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特許7521209連続塗工装置およびそれを用いたガス拡散電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】連続塗工装置およびそれを用いたガス拡散電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/88 20060101AFI20240717BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20240717BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20240717BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240717BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240717BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240717BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01M4/88 Z
H01M8/10 101
B05C5/02
B05C11/00
B05C11/10
B05D1/26 Z
B05D7/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020046098
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021150049
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】民宮 尚美
(72)【発明者】
【氏名】浦井 純一
(72)【発明者】
【氏名】若田部 道生
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-046740(JP,A)
【文献】特開2000-024569(JP,A)
【文献】特開2018-156915(JP,A)
【文献】特開2016-006799(JP,A)
【文献】特開2020-038819(JP,A)
【文献】中国実用新案第209613410(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第110434025(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/88
H01M 8/10
B05C 5/02
B05C 11/00
B05C 11/10
B05D 1/26
B05D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス拡散電極基材の製造において、導電性多孔質基材に連続的に微多孔層塗膜を塗工するための連続塗工装置であって、連続的に走行する導電性多孔質基材の被塗工面に面して吐出口形成面が配置された微多孔層塗料吐出部と、実際に塗工された微多孔層塗膜の厚みを計測する塗工厚み計測部と、を有し、さらに、前記微多孔層塗料吐出部の吐出口形成面と、前記導電性多孔質基材の被塗工面との間隔によって微多孔層塗膜の塗工厚みを調整可能な塗工厚み調整機構を備えるとともに、前記塗工厚み計測部により計測された微多孔層塗膜の厚みに基づいて、前記塗工厚み調整機構により微多孔層塗膜の塗工厚みの調整を行うフィードバック機構を備え、
前記塗工厚み計測部が、前記微多孔層塗料吐出部の上流側に配置され、前記導電性多孔質基材の被塗工面の凹凸を計測する塗工前計測部と、前記微多孔層塗料吐出部の下流側に配置され、前記微多孔層塗膜表面の凹凸を計測する塗工後計測部と、からなり、
前記フィードバック機構は、前記塗工厚み計測部により経時的に計測した塗工厚みの平均値に基づいて微多孔層塗膜の塗工厚みの調整を行う、連続塗工装置。
【請求項2】
前記塗工厚み計測部が、前記微多孔層塗膜の幅方向2箇所以上において塗工厚みを計測する、請求項1に記載の連続塗工装置。
【請求項3】
前記フィードバック機構が、前記微多孔層塗膜の幅方向2箇所以上における塗工厚みが均一に近づくよう微多孔層塗膜の塗工厚みを調整する、請求項2に記載の連続塗工装置。
【請求項4】
前記塗工厚み調整機構が幅方向2箇所に配置され、前記導電性多孔質基材の被塗工面に対して前記2台の塗工厚み調整機構が独立して接近・離隔する、請求項2または3に記載の連続塗工装置。
【請求項5】
前記塗工厚み調整機構が、前記微多孔層塗料吐出部が前記導電性多孔質基材の被塗工面に対して接近・離隔することにより、前記微多孔層塗料吐出部の吐出口形成面と、前記導電性多孔質基材の被塗工面との間隔を調整する、請求項1~4のいずれかに記載の連続塗工装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の連続塗工装置を用いて微多孔層塗料を塗工する工程を有するガス拡散電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、特に固体高分子型燃料電池に好適に用いられる、導電性多孔質基材の表面に微多孔層を形成したガス拡散電極基材を製造するための連続塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を含む燃料ガスをアノードに供給し、酸素を含む酸化ガスをカソードに供給して、両極で起こる電気化学反応によって起電力を得る固体高分子型燃料電池は、一般的に、セパレータ、ガス拡散電極基材、触媒層、電解質膜、触媒層、ガス拡散電極基材、セパレータを、この順に積層して構成される。ガス拡散電極基材にはセパレータから供給されるガスを触媒層へと拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要であり、炭素繊維などからなる導電性多孔質基材の表面に微多孔層を形成したガス拡散層が広く用いられている。
【0003】
空孔を有する導電性多孔質基材上に微多孔層を形成する際、微多孔層を形成するための塗料(微多孔層塗料)が導電性多孔質基材に浸み込む。微多孔層塗料の粘度や導電性多孔質基材の密度によって、浸み込む量が異なり、その結果ガス拡散量が増減する。加えて、導電性多孔質基材の裏面にまで浸み込みが到達する場合、工程を汚染する。
【0004】
そこで、浸み込み量を調整するために、特許文献1では、微多孔層塗料の粘度を調整する方法が、特許文献2および3では、裏面への浸み込みを抑制する方法が提案されている。具体的には、特許文献1では、微多孔層塗料の粘度を増大させることで微多孔層塗料の導電性多孔質基材への浸み込み量を低減させる方法、特許文献2では、導電性多孔質基材とは別のポリマーシートに微多孔層塗料を塗工した後、導電性塗料に圧着させその後の焼成工程でポリマーシートを揮発させる方法、特許文献3では、導電性多孔質基材を搬送させる搬送ローラの表面が撥水性を有することで、導電性多孔質基材裏面への微多孔層塗料の裏抜けを防止する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-138656号公報
【文献】特開2019-160599号公報
【文献】特開2015-50073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、微多孔層塗料の導電性多孔質基材への浸み込み量は、微多孔層塗料の粘度だけでなく導電性多孔質基材の空孔率に依存するため、特許文献1に示される方法では、導電性多孔質基材の空孔率によっては浸み込み量が変化する。特許文献2に示される方法では、ポリマーシートを搬送させる工程の追加、ポリマーシートを揮発させるための焼成能力の向上により製造コストが増大する。特許文献3に示される方法は、導電性多孔質基材の厚み方向の浸み込み量を調整するものではない。このように、従来の技術では、微多孔層塗料の浸み込み量を導電性多孔質基材の厚み方向への浸み込み量を制御できなかった。
【0007】
本発明の目的は、導電性塗料の粘度や、導電性多孔質基材の密度によらず、導電性多孔質基材の厚み方向の浸み込み量を制御可能なガス拡散電極基材の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、次のような手段を採用するものである。
(1)ガス拡散電極基材の製造において、導電性多孔質基材に連続的に微多孔層塗膜を塗工するための連続塗工装置であって、連続的に走行する導電性多孔質基材の被塗工面に面して吐出口形成面が配置された微多孔層塗料吐出部と、実際に塗工された微多孔層塗膜の厚みを計測する塗工厚み計測部と、を有し、さらに、前記微多孔層塗料吐出部の吐出口形成面と、前記導電性多孔質基材の被塗工面との間隔によって微多孔層塗膜の塗工厚みを調整可能な塗工厚み調整機構を備えるとともに、前記塗工厚み計測部により計測された微多孔層塗膜の厚みに基づいて、前記塗工厚み調整機構により微多孔層塗膜の塗工厚みの調整を行うフィードバック機構を備えた連続塗工装置。
(2)前記塗工厚み計測部が、前記微多孔層塗膜の幅方向2箇所以上において塗工厚みを計測する、(1)に記載の連続塗工装置。
(3)前記フィードバック機構が、前記微多孔層塗膜の幅方向2箇所以上における塗工厚みが均一に近づくよう微多孔層塗膜の塗工厚みを調整する、(2)に記載の連続塗工装置。
(4)前記塗工厚み調整機構が、前記微多孔層塗料吐出部が前記導電性多孔質基材の被塗工面に対して接近・離隔することにより、前記微多孔層塗料吐出部の吐出口形成面と、前記導電性多孔質基材の被塗工面との間隔を調整する、(1)~(3)のいずれかに記載の連続塗工装置。
(5)前記塗工厚み調整機構が幅方向2箇所に配置され、前記導電性多孔質基材の被塗工面に対して前記2台の塗工厚み調整機構が独立して接近・離隔する、(2)に記載の連続塗工装置。
(6)前記塗工厚み計測部が、前記微多孔層塗料吐出部の上流側に配置され、前記導電性多孔質基材の被塗工面の凹凸を計測する塗工前計測部と、前記微多孔層塗料吐出部の下流側に配置され、前記微多孔層塗膜表面の凹凸を計測する塗工後計測部と、からなる、(1)~(5)のいずれかに記載の連続塗工装置。
(7)前記塗フィードバック機構は、前記塗工厚み計測部により経時的に計測した塗工厚みの平均値に基づいて微多孔層塗膜の塗工厚みの調整を行う、(1)~(6)のいずれかに記載の連続塗工装置。
(8)(1)~(7)のいずれかに記載の連続塗工装置を用いて微多孔層塗料を塗工する工程を有するガス拡散電極の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の連続塗工装置を用いれば、ガス拡散電極導電性多孔質基材の密度、微多孔層塗料の粘度によらず、所望の塗工厚みの微多孔層塗膜を形成することができ、その結果面内で均一なガス拡散量を有するガス拡散電極を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である連続塗工装置100の側面模式図
図2図1の連続塗工装置の微多孔層塗料吐出部101付近を拡大して示した図
図3図1に示した実施形態の変形例である連続塗工装置200の側面模式図
図4図1に示した実施形態の変形例である連続塗工装置300の上面模式図
図5図1に示した実施形態の変形例である連続塗工装置400の側面模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の連続塗工装置を、図面に示された特定の実施形態を参照しつつ説明するが、本発明はこれらの図面によって何ら限定されるものではない。また、当業者には容易に理解できるように、特定の実施形態についての説明は、同時に上位概念としての本発明の連続塗工装置およびそれを用いたガス拡散電極の製造方法の説明として機能し得るものである。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態である連続塗工装置100の側面模式図である。この連続塗工装置100は、導電性多孔質基材0を支持しつつ搬送する支持ローラ105と、支持ローラ105に沿って搬送される導電性多孔質基材0の表面(微多孔層塗料被塗工面)に微多孔層塗料を塗工する微多孔層塗料吐出部101を有する。図2は、図1の連続塗工装置の微多孔層塗料吐出部101付近を拡大して示した図である。微多孔層塗料吐出部101の吐出面形成面は、支持ローラ105に支持されながら走行する導電性多孔質基材0の被塗工面に面して配置されている。そして、微多孔層塗料吐出部101により、導電性多孔質基材0の被塗工面上に微多孔層塗料が連続的に塗工され、微多孔層塗膜1が形成される。
【0013】
この連続塗工装置100は、さらに、実際に塗工された微多孔層塗膜1の塗工厚みを計測する塗工厚み計測部102と、微多孔層塗料吐出部101の吐出口形成面と前記導電性多孔質基材0の被塗工面との間隔によって前記微多孔層塗料吐出部による微多孔層塗膜1の塗工厚みを調整可能な塗工厚み調整機構104と、塗工厚み計測部102の計測値に基づいて塗工厚み調整機構104により微多孔層塗膜1の塗工厚みの調整を行うフィードバック機構103とを有する。本実施形態においては、微多孔層塗膜1の塗工厚みは、微多孔層塗膜1が形成された後、微多孔層塗膜1に含まれる溶媒成分を除去する前に、塗工厚み計測部102によって連続的に計測される。そして、計測された微多孔層塗膜1の塗工厚みに基づいて、フィードバック機構103により塗工厚み調整機構104の塗工厚み調整量が決定され、当該調整量の分微多孔層塗料吐出部101が導電性多孔質基材0の被塗工面に対して接近または離隔することで、微多孔層塗料吐出部101の吐出口形成面と導電性多孔質基材0の被塗工面との間隔tを調整する。なお、図1においては、フィードバック機構103は連続塗工装置における独立した部分であるかのように示したが、図1は各機構の位置を正確に示すための図ではなく、フィードバック機構103は、例えば塗工厚み計測部102や塗工厚み調整機構104と一体化していてもよい。
【0014】
フィードバック機構による塗工厚みの決定は、塗工厚み計測部で経時的に計測した塗工厚みの平均値に基づいて行われることが好ましい。塗工厚み計測部での計測値を連続的に計測すると、導電性多孔質基材および微多孔層は凹凸を有するため、塗工厚み計測部102の計測値はばらつく。このバラツキに基づいて塗工厚み調整機構により厚み調整をすると、微多孔層塗料吐出部と導電性多孔質基材0の被塗工面と間隙tがつぶさに変化してしまう。微多孔層塗料吐出部が導電性多孔質基材0の非塗工面に対して、接近・離隔を小さい周期で繰り返すと、微多孔層塗膜の表面品位が悪化する。そのため、導電性多孔質基材を2m以上測定した平均値に基づいて調整量を決定することが好ましい。
【0015】
導電性多孔質基材への微多孔層塗料の浸み込み量は、導電性多孔質基材の密度に依存する。加えて、微多孔層塗料を導電性多孔質基材に塗工する際、微多孔層塗料吐出部と導電性多孔質基材の被塗工面との間隙が小さいため、微多孔層塗料による液圧が生じる。この液圧により、微多孔層塗料が導電性多孔質基材に押し込まれ、微多孔層塗料は導電性多孔質基材の空孔部に浸み込む。その際、導電性多孔質基材の密度が小さい場合、浸み込みが促進され、その結果浸み込み量が増大する。ここで、導電性多孔質基材は凹凸を有し、幅方向(TD方向)および搬送方向(MD方向)に密度の差があることが通常であるため、微多孔層塗料吐出部101と導電性多孔質基材0の被塗工面との間隙tが常に一定であると、導電性多孔質基材0上の場所により浸み込み量が変化してしまう。そこで、導電性多孔質基材と微多孔層塗料吐出部との間隙を連続的に調整することで、微多孔層塗料塗工時の液圧を調整して、浸み込み量を調整することが可能となる。
【0016】
本実施形態の連続塗工装置100においては、塗工厚み計測部102の計測値が所望より大きいために微多孔層塗膜の塗工厚みを小さくする必要があるとフィードバック機構103が判断した場合、微多孔層塗料吐出部101と導電性多孔質基材0の被塗工面の間隔tを小さくするため、微多孔層塗料吐出部101を導電性多孔質基材0に接近するように移動させる。その結果、微多孔層塗料吐出部101から吐出された微多孔層塗料の液圧が上昇し、導電性多孔質基材0への浸み込みが増大して、微多孔層塗膜の塗工厚みを小さくできる。反対に、塗工厚み計測部102の計測値が所望より小さいために微多孔層塗膜の塗工厚みを大きくする必要があるとフィードバック機構103が判断した場合、微多孔層塗料吐出部101と導電性多孔質基材0の被塗工面との間隙tを大きくするため、微多孔層塗料吐出部101を導電性多孔質基材0の被塗工面から離隔するように移動させる。その結果、微多孔層塗料の液圧が低減し、浸み込み量が低減して、微多孔層塗膜の塗工厚みを大きくできる。
【0017】
微多孔層塗料吐出部101と導電性多孔質基材0の被塗工面の間隔tを接近・離隔させるための塗工厚み調整機構104は、その調整分解能が少なくとも1μmであることが好ましい。そのため、塗工厚み調整機構104の駆動手段としては、コッターやステッピングモーター、ACサーボモーターが好ましい。特に、ステッピングモーターやACサーボモーターを選択する場合、フィードバック機構103をシーケンス制御とすることにより、塗工厚み計測部102による計測値に基づいて、微多孔層塗料吐出部101の吐出口形成面と導電性多孔質基材0の被塗工面との間隔tを自動で調整する機構を構築することができる。
【0018】
図3は、図1に示した実施形態の変形例である連続塗工装置200の側面模式図である。本実施形態においては、微多孔層塗料吐出部101は、導電性多孔質基材0の被塗工面に対して接近・離隔自在となるよう、塗工厚み調整機構104に連結された載置台201上に載置されている。そして、載置台201が導電性多孔質基材0の被塗工面に対して接近・離隔することによって微多孔層塗料吐出部101の吐出口形成面と、前記導電性多孔質基材の被塗工面との間隔を調整するよう構成されている。これにより、微多孔層塗料吐出部101は、例えば微多孔層塗料を切り替える際などに、微多孔層塗料吐出部101を連続塗工装置200から取り外して洗浄すされることが容易となる。
【0019】
図4は、図1に示した実施形態の変形例である連続塗工装置300を上から見た様子を示す模式図である。本実施形態においては、導電性多孔質基材0の幅方向(TD方向)にも微多孔層塗膜1の厚みを均一にするため、塗工厚み計測部102は、導電性多孔質基材0の幅方向に2カ所(102A、102B)において塗工厚みを計測する。この場合、フィードバック機構103は、微多孔層塗膜1の幅方向2箇所における塗工厚みが均一に近づくよう微多孔層塗膜の塗工厚みを調整する。塗工厚み調整機構104により幅方向2カ所での計測値が均一に近づくように微多孔層塗膜1の塗工厚みを調整することで、幅方向にも均一な厚みを有する微多孔層塗膜1を形成することができる。このように、導電性多孔質基材の幅方向にも微多孔層塗膜の厚みを均一にするためには、塗工厚み計測部は、導電性多孔質基材の幅方向に2カ所以上において塗工厚みを計測することが好ましく、さらに、フィードバック機構は、微多孔層塗膜の幅方向2箇所以上における塗工厚みが均一に近づくよう微多孔層塗膜の塗工厚みを調整することが好ましい。
【0020】
加えて、特に、塗工厚み計測部102が導電性多孔質基材0の幅方向に2カ所以上において塗工厚みを計測する場合、塗工厚み調整機構104が幅方向2箇所以上に配置され(104A、104B)、前記導電性多孔質基材の被塗工面に対して2台の塗工厚み調整機構104A、104Bが独立して接近・離隔するよう構成することが好ましい。特に、微多孔層塗料吐出部101が塗工厚み調整機構104に連結された載置台201上に載置されている場合、載置台201も幅方向に2カ所以上設置(201A、201B)することが好ましい。この場合、微多孔層塗料吐出部101は、幅方向に2カ所設置された載置台201A、201Bの両方にまたがって載置される。導電性多孔質基材0の幅方向に凹凸が存在すると、塗工厚み計測部102により2カ所以上で測定された測定値のそれぞれからフィードバック機構103により決定される間隙tの調整量が異なる場合がある。幅方向に2カ所に設けた載置台201は、導電性多孔質基材0に対してそれぞれが独立して接近・離隔することができ、塗工厚み計測部102での2カ所以上の計測値それぞれに基づいて独立に塗工厚みを調整することで、幅方向にも均一な厚みの微多孔層塗膜1を形成することができる。ただし、一般的に、微多孔層塗料吐出部101は、金属で構成されるため、幅方向に3カ所以上に独立して移動する載置台201を配置すると、金属製の微多孔層塗料吐出部が載置台201の動作に追随しにくくなる傾向があるため、幅方向に設置する載置台201は2台であることが好ましい。
【0021】
図5は、図1に示した実施形態に係る連続塗工装置100の他の変形例である連続塗工装置400を示す側面模式図である。本実施形態において、塗工厚み計測部102は、微多孔層塗料吐出部101の上流側に配置され、導電性多孔質基材0の被塗工面の凹凸を計測する塗工前計測部1021と、微多孔層塗料吐出部101の下流側に配置され、微多孔層塗膜1表面の凹凸を計測する塗工後計測部1022とから構成される。導電性多孔質基材0および微多孔層塗膜1は凹凸を有するため、測定する場所により測定値が異なる。そのため、導電性多孔質基材0上の同一箇所を塗工の前後で計測し、その差分を求めて微多孔層塗膜1の塗工厚みの計測値とすることで、さらに精度の高い計測が可能となる。
【0022】
微多孔層塗膜の塗工厚み計測部は、レーザー変位計、赤外線膜厚計、X線式厚さ計、またはβ線式厚さ計であることが好ましい。これらの計測器は、塗膜に直接接触せず非接触での計測が可能であるため、微多孔層塗膜を汚染することなく連続的に塗工厚みを計測することができる。加えて、導電性多孔質基材や微多孔層塗膜の表層は、凹凸を有するため、レーザー変位計でも拡散反射方式が好ましい。レーザー変位計では厚み計測が可能な一方で、赤外線膜厚計やX線式厚さ計、β線式厚さ計は、一般的に被測定物の単位面積あたりの重量を計測する計測器であるため、これらを選択する場合は、計測した重量データを微多孔層塗料の比重から厚みに変換することができる。
【符号の説明】
【0023】
0: 導電性多孔質基材
1: 微多孔層塗膜
100: 連続塗工装置
200: 連続塗工装置
300: 連続塗工装置
400: 連続塗工装置
101: 微多孔層塗料吐出部
102、102A、102B: 塗工厚み計測部
1021: 塗工前計測部
1022: 塗工後計測部
103: フィードバック機構
104、104A、104B: 塗工厚み調整機構
105: 支持ローラ
201: 載置台
201A、202B: 載置台
t: 微多孔層塗料吐出部101の吐出口形成面と導電性多孔質基材0の被塗工面との間隙
図1
図2
図3
図4
図5