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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】クリーン外気供給装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/003 20210101AFI20240717BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240717BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240717BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20240717BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F24F7/003
F24F7/007 B
F24F13/02 D
F24F13/14 D
F24F13/15 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021017674
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2021148420
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2020044274
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】万字 角英
(72)【発明者】
【氏名】若山 恵英
(72)【発明者】
【氏名】恒川 真一
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-106884(JP,A)
【文献】特開2013-163924(JP,A)
【文献】特開2001-208414(JP,A)
【文献】登録実用新案第3071974(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/003
F24F 7/007
F24F 13/02
F24F 13/14
F24F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタを備えた送風機と外気取り入れ機構を備えた建物の吸気口と接続する外気供給装置であって、
外気取り入れ機構は、送風機からフィルタを通過した空気が流通する清浄空気送風路、フィルタよりも下流側に設けられた未処理外気を導入する未処理外気用開口を有する外気導入部、清浄空気送風路と未処理外気用開口の開度を調整する送風調整機構を備え、
送風調整機構は、清浄空気送風路と未処理外気用開口を開閉する回転可能な風量制御板と風圧伝達機構を有し、
風圧伝達機構は、風量制御板が受ける清浄空気送風路側の風圧を制御する(増幅する)風圧制御板を備えていることを特徴とする外気供給装置。
【請求項2】
送風調整機構は、清浄空気送風路と未処理外気用開口を開閉する回転可能な風量制御板を備えており、清浄空気送風路と未処理外気用開口の開閉を共通する風量制御板、あるいはそれぞれを開閉する別体であって連動可能に形成された風量制御板を備えていることを特徴とする請求項1記載の外気供給装置。
【請求項3】
風圧制御板は、風圧制御板の姿勢を調整できる接続部材を介して風量制御板の送風機側に接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の外気供給装置。
【請求項4】
吸気口を有する建物は病院であり、隣接建物の工事中に使用される仮設装置であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の外気供給装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載された外気供給装置は、隣接建物の工事中は建物の吸気量を上まわる大風量運転を行い、隣接建物の工事休止中は低風量運転を行うことを特徴とする建物への外気供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空調技術に関する。特に、工事中の屋外から取り込む空気を浄化する技術である。
【背景技術】
【0002】
使用中の建物の隣でビル解体などの工事がおこなわれることがある。工事エリアでは囲いを設けて塵埃の飛散防止や防音対策が施されているが、少なからず塵埃の飛散は発生する。
特に、病院の解体・改修工事中にはアスペルギルス属などの真菌による感染症の予防が大きな課題となる。アスペルギルス属などの真菌の胞子は重要なリスクとなる。免疫不全患者が工事に伴って多量に飛散するアスペルギルスの胞子を吸入すると侵襲性肺アスペルギルス症を発症しやすく、致死率も高いことが知られている。
解体工事中には散水や防塵シートの設置など塵埃対策が行われるが、多量に発生する塵埃の一部は拡散し、周辺の病院の外気取り入れ口からは一般大気よりも高濃度の塵埃を含む空気が吸気される場合があり、それによって病院のフィルタには負荷がかかる。
病院内の各室は手術室やICUや一般入院病室などに応じて清浄度が分類され、その用途に適合する空気清浄度を維持することが求められ、一般社団法人日本医療福祉設備協会が作成した病院設備設計ガイドライン(非特許文献1)が広く活用されている。この中で各室が清浄度クラス分けされ、換気条件として最小風量のめやす(外気量と室内循環風量)、室内圧(陽圧か陰圧か)、給気最終フィルタの効率などが示されている。そのため、それに応じた空調用の吸気口が建物に設けられていることがある。
病院の空調設備は、健康・安全・快感のために必要とされる空気の質条件を維持しなければならない。各室の空気の質条件を満たすために必要な外気量および室内循環風量がそれぞれ示され、維持することが必要である。
【0003】
稼働中の病院ではこのように空調が細かく管理されているため、解体工事由来の塵埃・カビ対策を稼動中の病院側で行うことに対しては様々な制約を受けて困難である。例えば、工事を稼働中の病院(診療棟や病棟を含むそれぞれの建物単位)で行わなければならないこと、フィルタなど塵埃やカビの除去手段の設置による圧力損失の増加と既設ファン能力の増強、騒音・振動対策、解体工事後の撤去などは、施設管理だけではなく医療活動や患者に与える影響も小さくない。そこで病院に負荷のかからない解体工事由来の塵埃・カビ対策が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】病院設備設計ガイドライン(空調設備編)2013.10.28 一般社団法人日本医療福祉設備協会編
【文献】新・院内感染予防対策ハンドブック 2007.2.20 国立病院機構大阪医療センター感染対策委員会 ICHG研究会編
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
病院等の解体工事に伴う塵埃や真菌等を含む外気が隣接する稼働中の病院などの建物側の吸気に影響を及ぼさないように供給する空気を調整することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、特願2019-3471号として、フィルタを通した清浄な空気と未処理の空気を調整して稼働中の病院などに供給する外気供給装置を提案している。本発明では、清浄空気と未処理空気の調整能力を向上させた外気供給装置を提案する。
1.フィルタを備えた送風機と外気取り入れ機構を備えた外気供給装置であって、
外気取り入れ機構は、送風機からフィルタを通過した空気が流通する清浄空気送風路、外気導入部、清浄空気送風路と外気導入部の開度を調整する送風調整機構を備えていることを特徴とする外気供給装置。
2.送風調整機構は、清浄空気送風路と外気導入部を開閉する回転可能な風量制御板を備えており、清浄空気送風路と外気導入部の開閉を共通する風量制御板あるいはそれぞれを開閉する別体に形成された風量制御板を備えていることを特徴とする1.記載の外気供給装置。
3.送風調整機構は、清浄空気送風路と外気導入部を開閉する回転可能な風量制御板と風圧伝達機構を有し、
風圧伝達機構は、風量制御板が受ける清浄空気送風路側の風圧を制御する(増幅する)風圧制御板を備えていることを特徴とする1.又は2.記載の外気供給装置。
4.風圧制御板は、風圧制御板の姿勢を調整できる接続部材を介して風量制御板の送風機側に接続されていることを特徴とする3.記載の外気供給装置。
5.吸気口を有する建物は病院であり、隣接建物の工事中に使用される仮設装置であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の外気供給装置。
6.1.~5.のいずれかに記載された外気供給装置は、工事中は建物の吸気量を上まわる大風量運転を行い、工事休止中は低風量運転を行うことを特徴とする建物への外気供給方法。
【発明の効果】
【0007】
1.本発明の外気供給装置は、病院等の解体工事に伴う塵埃や真菌等を含む外気が隣接する稼働中の病院などの建物側の吸気に影響を及ぼさずに稼動中の隣接建物が外気を吸気することができる。供給する外気は、工事中はフィルタを通過した清浄な空気であり、粉塵等が発生しない夜間などの工事休止中は清浄空気と未処理の空気の混合空気であるので、工事に伴う塵埃や真菌等を含む外気が建物に取り込まれない。
混合空気は開度調整機構によって、送風機側のフィルタを通して供給される空気と外気導入部から供給される外気の給気量の調整が行われる。すなわち、送風機の低風量運転時または運転停止時に建物が必要とする吸気量に対して送風機からの供給量が不足する場合は、外気導入部を開いて未処理の外気が導入されて不足風量を補い、送風機の通常運転時には清浄空気送風路を開き、外気導入部を塞いで、清浄な空気を病院などの建物側に供給することができる。
建物の吸気口に取り付ける外気取り入れ機構として、ダクトタイプ、チャンバータイプ、ダクト内蔵チャンバータイプの形態をとることができる。
2.風量制御板は、送風される風圧によって回転し、送風路の開度を調整する機構であるのでモータなどの動力を必要としない。風圧伝達機構は、風量制御板が受ける送風機側の風圧を補助する機構である。例えば、風量制御板の開き角度が大きくなると受ける風圧が小さくなるが、風上側に風を受ける風圧制御板を風量制御板に設置することにより、風圧を補って風量制御板を開き、反対側の外気導入口側を閉鎖できるので、清浄空気供給路と未処理外気の供給路の開閉調整が向上する。即ち、送風機からの清浄空気の供給で十分な場合には、未処理外気の混入を防止できる。
即ち、清浄空気の風圧を風量制御板に伝える風圧制御板を設けたことにより、工事中に供給される清浄空気への未処理空気の混入を極力抑えることができる。風圧制御板によって、通常運転時には清浄空気の供給風圧を効率的に風量制御板に伝えて外気導入部を塞ぎ、未処理外気の混入を抑制できる。
なお、工事休止中は送風機を低風量運転することにより、未処理外気が送風機側に逆流することがなく、また、風圧伝達機構及び風量制御板の受ける風圧は小さいので、外気導入部側の開口から建物が必要とする吸気量を供給することができる。これによって、未処理外気に塵埃や真菌等が含まれていたとしても、送風機の吹き出し側にあるフィルタを汚染することがない。そして、低風量運転することにより、モータの回転音や吹き出しに伴う風切り音が直接又は吸気口を通して建物の室内に影響を及ぼすことを低減できる。特に、夜間の静穏性を保つことができ、神経質な入院患者などが安静を保つ環境を提供できる。防音措置を施した送風機を用いることにより一層静穏性が向上する。例えば、入院患者の寝付きが悪くなったり、良質な睡眠が得られなくなることによるベッド乗降やトイレ回数の増加、それに伴う転倒によるリスクの増加が抑えられる。これらの患者の行動に伴う看護師負担の増加を防止できる。
3.さらに、姿勢調整ができる接続部材を利用して風圧制御板の姿勢や位置を調整して、風量制御板が受ける風圧を調整することができる。送風路を流れる気流は、横断的に観察するとダクトの湾曲などの影響を受けて一様ではないので、それぞれの外気供給装置の構造に伴う気流の特性に応じて、風圧制御板の姿勢や位置を調整する。また、風圧制御板の面積を調整して風圧を調整することもできる。
4.本発明の外気供給装置は、工事中は建物の吸気量を上まわる大風量運転(大風量は、少なくとも吸気口との接続部の静圧が+となる状況を確保する量であり、過剰分は過剰空気排気口から排気される)を行うことによって清浄な空気を建物吸気口に供給し、工事休止中は低風量運転を行い、送風機のフィルタ側が外気で汚染されることを防止しつつ、建物吸気口から進入する外気供給装置の駆動音や振動が低下する建物への外気供給方法を実現する。これによって、工事する病院に隣接する稼働中の病院の汚染を防止することと、夜間などの工事休止期間中には病院内の静穏を保つことができる。工事休止中は、通常の外気と同様の外気が吸気されるので、稼働中の病院の通常の空調設備で十分に外部汚染を対策することができる。
5.したがって、本発明は、外気供給に伴う騒音の影響を低減しつつ、送風機(特に、フィルタ下流面)が逆流汚染されないので、送風に伴う副次的な汚染も防止できる。特に、厳しい管理が求められる病院の建て替えや改修工事を安全に行うことができる。
また、この外気供給装置は、簡易な機構であるため低コストで実現でき、ファン以外には電気を使わずに実施可能であるため、降雨や寒暖の影響を受けにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】外気供給装置の基本構成(ダクト形式)の例、(a)全体概略図、(b)風量調整ダクトの平面概略図
図2】チャンバーを用いた外気供給装置の基本構成例
図3】調整ダクトに適用した送風調整機構の例を示す図
図4】調整チャンバーに適用した送風調整機構の例を示す図
図5】風圧伝達機構の調整例を示す図
図6】風圧制御板のサイズの調整例を示す図
図7】風量制御板の動作例1(1枚の板状体の場合)を示す図
図8】風量制御板の動作例1(チャンバーに設けた風量制御板の動作例)を示す図
図9】風量制御板の動作例2(送風路並列タイプ調整ダクト)を示す図
図10】風量制御板の動作例3(二重型風量制御板の例)を示す図
図11】風量制御板の動作例4(風圧制御板を外気導入路側にも設けた例)を示す図
図12】調整チャンバーに適用した送風調整機構の模式図で、(a)はダクト型送風路の設置前の状態、(b)は設置後の状態(調整ダクトに適用した送風調整機構の模擬)を示している。
図13】調整チャンバーに適用した送風調整機構を示す図で、(a)は清浄空気送風路側の縦断面図、(b)は外気導入部側の縦断面図、(c)は平断面図である。
図14】ダクト型送風路を設置した調整チャンバーに適用した送風調整機構を示す図で、(a)は清浄空気送風路側の縦断面図、(b)は外気導入部側の縦断面図、(c)は平断面図である。
図15】送風調整機構周辺の気流と風量制御板の開度の指標を示す平断面図で、(a)はダクト型送風路の設置前、(b)は設置後である。
図16】2枚の風量制御板が回転軸から離れた位置に接続された送風調整機構を調整チャンバーに適用した模式図で、(a)は風量制御板が未処理外気用開口を閉鎖している状態、(b)は風量制御板が清浄空気側開口を閉鎖している状態を示している。
図17】2枚の風量制御板が回転軸から離れた位置に垂直方向をずらした状態で接続された送風調整機構を調整チャンバーに適用した模式図で、(a)は風量制御板が未処理外気用開口を閉鎖している状態、(b)は風量制御板が清浄空気側開口を閉鎖している状態を示している。
図18】2枚の風量制御板が回転軸から離れた位置に接続され、清浄空気側の風量制御板に風圧制御板を設けた送風調整機構を調整チャンバーに適用した模式図で、(a)は風量制御板が未処理外気用開口を閉鎖している状態、(b)は風量制御板が清浄空気側開口を閉鎖している状態を示している。
図19】送風機の概略例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、病院等の解体工事に伴う塵埃や真菌等を含む外気を、稼働中の病院などの建物側の吸気に影響を及ぼさないようにする外気供給装置である。工事中はフィルタを通過した清浄な空気を供給し、粉塵等が発生しない夜間などの工事休止中は清浄空気と未処理の空気の混合空気を稼動中の建物に供給できるので、工事に伴う塵埃や真菌等を含む外気が建物に取り込まれない装置である。なお、この特許出願では、病院を病棟や診療棟を含む棟単位の建物を指すこととする。
本発明の外気供給装置は、フィルタを備えた送風機と、送風機と建物の吸気口とを連結する外気取り入れ機構を備えている。外気取り入れ機構は、送風機に接続する接続ダクトと外気導入する外気導入部と風量調整機構と建物の吸気口に必要に応じて連結する接続ダクトを備えている。この風量調整機構は、建物の吸気口に供給される清浄空気量と未処理外気量によって清浄空気送風路と外気導入部の開度を調整する機能を果たす。
風量調整機構は、送風機からの風圧を受けて回転する板状体などの受圧体(風量制御板)と受圧体に当たる風圧を補助する風圧伝達機構などで構成されている。受圧体は、例えば、回転軸に回転フリーに取り付けられた板状体で構成され、板状体は清浄空気の風圧と未処理外気の風圧によって、回転角度θが変更される機構である。
【0010】
風圧伝達機構は、送風機の風圧を受けて回転した板状体などが、一般に送風路内の風速が中心部に比べて側面部に近づくほど遅くなることや、風を受ける角度θが小さくなった時に風圧を受けて回転を付勢する機能を果たす。また、風圧伝達機構は、外気供給機構の設置状態などによって、送風路を流れる気流は、周縁部が低速であったり、湾曲外面側が高速であったり、一様でないことがあるので、送風状況に応じて風圧を補助する機能を果たす。
例えば、外気取入れ機構では、接続部を通過する気流は偏流となっていることが多く、風速分布も大きい場合が多い。例えば、一般に送風機は建物の吸気口よりも低い位置に設置するため、ダクトで接続すると吸気口手前では曲部があり、ダクト内の風速分布が大きくなる(曲部内の外側の風速は内側よりも速い)。またダクト内の水平方向の風速分布は中心よりも側面付近が遅くなるため、側面に設ける風量制御板は通常運転の際には外気導入部の未処理外気用開口を塞ぐ方向に稼働はするが、未処理外気用開口に近づくと風量制御板に作用する風速が遅くなる。さらにダクト曲部の後段に外気取り入れ機構を設けた場合には、風量制御板に作用する垂直方向の風速は均一ではなく上部に集中する。
このように風量制御板に作用する風速は板全体に均一ではなく、また水平方向の風速は未処理外気用開口に近づくほど遅くなるため、風量制御板だけでは外気導入部を完全に塞ぐことができない場合があるので、本発明では風圧伝達機構を設けている。
風量調整機構の筐体としては、ダクトやチャンバー、ダクト内蔵チャンバーを用いることができる。チャンバーを用いた場合、送風機からフィルタを通過した空気が流通する清浄空気送風路(ダクト)に接続し、チャンバー側に外気導入部を設けた場合、風量制御板だけで外気導入部を塞ぐことは困難となるので、風圧伝達機構の役割の重要性が増す。例えば、外気取り入れ機構を建物の吸気口に直結するチャンバーを設ける場合、清浄空気がチャンバー内に入る際に空間が拡大する一方、建物の吸気の影響を受けて外気導入側の開口から風圧が大きくなることがあり、風量制御板に当たる風圧だけでは、外気導入部の開口の閉鎖が困難になることがある。ダクトを直接建物吸気口に接続することが難しい場合や、チャンバーの接続のためにダクトをチャンバー内部まで伸ばした場合に、ダクト内蔵チャンバーの形式となる。
【0011】
建物に吸気される空気量は、建物側に備えられる空調機の吸気ファンによって決まり、送風機が供給する清浄空気量が、建物が必要とする空気量を上回れば、送風機からの送風で十分である。すなわち、供給される空気によって、吸気口との接続部の静圧が+となるように送風が維持されるようにする。しかし、送風機は、モータ音や振動音を発生し、夜間などには建物内の居住者に不快感を生ずることがある。特に、入院患者などは安静を保てない可能性があるので、夜間などは送風機の運転を低風量運転あるいは停止することが望ましく、不足する建物の吸気に必要な空気量は、未処理外気で補う必要がある。送風機の運転を停止した場合、送風口やフィルタの吹き出し側に外気に含まれる真菌が付着する恐れがあり、付着した真菌が増殖した状態で、送風機を再稼働すると建物に真菌を供給することとなり、逆効果となりかねない。特に、梅雨の季節など高湿度環境では付着した真菌の増殖リスクが高くなる。そこで、送風機を夜間などでも逆流による汚染を防ぐために、少なくとも低風量で運転とすることが望ましい。本発明は、低風量運転した場合に不足する、建物の吸気に必要な空気量を未処理外気で補う風量調整機構を開発したものである。そして、設置環境の影響などを受けて変動する可能性のある未処理外気による逆流の影響を防止し、フィルタ下面の汚染を防止できる機構を開発した。
カビなどの真菌はわずかな隙間でも侵入する可能性があるので、侵入防止機能を高めた調整機構を提案している。
本発明は、主に工事中の近隣にある稼動中の建物である、病院などの吸気に工事による悪影響を与えることのない外気供給装置である。本発明は、工事期間中は通常運転して清浄空気を供給し工事休止中に低風量運転する際に、外気を導入して不足風量を補いながら、外気の逆流によるフィルタ下流面の汚染を防止して、フィルタのクリーン性を維持できる機器である。
本発明は解体工事中に屋外に設置して仮設で用いる、塵埃・カビを除去して空気を供給する機器であり、コストを抑え、降雨や寒暖による故障が発生しにくい簡易な機構を実現している。
なお、夜間などの工事休止中は、工事に伴う塵埃等が発生しないので、未処理外気を供給しても、建物に設置してある通常の空調処理設備で処理できる。
【0012】
送風機は、先願である特願2019-3471号に開示するようにモータで駆動されるファンとフィルタを備えている(図19参照)。フィルタは、カビなどの真菌や細菌もろ過する精細なHEPAフィルタ、高性能フィルタ、バグフィルタなどを使用する。架台や筐体は振動を抑えるために、防振構造を用いた静穏タイプとするのが好ましい。防振構造を備えることにより、建物内に入る送風機の振動騒音を低減できる。
【0013】
外気取り入れ機構は、清浄空気と未処理外気を建物に供給する送風調整機構を備え、送風機側に設けられた接続ダクト、建物の吸気口側に設けられた接続ダクトを備えている。なお、送風調整機構を直接供給口に接続する場合は、接続ダクトは必要としない。
送風調整機構の筐体はダクトあるいはチャンバーの形態をとり得る。
風量調整機構の接続ダクトは板状体あるいは可撓性体で構成することができる。送風調整機構を構成する調整ダクトは板状体で形成するのが適している。送風調整機構を構成する調整ダクトあるいは調整チャンバーと前後の接続ダンパなどとの接続機構はフランジを介したネジ止めやゴムバンドなど周知の手段を使用することができ、パッキンなどを介して隙間ができないように密着させるのが好ましい。
【0014】
外気導入部は、送風調整機構を形成する調整ダクトあるいは調整チャンバーの中間に開口を設けて形成する。その開口にさらに外気導入用のダクトなどをつなげることもできる。開口は側面あるいは底面に設ける。上面に設けた場合降雨の吹き込みや雨水の浸入が起こる恐れがあるので避ける。
【0015】
風量調整機構は、清浄空気送風路あるいは外気導入路の開閉を調整できる機構である。風量調整機構は、調整ダクトあるいは調整チャンバーに設けられる。
そして、さらに、開閉を補助する風圧伝達機構を備えている。開閉手段は、それぞれの通風路を閉鎖できる大きさの板状体である風量制御板を回動する手段やスライドする手段を用いることができる。
回動手段は、例えば、回転軸と回転軸に自由に回転できるように取り付けられた板状体である風量制御板で構成される。回転軸は外気導入用の開口の上流辺に取り付けられており、風量制御板は清浄空気送風路と外気導入路を閉鎖できるように回動する。風量制御板は、高さは清浄空気送風路と同じ長さを基本とし、幅は清浄空気送風路と同じかやや長くして、送風路を完全に封鎖できる大きさとする。この大きさは外気導入路に対しても同様の関係になり、風量制御板によって外気導入用の開口が完全に封鎖できる形状に外気導入路は設計される。風量制御板は、回転軸に1枚あるいは2枚の板体を設置することができる。2枚の場合は、回転軸を中心に板状体を「へ」の字状に取り付ける。2枚の板状体の角度は90度以内とする。
また、回動手段では、分割した板体で送風路を開閉することもできる。
さらに、また、回動する板体を前後に設けて連動式で開閉する形式にすることもできる。回転軸などの回転機構と風量制御板を接続部材を介して離して設けることもできる。
【0016】
風量制御板が送風路や外気導入路を閉鎖する箇所には、隙間ができないように密着する受け構造を設けることができる。この受け構造は風量制御板のストッパーの役割も果たす。
また、風量制御板には、送風機が低風量となった時に低風量を通過させる小開口を設けることができる。小開口に、逆流防止構造を設けるとさらに真菌侵入防止の安全性が向上する。逆流防止構造は、簡単には開口の下流側に小開口よりも大きな蓋状の開閉板を設け、90°以上開かないようにすることで実現する。
【0017】
風圧伝達機構は、風量制御板の回動によって、送風路の中心部に比べて風速が遅い側面部に近づくため、当たる風速が遅く、角度も小さくなり、風量制御板を回転させる風圧が小さくなった状態で、風圧を補助する機構である。例えば、風量制御板の風上側(通常は、清浄空気送風路側)に、風圧制御板を接続部材で取り付けたものである。
接続部材は2本以上で取り付けることもできる。例えば、風圧制御板の大きさや形状によっては風圧制御板に加わる風圧に分布が生じ、2本の接続部材で取り付けたほうが安定する場合がある。
風圧制御板は、風量制御板に当たる風速が遅く、また風当たり角度が小さくなった状態で、風圧制御板への風当たりが大きくなるように、傾きをもって取り付けられている。段落(0010)に記載するように、送風路の気流分布は一様でないので、具体的な外気取り入れ機構の構造にしたがって、風圧制御板の大きさや姿勢を調整する必要がある。
姿勢の調整は、風圧制御板の角度調整、風圧制御板の大きさの調整、接続部材の伸縮調整、接続部材の角度調整、接続部材の取り付け位置調整などの手段を講ずることができる。これらの手段は、組み合わせることができる。
【0018】
(実施態様1)
図1に外気供給装置の基本構成の概略例を示す。図1(a)は全体概略構成図、図1(b)は風圧伝達機構を備えた風量調整機構の平面概略図を示す。
外気供給装置は、送風機1と送風機1の吹き出し側に接続ダクト16を介して取り付けられ、建物側の吸気口110に接続ダクト17を介してつながる外気取り入れ機構2を備えている。外気取り入れ機構2は、ダクト状の筐体形状をした調整ダクト31を備えており、調整ダクト31の一端は送風機1側に接続ダクト16を介して取り付けられ、調整ダクト31内に送風調整機構5があり、他端は、病院等の建物が外気を取り入れる吸気口110に直接又は接続ダクト17を介して接続される。
本例では、送風調整機構5は、調整ダクト31内に設けられている。
外気取り入れ機構2は、筒状であり、断面は四角形あるいは円形であり、送風調整機構5の部分は変形しない板状体で構成された調整ダクト31内に設けられ、他の接続ダクト16、17は調整しやすいように可撓性であっても良い。送風調整機構5には、風量制御板51と未処理外気用開口35に通ずる外気導入部4が設けられている。送風機1は、図19に概略の構成が示されるように基台12にモータ13、ファン14、フィルタ11を基本構成機器として備えている。モータ13やファン14は防振部材15を介して取り付けることが好ましい。
【0019】
外気取り入れ機構2は、中間部にある送風調整機構5より上流側に清浄空気送風路33があり、送風調整機構5より下流側に供給風路36がある。清浄空気送風路33はフィルタを通過した清浄空気が送り出されてくる送風路であり、供給風路36は、清浄空気または未処理外気、あるいは両方の混合空気が通過して建物の吸気口110に供給される送風路である。
送風調整機構5は、本例では側壁に沿って設けられた回転軸53に回転自由に設けられた風量制御板51を備えている。そして、風量制御板51の清浄空気送風路33側に風圧伝達機構7が設けられている。
調整ダクト31の清浄空気送風路33側には清浄空気側開口34がある。
回転軸53の下流側の側壁には未処理外気用開口35が設けられており、外気導入部4に続いている。外気導入部4の先端には、外気開口42が設けられている。外気開口42は、雨やごみが入らないように下向き開口が適している。風量制御板51は、清浄空気側開口34と未処理外気用開口35との間で回動することができ、両開口を封鎖できる大きさを有している。
清浄空気側開口34は、そのままの素通し、又は受部となる制御板ストッパ34aを設ける。制御板ストッパ34aは、パッキン付きの枠材付きストッパやスリット材、メッシュ材などを設けて、廻り止め機能と密着機能を付与することができる。パッキンなどを設けて密着機能を付与した場合は、隙間から真菌の侵入を防止する機能が向上する。未処理外気用開口35にも廻り止め機能と密着機構を設けることができる。未処理外気用開口35は、そのまま外気に露出させることもできるが、この例では外気導入部4を通して外気に通じている。
【0020】
風量制御板51の回動位置によって、清浄空気側開口34からの空気と未処理外気用開口35からの空気が供給される。工事中は、建物が必要とする吸気量以上となる風量を送風機から大風量運転として送風し、清浄空気の空気圧が高圧となるので、風量制御板51は未処理外気用開口35を封鎖する方向に回動する。風量制御板51が受ける風圧は、未処理外気用開口35側に回動するに従い小さくなるので、未処理外気用開口35を完全に封鎖することは難しくなる。風量制御板51の受ける風圧を補助する機構として風圧制御板71を取り付けている。なお、送風機からの風量が大きく、調整ダクト31内が過剰圧になった場合に、空気を排出する過剰空気排気口37を設けている。
【0021】
風圧伝達機構7は、風圧制御板71と接続部材72を備えていて、風量制御板51の清浄空気送風路33側に接続部材72を介して風圧制御板71が取り付けられている。
風圧伝達機構7の機能が図1(b)に示されている。
風量制御板51は、送風機1から清浄空気送風路33を通して風圧を受けて回動する。清浄空気送風路33を全開放した状態(未処理外気用開口35が完全に封鎖された状態)を回動角度0°とすると、清浄空気送風路33の清浄空気側開口34が完全に封鎖される風量制御板51の位置が回転角度90°となる。清浄空気の風圧を受けて風量制御板51の回動角度θが小さくなるにしたがい風圧が小さくなり、未処理外気用開口35を封鎖するには圧力不足なる。このため、送風機の通常運転時にも、未処理外気が混入する恐れがあるので、圧力を補助する手段として風圧伝達機構7が設けられている。
風圧制御板71の角度を例えば風量制御板51に対して、45°に設定すると、風量制御板51の回転角度θが45°になったときに、風圧制御板71が清浄空気の送風に対して正対して受ける風圧が最大となる。また風圧制御板71の角度を風量制御板51に対して90°に設定すると、風量制御板51が受ける風圧が最も小さい回転角度θが0°付近で、風圧制御板71が清浄空気の送風に対して受ける風圧が最大となるので、風圧制御板71が受けた風圧によって十分に風量制御板51を回転させて、未処理外気用開口35を密閉することができ、未処理外気の混入を防止することができる。
この風圧伝達機構7を風量制御板51に取りつけることにより、工事中に送風機1を大出力で運転すると、未処理外気の混入を防止でき、夜間などの工事休止中に送風機1を低出力で運転すると、不足分を未処理外気で補うことができることとなる。
【0022】
この外気供給装置は、工事中は送風機を大風量運転することにより、未処理外気を混入させることなく清浄空気を建物の吸気口に十分な量を供給することができる。夜間など工事休止中は、送風機を低風量運転することにより、送風機が原因となる騒音の影響が小さくなり、入院患者などに対する静穏性を保つことができる。送風機から低風量では不足する分は、未処理外気用開口35から取り入れられる。風圧制御板71と風量制御板51が送風圧を受けて、送風機が低出力運転時には、バランスするところで回動が停止することになる。送風機側から供給される清浄空気は常に流れているので真菌が逆流して、吹き出し口やフィルタの吹き出し側に付着して増殖することを防止できる。さらに、清浄空気送風路33を閉鎖する方に風量制御板51に付勢を付けることにより、清浄空気の送風が強まり、逆流防止機能が強化され、また、風量制御板51に低風量通過用の小開口を設けることにより、風量制御板51が清浄空気側開口34に密着することとなり、真菌が逆流して汚染されることを防止できる。
【0023】
(実施態様2)
チャンバーを用いた外気供給装置の例2を図2に示す。
図2に外気供給装置の例2構成概略図を示す。本例は、図1に示す実施態様1の調整ダクト31に代えて、調整チャンバー32を採用し、調整チャンバー32を建物の吸気口110に直結している。他の構成は実施態様1と同様である。実施態様1と共通する構成の説明は省略する。
調整チャンバー32の筐体は、接続ダクト16よりも大きい。調整チャンバー32に設けられる清浄空気側開口34は調整チャンバー32の送風機側の面よりも小さくなっている。未処理外気用開口35は清浄空気側開口34と同程度の大きさで、調整チャンバー32の外側面に設けられている。未処理外気用開口35は、外気導入部4の外気導入路41に通じている。本例では、過剰空気排気口37が清浄空気側開口34の対向面に設けられている。調整チャンバー32の建物側の側面は、吸気口110と同程度の大きさに形成されている。
清浄空気側開口34と未処理外気用開口35が設けられている角部に回転軸53を設置して、該回転軸53に風量制御板51を回転自由に設けてある。風圧制御板71が風量制御板51の送風機側の接続ダクト16側に設けられている。
【0024】
送風機側の接続ダクト16よりも広い調整チャンバー32を用いた場合、清浄空気側開口34から広いチャンバー内に進入した空気流が拡散しやすく、風量制御板51が受ける清浄空気送風路33からの風圧が下がり、未処理外気用開口35をふさぐことが難しくなる(図9(b)参照)。
本例では、風量制御板51が回動しても風圧制御板71が風圧を受けて、風量制御板51をさらに回動させることができる。送風機から大風量を供給した場合、この風圧を受けて未処理外気用開口35を封鎖することができ、工事中に未処理外気が混入することを防止することができる(図9(a)参照)。
【0025】
<送風調整機構>
送風調整機構の例を図3、4に示す。送風調整機構を調整ダクトに適用した例を図3に示し、調整チャンバーに適用した例を図4に示す。
図3では、調整ダクト31について、(a)に風量制御板51が清浄空気送風路33を閉鎖している状態を示し、(b)に風量制御板51が回動して中間にある状態を示し、(c)に風量制御板51が未処理外気用開口35を封鎖している状態を示している。また、図3では上段に立体図、下段に平面図を示している。調整ダクトは、図1に示す実施態様1に主に適用される。構造的説明は、図1と同様であり、実施態様1で記載しているので、詳細は省略する。
【0026】
送風調整機構5は、清浄空気側開口34と未処理外気用開口35を回動して封鎖することができる風量制御板51と該風量制御板51に取りつけられた風圧伝達機構7を備えている。風圧伝達機構7は、送風機1からの風圧(動圧)を受ける風圧制御板71と風量制御板51に取り付けられ風圧制御板71をつなぐ接続部材72で構成されている。
【0027】
風量制御板51が清浄空気送風路33を閉鎖している状態(a)では、風量制御板51の制御板ストッパ34aに接触して、清浄空気送風路33を閉鎖している。風圧制御板71は接続部材72を介して清浄空気送風路33に対して斜めに取り付けられている。
風量制御板51が回動して中間にある状態(b)では、風圧制御板71が清浄空気送風路33に正対しており、送風機から送られる風の風圧を大きく受ける状態となっており、風量制御板51を未処理外気用開口35側へ回動する方向に付勢している。
風量制御板51が未処理外気用開口35を封鎖している状態(c)では、風圧制御板71が清浄空気送風路33に斜めになった状態であり、送風機から送られる風の風圧を受けて(特に風圧制御板71の設定角度が90°に近づくと送風機から送られる風の風圧をより大きく受けて)、風量制御板51が未処理外気用開口35を封鎖する圧力を与えている。
特に、(c)の状態では、風量制御板51は清浄空気送風路33からの風圧を受けることができないので、未処理外気の圧力を受けて、隙間ができやすく、隙間から未処理外気が混入する恐れが高くなるが、風圧制御板71が風量制御板51を未処理外気用開口35へ押圧するので、風量制御板51が制御板ストッパ43に密着して、外気の侵入を防止できる。風圧伝達機構7を設けることにより送風機から大風量で清浄空気を送る工事中に未処理の外気が建物へ供給されるリスクを防止することができる。
【0028】
図4では、調整チャンバー32について、(a)に風量制御板51が清浄空気送風路33を閉鎖している状態を示し、(b)に風量制御板51が回動して中間にある状態を示し、(c)に風量制御板51が未処理外気用開口35を封鎖している状態を示している。また、図4では上段に立体図、下段に平面図を示している。調整チャンバーは、図2に示す実施態様2に主に適用される。構造的説明は、図2と同様であり、実施態様2で記載しているので、詳細は省略する。
【0029】
送風調整機構5は、清浄空気側開口34と未処理外気用開口35を回動して封鎖することができる風量制御板51と該風量制御板51に取りつけられた風圧伝達機構7を備えている。風圧伝達機構7は、送風機1からの風圧(動圧)を受ける風圧制御板71と風量制御板51に取り付けられ風圧制御板71をつなぐ接続部材72で構成されている。
図4(a)(b)(c)に示す風量制御板51と風圧制御板71についての説明は、図3(a)(b)(c)と同様なので省略する。
ただし、チャンバーを用いているので、清浄空気側開口34と未処理外気用開口35から入った空気は広いチャンバー内に広がるので、風が拡散し、風量制御板51に当たる風圧が弱まる傾向にある(図8参照)。そのため、風圧制御板71を設けて風量制御板51の回動を付勢することはより効果的である。
特に、(c)の状態では、風量制御板51は清浄空気送風路33からの風圧を受けることができないので、風圧制御板71が風量制御板51を未処理外気用開口35へ押圧して、風量制御板51を制御板ストッパ43に密着させて、外気の侵入を防止することができる。風圧伝達機構7を設けることにより送風機から大風量で清浄空気を送る工事中に未処理の外気が建物へ供給されるリスクを防止できる。
調整チャンバーでは、清浄空気の送風が低風量または停止となった場合に給気される未処理外気は、外気導入部から流入しより広いチャンバー内を通って建物の吸気口にほぼ直進して吸い込まれる。そのため、仮に清浄空気の送風が停止した場合においても吸気口からの吸気が停止しなければ、清浄空気送風路への逆流の防止には風量制御板の回動を清浄空気送風路側に付勢すれば十分であり、必ずしも閉鎖する必要はない。
【0030】
<風圧伝達機構>
風圧伝達機構7について図5、6を用いて説明する。
風圧伝達機構7は、風量制御板51の清浄空気送風路側に棒状の接続部材72を用いて風圧制御板71が取り付けられている。
図5は、接続部材72の取り付け角度調整、伸縮調整によって、風圧制御板71の位置や姿勢を調整する例を示している。図5(a)は接続部材72を風圧制御板71に取り付ける角度を調整できる状態を示し、(b)は接続部材72の棒部材を伸縮させて風圧制御板71を調整する状態を示し、(c)は接続部材72と風圧制御板71の取り付け角度を調整できる状態を示している。これらの(a)(b)(c)の構造は、組み合わせることができる。さらに、風圧制御板は複数設けることができ、(a)(b)(c)の構造と組み合わせることで、より多くの状況に対応できる。
【0031】
風圧制御板71と風量制御板51とをつなぐ接続部材72は、できるだけ送風抵抗とならないように棒状体が適し、多関節型とすることができ、複数とすることもできる。接続部材72は長さを調節できる棒状体とすることができ、一端は風量制御板51に接続する機構を有し、他端は風圧制御板71に接続する機構を有している。風量制御板51との接続機構は、例えば風量制御板51にビス止めした台板に棒状体の先端を取り付けることができ、負荷をかけると上下左右に可動できるように取り付けることもできる。
また、磁石付き平台に棒状体の先端を取り付け、風量制御板の所定の位置に貼り付けた鉄製薄板などに磁力で固定することもでき、磁力が強力なネオジム磁石を用いればより安定に固定することができる。
風圧制御板71との接続機構は、例えば棒状体の先端に取り付けた補助冶具を介して固定する。補助冶具は棒状体の先端に負荷をかけると上下左右に可動する手段を備えることもでき、風圧制御板71の角度を変えることができる。補助冶具の風圧制御板71への固定は、挟み固定やビス止めなど周知の手段を使用することができる。
【0032】
風圧伝達機構7は、風量制御板51の清浄空気送風路33側の面に設け、風量制御板51の稼働時に清浄空気送風路33や未処理外気用開口35を閉鎖する箇所に設ける受け構造(ストッパー34a、43)に接触しない配置とする。
ただし、調整チャンバーでは清浄空気側開口を必ずしも閉鎖しなくてもよいため、風圧伝達機構7の清浄空気送風路に設ける受け構造への接触は許容される。
なお、風圧伝達機構7は風量制御板51の清浄空気送風路33側とともに外気導入路41側の面にも設けることができる(図11参照)。風圧伝達機構7を外気導入路側に設けた場合、未処外気用開口35から風圧を受けるので、送風機が運転停止した場合に清浄空気送風路33を閉鎖する動力を増強でき、未処理外気が送風機側へ逆流して、フィルタへ真菌などが付着することを防止できる。
【0033】
風圧伝達機構7は、接続部材72の上下左右の可動および伸縮、風量制御板との取付け位置の変更、風圧制御板71の上下左右の角度の可動により、風圧制御板71の位置および角度を自在に変えることができる。
本発明の外気供給装置の設置時に清浄空気送風路33の風速分布をシミュレーションまたは実測して強風速範囲を特定し、風圧制御板の位置および角度を変えることによって、風圧制御板71が最適な位置で強風を受け、風量制御板51が外気導入路41を塞ぐ力を強化できる。
調整ダクトや調整チャンバーに点検扉を設け、風圧制御板の位置を確認して調整できるようにすることもできる。
【0034】
図6に風圧制御板71のサイズを変更する機構を説明する。
図6(a)は風圧制御板71を横方向に伸長させてサイズ調整できる状態を示し、(b)は風圧制御板71を縦方向に伸ばしてサイズを調整する状態を示し、(c)は風圧制御板71を縦横に伸ばしてサイズを調整する状態を示している。
風圧制御板71は、横方向と縦方向にサイズを調整する機構を備えることができ、サイズの調整方法はスライド式や開閉式で行うことができる。
例えば、片面に横方向のサイズ調整機構、反対面に縦方向のサイズ調整機構を設けることによって、横方向のみ、縦方向のみ、両方向の3通りのサイズを調整することができる。また異なるサイズや形状の風圧制御板71を付け替えることにより、調整することができる。さらにまたサイズ調整機構を開閉式にすることによって開閉角度を調整することもできるため、風圧をより効率的に受けることもできる。
【0035】
<風量調整機構の動作>
風圧制御機構を備えた各種の風量調整機構の動作を図7~11に示す。風圧制御板71の有無による低風量運転時と大風量運転時の風量制御板51の可動の違いを示しており、送風の風速分布が大きく、大風量運転時においても風量制御板のみでは外気導入路を塞ぎきれない場合があり、風圧制御板が風量制御板を加勢することにより外気導入路の封鎖が安定することを示している。
なお風圧制御板と風量制御板との角度は90°に近づくほうが望ましい。
【0036】
<風量制御板の動作1>
風圧制御板71を風量制御板51に取りつけた図1に示す調整ダクト31の動作例を図7に示す。図7(a)は風圧制御板がある場合、(b)は風圧制御板がない場合を示している。
風圧制御板71がある場合は、低風量時には送風機から供給される清浄空気の風圧が弱いので、建物側の吸気需要によって、未処理外気が外気導入路から進入でき、両者の風圧が均衡する位置に風量制御板51が回動することができる。送風機から清浄空気が大風量で供給される場合は、風圧制御板71が風量制御板51の回動を付勢するので、風量制御板51が外気導入路41を密閉することができ、未処理外気の侵入を防止することができる。
これに対して、風圧制御板を設けない場合は、清浄空気送風路33から供給される空気が低風量時には、風圧制御板の有無にかかわらず、風量制御板51は両風圧が均衡する位置まで回動するが、送風機から大風量が供給された場合は風量制御板51の回動が大きくなると風圧が弱くなり、外気導入路41に進入する風圧によって、隙間Δdが発生しやすく、未処理外気が混入する恐れが生ずる。
【0037】
図2に示す調整チャンバー32の動作例を図8に示す。図8(a)は風圧制御板がある場合、(b)は風圧制御板がない場合を示している。風圧制御板71の有無による風量制御板51の動作は、図7に示す調整ダクトと基本的に同様であるが、チャンバー内に侵入した空気が拡散するので、風圧制御板71を設けない場合は、風量制御板51の不安定性は大きくなる。これに対して、風圧制御板71を設けると大風量時に風圧制御板51を付勢して外気の侵入を防止できる。
【0038】
<風量制御板の動作2>
風量制御板51を複数設けた例を図9、10に示す。なお、この外気取り入れ機構の構造は、先願である特願2019-3471号の図3、4、6、8に紹介した機構と共通する。
図9は調整ダクト31を用いた例であり、清浄空気送風路33と外気導入路41を並列に設けた例である。図9(a)は、送風制御板51を直角に配置した板51aと51bで構成した例(2翼直角型)である。図9(b)は、風圧制御板長さを清浄空気送風路の断面長よりも大きくして、封鎖位置を送風路の下流側にしたものであって、送風制御板51である板51aと板51bを鋭角に配置した例(2翼鋭角型)である。
低風量時は、板51aが清浄空気送風路33から受ける風圧と板51bが外気導入路41の風圧が均衡する位置まで回動するが、大風量時には風圧制御板71が受ける風圧が板51aを付勢して板51bが外気導入路41を封鎖することができる。
【0039】
風圧制御板71の有無による風量制御板が外気導入路に対する封鎖安定性に及ぼす影響は、図7、8に示す機構と同様であるので、ここでは、風圧制御板を設けた例を示した。
また、調整チャンバーにおいても同様である。
【0040】
<風量制御板の動作3>
図10は、風量制御板を二重に設けた例である。調整ダクトを用いた例を示しているが、調整チャンバーを用いても作用効果は共通する。
図10(a)は、清浄空気送風路33と外気導入路41が並列に設置されており、風量制御板51a、51bを直角に配置した2翼直角型の風量制御板を風下側に設置し、清浄空気送風路33の上流側に風量制御板51cを設けた構成である。上流側の風量制御板51cの先端と風量制御板51bの先端を線状引っ張り部材56で繋いである。この構成により、直角に配置された風量制御板51a、51bと風量制御板51cは連動して開閉する。
そして、上流側の風量制御板51cに風圧制御板71が取り付けられている。
低風量時には外気導入路から供給される外気の圧力を風量制御板51bが受けて、2翼直角型の風量制御板が中間位置に回動している。大風量時には、上流側の風量制御板51cが風圧制御板71の付勢を受けて、大きく回転して線状引っ張り部材56を介して風量制御板51bが外気導入路41を完全に封鎖することができる。
【0041】
図10(b)は、清浄空気送風路33の風下側に外気導入路41が接続しており、この接続部に外気導入路41を封鎖する外気導入路開閉板61を設け、清浄空気送風路33の上流側に風量制御板51cを設けた構成である。そして、外気導入路開閉板61と上流側の風量制御板51cに風圧制御板71e、71fが取り付けられている。外気導入路開閉板61は、清浄空気送風路側に回動するように取り付けられており、風圧制御板71は、外気導入路開閉板61の清浄空気送風路33の風上側に取り付けられている。上流側の風量制御板51cの先端と外気導入路開閉板61の先端を線状引っ張り部材56で繋いであり、外気導入路開閉板61と風量制御板51cは連動して開閉する。
低風量時には外気導入路から供給される外気を外気導入路開閉板61が受けて、清浄空気送風路33側に回動して、外気が導入される。大風量時には、上流側の風量制御板51cが風圧制御板71eの付勢を受けるともに、外気導入路開閉板61にも風圧制御板71fの風圧が加わっており、外気導入路開閉板61は外気導入路41を完全に封鎖することができる。
【0042】
図10(c)は、調整ダクトの反対側に外気導入路41を設け、中間に建物側の吸気口に通ずる供給風路36が設けられている。清浄空気送風路33に風圧制御板71を取り付けた上流側の風量制御板51cが設けられており、外気導入路41側に外気導入路開閉板62が設けられている。上流側の風量制御板51cの先端と外気導入路開閉板62の先端を線状引っ張り部材56で繋いであり、外気導入路開閉板62と風量制御板51cは連動して開閉する。
低風量時には外気導入路から供給される外気を外気導入路開閉板62が受けて、清浄空気送風路33側に回動して、外気が導入される。大風量時には、風圧制御板71の付勢を受けて上流側の風量制御板51cが大きく回動し、線状引っ張り部材56を通して外気導入路開閉板62を回動して外気導入路41を完全に封鎖することができる。
【0043】
<風量制御板の動作4>
図11は、風圧制御板を清浄空気送風路側と外気導入路側の両方に設けた例を示している。
図11(a)は、調整ダンパ形式であって、清浄空気送風路33と外気導入路41が並列に設置されており、風量制御板51a、51bを直角に配置した2翼直角型の風量制御板を合流端に設置し、風量制御板51aに風圧制御板71eを清浄空気送風路33の風上側に設け、風量制御板51bに風圧制御板71gを外気導入路41の風上側に設けた例である。
低風量時には外気導入路から供給される外気の圧力を風量制御板51bが受けて、2翼直角型の風量制御板が中間位置に回動している。清浄空気送風路33側の風圧が外気導入路41側の風圧よりも想定外に大きい場合、外気導入が十分でなく、建物側の吸気動力に過度の負担が生ずる恐れがあるが、風圧制御板71gが風量制御板51bを付勢するので、外気導入路41側の開口度合いが大きくなって、外気導入がスムーズに行われることとなる。
大風量時には、風量制御板51aが風圧制御板71eの付勢を受けて、大きく回転して風量制御板51bが外気導入路41を完全に封鎖することができる。
【0044】
図11(b)は、調整チャンバー形式であって、清浄空気送風路33と外気導入路41が直角に設置されており、風量制御板51が合流端に設置されており、風量制御板51の両面に風圧制御板71e、71gが設けられている。風圧制御板71eが清浄空気送風路33、風圧制御板71gが外気導入路41に向けて設けてある。
低風量時には外気導入路から供給される外気の圧力を風量制御板51が受けるが、清浄空気送風路33側の風圧が外気導入路41側の風圧よりも想定外に大きい場合、外気導入が十分でなく、建物側の吸気動力に過度の負担が生ずる恐れがあるが、風圧制御板71gが風量制御板51を付勢するので、外気導入路41側の開口度合いが大きくなって、外気導入がスムーズに行われることとなる。
大風量時には、風量制御板51が風圧制御板71eの付勢を受けて、大きく回転して風量制御板51bが外気導入路41を完全に封鎖することができる。
【0045】
<外気供給装置の設計、運転>
本発明は、吸気中の外気取り入れ口に対して、清浄空気を送風機から大風量で供給する通常運転では塵埃・真菌(カビ)等を大幅に除去した空気を給気でき、低風量運転時には外気を導入して不足風量を補いながら、変動する外気導入量が一時的または一定の時間過剰となっても逆流によるフィルタ下流面の汚染を防止することができるため、通常運転と低風量運転を繰り返し行った場合においても、吸気量を確保しつつ、通常運転時には塵埃・カビを大幅に除去した空気を給気できる空気浄化システムである。特に、大風量運転時であっても大きく回動した風量制御板が受ける風圧が小さくなって、外気導入路側の封鎖する圧力が不安定になっても、風圧制御板が外気導入路を封鎖する方向に風量制御板を付勢するので、外気導入路の封鎖が安定して、未処理外気が混入することを防止できる。
また、簡易な機構であるため低コストで実現でき、ファン以外には電気を使わずに実施可能であるため、降雨や寒暖の影響を受けにくい。
【0046】
本発明が適用される工事現場では、次のような状況に対応することが必要であって、本発明はこれらの要望に適した物である。
解体工事期間のみの仮設対応で、フィルタとファンを搭載した塵埃・カビ除去手段を外気取り入れ口の屋外側に設置し、ダクトなどで接続して清浄空気(塵埃・カビを大幅に除去した空気)を外気取り入れ口に供給する方法が考えられる。
塵埃・カビ除去手段はファンを搭載しているため、稼働時には本体からの直接的な騒音・振動とダクトを通じての間接的な騒音・振動が発生する。病院は長時間安静状態を保たなければならない患者を対象としているため、一般の建物よりも騒音や振動に対する配慮が求められ、検査や診察などの医療行為においても騒音や振動が支障をきたす場合がある。このような事情から、塵埃やカビが多く飛散する解体工事時間帯のみの対策が必要である。解体工事時間帯のみの対策であるため、塵埃・カビの飛散が少ない工事休止中での外気導入は許容される。
ファンを停止すると、病院に供給する風量を確保するために設ける開閉機構の開口部等から侵入してきたカビの胞子が、送風機のフィルタ下流面(通常運転で塵埃やカビを除去するフィルタ面とは反対の面)に付着し、特に雨天などの高湿度条件ではフィルタ表面で増殖する場合がある。この真菌等が付着した状態で通常運転すると汚染されたフィルタから汚染空気が供給されることになるため、ファンの停止は避けて低風量運転を行う必要がある(屋外での使用となるため、冬季などファンのON、OFFの切り替えによって結露が発生するリスクが増加することも懸念される)。
【0047】
そして、吸気口は建物の上階等各所にあるので、送風機と建物の吸気口との接続部(ダクトなど)に外気取り入れ機構が設けられるが、接続部を通過する気流は偏流となっていることが多く、風速分布も大きい場合が多い。例えば、一般に送風機は建物の吸気口よりも低い位置に設置するため、ダクトで接続すると吸気口手前では曲部があり、ダクト内の風速分布が大きくなる(曲部内の外側の風速は内側よりも速い)。またダクト内の水平方向の風速分布は中心よりも側面付近が遅くなるため、側面に設ける外気取入れ機構の風量制御板は通常運転の際には外気導入部を塞ぐ方向に可動はするが、外気導入部に近づくと風量制御板に作用する風速が遅くなる。さらに上記ダクト曲部の後段に外気取り入れ機構を設けた場合には、風量制御板に作用する垂直方向の風速は均一ではなく上部に集中する。
このように風量制御板に作用する風速は板全体に均一ではなく、また水平方向の風速は外気導入部に近づくほど遅くなるため、風圧制御機構を調整して、風量制御板を制御して外気導入部を完全に塞ぐように風量調整機構を設計する。
【0048】
[実験]
通常運転時に、風圧制御板による風量制御板の開度調整機能により、外気導入部を塞ぐ効果の検証を行った。
【0049】
[調整チャンバーに適用した送風調整機構]
図12(a)および図13に示すように、建物外壁面の吸気口110に送風調整機構5を設けたチャンバー32を接続した。チャンバー32は高さ1100mm、長辺2400mm、短辺700mmとし、短辺側の側面に清浄空気側開口34を設け400mm径のフレキシブルダクト(接続ダクト16)を介してフィルタを備えた送風機を接続することにより、フィルタを通過した清浄空気が上昇しチャンバー内に供給できるようにした。
チャンバー32の長辺側の側面には、ダクト接続側から50mmの位置に500mm×500mmの未処理外気用開口35を設け外気導入部4を設置した。調整チャンバー32への適用では、清浄空気の送風が低風量または停止となった場合に給気される未処理外気は、外気導入部4から流入しより広いチャンバー空間を通って建物の吸気口110にほぼ直進し吸い込まれる。そのため、仮に清浄空気の送風が停止した場合においても吸気口110からの吸気が停止しなければ、清浄空気送風路への逆流の防止には風量制御板51の回動を清浄空気送風路側に付勢すれば十分であり、必ずしも閉鎖する必要はない。この他に清浄空気側開口へのダクト接続としては、未処理外気用開口35と同程度の清浄空気側開口34を設け、角エルボなどを介して角ダクト、丸ダクトまたはフレキシブルダクトを接続する場合もありえる。
未処理外気導入用開口35には外気導入部を開閉する回転可能な520mm×520mmの風量制御板51を取り付け、風量制御板51の清浄空気送風路側に80mmの間隔で配置した2本の接続部材72を介して風圧制御板71を設けた。
風圧制御板71は接続部材72の先端に設けたクリップ式挟み込み機構で接続部材と直線になるように固定し、接続部材71の根元には磁石付き平台を設け風量制御板51の所定の位置に貼り付けた鉄製薄板に垂直になるように磁力で固定した。風圧制御板71はクリップ式挟み込み機構により角度を付けて固定することもできる。
【0050】
[調整ダクトに適用した送風調整機構]
図12(b)および図14に示すように、調整チャンバー内に高さ580mm、長辺730mm、短辺600mmのダクト型送風路(調整ダクト31)を風量制御板51側に設けた。ダクト型送風路の風量制御板側の面は支持棒のみで開口しており、風量制御板の開閉に支障はない。
【0051】
[風量]
吸気口110の風量は多少変動するが、チャンバー32の清浄空気側開口34と未処理外気用開口35でそれぞれ測定した風量の合計が概ね3100~3200m3/hであったため、送風機出口の風量が3240m3/hになるように設定した。
【0052】
[送風調整機構周辺の垂直方向の風速]
本実施例ではチャンバー32が送風機よりも高い位置にあり清浄空気が上昇しチャンバー入口直前で90度に曲がって給気されるが、チャンバー32内の送風調整機構周辺の垂直方向の風速は、外気開口から手をかざして確認したところ、ダクト型送風路の有無に関わらず清浄空気側開口34の中央(風量制御板51の中央)付近から上側で大幅に増加した。
【0053】
[接続部材の長さ]
接続部材72の長さaは90mmおよび140mmとした。
【0054】
[風圧制御板の垂直位置]
図13、14に示すように、風圧制御板71の垂直位置は風圧制御板の中心と風量制御板51の下端との距離bで表し、250mmおよび290mmとした。
【0055】
[風圧制御板の水平位置]
図13、14に示すように、風圧制御板71の水平位置は風量制御板51の回転軸53からの距離cで表し、250mmおよび330mmとした。
【0056】
[風圧制御板の大きさ]
風圧制御板71の大きさd×eは面積が共通な200mm×200mm、245mm×163mm、163mm×245mmとさらに面積が大きく共通な250mm×250mm、306mm×204mm、204mm×306mmとした。
【0057】
[風量制御板の開度評価試験]
図15に示すように、風量制御板51の開度(未処理外気用開口からの開度)を表す指標は風量制御板51の先端と未処理外気用開口35との距離xとし、外気開口からスケールを差し込んで測定した。
xの値が
0(風量制御板が完全に閉じた状態)の場合は評価◎、
20mm未満の場合は評価〇、
20mm以上40mm未満の場合は評価△、
40mm以上の場合は評価×、
とした。
【0058】
[実験1]
調整ダクト31に適用した送風調整機構について接続部材の長さ、風圧制御板の位置、風圧制御板の大きさおよび形状を変更して風量制御板の開閉実験を行った。各条件の風量制御板の開度結果を表1に示す。風圧制御板がない場合は150mm(開度約15°)であった。
【0059】
【表1】
【0060】
[まとめ]
風圧制御板71の全ての大きさと形状で風量制御板51を完全に閉じることができ、特に、いずれの形状も面積が大きいほうはほとんどの条件で風量制御板51を閉じることができた。
送風抵抗を小さくしたい場合には、小さいほうの面積であっても縦長の形状や垂直位置を上側に調整することによって風量制御板51を閉じることができる。
bの違いのみを比較すると、いずれの条件においても290mmは250mmに比べて開度を同等以下に抑えることができた。
すなわち風圧制御板71の位置を上側に40mmずらすと開度を小さくする効果が増加した。さらに風量制御板51が閉じる条件では、接続部材72に対して風圧制御板71を前後に5度傾けても同様の効果があった。
調整ダクト31に適用した送風調整機構において、風圧制御板71がない場合には風量制御板51の開度を表す指標は150mmであったが、風圧制御板71を設けることにより風量制御板51を完全に閉じられるという有利な効果を確認できた。
【0061】
[実験2]
調整チャンバー32に適用した送風調整機構について接続部材72の長さ、風圧制御板71の位置、風圧制御板71の大きさおよび形状を変更して風量制御板71の開閉実験を行った。各条件の風量制御板51の開度結果を表2に示す。風圧制御板71がない場合は160mm(開度約16°)であった。
【0062】
【表2】
【0063】
[まとめ]
風圧制御板71の全ての大きさと形状で風量制御板51を完全に閉じることができ、特に、いずれの形状も面積が大きいほうは全ての条件で風量制御板51を閉じることができた。送風抵抗を小さくしたい場合には、小さいほうの面積であっても水平位置を回転軸から遠ざかるように垂直位置を上側にそれぞれ調整することによって風量制御板51を閉じることができる。
すなわち、ダクト型送風路がないためチャンバー32内に給気された清浄空気は吸気口110の影響を受けやすくなるが、風圧制御板71の水平位置を調整することによって、風量制御板51が閉じることを確認できた。
bの違いのみを比較すると、いずれの条件においても290mmは250mmに比べて開度を同等以下に抑えることができた。
すなわち風圧制御板71の位置を上側に40mmずらすと開度を小さくする効果が増加した。さらに風量制御板51が閉じる条件では、接続部材72に対して風圧制御板71を前後に5度傾けても同様の効果があった。
調整チャンバー32に適用した送風調整機構において、風圧制御板71がない場合には風量制御板51の開度を表す指標は160mmであったが、風圧制御板71を設けることにより風量制御板51を完全に閉じられるという有利な効果を確認できた。
【0064】
[実験1と2の比較]
実験1と2の比較から、調整チャンバー32に適用した送風調整機構5にダクト型送風路(調整ダクト31)を設けることによって、風量制御板51を閉じる効果が補助されることが確認できた。
【0065】
[実施態様3]
調整チャンバー32に適用した送風調整機構の例を図16から18に示す。図16では、2枚の風量制御板51a、51bが回転軸から離れた位置に接続された送風調整機構5について、(a)に風量制御板51bが未処理外気用開口35を閉鎖している状態を示し、(b)に風量制御板51aが清浄空気側開口34を閉鎖している状態を示している。
送風調整機構5は、チャンバー32の端部からそれぞれ離れた位置(同じ長さである必要はない)にある清浄空気側開口34と未処理外気用開口35を回動して封鎖することができる風量制御板51a、51bを備えている。
風量制御板51a、51bは、清浄空気側開口を封鎖する風量制御板51aと未処理外気用開口を封鎖する風量制御板51bが接続部材54を介して回転軸53に取り付けられている。接続部材54は送風抵抗とならないように、また軽量の観点からも棒状体が適し、風量制御板51a、51bの上辺と下辺に取り付けられた例を示している。
棒状体の本数や位置は任意であるが、風量制御板51a、51bの角度を一定に保つ機能を有する。また棒状体は風量制御板51a、51bをそれぞれ清浄空気側開口34と未処理外気用開口35を封鎖できる位置とする長さであればよい。
実験2の結果から、送風調整機構5を適用した調整チャンバー32では、通常運転時の風圧制御板71がない場合の風量制御板51の開度(未処理外気用開口からの開度)は16°であった。本実施例とは回転軸53の位置と風量制御板51の枚数は異なるが、通常運手時に風量制御板51aを回動して清浄空気を供給し、風量制御板51bは未処理外気用開口35を封鎖することは可能である。本実施例では清浄空気送風路への接続ダクト16は、角エルボを介して接続した丸ダクトまはたフレキシブルダクトを示したが、清浄空気側開口34を円形とし、フレキシブルダクトを直に接続することもできる。
【0066】
[効果]
・清浄空気側開口34と未処理外気用開口35がチャンバー32の端部から離れた位置(同じ距離でなくてもよい)に設けられた場合においても、送風機の通常運転時には清浄空気送風路を開き、外気導入部を塞いで清浄な空気を建物の吸気口に供給することができる。
・清浄空気側開口34と未処理外気用開口35がチャンバー32の端部に隣接して設けられ、両開口の間に回転軸53と風量制御板51(1枚)が設けられる場合には、風量制御板51の最大開度(清浄空気側開口からの開度)は90°であり、本実施例ではそれよりも開度は小さくなるが、清浄空気側開口34と風量制御板51の間に空間ができるため、送風量を補うことができる。
【0067】
図17では、2枚の風量制御板51a、51bが回転軸53から離れた位置に垂直方向をずらした状態で接続された送風調整機構について、(a)に風量制御板51bが未処理外気用開口35を閉鎖している状態を示し、(b)に風量制御板51aが清浄空気側開口34を閉鎖している状態を示している。
風量制御板51a、51bが回転軸53から離れた位置に垂直方向をずらした状態であること以外の構造的説明は図16と同様であり、実施態様3で記載しているので、詳細は省略する。
【0068】
図18では、2枚の風量制御板51a、51bが回転軸53から離れた位置に接続され、清浄空気側の風量制御板51aに風圧制御板71を設けた送風調整機構5について、(a)は風量制御板51bが未処理外気用開口35を閉鎖している状態、(b)は風量制御板51aが清浄空気側開口34を閉鎖している状態を示している。風圧制御板71の取り付け以外の構造的説明は図16と同様であり、実施態様3で記載しているので、詳細は省略するが、風量制御板51aに風圧制御板71を取り付けると、より確実に外気用開口を封鎖することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 送風機
11 フィルタ
12 基台
13 モータ
14 ファン
15 防振部材
16 送風機側接続ダクト
2 外気取り入れ機構
31 調整ダクト
32 調整チャンバー
33 清浄空気送風路
34 清浄空気側開口
34a 制御板ストッパ
35 未処理外気用開口
36 供給風路
37 過剰空気排気口
4 外気導入部
41 外気導入路
42 外気開口
43 制御板ストッパ
5 送風調整機構
51、51a、51b、51c 風量制御板
53 回転軸
54 接続部材
56 線状引っ張り部材
61、62 外気導入路開閉板

7 風圧伝達機構
71、71e、71f、71g 風圧制御板
72 接続部材

110 吸気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19