井には、ケーソンショベル300が走行する円形の走行レール301が取り付けられている。
【0035】
そして、一般には、このケーソンショベル300は、ケーソン用シャフト100及びケーソン躯体200外の操作室から遠隔操作により操作されるものの、万が一のために作業室203内に人員が立ち入れるようにするために、ケーソン躯体200には、マンシャフト3のマンロックの直下に昇降路204が形成されている。
【0036】
このマンロック直下の昇降路204の作業室203と連通する開口204aは、
図5に示すように、ケーソン用シャフト100及びケーソン躯体200がスリムケーソンと呼ばれる小口径ケーソンである関係上スペースが無く、走行レール301間に形成されている。このため、背景技術で述べたように、故障等により図示した状態でケーソンショベル300が停止してしまった場合、開口204aへ作業員が入れず、昇降路204を通って作業室203から脱出することができなくなるという重大な問題が発生するおそれがある。
【0037】
このため、本実施形態に係るケーソンの避難通路構造1では、マンロック直下の昇降路204とは別に、マテリアルシャフト2の軸芯を中心に昇降路204と回転対称となる位置に、作業室203の天井面の走行レール301間に、もう一つの昇降路205及び開口205aを設けている。このため、ケーソンの避難通路構造1では、昇降路204の開口204aが停止したケーソンショベル300で塞がれた場合でも、もう一つの昇降路205及び開口205aを通ってマンシャフト3へ避難可能となっている。
【0038】
図示形態では、マンロック直下の昇降路204及び開口204aと線対称の位置に、もう一つの昇降路205及び開口205aを設けたものを例示したが、線対称に位置に一対設ける場合に限られない。ケーソン躯体200に形成するマンロックに通じる避難経路となるケーソン孔の数及び位置は、作業室203内に設けられるケーソンショベル300も1機とは限らないため、マテリアルシャフト2の軸芯を中心にマンロック直下の昇降路204及び開口204aと回転対称となる位置に、ケーソンショベル300より多い複数箇所設ければよい。全てのケーソンショベル300が、昇降路の開口に停止した場合でも、作業員が通行可能な少なくとも1つの昇降路の開口が確保されるからである。
【0039】
次に、
図6,
図7を用いて、ケーソンの避難通路構造1を適用したケーソン用シャフト100のスペシャルシャフト11について詳細に説明する。
図6は、従来のケーソンの避難通路構造のスペシャルシャフト11’及び昇降路204付近を示す鉛直断面図であり、
図7は、本実施形態に係るケーソンの避難通路構造1のスペシャルシャフト11及び昇降路204付近を示す鉛直断面図である。
【0040】
スペシャルシャフト11(11’)は、ボトムドア室12の下方にスペースを設け、マンシャフト3のマンロック(図示せず)を下方に開くための距離をとるためだけのシャフトである。また、スペシャルシャフト11(11’)は、
図6に示すように、前述の一般シャフト10と同様に、マテリアルシャフト2を構成する筒状の内筒部と、その内筒部の周りに形成された筒状の外筒部を備え、内筒部20と外筒部30との間の断面ドーナツ状の空間がマンシャフト3となっている。
【0041】
このため、
図6に示すように、従来のスペシャルシャフト11’のマンロックの直下に設けられた前述の昇降路204を通って作業室203から人員が避難する場合は、昇降路204に取り付けられた垂直タラップを人員がマンロックに向け垂直に昇降するだけであり、特に支障なく矢印方向に避難することができる。また、スペシャルシャフト11’の高さh1は、マンロック(図示せず)を下方に開くスペースを確保できる距離があればよいので、従来のスペシャルシャフト11’の高さh1は、1段h1=500mm程度となっていた。
【0042】
しかし、前述のように、本実施形態に係るケーソンの避難通路構造1では、停止したケーソンショベル300で昇降路204が塞がれた場合を想定して、マンロック直下の昇降路204とは別にもう一つの昇降路205及び開口205aを設けている。
【0043】
ここで、昇降路205を通過して昇降路204の直上にあるマンロックへ移動する場合は、
図6に示すように、スペシャルシャフト11’の高さh1=500mmのドーナツ状のマンシャフト3を移動しなければならず、人員が通過する場合は、這いつくばって匍匐前進で移動する必要があり、矢印で示す横移動が非常に困難であるという問題が発生する。
【0044】
このため、本実施形態に係るケーソンの避難通路構造1では、
図7に示すように、従来のスペシャルシャフト11’を2段重ねにし、スペシャルシャフト11の高さh2が、h2=1000mm程度に設定されている。よって、図中の横矢印で示すマンシャフト3内の横移動が、しゃがんだ状態や手と足の四足のハイハイ状態で進むことが可能となり、昇降路205を通過して昇降路204の直上にあるマンロックへ移動する避難行為を短時間で容易に行うことができる。
【0045】
以上説明した本発明の実施形態に係るケーソンの避難通路構造1によれば、マンロック直下の昇降路204とは別に、マテリアルシャフト2の軸芯を中心に昇降路204と回転対称となる位置に、もう一つの昇降路205及び開口205aが設けられている。つまり、ケーソンの避難通路構造1では、ケーソン躯体200の作業室203の天井面に、マンロックに通じる昇降路(204,205)が複数設けられている。このため、ケーソンショベル300が昇降路(204,205)を塞ぐように停止した場合でも、作業員が避難できる昇降路を確保することができる。
【0046】
また、ケーソンの避難通路構造1によれば、ケーソン用シャフト100のボトムドア12aを有するボトムドア室12とケーソン躯体200との間に介装されるケーソン用シャフト100の最下段に位置するスペシャルシャフト11が従来の高さh1=500mmの2段分の高さのh2=1000mm以上となっているので、マンロックの直下にない昇降路205からのマンロックへ短時間で容易に移動することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態に係るケーソンの避難通路構造1について詳細に説明した。しかし、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0048】
1:ケーソンの避難通路構造
100:ケーソン用シャフト
10:一般シャフト
2:マテリアルシャフト
20:内筒部
21:上フランジ
21a:ボルト孔
22:下フランジ
23,24:フランジリブ
3:マンシャフト
30:外筒部
31:上フランジ
31a:ボルト孔
32:下フランジ
33,34:フランジリブ
35:螺旋階段
36:吊り金具
11’:(従来の)スペシャルシャフト
11:スペシャルシャフト
12:ボトムドア室
12a:ボトムドア
13:下ロック室
13a:下ロックドア(マテリアルロックの封止ドア)
14a:上ロックドア(マテリアルロックの封止ドア)
15:ロック室上部シャフト
16:上部シャフト
16a:踊り場
200:ケーソン躯体
201:最下段
202:刃口
203:作業室
204,205:昇降路
204a,205a:開口
300:ケーソンショベル
301:走行レール
EB:アースバケット
G1:地盤
P:配管
【要約】
【課題】ケーソンショベルが停止して昇降路が塞がれた場合でも人員が脱出不能となることを防ぐことができるケーソンの避難通路構造を提供する。
【解決手段】ニューマチックケーソン工法におけるケーソン躯体の作業室内からケーソン用シャフトのボトムドア室のマンロックへ避難するケーソンの避難通路構造において、前記ケーソン用シャフトを、円筒状のマテリアルシャフトとその周りの断面ドーナツ状のマンシャフトが一体化したペアシャフト形式のシャフトとし、前記ケーソン躯体に、前記作業室から前記マンロックに通じる昇降路を複数設ける。
【選択図】
図4