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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01P 7/00 20060101AFI20240717BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G01P7/00
A61B5/11 230
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020047830
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148563
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】富田 寛基
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220924(JP,A)
【文献】特開平10-301704(JP,A)
【文献】特開2006-227008(JP,A)
【文献】特開2016-147069(JP,A)
【文献】特開2012-205816(JP,A)
【文献】特開平11-271088(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0303900(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0346615(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 7/00 ~ 21/02
A61B 5/11
G01C 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置を備えた測定装置であって、
前記処理装置は、
加速度を測定する加速度センサから加速度データを取得し、前記加速度データに基づいて速度データを導出し、補正区間の開始時刻における前記速度データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記速度データの値を終点とし線形である速度モデルを算出し、前記速度モデルの値と前記速度データの値との差分に基づいて前記速度データを補正して補正速度データを得る速度算出部と、
前記速度算出部から前記補正速度データを取得し、前記補正速度データに基づいて位置データを導出し、前記補正区間の開始時刻における前記位置データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記位置データの値を終点とし線形である位置モデルを算出し、前記位置モデルの値と前記位置データの値との差分に基づいて前記位置データを補正して補正位置データを得る位置算出部と、を含
前記速度算出部は、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる時刻の一つを前記開始時刻とし、前記開始時刻の後にユーザの腕が往復し、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に再び切り替わる時刻を前記終了時刻とし、又は、ユーザの体の前方で腕の振りが前から後に切り替わる時刻の一つを前記開始時刻とし、前記開始時刻の後にユーザの腕が往復し、ユーザの体の前方で腕の振りが前から後に再び切り替わる時刻を前記終了時刻とする、
測定装置。
【請求項2】
前記処理装置は、角速度を測定する角速度センサから角速度データを取得し、
前記処理装置は、前記加速度センサから取得した加速度データの値と前記角速度センサから取得した角速度データの値とから鉛直方向を推定し、前記加速度センサが測定した加速度データの値を地上座標系における値に変換した加速度データとして前記速度算出部に提供する座標変換部を含む、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記処理装置は、前記角速度センサから角速度データの値を取得し、前記加速度センサから加速度データの値を取得し、角速度データの値が極小であって加速度データの値がユーザの進行方向前方向きである時刻をユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる時刻であると判断する計時部を含む、
請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
コンピュータが行なう測定方法であって、
加速度データを取得し、前記加速度データに基づいて速度データを導出し、補正区間の開始時刻における前記速度データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記速度データの値を終点とし線形である速度モデルを算出し、前記速度モデルの値と前記速度データの値との差分に基づいて前記速度データを補正して補正速度データを得、
前記補正速度データを取得し、前記補正速度データに基づいて位置データを導出し、前記補正区間の開始時刻における前記位置データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記位置データの値を終点とし線形である位置モデルを算出し、前記位置モデルの値と前記位置データの値との差分に基づいて前記位置データを補正して補正位置データを得、
ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる時刻の一つを前記開始時刻とし、前記開始時刻の後にユーザの腕が往復し、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に再び切り替わる時刻を前記終了時刻とし、又は、ユーザの体の前方で腕の振りが前から後に切り替わる時刻の一つを前記開始時刻とし、前記開始時刻の後にユーザの腕が往復し、ユーザの体の前方で腕の振りが前から後に再び切り替わる時刻を前記終了時刻とする、
測定方法。
【請求項5】
コンピュータに、
加速度データを取得させ、前記加速度データに基づいて速度データを導出させ、補正区間の開始時刻における前記速度データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記速度データの値を終点とし線形である速度モデルを算出させ、前記速度モデルの値と前記速度データの値との差分に基づいて前記速度データを補正して補正速度データを得させ、
前記補正速度データを取得させ、前記補正速度データに基づいて位置データを導出させ、前記補正区間の開始時刻における前記位置データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記位置データの値を終点とし線形である位置モデルを算出させ、前記位置モデルの値と前記位置データの値との差分に基づいて前記位置データを補正して補正位置データを得させ、
ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる時刻の一つを前記開始時刻とさせ、前記開始時刻の後にユーザの腕が往復し、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に再び切り替わる時刻を前記終了時刻とさせ、又は、ユーザの体の前方で腕の振りが前から後に切り替わる時刻の一つを前記開始時刻とさせ、前記開始時刻の後にユーザの腕が往復し、ユーザの体の前方で腕の振りが前から後に再び切り替わる時刻を前記終了時刻とさせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置、測定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ランニング等の運動時において、慣性センサから運動データを取得し、ランニングフォーム等の運動中の体の動きを解析することが行われている。
【0003】
特許文献1は、ユーザに取り付けられた慣性センサから取得した測定データに基づいて、ユーザの左右の動きを算出する運動解析装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-32611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、あるデータに基づいて所望のデータを得ようとする場合、測定誤差、方向推定精度、積分によるドリフト等により誤差が蓄積し、実際の速度や位置に対する差が大きくなってしまうという課題があった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、誤差の蓄積を防ぐことが可能な測定装置、測定方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る測定装置の一態様は、
処理装置を備えた測定装置であって、
前記処理装置は、
加速度を測定する加速度センサから加速度データを取得し、前記加速度データに基づいて速度データを導出し、補正区間の開始時刻における前記速度データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記速度データの値を終点とし線形である速度モデルを算出し、前記速度モデルの値と前記速度データの値との差分に基づいて前記速度データを補正して補正速度データを得る速度算出部と、
前記速度算出部から前記補正速度データを取得し、前記補正速度データに基づいて位置データを導出し、前記補正区間の開始時刻における前記位置データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記位置データの値を終点とし線形である位置モデルを算出し、前記位置モデルの値と前記位置データの値との差分に基づいて前記位置データを補正して補正位置データを得る位置算出部と、を含
前記速度算出部は、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる時刻の一つを前記開始時刻とし、前記開始時刻の後にユーザの腕が往復し、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に再び切り替わる時刻を前記終了時刻とし、又は、ユーザの体の前方で腕の振りが前から後に切り替わる時刻の一つを前記開始時刻とし、前記開始時刻の後にユーザの腕が往復し、ユーザの体の前方で腕の振りが前から後に再び切り替わる時刻を前記終了時刻とする、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誤差の蓄積を防ぐことが可能な測定装置、測定方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る測定装置がユーザに装着された状態を示す模式図である。
図2】実施の形態に係る測定装置の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る測定装置を装着したユーザの歩行時の腕の振りを示す模式図である。
図4】切り返し時刻データの要素と後方時刻データの要素とを示す図である。
図5】速度データ及び補正速度データのグラフの模式図である。
図6】実施の形態に係る測定装置の処理装置が実行する位置算出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態に係る測定装置1について、図面を参照して説明する。なお、図中同一又は相当する部分には同一符号を付す。実施の形態に係る測定装置1は、ユーザに装着されてユーザの運動に関する情報を測定する測定装置である。
【0011】
図1は、測定装置1がユーザに装着された状態を示す模式図である。図1に示すように、測定装置1は、ユーザの手首にバンド500を用いて装着され、ユーザの手首の位置を示すデータを算出することでユーザの腕の動きを測定する。
【0012】
図2は、測定装置1の構成を示すブロック図である。図2に示すように、測定装置1は、処理装置100と、センサ200と、記憶装置300と、通信装置400と、を備える。
【0013】
処理装置100は、計時部101と、座標変換部102と、速度算出部103と、位置算出部104と、を備える。処理装置100は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含み得るが、これに限られるものではない。処理装置100の詳細については後述する。
【0014】
センサ200は、加速度を測定する加速度センサ201と、角速度を測定する角速度センサ202と、を含む。角速度センサ202はジャイロセンサを含み得るが、これに限られるものではない。
【0015】
記憶装置300は、処理装置100が実行するプログラム及び算出したデータ、並びにセンサ200が測定したデータを記憶する。記憶装置300は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)を含み得るが、これに限られるものではない。
【0016】
通信装置400は、処理装置100が算出したデータを外部に出力する通信インタフェースである。通信装置400は、例えば無線通信インタフェース又は有線通信インタフェースを含み得るが、これに限られるものではない。
【0017】
処理装置100の計時部101は、時刻を計測して時刻の列のデータを生成する。計時部101は、角速度センサ202から角速度の値を取得し、角速度の値が極小になる時刻を抽出して、時刻の値の列である切り返し時刻データAを生成する。切り返し時刻データAに含まれるデータの数は2n(n:自然数)である。切り返し時刻データAに含まれる時刻の要素を、A(a,a,a,…,a2n)とする。
【0018】
計時部101は、切り返し時刻データAに含まれる時刻のうち、その時刻における加速度の向きがユーザの進行方向前方向きであるものを抽出し、抽出された時刻の値の列である後方時刻データBを生成する。後方時刻データBに含まれる時刻の要素を、B(b,b,b,…b)とする。
【0019】
図3は、測定装置1を装着したユーザの歩行時の腕の振りを示す模式図である。図3において、ユーザは図の左から右に進んでいる。図3に示すように、点Iにおいてユーザの体の前方で腕の振りが前から後に切り替わり、点IIにおいてユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる。点I及び点IIにおいて、角速度の値は極小値を取る。点Iにおいて加速度は進行方向後方向きであり、点IIにおいて加速度は進行方向前方向きである。ユーザの腕が点IIにある時刻の集合が、後方時刻データBに含まれる時刻である。
【0020】
切り返し時刻データAは、角速度の値が極小になる時刻の値の列であるから、腕振りの切り返し点、即ちユーザの体の前方で腕の振りが前から後に、又はユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる時刻の列である。言い換えれば、ユーザの腕が点I又は点IIにある時刻の集合が、切り返し時刻データAに含まれる時刻である。
【0021】
後方時刻データBは、時刻データAに含まれる時刻のうち加速度がユーザの進行方向後方向きである時刻の値の列であるから、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる時刻の列である。言い換えれば、ユーザの腕が点IIにある時刻の集合が、後方時刻データBに含まれる時刻である。
【0022】
図4は、切り返し時刻データAの要素と後方時刻データBの要素とを示す図である。図4に示すように、切り返し時刻データAの一部が後方時刻データBとして抽出されており、後方時刻データBの要素の数nは切り返し時刻データAの要素の数2nの半分である。
【0023】
座標変換部102は、加速度センサ201が測定した加速度の値と、角速度センサ202が測定した角速度の値と、をそれぞれ取得する。座標変換部102は、取得した加速度及び角速度の値から鉛直方向を推定し、処理装置100を基準とした座標系で測定された加速度の値を地上座標系における値に変換して、時刻毎の加速度の列である加速度データCを生成する。
【0024】
速度算出部103は、座標変換部102から加速度データCを取得し、加速度データCを積分して、時刻毎の速度の列である速度データDを生成する。
【0025】
速度算出部103は、速度データDのうち時刻bから時刻bまでの速度の値に対し、始点を時刻b(開始時刻)における速度の値とし、終点を時刻b(終了時刻)における速度の値とし、線形である速度モデルを算出する。速度算出部103は、算出した速度モデルの値を、速度データDに含まれる速度の値から引くことで補正された速度の値を得る。このとき、補正された速度の値は時刻b及び時刻bにおいて0となる。
【0026】
開始時刻及び終了時刻をユーザの動きに沿って言い換えると、開始時刻は、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わるある時刻である。終了時刻は、開始時刻の後にユーザの腕が往復し、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に再び切り替わる時刻である。
【0027】
速度算出部103は、同様の処理を時刻bから時刻bまで、時刻bから時刻bまで、と時刻bに到達するまで繰り返し、補正された速度の値の列である補正速度データEを生成する。処理を行う時刻bから時刻bまで、時刻bから時刻bまで、…、時刻bn-1から時刻bまでの区間をそれぞれ補正区間という。上記の処理を行ったことで、補正速度データEの時刻b,b,b,…,bにおける速度の値は全て0になる。
【0028】
図5は、速度データD及び補正速度データEのグラフの模式図である。図5では、時刻bから時刻bk+1までの部分を抜粋しており、点線が速度データD、実線が補正速度データEを示す。図5に示すように、速度算出部103は、速度データDのうち時刻bから時刻bk+1までの速度の値に対して線分Lを算出する。速度算出部103は、速度の値から線分の値を引くことで、補正速度データEを生成する。補正速度データEでは、時刻b及び時刻bk+1における速度の値は0になっている。
【0029】
位置算出部104は、速度算出部103から補正速度データEを取得し、補正速度データEを積分して、時刻毎の位置の値の列である位置データFを生成する。
【0030】
位置算出部104は、位置データFのうち時刻bから時刻bまでの位置の値に対し、始点を時刻bにおける位置の値とし、終点を時刻bにおける位置の値とし、線形である位置モデルを算出する。位置算出部104は、算出した位置モデルの値を、位置データFに含まれる位置の値から引くことで補正された位置の値を得る。このとき、時刻bと時刻bとにおいて補正された位置の値は0となる。
【0031】
位置算出部104は、同様の処理を時刻bから時刻bまで、時刻bから時刻bまで、と時刻bに到達するまで繰り返し、補正位置データGを生成する。上記の処理を行ったことで、補正位置データGの時刻b,b,b,…,bにおける位置の値は全て0になる。
【0032】
上記の方法によって生成された補正位置データGは、各時刻における測定装置1の位置、即ちユーザの手首の位置を示すデータである。
【0033】
測定装置1は、通信装置400を介して補正位置データGを外部機器に出力する。ユーザは、外部機器によって、補正位置データGを画面に表示して確認したり、補正位置データGを解析してユーザの運動に関する情報を得たりすることができる。外部機器は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、スマートウォッチを含み得るが、これに限られるものではない。
【0034】
図6は、実施の形態に係る測定装置1の処理装置100が実行する位置算出処理のフローチャートである。図6のフローチャートを参照して、位置算出処理について説明する。
【0035】
位置算出処理が開始されると、処理装置100の計時部101が、角速度センサ202から角速度の値を取得し、角速度の値が極小になる時刻を抽出して切り返し時刻データAを生成する(ステップS101)。
【0036】
切り返し時刻データAを生成すると、計時部101が、切り返し時刻データAに含まれる時刻のうち、その時刻における加速度の向きがユーザの進行方向前方向きであるものを抽出して後方時刻データBを生成する(ステップS102)。
【0037】
後方時刻データBを生成すると、座標変換部102が、加速度センサ201が測定した加速度の値と、角速度センサ202が測定した角速度の値と、から鉛直方向を推定し、処理装置100を基準とした座標系で測定された加速度の値を地上座標系における値に変換して、時刻毎の加速度の列である加速度データCを生成する(ステップS103)。
【0038】
加速度データCを生成すると、速度算出部103が、加速度データCを積分して速度データDを生成する(ステップS104)。
【0039】
速度データDを生成すると、速度算出部103が、線形の速度モデルを算出し、速度モデルの値を速度の値からそれぞれ引くことで速度の値の補正を行って、補正速度データEを生成する(ステップS105)。
【0040】
補正速度データEを生成すると、位置算出部104が、補正速度データEを積分して位置データFを生成する(ステップS106)。
【0041】
位置データFを生成すると、位置算出部104が、線形の位置モデルを算出し位置モデルの値を位置の値からそれぞれ引くことで位置の値の補正を行って、補正位置データGを生成し(ステップS107)、位置算出処理を終了する。
【0042】
以上の構成を備えることで、実施の形態に係る測定装置1は、積分による誤差の蓄積を防ぐことができる。
【0043】
加速度センサ201が測定した加速度の値から位置を算出しようとする場合、積分を2回行う必要がある。積分を行うとドリフトが生じるが、これは積分を繰り返す度に蓄積され、また測定時間が長くなるほど蓄積されてしまうため、正確な位置を算出することが困難になってしまう。
【0044】
実施の形態に係る測定装置1では、加速度を積分して速度を算出する際と、速度を積分して位置を算出する際とに補正を行うことで、積分を繰り返してもドリフトが蓄積されることを防ぐことができる。また、ユーザの腕の振りの1往復を補正区間とすることで、長時間の測定を行ってもドリフトが蓄積されることを防ぐことができる。
【0045】
人間の歩行又は走行において、腕の振りが前から後に切り替わる際は、タイミング又は位置が不規則であったり、切り替わる瞬間がはっきりしなかったりすることがある。一方、腕の振りが後から前に切り替わる際は、タイミング及び位置が規則的であり、切り替わる瞬間がわかりやすいという特徴がある。実施の形態に係る測定装置1では、腕の振りが後から前に切り替わる時刻を補正の開始時刻及び終了時刻とすることで、誤差を小さくし位置の推定精度を上げることができる。
【0046】
(変形例)
以上に本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態は一例であり、本発明の適用範囲はこれに限られない。すなわち、本発明の実施の形態は種々の応用が可能であり、あらゆる実施の形態が本発明の範囲に含まれる。
【0047】
測定装置1は、ユーザの手首にバンド500を用いて装着され、ユーザの手首の位置を示すデータを算出することでユーザの腕の動きを測定するとしたが、これに限られるものではない。ユーザの足首にバンド500を用いて装着され、ユーザの手首の位置を示すデータを算出することでユーザの足の動きを測定しても良い。また、周期的な動きを行なう物であれば、動きを測定する対象は人に限らない。
【0048】
計時部101は、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる時刻の列を抽出するとしたが、これに限られるものではない。ユーザの体の前方で腕の振りが前から後に切り替わる時刻であっても良い。測定装置1がユーザの足の部位に装着される場合は、足の裏が地面に接地した時刻であっても良いし、足の裏が地面から離れた時刻であっても良い。その他、任意の時刻の列を抽出しても良い。
【0049】
後方時刻データBの要素の数nは切り返し時刻データAの要素の数2nの半分であるとしたが、これに限られるものではない。切り返し時刻データAの要素の数は奇数であっても良いし、その場合後方時刻データBの要素の数は切り返し時刻データAの要素の数の半分に1を足した数又は引いた数になる。
【0050】
速度算出部103は、始点を開始時刻における速度の値とし、終点を終了時刻における速度の値とし、線形である速度モデルを算出するとしたが、これに限られるものではない。速度算出部103は、開始時刻から終了時刻までの速度の値に対して、時刻を説明変数とし速度を目的変数とする線形回帰分析を行い、算出した目的変数の値を速度の値からそれぞれ引いても良い。即ち、線形回帰を用いて速度の値の補正を行っても良い。
【0051】
センサ200は、加速度を測定する加速度センサ201と、角速度を測定する角速度センサ202と、を含むとしたが、これに限られるものではない。地磁気を測定する地磁気センサを備えても良く、座標変換部102は地磁気の値から鉛直方向を推定しても良い。また、センサ200を測定装置1の構成要素とはせずに、測定装置1は別装置としてのセンサ装置から無線通信等により、リアルタイムに、或いは運動後に、センサデータを取得して位置算出処理を行なっても良い。この場合、センサ装置をユーザの手首や足首等に装着しておけば、測定装置1を保持する場所は限定されない。
【0052】
通信装置400は、処理装置100が算出したデータを外部に出力する通信インタフェースである通信装置400を備えるとしたが、これに限られるものではない。記憶媒体を着脱可能なインタフェースを備え、記憶媒体にデータを記憶させ、記憶媒体を外部機器に接続することで、外部機器にデータを提供しても良い。
【0053】
測定装置1は表示装置を備えてもよい。制御装置100が算出した補正位置データGを表示装置に表示し、ユーザが外部機器を用いずに確認できるようにしても良い。
【0054】
なお、本発明に係る機能を実現するための構成を予め備えた測定装置として提供できることはもとより、プログラムの適用により、既存の測定装置を、本発明に係る測定装置として機能させることもできる。すなわち、実施の形態及び変形例で例示した測定装置による機能を実現させるためのプログラムを、既存の測定装置を制御するCPU等が実行できるように適用することで、本発明に係る測定装置として機能させることができる。また、本発明に係る測定方法は、測定装置を用いて実施できる。
【0055】
また、このようなプログラムの適用方法は任意である。プログラムを、例えば、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して適用できる。さらに、プログラムを搬送波に重畳し、インターネットなどの通信媒体を介して適用することもできる。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)にプログラムを掲示して配信しても良い。そして、このプログラムを起動し、OS(Operating System)の制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成しても良い。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲とが含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0057】
(付記1)
処理装置を備えた測定装置であって、
前記処理装置は、
加速度を測定する加速度センサから加速度データを取得し、前記加速度データに基づいて速度データを導出し、補正区間の開始時刻における前記速度データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記速度データの値を終点とし線形である速度モデルを算出し、前記速度モデルの値と前記速度データの値との差分に基づいて前記速度データを補正して補正速度データを得る速度算出部と、
前記速度算出部から前記補正速度データを取得し、前記補正速度データに基づいて位置データを導出し、前記補正区間の開始時刻における前記位置データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記位置データの値を終点とし線形である位置モデルを算出し、前記位置モデルの値と前記位置データの値との差分に基づいて前記位置データを補正して補正位置データを得る位置算出部と、を含む、
測定装置。
【0058】
(付記2)
前記処理装置は、角速度を測定する角速度センサから角速度データを取得し、
前記処理装置は、前記加速度センサから取得した加速度データの値と前記角速度センサから取得した角速度データの値とから鉛直方向を推定し、前記加速度センサが測定した加速度データの値を地上座標系における値に変換した加速度データとして前記速度算出部に提供する座標変換部を含む、
付記1に記載の測定装置。
【0059】
(付記3)
前記処理装置は、前記角速度センサから角速度データの値を取得し、前記加速度センサから加速度データの値を取得し、角速度データの値が極小であって加速度データの値がユーザの進行方向前方向きである時刻をユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる時刻であると判断する計時部を含む、
付記2に記載の測定装置。
【0060】
(付記4)
前記速度算出部は、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に切り替わる時刻の一つを前記開始時刻とし、前記開始時刻の後にユーザの腕が往復し、ユーザの体の後方で腕の振りが後から前に再び切り替わる時刻を前記終了時刻とする、
付記3に記載の測定装置。
【0061】
(付記5)
ユーザの手首又は足首に巻き付けられるバンドを備え、ユーザの手首又は足首に装着される、
付記1から4の何れか1項に記載の測定装置。
【0062】
(付記6)
前記加速度センサと前記角速度センサとを備える、
付記2から4の何れか1項に記載の測定装置。
【0063】
(付記7)
コンピュータが行なう測定方法であって、
加速度データを取得し、前記加速度データに基づいて速度データを導出し、補正区間の開始時刻における前記速度データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記速度データの値を終点とし線形である速度モデルを算出し、前記速度モデルの値と前記速度データの値との差分に基づいて前記速度データを補正して補正速度データを得、
前記補正速度データを取得し、前記補正速度データに基づいて位置データを導出し、前記補正区間の開始時刻における前記位置データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記位置データの値を終点とし線形である位置モデルを算出し、前記位置モデルの値と前記位置データの値との差分に基づいて前記位置データを補正して補正位置データを得る、
測定方法。
【0064】
(付記8)
コンピュータに、
加速度データを取得させ、前記加速度データに基づいて速度データを導出させ、補正区間の開始時刻における前記速度データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記速度データの値を終点とし線形である速度モデルを算出させ、前記速度モデルの値と前記速度データの値との差分に基づいて前記速度データを補正して補正速度データを得させ、
前記補正速度データを取得させ、前記補正速度データに基づいて位置データを導出させ、前記補正区間の開始時刻における前記位置データの値を始点とし前記補正区間の終了時刻における前記位置データの値を終点とし線形である位置モデルを算出させ、前記位置モデルの値と前記位置データの値との差分に基づいて前記位置データを補正して補正位置データを得させる、
プログラム。
【符号の説明】
【0065】
1…測定装置、100…処理装置、101…計時部、102…座標変換部、103…速度算出部、104…位置算出部、200…センサ、201…加速度センサ、202…角速度センサ、300…記憶装置、400…通信装置、500…バンド
図1
図2
図3
図4
図5
図6