(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】椎間インプラント、器具、及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/44 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
A61F2/44
(21)【出願番号】P 2020513735
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(86)【国際出願番号】 US2018050001
(87)【国際公開番号】W WO2019051260
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-31
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】524195743
【氏名又は名称】エクスタント メディカル ホールディングス,インコーポレイテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】トルドー,ジェフリー エル.
(72)【発明者】
【氏名】カクーク,マイケル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ホーヴァス,スティーヴン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バロン,ケイティー エス.
(72)【発明者】
【氏名】カーター,マイケル シブリー
(72)【発明者】
【氏名】スコー,ブレント イー.
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0265414(US,A1)
【文献】特表2006-508714(JP,A)
【文献】特開2016-135243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0239066(US,A1)
【文献】米国特許第09034043(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0083885(US,A1)
【文献】特表2011-530387(JP,A)
【文献】国際公開第2017/087944(WO,A1)
【文献】特開2012-232124(JP,A)
【文献】船登 彰芳, 外4名,培養骨芽細胞によってチタンメッシュのミクロン粗面上に形成された石灰化基質は高い硬度と剛性を有する,日口腔インプラント誌,日本,2010年06月,Vol. 23, No. 2,pp. 229-238
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎骨を固定するための脊椎インプラントであって、当該脊椎インプラントは、
骨同士の間に挿入されるモノリシックポリマー本体であって、該本体は、遠位の前端部分と近位の後端部分とを有しており、前記本体は、前記前端部分と前記後端部分との間に延びる長手方向軸線を含む、本体と、
骨成長材料を受容するための前記本体の貫通開口部と、
該貫通開口部の周りに延びる前記本体の壁と、
骨の成長に利用できる前記壁の表面積を増やすための、前記貫通開口部内に延びる前記壁の隆起部と、を含み、
前記隆起部は、前記本体の前記貫通開口部における骨癒合の相互作用を促進するための山部及び谷部を含むナノ構造体を含む表面を有しており、
本体は、
前記貫通開口部に隣接する前記壁から近位方向に延びる取付け部分と、
前記取付け部分の両側の側面と、
前記取付け部分の前記両側の側面をクランプアーム同士の間でクランプする挿入器ツールの前記クランプアームの遠位端部分を受容するように構成された前記取付け部分の前記両側の側面に沿って延びる前記本体の凹部と、
前記本体の前記長手方向軸線に沿った前記貫通開口部
よりも近位方向
にある前記取付け部分の狭小部分であって、
前記取付け部分の前記狭小部分の遠位の前端部が、前記貫通開口部の近位の後端部を超えて延びておらず、前記取付け部分の前記狭小部分は、前記取付け部分を横切って両側の側面部分同士の間に第1の幅を有する前記両側の側面部分の第1のペアを含み、前記取付け部分の前記狭小部分の両側の側面部分の第1のペアが、前記本体の前記長手方向軸線に沿って前記貫通開口部
よりも近位方向にある前記挿入器ツールのクランプアームの前記遠位端部分によって係合されるように構成される、狭小部分と、
前記貫通開口部から近位方向に離間した前記取付け部分の幅広部分であって、前記狭小部分は前記本体の長手方向軸線に沿って前記幅広部分と前記貫通開口部との中間にあり、前記幅広部分は、前記取付け部分を横切って両側の側面部分同士の間に前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する前記両側の表面部分の第2のペアを含み、
前記幅広部分は前記第2のペアの2つの側面に遠位方向にテーパー面が付けられており、前記クランプアームの2つの前記遠位端部分は近位方向にテーパー面が付けられており、前記幅広部分
の前記テーパー面は、前記クランプアームが前記取付け部分を前記クランプアーム同士の間でクランプしている間に、前記挿入器ツールからの前記ポリマー本体の分離を防止するために、前記クランプアームの前記遠位端部分
の前記テーパー面と干渉状態になるように構成される、幅広部分と、を含
み、
前記干渉状態において、(i)前記幅広部分の一方の前記テーパー面が前記クランプアームの一方の前記遠位端部分から受ける力の延長方向と、(ii)前記幅広部分の他方の前記テーパー面が前記クランプアームの他方の前記遠位端部分から受ける力の延長方向とが、前記幅広部分の近位の後端部で重なる、
脊椎インプラント。
【請求項2】
前記壁は、前記骨成長材料のための複数の交差する経路を含み、該経路は、前記隆起部を分離する、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項3】
前記壁は、上部骨係合部分と下部骨係合部分とを含み、前記壁は、前記上部骨係合部分から前記下部骨係合部分まで延びる経路を含む、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項4】
前記壁は、前記隆起部を分離するベース面を含み、各隆起部が連続した側面を有しており、該側面は、前記ベース面から突出し、且つ隣接する前記隆起部の前記連続した側面から間隔を空けて配置された前記隆起部の外周を規定する、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項5】
各隆起部の前記連続した側面が、前記隆起部のエッジ部によって接続された少なくとも3つの側壁表面部分を含む、請求項4に記載の脊椎インプラント。
【請求項6】
前記本体はポリエーテルケトンケトン(PEEK)から構成され、前記本体はレーザー焼結体を含む、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項7】
前記隆起部はそれぞれダイヤモンド形状を有する、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項8】
前記壁は、前記隆起部を含む内面と、該内面と反対側の外面とを含み、該外面は複数の補助的な隆起部を含む、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項9】
前記隆起部及び前記補助的な隆起部はそれぞれダイヤモンド形状を有する、請求項8に記載の脊椎インプラント。
【請求項10】
前記本体の前記壁は、
前記貫通開口部の両側に沿って延びる壁部分であって、該壁部分はそれぞれ、上部骨係合部分と下部骨係合部分とを有する、壁部分と、
該壁部分を相互接続し、且つ前記貫通開口部を横切って延びる前記本体のウェブと、
当該脊椎インプラントを前記椎骨同士の間の空間内に挿入する間に、前記ウェブと前記骨との間の接触を避けるために、前記壁の対応する上部及び下部骨係合部分に対してくぼんだ前記ウェブの最上部及び最下部と、を含む、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項11】
前記壁部分はそれぞれ、前記ウェブの上下に隆起部を含む、請求項10に記載の脊椎インプラント。
【請求項12】
椎骨を安定させるために前記椎骨同士の間の椎間腔に挿入されるインプラントであって、当該インプラントは、
ポリエーテルケトンケトン(PEEK)から構成されたモノリシック本体であって、当該本体はレーザー焼結体を含み、前記本体は、遠位の前端部分と近位の後端部分とを有しており、前記本体は、前記前端部分と前記後端部分との間に延びる長手方向軸線を含む、本体と、
骨成長材料を受容するための前記本体の貫通開口部と、
該貫通開口部の周りに延び、且つ上部及び下部骨係合部分を有する前記本体の環状壁であって、前記貫通開口部と連通する貫通孔がない環状壁と、
前記貫通開口部に隣接する前記環状壁から近位方向に延びる前記本体の取付け部分と、
前記取付け部分の両側をクランプアーム同士の間でクランプする挿入器ツールのクランプアームの遠位端部分を受容するように構成された、前記取付け部分の両側に沿って延びる本体の凹部と、
前記本体の前記長手方向軸線に沿った前記貫通開口部
よりも近位方向の前記取付け部分の狭小部分であって、
前記取付け部分の前記狭小部分の遠位の前端部が、前記貫通開口部の近位の後端部を超えて延びておらず、前記取付け部分の前記狭小部分は、前記取付け部分を横切って両側の側面部分同士の間に第1の幅を有する前記両側の側面部分の第1のペアを含み、前記取付け部分の前記狭小部分の両側の側面部分の第1のペアが、前記本体の前記長手方向軸線に沿って前記貫通開口部
よりも近位方向にある前記挿入器ツールのクランプアームの前記遠位端部分によって係合されるように構成される、狭小部分と、
前記貫通開口部から近位方向に離間した前記取付け部分の幅広部分であって、前記狭小部分は前記本体の長手方向軸線に沿って前記幅広部分と前記貫通開口部との中間にあり、前記幅広部分は、前記取付け部分を横切って両側の側面部分同士の間に前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する前記両側の側面部分の第2のペアを含み、
前記幅広部分は前記第2のペアの2つの側面に遠位方向にテーパー面が付けられており、前記クランプアームの2つの前記遠位端部分は近位方向にテーパー面が付けられており、前記取付け部分の幅広部分
の前記テーパー面は、前記クランプアームが前記取付け部分を前記クランプアーム同士の間でクランプしている間に、前記挿入器ツールからの前記本体の分離を防止するために、前記クランプアームの前記遠位端部分
の前記テーパー面と干渉状態になるように構成される幅広部分と、を含
み、
前記干渉状態において、(i)前記幅広部分の一方の前記テーパー面が前記クランプアームの一方の前記遠位端部分から受ける力の延長方向と、(ii)前記幅広部分の他方の前記テーパー面が前記クランプアームの他方の前記遠位端部分から受ける力の延長方向とが、前記幅広部分の近位の後端部で重なる、
インプラント。
【請求項13】
前記取付け部分は、前記挿入器ツールと係合するために前記取付け部分の軸線方向長さを増大させるボスを含む、請求項12に記載のインプラント。
【請求項14】
前記取付け部分は、前記凹部の少なくとも一部を規定し、且つ互いに横方向に延びる前記取付け部分の両側に傾斜面を含み、該傾斜面は、前記クランプアームが前記取付け部分をクランプする際に、前記本体が前記挿入器ツールに向けて移動するように構成される、請求項12に記載のインプラント。
【請求項15】
前記取付け部分は、前記取付け部分の両側に横方向のキャビティを含み、該キャビティは、挿入器器具のクランプアームの突起部を受容し、前記両側の側面部分の第1のペアは前記横方向のキャビティの少なくとも一部を規定する、請求項12に記載のインプラント。
【請求項16】
前記取付け部分はねじ切りされていない、請求項12に記載のインプラント。
【請求項17】
前記環状壁は、前記貫通孔に沿って延びる内面と、該内面の反対側の外面とを有しており、前記環状壁は、前記内面と前記外面との間で前記壁全体に亘って少なくとも約1.524ミリメートル(mm)(0.06インチ)の最小厚さを有する、請求項12に記載のインプラント。
【請求項18】
前記本体は、骨細胞の成長を促進するために約500~約600マイクロメートル(μm)の範囲の平均直径を有する孔を含む、請求項12に記載のインプラント。
【請求項19】
前記環状壁の内面は、前記貫通開口部内に突出する隆起部を含む、請求項12に記載のインプラント。
【請求項20】
前記環状壁は、前記隆起部を分離する複数の交差する経路を含む、請求項19に記載のインプラント。
【請求項21】
前記本体は、開口部と、該開口部内に受容されるマーカーピンとを含み、前記マーカーピンはそれぞれ、前記マーカーピンの周りで互いに間隔を空けて配置された複数のエッジ部を有しており、該エッジ部は、前記本体に係合し、且つ前記マーカーピンを前記本体の開口部に保持する、請求項12に記載のインプラント。
【請求項22】
前記後端部には、前記取付け部分が含まれる、請求項12に記載のインプラント。
【請求項23】
脊椎インプラントであって、当該脊椎インプラントは、
ポリマー材料の積層造形体を含む本体であって、該本体は、遠位の前端部分と近位の後端部分とを有しており、前記本体は、前記前端部分と前記後端部分との間に延びる長手方向軸線を含む、本体と、
該本体の機械加工されていない不規則な表面と、
前記本体の前記機械加工されていない不規則な表面のナノ構造体であって、前記本体の前記機械加工されていない不規則な表面との係合への骨成長を促進するように構成されたナノ構造体と、
挿入器ツールとインターフェース接続するように構成された前記本体の取付け部分であって、前記本体の前記機械加工されていない不規則な表面の表面粗さより粗さの少ない表面粗さを有する取付け部分と、を含み、
前記ポリマー製の本体は、骨成長材料を受容するための前記本体の貫通開口部と、該貫通開口部の周りに延びる環状壁とを含み、
前記本体の前記取付け部分は、
前記貫通開口部に隣接する前記環状壁から近位方向に延びる取付け部材と、
前記取付け部材の両側の側面をクランプアーム同士の間でクランプする挿入器ツールのクランプアームの遠位端部分を受容するように構成された、前記取付け部材の両側の側面に沿って延びる凹部と、
前記本体の前記長手方向軸線に沿った前記貫通開口部
よりも近位方向の前記取付け部材の狭小部分であって、
前記取付け部分の前記狭小部分の遠位の前端部が、前記貫通開口部の近位の後端部を超えて延びておらず、前記取付け部分の前記狭小部分は、前記取付け部材を横切って両側の側面部分同士の間に第1の幅を有する前記両側の側面部分の第1のペアを含み、前記取付け部分の前記狭小部分の両側の側面部分の第1のペアが、前記本体の前記長手方向軸線に沿って前記貫通開口部
よりも近位方向にある前記挿入器ツールのクランプアームの前記遠位端部分によって係合されるように構成される、狭小部分と、
前記貫通開口部から近位方向に離間した前記取付け部材の幅広部分であって、前記狭小部分は前記本体の長手方向軸線に沿って前記幅広部分と前記貫通開口部との中間にあり、前記幅広部分は、前記取付け部材を横切って両側の側面部分同士の間に前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する前記両側の側面部分の第2のペアを含み、
前記幅広部分は前記第2のペアの2つの側面に遠位方向にテーパー面が付けられており、前記クランプアームの2つの前記遠位端部分は近位方向にテーパー面が付けられており、前記幅広部分
の前記テーパー面は、前記クランプアームが前記取付け部分を前記クランプアーム同士の間でクランプしている間に、前記挿入器ツールからの前記本体の分離を防止するために、前記クランプアームの前記遠位端部分
の前記テーパー面と干渉状態になるように構成される幅広部分と、を含
み、
前記干渉状態において、(i)前記幅広部分の一方の前記テーパー面が前記クランプアームの一方の前記遠位端部分から受ける力の延長方向と、(ii)前記幅広部分の他方の前記テーパー面が前記クランプアームの他方の前記遠位端部分から受ける力の延長方向とが、前記幅広部分の近位の後端部で重なる、
脊椎インプラント。
【請求項24】
前記取付け部分は、軸線方向に延びるボスを含む、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【請求項25】
前記本体は、前記貫通開口部内に延びる隆起部を含み、前記本体の前記機械加工されていない不規則な表面は、前記隆起部の表面を含む、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【請求項26】
前記本体は、前記本体の機械加工されていない表面の前記表面粗さよりも粗さの少ない表面粗さを有するノーズ部を含む、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【請求項27】
前記本体は、ポリエーテルケトンケトン(PEEK)で作製され、且つ選択的なレーザー焼結を使用して製作される、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【請求項28】
前記環状壁は、骨の成長に利用できる前記環状壁の表面積を増大させるために、前記貫通開口部内に延びる隆起部を含む、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【請求項29】
前記環状壁は、上部及び下部骨係合部を有し、且つ前記貫通開口部と連通する貫通孔がない、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【請求項30】
前記本体の前記機械加工されていない不規則な表面の前記表面粗さは、平均粗さ30~60の範囲であり、前記取付け部分の前記表面粗さは、平均粗さ900~1100の範囲である、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【請求項31】
前記本体は、
前記貫通開口部の両側に沿って延びる前記環状壁の壁部分であって、各壁部分は、上部骨係合部分と下部骨係合部分とを含む、壁部分と、
前記壁部分を相互接続し、且つ前記貫通開口部を横切って延びる前記本体のウェブと、
当該脊椎インプラントを椎骨同士の間の空間内に挿入する間に、前記ウェブと前記椎骨との接触を避けるために、前記壁の対応する上部及び下部骨係合部分に対してくぼんだ前記ウェブの最上部及び最下部と、を含む、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【請求項32】
前記ナノ構造体の前記山部及び前記谷部は、約125~129ナノメートルの平均的な山部から山部までの距離を有する、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項33】
前記ナノ構造体の前記山部は、約265~282ナノメートルの平均的な山部から山部までの距離を有する、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項34】
前記隆起部は、ダイヤモンド形状を有する、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項35】
前記ナノ構造体は、山部及び谷部を含み、
前記山部及び前記谷部は、約125~129ナノメートルの平均的な山部から谷部までの距離を有する、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【請求項36】
前記ナノ構造体は、約265~282ナノメートルの平均的な山部から山部までの距離を有する、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【請求項37】
前記モノリシックポリマー本体は、ポリエーテルケトンケトン(PPEK)から構成される、請求項1に記載の脊椎インプラント。
【請求項38】
前記
本体は、ポリエーテルケトンケトン(PEEK)
から構成される、請求項23に記載の脊椎インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2017年9月8日に出願された、米国仮特許出願第62/555,966号の利益を主張するものであり、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、埋込可能な医療装置に関し、より具体的には、椎間固定及び/又は固定化のための埋込可能な装置に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの人々は、怪我、病気、又は遺伝的欠陥のために、生涯に亘って背痛を発症する。背中の痛みの原因の1つは、患者の椎間板が関連する脊椎同士の間から外側に膨らんだ場合である。膨らんだ椎間板は脊椎の神経に当たり、痛みを引き起こすことがある。この状況に対処するために、外科医は、椎間板の膨らみを調整するか、椎間板を完全に除去することがある。次に、外科医は、1つ又は複数のインプラントを挿入して、椎骨を分離及び支持する。
【0004】
椎骨を分離及び支持するために使用されるインプラントの1つのタイプは、椎体間固定装置(IBD)である。大抵の場合、IBDには、大きな貫通孔を含む本体があり、その貫通孔の中に骨成長材料を詰めて、椎骨から貫通孔内への骨の内部成長を促進することができる。IBDの1つのタイプは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で作製される。PEEKインプラントは放射線透過性であり、手術後の手術部位のX線観察を妨げないがPEEKインプラントは、PEEKインプラントに対して最小限の骨成長しか示さないことが分かっている。PEEK IBDには、貫通孔内に一連の隆起部があり、各隆起部が貫通孔の周りに連続的に延びる。これらの連続した隆起部は、骨成長材料を貫通孔内に保持する。隆起部は、貫通孔の周りに連続的に延びており、骨成長材料の使用を最大化した。
【0005】
別のタイプのIBDは、チタンコートされたPEEKで作製される。チタンコーティングは、粗面化された外面を有しており、インプラント上での骨の成長を促進する。しかしながら、チタンコーティングは、放射線不透過性であり、手術後の手術部位のX線観察を妨げる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様によれば、椎骨を固定する(fusing)ための脊椎インプラントが提供される。脊椎インプラントは、骨同士の間に挿入されるモノリシック本体と、骨成長材料を受容するための本体の貫通開口部と、貫通開口部の周りに延びる本体の壁とを含む。脊椎インプラントは、骨の成長に利用できる壁の表面積を増やすために、貫通開口部内に延びる壁の隆起部をさらに含む。表面積の増大により、骨がインプラントと結合するための面積がより多くなり、インプラント-椎骨構造の強度が増大する。壁の隆起部は、本体の貫通開口部内に骨成長物質を保持するのにも役立ち、これによりインプラントが椎間腔内に前進し易くなる。
【0007】
一形態では、モノリシック本体は、ポリエーテルケトンケトン(PEEK)を含み、選択的なレーザー焼結を使用して製作される。PEKKの選択的なレーザー焼結による本体の製作は、隆起部の表面を含む本本体の粗面を生成する。例えば、本体の粗面は、山部と、山部同士の間の谷部とに似たナノ構造を有しており、平均的な山部から谷部までの距離は約125~129ナノメートル(nm)であり、平均的な山部から山部までの距離は約265~282nmである。隆起部の表面積の増大と隆起部の表面の粗さとの組合せによって、本体の貫通開口部内での著しい骨癒合の相互作用が促進されることが分かっている。さらに、本体はPEKKで作製されているため、X線に対して放射線透過性があり、外科医が、術後の手術部位をインプラント本体による妨害なしに確認することができる。これは、放射線不透過性であり、且つX線による手術部位の観察を妨げる従来のチタンコートされたPEEKインプラントに対する改善である。このようにして、PEKKインプラント本体は、有意な骨の成長と、術後のインプラントのX線観察を改善する放射線透過性インプラントとの両方を提供する。
【0008】
別の態様では、椎骨を安定化させるために椎間腔に挿入されるインプラントが提供される。インプラントは、骨成長材料を受容するための貫通開口部と貫通開口部の周りに延びる環状壁とを有するモノリシック本体を含む。環状壁には、貫通開口部と連通する貫通孔がない。一実施形態では、モノリシック本体は、PEKKで作製されており、且つ選択的なレーザー焼結を使用して製作される。PEKKは比較的高い強度を有しているが、PEKKは厚さが制限されるとより脆くなる。貫通孔がないことにより、本体の環状壁が強化され、環状壁は、1.524ミリメートル(mm)(0.06インチ)等の薄い壁厚であっても、埋込後の椎骨からの負荷に耐えることができる。
【0009】
本体はまた、環状壁の外側の取付け部分(attachment member)と、取付け部分の両側に沿って延びる凹部とを含む。凹部は、挿入器ツール(inserter tool)のクランプアームを受容するように構成される。挿入器ツールは、クランプアームを取付け部分と係合させることによりインプラントと係合するため、外科医が挿入器ツールを横方向に動かす等して挿入器ツールに加えられる負荷は、取付け部分の両側に沿ってインプラントに加えられる。挿入器ツールから負荷を受け取るために取付け部分の両側を使用すると、挿入器ツールからインプラントへの負荷がより均等に分散され、クランプアームとの係合によるインプラントへの応力集中が最小限に抑えられる。
【0010】
積層造形を使用して製作されたポリマー本体を含む脊椎インプラントも提供される。本体は、積層造形によって製作された本体であるため、機械加工されていない不規則な表面を有する。不規則な表面は骨の成長に積極的に関与し、インプラントと骨との間の係合の強度を高める。本体は、挿入器ツールとインターフェース接続するように機械加工された取付け部分も含む。本体を機械加工することにより、取付け部分の公差を厳しくすることができる。取付け部分は、本体の機械加工されていない不規則な表面の表面粗さよりも粗さの少ない表面粗さを有する。このようにして、インプラントは、骨の成長を促進するための機械加工されていない不規則な表面と、表面粗さの小さい機械加工された取付け部分との両方を有しており、機械加工された取付け部分は、挿入器ツールを適切に係合するために必要な高精度で機械加工された構造を提供する。一実施形態では、プラスチック本体は、PEKKで作製されており、且つ選択的なレーザー焼結を使用して製作される。
【0011】
本開示の別の態様によれば、脊椎インプラント及び挿入器ツールを含む脊椎インプラントシステムが提供される。脊椎インプラントは、前端部と、後端部と、それらの間に延びる長手方向軸線とを有する。後端部は取付け部分を含み、取付け部分は、取付け部分の後端面から軸線方向外側に延びるボスを有する。挿入器ツールはアームを含み、アームは、アームが取付け部分の両側に配置されることを可能にする解放構成と、アームが取付け部分をそれらアームの間にクランプする把持構成とを有する。挿入器ツールは、取付け部分のボスと係合し、且つ挿入器ツールとインプラントとの間の係合の軸線方向長さを増大させるように構成されたソケットも含む。この軸線方向長さを長くすることにより、外科医が挿入器ツールを(例えば、頭側/尾側の方向に)操作する際に外科医が挿入器ツールに加える力は、力をより均等に分散するより長い軸線方向の範囲でインプラントに加えられ、インプラントと挿入器ツールとの間の接続を強化する。
【0012】
本開示は、脊椎インプラントの製造方法も提供する。この方法は、積層造形プロセスを使用して、ポリマー材料で作製された脊椎インプラントの本体を製作するステップを含む。本体は、積層造形プロセスによって生成された第1の表面粗さを有する不規則な外面を含む。この方法は、製作された本体を機械加工して、挿入器ツールとインターフェース接続するための本体の取付け部分を形成するステップをさらに含む。取付け部分は、本体の不規則な外面の第1の表面粗さよりも粗さの少ない第2の表面粗さを有する。製作された本体の不規則な外面は、骨の成長に積極的に関与し、インプラントと骨との間の係合の強度を高める。さらに、製作された本体を機械加工することにより、取付け部分の公差を厳しくすることができる。それにより、この方法は、骨の成長を促進するための粗く不規則な外面と、挿入器ツールとの正確な係合のための滑らかな取付け部分とを有する脊椎インプラントを提供する。
【0013】
別の態様によれば、脊椎インプラントのためのマーカーピンが提供される。マーカーピンは、放射線不透過性材料の本体と、脊椎インプラントの本体の開口部内に適合するサイズの本体の前端部を含む。本体は、前端部に対して半径方向に拡大され、開口部の周りの円周方向に間隔を空けた複数の位置で脊椎インプラント本体に係合し、脊椎インプラントの本体の開口部にマーカーピンを保持するように構成される干渉部分をさらに含む。干渉部分は、円周方向に間隔を空けた位置で脊椎インプラントの本体と係合するため、干渉部分によって引き起こされる局所的な変形を分離する脊椎インプラントの本体の変形していない部分が存在する。これにより、マーカーピンが開口部の周りの脊椎インプラントの本体の材料の変形を少なくし、インプラントをより強くする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】PEKKの選択的なレーザー焼結によってインプラントを製造することにより形成されるインプラントの粗く不規則な表面と、本体の部分を機械加工することにより形成されるインプラントのより滑らかな表面とを示すインプラントの斜視図である。
【
図2】
図1のインプラントの側面図であり、インプラントの側面の隆起部及び経路のパターンを示す。
【
図3】
図2のインプラントの平面図であり、骨成長材料を受容するためのインプラントの貫通開口部の周りに延びるインプラントの環状壁を示す。
【
図4】
図3の線4-4に沿った断面図であり、インプラントの壁の内面上の隆起部及び経路のパターンを示す。
【
図5】
図2の線5-5に沿った断面図であり、挿入器ツールのアーム同士の間にクランプされる取付け部分を示す。
【
図6】
図2のインプラントの背面図であり、挿入器ツールアームを受容する取付け部分の両側の凹部を示す。
【
図7】
図2のインプラントのマーカーピンの斜視図であり、マーカーピンの平坦部及びエッジ部を示す。
【
図8】
図2のインプラントの開口部における
図7のマーカーの平面図であり、マーカーピンのエッジ部が、開口部の周りの間隔を空けた位置でインプラントの本体と係合する。
【
図9】PEKKの選択的なレーザー焼結によってインプラントを製造することにより形成されるインプラントの粗く不規則な表面と、インプラントの滑らかな機械加工された表面とを示す別のインプラントの斜視図である。
【
図10】
図9の線10-10に沿ったインプラントの断面図であり、インプラントの内面上の経路及び隆起部のパターンを示す。
【
図11】
図10の線11-11に沿った断面図であり、インプラントの貫通開口部を横切って延びるインプラントのウェブを示す。
【
図12】
図9のインプラントの背面図であり、挿入器ツールのアームを受容するためのインプラントの取付け部分の両側の凹部を示す。
【
図13】PEKKの選択的なレーザー焼結によってインプラントを製造することにより形成されるインプラントの粗く不規則な表面と、インプラントの滑らかな機械加工された表面とを示すインプラントの斜視図である。
【
図14】
図13のインプラントの平面図であり、インプラントの貫通開口部と、貫通開口部の周りに延びる環状壁とを示す。
【
図15】
図14のインプラントの側面図であり、インプラントの楔状プロファイルを示す。
【
図16】
図14の線16-16に沿った断面図であり、環状壁の内面の隆起部及び経路のパターンを示す。
【
図17】
図15の線17-17に沿った断面図であり、挿入器ツールのアームによってクランプされるインプラントの取付け部分を示す。
【
図18】
図13のインプラントの背面図であり、挿入器ツールアームを受容するための取付け部分の両側の凹部を示す。
【
図19】インプラント本体のエンジニアリングモデルと、このモデルに基づくPEKKの選択的なレーザー焼結から生じるインプラント本体とを示す。
【
図20】PEKKの選択的なレーザー焼結によって製造されたインプラントの本体と、本体を機械加工した後の本体との斜視図である。
【
図21】PEKKの選択的なレーザー焼結によって製造されたインプラントの本体と、本体を機械加工した後の本体との斜視図である。
【
図22】PEKKの選択的なレーザー焼結によって製造されたインプラントの本体と、本体を機械加工した後の本体との斜視図である。
【
図23】選択的なレーザー焼結手順中の
図20のインプラント本体の向きを示す図である。
【
図24】選択的なレーザー焼結手順中の
図21のインプラント本体の向きを示す図である。
【
図25】選択的なレーザー焼結手順中の
図22のインプラント本体の向きを示す図である。
【
図26】PEKKの選択的なレーザー焼結により形成されたピンと隆起部とを含む、外科試験中に埋め込まれた異なるタイプのピンの画像である。
【
図27】被験者から取り除かれた後の
図26のピンインプラントの画像である。
【
図28】
図26のピンと同様の骨内のピンの断面写真であり、PEKKの選択的なレーザー焼結によって形成されたピンインプラントへの最も顕著な骨付着を示す。
【
図29】
図26のピンと同様の骨内のピンの断面写真であり、PEKKの選択的なレーザー焼結によって形成されたピンインプラントへの最も顕著な骨付着を示す。
【
図30】異なる材料の押出し抵抗を示すグラフである。
【
図31】
図1のインプラントを挿入するための挿入器ツールの斜視図である。
【
図32】
図31の挿入器ツールの近位部の断面図であり、インプラントの挿入器ツールへの接続を制御するプランジャー形状の調整ノブと、調整ノブをロック位置に固定するための回転式ロックノブとを示す。
【
図33】
図31の挿入器ツールの遠位部の断面図であり、開位置にある挿入器ツールのクランプアームを示す。
【
図34】
図33と同様の図であり、クランプアームを閉位置に旋回させ、インプラントの取付け部分をクランプアームと挿入器の固定アームとの間でクランプすることを示す。
【
図35】
図34の線35-35に沿った断面図であり、挿入器ツールの遠位端のソケット内のプラグとして受容されるインプラントのボスを示す。
【
図36】
図31の挿入器ツール及び
図2のインプラントの上面図であり、解放位置にある調整ノブと、ロック解除位置にあるロックノブとを示す。
【
図37】
図36と同様の平面図であり、把持位置にある調整ノブと、ロック解除位置にあるロックノブとを示す。
【
図38】
図37と同様の図であり、ロック位置に回転されたロックノブを示す。
【
図39】
図9のインプラントを挿入するための挿入器ツールの正面図である。
【
図40】
図39の挿入器ツールの断面図であり、挿入器ツールのハンドルアセンブリ及びシャフトアセンブリを示す。
【
図41】
図9のインプラントに接続された
図40のシャフトアセンブリの遠位端の断面図である。
【
図42】
図41の線42-42に沿った断面図であり、
図40のシャフトアセンブリのアームのソケット内にプラグとして受容されるインプラントのボスを示す。
【
図43】
図13のインプラントを挿入するための挿入器ツールの斜視図である。
【
図44】
図43の挿入器の遠位端及び
図13のインプラントの断面図であり、インプラントの取付け部分を受容する準備が整った解放位置にある挿入器のアームを示す。
【
図45】
図44と同様の断面図であり、アームをインプラントに固定するためにクランプ位置にある挿入器のアームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、椎骨を安定化させるためのインプラント10が提供される。インプラント10は、ポリエーテルケトンケトン(PEEK)等のプラスチックで作製され得る本体15を有しており、選択的なレーザー焼結等の3Dプリント又は積層造形プロセスを使用して製作され得る。PEKKの選択的なレーザー焼結によるインプラント10の製作は、顆粒粉末のサイズ及び選択的なレーザー焼結プロセスの分解能のために、本体15に粗面12を形成する。粗面12の粗面テクスチャは、図中の点描によって示されている。粗面12は、山部と、山部同士の間の谷部とに似たナノ構造を有しており、平均的な山部から谷部までの距離は約125~129nmであり、平均的な山部から山部までの距離は約265~282nmである。これらのパラメーターは、42N/mの力定数、1×1マイクロメートル(μm)のスキャンサイズ、及び0.5Hzのスキャン周波数で、非接触式カンチレバープローブ(韓国のPark Systems製)を有するXE7原子間力顕微鏡を使用して測定された。
【0016】
粗面は、約530μm等、約500μm~約600μmの範囲の平均孔径を有するマイクロサイズの孔も含む。さらに、インプラント10は、インプラント10の表面12の表面積を増やすマクロサイズ構造である隆起部14及び16を有する。粗い外面12と隆起部14、16との組合せは、以下でより詳細に説明するように、インプラントがPEEK又はチタンプラズマコーティングされたPEEKで作製された場合よりも深いインプラントの骨結合をもたらす。換言すると、粗い外面12及び隆起部14、16によって、より多くの骨細胞がインプラント10により多くに付着することが可能になる。
【0017】
インプラント本体15は、前端部18と、後端部20とを有する。前端部18は、テーパー付きノーズ部22を含み、後端部20は、取付け部分24及び凹部26を含む取付け部分23を含む。本体15は、製作後に機械加工され、ノーズ部22、取付け部分24、及び凹部26、28の特徴を本体15に形成することができる。機械加工されたという用語は、インプラントが固定され、移動する切削部材をインプラントと接触させて、インプラントの本体から材料を除去することを意味することを意図している。機械加工には、ミーリングやターニングセンタを含むCNC機械加工が含まれるが、これらに限定されるものではない。本体15を機械加工してノーズ部22を形成すると、ノーズ部22の滑らかな表面30が形成され、本体15を機械加工して取付け部分24及び凹部26、28を形成すると、滑らかな表面32が形成される。ノーズ部22の滑らかな表面30は、インプラント10を椎間腔内に前進させるのを容易にする。滑らかな表面30、32は、平均粗さ約1000(約1100の二乗平均平方根)等の平均粗さ900~1100の範囲の表面粗さを有する機械加工されていない表面12と比較して、平均粗さ約30~60、又は30~65の二乗平均平方根の表面粗さを有する。それにより、機械加工は、PEKKの選択的なレーザー焼結によって生成される粗面12を形成する不規則性を滑らかにする。
【0018】
取付け部分24及び凹部26、28を本体15に機械加工することにより、取付け部分24及び凹部26、28の幾何学的形状の精度が高くなり、これはPEKKの選択的なレーザー焼結では不可能である。取付け部分24及び凹部26、28の高精度は、取付け部分24が挿入器ツールに適切に固定され得るように、所望の公差を与える。このようにして、インプラント10は、本体15の製作による粗面12と組み合わされ、インプラント10への骨の成長を向上させ、取付け部分24及び凹部26、28の高精度の幾何学的形状によって、インプラント10を挿入器ツールによって確実に掴むのを可能にし、ノーズ部22の滑らかなプロファイルがインプラント10の挿入を改善する。
【0019】
図1及び
図2を参照すると、本体15は、骨成長材料を受容するための貫通開口部35によって形成されるような区画を取り囲む環状壁34を含む。骨成長材料には、オートグラフ(autograph)、アログラフ(allograph)、同種異系骨移植片、脱灰骨基質、ヒドロキシアパタイトが含まれる。環状壁34は、貫通開口部35の両側に互いに間隔を空けて配置された側壁部36、38を含む。側壁部36、38は、パターン42を含む外面40を有する。パターン42は、隆起部14と、隆起部14同士の間の経路44とを含む。隆起部14は、骨が成長する外面40の表面積を増やす。経路44は、側壁部36、38の外面40に沿って骨が成長するための空間を提供する。
【0020】
側壁部36、38はそれぞれ、
図1に示されるように、隆起部16及び経路54を含むパターン52の内面50を有する。隆起部16は、骨の成長のために内面50の表面積を増やし、隣接する椎骨同士の間のインプラント10の設置中に貫通開口部35内の骨成長材料の保持を支援する。経路54は隆起部16同士の間に空間を提供し、外科医が貫通開口部35に骨成長材料を詰め込むときに、その空間に骨成長材料が詰め込まれて保持される。
【0021】
さらに、本体15がPEKKの選択的なレーザー焼結によって製作された後に、本体14を低圧ブラストして、選択的なレーザー焼結プロセスにより残った余分なPEKKを除去することができる。本体15の残ったPEKKは、本体15から砕けた砂の硬化した塊に似ている。低圧ブラストは、平方インチあたり50ポンド等、平方インチあたり20~100ポンド未満の圧力を伴い、ブラスト媒体としてガラス、ビーズ、砂、及び/又はドライアイス粒子を利用する場合がある。経路54は、低圧ブラストプロセスからの粒子が内面50に沿って移動し、内面50から残ったPEKKを除去することを可能にする。例えば、
図4を参照すると、低圧ブラスト粒子は、経路54Aを通って方向104に移動することができる。これにより、低圧ブラスト粒子は、隆起部16の下側等の内面50の届き難い部分から破片を除去することができる。このようにして、経路54は、本体15の製作後の、本体15の洗浄を容易にする。
【0022】
図2を参照すると、環状壁34は、上部骨係合部分55と、下部骨係合部分56とを含む。上部及び下部骨係合部分55、56は、上部及び下部骨係合部分55、56が患者の解剖学的構造に一致するように、0~18°の角度58、60を有するように向き合わせされ得る。それにより、上部及び下部骨係合部分55、56は、本体15がノーズ部22から取付け部分24まで延びるにつれて、互いに向けてテーパーが付けられ得る。上部及び下部骨係合部分55、56は、凹部64によって分離された把持部分62を含む。把持部分62はそれぞれ、後面68と前面70とが出会うピーク部66を有する。ピーク部66は、椎骨の終板に係合するために鋭くしてもよい。把持部分62は、鋸歯、正弦波、ピラミッド、湾曲した歯等の様々な形状を有してもよい。
【0023】
パターン42は、各側壁部36、38の外面40に沿って、上部骨係合部分55から下部骨係合部分56まで延びる。
図2に示されるように、経路44は、格子パターン72を形成する。格子パターン72は、経路44A及び経路44B等の交差経路44を含み、各経路が上部骨係合部分55から下部骨係合部分56に延びる。経路44A、44Bは、直線状及び非直線状を含む様々な形状を有してもよい。例えば、経路44Aは、互いに横方向に延びる第1の経路部74及び第2の経路部76を有してもよい。経路44の1つ又は複数は、湾曲しても、湾曲している部分を有してもよい。
【0024】
交差経路44は、隆起部14の一般的な形状を規定することができる。一形態では、隆起部14はダイヤモンド状の形状を有する。隆起部14Aに関して、隆起部14Aは、側面80、82、84、86を含む周囲に延びる連続した周辺外面を有する。側面80、82及び84、86の対はそれぞれ、互いに対して角度88で向き合わせされる。隆起部14の形状は、パターン42全体に亘って変化し得る。例えば、隆起部14Bは、側面80、82、84、86を有しており、側面80、82、及び84、86の各対は、角度88よりも小さい角度98で向き合わせされる。従って、隆起部14Aは細長いように見え、一方隆起部14Bはより正方形に似ている。
図1及び
図2を参照すると、隆起部14の側面80、82、84、86は、ベース面96に略直交する経路44のベース面96から外側に延びる。
【0025】
図4を参照すると、各側壁部36、38の内面50のパターン52は、隆起部16及び経路54を含む。経路54は、上部骨係合部分55に開口部100と、下部骨係合部分56に開口部102とを含む。パターン52は、隆起部16を分離する凹状のベース面107を含む。開口部100、102により、凹状のベース面107は、本体15の上部と底部との間をずっと延びる。ベース面107及び隆起部16は、経路54を規定する。例えば、経路54Aは、開口部100Aから開口部102Aまで延びる。経路54Aは、骨成長材料が貫通開口部35内で方向104に隆起部16同士の間を移動するのを可能にする。経路54は互いに交差し、十字交差する又は交差する経路54の格子103を形成する。例えば、経路54Bは、上部骨係合部分55から下部骨係合部分56まで延び、経路54Aと交差する。交差する経路54は、隆起部16の一般的な形状を規定する。隆起部16はそれぞれ、経路54のベース面107から延びる連続した周辺表面106を有する。各隆起部16の周辺表面106は、周囲の隆起部16の周辺表面から完全に離間される。隆起部16は、通路54のベース面107から貫通開口部35内に延びる局所的な突起部である。
【0026】
隆起部16Aを参照すると、隆起部16Aの周辺表面106は、コーナーエッジ部110によって相互接続された側面108A、108B、108C、108Dを含む。側面108B、108Dは、互いに対して角度112で延びるように向き合わせされ、側面108A、108Cは、角度112と同様の角度で延びるように向き合わせされる。側面108B、108Cは、互いに対して角度114で延びるように向き合わせされ、側面108A、108Dは、角度114と同様の角度で延びるように向き合わせされる。角度114は角度112よりも大きく、それによって隆起部16Aは本体15の垂直軸線109に沿って引き延ばされる。角度112は約60°であってよく、角度114は約120°であってもよい。側面108A~108Dはそれぞれ、通路54のベース面107に対して貫通開口部35内に斜めに延び得る。これにより、隆起部16が隆起部14よりも貫通孔35内に傾斜して延びるにつれて、隆起部16のより先細りのプロファイルが得られる。斜めに傾斜した側面108A~108Dは、本体15が選択的なレーザー焼結を使用して製作された後に、本体15の低圧ブラスト中に隆起部16から外にデブリを導く傾斜路として機能し得る。これにより、製作後の本体15の清掃がより容易になる。
【0027】
図5及び
図6を参照すると、後端部20は、取付け部分(attachment member:取付け部材)24と、取付け部分(部材)24の両側にある凹部26、28とを含む。凹部26、28は、挿入器ツールのアームを受容する。取付け部分24は、ネック部130とヘッド部132とを有する。ネック部130は、側壁部36、38の側面134、136から凹んでいる。ヘッド部132及びネック部130により、アームの外面が側面134、136から横方向内側にあるか、又は側面134、136と面一となるように、挿入器ツールアームを受容することが許容される。挿入器ツールアームは側面134、136から内側にあるか又は側面134、136と面一であるため、挿入器ツールアームは、インプラント10が椎間腔内に前進する際に、組織又は骨に引っかかるのを回避する。
【0028】
ネック部130は、約4.318mm(0.170インチ)の幅138を有することができ、ヘッド部132は、ヘッド部132がネック部130に対して拡大されるように、約6.096mm(0.240インチ)の幅139を有することができる。幅138は、約2.9972mm(0.118インチ)~約5.0038mm(0.197インチ)の範囲であり、幅139は、約5.0038(0.197)インチ~約7.0104mm(0.276インチ)の範囲であってもよい。幅139の幅138に対する比は、1.3~2.0等の1.1~2.4の範囲であり得、約1.4であり得る。ヘッド部132及びネック部130は、挿入器ツールアームが係合及び掴むための厚いブロック状構造を提供する。側面134、136の間のインプラント10の全幅は、約10.0076mm(0.394インチ)であり得る。
【0029】
取付け部分24は、取付け部分24の後端面144から距離142に亘って長手方向に延びるボス140も含む。後端面144は平坦であってもよく、ボス140は、後端面144から後方に延びる略立方体の形状を有してもよい。ボス140は、挿入器ツールのソケット内に嵌合するプラグとして動作し(
図35参照)、インプラント10と挿入器ツールとの間の係合の長さを増大させる。これは、以下でより詳細に議論するように、より良いトルク抵抗を与えることにより、インプラント10と挿入器ツールとの間の接続の強度を高める。
【0030】
図6を参照すると、インプラント本体15は、凹部26、28を規定する取付け部分24の天井部850、床部852、及び側面851、853を含む。本体15は、天井部850及び床部825を側面851、853に接続するコーナー部855、857を含む。コーナー部855、857は、90°等の比較的鋭いコーナー部である。PEKK材料を機械加工することにより、インプラント取付け部分23のコーナー部855、857は、厳しい公差で形成され得る。さらに、
図6に示されるように、本体15内に横方向内側に延びる幾分U字形の凹部26、28が、挿入器ツールのアームを受容するポケットを提供し、アームの外面が、インプラント10の側面から横方向内側にあるか、又はインプラント10の側面と面一である。
【0031】
図4及び
図5を参照すると、本体15は、マーカーピン124を受容するための貫通開口部120、122を含む。マーカーピン124は、手術部位のX線撮像中のインプラント10の向きを示すために放射線透過性であり得る。
図7に移ると、各マーカーピン124は、上端部150等の後端部、下端部152等の前端部、及び上端部150と下端部152との中間の拡大部154等の干渉部分を有することができる。拡大部154は、開口部120、122よりも大きな半径を有しており、開口部120、122と干渉する。
【0032】
上部分及び下部分150、152は円形断面を有しており、拡大部154は、図示された略長方形断面等、多角形断面等の非円形断面を有する。図示されるように、拡大部154は、平坦部156と、平坦部156を接続するコーナー接合部又はエッジ部158とを含む。マーカーピン124が本体開口部120、122内に受容されると、エッジ部158は開口部120、122の周りの表面と係合して、本体15の材料を変形させ、マーカーピン124を開口部120、122内に固定する。本体15の材料をエッジ部158で変形させることにより、マーカーピン124は開口部120、122の周りの本体のより小さな部分を変形させ、これは開口部120、122の周りで破断する本体15の可能性を減らす。エッジ部158を使用して本体15の材料を局所的に変形させることにより、開口部120、122よりも大きな直径を有する円筒形マーカーピンと比較して、本体15の応力が低減され、マーカーピンは、開口部120、122内に圧入され、マーカーピンの全周に亘って本体10と係合する。
【0033】
例えば、
図8を参照すると、貫通孔122は、開口部122の周りに延びる開口面160を有する。マーカーピン124が開口部122内に前進すると、エッジ部158は表面160に食い込み、各エッジ部158で本体15の局所的変形162を形成する。マーカーピン154がエッジ部158を分離する平坦部156を有するので、インプラント本体15は、局所的変形162を分離する非変形部分164を有する。開口面160の面積をより少なく変形させることにより、開口部120、122を取り囲む本体15の材料の応力が低減するので、インプラント15はより強くなる。
【0034】
上述したように、PEKKは、比較的薄い壁部分36、38等のより小さな特徴では、PEEKよりも脆弱である。環状壁34の強度を高めるために、環状壁34には、内面40及び外面50との間に延びる貫通開口部35と連通する貫通孔がなく、そうでなければ環状壁34に応力集中を生じさせるであろう。従って、環状壁34は、圧縮により強く、インプラント10の耐久性をより高める。大抵の場合、PEEKインプラントの壁に貫通開口部が使用され、この開口部を介して骨が成長するのを許容する。環状壁34は、骨の成長を可能にする開口部を欠いているが、粗い外面12及び隆起部14、16は、貫通開口部なしで有意なインプラント骨結合を提供する。
【0035】
図9を参照すると、インプラント200は、上述したインプラント10と多くの点で類似しているものとして提供され、インプラント10とインプラント200との間の相違が強調される。インプラント200は、前端部204及び後端部206を有する本体202を含む。本体202は、PEKKの選択的なレーザー焼結によって形成され、粗い機械加工されていない表面208を有し得る。後端部206は、取付け部分215と、取付け部分215の両側の凹部214、216とを含む取付け部分213を含む。ノーズ部210及び取付け部分213は、本体210が製作された後に本体202に機械加工され、ノーズ部210及び取付け部分213は、滑らかな機械加工された表面212、217を有する。
【0036】
図9を参照すると、本体202は、貫通開口部221等の区画の周りに延びる環状壁220を含む。貫通開口部221は、骨成長材料を受容する。環状壁220は、横方向側壁222、224を含み、本体202は、横方向側壁222、224の間に延びるウェブ226を含む。環状壁222は、貫通開口部221の少なくとも一部を規定する内面230を有する。内面230は、隆起部232を含む。
【0037】
図10及び
図11を参照すると、インプラント200は、長手方向軸線240、垂直軸線242、及び横方向軸線338を含む。ウェブ226は、横方向軸線338に沿って、軸線240、242に対して直交する等、貫通開口部221を横切って延びる。ウェブ226は、ウェブ226が各横方向側壁222、224の内面230に到達するにつれて外向きに先細りになるベース244を有する。環状壁220は、上部骨係合部分250及び下部骨係合部分260を含む。上部及び下部骨係合部分250、252は把持部分254を含み、各把持部分254は、ピーク部256、前面258、及び後面260を有する。上部及び下部骨係合部分250、252は、把持部分254同士の間に凹部262を含む。ピーク部256は丸くすることができ、前面及び後面258、260も丸くして、上部及び下部骨係合部分250、252の波状表面を形成することができる。
【0038】
ウェブ226は、それぞれ頂面255及び底面257を含む最上部251及び最下部253を有する。最上部及び最下部251、253は、上部及び下部骨係合部分250、252に対して凹んでいる。ウェブ226の最上部及び最下部251、253が凹んでいるので、ウェブ226は、骨同士の間の椎間腔内へのインプラント200の挿入中に骨に接触するのを回避する。これにより、骨に接触し、且つインプラント200が椎間腔内に前進する際に抵抗するインプラント200の表面積が減少する。本体202がPEKKの選択的なレーザー焼結により製作される場合に、本体202は、PEEKのブロックからミーリング加工されたインプラントよりも脆い場合がある。凹んだウェブ226は、外科医が挿入器ツールを介してより少ない力をインプラント200に加えることができるように、インプラント200の前進に対する抵抗を低減し得る。
【0039】
ウェブ226は、横方向軸線338に対して垂直な長方形断面を有してもよく、ウェブ226は、平坦又は丸みを帯びていてもよい頂面255及び底面257を有する。頂面及び底面255、257は、一方の横方向側壁222、224から他方まで延びる。ウェブ226の頂面255及び底面257はそれぞれ、それぞれの上部及び下部骨係合部分250、252の把持部分254のピーク部256から距離261だけ間隔を空けられ得る。インプラント200は、様々な高さ263で提供され得、ウェブ226は、インプラント200の異なる高さ263に対して同じであり得る高さ265を有する。こうして、距離261は、短い高さ263のインプラント200よりも高いインプラント200に対して大きくなり得る。
【0040】
図10を参照すると、環状壁220は、パターン264を含み、且つ隆起部232と、交差又は十字交差する経路268とを含み、これらは格子を形成する。経路268は、上部骨係合部分250に開口部270と、下部骨係合部分252に開口部272とを含む。経路268は、低圧ブラスト粒子がその開口部を移動し、本体202の製作により隆起部232に残った破片の除去を可能にする。経路268は、骨成長材料が貫通開口部221内に詰められるときに、骨成長材料が隆起部232同士の間を移動することも可能にする。隆起部232は、上述した隆起部16と同様の形状を有し、且つ経路268のベース面280から内側に延びる。従って、隆起部232は、環状壁220の内面230の表面積を増やして、骨の成長を改善する。隆起部232はまた、骨成長材料を貫通開口部221内に保持するように動作する。
【0041】
図10及び
図11を参照すると、後端部206は、実質的に平坦な後端面284を含み、取付け部分215は、後端面284から距離292だけ長手方向外側に延びる長方形のボス290を含む。ボス290は、
図42を参照して以下により詳細に議論するように、挿入器ツールのソケットとプラグ差込み係合を形成する。ボス290は、挿入器とインプラント200との間の長手方向の係合長さを増大させて、挿入器からインプラント200への負荷をインプラント200のより大きな部分に分散させ、本体202における応力集中を制限する。前端部及び後端部204、206は、マーカーピン298を受容するための孔296も含む。
【0042】
図11を参照すると、取付け部分215は、挿入器ツールのアームの突起部を受容するためのキャビティ300、302等の補助凹部を含む。取付け部分215は、キャビティ300、302を規定する壁304、306、308を含む。取付け部分215の各側の壁304は、アームが取付け部分215をそのアーム同士の間にクランプするときに、挿入器ツールアームと壁304との間の係合によって、取付け部分215を挿入器ツールに向けてカムで動かすように長手方向軸線240に対して横方向に延びるように向き合わせされる。このようにして、挿入器のアームが取付け部分215をより緊密にクランプするほど、インプラント200は挿入器ツール内により近位方向に押し込まれる。
【0043】
図12を参照すると、本体202は、上部骨係合部分250から下部骨係合部分252まで延びる外側面320、322を含む。一形態では、側面320は側面322よりも高く、インプラント200の一方の側面が他方の側面よりも高くなる。これにより、インプラント本体202を患者の解剖学的構造に一致させることができる。
【0044】
いくつかの形態では、インプラント10の本体15は、PEKK以外の材料及び積層造形を使用して製造される。例えば、本体15は、様々な種類のポリマー及び金属材料で作製してもよい。更なる例には、セラミック、ヒドロキシルアパタイト、チタン、及びPEEKが含まれる。
【0045】
図13を参照すると、頸椎等の椎骨同士の間に位置付けされるインプラント400が提供され、このインプラント400は、多くの点で上述したインプラント10、200と同様である。インプラント400は、PEKKの選択的なレーザー焼結により製作され得る本体402を有しており、その結果、本体402の粗い外面404が生じる。本体402は、前端部406及び後端部408を含む。後端部408は、凹部410、412と、凹部410、412の中間の蟻継ぎ突起部414等の取付け部分とを含む。凹部410、412及び蟻継ぎ突起部414は、本体402に機械加工される。これにより、後端部408が滑らかに機械加工された表面416を有することになる。
【0046】
本体402は、骨成長材料を受容するための貫通開口部422等の区画を取り囲む環状壁420を含む。環状壁420は、上部骨係合部分424及び下部骨係合部分426を含む。環状壁420は、上部骨係合部分424から下部骨係合部分426まで延び、且つ貫通開口部422の周りに中断することなく延びる。中断することなく延びることにより、内面430から外面438まで延びる、貫通開口部422と連通する貫通孔がないことを意味することを意図している。これは、応力集中特徴を制限することにより環状壁420の強度を高める。
【0047】
図15を参照すると、上部及び下部骨係合部分424、426は複数の把持部分440を含み、各把持部分440は、丸みを帯びたピーク部442と、丸みを帯びた前面及び後面444、446とを有する。それにより、把持部分440は、上部及び下部骨係合部分424、426に沿って波状の形状を有する。上部及び下部骨係合部分424、426は、本体202の長手方向軸線454に対して角度450、452を有するようにテーパーが付けられる。インプラント200のこのテーパー付きプロファイルは、インプラント200を椎骨同士の間に挿入するのを助ける。
【0048】
図16を参照すると、環状壁420の内面430は、本体402の中心の垂直軸線450の周りに延びる。環状壁420は、隆起部432と、十字交差又は交差する経路434とを含む。隆起部432及び経路434は、上述した隆起部16、232及び経路54、268に類似する。隆起部432は、内面430に沿って変化するサイズを有する。例えば、隆起部432は、環状壁420の上面452の近くでサイズが切り取られ又は縮小された隆起部432Aを含む。隆起部432は、隆起部432Aより大きい隆起部432Bを含むが、隆起部432Cと比較して部分的にサイズが切り取られ又は縮小されている。隆起部432Cは、環状壁420の中央部に向けてより多く存在し、切頭されておらず、完全なダイヤモンド形状を有する。本体402は、マーカーピン458を受容する1つ又は複数の孔456も含み得る。
【0049】
図17を参照すると、蟻継ぎ突起部414は、傾斜壁460、462と、傾斜壁460、462に対して横方向に延びる壁464、466とを含む。蟻継ぎ突起部414は、挿入器ツールのアームからの圧縮力を受けるために厚い構造を提供する。さらに、壁464、464は、挿入器ツールの表面に当接して、外科医がインプラント400を椎間腔内に押し込む木槌で挿入器ツールを叩いたことによる衝撃等の、挿入器ツールからの衝撃を吸収することができる。
図18に示されるように、本体402は、凹部410、412の上部及び下部境界を形成する天井部470及び床部472を含む。
【0050】
図19を参照すると、インプラント400の本体402を製作するプロセスは、選択的なレーザー焼結マシンの動作を制御するコンピュータにモデル504を提供するステップを含む。コンピュータは、モデル504を使用して、マシンのレーザーを誘導してPEKKのベッドの粒子を層に融合させ、次々に層を徐々にプリントすることによりプリント本体402Aを形成する。マシンは、PEKKの粒子を最初に融合してスキンダウン面(skin down surface)500を形成することにより、本体402の層の構築を開始する。マシンは、マシンがプリント本体402Aのスキンアップ面(skin up surface)502に到達するまで方向501に別の層の下に層を徐々に形成する。PEKKベッドの粒子を溶融するために使用される焼結方法により、プロセスは、スキンダウン面500よりもスキンアップ面502で解像度がより低くなり得る。より具体的には、レーザーは、レーザーが第1の層、すなわち、プリント本体402Aのスキンダウン面500を形成し始めるときに、最も多くのエネルギーでPEKKベッドの粒子に当たる。より多くの粒子が第1の層の上のベッドに追加され、レーザーは第1の層の上の第2の層を形成するように誘導される。このプロセスは、スキンアップ面502を含む最終層が形成されるまで繰り返される。レーザーは、2番目以降の層を形成するときにエネルギーが少なくなるため、これらの層の精度は第1の層よりも高くなる。
【0051】
これを補償するために、選択的なレーザー焼結マシンに関連するコンピュータに提供されるモデル504は、選択的なレーザー焼結から生じるプリント本体402Aが所望の幾何学的形状を有するように、誇張された形状を有し得る。例えば、モデル504は、選択的なレーザー焼結から生じる本体402Aの把持部分440の山部から谷部までの高さ510よりも高い山部から谷部までの高さ508を有する下部把持部分506を有することができる。換言すれば、選択的なレーザー焼結マシンに提供されるモデル504の把持部分506は、3Dプリントプロセスから生じる把持部分440よりも誇張されている。高さ508、510の違いは、スキンダウン面502の解像度が低いためであり、把持部分440を把持部分506よりも小さくする。インプラントの他の特徴は、選択的なレーザー焼結マシンに提供されるモデル504で強調又は縮小され得る。例えば、把持部分506のピーク部512の曲率は、プリント本体402Aのピーク部442の曲率と異なってもよい。
【0052】
図20を参照すると、選択的なレーザー焼結マシンは、プリント本体402Aを製造する。プリント本体402Aは、把持部分440、隆起部432、及び貫通開口部422を含む。次に、プリント本体402Aを機械加工して520、選択的なレーザー焼結プロセスによって提供されるよりも高い精度を必要とする構造的な詳細をプリント本体402Aに与える。例えば、凹部412、416及びマーカーピン孔456が、プリント本体402Aに機械加工されて本体402を製造する。凹部412、416を3D本体402に機械加工するプロセスは、本体402の滑らかな機械加工された表面416を生成する。
【0053】
図21を参照すると、本体15の製作は、PEKKの選択的なレーザー焼結によりプリント本体15Aを製造するステップを含む。プリント本体15Aは、把持部分62、隆起部14、16、及び貫通開口部35を含む。プリント本体15Aを機械加工して530、ノーズ部22、凹部26、28、ボス140、後端面144、及びマーカーピン開口部120、122をプリント本体15Aに形成する。これにより、上述した本体15が製造される。機械加工530は、本体15の滑らかな機械加工された表面30、32を与える。
【0054】
図22を参照すると、本体202の製作は、PEKKの選択的なレーザー焼結によりプリント本体202Aを製造するステップを含む。プリント本体202Aは、貫通開口部221、ウェブ226、把持部分254、及び隆起部232を含む。次に、プリント本体202を機械加工して540、ノーズ部210、凹部214、216、後端面284、及びボス290を本体202Aに形成する。機械加工540は、滑らかな機械加工された表面212、217を与える。
【0055】
図23、
図24、及び
図25を参照すると、PEKKベッドの粒子を選択的にレーザー焼結することによるインプラント本体の製作中のインプラント本体がそれぞれの向きで示されている。
図23に示されるように、プリント本体402Aは、スキンアップ面500及びスキンダウン面502が把持部分440を含むように位置付けされる。
【0056】
図24を参照すると、選択的なレーザー焼結プロセス中のインプラント本体の向きは、インプラント本体の機械加工によって除去される領域にインプラント本体の低精度部分を位置付けするように選択することができる。例えば、プリント本体15Aは、スキンアップ面550がプリント本体15Aの後端部20にあり、スキンダウン面554が本体15Aの前端部18にあるように位置付けすることができる。上述したように、プリント本体15Aは、ノーズ部22、凹部26、28、ボス140、及び後端面144を形成するために機械加工される(530)。プリント本体15Aが、これらの特徴を前端部及び後端部18、20に形成するように機械加工されるため、スキンアップ面550及びスキンダウン面554における不正確さは、機械加工プロセスによって排除される。
【0057】
図25を参照すると、プリント本体202Aは、プリント本体202Aの後端部206がスキンアップ面562にあり、前端部208がスキンダウン面568にあるように位置付けされ得る。このようにして、凹部214、216、ボス290、及びノーズ部210がプリント本体202Aに機械加工されると、スキンアップ面562及びスキンダウン面568で発生する不完全性は機械加工によって除去される。さらに、本体202Aを垂直方向又は水平方向ではなく斜め(対角)の経路に沿ってプリントするように向き合わせすることにより、選択的なレーザー焼結プロセスから生じ得る本体202Aの意図しない湾曲が低減される。
【0058】
図26を参照すると、上述したインプラント10、200、400によって提供される骨融合(固定)特性の理解を提供するために試験が行われた。試験には、ヒツジの生体内の骨欠損の研究が含まれていた。この研究は、チタンコーティングPEEKインプラント600、非コーティングPEEKインプラント602、PEKK材料の選択的なレーザー焼結により製造されたインプラント604を含むインプラントの生体力学的押出し強度、骨石灰化(bone apposition)及び骨面積を評価するために設計された。インプラント600は、チタン材料の粗い外面を有していた。インプラント604は、ダイヤモンド形状の隆起部606と、隆起部606を分離する経路608とを含んでいた。インプラント604が、PEKKの選択的なレーザー焼結によって製造されたため、インプラント604は、上述したインプラント10、200、及び400の粗い外面に類似した粗い外面610を有していた。
【0059】
インプラント600、602、604は、外径が6mmで全長が30mmの円筒形状であった。インプラント600、602、604は、羊の遠位大腿骨にランダムに配置され、8週間又は16週間に亘って治療に使用することができた。各タイプのインプラント600、602、604の6つのインプラントを各期間に亘って埋め込み、押出し試験では期間に亘ってインプラントタイプ毎に3つのサンプルを分析し、組織学的分析では3つのサンプルを分析した。組織学的分析には、走査型電子顕微鏡法及び光学顕微鏡法を使用した線維症及び免疫応答の評価が含まれていた。生体力学的押出し試験も実施し、押出し力のピークを評価した。
【0060】
画像化及び組織学的分析により、インプラント600、602、604を取り囲む新しい生存可能な骨が示された。骨芽細胞の活動は、骨が生存可能であり、3つのインプラントタイプ全てで補綴骨周囲の領域で活発にリモデリングすることを示唆した。補綴周囲領域の骨面積は、インプラント604で26.7から40.1%、インプラント600で14.9から35.4%、インプラント602で40.1から47.6%に増大した。骨組織及び成熟は8から16週の時点の間で進行した。
【0061】
補綴周囲領域は、全てのグループで海綿骨及び骨髄空間の同様の分布を有していたが、インプラント602を使用したグループは、インプラント周囲で高い線維性膜形成を示した。骨石灰化は、16週間までにインプラント604で埋込み面積の3.6%から34.1%に増大し、インプラント600で10.5%から52.3%に増加し、インプラント602で40%から16%に減少した。インプラント604及び600が骨に近接して埋め込まれた場合に、優れた骨結合が達成された。インプラント602は、機械的インターロックが制限された「スポット溶接状」骨結合をより多く示した。どのインプラントタイプに対しても副作用は観察されなかった。
【0062】
組織学的分析は、インプラント604を製作するためにPEKKの選択的なレーザー焼結から生じる隆起部606及び粗い外面610を含むインプラント604のトポグラフィーが、インプラント600、602とは異なり8週間の時点を超えて進行性骨成長のためのより大きな領域を提供することを示した。インプラント604の骨の内部成長は、表面トポグラフィーに従い、インプラント604の微小孔を充填し、インプラント604の優れた骨誘導特性を実証した。
【0063】
押出し強度は、インプラント604及び600で8週までに著しく増加し、これは早期且つ急速な骨結合を示している。インプラント604のグループの全体的なピーク力(2819.9N)は、インプラント602のグループ(230.0N)よりも10倍以上高く、16週の終了時点までにインプラント600のグループ(4682.9N)よりも約40%低かった。押出し試験の結果は、
図30のグラフ640に提供される。
【0064】
図27は、16週の終了時点での押出し試験中に除去されたインプラント600、602、604の写真を含む。押し出されたインプラント604に付着した豊富な海綿骨は、インプラント604の有意な骨結合の組織学的観察をサポートし、インプラントと宿主骨(host bone)との間の結合が天然の海綿骨の破壊点よりも強いことを示唆した。
【0065】
一方、インプラント600には、最小限の骨量しか付着していなかった。インプラント602には骨が付着していなかった。
【0066】
図28の
図28A~
図28C及び
図29の
図29A~
図29Cを参照すると、この研究は、インプラント600、602、604の16週の終了時点の後に光学顕微鏡検査を行うことを含んでいた。
図28A~
図28C及び
図29A~
図29Cは、骨石灰化及び内部成長を示すインプラント600、602、604の断面図である。
図29A~
図29Cは、インプラント600、602、604の周りの骨髄空間613及び骨614を示している。インプラント600は、線維結合組織の内部成長が最小の骨石灰化であった。インプラント602は、骨とインプラント602との間に繊維結合膜611の大きな領域と、インプラント602に縫い込む骨614の局所的領域612のみとを有していた。インプラント604は、インプラント604の表面構造への骨の内部成長を有しており、その表面構造は、インプラント604のトポグラフィーを良好な骨石灰化で充填した。インプラント604のトポグラフィー内への骨の内部成長は、隆起部606を取り囲み係合する骨614だけでなく、インプラント604の粗い外部表面610の孔618を充填し係合する骨614も含んでいた。
【0067】
要するに、インプラント604は、インプラント600と同様に、遠位大腿骨の海綿骨への優れた骨結合を伴うインプラント602よりも優れた骨誘導特性を示した。インプラント604と比較して、インプラント604、600には殆ど線維形成がないか最小であった。隆起部602及び粗い外面610を含むインプラント604のタイポグラフィは、インプラント600、602のような石灰化の代わりに新しい骨の内部成長により生じた優れた骨の内部成長及び海綿骨への統合を示した。ピーク押出し力は、インプラント604、600に関して経時的に著しく増大したが、インプラント602に関しては増大しなかった。インプラント604は、チタンコーティングにより放射線不透過性となるインプラント600とは異なり、診療所で使用される通常のイメージング方法(X線等)との干渉を示さなかった。
【0068】
PEKKの選択的なレーザー焼結によって製作されたインプラントは、従来のPEEKインプラントと比較してより優れた抗菌特性を有することも発見された。特に、細菌及びバイオフィルムの形成は、これらの2種類のインプラントについて研究された。この研究で使用された細菌細胞株は、表皮ブドウ球菌及び緑膿菌であった。蛍光共焦点顕微鏡を使用して、目的のサンプル上の細菌のコロニー形成を視覚化した。この研究の結果は、これら2つの細菌の両方が、PEEK材料と比較して、ナノ機能PEKK材料基板上で付着し、増殖することが少ないことを明らかにした。特に、PEEKインプラントのグラム陽性細菌(表皮ブドウ球菌)と比較すると、グラム陰性細菌(緑膿菌)はPEKKインプラントに付着し、増殖することが少なかった。より具体的には、PEKKインプラントは、PEEKインプラントと比較して、緑膿菌に対して55%以上の抗菌効果を示し、表皮ブドウ球菌に対して40%以上の抗菌効果を示した。PEKKインプラントのナノ粗面は表面エネルギーを変化させ、バクテリアの付着及び増殖を抑制するのに重要な選択されたタンパク質の吸収を強化すると考えられている。
【0069】
図31を参照すると、外科用通路を通って椎骨同士の間の位置にインプラント10を前進させるための挿入器ツール700が提供される。挿入器ツール700は、インプラント10を選択的に係合するための遠位端部702と、ハンドル706を有する近位端部704とを含む。挿入器ツール700は、旋回式クランプアーム708及び固定アーム710を支持するシャフトアセンブリ705を含む。挿入器710は、調整ノブ712等のアクチュエータを含み、このノブ712は、方向714でハンドル706に向けて開位置に動かして、クランプアーム708を解放位置に旋回させることができる。これにより、ユーザが、インプラント10の取付け部分24をアーム708、710の間に位置付けすることができる。次に、ユーザは、方向716でハンドル706から離れる閉位置に調整ノブ712を動かしてクランプアーム708をクランプ位置に旋回させ、取付け部分24をアーム708、710の間でクランプする。挿入器ツール700は、ユーザが方向722に回転して調整ノブ712を閉位置にロックすることができる、本体739を有するロックノブ720を含む。これは、確実な機械的ロックを提供して、アーム708がアーム710から離れる動きに抵抗し、遠位端部702とインプラント10との間の接続を維持する。
【0070】
図32を参照すると、シャフトアセンブリ705は、外側スリーブ730と、このスリーブ730内の内側シャフト732とを含み、内側シャフト732は、クランプアーム708を旋回させる方向714、716に移動可能である。挿入器ツール700は、外側スリーブ730に解放可能に固定される後部シャフト734を含む。ロックノブ本体739は、後部シャフト734の雄ねじ738と係合する雌ねじ736を有する。ロックノブ720は、本体739に接続されるノブキャップ740を含む。
【0071】
調整ノブ712は、後部シャフト734の軸線方向の細長い開口部を通って且つ内側シャフト732の非軸線方向の細長い開口部746を通って延びるピン742を含む。こうして、調整ノブ712が方向714に動かされると、ピン742は、調整ノブ712の動きを方向714の内側シャフト732の動きに移す。後部シャフト734の細長い開口部によって、ピン742が後部シャフト734内の所定の可動域内で移動することが可能になる。
【0072】
ロックノブ720は、調整ノブ712の遠位端部745の周りに延びるリング743を収容する。ピン742は、リング743の非軸線方向の細長い開口部内に受容される端部を有する。それにより、ピン742は、リング743、調整ノブ712、及び内側シャフト732を接合し、それによりリング743、調整ノブ712、及び内側シャフト732が、一緒に方向714、716に移動する。
【0073】
ノブ712及び内側シャフト732を方向714に動かすと、後部シャフト734のキャビティ752内に受容されたバネ750がさらに圧縮される。バネ750は、調整ノブ712及び内側シャフト732をその開位置に動かすために、外科医がバネ750をさらに圧縮しなければならないような閉位置に調整ノブ712及び内側シャフト732があるときに、部分的に圧縮され得る。外科医は、調整ノブ712を開位置に保持して、アーム708をその解放位置に旋回させたままにする。
【0074】
一形態では、クランプアーム708は、排出クランプ780の一部である(
図33を参照)。外科医がインプラント取付け部分24をアーム708、710の間に位置付けすると、外科医は調整ノブ712を解放する。バネ750は、内側シャフト732及び調整ノブ712を方向716に遠位方向に付勢し、これにより排出クランプ780を方向798に旋回させ、アーム708、710に、インプラント取付け部分24をそれらアームの間でクランプさせる。
【0075】
排出クランプ780及びそのアーム708をクランプ位置にロックするために、外科医は、ロックノブ720を方向722に回転させ、ロックノブ720を方向716に遠位方向に移動させる。ロックノブキャップ740は、リング743に当接し且つリング743/ピン742アセンブリを方向716に付勢するフランジ747を有する。外科医は、ロックノブ720のねじ山736、738と外側シャフト734との間の係合が、ピン742を方向716に付勢するフランジ747を保持するように、ロックノブ720を方向722に締め付ける。このようにして、ロックノブ720を方向722に締め付けると、ロックノブフランジ740が、ピン742、内側シャフト732、及び調整ノブ712を方向714に移動させるのを抑制し、アーム708をその解放位置で旋回可能にする。これにより、外科医がロックノブ720を方向723に回転させてロックノブフランジ740を方向714に動かすまで、アーム708をそのクランプ位置にロックし、これは、フランジ747をピン742から後部シャフト734に軸線方向上向きに離して、ピン742が方向714に移動するスペースを提供する。
【0076】
図32を参照すると、ハンドル706は、ハンドル外側部分770と、ハンドル内側部分772と、ハンドル外側部分770及び内側部分772を後部シャフト734に接続するハンドルアダプタボルト774とを含む。ハンドル706は、ハンドル内側部分772を後部シャフト734に固定するためのハンドルロックナット776及びスペーサ778を含む。
【0077】
図33を参照すると、一形態では、排出クランプ780は突起部782を有する。排出クランプ780が方向799に旋回すると、突起部782はインプラント取付け部分24のヘッド部132に接触し、インプラント取付け部分24をアーム708、710の間から押し出し、これは、挿入器ツール700をインプラント10から接続解除する際に外科医を支援する。
【0078】
図33に示されるように、外側スリーブ730はクランプハウジング784を含み、固定アーム710は、クランプハウジング784と一体的に形成される。挿入器の遠位端部702は、排出クランプ780をクランプハウジング784に旋回可能に接続するピン786を含む。挿入器の遠位端部702は、排出クランプ780を内側シャフトの端部790に接続するピン788をさらに含む。内側シャフト732は、内側シャフト732の近位部794と比較して断面厚さが減少した可撓性部分792を含む。可撓性部分792は、内側シャフト732が方向714に近位方向に動くと、排出クランプ780の方向799への旋回を補償するために曲がることができる。反対に、内側シャフト732が遠位方向716に移動すると、排出クランプ780が方向798に旋回する。シャフト732、スリーブ730、アーム710、クランプ780を含む挿入器ツール700の構成要素は、17-4又は465ステンレス鋼等のステンレス鋼で作製してもよい。
【0079】
図34を参照すると、アーム708、710及びインプラント10は、インプラント10をアーム708、710に固定するように構成された嵌合部分を有し、アーム710は取付け部分24をそれらアームの間にクランプする。嵌合部分は、挿入器ツール700とインプラント10との間に確実な機械的インターロックを提供し、インプラント10が挿入器ツール700によって正しく確実に把持されることを保証する。例えば、アーム708、710は、取付け部分24のヘッド部132及びネック部130によって形成された凹部737内に適合するように構成された突起部735を有してもよい。アーム708、710は、取付け部分24のネック部130及びヘッド部132の表面741に従う表面739を有する。このようにして、インプラント10は、挿入器の遠位端部702にロックされ、且つ通常、遠位端部702に対してねじれたりスライドしたりすることはできない。
【0080】
取付け部分24は、取付け部分24のヘッド部132の両側にテーパー面804を含み、アーム708、710の突起部735は、表面804に係合するテーパー面806を含む。表面804、806は、インプラント10の長手方向軸線113に対して傾斜している。
【0081】
図34では、内側シャフト732は、排出クランプ780をそのクランプ位置に旋回させるために、方向716に遠位方向に移動されている。排出クランプ780のクランプアーム708は、インプラント取付け部分24をアーム710に対して圧縮する。この圧縮は、取付け部分24のヘッド部132の表面804をアーム708、710の表面806に対して付勢する。表面804、806は、インプラント10の長手方向軸線113に対して横方向に延びる。表面804、806の係合は、取付け部分24を近位方向714に付勢し、インプラントの後端面144をクランプハウジング784の上部820、及び下部822に押し付ける(
図35参照)。このようにして、取付け部分24の材料は、アーム708、710の突起部735とクランプハウジング上部820、及び下部822との間で概ね圧縮される。
【0082】
インプラントの取付け部分24及びアーム708、710の係合面804、806はまた、本体15の長手方向軸線26に対して斜めの対角経路に沿った挿入器ツール700の操作による取付け部分24の圧縮を誘導する。より具体的には、インプラント10が椎骨同士の間で部分的に前進したときに挿入器ツール700を横方向821に操作すると、横断経路809に概ね沿って取付け部分24が圧縮される。圧縮は、取付け部分24で遠位方向に押すアーム710と、取付け部分24で近位方向に押すアーム708とに少なくとも部分的に基づくものである。横断経路809は、アーム708の突起部735から取付け部分の後端面144まで延びる。同様に、挿入器ツール700を横方向823に操作すると、取付け部分24の圧縮が、アーム710の突起部735と後端面144との間の横断経路810に概ね沿って作用する。挿入器ツール700が方向821、823に操作されたときに、クランプアーム708、710のみが取付け部分24を横切る横方向経路で圧縮を受けた場合に、このような圧縮は、取付け部分24の距離812を介して作用するであろう。
図34に示されるように、横断経路810に沿った距離816は距離812よりも大きい。これは、挿入器ツールが方向821、823に操作されるときに、取付け部分24の材料のより大きな厚さが、表面804、806間の係合によって圧縮力を受けることを意味する。圧縮力を受ける取付け部分24の材料を増大させることにより、取付け部分24を強化して、挿入器ツール700の操作中の負荷に耐えることができる。
【0083】
図35を参照すると、クランプハウジング784の上部及び下部820、822は、インプラント10のボス140を受容するためのソケット824を規定する。これは、挿入器ツール700からインプラント10に負荷を伝達できる対向面826、828及び830、832を形成する。より具体的には、上部及び下部骨係合部分55、56が椎骨同士の間の空間の途中に位置付けされ、外科医がハンドル706を方向840に持ち上げると、表面826、828及び830、832が当接し、挿入器ツールシャフト705からインプラント10に負荷を伝達できる。これにより、ボス140は、インプラント10の長手方向軸線113に沿ってインプラント10と挿入器ツール700との間の係合の軸線方向長さを増大させる。シャフト705を方向840に持ち上げることによる負荷は、アーム708、710を本体15の天井部850及び床部852(
図6を参照)に押し付けるによってインプラント10にも伝達される。
【0084】
図36、
図37、及び
図38を参照すると、インプラント10を挿入器ツール700に接続する方法が提供される。
図36に示されるように、最初に、ロックノブ720はロック解除位置にあり、調整ノブ712は、方向714に近位側の開位置に移動されている。これにより、クランプアーム708が解放位置に旋回する。次に、インプラント10を方向714に前進させて、取付け部分24をアーム708、710の間に位置付けすることができる。次に、
図37に示されるように、調整ノブ712を解放し、バネ750は、内側シャフト732及び調整ノブ712を方向716に遠位方向に押す。内側シャフト732の方向716への移動により、アーム708が方向798に旋回し、取付け部分24をアーム708、710の間にクランプする。
図37に示されるように、アーム708、710は、インプラント10のエンベロープ内にあり、且つインプラント10から横方向外側に延びておらず、これにより、インプラント10を患者内に容易に前進させることができる。
【0085】
次に、
図38に示されるように、ロックノブ720は、ロック方向722に回転される。これにより、ロックノブ720が方向716に移動し、ロックノブフランジ720がリング747と接触し、リング747に接続されたピン742及び内側シャフト732が方向714に移動するのを阻止する。これによりクランプアーム708がクランプ位置にロックされ、アーム708、710を保持し、インプラント取付け部分24をそれらアームの間にクランプする。
【0086】
図39を参照すると、インプラント200を椎骨同士の間に位置付けするための挿入器900が提供される。挿入器900は、ハンドルアセンブリ902と、ハンドルアセンブリ902のクイック解放機構906によってハンドルアセンブリ902に解放可能に接続されるシャフトアセンブリ904とを含む。シャフトアセンブリ904は、制御ノブ912を有する近位端部910と、アーム916、918を有する遠位端部914とを含む。
【0087】
図40を参照すると、ハンドルアセンブリ902は、シャフトアセンブリ904の駆動部材922を受容するソケット920を有する。クイック解放機構906は、バネと、バネによって方向932の保持位置に付勢されるスリーブ930とを含む。スリーブ930が保持位置にあるとき、スリーブ930は、戻止めボールが駆動部材922の取り外しに抵抗するように、クイック解放機構906の戻止めボールを半径方向内側に移動させる。シャフトアセンブリ904をハンドルアセンブリ902から解放するために、バネの付勢に抗してスリーブ930を方向934に移動させ、これは、戻止めボールが半径方向外側に移動することを可能にし、駆動部材922をソケット920から引き抜くことができるようにする。
【0088】
シャフトアセンブリ904は、外側スリーブ940と、内側シャフト942とを含む。内側シャフト942は、ノブ912と螺合する。内側シャフト942は、弾性フォーク部材946、948を有する挿入器フォーク944に接続され、フォーク部材946、948は、ギャップ950だけ互いに分離される。フォーク部材946、948は、アーム916、918を含む。アーム916、918を互いに向けて移動させるには、ノブ912を方向952に回転させて、挿入器シャフト952を方向934に近位方向に引く。挿入器シャフト942の方向934の近位方向への移動は、外側スリーブ940の表面960、962とフォーク部材946、948との間のカム係合を生じさせる。このカム係合は、アーム916、918を互いに向けて移動させる。挿入器アーム916、918をインプラント200から解放するには、ノブ912を反対方向952に回転させて、内側シャフト942及び挿入器フォーク944を遠位方向に移動させ、フォーク部材946、948の弾性特性によってアーム916、918を離れる方向に付勢する。
【0089】
図41を参照すると、挿入器ツール900は、挿入器ツール700とインプラント10との間の係合と同様の方法でインプラント200と係合する。アーム916、918は、キャビティ300、302内に延び、且つ取付け部分215の壁961と嵌合する突起部963を有する。アーム916、918は、インプラント200の壁964に沿って延びるチップ962も含む。アーム916、918は、取付け部分215の表面968を押し付けて係合する内面966も含む。
【0090】
図42を参照すると、挿入器700、900間の1つの違いは、挿入器900が、外側スリーブ940ではなくアーム916、918によって規定されるソケット980を有することである。ソケット980は、インプラント200のボス290と係合して、インプラント200と挿入器900との間の接続の強度を高める。ソケット980は、ボス290の表面984、986に接触し、且つインプラント200と挿入器900との間の係合の長手方向の範囲を増大させる表面982、988を含む。アーム916、918はまた、本体202の天井部990及び床部992(
図12を参照)と係合して、シャフトアセンブリ904を方向996に持ち上げることによる負荷をインプラント200に伝達する。
【0091】
図43を参照すると、インプラント400を位置付けするための挿入器ツール1100が提供される。挿入器ツール1100は、多くの点で、上述した挿入器ツール700、900と類似しており、挿入器同士の間の相違について説明する。挿入器ツール1100は、回転式ハンドル1104を含む近位端部1102と、インプラント400を解放可能にクランプするためのアーム1108、1110を含む遠位端部1106とを有する。挿入器ツール1100は、外側シャフト1114及び内側シャフト1114を有するシャフトアセンブリ1112を含む。ハンドル1104を方向1118に回すと、内側シャフト1116が方向1120に近位方向に引っ張られる。内側シャフト1116は、アーム1108、1110を含む弾性フォーク部材1122、1124を含む。内側シャフト1116を方向1120に近位方向に移動させると、アーム1108、110の表面1130と外側シャフト1114の遠位端部1134の表面1132との間にカム係合を生じさせる。これにより、アーム1108、1110を方向1140、1142に一緒に付勢して、インプラント400の蟻継ぎ突起部414をそれらアームの間にクランプする。逆に、ハンドル1104を方向1118と反対の方向に回すと、内側シャフト1116が方向1144に遠位方向に移動し、フォーク部材1122、1124の弾性によりアーム1108、1110を離れる方向移動させる。
【0092】
アーム1110、1112は、蟻継ぎ突起部414の両側の凹部410、412に位置付けされた突起部1150を含む。
図45を参照すると、ハンドル1104を方向1118に回すと、内側シャフト1116が方向1120に近位方向に付勢され、アーム1108、1110が蟻継ぎ突起部414に係合する。アーム1108、1110は、アーム1108、1110の間に蟻継ぎ凹部1160を形成する形状であり、この蟻継ぎ凹部1160は、蟻継ぎ突起部414と嵌合する。さらに、突起部1150は、蟻継ぎ突起部414の傾斜面1164と係合し、且つアーム1108、1110が蟻継ぎ突起部414をそれらアームの間でクランプする際にインプラント400をアーム1108、1110と緊密に係合させるよう付勢する傾斜面1162を有する。
【0093】
アーム1108、1110は、インプラント400の壁464、466に当接する平坦部1170を含む。インプラント400の挿入中に、外科医は、ハンマーでハンドル1104の近位端1180を叩き、挿入器1100は、この衝撃を平坦部1170と壁464、466との間の係合によってインプラント400に対して伝達する。
【0094】
本発明の特定の実施形態を図示し説明してきたが、多数の変更及び修正が当業者には想起されることが理解され、本発明はそれらの変更及び修正を全て網羅することが意図されており、それらの変更及び修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれる。