(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】液体吐出装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2020057802
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶸田 周平
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-094656(JP,A)
【文献】特開2018-171854(JP,A)
【文献】特開2008-001084(JP,A)
【文献】特開2020-032626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルに連通した圧力室、記録媒体に対し前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を前記圧力室に付与する駆動素子、及び、複数の前記ノズルが開口した吐出面を有するヘッドと、
前記駆動素子に入力される駆動信号を生成するための第1電圧を供給する第1電源回路、及び、前記第1電圧よりも高い電圧である第2電圧を供給する第2電源回路と、
前記第1電源回路又は前記第2電源回路に切り換える電源切換器と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記吐出面と前記記録媒体のうち前記吐出面に対向する対向面との間隔に応じて、前記ノズルから吐出される前記液滴の飛翔速度が変化するように前記駆動信号の前記電圧を選択する電圧選択処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧を供給するように前記第1電源回路及び前記第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧に基づいて、前記ノズルから吐出される前記液滴の量を補正する液滴量補正処理を実行
し、
前記液滴量補正処理では、前記第1電圧が選択された場合、前記ノズルから吐出される前記液滴の数を前記第2電圧が選択された場合よりも多くする、液体吐出装置。
【請求項2】
ノズルに連通した圧力室、記録媒体に対し前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を前記圧力室に付与する駆動素子、及び、複数の前記ノズルが開口した吐出面を有するヘッドと、
前記駆動素子に入力される駆動信号を生成するための第1電圧を供給する第1電源回路、及び、前記第1電圧よりも高い電圧である第2電圧を供給する第2電源回路と、
前記第1電源回路又は前記第2電源回路に切り換える電源切換器と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記吐出面と前記記録媒体のうち前記吐出面に対向する対向面との間隔に応じて、前記ノズルから吐出される前記液滴の飛翔速度が変化するように前記駆動信号の前記電圧を選択する電圧選択処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧を供給するように前記第1電源回路及び前記第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧に基づいて、前記ノズルから吐出される前記液滴の量を補正する液滴量補正処理を実行
し、
前記液滴量補正処理では、前記第2電圧が選択された場合、前記ノズルから吐出される前記液滴の数を前記第1電圧が選択された場合よりも少なくする、液体吐出装置。
【請求項3】
ノズルに連通した圧力室、記録媒体に対し前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を前記圧力室に付与する駆動素子、及び、複数の前記ノズルが開口した吐出面を有するヘッドと、
前記駆動素子に入力される駆動信号を生成するための第1電圧を供給する第1電源回路、及び、前記第1電圧よりも高い電圧である第2電圧を供給する第2電源回路と、
前記第1電源回路又は前記第2電源回路に切り換える電源切換器と、
センサと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記吐出面と前記記録媒体のうち前記吐出面に対向する対向面との間隔を、1つの前記記録媒体に対して複数回、前記センサを用いて測定する測定処理を実行し、
前記間隔に応じて、前記ノズルから吐出される前記液滴の飛翔速度が変化するように前記駆動信号の前記電圧を選択する電圧選択処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧を供給するように前記第1電源回路及び前記第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行し、
波形が互いに異なる複数の前記駆動信号を生成する波形生成部と、
前記駆動素子に前記駆動信号を出力するヘッド駆動回路と、を備え、
前記制御装置は、
画像データに基づいて、複数の前記波形から、吐出される前記液滴の量に応じた前記波形を選択する波形選択処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択した前記電圧の電圧選択データ、及び、前記波形選択処理により選択した前記波形の波形選択データを更新する頻度を調整する更新頻度調整処理を実行し、
前記更新頻度調整処理では、前記電圧選択データの更新頻度を前記波形選択データの前記更新頻度よりも少なくする、液体吐出装置。
【請求項4】
ノズルに連通した圧力室、記録媒体に対し前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を前記圧力室に付与する駆動素子、及び、複数の前記ノズルが開口した吐出面を有するヘッドと、
前記駆動素子に入力される駆動信号を生成するための第1電圧を供給する第1電源回路、及び、前記第1電圧よりも高い電圧である第2電圧を供給する第2電源回路と、
前記第1電源回路又は前記第2電源回路に切り換える電源切換器と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記吐出面と前記記録媒体のうち前記吐出面に対向する対向面との間隔に応じて、前記ノズルから吐出される前記液滴の飛翔速度が変化するように前記駆動信号の前記電圧を選択する電圧選択処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧を供給するように前記第1電源回路及び前記第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行し、
波形が互いに異なる複数の前記駆動信号を生成する波形生成部と、
前記駆動素子に前記駆動信号を出力するヘッド駆動回路と、を備え、
前記制御装置は、
画像データに基づいて、複数の前記波形から、吐出される前記液滴の量に応じた前記波形を選択する波形選択処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択した前記電圧の電圧選択データ、及び、前記波形選択処理により選択した前記波形の波形選択データを更新する頻度を調整する更新頻度調整処理を実行し、
前記更新頻度調整処理では、前記電圧選択データの更新頻度を前記波形選択データの前記更新頻度よりも少なくし、
前記電圧選択処理において選択する前記電圧の候補の数、及び、前記波形選択処理において選択する前記波形の候補の数を、吐出される前記液滴による印刷のモードに応じて調整する候補数調整処理を実行する、液体吐出装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記候補数調整処理では、前記印刷の速度が速い前記印刷のモードほど、前記電圧選択処理において選択する前記電圧の候補の数、及び、前記波形選択処理において選択する前記波形の候補の数を減らす、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
ノズルに連通した圧力室、記録媒体に対し前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を前記圧力室に付与する駆動素子、及び、複数の前記ノズルが開口した吐出面を有するヘッドと、
前記駆動素子に入力される駆動信号を生成するための第1電圧を供給する第1電源回路、及び、前記第1電圧よりも高い電圧である第2電圧を供給する第2電源回路と、
前記第1電源回路又は前記第2電源回路に切り換える電源切換器と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記吐出面と前記記録媒体のうち前記吐出面に対向する対向面との間隔に応じて、前記ノズルから吐出される前記液滴の飛翔速度が変化するように前記駆動信号の前記電圧を選択する電圧選択処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧を供給するように前記第1電源回路及び前記第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行し、
1つの前記記録媒体内における前記間隔の分布に応じて、前記電圧選択処理における前記間隔と前記電圧との対応関係を調整する対応関係調整処理を実行する、液体吐出装置。
【請求項7】
前記ヘッドは、複数個あり、
前記第1電源回路は、複数個あり、
前記第2電源回路は、複数個あり、
前記電源切換器は、複数個あり、
更に、前記記録媒体を搬送方向に沿って搬送する搬送装置と、
保持台と、複数個の前記ヘッドと、複数個の前記第1電源回路と、複数個の前記第2電源回路と、複数個の前記電源切換器とを有するヘッドバーであって、複数個の前記ヘッドが前記保持台に前記搬送方向と交差する交差方向へ並べられているヘッドバーと、を備え、
前記ヘッドバーは、1つの前記ヘッドに対して少なくとも1つの前記第1電源回路、少なくとも1つの前記第2電源回路及び少なくとも1つの前記電源切換器を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記記録媒体を搬送方向に沿って搬送する搬送装置と、
前記ヘッドと、前記第1電源回路と、前記第2電源回路と、前記電源切換器とを支持するキャリッジであって、前記搬送方向と交差する交差方向に往復移動するキャリッジと、
液体を貯留するタンクと、
前記タンクから前記ヘッドへ液体を供給するためのチューブと、を備える請求項1~6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記記録媒体を支持する支持面を有する支持台と、
前記ヘッドと、前記第1電源回路と、前記第2電源回路と、前記電源切換器とを支持するキャリッジであって、前記支持面上を互いに交差する第1方向及び第2方向に移動可能なキャリッジと、を備える請求項1~6のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記記録媒体の凹凸を測定する複数のセンサと、
前記搬送方向において、前記搬送装置よりも上流に配置されたセンサ支持部材であって、複数の前記センサが前記交差方向に沿って並べられているセンサ支持部材と、を備える請求項7又は請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記キャリッジは、前記記録媒体の凹凸を測定するセンサを有する、請求項8又は請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
ノズルに連通した圧力室、記録媒体に対し前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を前記圧力室に付与する駆動素子、及び、複数の前記ノズルが開口した吐出面を有するヘッドと、
前記駆動素子に入力される駆動信号を生成するための第1電圧を供給する第1電源回路、及び、前記第1電圧よりも高い電圧である第2電圧を供給する第2電源回路と、
前記第1電源回路又は前記第2電源回路に切り換える電源切換器と、
制御装置と、を備えている液体吐出装置の制御方法であって、
前記制御装置は、
前記吐出面と前記記録媒体のうち前記吐出面に対向する対向面との間隔に応じて、前記ノズルから吐出される前記液滴の飛翔速度が変化するように前記駆動信号の前記電圧を選択する電圧選択処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧を供給するように前記第1電源回路及び前記第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行し、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧に基づいて、前記ノズルから吐出される前記液滴の量を補正する液滴量補正処理を実行
し、
前記液滴量補正処理では、前記第1電圧が選択された場合、前記ノズルから吐出される前記液滴の数を前記第2電圧が選択された場合よりも多くする、
液体吐出装置の制御方法。
【請求項13】
ノズルに連通した圧力室、記録媒体に対し前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を前記圧力室に付与する駆動素子、及び、複数の前記ノズルが開口した吐出面を有するヘッドと、
前記駆動素子に入力される駆動信号を生成するための第1電圧を供給する第1電源回路、及び、前記第1電圧よりも高い電圧である第2電圧を供給する第2電源回路と、
前記第1電源回路又は前記第2電源回路に切り換える電源切換器と、
制御装置と、を備えている液体吐出装置に、
前記吐出面と前記記録媒体のうち前記吐出面に対向する対向面との間隔に応じて、前記ノズルから吐出される前記液滴の飛翔速度が変化するように前記駆動信号の前記電圧を選択する電圧選択処理を実行させ、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧を供給するように前記第1電源回路及び前記第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行させ、
前記電圧選択処理により選択された前記電圧に基づいて、前記ノズルから吐出される前記液滴の量を補正する液滴量補正処理を実行さ
せ、
前記液滴量補正処理では、前記第1電圧が選択された場合、前記ノズルから吐出される前記液滴の数を前記第2電圧が選択された場合よりも多くさせる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液体吐出装置として、特許文献1の液体吐出装置が知られている。この液体吐出装置では、搬送ローラによりに搬送される記録用紙に、ヘッドからインクを吐出することにより、記録用紙に画像を印刷している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録用紙に凹凸があると、凹凸によって記録用紙とヘッドとの間隔が変化する。この変化に応じて、ヘッドから吐出されたインクが記録用紙に着弾する位置が所定の位置からずれて、画像品質が低下してしまう。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、記録媒体の凹凸による液体の着弾位置のずれを低減することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る液体吐出装置は、ノズルに連通した圧力室、記録媒体に対し前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を前記圧力室に付与する駆動素子、及び、複数の前記ノズルが開口した吐出面を有するヘッドと、前記駆動素子に入力される駆動信号を生成するための第1電圧を供給する第1電源回路、及び、前記第1電圧よりも高い電圧である第2電圧を供給する第2電源回路と、前記第1電源回路又は前記第2電源回路に切り換える電源切換器と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記吐出面と前記記録媒体のうち前記吐出面に対向する対向面との間隔に応じて、前記ノズルから吐出される前記液滴の飛翔速度が変化するように前記駆動信号の前記電圧を選択する電圧選択処理を実行し、前記電圧選択処理により選択された前記電圧を供給するように前記第1電源回路及び前記第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行する。
【0007】
本発明のある態様に係る液体吐出装置の制御方法は、ノズルに連通した圧力室、記録媒体に対し前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を前記圧力室に付与する駆動素子、及び、複数の前記ノズルが開口した吐出面を有するヘッドと、前記駆動素子に入力される駆動信号を生成するための第1電圧を供給する第1電源回路、及び、前記第1電圧よりも高い電圧である第2電圧を供給する第2電源回路と、前記第1電源回路又は前記第2電源回路に切り換える電源切換器と、制御装置と、を備えている液体吐出装置の制御方法であって、前記制御装置は、前記吐出面と前記記録媒体のうち前記吐出面に対向する対向面との間隔に応じて、前記ノズルから吐出される前記液滴の飛翔速度が変化するように前記駆動信号の前記電圧を選択する電圧選択処理を実行し、前記電圧選択処理により選択された前記電圧を供給するように前記第1電源回路及び前記第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行する。
【0008】
本発明のある態様に係るプログラムは、ノズルに連通した圧力室、記録媒体に対し前記ノズルから液滴を吐出させる圧力を前記圧力室に付与する駆動素子、及び、複数の前記ノズルが開口した吐出面を有するヘッドと、前記駆動素子に入力される駆動信号を生成するための第1電圧を供給する第1電源回路、及び、前記第1電圧よりも高い電圧である第2電圧を供給する第2電源回路と、前記第1電源回路又は前記第2電源回路に切り換える電源切換器と、制御装置と、を備えている液体吐出装置に、前記吐出面と前記記録媒体のうち前記吐出面に対向する対向面との間隔に応じて、前記ノズルから吐出される前記液滴の飛翔速度が変化するように前記駆動信号の前記電圧を選択する電圧選択処理を実行させ、前記電圧選択処理により選択された前記電圧を供給するように前記第1電源回路及び前記第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る液体吐出装置、その制御方法及びプログラムは、記録媒体の凹凸による液体の着弾位置のずれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る液体吐出装置を上方から視た概略図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1のヘッドバーを下方から視た概略図である。
図2(b)は、
図2(a)のヘッドを概略的に示す断面図である。
【
図3】
図1の液体吐出装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図3の制御装置、ヘッド駆動回路及びヘッドを示す機能ブロック図である。
【
図5】
図4のヘッド駆動回路の一部を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6(a)は、
図1の液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図6(b)は、
図6(a)の電圧制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態2に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態3に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9(a)は、実施の形態4に係る液体吐出装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。
図9(b)は、
図9の制御方法における印刷モードと波形選択データ及び電圧選択データのデータ量とを示す表である。
【
図10】実施の形態5に係る液体吐出装置の制御方法における電圧選択処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態6に係る液体吐出装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図12】実施の形態7に係る液体吐出装置を上方から視た概略図である。
【
図13】
図12の液体吐出装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図14】実施の形態8に係る液体吐出装置を上方から視た概略図である。
【
図15】
図14の液体吐出装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図16】実施の形態10に係る液体吐出装置のヘッドを側方から視た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
<液体吐出装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る液体吐出装置10は、
図1に示すように、例えば、インク等の液体を記録媒体Mに吐出するインクジェットプリンタである。液体吐出装置10は、筐体11、プラテン12、搬送装置20、1つ又は複数(例えば、4本)のヘッドバー40、タンク13及び制御装置50を備えている。なお、プラテン12よりもヘッドバー40側を上と称し、その反対側を下と称する。また、搬送装置20により記録媒体Mを搬送する方向を後と称し、その反対側を前と称する。上下方向及び前後方向に交差(例えば、直交)する方向を左右方向と称する。但し、液体吐出装置10の配置方向はこれに限定されない。
【0012】
筐体11は、プラテン12、搬送装置20、ヘッドバー40、タンク13及び制御装置50を収容している。プラテン12は、記録媒体Mが載置される上面を有している。なお、制御装置50の詳細については後述する。
【0013】
搬送装置20は、一対の搬送ローラ21及び搬送モータ22(
図3)を有している。一対の搬送ローラ21は、前後方向において互いの間にヘッドバー40を挟むように配置されており、その中心軸が左右方向に延びている。搬送モータ22は、搬送ローラ21に連結されており、搬送ローラ21を回転させ、記録媒体Mを後方に搬送する。
【0014】
ヘッドバー40は、筐体11に固定されており、矩形状であって、左右方向に記録媒体Mよりも長く延びている。ヘッドバー40の下面は、プラテン12の上面に対向している。4本のヘッドバー40は、前後方向に一列に並べられている。なお、ヘッドバー40の詳細については後述する。
【0015】
タンク13は、例えば、ヘッドバー40と同数が設けられ、互いに異なる種類の液体を貯留し、ヘッドバー40にチューブ14によって接続されている。例えば、4個のタンク13は、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの液体をそれぞれ貯留し、対応するヘッドバー40の液体をチューブ14を介して供給する。
【0016】
<ヘッドバーの構成>
ヘッドバー40は、
図2(a)に示すように、保持台41及び複数のヘッド42を有している。保持台41は、例えば、直方体形状であって、その下面にヘッド42の下面(吐出面42a)が現れるようにヘッド42を保持している。
【0017】
ヘッド42は、複数のノズル43を有している。複数のノズル43は、例えば、左右方向において互いに間隔を空けて列を成し、ノズル列を形成している。複数のヘッド42は、1つずつ前後方向に互い違いになるようにして左右方向に並べられている。複数のヘッド42における複数のノズル列が左右方向において記録媒体Mよりも長く延びるように、複数のノズル43が配列されている。
【0018】
ヘッド42は、
図2(b)に示すように、ノズル43、流路形成体44、駆動素子45及び振動板46を有している。流路形成体44は複数のプレートの積層体であり、各プレートには大小様々な孔及び溝が形成されている。各プレートが積層された積層体において、孔及び溝が組み合わされて、複数の流路が形成される。この流路は、複数のノズル43、複数の個別流路47及びマニホールド48を有している。
【0019】
ノズル43は、流路形成体44の下面(吐出面42a)に開口している。マニホールド48は、左右方向に延びて、その端に供給口を有している。供給口がチューブ14(
図1)等によりタンク13(
図1)に接続されている。個別流路47は、マニホールド48からノズル43に至り、この間に絞り流路47a、圧力室47b及び連通路47cを有し、これらはこの順に接続されている。つまり、圧力室47bは、ノズル43に連通している。
【0020】
このような構成において、液体はタンク13からチューブ14等を通り、供給口を介してマニホールド48に流入する。液体がマニホールド48を流れている間に、複数の個別流路47のそれぞれに流入する。個別流路47において、液体は絞り流路47a、圧力室47b及び連通路47cをこの順で流れ、ノズル43に供給される。
【0021】
振動板46は、流路形成体44上に配置され、圧力室47bの上側開口を覆っている。駆動素子45は、例えば、圧電素子であって、圧力室47b上の振動板46に配置され、制御装置50(
図1)に接続されている。駆動素子45は、制御装置50からの駆動信号が印加されると伸縮する。これに応じて、振動板46は変形して圧力室47bの容積を変更する。これにより、圧力室47bの液体に圧力が付与され、ノズル43から液体が吐出される。
【0022】
<制御装置の構成>
制御装置50は、
図3に示すように、コンピュータ及びネットワーク等の外部装置Eに接続され、外部装置Eから印刷データ及び記録媒体データ等の各種データを受信する。印刷データは、記録媒体Mに印刷される画像を示す画像データ(例えば、ラスタデータ)を含んでいる。記録媒体データは、記録媒体Mの凹凸情報を有している。
【0023】
制御装置50は、演算処理部51、記憶部52及び波形生成部53を有している。記憶部52は、演算処理部51にアクセス可能であって、RAM及びROM等により構成されている。RAMは、各種データを一時的に記憶する。この各種データとしては、印刷データ、及び、演算処理部51により変換されたデータが例示される。ROMは、プログラム及び各種データ処理を行うための制御プログラムを記憶している。なお、プログラムは、外部装置Eから取得されたものであってもよく、また、他の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0024】
演算処理部51は、CPU等のプロセッサ、及び、ASIC等の集積回路等により構成されている。演算処理部51は、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子45及び搬送モータ22を制御して、各種処理を行う。例えば、制御装置50は、印刷処理、電圧選択処理及び電源切換処理を実行する。この印刷処理、電圧選択処理及び電源切換処理については後述する。
【0025】
波形生成部53は、駆動素子45に出力される駆動信号の波形を規定する波形信号を生成する。波形生成部53は、専用の回路であってもよく、演算処理部51及び記憶部52により構成されていてもよい。波形信号は、例えば、パルス信号であって、吐出される液滴の量が異なる複数種類の波形信号を含んでいる。複数種類の波形信号は、例えば、所定量よりも少ない量(小玉)の液滴を吐出させる小玉波形信号、所定量(中玉)の液滴を吐出させる中玉波形信号、所定量よりも多い量(大玉)の液滴を吐出させる大玉波形信号、及び、液滴量が0である非吐出波形信号を有している。非吐出波形信号は、液滴を吐出しないようにノズル43の開口のメニスカスを振動させる信号である。
【0026】
演算処理部51は、例えば、複数種類の波形信号から1種類の波形信号を、画像データに基づいた1滴ごとの液滴量に応じてノズル43毎及び駆動周期毎に選択し、波形選択データを生成する。
【0027】
また、演算処理部51は、記録媒体データに基づいて、記録媒体Mのうちヘッド42の吐出面42aと、この吐出面42aに対向する対向面Maとの間隔(対向間隔)を取得する。そして、制御装置50は、この対向間隔に応じて駆動信号の電圧を規定する電圧選択データを生成する。
【0028】
制御装置50はヘッド駆動回路60に制御線50aにより接続され、ヘッド駆動回路60は信号線60aにより駆動素子45に接続されている。また、制御装置50はヘッド駆動回路60の波形選択器65に信号線50bにより接続されている。このため、制御装置50は波形信号、波形選択データ及び電圧選択データをヘッド駆動回路60に出力し、ヘッド駆動回路60は駆動信号を生成して駆動素子45に出力する。これにより、駆動素子45が駆動信号に応じて駆動し、圧力室47bの容積が変更して、圧力室47bの液体に圧力が付与され、液滴がノズル43から吐出される。なお、ヘッド駆動回路60及び波形選択器65の詳細については、後述する。
【0029】
また、制御装置50は搬送駆動回路23に接続され、搬送駆動回路23は搬送モータ22に接続されている。制御装置50が制御信号を搬送駆動回路23に出力し、搬送駆動回路23はこの制御信号に基づいて生成した駆動信号を搬送モータ22に出力する。これにより、搬送モータ22の駆動タイミング、回転速度、回転量等が制御され、記録媒体Mが所定距離毎、後方に搬送される。
【0030】
このように、制御装置50は、駆動素子45による液体の吐出動作、及び、搬送モータ22による記録媒体Mの搬送動作等を実行する。この吐出動作と搬送動作を並行に実行しながら繰り返すことにより、ノズル43から吐出された液体により記録媒体Mに画像が形成され、この画像が搬送方向に並んで、印刷処理が進んでいく。
【0031】
<ヘッド駆動回路>
ヘッド駆動回路60は一つのヘッド42に対応して一つ設けられる。例えば、
図1及び
図2(a)に示すように、液体吐出装置10が4個のヘッドバー40を備え、各ヘッドバー40が9個のヘッド42を有する場合、液体吐出装置10には、36個のヘッド42が備えられているので、36個のヘッド駆動回路60が設けられる。
【0032】
図4に示すように、ヘッド駆動回路60は、FPGA等のコントローラ61、1つの電源回路群、ヘッドドライバIC63等を備える。電源回路群は、複数(例えば、7個)の電源回路62を有し、コントローラ61に接続されている。なお、コントローラ61は、D/Aコンバータ等を介して電源回路62に接続されていてもよい。
【0033】
複数の電源回路62は、互いに異なる所定の電圧を出力する。例えば、複数の電源回路62は、21Vの電圧を出力する21V電源回路62a、22Vの電圧を出力する22V電源回路62b、23Vの電圧を出力する23V電源回路62c、24Vの電圧を出力する24V電源回路62d、25Vの電圧を出力する25V電源回路62e、26Vの電圧を出力する26V電源回路62f、及び、27Vの電圧を出力する27V電源回路62gを有している。但し、電源回路62の数は複数であれば、7個に限定されない。また、電源回路62の出力電圧は21V~27Vに限定されない。
【0034】
電源回路62は、例えば、FET、インダクタ、抵抗、電解コンデンサ等の複数の電子部品で構成されるDC/DCコンバータを含んでおり、外部電源からの入力電力を所定の電圧に変換して電力を出力する。電源回路62は、配線64bによりヘッドドライバIC63と接続されている。
【0035】
ヘッドドライバIC63は、複数の電源切換器64、複数の波形選択器65及び複数の駆動信号生成回路66を有している。電源切換器64、波形選択器65及び駆動信号生成回路66のそれぞれは、ヘッド42の駆動素子45に一対一で対応して設けられている。このため、電源切換器64、波形選択器65及び駆動信号生成回路66のそれぞれの数は、ヘッド42が有する駆動素子45の数に等しい。なお、電源切換器64、波形選択器65及び駆動信号生成回路66のそれぞれの数は、ヘッド42が有する駆動素子45の数よりも多くてもよい。
【0036】
ヘッドドライバIC63は、制御線61aによりコントローラ61と接続され、信号線60aによりヘッド42における複数の駆動素子45にそれぞれ接続されている。コントローラ61は、制御装置50から取得した波形選択データ及び電圧選択データをヘッドドライバIC63に出力する。ヘッドドライバIC63では、波形選択器65に複数の波形信号が入力されており、波形選択器65は波形選択データに基づいて複数の波形信号から1つの波形信号を選択する。また、電源切換器64は電圧選択データに基づいて複数の電源回路62から1つの電源回路62を選択する。そして、駆動信号生成回路66は、選択された波形信号に基づいて、選択された電源回路62から電圧を受けて、駆動信号を生成し、駆動素子45に出力する。
【0037】
より具体的には、
図5に示すように、駆動信号生成回路66は、波形選択器65、電源切換器64及び駆動素子45に接続され、電源切換器64には1つの電源回路群(複数の電源回路62)が接続されている。なお、
図5では、1つの駆動素子45に対応する構成を示しているが、他の駆動素子45に対する構成もこれと同様である。このため、ヘッド42に含まれる複数の駆動素子45のそれぞれは電源切換器64及び駆動信号生成回路66を介して1つの電源回路群に接続されている。つまり、1つのヘッド42における複数の駆動素子45は、互いに同じ1つの電源回路群に駆動信号生成回路66等を介して接続されている。
【0038】
制御装置50は、電圧選択データ及び波形選択データをヘッド駆動回路60に出力する。ヘッド駆動回路60では、コントローラ61が、電圧選択データを電源切換器64に出力し、波形選択データを波形選択器65に出力する。また、制御装置50は、複数の波形信号を波形選択器65に出力する。
【0039】
電源切換器64は、FET等のスイッチング素子を有しており、複数の電源回路62と配線によりそれぞれ接続されている。配線は、駆動信号生成回路66に接続された主配線64a、及び、主配線64aから分岐して複数の電源回路62のそれぞれに接続された複数の分岐配線64bを有している。複数の分岐配線64bのそれぞれに切換スイッチ68が設けられている。電源切換器64は、電圧選択データに応じて切換スイッチ68を開閉する。これにより、電源回路62は、電圧選択データにより選択された出力電圧をヘッドドライバIC63に出力する。なお、駆動信号生成回路66には、グランド線である配線GNDと接続されている。また、27V電源回路62gは、配線64bによりヘッドドライバIC63と接続されると共に、配線45aにより駆動素子45に接続されている。
【0040】
例えば、電圧選択データにより、駆動素子45に供給される駆動信号の電圧に22Vが選択されている。この場合、電源切換器64は、22V電源回路62bに接続された配線64bの切換スイッチ68をオンにし、22V電源回路62b以外の他の電源回路62に接続された配線64bの切換スイッチ68をオフにする。これにより、22V電源回路62bと駆動信号生成回路66が配線64a、64bにより接続されて、22V電源回路62bから駆動信号生成回路66に22Vの電圧が供給される。そして、電源切換器64は、全ての切換スイッチ68をオフにすると、22V電源回路62bと駆動信号生成回路66とが切断される。
【0041】
波形選択器65は、FET等のスイッチング素子を有しており、制御線61aによりコントローラ61に接続されている。また、波形選択器65は、信号線50bにより制御装置50に接続されていると共に、複数の信号線65aにより駆動信号生成回路66に接続されている。制御装置50は、波形生成部53からの複数種類の波形信号を信号線50bにより複数の信号線65aにそれぞれ供給している。各信号線65aには、選択スイッチ69が設けられている。波形選択器65は、コントローラ61からの波形選択データに応じて複数の選択スイッチ69のいずれか1つをオンにし、その他の選択スイッチ69をオフにする。これにより、駆動信号生成回路66は、複数の信号線65aのいずれか1つの信号線65aに接続されて、波形選択データに応じた波形信号が供給される。
【0042】
駆動信号生成回路66は、電源切換器64を介して電源回路62から供給された電圧、及び、波形選択器65により供給された波形信号に応じて、駆動信号を生成し駆動素子45に供給する。これにより、駆動素子45が駆動信号に応じて駆動し、ノズル43から液滴を吐出したり、ノズル43の開口のメニスカスを振動させたりする。
【0043】
<液体吐出装置の制御方法>
記録媒体Mが凹凸を有していると、凹凸により記録媒体Mとヘッド42の吐出面42aとの間隔が記録媒体Mの位置で異なる。このため、液滴がヘッド42の吐出面42aから吐出されて記録媒体Mに着弾する間の飛翔時間が、記録媒体Mの位置によって変化する。このため、記録媒体Mにおける液滴の着弾位置が所定位置からずれ、画質の低下を招いてしまう。
【0044】
そこで、液体吐出装置10の制御方法では、制御装置50は、吐出面42aと記録媒体Mのうち吐出面42aに対向する対向面Maとの間隔(対向間隔)に応じて、ノズル43から吐出される液滴の飛翔速度が変化するように駆動信号の電圧を選択する電圧選択処理を実行する。また、制御装置50は、電圧選択処理により選択された電圧を供給するように第1電源回路及び第2電源回路のオン及びオフを切り換える電源切換処理を実行する。なお、以下では、7つの電源回路62について説明する。この7つの電源回路62のうちの、任意の2つの電源回路が第1電源回路及び第2電源回路である。
【0045】
具体的には、
図6(a)に示すように、制御装置50は、記録媒体データを取得する(ステップS1)。記録媒体データは、記録媒体Mの凹凸情報であって、記録媒体Mの対向面Maの各位置における、記録媒体Mの凹凸寸法である。凹凸寸法は、上下方向に直交する面に記録媒体Mを載置した際の、上下方向における所定位置(例えば、記録媒体Mの最下位置)から対向面Maまでの距離を有している。この記録媒体データは、センサ等により予め取得された情報であってもよい。
【0046】
制御装置50は、電圧選択処理を実行する(ステップS2)。画像は、解像度に応じた複数の画素により構成され、画素は、ヘッド42から吐出された液滴が記録媒体Mに着弾したドットによって形成される。よって、制御装置50は、液滴を吐出するための駆動信号を画素毎に設定するために、記録媒体データを複数の画素に対応させて分割する。これにより、記録媒体Mの凹凸寸法が画素毎に得られる。
【0047】
電圧選択処理では、
図6(b)に示すように、制御装置50は記録媒体データに基づき対向間隔を取得する(ステップS21)。この記録データにおける記録媒体Mの最下位置は、プラテン12の上面と一致する。そして、プラテン12の上面とヘッド42の吐出面42aとの間隔(基準間隔)は、記憶部52等により予め記憶されている。このため、制御装置50は、この基準間隔、及び、記録媒体データによる記録媒体Mの最下位置と対向面Maとの間の距離から、記録媒体Mの対向面Maと吐出面42aとの間の対向間隔を画素毎に演算し、複数の対向間隔を取得する。
【0048】
制御装置50は、複数の対向間隔の平均値(平均間隔)を演算する。ここで、制御装置50は、少なくとも印刷する画像を含む領域内の全ての画素に関する対向間隔について平均値を演算する。なお、記録媒体Mの対向面Maの全領域について、対向間隔の平均値を演算してもよい。
【0049】
また、制御装置50は、平均間隔と各対向間隔との偏差(偏差=対向間隔-平均間隔)を演算する(ステップS22)。対向面Maが吐出面42a側に突出している凸部分では、対向間隔が平均間隔よりも小さく、偏差は負(マイナス)になる。一方、対向面Maが吐出面42aから離れる方向に窪んでいる凹部分では、対向間隔が平均間隔よりも大きく、偏差は正(プラス)になる。
【0050】
制御装置50は、平均間隔を、駆動信号の標準電圧に対応付けて設定する(ステップS23)。駆動信号の電圧は、ヘッド駆動回路60から供給される電圧であって、ヘッド駆動回路60の電源回路62の出力電圧である。標準電圧は、駆動信号の複数の電圧の代表値であって、例えば、電圧の平均値である。この実施の形態では、ヘッド駆動回路60には7つの電源回路62が備えられており、これら21V~27Vの電圧を出力する。この場合、標準電圧は、21V~27Vの電圧のうち、24Vに設定される。
【0051】
制御装置50は、対向間隔の偏差に応じて電圧選択データを取得する(ステップS24)。ここで、偏差が小さいほど、対向間隔が小さくなるため、液滴の飛翔速度を遅くするように、平均間隔の駆動電圧よりも低い駆動信号の電圧を選択する電圧選択データを取得する。これにより、記録媒体Mの凹凸によらず液滴の飛翔時間が互いに揃えられる。
【0052】
例えば、制御装置50は、平均間隔が5mmである場合、この平均間隔の画素に対する駆動信号の電圧に標準電圧24Vを選択する。また、制御装置50は、対向間隔が3mm未満であって、偏差が-2mm未満の画素に対する駆動信号の電圧には、21Vを選択する。制御装置50は、対向間隔が3mm以上且つ4mm未満であって、偏差が-2mm以上且つ-1mm以下の画素に対する駆動信号の電圧には、22Vを選択する。制御装置50は、対向間隔が4mm以上且つ5mm未満であって、偏差が-1mm以上且つ0mm未満の画素に対する駆動信号の電圧には、23Vを選択する。制御装置50は、対向間隔が5mmより大きく且つ6mm以下であって、偏差が0mmよりも大きく且つ+1mm以下の画素に対する駆動信号の電圧には、25Vを選択する。制御装置50は、対向間隔が6mmより大きく且つ7mm以下であって、偏差が+1mmより大きくかつ+2mm以下の画素に対する駆動信号の電圧には、26Vを選択する。制御装置50は、対向間隔が7mmより大きく、偏差が+2mmより大きい画素に対する駆動信号の電圧には、27Vを選択する。
【0053】
このように選択された電圧が駆動信号として駆動素子45に供給され、駆動信号に応じて駆動素子45が駆動して、液滴が吐出される。このため、液滴の飛翔速度は、駆動素子45に供給される電圧に応じて変化する。例えば、電圧選択データにより標準電圧24Vが選択された場合、飛翔速度は10m/secとなる。そして、電圧が大きくなるほど、飛翔速度が速くなる。
【0054】
このような電圧選択処理により電圧選択データが取得されると、制御装置50は、
図6(a)に戻り、画像データを取得する(ステップS3)。制御装置50は、画像データに基づいて、複数の波形から、吐出される液滴の量に応じて波形を選択する波形選択処理を実行する(ステップS4)。ここでは、制御装置50は、画像データを複数の画素に対応させて分割し、分割された複数の画像データの濃度に応じて液滴量を選択し、液滴量に対応する波形の波形選択データを生成する。例えば、濃度が濃いほど、液滴の量が多くなるように、制御装置50は、波形信号を選択し、波形選択データを生成する。
【0055】
そして、制御装置50は、電圧選択処理により生成された電圧選択データ、波形選択処理により生成された波形選択データ、及び、波形生成部53により生成された複数の波形信号を画素毎にヘッド駆動回路60に出力する。画素は、ノズル43及び駆動素子45の駆動周期に対応しているため、電圧選択データ、波形選択データ及び波形信号はノズル43毎及び駆動周期毎にヘッド駆動回路60に出力される。
【0056】
この電圧選択データに基づいて、ヘッド駆動回路60では電源切換器64が、駆動信号生成回路66に接続する電源回路62を切り換える。これにより、電圧選択処理により選択された電圧を供給するように電源回路62が切り換えられる。このため、制御装置50は、電圧選択データをヘッド駆動回路60に出力することによって、電源切換処理を実行することができる(ステップS5)。
【0057】
また、ヘッド駆動回路60では、波形選択器65が波形選択データに基づいて複数の波形信号から1つの波形信号を選択し、駆動信号生成回路66に出力する。駆動信号生成回路66は、選択された波形信号に基づいて駆動信号を、接続された電源回路62から供給された電圧により増幅して、駆動信号をノズル43毎及び駆動周期毎に生成し、駆動素子45に出力する。これにより、駆動素子45が駆動信号に応じて駆動すると、画像データに基づく量の液滴がノズル43から吐出され、記録媒体データに基づく速度で飛翔し、記録媒体Mに着弾する。記録媒体M上には液滴によりドットが形成され、ドットを画素として画像が印刷される。
【0058】
このように、制御装置50は、対向間隔に応じて液滴の飛翔速度が変化するように駆動信号の電圧を選択する電圧選択処理を実行した。ここで、制御装置50は、対向間隔が大きいほど、飛翔速度が速くなるように、第1電源回路から、第1電源回路の第1電圧よりも高い第2電圧を供給する第2電源回路に切り替える。これにより、記録媒体Mの凹凸に係わらず液滴の飛翔時間が互いに揃えられ、記録媒体Mの凹凸による着弾位置のずれが低減され、画像の低下が抑制される。
【0059】
また、ラインヘッド方式の液体吐出装置10では、シリアルヘッド方式の液体吐出装置10よりも高速度で印刷することができる。また、ラインヘッド方式の液体吐出装置10では、ヘッド42が移動しないため、ヘッド42を移動する装置及び制御が必要なく、液体吐出装置10の低コスト化及び簡素化が図られる。
【0060】
なお、記録媒体Mのうち印刷領域が平坦であって、この印刷領域の対向面Maと吐出面42aとの対向間隔が均等であれば、対向間隔に応じた駆動信号の電圧(電圧選択処理(S2)で選択される電圧)も、印刷領域の全てにおいて同一になる。
【0061】
また、
図6(a)のフローチャートにおいてS1~S4はこの順序でなくてもよい。例えばS1~S2とS3~S4とは並行して実施されてもよいし、S3~S4の後にS1~S2を実施してもよい。
【0062】
更に、上記では、対向間隔の平均値を代表値としたが、対向間隔の代表値はこれに限定されない。例えば、対向間隔の分布に応じて、対向間隔の最頻値、中央値、上限値及び下限値等を代表値とすることができる。
【0063】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る液体吐出装置10では、制御装置50は、電圧選択処理により選択された電圧に基づいて、ノズル43から吐出される液滴の量を補正する液滴量補正処理を実行する。
【0064】
上述の通り、制御装置50は、対向間隔に応じて液滴の飛翔速度が変化するように駆動信号の電圧を選択した。ここで、対向間隔が小さいほど、駆動信号の電圧が低い電圧選択データを取得すると、駆動信号に応じてノズル43から吐出される液滴の量が減少し、画像の濃度が低下する。一方、対向間隔が大きいほど、駆動信号の電圧が高い電圧選択データを取得すると、駆動信号に応じてノズル43から吐出される液滴の量が増加し、画像の濃度が増加する。
【0065】
そこで、例えば、
図7に示すように、制御装置50は液滴量補正処理を実行する。
図7のフローチャートでは、
図6(a)のフローチャートにおけるステップS4の処理とステップS5の処理との間に、ステップS6の液滴量補正処理を実行する。この液滴量補正処理では、制御装置50は、
図6(b)のステップS22で取得した対向間隔の偏差を用いる。
【0066】
具体的には、ステップS6の液滴量補正処理では、制御装置50は、1駆動周期における、駆動信号の種類を変更したり、駆動信号の数を変更したりする。ここで、波形信号の種類を、画像データに基づいた基本的な波形信号の種類よりも増やしてもよい。例えば、基本的な波形信号として、非吐出波形信号、小玉波形信号、中玉波形信号及び大玉波形信号の4種類が設けられている。これに対し、補正用の波形信号として、小玉よりも少ない量(極小玉)の液滴を吐出させる極小玉波形信号、中玉よりも多く大玉よりも少ない量(中大玉)の液滴を吐出させる中大玉波形信号、大玉よりも多い量(超大玉)の液滴を吐出させる超大玉波形信号が設けられてもよい。
【0067】
対向間隔が平均間隔よりも小さいとき、平均間隔に対応する駆動信号の電圧(例えば、標準電圧)よりも低い電圧が選択される。このため、制御装置50は、画像データに基づいた液滴量よりも多い液滴量の波形信号を選択するように、波形選択データを補正する。ここで、対向間隔の偏差が小さいほど、ノズル43から吐出される液滴の量が多くなるように液滴量を補正してもよい。
【0068】
例えば、画像データに基づいた波形信号が中玉波形信号である。この場合、制御装置50は、偏差が第1所定範囲内であるとき、中玉よりも1段階、液滴量が多い中大玉波形信号に波形信号を変更する。また、制御装置50は、偏差が第1所定範囲よりも大きい第2所定範囲内であるとき、中玉よりも2段階、液滴量が多い大玉波形信号に波形信号を変更する。更に、制御装置50は、偏差が第2所定範囲よりも大きいとき、中玉よりも3段階、液滴量が多い超大玉波形信号に波形信号を変更する。
【0069】
また、対向間隔が平均間隔よりも小さいとき、制御装置50は、画像データに基づいた液滴の吐出回数よりも多い吐出回数になるように、1つの吐出周期における波形信号の数を補正してもよい。ここで、対向間隔の偏差が小さいほど、記録媒体Mの単位面積又は1画素に対するノズル43から吐出される液滴の数が多くなるように液滴数を補正してもよい。
【0070】
例えば、1画素に対する吐出回数がn回である。この場合、制御装置50は、偏差が第1所定範囲内であるとき、1画素に対する吐出回数をm回増やす。また、制御装置50は、偏差が第2所定範囲内であるとき、1画素に対する吐出回数を2m回増やす。更に、制御装置50は、偏差が第2所定範囲よりも大きいとき、1画素に対する吐出回数を3m回増やす。
【0071】
このように、液滴量が多い波形信号に変更したり、1画素に対する吐出回数を増やしたりすることにより、1画素に対する1つのノズル43から吐出される液滴の量が増加し、この画素に対応する位置のドットが大きくなる。よって、対向間隔が狭く、対向間隔の偏差が小さく、駆動信号の電圧が低い場合であっても、画像の濃度が低下することを抑制し、濃度ムラによる画質の低下を抑制することができる。
【0072】
一方、対向間隔が平均間隔よりも大きいとき、標準電圧よりも高い電圧が選択される。このため、制御装置50は、画像データに基づいた液滴量よりも少ない液滴量の波形信号を選択するように、波形選択データを補正する。ここで、対向間隔の偏差が大きいほど、ノズル43から吐出される液滴の量が少なくなるように液滴量を補正してもよい。
【0073】
例えば、画像データに基づいた波形信号が中玉波形信号である。この場合、制御装置50は、偏差が第3所定範囲内であるとき、中玉よりも1段階、液滴量が少ない小玉波形信号に波形信号を変更する。また、制御装置50は、偏差が第3所定範囲よりも大きいとき、中玉よりも2段階、液滴量が少ない極小玉波形信号に波形信号を変更する。
【0074】
また、制御装置50は、画像データに基づいた液滴の吐出回数よりも少ない吐出回数になるように、1つの吐出周期における波形信号の数を補正する。ここで、対向間隔の偏差が大きいほど、記録媒体Mの単位面積又は1画素に対するノズル43から吐出される液滴の数が少なくなるように液滴数を補正してもよい。
【0075】
例えば、1画素に対する吐出回数がp回である。この場合、制御装置50は、偏差が第3所定範囲内であるとき、1画素に対する吐出回数をq回減らす。また、制御装置50は、偏差が第3所定範囲よりも大きいとき、1画素に対する吐出回数を2q回減らす。
【0076】
これにより、1画素に対して1つのノズル43から吐出される液滴の量が減少し、この画素に対応する位置のドットが小さくなる。よって、対向間隔が広く、対向間隔の偏差が大きく、駆動信号の電圧が高い場合であっても、画像の濃度が増加することを抑制し、濃度ムラによる画質の低下を抑制することができる。
【0077】
このように、制御装置50は、液滴量補正処理では、第1電圧が選択された場合、ノズル43から吐出される液滴の数及び量の少なくともいずれか一方を第2電圧が選択された場合よりも多くする。これにより、駆動素子45に印加される電圧が低いと、吐出される液滴の量が減少するのに対し、吐出される液滴の数又は/及び量を多くすることにより、画像の濃度が低下することを抑制することができる。
【0078】
ここで、制御装置50は、液滴量補正処理では、第1電圧が選択された場合、ノズル43から吐出される液滴の数を第2電圧が選択された場合よりも多くする。このように、吐出される液滴の数を変化させることにより、濃度調整を行い易い。
【0079】
一方、制御装置50は、液滴量補正処理では、第2電圧が選択された場合、ノズル43から吐出される液滴の数及び量の少なくともいずれか一方を第1電圧が選択された場合よりも少なくする。これにより、駆動素子45に印加される電圧が高いと、吐出される液滴の量が増加するのに対し、吐出される液滴の数又は/及び量を少なくすることにより、画像の濃度が増加することを抑制することができる。
【0080】
ここで、制御装置50は、液滴量補正処理では、第2電圧が選択された場合、ノズル43から吐出される液滴の数を第1電圧が選択された場合よりも少なくする。このように、吐出される液滴の数を変化させることにより、濃度調整を行い易い。
【0081】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る液体吐出装置10は、
図4に示すように、波形が互いに異なる複数の駆動信号を生成する波形生成部53と、駆動素子45に駆動信号を出力するヘッド駆動回路60と、を備えている。制御装置50は、画像データに基づいて、吐出される液滴の量に応じて複数の波形から選択する波形選択処理を実行する。制御装置50は、電圧選択処理により選択した電圧の電圧選択データ、及び、波形選択処理により選択した波形の波形選択データを更新する頻度を調整する更新頻度調整処理を実行する。制御装置50は、更新頻度調整処理では、電圧選択データの更新頻度を波形選択データの更新頻度よりも少なくする。
【0082】
例えば、
図8に示すように、制御装置50は波形選択処理及び更新頻度処理を実行する。
図8のフローチャートでは、
図6(a)のフローチャートにおけるステップS4の処理とステップS5の処理との間に、ステップS7の更新頻度調整処理を実行する。
【0083】
更新頻度調整処理では、制御装置50は、波形選択処理により選択された波形選択データを各駆動周期でヘッド駆動回路60に出力する。これにより、ヘッド駆動回路60では、コントローラ61が1つの駆動周期に対し1つの波形選択データを取得して、波形選択データを駆動周期毎に波形選択器65に出力することにより、波形選択データを駆動周期単位で更新する。
【0084】
これに対し、制御装置50は、電圧選択処理により選択された電圧選択データを、複数(例えば、10個)に分割し、この分割データを駆動周期毎にヘッド駆動回路60に出力する。これにより、ヘッド駆動回路60は、1個の駆動周期に対し1/10の電圧選択データずつを取得していき、10個の駆動周期で1の電圧選択データを完成する。ヘッド駆動回路60は、この1つの電圧選択データが完成したところで、電圧選択データを電源切換器64に出力することにより、10個の駆動周期単位で更新する。
【0085】
このように、1つの波形選択データは1つの駆動周期単位で更新されるため、駆動周知に対応する画素毎に画像を生成し、画像データに応じた画像を記録媒体Mに再現することができる。これに対し、電圧選択データは10個の駆動周期単位で更新されるが、記録媒体Mの凹凸は画素に比べて大きいため、電圧選択データの更新頻度が波形選択データの更新頻度よりも少なくても、画質の低下を抑制することができる。また、電圧選択データを分割して伝送することにより、伝送データ量が少なくなるため、伝送線路幅を増やすことなく、データを制御装置50からヘッド駆動回路60へ伝送することができる。
【0086】
なお、電圧選択データを分割して伝送量を減少させても、データの伝送時間は駆動周期に収まらない場合、伝送クロックを増加させてもよい。これにより、伝送効率が高まるため、波形選択データ及び電圧選択データ等のデータの伝送による印刷速度の低下を抑制することができる。
【0087】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る液体吐出装置10では、制御装置50は、電圧選択処理において選択する電圧の候補の数、及び、波形選択処理において選択する波形の候補の数の少なくともいずれか一方の数を、吐出される液滴による印刷のモードに応じて調整する候補数調整処理を実行する。
【0088】
候補数調整処理では、制御装置50は、印刷の速度が速い印刷のモードほど、電圧選択処理において選択する電圧の候補の数、及び、波形選択処理において選択する波形の候補の数の少なくともいずれか一方の数を減らしてもよい。
【0089】
例えば、
図9(a)に示すように、制御装置50は候補数調整処理を実行する。
図9(a)のフローチャートでは、
図6(a)のフローチャートにおけるステップS1の処理の前に、ステップS8及びS9の処理を実行する。
【0090】
ステップS8では、制御装置50はモードデータを取得する。モードデータは、印刷処理の条件(印刷モード)であって、例えば、画像データと共に印刷データに含まれている。
図9(b)に示すように、印刷モードは、例えば、標準モード、高画質モード及び高速度モードを有し、高速度モードには着色画モード及び線画モードがある。
【0091】
高画質モードは、標準モードよりも画質を優先するモードであり、標準モードよりも印刷速度が遅い。高速度モードは、標準モードよりも印刷速度を優先するモードであり、標準モードよりも印刷速度が速い。着色画モードは、線画モードよりも液滴の量(ドットのサイズ)の再現性を優先するモードである。線画モードは、着色画モードよりも液滴の着弾位置(ドットの位置)の再現性を優先するモードである。
【0092】
ステップS9では、制御装置50は、候補数調整処理を実行する。印刷モードに応じて波形選択処理において選択する波形の候補数、及び、電圧選択処理において選択する電圧の候補数を調整する。標準モードは、4種類の基本波形信号(非吐出波形信号、小玉波形信号、中玉波形信号及び大玉波形信号)を波形の候補とし、4個の波形候補数を有している。また、標準モードは、21V、23V、25V及び27Vを電圧の候補として、4種類の電圧候補数を有する。このため、標準モードでは、波形選択データのデータ量は2ビットであり、電圧選択データのデータ量は2ビットである。
【0093】
この場合、例えば、制御装置50は、対向間隔の偏差が0未満且つ第1所定値以上の画素に対する駆動信号の電圧に23Vを選択する。また、制御装置50は、対向間隔の偏差が第1所定値未満の画素に対する駆動信号の電圧に21Vを選択する。更に、制御装置50は、対向間隔の偏差が0以上且つ第3所定値未満の画素に対する駆動信号の電圧に25Vを選択する。制御装置50は、対向間隔の偏差が第3所定値以上の画素に対する駆動信号の電圧に27Vを選択する。
【0094】
高画質モードは、4種類の基本波形信号に加えて更に3種類の波形信号(極小玉波形信号、中大玉波形信号及び超大玉波形信号)を波形の候補とし、7個の波形候補数を有している。また、高画質モードは、21V~27Vを電圧の候補として、7種類の電圧候補数を有する。このため、高画質モードでは、波形選択データのデータ量は3ビットであり、電圧選択データのデータ量は3ビットである。
【0095】
着色画モードは、中玉波形信号、中大玉波形信号、大玉波形信号及び超大玉波形信号を波形の候補とし、4個の波形候補数を有している。また、着色画モードは、23V及び25Vを電圧の候補として、2種類の電圧候補数を有する。この場合、例えば、制御装置50は、対向間隔の偏差が0未満の画素に対する駆動信号の電圧に23Vを選択する。制御装置50は、対向間隔の偏差が0以上の画素に対する駆動信号の電圧に25Vを選択する。このため、着色画モードでは、波形選択データのデータ量は2ビットであり、電圧選択データのデータ量は1ビットである。
【0096】
線画モードは、中玉波形信号及び大玉波形信号を波形の候補とし、2個の波形候補数を有している。また、線画モードは、21V、23V、25V及び27Vを電圧の候補として、4種類の電圧候補数を有する。このため、線画モードでは、波形選択データのデータ量は1ビットであり、電圧選択データのデータ量は2ビットである。
【0097】
このように、印刷モードに基づいて各データの候補数を調整することにより、印刷モードに応じた印刷を行うことができる。例えば、高画質モードでは、波形選択データ及び電圧選択データの両候補数が多いことにより、記録媒体Mの凹凸による着弾位置のずれ及び濃度ムラを低減し、高画質を実現することができる。
【0098】
一方、高速モードでは、波形選択データ及び電圧選択データの両候補数が少ないことにより、データの伝送時間の短縮化が図られ、高速印刷を実現することができる。ここで、高速モードでは、小玉波形信号及び極小玉波形信号を用いないことにより、高速印刷を行っても液滴の着弾位置のずれを低減し、画質の低下を抑えることができる。
【0099】
着色画モードでは、電圧選択データよりも波形選択データの候補数を多くすることにより、画像データに対するドットサイズのずれを低減し、画質の低下を抑制することができる。線画モードでは、波形選択データよりも電圧選択データの候補数を多くすることにより、記録媒体Mの凹凸によるドット位置のずれを低減し、画質の低下を抑制することができる。
【0100】
(実施の形態5)
実施の形態5に係る液体吐出装置10では、制御装置50は、記録媒体Mにおける間隔の分布に応じて、電圧選択処理における間隔と電圧との対応関係を調整する対応関係調整処理を実行する。
【0101】
例えば、
図10に示すように、制御装置50は対応関係調整処理を実行する。
図10のフローチャートでは、
図6(b)のフローチャートにおけるステップS22の処理に代えてステップS22´の処理を実行し、ステップS23の処理に代えてステップS23´の処理を実行する。この
図10のフローチャートにおけるステップS22´、S23´及びS24が対応関係調整処理に相当する。
【0102】
ステップS22´では、制御装置50は、ステップS21で取得した複数の対向間隔の分布を得て、この分布から対向間隔の代表値を取得する。例えば、記録媒体Mは、平坦部分を多く占め、この平坦部分から窪む凹部分がある。この場合、制御装置50は、平坦部分についての対向間隔が最も多く、この最頻値を対向間隔の代表値(代表間隔)として取得する。そして、制御装置50は、代表間隔と各対向間隔との偏差(偏差=対向間隔-代表間隔)を演算する。
【0103】
制御装置50は、代表間隔を、駆動信号の標準電圧に設定する(ステップS23´)。この標準電圧に、電圧候補(21V~27V)のうち最大電圧(27V)、又は、これよりも1段階小さい電圧(26V)を割り当てる。そして、制御装置50は、凹部分に対して対向間隔の偏差が小さいほど駆動信号の電圧が低くなるように、偏差に応じた電圧を選択して、電圧選択データを取得する(ステップS24)。
【0104】
このように、平坦部分及び凹部分を有する記録媒体Mに対して、平坦領域に代表間隔を設定し、この代表間隔に、電圧候補のうちの大きな電圧を割り当ている。このため、凹部分に対して対向間隔の偏差に割り当てる電圧の数を増やすことができ、記録媒体Mの凹凸による液滴の着弾位置のずれを低減することができる。
【0105】
一方、例えば、記録媒体Mは、平坦部分を多く占め、この平坦部分から突出する凸部分がある。この場合、平坦領域に代表間隔を設定し、この代表間隔に、電圧候補のうち最小電圧(21V)又はこれよりも1段階大きい電圧(22V)を割り当てる。このため、凸部分に対して対向間隔の偏差に割り当てる電圧の数を増やすことができ、記録媒体Mの凹凸による液滴の着弾位置のずれを低減することができる。
【0106】
なお、上記では、対向間隔の最頻値を代表値としたが、対向間隔の代表値はこれに限定されない。例えば、対向間隔の分布に応じて、対向間隔の中央値、上限値及び下限値等を代表値とすることができる。
【0107】
(実施の形態6)
実施の形態6に係る液体吐出装置10では、
図11に示すように、ヘッド42は、複数個あり、第1電源回路は、複数個あり、第2電源回路は、複数個あり、電源切換器64は、複数個ある。更に、液体吐出装置10は、記録媒体Mを搬送方向に沿って搬送する搬送装置20と、ヘッドバー40と、を備えている。ヘッドバー40は、保持台41(
図2(a))と、複数個のヘッド42と、複数個の第1電源回路と、複数個の第2電源回路と、複数個の電源切換器64とを有している。ヘッドバー40では、複数個のヘッド42が保持台41に搬送方向と交差(例えば、直交)する交差方向へ並べられている。ヘッドバー40は、1つのヘッド42に対して少なくとも1つの第1電源回路、少なくとも1つの第2電源回路及び少なくとも1つの電源切換器64を有する。なお、以下では、搬送方向を前後方向とし、交差方向を左右方向として説明するが、液体吐出装置10の配置はこれに限定されない。また、第1電源回路及び第2電源回路は、複数の電源回路62(21V電源回路62a~27V電源回路62g)のうちの任意の電源回路である。
【0108】
具体的には、
図1に示すように、液体吐出装置10は複数(例えば、4個)のヘッドバー40及び搬送装置20を備えている。搬送装置20は、記録媒体Mを後方に搬送するように液体吐出装置10に配置されている。
図2に示すように、ヘッドバー40は、保持台41及び複数のヘッド42を有し、複数のヘッド42は保持台41に保持されて保持台41において左右方向に並んで配置されている。
【0109】
図11に示すように、ヘッドバー40には、ヘッド駆動回路60及びヘッド42が配置されている。ヘッド駆動回路60には、複数(例えば、4個)の電源回路群及び複数の電源切換器64が設けられている。電源回路群は、互いに電圧が異なる複数(例えば、7個)の電源回路62を有しており、複数の電源回路62は、21V電源回路62a~27V電源回路62gにより構成されている。複数の電源回路群は、複数の電源切換器64にそれぞれ割り当てられ、担当する複数の電源切換器64にそれぞれ接続されている。
【0110】
例えば、ヘッド42に駆動素子45が1680個ある場合、電源切換器64は駆動素子45と同数の1680個がヘッド駆動回路60に備えられている。2個の電源回路群は、互いに同数ずつの420個の電源切換器64にそれぞれ割り当てられている。このため、各電源回路群の各電源回路62は、420個の電源切換器64に接続されている。
【0111】
このように、複数の電源回路群は複数の電源切換器64を分担して電圧を供給することができる。このため、高画質化に伴いヘッド42の駆動素子45が増加した場合であっても、電源回路62は電源切換器64を介して駆動素子45に電圧を円滑に供給し、記録媒体Mにおける液滴の着弾位置のずれを低減することができる。
【0112】
(実施の形態7)
実施の形態7に係る液体吐出装置10は、
図12及び
図13に示すように、記録媒体Mを搬送方向に沿って搬送する搬送装置20と、ヘッド42と、第1電源回路と、第2電源回路と、電源切換器64とを支持するキャリッジ71であって、搬送方向と交差する交差方向に往復移動するキャリッジ71と、液体を貯留するタンク13と、タンク13からヘッド42へ液体を供給するためのチューブ14と、を備えている。また、第1電源回路及び第2電源回路は、複数の電源回路62(21V電源回路62a~27V電源回路62g)のうちの任意の電源回路である。
【0113】
具体的には、液体吐出装置10は、ラインヘッド方式の装置であって、筐体11、プラテン12、搬送装置20、タンク13、制御装置50、ヘッド42及び走査装置70を備えている。タンク13は、筐体11に支持されており、チューブ14によりヘッド42のマニホールド48(
図2(b))に接続されている。
【0114】
走査装置70は、キャリッジ71、一対の走査レール72、駆動ベルト73、走査モータ74を有し、ヘッド42を左右方向に移動する。一対の走査レール72は、左右方向に延びる長尺部材であって、互いの間にヘッド42を挟むように互いに平行に配置されている。キャリッジ71は、ヘッド42を搭載し、走査レール72に沿って左右方向に搬送可能に支持されている。駆動ベルト73は走査レール72に沿って架け渡され、走査モータ74に連結されている。走査モータ74は、走査駆動回路75を介して制御装置50に接続されており、その駆動が制御装置50により制御されている。走査モータ74が駆動ベルト73を駆動することにより、走査レール72に沿ってキャリッジ71が左右方向に往復移動する。
【0115】
ヘッド42は、左右方向において記録媒体Mよりも寸法が小さく、複数のノズル43、ノズル43に連通する圧力室47b、記録媒体Mに対しノズル43から液滴を吐出させる圧力を圧力室47b(
図2(b))に付与する駆動素子45、及び、複数のノズル43が開口した吐出面42a(
図2(b))を有している。複数のノズル43は、前後方向において所定の間隔を空けて列を成してノズル列を形成し、更に、複数のノズル列は、左右方向において互いに所定の間隔を空けて並べられている。なお、ノズル列は、前後方向に対して傾斜していてもよい。
【0116】
ヘッド駆動回路60は、キャリッジ71に支持されており、制御装置50に制御線50aにより接続され、ヘッド42に信号線63aにより接続されている。ヘッド駆動回路60は、コントローラ61、複数の電源回路62及びヘッドドライバIC63を有している。ヘッド駆動回路60のうち、コントローラ61及び電源回路62はリジッド基板に搭載され、ヘッドドライバIC63はFPC(Flexible printed circuits)等のフレキシブル基板に搭載されていてもよい。この場合、フレキシブル基板は、ケーブル機能として、リジッド基板とヘッド42とを接続する。
【0117】
ヘッドドライバIC63は、コントローラ61と制御線61aにより接続されていると共に、複数の電源回路62と複数の配線64bにより接続されている。このため、例えば、電源回路62が筐体11に支持され、ヘッドドライバIC63がキャリッジ71に支持されている場合、ヘッド42はチューブ14によりタンク13に接続されていると共に、複数の配線64bにより複数の電源回路62にそれぞれ接続される。これに対し、電源回路62をキャリッジ71に支持することにより、複数の配線64bにより電源回路62とキャリッジ71を接続必要がなく、キャリッジ71の移動に影響を与える部品を減らすことができる。
【0118】
印刷処理では、制御装置50が、ヘッド42から液体を吐出する吐出動作と共に、走査モータ74を制御して、ヘッド42を左右方向に移動させる走査動作を実行する。そして、制御装置50は、記録媒体Mを所定量毎、後方に搬送させる搬送動作を実行する。制御装置50は、吐出動作及び走査動作と、搬送動作とを並行して行い、印刷を進めていく。
【0119】
なお、ヘッド駆動回路60のうち、コントローラ61及び電源回路62が筐体11に支持されており、ヘッドドライバIC63がキャリッジ71に支持されていてもよい。
【0120】
(実施の形態8)
実施の形態8に係る液体吐出装置10は、
図14及び
図15に示すように、記録媒体Mを支持する支持面15aを有する支持台15と、ヘッド42と、第1電源回路と、第2電源回路と、電源切換器64とを支持するキャリッジ81であって、支持面15a上を互いに交差(例えば、直交)する第1方向及び第2方向に移動可能なキャリッジ81と、を備えている。以下では、第1方向及び第2方向を、互いに交差(例えば、直交)する左右方向及び前後方向として説明するが、キャリッジ81の移動方向はこれに限定されない。また、第1電源回路及び第2電源回路は、複数の電源回路62(21V電源回路62a~27V電源回路62g)のうちの任意の電源回路である。
【0121】
具体的には、液体吐出装置10は、筐体11、支持台15、移動装置80、タンク13、制御装置50、ヘッド42及び走査装置70を備えている。支持台15は、例えば、平板形状であって、その上面に、記録媒体Mを支持する支持面15aを有している。支持面15aは、例えば、平坦であって、記録媒体Mよりも大きな寸法を有している。支持台15は、ヘッド42の吐出面42aと記録媒体Mとの間隔を調整可能なように、支持面15aを上下方向に昇降可能な機構を有していてもよい。
【0122】
移動装置80は、キャリッジ81、第1レール82、第1ベルト83、第1モータ84、第2レール85、第2ベルト86及び第2モータ87を有する。キャリッジ81は、ヘッド42の下面(吐出面42a(
図2(b)))が支持面15aに対向するように、ヘッド42を支持面15aの上方にて搭載している。キャリッジ81には、ヘッド駆動回路60が搭載されている。なお、ヘッド駆動回路60のうち、コントローラ61及び電源回路62はリジッド基板に搭載され、ヘッドドライバIC63はフレキシブル基板に搭載されていてもよい。また、ヘッド駆動回路60のうち、コントローラ61及び電源回路62が筐体11に支持され、ヘッドドライバIC63がキャリッジ81に支持されていてもよい。
【0123】
第1レール82は左右方向に延び、第1ベルト83は第1レール82に沿って左右方向に架け渡されて、第1モータ84に接続されている。第1モータ84は、第1駆動回路88を介して制御装置50に接続されており、その駆動が制御装置50により制御されている。第1モータ84が駆動すると、キャリッジ81は左右方向に移動する。
【0124】
第2レール85は前後方向に延び、第2ベルト86は第2レール85に沿って前後方向に架け渡されて、第2モータ87に接続されている。第2モータ87は、第2駆動回路89を介して制御装置50に接続されており、その駆動が制御装置50により制御されている。第2モータ87が駆動すると、キャリッジ81は前後方向に移動する。
【0125】
印刷処理では、制御装置50が、ヘッド42から液体を吐出する吐出動作と共に、第1モータ84を制御して、ヘッド42を左右方向に移動させる第1動作を実行する。これにより、左右方向において画像が形成されていく。そして、制御装置50は、第2モータ87を制御して、ヘッド42を前方又は後方に所定量、移動させる第2動作を実行する。このように、制御装置50は、吐出動作及び第1動作と、第2動作とを並行に実行しながら繰り返し、印刷を進めていく。
【0126】
ヘッドドライバIC63は、コントローラ61と制御線61aにより接続されていると共に、複数の電源回路62と複数の配線64bにより接続されている。このヘッドドライバIC63、コントローラ61及び複数の電源回路62がキャリッジ81に搭載されていることにより、複数の配線64bにより電源回路62とキャリッジ81を接続必要がなく、キャリッジ81の移動に影響を与える部品を減らすことができる。
【0127】
(実施の形態9)
実施の形態9に係る液体吐出装置10は、
図1及び
図3に示すように、記録媒体Mの凹凸を測定する複数のセンサ90と、搬送方向において、搬送装置20よりも上流に配置されたセンサ支持部材91であって、複数のセンサ90が交差方向に沿って並べられているセンサ支持部材91と、を備えている。
【0128】
具体的には、センサ支持部材91は、筐体11内に設けられ、前後方向から視て搬送装置20の搬送ローラ21と重なるように搬送ローラ21よりも後方に配置されている。センサ支持部材91は、左右方向において記録媒体Mよりも長く延び、記録媒体Mよりも上方に配置されている。
【0129】
センサ90は、上下方向における記録媒体Mの対向面Maまでの距離を検出するセンサであって、例えば、光学式及び超音波式等の非接触センサ等、記録媒体Mを変形させずに検出可能なセンサである。複数のセンサ90は、下方にある記録媒体Mを検出可能にセンサ支持部材91に支持されており、センサ支持部材91の下面において左右方向に配列されている。センサ90は、制御装置50に接続されており、対向面Maまでの距離を検出すると、検出距離を制御装置50へ出力する。
【0130】
上下方向におけるセンサ90と吐出面42aとの間の所定距離は、記憶部52(
図3)に予め記憶されている。このため、制御装置50は、センサ90から検出距離を取得すると、検出距離及び所定距離から対向面Maと吐出面42aとの間の対向間隔を演算し、記録媒体Mの位置とその対向間隔とを対応付けて記憶部52に記憶する。そして、制御装置50は、この対向間隔に応じて駆動信号の電圧を規定する電圧選択データを生成する。
【0131】
このような配列された複数のセンサ90によれば、記録媒体Mが搬送されるに伴い、記録媒体Mにおける検出位置が変化するため、記録媒体Mの印刷領域の距離を検出することができる。よって、制御装置50は、記録媒体Mの距離を速く収集することができるため、距離の収集による印刷速度の遅延を低減することができる。
【0132】
なお、センサ90は、記録媒体Mよりも下方に配置されていてもよい。この場合、センサ90は、記録媒体Mの対向面Maの反対側の裏面までの距離を検出する。記録媒体Mの対向面Maと裏面との間の寸法(厚み)、及び、センサ90と吐出面42aとの間の所定距離は記憶部52(
図3)に予め記憶されている。このため、制御装置50は、センサ90からの検出距離に基づき、対向面Maと吐出面42aとの間の対向間隔を演算することができる。
【0133】
(実施の形態10)
実施の形態10に係る液体吐出装置10では、
図16に示すように、キャリッジ71、81は、記録媒体Mの凹凸を測定するセンサ92を有している。
【0134】
具体的には、センサ92は、上下方向における記録媒体Mの対向面Maまでの距離を検出するセンサであって、例えば、光学式及び超音波式等の非接触センサ等、記録媒体Mを変形させずに検出可能なセンサである。センサ92は、キャリッジ71、81の下面において取り付けられており、制御装置50に接続されており、上下方向における吐出面42aと対向面Maとの間の距離を検出すると、検出距離を制御装置50へ出力する。例えば、センサ92は、左右方向においてヘッド42の右側に設けられた第1センサ92a、及び、ヘッド42の左側に設けられた第2センサ92bを有している。
【0135】
キャリッジ71、81によりヘッド42が右側に移動する際に液体を吐出し印刷する場合には、移動方向における下流(ヘッド42の右側)の第1センサ92aにより距離を検出し、制御装置50に出力する。上下方向における第1センサ92aと吐出面42aとの間の所定距離は、記憶部52に予め記憶されている。このため、制御装置50は、第1センサ92aからの検出距離、及び、所定距離から、対向面Maと吐出面42aとの間の対向間隔をリアルタイムに取得し、記録媒体Mの位置とその対向間隔とを対応付けて記憶部52に記憶する。そして、制御装置50は、ヘッド42を記録媒体M上において左から右へ移動させている際に、この対向間隔に応じて駆動信号の電圧を規定する電圧選択データを生成する。これにより、ヘッド42を移動させながら液体を吐出して印刷することができる。
【0136】
一方、キャリッジ71、81によりヘッド42が左側に移動する際に液体を吐出し印刷する場合には、移動方向における下流(ヘッド42の左側)の第2センサ92bにより距離を検出し、制御装置50に出力する。この場合も、上下方向における第2センサ92bと吐出面42aとの間の所定距離は、記憶部52に予め記憶されている。このため、制御装置50は、第2センサ92bからの検出距離、及び、所定距離から、対向面Maと吐出面42aとの間の対向間隔をリアルタイムに取得し、ヘッド42を記録媒体M上において右から左へ移動させている間に対向間隔に応じて駆動信号の電圧を規定する電圧選択データを生成する。これにより、ヘッド42を移動させながら液体を吐出して印刷することができる。
【0137】
このように、ヘッド42が搭載されたキャリッジ71、81にセンサ92が搭載されている。これは、センサ92専用のキャリッジを設けた場合よりも、部品点数を削減することができる。
【0138】
なお、ヘッド42の右側に複数の第1センサ92aが設けられていてもよく、ヘッド42の左側に複数の第2センサ92bが設けられていてもよい。この場合、複数の第1センサ92aは前後方向において所定の間隔を空けて配置されていてもよく、複数の第2センサ92bは前後方向において所定の間隔を空けて配置されていてもよい。このように、複数の第1センサ92a及び複数の第2センサ92bを用いることにより、ノズル列が前後方向に長く延びている場合であっても、ノズル列の長さに応じて複数のセンサ92による検出距離に基づいた記録媒体Mの対向間隔を取得することができる。
【0139】
更に、ヘッド42の右側及び左側のいずれか一方にセンサ92が設けられていてもよい。この場合、センサ92がヘッド42よりも移動方向の下流になる場合に、ヘッド42は移動しながら液体を吐出して印刷する。
【0140】
また、上記構成では、センサ92による記録媒体Mの検出、及び、これに基づいた駆動信号によるヘッド42からの液体吐出を、ヘッド42の同じ移動工程において行った。但し、センサ92により距離を検出するためのヘッド42の移動工程後に、ヘッド42から液体を吐出するためのヘッド42の移動工程を行ってもよい。例えば、一度、記録媒体Mを後方に搬送しながら上下方向における記録媒体Mの対向面Maまでの距離をセンサ92により検出した後、記録媒体Mを前方へ巻き戻し、再度、記録媒体Mを後方へ搬送しながらヘッド42から液体を吐出させて、印刷を行ってもよい。
【0141】
更に、センサ92は、ヘッド42が搭載されたキャリッジ71、81以外のキャリッジに搭載されていてもよい。
【0142】
なお、上記全実施の形態では、複数の電源回路62は、それぞれ所定の電圧を供給しており、供給する電圧が互いに異なっていた。但し、電源回路62が供給する電圧は可変であってもよい。すなわち、第1電源回路が供給する第1電圧と第2電源回路が供給する第2電圧とは、上記全実施の形態では互いに異なっていたが、互いに同じであってもよい。
【0143】
例えば、一つの電源回路62に割り当てられる駆動素子45が500個であるのに対し、一つのヘッド42に設けられた駆動素子45が1680個である。この場合、1680個の駆動素子45に対して、21Vの電圧を印加したい場合、最低でも21Vの電源回路62が4個、必要になります。これに対し、電源回路62の供給電圧が可変である場合、電源回路62の数を増やすことなく、電源回路62の供給電圧を変更することにより、所望の電圧を駆動素子45を供給することができる。
【0144】
また、上記全実施の形態では、電圧選択処理において、記録媒体データを複数の画素に対応させて分割し、記録媒体Mの対向間隔を画素毎に得たが、対向間隔の単位はこれに限定されない。例えば、記録媒体Mの対向間隔を、記録媒体Mの単位面積当たりに得てもよい。この場合、記録媒体Mの単位面積毎に、ノズル43から吐出された液滴が着弾し、この液滴によるドットが形成される。
【0145】
なお、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。例えば、実施の形態1に係る液体吐出装置10において、実施の形態2と同様に制御装置50は液滴量補正処理を実行してもよい。実施の形態1又は2に係る液体吐出装置10において、実施の形態3と同様に制御装置50は更新頻度調整処理を実行してもよい。実施の形態1~3のいずれかに係る液体吐出装置10において、実施の形態4と同様に制御装置50は候補数調整処理を実行してもよい。実施の形態1~4のいずれかに係る液体吐出装置10において、実施の形態5と同様に制御装置50は対応関係調整処理を実行してもよい。実施の形態1~5のいずれかに係る液体吐出装置10において、実施の形態6と同様にヘッドバー40は、1つのヘッド42に対して少なくとも1つの第1電源回路、少なくとも1つの第2電源回路及び少なくとも1つの電源切換器64を有してもよい。実施の形態1~5のいずれかに係る液体吐出装置10は、実施の形態7と同様にヘッド42と、第1電源回路、第2電源回路及び電源切換器64とを支持し、交差方向に往復移動するキャリッジ71を有していてもよい。実施の形態1~5のいずれかに係る液体吐出装置10は、実施の形態8と同様にヘッド42と、第1電源回路、第2電源回路及び電源切換器64とを支持し、互いに交差する方向に移動するキャリッジ81を有していてもよい。実施の形態1~8のいずれかに係る液体吐出装置10は、実施の形態9と同様に複数のセンサ90及びセンサ支持部材91を備えていてもよい。実施の形態7又は8に係る液体吐出装置10では、実施の形態10と同様にキャリッジ71、81がセンサ92を有していてもよい。
【0146】
また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の液体吐出装置、その制御方法及びプログラムは、記録媒体の凹凸による液体の着弾位置のずれを低減することができる液体吐出装置、その制御方法及びプログラム等として有用である。
【符号の説明】
【0148】
10 :液体吐出装置
13 :タンク
14 :チューブ
15 :支持台
15a :支持面
20 :搬送装置
40 :ヘッドバー
41 :保持台
42 :ヘッド
42a :吐出面
43 :ノズル
45 :駆動素子
47b :圧力室
50 :制御装置
53 :波形生成部
60 :ヘッド駆動回路
62 :電源回路(第1電源回路、第2電源回路)
64 :電源切換器
71 :キャリッジ
81 :キャリッジ
90 :センサ
91 :センサ支持部材
92 :センサ
M :記録媒体
Ma :対向面