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特許7521171積層セラミック電子部品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 201C
H01G4/30 311D
H01G4/30 311Z
H01G4/30 547
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020126421
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2021097207
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0169619
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ヒュン ドゥク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨン フーン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ドン フィ
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、ソン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユー ソプ
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0327558(US,A1)
【文献】特開2015-115601(JP,A)
【文献】特開2015-128130(JP,A)
【文献】特開2007-227483(JP,A)
【文献】特表2003-522835(JP,A)
【文献】特開2016-143765(JP,A)
【文献】特開2016-033962(JP,A)
【文献】特開2019-195038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に対向する第5及び第6面、第2方向に対向する第3及び第4面、及び第3方向に対向する第1及び第2面を含み、誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで第1及び第2内部電極が第3方向に積層されるように配置される容量形成部を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の第5面及び第6面上にそれぞれ配置される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記第1及び第2内部電極は、前記セラミック本体の第5面及び第6面にそれぞれ露出し、
前記セラミック本体の第5面及び第6面に露出する前記第1及び第2内部電極の端部にそれぞれ炭素化合物を含む第1及び第2突出部が配置され
前記第1及び第2突出部は結晶性炭素を含む、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1及び第2突出部に対するラマンスペクトルにおいて、Gピークの半値幅(FWHM、Full Width at Half Maximum)が50cm-1~80cm-1の範囲内である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記第1及び第2突出部に対するラマンスペクトルにおいて、Gピークと区別されるDピークが形成される、請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1及び第2突出部の長さは0.7nm以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記炭素化合物は第1グレインを含み、
前記第1及び第2内部電極は第2グレインを有する導電性金属を含み、
前記第2グレインの粒径(D50)に対する第1グレインの粒径(D50)の割合(D50/D50)は0.7~1.3の範囲内である、請求項1からのいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
第1方向に対向する第5及び第6面、第2方向に対向する第3及び第4面、及び第3方向に対向する第1及び第2面を含み、誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで第1及び第2内部電極が第3方向に積層されるように配置される容量形成部を含むセラミック本体と、
前記セラミック本体の第5面及び第6面上にそれぞれ配置される第1及び第2外部電極と、を含み、
前記第1及び第2内部電極は、前記セラミック本体の第5面及び第6面にそれぞれ露出し、
前記セラミック本体の第5面及び第6面に露出する前記第1及び第2内部電極の端部にそれぞれ炭素化合物を含む第1及び第2突出部が配置され、
前記第1及び第2突出部に対するラマンスペクトルにおいて、Gピークと区別されるDピークが形成される、積層セラミック電子部品。
【請求項7】
誘電体層、及び前記誘電体層を間に挟んで第1及び第2内部電極が第3方向に積層されたセラミック本体を焼成する段階と、
前記セラミック本体の第1及び第2内部電極の端部に炭素を粒成長させる段階と、を含む、積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記炭素を粒成長させる段階は、700℃~1300℃の範囲内の温度で行われる、請求項7に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記炭素を粒成長させる段階は、炭素数1~16の炭化水素化合物及び水素雰囲気下で行われる、請求項7または8に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記炭素を粒成長させる段階は、アルゴン雰囲気下で行われる、請求項7または8に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記炭素を粒成長させる段階は、炭素原子を3層以上粒成長させる段階である、請求項7から10のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記炭素を粒成長させる段階後に、20℃/min未満の速度で降温する段階をさらに含む、請求項7から11のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、電子製品の小型化の傾向に伴い、積層セラミック電子部品に対しても小型化及び大容量化が求められている。かかる積層セラミック電子部品は、一般的にセラミック原料物質を溶剤及びバインダーなどと混合してスラリーを製造した後、これを薄く塗布してセラミックグリーンシートを形成する方法で製造される。その後、セラミックグリーンシートと内部電極が印刷されたシートとを交互に積層し、脱バインダー処理及び焼成工程を介してバインダーなどが排出された焼結体を製造する。
【0003】
しかし、上記のように脱バインダー工程を経ても、炭素化合物を完全に除去することは非常に難しい問題である。特に、炭素溶解度が高い遷移金属を内部電極などの材料として用いる場合には、上記遷移金属の表面に炭素層が形成されて電気的特性が低下するという問題がある。また、かかる炭素層は、界面間の接合を妨害し、クラック又はデラミネーションを引き起こす可能性があり、外部からの水分などの浸透経路となるなど、様々な問題を誘発する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一目的は、内部電極の酸化を防止することができる積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、生産性を改善させた積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することである。
【0006】
本発明のさらに他の目的は、長期信頼性を向上させた積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、第1方向に対向する第5及び第6面、第2方向に対向する第3及び第4面、及び第3方向に対向する第1及び第2面を含み、誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで第1及び第2内部電極が第3方向に積層されるように配置される容量形成部を含むセラミック本体と、上記セラミック本体の第5面及び第6面上にそれぞれ配置される第1及び第2外部電極と、を含み、上記第1及び第2内部電極は、上記セラミック本体の第5面及び第6面にそれぞれ露出し、上記セラミック本体の第5面及び第6面に露出する上記第1及び第2内部電極の端部にそれぞれ炭素化合物を含む第1及び第2突出部が配置される積層セラミック電子部品を提供することができる。
【0008】
本発明の他の実施形態は、誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで第1及び第2内部電極が第3方向に積層されたセラミック本体を焼成する段階と、上記セラミック本体の第1及び第2内部電極の端部に炭素を粒成長させる段階と、を含む積層セラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によると、外部からの水分などの浸透を防ぐことができる積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することができる。
【0010】
本発明の他の実施形態によると、内部電極の酸化を防止することができる積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することができる。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態によると、優れた工程効率を有する積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することができる。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態によると、長期信頼性が向上した積層セラミック電子部品及びその製造方法を提供することができる。
【0013】
一方、本発明の様々且つ有意義な長所及び効果は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でさらに簡単に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品のセラミック本体を概略的に示す斜視図である。
図3図1のI-I'線に沿った断面図である。
図4図1のX及びY方向の断面図であって、第1内部電極が観察される断面を示す図である。
図5図1のX及びY方向の断面図であって、第2内部電極が観察される断面を示す図である。
図6図3のA領域の拡大図である。
図7図3のB領域の拡大図である。
図8】従来の積層セラミック電子部品のラマンスペクトルを示すグラフである。
図9】本発明の実施形態のラマンスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、具体的な実施形態及び添付された図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。これは、本明細書に記載された技術を、特定の実施形態によって限定するものではなく、本発明の実施形態の様々な変更(modifications)、均等物(equivalents)、及び/又は代替物(alternatives)を含むものと理解されるべきである。また、図面の説明に関連して、同様の構成要素に対しては同様の参照符号が用いられることができる。
【0016】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示しており、同一の思想の範囲内の機能が同一の構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。
【0017】
さらに、本明細書において、「有する」、「有することができる」、「含む」、又は「含むことができる」などの表現は該当特徴(例えば、数値、機能、動作、又は部品などの構成要素)の存在を示し、追加的な特徴の存在を排除しない。
【0018】
一方、本明細書において、「A又はB」、「A及び/又はBのうち少なくとも一つ」、又は「A及び/又はBのうち1つ、又はそれ以上」などの表現は、ともに記載された項目の可能な組み合わせをすべて含むことができる。例えば、「A又はB」、「A及びBのうち少なくとも一つ」、又は「A又はBのうち少なくとも一つ」は、(1)少なくとも一つのAを含む、(2)少なくとも一つのBを含む、又は(3)少なくとも一つのA及び少なくとも一つのBの両方を含む場合をすべて指すことができる。
【0019】
さらに、図面において、X方向は、第1方向、L方向又は長さ方向、Y方向は、第2方向、W方向又は幅方向、Z方向は、第3方向、T方向又は厚さ方向と定義することができる。
【0020】
以下、図1図7を参照して、本発明の一実施形態による積層セラミック電子部品について詳細に説明する。
【0021】
本発明の積層セラミック電子部品100は、第1方向(X方向)に対向する第5及び第6面S5、S6、第2方向(Y方向)に対向する第3及び第4面S3、S4、及び第3方向(Z方向)に対向する第1及び第2面S1、S2を含み、誘電体層111、及び上記誘電体層111を間に挟んで第1及び第2内部電極121、122が第3方向(Z方向)に積層されるように配置される容量形成部を含むセラミック本体110と、上記セラミック本体110の第5面S5及び第6面S6上にそれぞれ配置される第1及び第2外部電極131、132と、を含み、上記第1及び第2内部電極121、122は、上記セラミック本体110の第5面S5及び第6面S6にそれぞれ露出することができる。
【0022】
この際、上記セラミック本体110の第5面S5及び第6面S6に露出する上記第1及び第2内部電極121、122の端部にそれぞれ炭素化合物を含む第1及び第2突出部141、142が配置されることができる。本明細書において、第1突出部141及び第2突出部142が炭素化合物を含むとは、第1及び第2突出部141、142の構成成分のうち少なくとも一部が炭素であり、且つ炭素を含む化合物から形成されたことを意味することができる。
【0023】
上記セラミック本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図面に示すように、セラミック本体110は、六面体形状やこれと類似した形状からなることができる。すなわち、セラミック本体110は、焼成過程において、セラミック本体110に含まれるセラミック粉末の収縮により、完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。また、セラミック本体110は、厚さ方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面S1、S2、第1及び第2面S1、S2と連結され、幅方向(Y方向)に互いに対向する第3及び第4面S3、S4、及び第1及び第2面S1、S2と連結され、第3及び第4面S3、S4と連結され、且つ長さ方向(X方向)に互いに対向する第5及び第6面S5、S6を有することができる。
【0024】
上記セラミック本体110は、誘電体層111に第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、誘電体層111に第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを厚さ方向(Z方向)に交互に積層して形成することができる。
【0025】
上記セラミック本体110は、誘電体層111ならびに内部電極121、122が第3方向に交互に積層されることができる。セラミック本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であって、隣接する誘電体層111同士の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を使用せずには確認できないほど一体化することができる。
【0026】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り、特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、又はチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。
【0027】
また、上記誘電体層111を形成する材料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に、本発明の目的に応じて、様々なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0028】
例えば、誘電体層111は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末を含んで形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥し、複数のセラミックシートを設けることによって形成されることができる。上記セラミックシートは、セラミック粉末、バインダー、及び溶剤を混合してスラリーを製造し、上記スラリーをドクターブレード法で数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することにより形成されることができるが、これに限定されない。
【0029】
本発明の積層セラミック電子部品は、複数の内部電極121、122が誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置されることができる。内部電極121、122は、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。
【0030】
上記第1内部電極121は、上記セラミック本体110の上記第1方向(X方向)の一面に露出することができる。また、上記第1方向(X方向)の一面に露出する部分の端部に第1突出部141が配置されることができる。これにより、上記第1突出部141は、第1外部電極131と連結されることができる。同様に、上記第2内部電極122は、上記セラミック本体110の上記第1方向(X方向)の他面に露出することができる。また、上記第1方向(X方向)の他面に露出する部分に第2突出部142が配置されることができる。これにより、上記第2突出部142が第2外部電極132と連結されることができる。尚、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0031】
第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上の物質を含む導電性ペーストを用いて形成されることができる。上記導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0032】
一つの例において、本発明の第1突出部141及び第2突出部142に含まれる炭素化合物は、結晶性炭素であることができる。本明細書において、結晶性炭素とは、非常に規則的に配列されて結晶性(crystalline)を示す炭素元素で構成された化合物を意味することができ、非晶質(Amorphous solid)ではない炭素化合物を意味することができる。上記結晶性炭素は、カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイト(Graphite)、グラフェン(Graphene)、カーボンブラック(Carbon black)、カーボンナノファイバー(Carbon nano fiber)、カーボンナノワイヤー(Carbon nano wire)、カーボンナノホーン(Carbon nanohorn)、カーボンエアロゲル(Carbon aerogel)、カーボンナノリング(Carbon nano ring)、及びフラーレン(C60)からなる群より選択される1種以上であることができるが、これに制限されるものではない。本例示による積層セラミック電子部品は、第1及び第2内部電極121、122がセラミック本体110に露出する端部に配置される第1及び第2突出部141、142に結晶性炭素を適用することにより、上記第1及び第2突出部141、142が実質的に酸化防止膜としての機能を行うようにすることができる。
【0033】
本発明の一実施形態では、本発明の積層セラミック電子部品の第1及び第2突出部141、142に対するラマンスペクトルにおいて、Gピークの半値幅(FWHM、Full Width at Half Maximum)が50cm-1~80cm-1の範囲内であることができる。本明細書において、ラマンスペクトルとは、ラマン分光法で測定したスペクトルを意味することができる。また、上記ラマン分光法とは、レーザ光のような単色光を当てた際に、フォノン振動数の分だけの差がある散乱光を測定し、該当物質の光学的特性及びフォノン特性を調べる方法を意味することができる。上記ラマンスペクトルは、日本の(株)堀場製作所(HORIBA)製のラマン分光器(LabRam HR-800)を用いて測定した値であることができる。また、本明細書において、半値幅(FWHM、Full Width at Half Maximum)とは、該当ピークの最大強度の半分であるときの発光ピークの幅を意味することができる。上記Gピークは、1580cm-1の付近で形成されるピークであって、黒鉛化傾向を示す。上記第1及び第2突出部141、142の半値幅が上記範囲を満たす場合には、第1及び第2突出部141、142に含まれる炭素が高結晶性を有することができる。これにより、酸素及び/又は水分子の浸透を効果的に抑制することができる。
【0034】
本発明の他の実施形態では、本発明の積層セラミック電子部品の第1及び第2突出部141、142に対するラマンスペクトルにおいて、Gピークと区別されるDピークが形成されることができる。上記Dピークは、1340cm-1の付近で形成されるピークであって、欠損/欠陥の程度を示す。結晶化度が低い炭素の場合、欠陥に該当するDピークの半値幅が非常に大きく形成されて、DピークとGピークが区別されない。これに対し、本発明の第1及び第2突出部141、142に対するラマンスペクトルにおいて、Gピークと区別されるDピークが形成されることにより、炭素の欠陥が減少し、結晶性が回復することを確認することができる。
【0035】
本発明の一例において、本発明の積層セラミック電子部品の第1及び第2突出部141、142の長さt1は、0.7nm以上であることができる。上記第1及び第2突出部141、142の長さt1とは、第1及び第2突出部141、142の第1方向(X方向)の長さを意味することができる。上記第1及び第2突出部141、142の長さt1は、0.7nm以上、0.8nm以上、0.9nm以上、又は1.0nm以上であることができ、上限は、特に制限されるものではないが、例えば、1μm以下であってもよい。黒鉛を基準にすると、炭素1個層の高さが約0.335nmであることを考慮すると、第1及び第2突出部141、142の長さt1は、炭素2個層を超えた高さに該当する長さを有することができる。すなわち、本例示において、上記第1及び第2突出部141、142の長さt1は、少なくとも炭素2個層の高さよりも大きい値を有することを意味することができ、上記長さの範囲を満たすことにより、酸化防止機能を十分に実現することができるため、高温多湿な環境における長期信頼性を向上させることができる。
【0036】
一つの例において、本発明の第1及び第2突出部141、142に含まれる炭素化合物は第1グレインを含み、第1及び第2内部電極は第2グレインを有する導電性金属を含むことができる。この際、上記第2グレインの粒径(D50)に対する上記第1グレインの粒径(D50)の割合(D50/D50)は、0.7~1.3の範囲内であることができる。上記第1及び第2突出部141、142は、後述のように、熱処理を介して形成する。上記高温の熱処理過程において上記第1及び第2突出部141、142に含まれる炭素が第1グレインを形成するようになる。また、第1及び第2内部電極121、122の場合、焼成過程において上述した導電性金属粒子が第2グレインを形成する。この際、上記第1グレインは、ニッケルなどの導電性金属粒子の表面に付着する炭素が結晶性を回復しながら形成されるため、上記ニッケルなどの導電性金属粒子から形成される第2グレインと同様のサイズを有するようになる。これは、酸化グラフェンなどを溶液状態にして結晶を形成する従来の方法とは全く異なる方法に起因したものである。第1及び第2グレインが、上記のような過程を介して形成されることにより、第2グレインの粒径(D50)に対する第1グレインの粒径(D50)の割合(D50/D50)が0.7~1.3の範囲を満たすとともに、均一なサイズの炭素結晶粒子を形成して高温多湿な環境における長期信頼性をさらに向上させることができる。
【0037】
本発明による積層セラミック電子部品は、カバー部c1、c2を含むことができる。上記カバー部c1、c2は、第1及び第2内部電極121、122の最外側に配置されることができる。上記カバー部c1、c2は、セラミック本体110の最下部の内部電極の下部及び最上部の内部電極の上部に配置されることができる。この際、カバー部c1、c2は、誘電体層111と同一の組成からなることができ、内部電極を含まない誘電体層をセラミック本体110の最上部の内部電極の上部及び最下部の内部電極の下部にそれぞれ少なくとも1つ以上積層して形成されることができる。上記カバー部c1、c2は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0038】
本発明による積層セラミック電子部品は、セラミック本体110の第2方向の両面にマージン部m1、m2が配置されることができる。上記マージン部m1、m2は、上記セラミック本体110の第1及び第3方向(X方向及びZ方向)と垂直な第2方向(Y方向)の両面にそれぞれ配置されることができる。上記マージン部m1、m2は、物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0039】
マージン部m1、m2は、絶縁物質からなることができ、チタン酸バリウムなどのようなセラミック物質からなることができる。この場合、マージン部は、誘電体層111に含まれるものと同一のセラミック物質を含むか、又は誘電体層111と同一の物質からなることができる。
【0040】
上記マージン部m1、m2を形成する方法は、特に制限されない。例えば、セラミック本体110に含まれる誘電体層の面積を内部電極の面積よりも大きく形成して、内部電極のうち外部電極と連結される部分を除いた残りの周囲の部分にマージン領域を形成したり、セラミックを含むスラリーを塗布して形成したり、又は誘電体シートをセラミック本体110の第2方向(Y方向)の両面に付着したりして形成することができる。
【0041】
本発明による積層セラミック電子部品は、セラミック本体の第1方向(X方向)の第5面S5及び第6面S6に、第1外部電極131及び第2外部電極132がそれぞれ配置されることができる。第1外部電極131は第1内部電極121と連結され、第2外部電極132は第2内部電極122と連結されることができる。上記第1外部電極131及び第2外部電極132は、導電性金属及びガラスを含む導電性ペーストで形成することができる。
【0042】
上記第1外部電極131及び第2外部電極132に含まれる導電性金属は、特に制限されるものではなく、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、タングステン(W)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、及びこれらの合金のうち1つ以上の導電性金属であることができる。
【0043】
上記ガラスは、例えば、ケイ素(Si)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらの酸化物、窒化物、炭化物、及び炭酸塩からなる群より選択された1つ以上であることができるが、これに制限されるものではない。上記遷移金属は、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、銅(Cu)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)からなる群より選択され、上記アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、及びカリウム(K)からなる群より選択され、上記アルカリ土類金属は、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)からなる群より選択された1つ以上であることができる。
【0044】
上記第1外部電極131及び第2外部電極132の形成方法は、特に限定されない。例えば、導電性金属及び反応性ガラスを含む導電性ペーストにセラミック本体をディッピングして形成したり、上記導電性ペーストをセラミック本体の表面にスクリーン印刷法又はグラビア印刷法などで印刷したり、上記導電性ペーストをセラミック本体の表面に塗布したり、又は上記導電性ペーストを乾燥させた乾燥膜をセラミック本体上に転写したりして形成するなど、様々な方法を用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0045】
また、本発明は、積層セラミック電子部品の製造方法に関するものである。本発明の他の実施形態による積層セラミック電子部品の製造方法は、誘電体層、及び上記誘電体層を間に挟んで第1及び第2内部電極が第3方向に積層されたセラミック本体を焼成する段階と、上記セラミック本体の第1及び第2内部電極の端部に炭素を粒成長させる段階と、を含むことができる。上記誘電体層ならびに内部電極及びセラミック本体についての説明は、上述のとおりであるため省略する。
【0046】
本発明の一例において、セラミック本体の第1及び第2内部電極の端部に炭素を粒成長させる段階は、上記セラミック本体を熱処理する段階であることができる。炭化水素などを熱処理すると、水素が除去され、炭素を結晶化することができる。この際、熱処理温度を約700℃~1300℃程度に上げると、結晶の分子構造が増加し、炭素の結晶化度が高くなる。本発明による積層セラミック電子部品の製造方法は、セラミック本体の焼成後に、上記セラミック本体を再び熱処理して内部電極の導電性金属に付着する炭素を結晶化することができる。
【0047】
本発明の他の実施形態において、炭素を粒成長させる段階は、700℃~1300℃の範囲の温度で行うことができる。上記温度は、炭素の結晶化度を高めることができる範囲であれば特に制限されるものではなく、誘電体層及び/又は内部電極に含まれる成分などによって適宜調整することができる。
【0048】
本発明の他の実施形態において、炭素を粒成長させる段階は、炭素数1~16の炭化水素化合物及び水素雰囲気下で行うことができる。上記炭化水素化合物とは、本発明による第1及び第2突出部が一定のサイズ以上に形成されるようにするための成分であって、炭素数が1~16である線状、分枝状及び/又は環状の炭化水素化合物を意味することができる。また、上記水素は、内部電極の導電性金属に付着する酸化後の炭素を還元させるためのものであって、還元された炭素が結晶を形成するようにすることができる。
【0049】
本発明の他の実施形態において、炭素を粒成長させる段階は、アルゴン雰囲気下で行うことができる。アルゴンは、代表的な不活性ガスであって、キャリアガスとしての機能を行うことができ、高温で炭素結晶が酸化及び分解されることを防止し、且つ炭化水素などの炭素源の分解を助ける役割を果たすことができる。
【0050】
本発明の一例において、炭素を粒成長させる段階は、炭素原子を3層以上粒成長させる段階であることができる。上記炭素原子の積層層数は、2700cm-1の付近で形成される2Dピークから測定することができ、ラマン分光法で計算することができる。本発明による積層セラミック電子部品の製造方法は、第1及び第2内部電極121、122の端部に形成される第1及び第2突出部141、142が、炭素原子が3層以上粒成長することにより、酸化防止膜としての機能を行うことができる十分な厚さを確保することができる。これに対し、上記炭素原子が3層未満で形成される場合には、酸素分子及び/又は水分子の浸透を抑制することができないため、信頼性の向上効果を期待することが難しい可能性がある。
【0051】
一つの例において、本発明による積層セラミック電子部品の製造方法は、炭素を粒成長させる段階後に、20℃/min未満の速度で降温する段階をさらに含むことができる。上述した熱処理により結晶性を回復した炭素は、降温速度に応じて結晶のサイズが変わったり、又は積層数が異なったりすることがある。本発明による積層セラミック電子部品の製造方法は、熱処理後に20℃/min未満の速度で降温することにより、炭素原子の積層数を適切な範囲に調整することができる。
【実施例
【0052】
以下、実施例を介して本発明をさらに詳細に説明する。但し、これは、発明の具体的な理解を助けるためのものであって、本発明の範囲が実施例により限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
下記サンプルは、3225サイズに該当するセラミック本体をバレル研磨した状態のチップを用いた。各サンプルを4.0×4.0cmサイズの酸化アルミニウム基板に置いて電気炉内の石英管に投入した。その後、下記表1の条件に応じて熱処理を行った。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
上記表2は、上記表1の条件で熱処理した後、サンプルに対する特性を示したものである。上記表2における炭素層数は、ラマンスペクトルの2Dピークを日本の(株)堀場製作所(HORIBA)製のラマン分光器(LabRam HR-800)を用いて計算した。また、長期信頼性は、85℃、85%RHで、1.5VRの電圧を印加したとき、不良が発生したか否かを調査した。
【0057】
上記表2を参照すると、熱処理後に20℃/min未満の降温速度で降温した場合、積層された炭素の層数が3層以上であり、内部電極の端部に炭素層数が3層以上の場合に優れた長期信頼性を示すことを確認することができる。
【0058】
図8は熱処理を行っていない研磨チップに対するラマンスペクトルを示すグラフであり、図9は結晶性炭素成長条件で熱処理後の研磨チップに対するラマンスペクトルを示すグラフである。図8及び図9を参照すると、熱処理を行ったチップは、Gピークが回復したことを確認することができ、欠陥に該当するDピークの半値幅が減少したことを確認することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0060】
100 積層セラミック電子部品
110 セラミック本体
111 誘電体層
121、122 内部電極
131、132 外部電極
141、142 突出部
c1、c2 カバー部
m1、m2 マージン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9