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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 17/22 20060101AFI20240717BHJP
   B41M 1/28 20060101ALI20240717BHJP
   B41M 1/40 20060101ALI20240717BHJP
   B41M 1/08 20060101ALI20240717BHJP
   B65D 85/72 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B41F17/22
B41M1/28
B41M1/40 Z
B41M1/08
B65D85/72 200
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020065994
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021160304
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】森川 久彰
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸司
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511175(JP,A)
【文献】特開2007-069407(JP,A)
【文献】特開2000-071415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0129687(US,A1)
【文献】特開2005-288775(JP,A)
【文献】米国特許第4774885(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 16/00-19/08
B41M 1/00- 3/18
7/00- 9/04
B65D 85/50-85/52
85/60
85/72-85/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印刷版と、ブランケットとを備え、缶体の外周面に網点画像の印刷を行う印刷装置であって、
複数の前記印刷版のインキを順次前記ブランケットに転写するブランケット転写手段と、
前記ブランケットに転写されたインキを前記缶体に転写する缶体転写手段と、
を備え、
前記ブランケット転写手段は、
一の前記印刷版により転写された一の色のインキの網点の少なくとも一部が、他の前記印刷版により転写された他の色のインキの網点の少なくとも一部の上に重畳するように転写していき、
複数の前記印刷版は、
一の色の網点の少なくとも一部が他の色の網点の少なくとも一部上に重畳する重畳部分において、一の色の網点面積率(%)と他の色の網点面積率(%)との合計値が所定の基準値以下となるように、他の色のうちの少なくとも一色の網点面積率(%)が、予め定められた所定の網点面積率(%)から低減されているか又は0%に変更されている製版用の画像に応じて製版されている
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ブランケット転写手段は、前記ブランケットに全てのインキが転写されるまではインキを乾燥させる工程を介在させない
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
複数の前記印刷版は、画像に応じて色毎に製版され、その色に対応するインキが付着され、
前記ブランケットは、複数の前記印刷版のそれぞれに付着されたインキが転写される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記重畳部分において網点面積率(%)が前記所定の網点面積率(%)から低減又は0%とされる色は、前記ブランケット転写手段により最初に転写されるインキの色である
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記重畳部分において網点面積率(%)が前記所定の網点面積率(%)から低減又は0%とされる色は、一の色の網点面積率(%)と他の色の網点面積率(%)との合計値に基づいて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順に決定される
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷版は、インキが付着する画線部と水を介在させずにインキが乗らない非画線部とが形成された水無し平版である
ことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
複数の印刷版と、ブランケットとにより、缶体の外周面に網点画像の印刷を行う印刷方法であって、
複数の前記印刷版のインキを順次前記ブランケットに転写するブランケット転写工程と、
前記ブランケットに転写されたインキを前記缶体に転写する缶体転写工程と、
を有し、
前記ブランケット転写工程では、
一の前記印刷版により転写された一の色のインキの網点の少なくとも一部が、他の前記印刷版により転写された他の色のインキの網点の少なくとも一部の上に重畳するように転写していき、
複数の前記印刷版は、
一の色の網点の少なくとも一部が他の色の網点の少なくとも一部上に重畳する重畳部分において、一の色の網点面積率(%)と他の色の網点面積率(%)との合計値が所定の基準値以下となるように、他の色のうちの少なくとも一色の網点面積率(%)が、予め定められた所定の網点面積率(%)から低減されているか又は0%に変更されている製版用の画像に応じて製版されている
ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料用缶として用いられる缶体の外周面には、様々なデザインの画像が印刷されている。このような缶体は、高速生産のために多くの場合、オフセット印刷により印刷が行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、色毎に互いに重なり合わない位置に凸部を有する版を用いて、各版の凸部のインキを同一ブランケット上にそれぞれ転写させ、転写された全色をローターに支持された缶体に対して同時に転写させることで印刷を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-262657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に記載されているような版を用いた印刷技術では、ベタデザイン、または、ベタデザイン及び文字を缶体に印刷することは可能であるものの、例えば写真のような緻密なデザインの印刷をリアルに缶体に対して行うことが難しいといった問題があった。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題点を解決することを課題の一例とする。すなわち、本発明の課題の一例は、緻密なデザインの印刷をリアルに缶体に対して行うことが可能な印刷装置及び印刷方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印刷装置は、複数の印刷版と、ブランケットとを備え、缶体の外周面に網点画像の印刷を行う印刷装置であって、複数の前記印刷版のインキを順次前記ブランケットに転写するブランケット転写手段と、前記ブランケットに転写されたインキを前記缶体に転写する缶体転写手段と、を備え、前記ブランケット転写手段は、一の前記印刷版により転写された一の色のインキの網点の少なくとも一部が、他の前記印刷版により転写された他の色のインキの網点の少なくとも一部の上に重畳するように転写していき、複数の前記印刷版は、一の色の網点の少なくとも一部が他の色の網点の少なくとも一部上に重畳する重畳部分において、一の色の網点面積率(%)と他の色の網点面積率(%)との合計値が所定の基準値以下となるように、他の色のうちの少なくとも一色の網点面積率(%)が、予め定められた所定の網点面積率(%)から低減されているか又は0%に変更されている製版用の画像に応じて製版されていることを特徴とする。
【0009】
好適には、前記ブランケット転写手段は、前記ブランケットに全てのインキが転写されるまではインキを乾燥させる工程を介在させない。
【0010】
好適には、複数の前記印刷版は、画像に応じて色毎に製版され、その色に対応するインキが付着され、前記ブランケットは、複数の前記印刷版のそれぞれに付着されたインキが転写される。
【0013】
好適には、前記重畳部分において網点面積率(%)が前記所定の網点面積率(%)から低減又は0%とされる色は、前記ブランケット転写手段により最初に転写されるインキの色である。
【0015】
好適には、前記重畳部分において網点面積率(%)が前記所定の網点面積率(%)から低減又は0%とされる色は、一の色の網点面積率(%)と他の色の網点面積率(%)との合計値に基づいて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順に決定される。
【0016】
好適には、前記印刷版は、インキが付着する画線部と水を介在させずにインキが乗らない非画線部とが形成された水無し平版である。
【0017】
本発明に係る印刷方法は、複数の印刷版と、ブランケットとにより、缶体の外周面に網点画像の印刷を行う印刷方法であって、複数の前記印刷版のインキを順次前記ブランケットに転写するブランケット転写工程と、前記ブランケットに転写されたインキを前記缶体に転写する缶体転写工程と、を有し、前記ブランケット転写工程では、一の前記印刷版により転写された一の色のインキの網点の少なくとも一部が、他の前記印刷版により転写された他の色のインキの網点の少なくとも一部の上に重畳するように転写していき、複数の前記印刷版は、一の色の網点の少なくとも一部が他の色の網点の少なくとも一部上に重畳する重畳部分において、一の色の網点面積率(%)と他の色の網点面積率(%)との合計値が所定の基準値以下となるように、他の色のうちの少なくとも一色の網点面積率(%)が、予め定められた所定の網点面積率(%)から低減されているか又は0%に変更されている製版用の画像に応じて製版されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、緻密なデザインの印刷をリアルに缶体に対して行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る印刷装置の基本構成を模式的に示す図である。
図2図1に示す印刷版とブランケットとが接触する領域付近を拡大した図である。
図3】水無し平版からなる印刷版の部分断面図である。
図4】缶体に対する印刷装置の印刷動作を説明するためのフローチャートである。
図5】印刷装置に取り付けられる印刷版を作製する製版システムの機能ブロック図である。
図6】下色除去処理の条件を設定する第1の例を説明するための図である。
図7】下色除去処理の条件を設定する第2の例を説明するための図である。
図8】下色除去処理の条件を設定する第3の例を説明するための図である。
図9】製版システムを用いて印刷版を作製する製版動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態(本実施形態)について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
[印刷装置の基本構成]
図1は、本実施形態に係る印刷装置の基本構成を模式的に示す図である。図2は、図1に示す印刷版とブランケットとが接触する領域付近を拡大した図である。
【0025】
図1に示す印刷装置1は、2ピース缶等の略円筒形状を有する缶体(被印刷物)Pの外周面(外面)に対してインキを転写して印刷するオフセット印刷の印刷装置である。
【0026】
図1に示すように、印刷装置1は、インキングユニット10と、ブランケットホイール20と、搬送ユニット30と、マンドレルホイール40と、バーニッシュアプリケータ50と、トランスファユニット60とを備える。
【0027】
インキングユニット10は、印刷版14へインキを供給する装置である。インキングユニット10は、インカーユニットとも称される。インキングユニット10は、インキの色毎に異なる複数のインキングユニット10、すなわち第1インキングユニット10a~第8インキングユニット10hからなる。これらの複数のインキングユニット10は、それぞれブランケットホイール20の外周面に沿って配置される。インキングユニット10は、所定のインキを収容するインキ供給部11と、各インキ供給部11のインキに応じた印刷版14が装着された版胴13とを含む。
【0028】
複数のインキ供給部11は、第1インキ供給部11a~第8インキ供給部11hからなる。複数の印刷版14は、第1インキ供給部11a~第8インキ供給部11hからそれぞれインキが供給される第1印刷版14a~第8印刷版14hからなる。そして、版胴13は、第1印刷版14a~第8印刷版14hをそれぞれ装着する第1版胴13a~第8版胴13hからなる。
【0029】
図1に示す印刷装置1の例では、第1インキ供給部11aはイエロー(Y)のインキを収容し、第2インキ供給部11bはマゼンタ(M)のインキを収容し、第3インキ供給部11cはシアン(C)のインキを収容している。
【0030】
一方、第4インキ供給部11d~第8インキ供給部11hは、何れのインキも収容していない。そのため、第4インキ供給部11d~第8インキ供給部11hにそれぞれ対応する第4印刷版14d~第8印刷版14hの何れにもインキは供給されない。
【0031】
図2に示すように、インキ供給部11は、ファウンテンローラ及びフォームローラ等によって構成されるインキローラ群12を含む。インキ供給部11は、インキローラ群12の各ローラが回転することによって、不図示のインキ収容部に収容されたインキを、版胴13に装着された印刷版14へと供給する。インキローラ群12の一部のローラの内部には、温調水が循環されており、インキの温度が適正に保たれる。
【0032】
版胴13は、支軸の周りを回転可能な略円柱形状を有し、その外周面には印刷版14が脱着可能に装着される。版胴13は、ブランケットホイール20に対する距離を変更可能に設けられる。版胴13は、プレートシリンダとも称される。
【0033】
複数の印刷版14(第1印刷版14a~第8印刷版14h)は、色分解により抽出された色以外の色を表現する際、色分解により抽出された各色を掛け合わせ方式で刷り重ねるように製版されている。後述するように、後述の製版システム100により、原稿画像データを色分解してなる色毎の分版画像データに対して網点化処理が施され、その網点化された色毎の製版用の画像データに基づいて、複数の印刷版14が製版される。そのため、掛け合わせ方式での刷り重ねを行う複数の印刷版14は、製版用の各色の網点の画像データに応じて製版される。すなわち、製版用の網点画像の画像データは、一の色の網点の少なくとも一部が他の色の網点の少なくとも一部上に重畳する(重畳部分(重なり)を有する)ように、各色の網点の画像データが重畳してなるものである。
【0034】
このような印刷装置1によれば、複数の色の重なりにより様々な色を再現することができるため、例えば写真のような緻密なデザインの印刷をリアルに缶体に対して行うことができる。
【0035】
印刷装置1では、第1インキ供給部11aから第1印刷版14aへとイエロー(Y)のインキが供給され、第2インキ供給部11bから第2印刷版14bへとマゼンタ(M)のインキが供給され、第3インキ供給部11cから第3印刷版14cへとシアン(C)のインキが供給される。これにより、第1印刷版14a上のイエロー(Y)のインキ、第2印刷版14b上のマゼンタ(M)のインキ、第3印刷版14c上のシアン(C)のインキというように、第1印刷版14a~第3印刷版14cとなるにつれて、印刷版上に乗るインキは、明度が高い色(明るい色:イエロー(Y))から明度が低い色(暗い色:シアン(C))へと徐々に変化していく。
【0036】
印刷装置1では、同一の(1つの)ブランケット25に全てのインキが転写(積層)されるまではインキを乾燥させる工程を介在させない所謂ウェットオンウェット方式でブランケット25へのインキの転写を行う。印刷装置1は、このウェットオンウェット方式では、乾燥させる工程を介在させずに、第1印刷版14a、第2印刷版14b、第3印刷版14cのそれぞれから、対応する色のインキをこの順に連続的に同一のブランケット25に転写(すなわち積層)する。この際、第1印刷版14a~第3印刷版14cとなるにつれて、明度が高い色(明るい色:イエロー(Y))から明度が低い色(暗い色:シアン(C))へと徐々に色が変化するように、異なる色のインキが同一のブランケット25に転写される。これにより、同一のブランケット25においては、明度が高い(明るい)色の網点の少なくとも一部上に明度が低い(暗い)色の網点の少なくとも一部が重畳するようになる。
【0037】
同一のブランケット25に全てのインキが転写(積層)された後、その同一のブランケット25上の全色のインキが同時に缶体Pの外周面(外面)に転写される。これにより、缶体Pの外周面には、一の色の網点の少なくとも一部上に他の色の網点の少なくとも一部が重畳してなる網点画像が印刷される。この際、缶体Pの外周面においては、明度が低い(暗い)色の網点の少なくとも一部上に明度が高い(明るい)色の網点の少なくとも一部が重畳してなる網点画像が印刷されるようになる。その後、その缶体Pは、マンドレル41からオーブン等の乾燥装置(図示せず)へと移送される。印刷装置1は、このようなウェットオンウェット方式を採用した印刷を行うことから、多数の缶を高速に印刷することができる。
【0038】
但し、上述のように、掛け合わせ方式での刷り重ねを行う印刷をウェットオンウェット方式で行うと、異なる色のインキ同士の重畳部分において、インキの混濁が発生する虞がある。そこで、印刷装置1では、印刷版14(第1印刷版14a~第8印刷版14h)として、水無し平版を使用する。この水無し平版は、インキが付着する画線部と、水を介在させずにインキが乗らない非画線部とが形成された印刷版である。この水無し平版からなる印刷版14の詳細については後述する。
【0039】
版胴13の近傍には、例えば冷風を吹き出す吹き出し口が取り付けられていてもよく、その場合、版胴13及び印刷版14の温度が適正に保たれる。
【0040】
ブランケットホイール20は、印刷版14及び缶体Pのそれぞれと回転接触して印刷版14に供給されたインキを缶体Pに転写するブランケット25を回転させる装置である。図1に示すように、ブランケットホイール20は、支軸22の周りを回転可能な略円柱形状を有する。ブランケットホイール20の外周面には、図2に示すように、ブランケットホイール20の周方向に沿って所定間隔を空けて、複数のセグメント21が設けられる。複数のセグメント21のそれぞれの外表面には、ブランケット25が装着される。図1に示す印刷装置1では、12個のブランケット25がセグメント21に装着されている。
【0041】
ブランケット25は、印刷版14から缶体Pへのインキの転写を媒介する中間転写体である。ブランケット25は、織布及び発泡体で形成された基材層と、アクリロニトリルブタジエンゴム等で形成されたゴム層とを含む。基材層は、接着材等を介して、セグメント21の外表面に対して脱着可能に装着される。ゴム層は、印刷版14上のインキが転写される層であり、基材層の外表面に配置されてブランケット25の外表面を構成する。
【0042】
印刷装置1では、ブランケットホイール20が図1に示す矢印の方向(反時計回り)に回転することにより、同一の(1つの)ブランケット25には、第1印刷版14aのイエロー(Y)のインキ、第2印刷版14bのマゼンタ(M)のインキ、第3印刷版14cのシアン(C)のインキがこの順に転写されていく。
【0043】
搬送ユニット30は、印刷前の缶体Pをマンドレルホイール40へ搬送する装置である。搬送ユニット30は、図1に示すように、マンドレルホイール40の上方に設けられる。搬送ユニット30は、マンドレル41に保持された缶体Pとブランケット25とが接触する領域よりも、マンドレルホイール40の回転方向上流側に設けられる。搬送ユニット30は、缶体Pの重力によって、マンドレルホイール40の上方からマンドレルホイール40の上部へ缶体Pを1つずつ順次搬送する。
【0044】
マンドレルホイール40は、缶体Pを保持するマンドレル41を回転させる装置である。マンドレルホイール40は、ブランケットホイール20の径方向において隣り合って設けられる。マンドレルホイール40は、支軸の周りを回転可能な略円板形状を有する。マンドレルホイール40の外周部には、マンドレルホイール40の周方向に沿って所定間隔を空けて、複数のマンドレル41が設けられている。
【0045】
マンドレル41は、缶体Pである缶体内に挿入可能な略円柱形状を有する。マンドレル41は、マンドレルホイール40と交差する方向に突出するように複数設けられ、マンドレルホイール40の外周部に片持ち支持されている。マンドレル41の数は、ブランケット25の数の整数倍であることが好ましい。図1に示す印刷装置1では、24個のマンドレル41がマンドレルホイール40に設けられている。
【0046】
マンドレル41は、その先端部が缶体Pである缶体の底部内面をエア吸引等で吸着することによって、缶体Pを保持する。マンドレル41は、その姿勢を変更可能に設けられるとともに、マンドレルホイール40の径方向における位置を変更可能に設けられる。マンドレル41は、缶体Pを保持した状態で、マンドレル41の中心軸の周りを回転可能に設けられている。
【0047】
バーニッシュアプリケータ50は、インキが転写された缶体Pに対して仕上げニス等のオーバーコートを塗装する装置である。バーニッシュアプリケータ50は、マンドレルホイール40の径方向において隣り合って設けられている。バーニッシュアプリケータ50は、マンドレル41に保持された缶体Pとブランケット25とが接触する領域よりも、マンドレルホイール40の回転方向下流側に設けられている。
【0048】
トランスファユニット60は、バーニッシュアプリケータ50を経た缶体Pをマンドレル41から移載し、インキ及びオーバーコート等を缶体Pへ定着させるオーブン等の乾燥装置へ移送する装置である。トランスファユニット60は、マンドレルホイール40の径方向において隣り合って設けられている。トランスファユニット60は、マンドレル41に保持された缶体Pとバーニッシュアプリケータ50とが接触する領域よりも、マンドレルホイール40の回転方向下流側に設けられている。
【0049】
[水無し平版]
図3は、水無し平版からなる印刷版14の部分断面図である。図3に示すように、水無し平版である印刷版14は、基板141と、レーザ感熱層142と、インキ反撥層143とがこの順に積層されて構成される。
【0050】
インキ反撥層143が取り除かれてレーザ感熱層142が露出した部分は、インキIが付着する画線部14Aを構成している。また、インキ反撥層143が残留している部分は、インキが乗らない非画線部14Bを構成している。非画線部14Bを構成するインキ反撥層143は、シリコーン樹脂(シリコーンゴム)等の樹脂層等で形成されている。これにより、非画線部14Bは、インキを反撥させ、インキが非画線部14Bに乗らないようになっている。
【0051】
(基板)
基板141は、寸法的に安定な板状物であれば公知の金属板、フィルム等の何れも使用することができる。寸法安定性に優れた板状物としては、従来より印刷版の基板として使用されたものを制限なく使用できる。このような板状物としては、例えば、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、スチール、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅等の金属の板、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタ-ル等のプラスチックのフィルム、金属がラミネ-トもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルム等を挙げることができる。
【0052】
(レーザ感熱層)
レーザ感熱層142は、従来より水無し平版に適用されているレーザ感熱層を使用することができ、例えば、少なくとも(a)光熱変換物質と、(b)金属キレート化合物と、(c)活性水素含有化合物と、(d)バインダー樹脂と、を含有する組成物からなるレーザ感熱層を挙げることができる。
【0053】
レーザ感熱層142は、そのような組成物からなる場合、レーザ照射がされる前に、予め金属キレート化合物(b)と活性水素含有化合物(c)とによって架橋構造が形成されていることが好ましい。これにより、レーザが照射された部分の感熱層とシリコーンゴム等との間の接着力が低下し、その後の処理により、レーザ光を照射した部分におけるシリコーンゴム等が除去されて、水無し平版を得ることができる。
【0054】
・光熱変換物質(a)
光熱変換物質(a)としては、レーザ光を吸収するものであれば特に限定されず使用できる。レーザ光の波長としては、紫外域、可視域、赤外域のどの領域の波長であってもよく、使用するレーザ光の波長に合わせた吸収域を有する光熱変換物質を適宜選択して使用することができるが、特に、カーボンブラックを好適に使用できる。
【0055】
また赤外線又は近赤外線を吸収する染料も、光熱変換物質として使用することができ、最大吸収波長が700~900nmの範囲にある染料を好適に使用することができる。
【0056】
これらの光熱変換物質の含有量は、感熱層を構成する組成物全体に対して0.1~40重量%が好ましく、より好ましくは0.5~25重量%である。
【0057】
・金属キレート化合物(b)
金属キレート化合物(b)としては、例えば、金属ジケテネート、金属アルコキサイド、アルキル金属、金属カルボン酸塩類、酸化金属キレート化合物、金属錯体、ヘテロ金属キレート化合物等を挙げることができる。
【0058】
金属キレート化合物のうち、特に好ましく用いられる化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄(III)、チタンのアセチルアセトネート(ペンタンジオネート)、エチルアセトアセトネート(ヘキサンジオネート)、プロピルアセトアセトネート(ヘプタンジオネート)、テトラメチルヘプタンジオネート、ベンゾイルアセトネート類などを挙げることができ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0059】
レーザ感熱層142における金属キレート化合物の含有量は、活性水素基含有組成物(c)100重量部に対して5~300重量部、特に10~150重量部の量であることが好ましい。
【0060】
・活性水素基含有化合物(c)
活性水素基含有化合物(c)としては、例えば、水酸基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、チオール基含有化合物等を挙げることができるが、中でも水酸基含有化合物が好ましい。
【0061】
水酸基含有化合物としては、例えば、フェノール性水酸基含有化合物又はアルコール性水酸基含有化合物の他、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリビニルブチラール樹脂、および公知の方法によって水酸基を導入したポリマー等を挙げることができる。
【0062】
活性水素基含有化合物(c)の含有量は、レーザ感熱層142を構成する組成物全体に対し、5~80重量%、特に20~60重量%の範囲にあることが好ましい。
【0063】
・バインダー樹脂(d)
バインダー樹脂(d)は、有機溶剤に可溶でかつフィルム形成能のあるものであれば、特に限定されない。有機溶剤に可溶であり、且つ、フィルム形成能があり、更には形態保持の機能を果たすバインダー樹脂(バインダーポリマー)としては、例えば、ビニルポリマー類、未加硫ゴム、ポリオキシド類(ポリエーテル類)、ポリエステル類、ポリウレタン類、ポリアミド類等を挙げることができ、これらの一種又は数種を混合して使用することもできる。
【0064】
バインダーポリマーの含有量は、レーザ感熱層142を構成する組成物全体に対して5~70重量%、特に10~50重量%の範囲にあることが好ましい。
【0065】
・(a)~(d)以外(その他)
レーザ感熱層142には、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤、カップリング剤等を必要に応じて任意に添加することができる。特に、基板141(又はプライマー層)或いはインキ反撥層143との接着性を高めるために、シランカップリング剤等の各種カップリング剤、不飽和基含有化合物等を添加することが好ましい。レーザ感熱層142の厚みは、特に制限はない。
【0066】
(インキ反撥層)
インキ反撥層143は、例えば、シリコーン樹脂(シリコーンゴム)で形成されていることが好ましい。このようなシリコーンゴムとしては、従来より水無し平版において使用されているシリコーンゴムを挙げることができ、例えば、縮合反応型シリコーンゴム又は付加反応型シリコーンゴム等を挙げることができる。
【0067】
・付加反応型シリコーンゴム
インキ反撥層143が付加反応型のシリコーンゴム層からなる場合、このインキ反撥層143は、少なくともビニル基含有オルガノポリシロキサン、SiH基含有化合物(付加反応型架橋剤)、反応抑制剤及び硬化触媒を含むシリコーンゴム組成物を塗布し、必要に応じて乾燥することにより形成される。
【0068】
ビニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記の一般式(A)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。中でも、主鎖末端にビニル基を有するものが好ましい。
-(SiR-O-)- ・・・(A)
【0069】
式(A)中、nは2以上の整数を示し、R及びRは同一であっても異なってもよく、炭素数1~50の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は、直鎖状、枝分かれ状、環状の何れでもよく、芳香環を含んでいてもよい。式(A)中、R及びRは、全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の点において好ましい。また、ビニル基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、1万~60万の範囲にあることが好ましい。
【0070】
SiH基含有化合物としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーが挙げられ、特に、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に使用される。
【0071】
SiH基含有化合物の含有量は、シリコーンゴム組成物中、0.5~20重量%、特に、1~15重量%の範囲であることが好ましい。
【0072】
反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコール等が挙げられるが、アセチレン基含有のアルコールが特に好ましい。反応抑制剤の含有量は、シリコーンゴム組成物中0.01~20重量%、特に0.1~15重量%の範囲にあることが好ましい。
【0073】
硬化触媒は、従来公知の物を使用することができるが、白金系化合物であることが好ましく、具体的には、白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体等を挙げることができる。
【0074】
硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム組成物中0.001~20重量%、特に0.01~15重量%の範囲にあることが好ましい。
【0075】
上記成分の他に、水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シラン(もしくはシロキサン)、ゴム強度を向上させる目的でシリカ等の公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類等が好ましく、特にビニル基やアリール基を有するものが好ましい。
【0076】
・縮合反応型シリコーンゴム
インキ反撥層143が縮合反応型シリコーンゴム層からなる場合、このインキ反撥層143は、少なくとも水酸基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤(脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコール型、脱アミン型、脱アセトン型、脱アミド型、脱アミノキシ型等)、及び、硬化触媒を含むシリコーンゴム組成物を塗布し、必要に応じて乾燥することにより形成される。
【0077】
水酸基含有オルガノポリシロキサンは、上記式(A)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中に水酸基を有するものである。中でも主鎖末端に水酸基を有するものが好ましい。上記式(A)中のR及びRは、全体の50%以上がメチル基であることが好ましい。また、水酸基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、1万~60万の範囲にあることが好ましい。
【0078】
縮合反応型のシリコーンゴム層に用いられる架橋剤としては、例えば、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシシラン類、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミノ)シラン等のケトキシミノシラン類を好適に使用できる。
【0079】
架橋剤の含有量は、シリコーンゴム組成物中0.5~20重量%、特に1~15重量%の範囲にあることが好ましい。
【0080】
硬化触媒としては、従来公知の硬化触媒を使用することができ、特に、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄等が好適に使用することができる。硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム組成物中0.001~15重量%、特に0.01~10重量%の範囲であることが好ましい。
【0081】
また、これらの成分の他に、ゴム強度を向上させる目的でシリカ等の公知の充填剤、公知のシランカップリング剤等を含有するようにしてもよい。インキ反撥層143の厚みは、特に制限はないが、耐刷性や印刷の再現性の点から、2μm~10μmの範囲にあることが好ましい。
【0082】
(その他の層)
水無し平版からなる印刷版14は、基板141とレーザ感熱層142との接着性を向上させるとともに、照射されたレーザによる熱が基板141に逃げることを防ぐために、基板141とレーザ感熱層142との間に、プライマー層を設けるようにしてもよい。
【0083】
プライマー層としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノ-ル樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を含むものを挙げることができる。中でも、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂等を単独で、あるいは2種以上を混合して使用することが好ましい。また、プライマー層の厚みは、特に制限はない。
【0084】
また、インキ反撥層143を保護するためのカバーフィルムを設けるようにしてもよい。このようなカバーフィルムとしては、レーザ光を良好に透過可能なフィルムであることが好ましく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、また各種金属を蒸着したフィルム等を挙げることができる。
【0085】
[水無し平版の製造]
印刷版14を構成する水無し平版に用いられる原版は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、基板141上に、リバースロールコーター、エアーナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター等の通常のコーターや回転塗布装置を使用し、必要に応じてプライマー層組成物を塗布し100~300℃で数分間加熱或いは活性光線照射により硬化させた後、レーザ感熱層組成物を塗布し50~180℃で数十秒から数分間加熱して硬化させることでレーザ感熱層142を形成する。次に、レーザ感熱層142上にシリコーンゴム組成物を塗布し50~200℃の温度で数分間熱処理してシリコーンゴムからなるインキ反撥層143を形成し、その後、必要に応じてカバーフィルムをラミネートするか、保護層を形成する等して水無し平版の原版を製造する。
【0086】
このような原版を使用し、この原版のインキ反撥層143(或いはカバーフィルム)上からレーザを画線状に照射して露光した後、レーザが照射された部分のインキ反撥層143を除去することでインキIが付着する画線部14Aを形成することで、水無し平版からなる印刷版14が製造される。
【0087】
このような構成の水無し平版からなる印刷版14は、インキが付着する画線部14Aが、樹脂層(樹脂凸部)で形成された樹脂凸版よりも、インキの混濁がより生じ難い版となっている。
【0088】
[印刷装置の印刷動作]
図4は、缶体Pに対する印刷装置1の印刷動作について説明するためのフローチャートである。
【0089】
(ステップS101:缶体搬送工程)
ステップS101の缶体搬送工程において、印刷装置1は、搬送ユニット30によって缶体Pをマンドレルホイール40の上部に搬送する。印刷装置1は、マンドレルホイール40の上部に搬送された缶体Pをマンドレル41にて保持する。印刷装置1は、缶体Pがブランケット25と接触する前に、マンドレル41を回転させて缶体Pをプレスピンさせるとともに、マンドレルホイール40を回転させて缶体Pをブランケット25との接触領域へ移動させる。すなわち、缶体Pは、マンドレル41の回転によって自転し、マンドレルホイール40の回転によって公転する。
【0090】
(ステップS102:インキ供給工程)
ステップS101に続くステップS102のインキ供給工程において、印刷装置1は、複数のインキ供給部11のそれぞれにおいて、インキローラ群12を回転させ、インキ供給部11に収容されたインキを版胴13に装着された印刷版14に供給する。
【0091】
このステップS102において、印刷装置1は、第1インキ供給部11aから第1印刷版14aへとイエロー(Y)のインキを供給し、第2インキ供給部11bから第2印刷版14bへとマゼンタ(M)のインキを供給し、第3インキ供給部11cから第3印刷版14cへとシアン(C)のインキを供給する。
【0092】
インキが供給された各印刷版14は、それぞれ、版胴13の回転によって、印刷版14とブランケット25との接触領域へ移動する。
【0093】
(ステップS103:ブランケット転写工程)
ステップS102に続くステップS103のブランケット転写工程において、印刷装置1は、ブランケットホイール20を回転させて、インキが供給された印刷版14にブランケット25を接触させ、印刷版14に供給されたインキをブランケット25に転写する。このステップS103において、印刷装置1は、一の印刷版14により転写されたインキの少なくとも一部が、他の印刷版14により転写された他の色のインキの少なくとも一部の上に重畳するように転写していく。
【0094】
このステップS103において、印刷装置1は、同一のブランケット25に対し、第1印刷版14a上のイエロー(Y)のインキを転写した後に、第2印刷版14b上のマゼンタ(M)のインキを転写し、その後、第3印刷版14c上のシアン(C)のインキを転写する。
【0095】
これにより、印刷版14に形成されたインキ反撥層143のパターンに応じた画像が、ブランケット25に転写される。
【0096】
(ステップS104:缶体転写工程)
ステップS103に続くステップS104の缶体転写工程において、印刷装置1は、インキが転写されたブランケット25を、ブランケットホイール20の回転によって、缶体Pとブランケット25との接触領域へと移動させる。そして、印刷装置1は、マンドレル41に保持された缶体Pを押圧しながら缶体Pと、この接触領域へ移動したブランケット25とを接触させて、ブランケット25に転写されたインキを缶体Pに転写する。これにより、印刷版14に形成されたインキ反撥層143のパターンに応じた画像が、ブランケット25を介して缶体Pに転写される。
【0097】
(ステップS105:オーバーコート塗装工程)
ステップS104に続くステップS105のオーバーコート塗装工程において、印刷装置1は、インキが転写された缶体Pを、マンドレルホイール40を回転させることによって、バーニッシュアプリケータ50へと移動させ、更にトランスファユニット60へと移動させる。そして、印刷装置1は、バーニッシュアプリケータ50を作動させて、インキが転写された缶体Pにオーバーコートを塗装する。
【0098】
(ステップS106:移送工程)
ステップS105に続くステップS106の移送工程において、印刷装置1は、トランスファユニット60を作動させて、バーニッシュアプリケータ50を経た缶体Pをマンドレル41から移載し、オーブン等の乾燥装置(図示せず)へ移送する。
【0099】
なお、印刷装置1は、版胴13、ブランケットホイール20、マンドレル41及びマンドレルホイール40のそれぞれを同期して回転させる。また、印刷装置1は、バーニッシュアプリケータ50及びトランスファユニット60についても、これらの回転に同期して作動させる。このような動作により、印刷装置1は、缶体Pに印刷を行う。
【0100】
[製版システムの構成]
次に、印刷装置1に取り付けられる印刷版14を作製する製版システム100について説明する。製版システム100は、DTP(Desktop Publishing)及びCTP(Computer To Plate)を採用している。製版システム100では、上述の水無し平版からなる印刷版14を作製する。
【0101】
図5は、印刷装置1に取り付けられる印刷版14を作製する製版システム100の機能ブロック図である。図5に示す製版システム100は、レーザの熱で樹脂を昇華させ、彫刻しながら印刷版を作製するDLE(Direct Laser Engraving)方式、又は、レーザで樹脂版表面に画像を書き込み現像するLAMS(Laser Ablation Masking System)方式で、印刷版14を作製するシステムであることが好ましい。
【0102】
製版システム100は、原稿画像データに各種画像処理を施して製版用の画像データを作成するデータ処理装置110と、製版用の画像データに応じて印刷版を作製する版作製装置120とを備える。
【0103】
データ処理装置110は、ページ記述言語で表された製版のための原稿画像データに対し、レイアウト及び色調の補正等の編集を行う。そして、データ処理装置110は、プロセス色の色分解等を行う分版処理と、各色の濃淡を網点の集合で表す網点化処理とを行って製版用の画像データを作成し、版作製装置120へ送信する。データ処理装置110は、プロセッサ及び記憶装置を含むとともに、データ処理装置110の機能を実装したプログラムを含んで構成される。
【0104】
データ処理装置110は、分版処理を行う分版処理部111と、網点化処理の条件を設定する網点化条件設定部112と、網点化処理を行う網点化処理部113と、版作製装置120へのデータの送信処理を行う送信処理部114とを備える。
【0105】
分版処理部111は、編集された原稿画像データを、プロセス色毎に色分解する。プロセス色は、第1インキ供給部11aに収容されるインキの色であるイエロー(Y)、第2インキ供給部11bに収容されるインキの色であるマゼンタ(M)、第3インキ供給部11cに収容されるインキの色であるシアン(C)であってよい。分版処理部111は、原稿画像データの色分解により抽出された色毎の画像データである分版画像データを作成する。
【0106】
網点化条件設定部112は、分版処理部111にて作成された分版画像データを網点化する際の条件である網点化条件を設定する。網点化条件は、各色の分版画像データ毎に設定される。網点化条件には、色毎の網点形状、網点面積率、スクリーン線数(単位面積(1インチ)あたりの網点の配列数)、及び、スクリーン角度(網点の配列線の角度)の他、掛け合わせ方式に関する条件が含まれる。掛け合わせ方式に関する条件としては、例えば、一の色の網点の少なくとも一部が他の色の網点の少なくとも一部上に重畳する重畳部分において、他の色のうちの少なくとも一色が調整又は除去される下色除去処理の条件が挙げられる。ここでいう「網点面積率」とは、網点化処理が施されてなる画像(網点画像)中の単位面積当たりに占める網点の面積の割合(%)をいう。
【0107】
(下色除去処理)
本実施形態における下色除去処理は、網点化処理部113において行われる処理であり、一の色の網点の少なくとも一部が他の色の網点の少なくとも一部上に重畳する重畳部分において、他の色のうちの少なくとも一色が調整又は除去されるものである。ここでいう色の「調整」とは、その重畳部分における他の色のうちの少なくとも一色の網点面積率(%)を低下させることをいう。また、ここでいう色の「除去」とは、その重畳部分における他の色のうちの少なくとも一色を完全に除去(消去)することをいう。
【0108】
網点化条件設定部112は、網点化処理部113で行う下色除去処理の条件を次のように設定する。すなわち、網点化条件設定部112は、掛け合わせ方式で各色の分版画像データの網点化を行う上で、一の色の網点の少なくとも一部が、他の色の網点の少なくとも一部上に重畳する重畳部分において、一の色の網点面積率(%)と他の色の網点面積率(%)の合計値が所定の基準値(例えば150%)以下となる場合には、色の調整、除去の何れも行わない。その一方、網点化条件設定部112は、この合計値が所定の基準値(例えば150%)よりも大きくなる場合には、合計値が所定の基準値以下となるように、その他の色のうちの少なくとも一色を調整又は除去するように、その色の網点面積率(%)の変更値を設定する。網点化条件設定部112は、このような条件を下色処理の条件として設定する。
【0109】
ここで、網点化条件設定部112は、下色除去処理の条件として、第1の優先順位で調整又は除去を行う色を、同一のブランケット25に対して印刷版14から最初に転写されるインキの色(図1に示す第1印刷版14aから同一のブランケット25へと転写されるイエロー(Y))に決定する。また、第2の優先順位で調整又は除去を行う色を、同一のブランケット25に対して印刷版14から第2番目に転写されるインキの色(図1に示す第2印刷版14bから同一のブランケット25へと転写されるマゼンタ(M))に決定する。
【0110】
このように、網点化条件設定部112は、下色除去処理の条件として、調整又は除去を行う色を、イエロー(Y)、マゼンタ(M)の順に決定していく、といった色の優先順位の条件を設定する。
【0111】
また、網点化条件設定部112は、下色除去処理の条件として、調整又は除去を行う色の網点面積率(%)の変更値を設定する。すなわち、下色の「調整」を行う場合には、その下色に当初より設定されている網点面積率(%)(例えば50%)を0%よりも大きい所定の値(例えば20%)に変更する。また、下色の「除去」を行う場合には、その下色に当初より設定されている網点面積率(%)(例えば50%)を0%に変更する。
【0112】
ここで、下色除去処理の条件を設定する具体例について、図6図8を用いて説明する。図6は、下色除去処理の条件を設定する第1の例を説明するための図である。印刷画像用の画像データにおいては、掛け合わせ方式により、イエロー(Y)の網点の少なくとも一部上にマゼンタ(M)の網点の少なくとも一部が重畳し、その重畳部分上に、更にシアン(C)の網点の少なくとも一部が重畳してなる重複部分(画像データ部分)がある。
【0113】
この第1の例では、例えば図6(a)に示すように、印刷画像用の画像データにおいて、網点面積率80%のシアン(C)成分と、網点面積率60%のマゼンタ(M)成分と、網点面積率40%のイエロー(Y)成分との重なりによって、網点面積率の合計値が180%の重畳部分が生成される。この第1の例において、網点化条件設定部112は、網点面積率の合計値の基準値(%)を150%に設定している。
【0114】
第1の例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の3色の網点面積率の合計値は180%であるから、網点面積率の合計値の基準値150%を超えている。
【0115】
そこで、第1の例において、網点化条件設定部112は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の3色の網点面積率の合計値が基準値である150%以下となるように、同一のブランケット25に最初に転写されるイエロー(Y)を調整することを下色除去処理の条件として設定する。具体的に、網点化条件設定部112は、図6(b)に示すように、イエロー(Y)の網点面積率を当初の40%から10%に調整する(イエロー(Y)の調整)。これにより、網点面積率の合計値は基準値と同じ150%となる。
【0116】
図7は、下色除去処理の条件を設定する第2の例を説明するための図である。この第2の例では、例えば図7(a)に示すように、印刷画像用の画像データにおいて、網点面積率90%のシアン(C)成分と、網点面積率60%のマゼンタ(M)成分と、網点面積率40%のイエロー(Y)成分との重なりによって、網点面積率の合計値が190%の重畳部分が生成される。この第2の例においても、網点化条件設定部112は、網点面積率の合計値の基準値(%)を150%に設定している。
【0117】
第2の例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の3色の網点面積率の合計値は190%であるから、網点面積率の合計値の基準値150%を超えている。
【0118】
そこで、第2の例において、網点化条件設定部112は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の3色の網点面積率の合計値が基準値である150%以下となるように、同一のブランケット25に最初に転写されるイエロー(Y)を除去することを下色除去処理の条件として設定する。具体的に、網点化条件設定部112は、図7(b)に示すように、イエロー(Y)の網点面積率を当初の40%から0%に変更する(イエロー(Y)の除去)。これにより、網点面積率の合計値は基準値と同じ150%となる。
【0119】
図8は、下色除去処理の条件を設定する第3の例を説明するための図である。この第3の例では、例えば図8(a)に示すように、印刷画像用の画像データにおいて、網点面積率90%のシアン(C)成分と、網点面積率70%のマゼンタ(M)成分と、網点面積率40%のイエロー(Y)成分との重なりによって、網点面積率の合計値が200%の重畳部分が生成される。この第3の例においても、網点化条件設定部112は、網点面積率の合計値の基準値(%)を150%に設定している。
【0120】
第3の例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の3色の網点面積率の合計値は200%であるから、網点面積率の合計値の基準値150%を超えている。
【0121】
そこで、第3の例において、網点化条件設定部112は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の3色の網点面積率の合計値が基準値である150%以下となるように、先ず、同一のブランケット25に最初に転写されるイエロー(Y)を除去することを下色除去処理の条件として設定する。具体的に、網点化条件設定部112は、図8(b)に示すように、イエロー(Y)の網点面積率を当初の40%から0%に変更する(イエロー(Y)の除去)。これにより、網点面積率の合計値は160%となるが、依然として基準値の150%を超えている。
【0122】
そのため、この第3の例において、網点化条件設定部112は、さらに図8(c)に示すように、同一のブランケット25に第2番目に転写されるマゼンタ(M)を調整することを下色除去処理の条件として設定する。具体的に、網点化条件設定部112は、図8(c)に示すように、マゼンタ(M)の網点面積率を当初の70%から60%に変更する(マゼンタ(M)の調整)。これにより、網点面積率の合計値は基準値と同じ150%となる。
【0123】
網点化処理部113は、網点化条件設定部112にて設定された上述の網点化条件に応じて、分版処理部111にて作成された各色の分版画像データを網点化する。網点化処理部113は、掛け合わせ方式の対象となる色の分版画像データをそのままポジ条件(色の濃度が高い画素ほど網点面積率を高くする条件)で網点化する。網点化された画像データは、例えば、1bitTIFF(Tagged Image File Format)等の2値データである。この網点化された画像データは、版作製装置120が複数の印刷版14を作製する際に製版用の画像データとして使用される。網点化処理部113は、ソフトウェアRIP(Raster Image Processor)等により構成されてよい。
【0124】
網点化条件設定部112により上述の下色除去処理の条件が設定された場合には、網点化処理部113は、各色の分版画像データを網点化する際に、その設定された条件に基づいて下色の調整または除去を行うようにする。
【0125】
送信処理部114は、網点化処理部113にて網点化された画像データを、製版用の画像データとして版作製装置120へ送信する処理を行う。
【0126】
版作製装置120は、データ処理装置110の送信処理部114から送信された画像データ、すなわち、色毎に網点化された画像データに応じて、水無し平版からなる色毎の印刷版14を作製する。版作製装置120は、色毎に網点化された画像データに基づいて、インキ反撥層143(シリコーン樹脂)に対してレーザによる露光を行い、レーザが照射された部分のインキ反撥層143を剥離により除去することで、画線部14Aと非画線部14Bとを形成する。このようにして、水無し平版からなる印刷版14が作製される。版作製装置120によって作製された印刷版14は、印刷装置1に適用される。
【0127】
[製版システムによる製版動作]
図9は、製版システム100を用いて印刷版14を作製する製版動作を説明するためのフローチャートである。
【0128】
図9に示すステップS201~ステップS206は、データ処理装置110に備えられたユーザインターフェースを介して入力されたユーザからの操作指令に基づき、データ処理装置110によって実行される。ステップS207は、版作製装置120によって実行される。
【0129】
(ステップS201:入稿工程)
ステップS201の入稿工程において、製版システム100は、データ処理装置110にて原稿画像データを入稿する。
【0130】
(ステップS202:編集工程)
ステップS201に続くステップS202の編集工程において、製版システム100は、入稿した原稿画像データの編集を行う。製版システム100は、被印刷物の印刷領域に合わせてレイアウトを修正したり、色調の補正を行って原稿画像データを編集する。
【0131】
(ステップS203:分版工程)
ステップS202に続くステップS203の分版工程において、製版システム100は、編集された原稿画像データに対して分版処理を行う。製版システム100は、編集された原稿画像データを、プロセス色毎に色分解し、色毎の分版画像データを作成する。
【0132】
(ステップS203:網点化条件設定工程)
ステップS203に続くステップS204の網点化条件設定工程において、製版システム100は、分版処理にて作成された分版画像データを網点化する際の網点化条件を設定する網点化条件設定処理を行う。特に、製版システム100は、掛け合わせ方式の対象となる色の分版画像データを指定し、指定された分版画像データにおける単位面積毎(例えば画素毎)に、網点面積率、スクリーン線数及びスクリーン角度の他、掛け合わせ方式に関する条件(上述の下色除去処理の条件等)等を設定する。
【0133】
このステップS204において、製版システム100は、上述したように、網点化条件設定部112により、網点化処理部113で行う下色除去処理の条件として、第1の優先順位で調整又は除去を行う色を、同一のブランケット25に最初に転写されるイエロー(Y)に決定し、第2の優先順位で調整又は除去を行う色を、同一のブランケット25に第2番目に転写されるマゼンタ(M)に決定する。
【0134】
そして、このステップS204において、製版システム100は、網点化条件設定部112により、掛け合わせ方式で各色の分版画像データの網点化を行う上で、一の色の網点の少なくとも一部が、他の色の網点の少なくとも一部上に重畳する重畳部分において、一の色の網点面積率(%)と他の色の網点面積率(%)の合計値が所定の基準値以下となるように、その他の色のうちの少なくとも一色を調整又は除去するために、その色の網点面積率(%)の変更値を設定する。製版システム100は、網点化条件設定部112により、このような条件を下色処理の条件として設定する。
【0135】
(ステップS205:網点化工程)
ステップS204に続くステップS205の網点化工程において、製版システム100は、網点化設定処理にて設定された網点化条件に応じて、分版処理にて作成された分版画像データを網点化する。ここで、製版システム100は、掛け合わせ方式の対象となる色の分版画像データをそのままポジ条件で網点化する。
【0136】
(ステップS206:送信工程)
ステップS205に続くステップS206の送信工程において、製版システム100は、網点化処理にて網点化された画像データを、製版用の画像データとして、データ処理装置110から版作製装置120へ送信する送信処理を行う。
【0137】
(ステップS207:版作製工程)
ステップS206に続くステップS207の版作製工程において、製版システム100は、送信処理にて送信された画像データに応じて、版作製装置120にて色毎の印刷版を作製する。この本ステップにて図9に示す製版処理は、終了する。
【0138】
[変形例]
上述の実施形態は、変形例を含めて各実施形態同士で互いの技術を適用することができる。上述の実施形態は、本発明の内容を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない程度に変更を加えることができる。
【0139】
例えば、上述の実施形態では、プロセス色をシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色としたが、プロセス色は、更に、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)を加えた7色であってもよい。
【0140】
また例えば、上述の実施形態において、網点化条件設定部112は、網点化条件において、網点のスクリーン角度(網点の配列線の角度)を色毎に異ならせるように、各色に所定のスクリーン角度を設定するようにしてもよい。これにより、缶体Pの外周面(外面)には、スクリーン角度が異なる色毎の網点が互いに重畳してなる網点画像が印刷されることになる。
【0141】
例えば、網点化条件設定部112は、網点化条件として、イエロー(Y)の網点のスクリーン角度を15°、マゼンタ(M)の網点のスクリーン角度を75°、シアン(C)の網点のスクリーン角度を45°に設定してもよい。このように、網点化条件設定部112は、色毎の網点に異なるスクリーン角度を設定することにより、それらの色を掛け合わせて印刷を行ったとしても、混濁、モアレ等の発生を防止することができる。
【0142】
また、上述の実施形態では、複数の印刷版14は、製版用の網点の画像データに応じて製版されるものであったが、これに限定されない。例えば、複数の印刷版14の製版用の画像データの中には、網点画像だけでなく、インキがベタ塗りで施される画像部(ベタ画像部)の画像データを含むようにしてもよい。
【0143】
この場合、複数の印刷版14は、一の色(例えばネイビー(N))のベタ画像部の少なくとも一部が他の色(例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のうちの少なくとも一色)の網点の少なくとも一部上に重畳する重畳部分が形成されるような各色の製版用の画像データに応じて製版されていてよい。これにより、缶体Pの外周面(外面)には、一の色(例えばネイビー(N))のベタ画像部の少なくとも一部上に、他の色(例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のうちの少なくとも一色)の網点の少なくとも一部が重畳する重畳部分を有する画像が印刷される。
【0144】
この場合、複数の印刷版14は、一の色のベタ画像部の少なくとも一部が他の色の網点の少なくとも一部上に重畳する重畳部分において、他の色の内の少なくとも一色が調整又は除去されている製版用の画像に応じて製版されていてよい。
【0145】
例えば、図1の例において、第4印刷版14dは、ベタ画像部の画像データに基づいて製版されるようにしてよい。この場合、ベタ画像部に基づいて製版された第4印刷版14dの画線部14Aに、ベタ印刷用のインキとして、例えばネイビー(N)のインキが供給される。このとき、第4印刷版14dの製版用の画像データのベタ画像部の少なくとも一部が、他の色、すなわち第1印刷版14a(イエロー(Y))、第2印刷版(マゼンタ(M))、第3印刷版14c(シアン(C))のうちの少なくとも1つの製版用の画像データの網点の少なくとも一部上に重畳していてよい。そして、その重畳部分において、その他の色の網点の少なくとも一色が調整又は除去されてよい。
【0146】
この場合、網点化条件設定部112は、上述の下色除去処理の条件と同様に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ネイビー(N)の網点面積率(%)の合計値と、所定の基準値とに基づいて、第1印刷版14a用のイエロー(Y)、第2印刷版14b用のマゼンタ(M)、第3印刷版14c用のシアン(C)の優先順位で順に調整又は除去を行うようにしてよい。なお、ベタ画像部のネイビー(N)の網点面積率(%)は、100%となる。
【符号の説明】
【0147】
1 印刷装置、10 インキングユニット、10a~10h 第1インキングユニット~第8インキングユニット、11 インキ供給部、11a~11h 第1インキ供給部~第8インキ供給部、12 インキローラ群、13 版胴、13a~13h 第1版胴~第8版胴、14 印刷版、14a~14h 第1印刷版~第8印刷版、20 ブランケットホイール、21 セグメント、22 支軸、25 ブランケット、30 搬送ユニット、40 マンドレルホイール、41 マンドレル、50 バーニッシュアプリケータ、60 トランスファユニット、100 製版システム、110 データ処理装置、111 分版処理部、112 網点化条件設定部、113 網点化処理部、114 送信処理部、120 版作製装置、141 基板、142 レーザ感熱層、143 インキ反撥層
図1
図2
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図6
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図8
図9