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特許7521216発光装置、光学装置、計測装置及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】発光装置、光学装置、計測装置及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0239 20210101AFI20240717BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01S5/0239
G01S7/481 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020052022
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021150628
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【弁理士】
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】井口 大介
(72)【発明者】
【氏名】逆井 一宏
(72)【発明者】
【氏名】皆見 健史
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-177591(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0278011(US,A1)
【文献】特開2013-092685(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0036156(US,A1)
【文献】国際公開第2019/202874(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0045882(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0229912(US,A1)
【文献】特開2020-004868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00- 5/50
G01B 11/00-11/30
G01C 3/00- 3/32
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面形状が四角形のレーザ素子アレイと、
前記レーザ素子アレイを発光させる電流を供給する1対のキャパシタと、
前記レーザ素子アレイを発光させる電流をオン/オフして駆動する駆動部と、を備え、
前記レーザ素子アレイの対向する2辺側に、当該レーザ素子アレイを挟んで1対の前記キャパシタが配置され、当該レーザ素子アレイの他の1辺側に、前記駆動部が配置されている発光装置。
【請求項2】
前記レーザ素子アレイと前記キャパシタをつなぐ第1の配線と、
前記レーザ素子アレイと前記駆動部とをつなぐ第2の配線と、
前記キャパシタとつながれる第1基準電位配線と、を備え、
前記第1基準電位配線は前記第2の配線を挟むように前記第1の配線の外側に設けられた請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記レーザ素子アレイと前記駆動部とが搭載される回路基板と、
前記第1基準電位配線とは異なる配線であって、前記第2の配線とつながれる第2基準電位配線と、を備え、
前記第1基準電位配線と前記第2基準電位配線は前記回路基板の異なる面又は層に形成されている請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記レーザ素子アレイと前記駆動部とが搭載される回路基板を備え、
前記回路基板の表面に前記レーザ素子アレイと前記駆動部とが配置され、
前記回路基板に基準電位配線が層状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記駆動部が搭載される回路基板と、
前記回路基板より熱伝導率が大きい放熱基材と、を備え、
前記レーザ素子アレイが前記放熱基材に設けられ、当該放熱基材が前記回路基板に搭載されていることを特徴とする請求項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記レーザ素子アレイは、並列接続された複数の面発光レーザ素子を備え、裏面側にカソード電極が、表面側にアノード電極が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記放熱基材は、
表面側に、前記レーザ素子アレイのカソード電極と接続される表面側カソード配線が設けられ、当該表面側カソード配線を挟むように当該レーザ素子アレイのアノード電極と接続される1対の表面側アノード配線が設けられ、
裏面側に、前記表面側カソード配線と1対の前記表面側アノード配線とそれぞれ対応するように設けられ、それぞれと電気的に接続された裏面側カソード配線と1対の裏面側アノード配線と、を備えることを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記レーザ素子アレイにおける前記駆動部が設けられた側である前記他の1辺に対向する1辺側において、当該レーザ素子アレイを当該駆動部とで挟むように、当該レーザ素子アレイの光量を監視する光量監視用受光素子を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記レーザ素子アレイと、前記1対のキャパシタと、前記駆動部とが、T字状に配置されている、請求項1に記載の発光装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発光装置と、
前記発光装置が備えるレーザ素子アレイから出射され、被計測物で反射された反射光を受光する受光部と、
を備える光学装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光学装置と、
前記光学装置が備えるレーザ素子アレイから出射されてから受光部で受光されるまでの時間に基づいて、被計測物までの距離を特定する距離特定部と、
を備える計測装置。
【請求項12】
請求項11に記載の計測装置と、
前記計測装置が備える距離特定部での特定結果に基づき、自装置の使用に関する認証処理を行う認証処理部と、
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、光学装置、計測装置及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光透過性を有するセラミック基板と、前記セラミック基板の表面に搭載された発光素子と、前記発光素子に電力を供給するための配線パターンと、光反射性を有する金属からなるメタライズ層と、を備えており、前記メタライズ層は、前記発光素子から出射された光を反射するように前記セラミック基板の内部に形成されている発光装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-252129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光の飛行時間による、いわゆるToF(Time of Flight)法に基づいて、被計測物の三次元形状の計測を行う場合、光源の発光の立ち上がり時間が短いことが求められる。これには、発光のための電流が流れる経路の実効インダクタンスを低減することが有効である。
【0005】
本発明は、光源の2辺側に光源を挟んで1対のキャパシタが配置され、光源の他の1辺側に、駆動部が配置されていない場合に比較し、発光のための電流が流れる経路の実効インダクタンスを低減した発光装置などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、平面形状が四角形のレーザ素子アレイと、前記レーザ素子アレイを発光させる電流を供給する1対のキャパシタと、前記レーザ素子アレイを発光させる電流をオン/オフして駆動する駆動部と、を備え、前記レーザ素子アレイの対向する2辺側に、当該レーザ素子アレイを挟んで1対の前記キャパシタが配置され、当該レーザ素子アレイの他の1辺側に、前記駆動部が配置されている発光装置である。
請求項2に記載の発明は、前記レーザ素子アレイと前記キャパシタをつなぐ第1の配線と、前記レーザ素子アレイと前記駆動部とをつなぐ第2の配線と、前記キャパシタとつながれる第1基準電位配線と、を備え、前記第1基準電位配線は前記第2の配線を挟むように前記第1の配線の外側に設けられた請求項1に記載の発光装置である。
請求項3に記載の発明は、前記レーザ素子アレイと前記駆動部とが搭載される回路基板と、前記第1基準電位配線とは異なる配線であって、前記第2の配線とつながれる第2基準電位配線と、を備え、前記第1基準電位配線と前記第2基準電位配線は前記回路基板の異なる面又は層に形成されている請求項2に記載の発光装置である。
請求項4に記載の発明は、前記レーザ素子アレイと前記駆動部とが搭載される回路基板を備え、前記回路基板の表面に前記レーザ素子アレイと前記駆動部とが配置され、前記回路基板に基準電位配線が層状に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置である。
請求項5に記載の発明は、前記駆動部が搭載される回路基板と、前記回路基板より熱伝導率が大きい放熱基材と、を備え、前記レーザ素子アレイが前記放熱基材に設けられ、当該放熱基材が前記回路基板に搭載されていることを特徴とする請求項に記載の発光装置である。
請求項6に記載の発明は、前記レーザ素子アレイは、並列接続された複数の面発光レーザ素子を備え、裏面側にカソード電極が、表面側にアノード電極が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の発光装置である。
請求項7に記載の発明は、前記放熱基材は、表面側に、前記レーザ素子アレイのカソード電極と接続される表面側カソード配線が設けられ、当該表面側カソード配線を挟むように当該レーザ素子アレイのアノード電極と接続される1対の表面側アノード配線が設けられ、裏面側に、前記表面側カソード配線と1対の前記表面側アノード配線とそれぞれ対応するように設けられ、それぞれと電気的に接続された裏面側カソード配線と1対の裏面側アノード配線と、を備えることを特徴とする請求項6に記載の発光装置である。
請求項8に記載の発明は、前記レーザ素子アレイにおける前記駆動部が設けられた側である前記他の1辺に対向する1辺側において、当該レーザ素子アレイを当該駆動部とで挟むように、当該レーザ素子アレイの光量を監視する光量監視用受光素子を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の発光装置である。
請求項9に記載の発明は、前記レーザ素子アレイと、前記1対のキャパシタと、前記駆動部とが、T字状に配置されている、請求項1に記載の発光装置である。
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の発光装置と、前記発光装置が備えるレーザ素子アレイから出射され、被計測物で反射された反射光を受光する受光部と、を備える光学装置である。
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の光学装置と、前記光学装置が備えるレーザ素子アレイから出射されてから受光部で受光されるまでの時間に基づいて、被計測物までの距離を特定する距離特定部と、を備える計測装置である。
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の計測装置と、前記計測装置が備える距離特定部での特定結果に基づき、自装置の使用に関する認証処理を行う認証処理部と、を備える情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、光源の2辺側に光源を挟んで1対のキャパシタが配置され、光源の他の1辺側に、駆動部が配置されていない場合に比較し、発光のための電流が流れる経路の実効インダクタンスが低減される。
請求項2、3に記載の発明によれば、発光のための電流が流れる経路の実効インダクタンスが低減される
請求項に記載の発明によれば、基準電位配線が層状に設けられていない場合に比較し、戻りの電流経路がより短く構成される。
請求項に記載の発明によれば、放熱基材を備えない場合に比べ、レーザ素子アレイの発生する熱が放熱されやすい。
請求項に記載の発明によれば、並列に接続されていない場合に比較し、レーザ素子アレイからの発光強度を大きくできる。
請求項に記載の発明によれば、表面側カソード配線を挟むように1対の表面側アノード配線を設けない場合に比較し、発光のための電流が流れる経路の実効インダクタンスが低減される。
請求項に記載の発明によれば、光量監視用受光素子を備えない場合に比較し、レーザ素子アレイの光量の変動が抑制される。
請求項9に記載の発明によれば、発光のための電流が流れる経路の実効インダクタンスが低減される
請求項10に記載の発明によれば、距離に対応した信号が取得できる光学装置が提供される。
請求項11に記載の発明によれば、被計測物までの距離の計測が行える計測装置が提供される。
請求項12に記載の発明によれば、特定された距離に基づく認証処理を搭載した情報処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】情報処理装置の一例を示す図である。
図2】情報処理装置の構成を説明するブロック図である。
図3】光源の平面図である。
図4】光源における1個のVCSELの断面構造を説明する図である。
図5】光拡散部材の一例を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のVB-VB線での断面図である。
図6】ローサイド駆動により光源を駆動する場合の等価回路の一例を示す図である。
図7】本実施の形態が適用される発光装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のVIIB-VIIB線での断面図である。
図8】発光装置における電流経路を模式的に説明する図である。
図9】本実施の形態が適用される発光装置の変形例である発光装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のIXB-IXB線での断面図である。
図10】変形例である発光装置における放熱基材の表面側に設けられた配線と、裏面側に設けられた配線とを説明する図である。(a)は、表面側の配線、(b)は、裏面側の配線を示す。
図11】本実施の形態が適用されない、比較例1の発光装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のXIB-XIB線での断面図である。
図12】比較例1である発光装置における放熱基材の表面側に設けられた配線と、裏面側に設けられた配線とを説明する図である。(a)は、表面側の配線、(b)は、裏面側の配線を示す。
図13】比較例1の発光装置における電流経路を模式的に説明する図である。
図14】本実施の形態が適用されない、比較例2の発光装置を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のXIVB-XIVB線での断面図である。
図15】比較例2である発光装置における放熱基材の表面側に設けられた配線と、裏面側に設けられた配線とを説明する図である。(a)は、表面側の配線、(b)は、裏面側の配線を示す。
図16】比較例2の発光装置における電流経路を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
被計測物の三次元形状を計測する計測装置には、光の飛行時間による、いわゆるToF(Time of Flight)法に基づいて、三次元形状を計測する装置がある。ToF法では、計測装置が備える発光装置から光が出射されたタイミングから、照射された光が被計測物で反射して計測装置が備える三次元センサ(以下では、3Dセンサと表記する。)で受光されるタイミングまでの時間を計測し、計測された三次元形状から被計測物の三次元形状を特定する。なお、三次元形状を計測する対象を被計測物と表記する。三次元形状を三次元像と表記することがある。また、三次元形状を計測することを、三次元計測、3D計測又は3Dセンシングと表記することがある。
【0010】
このような計測装置は、携帯型情報処理装置などに搭載され、アクセスしようとするユーザの顔認証などに利用されている。従来、携帯型情報処理装置などでは、パスワード、指紋、虹彩などにより、ユーザを認証する方法が用いられてきた。近年、セキュリティ性がより高い認証方法が求められるようになってきた。そこで、携帯型情報処理装置に三次元形状を計測する計測装置を搭載するようになってきた。つまり、アクセスしたユーザの顔の三次元形状を取得し、アクセスすることが許可されているか否かを識別し、アクセスが許可されているユーザであると認証された場合にのみ、自装置(携帯型情報処理装置)の使用を許可することが行われている。
【0011】
ここでは、情報処理装置は、一例として携帯型情報処理端末であるとして説明し、三次元形状として捉えられた顔の形状を認識することで、ユーザを認証するとして説明する。なお、情報処理装置は、携帯型情報処理端末以外のパーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置に適用しうる。
【0012】
なお、ToF法では、計測装置が備える発光装置より光が出射されたタイミングから、照射された光が被計測物で反射して計測装置が備える3Dセンサで受光されるタイミングまでの時間を計測するため、光源の発光の立ち上がり時間が短いことが求められる。発光の立ち上がり時間が短いほど、計測の精度が向上する。光源の発光の立ち上がり時間は、光源に発光のための電流を供給する電流経路の実効インダクタンスが小さいほど短くなる。つまり、電流経路の実効インダクタンスが大きい程、高い周波数(以下では、高周波数と表記する。)の電流が流れにくくなり、光源の発光のための電流の立ち上がり時間が長くなってしまう。なお、発光の立ち上がり時間とは、発光のために流す電流の立ち上がり時間であって、例えば、発光のための電流が立ち上がり始めたタイミングから、発光が最大光量の90%に達するまでの時間である。
【0013】
本実施の形態で説明する構成、機能、方法等は、顔以外を被計測物とし、計測された三次元形状から被計測物を認識することにも適用しうる。また、このような計測装置は、拡張現実(AR:Augmented Reality)など、継続的に被計測物の三次元形状を計測する場合にも適用される。また、被計測物までの距離は問わない。顔認証では、光源から近距離に位置する顔に光を照射すればよいが、拡張現実などでは、顔に比べて遠距離に位置する被計測物に光を照射することが求められる。よって、光源は、光量が大きいことが求められる。
【0014】
以下で説明する本実施の形態で説明する構成、機能、方法等は、顔認証や拡張現実以外の被計測物の三次元形状の計測に適用しうる。
【0015】
(情報処理装置1)
図1は、情報処理装置1の一例を示す図である。前述したように、情報処理装置1は、一例として携帯型情報処理端末である。
情報処理装置1は、ユーザインターフェイス部(以下では、UI部と表記する。)2と三次元形状を計測する光学装置3とを備える。UI部2は、例えばユーザに対して情報を表示する表示デバイスとユーザの操作により情報処理に対する指示が入力される入力デバイスとが一体化されて構成されている。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、入力デバイスは、例えばタッチパネルである。
【0016】
光学装置3は、発光装置4と、3Dセンサ5とを備える。発光装置4は、被計測物、ここでの例では顔に向けて光を照射する。3Dセンサ5は、発光装置4から出射され、顔で反射されて戻ってきた光を取得する。ここでは、光の飛行時間による、いわゆるToF法に基づいて、三次元形状を計測する。そして、三次元形状から、顔の三次元形状を特定する。そして、特定された顔の三次元形状からアクセスすることが許可されているか否かを識別し、アクセスが許可されているユーザであると認証した場合に、情報処理装置1の使用を許可する。上述したように、顔以外を被計測物として、三次元形状を計測してもよい。3Dセンサ5は、受光部の一例である。
【0017】
情報処理装置1は、CPU、ROM、RAMなどを含むコンピュータとして構成されている。なお、ROMには、不揮発性の書き換え可能なメモリ、例えばフラッシュメモリを含む。そして、ROMに蓄積されたプログラムや定数が、RAMに展開され、CPUがプログラムを実行することによって、情報処理装置1が動作し、各種の情報処理が実行される。
【0018】
図2は、情報処理装置1の構成を説明するブロック図である。
情報処理装置1は、上記した光学装置3と、計測制御部8と、システム制御部9とを備える。前述したように、光学装置3は、発光装置4と、3Dセンサ5とを備える。計測制御部8は、光学装置3を制御する。そして、計測制御部8は、三次元形状特定部81を含む。システム制御部9は、情報処理装置1全体をシステムとして制御する。そして、システム制御部9は、認証処理部91を含む。そして、システム制御部9には、UI部2、スピーカ92、二次元カメラ(図2では、2Dカメラと表記する。)93などが接続されている。
【0019】
光学装置3が備える発光装置4は、回路基板10と、光源20と、光拡散部材30と、光量監視受光素子(以下では、PDと表記する。)40と、駆動部50と、保持部60と、キャパシタ71A、71B、72A、72Bとを備える。なお、キャパシタ71A、71Bは、等価直列インダクタンスESL(Equivalent Series Inductance)を低減したキャパシタ(以下では、低ESLキャパシタと表記する。)であり、キャパシタ72A、72Bは、キャパシタ71A、71Bに比べ等価直列インダクタンスESLが大きいキャパシタ(以下では、非低ESLキャパシタと表記する。)である。キャパシタ71A、71Bをそれぞれ区別しない場合は、キャパシタ71と表記し、キャパシタ72A、72Bをそれぞれ区別しない場合は、キャパシタ72と表記する。さらに、発光装置4は、駆動部50を動作させるために、抵抗素子や他のキャパシタなどの受動素子を備えてもよい。
【0020】
光源20、PD40、駆動部50、キャパシタ71、72及び保持部60は、回路基板10の表面上に設けられている。なお、図2では、3Dセンサ5は、回路基板10の表面上に設けられていないが、回路基板10の表面上に設けられていてもよい。そして、光拡散部材30は、保持部60上に設けられている。ここで、表面とは、図2の紙面の表側を言う。より具体的には、回路基板10においては、光源20等が設けられている方を表面、表側、又は表面側と言う。他の部材についても同様とする。以下において、表面側から、部材を透視して見ることを上面視と言う。
【0021】
光源20は、複数の面発光レーザ素子が二次元に配置された面発光レーザ素子アレイとして構成されている(後述する図3参照)。面発光レーザ素子は、一例として垂直共振器面発光レーザ素子VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。以下では、面発光レーザ素子は、垂直共振器面発光レーザ素子VCSELであるとして説明する。そして、垂直共振器面発光レーザ素子VCSELをVCSELと表記する。光源20は、回路基板10上の表面上に設けられているので、光源20は、回路基板10の表面に垂直な方向(表面側)に外部に向かって光を出射する。なお、光を出射する光源20の面を出射面と表記することがある。光源20は、レーザ素子アレイの一例である。
【0022】
光拡散部材30は、光源20の光の出射経路上に設けられている。そして、光拡散部材30は、光源20が出射した光が入射され、入射された光を拡散して出射する。光拡散部材30は、光源20及びPD40を覆うように設けられている。光拡散部材30は、回路基板10の表面上に設けられた保持部60により、回路基板10上に設けられた光源20及びPD40から予め定められた距離を離して設けられている。よって、光源20が出射する光は、光拡散部材30により拡散されて被計測物に照射される。つまり、光源20が出射した光は、光拡散部材30を備えない場合に比べ、光拡散部材30により拡散されてより広い範囲に照射される。そして、PD40は、光拡散部材30の裏面で反射した光を受光する。
【0023】
PD40は、受光した光量(以下では、受光量と表記する。)に応じた電気信号を出力する、シリコンなどで構成されたフォトダイオードである。PD40は、光源20から出射され、光拡散部材30の裏面(後述する図6の-z方向側の面)で反射した光が受光されるように配置されている。光源20は、PD40の受光量に基づいて、予め定められた光量を維持して出射するように制御される。つまり、計測制御部8は、PD40の受光量を監視し、駆動部50を制御して光源20の出射する光量を制御する。
【0024】
ToF法により三次元計測を行う場合、光源20は、駆動部50により、例えば、100MHz以上で、且つ、立ち上り時間が1ns以下のパルス光(以下では、出射光パルスと表記する。)を出射することが求められる。つまり、光源20は、電流が流されることで駆動され、出射光パルスを出射する。なお、顔認証を例とする場合、光が照射される距離は10cm程度から1m程度である。そして、光が照射される範囲は、1m角程度である。なお、光が照射される距離を計測距離と表記し、光が照射される範囲を照射範囲又は計測範囲と表記する。また、照射範囲又は計測範囲に仮想的に設けられる面を照射面と表記する。なお、顔認証以外の場合など、被計測物までの計測距離及び被計測物に対する照射範囲は、上記以外であってもよい。
【0025】
3Dセンサ5は、複数の受光セルを備え、光源20から光が出射されたタイミングから3Dセンサ5で受光されるタイミングまでの時間に相当する信号を出力する。例えば、3Dセンサ5の各受光セルは、光源20からの出射光パルスに対する被計測物からのパルス状の反射光(以下では、受光パルスと表記する。)を受光し、受光するまでの時間に対応する電荷を受光セル毎に蓄積する。3Dセンサ5は、各受光セルが2つのゲートとそれらに対応した電荷蓄積部とを備えたCMOS構造のデバイスとして構成されている。そして、2つのゲートに交互にパルスを加えることによって、発生した光電子を2つの電荷蓄積部の何れかに高速に転送する。2つの電荷蓄積部には、出射光パルスと受光パルスとの位相差に応じた電荷が蓄積される。そして、3Dセンサ5は、ADコンバータを介して、受光セル毎に出射光パルスと受光パルスとの位相差に応じたデジタル値を信号として出力する。すなわち、3Dセンサ5は、光源20から光が出射されたタイミングから3Dセンサ5で受光されるタイミングまでの時間に相当する信号を出力する。つまり、3Dセンサ5から、被計測物の三次元形状に対応した信号が取得される。このため、出射光パルスの立ち上がり時間が短く、受光パルスの立ち上がり時間が短いことが求められる。つまり、光源20を駆動するために供給される電流パルスの立ち上がり時間が短いことが求められる。なお、ADコンバータは、3Dセンサ5が備えてもよく、3Dセンサ5の外部に設けられてもよい。3Dセンサ5は、受光部の一例である。
【0026】
計測制御部8の三次元形状特定部81は、3Dセンサ5が例えば前述のCMOS構造のデバイスである場合、受光セル毎に得られるデジタル値を取得し、受光セル毎に被計測物までの距離を算出する。そして算出された距離により、被計測物の三次元形状を特定し、特定結果を出力する。ここで、三次元形状特定部81は、被計測物までの距離を特定する距離特定部としての機能を有する。
【0027】
システム制御部9が備える認証処理部91は、三次元形状特定部81によって特定された三次元形状から、アクセスすることが許可されているか否かを識別し、アクセスが許可されているユーザを認証する。
図2において、計測装置6は、光学装置3と計測制御部8とを備える。図2では、光学装置3と計測制御部8とを分けて示したが、一体に構成されていてもよい。
以下、順に説明する。
【0028】
(光源20の構成)
図3は、光源20の平面図である。光源20は、平面形状が四角形である。なお、四角形とは、長方形、正方形、平行四辺形などを言う。光源20は、複数のVCSELが二次元のアレイ状に配置されて構成されている。なお、図3では、VCSELは、正方形の頂点(格子点)に配列されているが、他の配列方法で配列されていてもよい。前述したように、光源20は、VCSELを面発光レーザ素子とする面発光レーザ素子アレイとして構成されている。ここで、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向とする。x方向及びy方向に反時計回りで直交する方向をz方向とする。なお、光源20の表面とは、紙面の表側、つまり+z方向側の面を言い、光源20の裏面とは、紙面の裏側、つまり-z方向側の面を言う。光源20の平面図とは、光源20を表面側から見た図である。さらに説明すると、光源20において、発光層(後述する活性領域206)として機能するエピタキシャル層が形成されている方を、光源20の表面、表側、又は表面側と言う。
【0029】
VCSELは、半導体基板200(後述する図4参照)上に積層された下部多層膜反射鏡と上部多層膜反射鏡との間に発光領域となる活性領域を設け、表面に対して垂直方向にレーザ光を出射させる面発光レーザ素子である。このことから、VCSELは、端面出射型のレーザ素子を用いる場合に比較し、二次元のアレイ化が容易である。光源20の備えるVCSELの数は、一例として、100個~1000個である。なお、複数のVCSELは、互いに並列に接続され、並列に駆動される。上記のVCSELの数は一例であり、計測距離や照射範囲に応じて設定されればよい。
【0030】
光源20の表面には、複数のVCSELに共通のアノード電極218が設けられている。光源20の裏面には、カソード電極214が設けられている(後述する図4参照)。つまり、複数のVCSELは、並列接続されている。複数のVCSELを並列接続して駆動することで、VCSELを個別に駆動する場合と比較し、強度の強い光が出射される。
【0031】
ここでは、光源20の+y方向側の側面を側面21A、-y方向側の側面を側面21B、-x方向側の側面を側面22A及び+x方向側の側面を側面22Bと表記する。側面21Aと側面21Bとが対向する。側面22Aと側面22Bとは、それぞれが側面21Aと側面21Bとを繋ぐとともに、対向する。
【0032】
(VCSELの構造)
図4は、光源20における1個のVCSELの断面構造を説明する図である。このVCSELは、λ共振器構造のVCSELである。紙面の上方向がz方向であり、+z方向を上側、-z方向を下側と表記する。
【0033】
VCSELは、n型のGaAsなどの半導体基板200上に、Al組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたn型の下部分布ブラック型反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)202と、上部スペーサ層及び下部スペーサ層に挟まれた量子井戸層を含む活性領域206と、Al組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたp型の上部分布ブラック型反射鏡208とが順に積層されて構成されている。以下では、分布ブラック型反射鏡をDBRと表記する。
【0034】
n型の下部DBR202は、Al0.9Ga0.1As層とGaAs層とをペアとした積層体として構成されている。下部DBR202の各層は、厚さがλ/4n(但し、λは発振波長、nは媒質の屈折率)であり、交互に40周期積層されている。キャリアとして、n型不純物であるシリコン(Si)がドーピングされている。キャリア濃度は、例えば、3×1018cm-3である。
【0035】
活性領域206は、下部スペーサ層と、量子井戸活性層と、上部スペーサ層とが積層されて構成されている。例えば、下部スペーサ層は、アンドープのAl0.6Ga0.4As層であり、量子井戸活性層は、アンドープのInGaAs量子井戸層及びアンドープのGaAs障壁層であり、上部スペーサ層は、アンドープのAl0.6Ga0.4As層である。
【0036】
p型の上部DBR208は、p型のAl0.9Ga0.1As層とGaAs層とをペアとした積層体として構成されている。上部DBR208の各層は、厚さがλ/4nであり、交互に29周期積層してある。キャリアとして、p型不純物であるカーボン(C)がドーピングされている。キャリア濃度は、例えば、3×1018cm-3である。好ましくは、上部DBR208の最上層には、p型GaAsからなるコンタクト層が形成され、上部DBR208の最下層又はその内部に、p型AlAsの電流狭窄層210が形成されている。
【0037】
上部DBR208から下部DBR202に至るまで積層された半導体層をエッチングすることにより、半導体基板200上に円柱状のメサMが形成される。これにより、電流狭窄層210が、メサMの側面に露出する。酸化工程により、電流狭窄層210には、メサMの側面から酸化された酸化領域210Aと酸化領域210Aによって囲まれた導電領域210Bとが形成される。なお、酸化工程において、AlAs層はAlGaAs層よりも酸化速度が速く、酸化領域210Aは、メサMの側面から内部に向けてほぼ一定の速度で酸化されるため、導電領域210Bの断面形状は、メサMの外形を反映した形状、すなわち円形状となり、その中心は、一点鎖線で示すメサMの軸とほぼ一致する。本実施の形態において、メサMは、柱状構造をなしている。
【0038】
メサMの最上層には、Ti/Auなどを積層した金属製の環状のp側電極212が形成される。p側電極212は、上部DBR208に設けられたコンタクト層にオーミック接触する。環状のp側電極212の内側は、レーザ光が外部へ出射される光出射口212Aとなる。つまり、VCSELは、半導体基板200の表面(+z方向側の面)に垂直な+z方向に光を出射する。そして、メサMの軸が光軸になる。さらに、半導体基板200の裏面には、n側電極としてカソード電極214が形成される。なお、p側電極212の内側の上部DBR208の表面(+z方向側の面)が光出射面である。
【0039】
そして、p側電極212にアノード電極218が接続される部分及び光出射口212Aを除いて、メサMの表面を覆うように、絶縁膜216が設けられる。そして、光出射口212Aを除いて、アノード電極218がp側電極212とオーミック接触するように設けられる。なお、アノード電極218は、複数のVCSELに共通に設けられる。つまり、光源20を構成する複数のVCSELは、各々のp側電極212がアノード電極218により並列接続されている。
【0040】
図4では、アノード電極218の部分にアノードであることを示す[A]と表記し、カソード電極214の部分にカソードであることを示す[K]と表記する。
【0041】
VCSELは、単一横モードで発振してもよく、多重横モードで発振してもよい。例えば、VCSEL1個の光出力は、4mW~8mWである。よって、光源20が500個のVCSELで構成されている場合、光源20の光出力は、2W~4Wになる。
【0042】
(光拡散部材30の構成)
図5は、光拡散部材30の一例を説明する図である。図5(a)は、平面図、図5(b)は、図5(a)のVB-VB線での断面図である。図5(a)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向、紙面の表方向をz方向とする。そして、光拡散部材30において、+z方向側を表面又は表面側、-z方向側を裏面又は裏面側と呼ぶ。よって、図5(b)では、紙面の右方向がx方向、紙面の裏方向がy方向、紙面の上方向がz方向となる。
【0043】
図5(b)に示すように、光拡散部材30は、例えば、両面が平行で平坦なガラス基材31の裏面(-z方向)側に光を拡散させるための凹凸が形成された樹脂層32を備える。光拡散部材30は、光源20のVCSELから入射する光の拡がり角を拡げて出射する。つまり、光拡散部材30の樹脂層32に形成された凹凸は、光を屈折させたり、散乱させたりして、入射する光をより広い拡がり角の光として出射する。つまり、図5に示すように、光拡散部材30は、裏面(-z方向側)から入射する、VCSELから出射された拡がり角θの光を、拡がり角θより大きい拡がり角φの光として表面(+z方向側)から出射する(θ<φ)。このため、光拡散部材30を用いると、光拡散部材30を用いない場合に比べ、光源20の出射する光によって照射される照射面の面積が拡大される。拡がり角θ、φは、半値全幅(FWHM)である。
【0044】
ここでは、光拡散部材30の平面形状は、矩形である。そして、光拡散部材30の厚さ(z方向の厚み)tは、0.1mm~1mmである。なお、光拡散部材30の平面形状は、多角形や円形など、他の形状であってもよい。
【0045】
(駆動部50及びキャパシタ71、72)
光源20をより高速に駆動させたい場合は、ローサイド駆動するのがよい。ローサイド駆動とは、VCSELなどの駆動対象に対して、電流を流す経路(以下では、電流経路と表記する。)の下流側にMOSトランジスタ等の駆動素子を位置させた構成を言う。逆に、上流側に駆動素子を位置させた構成をハイサイド駆動と言う。
【0046】
図6は、ローサイド駆動により光源20を駆動する場合の等価回路の一例を示す図である。図6では、光源20のVCSEL、駆動部50、キャパシタ71、72及び電源82を示す。図6には、図2に示した計測制御部8を合わせて示している。なお、電源82は、計測制御部8に設けられている。電源82は、+側を電源電位とし、-側を基準電位とする直流電圧を発生する。電源電位は、電源線83に供給され、基準電位は、基準線84に供給される。なお、基準電位は、接地電位(GNDと表記されることがある。図6では[G]と表記する。)であってよい。
【0047】
光源20は、前述したように複数のVCSELが並列接続されて構成されている。VCSELのアノード電極218(図4参照。図6では[A]と表記する。)が電源線83に接続される。
駆動部50は、nチャネル型のMOSトランジスタ51と、MOSトランジスタ51をオン/オフする信号発生回路52とを備える。MOSトランジスタ51のドレイン(図6では[D]と表記する。)は、VCSELのカソード電極214(図4参照。図6では[K]と表記する。)に接続される。MOSトランジスタ51のソース(図6では[S]と表記する。)は、基準線84に接続される。そして、MOSトランジスタ51のゲートは、信号発生回路52に接続される。つまり、VCSELと駆動部50のMOSトランジスタ51とは、電源線83と基準線84との間に直列接続されている。信号発生回路52は、計測制御部8の制御により、MOSトランジスタ51をオン状態にする「Hレベル」の信号と、MOSトランジスタ51をオフ状態にする「Lレベル」の信号とを発生する。
【0048】
キャパシタ71、72は、それぞれの一方の端子が電源線83(図6のVCSELの[A])に接続され、他方の端子が基準線84(図6の[G])に接続されている。
【0049】
PD40は、カソードが電源線83に接続され、アノードが検出用抵抗素子41の一方の端子と接続されている。そして、検出用抵抗素子41の他方の端子が基準線84に接続されている。つまり、PD40と検出用抵抗素子41とは、電源線83と基準線84との間に直列接続されている。そして、PD40と検出用抵抗素子41と接続点である出力端子42は、計測制御部8に接続されている。出力端子42は、PD40が受光した光量に応じた電気信号を計測制御部8に送信する。
【0050】
次に、ローサイド駆動による光源20の駆動方法を説明する。
まず、駆動部50における信号発生回路52の発生する信号が「Lレベル」であるとする。この場合、MOSトランジスタ51は、オフ状態である。つまり、MOSトランジスタ51のソース(図6の[S])-ドレイン(図6の[D])間には電流が流れない。よって、MOSトランジスタ51と直列接続されたVCSELにも、電流が流れない。つまり、VCSELは非発光である。
【0051】
このとき、キャパシタ71、72は電源82に接続されていて、キャパシタ71、72の電源線83に接続された一方の端子(図6のVCSELの[A]側の端子)が電源電位になり、基準線84に接続された他方の端子(図6の[G]側の端子)が基準電位になる。よって、キャパシタ71,72は、電源82から電流が流れ(電荷が供給され)て充電される。
【0052】
次に、駆動部50における信号発生回路52の発生する信号が「Hレベル」になると、MOSトランジスタ51がオフ状態からオン状態に移行する。すると、キャパシタ71、72と、直列接続されたMOSトランジスタ51及びVCSELとの間に閉ループが構成され、キャパシタ71、72に蓄積されていた電荷が、直列接続されたMOSトランジスタ51とVCSELとに供給される。つまり、VCSELに電流が流れて、VCSELが発光する。この閉ループが、光源20を発光させるための電流が流れる経路(電流経路と表記することがある。)である。なお、キャパシタ71、72毎に発光させるための電流が流れるので、電流経路は、キャパシタ71、72毎に構成される。なお、光源20を発光させる電流を流すことを光源20を駆動すると表記することがある。
【0053】
そして、駆動部50における信号発生回路52の発生する信号が再び「Lレベル」になると、MOSトランジスタ51がオン状態からオフ状態に移行する。これにより、キャパシタ71、72と、直列接続されたMOSトランジスタ51及びVCSELとの閉ループ(電流経路)が開ループになり、VCSELに電流が流れなくなる。これにより、VCSELは、発光を停止する。すると、キャパシタ71、72は、電源82から電流が流れ(電荷が供給され)て充電される。
【0054】
以上説明したように、信号発生回路52の出力する信号が「Hレベル」と「Lレベル」との間で移行する毎に、MOSトランジスタ51がオン/オフを繰り返し、VCSELが発光と非発光とを繰り返す。MOSトランジスタ51のオン/オフの繰り返しは、スイッチングと呼ばれることがある。
【0055】
上述したように、MOSトランジスタ51をオフ状態からオン状態に移行させた際に、キャパシタ71、72に蓄積した電荷を一気に放電させてVCSELに発光のための電流を供給することで、VCSELを短い立ち上がり時間で発光させている。前述したように、キャパシタ71は、低ESLキャパシタであり、キャパシタ72は、非低ESLキャパシタである。
【0056】
低ESLキャパシタは、平面形状が大きい(回路基板10における搭載面積が大きい)にもかかわらず容量が小さいものが多い。一方、非低ESLキャパシタは、高誘電率のセラミックシートを用い、平面形状が小さく(回路基板10における搭載面積が小さく)ても容量が大きいものが多い。そこで、容量の小さい低ESLキャパシタであるキャパシタ71と、容量が大きい非低ESLキャパシタであるキャパシタ72とを併用している。つまり、容量が小さい低ESLキャパシタであるキャパシタ71により、光源20の発光の立ち上がり時の電流を供給する。そして、容量が大きい非低ESLキャパシタであるキャパシタ72により、発光の立ち上がり後の光量を確保する電流を供給する。このようにして、発光の立ち上がり時間を短くするとともに、光量を確保するようにしている。なお、低ESLキャパシタは、一般に、縦方向(電極間)の長さ(L)に比べ横方向の幅(W)が大きいため、LW逆転型と呼ばれることがある。一方、非低ESLキャパシタは、一般に、縦方向(電極間)の長さ(L)に比べ横方向の幅(W)が小さい。
【0057】
(発光装置4)
次に、発光装置4について、詳細に説明する。
図7は、本実施の形態が適用される発光装置4を説明する図である。図7(a)は、平面図、図7(b)は、図7(a)のVIIB-VIIB線での断面図である。なお、図7(a)は、光拡散部材30を透視して見た上面図である。ここで、図7(a)において、紙面の右方向をx方向、紙面の上方向をy方向、紙面の表方向をz方向とする。図7(b)において、紙面の右方向がx方向、紙面の裏方向がy方向、紙面の上方向がz方向になる。
【0058】
図7(a)、(b)に示すように、回路基板10の表面上に光源20、PD40、駆動部50、キャパシタ71、72(キャパシタ71A、71B、72A、72B)及び保持部60が設けられている。そして、保持部60上に光拡散部材30が設けられている。
【0059】
回路基板10は、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性の基材(絶縁層と表記することがある。)に銅(Cu)箔などの金属による配線を形成する配線層が設けられて構成されている。なお、配線とは、電気回路接続される導体パターンであって、形状は限定されないものを言う。ここでは、回路基板10は、2層の配線層を有するプリント配線基板であるとして説明する。ガラスエポキシ樹脂等の基材には、一例としてガラスコンポジット基板(CEM-3)やガラスエポキシ基板(FR-4)がある。
【0060】
回路基板10の表面側には、カソード配線11、アノード配線12A,12B、基準電位配線13FA、13FBが設けられている。カソード配線11は、平面形状が四角形で、回路基板10の中央部に設けられている。アノード配線12A、12Bは、カソード配線11をx方向において挟むように設けられている。そして、基準電位配線13FA、13FBとは、カソード配線11をx方向において挟むように、アノード配線12A、12Bの外側に設けられている。なお、アノード配線12A、12Bをそれぞれ区別しない場合は、アノード配線12と表記する。同様に、基準電位配線13FA、13FBをそれぞれ区別しない場合は、基準電位配線13Fと表記する。回路基板10の裏面側には、基準電位配線13Bが設けられている。基準電位配線13B(図7(a)では破線で示す。)は、回路基板10の裏面に全面に設けられている。つまり、基準電位配線13Bは基準電位配線層として層状に設けられている。なお、基準電位配線13Fと基準電位配線13Bとは、回路基板10の基材を貫通して設けられた貫通導体13Vにより、接続されている。なお、貫通導体とは、回路基板10を構成する電気絶縁性の基材を貫通して設けられた穴を銅(Cu)などによって埋められた導体である。そして、貫通導体は、回路基板10の基材の表面側に設けられた配線と、裏面側に設けられた配線とを電気的に接続する部材である。なお、貫通導体は、ビアと呼ばれることがある。
【0061】
なお、回路基板10の裏面に基準電位配線13Bが設けられているとしたが、回路基板10内に回路基板10の広い面積を占めるように基準電位配線層として層状に設けられていてもよい。
【0062】
そして、回路基板10の表面上に設けられたカソード配線11は、ハンダや銀ペーストなどの導電性部材により、一端部が駆動部50に接続され、他端部上に光源20が搭載され、光源20のカソード電極214(図4参照)と接続されている。
【0063】
アノード配線12A、12Bは、ボンディングワイヤ23A、23Bにより光源20のアノード電極218(図4参照)と接続されている。ボンディングワイヤ23A、23Bをそれぞれ区別しない場合は、ボンディングワイヤ23と表記する。そして、アノード配線12Aと基準電位配線13FAとの間には、キャパシタ71A、72Aが設けられ、そして、アノード配線12Bと基準電位配線13FBとの間には、キャパシタ71B、72Bが設けられている。
【0064】
図7(a)に示すように、キャパシタ71A、72Aとキャパシタ71B、72Bとは、光源20をx方向において挟むように設けられている。つまり、キャパシタ71A、72Aとキャパシタ71B、72Bとは、光源20のx方向の中心線C-Cに対して対称に配置されている。具体的には、キャパシタ71A、72Aは、光源20の側面22A側に設けられ、キャパシタ71B、72Bは、光源20の側面22B側に設けられている。そして、駆動部50は、光源20の-y方向に、光源20のx方向の中心線C-C上に設けられている。具体的には、駆動部50は、光源20の側面21B側に設けられている。そして、PD40は、光源20のy方向側に設けられている。つまり、PD40と駆動部50とは、y方向に光源20を挟むように設けられている。
【0065】
以上説明したように、光源20と、キャパシタ71A、71B、72A、72Bと、駆動部50とは、T字状に配置されている。以下では、PD40についての記載を省略する。
【0066】
図8は、発光装置4における電流経路を模式的に説明する図である。ここで、実線の矢印は、回路基板10の表面側を流れる電流の経路(電流経路)を示し、破線の矢印は、回路基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bを流れる電流の経路(電流経路)を示す。なお、基準電位配線13Bを流れる電流をリターン電流と表記することがある。これらの電流経路は、シミュレーションにより求めた。また、図8では、ボンディングワイヤ23を細線で示す。そして、光拡散部材30の記載を省略する。
【0067】
図8に示すように、キャパシタ71A、72Aからアノード配線12A及びボンディングワイヤ23Aを介して、光源20のアノード電極218に電流が流れる。同様に、キャパシタ71B、72Bからアノード配線12B及びボンディングワイヤ23Bを介して、光源20のアノード電極218に電流が流れる。そして、光源20からカソード配線11を経由して駆動部50に電流が流れる。そして、電流は、駆動部50から回路基板10の裏面側の基準電位配線13Bを表面側のカソード配線11に沿って、光源20側に戻る(リターンする)。そして、表面側のアノード配線12Aに沿って、キャパシタ71A、72Aに戻る(リターンする)。同時に、電流は、表面側のアノード配線12Bに沿って、キャパシタ71B、72Bに戻る(リターンする)。
【0068】
このように、本実施の形態が適用される発光装置4では、回路基板10の裏面側の全面に基準電位配線13Bが設けられていても、電流は基準電位配線13Bの広い範囲に広がって流れるのではなく、光源20、キャパシタ71、72及び駆動部50の配置によって決まる電流経路で流れる。そして、発光装置4では、回路基板10の裏面側の基準電位配線13Bにおける電流経路は、回路基板10の表面において、キャパシタ71、72からアノード配線12A、12Bを介して光源20へ至る電流経路、及び光源20からカソード配線11を介して駆動部50に至る電流経路に対向する部分に形成される。また、光源20には、アノード電極218からカソード電極214に全体に広がって流れる。つまり、電流は、最小インピーダンスで流れるために、電流経路の実効インダクタンスが低減される。そして、光源20における発光のばらつきが抑制される。
【0069】
次に、本実施の形態が適用される発光装置4の変形例である発光装置4′を説明する。
図9は、本実施の形態が適用される発光装置4の変形例である発光装置4′を説明する図である。図9(a)は、平面図、図9(b)は、図9(a)のIXB-IXB線での断面図である。なお、図9(a)は、光拡散部材30を透視して見た上面図である。発光装置4′は、発光装置4において、放熱基材100をさらに備えている。他の構成は、発光装置4と同様であるので、同様な部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分である放熱基材100を説明する。
【0070】
放熱基材100は、回路基板10より熱伝導率が大きい、絶縁性の基材である。光源20は、光強度が大きくなると、発熱量も大きくなる。そこで、光源20の発する熱を効率よく放熱させるために、光源20を放熱基材100上に搭載することがよい。
【0071】
回路基板10に用いられるガラスエポキシ樹脂の基材の一例であるFR-4は、厚さが100μm程度であって、熱伝導率が0.4W/m・K程度である。なお、銅(Cu)の熱伝導率は、360W/m・K程度である。ここで示す熱伝導率は、特に記載のない場合、25℃での値である。
【0072】
放熱基材100は、例えば、熱伝導率が10W/m・K以上のものが好ましく、50W/m・K以上のものがより好ましい。そして、熱伝導率が100W/m・K以上のものがさらに好ましい。熱伝導率が10W/m・K以上のものとしては、熱伝導率が20~30W/m・Kであるアルミナ(Al)が挙げられる。また、熱伝導率が50W/m・K以上のものとしては、熱伝導率が85W/m・K程度の窒化シリコン(Si)が挙げられる。さらに、熱伝導率が100W/m・K以上のものとしては、熱伝導率が150~250W/m・Kの窒化アルミニウム(AlN)が挙げられる。これらを、セラミック材料と表記することがある。つまり、放熱基材100は、全体がセラミック材料で構成されているとよい。なお、放熱基材100は、不純物がドープされていないシリコン(Si)など他の熱伝導率が大きい絶縁性の材料であればよい。ここでは、放熱基材100は、窒化アルミニウム(AlN)であるとする。
【0073】
図9(a)、(b)に示すように、放熱基材100の表面側には、カソード配線111Fとアノード配線112FA、112FBとが設けられ、裏面側には、カソード配線111Bとアノード配線112BA、112BBとが設けられている。なお、アノード配線112FA、112FBをそれぞれ区別しない場合は、アノード配線112Fと表記し、アノード配線112BA、112BBをそれぞれ区別しない場合は、アノード配線112Bと表記する。そして、カソード配線111Fとカソード配線111Bとは、放熱基材100を貫通して設けられた貫通導体111Vを介して接続されている。同様に、アノード配線112Fとアノード配線112Bとは、貫通導体112Vを介して接続されている。ここで、カソード配線111Fは、表面側カソード配線の一例であり、カソード配線111Bは、裏面側カソード配線の一例である。アノード配線112FA、112FBは、1対の表面側アノード配線の一例であり、アノード配線112BA、112BBは、1対の裏面側アノード配線の一例である。
【0074】
そして、放熱基材100の表面側に設けられたカソード配線111Fは、光源20が導電性部材により搭載され、光源20のカソード電極214(図4参照)と接続されている。放熱基材100の表面上に設けられたアノード配線112FA、112FBは、ボンディングワイヤ23A、23Bにより光源20のアノード電極218(図4参照)と接続されている。
【0075】
さらに、放熱基材100の裏面側に設けられたカソード配線111Bは、回路基板10の表面側のカソード配線11と導電性部材により接続されている。同様に、放熱基材100の裏面側に設けられたアノード配線112BA、112BBは、回路基板10の表面側に設けられたアノード配線12A、12Bと導電性部材により接続されている。
【0076】
図10は、変形例である発光装置4′における放熱基材100の表面側に設けられた配線と、裏面側に設けられた配線とを説明する図である。図10(a)は、表面側の配線、図10(b)は、裏面側の配線を示す。なお、図10(b)に示す裏面側の配線は、放熱基材100を透視して見た上面図である。よって、図10(a)、(b)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がy方向、紙面の表方向がz方向である。
【0077】
図10(a)に示すように、放熱基材100の表面側には、カソード配線111Fとアノード配線112FA、112FBとが設けられている。図10(b)に示すように、放熱基材100の裏面側には、カソード配線111Bとアノード配線112BA、112BBとが設けられている。そして、カソード配線111Fとカソード配線111Bとは、貫通導体111Vにより接続されている。アノード配線112F(アノード配線112FA、112FB)とアノード配線112B(アノード配線112BA、112BB)とは、貫通導体112Vで接続されている。なお、裏面側に設けられたカソード配線111B、アノード配線112BA、112BBは、表面側に設けられたカソード配線111F、アノード配線112FA、112FBより、平面形状(面積)が大きく設けられている。このようにすることで、回路基板10への搭載を容易にしている。
【0078】
そして、図10(a)に示すように、アノード配線112FA、112FBは、カソード配線111Fのx方向における中心線C-Cに対して、対称に設けられている。つまり、アノード配線112FA、112FBは、カソード配線111Fを挟んで設けられている。裏面側に設けられているカソード配線111Bとアノード配線112BA、112BBとの関係も表面側と同様である。
【0079】
そして、発光装置4′における発光のための電流の経路は、前述した発光装置4と同様である。この場合の電流経路の実効インダクタンスは、0.4nHであり、発光のための電流の立ち上がり時間は、330psであった。
【0080】
(比較例1、2の発光装置4A、4B)
次に、本実施の形態が適用されない、比較例として示す発光装置4A、4Bを説明する。
図11は、本実施の形態が適用されない、比較例1の発光装置4Aを説明する図である。図11(a)は、平面図、図11(b)は、図11(a)のXIB-XIB線での断面図である。なお、図11(a)は、光拡散部材30を透視して見た上面図である。発光装置4Aは、発光装置4′と同様に、放熱基材100を備えている。他の構成は、発光装置4′と同様であるので、同様な部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0081】
発光装置4Aは、光源20の一方の側面22B側のみにキャパシタ71、72を備えている。このため、回路基板10には、光源20の側面22B側にのみアノード配線12と基準電位配線13Fとが設けられている。なお、PD40は、光源20の側面22A側に設けられている。PD40についての説明は省略する。
【0082】
同様に、放熱基材100は、表面側において光源20の側面22B側にのみアノード配線112Fが設けられ、裏面側において光源20の側面22B側にのみアノード配線112Bが設けられている。そして、放熱基材100の表面側において、光源20のアノード電極218(図4参照)とアノード配線112Fとが、ボンディングワイヤ23で接続されている。
【0083】
図12は、比較例1である発光装置4Aにおける放熱基材100の表面側に設けられた配線と、裏面側に設けられた配線とを説明する図である。図12(a)は、表面側の配線、図12(b)は、裏面側の配線を示す。なお、図12(b)に示す裏面側の配線は、放熱基材100を透視して見た上面図である。よって、図12(a)、(b)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がy方向、紙面の表方向がz方向である。
【0084】
図12(a)に示すように、放熱基材100の表面側には、カソード配線111Fとアノード配線112Fとが設けられている。図12(b)に示すように、放熱基材100の裏面側には、カソード配線111Bとアノード配線112Bとが設けられている。そして、カソード配線111Fとカソード配線111Bとは、貫通導体111Vにより接続されている。アノード配線112Fとアノード配線112Bとは、貫通導体112Vで接続されている。なお、裏面側に設けられたカソード配線111B、アノード配線112Bは、表面側に設けられたカソード配線111F、アノード配線112Fより、平面形状(面積)が大きく設けられている。このようにすることで、回路基板10への搭載を容易にしている。
【0085】
図13は、比較例1の発光装置4Aにおける電流経路を模式的に説明する図である。ここでも、実線の矢印は、回路基板10の表面側を流れる電流の経路(電流経路)を示し、破線の矢印は、回路基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bを流れる電流の経路(電流経路)を示す。また、図13では、ボンディングワイヤ23を細線で示す。そして、光拡散部材30の記載を省略する。
【0086】
図13に示すように、キャパシタ71、72からアノード配線12及びボンディングワイヤ23を介して、光源20のアノード電極218に電流が流れる。そして、光源20からカソード配線11を経由して駆動部50に電流が流れる。そして、電流は、駆動部50から回路基板10の裏面側の基準電位配線13Bを表面側のカソード配線11に沿って、光源20側に戻る(リターンする)。そして、電流は、表面側のアノード配線12に沿って、キャパシタ71、72に戻る(リターンする)。
【0087】
このとき、回路基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bにおいて、駆動部50から光源20へ戻る電流(破線で示すリターン電流)は、カソード配線11の裏面に沿って流れるばかりでなく、キャパシタ71、72側に偏って流れる(αで示す部分)。また、光源20の表面のアノード電極218()を流れる電流も駆動部50側に偏って流れる(βで示す部分)ために、光源20の発光は、表面において不均一になりやすい。これは、光源20、駆動部50、キャパシタ71、72の配置の影響を受けるためである。このため、発光装置4Aの電流経路は、本実施の形態が適用される発光装置4に比較し、長くなり、実効インダクタンスが大きくなってしまう。この発光装置4Aの電流経路の実効インダクタンスは、0.5nHとなり、発光装置4の0.4nHより大きい。
【0088】
なお、発光装置4Aは、放熱基材100を備えるとしたが、放熱基材100を備えないように構成されうる。放熱基材100を備えない場合であっても、電流経路は同様である。
【0089】
図14は、本実施の形態が適用されない、比較例2の発光装置4Bを説明する図である。図14(a)は、平面図、図14(b)は、図14(a)のXIVB-XIVB線での断面図である。なお、図14(a)は、光拡散部材30を透視して見た上面図である。発光装置4Bは、発光装置4′と同様に、放熱基材100を備えている。図14(b)に示す断面図は、図11(b)の発光装置4Aの断面図と同じである。他の構成は、発光装置4′と同様であるので、同様な部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0090】
発光装置4Bは、発光装置4Aと同様に、光源20の一方の側面22B側にのみキャパシタ71、72を備えている。このため、回路基板10には、光源20の側面22B側にのみアノード配線12と基準電位配線13Fとが設けられている。なお、PD40は、光源20の側面22A側に設けられている。PD40についての説明は省略する。
【0091】
放熱基材100は、表面側において光源20の側面21A、22B、21B側を囲むようにアノード配線112Fが設けられ、裏面側においても光源20の側面21A、22B、21B側を囲むようにアノード配線112Bが設けられている(後述する図15参照)。そして、放熱基材100の表面側において、光源20のアノード電極218(図4参照)とアノード配線112Fとが、光源20の側面21A、21B側の2辺において、ボンディングワイヤ23C、23Dで接続されている。
【0092】
発光装置4Bは、発光装置4Aにおいて、アノード配線112Fを光源20の側面21A、22B、21B側を囲むように設けることで、光源20に電流を供給しやすくしようとした構成である。
【0093】
図15は、比較例2である発光装置4Bにおける放熱基材100の表面側に設けられた配線と、裏面側に設けられた配線とを説明する図である。図15(a)は、表面側の配線、図12(b)は、裏面側の配線を示す。図15(b)に示す裏面側の配線は、放熱基材100を透視して見た上面図である。よって、図15(a)、(b)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がy方向、紙面の表方向がz方向である。なお、図15(b)の裏面側の配線は、図12(b)に示した発光装置4Aにおける放熱基材100の裏面側に設けられた配線と同じである。
【0094】
図15(a)に示すように、放熱基材100の表面側には、カソード配線111Fとアノード配線112Fとが設けられている。図15(b)に示すように、放熱基材100の裏面側には、カソード配線111Bとアノード配線112Bとが設けられている。そして、カソード配線111Fとカソード配線111Bとは、貫通導体111Vにより接続されている。アノード配線112Fとアノード配線112Bとは、貫通導体112Vで接続されている。なお、裏面側に設けられたカソード配線111B、アノード配線112Bは、表面側に設けられたカソード配線111F、アノード配線112Fより、平面形状(面積)が大きく設けられている。このようにすることで、回路基板10への搭載を容易にしている。
【0095】
図16は、比較例2の発光装置4Bにおける電流経路を模式的に説明する図である。ここでも、実線の矢印は、回路基板10の表面側を流れる電流の経路(電流経路)を示し、破線の矢印は、回路基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bを流れる電流の経路(電流経路)を示す。また、図16では、ボンディングワイヤ23C、23Dを細線で示す。そして、光拡散部材30の記載を省略する。
【0096】
図16に示すように、キャパシタ71、72からアノード配線12及びボンディングワイヤ23C、23Dを介して、光源20のアノード電極218に電流が流れる。光源20からカソード配線11を経由して駆動部50に電流が流れる。そして、電流は、駆動部50から回路基板10の裏面側の基準電位配線13Bを表面側のカソード配線11に沿って、光源20側に戻る(リターンする)。そして、電流は、表面側のアノード配線12に沿って、キャパシタ71、72に戻る(リターンする)。
【0097】
このとき、回路基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bにおいて、駆動部50から光源20側へ戻る電流(破線で示すリターン電流)は、カソード配線11の裏面に沿って流れるばかりでなく、キャパシタ71、72側に偏って流れる(αで示す部分)。なお、アノード配線112Fを光源20の3側面(側面21A、22B、21B)側を囲むように設けたため、光源20の表面のアノード電極218には、側面21A側から側面21B側に電流が流れるようになる。このため、光源20の発光は、表面において不均一になりにくい。しかし、アノード配線112Fにより、光源20の側面21A側に電流を流すために、発光装置4Bでは、発光装置4Aに比較し、電流経路が長くなり、かえって実効インダクタンスが大きくなってしまう。この発光装置4Bの電流経路の実効インダクタンスは、0.6nHとなり、発光装置4′の0.4nHや発光装置4Aより大きい。そして、発光装置4Bにおける発光の立ち上がり時間は、660psとなり、発光装置4′の330psより長い。
【0098】
なお、発光装置4Bでは、放熱基材100上のアノード配線112Fと回路基板10上のカソード配線11とが交差するため、放熱基材100を用いることを要する。
【0099】
以上説明したように、本実施の形態が適用される発光装置4、4′では、光源20の対向する2辺(図7、9における側面22A、22B)側にキャパシタ71、72を設け、光源20の他の1辺(図7、9における側面21B)側に駆動部50を設けることで、回路基板10の裏面側に設けられた基準電位配線13Bを戻る電流(リターン電流)が最小インピーダンスで流れるようにしている。これにより、電流経路の実効インダクタンスが小さくなり、発光の立ち上がり時間が短くなっている。つまり、本実施の形態が適用される発光装置4(発光装置4′)では、比較例2として示した一般的な放熱基材100を用いた発光装置4Bに比べて、実効インダクタンスが0.6nHから0.4nHに低減され、発光のための電流の立ち上がり時間が660psから330psに改善された。
【0100】
また、本実施の形態が適用される発光装置4、4′では、拡散により入射する光の拡がり角を広げるように変化させて出射する光拡散部材30を用いた。光拡散部材30の代わりに、入射する光の方向と異なる方向に変化させて出射する回折光学素子(DOE:Diffractive Optical Element)のような回折部材であってもよい。
【0101】
(付記)
(((1)))
平面形状が四角形のレーザ素子アレイと、
前記レーザ素子アレイを発光させる電流を供給する1対のキャパシタと、
前記レーザ素子アレイを発光させる電流をオン/オフして駆動する駆動部と、を備え、
前記レーザ素子アレイの対向する2辺側に、当該レーザ素子アレイを挟んで1対の前記キャパシタが配置され、当該レーザ素子アレイの他の1辺側に、前記駆動部が配置されている発光装置。
(((2)))
前記駆動部は、前記レーザ素子アレイを発光させる電流をオン/オフする駆動素子を備え、
前記レーザ素子アレイと前記駆動素子とは、当該レーザ素子アレイにおける電流経路の下流側に設けられたローサイド駆動により駆動されるように接続されていることを特徴とする(((1)))に記載の発光装置。
(((3)))
前記レーザ素子アレイと前記駆動部とが搭載される回路基板を備え、
前記回路基板の表面に前記レーザ素子アレイと前記駆動部とが配置され、
前記回路基板に基準電位配線が層状に設けられていることを特徴とする(((1)))又は(((2)))に記載の発光装置。
(((4)))
前記回路基板より熱伝導率が大きい放熱基材を備え、
前記レーザ素子アレイが前記放熱基材に設けられ、当該放熱基材が前記回路基板に搭載されていることを特徴とする(((3)))に記載の発光装置。
(((5)))
前記レーザ素子アレイは、並列接続された複数の面発光レーザ素子を備え、裏面側にカソード電極が、表面側にアノード電極が設けられていることを特徴とする(((4)))に記載の発光装置。
(((6)))
前記放熱基材は、
表面側に、前記レーザ素子アレイのカソード電極と接続される表面側カソード配線が設けられ、当該表面側カソード配線を挟むように当該レーザ素子アレイのアノード電極と接続される1対の表面側アノード配線が設けられ、
裏面側に、前記表面側カソード配線と1対の前記表面側アノード配線とそれぞれ対応するように設けられ、それぞれと電気的に接続された裏面側カソード配線と1対の裏面側アノード配線と、を備えることを特徴とする(((5)))に記載の発光装置。
(((7)))
前記レーザ素子アレイから出射された光を拡散させて出射する拡散部材を備えることを特徴とする(((1)))乃至(((6)))のいずれかに記載の発光装置。
(((8)))
前記レーザ素子アレイから出射された光を回折させて出射する回折部材を備えることを特徴とする(((1)))乃至(((6)))のいずれかに記載の発光装置。
(((9)))
前記レーザ素子アレイの光量を監視する光量監視用受光素子を備えることを特徴とする(((1)))乃至(((8)))のいずれかに記載の発光装置。
(((10)))
(((1)))乃至(((8)))のいずれかに記載の発光装置と、
前記発光装置が備えるレーザ素子アレイから出射され、被計測物で反射された反射光を受光する受光部と、
を備える光学装置。
(((11)))
(((10)))に記載の光学装置と、
前記光学装置が備えるレーザ素子アレイから出射されてから受光部で受光されるまでの時間に基づいて、被計測物までの距離を特定する距離特定部と、
を備える計測装置。
(((12)))
(((11)))に記載の計測装置と、
前記計測装置が備える距離特定部での特定結果に基づき、自装置の使用に関する認証処理を行う認証処理部と、
を備える情報処理装置。
【0102】
(((1)))に係る発光装置によれば、光源の2辺側に光源を挟んで1対のキャパシタが配置され、光源の他の1辺側に、駆動部が配置されていない場合に比較し、発光のための電流が流れる経路の実効インダクタンスが低減される。
(((2)))に係る発光装置によれば、ローサイド駆動を用いない場合に比較し、レーザ素子アレイをより高速に駆動させられる。
(((3)))に係る発光装置によれば、基準電位配線が層状に設けられていない場合に比較し、戻りの電流経路がより短く構成される。
(((4)))に係る発光装置によれば、放熱基材を備えない場合に比べ、レーザ素子アレイの発生する熱が放熱されやすい。
(((5)))に係る発光装置によれば、並列に接続されていない場合に比較し、レーザ素子アレイからの発光強度を大きくできる。
(((6)))に係る発光装置によれば、表面側カソード配線を挟むように1対の表面側アノード配線を設けない場合に比較し、発光のための電流が流れる経路の実効インダクタンスが低減される。
(((7)))に係る発光装置によれば、拡散部材を備えない場合と比較し、広い照射領域が得られる。
(((8)))に係る発光装置によれば、回折部材を備えない場合と比較し、広い照射領域が得られる。
(((9)))に係る発光装置によれば、光量監視用受光素子を備えない場合に比較し、レーザ素子アレイの光量の変動が抑制される。
(((10)))に係る光学装置によれば、距離に対応した信号が取得できる光学装置が提供される。
(((11)))に係る計測装置によれば、被計測物までの距離の計測が行える計測装置が提供される。
(((12)))に係る情報処理装置によれば、特定された距離に基づく認証処理を搭載した情報処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0103】
1…情報処理装置、2…ユーザインターフェイス部(UI部)、4、4′、4A、4B…発光装置、5…3Dセンサ、6…計測装置、8…計測制御部、9…システム制御部、10…回路基板、11、111B、111F…カソード配線、12、12A、12B、112BA、112BB、112F、112FA、112FB…アノード配線、13B、13F、13FA、13FB…基準電位配線、20…光源、30…光拡散部材、40…光量監視用受光素子(PD)、41…検出用抵抗素子、50…駆動部、51…MOSトランジスタ、52…信号発生回路、60…保持部、71、71A、71B、72、72A,72B…キャパシタ、81…三次元形状特定部、82…電源、83…電源線、84…基準線、91…認証処理部、100…放熱基材、200…半導体基板、202…下部DBR、206…活性領域、208…上部DBR、210…電流狭窄層、210A…酸化領域、210B…導電領域、214…カソード電極、218…アノード電極、M…メサ、VCSEL…垂直共振器面発光レーザ素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16