(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】発光装置、光学装置及び計測装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20240717BHJP
H01S 5/0239 20210101ALI20240717BHJP
G01S 7/484 20060101ALI20240717BHJP
G01S 17/42 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01S5/042 630
H01S5/0239
G01S7/484
G01S17/42
(21)【出願番号】P 2020030595
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】井口 大介
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0045882(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0278011(US,A1)
【文献】国際公開第2019/202874(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0229912(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0036156(US,A1)
【文献】国際公開第2019/234180(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材と、
前記第1の基材に設けられたレーザ部と、
前記第1の基材に設けられ、前記レーザ部に駆動電流を供給する2つの容量素子と、
前記第1の基材よりも小さい熱伝導率を有する第2の基材で構成され、当該第1の基材を搭載した配線基板と、
前記配線基板に搭載され、前記レーザ部を駆動する駆動部と、
前記配線基板上に設けられ前記駆動部と前記レーザ部とに接続される配線であって、当該レーザ部と上面視で重なる領域から当該駆動部と上面視で重なる領域に向け一方向に延びた配線と、を備え、
前記2つの容量素子は、前記一方向に垂直な方向で、前記レーザ部を挟んで配置されている
発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置と、
前記発光装置が備えるレーザ部から出射され被計測物で反射された光を受光する受光部と、を備え、
前記受光部は、前記レーザ部から出射されてから当該受光部で受光されるまでの時間に相当する信号を出力する光学装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学装置と、
前記光学装置が備えるレーザ部から出射され被計測物で反射され、当該光学装置が備える受光部が受光した光に基づき、当該被計測物の三次元形状を特定する三次元形状特定部 と、を備え、
前記被計測物の三次元形状を計測する計測装置。
【請求項4】
熱伝導率が10W/m・K以上の絶縁性の基材と、
前記基材に設けられたレーザ部と、
前記基材に設けられ、前記レーザ部に駆動電流を供給する2つの容量素子と、
前記レーザ部と、当該レーザ部を駆動する前記基材外に設けられた駆動部とを接続する配線と、を備え、
前記2つの容量素子は、
前記レーザ部と当該レーザ部を駆動する前記基材外に設けられた前記駆動部とを接続する配線の延びた方向に対して垂直な方向に、当該レーザ部を挟んで配置されている
発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、光学装置及び計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光透過性を有するセラミック基板と、前記セラミック基板の表面に搭載された発光素子と、前記発光素子に電力を供給するための配線パターンと、光反射性を有する金属からなるメタライズ層と、を備えており、前記メタライズ層は、前記発光素子から出射された光を反射するように前記セラミック基板の内部に形成されている発光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光の飛行時間による、いわゆるToF(Time of Flight)法に基づいて、被計測物の三次元形状の計測を行う場合、レーザ部に駆動電流を供給する回路のインダクタンスを低減して、レーザ部からの発光の立ち上がり時間を短くすることが求められる。また、発熱が大きいレーザ部の放熱性を高めることが求められる。
【0005】
本発明は、レーザ部に駆動電流を供給する容量素子が第1の基材の外に設けられている場合と比較し、駆動回路のインダクタンス低減とレーザ部の放熱とを両立させやすい構造の発光装置などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、第1の基材と、前記第1の基材に設けられたレーザ部と、前記第1の基材に設けられ、前記レーザ部に駆動電流を供給する2つの容量素子と、前記第1の基材よりも小さい熱伝導率を有する第2の基材で構成され、当該第1の基材を搭載した配線基板と、前記配線基板に搭載され、前記レーザ部を駆動する駆動部と、前記配線基板上に設けられ前記駆動部と前記レーザ部とに接続される配線であって、当該レーザ部と上面視で重なる領域から当該駆動部と上面視で重なる領域に向け一方向に延びた配線と、を備え、前記2つの容量素子は、前記一方向に垂直な方向で、前記レーザ部を挟んで配置されている発光装置である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発光装置と、前記発光装置が備えるレーザ部から出射され被計測物で反射された光を受光する受光部と、を備え、前記受光部は、前記レーザ部から出射されてから当該受光部で受光されるまでの時間に相当する信号を出力する光学装置である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光学装置と、前記光学装置が備えるレーザ部から出射され被計測物で反射され、当該光学装置が備える受光部が受光した光に基づき、当該被計測物の三次元形状を特定する三次元形状特定部と、を備え、前記被計測物の三次元形状を計測する計測装置である。
請求項4に記載の発明は、熱伝導率が10W/m・K以上の絶縁性の基材と、前記基材に設けられたレーザ部と、前記基材に設けられ、前記レーザ部に駆動電流を供給する2つの容量素子と、前記レーザ部と、当該レーザ部を駆動する前記基材外に設けられた駆動部とを接続する配線と、を備え、前記2つの容量素子は、前記レーザ部と当該レーザ部を駆動する前記基材外に設けられた前記駆動部とを接続する配線の延びた方向に対して垂直な方向に、当該レーザ部を挟んで配置されている発光装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1、4に記載の発明によれば、レーザ部に駆動電流を供給する容量素子が第1の基材の外に設けられている場合と比較し、駆動回路のインダクタンス低減とレーザ部の放熱とを両立させやすい構造が実現できる。
請求項2に記載の発明によれば、三次元形状に対応した信号が取得できる光学装置が提供される。
請求項3に記載の発明によれば、三次元形状の計測が行える計測装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】三次元形状を計測する計測装置の構成の一例を説明するブロック図である。
【
図3】光源における1個のVCSELの断面構造を説明する図である。
【
図4】光拡散部材の一例を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のIVB-IVB線での断面図である。
【
図5】ローサイド駆動により光源を駆動する場合の等価回路の一例を示す図である。
【
図6】本実施の形態が適用される発光装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のVIB-VIB線での断面図である。
【
図7】配線基板に設けられた配線及び放熱基材に設けられた配線を説明する図である。(a)は、配線基板に設けられた配線、(b)は、放熱基材の表面側に設けられた配線、(c)は、放熱基材の裏面側に設けられた配線である。
【
図8】本実施の形態が適用される発光装置をさらに説明する図である。
【
図9】本実施の形態が適用されない発光装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のIXB-IXB線での断面図である。
【
図10】本実施の形態が適用されない発光装置における配線基板に設けられた配線及び放熱基材に設けられた配線を説明する図である。(a)は、配線基板に設けられた配線、(b)は、放熱基材の表面に設けられた配線、(c)は、放熱基材の裏面に設けられた配線である。
【
図11】本実施の形態が適用されない発光装置をさらに説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
被計測物の三次元形状を計測する計測装置には、光の飛行時間による、いわゆるToF(Time of Flight)法に基づいて、三次元形状を計測する装置がある。ToF法では、計測装置の光源から光が出射されたタイミングから、照射された光が被計測物で反射して計測装置の三次元センサ(以下では、3Dセンサと表記する。)で受光されるタイミングまでの時間を計測し、被計測物の三次元形状を特定する。なお、三次元形状を計測する対象を被計測物と表記する。また、三次元形状を計測することを、三次元計測、3D計測又は3Dセンシングと表記することがある。
【0010】
このような計測装置は、携帯型情報処理装置などに搭載され、アクセスしようとするユーザの顔認証などに利用されている。従来、携帯型情報処理装置などでは、パスワード、指紋、虹彩などにより、ユーザを認証する方法が用いられてきた。近年、セキュリティ性がより高い認証方法が求められるようになってきた。そこで、携帯型情報処理装置に三次元形状を計測する計測装置を搭載するようになってきた。つまり、アクセスしたユーザの顔の三次元像を取得し、アクセスすることが許可されているか否かを識別し、アクセスが許可されているユーザであることが認証された場合にのみ、自装置(携帯型情報処理装置)の使用を許可することが行われている。
また、このような計測装置は、拡張現実(AR:Augmented Reality)など、継続的に被計測物の三次元形状を計測する場合にも適用される。
【0011】
ToF法による三次元形状を計測する計測装置では、光源の発光の立ち上がり時間が短いことが求められる。光源の発光の立ち上がり時間が短いほど、計測の精度が向上する。このため、光源の発光の立ち上がり時間は、光源を発光させる電流を供給して光源を駆動する駆動回路のインダクタンス(回路インダクタンス)が小さいほど短くなる。回路インダクタンスが大きいと、高周波成分に遅延が生じて立ち上がり時間が長くなってしまう。つまり、回路インダクタンスを小さくして、光源の発光の立ち上がり時間を短くすることが求められる。回路インダクタンスを小さくするには、光源を発光させる電流を供給して光源を駆動する駆動回路の長さを短くすることが有効である。
【0012】
そして、光源は、発熱が大きい。上記した顔認証では、顔に短時間光を照射すればよいが、拡張現実など継続的に被計測物に光を照射する場合には、光源の発熱がより大きくなり、放熱が重要となる。
【0013】
以下で説明する本実施の形態で説明する構成、機能、方法等は、顔認証や拡張現実以外の被計測物の三次元形状の計測に適用しうる。
【0014】
(計測装置1)
図1は、三次元形状を計測する計測装置1の構成の一例を説明するブロック図である。
計測装置1は、光学装置3と、制御部8とを備える。制御部8は、光学装置3を制御する。そして、制御部8は、被計測物の三次元形状を特定する三次元形状特定部81を含む。制御部8は、CPU、ROM、RAMなどを含むコンピュータとして構成されている。なお、ROMには、不揮発性の書き換え可能なメモリ、例えばフラッシュメモリを含む。そして、ROMに蓄積されたプログラムや定数が、RAMに展開され、CPUがプログラムを実行することによって、三次元形状特定部81が構成され、被計測物の三次元形状が特定される。
以下、順に説明する。
【0015】
光学装置3は、発光装置4と、3Dセンサ5とを備える。
発光装置4は、配線基板10と、放熱基材100と、光源20と、光拡散部材30と、駆動部50と、保持部60と、キャパシタ70A、70Bとを備える。さらに、発光装置4は、駆動部50を動作させるために、抵抗素子6、キャパシタ7などの受動素子を備えてもよい。ここでは、抵抗素子6、キャパシタ7をそれぞれ2個備えるとする。また、2個のキャパシタ70A、70Bを表記したが、1個でもよい。なお、キャパシタ70A、70Bを区別しない場合はキャパシタ70と表記する。さらに、抵抗素子6及びキャパシタ7は、それぞれ1個であってもよく、複数であってもよい。ここでは、光源20、駆動部50及びキャパシタ70以外の、3Dセンサ5、抵抗素子6、キャパシタ7などの電気部品をそれぞれ区別しないで回路部品と表記することがある。なお、キャパシタは、コンデンサと呼ばれることがある。3Dセンサ5は、受光部の一例である。キャパシタ70(キャパシタ70A、70B)は、容量素子の一例である。
【0016】
発光装置4の放熱基材100、駆動部50、抵抗素子6及びキャパシタ7は、配線基板10の表面上に設けられている。なお、
図1では、3Dセンサ5は、配線基板10の表面上に設けられていないが、配線基板10の表面上に設けられていてもよい。
光源20、キャパシタ70A、70B及び保持部60は、放熱基材100の表面上に設けられている。そして、光拡散部材30は、保持部60上に設けられている。ここでは、放熱基材100の外形と光拡散部材30の外形とが同じであるとしている。これらの構成については、後述する
図6から
図8で詳細に説明する。ここで、表面とは、
図1の紙面の表側を言う。より具体的には、配線基板10においては、放熱基材100が設けられている方を表面、表側、又は表面側と言う。また、放熱基材100においては、光源20が設けられている方を表面、表側、又は表面側という。
【0017】
光源20は、複数の発光素子が二次元に配置された発光素子アレイとして構成されている(後述する
図2参照)。発光素子は、一例として垂直共振器面発光レーザ素子VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。以下では、発光素子は、垂直共振器面発光レーザ素子VCSELであるとして説明する。そして、垂直共振器面発光レーザ素子VCSELをVCSELと表記する。光源20は放熱基材100の表面上に設けられているので、光源20は、放熱基材100の表面に対して垂直に、放熱基材100から離れる方向に光を出射する。つまり、発光素子アレイは、面発光レーザ素子アレイである。なお、光源20における複数の発光素子が二次元に配置されていて、光を出射する光源20の面を出射面と表記することがある。光源20は、レーザ部の一例である。
【0018】
光拡散部材30は、光源20が出射した光が入射される。そして、光拡散部材30は、入射した光を拡散して出射する。光拡散部材30は、光源20及びキャパシタ70A、70Bを覆うように設けられている。つまり、光拡散部材30は、放熱基材100の表面上に設けられた保持部60により、放熱基材100上に設けられた光源20及びキャパシタ70A、70Bから予め定められた距離を離して設けられている。よって、光源20が出射する光は、光拡散部材30により拡散されて被計測物に照射される。つまり、光源20が出射した光は、光拡散部材30を備えない場合に比べ、光拡散部材30により拡散されてより広い範囲に照射される。
【0019】
ToF法により三次元計測を行う場合、光源20は、駆動部50により、例えば、100MHz以上で、且つ、立ち上り時間が1ns以下のパルス光(以下では、出射光パルスと表記する。)を出射することが求められる。なお、顔認証を例とする場合、光が照射される距離は10cm程度から1m程度である。そして、光が照射される範囲は、1m角程度である。なお、光が照射される距離を計測距離と表記し、光が照射される範囲を照射範囲又は計測範囲と表記する。また、照射範囲又は計測範囲に仮想的に設けられる面を照射面と表記する。なお、顔認証以外の場合など、被計測物までの計測距離及び被計測物に対する照射範囲は、上記以外であってもよい。
【0020】
3Dセンサ5は、複数の受光セルを備え、光源20から光が出射されたタイミングから3Dセンサ5で受光されるタイミングまでの時間に相当する信号を出力する部材である。例えば、3Dセンサ5の各受光セルは、光源20からの出射光パルスに対する被計測物からのパルス状の反射光(以下では、受光パルスと表記する。)を受光し、受光するまでの時間に対応する電荷を受光セル毎に蓄積する。3Dセンサ5は、各受光セルが2つのゲートとそれらに対応した電荷蓄積部とを備えたCMOS構造のデバイスとして構成されている。そして、2つのゲートに交互にパルスを加えることによって、発生した光電子を2つの電荷蓄積部の何れかに高速に転送する。2つの電荷蓄積部には、出射光パルスと受光パルスとの位相差に応じた電荷が蓄積される。そして、3Dセンサ5は、ADコンバータを介して、受光セル毎に出射光パルスと受光パルスとの位相差に応じたデジタル値を信号として出力する。すなわち、3Dセンサ5は、光源20から光が出射されたタイミングから3Dセンサ5で受光されるタイミングまでの時間に相当する信号を出力する。つまり、3Dセンサ5から、被計測物の三次元形状に対応した信号が取得される。なお、ADコンバータは、3Dセンサ5が備えてもよく、3Dセンサ5の外部に設けられてもよい。
【0021】
制御部8の三次元形状特定部81は、3Dセンサ5が例えば前述のCMOS構造のデバイスである場合、受光セル毎に得られるデジタル値を取得し、受光セル毎に被計測物までの距離を算出する。そして算出された距離により、被計測物の三次元形状を特定し、特定結果を出力する。三次元形状に対応した信号が取得できる。
【0022】
前述したように、制御部8は、コンピュータとして構成され、三次元形状特定部81がプログラムによって実現されるとした。しかし、これらは、ASICやFPGA等の集積回路で構成されてもよい。さらには、これらは、プログラム等のソフトウエアとASIC等の集積回路とで構成されてもよい。
【0023】
以上説明したように、計測装置1は、光源20が出射した光を拡散して被計測物に照射し、被計測物からの反射光を3Dセンサ5で受光する。このようにして、計測装置1は、被計測物の三次元形状を計測する。このことから、顔認証に関わらず、拡張現実などの三次元形状の計測において、光源20は大出力であることが求められる。このため、光源20から熱が効率よく放熱されることが求められる。
【0024】
図1では、光学装置3と制御部8とを分けて示したが、一体に構成されていてもよい。
【0025】
まず、発光装置4を構成する光源20、光拡散部材30、駆動部50及びキャパシタ70A、70Bを説明する。
【0026】
(光源20の構成)
図2は、光源20の平面図である。光源20は、複数のVCSELが二次元のアレイ状に配置されて構成されている。つまり、光源20は、VCSELを発光素子とする発光素子アレイとして構成されている。紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向とする。x方向及びy方向に反時計回りで直交する方向をz方向とする。なお、光源20の表面とは、紙面の表側、つまり+z方向側の面を言い、光源20の裏面とは、紙面の裏側、つまり-z方向側の面を言う。光源20の平面図とは、光源20を表面側から見た図である。さらに説明すると、光源20において、発光層(後述する活性領域206)として機能するエピタキシャル層が形成されている方を、光源20の表面、表側、又は表面側という。
【0027】
VCSELは、半導体基板200(後述する
図3参照)上に積層された下部多層膜反射鏡と上部多層膜反射鏡との間に発光領域となる活性領域を設け、表面に対して垂直方向にレーザ光を出射させる発光素子である。このことから、VCSELは、端面出射型のレーザを用いる場合と比較し、二次元のアレイ化が容易である。光源20の備えるVCSELの数は、一例として、100個~1000個である。なお、複数のVCSELは、互いに並列に接続され、並列に駆動される。上記のVCSELの数は一例であり、計測距離や照射範囲に応じて設定されればよい。
【0028】
光源20の表面には、複数のVCSELに共通のアノード電極218(後述する
図3参照)が設けられている。光源20の裏面には、カソード電極214が設けられている(後述する
図3参照)。つまり、複数のVCSELは、並列接続されている。複数のVCSELを並列接続して駆動することで、VCSELを個別に駆動する場合と比較し、強度の強い光が出射される。
【0029】
ここでは、光源20は、表面側から見た形状(平面形状と表記する。以下同様とする。)が長方形であるとする。そして、-y方向側の側面を側面21A、+y方向側の側面を側面21B、-x方向側の側面を側面22A及び+x方向側の側面を側面22Bと表記する。側面21Aと側面21Bとが対向する。側面22Aと側面22Bとは、それぞれが側面21Aと側面21Bとをつなぐとともに、対向する。
そして、光源20の平面形状における中心、つまりx方向及びy方向の中央を、中心Ovとする。
【0030】
(VCSELの構造)
図3は、光源20における1個のVCSELの断面構造を説明する図である。このVCSELは、λ共振器構造のVCSELである。紙面の上方向をz方向とし、+z方向を上側、-z方向を下側と表記する。
【0031】
VCSELは、n型のGaAsなどの半導体基板200上に、Al組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたn型の下部分布ブラック型反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)202と、上部スペーサ層及び下部スペーサ層に挟まれた量子井戸層を含む活性領域206と、Al組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたp型の上部分布ブラック型反射鏡208とが順に積層されて構成されている。以下では、分布ブラック型反射鏡をDBRと表記する。
【0032】
n型の下部DBR202は、Al0.9Ga0.1As層とGaAs層とをペアとした積層体として構成されている。下部DBR202の各層は、厚さがλ/4nr(但し、λは発振波長、nrは媒質の屈折率)であり、交互に40周期積層されている。キャリアとして、n型不純物であるシリコンがドーピングされている。キャリア濃度は、例えば、3×1018cm-3である。
【0033】
活性領域206は、下部スペーサ層と、量子井戸活性層と、上部スペーサ層とが積層されて構成されている。例えば、下部スペーサ層は、アンドープのAl0.6Ga0.4As層であり、量子井戸活性層は、アンドープのInGaAs量子井戸層及びアンドープのGaAs障壁層であり、上部スペーサ層は、アンドープのAl0.6Ga0.4As層である。
【0034】
p型の上部DBR208は、p型のAl0.9Ga0.1As層とGaAs層とをペアとした積層体として構成されている。上部DBR層208の各層は、厚さがλ/4nrであり、交互に29周期積層してある。キャリアとして、p型不純物であるカーボンがドーピングされている。キャリア濃度は、例えば、3×1018cm-3である。好ましくは、上部DBR208の最上層には、p型GaAsからなるコンタクト層が形成され、上部DBR208の最下層又はその内部に、p型AlAsの電流狭窄層210が形成されている。
【0035】
上部DBR208から下部DBR202に至るまで積層された半導体層をエッチングすることにより、半導体基板200上に円柱状のメサMが形成される。これにより、電流狭窄層210が、メサMの側面に露出する。酸化工程により、電流狭窄層210には、メサMの側面から酸化された酸化領域210Aと酸化領域210Aによって囲まれた導電領域210Bとが形成される。なお、酸化工程において、AlAs層はAlGaAs層よりも酸化速度が速く、酸化領域210Aは、メサMの側面から内部に向けてほぼ一定の速度で酸化されるため、導電領域210Bの断面形状は、メサMの外形を反映した形状、すなわち円形状となり、その中心は、一点鎖線で示すメサMの軸とほぼ一致する。本実施の形態において、メサMは、柱状構造をなしている。
【0036】
メサMの最上層には、Ti/Auなどを積層した金属製の環状のp側電極212が形成される。p側電極212は、上部DBR208に設けられたコンタクト層にオーミック接触する。環状のp側電極212の内側は、レーザ光が外部へ出射される光出射口212Aとなる。つまり、VCSELは、半導体基板200の表面(+z方向側の面)に垂直な方向に光を出射する。そして、メサMの軸が光軸になる。さらに、半導体基板200の裏面には、n側電極としてカソード電極214が形成される。なお、p側電極212の内側の上部DBR208の表面(+z方向側の面)が光出射面である。つまり、VCSELの光軸方向が、光出射方向になる。
【0037】
そして、p側電極212にアノード電極218が接続される部分及び光出射口212Aを除いて、メサMの表面を覆うように、絶縁層216が設けられる。そして、光出射口212Aを除いて、アノード電極218がp側電極212とオーミック接触するように設けられる。なお、アノード電極218は、複数のVCSELに共通に設けられる。つまり、光源20を構成する複数のVCSELは、各々のp側電極212がアノード電極218により並列接続されている。
図3では、アノード電極218の部分にアノードであることを示す[A]と表記し、カソード電極214の部分にカソードであることを示す[K]と表記する。
【0038】
VCSELは、単一横モードで発振してもよく、多重横モードで発振してもよい。例えば、VCSEL1個の光出力は、4mW~8mWである。よって、光源20が500個のVCSELで構成されている場合、光源20の光出力は、2W~4Wになる。このような大出力の光源20は、発熱が大きい。このため、光源20からの放熱が効率よく行われることが求められる。
【0039】
(光拡散部材30の構成)
図4は、光拡散部材30の一例を説明する図である。
図4(a)は、平面図、
図4(b)は、
図4(a)のIVB-IVB線での断面図である。
図4(a)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向とする。x方向及びy方向に反時計回りで直交する方向をz方向とする。そして、光拡散部材30において、+z方向側を表面又は表面側、-z方向側を裏面又は裏面側と呼ぶ。よって、
図4(b)では、紙面の右方向がx方向、紙面の裏方向がy方向、紙面の上方向がz方向となる。
【0040】
図4(b)に示すように、光拡散部材30は、例えば、両面が平行で平坦なガラス基材31の裏面(-z方向)側に光を拡散させるための凹凸が形成された樹脂層32を備える。光拡散部材30は、光源20のVCSELから入射する光の拡がり角を拡げて出射する。つまり、光拡散部材30の樹脂層32に形成された凹凸は、光を屈折させたり、散乱させたりして、入射する光をより広い拡がり角の光として出射する。つまり、
図4に示すように、光拡散部材30は、裏面(-z方向側)から入射する、VCSELから出射された拡がり角θの光を、拡がり角θより大きい拡がり角φの光として表面(+z方向側)から出射する(θ<φ)。このため、光拡散部材30を用いると、光拡散部材30を用いない場合に比べ、光源20の出射する光によって照射される照射面は、面積が拡大される。拡がり角θ、φは、半値全幅(FWHM)である。
【0041】
ここでは、光拡散部材30は、後述する放熱基材100の平面形状と同じとしている。なお、光拡散部材30の厚さ(z方向の厚み)tdは、0.1mm~1mmである。なお、光拡散部材30の平面形状は、多角形や円形など、他の形状であってもよい。
【0042】
(駆動部50及びキャパシタ70A、70B)
光源20をより高速に駆動させたい場合は、ローサイド駆動するのがよい。ローサイド駆動とは、VCSELなどの駆動対象に対して、電流経路の下流側にMOSトランジスタ等の駆動素子を位置させた構成を言う。逆に、上流側に駆動素子を位置させた構成をハイサイド駆動と言う。
【0043】
図5は、ローサイド駆動により光源20を駆動する場合の等価回路の一例を示す図である。
図5では、光源20のVCSELと、駆動部50と、キャパシタ70A、70Bと、電源82とを示す。なお、電源82は、
図1に示した制御部8に設けられている。電源82は、+側を電源電位とし、-側を基準電位とする直流電圧を発生する。電源電位は、電源線83に供給され、基準電位は、基準線84に供給される。なお、基準電位は、接地電位(GNDと表記されることがある。
図5では[G]と表記する。)であってよい。
【0044】
光源20は、前述したように複数のVCSELが並列接続されて構成されている。VCSELのアノード電極218(
図3参照。
図5では[A]と表記する。)が電源線83に接続される。
駆動部50は、nチャネル型のMOSトランジスタ51と、MOSトランジスタ51をオンオフする信号発生回路52とを備える。MOSトランジスタ51のドレイン(
図5では[D]と表記する。)は、VCSELのカソード電極214(
図3参照。
図5では[K]と表記する。)に接続される。MOSトランジスタ51のソース(
図5では[S]と表記する。)は、基準線84に接続される。そして、MOSトランジスタ51のゲートは、信号発生回路52に接続される。つまり、VCSELと駆動部50のMOSトランジスタ51とは、電源線83と基準線84との間に直列接続されている。信号発生回路52は、制御部8の制御により、MOSトランジスタ51をオン状態にする「Hレベル」の信号と、MOSトランジスタ51をオフ状態にする「Lレベル」の信号とを発生する。
【0045】
キャパシタ70A、70Bは、一方の端子が電源線83に接続され、他方の端子が基準線84に接続されている。ここでは、キャパシタ70が複数ある場合には、複数のキャパシタ70は、並列接続される。つまり、
図5では、キャパシタ70が2個のキャパシタ70A、70Bであるとしている。なお、キャパシタ70は、例えば電解コンデンサやセラミックコンデンサなどである。
【0046】
次に、ローサイド駆動である光源20の駆動方法を説明する。
まず、駆動部50における信号発生回路52の発生する信号が「Lレベル」であるとする。この場合、MOSトランジスタ51は、オフ状態である。つまり、MOSトランジスタ51のソース(
図5の[S])-ドレイン(
図5の[D])間には電流が流れない。よって、MOSトランジスタ51と直列接続されたVCSELにも、電流が流れない。つまり、VCSELは非発光である。
【0047】
このとき、キャパシタ70A、70Bは、電源82に接続されていて、キャパシタ70A、70Bの電源線83に接続された一方の端子が電源電位になり、基準線84に接続された他方の端子が基準電位になる。よって、キャパシタ70A、70Bは、電源82から電流が流れ(電荷が供給され)て充電される。
【0048】
次に、駆動部50における信号発生回路52の発生する信号が「Hレベル」になると、MOSトランジスタ51がオフ状態からオン状態に移行する。すると、キャパシタ70A、70Bと、直列接続されたMOSトランジスタ51及びVCSELとで閉ループが構成され、キャパシタ70A、70Bに蓄積されていた電荷が、直列接続されたMOSトランジスタ51とVCSELとに供給される。つまり、VCSELに駆動電流が流れて、VCSELが発光する。この閉ループが、光源20を駆動する駆動回路である。
【0049】
そして、駆動部50における信号発生回路52の発生する信号が再び「Lレベル」になると、MOSトランジスタ51がオン状態からオフ状態に移行する。これにより、キャパシタ70A、70Bと、直列接続されたMOSトランジスタ51及びVCSELとの閉ループ(駆動回路)が開ループになり、VCSELに駆動電流が流れなくなる。これにより、VCSELは、発光を停止する。すると、キャパシタ70A、70Bは、電源82から電荷が供給されて充電される。
【0050】
以上説明したように、信号発生回路52の出力する信号が「Hレベル」と「Lレベル」とに移行する毎に、MOSトランジスタ51がオンオフを繰り返し、VCSELが発光と非発光とを繰り返す。MOSトランジスタ51のオンオフの繰り返しは、スイッチングと呼ばれることがある。
【0051】
上述したように、MOSトランジスタ51をオフ状態からオン状態に移行させた際に、キャパシタ70A、70Bに蓄積した電荷を一気に放電させてVCSELに駆動電流として供給することで、VCSELを例えば1ns以下という短い立ち上がり時間で発光させている。なお、VCSELの発光が停止したのち、電源82からキャパシタ70A、70Bへの電荷の供給(充電)は、上記の立ち上がり時間より長い時間をかけて行う。なお、キャパシタ70A、70Bを設けずに、電源82からVCSELに駆動電流を直接供給してもよいが、電流を供給する経路が長くなって、VCSELの発光の立ち上がり時間が長くなってしまう。
【0052】
上述したように、キャパシタ70A、70Bを設けたローサイド駆動により、VCSELに駆動電流を一気に供給することにより、VCSELの発光の立ち上り時間を短くしている。VCSELの発光の立ち上り時間を短くするためには、キャパシタ70A、70Bと、直列接続されたMOSトランジスタ51及びVCSELとで構成される、光源20に発光のための駆動電流を供給する駆動回路の回路インダクタンスが小さいことがよい。そして、回路インダクタンスを低減するためには、駆動回路において駆動電流が流れる経路が短いほどよい。このため、光源20と駆動部50との間の距離、光源20とキャパシタ70A、70Bとの間の距離を短くして、それぞれを接続する配線の長さを短くすることがよい。
【0053】
(発光装置4)
次に、発光装置4について、詳細に説明する。
図6は、本実施の形態が適用される発光装置4を説明する図である。
図6(a)は、平面図、
図6(b)は、
図6(a)のVIB-VIB線での断面図である。なお、
図6(a)は、光拡散部材30を透かして見た図である。ここで、
図6(a)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向とする。x方向及びy方向に反時計回りで直交する方向(紙面の表方向)をz方向とする。そして、以下で説明する各部材(配線基板10、放熱基材100、光拡散部材30など)について、紙面の表方向(+z方向)を表面又は表面側と言い、紙面の裏方向(-z方向)を裏面又は裏面側と言う。そして、以下において、表面側から、各部材を透視して見ることを上面視と言う。なお、
図6(b)において、紙面の右方向がx方向、紙面の裏方向がy方向、紙面の上方向がz方向になる。
【0054】
図6(a)、(b)に示すように、配線基板10の表面上に放熱基材100、駆動部50、抵抗素子6及びキャパシタ7が設けられている。そして、放熱基材100の表面上に光源20、キャパシタ70A、70B及び保持部60が設けられている。そして、保持部60上に光拡散部材30が設けられている。
【0055】
配線基板10は、例えばガラスエポキシ樹脂等の絶縁性の基材に銅(Cu)箔などの金属による配線を形成する配線層が設けられて構成されている。ここでは、配線基板10は、配線層が基材の表面側と裏面側とに設けられた2層のプリント配線基板であるとして説明する。このような、ガラスエポキシ樹脂を基材とした基材には、一例としてFR-4と呼ばれる基材がある。この基材は、厚さが100μm程度である。そして、この基材は、熱伝導率が0.4W/m・K程度である。なお、銅(Cu)の熱伝導率は、360W/m・K程度である。ここで示す熱伝導率は、特に記載のない場合、25℃での値である。配線基板10の基材は、第2の基材の一例である。
【0056】
放熱基材100は、配線基板10よりも熱伝導率が大きい部材である、絶縁性の基材で構成されている。例えば、放熱基材100は、熱伝導率が10W/m・K以上のものが好ましく、50W/m・K以上のものがより好ましい。そして、熱伝導率が100W/m・K以上のものがさらに好ましい。熱伝導率が10W/m・K以上のものとしては、熱伝導率が20~30W/m・Kであるアルミナ(Al2O3)が挙げられる。また、熱伝導率が50W/m・K以上のものとしては、熱伝導率が85W/m・K程度の窒化シリコン(Si3N4)が挙げられる。さらに、熱伝導率が100W/m・K以上のものとしては、熱伝導率が150~250W/m・Kの窒化アルミニウム(AlN)が挙げられる。これらを、セラミック材料と表記することがある。そして、放熱基材100は、全体がセラミック材料で構成されているとよい。放熱基材100がセラミック材料で構成されていると、樹脂材料で構成されている場合と比較し、放熱効果が高くなる。なお、放熱基材100は、不純物がドープされていないシリコン(Si)など他の熱伝導率が大きい絶縁性の材料であってもよい。放熱基材100は、第1の基材の一例である。
【0057】
ここでは、放熱基材100の外形、光拡散部材30の外形及び保持部60の外形が同じであるとした。このため、放熱基材100、光拡散部材30及び保持部60の外縁が重なっている。なお、放熱基材100の外縁が光拡散部材30の外縁や保持部60の外縁より大きくてもよい。逆に、放熱基材100の外縁が光拡散部材30の外縁や保持部60の外縁より小さくてもよい。この場合、保持部60は、配線基板10の表面上に設けられればよい。
【0058】
放熱基材100は、長手方向と短手方向とを有する平面形状を有する。なお、
図6(a)では、放熱基材100の平面形状は、一例として長方形であるとして示しているが、長手方向と短手方向とを有する多角形や長円形であってもよい。なお、平面形状が長手方向と短手方向とを有する形状を長形と呼ぶことがある。
図6(a)では、放熱基材100は、長手方向がy方向、短手方向がx方向である。そして、放熱基材100は、長手方向が幅Whl、短手方向が幅Wh2であるとする(Wh1>Wh2)。放熱基材100の長手方向の幅Wh1及び短手方向の幅Wh2は、例えば、1mm~30mmである。また、放熱基材100の厚さは、100μm~500μmである。そして、放熱基材100の中心(長手方向の幅Wh1の中心、且つ、短手方向の幅Wh2の中心)を中心Ohとする。なお、放熱基材100は、長手方向の幅Wh1と短手方向の幅Wh2とが同じであってもよい。
【0059】
そして、放熱基材100は、長手方向の一方(-y方向)側を側面101A、長手方向の他方(+y方向)側を側面101B、短手方向の一方(-x方向)側を側面102A及び短手方向の他方(+x方向)側を側面102Bと表記する。側面101Aと側面101Bとが対向する。側面102Aと側面102Bとは、それぞれが側面101Aと側面101Bとをつなぐとともに、対向する。
【0060】
図6(a)に示すように、発光装置4では、駆動部50が放熱基材100の短手方向(x方向)の延長線上に配置されている。なお、短手方向の延長線上とは、放熱基材100の短手方向側であって、放熱基材100から離れた部分を言う。そして、駆動部50は、放熱基材100の長手方向の幅の範囲に設けられている。つまり、駆動部50は、放熱基材100の長手方向の一方(-y方向)側の端部を駆動部50側に引き出した引き出し線(101A′)と、放熱基材100の長手方向の他方(+y方向)側の端部を駆動部50側に引き出した引き出し線(101B′)との間の範囲に設けられている。このようにすることで、光源20と駆動部50との距離が短くなり、光源20と駆動部50とを近接させられる。なお、駆動部50は、放熱基材100から駆動部50側に引き出した引き出し線(101A′)と、引き出し線(101B′)との間の範囲に一部が重なるように設けられていてもよい。
【0061】
さらに、光源20の中心Ovは、放熱基材100の中心Ohより、駆動部50側にずれて設けられている。なお、ずれて設けられているとは、光源20の中心Ovが、放熱基材100の中心Ohより、駆動部50に近い位置に設けられていることを言う。なお、放熱基材100の中心Oh、光源20の中心Ov、そして駆動部50の中心(不図示)は、必ずしも一直線上に配列されていなくともよい。つまり、放熱基材100の短手方向(x方向)において、光源20の中心Ovが、放熱基材100の中心Ohより、駆動部50に近い位置に設けられていればよい。このようにすることで、光源20と駆動部50との距離が短くなる。なお、放熱の点からは、光源20を放熱基材100の中心Ohに配置することがよいが、放熱基材100は熱伝導率が大きいので、光源20を放熱基材100の中心Ohからずらして配置しても、放熱に与える影響が少ない。ここでは、光源20の発光の立ち上がり時間を短くするために、駆動回路を短くするように、光源20を放熱基材100の中心Ohから駆動部50側にずらして配置している。
【0062】
そして、放熱基材100の表面上において、アノード配線112Fを駆動部50から遠い側に設けている。つまり、アノード配線112Fは、放熱基材100の中心Ohから、駆動部50から遠ざかる側にずらして配置しされている。
【0063】
キャパシタ70A、70Bは、放熱基材100の長手方向(±y方向)に光源20を挟んで配置されている。つまり、放熱基材100の長手方向にキャパシタ70A、70Bを配置することにより、長方形の放熱基材100の面積を有効に利用している。そして、キャパシタ70A、70Bのそれぞれの中心Oca、Ocbも、光源20と同様に、放熱基材100の中心Ohより、駆動部50側にずれて設けられている。なお、光源20とキャパシタ70A、70Bのそれぞれの中心Oca、Ocbとは、必ずしも直線上に配列されていなくともよい。キャパシタ70A、70Bのそれぞれの中心Oca、Ocbが駆動部50側にずれて設けられていればよい。このようにすることで、光源20とキャパシタ70A、70Bとの距離が短くなり、光源20とキャパシタ70A、70Bとを近接させられる。
【0064】
図6(a)に示すように、保持部60は、光源20及びキャパシタ70A、70Bを囲むように設けられた破線で示す壁を備える。そして、
図6(b)に示すように、保持部60は、この壁により光拡散部材30を保持する。つまり、光拡散部材30は、保持部60により、放熱基材100上に設けられた光源20及びキャパシタ70A、70Bから予め定められた距離を離して設けられている。そして、光拡散部材30は、光源20及びキャパシタ70A、70Bを覆うように設けられている。ここで、光拡散部材30が光源20を覆うとは、光拡散部材30が光源20の出射する光の出射経路上に設けられ、光源20が出射する光が光拡散部材30を透過するように設けられていることを言う。つまり、光拡散部材30の表面側から光拡散部材30を透視して、上面視した場合に、光源20と光拡散部材30とが重なっている状態を言う。
【0065】
なお、光拡散部材30は、光源20のみを覆うように設けられてもよい。つまり、キャパシタ70A、70Bを覆う部分は、保持部60と同様な部材で構成された蓋状としてもよい。光拡散部材30が光源20のみを覆うようにすれば、高価な光拡散部材30の面積が小さくなり、発光装置4のコストが低減される。
【0066】
保持部60は、例えば樹脂などの成型部材として構成されている。そして、保持部60は、光源20が発光する光を吸収するように、例えば黒色に着色されているとよい。このようにすることで、光源20が出射した光の内、保持部60に照射された光が吸収され、保持部60を透過したり、保持部60で反射したりした光が被計測物に照射されることが抑制される。
【0067】
配線基板10及び放熱基材100には、それぞれの表面側及び裏面側に複数の配線が設けられている。これらについては、後述する
図7、8と合わせて説明する。なお、配線とは、電気回路接続される導体パターンであって、形状は限定されないものを言う。
【0068】
上述したように、光源20は、放熱基材100の表面上に設けられている。そして、放熱基材100が配線基板10の表面上に設けられている。これにより、光源20から発生する熱を、効率よく放熱させている。上述したように、配線基板10を構成する基板は、熱伝導率が小さいため、熱伝導率が配線基板10に比べて大きい放熱基材100の表面上に光源20を設けている。
【0069】
図7は、配線基板10に設けられた配線及び放熱基材100に設けられた配線を説明する図である。
図7(a)は、配線基板10に設けられた配線、
図7(b)は、放熱基材100の表面側に設けられた配線、
図7(c)は、放熱基材100の裏面側に設けられた配線である。なお、
図7(a)、(b)、(c)に示すxyz方向は、
図6(a)、(b)に示したxyz方向と同じである。よって、
図7(c)に示した放熱基材100の裏面側に設けられた配線は、放熱基材100の表面側から見た状態を示し、
図7(b)に示した放熱基材100の表面に設けられた配線及び放熱基材100を取り除いた状態を示している。なお、光源20のカソード電極214に接続される部分を[K]、アノード電極218に接続される部分を[A]、基準電位が供給される部分を[G]と表記する。
【0070】
まず、
図7(a)に示す配線基板10に設けられた配線を説明する。なお、
図7(a)には、放熱基材100の外形を一点鎖線で示している。
図7(a)では、配線基板10の表面側に設けられた配線を実線で示し、配線基板10の裏面側に設けられた配線を破線で示している。つまり、配線基板10の表面側には、互いに絶縁されたカソード配線11と、アノード配線12と、基準電位配線13Fとが設けられている。
【0071】
カソード配線11は、平面形状が長方形で、+x方向側の端部が駆動部50に接続され、-x方向側の端部が放熱基材100を介して光源20のカソード電極214に接続される(
図6(a)、(b)参照)。
アノード配線12は、平面形状が長方形で、+x方向側の端部が放熱基材100を介して光源20のアノード電極218に接続され、-x方向側の端部が電源82の+側に接続される。そして、アノード配線12と、基準電位配線13
Fと、カソード配線11とが、x方向に配列されている。そして、基準電位配線13
Fは、カソード配線11及びアノード配線12より±y方向に延びるように設けられるとともに、延びた部分が±x方向に広げられている。
【0072】
配線基板10の裏面側には、基準電位配線13Bが設けられる。そして、配線基板10の表面側に設けられた基準電位配線13Fと裏面に設けられた基準電位配線13Bとは、導電性の貫通導体13V(
図6(b)参照)により電気的に接続される。そして、裏面側に設けられた基準電位配線13Bに基準電位が供給される。つまり、表面に設けられた基準電位配線13Fは、裏面側に設けられた基準電位配線13Bから基準電位が供給される。ここでは、基準電位配線13Bは、配線基板10の裏面の全面にわたって設けられている。そして、基準電位配線13Bの面積は、他のカソード配線11、アノード配線12の面積より大きく設定されている。一般に、配線基板10の裏面に設けられる基準配線は、表面に設けられる配線の電位を安定させるために、裏面において広い面積にわたって設けられることが多い。なお、
図7(a)では、貫通導体13Vの表記を省略している。貫通導体13Vは、銅(Cu)などの金属で構成されているので、熱伝導率が大きい。後述する放熱基材100に設けられる貫通導体も、同様である。なお、貫通導体は、ビアと呼ばれることがある。
【0073】
次に、
図7(b)、(c)に示す放熱基材100に設けられた配線を説明する。
図7(b)に示すように、放熱基材100の表面側には、互いに絶縁されたカソード配線111F、アノード配線112F及び二つの基準電位配線113Fが設けられている。カソード配線111Fの表面上には、光源20のカソード電極214側が搭載される(
図6(b)参照)。アノード配線112Fは、カソード配線111Fの三方(放熱基材100の一方の短手方向(-x方向)側及び長手方向(±y方向)側)を囲うように設けられている。アノード配線112Fは、光源20の側面21A、21B側(±y方向側)において、ボンディングワイヤ23A、23Bにより光源20のアノード電極218と接続されている(
図6(a)参照)。そして、二つの基準電位配線113Fがアノード配線112Fの±y方向側に設けられている。
【0074】
図7(c)に示すように、放熱基材100の裏面側には、互いに絶縁されたカソード配線111B、アノード配線112B及び基準電位配線113Bが設けられている。なお、
図7(c)には、
図7(
b)に示したカソード配線111Fを破線で示す。
【0075】
カソード配線111Bは、放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111Fに放熱基材100を挟んで対向する位置に設けられている。ただし、カソード配線111Bの面積は、カソード配線111Fの面積より小さく設定されている。そして、カソード配線111Fとカソード配線111Bとは、貫通導体111Vを介して接続されている。アノード配線112Bは、放熱基材100の表面側に設けられたアノード配線112Fの-x方向側の端部の一部に放熱基材100を挟んで対向する位置に設けられている。つまり、アノード配線112Bの面積は、アノード配線112Fの面積に比べて小さい。そして、アノード配線112Fとアノード配線112Bとは、貫通導体112Vにより電気的に接続されている。
【0076】
基準電位配線113Bは、カソード配線111Bとアノード配線112Bとの間に設けられ、カソード配線111B及びアノード配線112Bより放熱基材100の長手方向(±y方向)に延びるように設けられている。そして、基準電位配線113Bにおける放熱基材100の長手方向(±y方向)の端部側が、放熱基材100の表面側に設けられた二つの基準電位配線113Fと放熱基材100を挟んで対向する位置に設けられている。そして、基準電位配線113Fと基準電位配線113Bとは、長手方向(±y方向)の端部側において、貫通導体113Vにより電気的に接続されている。
【0077】
以上説明したように、放熱基材100の表面側と裏面側とに設けられ互いに電気的に接続された、カソード配線111Fとカソード配線111B、アノード配線112Fとアノード配線112B、基準電位配線113Fと基準電位配線113Bとは、形状が異なっている。そして、
図7(c)に示すように、上面視した場合、基準電位配線113Bと破線で示したカソード配線111Fとは、それぞれの縁辺部が±y方向側及び-x方向側において重なっている。ここでは、カソード配線111Fと基準電位配線113Bとの重なりは、重なり幅W1oである。基準電位配線113Bと破線で示した光源20とも、それぞれの縁辺部が放熱基材100の長手方向(±y方向)側及び一方の短手方向(-x方向)側において重なっている。ここでは、カソード配線111Fと光源20との重なりは、重なり幅W2oである。重なり幅W1o、W2oは、放熱基材100の長手方向(±y方向)側及び一方の短手方向(-x方向)で同じである。なお、重なりをオーバラップと表記することがある。
【0078】
そして、放熱基材100の裏面側に設けられた基準電位配線113Bの面積は、放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111F及びアノード配線112Fのいずれの面積より大きく設定されている。そして、基準電位配線113Bの面積は、キャパシタ70A、70Bを包含する大きさとしている。つまり、上面視した場合、基準電位配線113B内に、キャパシタ70A、70Bが含まれる。なお、放熱基材100の裏面側に設けられた基準電位配線113Bの面積は、放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111F及びアノード配線112Fのいずれかの面積より大きく設定されてもよい。
【0079】
図8は、本実施の形態が適用される発光装置4をさらに説明する図である。
図8は、
図6(a)に示した発光装置4のVIII-VIII線での断面図である。
図6(a)、(b)、
図7及び
図8により、発光装置4における電気的な接続関係を説明する。
前述したように、配線基板10の表面上に放熱基材100が設けられ、放熱基材100の表面上に光源20及びキャパシタ70A、70Bが設けられている。
【0080】
配線基板10の表面側に設けられたカソード配線11は、駆動部50と接続される(
図6(a)、(b)参照)。カソード配線11は、放熱基材100の裏面側に設けられたカソード配線111Bにハンダ等により接続される。カソード配線111Bは、放熱基材100に設けられた貫通導体111Vを介して、放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111Fに接続される。そして、カソード配線111F上に光源20が搭載され、光源20のカソード電極214と接続される(
図6(b)、
図8参照)。ここで、光源20は、放熱基材100上において、駆動部50側にずれて設けられているので、カソード配線11が短く設定される(
図6(a)、(b)参照)。
【0081】
配線基板10の表面側に設けられたアノード配線12は、放熱基材100の裏面側に設けられたアノード配線112Bにハンダ等により接続される。アノード配線112Bは、放熱基材100に設けられた貫通導体112Vを介して、放熱基材100の表面側に設けられたアノード配線112Fに接続される。そして、アノード配線112Fは、ボンディングワイヤ23A、23Bを介して、光源20のアノード電極218に接続される(
図6(a)、(b)参照)。
【0082】
配線基板10の表面側に設けられた基準電位配線13Fは、配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bと貫通導体13Vを介して接続される(
図6(b)、
図8参照)。基準電位配線13Fは、放熱基材100の裏面に設けられた基準電位配線113Bにハンダ等により接続される(
図6(a)、
図8参照)。基準電位配線113Bは、放熱基材100に設けられた貫通導体113Vを介して、放熱基材100の表面側に設けられた二つの基準電位配線113Fに接続される。そして、基準電位配線113Fとアノード配線112Fとの間に、キャパシタ70A、70Bが配置される。つまり、二つの基準電位配線113Fの内、放熱基材100の一方の長手方向(-y方向)側の基準電位配線113Fとアノード配線112Fとの間にキャパシタ70Aが設けられ、電気的に接続される。同様に、二つの基準電位配線113Fの内、放熱基材100の他方の長手方向(+y方向)側の基準電位配線113Fとアノード配線112Fとの間にキャパシタ70Bが設けられ、電気的に接続される(
図6(a)、
図8参照)。
【0083】
放熱基材100の裏面側に設けられるアノード配線112Bは、基準電位配線113Bに比べ、面積が小さい。アノード配線112Bは、電源82(
図5参照)から電流が流れ(電荷が供給され)て、キャパシタ70A、70Bを充電する。このため、アノード配線112Bは、配線基板10の表面に設けられたアノード配線12と放熱基材100の表面に設けられたアノード配線112Fとを直流的に接続すればよく、回路インダクタンスが大きくてもよい。つまり、キャパシタ70A、70Bを充電する回路は、光源20を発光させる電流が流れる駆動回路より長くてもよい。
【0084】
次に、
図8により、本実施の形態が適用される発光装置4における、光源20が発生する熱の放熱経路について説明する。
前述したように、光源20は、発熱が大きい。よって、光源20が発生した熱が放熱しやすいことが求められる。前述したように、配線の材料として用いられる銅(Cu)などの金属は、熱伝導率が大きい。例えば、銅(Cu)の熱伝導率は、360W/m・K程度であって、配線基板10に用いられる基材の0.4W/m・K程度に比べ極めて大きい。よって、光源20が発生した熱は、配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bを介して筐体などから外部に放熱させることがよい。特に、基準電位配線13Bは、配線基板10の表面側に設けられたカソード配線11及びアノード配線12のいずれより面積が大きい。よって、基準電位配線13Bに熱を伝導させれば、放熱されやすい。つまり、光源20が発生する熱を、配線基板10の裏面に設けられた基準電位配線13Bに、短い距離で放熱することがよい。
【0085】
図8に示すように、光源20のカソード電極214は、放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111F上に設けられている。一方、光源20のアノード電極218は、放熱基材100の表面側に設けられたアノード配線112Fとボンディングワイヤ23A、23Bで接続されている。よって、光源20が発生する熱(以下では、熱と表記する。)が放熱される経路(以下では、放熱経路と表記する。)としては、カソード電極214からカソード配線111Fへ伝導する経路と、アノード電極218からボンディングワイヤ23A、23Bを経由してアノード配線112Fへ伝導する経路と、光源20の周囲の空間(空気)に伝導する経路とがある。しかし、ボンディングワイヤ23A、23Bに伝導する経路及び光源20の周囲の空間(空気)に伝導する放熱経路は、熱が伝導しづらい。よって、熱は、カソード電極214からカソード配線111Fへ至る放熱経路で伝導される。
【0086】
前述したように、放熱基材100は、熱伝導率が10W/m・K以上であって、配線基板10に用いられる基板の0.4W/m・K程度に比べ大きい。よって、熱は、アノード配線112Fから放熱基材100を経由して、放熱基材100の裏面側に設けられたカソード配線111B、アノード配線112B及び基準電位配線113Bに伝導する。しかし、カソード配線111B及びアノード配線112Bは、それぞれ配線基板10のカソード配線11及びアノード配線12に接続されている。そして、カソード配線11とアノード配線12とは、いずれも基準電位配線13Bに接続されていない。つまり、カソード配線11とアノード配線12とからは、熱は配線基板10の基材を介して放熱されることになる。しかし、配線基板10の基材は、前述したように、熱伝導率が小さい。
【0087】
一方、基準電位配線113Fは、配線基板10の表面側に設けられた基準電位配線13Fに接続され、基準電位配線13Fは、貫通導体13Vを介して、配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bに接続されている。よって、放熱基材100の裏面側に設けられた基準電位配線113Bに伝導した熱は、基準電位配線13F、貫通導体13Vを経由して、基準電位配線13Bに伝導する。
【0088】
以上説明したように、本実施の形態が適用される発光装置4では、光源20が発生した熱は、放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111F、放熱基材100、放熱基材100の裏面側に設けられた基準電位配線113B、配線基板10の表面に設けられた基準電位配線13F、貫通導体13V、そして配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bを順に経由する放熱経路で放熱される
(図8に示す経路α)。
【0089】
ここで、放熱基材100の裏面側に設けられた基準電位配線113Bと、放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111Fとは、上面視した場合、重なり幅W1oで重なるように設けられている。よって、カソード配線111Fから基準電位配線113Bへ熱が伝導する放熱経路が短くなる。さらに、放熱基材100の裏面側に設けられた基準電位配線113Bと、光源20とは、上面視した場合、重なり幅W2oで重なるように設けられている。よって、光源20から基準電位配線113Bへ熱が伝導する放熱経路がさらに短くなる。これらによって、光源20が発生する熱が放熱しやすくなっている。このため、放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111Fの面積より、放熱基材100の裏面側に設けられたカソード配線111Bの面積を小さくしている。
【0090】
放熱基材100の表面側にカソード配線111Fが設けられ、裏面側に基準電位配線113Bが設けられていれば、熱は、カソード配線111Fから熱伝導率が小さい放熱基材100を経由して基準電位配線113Bに伝導する。よって、基準電位配線113Fとカソード配線111Fとは、上面視において、必ずしも重なっていることを要しない。同様に、基準電位配線113Fと光源20とは、上面視において、必ずしも重なっていることを要しない。
【0091】
以上説明したように、光源20が発生する熱は、熱伝導率が大きい放熱基材100を経由して、配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bに放熱される。よって、熱伝導率が放熱基材100に比べて小さい配線基板10を経由して放熱される場合より、光源20の発生する熱が放熱されやすい。
【0092】
次に、VCSEL(光源20)を発光させる駆動電流の流れる駆動回路を説明する。
駆動電流は、キャパシタ70Aから、放熱基材100のアノード配線112F、ボンディングワイヤ23Aを経由して、VCSEL(光源20)のアノード電極218に至る。そして、駆動電流は、VCSEL(光源20)のカソード電極214から、放熱基材100のカソード配線111F、貫通導体111V、カソード配線111B、配線基板10のカソード配線11を経由して、駆動部50のMOSトランジスタ51(
図6参照)に至る。次に、駆動電流は、駆動部50のMOSトランジスタ51から、配線基板10の基準電位配線13B、貫通導体13V、基準電位配線13F、放熱基材100の基準電位配線113B、貫通導体113V、基準電位配線113Fを介して、キャパシタ70Aに戻る。キャパシタ70B側においても、同様である。
【0093】
ここで、キャパシタ70A、70BとVCSEL(光源20)との距離が短いほど、駆動回路が短くなる。つまり、回路インダクタンスが小さくなり、VCSELの発光の立ち上がり時間が短くなる。本実施の形態が適用される発光装置4では、放熱基材100の表面上に、光源20及びキャパシタ70A、70Bを設けているので、キャパシタ70A、70Bと光源20との距離が短く設定される。なお、キャパシタ70A、70Bは、光源20に比べて、発熱量が小さい。よって、キャパシタ70A、70Bを放熱基材100の表面側に設けても放熱を考慮することを要しない。なお、駆動部50は発熱量が大きいので、駆動部50は、放熱基材100上に設けない方がよい。
【0094】
次に、比較のために示す、本実施の形態が適用されない発光装置4′を説明する。
図9は、本実施の形態が適用されない発光装置4′を説明する図である。
図9(a)は、平面図、
図9(b)は、
図9(a)のIXB-IXB線での断面図である。なお、発光装置4′において、発光装置4と同じ機能を有する部材については、形状が異なる場合であっても、同じ符号を付す。以下では、発光装置4と同様の部分の説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0095】
図9(a)に示すように、発光装置4′は、配線基板10上にキャパシタ70A、70Bを設け、放熱基材100の表面に光源20を設けている。つまり、キャパシタ70A、70Bは、放熱基材100の外に設けられている。そして、放熱基材100の表面上に保持部60を設けている。つまり、保持部60上に設けられた光拡散部材30は、光源20を覆い、キャパシタ70A、70Bを覆わない。発光装置4′の放熱基材100の平面形状は、本実施の形態が適用される発光装置4における放熱基材100の長手方向が短くなった正方形である。発光装置4′は、放熱基材100上にキャパシタ70A、70Bを設けないので、発光装置4の放熱基材100のように放熱基材100を長手方向と短手方向とを有する形状にすることを要しない。
【0096】
なお、発光装置4′においても、発光装置4と同様に、光源20の中心Ovは、放熱基材100において、駆動部50側にずれて設けられている。このようにして、光源20と駆動部50との間の距離が短くなり、光源20と駆動部50とを近接させている。
【0097】
図10は、本実施の形態が適用されない発光装置4′における配線基板10に設けられた配線及び放熱基材100に設けられた配線を説明する図である。
図10(a)は、配線基板10に設けられた配線、
図10(b)は、放熱基材100の表面に設けられた配線、
図10(c)は、放熱基材100の裏面に設けられた配線である。
【0098】
まず、
図10(a)に示す配線基板10に設けられた配線を説明する。なお、
図10(a)には、放熱基材100の外形を一点鎖線で示している。また、
図10(a)では、配線基板10の表面側に設けられた配線を実線で示し、配線基板10の裏面側に設けられた配線を破線で示している。
【0099】
配線基板10の表面側には、互いに絶縁されたカソード配線11と、アノード配線12と、基準電位配線13Fとが設けられている。
カソード配線11は、-x方向側の平面形状が四角形で、+x方向に引き出された端部が駆動部50に接続されている。-x方向側の四角形の部分が放熱基材100を介して光源20のカソード電極214に接続される(
図9(a)、(b)参照)。
アノード配線12は、カソード配線11の三方(-x方向側及び±y方向側)を囲うように設けられている。そして、-x方向に引き出された部分が電源82の+側に接続される。アノード配線12は、放熱基材100及びボンディングワイヤ23A、23Bを介して光源20のアノード電極218に接続される。
二つの基準電位配線13Fは、平面形状が四角形で、アノード配線12の±y方向に設けられている。
【0100】
配線基板10の裏面側には、基準電位配線13Bが設けられる。そして、配線基板10の表面に設けられた二つの基準電位配線13Fと裏面に設けられた基準電位配線13Bとは、導電性の貫通導体13V(後述する
図11参照)により電気的に接続されている。ここでは、基準電位配線13Bは、配線基板10の裏面の全面にわたって設けられている。
【0101】
次に、
図10(b)、(c)に示す放熱基材100に設けられた配線を説明する。
図10(b)に示すように、放熱基材100の表面側には、互いに絶縁されたカソード配線111Fと、アノード配線112Fとが設けられている。カソード配線111Fの表面上には、光源20のカソード電極214側が搭載される(
図9(b)参照)。アノード配線112Fは、カソード配線111Fの三方(-x方向側及び±y方向側)を囲うように設けられている。アノード配線112Fは、±y方向側において、光源20のアノード電極218とボンディングワイヤ23A、23Bにより接続されている(
図9(a)参照)。
【0102】
図10(c)に示すように、放熱基材100の裏面側には、互いに絶縁されたカソード配線111Bと、アノード配線112Bとが設けられている。カソード配線111B及びアノード配線112Bは、
図10(b)に示した放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111F及びアノード配線112Fと平面形状が同じである。
【0103】
カソード配線111Fとカソード配線111Bとは、貫通導体111Vを介して接続されている。アノード配線112Fとアノード配線112Bとは、貫通導体112Vにより電気的に接続されている。
【0104】
以上説明したように、発光装置4′の放熱基材100には、発光装置4の放熱基材100に設けられた基準電位配線113F、113Bが設けられていない。
【0105】
図11は、本実施の形態が適用されない発光装置4′をさらに説明する図である。
図11は、
図9(a)に示した発光装置4′のXI-XI線での断面図である。
図9(a)、(b)、
図10及び
図11により、発光装置4′における電気的な接続関係を説明する。
前述したように、配線基板10の表面上に放熱基材100が設けられ、放熱基材100の表面上に光源20が設けられている。キャパシタ70A、70Bは、配線基板10の表面上に設けられている。
【0106】
配線基板10の表面側に設けられたカソード配線11は、駆動部50と接続される(
図9(a)、(b)参照)。カソード配線11は、放熱基材100の裏面側に設けられたカソード配線111Bにハンダ等により接続される。カソード配線111Bは、放熱基材100に設けられた貫通導体111Vを介して、放熱基材100の表面に設けられたカソード配線111Fに接続される。そして、カソード配線111F上に光源20が搭載され、光源20のカソード電極214と接続される(
図9(b)、
図11参照)。
【0107】
配線基板10の表面側に設けられたアノード配線12は、放熱基材100の裏面側に設けられたアノード配線112Bにハンダ等により接続される。アノード配線112Bは、放熱基材100に設けられた貫通導体112Vを介して、放熱基材100の表面側に設けられたアノード配線112Fに接続される。そして、アノード配線112Fは、ボンディングワイヤ23A、23Bを介して、光源20のアノード電極218に接続される(
図9(a)、
図11参照)。
【0108】
配線基板10の表面側に設けられた基準電位配線13Fは、配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bと貫通導体13Vを介して接続される
(図11参照)。そして、配線基板10上において、基準電位配線13Fとアノード配線12との間に、キャパシタ70A、70Bが配置される。つまり、
図10(a)に示すように、配線基板10の+y側における基準電位配線13Fとアノード配線12との間にキャパシタ70Aが設けられ、電気的に接続される。同様に、配線基板10の-y側における基準電位配線13Fとアノード配線12との間にキャパシタ70Bが設けられ、電気的に接続される。同様に、二つの基準電位配
線13Fの内、+y側の基準電位配
線13Fとアノード配
線12との間にキャパシタ70Bが設けられ、電気的に接続される(
図9(a)、
図11参照)。
【0109】
次に、
図11により、発光装置4′における、光源20が発生する熱の放熱経路について説明する。
前述したように、光源20の発生する熱は、光源20のカソード電極214から放熱基材100に設けられたカソード配線111Fへ至る経路で伝導する。そして、熱は、放熱基材100を通して、放熱基材100の裏面に設けられたカソード配線111Bとアノード配線112Bとへ伝導する
(図11に示す経路β1)。さらに、熱は、カソード配線111Bとアノード配線112Bとから、配線基板10の表面側に設けられたカソード配線11とアノード配線12とに伝導する。しかし、前述したように、配線基板10は、銅(Cu)などの金属に比べて、熱伝導率が小さい。よって、熱は、配線基板10の表面側のアノード配線12を伝導し、キャパシタ70A、70Bを経由し、基準電位配線13Fに伝導する
(図11に示す経路β2)。そして、熱は、基準電位配線13Fに貫通導体13Vを介して、配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bに伝導することにな
る。
【0110】
以上説明したように、発光装置4′では、光源20が発生した熱は、放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111F、放熱基材100、放熱基材100の裏面側に設けられたアノード配線112F、配線基板10の表面側に設けられたアノード配線112B、キャパシタ70A、70B、基準電位配線13F、貫通導体13V、そして配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bを順に経由する放熱経路で放熱される。つまり、発光装置4′では、熱伝導率が大きい放熱基材100を用いているにも関わらず、配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bへの熱伝導しやすい放熱経路がない。このため、光源20からの熱の放熱が阻害されている。
【0111】
すなわち、本実施の形態が適用される発光装置4では、放熱基材100に基準電位配線113F、113Bを設けることにより、配線基板10の表面側に設けられた基準電位配線13Fと、配線基板10に設けられた貫通導体13Vとを経由して、光源20が発生する熱が配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bに伝導する放熱経路が設けられている。
【0112】
これに対し、発光装置4′では、放熱基材100には、基準電位配線113F、113Bのいずれも設けられていない。よって、光源20が発生する熱が、配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bに伝導する放熱経路が形成されづらくなっている。
【0113】
次に、本実施の形態が適用されない発光装置4′において、光源20を発光させる駆動電流の流れる駆動回路を説明する。
駆動電流は、キャパシタ70Aから、配線基板10のアノード配線12、放熱基材100のアノード配線112B、貫通導体112V、アノード配線112F、ボンディングワイヤ23Aを経由して、光源20(VCSEL)のアノード電極218に至る。そして、駆動電流は、光源20(VCSEL)のカソード電極214から、放熱基材100のカソード配線111F、貫通導体111V、カソード配線111B、配線基板10のカソード配線11を経由して、駆動部50のMOSトランジスタ51(
図6参照)に至る。次に、駆動電流は、駆動部50のMOSトランジスタ51から、配線基板10の基準電位配線13B、貫通導体13V、基準電位配線13Fを介して、キャパシタ70Aに戻る。キャパシタ70B側についても、同様である。
【0114】
発光装置4′では、キャパシタ70A、70Bが配線基板10の表面上に設けられ、光源20が放熱基材100の表面上に設けられている。このため、キャパシタ70A、70Bと光源20との距離が、前述した発光装置4に比べ、大きくなっている。したがって、発光装置4′は、放熱基材100において、光源20を駆動部50側にずらして、光源20と駆動部50と近接させても、駆動回路の回路インダクタンスが大きくなってしまう。このため、発光装置4′では、発光装置4に比べ、VCSELの発光の立ち上がり時間が長くなる。
【0115】
すなわち、本実施の形態が適用される発光装置4では、放熱基材100の表面上に、光源20及びキャパシタ70A、70Bを設けているので、キャパシタ70A、70Bと光源20との距離が短く設定される。これにより、光源20の発光の立ち上がり時間が短くなっている。なお、キャパシタ70A、70Bは、一方又は両方の少なくとも一部が放熱基板100内に埋め込まれていてもよい。
【0116】
以上説明したように、本実施の形態が適用される発光装置4では、放熱基材100に基準電位配線113F、113Bを設けることにより、配線基板10の表面側に設けられた基準電位配線13Fと、配線基板10に設けられた貫通導体13Vとを経由して、光源20が発生する熱が配線基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bに伝導する放熱経路を設けている。なお、
図8に示すように、光源20が発生する熱は、放熱基材100の裏面側に設けられた基準電位配線113Bに伝導すればよいので、放熱基材100の裏面側に基準電位配線113Bが設けられていればよい。
【0117】
なお、本実施の形態が適用される発光装置4では、配線基板10の表面上に放熱基材100と駆動部50とが設けられていたが、放熱基材100が設けられた回路基板と、駆動部50が設けられた回路基板とが別に構成され、それらがFFC(Flexible Flat Cable)やFPC(Flexible Printed Circuit)などで接続されてもよい。
【0118】
さらに、本実施の形態が適用される発光装置4において、放熱基材100を半導体基板であるシリコン(Si)とし、シリコン(Si)により駆動部50を駆動ICとして構成し、この駆動ICにキャパシタ70を設けてもよい。そして、VCSELを備えた光源20がフリップチップ接続されてもよい。このようにすることで、駆動部50が放熱基材100と別に設けられている場合と比較し、発光装置を配置するスペースが低減される。
【0119】
また、本実施の形態が適用される発光装置4では、光学部材の一例として、拡散により入射する光の拡がり角を広げるように変化させて出射する光拡散部材30を用いた。光学部材は、入射する光の方向と異なる方向に変化させて出射する回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)などであってもよい。また、光学部材は、集光レンズ、マイクロレンズ、保護カバーなどの透明部材であってもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…計測装置、3…光学装置、4、4′…発光装置、5…3Dセンサ、6…抵抗素子、7、70、70A、70B…キャパシタ、8…制御部、10…配線基板、11、111B、111F…カソード配線、12、112B、112F…アノード配線、13、13B、13F、113B、113F…基準電位配線、111V、112V、113V、13V…貫通導体、20…光源、21A、21B、22A、22B…側面、23A、23B…ボンディングワイヤ、30…光拡散部材、50…駆動部、51…MOSトランジスタ、52…信号発生回路、60…保持部、81…三次元形状特定部、82…電源、83…電源線、84…基準線、100…放熱基材、200…半導体基板、202…下部DBR、206…活性領域、208…上部DBR、210…電流狭窄層、210A…酸化領域、210B…導電領域、214…カソード電極、218…アノード電極、M…メサ、VCSEL…垂直共振器面発光レーザ素子