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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】リラップ装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20240717BHJP
【FI】
A61M25/10 512
A61M25/10 500
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020019277
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021122606
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 巧
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0047149(US,A1)
【文献】登録実用新案第3168406(JP,U)
【文献】特開2019-088377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンカテーテルのバルーンをリラップするリラップ装置であって、
収縮した前記バルーンを挿入可能な開口部を有する筒状の本体部を備え、
前記開口部は、断面形状が3回の回転対称性を有すると共に、拡張させた前記バルーンが当接する内側に凸となった曲面により形成された凸部を内壁面に有する構成が前記本体部の全長に亘って延び、
前記開口部の内壁面の2点間を結んだ最大幅は、前記バルーンの拡張時の最大外径をφB max とするとπφB max /2以上であり、
前記開口部の最小内径は、前記バルーンの拡張時の最大外径の50%以上、80%以下で、前記開口部の最大内径の60%以上、80%以下である、リラップ装置。
【請求項2】
前記本体部の長さは、前記バルーンのストレート部の長さの80%以上である、請求項1に記載のリラップ装置。
【請求項3】
前記曲面の曲率半径は、前記開口部の最大内径の1.5倍以上、2.4倍以下である、請求項1又は2に記載のリラップ装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記バルーンの表面に設けられたスリップ防止エレメントを受け入れる、窪み部を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載のリラップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はリラップ装置に関し、特にバルーンカテーテルのバルーンを所定の形状に収縮させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血管や食道などの体内管腔の狭窄部を治療するためにバルーンカテーテルが用いられる。バルーンカテーテルは、拡張及び収縮が可能なバルーンを有しており、バルーンを収縮させてコンパクトに折り畳んだ状態で狭窄部まで案内される。
【0003】
狭窄部においてバルーンを拡張した際に狭窄部が上手く押し拡げられない場合や、治療すべき狭窄部が2か所以上ある場合には、バルーンを収縮させて一度体外に取り出し、再度体内の狭窄部位へ案内して拡張させる必要がある。
【0004】
バルーンには、拡張後に再度収縮させると元の折り畳まれた状態に戻るリラップ性が付与されているが、十分とはいえず、一度体外へ取り出したルーンは元のようにコンパクトに折り畳まれない場合が多い。
【0005】
体外に取り出されたバルーンを再びコンパクトに折り畳むために折り畳みを補助するリラップ装置が検討されている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-165930号公報
【文献】特開2019-088377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のリラップ装置は、細い筒の中を通過させることにより収縮させたバルーンを軸の周りに巻き付けることだけを目的とする装置である。つまり、使用前と同様の放射状に配される3枚の羽状部からなる形状に再収縮したバルーンであっても、使用前とは異なる2枚の羽状部からなる形状に再収縮したバルーンであっても、一律にバルーンを軸の周りに巻き付ける装置である。バルーンが3枚の羽状部からなる形状に再収縮する場合は少なく、多くが2枚の羽状部からなる平板状に再収縮する。特に、拡張及び収縮を繰り返すと平板状に収縮する確率が飛躍的に高くなる。平板状に収縮した羽状部を軸の周りに巻き付けただけではバルーンの形状が大きくなってしまい、再挿入する際にバルーンが血管内でつかえたり、それに伴いシャフトがキンクしやすくなったりするという問題が生じる。しかし、従来のリラップ装置では、この問題に対応することができない。
【0008】
本願の課題は、バルーンを少なくとも3枚の羽状部を有する形状に収縮させることを補助するリラップ装置を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のリラップ装置の一態様は、バルーンカテーテルのバルーンをリラップするリラップ装置であって、収縮したバルーンを挿入可能な開口部を有する筒状の本体部を備え、開口部は、断面形状が3回以上の回転対称性を有すると共に、拡張させたバルーンが当接する内側に凸となった凸部を内壁面に有する。
【0010】
リラップ装置の一態様によれば、凸部が当接することにより、拡張させたバルーンの断面形状を、周状にへこんだ部分を有する3回以上の回転対称性を有する形状にすることができる。このため、再収縮させたバルーンを3枚以上の羽状部を有する形状とすることが容易にできる。
【0011】
リラップ装置の一態様において、開口部の内壁面の2点間を結んだ最大幅は、バルーンの拡張時の最大外径をφBmaxとするとπφBmax/2以上であり、開口部の最小内径はバルーンの拡張時の最大外径以下とすることができる。このような構成とすることにより、収縮したバルーンを開口部に容易に挿入できると共に、凸部が拡張させたバルーンと確実に当接するようにできる。
【0012】
リラップ装置の一態様において、本体部の長さは、バルーンのストレート部の長さの80%以上とすることができる。このような構成とすることにより、ストレート部の全体を3枚以上の羽状部を有する形状にリラップすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示のリラップ装置によれば、バルーンを少なくとも3枚の羽状の部分を有する形状に収縮させることが容易にでき、拡張させたバルーンを再びコンパクトに折り畳むことが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】リラップするバルーンカテーテルの一例を示す図である。
図2】一実施形態に係るリラップ装置を示す正面図である。
図3】一実施形態に係るリラップ装置を示す側面図である。
図4】平板状に収縮したバルーンを示す断面図である。
図5】3枚羽形状に収縮させたバルーンを示す断面図である。
図6】リラップ装置の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態のリラップ装置は、図1に示すようなバルーンカテーテルのバルーン211を3枚の羽状部を有する3枚羽形状にリラップすることができる。図2及び図3に示すように、本実施形態のリラップ装置は収縮した状態のバルーン211を挿入可能な開口部111を有する筒状の本体部101を備えている。開口部111は、軸方向断面の断面形状が3回の回転対称性を有すると共に、拡張させた状態のバルーンが当接する内側に凸となった凸部114を内壁面に有する。本体部101は、金属又は樹脂等により形成することができる。
【0016】
開口部111は、単純な三角形状の断面形状ではなく、内側に凸となった凸部114を有している。このため、図4のように2枚の羽状部を有する平板状に収縮した状態のバルーン211をリラップ装置100の開口部111に挿入してバルーン211を拡張させると、凸部114がバルーン211の外壁面に当接するため、拡張させたバルーン211は、周上の3カ所において内側にへこんだ部分を有する、開口部111とほぼ同じ断面形状となる。この状態でバルーン211を収縮させると、3回の回転対称性を維持しつつ収縮するため、図5に示すような3枚の羽状部213を有する3枚羽形状になりやすい。1回の拡張と収縮により3枚羽形状に収縮しなかった場合においても、拡張と収縮とを数回繰り返すことによりほぼ確実に3枚羽形状に収縮させることができる。3枚の羽状部213を軸の周りに巻き付けるようにすることにより、平板状に収縮したバルーン211を軸の周りに巻き付けた場合よりもコンパクトにすることができ、再挿入時のキンクの発生を抑えることもできる。
【0017】
開口部111は、収縮した状態のバルーン211を挿入できればよく、凸部114が拡張させた状態のバルーン211の外壁と当接するように、拡張させた状態のバルーン211の最大外径φBmaxよりも最大内径φmaxを小さくすることが好ましい。凸部114が、拡張させた状態のバルーン211の外壁に軽く押圧する程度であっても3枚羽形状に収縮する確率を大幅に向上させることができる。このため、凸部114を設けたことによる開口部111の最小内径φminは、拡張させた状態のバルーン211の最大外径の80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。開口部111内においてバルーン211を拡張させた際に押圧力が大きくなりすぎないようにする観点から、最小内径φminは拡張させた状態のバルーン211の最大外径φBmaxの50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0018】
開口部111の最大内径φmaxは、拡張させた状態のバルーン211の最大外径φBmaxとほぼ同じにすることができる。開口部111の最大内径φmaxは、拡張させた状態のバルーン211の最大外径φBmaxよりも大きくてもよいが、開口部111内においてバルーン211が均等に拡張しやすくする観点から、拡張させた状態のバルーン211の最大外径φBmaxの120%以下であることが好ましく、110%以下であることがより好ましく、100%以下であることがさらに好ましい。開口部111の最大内径φmaxは、拡張させた状態のバルーン211の最大外径φBmaxよりも小さくてもよいが、バルーン211の挿入性の観点から、拡張させた状態のバルーン211の最大外径φBmaxの90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0019】
また、平板状に収縮した状態のバルーン211の最大幅WBmaxは、拡張させた状態のバルーン211の最大外径φBmaxによって決まるが、πφBmax/2よりも若干小さくなる。このため、収縮した状態のバルーン211の挿入をよりスムーズにする観点から、開口部111の内壁面の2点間を結んだ最大幅Wmaxは、πφBmax/2以上とすることが好ましい。但し、開口部111に挿入する際に収縮した状態のバルーン211の羽状部213を手で折り畳むことができるため、最大幅Wmaxは、πφBmax/2未満であってもよい。
【0020】
凸部114は、内側に凸になり、拡張させた状態のバルーン211の外壁を押圧することができればどのような形状であってもよいが、バルーン211の外壁を傷つけないようにする観点から、なだらかな曲面により形成された凸部が好ましい。例えば、開口部111の最大内径φmaxの1.5倍~2.4倍程度の曲率半径の曲線により3つの凸部114を形成して、最小内径φminが最大内径φmaxの60%~80%程度となるようにすることができる。
【0021】
バルーン211をコンパクトにリラップする観点から、ストレート部211Aの全体を3枚羽形状とすることが好ましい。このため、本体部101の長さLは、好ましくはストレート部211Aの長さの80%以上であり、より好ましくはストレート部211Aの長さ以上である。また、本体部101の長さLは、ネック部211Bを含むバルーン211全体の長さ以上であってもよい。なお、開口部111が本体部101を貫通する貫通孔である例を示したが、開口部111は本体部101を貫通していない有底の凹部であってもよい。但し、貫通孔の方が種々の長さのバルーンに対応可能となると共に、バルーンの挿入が容易であり、操作性を向上させることができる。また、挿入したカテーテルの先端部を変形させるような事態を生じにくくすることができる。
【0022】
経皮的血管形成術(PTA)において使用されるカテーテルは、3枚の羽状部213を有する形状に収縮させることが一般的である。このため、本実施形態のリラップ装置100は、3つの凸部114を設けて開口部111の断面形状を3回の回転対称性を有する形状とした。しかし、開口部111の断面形状を4回以上の回転対称性を有する形状として、収縮時に形成される羽状部の枚数を4枚以上とすることもできる。例えば、羽状部を6枚有する状態に収縮させることが一般的な食道用のカテーテルの場合には、開口部111の断面形状を6回の回転対称性を有する形状とすることができる。
【0023】
本実施形態のリラップ装置は、表面にスリップ防止エレメントが設けられたタイプのバルーンのリラップに用いることもできる。また、スリップ防止エレメントが設けられたバルーンの場合、図6に示すようなエレメント位置を合わせるための窪み116を凸部114の間に有する構成とすることができる。図6に示すリラップ装置の場合、スリップ防止エレメントを窪み116に位置合わせして挿入して収縮させることにより、3枚の羽状部の間にスリップ防止エレメントが位置するように収縮させることが容易となる。但し、窪み部116の形状、大きさ及び位置等は、リラップするバルーンの形状等に応じて変更することができる。
【0024】
本実施形態のリラップ装置は、従来の軸の回りに巻き付けるタイプのリラップ装置と組み合わせることができる。例えば、本実施形態のリラップ装置の基端側に特許文献2に記載されたような羽状部巻き付け用のリラップ装置を連結する。本実施形態のリラップ装置の位置においてバルーンを3枚の羽状部を有する形状に収縮させた後、羽状部巻き付け用リラップ装置の部分を通過させることにより、収縮と巻き付けとを一度に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本開示のリラップ装置は、バルーンを少なくとも3枚の羽状の部分を有する形状に再収縮させることが容易にでき、バルーンを使用する際の補助ツールとして有用である。
【符号の説明】
【0026】
100 リラップ装置
101 本体部
111 開口部
114 凸部
116 窪み
211 バルーン
211A ストレート部
211B ネック部
213 羽状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6