(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
A63B37/00 216
A63B37/00 342
A63B37/00 552
A63B37/00 626
(21)【出願番号】P 2020074109
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶川 貴司
(72)【発明者】
【氏名】佐嶌 隆弘
【審査官】野田 洋平
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3038312(JP,U)
【文献】特開2014-100210(JP,A)
【文献】特開2009-247606(JP,A)
【文献】特開2008-253642(JP,A)
【文献】特開2013-121549(JP,A)
【文献】特開2002-035168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 37/00-47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、この本体の表面の一部を被覆するマーク層と、を備えており、
上記本体が、コアと、少なくとも1層のカバーとを備えており、
上記コアの外表面の色相、彩度及び輝度を、それぞれ、HSL色空間によるH値、S値及びL値を用いて示すとき、上記コアの外表面の色相H2が35以上65以下であり、上記コアの外表面の彩度S2が3以上30以下であり、上記コアの外表面の輝度L2が80以上95以下であり、
上記マーク層が存在する領域をマーク部とし、上記マーク層が存在しない領域を非マーク部とするとき、その外表面において、この非マーク部が白色以外の色を呈しており、
その外表面の色相をHSL色空間によるH値を用いて示すとき、上記マーク部の色相H1と上記非マーク部の色相H0とが、下記数式(1)又は数式(2)を満たすゴルフボール。
0≦|H0-H1|≦30 (1)
330≦|H0-H1|<360 (2)
【請求項2】
その外表面の彩度及び輝度を、それぞれ、HSL色空間によるS値及びL値を用いて示すとき、上記非マーク部の彩度S0が20以上50以下であり、上記非マーク部の輝度L0が40以上70以下である、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
その外表面の彩度及び輝度を、それぞれ、HSL色空間によるS値及びL値を用いて示すとき、上記マーク部の彩度S1が80以上100以下であり、上記マーク部の輝度L1が25以上60以下である、請求項1又は2に記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記本体及びマーク層を被覆するペイント層をさらに備えており、このペイント層が光輝性材料を含む、請求項1から3のいずれかに記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。詳細には、本発明は、マーク層を有するカラーボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールには、マークが印刷されている。マークは、ブランド及びボール番号を含む。ゴルフプレーヤーは、ブランドにより、自らのボールを他人のボールと識別することができる。ゴルフプレーヤーは、ボール番号によっても、自らのボールを他人のボールと識別することができる。ゴルフプレーヤーは、ボールに近づき、マークに基づいてボールを識別する。
【0003】
ゴルフボールは、コアとカバーとを備えている。一般的なゴルフボールは、白色に着色されている。着色は、カバーに二酸化チタン等の白色顔料が分散することで達成されている。カバーが白色に着色されたゴルフボールには、通常、黒色のマークが印刷される。
【0004】
識別性及びファッション性の観点から、その表面が、青、赤等に着色されたゴルフボールが存在する。これらのゴルフボールは、「カラーボール」又は「カラーゴルフボール」と称される。ゴルフプレーヤーは、遠方からカラーボールを視認して、その色により、自らのボールを他人のボールと識別することができる。カラーボールに印刷されるマークには、白色又は黒色が採用されることが多い。
【0005】
特開2008-253642号公報(特許文献1)及び実用新案第3038312号(特許文献2)には、白色及び黒色以外のマークが付されたカラーボールが開示されている。
【0006】
特許文献1では、CIELAB表示系によりマーク部及び非マーク部の明度及び彩度が調整されている。このゴルフボールでは、非マーク部の色が白色とは異なり、その明度がマーク部の明度より小さく、その彩度がマーク部の彩度より大きい。
【0007】
特許文献2では、Lab方式によるL値及び色差を用いて、ボール表面及びブランドマークの色が調整されている。ボール表面は、白色以外の色に着色されており、ブランドマークの色は、ボール表面と同系色であって、ボール表面の色よりも濃い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-253642号公報
【文献】実用新案第3038312号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
プレーにおいて、ゴルフプレーヤーは、遠方から見つけやすいカラーボールを望んでいる。また、ゴルフプレーヤーは、自らのボールと他者のボールとを識別しやすいマークが付されたカラーボールを望んでいる。一方、ボール表面及びマークの配色により、アドレス時に視覚的な違和感を与えるカラーボールが存在する。アドレス時に違和感を覚えたゴルフプレーヤーは、集中力を欠くため、そのショットが不安定になる。
【0010】
本発明の目的は、アドレス時に生じる違和感が少なく、かつ、遠方から見つけやすいゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るゴルフボールは、本体と、この本体の表面の一部を被覆するマーク層と、を備えている。マーク層が存在する領域は、マーク部と称される。マーク層が存在しない領域は、非マーク部と称される。このゴルフボールの外表面において、非マーク部は、白色以外の色を呈する。このゴルフボールの外表面の色相は、HSL色空間によるH値を用いて示される。このゴルフボールでは、マーク部の色相H1と非マーク部の色相H0とが、下記数式(1)又は数式(2)を満たす。
0≦|H0-H1|≦30 (1)
330≦|H0-H1|<360 (2)
【0012】
このゴルフボールでは、外表面の彩度及び輝度が、それぞれ、HSL色空間によるS値及びL値を用いて示される。好ましくは、非マーク部の彩度S0は20以上50以下であり、非マーク部の輝度L0は40以上70以下である。好ましくは、マーク部の彩度S1は80以上100以下であり、マーク部の輝度L1は25以上60以下である。
【0013】
好ましくは、本体は、コアと、少なくとも1層のカバーとを備えている。このコアの外表面の色相、彩度及び輝度は、それぞれ、HSL色空間によるH値、S値及びL値を用いて示される。好ましくは、コアの外表面の色相H2は35以上65以下であり、コアの外表面の彩度S2は3以上30以下であり、コアの外表面の輝度L2は80以上95以下である。
【0014】
好ましくは、このゴルフボールは、本体及びマーク層を被覆するペイント層をさらに備えている。好ましくは、ペイント層は、光輝性材料を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るゴルフボールは、その外表面の大半が白色以外の色を呈する。このゴルフボールは、いわゆるカラーゴルフボールである。このゴルフボールでは、その外表面におけるマーク部の色相H1と非マーク部の色相H0とが、前述した数式(1)及び数式(2)を満たす。このゴルフボールでは、マーク部の色と非マーク部の色とが同系色である。このゴルフボールは、遠距離からの視認性に優れている。このゴルフボールでは、マーク部により生じる違和感が少ない。ゴルフプレーヤーは、アドレス時に、マークに気をとられることなく、このゴルフボールを打撃することができる。このゴルフボールは、ショットの安定性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールの一部が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本願明細書では、マーク部及び非マーク部の色相(H値)、彩度(S値)及び輝度(L値)は、ゴルフボールの外表面における色相(H値)、彩度(S値)及び輝度(L値)を意味する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール2の一部が示された拡大断面図である。このゴルフボール2は、本体4、マーク層6及びペイント層8を備えている。本体4は、球状のコア10と、このコア10の外側に位置するカバー12とからなる。本体4が、単一層から構成されてもよい。ゴルフボール2は、その表面にディンプル14及びランド16を備えている。ゴルフボール2が、カバー12とマーク層6との間に、他のペイント層を備えてもよい。
【0019】
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、好まし直径は42.67mm以上である。ゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、好ましい質量は45.93g以下である。
【0020】
図示される通り、マーク層6は、本体4の表面の一部を被覆するように形成される。このゴルフボール2の外表面(本実施形態ではペイント層8の表面)において、マーク層6が存在する領域がマーク部18と称され、マーク層6が存在しない領域が非マーク部20と称される。換言すれば、ゴルフボール2の外表面において、マーク部18以外の領域が、非マーク部20である。このゴルフボール2の外表面は、マーク部18と非マーク部20とに区別される。好ましくは、ゴルフボール2の全表面積に対するマーク部18の面積の比率は0.5%以上20%以下である。ゴルフボール2は、複数のマーク部18を有しうる。
【0021】
このゴルフボール2の外表面のほとんどは、非マーク部20である。このゴルフボール2では、非マーク部20が白色以外の色を呈する。従って、このゴルフボール2を目視するゴルフプレーヤーには、カラーボールとして認識される。ゴルフプレーヤーは、遠距離からこのゴルフボール2を見つけることができる。
【0022】
このゴルフボール2では、HSL色空間によるH値を用いて、その外表面の色相が示される。このゴルフボール2では、マーク部18の色相H1と非マーク部20の色相H0とが、下記数式(1)又は数式(2)を満たす。
0≦|H0-H1|≦30 (1)
330≦|H0-H1|<360 (2)
この数式(1)及び数式(2)中、|H0-H1|は、マーク部18の色相H1と非マーク部20の色相H0との差の絶対値である。
【0023】
マーク部18の色相H1と非マーク部20の色相H0との差の絶対値|H0-H1|が0以上30以下又は330以上360未満であるゴルフボール2では、マーク部18の色と非マーク部20の色とが同系色である。このゴルフボール2では、非マーク部20の中でマーク部18が、過度には強調されない。そのため、ゴルフプレーヤーは、アドレス時に、このマーク部18によって大きな違和感を覚えない。ゴルフプレーヤーは、マーク部18に気をとられることなく、ショットに対する集中力を維持することができる。このゴルフボール2によれば、視覚に過度にとらわれることなく、ゴルフプレーヤー自身の打ち方が可能になるため、ショットによるばらつきが低減される。このゴルフボール2は、ショットの安定性に優れている。また、同系色の組みあわせでは、総合的な効果により、ゴルフボール2の全体的な鮮明さが向上する。このゴルフボール2は、遠距離からの視認性に優れている。HSL色空間により示される色相は、CIELAB表示系及びLab方式と比べて、人間が知覚できる色に近いため、直観的に判断できるという利点がある。また、コンピュータ上で出力されるRGB系と対応していることから、現代のデザイン設計において扱いやすいという利点もある。
【0024】
違和感が少ないとの観点から、マーク部18の色相H1と非マーク部20の色相H0との差の絶対値|H0-H1|は、25以下が好ましく、20以下がより好ましい。視認性の観点から、この差の絶対値|H0-H1|は、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。もしくは、違和感が少ないとの観点から、マーク部18の色相H1と非マーク部20の色相H0との差の絶対値|H0-H1|は、335以上が好ましく、340以上がさらに好ましい。視認性の観点から、この差の絶対値|H0-H1|は、355以下が好ましく、350以下がさらに好ましい。
【0025】
マーク部18の色相H1及び非マーク部20の色相H0は、特に限定されず、上記数式(1)又は数式(2)を満たす範囲で適宜調整される。
【0026】
好ましくは、このゴルフボール2では、その外表面の彩度及び輝度が、それぞれ、HSL色空間によるS値及びL値を用いて示される。視認性の観点から、非マーク部20の彩度S0は20以上が好ましく、22以上がより好ましく、25以上がさらに好ましい。非マーク部20の彩度S0は、50以下が好ましく、47以下がより好ましく、45以下がさらに好ましい。
【0027】
視認性の観点から、非マーク部20の輝度L0は70以下が好ましく、68以下がより好ましく、65以下がさらに好ましい。非マーク部20の輝度L0は、40以上が好ましく、41以上がより好ましく、42以上がさらに好ましい。
【0028】
視認性及び識別性の観点から、マーク部18の彩度S1は80以上が好ましく、81以上がより好ましく、82以上がさらに好ましい。マーク部18の彩度S1は100以下が好ましく、98以下がより好ましく、95以下がさらに好ましい。
【0029】
視認性及び識別性の観点から、マーク部18の輝度L1は25以上が好ましく、27以上がより好ましく、29以上がさらに好ましい。マーク部18の輝度L1は60以下が好ましく、55以下がより好ましく、53以下がさらに好ましい。
【0030】
本発明において、ゴルフボール2が備える本体4(コア10及びカバー12)、マーク層6及びペイント層8の直径及び厚み等は、特に限定されないが、通常、ゴルフボール2においてマーク層6及びペイント層8は薄い。従って、ゴルフボール2の外表面の色は、本体4の色の影響を受ける。また、本体4において、コア10の直径に対するカバー12の厚みが小さい場合、本体4の色は、コア10の色の影響を受ける。この観点から、このゴルフボール2では、好ましくは、コア10の外表面の色相、彩度及び輝度が、それぞれ、HSL色空間によるH値、S値及びL値を用いて調整される。
【0031】
ゴルフボール2の外表面において、マーク部18の色相H1及び非マーク部20の色相H0が前述した数式(1)又は数式(2)を満たしやすいとの観点から、コア10の外表面の色相H2は35以上が好ましく、38以上がより好ましく、40以上がさらに好ましい。コア10の外表面の色相H2は65以下が好ましく、63以下がより好ましく、60以下がさらに好ましい。
【0032】
視認性及び識別性の観点から、コア10の外表面の彩度S2は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上がさらに好ましい。コア10の外表面の彩度S2は30以下が好ましく、28以下がより好ましく、25以下がさらに好ましい。同様の観点から、コア10の外表面の輝度L2は80以上が好ましく、82以上がより好ましく、85以上がさらに好ましい。コア10の外表面の輝度L2は95以下が好ましく、94以下がより好ましく、93以下がさらに好ましい。
【0033】
コア10の外表面の色相H2、彩度S2及び輝度L2が上記範囲であるゴルフボール2では、コア10の色が、本体4及びゴルフボール2の色に大きくは影響しない。このゴルフボール2では、カバー12及びマーク層6の色が、マーク層18及び非マーク層20の色に反映されうる。
【0034】
このゴルフボール2において、本体4の外表面の色相、彩度及び輝度が、それぞれ、HSL色空間によるH値、S値及びL値を用いて調整されてもよい。本体4の色相H3は、ゴルフボール2の外表面において、マーク部18の色相H1及び非マーク部20の色相H0が前述した数式(1)又は数式(2)を満たすように、適宜調整される。
【0035】
視認性及び識別性の観点から、本体4の彩度S3は15以上が好ましく、18以上がより好ましい。本体4の彩度S3は、100以下が好ましい。同様の観点から、本体4の輝度L3は15以上が好ましく、18以上がより好ましい。本体4の輝度L3は100以下が好ましい。
【0036】
色の測定は、コニカミノルタ社の分光測色計「CM-3500d」によってなされる。この分光測色計の受光部がゴルフボール2の外表面、本体4の外表面又はコア10の外表面に当てられて、測定がなされる。光源には、「標準の光D65」が採用される。この光源の色温度は、6504kである。分光感度としては、「2°視野」が採用される。他の測定条件は、以下の通りである。
測定波長範囲:360-740nm
測定領域(径):φ8mm
測定時間:1秒
【0037】
この測定により、CIELAB表示系における指数L*、a*及びb*が得られる。これらの指数を、既知の変換ツールを用いて変換することにより、HSL色空間による指数H値、S値及びL値が求められる。この変換ツールとして、例えば、URL「https://syncer.jp/color-converter」(2020年4月)で入手可能なカラーコード変換ツールが挙げられる。
【0038】
以下、このゴルフボール2が備える本体4(コア10及びカバー12)、マーク層6及びペイント層8の好ましい材料及び構成について順次説明する。本発明の目的が達成される範囲内で、コア10及びカバー12が、2以上の層から構成されてもよく、ゴルフボール2が他の材料からなる層をさらに備えてもよい。
【0039】
このゴルフボール2では、コア10は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。好ましくは、架橋には共架橋剤が用いられる。好ましくは、ゴム組成物は、共架橋剤と共に、有機過酸化物を含む。
【0040】
コア10のゴム組成物が、着色剤を含んでもよい。着色剤として、染料及び顔料が挙げられる。コア10が白色に着色される場合、ゴム組成物が、白色着色剤として、二酸化チタンを含んでもよい。着色剤の配合により、コア10の外表面の色が調整される。ゴム組成物に配合される着色剤の種類及び量は、前述した好ましい色相等が得られるように適宜選択される。
【0041】
本発明の効果が阻害されない範囲で、コア10のゴム組成物が、さらに、充填剤、硫黄、加硫促進剤、硫黄化合物、老化防止剤、可塑剤、分散剤等の添加剤を含んでもよい。ゴム組成物に、合成樹脂粉末又は架橋されたゴム粉末が配合されてもよい。適正な厚みのカバー12が形成されるとの観点から、コア10の好ましい直径は30.0mm以上42.0mm以下である。
【0042】
カバー12は、樹脂組成物からなる。熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が、カバー12に用いられうる。典型的な樹脂は、アイオノマー樹脂及びポリウレタンである。カバー12が、スチレンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー及びポリオレフィンエラストマーを含んでもよい。
【0043】
このゴルフボール2では、カバー12の樹脂組成物が、顔料を含む。顔料によって、カバー12が、青、水色、緑、黄緑、紫、赤、黄等に着色される。着色されたカバー12の色が、ゴルフボール2の外表面、特に、非マーク部20の色に反映される。
【0044】
本発明の効果が阻害されない限り、カバー12に配合される顔料の種類は特に限定されない。青色顔料、緑色顔料、紫色顔料、赤色顔料、黄色顔料等が用いられうる。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等が例示される。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ファナルイエローグリーンG等が例示される。紫色顔料としては、アントラキノンバイオレット、ジオキサンバイオレット、メチルバイオレット、マンガン紫等が例示される。赤色顔料としては、ベンガラ、鉛丹、モリブレンレッド、カドミウムレッド、ピグメントレッド等が例示される。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー等が例示される。蛍光顔料であってもよく、非蛍光顔料であってもよい。2種以上が併用されてもよい。
【0045】
カバー12に配合される顔料の量は、マーク部18の色相H1及び非マーク部20の色相H0が前述した数式(1)を満たすように、その種類に応じて適宜調整される。好ましい顔料の量は、基材樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下である。
【0046】
カバー12の樹脂組成物が、二酸化チタン等の白色着色剤を含んでもよい。好ましくは、白色着色剤は、前述した顔料と併用される。白色着色剤と他の顔料との併用により、所望の色を有するカバー12が得られうる。カバー12に配合される白色顔料の量は、マーク部18の色相H1及び非マーク部20の色相H0が前述した数式(1)又は数式(2)を満たすように適宜調整される。好ましい白色顔料の量は、基材樹脂100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下である。
【0047】
カバー12の樹脂組成物が、さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光増白剤等を含んでもよい。カバー12の好ましい厚みは0.1mm以上3.5mm以下である。
【0048】
マーク層6は、インク組成物からなる。このインク組成物は、基材樹脂と顔料とを含む。基材樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール及びニトロセルロースが例示される。
【0049】
マーク層6をなすインク組成物は、顔料を含む。顔料によって、マーク層6が、桃色、赤、橙、黄、黄緑、青、白、黒等に着色される。着色されたマーク層6の色が、ゴルフボール2の外表面、特に、マーク部18の色に反映される。このゴルフボール2では、マーク層6の色は、カバー12の色とは異なる。好ましくは、このゴルフボール2では、マーク部18の色が、非マーク部20の色の同系色となるように、マーク層6の色が選択される。
【0050】
本発明の効果が阻害されない限り、マーク層6のインク組成物に配合される顔料の種類及び量は特に限定されない。カバー12の樹脂組成物に関して前述した顔料及び/又は白色顔料を含むインク組成物が、適宜選択されて用いられる。必要に応じて、さらに他の顔料を含むインク組成物が用いられうる。他の顔料の例としては、カーボンブラック等の黒色顔料及びモリブテンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ等の橙色顔料が挙げられる。2種以上の顔料が併用されてもよい。インク組成物における顔料の量は、基材樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下である。
【0051】
マーク層6は、カバー12(本外4)の表面に印刷が施されることにより形成される。マーク層6により、メーカー名、ブランド、ボール番号等が表示される。パッド印刷、刻印式印刷、インクジェット式印刷、転写フィルム式印刷等が、採用されうる。生産性の観点から、パッド印刷が好ましい。
【0052】
パッド印刷には、二液硬化型インク組成物が好適に用いられうる。二液硬化型インク組成物には、硬化剤が配合される。好ましい硬化剤は、イソシアネート系硬化剤である。イソシアネート系硬化剤の例として、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。インク組成物における硬化剤の量は、基材樹脂100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である。
【0053】
インク組成物が、さらに溶剤を含んでもよい。溶剤によって、インク組成物が、所望の粘度に調整される。本発明の効果が阻害されない限り、溶剤の種類は特に限定されない。例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシメチルブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート等のエステル系溶剤、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が、適宜選択されて用いられる。2種以上が併用されてもよい。インク組成物における溶剤の比率は、10質量%以上50質量%以下が好ましい。インク組成物が、さらに、消泡剤、流動性調整剤、分散剤、艶消剤等の添加剤を含んでもよい。
【0054】
ゴルフボール2の外表面において、マーク部20にマーク層6の色が反映されるとの観点から、マーク層6の厚みは1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。経済性の観点から、好ましいマーク層6の厚みは50μm以下である。
【0055】
ペイント層8は、本体4(カバー12)及びマーク層6を被覆している。ペイント層8により、マーク層6が保護される。好ましくは、ペイント層8は透明である。透明なペイント層8によって、本体4及びマーク層6の色が、非マーク部20及びマーク部18の色に反映される。
【0056】
ペイント層8は、塗料の塗布によって形成されている。静電塗装、スプレーガン塗装、刷毛塗り等が、採用されうる。塗料の基材樹脂としては、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、セルロース樹脂等が例示される。ペイント層8の耐久性の観点から、二液硬化型ポリウレタンが好ましい。
【0057】
二液硬化型ポリウレタンは、主剤と硬化剤との反応によって得られる。ポリオール成分を含有する主剤とポリイソシアネート(ポリイソシアネート誘導体を含む)を含有する硬化剤との反応によって得られる二液硬化型ポリウレタンが好ましい。
【0058】
好ましくは、ペイント層8をなす塗料は、光輝性材料を含む。光輝性材料を含む塗料により、光輝性材料が分散するペイント層8が形成される。光輝性材料が分散するペイント層8によって、ゴルフボール2の視認性及び識別性がさらに向上する。本発明の効果が阻害されない限り、光輝性材料の種類は特に限定されない。アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属フレーク、ガラスフレーク、グラファイト片粒子等であってもよく、金属又は金属酸化物で被覆された雲母片粒子、シリカ粒、アルミナ粒子等であってもよい。
【0059】
視認性の観点から、ペイント層8の塗料中の光輝性材料の量は、基材樹脂100質量部に対して1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましい。識別性の観点から、マーク部18及び非マーク部20の色を阻害しないとの観点から、光輝性材料の量は20質量部以下が好ましく、18質量部以下がより好ましい。
【0060】
ペイント層8をなす塗料が、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等を含有してもよい。ペイント層8の厚みは、3μm以上100μm以下が好ましい。ペイント層8が2層以上に形成されてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0062】
[実施例1]
100質量部のポリブタジエン(ジェイエスアール社の商品名「BR-730」)、25質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、6質量部の二酸化チタン、15質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド(住友精化社)及び0.8質量部のジクミルパーオキサイド(日本油脂社)を混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃にて20分間加熱して、直径が38.9mmであるコアを得た。コアの外表面の色は灰白色であり、前述した方法で測定したHSL色空間による色相(H値)は57であり、彩度(S値)は15であり、輝度(L値)は90であった。
【0063】
45質量部のアイオノマー樹脂(デュポン社の商品名「サーリン8945」)、45質量部の他のアイオノマー樹脂(デュポン社の商品名「サーリン9945」)、10質量部のスチレンブロック含有熱可塑性エラストマー(三菱ケミカル社の商品名「テファブロックT3221C」)、3.0質量部の二酸化チタン及び顔料成分換算で1.0質量部の青色顔料(UKSEUNG CHEMICAL社の商品名「PANAX EPO COLOER BLUE FP-1050」)を二軸混練押出機にて混練し、カバー用の樹脂組成物C1を得た。上記コアを、内周面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に投入し、コアの周囲に樹脂組成物C1を射出成形法により注入した。注入により、厚みが1.9mmである青色のカバーを備えた本体を得た。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成された。前述した方法で本体(カバー)の外表面の色相、彩度及び輝度を測定した。この測定結果が、それぞれ、H3、S3及びL3として、下表1に示されている。この本体の表面に、研磨処理を行った。
【0064】
90.0質量部の青色インキ(ナビタス社の商品名「PAD-1インキ B93112ブルー」)、6.6質量部のインク硬化剤(和薬ペイント社の商品名「#9」)、4.4質量部のインク用希釈溶剤(十条ケミカル社のNT標準溶剤)及び8.0質量部のアセチルアセトンを混合して、マーク層用のインク組成物M6得た。このインク組成物M6を用いて、パッド印刷にて、本体(カバー)の表面に、青色のマーク層を形成した。マーク層の厚みは約3μmであった。
【0065】
二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を、調製した。この塗料の主剤は、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリールとの混合物である。この主剤の水酸基価は、82mgKOH/gである。この塗料の硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートである。この塗料のNCO:OH当量比は、1.3:1.0である。この塗料は、光輝性材料(メルク社の商品名「Iriodin 201」)を含んでいる。この光輝性材料の量は、基材樹脂100質量部に対して10質量部である。このクリアー塗料を、カバーにスプレーガンにて塗装した。この塗料を40℃の温度下で120分間乾燥させ、厚みが約10μmであるペイント層を得た。こうして、直径が42.7mmであり、質量が約45.4gである実施例1のゴルフボールを得た。前述した方法でゴルフボールの外表面の色相、彩度及び輝度を測定した。非マーク部の色相H0、彩度S0及び輝度L0並びにマーク部の色相H1、彩度S1及び輝度L1が、それぞれ下表3に示されている。
【0066】
[実施例2-12及び比較例1-52]
カバーの樹脂組成物及びマーク層のインク組成物を下表3及び4に示される通りとした以外は実施例1と同様にして、実施例2-12及び比較例1-52のゴルフボールを得た。カバーの樹脂組成物の詳細が、下表1に示されている。マーク層のインク組成物の詳細が、下表2に示されている。
【0067】
[違和感]
各ゴルフボールを、それぞれ、マーク部が最も上になる状態でティーに置いた。20名のゴルフプレーヤーに、各ボールを打撃させて、違和感の有無を評価させた。マークが気にならないと回答した人数に基づき、下記の格付けを行った。
A:16人以上
B:11人以上15人以下
C:6人以上10人以下
D:5人以下
この結果が、下表3及び4に示されている。
【0068】
[視認性]
各ゴルフボールをバンカー上に置いた。このボールから20m離れた地点にいる20名のゴルフプレーヤーに、視認性を評価させた。ゴルフボールを見つけやすいと回答した人数に基づき、下記の格付けを行った。
A:16人以上
B:11人以上15人以下
C:6人以上10人以下
D:5人以下
この結果が、下表3及び4に示されている。
【0069】
【0070】
表1に記載された各顔料の詳細は、以下の通りである。
青色顔料:UKSEUNG CHEMICAL社の商品名「PANAX EPO COLOER BLUE FP-1050」
緑色顔料:DayGlo社の商品名「ZQ-18」
赤色顔料:UKSEUNG CHEMICAL社の商品名「PANAX EPO COLOER RED FP-113」
黄色顔料:シンロイヒ社の商品名「SINLOIHI COLOR FX-305S」
二酸化チタン:石原産業社の商品名「タイペークA-220」
【0071】
【0072】
表2に記載されたインキの詳細は、以下の通りである。
PAD B13174ピンク:ナビタス社の商品名「PAD-1インキ B13174ピンク」
08赤:ナビタス社の商品名「PAD-1インキ 08赤」
28オレンジ:ナビタス社の商品名「PAD-1インキ 28オレンジ」
12黄:ナビタス社の商品名「PAD-1インキ 12黄」
07白:ナビタス社の商品名「PAD-1インキ 07白」
45濃藍:ナビタス社の商品名「PAD-1インキ 45濃藍」
B93112ブルー:ナビタス社の商品名「PAD-1インキ B93112ブルー」
EXO白:ナビタス社の商品名「PAD-1インキ EXO白」
90黒:ナビタス社の商品名「PAD-1インキ 90黒」
#9:和薬ペイント社のインク硬化剤
NT標準溶剤:十条ケミカル社のインク用希釈溶剤
【0073】
【0074】
【0075】
表3-4には、非マーク部の色相H0とマーク部の色相H1との差H0-H1が示されている。この差の絶対値|H0-H1|が0以上30以下又は330以上360未満である実施例では、違和感に関する評価結果がA評価又はB評価であり、視認性の評価結果がA評価又はB評価である。差の絶対値|H0-H1|が30を超えて、330未満の比較例では、違和感及び視認性のいずれかが、C評価又はD評価である。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、種々の構造のゴルフボールに適用されうる。
【符号の説明】
【0077】
2・・・ゴルフボール
4・・・本体
6・・・マーク層
8・・・ペイント層
10・・・コア
12・・・カバー
14・・・ディンプル
16・・・ランド
18・・・マーク部
20・・・非マーク部