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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20240717BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20240717BHJP
   G03B 27/54 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H04N1/04 101
H04N1/10
H04N1/04 D
G03B27/54 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020057873
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021158562
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】砂子 修一
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-207093(JP,A)
【文献】特開2004-193744(JP,A)
【文献】特開2012-044476(JP,A)
【文献】特開2010-088023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
H04N 1/10
G06T 1/00
G03B 27/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に原稿が載置される透明な板状部材と、
上記板状部材の下面に対向しており、光源から上記板状部材へ向けて照射された光の反射光に応じた電気信号を出力するセンサと、
上記板状部材の上面を覆って原稿を押さえる押さえ部材と、
コントローラと、を備え、
上記コントローラは、
上記光源に第1光量の光を照射させたときの反射光に応じた第1電気信号を上記センサから取得し、
上記光源に第2光量の光を照射させたときの反射光に応じた第2電気信号を上記センサから取得し、
取得した上記第1電気信号及び上記第2電気信号から算出した第1差分値に基づいて、上記板状部材に載置された原稿を読み取るときの複数の読取モードから所定の読取モードを決定し、
上記コントローラは、上記第1光量及び上記第2光量の光量差分値と上記第1差分値との比に基づいて、上記所定の読取モードを決定する画像読取装置。
【請求項2】
上記読取モードの各々は、原稿を読み取るときに上記光源に照射させる光の光量が他の上記読取モードと異なる請求項に記載の画像読取装置。
【請求項3】
上記読取モードの各々は、読み取った原稿の画像を補正するときのガンマ値が他の上記読取モードと異なる請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
上記押さえ部材の下面の少なくとも一部は、灰色または黒色であり、
上記コントローラが上記第1電気信号と上記第2電気信号とを取得する際に、上記センサは、上記下面の上記灰色または黒色の部分と対向する位置にある請求項1から3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
上記押さえ部材の下面の少なくとも一部は、有彩色であり、
上記コントローラが上記第1電気信号と上記第2電気信号とを取得する際に、上記センサは、上記下面の上記有彩色の部分と対向する位置にある請求項1から3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項6】
上記光源は、三原色の光を照射可能であり、
上記コントローラは、
上記光源に三原色の各々の光を照射させたときの3つの反射光に応じた3つの電気信号を取得し、
取得した上記3つの電気信号の各々を予め設定された色閾値と比較し、
上記3つの電気信号の全てが上記色閾値より小さいことを条件として上記所定の読取モードを第1読取モードとし、
上記3つの電気信号の少なくとも一つが上記色閾値より大きいことを条件として上記所定の読取モードを第2読取モードとする請求項1から5のいずれかに記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置は、原稿が載置されるコンタクトガラスの裏面側に、CIS(Contact Image Sensor)などのセンサを備えている。センサは、光源から照射された光の反射光に基づいてコンタクトガラスに載置された原稿の画像を読み取る。
【0003】
コンタクトガラスに載置される原稿には、様々な厚みのものがある。原稿の読み取りが原稿の厚みに関係なく同一条件で実行された場合、以下の問題が生じるおそれがある。例えば、センサが薄い原稿を読み取る場合、光源から照射された光の反射光が大きくなり過ぎて、読み取った原稿の画像が薄くなってしまうおそれがある。そのため、原稿の厚みを超音波センサなどで判別してから、原稿の厚みに応じた条件で原稿を読み取ることが行われている。しかし、この場合、超音波センサなどが余分に必要であるため、装置の構成の複雑化や装置のコストアップを招いてしまう。
【0004】
これに対して、特許文献1には、原稿の画像を読み取るためのセンサを、原稿の厚みを読み取るためにも使用する画像読取装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-191580号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された画像読取装置は、光源が照射した所定光量の光の反射光に基づく画像データによって、原稿を厚みを推定していた。つまり、原稿の厚みの推定に際して、光は1回のみ照射されていた。
【0007】
しかしながら、1回のみの光の照射では、光源の経年劣化の度合によって、原稿の厚みを推定するために得られる画像データにばらつきが生じるおそれがある。また、画像読取装置が、ADF(自動原稿送り装置)とFB(フラットベッド)との双方で原稿を読取可能である場合、ADFとFBとで原稿の読取位置が異なる。この場合も、1回の光の照射では、読取位置毎に、原稿の厚みを推定するために得られる画像データにばらつきが生じるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、原稿の厚みの推定においてセンサの光源の劣化などによる影響を抑制することができる画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係る画像読取装置は、上面に原稿が載置される透明な板状部材と、上記板状部材の下面に対向しており、光源から上記板状部材へ向けて照射された光の反射光に応じた電気信号を出力するセンサと、上記板状部材の上面を覆って原稿を押さえる押さえ部材と、コントローラと、を備える。上記コントローラは、上記光源に第1光量の光を照射させたときの反射光に応じた第1電気信号を上記センサから取得し、上記光源に第2光量の光を照射させたときの反射光に応じた第2電気信号を上記センサから取得し、取得した上記第1電気信号及び上記第2電気信号から算出した第1差分値に基づいて、上記板状部材に載置された原稿を読み取るときの複数の読取モードから所定の読取モードを決定する。
【0010】
本構成によれば、第1光量の光に対する反射光に応じた第1電気信号と、第2光量の光に対する反射光に応じた第2電気信号とから算出した第1差分値に基づいて、原稿の厚みが推定される。そして、原稿を読み取るときの読取モードが、推定した厚みに基づいた所定の読取モードとされる。つまり、本構成では、1つの光の光量に応じた値ではなく、複数の光の光量の差分に応じた第1差分値が読取モードの決定に使用される。そのため、光源の劣化や原稿の読み取り位置の相違などに起因して、得られる反射光や電気信号にばらつきがあったとしても、当該ばらつきは第1差分値の算出時に相殺される。その結果、光源の劣化や原稿の読み取り位置の相違などに起因する読み取った画像データのばらつきを低減することができる。
【0011】
(2) 上記コントローラは、上記第1差分値が予め設定された差分閾値より小さいことを条件として、上記所定の読取モードを、第1の厚さの原稿を読み取る第1読取モードとし、上記第1差分値が上記差分閾値より大きいことを条件として、上記所定の読取モードを、上記第1の厚さよりも厚い第2の厚さの原稿を読み取る第2読取モードとする。
【0012】
本構成によれば、差分閾値との比較という簡単な手段で、読取モードを決定することができる。
【0013】
(3) 例えば、上記コントローラは、上記第1光量及び上記第2光量の光量差分値と上記第1差分値との比に基づいて、上記所定の読取モードを決定する。
【0014】
(4) 上記読取モードの各々は、原稿を読み取るときに上記光源に照射させる光の光量が他の上記読取モードと異なる。
【0015】
光が透過し易い薄い原稿を読み取るときに、光源が照射する光の光量を少なくすることによって、薄い原稿を適切に読み取ることができる。
【0016】
(5) 上記読取モードの各々は、読み取った原稿の画像を補正するときのガンマ値が他の上記読取モードと異なる。
【0017】
薄い原稿は、光が透過し易い。そのため、薄い原稿を読み取るとき、読み取った原稿の画像が白くなる所謂白飛びが生じるおそれがある。本構成によれば、読取モードによっては、薄い原稿を読み取るときにガンマ値を小さくすることによって、白飛びの発生を低減することができる。
【0018】
(6) 上記押さえ部材の下面の少なくとも一部は、灰色または黒色である。上記コントローラが上記第1電気信号と上記第2電気信号とを取得する際に、上記センサは、上記下面の上記灰色または黒色の部分と対向する位置にある。
【0019】
押さえ部材の下面が白色の場合、光源から照射された光が押さえ部材の下面で反射した反射光の光量が大きくなり過ぎて、読み取った原稿の画像が白くなる所謂白飛びが生じる可能性が高くなる。本構成によれば、押さえ部材の下面が白色の場合と比べて、反射光の光量が小さくなるため、上記白飛びの発生を低減することができる。
【0020】
(7) 上記押さえ部材の下面の少なくとも一部は、有彩色である。上記コントローラが上記第1電気信号と上記第2電気信号とを取得する際に、上記センサは、上記下面の上記有彩色の部分と対向する位置にある。
【0021】
押さえ部材の下面が白色の場合、光源から照射された光が押さえ部材の下面で反射した反射光の光量が大きくなり過ぎて、読み取った原稿の画像が白くなる所謂白飛びが生じる可能性が高くなる。本構成によれば、押さえ部材の下面が白色の場合と比べて、反射光の光量が小さくなるため、上記白飛びの発生を低減することができる。
【0022】
(8) 上記光源は、三原色の光を照射可能である。上記コントローラは、上記光源に三原色の各々の光を照射させたときの3つの反射光に応じた3つの電気信号を取得し、取得した上記3つの電気信号の各々を予め設定された色閾値と比較し、上記3つの電気信号の全てが上記色閾値より小さいことを条件として上記所定の読取モードを第1読取モードとし、上記3つの電気信号の少なくとも一つが上記色閾値より大きいことを条件として上記所定の読取モードを第2読取モードとする。
【0023】
本構成によれば、色閾値に基づいて原稿における光を照射された位置が有彩色であるか否かを判断することができる。これにより、第1差分値に基づく判断と、色閾値に基づく判断との双方を実行することによって、地色が有彩色である厚い原稿が誤って薄い原稿であると推定されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る画像読取装置によれば、原稿の厚みの推定においてセンサの光源の劣化などによる影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、複合機10の外観構成を示す斜視図である。
図2図2は、原稿台19の内部構成を示す平面図である。
図3図3は、コントローラ100の構成の概略を示すブロック図である。
図4図4は、読取モード決定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、入力画像データに対する出力画像データを示すグラフである。
図6図6は、ラインセンサ25から照射された光の反射及び透過を説明するための説明図である。
図7図7は、変形例における読取モード決定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、ADF60を有する複合機10の外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面を参照して、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更され得る。
【0027】
[複合機10の概略構成]
図1に示されるように、複合機10は、スキャナ部11(画像読取装置の一例)とプリンタ部12とを一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、スキャン機能、プリント機能、コピー機能、ファクシミリ機能等の各種機能を有する。なお、本発明は複数の機能を有する複合機10のみならず、少なくともスキャン機能を有する画像読取装置に適用可能である。
【0028】
複合機10は、高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形を呈する。複合機10の上部がスキャナ部11である。スキャナ部11は、原稿台19に対して原稿カバー15が背面側の蝶番17を介して開閉可能に構成されている。
【0029】
複合機10の下部がプリンタ部12である。プリンタ部12は、スキャナ部11によって読み取られた原稿の画像データや外部から入力された印刷データに基づいて、用紙に画像を記録する。なお、本発明を実現するうえで、プリンタ部12は任意の構成であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0030】
複合機10の正面上部には、操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、各種情報を表示する液晶ディスプレイ、ユーザが情報を入力する入力キー等から構成される。スキャナ部11やプリンタ部12は、操作パネル14から入力された指示信号や、外部装置からプリンタードライバ又はスキャナードライバを用いて送信された指示信号に基づいて動作する。
【0031】
[スキャナ部11の構成]
図1に示されるように、原稿台19は、プラテンガラス20(板状部材の一例)を有する。プラテンガラス20は、1枚の透明なガラス板やアクリル板等からなる。原稿台19は、略直方体の筐体21と、上面支持枠22とを備える。上面支持枠22の上面には開口が形成されている。プラテンガラス20は、上面支持枠22の開口より十分に大きいものである。原稿台19は、プラテンガラス20を下から支持する筐体21に上面支持枠22が上から嵌め込まれて構成されている。プラテンガラス20の上面のうち、上面支持枠22の開口から露出された部分が原稿載置領域50である。原稿載置領域50には、A4サイズやリーガルサイズ以下の原稿が読取面が下向きとなるように載置される。
【0032】
プラテンガラス20と対向する原稿カバー15の裏面には、押さえ部材16が設けられている。押さえ部材16は、例えば板状のスポンジからなる。押さえ部材16は、原稿載置領域50を覆うように形成されている。原稿カバー15が閉じられることにより、押さえ部材16は、プラテンガラス20の上面を覆って原稿載置領域50に載置された原稿を押さえる。本実施形態において、押さえ部材16の下面16Aは、全面灰色である。
【0033】
図2は、原稿台19の内部構成を示す平面図である。なお、図2においては、上面支持枠22(図1参照)が取り外された状態が示されている。
【0034】
図2に示されるように、プラテンガラス20の下面(上面の裏面)の下方に、プラテンガラス20の下面に対向して、画像読取ユニット24、ガイドシャフト27、及びベルト駆動機構28が設けられている。原稿載置領域50(図1参照)に載置された原稿の画像は、画像読取ユニット24によって読み取られる。画像読取ユニット24は、キャリッジ26及びラインセンサ25(センサの一例)を備える。
【0035】
キャリッジ26は、主走査方向39に沿って延びている。主走査方向39は、ラインセンサ25が延出された方向である。筐体21の内部には、副走査方向38へ延びるガイドシャフト27が設けられている。副走査方向38は、主走査方向39と直交する方向であって、ラインセンサ25の移動方向である。キャリッジ26は、ガイドシャフト27と嵌合している。キャリッジ26は、後述のベルト駆動機構28によって駆動されてガイドシャフト27上を副走査方向38へ移動する。
【0036】
キャリッジ26の上側にはラインセンサ25が搭載されている。ラインセンサ25は、プラテンガラス20へ向けて光を照射してその反射光を受光するものである。ラインセンサ25としては、焦点距離が短い読取デバイス、例えば密着型のイメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)が使用される。
【0037】
ラインセンサ25は、キャリッジ26に搭載されている。そのため、ラインセンサ25は、キャリッジ26とともに副走査方向38へ移動可能である。
【0038】
原稿の読取動作が実行されていないとき、ラインセンサ25は、ホームポジション48(図1及び図2参照)に位置する。ホームポジション48は、原稿載置領域50の左端部に位置している。ホームポジション48は、後述する読取モード決定処理が実行されるときのラインセンサ25の位置であると共に、原稿の読取開始時のラインセンサ25の位置である。
【0039】
ラインセンサ25は、プラテンガラス20に原稿が載置されていない場合に、プラテンガラス20を介して押さえ部材16の灰色の下面16Aと対向しており、プラテンガラス20に原稿が載置されている場合に、プラテンガラス20を介して原稿の下面と対向している。
【0040】
図示されていないが、ラインセンサ25は、光源、レンズ、及び複数の受光素子を備える。ラインセンサ25の受光素子は、例えばチップ単位でキャリッジ26の上面側に主走査方向39に沿って多数配列されている。ラインセンサ25は、原稿載置領域50に載置された原稿、及び押さえ部材16の灰色の下面16Aからの反射光を受光可能である。ラインセンサ25の光源及びレンズは、受光素子と同方向に配列されている。ラインセンサ25は、光源からプラテンガラス20へ向けて照射した光の反射光をレンズにより集光して受光素子で電気信号に変換する。この電気信号は、アナログの画像データとして後述のコントローラ100(図3参照)へ出力される。
【0041】
光源は、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3原色の光を個別に照射可能であるとともに、3原色の光を同時に照射可能である。3原色の光が同時に照射される場合、光源はホワイトの光を照射する。
【0042】
ベルト駆動機構28は、駆動ベルト31、駆動プーリ29、及び従動プーリ30を備える。筐体21の内部におけるプラテンガラス20の下方には、支持板23が設けられている。駆動プーリ29及び従動プーリ30は、支持板23の幅方向(図2における左右方向)の両端にそれぞれ設けられている。駆動ベルト31は、内側に歯が設けられた無端環状のものである。駆動ベルト31は、駆動プーリ29と従動プーリ30との間に架け渡されている。駆動プーリ29の軸は下方へ延出されており、支持板23の裏面側に配置されたモータ35(図3参照)に連結されている。モータとしては、例えばDCモータが用いられる。モータからの駆動力が駆動プーリ29の軸へ伝達され、駆動プーリ29が回転して駆動ベルト31が周運動する。これにより、キャリッジ26がプラテンガラス20に対向して副走査方向38へ往復移動される。すなわち、ラインセンサ25は、モータから駆動力が供給されることにより副走査方向38へ往復移動される。なお、モータ35は支持板23の裏面側に配置されているので、図2には表れていない。
【0043】
[コントローラ100]
図3に示されるコントローラ100は、複合機10の全体動作を統括的に制御するものである。、図3に示されるように、コントローラ100はCPU101、ROM102、RAM103、EEPROM104、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)105を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。コントローラ100により、画像読取ユニット24やプリンタ部12の各駆動機器などが制御される。コントローラ100が図4に示す後述のフローチャートに従って動作することにより、本発明が実現される。
【0044】
ROM102には、CPU101が画像読取ユニット24や複合機10を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域又はデータ処理などの作業領域として使用される。EEPROM104には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0045】
ASIC105は、モータ35と接続されている。ASIC105は、モータ35を回転させるための駆動信号を生成し、この駆動信号を元にモータ35を制御する。モータ35は、ASIC105からの駆動信号によって順回転または逆回転する。モータ35が順回転すると、キャリッジ26は副走査方向38に沿って読取向き45(図2参照)に移動し、モータ35が逆回転すると、キャリッジ26は副走査方向38に沿って読取向き45とは逆向きに移動する。
【0046】
ASIC105は、ラインセンサ25と接続されている。ASIC105は、ラインセンサ25の光源を点灯させるための動作電流の調整等、ラインセンサ25による画像読取を制御する。
【0047】
操作パネル14や、複合機10とLANなどによって接続された外部機器などからコントローラ100へ原稿の読取開始が指示された場合、コントローラ100は、モータ35の駆動を制御する。これにより、ラインセンサ25がホームポジション48から読取向き45(図2参照)へ移動する。その際、ラインセンサ25は原稿載置領域50と対向する。この移動過程において、コントローラ100によってラインセンサ25が制御され、ラインセンサ25の光源から原稿載置領域50に対して光が照射される。これにより、原稿載置領域50に載置された原稿からの反射光の強さに応じて各受光素子から電気信号が出力される。つまり、原稿からの反射光の強さに基づくアナログ画像データがラインセンサ25からASIC105へ出力される(アナログ画像データは各受光素子から出力された電気信号の集合体である)。このラインセンサ25による画像読取は、キャリッジ26の移動過程において1ライン毎に行われる。
【0048】
ASIC105は、ラインセンサ25から取得した電気信号(アナログ画像データ)を所定ビット数のデジタルコードからなる画像データに変換する。このデジタル変換は、ASIC105に組み込まれたアナログ/デジタル変換器により行われる。デジタル変換が行われることにより、8ビット(256階調:0~255)で表現された多値画像データが生成される。すなわち、ASIC105では、ラインセンサ25の受光素子が受光可能な光の強度範囲が256の分割範囲に分割されている。そして、ラインセンサ25の各受光素子が受光する光の強度が256個の分割範囲のいずれの分割範囲に含まれるかにより、光の強度が0~255のいずれかの数値で表現される。なお、本実施形態では分割範囲の数が256である場合について説明するが、分割範囲の数はこれに限定されるものではなく、例えば128個の分割範囲が設定されてもよい。
【0049】
なお、ASIC105には、上述したモータ35を制御するための回路や、ラインセンサ25から取得した電気信号(アナログ画像データ)を多値画像データに変換するための回路に加えて、多値画像データを2値化するための2値化回路や、多値画像データをシェーディング補正するためのシェーディング補正回路や、シェーディング補正回路で処理された画像データを画像処理するγ補正回路、解像度変換回路、及び色変換処理回路等が組み込まれている。これらの回路は公知のものであるため、詳細な説明は省略される。
【0050】
[読取モード決定処理]
以下、図4に示されるフローチャートに基づいて、コントローラ100によって実行される読取モード決定処理の手順の一例が説明される。読取モード決定処理は、プラテンガラス20に載置された原稿を読み取る際の読取モードを決定する処理である。つまり、読取モード決定処理は、複数の読取モードから所定の読取モードを決定する処理である。
【0051】
複数の読取モードは、コントローラ100のROM102またはEEPROM104に記憶されている。各読取モードは、複数の設定値で構成されている。各読取モードの複数の設定値の少なくとも1つは、他の読取モードと異なる値である。
【0052】
本実施形態では、各読取モードは、原稿を読み取るときに光源に照射させる光の光量、及び読み取った原稿の画像を補正するときのガンマ値の2種類の設定値で構成されている。なお、設定値は、上記の2種類に限らない。
【0053】
また、本実施形態では、2つの読取モード(第1読取モード及び第2読取モード)が、コントローラ100のROM102またはEEPROM104に記憶されている。つまり、本実施形態において、読取モード決定処理は、2つの読取モード(第1読取モード及び第2読取モード)のうちのいずれの読取モードで原稿を読み取るかを決定する処理である。なお、読取モードの数は、2つに限らない。
【0054】
第1読取モードは、第1の厚さの原稿(典型的には普通紙より薄い原稿)を読み取るときの読取モードである。一方、第2読取モードは、第1の厚さよりも厚い第2の厚さの原稿(典型的には普通紙以上の厚さの原稿)を読み取るときの読取モードである。
【0055】
本実施形態では、第1読取モードの光の光量は、第2読取モードの光の光量より少ない値に設定されている。つまり、第1読取モードで原稿を読み取るときに光源に照射させる光の光量は、第2読取モードで原稿を読み取るときに光源に照射させる光の光量より少ない。
【0056】
また、本実施形態では、第1読取モードのガンマ値は、「1」に設定されている。つまり、図5に実線で示されるように、横軸で示される入力画像データ(補正前の多値画像データ)と、縦軸で示される出力画像データ(補正後の多値画像データ)との値は等しい。一方、第2読取モードのガンマ値は、入力画像データの大きい側(0~255の256階調のうち255に近い側)において「1」より小さい値に設定されており、入力画像データの小さい側(0~255の256階調のうち0に近い側)において「1」より大きい値に設定されている。つまり、図5に一点鎖線で示されるように、入力画像データが「0」に近い場合には「0」でなくても、出力画像データは「0」となるように補正され、入力画像データが「255」に近い場合には「255」でなくても、出力画像データは「255」となるように補正されている。すなわち、第1読取モードでは、入力画像データと出力画像データとの間で階調の応答特性は補正されないが、第2読取モードでは、入力画像データが「0」に近い場合(黒に近い場合)には「0」(黒)となるように、入力画像データが「255」に近い場合(白に近い場合)には「255」(白)となるように、入力画像データと出力画像データとの間で階調の応答特性が補正される。
【0057】
図4に示されるように、読取モード決定処理において、最初に、原稿がセットされる(S10)。詳細には、原稿がユーザによってプラテンガラス20の原稿載置領域50に載置され、原稿カバー15が閉じられる。なお、このとき、原稿の読取動作は実行されていないため、ラインセンサ25は、ホームポジション48(図1及び図2参照)に位置している。
【0058】
次に、原稿の読取が指示される(S20)。詳細には、ユーザが操作パネル14を操作することによって原稿の読取を指示し、その旨の電気信号が操作パネル14からコントローラ100へ送られる。当該電気信号を取得したコントローラ100は、ステップS30以降を実行する。なお、原稿の読取の指示は、ユーザによる操作パネル14の操作に限らない。例えば、原稿カバー15の開閉を検知するセンサから原稿カバー15が閉じられた旨の電気信号を取得したコントローラ100が、ステップS30以降を実行してもよい。
【0059】
コントローラ100は、ラインセンサ25を制御して、光源から第1光量の光を照射させる。このとき、光源は、R、G、Bの3原色の光を同時に照射する。第1光量は、予め設定された光量である。光源から照射された第1光量の光の一部は、原稿において反射されてレンズによって受光素子に集光される。光源から照射された第1光量の光の残りは、原稿を透過して押さえ部材16の灰色の下面16Aにおいて反射され、再び原稿を透過してレンズによって受光素子に集光される。受光素子は、集光した光の強さに応じた第1電気信号をコントローラ100へ出力する。コントローラ100は、第1電気信号を取得する(S30)。なお、ラインセンサ25は移動していないため、第1電気信号は1ライン分の画像に相当する信号である。
【0060】
次に、コントローラ100は、ラインセンサ25を制御して、光源から第2光量の光を照射させる。このとき、光源は、R、G、Bの3原色の光を同時に照射する。第2光量は、予め設定された光量であり、第1光量より大きい。光源から照射された第2光量の光の一部は、原稿において反射されてレンズによって受光素子に集光される。光源から照射された第2光量の光の残りは、原稿を透過して押さえ部材16の灰色の下面16Aにおいて反射され、再び原稿を透過してレンズによって受光素子に集光される。受光素子は、集光した光の強さに応じた第2電気信号をコントローラ100へ出力する。コントローラ100は、第2電気信号を取得する(S40)。なお、ラインセンサ25は移動していないため、第2電気信号は、第1電気信号と同じラインの画像に相当する信号である。
【0061】
以下、異なる厚さの原稿32A、32Bがプラテンガラス20に載置された場合に、ラインセンサ25の受光素子が集光する光の光量の例について、図6が参照されつつ説明される。
【0062】
以下に説明される例において、第1光量が100であり、第2光量が1000であるとする。なお、本例では、第2光量が第1光量より大きいが、第1光量が第2光量より大きくてもよい。また、以下に説明される例では、説明の便宜上、光量は単位のない値であるとする。
【0063】
また、以下に説明される例では、光は、プラテンガラス20において100%透過し、第1の厚さの原稿32Aにおいて40%透過し、第2の厚さの原稿32Bにおいて10%透過するものとする。また、光は、第1の厚さの原稿32Aにおいて60%反射し、第2の厚さの原稿32Bにおいて90%反射し、押さえ部材16の灰色の下面16Aにおいて50%反射するものとする。なお、図6では、説明の便宜上、ラインセンサ25、プラテンガラス20、原稿32A、原稿32B、及び押さえ部材16は、互いに間隔を空けて図示されている。
【0064】
最初に、第1の厚さの原稿32Aがプラテンガラス20に載置されている場合の例が説明される。
【0065】
図6(A)に示されるように、ラインセンサ25の光源から照射された第1光量の光51(光量=100)は、その100%がプラテンガラス20を透過する。プラテンガラス20を透過した光51は、原稿32Aにおいて反射した反射光52(光量=100×60%=60)と、原稿32Aを透過した透過光53(光量=100×40%=40)とに分かれる。透過光53の一部は、押さえ部材16の下面16Aにおいて反射して反射光54となる(光量=40×50%=20)。反射光54の一部は、原稿32Aを透過して透過光55となる(光量=20×40%=8)。反射光52と透過光55とが、レンズによってラインセンサの受光素子において集光される。つまり、受光素子に集光された光の光量は、60+8=68である。受光素子は、この光量が68である光を第1電気信号に変換してコントローラ100へ出力する。
【0066】
また、ラインセンサ25の光源から照射された第2光量の光51(光量=1000)は、その100%がプラテンガラス20を透過する。プラテンガラス20を透過した光51は、原稿32Aにおいて反射した反射光52(光量=1000×60%=600)と、原稿32Aを透過した透過光53(光量=1000×40%=400)とに分かれる。透過光53の一部は、押さえ部材16の下面16Aにおいて反射して反射光54となる(光量=400×50%=200)。反射光54の一部は、原稿32Aを透過して透過光55となる(光量=200×40%=80)。反射光52と透過光55とが、レンズによってラインセンサの受光素子において集光される。つまり、受光素子に集光された光の光量は、600+80=680である。受光素子は、この光量が680である光を第2電気信号に変換してコントローラ100へ出力する。
【0067】
次に、第2の厚さの原稿32Bがプラテンガラス20に載置されている場合の例が説明される。
【0068】
図6(B)に示されるように、ラインセンサ25の光源から照射された第1光量の光51(光量=100)は、その100%がプラテンガラス20を透過する。プラテンガラス20を透過した光51は、原稿32Bにおいて反射した反射光52(光量=100×90%=90)と、原稿32Bを透過した透過光53(光量=100×10%=10)とに分かれる。透過光53の一部は、押さえ部材16の下面16Aにおいて反射して反射光54となる(光量=10×50%=5)。反射光54の一部は、原稿32Bを透過して透過光55となる(光量=5×10%=0.5)。反射光52と透過光55とが、レンズによってラインセンサの受光素子において集光される。つまり、受光素子に集光された光の光量は、90+0.5=90.5である。受光素子は、この光量が90.5である光を第1電気信号に変換してコントローラ100へ出力する。
【0069】
また、ラインセンサ25の光源から照射された第1光量の光51(光量=1000)は、その100%がプラテンガラス20を透過する。プラテンガラス20を透過した光51は、原稿32Bにおいて反射した反射光52(光量=1000×90%=900)と、原稿32Bを透過した透過光53(光量=1000×10%=100)とに分かれる。透過光53の一部は、押さえ部材16の下面16Aにおいて反射して反射光54となる(光量=100×50%=50)。反射光54の一部は、原稿32Bを透過して透過光55となる(光量=50×10%=5)。反射光52と透過光55とが、レンズによってラインセンサの受光素子において集光される。つまり、受光素子に集光された光の光量は、900+5=905である。受光素子は、この光量が905である光を第2電気信号に変換してコントローラ100へ出力する。
【0070】
ステップS40の次に、コントローラ100は、第1電気信号及び第2電気信号から以下のようにして画像差分値(第1差分値の一例)を算出する(S50)。コントローラ100は、ステップS30においてラインセンサ25から取得した第1電気信号を8ビットの多値画素データに変換する。これにより、1ラインを構成する複数の画素の各々について所定値の多値画素データが生成される。コントローラ100は、生成された複数の多値画素データから値の大きい16画素分の画素データを抽出し、これら16個の画素データの平均値を算出する。第2電気信号についても、第1電気信号と同様にして16個の画素データの平均値を算出する。そして、第2電気信号に基づいて算出した16個の画素データの平均値から、第1電気信号に基づいて算出した16個の画素データの平均値を減算する。当該減算によって算出された値が、画像差分値である。
【0071】
なお、画像差分値の算出は、上記の方法に限らない。例えば、1ラインを構成する複数の画素から抽出する画素数は16画素以外(例えば、32画素や1ラインの全画素)でもよい。また、例えば、1ラインを構成する複数の画素から抽出する画素はランダムに選別されてもよい。
【0072】
次に、コントローラ100は、画像差分値と差分閾値とを比較する(S60)。差分閾値は、予め設定された値であり、ROM102またはEEPROM104に記憶されている。差分閾値は、プラテンガラス20に載置された様々な厚みや種類の原稿に対してラインセンサ25から様々な光量の光を照射し、当該光に対する反射光を計測する実験などに基づいて設定される。
【0073】
画像差分値が差分閾値より小さい(または差分閾値以下の)場合(S60:Yes)、コントローラ100は、プラテンガラス20に載置された原稿が薄い原稿(第1の厚さの原稿)であると判断する。この場合、コントローラ100は、プラテンガラス20に載置された原稿を読み取る際の読取モードを第1読取モードに設定する(S70)。
【0074】
一方、画像差分値が差分閾値以上の(または差分閾値より大きい)場合(S60:No)、コントローラ100は、プラテンガラス20に載置された原稿が厚い原稿(第2の厚さの原稿)であると判断する。この場合、コントローラ100は、プラテンガラス20に載置された原稿を読み取る際の読取モードを第2読取モードに設定する(S80)。
【0075】
図6の例において説明されたように、第1の厚さの原稿32Aがプラテンガラス20に載置されている場合、第1電気信号に対応する光量は68、第2電気信号に対応する光量は680であり、第2の厚さの原稿32Bがプラテンガラス20に載置されている場合、第1電気信号に対応する光量は90.5、第2電気信号に対応する光量は905である。このように、厚い原稿32Bがプラテンガラス20に載置されている場合の方が、薄い原稿32Aがプラテンガラス20に載置されている場合よりも、第1電気信号及び第2電気信号の差分が大きくなる。これは、これらの電気信号を変換して得られる画素データについても同様である。そのため、厚い原稿32Bがプラテンガラス20に載置されている場合に得られる画像差分値は、薄い原稿32Aがプラテンガラス20に載置されている場合に得られる画像差分値よりも大きくなる。よって、差分閾値が、得られる2つの画像差分値の間となるような値に設定されていることにより、コントローラ100は、ステップS60において、プラテンガラス20に載置された原稿が薄い原稿(第1の厚さの原稿)であるか厚い原稿(第2の厚さの原稿)であるかを判断することができる。
【0076】
以上のようにして、コントローラ100は、画像差分値に基づいて、プラテンガラス20に載置された原稿を読み取るときの複数の読取モードから所定の読取モードを決定する。
【0077】
なお、この後、ラインセンサ25がホームポジション48から読取向き45に移動されつつ、決定された読取モードで原稿の画像が読み取られる。
【0078】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、第1光量の光に対する反射光に応じた第1電気信号と、第2光量の光に対する反射光に応じた第2電気信号とから算出した画像差分値に基づいて、原稿の厚みが推定される。そして、原稿を読み取るときの読取モードが、推定した厚みに基づいた所定の読取モードとされる。つまり、本実施形態では、1つの光の光量に応じた値ではなく、2つの光の光量の差分に応じた画像差分値が読取モードの決定に使用される。そのため、光源の劣化や原稿の読み取り位置の相違などに起因して、得られる反射光や電気信号にばらつきがあったとしても、当該ばらつきは画像差分値の算出時に相殺される。その結果、光源の劣化や原稿の読み取り位置の相違などに起因する読み取った画像データのばらつきを低減することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、差分閾値との比較という簡単な手段で、読取モードを決定することができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、光が透過し易い薄い原稿を読み取るときの読取モードでは、光源が照射する光の光量を少なくすることによって、薄い原稿を適切に読み取ることができる。
【0081】
また、薄い原稿は、光が透過し易い。そのため、薄い原稿を読み取るとき、読み取った原稿の画像が白くなる所謂白飛びが生じるおそれがある。本実施形態によれば、薄い原稿から読み取った画像を補正するときのガンマ値を、厚い原稿から読み取った画像を補正するときのガンマ値とは異なる値とすることによって、白飛びの発生を低減することができる。
【0082】
また、押さえ部材16の下面16Aが白色の場合、光源から照射された光が押さえ部材16の下面16Aで反射した反射光の光量が大きくなり過ぎて、読み取った原稿の画像が白くなる所謂白飛びが生じる可能性が高くなる。本実施形態によれば、押さえ部材16の下面16Aが灰色であるため、押さえ部材16の下面16Aが白色の場合と比べて、反射光の光量が小さくなるため、上記白飛びの発生を低減することができる。
【0083】
[変形例]
上記実施形態では、コントローラ100は、ステップS60において、画像差分値が差分閾値より小さい場合(S60:Yes)、プラテンガラス20に載置された原稿が薄い原稿(第1の厚さの原稿)であると判断していた(S70)。しかし、コントローラ100は、ステップS60において、画像差分値が差分閾値より小さい場合(S60:Yes)、図7に示されるように、ステップ200以降の処理を実行してもよい。
【0084】
コントローラ100は、画像差分値が差分閾値より小さい場合(S60:Yes)、ラインセンサ25を制御して、光源から予め設定された所定光量の光を照射させる。このとき、光源は、R、G、Bの3原色の光を個別に照射する。なお、3原色の照射順序は任意である。これにより、ステップS30、S40と同様に、受光素子は、3原色の各光の強さに応じた3つの電気信号をコントローラ100へ出力する。コントローラ100は、3つの電気信号を取得する(S200)。
【0085】
次に、コントローラ100は、ステップS50と同様にして、3つの電気信号をそれぞれ画素データに変換する。これにより、3つの画素データ、つまりR(レッド)に対応した画素データ、G(グリーン)に対応した画素データ、及びB(ブルー)に対応した画素データが生成される(S210)。
【0086】
次に、コントローラ100は、3つの画素データの各々と色閾値とを比較する(S220)。色閾値は、予め設定された値であり、ROM102またはEEPROM104に記憶されている。
【0087】
プラテンガラス20に載置された原稿の色が白色である場合、ステップS200において3原色の光の全てについて、集光された光の光量が照射された光の光量よりも大きく低下する。一方、プラテンガラス20に載置された原稿の色が有彩色である場合、ステップS200において3原色の光の1つまたは2つについて、集光された光の光量が照射された光の光量よりも大きく低下するが、残りの光の光量については大きく低下しない。例えば、プラテンガラス20に載置された原稿の色がシアンである場合、シアンの補色であるR(レッド)の照射光に対して集光された光の光量が大きく低下するが、G(グリーン)、B(ブルー)の照射光に対して集光された光の光量は大きく低下しない。
【0088】
よって、3つの画素データの全てが色閾値より小さい(または色閾値以下の)場合(S220:Yes)、コントローラ100は、プラテンガラス20に載置された原稿が白色の薄い原稿(第1の厚さの原稿)であると判断する。この場合、コントローラ100は、プラテンガラス20に載置された原稿を読み取る際の読取モードを第1読取モードに設定する(S70)。
【0089】
一方、3つの画素データの少なくとも1つが色閾値以上の(または色閾値より大きい)場合(S220:No)、コントローラ100は、プラテンガラス20に載置された原稿が有彩色の原稿であると判断する。この場合、コントローラ100は、プラテンガラス20に載置された原稿を読み取る際の読取モードを第2読取モードに設定する(S80)。
【0090】
ステップS200以降の処理が実行されることによって、原稿における光を照射された位置が有彩色であるか否かを判断することができる。これにより、画像差分値に基づく判断と、色閾値に基づく判断との双方を実行することによって、地色が有彩色である厚い原稿が誤って薄い原稿であると判断されることを防止することができる。
【0091】
上記実施形態では、コントローラ100は、画像差分値と差分閾値とを比較し(S60)、当該比較の結果によって、プラテンガラス20に載置された原稿を読み取るときの複数の読取モードから所定の読取モードを決定していた(S70、S80)。しかし、コントローラ100は、画像差分値に基づいて所定の読取モードを決定すればよく、差分閾値との比較以外の手段によって所定の読取モードを決定してもよい。
【0092】
例えば、コントローラ100は、第1光量及び第2光量の光量差分値と画像差分値との比に基づいて、所定の読取モードを決定してもよい。この場合、差分閾値の代わりに、予め設定された比閾値が、ROM102またはEEPROM104に記憶されている。コントローラ100は、ステップS50において、画像差分値に加えて、第2光量から第1光量を減算することによって光量差分値を算出する。そして、画像差分値から光量差分値を除算することによって、光量差分値と画像差分値の比を算出する。コントローラ100は、算出した比を比閾値と比較する。当該比が比閾値より小さい(または比閾値以上の)場合、コントローラ100は、プラテンガラス20に載置された原稿が薄い原稿(第1の厚さの原稿)であると判断して、プラテンガラス20に載置された原稿を読み取る際の読取モードを第1読取モードに設定する。一方、当該比が比閾値以上の(または比閾値より大きい)場合、コントローラ100は、プラテンガラス20に載置された原稿が厚い原稿(第2の厚さの原稿)であると判断して、プラテンガラス20に載置された原稿を読み取る際の読取モードを第2読取モードに設定する。
【0093】
上記実施形態では、押さえ部材16の下面16Aは灰色であったが、灰色に限らない。例えば、押さえ部材16の下面16Aは、黒色であってもよいし、赤色や青色などの有彩色であってもよい。
【0094】
押さえ部材16の下面16Aが白色の場合、光源から照射された光が押さえ部材16の下面16Aで反射した反射光の光量が大きくなり過ぎて、読み取った原稿の画像が白くなる所謂白飛びが生じる可能性が高くなる。押さえ部材16の下面16Aが黒色や有彩色の場合、押さえ部材16の下面16Aが白色の場合と比べて、反射光の光量が小さくなるため、上記白飛びの発生を低減することができる。
【0095】
上記実施形態では、押さえ部材16の下面16Aの全面が灰色であったが、下面16Aの一部のみが灰色や黒色や有彩色であってもよい。この場合、下面16Aの残りの部分の色は、下面16Aの一部の色とは異なる色(例えば白色)である。また、この場合、読取モード決定処理において、コントローラ100が第1電気信号及び第2電気信号を取得する際に、ラインセンサ25は、下面16Aにおける灰色や黒色や有彩色の部分と対向する位置にある。つまり、ホームポジションのラインセンサ25は、下面16Aにおける灰色や黒色や有彩色の部分と対向する位置にある。
【0096】
複合機10は、図8に示されるように、ADF(自動原稿送り装置)60を備えていてもよい。この場合、プラテンガラス20の上面は、区画部材61によって原稿載置領域50と送り原稿読取領域62とに区画されている。原稿載置領域50に載置された原稿の読取モードを決定するとき、ラインセンサ25は、原稿載置領域50の左端部のホームポジション48に位置する。一方、ADF60から送られた原稿の読取モードを決定するとき、ラインセンサ25は、送り原稿読取領域62の真下に位置する第2のホームポジション63に位置する。そして、ADF60から送られた原稿の所定部分(例えば先端部)が送り原稿読取領域62の真上を通過するときに、読取モード決定処理のステップS30以降の処理が実行される。
【符号の説明】
【0097】
10・・・複合機
11・・・スキャナ部(画像読取装置)
16・・・押さえ部材
20・・・プラテンガラス(板状部材)
25・・・ラインセンサ(センサ)
50・・・原稿載置領域(上面)
100・・・コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8