(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】プリントヘッド駆動回路、印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B41J2/14 611
(21)【出願番号】P 2020054538
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】折井 宏充
(72)【発明者】
【氏名】松山 徹
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0016128(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0016616(KR,A)
【文献】特開2017-100314(JP,A)
【文献】特開2018-99853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号が供給されることで駆動する圧電素子を含み、前記圧電素子の駆動に伴い媒体に液体を吐出する吐出部と、
前記圧電素子に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える切替スイッチと、
を含む吐出モジュールを1500個以上有するプリントヘッドを、前記圧電素子を駆動するか否かを選択するための第1情報ブロックと第2情報ブロックとを含む選択信号と、前記切替スイッチの切り替えタイミングを制御するために論理レベルを変化する切替タイミング信号とにより駆動するプリントヘッド駆動回路であって、
前記プリントヘッド駆動回路は、
第1期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第1情報ブロックを出力し、
前記第1期間よりも後の第2期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させ、前記選択信号の論理レベルを変化させず、
前記第2期間よりも後の第3期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第2情報ブロックを出力し、
前記選択信号の伝搬タイミングを規定するクロック信号
を出力し、
前記第2期間において前記クロック信号の出力を停止する、
ことを特徴とするプリントヘッド駆動回路。
【請求項2】
前記選択信号は、第3情報ブロックを含み、
前記第2期間と前記第3期間との間の第4期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第3情報ブロックを出力し、
前記第4期間と前記第3期間との間の第5期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させ、前記選択信号の論理レベルを変化させない、
ことを特徴とする請求項1に記載のプリントヘッド駆動回路。
【請求項3】
前記選択信号及び前記切替タイミング信号を出力する制御信号出力回路を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のプリントヘッド駆動回路。
【請求項4】
前記駆動信号は、前記吐出部から液体を吐出させるように前記圧電素子を駆動する第1駆動波形と、前記吐出部から液体が吐出されないように前記圧電素子を駆動する第2駆動波形とを含み、
前記第1駆動波形の少なくとも一部は前記第1期間に配置され、前記第2駆動波形は、前記第1駆動波形よりも後に配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリントヘッド駆動回路。
【請求項5】
前記第1情報ブロックは、前記圧電素子の駆動を制御するための駆動データを含み、
前記第2情報ブロックは、前記圧電素子の駆動パターンを規定する駆動パターンデータを含み、
前記第2駆動波形の少なくとも一部は、前記第3期間に配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載のプリントヘッド駆動回路。
【請求項6】
前記駆動信号を出力する駆動信号出力回路を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプリントヘッド駆動回路。
【請求項7】
駆動信号が供給されることで駆動する圧電素子を含み、前記圧電素子の駆動に伴い媒体に液体を吐出する吐出部と、前記圧電素子に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える切替スイッチと、を含む吐出モジュールを1500個以上有するプリントヘッドと、
前記プリントヘッドを駆動する前記圧電素子を駆動するか否かを選択するための第1情報ブロックと第2情報ブロックとを含む選択信号と、前記切替スイッチの切り替えタイミングを制御するために論理レベルを変化する切替タイミング信号とを出力するプリントヘッド駆動回路と、
を備え、
前記プリントヘッド駆動回路は、
第1期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第1情報ブロックを出力し、
前記第1期間よりも後の第2期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させ、前記選択信号の論理レベルを変化させず、
前記第2期間よりも後の第3期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第2情報ブロックを出力し、
前記選択信号の伝搬タイミングを規定するクロック信号
を出力し、
前記第2期間において前記クロック信号の出力を停止する、
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の圧電素子を備えたプリントヘッドの安定した駆動を制御するためのプリントヘッド制御回路、及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター等の印刷装置としては、プリントヘッドに設けられた圧電素子を含む駆動素子を駆動信号により駆動し、駆動素子の駆動によりキャビティーに充填されたインク等の液体をノズルから吐出させることで、媒体上に文字や画像を形成する所謂圧電方式の印刷装置が知られている。
【0003】
また、このような圧電方式の印刷装置としては、圧電素子を2つの電極で挟むことで高密度の吐出部を構成することが可能なユニモルフ型の駆動素子を備えた印刷方式や、特許文献1に示すような、圧電素子と電極を何層にも重ねて構成された積層型の駆動素子を備えることで、ユニモルフ型の駆動素子を備えた印刷方式に比べて駆動素子の駆動量を大きすることが可能となり、駆動素子の単位駆動当たりの液体の吐出量を増加することが可能な印刷方式等が知られている。
【0004】
また、特許文献2には、圧電素子を含む駆動素子を高密度に並べることで、多階調の印刷物の生成が可能な圧電方式の印刷装置、及び当該印刷装置で用いられる印刷物を生成するための情報を含むデータ信号の形式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-328267号公報
【文献】特開2003-001824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、及び特許文献2に記載されてるような圧電方式の印刷装置において、近年、生産性を高めたいという市場の要求が高まっている。そして、このような市場の要求に対して、圧電方式の印刷装置では、プリントヘッドが備えるノズル、及びノズルを駆動するための圧電素子を含む駆動素子の数を増加するとともに、当該駆動素子の単位駆動当たりの液体の吐出量を増加することが求められている。
【0007】
圧電素子を含む駆動素子の単位駆動当たりの液体の吐出量を増加するには、駆動素子を大きく駆動させる必要があり、そのため、駆動素子により多くの電流を供給する必要がある。しかしながら、圧電素子を含む駆動素子に多くの電流を供給する場合、当該電流に起因して生じるノイズの影響が大きくなる。そして、当該ノイズが印刷物を生成するための情報を含むデータ信号に重畳した場合、印刷装置に誤動作が生じるおそれがある。
【0008】
特に、1つのプリントヘッドが1500個以上のノズル、及び圧電素子を含む場合、当該プリントヘッドに供給される電流量が大きくなるとともに、印刷物を生成するためのデータ信号に含まれる情報量も増加し、印刷装置に誤動作が生じるおそれが顕著となるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るプリントヘッド制御回路の一態様は、
駆動信号が供給されることで駆動する圧電素子を含み、前記圧電素子の駆動に伴い媒体に液体を吐出する吐出部と、
前記圧電素子に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える切替スイッチと、
を含む吐出モジュールを1500個以上有するプリントヘッドを、前記圧電素子を駆動するか否かを選択するための第1情報ブロックと第2情報ブロックとを含む選択信号と、前記切替スイッチの切り替えタイミングを制御するために論理レベルを変化する切替タイミング信号とにより駆動するプリントヘッド駆動回路であって、
前記プリントヘッド駆動回路は、
第1期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第1情報ブロックを出力し、
前記第1期間よりも後の第2期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させ、前記選択信号の論理レベルを変化させず、
前記第2期間よりも後の第3期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第2情報ブロックを出力する。
【0010】
本発明に係る印刷装置の一態様は、
駆動信号が供給されることで駆動する圧電素子を含み、前記圧電素子の駆動に伴い媒体に液体を吐出する吐出部と、前記圧電素子に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える切替スイッチと、を含む吐出モジュールを1500個以上有するプリントヘッドと、
前記プリントヘッドを駆動する前記圧電素子を駆動するか否かを選択するための第1情報ブロックと第2情報ブロックとを含む選択信号と、前記切替スイッチの切り替えタイミングを制御するために論理レベルを変化する切替タイミング信号とを出力するプリントヘッド駆動回路と、
を備え、
前記プリントヘッド駆動回路は、
第1期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第1情報ブロックを出力し、
前記第1期間よりも後の第2期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させ、前記選択信号の論理レベルを変化させず、
前記第2期間よりも後の第3期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第2情報ブロックを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】ノズルプレートに設けられたノズルの配置の一例を示す図である。
【
図5】駆動信号COMの波形の一例を示す図である。
【
図6】駆動信号VOUTの波形の一例を示す図である。
【
図8】吐出制御信号のデータ形式の一例を示す図である。
【
図10】吐出部の1個分に対応する選択回路の構成を示す図である。
【
図11】駆動信号選択回路の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。用いる図面は説明の便宜上のものである。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0013】
1.印刷装置の概要
図1は、印刷装置1の概略構成を示す図である。本実施形態における印刷装置1は、液体の一例としてのインクを吐出するプリントヘッド21が搭載されたキャリッジ20が往復動し、搬送される媒体Pに対してインクを吐出することで、媒体Pに対して画像を形成するシリアル印刷方式のインクジェットプリンターを例示して説明を行う。以下の説明では、キャリッジ20が移動する方向をX方向、媒体Pが搬送される方向をY方向、インクが吐出される方向をZ方向として説明する。なお、X方向、Y方向、及びZ方向は互いに直交する方向として説明を行うが、印刷装置1を構成する各種構成が直交して設けられていることに限るものではない。また、媒体Pとしては、印刷用紙、樹脂フィルム、布帛等の任意の印刷対象を用いることができる。また、印刷装置1は、媒体の幅以上に並んで設けられたプリントヘッドから搬送される媒体に対してインクを吐出することで、媒体に対して画像を形成する所謂ライン印刷方式のインクジェットプリンターであってもよい。
【0014】
図1に示すように印刷装置1は、インク容器2、制御機構10、キャリッジ20、移動機構30、及び搬送機構40を備える。
【0015】
インク容器2には、媒体Pに吐出される複数種類のインクが貯留されている。インク容器2に貯留されるインクの色彩としては、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グレー等が挙げられる。このようなインクが貯留されるインク容器2としては、インクカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、及びインクの補充が可能なインクタンク等を用いることができる。
【0016】
制御機構10は、例えばCPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の処理回路と半導体メモリ等の記憶回路とを含み、印刷装置1の各要素を制御する。
【0017】
キャリッジ20には、プリントヘッド21が搭載されている。また、キャリッジ20は、移動機構30に含まれる無端ベルト32に固定される。なお、インク容器2は、キャリッジ20に搭載されていてもよい。
【0018】
プリントヘッド21には、制御機構10が出力するプリントヘッド21を制御するための制御信号Ctrl-H、及びプリントヘッド21を駆動するための1又は複数の駆動信号COMが入力される。そして、プリントヘッド21は、制御信号Ctrl-H、及び駆動信号COMに基づいて、インク容器2から供給されるインクを吐出する。
【0019】
移動機構30は、キャリッジモーター31、及び無端ベルト32を含む。キャリッジモーター31は、制御機構10から入力される制御信号Ctrl-Cに基づいて動作する。無端ベルト32は、キャリッジモーター31の動作に従って回転する。これにより、無端ベルト32に固定されたキャリッジ20がX方向に往復動する。
【0020】
搬送機構40は、搬送モーター41、及び搬送ローラー42を含む。搬送モーター41は、制御機構10から入力される制御信号Ctrl-Tに基づいて動作する。搬送ローラー42は、搬送モーター41の動作に従って回転する。この搬送ローラー42の回転に伴って媒体PがY方向に搬送される。
【0021】
以上のように印刷装置1は、搬送機構40による媒体Pの搬送と移動機構30によるキャリッジ20の往復動とに連動して、キャリッジ20に搭載されたプリントヘッド21からインクを吐出することで、媒体Pの表面の任意の位置にインクを着弾させ、媒体Pに所望の画像を形成する。
【0022】
2.印刷装置の電気構成
次に、印刷装置1の機能構成について説明する。
図2は、印刷装置1の機能構成を示す図である。印刷装置1は、制御機構10、プリントヘッド21、キャリッジモーター31、搬送モーター41、及びリニアエンコーダー90を備える。
【0023】
制御機構10は、駆動回路50、制御回路100、及び電源回路110を含む。制御回路100は、例えば、マイクロコントローラー等のプロセッサーを含む。そして、制御回路100は、ホストコンピューターから入力される画像データ等の各種信号に基づいて、印刷装置1を制御するための各種データや当該データに基づく信号を生成し対応する構成に出力する。
【0024】
制御回路100の動作の具体例について説明する。制御回路100は、リニアエンコーダー90から入力される検出信号に基づいて、プリントヘッド21の走査位置を把握する。そして、制御回路100は、プリントヘッド21の走査位置に応じた各種信号を生成し出力する。詳細には、制御回路100は、プリントヘッド21の往復動を制御する為の制御信号Ctrl-Cを生成し、キャリッジモーター31に出力する。また、制御回路100は、媒体Pの搬送を制御する為の制御信号Ctrl-Tを生成し、搬送モーター41に出力する。なお、制御信号Ctrl-Cは、不図示のドライバー回路を介して信号変換されたのち、キャリッジモーター31に入力されてもよく、同様に、制御信号Ctrl-Tは、不図示のドライバー回路を介して信号変換されたのち、搬送モーター41に入力されてもよい。
【0025】
また、制御回路100は、ホストコンピューターから入力される画像データ等の各種信号とプリントヘッド21の走査位置とに基づいて、プリントヘッド21を制御するための制御信号Ctrl-Hとして、吐出制御信号DATA1~DATAn、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKを生成し、プリントヘッド21に出力する。
【0026】
また、制御回路100は、駆動回路50にデジタル信号である駆動制御信号dAを出力する。
【0027】
駆動回路50は、駆動信号出力回路51と基準電圧信号出力回路52とを含む。駆動制御信号dAは、駆動信号出力回路51に入力される。駆動信号出力回路51は、駆動制御信号dAをデジタル/アナログ信号変換したのち、変換されたアナログ信号をD級増幅して駆動信号COMを生成する。すなわち、駆動制御信号dAは、駆動信号COMの波形を規定するデジタル信号であり、駆動信号出力回路51は、駆動制御信号dAで規定された波形をD級増幅することで駆動信号COMを生成し出力する。したがって、駆動制御信号dAは、駆動信号COMの波形を規定することができる信号であればよく、例えば、駆動制御信号dAはアナログ信号であってもよい。さらに、駆動信号出力回路51は、駆動制御信号dAで規定される波形を増幅できればよく、例えば、A級増幅回路、B級増幅回路又はAB級増幅回路等であってもよい。
【0028】
基準電圧信号出力回路52は、駆動信号COMの基準電位を示す基準電圧信号VBSを出力する。基準電圧信号VBSは、例えば、電圧値が0Vのグラウンド電位の信号であってもよく、電圧値が5.5Vや6V等の直流電圧の信号であってもよい。
【0029】
駆動信号COM、及び基準電圧信号VBSは、制御機構10において分岐された後、プリントヘッド21に出力される。具体的には、駆動信号COMは、制御機構10において後述するプリントヘッド21が有するn個の駆動信号選択回路200のそれぞれに対応す
るn個の駆動信号COM1~COMnに分岐されたのち、プリントヘッド21に出力される。同様に、基準電圧信号VBSは、制御機構10においてプリントヘッド21が有するn個の基準電圧信号VBS1~VBSnに分岐されたのち、プリントヘッド21に出力される。この駆動信号COM、及び駆動信号COMが分岐された駆動信号COM1~COMnが駆動信号の一例である。
【0030】
電源回路110は、電圧VHV,VDDを生成して出力する。電圧VHVは、電圧値が例えば42Vの直流電圧の信号であって、駆動信号出力回路51における増幅用の電圧等に用いられる。また、電圧VDDは、電圧値が例えば3.3Vの直流電圧の信号であって、制御機構10における各種構成の電源電圧や制御電圧等に用いられる。また、電圧VHV,VDDは、プリントヘッド21にも出力される。なお、電圧VHV,VDDの電圧値は、上述した42V、及び3.3Vに限られるものではない。また、電源回路110は、電圧VHV,VDD以外の複数の電圧値の信号を生成し出力しても良い。
【0031】
以上のように制御回路100はプリントヘッド21の動作を制御するための各種信号を生成し、プリントヘッド21に出力する。この吐出制御信号DATA1~DATAn、チェンジ信号CH、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKを含む複数の信号を出力する制御回路100が制御信号出力回路の一例である。
【0032】
プリントヘッド21は、駆動信号選択回路200-1~200-nと、複数の吐出部600と、を含む。
【0033】
駆動信号選択回路200-1~200-nのそれぞれは、例えば、集積回路装置として構成されている。駆動信号選択回路200-1~200-nのそれぞれには、電圧VHV,VDD、対応する駆動信号COM1~COMn、対応する吐出制御信号DATA1~DATAn、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHが入力される。電圧VHV,VDDは、駆動信号選択回路200-1~200-nのそれぞれの電源電圧及び制御電圧として機能する。そして、駆動信号選択回路200-1~200-nのそれぞれは、入力される吐出制御信号DATA1~DATAn、クロック信号SCK、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHに基づいて、駆動信号COM1~COMnを選択、又は非選択とすることで、駆動信号VOUT1~VOUTnを生成する。
【0034】
駆動信号選択回路200-1~200-nのそれぞれが生成した駆動信号VOUT1~VOUTnは、対応する吐出部600に含まれる圧電素子60に供給される。圧電素子60は、駆動信号VOUT1~VOUTnが供給されることで駆動する。そして、圧電素子60の駆動により生じた圧電素子60の変位に応じた量のインクが、吐出部600から吐出される。
【0035】
具体的には、駆動信号選択回路200-1には、駆動信号COM1、吐出制御信号DATA1、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKが入力される。そして、駆動信号選択回路200-1は、吐出制御信号DATA1、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKに基づいて駆動信号COM1の波形を選択又は非選択することで、駆動信号VOUT1を生成し対応する吐出部600に含まれる圧電素子60の一端に出力する。また、当該圧電素子60の他端には、基準電圧信号VBS1が供給されている。そして、圧電素子60は、駆動信号VOUT1と基準電圧信号VBS1との電位差により変位する。
【0036】
同様に、駆動信号選択回路200-i(iは1~nのいずれか)には、駆動信号COMi、吐出制御信号DATAi、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKが入力される。そして、駆動信号選択回路200-iは、吐出制御信号DATAi
、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKに基づいて駆動信号COMiの波形を選択又は非選択することで、駆動信号VOUTiを生成し対応する吐出部600に含まれる圧電素子60の一端に出力する。また、当該圧電素子60の他端には、基準電圧信号VBSiが供給されている。そして、圧電素子60は、駆動信号VOUTiと基準電圧信号VBSiとの電位差により変位する。
【0037】
ここで、駆動信号選択回路200-1~200-nのそれぞれは同様の回路構成を有する。そのため、以下の説明において駆動信号選択回路200-1~200-nを区別する必要がない場合、駆動信号選択回路200と称する場合がある。そして、駆動信号選択回路200に入力される駆動信号COM1~COMnを駆動信号COMと称し、吐出制御信号DATA1~DATAnを吐出制御信号DATAと称し、駆動信号選択回路200から出力される駆動信号VOUT1~VOUTnを駆動信号VOUTと称する。
【0038】
また、本実施形態におけるプリントヘッド21は、10個の駆動信号選択回路200を備えるとして説明を行う。すなわち、以下の説明においてプリントヘッド21は、駆動信号選択回路200-1~200-10を備えるとして説明を行う。なお、プリントヘッド21が備える駆動信号選択回路200の数は10個に限るものではない。また、駆動信号選択回路200の動作の詳細については後述する。
【0039】
3.吐出部の構成
次に、吐出部600の構成について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、吐出部600の概略構成を示す図である。
図3に示すように、吐出部600は、圧電素子60、振動板621、キャビティー631、及びノズル651を含む。
【0040】
圧電素子60は、圧電体601を電極611,612で挟んで積層し、細長い櫛歯状に切り分けられた積層型の圧電振動子である。電極611には駆動信号VOUTが供給され、電極612には基準電圧信号VBSが供給される。このような圧電素子60は、電極611に供給される駆動信号VOUTと電極612に供給される基準電圧信号VBSとの電位差に応じて、圧電素子60の長手方向である
図3における上下方向に変位する縦振動型の圧電振動子として機能する。また、圧電素子60の固定端部は、固定部627に接合し、圧電素子60の自由端部は、固定部627の先端縁よりも外側に突出している。すなわち、吐出部600において、圧電素子60は、所謂片持ち梁の状態で設けられている。また、圧電素子60における自由端部の先端面は、振動板621の上方に設けられた島部649と接合されている。
【0041】
振動板621は、
図3における上方に設けられた島部649を介して設けられた圧電素子60の変位に伴い変形する。また、振動板621の
図3における下方にはキャビティー631が設けられている。すなわち、振動板621は、圧電素子60の変位に伴って変形することで、キャビティー631の内部容積を拡大/縮小させるダイヤフラムとして機能する。キャビティー631の内部には、インク供給口661、及びリザーバー641を介して供給されるインクが充填している。キャビティー631は、圧電素子60の変位により、内部容積が変化する圧力室として機能する。ノズル651は、ノズルプレート632に形成されているとともに、キャビティー631に連通する開孔部である。そして、キャビティー631の内部容積の変化に応じてキャビティー631の内部に貯留されたインクが、ノズル651から吐出される。
【0042】
以上のように構成された吐出部600では、駆動信号VOUTの電圧が高くなると、圧電素子60が上方向に変位する。そして、圧電素子60が上方向に変位することで、キャビティー631の内部容積が拡大する。したがって、インクがリザーバー641から引き込まれる。一方、駆動信号VOUTの電圧が低くなると、圧電素子60が下方向に変位す
る。そして、圧電素子60が下方向に変位することで、キャビティー631の内部容積が縮小する。したがって、キャビティー631の内部容積の縮小の程度に応じた量のインクが、ノズル651から吐出される。すなわち、吐出部600は、駆動信号COMに基づく駆動信号VOUTが供給されることで駆動する圧電素子60を含み、圧電素子60の駆動に伴い媒体Pに液体としてのインクを吐出する。なお、圧電素子60は、駆動信号VOUTの電圧が高くなると下方向に変位し、駆動信号VOUTの電圧が低くなると上方向に変位する構成であってもよい。
【0043】
以上のように構成された吐出部600に含まれるノズル651は、ノズルプレート632において複数個並んで設けられている。
【0044】
図4は、ノズルプレート632に設けられたノズル651の配置の一例を示す図である。
図4に示すように、ノズルプレート632には、m個のノズル651がY方向に沿って並んで設けられたノズル列Lが、X方向に沿って10列で位置している。ここで、ノズルプレート632に設けられた10個のノズル列Lを、X方向に沿った方向おいて順にノズル列L1~L10と称する場合がある。また、
図4では、ノズル列L1~L10のそれぞれにおいて、ノズル651がY方向に1列で並んで設けられている場合を例示しているが、ノズル651は、ノズル列L1~L10のそれぞれにおいてY方向に沿って2列以上で並んで設けられてもよい。
【0045】
ノズルプレート632に設けられたノズル列L1~L10のそれぞれは、駆動信号選択回路200-1~200-10のそれぞれに対応して設けられている。具体的には、駆動信号選択回路200-1が出力する駆動信号VOUT1は、ノズル列L1に設けられているm個の吐出部600が有するm個の圧電素子60の一端に供給され、当該圧電素子60の他端には基準電圧信号VBS1が供給される。同様に、駆動信号選択回路200-2~200-10のそれぞれが出力する駆動信号VOUT2~VOUT10は、ノズル列L2~L10のそれぞれに設けられているm個の吐出部600が有するm個の圧電素子60の一端に供給され、対応する圧電素子60の他端には基準電圧信号VBS2~VBS10のそれぞれが供給される。
【0046】
ここで、本実施形態におけるノズル列L1~L10のそれぞれは、150個以上のノズル651、及び吐出部600を含む。すなわち、プリントヘッド21は、1500個以上の吐出部600を含む。そして、制御回路100が出力する吐出制御信号DATA1には、150個以上の吐出部600に対応する情報が含まれ、駆動信号選択回路200-1は、吐出制御信号DATA1により規定される150個以上の吐出部600のそれぞれに対応する駆動信号VOUT1を出力する。同様に、制御回路100が出力する吐出制御信号DATA2~DATA10のそれぞれには、150個以上の吐出部600に対応する情報が含まれ、駆動信号選択回路200-2~200-10のそれぞれは、吐出制御信号DATA2~DAT10により規定される駆動信号VOUT2~VOUT10を、対応する吐出部600のそれぞれに出力する。
【0047】
以上のように、本実施形態におけるプリントヘッド21は、1500個以上の圧電素子60とノズル651とを含む吐出部600を有する。換言すれば、プリントヘッド21は、1500個以上の圧電素子60とノズル651とを含む。そして、制御回路100は、プリントヘッド21が有する1500個以上の吐出部600のそれぞれに対応する情報を含む吐出制御信号DATA1~DATA10を出力する。
【0048】
4.駆動信号COM、及び駆動信号VOUTの一例
次に、駆動信号出力回路51で生成され、駆動信号選択回路200に入力される駆動信号COMの波形の一例、及び駆動信号選択回路200により生成される駆動信号VOUT
の波形の一例について
図5及び
図6を用いて説明する。
【0049】
図5は、駆動信号COMの波形の一例を示す図である。
図5に示すように駆動信号COMは、時刻t0でラッチ信号LATが立ち上がってから、時刻t6で次にラッチ信号LATが立ち上がるまでの周期Tに配された台形波形Adp,Bdp,Cdpが連続した波形の信号である。また、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれの開始タイミング、及び終了タイミングでの電圧値は、いずれも電圧Vcで共通である。すなわち、台形波形Adp,Bdp,Cdpのそれぞれは、電圧Vcで開始し電圧Vcで終了する波形となっている。
【0050】
また、制御回路100は、駆動信号出力回路51が台形波形Adpを出力する期間と台形波形Bdpを出力する期間との間の時刻t2において、チェンジ信号CHを立ち上げるとともに、台形波形Adpを出力する期間と台形波形Bdpを出力する期間との間の時刻t3において、チェンジ信号CHを立ち下げる。同様に、制御回路100は、駆動信号出力回路51が台形波形Bdpを出力する期間と台形波形Cdpを出力する期間との間の時刻t4において、チェンジ信号CHを立ち上げるとともに、台形波形Bdpを出力する期間と台形波形Cdpを出力する期間との間の時刻t5において、チェンジ信号CHを立ち下げる。すなわち、台形波形Adpは、時刻t0でラッチ信号LATが立ち上がった後のラッチ信号LATが立ち下がる時刻t1と、チェンジ信号CHが立ち上がる時刻t2との間の期間Taに配置され、台形波形Bdpは、チェンジ信号CHが立ち下がる時刻t3と、次にチェンジ信号CHが立ち上がる時刻t4との間の期間Tbに配置され、台形波形Cdpは、チェンジ信号CHが立ち下がる時刻t5と、ラッチ信号LATが立ち上がる時刻t6との間の期間Tcに配置される。ここで、時刻t6は、上述した時刻t0に相当する。すなわち、駆動信号COMは、ラッチ信号LATで規定される周期Tにおいて、台形波形Adp,Bdp,Cdpを繰返して含む波形である。
【0051】
そして、台形波形Adpが、圧電素子60の一端である電極611に供給された場合、当該圧電素子60に対応する吐出部600から、中程度の量のインクが吐出される。また、台形波形Bdpが、圧電素子60の一端である電極611に供給された場合、当該圧電素子60に対応する吐出部600から、中程度の量よりも少ない小程度の量のインクが吐出される。また、台形波形Cdpが、圧電素子60の一端である電極611に供給された場合、当該圧電素子60に対応する吐出部600からインクは吐出されず、吐出部600のノズル開孔部付近のインクを微振動させて、インク粘度の増大を防止する。すなわち、台形波形Cdpは、吐出部600を微振動させるための波形である。
【0052】
以上のように、駆動信号COMは、吐出部600からインクを吐出させるように圧電素子60を駆動する台形波形Adp,Bdpと、吐出部600からインクが吐出されないように圧電素子60を駆動する台形波形Cdpと、を含む。ここで、台形波形Adpが第1駆動波形の一例であり、台形波形Cdpが第2駆動波形の一例である。
【0053】
図6は、吐出部600から吐出されたインクにより媒体Pに「大ドット」、「中ドット」、「小ドット」及び「非記録」のそれぞれが形成される場合に対応する駆動信号VOUTの波形の一例を示す図である。
【0054】
図6に示すように、「大ドット」に対応する駆動信号VOUTは、周期Tにおいて、期間Taに配置された台形波形Adpと、期間Tbに配置された台形波形Bdpと、期間Tcに配置された電圧Vcで一定の波形とを連続させた波形である。すなわち、駆動信号選択回路200が、周期Tにおいて、期間Taに配置された台形波形Adpを選択し、期間Tbに配置された台形波形Bdpを選択し、期間Tcに配置された台形波形Cdpを選択しない場合に、駆動信号選択回路200は、「大ドット」に対応する駆動信号VOUTを
対応する吐出部600に出力する。この「大ドット」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60の一端に供給された場合、当該圧電素子60に対応した吐出部600から、期間Taにおいて中程度の量のインクが吐出され、期間Tbにおいて小程度の量のインクが吐出され、期間Tcにおいてインクが吐出されない。よって、周期Tにおいて媒体Pに中程度の量のインクと小程度の量のインクとが着弾し当該インクが合体する。これにより、媒体Pには大ドットが形成される。
【0055】
また、「中ドット」に対応する駆動信号VOUTは、周期Tにおいて、期間Taに配置された台形波形Adpと、期間Tbに配置された電圧Vcで一定の波形と、期間Tcに配置された電圧Vcで一定の波形とを連続させた波形である。すなわち、駆動信号選択回路200が、周期Tにおいて、期間Taに配置された台形波形Adpを選択し、期間Tbに配置された台形波形Bdpを選択せず、期間Tcに配置された台形波形Cdpを選択しない場合に、駆動信号選択回路200は、「中ドット」に対応する駆動信号VOUTを対応する吐出部600に出力する。この「中ドット」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60の一端に供給された場合、当該圧電素子60に対応した吐出部600から、期間Taにおいて中程度の量のインクが吐出され、期間Tbにおいてインクが吐出されず、期間Tcにおいてインクが吐出されない。よって、周期Tにおいて媒体Pに中程度の量のインクが着弾する。これにより、媒体Pには中ドットが形成される。
【0056】
また、「小ドット」に対応する駆動信号VOUTは、周期Tにおいて、期間Taに配置された電圧Vcで一定の波形と、期間Tbに配置された台形波形Bdpと、期間Tcに配置された電圧Vcで一定の波形とを連続させた波形である。すなわち、駆動信号選択回路200が、周期Tにおいて、期間Taに配置された台形波形Adpを選択せず、期間Tbに配置された台形波形Bdpを選択し、期間Tcに配置された台形波形Cdpを選択しない場合に、駆動信号選択回路200は、「小ドット」に対応する駆動信号VOUTを対応する吐出部600に出力する。この「小ドット」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60の一端に供給された場合、当該圧電素子60に対応した吐出部600から、期間Taにおいてインクが吐出されず、期間Tbにおいて小程度の量のインクが吐出され、期間Tcにおいてインクが吐出されない。よって、周期Tにおいて媒体Pに小程度の量のインクが着弾する、これにより、媒体Pには小ドットが形成される。
【0057】
また、「非記録」に対応する駆動信号VOUTは、周期Tにおいて、期間Taに配置された電圧Vcで一定の波形と、期間Tbに配置された電圧Vcで一定の波形と、期間Tcに配置された台形波形Cdpとを連続させた波形である。すなわち、駆動信号選択回路200が、周期Tにおいて、期間Taに配置された台形波形Adpを選択せず、期間Tbに配置された台形波形Bdpを選択せず、期間Tcに配置された台形波形Cdpを選択する場合に、駆動信号選択回路200は、「非記録」に対応する駆動信号VOUTを出力する。この「非記録」に対応する駆動信号VOUTが圧電素子60の一端に供給された場合、当該圧電素子60に対応した吐出部600のノズル開孔部付近のインクが微振動するのみで、当該圧電素子60に対応した吐出部600からインクは吐出されない。よって、周期Tにおいて媒体Pにインクは着弾しない。これにより、媒体Pには、ドットが形成されない。
【0058】
ここで、圧電素子60の電極611に供給される電圧Vcで一定の波形とは、駆動信号VOUTとして台形波形Adp,Bdp,Cdpのいずれも選択されていない場合において、直前の電圧Vcが圧電素子60の容量成分により保持された電圧からなる波形でもある。その為、駆動信号VOUTとして台形波形Adp,Bdp,Cdpのいずれも選択されていない場合、電圧Vcが駆動信号VOUTとして圧電素子60に供給される。
【0059】
ここで、
図5及び
図6に示すラッチ信号LATが立ち上がってから、次にラッチ信号L
ATが立ち上がるまでの周期Tが、媒体Pに新たなドットを形成する印刷周期に相当する。なお、
図5及び
図6に示した駆動信号COM、及び駆動信号VOUTはあくまでも一例であり、プリントヘッド21が搭載されるキャリッジ20の移動速度、プリントヘッド21に供給されるインクの物性、及び媒体Pの材質等に応じて、様々な波形の組み合わせが用いられてもよい。
【0060】
5.選択制御回路の構成及び動作
以上のように、駆動信号選択回路200は、駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpを選択又は非選択とすることで、媒体Pに形成されるドットのサイズに応じて駆動信号VOUTを生成し出力する。ここで、駆動信号VOUTを出力する駆動信号選択回路200の構成及び動作について説明する。
【0061】
図7は、駆動信号選択回路200の構成を示す図である。
図7に示すように、駆動信号選択回路200は、制御ロジック回路260と、m個の吐出部600に対応して設けられるm個の選択制御回路270とを有する。すなわち、駆動信号選択回路200は、駆動信号VOUTを出力する吐出部600の総数と同数のm個の選択制御回路270を有する。
【0062】
駆動信号選択回路200には、吐出制御信号DATA、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、クロック信号SCK、及び駆動信号COMが入力される。そして、駆動信号選択回路200は、吐出制御信号DATA、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKに基づいて駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpを選択、又は非選択とすることで駆動信号VOUTを生成し対応する吐出部600に出力する。
【0063】
制御ロジック回路260は、SP用シフトレジスター(S/R)群261と選択制御信号生成群262とを有する。SP用シフトレジスター群261は、クロック信号SCKに同期して入力される吐出制御信号DATAの内、後述する設定データ信号SPに含まれるプログラムデータq0~q3を保持する。選択制御信号生成群262は、SP用シフトレジスター群261に保持されているプログラムデータq0~q3をラッチし、ラッチしたプログラムデータq0~q3を選択制御信号Q0~Q3としてデコーダー226に出力する。
【0064】
選択制御回路270は、第1シフトレジスター222a、第2シフトレジスター222b、第1ラッチ回路224a、第2ラッチ回路224b、デコーダー226、及び選択回路230を有する。ここで、以下の説明では、駆動信号選択回路200に含まれるm個の選択制御回路270を、吐出制御信号DATAが入力される上流側から順に1段、2段、…、m段と称する場合がある。同様に、1段、2段、…、m段の選択制御回路270に含まれる、第1シフトレジスター222a、第2シフトレジスター222b、第1ラッチ回路224a、第2ラッチ回路224b、デコーダー226、及び選択回路230のそれぞれを、1段、2段、…、m段と称する場合がある。
【0065】
第1シフトレジスター222a及び第2シフトレジスター222bには、クロック信号SCKに同期して入力される吐出制御信号DATAの内、後述する印刷データ信号SIに含まれる上位印刷データSIH、下位印刷データSILが保持される。詳細は後述するが、吐出制御信号DATAは、印刷データ信号SIとして複数の吐出部600のそれぞれに対応する上位印刷データSIHと、下位印刷データSILとを含む。そして、クロック信号SCKに同期して伝搬される印刷データ信号SIの内、上位印刷データSIHが第1シフトレジスター222aに保持され、下位印刷データSILが第2シフトレジスター222bに保持される。
【0066】
ここで、以下の説明において、吐出部600に対応する上位印刷データSIHと下位印刷データSILとを、印刷データ[SIH,SIL]と称する場合がある。また、1段~m段のそれぞれの吐出部600に対応する印刷データ[SIH,SIL]を、印刷データ[SIH1,SIL1]、印刷データ[SIH2,SIL2]、…、印刷データ[SIHm,SILm]と称する場合がある。
【0067】
ここで、
図7に示すようにSP用シフトレジスター群261、第1シフトレジスター222a、及び第2シフトレジスター222bは、駆動信号選択回路200において、縦続に接続されている。具体的には、SP用シフトレジスター群261、第1シフトレジスター222a、及び第2シフトレジスター222bは、駆動信号選択回路200において、SP用シフトレジスター群261、1段~m段のそれぞれに対応する第2シフトレジスター222b、1段~m段のそれぞれに対応する第1シフトレジスター222aの順に、縦続に接続されている。したがって、吐出制御信号DATAは、クロック信号SCKに従って、SP用シフトレジスター群261、1段~m段のそれぞれに対応する第2シフトレジスター222b、1段~m段のそれぞれに対応する第1シフトレジスター222aの順に転送される。すなわち、クロック信号SCKは、吐出制御信号DATAを順次後段のシフトレジスターに伝搬する。換言すれば、クロック信号SCKは、吐出制御信号DATAの伝搬タイミングを規定する信号である。
【0068】
ここで、吐出制御信号DATAのデータ形式の一例について説明する。吐出制御信号DATAは、SP用シフトレジスター群261に保持される設定データ信号SP、第1シフトレジスター222aに保持される上位印刷データSIH、及び第2シフトレジスター222bに保持される下位印刷データSILを、m段~1段のそれぞれの吐出部600に対応する上位印刷データSIH、m段~1段のそれぞれの吐出部600に対応する下位印刷データSIL、プログラムデータq0~q3の順にシリアルに含む信号である。
図8は、吐出制御信号DATAのデータ形式の一例を示す図である。
図8に示すように、吐出制御信号DATAは、設定データ信号SP、及び印刷データ信号SIを含む。また、印刷データ信号SIは、上位印刷データSIH、及び下位印刷データSIL含む。
【0069】
印刷データ信号SIは、吐出部600に含まれる圧電素子60の駆動を制御するための上位印刷データSIHと下位印刷データSILの2ビットのデータを、m個の吐出部600のそれぞれに対応して含む、合計2mビットのデータを含むシリアル信号である。設定データ信号SPは、圧電素子60の駆動パターンを規定するためのデータを含むシリアル信号である。具体的には、設定データ信号SPは、印刷データ信号SIに含まれる上位印刷データSIHと下位印刷データSILとの組み合わせによって決定される圧電素子60の駆動パターンを示す4つのプログラムデータq0~q3をシリアルに含む。なお、設定データ信号SPに含まれるプログラムデータq0~q3のそれぞれは、圧電素子60の駆動パターンを規定するための複数ビットのデータを含んでもよい。
【0070】
図7に戻り、駆動信号選択回路200では、
図8に示すような吐出制御信号DATAが、クロック信号SCKに同期してSP用シフトレジスター群261、第2シフトレジスター222b、及び第1シフトレジスター222aで順次転送される。これにより、SP用シフトレジスター群261には設定データ信号SPに含まれるプログラムデータq0~q3が保持され、第2シフトレジスター222bには1段~m段のそれぞれの吐出部600に対応する下位印刷データSILが保持され、第1シフトレジスター222aには1段~m段のそれぞれの吐出部600に対応する上位印刷データSIHが保持される。
【0071】
第1シフトレジスター222aに保持された1段~m段のそれぞれの吐出部600に対応する上位印刷データSIHは、ラッチ信号LATの立ち上がりで1段~m段のそれぞれの吐出部600に対応する第1ラッチ回路224aによりラッチされる。また、第2シフ
トレジスター222bに保持された1段~m段のそれぞれの吐出部600に対応する下位印刷データSILは、ラッチ信号LATの立ち上がりで1段~m段のそれぞれの吐出部600に対応する第2ラッチ回路224bによりラッチされる。
【0072】
そして、第1ラッチ回路224aは、ラッチした上位印刷データSIHをラッチデータLTaとしてデコーダー226に出力し、第2ラッチ回路224bは、ラッチした下位印刷データSILをラッチデータLTbとしてデコーダー226に出力する。
【0073】
なお、以下の説明において、1段、2段、…、m段のそれぞれの吐出部600に対応する第1ラッチ回路224aが出力するラッチデータLTaを、ラッチデータLTa1,LTa2,…,LTamと称し、1段、2段、…、m段のそれぞれの吐出部600に対応する第2ラッチ回路224bが出力するラッチデータLTbを、ラッチデータLTb1,LTb2,…,LTbmと称する場合がある。また、以下の説明において、ラッチデータLTa,LTbをラッチデータ[LTa,LTb]と称し、1段、2段、…、m段のそれぞれの吐出部600に対応するラッチデータ[LTa,LTb]を、ラッチデータ[LTa1,LTb1]、ラッチデータ[LTa2,LTb2]、…、ラッチデータ[LTam,LTbm]と称する場合がある。
【0074】
デコーダー226には、プログラムデータq0~q3に対応する選択制御信号Q0~Q3と、印刷データ[SIH,SIL]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]とが入力される。そして、デコーダー226は、選択制御信号Q0~Q3と、ラッチデータ[LTa,LTb]とに基づいてTG制御信号Sを生成し、対応する選択回路230出力する。ここで、プログラムデータq0~q3に対応する選択制御信号Q0~Q3は、圧電素子60の駆動パターンを規定するデータであって、具体的には、
図3に示す期間Ta,Tb,Tcのそれぞれにおいて出力するTG制御信号Sの論理レベルを規定する。また、印刷データ[SIH,SIL]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]は、圧電素子60の駆動を制御するためのデータであって、具体的には、プログラムデータq0~q3に対応する選択制御信号Q0~Q3によって規定された駆動パターンを選択するための信号である。
【0075】
すなわち、デコーダー226は、印刷データ[SIH,SIL]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]に基づいて、プログラムデータq0~q3に対応する選択制御信号Q0~Q3をデコードすることで、期間Ta,Tb,Tcのそれぞれにおいて所定の論理レベルのTG制御信号Sを出力する。なお、デコーダー226から出力されるTG制御信号Sは、不図示のレベルシフターにより電圧VHVに基づく高振幅論理の信号に変換されてもよい。
【0076】
図9は、デコーダー226のデコード内容を示す図である。
図9に示すように、プログラムデータq0に対応する選択制御信号Q0は、期間Ta,Tb,Tcのそれぞれにおいて、TG制御信号Sの論理レベルをH,H,Lレベルと規定する。プログラムデータq1に対応する選択制御信号Q1は、期間Ta,Tb,Tcのそれぞれにおいて、TG制御信号Sの論理レベルをH,L,Lレベルと規定する。プログラムデータq2に対応する選択制御信号Q2は、期間Ta,Tb,Tcのそれぞれにおいて、TG制御信号Sの論理レベルをL,H,Lレベルと規定する。プログラムデータq3に対応する選択制御信号Q3は、期間Ta,Tb,Tcのそれぞれにおいて、TG制御信号Sの論理レベルをL,L,Hレベルと規定する。
【0077】
そして、デコーダー226は、第1ラッチ回路224a、及び第2ラッチ回路224bによってラッチされた印刷データ[SIH,SIL]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]に基づいて選択制御信号Q0~Q3を選択し、対応する論理レベルのTG制御信
号Sを出力する。例えば、デコーダー226に入力されるラッチデータ[LTa,LTb]が[1,0]の場合、デコーダー226は、選択制御信号Q1で規定される期間Ta,Tb,TcのそれぞれにおいてH,L,LレベルのTG制御信号Sを出力する。
【0078】
デコーダー226から出力されたTG制御信号Sは、選択回路230に入力される。
図10は、吐出部600の1個分に対応する選択回路230の構成を示す図である。
図10に示すように、選択回路230は、NOT回路であるインバーター232、及びトランスファーゲート234を有する。TG制御信号Sは、トランスファーゲート234において丸印が付されていない正制御端に入力される一方で、インバーター232によって論理反転されて、トランスファーゲート234において丸印が付された負制御端に入力される。また、トランスファーゲート234の入力端には、駆動信号COMが供給される。具体的には、トランスファーゲート234は、TG制御信号SがHレベルの場合、入力端と出力端との間を導通とし、TG制御信号SがLレベルの場合、入力端と出力端との間を非導通とする。そして、トランスファーゲート234の出力端から駆動信号VOUTが出力される。すなわち、トランスファーゲート234は、圧電素子60に駆動信号COMを駆動信号VOUTとして供給するか否かを切り替える。なお、以下の説明において、入力端と出力端との間を導通に制御することを単に「オンにする」と称し、入力端と出力端との間を非導通に制御することを単に「オフにする」と称する場合がある。
【0079】
以上のように駆動信号選択回路200には、吐出制御信号DATA、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、クロック信号SCK、及び駆動信号COMが入力される。そして、吐出制御信号DATA、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及びクロック信号SCKに基づいて駆動信号COMを選択又は非選択とすることで、
図4に示すような駆動信号VOUTを生成し、対応する吐出部600に出力する。
【0080】
ここで、上述の通り駆動信号選択回路200は、m個の吐出部600に対応したm個の選択制御回路270を備える。そして、m個の選択制御回路270のそれぞれは、第1シフトレジスター222a、第2シフトレジスター222b、第1ラッチ回路224a、第2ラッチ回路224b、デコーダー226、及び選択回路230を有する。すなわち、駆動信号選択回路200は、m個の第1シフトレジスター222a、m個の第2シフトレジスター222b、m個の第1ラッチ回路224a、m個の第2ラッチ回路224b、m個のデコーダー226、及びm個の選択回路230を有する。
【0081】
また、
図2に示すようにプリントヘッド21はn個の選択制御回路270を備える。すなわち、プリントヘッド21は、m×n個の第1シフトレジスター222aと、m×n個の第2シフトレジスター222bと、m×n個の第1ラッチ回路224aと、m×n個の第2ラッチ回路224bと、m×n個のデコーダー226と、m×n個の選択回路230と、m×n個の吐出部600と、を有する。ここで、前述の通り本実施形態における印刷装置1では、プリントヘッド21は10個の選択制御回路270を備え駆動信号選択回路200は、150個以上の吐出部600に対して駆動信号VOUTを出力する。すなわち、本実施形態におけるプリントヘッド21は、1500個以上の第1シフトレジスター222aと、1500個以上の第2シフトレジスター222bと、1500個以上の第1ラッチ回路224aと、1500個以上の第2ラッチ回路224bと、1500個以上のデコーダー226と、1500個以上の選択回路230と、1500個以上の吐出部600と、を有する。
【0082】
以上のように構成されたプリントヘッド21において、圧電素子60に駆動信号COMを供給するか否かを切り替える選択回路230に含まれるトランスファーゲート234が切替スイッチの一例であり、トランスファーゲート234を含む選択回路230と吐出部600とを含む構成が吐出モジュール240に相当する。すなわち、プリントヘッド21
は、1500個以上の吐出部600のそれぞれに対応して、トランスファーゲート234を含む選択回路230と吐出部600とを含む吐出モジュール240を1500個以上有する。そして、1500個以上の吐出モジュール240を駆動するための吐出制御信号DATA、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、クロック信号SCK、及び駆動信号COMは、制御機構10から出力される。この制御機構10がプリントヘッド駆動回路の一例である。
【0083】
そして、プリントヘッド21が有する1500個以上の圧電素子60の駆動を制御するための吐出制御信号DATAが選択信号の一例であり、吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる上位印刷データSIHが駆動データの一例であり、吐出制御信号DATAの内の設定データ信号SPに含まれるプログラムデータq0~q3が駆動パターンデータの一例である。また、
図9に示すように、駆動信号選択回路200は、駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpを、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHで規定された期間Ta,Tb,Tcのそれぞれにおいて選択するか否かを切り替えることにより、圧電素子60に供給される駆動信号VOUTを生成する。すなわち、m個の吐出部600のそれぞれに対応するm個の選択回路230に含まれるトランスファーゲート234のそれぞれは、チェンジ信号CH、及びラッチ信号LATがLレベルからHレベルに切り替わるタイミングで、導通から非導通へ、又は非導通から導通へ切り替わる。換言すれば、チェンジ信号CH、及びラッチ信号LATは、トランスファーゲート234のそれぞれの切り替えタイミングを制御する。このチェンジ信号CH、及びラッチ信号LATの内、チェンジ信号CHが切替タイミング信号の一例であり、ラッチ信号LATが切替タイミング信号の他の一例である。
【0084】
以上のように構成された本実施形態における印刷装置1では、プリントヘッド21が1500個以上の吐出部600を有するが故に、1500個以上の吐出部600のそれぞれに対応する選択回路230に含まれるトランスファーゲート234を駆動する場合、トランスファーゲート234の駆動に伴い、プリントヘッド21に大電流が流れる。そして、トランスファーゲート234の駆動に伴い大電流が生じるが故に、トランスファーゲート234が駆動することによるスイッチングノイズ等、プリントヘッド21に供給される大電流に起因したノイズが生じるおそれが高くなる。そして、このようなトランスファーゲート234の駆動により生じた大電流に起因するノイズ成分が、吐出制御信号DATAに含まれる印刷データ[SIH,SIL]、及びプログラムデータq0~q3に重畳した場合、当該吐出制御信号DATAが入力される駆動信号選択回路200に誤動作が生じるおそれがあり、その結果、駆動信号選択回路200から出力される駆動信号VOUTの精度が低下する。すなわち、本実施形態に示すような1500個以上の吐出部600を有するプリントヘッド21を備えた印刷装置1では、吐出部600に対応して設けられたトランスファーゲート234の駆動に伴い大電流が生じるが故に、当該大電流に起因したノイズ成分が、吐出制御信号DATAに重畳するおそれが高まり、その結果、印刷装置1に誤動作が生じ、印刷装置1における印刷品質を低下させるおそれがあった。
【0085】
このような問題に対して、本実施形態における印刷装置1が有する制御機構10に含まれる制御回路100は、トランスファーゲート234の切り替えを制御するためのチェンジ信号CHを出力する期間において、吐出制御信号DATAの出力を停止することで、吐出制御信号DATAにトランスファーゲート234が切り替わることにより生じるノイズが重畳するおそれを低減する。換言すれば、制御機構10に含まれる制御回路100は、トランスファーゲート234の切り替えを制御するためのチェンジ信号CHと、1500個以上の圧電素子60の駆動を制御するための吐出制御信号DATAと、を排他的に出力する。これにより、吐出制御信号DATAに、トランスファーゲート234の駆動に伴い生じる大電流に基づくノイズ成分が重畳するおそれを低減する。これにより、駆動信号選択回路200に誤動作が生じるおそれが低減し、駆動信号選択回路200から出力される
駆動信号VOUTの精度が低下するおそれが低減する。したがって、印刷装置1が誤動作するおそれが低減されるとともに、印刷装置1の印刷品質が低下するおそれが低減される。
【0086】
ここで、本実施形態における制御機構10に含まれる制御回路100が吐出制御信号DATA、ラッチ信号LAT、及びチェンジ信号CHを駆動信号選択回路200に出力するタイミング、及び駆動信号選択回路200の動作の具体例について
図11を用いて説明する。
【0087】
図11は、駆動信号選択回路200の動作を説明するための図である。
図11に示すように、ラッチ信号LATが立ち下がる時刻t1とチェンジ信号CHが立ち上がる時刻t2との間の期間Taにおいて、制御回路100は、クロック信号SCKに同期して吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる上位印刷データSIHをシリアルに出力する。したがって、時刻t1と時刻t2との間の期間Taにおいて、吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる上位印刷データSIHが駆動信号選択回路200に入力される。この場合において、制御回路100は、Lレベルのチェンジ信号CHの出力を継続する。したがって、トランスファーゲート234は、オン又はオフの状態を継続する。すなわち、制御回路100は、期間Taにおいて、吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる上位印刷データSIHと、トランスファーゲート234を切り替えさせないように制御するLレベルで一定のチェンジ信号CHとを出力する。換言すれば、制御回路100は、期間Taにおいて、チェンジ信号CHの論理レベルを変化させず、吐出制御信号DATAの論理レベルが変化する印刷データ信号SIに含まれる上位印刷データSIHを出力する。
【0088】
また、前述の通りこの期間Taにおいて駆動信号出力回路51は、駆動信号COMに含まれる台形波形Adpを出力する。換言すれば、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMに含まれる台形波形Adpの少なくとも一部は期間Taに配置されている。
【0089】
そして、期間Taの後の時刻t2と時刻t3との間の期間において、制御回路100は、クロック信号SCKの出力を停止するとともに、吐出制御信号DATAの出力を停止する。この場合において、制御回路100は、チェンジ信号CHの論理レベルをLレベルからHレベルとする。したがって、トランスファーゲート234は、デコーダー226に入力される印刷データ[SIH,SIL]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]に応じたオン又はオフの状態に切り替えられる。すなわち、制御回路100は、期間Taの後の時刻t2と時刻t3との間の期間において、トランスファーゲート234を切り替えさせるように制御するLレベルと異なるHレベルのチェンジ信号CHを出力する。換言すれば、制御回路100は、期間Taの後の時刻t2と時刻t3との間の期間において、チェンジ信号CHの論理レベルを変化させ、吐出制御信号DATAの論理レベルを変化させない。
【0090】
チェンジ信号CHが立ち下がる時刻t3とチェンジ信号CHが立ち上がる時刻t4との間の期間Tbにおいて、制御回路100は、クロック信号SCKに同期して吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる下位印刷データSILをシリアルに出力する。したがって、時刻t3と時刻t4との間の期間Tbにおいて、吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる下位印刷データSILが駆動信号選択回路200に入力される。この場合において、制御回路100は、Lレベルのチェンジ信号CHの出力を継続する。したがって、トランスファーゲート234は、オン又はオフの状態を継続する。すなわち、制御回路100は、期間Tbにおいて、吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる下位印刷データSILと、トランスファーゲート234を切り替えさせないように制御するLレベルで一定のチェンジ信号CHとを出力する。換言すれ
ば、制御回路100は、期間Tbにおいて、チェンジ信号CHの論理レベルを変化させず、吐出制御信号DATAの論理レベルが変化する印刷データ信号SIに含まれる下位印刷データSILを出力する。
【0091】
また、前述の通りこの期間Tbにおいて駆動信号出力回路51は、駆動信号COMに含まれる台形波形Bdpを出力する。換言すれば、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMに含まれる台形波形Bdpの少なくとも一部は期間Tbに配置されている。
【0092】
そして、期間Tbの後の時刻t4と時刻t5との間の期間において、制御回路100は、クロック信号SCKの出力を停止するとともに、吐出制御信号DATAの出力を停止する。この場合において、制御回路100は、チェンジ信号CHの論理レベルをLレベルからHレベルとする。したがって、トランスファーゲート234は、デコーダー226に入力される印刷データ[SIH,SIL]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]に応じたオン又はオフの状態に切り替えられる。すなわち、制御回路100は、期間Tbの後の時刻t4と時刻t5との間の期間において、トランスファーゲート234を切り替えさせるように制御するLレベルと異なるHレベルのチェンジ信号CHを出力する。換言すれば、制御回路100は、期間Tbの後の時刻t4と時刻t5との間の期間において、チェンジ信号CHの論理レベルを変化させ、吐出制御信号DATAの論理レベルを変化させない。
【0093】
チェンジ信号CHが立ち下がる時刻t5とラッチ信号LATが立ち上がる時刻t6との間の期間Tcにおいて、制御回路100は、クロック信号SCKに同期して吐出制御信号DATAの内の設定データ信号SPに含まれるプログラムデータq0~q3をシリアルに出力する。したがって、時刻t5と時刻t6との間の期間Tcにおいて、吐出制御信号DATAの内の設定データ信号SPに含まれるプログラムデータq0~q3が駆動信号選択回路200に入力される。この場合において、制御回路100は、Lレベルのチェンジ信号CHの出力を継続する。したがって、トランスファーゲート234は、オン又はオフの状態を継続する。すなわち、制御回路100は、期間Tcにおいて、吐出制御信号DATAの内の設定データ信号SPに含まれるプログラムデータq0~q3と、トランスファーゲート234を切り替えさせないように制御するLレベルで一定のチェンジ信号CHとを出力する。換言すれば、制御回路100は、期間Tcにおいて、チェンジ信号CHの論理レベルを変化させず、吐出制御信号DATAの論理レベルが変化する設定データ信号SPに含まれるプログラムデータq0~q3を出力する。
【0094】
また、前述の通りこの期間Tcにおいて駆動信号出力回路51は、駆動信号COMに含まれる台形波形Cdpを出力する。換言すれば、駆動信号出力回路51が出力する駆動信号COMに含まれる台形波形Cdpの少なくとも一部は期間Tcに配置されている。
【0095】
そして、時刻t6でラッチ信号LATが立ち上がると、選択制御信号生成群262は、SP用シフトレジスター群261に保持されたプログラムデータq0~q3をラッチし、ラッチしたプログラムデータq0~q3に応じた選択制御信号Q0~Q3を生成し、デコーダー226に出力する。また、時刻t6でラッチ信号LATが立ち上がると、第1ラッチ回路224aのそれぞれは、第1シフトレジスター222aに保持されている上位印刷データSIHを一斉にラッチし、ラッチした上位印刷データSIHをラッチデータLTaとしてデコーダー226に出力し、第2ラッチ回路224bのそれぞれは、第2シフトレジスター222bに保持されている下位印刷データSILを一斉にラッチし、ラッチした下位印刷データSILをラッチデータLTbとしてデコーダー226に出力する。
【0096】
デコーダー226は、印刷データ[SIH,SIL]に対応するラッチデータ[LTa,LTb]で規定されるドットのサイズに応じて、選択制御信号Q0~Q3で規定される
論理レベルのTG制御信号Sを出力する。
【0097】
具体的には、デコーダー226は、印刷データ[SIH,SIL]が[1,1]の場合、選択制御信号Q0を選択する。したがって、デコーダー226は、期間Ta,Tb,TcにおいてH,H,LレベルのTG制御信号Sを出力する。この場合、選択回路230は、期間Taにおいて台形波形Adpを選択し、期間Tbにおいて台形波形Bdpを選択し、期間Tcにおいて台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、
図4に示した「大ドット」に対応する駆動信号VOUTを生成し出力する。
【0098】
また、デコーダー226は、印刷データ[SIH,SIL]が[1,0]の場合、選択制御信号Q1を選択する。したがって、デコーダー226は、期間Ta,Tb,TcにおいてH,L,LレベルのTG制御信号Sを出力する。この場合、選択回路230は、期間Taにおいて台形波形Adpを選択し、期間Tbにおいて台形波形Bdpを選択せず、期間Tcにおいて台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、
図4に示した「中ドット」に対応する駆動信号VOUTを生成し出力する。
【0099】
また、デコーダー226は、印刷データ[SIH,SIL]が[0,1]の場合、選択制御信号Q2を選択する。したがって、期間Ta,Tb,TcにおいてL,H,LレベルのTG制御信号Sを出力する。この場合、選択回路230は、期間Taにおいて台形波形Adpを選択せず、期間Tbにおいて台形波形Bdpを選択し、期間Tcにおいて台形波形Cdpを選択しない。その結果、駆動信号選択回路200は、
図4に示した「小ドット」に対応する駆動信号VOUTを生成し出力する。
【0100】
また、デコーダー226は、印刷データ[SIH,SIL]が[0,0]の場合、選択制御信号Q3を選択する。したがって、期間Ta,Tb,TcにおいてL,L,HレベルのTG制御信号Sを出力する。この場合、選択回路230は、期間Taにおいて台形波形Adpを選択せず、期間Tbにおいて台形波形Bdpを選択せず、期間Tcにおいて台形波形Cdpを選択する。その結果、駆動信号選択回路200は、
図4に示した「非記録」に対応する駆動信号VOUTを生成し出力する。
【0101】
ここで、制御機構10に含まれる制御回路100が出力する吐出制御信号DATAの内、期間Taに制御回路100が出力し、圧電素子60の駆動を制御するための吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる上位印刷データSIHが第1情報ブロックの一例であり、制御機構10に含まれる制御回路100が出力する吐出制御信号DATAの内、期間Tbに制御回路100が出力し、圧電素子60の駆動を制御するための吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる下位印刷データSILが第3情報ブロックの一例であり、制御機構10に含まれる制御回路100が出力する吐出制御信号DATAの内、期間Tbに制御回路100が出力し、圧電素子60の駆動パターンを規定するための吐出制御信号DATAの内の設定データ信号SPに含まれるプログラムデータq0~q3が第2情報ブロックの一例である。すなわち、吐出制御信号DATAは、印刷データ信号SIに含まれる上位印刷データSIHを伝搬するブロックと、印刷データ信号SIに含まれる下位印刷データSILを伝搬するブロックと、設定データ信号SPに含まれるプログラムデータq0~q3を伝搬するブロックとを含む。
【0102】
そして、制御回路100が吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる上位印刷データSIHと、トランスファーゲート234を切り替えさせないように制御するLレベルで一定のチェンジ信号CHとを出力する期間Taが第1期間の一例であり、期間Taよりも後の期間であって、制御回路100がトランスファーゲート234を切り替えさせるように制御する論理レベルがLレベルからHレベルに変化するチェンジ信号CHを出力する時刻t2と時刻t3との間の期間が第2期間の一例であり、時刻t2と時刻t
3との間の期間よりも後の期間であって、制御回路100が吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる下位印刷データSILと、トランスファーゲート234を切り替えさせないように制御するLレベルで一定のチェンジ信号CHとを出力する期間Tcが第3期間の一例であり、時刻t2と時刻t3との間の期間と期間Tcとの間の期間であって、制御回路100が吐出制御信号DATAの内の印刷データ信号SIに含まれる下位印刷データSILと、トランスファーゲート234を切り替えさせないように制御するLレベルで一定のチェンジ信号CHとを出力する期間Tbが第4期間の一例であり、期間Tbと期間Tcとの間の期間であって、制御回路100がトランスファーゲート234を切り替えさせるように制御する論理レベルがLレベルからHレベルに変化するチェンジ信号CHを出力する時刻t4と時刻t5との間の期間が第5期間の一例である。
【0103】
6.作用効果
以上のように構成された印刷装置1、及び制御機構10では、吐出制御信号DATAは、上位印刷データSIHを含むブロック、下位印刷データSILを含むブロック、及びプログラムデータq0~q3を含むブロックに分けて送信される。そして、制御機構10は、期間Taにおいて、吐出制御信号DATAの内の上位印刷データSIHを含むブロックと、トランスファーゲート234を切り替えさせないように制御するLレベルのチェンジ信号CHを出力し、期間Taよりも後の時刻t2と時刻t3との間の期間において、トランスファーゲート234を切り替えさせるように制御する論理レベルがLレベルからHレベルに変化するチェンジ信号CHを出力し、時刻t2と時刻t3との間の期間よりも後の期間Tcにおいて吐出制御信号DATAの内の上位印刷データSIHを含むブロックと、トランスファーゲート234を切り替えさせないように制御するLレベルのチェンジ信号CHを出力する。すなわち、制御機構10は、トランスファーゲート234が切り替わらないタイミングで吐出制御信号DATAの出力を行い、トランスファーゲート234が切り替わるタイミングで吐出制御信号DATAの出力を停止する。これにより、トランスファーゲート234がオンからオフに切り替わる際に生じるノイズ成分が吐出制御信号DATAに重畳するおそれが低減する。よって、印刷装置1に誤動作が生じるおそれが低減する。
【0104】
さらに、プリントヘッド21が1500個以上の吐出部600を有するが故に、吐出部600に対応する1500個以上のトランスファーゲート234を有する場合、トランスファーゲート234が切り替わる際に大電流が生じ、そのため、トランスファーゲート234がオンからオフに切り替わる際に生じるノイズ成分が大きくなる悪阻があるが、このような場合であっても、本実施形態における印刷装置1、及び制御機構10は、トランスファーゲート234が切り替わらないタイミングで吐出制御信号DATAの出力を行い、トランスファーゲート234が切り替わるタイミングで吐出制御信号DATAの出力を停止することで、トランスファーゲート234がオンからオフに切り替わる際に生じるノイズ成分が吐出制御信号DATAに重畳するおそれを低減することができ、したがって、印刷装置1に誤動作が生じるおそれが低減する。
【0105】
また、本実施形態における印刷装置1、及び制御機構10では、駆動信号COMの内、ノズル651からインクを吐出するための台形波形Adpが配置される期間Taにおいて、吐出制御信号DATAの内の上位印刷データSIHを含むブロックを出力し、駆動信号COMの内、ノズル651からインクを吐出するための台形波形Bdpが配置される期間Tbにおいて、吐出制御信号DATAの内の下位印刷データSILを含むブロックを出力し、駆動信号COMの内、ノズル651からインクが吐出されず微振動を行う台形波形Cdpが配置される期間Tcにおいて、吐出制御信号DATAの内のプログラムデータq0~q3を含むブロックを出力する。
【0106】
駆動信号COMに含まれる台形波形Adp,Bdp,Cdpの内、インクを吐出しない
台形波形Cdpは、インクを吐出しないが故に、台形波形Adp,Bdpと比較して最大電圧値が小さい。そのため、駆動信号COMにおいて台形波形Cdpが出力され時間は、台形波形Adp,Bdpが出力される時間よりも短い。また、吐出制御信号DATAの内の上位印刷データSIH、下位印刷データSILに含まれるデータ量は、プリントヘッド21が有するノズル651及び圧電素子60の増加に伴い増加するのに対して、吐出制御信号DATAの内のプログラムデータq0~q3は、プリントヘッド21が有するノズル651及び圧電素子60の増加に伴い増加するのに対して一定であり、さらに、吐出制御信号DATAの内の上位印刷データSIH、下位印刷データSILに含まれるデータ量と比較して少ない。したがって、吐出制御信号DATAの内のプログラムデータq0~q3を伝搬するのに要する時間は、吐出制御信号DATAの内の上位印刷データSIH、下位印刷データSILを伝搬するのに要する時間よりも短い。そして、駆動信号COMにおいて台形波形Adp,Bdpが出力される時間よりも短い台形波形Cdpが出力されタイミングで、吐出制御信号DATAにおいて、上位印刷データSIH、下位印刷データSILが伝搬する時間よりも短いプログラムデータq0~q3を伝搬することで、媒体Pに対してインクを吐出する周期Tが、不用意に長くなるおそれが低減する。すなわち、媒体Pに画像を形成するために要する時間を短くすることが可能となり、印刷装置1における生産性を高めることができる。
【0107】
7.変形例
上述した実施形態における印刷装置1、及び制御機構10では、制御機構10に含まれる制御回路100が、期間Taにおいて吐出制御信号DATAの内の上位印刷データSIHを出力し、期間Tbにおいて吐出制御信号DATAの内の下位印刷データSILを出力し、期間Tcにおいて吐出制御信号DATAの内のプログラムデータq0~q3を出力するとして説明を行ったが、期間Taにおいて吐出制御信号DATAの内の上位印刷データSIHと、吐出制御信号DATAの内の下位印刷データSILの少なくとも一部と、を出力し、期間Tbにおいて吐出制御信号DATAの内の下位印刷データSILの残りの一部を出力し、期間Tcにおいて吐出制御信号DATAの内のプログラムデータq0~q3を出力してもよく、期間Taにおいて吐出制御信号DATAの内の上位印刷データSIHと、吐出制御信号DATAの内の下位印刷データSILと、を出力し、期間Tbにおいて吐出制御信号DATAを出力せず、期間Tcにおいて吐出制御信号DATAの内のプログラムデータq0~q3を出力してもよい。すなわち、制御機構10に含まれる制御回路100が、トランスファーゲート234を切り替えるためのチェンジ信号CHを出力するタイミングで、吐出制御信号DATAの出力を停止していればよい。このような場合であっても、上述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0108】
以上、実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0109】
本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0110】
上述した実施形態及び変形例から以下の内容が導き出される。
【0111】
プリントヘッド駆動回路の一態様は、
駆動信号が供給されることで駆動する圧電素子を含み、前記圧電素子の駆動に伴い媒体
に液体を吐出する吐出部と、
前記圧電素子に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える切替スイッチと、
を含む吐出モジュールを1500個以上有するプリントヘッドを、前記圧電素子を駆動するか否かを選択するための第1情報ブロックと第2情報ブロックとを含む選択信号と、前記切替スイッチの切り替えタイミングを制御するために論理レベルを変化する切替タイミング信号とにより駆動するプリントヘッド駆動回路であって、
前記プリントヘッド駆動回路は、
第1期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第1情報ブロックを出力し、
前記第1期間よりも後の第2期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させ、前記選択信号の論理レベルを変化させず、
前記第2期間よりも後の第3期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第2情報ブロックを出力する。
【0112】
このプリントヘッド駆動回路は、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号を、第1情報ブロックと第2情報ブロックに分け、第1期間において、選択信号の内の第1情報ブロックと、切替スイッチを切り替えさせないように制御する論理レベルが変化しない前記切替タイミング信号とを出力し、第1期間よりも後の第2期間において、切替スイッチを切り替えさせるように制御する論理レベルが変化する切替タイミング信号を出力し、第2期間よりも後の第3期間において、選択信号の内の前記第2情報ブロックと、論理レベルが変化しない前記切替タイミング信号とを出力する。すなわち、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号を出力するタイミングにおいて、切替スイッチは切り替えられず、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号を出力しないタイミングで、切替スイッチの切り替えが実行される。その結果、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号に、切替スイッチが切り替わることにより生じたノイズが重畳するおそれが低減される。
【0113】
前記プリントヘッド駆動回路の一態様において、
前記選択信号は、第3情報ブロックを含み、
前記第2期間と前記第3期間との間の第4期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第3情報ブロックを出力し、
前記第4期間と前記第3期間との間の第5期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させ、前記選択信号の論理レベルを変化させなくてもよい。
【0114】
このプリントヘッド駆動回路によれば、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号を、第1情報ブロックと第2情報ブロックと第3情報ブロックとに分け、第2期間と第3期間との間の第4期間において、前記選択制御信号の内の第3情報ブロックと、論理レベルが変化しない前記切替タイミング信号とを出力し、第4期間と第3期間との間の第5期間において、論理レベルが変化する前記切替タイミング信号を出力する。すなわち、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号を出力するタイミングにおいて、切替スイッチは切り替えられず、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号を出力しないタイミングで、切替スイッチの切り替えが実行される。その結果、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号に、切替スイッチが切り替わることにより生じたノイズが重畳するおそれが低減される。
【0115】
さらに、このプリントヘッド駆動回路によれば、切替スイッチが切り替わるタイミングを複数備えることが可能となり、プリントヘッドからインクを吐出させるための駆動信号の波形をより詳細に制御することが可能となる。よって、インクの吐出精度をさらに向上させることが可能となる。
【0116】
前記プリントヘッド駆動回路の一態様において、
前記選択信号の伝搬タイミングを規定するクロック信号し出力し、
前記第2期間において前記クロック信号の出力を停止してもよい。
【0117】
前記プリントヘッド駆動回路の一態様において、
前記選択信号及び前記切替タイミング信号を出力する制御信号出力回路を備えてもよい。
【0118】
前記プリントヘッド駆動回路の一態様において、
前記駆動信号は、前記吐出部から液体を吐出させるように前記圧電素子を駆動する第1駆動波形と、前記吐出部から液体が吐出されないように前記圧電素子を駆動する第2駆動波形とを含み、
前記第1駆動波形の少なくとも一部は前記第1期間に配置され、前記第2駆動波形は、前記第1駆動波形よりも後に配置されてもよい。
【0119】
前記プリントヘッド駆動回路の一態様において、
前記第1情報ブロックは、前記圧電素子の駆動を制御するための駆動データを含み、
前記第2情報ブロックは、前記圧電素子の駆動パターンを規定する駆動パターンデータを含み、
前記第2駆動波形の少なくとも一部は、前記第3期間に配置されてもよい。
【0120】
吐出部から液体を吐出させるように圧電素子を駆動する第1駆動波形と比較して、吐出部から液体が吐出されないように圧電素子を駆動する第2駆動波形の最大電圧値は小さい。そのため、第2駆動波形の周期に対して第1駆動波形の周期は短い。また、第1情報ブロックに含まれる圧電素子の駆動を制御するための駆動データは、プリントヘッドが備える各吐出部に割り当てられるのに対して、第2情報ブロックに含まれる圧電素子の駆動パターンを規定する駆動パターンデータは、プリントヘッドが備える各吐出部に共通に割り当てられる。そのため、圧電素子の駆動パターンを規定する駆動パターンデータを含み第2情報ブロックのデータ長は、圧電素子の駆動を制御するための駆動データを含む第1情報ブロックのデータ長よりも短い。
【0121】
このプリントヘッド駆動回路によれば、データ長の短い駆動パターンデータを含む第2情報ブロックを出力するタイミングを、波形周期の短い第2駆動波形が出力されるタイミングとすることで、プリントヘッドに駆動信号が出力される期間と、プリントヘッドに選択信号が出力される期間との差を小さくすることが可能となり、その結果、インクの吐出周波数を向上させることができる。すなわち、当該プリントヘッド駆動回路を備えた印刷装置における生産性をさらに高めることが可能となる。
【0122】
前記プリントヘッド駆動回路の一態様において、
前記駆動信号を出力する駆動信号出力回路を備えてもよい。
【0123】
印刷装置の一態様は、
駆動信号が供給されることで駆動する圧電素子を含み、前記圧電素子の駆動に伴い媒体に液体を吐出する吐出部と、前記圧電素子に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える切替スイッチと、を含む吐出モジュールを1500個以上有するプリントヘッドと、
前記プリントヘッドを駆動する前記圧電素子を駆動するか否かを選択するための第1情報ブロックと第2情報ブロックとを含む選択信号と、前記切替スイッチの切り替えタイミングを制御するために論理レベルを変化する切替タイミング信号とを出力するプリントヘッド駆動回路と、
を備え、
前記プリントヘッド駆動回路は、
第1期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第1情報ブロックを出力し、
前記第1期間よりも後の第2期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させ、前記選択信号の論理レベルを変化させず、
前記第2期間よりも後の第3期間において、前記切替タイミング信号の論理レベルを変化させず、前記選択信号の論理レベルが変化する前記第2情報ブロックを出力する。
【0124】
この印刷装置によれば、プリントヘッド駆動回路は、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号を、第1情報ブロックと第2情報ブロックに分け、第1期間において、選択信号の内の第1情報ブロックと、切替スイッチを切り替えさせないように制御する論理レベルが変化しない前記切替タイミング信号とを出力し、第1期間よりも後の第2期間において、切替スイッチを切り替えさせるように制御する論理レベルが変化する切替タイミング信号を出力し、第2期間よりも後の第3期間において、選択信号の内の前記第2情報ブロックと、論理レベルが変化しない前記切替タイミング信号とを出力する。すなわち、プリントヘッド駆動回路は、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号を出力するタイミングにおいて、切替スイッチは切り替えられず、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号を出力しないタイミングで、切替スイッチの切り替えが実行される。その結果、1500個以上の前記圧電素子の駆動を制御するための選択信号に、切替スイッチが切り替わることにより生じたノイズが重畳するおそれが低減される。したがって、印刷装置に誤動作が生じるおそれが低減される。
【符号の説明】
【0125】
1…印刷装置、2…インク容器、10…制御機構、20…キャリッジ、21…プリントヘッド、30…移動機構、31…キャリッジモーター、32…無端ベルト、40…搬送機構、41…搬送モーター、42…搬送ローラー、50…駆動回路、51…駆動信号出力回路、52…基準電圧信号出力回路、60…圧電素子、90…リニアエンコーダー、100…制御回路、110…電源回路、200…駆動信号選択回路、222a…第1シフトレジスター、222b…第2シフトレジスター、224a…第1ラッチ回路、224b…第2ラッチ回路、226…デコーダー、230…選択回路、232…インバーター、234…トランスファーゲート、240…吐出モジュール、260…制御ロジック回路、261…SP用シフトレジスター群、262…選択制御信号生成群、270…選択制御回路、600…吐出部、601…圧電体、611,612…電極、621…振動板、627…固定部、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、649…島部、651…ノズル、661…インク供給口、P…媒体