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特許7521163抗CEACAM6及びTIM3抗体の医薬組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】抗CEACAM6及びTIM3抗体の医薬組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240717BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021534355
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019084849
(87)【国際公開番号】W WO2020126808
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】18214059.0
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500431380
【氏名又は名称】ドイチェス クレープスフォルシュングスツェントルム シュティフトゥング デス エッフェントリッヒェン レヒツ
【氏名又は名称原語表記】Deutsches Krebsforschungszentrum Stiftung des oeffentlichen Rechts
【住所又は居所原語表記】Im Neuenheimer Feld 280, 69120 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ヴィルダ
(72)【発明者】
【氏名】マルク・トラウトヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】リエンク・オフリンガ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ヘニング・ベーム
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ベックホーフェ
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0275375(US,A1)
【文献】国際公開第2016/150899(WO,A2)
【文献】Cancer Chemother. Pharmacol.,2018年,81, [4],p.629-645
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療において抗TIM-3抗体と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて使用するための医薬であって、抗CEACAM6抗体を含み、前記抗CEACAM6抗体が、配列番号2のアミノ酸配列を含むH-CDR1、配列番号3のアミノ酸配列を含むH-CDR2、配列番号4のアミノ酸配列を含むH-CDR3、配列番号6のアミノ酸配列を含むL-CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むL-CDR2および配列番号8のアミノ酸配列を含むL-CDR3を含む、医薬。
【請求項2】
前記抗CEACAM6抗体が、配列番号1の可変重鎖配列および配列番号5の可変軽鎖配列を含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記抗CEACAM6抗体が、配列番号9の重鎖領域および配列番号10の軽鎖領域を含む、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
前記抗TIM-3抗体が、コボリマブ、MBG-453、BMS-986258、Sym-023、LY-3321367またはINCAGN-2390である、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
前記抗TIM-3抗体が、配列番号12のアミノ酸配列を含むH-CDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むH-CDR2、配列番号14のアミノ酸配列を含むH-CDR3、配列番号16のアミノ酸配列を含むL-CDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むL-CDR2および配列番号18のアミノ酸配列を含むL-CDR3を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
前記抗TIM-3抗体が、配列番号11の可変重鎖配列(VH)および配列番号15の可変軽鎖配列(VL)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
前記抗TIM-3抗体が、配列番号19の重鎖領域(HC)および配列番号20の軽鎖領域(LC)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
前記がんが、肺がん、特に非小細胞肺がん、卵巣がん、中皮腫、膵臓がん、胃がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、膀胱がん、胆管がん、乳がん、子宮頸がんまたは食道がんである、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
前記抗CEACAM6抗体または抗TIM-3抗体の少なくとも1つが、1つまたは複数の医薬品と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて投与される、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
抗CEACAM6抗体および抗TIM-3抗体を含む、がんを治療するための組み合わせ物であって、前記抗CEACAM6抗体および前記抗TIM-3抗体は同時に、別々にまたは順次に投与され、前記抗CEACAM6抗体が、配列番号2のアミノ酸配列を含むH-CDR1、配列番号3のアミノ酸配列を含むH-CDR2、配列番号4のアミノ酸配列を含むH-CDR3、配列番号6のアミノ酸配列を含むL-CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むL-CDR2および配列番号8のアミノ酸配列を含むL-CDR3を含む、組み合わせ物。
【請求項11】
抗TIM-3抗体と組み合わせてがんを治療するための医薬品を製造するための、請求項1から9のいずれか一項に規定の抗CEACAM6抗体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの成分、成分Aと成分Bの組み合わせであって、成分Aが抗CEACAM6抗体TPP-3310であり、成分Bが抗TIM-3抗体、優先的にはコボリマブ(Cobolimab)、MBG-453、BMS-986258、Sym-023、LY-3321367またはINCAGN-2390である、組み合わせに関する。
【0002】
本発明の別の態様は、がんを治療または予防するための医薬品を調製するための本明細書に記載されるような組み合わせの使用に関する。
【0003】
本発明のさらに別の態様は、対象のがんを治療または予防する方法であって、治療上有効量の本明細書に記載される組み合わせ物を前記対象に投与するステップを含む方法に関する。
【0004】
さらに、本発明は、
-抗CEACAM6抗体TPP-3310である成分A;
-優先的にはコボリマブ(Cobolimab)、MBG-453、BMS-986258、Sym-023、LY-3321367またはINCAGN-2390である成分B、および
場合により
-1つまたは複数の医薬品C
の組み合わせを含むキットであって、
任意選択で、前記成分AおよびBのいずれかまたは両方が、同時に、同時発生的に、別々に、または順次に投与される使用の準備ができている医薬製剤の形態である、
キットに関する。
【0005】
成分AおよびBは、好ましくは静脈内経路によって投与される。
【0006】
いくつかの実施形態では、がんが、肺がん、特に非小細胞肺がん(NSCLC)、膵臓がん、胃がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、膀胱がん、胆管がん、乳がん、子宮頸がん、食道がんである。
【背景技術】
【0007】
がんは、米国で2番目に多い死因であり、年間45万人が死亡している。がんの可能性のある環境的および遺伝的原因のいくつかを識別することにおいて実質的な進歩があったが、がんおよび関連疾患を標的とするさらなる治療様式が必要とされている。特に、調節不全の成長/増殖に関連する疾患を治療するための治療方法が必要とされている。
【0008】
がんは、増強された生存/アポトーシスに対する耐性および無限の増殖能などの獲得された機能的能力を有する細胞の選択プロセス後に生じる複雑な疾患である。したがって、確立された腫瘍の異なる特徴に対処するがん治療のための薬物を開発することが好ましい。
【0009】
腫瘍関連抗原に対するT細胞応答が多くの腫瘍で記載されており、リンパ系器官または血液中に腫瘍特異的メモリーT細胞の蓄積を引き起こすことが多い。しかしながら、T細胞が自己腫瘍細胞に対して反応する能力は一般的に低い。多くの腫瘍は、腫瘍免疫療法の限られた活性に寄与するT細胞のエフェクター機能を遮断する能力を有する。腫瘍細胞に対するT細胞不応答性は、多種多様ながんについて実証されている。
【0010】
免疫系は、健康な細胞での免疫系の過剰活性化を回避するために、複数のチェックポイントまたは「免疫学的ブレーキ」に依存する。腫瘍細胞は、免疫系による検出から逃れるためにこれらのチェックポイントを利用することが多い。CTLA-4およびPD-1は、がん治療の標的として研究されてきたチェックポイントである。
【0011】
チェックポイントタンパク質は、T細胞の活性化または機能を調節する。CTLA-4とそのリガンドであるCD80およびCD86;ならびにPD-1とそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2などの多数のチェックポイントタンパク質が知られている。記載される新規なチェックポイントタンパク質は、TIM-3、LAG-3などである。これらのタンパク質は、T細胞応答の共刺激性または阻害性相互作用を担う。免疫チェックポイントタンパク質は、自己寛容ならびに生理学的免疫応答の持続時間および大きさを調節および維持する。免疫チェックポイント阻害剤は、抗体を含むか、または抗体に由来する。現在、様々な免疫療法アプローチが、広範囲の悪性疾患の強力な治療戦略としての立場を守っている。
【0012】
顕著ながん免疫療法の成功の非常に卓越した最近の例は、免疫エフェクターT細胞または腫瘍細胞を含む抗原提示細胞のいずれかの阻害性分子を標的とするモノクローナル抗体(mAb)による免疫チェックポイント遮断療法を伴う。共阻害剤への干渉が、強力な抗腫瘍T細胞応答を引き起こすことが示されている(Pardoll:The blockade of immune checkpoint in cancer immunotherapy.Nat Rev Cancer 12:(2012)252~264)。
【0013】
CTLA-4は、ある特定のがんにおいて異常に上方制御され、T細胞の表面に存在し、腫瘍細胞に応答してT細胞活性化を弱めることが示されている。PD-1は、ある特定の腫瘍において上方制御されることが分かっている別の免疫学的チェックポイントである;これはT細胞機能を阻害して、腫瘍が免疫系を回避する能力に寄与する。
【0014】
免疫細胞活性化のための免疫チェックポイント分子の抗体遮断は、臨床的に検証されたアプローチである。2011年に、CTLA-4遮断抗体イピリムマブが、転移性黒色腫の第二選択療法についてFDAによって承認された(Yervoy)。別の例は、PD-1/PD-L1軸の遮断であり、いくつかの薬物が承認されているか、または現在臨床開発中であり、黒色腫、肺がん、RCC、膀胱がんなどにおいて印象的な臨床応答が報告されている(ShenおよびZhao:Efficacy of PD-1 and PD-L1 inhibitors and PD-L1 expression status in cancer:meta-analysis.BMJ2018;362:k3529)。
【0015】
2013年に、抗CTLA 4と抗PD1 mAb治療の組み合わせが、進行期の黒色腫患者の生存および腫瘍退縮の増加において相乗的に作用することが報告された(Wolchokら:Nivolumab plus ipilimumab in advanced melanoma.N Engl J Med 369:(2013)122~133)。
【0016】
抗TIM-3モノクローナル抗体は、フェーズIおよびフェーズIIの臨床開発段階にある(clinicaltrials.gov)。その臨床的関連および可能性は、例えばMarin-Acevedoら’’Next generation of immune checkpoint therapy in cancer:new developments and challenges’’,2018 Journal of Hematology&Oncology 11:39およびBuruguruら,’’Emerging targets in cancer immunotherapy’’,Seminars in Cancer Biology 52(2018):39-52に記載されている。
【0017】
CEACAM6も同様にCD8+T細胞応答の調節に寄与する。いくつかのCEACAMファミリーメンバーを発現する多発性骨髄腫において、抗CEACAM6 mAbまたはCEACAM6をサイレンシングするsiRNAによる治療が、悪性形質細胞に対するT細胞反応性を回復させ、CD8+T細胞応答調節におけるCEACAM6の役割を示した(Witzens-Harigら、Blood 2013年5月30日;121(22):4493~503)。TPP-3310を含むがん免疫療法のための非常に強力な抗CECAM6抗体は、国際公開第2016/150899号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】国際公開第2016/150899号
【非特許文献】
【0019】
【文献】Pardoll著、「The blockade of immune checkpoints in cancer immunotherapy.」、Nat Rev Cancer 12:2012年、252-264頁
【文献】ShenおよびZhao著、「Efficacy of PD-1 and PD-L1 inhibitors and PD-L1 expression status in cancer:meta-analysis.」、BMJ2018;362:k3529
【文献】Wolchokら著、「Nivolumab plus ipilimumab in advanced melanoma.」、N Engl J Med 369:2013年、122-133頁
【文献】Marin-Acevedoら著、「Next generation of immune checkpoint therapy in cancer:new developments and challenges」、2018年、Journal of Hematology&Oncology 11:39
【文献】Buruguruら著、「Emerging targets in cancer immunotherapy」、Seminars in Cancer Biology 52、2018年、39-52頁
【文献】Witzens-Harigら著、Blood、2013年、May 30;121(22):4493-503頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。しかしながら、以下の参考文献は、本発明が関係する技術分野の当業者に、本発明で使用される用語の多くの一般的な定義を提供することができ、このような定義が当技術分野で一般的に理解される意味と一致する限り、参照および使用することができる。このような参考文献には、それだけに限らないが、Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編、1988);Hale&Marham、The Harper Collins Dictionary of Biology(1991);およびLackieら、The Dictionary of Cell&Molecular Biology(第3版1999);およびCellular and Molecular Immunology、編者Abbas、LichtmanおよびPober、第2版、W.B.Saunders Companyが含まれる。当技術分野で一般的に理解される意味を有する本明細書で使用される用語の定義を提供する、当業者に利用可能な任意の追加の技術リソースを参照することができる。本発明の目的のために、以下の用語がさらに定義される。追加の用語は、本明細書の他の箇所で定義される。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈上明らかに別段の要求がない限り、単数形「a」および「the」は複数指示対象を含む。したがって、例えば、「遺伝子(a gene)」への言及は、1つまたは複数の遺伝子を言及し、当業者に既知のその等価物などを含む。
【0021】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。別段指示されない限り、特定のポリペプチド配列は、その保存的に改変されたバリアントも暗黙的に包含する。
【0022】
アミノ酸は、一般的に知られている3文字記号によって、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字記号によって、本明細書で言及され得る。同様に、ヌクレオチドは、一般的に受け入れられている1文字コードによって言及され得る。
【0023】
本発明によると、「抗体」という用語は、その最も広い意味で理解されるべきであり、免疫グロブリン分子、例えばインタクトまたは改変モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)を含む。免疫グロブリン分子は、好ましくは、典型的にはジスルフィド結合によって相互接続された4本のポリペプチド鎖である2本の重鎖(H)および2本の軽鎖(L)で構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、例えば3つのドメインCH 1、CH 2およびCH 3を含むことができる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)で構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に、例えば以下の順序で配置された3つのCDRおよび最大4つのFRで構成される:FR 1、CDR 1、FR 2、CDR 2、FR 3、CDR 3、FR 4。
【0024】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」(CDR;例えば、CDR1、CDR2およびCDR3)という用語は、その存在が抗原結合のために必要である抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは、典型的には、CDR 1、CDR 2およびCDR 3として識別される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatによって定義される「相補性決定領域」由来のアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の約24~34残基(L-CDR1)、50~56残基(L-CDR2)および89~97残基(L-CDR3)ならびに重鎖可変ドメイン中の31~35残基(H-CDR1)、50~65残基(H-CDR2)および95~102残基(H-CDR3);(Kabatら、Sequences of Proteins of Immulological Interest、第5版.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD.(1991))および/または「超可変ループ」由来の残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の約26~32残基(L-CDR1)、50~52残基(L-CDR2)および91~96残基(L-CDR3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26~32残基(H-CDR1)、53~55残基(H-CDR2)および96~101残基(H-CDR3)(ChothiaおよびLesk;J Mol Biol 196:901~917(1987))を含み得る。いくつかの例では、相補性決定領域が、Kabatに従って定義されるCDR領域と超可変ループの両方由来のアミノ酸を含み得る。
【0025】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、インタクト抗体を異なる「クラス」に割り当てることができる。インタクト抗体には5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかを「サブクラス」(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けることができる。本発明で使用するための好ましいクラスの免疫グロブリンはIgGである。
【0026】
異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ[アルファ]、[デルタ]、[イプシロン]、[ガンマ]および[ミュー]と呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成は周知である。本明細書で使用される場合、抗体は従来公知の抗体およびその機能的フラグメントである。
【0027】
「抗抗原」抗体は、抗原に特異的に結合する抗体を指す。例えば、抗PD-1抗体はPD-1に特異的に結合し、抗CECAM 6抗体はCECAM 6に特異的に結合し、抗TIM-3抗体はTIM-3に特異的に結合する。
【0028】
「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語は、所定の抗原/標的分子に結合する抗体または結合剤を指す。抗体または結合剤の特異的結合は、典型的には、少なくとも10-7M(Kd値として、すなわち好ましくは10-7Mより小さいKd値を有するもの)の親和性を有する抗体または結合剤を記載し、抗体または結合剤は、所定の抗原/標的分子または密接に関連する抗原/標的分子ではない非特異的抗原/標的分子(例えば、ウシ血清アルブミンまたはカゼイン)よりも、所定の抗原/標的分子に対して少なくとも2倍高い親和性を有する。抗体または結合剤の特異的結合は、複数の抗原/標的分子(例えば、異なる種のオルソログ)への抗体または結合剤の結合を排除するものではない。抗体は、好ましくは、少なくとも10-7M(Kd値として、換言すれば好ましくは10-7Mより小さいKd値を有するもの)、好ましくは少なくとも10-8M、より好ましくは10-9M~10-11Mの範囲の親和性を有する。Kd値は、例えば、表面プラズモン共鳴分光法によって測定することができる。
【0029】
「機能的フラグメント」、「抗原結合抗体フラグメント」または「抗体フラグメント」は、抗体全体が結合する抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数のフラグメントを指す。本発明の「機能的フラグメント」または「抗原結合抗体フラグメント」または「抗体フラグメント」は、それだけに限らないが、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2およびFvフラグメント;ダイアボディ;単一ドメイン抗体(DAb)、線状抗体;一本鎖抗体分子(scFv);および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体(linear antibody)、例えば二重および三重特異性抗体(C.A.K Borrebaeck編(1995)Antibody Engineering(Breakthroughs in Molecular Biology)、Oxford University Press;R.Kontermann&S.Duebel編(2001)Antibody Engineering(Springer Laboratory Manual)、Springer Verlag)を含む。
【0030】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導、増強、抑制または他の方法で修飾することを含む方法による、疾患に罹患している、または疾患に罹患するもしくは疾患の再発を患うリスクがある対象の治療を指す。
【0031】
対象の「治療」または「療法」は、疾患に関連する症状、合併症もしくは状態、または生化学的徴候の発症、進行、発達、重症度または再発を逆転、緩和、改善、阻害、減速または予防する目的で対象に対して実施される任意の種類の介入もしくはプロセス、または対象への活性物質の投与を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「CEACAM6」は、「CD66c」(分化抗原群66c)、または非特異的交差反応抗原、またはNCA、またはNCA-50/90としても知られる「癌胎児性抗原関連細胞接着分子6」を示す。CEACAM6は、細胞間接着に関与するグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)結合細胞表面タンパク質である。本明細書で使用される「CEACAM6」という用語は、ヒトCEACAM6(hCEACAM6)、hCEACAM6のバリアント、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhCEACAM6と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。ヒトCEACAM6の参照配列は、寄託番号P40199.3でUniProtKB/Swiss-Protデータベースから入手可能である。
【0033】
「プログラム細胞死-1(PD-1)」は、CD28ファミリーに属する免疫抑制受容体を指す。PD-1は、インビボで以前に活性化されたT細胞上で主に発現され、2つのリガンド、PD-L 1およびPD-L 2に結合する。本明細書で使用される「PD-1」という用語は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhPD-1と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。完全なhPD-1配列は、GenBank寄託番号U64863で見出すことができる。
【0034】
「プログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)」は、PD-1に結合するとT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御するPD-1に対する2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの1つである(もう1つはPD-L2である)。本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、ヒトPD-L1(hPDL1)、hPD-L1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhPD-L1と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。完全なhPD-L1配列は、GenBank寄託番号Q9NZQ7で見出すことができる。
【0035】
本明細書で使用される「TIM-3」は、TIM-ファミリーのメンバーである「T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3」(HAVCAR2としても公知)を示す。TIM-3は、細胞表面の膜貫通タンパク質である。これは、耐性に関与する活性化誘導阻害分子として説明されており、T細胞の枯渇を誘導することが示されている。本明細書で使用される「TIM-3」という用語は、ヒトTIM-3(hTIM-3)、hTIM-3のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびにhTIM-3と少なくとも1つの共通のエピトープを有する類似体を含む。ヒトTIM-3の参照配列は、UniProtKB/Swiss-Protデータベースから寄託番号UniProtKB Q8TDQ0(HAVR2_HUMAN)で、そしてNCBIデータベースから、NCBI参照配列:NP_116171.3で入手可能である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」という用語は互換的に使用され、それだけに限らないが、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物、例えばウシ、ウマ、イヌ、ヒツジまたはネコを含む哺乳動物を意味する。好ましくは、患者はヒトである。
【0037】
本発明の説明
驚くべきことに、TIM-3免疫チェックポイント阻害剤と抗CECAM 6抗体TPP-3310の組み合わせが、腫瘍退縮のための薬物組み合わせの治療可能性を評価するために実施されたインビトロアッセイにおいて、相加よりもはるかに多く作用することが観察された。この効果は、驚くことに、PD-1またはPD-L1免疫チェックポイント阻害剤と抗CEACAM6抗体TPP-3310の組み合わせよりもさらに強力であった。
【0038】
そのため、本発明は、少なくとも2つの成分、成分Aと成分Bの組み合わせであって、成分Aが抗CEACAM6抗体TPP-3310であり、成分Bが抗TIM-3抗体、優先的にはコボリマブ(Cobolimab)、MBG-453、BMS-986258、Sym-023、LY-3321367またはINCAGN-2390である、組み合わせを提供する。
【0039】
本明細書に記載および定義される少なくとも2つの成分AおよびBを含む組み合わせは、「本発明の組み合わせ」とも呼ばれる。
【0040】
さらに、本発明は、
-抗CEACAM6抗体TPP-3310である成分A;
-抗TIM-3抗体、優先的にはコボリマブ(Cobolimab)、MBG-453、BMS-986258、Sym-023、LY-3321367またはINCAGN-2390である成分B、および
場合により
-1つまたは複数の医薬品C
の組み合わせを含むキットであって、
任意選択で前記成分AおよびBのいずれかまたは両方が、同時に、同時発生的に、別々に、または順次に投与される使用の準備ができている医薬製剤の形態である、
キットに関する。
【0041】
本発明はさらに、がんの治療において抗TIM-3抗体(成分B)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて使用するための抗CEACAM6抗体(成分A)であって、抗体TPP-3310のH-CDR 1、H-CDR 2、H-CDR 3、L-CDR 1、L-CDR 2およびL-CDR 3を含む抗CEACAM6抗体を提供する。
【0042】
本発明はさらに、がんの治療において抗TIM-3抗体(成分B)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて使用するための抗CEACAM6抗体(成分A)であって、抗体TPP-3310の可変重鎖配列および可変軽鎖配列を含む抗CEACAM6抗体を提供する。
【0043】
本発明はさらに、がんの治療において抗TIM-3抗体(成分B)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて使用するための抗CEACAM6抗体(成分A)であって、抗体TPP-3310の重鎖領域および軽鎖領域を含む抗CEACAM6抗体を提供する。
【0044】
本発明はさらに、がんの治療において抗TIM-3抗体(成分B)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて使用するための抗CEACAM6抗体TPP-3310(成分A)であって、抗TIM-3抗体が、コボリマブ(Cobolimab)、MBG-453、BMS-986258、Sym-023、LY-3321367またはINCAGN-2390である抗CEACAM6抗体を提供する。
【0045】
本発明はさらに、がんの治療において抗TIM-3抗体(成分B)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて使用するための抗CEACAM6抗体TPP-3310(成分A)であって、がんが、肺がん、特に非小細胞肺がん、卵巣がん、中皮腫、膵臓がん、胃がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、膀胱がん、胆管がん、乳がん、子宮頸がんまたは食道がんである、抗CEACAM6抗体TPP-3310(成分A)を提供する。
【0046】
本発明はさらに、がんの治療において抗TIM-3抗体(成分B)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて使用するための抗CEACAM6抗体TPP-3310(成分A)であって、抗CEACAM6抗体または抗TIM-3抗体の少なくとも1つが1つまたは複数の医薬品(成分C)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて投与される、抗CEACAM6抗体TPP-3310(成分A)を提供する。
【0047】
本発明はさらに、がんを治療する方法であって、有効量の抗CEACAM6抗体TPP-3310(成分A)を、抗TIM-3抗体(成分B)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0048】
本発明はさらに、有効量の抗CEACAM6抗体TPP-3310(成分A)を抗TIM-3抗体(成分B)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせて、それを必要とする患者に投与することを含むがんを治療する方法であって、抗TIM-3抗体がコボリマブ(Cobolimab)、MBG-453、BMS-986258、Sym-023、LY-3321367またはINCAGN-2390である方法を提供する。
【0049】
本発明はさらに、抗TIM-3抗体(成分B)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせた、がんを治療するための医薬品を製造するための抗CEACAM6抗体TPP-3310(成分A)の使用を提供する。
【0050】
本発明はさらに、抗TIM-3抗体がコボリマブ(Cobolimab)、MBG-453、BMS-986258、Sym-023、LY-3321367またはINCAGN-2390である、抗TIM-3抗体(成分B)と同時に、別々にまたは順次に組み合わせた、がんを治療するための医薬品を製造するための抗CEACAM6抗体TPP-3310(成分A)の使用を提供する。
【0051】
成分は、経口、静脈内、局所、局所導入(local installation)、腹腔内または経鼻経路によって、互いに独立に投与されてよい。
【0052】
別の態様によると、本発明は、がんを治療または予防するための上記の組み合わせを網羅する。
【0053】
別の態様によると、本発明は、がんを治療または予防するための医薬品を調製するための上記のような組み合わせの使用を網羅する。
【発明を実施するための形態】
【0054】
組み合わせの成分A
成分Aは、国際公開第2016/150899(A2)号に開示された抗CEACAM6抗体TPP-3310である。国際公開第2016150899(A2)号に開示されているさらなる抗CECAM6抗体は、例えばTPP-3714、TPP-3820、TPP-3821、TPP-3707およびTPP-3705である。これらの抗体は、ヒトCEACAM6に高い親和性で結合するヒトまたはヒト化抗体であり、サルCEACAM6に対して交差反応性であり、パラログ、特にCEACAM1、CEACAM3、およびCEACAM5には結合せず、CEACAM6を介した免疫抑制を軽減できる。
【0055】
「抗CEACAM6抗体」という用語は、優先的に診断および/または治療用途に十分な親和性を有する、がん標的分子CEACAM6と特異的に結合する抗体に関する。特定の実施形態では、抗CEACAM6抗体は、異なる種間で保存されたエピトープに結合する。
【0056】
TPP-3310は、配列番号2のアミノ酸配列を含むH-CDR1、配列番号3のアミノ酸配列を含むH-CDR2、配列番号4のアミノ酸配列を含むH-CDR3、配列番号6のアミノ酸配列を含むL-CDR1、配列番号7のアミノ酸配列を含むL-CDR2、および 配列番号8のアミノ酸配列を含むL-CDR3を含む抗体である。
【0057】
好ましくは、TPP-3310は、配列番号1の可変重鎖配列(VH)および配列番号5の可変軽鎖配列(VL)を含む抗体である。
【0058】
非常に好ましくは、TPP-3310は、配列番号9の重鎖領域(HC)および配列番号10の軽鎖領域(LC)を含む抗体である。
【0059】
組み合わせの成分B
成分Bは、TIM-3受容体に特異的に結合し、TIM-3活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である(「抗TIM-3抗体」)。
【0060】
抗TIM-3抗体
特定の実施形態では、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、コボリマブ(Cobolimab)(TSR-022、Tesaro)であるか、またはコボリマブ(Cobolimab)と同じCDR領域を有する。コボリマブ(Cobolimab)は、既知のTIM-3リガンド(HMGB1、ガレクチン-9、ホスファチジルセリン(PS))のいくつかとの相互作用を選択的に防ぎ、それによって抗腫瘍T細胞機能のダウンレギュレーションを遮断するTIM-3免疫チェックポイント阻害剤抗体である。コボリマブ(Cobolimab)は、例えば、国際公開第2016161270(A1)号および国際公開第2018129553(A1)号に記載されている。コボリマブ(Cobolimab)は現在臨床試験中である。ClinicalTrials.gov識別子:NCT02817633およびNCT03680508。
【0061】
他の実施形態では、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、MBG-453(Novartis)であるか、またはMBG-453と同じCDR領域を有する。MBG-453は、既知のTIM-3リガンド(HMGB1、ガレクチン-9、ホスファチジルセリン(PS))のいくつかとの相互作用を選択的に防ぎ、それによって抗腫瘍T細胞機能のダウンレギュレーションを遮断するTIM-3免疫チェックポイント阻害剤抗体である。MBG-453は、例えば、国際公開第2015117002(A1)号に記載されている。MBG-453は、CAS番号2128742-61-8で登録されている。MBG-453は現在臨床試験中である。ClinicalTrials.gov識別子:NCT02608268およびNCT03066648。
【0062】
他の実施形態では、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、BMS-986258(Bristol-Myers Squibb,Five Prime)であるか、またはBMS-986258と同じCDR領域を有する。BMS-986258は、既知のTIM-3リガンド(HMGB1、ガレクチン-9、ホスファチジルセリン(PS))のいくつかとの相互作用を選択的に防ぎ、それによって抗腫瘍T細胞機能のダウンレギュレーションを遮断するTIM-3免疫チェックポイント阻害剤抗体である。BMS-986258は現在臨床試験中である。ClinicalTrials.gov識別子:NCT03446040。BMS-986258は、例えば、国際公開第2018013818(A2)号に記載されている。
【0063】
他の実施形態では、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、Sym-023(Symphogen)であるか、またはSym-023と同じCDR領域を有する。Sym-023は、既知のTIM-3リガンド(HMGB1、ガレクチン-9、ホスファチジルセリン(PS))のいくつかとの相互作用を選択的に防ぎ、それによって抗腫瘍T細胞機能のダウンレギュレーションを遮断するTIM-3免疫チェックポイント阻害剤抗体である。Sym-023は現在臨床試験中である。ClinicalTrials.gov識別子:NCT03489343。Sym-023は、例えば、国際公開第2017178493(A1)号に記載されている。
【0064】
他の実施形態では、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、LY-3321367(Eli Lilly)であるか、またはLY-3321367と同じCDR領域を有する。LY-3321367は、既知のTIM-3リガンド(HMGB1、ガレクチン-9、ホスファチジルセリン(PS))のいくつかとの相互作用を選択的に防ぎ、それによって抗腫瘍T細胞機能のダウンレギュレーションを遮断するTIM-3免疫チェックポイント阻害剤抗体である。LY-3321367は現在臨床試験中である。ClinicalTrials.gov識別子:NCT03099109。LY-3321367は、例えば、国際公開第2018039020(A1)号に記載されている。
【0065】
他の実施形態では、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、INCAGN-2390(Agenus)であるか、またはINCAGN-2390と同じCDR領域を有する。INCAGN-2390は、既知のTIM-3リガンド(HMGB1、ガレクチン-9、ホスファチジルセリン(PS))のいくつかとの相互作用を選択的に防ぎ、それによって抗腫瘍T細胞機能のダウンレギュレーションを遮断するTIM-3免疫チェックポイント阻害剤抗体である。INCAGN-2390は現在臨床試験中である。ClinicalTrials.gov識別子:NCT03652077。INCAGN-2390は、例えば、国際公開第2017205721(A1)号に記載されている。
【0066】
他の実施形態では、抗TIM-3抗体またはその抗原結合部分は、R&D Jackson ImmunoresearchのMAB2365であるか、またはMAB2365と同じCDR領域を有する。MAB2365はrIgG2抗体である。
【0067】
特定の実施形態では、抗TIM-3抗体は、
(i)配列番号12のアミノ酸配列を含むH-CDR1、配列番号13のアミノ酸配列を含むH-CDR2、配列番号14のアミノ酸配列を含むH-CDR3、配列番号16のアミノ酸配列を含むL-CDR1、配列番号17のアミノ酸配列を含むL-CDR2、および配列番号18のアミノ酸配列を含むL-CDR3
を含む。
【0068】
特定の実施形態では、抗TIM-3抗体は、
(i)配列番号11の可変重鎖配列(VH)および配列番号15の可変軽鎖配列(VL)
を含む。
【0069】
特定の実施形態では、抗TIM-3抗体は、
(i)配列番号19の重鎖領域(HC)および配列番号20の軽鎖領域(LC)
を含む。
【0070】
抗体の作製
標的分子に結合する抗体または抗原結合抗体フラグメントは、例えば化学合成または組換え発現などの公知の方法を使用して当業者によって調製され得る。がん標的分子に対する結合剤は、商業的に獲得され得る、または例えば化学合成もしくは組換え発現などの公知の方法を使用して当業者によって調製され得る。抗体または抗原結合抗体フラグメントを調製するさらなる方法は、国際公開第2007/070538号(22頁の「抗体」参照)に記載されている。当業者であれば、どのようにファージディスプレイライブラリー(例えば、Morphosys HuCAL Gold)などの方法を編集して、抗体または抗原結合抗体フラグメントを発見するために使用することができるか知っている(国際公開第2007/070538号、24ff頁および70頁のAK実施例1、72頁のAK実施例2参照)。B細胞からのDNAライブラリーを使用する抗体を調製するさらなる方法は、例えば26頁に記載されている(国際公開第2007/070538号)。抗体をヒト化する方法は、国際公開第2007070538号の30~32頁およびQueenら、Pros.Natl.Acad.Sci.USA 8610029~10033、1989または国際公開第90/0786号に詳細に記載されている。さらに、一般にタンパク質および特に抗体の組換え発現のための方法は、当業者に公知である(例えば、BergerおよびKimmel(Guide to Molecular Cloning Techniques、Methods in Enzymology、第152巻、Academic Press,Inc.);Sambrookら(Molecular Cloning A Laboratory Manual(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press;Cold Spring Harbor、N.Y.;1989)第1~3巻);Current Protocols in Molecular Biology、(F.M.Ausabelら[編]、Current Protocols、Green Publishing Associates、Inc./John Wiley&Sons,Inc.);Harlowら(Monoclonal Antibodies A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(19881、Paul[編]);Fundamental Immunology、(Lippincott Williams&Wilkins(1998));およびHarlowら(Using Antibodies A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1998)参照)。当業者であれば、タンパク質/抗体の発現に必要な対応するベクター、プロモーターおよびシグナルペプチドを知っている。一般的な方法は、国際公開第2007/070538号の41~45頁にも記載されている。IgG1抗体を調製する方法は、例えば、国際公開第2007/070538号の74ff頁の実施例6に記載されている。抗原に結合した後の抗体の内在化の決定を可能にする方法は当業者に公知であり、例えば国際公開第2007/070538号の80頁に記載されている。当業者であれば、異なる標的分子特異性を有する抗体の調製と同様に、カルボアンヒドラーゼIX(carboanhydrase IX)(Mn)抗体を調製するために使用されている国際公開第2007/070538号に記載される方法を使用することができる。
【0071】
細菌発現
当業者であれば、抗体、その抗原結合フラグメントまたはそのバリアントを細菌発現の助けを借りて産生することができる方法を知っている。
【0072】
所望のタンパク質の細菌発現に適した発現ベクターは、適切な翻訳開始シグナルおよび翻訳終結シグナル、ならびに機能的プロモーターと共に、機能的リーディングフレーム内に所望のタンパク質をコードするDNA配列の挿入によって構築される。ベクターは、ベクターの保持、および所望であれば宿主内でのその増幅を可能にするために、1つまたは複数の表現型選択マーカーおよび複製起点を含む。形質転換に適した原核宿主には、それだけに限らないが、大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)ならびにシュードモナス属(Pseudomonas)、ストレプトミセス属(Streptomyces)およびブドウ球菌属(Staphylococcus)の種々の種が含まれる。細菌ベクターは、例えばバクテリオファージ、プラスミド、またはファージミドに基づき得る。これらのベクターは、市販のプラスミドに由来する選択マーカーおよび細菌複製起点を含み得る。多くの市販のプラスミドは、典型的には周知のクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)の要素を含む。細菌系では、発現させるタンパク質の意図する使用に基づいて、いくつかの有利な発現ベクターを選択することができる。
【0073】
適切な宿主株の形質転換および宿主株の適切な細胞密度への増殖の後、選択されたプロモーターを、適切な手段(例えば、温度変化または化学的誘導)によってデリプライミング(de-reprimed)/誘導し、細胞をさらなる期間培養する。細胞を、典型的には遠心分離によって収穫し、必要であれば、物理的様式または化学的手段で消化し、得られた生抽出物をさらなる精製のために保持する。
【0074】
哺乳動物細胞発現
当業者であれば、抗体、その抗原結合フラグメントまたはそのバリアントを哺乳動物細胞発現の助けを借りて産生することができる方法を知っている。
【0075】
哺乳動物細胞宿主における発現のための好ましい調節配列には、哺乳動物細胞中での高い発現をもたらすウイルスエレメント、例えばサイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/または発現増幅因子が含まれる。抗体の発現は、構成的であっても調節されていてもよい(例えば、Tet系と併せてテトラサイクリンなどの小分子誘導物質の添加または除去により誘導)。
【0076】
ウイルス調節エレメントおよびその配列のさらなる説明については、例えば、Stinskiによる米国特許第5168062号、Bellらによる米国特許第4510245号およびSchaffnerらによる米国特許第4968615号が参照される。組換え発現ベクターも同様に、複製起点および選択マーカーを含むことができる(例えば、米国特許第4399216号、同第4634665号および米国特許第5179017号参照)。適切な選択マーカーには、ベクターが細胞に導入されると、G418、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、ゼオシン/ブレオマイシンもしくはメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する遺伝子またはグルタミン合成酵素などの宿主の栄養要求性をもたらす選択マーカーが含まれる(Bebbingtonら、Biotechnology(N Y).1992年2月;10(2):169~75)。
【0077】
例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子はメトトレキサートに対する耐性を付与し、neo遺伝子はG418に対する耐性を付与し、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)由来のbsd遺伝子はブラストサイジンに対する耐性を付与し、ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼはピューロマイシンに対する耐性を付与し、Sh ble遺伝子産物はゼオシンへの耐性を付与し、ハイグロマイシンに対する耐性は、大腸菌(E.coli)ハイグロマイシン耐性遺伝子(hygまたはhph)によって付与される。DHFRまたはグルタミン合成酵素などの選択マーカーも、MTXおよびMSXと併せて増幅技術に有用である。
【0078】
発現ベクターの宿主細胞へのトランスフェクションは、電気穿孔、ヌクレオフェクション(nucleofection)、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、ポリカチオンベースのトランスフェクション(ポリエチレンイミン(PEI)ベースのトランスフェクションなど)およびDEAE-デキストラントランスフェクションを含む標準的な技術を用いて行うことができる。
【0079】
抗体、その抗原結合フラグメントまたはそのバリアントを発現するのに適した哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、例えばCHO-K1、CHO-S、CHO-K1SV[R.J.KaufmanおよびP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601~621に記載されるDHFR選択マーカーと共に使用される、UrlaubおよびChasin、(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216~4220およびUrlaubら、Cell.1983年6月;33(2):405~12に記載されるDHFR-CHO細胞;およびFanら、Biotechnol Bioeng.2012年4月109(4):1007~15に例示される他のノックアウト細胞を含む]、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、HEK293細胞、HKB11細胞、BHK21細胞、CAP細胞、EB66細胞並びにSP2細胞が含まれる。
【0080】
抗体、その抗原結合フラグメントまたはそのバリアントの発現はまた、HEK293、HEK293T、HEK293-EBNA、HEK293E、HEK293-6E、HEK293-Freestyle、HKB11、Expi293F、293EBNALT75、CHO Freestyle、CHO-S、CHO-K1、CHO-K1SV、CHOEBNALT85、CHOS-XE、CHO-3E7またはCAP-T細胞(例えば、Durocherら、Nucleic Acids Res.2002年1月15日;30(2):E9)などの発現系で一過性または半安定様式で行われ得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、発現されるタンパク質が宿主細胞が増殖している細胞培養培地に分泌されるように、発現ベクターが構築される。抗体、その抗原結合フラグメントまたはそのバリアントを、当業者に知られているタンパク質精製法を用いて細胞培養培地から得ることができる。
【0082】
精製
抗体、その抗原結合フラグメントまたはそのバリアントは、例として硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、プロテインAクロマトグラフィー、プロテインGクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーが挙げられる周知の方法によって組換え細胞培養物から回収および精製することができる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も同様に精製に使用することができる。例えば、Colligan、Current Protocols in Immunology、またはCurrent Protocols in Protein Science、John Wiley&Sons、NY、N.Y.、(1997~2001)、例えば、第1、4、6、8、9、10章を参照されたい。
【0083】
本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントまたはそのバリアントには、天然精製産物、化学合成法からの産物、および原核生物または真核生物の宿主細胞において組換え技術を用いて産生される産物が含まれる。真核生物宿主には、例えば、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞が含まれる。組換え発現のために選択された宿主細胞に応じて、発現されるタンパク質はグリコシル化形態または非グリコシル化形態であり得る。
【0084】
好ましい実施形態では、抗体が、(1)例えばローリー法、UV-vis分光法もしくはSDSキャピラリーゲル電気泳動(例えば、Caliper LabChip GXII、GX 90もしくはBiorad Bioanalyzer機器で)によって測定される95重量%超の程度まで、より好ましい実施形態では、99重量%超まで、(2)N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を決定するのに適した程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いて還元もしくは非還元条件下でSDS-PAGEによって決定される均質になるまで、精製される。
【0085】
通常、単離抗体は少なくとも1つのタンパク質精製ステップを用いて得られる。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2A】
【表2B】
【表2C】
【0088】
がんを治療する方法
本発明の文脈内で、「がん」という用語は、それだけに限らないが、乳房、肺、脳、生殖器、消化管、尿路、肝臓、眼、皮膚、頭頸部、甲状腺、副甲状腺のがんおよびそれらの遠隔転移を含む。これらの障害には多発性骨髄腫、リンパ腫、肉腫および白血病も含まれる。
【0089】
乳がんの例には、それだけに限らないが、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性乳管癌、および非浸潤性小葉癌が含まれる。
【0090】
気道のがんの例には、それだけに限らないが、肺がん、特に小細胞および非小細胞肺癌、ならびに気管支腺腫および胸膜肺芽腫が含まれる。
【0091】
脳がんの例には、それだけに限らないが、脳幹および視床下部(hypophtalmic)膠腫、小脳および大脳星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫、ならびに神経外胚葉および松果体腫瘍が含まれる。
【0092】
男性生殖器の腫瘍には、それだけに限らないが、前立腺および精巣がんが含まれる。女性生殖器の腫瘍には、それだけに限らないが、子宮内膜、子宮頚部、卵巣、膣および外陰がん、ならびに子宮の肉腫が含まれる。
【0093】
消化管の腫瘍には、それだけに限らないが、肛門、結腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃、膵臓、直腸、小腸および唾液腺がんが含まれる。
【0094】
尿路の腫瘍には、それだけに限らないが、膀胱、陰茎、腎臓、腎盂、尿管、尿道およびヒト乳頭状腎臓がんが含まれる。
【0095】
目のがんには、それだけに限らないが、眼内黒色腫および網膜芽細胞腫が含まれる。
【0096】
肝がんの例には、それだけに限らないが、肝細胞癌(線維層板型の変形を伴うまたは伴わない肝臓細胞癌)、胆管癌(肝内胆管癌)および混合型肝細胞性胆管癌(mixed hepatocellular cholangiocarcinoma)が含まれる。
【0097】
皮膚がんには、それだけに限らないが、扁平上皮癌、カポジ肉腫、黒色腫、特に悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚がんおよび非黒色腫皮膚がんが含まれる。
【0098】
頭頸部がんには、それだけに限らないが、喉頭、下咽頭、鼻咽頭、中咽頭がん、口唇および口腔がんおよび扁平細胞が含まれる。
【0099】
リンパ腫には、それだけに限らないが、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、ホジキン病および中枢神経系のリンパ腫が含まれる。
【0100】
肉腫には、それだけに限らないが、軟組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫および横紋筋肉種が含まれる。
【0101】
白血病には、それだけに限らないが、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病および有毛細胞白血病が含まれる。
【0102】
本発明は、がん、特に(限定されないが)結腸直腸がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、黒色腫、子宮内膜がん、リンパ腫、白血病等の治療または予防において本発明の組み合わせを使用する方法に関する。組み合わせを利用して、がん、特に(限定されないが)結腸直腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、黒色腫、子宮内膜がん、リンパ腫、白血病等の治療または予防において、細胞増殖および/または細胞分裂を阻害、遮断、低減、減少等させる、ならびに/あるいはアポトーシスをもたらすことができる。この方法は、がん、特に(限定されないが)結腸直腸がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、黒色腫、子宮内膜がん、リンパ腫、白血病等の治療または予防に有効な量の本発明の組み合わせ、またはその薬学的に許容され得る塩、異性体、多形、代謝産物、水和物、溶媒和物もしくはエステルを、ヒトを含む、それを必要とする哺乳動物に投与するステップを含む。
【0103】
本文書の全体にわたって述べられている「治療すること」または「治療」という用語は、慣習的に使用され、例えば、がんなどの疾患または障害の状態等に有効である、これを緩和する、低減する、軽減する、改善する目的での対象の管理またはケアである。
【0104】
好ましい実施形態では、がんが、肺がん、特に非小細胞肺がん(NSCLC)、卵巣がん、中皮腫、膵臓がん、または胃がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、膀胱がん、胆管がん、乳がん、子宮頸がん、食道がんである。
【0105】
用量および投与
がん、特に(限定されないが)結腸直腸がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、肝臓がん、脳がん、黒色腫、子宮内膜がん、リンパ腫、白血病等の治療または予防に有用な化合物を、哺乳動物において上で識別された状態の治療を決定するための標準的毒性試験および標準的薬理学的アッセイ、ならびにこれらの結果とこれらの状態を治療するために使用される既知の医薬品の結果との比較によって、評価すると知られている標準的検査技術に基づいて、本発明の組み合わせの有効投与量を適応症を治療するために容易に決定することができる。状態の治療で投与されるべき有効成分の量は、使用される特定の組み合わせおよび投与量単位、投与様式、治療期間、治療される患者の年齢、体重および性別、ならびに治療される状態の性質および程度などの考慮事項により広く変化し得る。
【0106】
投与されるべき有効成分の総量は、一般的に約0.001mg/kg~約200mg/kg体重/日、好ましくは約0.01mg/kg~約30mg/kg体重/日に及ぶ。臨床的に有用な投与スケジュールは、1~3回/日投与~4週間に1度投与に及ぶ。さらに、患者が一定期間薬剤を投与されない「休薬日」が、薬理学的効果と耐容性との間の全体的なバランスに有益となり得る。単位投与量は約0.5mg~約2500mgの有効成分を含み、1日1回もしくは複数回または1日1回未満投与することができる。静脈内、筋肉内、皮下および非経口注射を含む注射による投与、ならびに注入技術の使用に関する平均投与量は、好ましくは0.01~200mg/kg総体重となる。
【0107】
当然、各患者のための具体的な初期および継続投与レジメンは、主治診断医により決定される状態の性質および重症度、使用される具体的な組み合わせの活性、患者の年齢、体重および全身状態、投与期間、投与経路、薬剤の排泄率、薬剤の組み合わせなどによって変化する。本発明の組み合わせまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルもしくは組成物の所望の治療様式および投与回数は、従来の治療試験を用いて当業者によって確認され得る。
【0108】
上記の成分A、上記の成分B、および成分C、すなわち1つまたは複数のさらなる医薬品の組み合わせを使用する治療法。
本発明の成分Aと成分Bの組み合わせ物は、唯一の医薬品として、または1つもしくは複数のさらなる医薬品との組み合わせであって、成分A、BおよびCの結果として得られる組み合わせが許容できない有害効果をもたらさない、組み合わせで投与することができる。例えば、本発明の成分Aと成分Bの組み合わせ物は、成分C、すなわち1つまたは複数のさらなる医薬品、例えば公知の抗血管新生剤、抗増殖剤、抗炎症剤、鎮痛剤、免疫調節剤、利尿剤、抗不整脈剤、抗高コレステロール血症剤、抗脂質異常症剤、抗糖尿病剤または抗ウイルス剤など、ならびにこれらの混和物および組み合わせ物と組み合わせることができる。
【0109】
成分Cは1つまたは複数の医薬品、例えば131I-chTNT、アバレリックス、アビラテロン、アクラルビシン、アダリムマブ、ado-トラスツズマブエムタンシン、アファチニブ、アフリベルセプト、アルデスロイキン、アレクチニブ、アレムツズマブ、アレンドロン酸、アリトレチノイン、アルトレタミン、アミフォスチン、アミノグルテチミド、ヘキシルアミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナストロゾール、アンセスチム、アネトールジチオールチオン、アネツマブ・ラブタンシン、アンジオテンシンII、抗トロンビンIII、アプレピタント、アルシツモマブ、アルグラビン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アテゾリズマブ、アキシチニブ、アザシチジン、バシリキシマブ、ベロテカン、ベンダムスチン、ベシレソマブ、ベリノスタット、ベバシズマブ、ベキサロテン、ビカルタミド、ビサントレン、ブレオマイシン、ブリナツモマブ、ボルテゾミブ、ブセレリン、ボスチニブ、ブレンツキシマブベドチン、ブスルファン、カバジタキセル、カボザンチニブ、カルシトニン、ホリナートカルシウム、レボホリナートカルシウム、カペシタビン、カプロマブ、カルバマゼピン、カルボプラチン、カルボコン、カルフィルゾミブ、カルモフール、カルムスチン、カツマキソマブ、セレコキシブ、セルモロイキン、セリチニブ、セツキシマブ、クロラムブシル、クロルマジノン、クロルメチン、シドホビル、シナカルセト、シスプラチン、クラドリビン、クロドロン酸、クロファラビン、コビメチニブ、コパンリシブ、クリサンタスパーゼ、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダラツムマブ、ダルベポエチンアルファ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デガレリクス、デニロイキンジフチトクス、デノスマブ、デプレオチド、デスロレリン、ジアンヒドロガラクチトール、デクスラゾキサン、塩化ジブロスピジウム、ジアンヒドロガラクチトール、ジクロフェナク、ジヌツキシマブ、ドセタキセル、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドキソルビシン+エストロン、ドロナビノール、エクリズマブ、エドレコロマブ、酢酸エリプチニウム、エロツズマブ、エルトロンボパグ、エンドスタチン、エノシタビン、エンザルタミド、エピルビシン、エピチオスタノール、エポエチンアルファ、エポエチンベータ、エポエチンゼータ、エプタプラチン、エリブリン、エルロチニブ、エソメプラゾール、エストラジオール、エストラムスチン、エチニルエストラジオール、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、ファドロゾール、フェンタニル、フィルグラスチム、フルオキシメステロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、フォルメスタン、ホスアプレピタント、ホテムスチン、フルベストラント、ガドブトロール、ガドテリドール、ガドテル酸メグルミン、ガドベルセタミド、ガドキセト酸、硝酸ガリウム、ガニレリクス、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、グルカルピダーゼ、グルトキシム(glutoxim)、GM-CSF、ゴセレリン、グラニセトロン、顆粒球コロニー刺激因子、ヒスタミン二塩酸塩、ヒストレリン、ヒドロキシカルバミド、I-125シード、ランソプラゾール、イバンドロン酸、イブリツモマブ・チウキセタン、イブルチニブ、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イミキモド、インプロスルファン、インジセトロン、インカドロン酸、インゲノールメブテート、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、イオビトリドール、イオベングアン(123I)、イオメプロール、イピリムマブ、イリノテカン、イトラコナゾール、イクサベピロン、イキサゾミブ、ランレオチド、ランソプラゾール、ラパチニブ、イアソコリン(Iasocholine)、レナリドミド、レンバチニブ、レノグラスチム、レンチナン、レトロゾール、ロイプロレリン、レバミソール、レボノルゲストレル、レボチロキシンナトリウム、リスリド、ロバプラチン、ロムスチン、ロニダミン、マソプロコール、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メラルソプロール、メルファラン、メピチオスタン、メルカプトプリン、メスナ、メタドン、メトトレキサート、メトキサレン、アミノレブリン酸メチル、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、メチロシン、ミファムルチド、ミルテホシン、ミリプラチン、ミトブロニトール、ミトグアゾン、ミトラクトール、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、モガムリズマブ、モルグラモスチム、モピダモール、モルヒネ塩酸塩、モルヒネ硫酸塩、ナビロン、ナビキシモルス、ナファレリン、ナロキソン+ペンタゾシン、ナルトレキソン、ナルトグラスチム、ネシツムマブ、ネダプラチン、ネララビン、ネリドロン酸、ネツピタント/パロノセトロン、ニボルマブ、ペンテトレオチド、ニロチニブ、ニルタミド、ニモラゾール、ニモツズマブ、ニムスチン、ニンテダニブ、ニトラクリン、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オクトレオチド、オファツムマブ、オラパリブ、オララツマブ、オマセタキシン・メペスクシネート、オメプラゾール、オンダンセトロン、オプレルベキン、オルゴテイン、オリロチモド(orilotimod)、オシメルチニブ、オキサリプラチン、オキシコドン、オキシメトロン、オゾガマイシン、p53遺伝子療法、パクリタキセル、パルボシクリブ、パリフェルミン、パラジウム-103シード、パロノセトロン、パミドロン酸、パニツムマブ、パノビノスタット、パントプラゾール、パゾパニブ、ペグアスパルガーゼ、PEG-エポエチンベータ(メトキシPEG-エポエチンベータ)、ペンブロリズマブ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペムブロリズマブ、ペメトレキセド、ペンタゾシン、ペントスタチン、ペプロマイシン、ペルフルブタン、ペルホスファミド、ペルツズマブ、ピシバニール、ピロカルピン、ピラルビシン、ピクサントロン、プレリキサホル、プリカマイシン、ポリグルサム、リン酸ポリエストラジオール、ポリビニルピロリドン+ヒアルロン酸ナトリウム、ポリサッカリド-K、ポマリドミド、ポナチニブ、ポルフィマーナトリウム、プララトレキサート、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロカルバジン、プロコダゾール、プロプラノロール、キナゴリド、ラベプラゾール、ラコツモマブ、塩化ラジウム223、ラドチニブ、ラロキシフェン、ラルチトレキセド、ラモセトロン、ラムシルマブ、ラニムスチン、ラスブリカーゼ、ラゾキサン、レファメチニブ、レゴラフェニブ、リセドロン酸、エチドロン酸レニウム-186、リツキシマブ、ロラピタント、ロミデプシン、ロミプロスチム、ロムルチド、ロニシクリブ、ルカパリブ、サマリウム(153Sm)レキシドロナム、サルグラモスチム、サツモマブ、セクレチン、シルツキシマブ、シプロイセルT、シゾフィラン、ソブゾキサン、グリシジダゾールナトリウム、ソニデギブ、ソラフェニブ、スタノゾロール、ストレプトゾシン、スニチニブ、タラポルフィン、タリモジン・ラヘパレプベク、タミバロテン、タモキシフェン、タペンタドール、タソネルミン、テセロイキン、テクネチウム(99mTc)ノフェツモマブメルペンタン、99mTc-HYNIC-[Tyr3]-オクトレオチド、テガフール、テガフール+ギメラシル+オテラシル、テモポルフィン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、テトロホスミン、サリドマイド、チオテパ、チマルファシン、サイロトロピンアルファ、チオグアニン、トシリズマブ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラベクテジン、トラメチニブ、トラマドール、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トレオスルファン、トレチノイン、トリフルリジン+チピラシル、トリロスタン、トリプトレリン、トラメチニブ、トロフォスファミド、トロンボポエチン、トリプトファン、ウベニメクス、バラチニブ、バルルビシン、バンデタニブ、バプレオチド、ベムラフェニブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン、ビノレルビン、ビスモデギブ、ボリノスタット、ボロゾール、イットリウム90ガラスミクロスフェア、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、ゾレドロン酸、ゾルビシンであり得る。
【0110】
一般的に、本発明の成分Aと成分Bの組み合わせと組み合わせた成分Cの使用は、
(1)いずれかの薬剤単独の投与と比べて、腫瘍の成長を減少させるのに優れた効果をもたらすまたは腫瘍を排除さえする、
(2)投与される化学療法剤のより少量の投与をもたらす、
(3)単独薬剤の化学療法および特定の他の併用療法で観察されるよりも有害な薬理学的合併症が少なく、患者の耐容性が良好である化学療法治療を提供する、
(4)哺乳動物、特にヒトにおいて広範囲の異なるがん型の治療を提供する、
(5)治療されている患者間で高い奏功率を提供する、
(6)標準的化学療法治療と比べて、治療されている患者間でより長い生存期間を提供する、
(7)腫瘍進行のより長い時間をもたらす、および/または
(8)他のがん薬剤組み合わせが拮抗効果をもたらす既知の例と比べて、単独で使用される薬剤の結果と少なくとも同じくらい良い効能および耐容性結果をもたらす
のに役立つ。
【0111】
実施例
以下の実施例は、本発明の実現可能性を説明するが、本発明をこれらの実施例のみに限定するものではない。
【0112】
実施例1:ヒトCEACAM6に対する抗体TPP-3310と、PD-L1またはPD-1に対する抗体との組み合わせ処理の、PD-1陽性ウイルスペプチド特異的T細胞の活性化に対する効果
CEACAM6は齧歯類では発現されない(齧歯類オルソログなし)ので、インビボ有効性試験は不可能であり、薬物組み合わせの治療可能性を評価するために前臨床インビボ組み合わせ試験を実施することはできない。
【0113】
代わりに、CEACAM6に対する抗体とPD-1またはPD-L 1に対する抗体の組み合わせをインビトロ有効性および治療可能性について試験するためにインビトロ細胞アッセイ系を確立した。
【0114】
この細胞アッセイ系では、PD-1陽性FluM1ウイルスペプチド特異的T細胞をエフェクターT細胞として使用した。これらを、単剤または組み合わせとしてのCEACAM6、PD-1またはPD-L 1に対するチェックポイント阻害抗体の存在下で、PD-L1およびCEACAM6陽性の、FLuM1ペプチドをロードしたがん細胞HCC2935と24時間~48時間共培養した。炎症性サイトカイン(IFNg)の誘導を有効性の測定値として測定する。
【0115】
抗体
使用した抗体は、がん細胞および骨髄細胞で過剰発現する免疫チェックポイント分子CEACAM6に対するhuIgG2抗体であるTPP-3310(抗CEACAM6)、抗PD-L1 huIgG2抗体であり、アテゾリズマブの可変ドメインを使用してクローニングされたTPP-3615、およびニボルマブの可変ドメインを使用してクローニングされた抗PD-1 HuIgG4 Pro抗体であるTPP-2596であった。TPP-1238(huIgG2)およびTPP1240(huIgG4)はアイソタイプ対照抗体として使用した。
【0116】
細胞株および培養
HCC2935がん細胞(ATCC-CRL-2869、肺腺癌)をRPMI-1640、10%FCS、5%CO2中で培養した。CEACAM6およびPD-L1の発現をFACS分析によって確認した。ウイルスペプチド特異的T細胞との共培養アッセイのために、がん細胞に、0.2μg/mlでまたは示される量でウイルスFluM1ペプチドをパルスした。
【0117】
FluM1ウイルスペプチド特異的T細胞の作製および細胞培養
PD-1発現ウイルス(インフルエンザ)-ペプチド特異的T細胞を、バフィーコートのFicoll密度遠心分離(Deutsches Rotes Kreuz、Mannheim)によって得られたHLA-A*0201健常ドナー由来のナイーブPBMCから作製した。製造業者のプロトコルに従って、CD 8T細胞をMACS陰性選択キット(Miltenyi、130-096-495)で濃縮した。CD8陰性細胞を照射し(35Gy)、X-Vivo-20培地(化学的に定義された無血清造血細胞培地、Lonza、番号BE04-448Q)中1μg/mlのインフルエンザHLA-A*0201エピトープGILGFVFTL(ProImmune)を、37℃で1.5時間、パルスし、その後洗浄した。細胞を照射T2細胞で再刺激し、7日目に1μg/mlのそれらの関連GILGFVFTLペプチドをパルスした。14日目に、アリコートを凍結した。機能アッセイに使用する直前に、試料を解凍し、洗浄した。ウイルスペプチド特異的T細胞の適合性を、14日目の共培養実験の前に四量体(F 391-4A-E、ProImmune)染色およびFACS分析を用いて確認した。
【0118】
インビトロアッセイ:T細胞とがん細胞の共培養における組み合わせた抗体の有効性の分析
共培養のために、がん細胞をPBS-EDTAで5~15分間非酵素的に剥離し、1400rpmで5分間遠心分離し、洗浄し、計数した。がん細胞をX-Vivo-20(Lonza、番号BE04-448Q)に1×105細胞/mlで希釈し、氷上においてTPP-3310、aPD-L 1および/またはアイソタイプ対照抗体で10分間前処理した。インキュベーション後、10000個の標的がん細胞を96ウェルELISA Uプレートに、トリプリケートで、播種した。
【0119】
ウイルスペプチド特異的T細胞を採取し、X-Vivo-20で洗浄し、X-Vivo-20に2×105細胞/mlで希釈し、氷上において抗PD-1またはアイソタイプ対照抗体で10分間前処理した。全ての抗体を30μg/mlの最終濃度で適用した。組み合わせ処理には、TPP-3310を50%効果濃度(EC50)の1μg/ml程度で適用し、T細胞の活性化に対する他の抗体の効果を確実にした。前処理したT細胞を標的がん細胞上に20000細胞/ウェルで播種した。
【0120】
がん細胞およびエフェクターT細胞と抗体の共培養物を37℃、5%CO2でおよそ20時間インキュベートした。
【0121】
次いで、共培養プレートを1400 rpmで3分間遠心分離することによって上清を回収した。製造業者の指示に従ってELISA(ヒトIFN-γ-ELISAセット、BD、番号555142)によって上清中のIFN-γレベルを測定した。ELISAプレートの光学密度を、Tecan Infinite M200プレートリーダーで測定した。
【0122】
Microsoft Excel 2010およびGraphPad Prism 6を使用して、対応のあるまたは対応のない両側スチューデントt検定でデータを統計的に分析した。p<0.05の結果を有意とみなした。サイトカイン濃度を標準曲線によって計算した。TPP-3310または所与の組み合わせの値をそれぞれのアイソタイプ対照の値で割ることによって、係数または比を計算した。
【0123】
結果
予備実験では、FLuM1ペプチドをロードしたHCC2935がん細胞を、FluM1ウイルスペプチド特異的T細胞と共インキュベーションした。同種のウイルスペプチドの存在下でのみ、T細胞のIFN-γ分泌が増加した。この増加は用量依存的であった。共培養物からのIFN-γ分泌(p<0.05~0.0001)は、抗CEACAM6抗体TPP-3310、抗PD-L1抗体TPP-3615の存在下または抗PD-1抗体TPP-2596の存在下でさらに増強された。全て単剤として与えられる。これらのデータは、PD-1陽性FluM1ウイルスペプチド特異的T細胞およびペプチドをロードしたHCC2935がん細胞からなる新たに確立された細胞アッセイ系が、ベンチマーキングおよび組み合わせ実験において抗CEACAM6、抗PD-1および抗PD-L1抗体の有効性を試験するのに適していることを確認した。
【0124】
【表3】
【0125】
抗CEACAM6抗体TPP-3310とPD-L1に対する抗体の組み合わせの効果を、全体で7回の独立した共培養実験(n=7)で決定した。抗体の存在下で、本発明者らは、単剤としてまたは組み合わせて与えられた場合の、IFNg分泌の増加(絶対平均値)を一貫して認めた。PD-L1抗体の存在下では、total IFNgは、39.6pg/ml、抗CEACAM6抗体TPP-3310の存在下では196.6 pg/mlおよび組み合わせて与えられた場合は279.9pg/ml増加した。この結果は、PD-L1抗体とCEACAM6抗体の組み合わせ時にIFNg分泌がさらに増強されること、およびIFNg分泌に対する効果が相加を超えることを示している。
【0126】
【表4】
【0127】
別の試験で、本発明者らは、抗CEACAM6抗体TPP-3310とPD-1に対する抗体の組み合わせの効果を、全体で7回の独立した共培養実験(n=7)で決定した。抗体の存在下で、本発明者らは、単剤としてまたは組み合わせて与えられた場合の、IFNg分泌の増加(絶対平均値)を一貫して認めた。
【0128】
PD-1抗体の存在下では平均total IFNgは、76.1pg/ml、抗CEACAM6抗体TPP-3310の存在下では166.8pg/mlおよび組み合わせて与えられた場合は317.9pg/ml増加した。この結果は、PD-1抗体とCEACMA6抗体の組み合わせ時にIFNg分泌がさらに増強されること、およびIFNg分泌に対する効果が相加を超えることを示している。
【0129】
【表5】
【0130】
実施例2:ヒトCEACAM6に対する抗体TPP-3310と、TIM-3に対する抗体との組み合わせ処理の、TIM-3およびPD-1陽性ウイルスペプチド特異的T細胞の活性化に対する効果
抗CEACAM6抗体TPP-3310と抗TIM3抗体の組み合わせを、ウイルスペプチド特異的T細胞およびペプチドをロードしたがん細胞を用いるインビトロ共培養アッセイ系でも試験した。
【0131】
この細胞アッセイ系では、PD1およびTIM3陽性FluM1ウイルス抗原特異的T細胞をエフェクターT細胞として使用した。これらを、単剤または組み合わせとしてのCEACAM6およびTIM3に対するチェックポイント阻害抗体の存在下で、PD-L1およびCEACAM6陽性の、FLuM1ペプチドをロードしたがん細胞HCC2935と24時間~48時間共培養した。炎症性サイトカイン(IFNg)の誘導は、有効性の測定値として測定した。
【0132】
抗体
使用した抗体は、がん細胞および骨髄系細胞で過剰発現する免疫チェックポイント分子CEACAM6に対するhuIgG2抗体であるTPP-3310(抗CEACAM6)と、抗TIM3抗体であるMAB2365(rIgG2、R&D Jackson immunoresearch)であった。TPP-1238(huIgG2)およびMAB006(rIgG2;R&D)はアイソタイプ対照抗体として使用した。
【0133】
細胞株および培養
HCC2935がん細胞(ATCC-CRL-2869、肺腺癌)をRPMI-1640、10%FCS、5%CO2中で培養した。CEACAM6およびPD-L1およびTIM-3の発現をFACS分析によって確認した。ウイルスペプチド特異的T細胞との共培養アッセイのために、がん細胞に、0.2μg/mlでまたは示される量でウイルスFluM1ペプチドをパルスした。
【0134】
FluM1ウイルスペプチド特異的T細胞の作製および細胞培養
PD-1発現ウイルス(インフルエンザ)-ペプチド特異的T細胞を、バフィーコートのFicoll密度遠心分離(Deutsches Rotes Kreuz、Mannheim)によって得られたHLA-A*0201健常ドナー由来のナイーブPBMCから作製した。製造業者のプロトコルに従って、CD 8T細胞をMACS陰性選択キット(Miltenyi、130-096-495)で濃縮した。CD8陰性細胞を照射し(35Gy)、X-Vivo-20培地(化学的に定義された無血清造血細胞培地、Lonza、番号BE04-448Q)中1μg/mlのインフルエンザHLA-A*0201エピトープGILGFVFTL(ProImmune)を、37℃で1.5時間、パルスし、その後洗浄した。細胞を照射T2細胞で再刺激し、7日目に1μg/mlのそれらの関連GILGFVFTLペプチドをパルスした。14日目に、アリコートを凍結した。機能アッセイに使用する直前に、試料を解凍し、洗浄した。ウイルスペプチド特異的T細胞の適合性を、14日目の共培養実験の前に四量体(F391-4A-E、ProImmune)染色およびFACS分析を用いて確認した。
【0135】
インビトロアッセイ:T細胞とがん細胞の共培養における組み合わせた抗体の有効性の分析
共培養のために、がん細胞をPBS-EDTAで5~15分間非酵素的に剥離し、1400rpmで5分間遠心分離し、洗浄し、計数した。がん細胞をX-Vivo-20(Lonza、番号BE04-448Q)に1×105細胞/mlで希釈し、氷上においてTPP-3310および/またはアイソタイプ対照抗体で10分間前処理した。インキュベーション後、10000個の標的がん細胞を96ウェルELISA Uプレートに、トリプリケートで、播種した。
【0136】
ウイルスペプチド特異的T細胞を採取し、X-Vivo-20で洗浄し、X-Vivo-20に2×105細胞/mlで希釈し、氷上において抗TIM3またはアイソタイプ対照抗体で10分間前処理した。全ての抗体は30μg/mlの最終濃度で適用された。ただし、抗TIM3抗体は50μg/mlで使用された。組み合わせ処理には、TPP-3310を50%効果濃度(EC50)の1μg/ml程度で適用し、T細胞の活性化に対する他の抗体の効果を確実にした。前処理したT細胞を標的がん細胞上に20000細胞/ウェルで播種した。
【0137】
がん細胞およびエフェクターT細胞と抗体の共培養物を37℃、5%CO2でおよそ20時間インキュベートした。
【0138】
次いで、共培養プレートを1400 rpmで3分間遠心分離することによって上清を回収した。製造業者の指示に従ってELISA(ヒトIFN-γ-ELISAセット、BD、番号555142)によって上清中のIFN-γレベルを測定した。ELISAプレートの光学密度を、Tecan Infinite M200プレートリーダーで測定した。
【0139】
Microsoft Excel 2010およびGraphPad Prism 6を使用して、対応のあるまたは対応のない両側スチューデントt検定でデータを統計的に分析した。p<0.05の結果を有意とみなした。サイトカイン濃度を標準曲線によって計算した。TPP-3310または所与の組み合わせの値をそれぞれのアイソタイプ対照の値で割ることによって、係数または比を計算した。
【0140】
結果
予備実験では、FLuM1ペプチドをロードしたHCC2935がん細胞を、FluM1ウイルスペプチド特異的T細胞と共インキュベーションした。同種のウイルスペプチドの存在下でのみ、T細胞のIFN-γ分泌が増加した。この増加は用量依存的であった。共培養物からのIFN-γ分泌(p<0.05~0.0001)は、抗CEACAM6抗体TPP-3310の存在下または抗TIM3抗体MAB2365の存在下でさらに増強された。全て単剤として与えられた。これらのデータにより、TIM-3およびPD-1陽性FluM1ウイルス特異的T細胞およびペプチドをロードしたHCC2935細胞からなる新たに確立された細胞アッセイ系が、ベンチマーキングおよび組み合わせ実験において抗CEACAM6抗体および抗TIM3抗体の有効性を試験するのに適していることが確認された。
【0141】
【表6】
【0142】
抗CEACAM6抗体TPP-3310と抗TIM3 Mab 2365の組み合わせの効果を、全体で7回の独立した共培養実験(n=7)で決定した。抗体の存在下で、本発明者らは、単剤としてまたは組み合わせて与えられた場合の、IFNg分泌の増加(絶対平均値)を一貫して認めた。TIM-3抗体の存在下では、total IFNgは、181.5pg/ml、抗CEACAM6抗体TPP-3310の存在下では228.0pg/mlおよび組み合わせて与えられた場合は562.6pg/ml増加した。この結果は、TIM-3抗体とCEACAM6抗体を組み合わせると、IFNg分泌がさらに強く増強されること、およびIFNg分泌に対する効果が相加を超えることを示している。これは活性化しているPD-L1/PD-1軸の存在下でも活性を示し、効果は前の実施例と比較してより強い。
【0143】
【表7】
【0144】
実施例3:ヒトCEACAM6に対する抗体TPP-3310とTIM-3に対する抗体との組み合わせ処理の、サバイビンペプチド特異的T細胞の活性化に対する効果
以前、TPP-3310は、乳がん、結腸直腸がん、および肺がん細胞との共培養において、サバイビンペプチドに特異的なT細胞によるIFN-γ分泌を増加させることが見出されていた。別の例では、抗CEACAM6抗体TPP-3310とTIM-3抗体MAB2365(R&D Jackson Immunoresearch)の組み合わせは、代替T細胞源としてのサバイビンペプチド特異的T細胞とHCC2935肺がん細胞またはKS乳がん細胞との共培養で試験された。
【0145】
抗体
使用した抗体は、がん細胞および骨髄系細胞で過剰発現する免疫チェックポイント分子CEACAM6に対するhuIgG2抗体であるTPP-3310(抗CEACAM6)であった。MAB2365(rIgG2、R&D Jackson immunoresearch)は抗TIM3抗体である。TPP-1238(huIgG2)およびMAB006(rIgG2;R&D Jackson Immunoresearch)はアイソタイプ対照抗体として使用した。
【0146】
細胞株および培養
HCC2935がん細胞(ATCC-CRL-2869、肺腺癌)をRPMI-1640、10%FCS、5%CO2中で培養した。KS乳がん細胞をDMEM、10%FCS中で培養した。CEACAM6およびPD-L1の発現をFACS分析によって確認した。
【0147】
サバイビン特異的T細胞の作製および細胞培養:
腫瘍抗原特異的(すなわちサバイビンペプチド特異的)T細胞を、健常なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)から文献に記載されるように作製した(Moosmann A.Gezielte Reaktivierung spezifischer zytotoxischer T-Zellen mit Epstein-Barr-Virus-Vektoren.Dissertation,Ludwig-Maximilians-University Munich,Germany.2002;Brackertz B,Conrad H,Daniel J,Kast B,Kronig H,Busch DHら、FLT3-regulated antigens as targets for leukemia-reactive cytotoxic T lymphocytes.Blood Cancer Journal.2011;1(3):e11)。
【0148】
インビトロアッセイ:T細胞とがん細胞の共培養における組み合わせた抗体の有効性の分析
共培養のために、がん細胞をPBS-EDTAで5~15分間非酵素的に剥離し、1400rpmで5分間遠心分離し、洗浄し、計数した。がん細胞をX-Vivo-20(Lonza、番号BE04-448Q)に1×105細胞/mlで希釈し、氷上においてTPP-3310および/またはアイソタイプ対照抗体で10分間前処理した。インキュベーション後、10000個の標的がん細胞を96ウェルELISA Uプレートに、トリプリケートで、播種した。
【0149】
サバイビンペプチド特異的T細胞を採取し、X-Vivo-20で洗浄し、X-Vivo-20に2×105細胞/mlで希釈し、氷上において抗TIM-3 MAB2365またはアイソタイプ対照抗体で10分間前処理した。抗TIM-3抗体は50μg/mlの最終濃度で適用した。組み合わせ処理には、TPP-3310を50%効果濃度(EC50)の1μg/ml程度で適用し、T細胞の活性化に対する他の抗体の効果を確実にした。前処理したT細胞を標的がん細胞上に20000細胞/ウェルで播種した。がん細胞およびエフェクターT細胞と抗体の共培養物を37℃、5%CO2でおよそ20時間インキュベートした。次いで、共培養プレートを1400 rpmで3分間遠心分離することによって上清を回収した。製造業者の指示に従ってELISA(ヒトIFN-γ-ELISAセット、BD、番号555142)によって上清中のIFN-γレベルを測定した。ELISAプレートの光学密度を、Tecan Infinite M200プレートリーダーで測定した。
【0150】
Microsoft Excel 2010およびGraphPad Prism 6を使用して、対応のあるまたは対応のない両側スチューデントt検定でデータを統計的に分析した。p<0.05の結果を有意とみなした。サイトカイン濃度を標準曲線によって計算した。TPP-3310または所与の組み合わせの値をそれぞれのアイソタイプ対照の値で割ることによって、係数または比を計算した。
【0151】
【表8】
【0152】
【表9】
【0153】
単剤として、TPP-3310および抗TIM-3 MAB2365抗体は、HCC2935細胞株との共培養でサバイビンペプチド特異的T細胞のIFN-γ分泌をそれぞれ343.1pg/mlおよび63.6pg/ml、KS細胞株との共培養では38.4pg/mlおよび18.3 pg/ml増加させた。
【0154】
組み合わせた場合、TPP-3310と抗TIM3抗体MAB2365はIFN-γ分泌をHCC2935細胞で722.7pg/ml増加させ、KS細胞で77.5pg/ml増加させた。この結果は、TIM-3抗体とCEACAM6抗体を組み合わせると、IFNg分泌がさらに増強されること、およびIFNg分泌に対する効果が明らかに相加を上回ることを示している。
【配列表】
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