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  • 特許-車両用電池冷却装置の制御方法 図1
  • 特許-車両用電池冷却装置の制御方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車両用電池冷却装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20240717BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20240717BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6569
H01M10/6556
H01M10/663
B60K11/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020043615
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021144882
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大尭
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-277767(JP,A)
【文献】特開2012-243684(JP,A)
【文献】特開2014-160594(JP,A)
【文献】特開2019-179595(JP,A)
【文献】特開2015-072819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/633
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6569
H01M 10/6556
H01M 10/663
B60K 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内空調用の冷媒が流れる空調回路から分岐して設けられており前記冷媒が循環する分岐回路と、
前記分岐回路に設けられる電池専用のエバポレータと、
開弁時には前記空調回路を流れる冷媒の前記分岐回路への流れを許容し閉弁時には前記空調回路を流れる冷媒の前記分岐回路への流れを停止する電磁弁と、
前記エバポレータおよび電池に風を送る電池専用のブロワと、
前記ブロワからの風が前記エバポレータを通過する際に冷やされて前記電池に送られるように、前記電池、前記エバポレータ及び前記ブロワが内部に配置されたケースと、
前記電池の温度を検知する温度センサと、
を有する車両用電池冷却装置を制御する、車両用電池冷却装置の制御方法であって、
冷却が必要な前記電池の温度を第一温度としたときに、前記電池の温度が上昇して、前記温度センサによって検知された温度が、前記第一温度よりも低い所定の温度である第二温度以上になった場合に、前記ブロワを駆動させ、前記温度センサによって検知された温度が前記第一温度以上になった場合には、前記ブロワの駆動を継続させつつ前記電磁弁を開弁させ、当該電磁弁の開弁によって前記空調回路から前記分岐回路へ冷媒を流し、前記電磁弁を開弁させた後に前記電池の温度が下降して、前記温度センサによって検知された温度が、前記第一温度よりも低い所定の温度である第三温度以下になった場合には、前記ブロワの駆動を継続させつつ前記電磁弁を閉弁させ、当該電磁弁の閉弁によって前記空調回路から前記分岐回路への冷媒の流れを停止させることで、前記エバポレータへの冷媒の供給を停止させ、更に前記電池の温度が下降して、前記温度センサによって検知された温度が、前記第三温度よりも低い所定の温度である第四温度以下になった場合に、前記ブロワの駆動を停止させる、車両用電池冷却装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内空調用の冷媒が流れる空調回路から分岐する分岐回路に設けられる電池専用のエバポレータを有する、車両用電池冷却装置の制御方法に関する。
【0002】
図1に示すように、車室内空調用の冷媒が流れる空調回路1から分岐して設けられる分岐回路2と、分岐回路2に設けられる電池専用のエバポレータ(冷却器)3と、電池専用のブロワ5と、を有する車両用電池冷却装置が知られている。この装置では、電池100の温度が上昇した際(電池冷却必要時)に、空調回路1から分岐回路2に冷媒を流してエバポレータ3に通すとともにブロワ5を作動させて、ブロワ5からの風がエバポレータ3を通過する際に冷やされて電池100に送られるようになっている。
【0003】
ここで、エバポレータ3には冷媒が通るため、エバポレータ3により周囲の空気が冷やされてエバポレータ3に結露によって水(結露水)が発生する。しかし、従来では、このエバポレータ3に発生した結露水を積極的に除去することが行われていなかった。そのため、エバポレータ3に発生した結露水を除去する点において改善の余地がある。
【0004】
ところで、電池専用のエバポレータやブロワは設けられていないが、空調回路に設けられる空調用のエバポレータを用いて、電池パックまわりに流入される風を除湿する技術が、特許文献1に開示されている。該特許文献1に開示される技術では、電池パックまわりに流入される風を空調用のエバポレータを用いて除湿するため、電池パック表面に発生する結露水の量を増やさないようにすることができる。
【0005】
しかし、特許文献1に開示の技術にあっても、空調用のエバポレータに発生した結露水を除去する処理が何ら行われていないため(開示されていないため)、空調用のエバポレータに発生した結露水を積極的に除去することはできない。そのため、特許文献1に開示の技術は、従来の問題点の解消(電池専用のエバポレータに発生した結露水除去)に有効な技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-248452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、空調回路から分岐する分岐回路に設けられる電池専用のエバポレータに発生した結露水を除去できる、車両用電池冷却装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 車室内空調用の冷媒が流れる空調回路から分岐して設けられており前記冷媒が循環する分岐回路と、
前記分岐回路に設けられる電池専用のエバポレータと、
開弁時には前記空調回路を流れる冷媒の前記分岐回路への流れを許容し閉弁時には前記空調回路を流れる冷媒の前記分岐回路への流れを停止する電磁弁と、
前記エバポレータおよび電池に風を送る電池専用のブロワと、
を有する車両用電池冷却装置を制御する、車両用電池冷却装置の制御方法であって、
前記電磁弁を閉弁させて前記空調回路から前記分岐回路への冷媒の流れを停止させることで、前記エバポレータへの冷媒の供給を停止させる冷媒供給停止工程と、
前記冷媒供給停止工程後において、前記ブロワを駆動させて前記エバポレータに風を当てるエバポレータ乾燥工程と、
を有する車両用電池冷却装置の制御方法。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)の車両用電池冷却装置の制御方法によれば、分岐回路と、電池専用のエバポレータと、電磁弁と、電池専用のブロワを有するため、電池の温度が上昇した際(電池の冷却が必要な時)に、電磁弁を開弁させて空調回路から分岐回路へ冷媒を流すことでエバポレータへ冷媒を供給するとともに、ブロワを駆動させてブロワからの風をエバポレータおよび電池に送ることで、電池を冷却することができる。
【0010】
エバポレータに冷媒が供給されているとき、エバポレータにより周囲の空気が冷やされてエバポレータに結露水が発生する。そして、エバポレータへの冷媒供給停止後においても結露水がエバポレータに残り続ける。しかし、本発明によれば、エバポレータへの冷媒の供給を停止させる冷媒供給停止工程の後にエバポレータ乾燥工程を有するため、エバポレータにブロワからの風を当てることで、エバポレータに発生した結露水を除去することができる(エバポレータを乾かすことができる)。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明実施例の車両用電池冷却装置のシステム構成を示すブロック図である。ただし、制御装置と温度センサを除いて従来技術にも適用可能である。
図2】本発明実施例の車両用電池冷却装置の制御ヒステリシスを示す図である。
図3】本発明実施例の車両用電池冷却装置における制御装置の制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図1図3を参照して、本発明実施例の車両用電池冷却装置の制御方法を説明する。
【0013】
まず、本発明実施例の制御方法が適用される車両用電池冷却装置10について説明する。車両用電池冷却装置10は、電気自動車やハイブリッド自動車に搭載される電池(電池セルといってもよい)100を冷却する装置である。
【0014】
図1に示すように、車両用電池冷却装置10は、従来と同様に、車室内空調用の冷媒が流れる空調回路1から分岐して設けられており冷媒が循環する分岐回路2と、分岐回路2に設けられる電池専用のエバポレータ(熱交換器)3と、電磁弁4と、エバポレータ3および電池100に風を送る電池専用のブロワ5と、を有する。
【0015】
空調回路1は、コンデンサ1a、空調用エバポレータ(熱交換器)1b、コンプレッサ1cを有する。空調回路1を流れる冷媒は、コンデンサ1a、空調用エバポレータ1b、コンプレッサ1c、コンデンサ1aの順に循環する。
【0016】
コンデンサ1aは、コンプレッサ1cで圧縮されて高温、高圧になった冷媒を冷却して液化させる。コンデンサ1aで液化された冷媒は、電磁弁(空調回路1用の電磁弁)1dを通って空調用エバポレータ1bに流れる。
【0017】
電磁弁1dを通った冷媒は、図示略の膨張弁によって減圧されて低温、低圧の霧状とされた後、空調用エバポレータ1bによって気化される。その際に、冷媒が周囲から熱を奪うため、空調用エバポレータ1bの周囲の空気が冷やされる。これにより、空調用ブロワ1eからの風(車室内の空気)は、空調用エバポレータ1bを通過する際に冷やされて、車室内へ図示略の吹き出し口から吹き出される。
【0018】
図中の符号1fは、室内空調ユニット(HVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning))のケースを示している。空調用エバポレータ1bと空調用ブロワ1eは、室内空調ユニットケース1f内に配置されている。空調用エバポレータ1bは室内空調ユニットケース1f内の空気を冷やし、空調用ブロワ1eは空調用エバポレータ1bによって冷やされた室内空調ユニットケース1f内の空気を車室内へ吹き出す。
【0019】
なお、空調用エバポレータ1bによって気化された低温、低圧の冷媒は、空調回路1を流れ、コンプレッサ1cにより圧縮されて高温、高圧にされて、コンデンサ1aに送られる。
【0020】
分岐回路2は、空調回路1におけるコンデンサ1aの下流で電磁弁1dの上流側に位置する上流側分岐点2aから、空調用エバポレータ1bと並列に分岐して、空調用エバポレータ1bの下流でコンプレッサ1cの上流側に位置する下流側分岐点2bにて空調回路1に帰還するバイパス回路となっている。分岐回路2には、空調回路1を流れる冷媒が循環する。
【0021】
電池専用のエバポレータ3は、空調回路1に設けられる空調用エバポレータ1bとは別のエバポレータである。エバポレータ3には、コンデンサ1aで液化された空調回路1の冷媒が、開弁時における電磁弁4を通って流れる。
【0022】
電磁弁(電池回路用の電磁弁、分岐回路2用の電磁弁)4は、開弁時には空調回路1を流れる冷媒の分岐回路2への流れを許容し、閉弁時には空調回路1を流れる冷媒の分岐回路2への流れを停止する。電磁弁4が開弁されているとき、空調回路1の電磁弁1dは閉弁されていてもよく開弁されていてもよい。分岐回路2の電磁弁4と空調回路1の電磁弁1dがともに開弁されることで、冷媒を空調回路1と分岐回路2に並列で流すことも可能である。
【0023】
電磁弁4を通った冷媒は、図示略の膨張弁によって減圧されて低温、低圧の霧状とされた後、エバポレータ3によって気化される。その際に、冷媒が周囲から熱を奪うため、エバポレータ3の周囲の空気が冷やされる。これにより、ブロワ5からの風は、エバポレータ3を通過する際に冷やされて、電池100に送られる。なお、図中の符号101は、電池100を収容するケース101である。電池100とケース101は、電池パック110の構成部品である。
【0024】
エバポレータ3とブロワ5は、ケース101(電池パック110)内に配置されている。ブロワ5は、ケース101内に冷風を供給するために設けられる。ブロワ5は、ケース101内の空気を、ケース101内で循環させて、エバポレータ3および電池100に送る。なお、図1におけるケース101内の矢印は、ケース101内の風流れ(空気の流れ)を模式的に示したものである。
【0025】
なお、エバポレータ3によって気化された低温、低圧の冷媒は、分岐回路2を流れて下流側分岐点2bにて空調回路1に帰還し、コンプレッサ1cにより圧縮されて高温、高圧にされてコンデンサ1aに送られる。
【0026】
本発明の車両用電池冷却装置10は、上記の分岐回路2、エバポレータ3、電磁弁4およびブロワ5に加えて、さらに、電池100の温度を検知する温度センサ6と、制御装置7と、を有する。
【0027】
制御装置7は、温度センサ6からのセンサ値(情報)に応じて、電池冷却の必要可否を判断する。制御装置7は、電池100の温度が冷却が必要な温度以上であるとき、電磁弁4を開弁させて分岐回路2に冷媒を流し、電池100の温度が所定温度まで下がったとき、電磁弁4を閉弁させて分岐回路2への冷媒の流れを停止させる。また、冷却が必要な電池温度(電磁弁4を開弁させる温度)よりも低い温度で、ブロワ5を駆動させ、電池100の温度が前記所定温度(電磁弁4を閉弁させる温度)よりも低い温度で、ブロワ5を停止させる。
【0028】
すなわち、図2に示すように、電池温度上昇時には、電磁弁4を開弁させて分岐回路2へ冷媒を流すことでエバポレータ3に冷媒を供給させる温度T1よりも、ブロワ5を駆動させる温度T3が低く設定されている。そのため、制御装置7は、電池温度上昇時には、温度T1には達していないが温度T3に達した時にブロワ5を駆動させ、さらに電池温度が上昇して温度T1に達した時に、ブロワ5を駆動継続させたまま、電磁弁4を開弁させてエバポレータ3に冷媒を供給させる。
【0029】
一方、電池温度下降時には、電磁弁4を閉弁させて分岐回路2への冷媒の流れを停止させることでエバポレータ3への冷媒供給を停止させる温度T2よりも、ブロワ5を停止させる温度T4が低く設定されている。そのため、制御装置7は、電池温度下降時には、温度T4には達していないが温度T2に達した時に、電磁弁4を閉弁させてエバポレータ3への冷媒供給を停止させ、さらに電池温度が低下して温度T4に達するまでブロワ5を駆動継続させ、温度T4に達した時にブロワ5の駆動を停止させる。
【0030】
たとえば、T1=40℃、T2=T3=38℃、T4=36℃である。ただし、T1、T2、T3およびT4の各温度は、上記温度に限定されるものではない。また、T2とT3の温度は異なっていてもよい。
【0031】
図2では、エバポレータ3への冷媒供給にあっては、電池温度上昇時には、電池温度がT1になったときに電磁弁4を開弁させてエバポレータ3への冷媒供給を開始させ、電池温度下降時には、電池温度がT1よりも低い温度T2になったときに電磁弁4を閉弁させてエバポレータ3への冷媒供給を停止させている。このようにエバポレータ3への冷媒供給のオンオフに2つの閾値を持たせる理由は、切り替え時のハンチング現象を防止するためである。同様に、ブロワ5の駆動にあっても、電池温度上昇時には、電池温度がT3になったときにブロワ5を駆動させ、電池温度下降時には、電池温度がT3よりも低い温度T4になったときにブロワ5の駆動を停止させている。このようにブロワ5の駆動のオンオフに2つの閾値を持たせる理由も、切り替え時のハンチング現象を防止するためである。
【0032】
なお、図2において白丸で示すように、初期の電池温度がT1よりも低くT2よりも高い(T1とT2の中間温度である)場合には、電池温度上昇時における制御を優先させて、電池温度T1以上になったときに電磁弁4を開弁させてエバポレータ3へ冷媒供給させる。また、図2において黒丸で示すように、初期の電池温度がT3よりも低くT4よりも高い(T3とT4の中間温度である)場合には、電池温度上昇時における制御を優先させて、電池温度T3以上になったときにブロワ5を駆動させる。
【0033】
上記のように制御装置7が制御するため、車両用電池冷却装置10の制御方法は、つぎのようになる。
【0034】
(A)[電池温度上昇時]
(A-1)ブロワ5を駆動させてブロワ5からの風をエバポレータ3および電池100に送るブロワ先行駆動工程と、
(A-2)電磁弁4を開弁させて空調回路1から分岐回路2へ冷媒を流すことでエバポレータ3へ冷媒を供給するととともに、ブロワ5を駆動させてブロワ5からの風をエバポレータ3および電池100に送り電池100を冷却する、電池冷却工程と、
をこの順に有する。
【0035】
上記(A-1)のブロワ先行駆動工程について
(i)ブロワ先行駆動工程は、エバポレータ3への冷媒供給が停止されている状態で、ブロワ5のみを駆動させてブロワ5からの風をエバポレータ3および電池100に送る工程である。
(ii)ブロワ先行駆動工程は、電池温度Tが上昇してT≧T3となったときにスタートする。
(iii)ブロワ先行駆動工程では、ブロワ5により送風することで、ケース101(電池パック110)内の空気を循環させる。
【0036】
上記(A-2)の電池冷却工程について
(i)電池冷却工程は、電池温度Tが上昇してT≧T1となったときにスタートする。
(ii)電池冷却工程では、ブロワ5を駆動させたまま、エバポレータ3へ冷媒が供給される。そのため、電池100を効果的に冷却できる。
(iii)電池冷却工程では、エバポレータ3へ冷媒供給されているため、エバポレータ3の周囲の空気が冷やされ、エバポレータ3に結露水が発生する。
【0037】
(B)[電池温度下降時]
(B-1)上記(A-2)の電池冷却工程にて電池100が冷却されている状態から、電磁弁4を閉弁させて空調回路1から分岐回路2への冷媒の流れを停止させることで、エバポレータ3への冷媒の供給を停止させる冷媒供給停止工程と、
(B-2)冷媒供給停止工程後において、ブロワ5を駆動させてエバポレータ3に風を当てるエバポレータ乾燥工程と、
をこの順に有する。
【0038】
上記(B-1)の冷媒供給停止工程について
(i)冷媒供給停止工程は、電池温度Tが下がってT≦T2になったときに行われる。
(ii)冷媒停止工程では、エバポレータ3への冷媒供給は停止されるが、ブロワ5は継続して駆動される。
(iii)冷媒供給停止工程では、エバポレータ3への冷媒供給が停止されるだけであるため、上記(A-2)の電池冷却工程でエバポレータ3に発生した結露水は、残ったままである。
【0039】
上記(B-2)のエバポレータ乾燥工程について
(i)エバポレータ乾燥工程は、上記冷媒供給停止工程後、電池温度Tが下がってT≦T4となるまで行われる。
(ii)エバポレータ乾燥工程では、エバポレータ3への冷媒供給は停止されており、ブロワ5が継続して駆動される。
(iii)エバポレータ乾燥工程では、エバポレータ3への冷媒供給が停止されているため、エバポレータ3でケース101(電池パック110)内の温度を下げてケース101内を除湿する能力がなくなるため、エバポレータ3に結露水が発生することは抑制される。しかし、ブロワ5が継続して駆動されているため、ブロワ5からの風がエバポレータ3に当たり続ける。その結果、エバポレータ3に発生している結露水の蒸発が促される(エバポレータ3が乾かされる)。
【0040】
図3は、車両用電池冷却装置10における、制御装置7の制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。図3に示す制御ルーチンは、所定時間間隔で行われる。
【0041】
まず、ステップS1で、温度センサ6からの信号に基づいて電池温度Tを読み込む。そして、ステップS2に進み、電池温度Tが温度T3以上であるかが判別される。ステップS2でT≧T3以上であると判別されると、ステップS3に進んでブロワ5を駆動させる信号を出してステップS4に進む。一方、ステップS2でT≧T3ではないと判別されると、ブロワ5を駆動させる信号を出すことなくステップS4に進む。
【0042】
ステップS4では、電池温度Tが温度T1以上であるかが判別される。T≧T1であると判別されると、ステップS5に進み、電磁弁4を開弁させる信号を出して、ステップS6に進む。一方、ステップS4でT≧T1ではないと判別されると、電磁弁4を開弁させる信号を出すことなくステップS6に進む。
【0043】
ステップS6では、電池温度Tが温度T2以下まで低下したか否かが判別される。ステップS6でT≦T2であると判別されると、ステップS7に進んで電磁弁4を閉弁させる信号を出してステップS8に進む。一方、ステップS6でT≦T2ではないと判別されると、電磁弁4を閉弁させる信号を出すことなくステップS8に進む。
【0044】
ステップS8では、電池温度Tが温度T4以下まで低下したか否かが判別される。ステップS8でT≦T4であると判別されると、ステップS9に進み、ブロワ5を停止させる信号を出してエンドステップに進む。一方、ステップS8でT≦T4ではないと判別されると、ブロワ5に停止信号を出すことなくそのままエンドステップに進む。
【0045】
上記図3の制御ルーチンにおいて、ステップS2とステップS3が上記(A-1)のブロワ先行駆動工程に該当し、ステップS4とステップS5が上記(A-2)の電池冷却工程に該当する。また、ステップS6とステップS7が上記(B-1)の冷媒供給停止工程に該当し、ステップS8とステップS9が上記(B-2)のエバポレータ乾燥工程に該当する。
【0046】
本発明実施例の車両用電池冷却装置10およびその制御方法によれば、つぎの作用、効果を得ることができる。
【0047】
分岐回路2と、電池専用のエバポレータ3と、電磁弁4と、電池専用のブロワ5を有するため、電池100の温度が上昇した際(電池100の冷却が必要な時)に、電磁弁4を開弁させて空調回路1から分岐回路2へ冷媒を流すことでエバポレータ3へ冷媒を供給するとともに、ブロワ5を作動させてブロワ5からの風をエバポレータ3および電池100に送ることで、電池100を冷却することができる。
【0048】
電池冷却工程(上記(A-2))を有するため、電池温度が冷却が必要な温度となっているときに、エバポレータ3およびブロワ5を用いて電池100を冷却することができる。
【0049】
エバポレータ3に冷媒が供給されているとき、エバポレータ3により周囲の空気が冷やされてエバポレータ3に結露水が発生する。そして、エバポレータ3への冷媒供給停止後においても結露水がエバポレータ3に残り続ける。しかし、本発明実施例によれば、エバポレータ3への冷媒の供給を停止させる冷媒供給停止工程(上記(B-1))の後にエバポレータ乾燥工程(上記(B-2))を有するため、エバポレータ3にブロワ5からの風を当てることで、エバポレータ3に発生した結露水を除去することができる(エバポレータを乾かすことができる)。
【0050】
電池温度が温度T2まで下がったときにエバポレータ3への冷媒供給を停止させており、電池温度が温度T2よりも低い温度T4になるまでブロワ5を継続して駆動させるため、エバポレータ3への冷媒供給を停止させる温度閾値よりもブロワ5の駆動を停止させる温度閾値を低くするだけで、冷媒供給停止工程後においてもブロワ5を駆動させてエバポレータに風を当て続けることができる。よって、冷媒供給停止工程後(上記(B-1))にエバポレータ乾燥工程(上記(B-2))を設ける制御を比較的容易に行うことができる。
【0051】
電池温度上昇時にあっては、電池冷却工程(上記(A-2))の前にブロワ先行駆動工程(上記(A-1))を有するため、電磁弁4を開弁させてエバポレータ3に冷媒を供給する前に、ブロワ5のみを駆動させることができる。そのため、ブロワ5により送風することで、ケース101(電池パック110)内の空気を循環させることができ、この結果、電池100ごとの温度分布を均一に近づけることで電池100の最高温度を下げることができる。よって、エバポレータ3への冷媒供給頻度を低減させることができ、消費電力の悪化を抑制できる。
【0052】
電池温度上昇時にあっては、電池温度が温度T3まで上がったときにブロワ5を駆動させ、電池温度が温度T3よりも高い温度T1まで上がったときにエバポレータ3に冷媒を供給開始するため、ブロワ5を駆動させる温度閾値をエバポレータ3への冷媒供給を開始させる温度閾値よりも低くするだけで、エバポレータ3に冷媒を供給する前に、ブロワ5のみを駆動させることができる。よって、電池冷却工程(上記(A-2))の前にブロワ先行駆動工程(上記(A-1))を設ける制御を比較的容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0053】
1 空調回路
1a コンデンサ
1b 空調用エバポレータ
1c コンプレッサ
1d 空調回路用の電磁弁
1e 空調用ブロワ
1f 空調ユニットケース
2 分岐回路
2a 上流側分岐点
2b 下流側分岐点
3 電池専用のエバポレータ
4 電池回路用(分岐回路用)の電磁弁
5 電池専用のブロワ
6 温度センサ
7 制御装置
10 車両用電池冷却装置
100 電池
101 ケース
110 電池パック
T1 温度(第一温度)
T2 温度(第三温度)
T3 温度(第二温度)
T4 温度(第四温度)
図1
図2
図3