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特許7521261揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/00 20060101AFI20240717BHJP
   B66C 13/22 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B66C23/00 C
B66C13/22 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020093367
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021187604
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】笹原 大介
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-059598(JP,A)
【文献】特開平10-258989(JP,A)
【文献】特開2004-161460(JP,A)
【文献】特開2015-068019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚重物の揺動状態情報を取得する情報取得部及び揚重装置と通信を行なう制御部を備えた揚重支援システムであって、
前記制御部が、
前記揚重装置の周囲に存在する障害物に応じて、前記揚重物の搬送開始位置から搬送目標位置の搬送ルートを算出し、
前記情報取得部が取得した揺動状態情報を用いて、前記揚重装置の揚重部から吊り下げた揚重物の位置を特定し、
前記揚重物の位置において揺動を検知した場合、前記揺動の振れ幅及び周期を特定し、
前記搬送ルートの搬送方向と一致するとともに、振れ方向が変わる時点を最大振れ幅になるタイミングとして特定し、
前記タイミングで、前記揚重部を前記揚重物の上方に配置するための加速移動操作を、前記揚重装置において行なうことを特徴とする揚重支援システム。
【請求項2】
揚重物の揺動状態情報を取得する情報取得部及び揚重装置と通信を行なう制御部を備えた揚重支援システムを用いて揚重支援を行なう方法であって、
前記制御部が、
前記揚重装置の周囲に存在する障害物に応じて、前記揚重物の搬送開始位置から搬送目標位置の搬送ルートを算出し、
前記情報取得部が取得した揺動状態情報を用いて、前記揚重装置の揚重部から吊り下げた揚重物の位置を特定し、
前記揚重物の位置において揺動を検知した場合、前記揺動の振れ幅及び周期を特定し、
前記搬送ルートの搬送方向と一致するとともに、振れ方向が変わる時点を最大振れ幅になるタイミングとして特定し、
前記タイミングで、前記揚重部を前記揚重物の上方に配置するための加速移動操作を、前記揚重装置において行なうことを特徴とする揚重支援方法。
【請求項3】
揚重物の揺動状態情報を取得する情報取得部及び揚重装置と通信を行なう制御部を備えた揚重支援システムを用いて揚重支援を行なうためのプログラムであって、
前記制御部を、
前記揚重装置の周囲に存在する障害物に応じて、前記揚重物の搬送開始位置から搬送目標位置の搬送ルートを算出し、
前記情報取得部が取得した揺動状態情報を用いて、前記揚重装置の揚重部から吊り下げた揚重物の位置を特定し、
前記揚重物の位置において揺動を検知した場合、前記揺動の振れ幅及び周期を特定し、
前記搬送ルートの搬送方向と一致するとともに、振れ方向が変わる時点を最大振れ幅になるタイミングとして特定し、
前記タイミングで、前記揚重部を前記揚重物の上方に配置するための加速移動操作を、前記揚重装置において行なう手段として機能させることを特徴とする揚重支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等の揚重装置において、揚重作業を支援する揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
資機材を運搬する場合に、タワークレーン等の揚重装置を用いることがある。この揚重装置においては、吊り荷をワイヤで吊った状態で搬送するので、吊り荷に振れが生じることがある。例えば、ジブの旋回操作や起伏操作において移動の開始時や方向の変更時には、慣性の法則で吊り荷が揺動することになる。また、風等の外力により振れることもある。このため、振れを抑制する技術も検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この文献に開示された技術では、タワークレーンにおいてジブ先端位置計測装置によりジブ先端位置をリアルタイムで計測する。また、吊り荷振れ幅計測装置により吊り荷の振れをリアルタイムで計測する。自動運転制御装置は、吊り荷の移動をリアルタイムで計測されたジブ先端位置及び吊り荷の振れに基づいてフィードバック制御及びファジィ制御を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-258989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、振れを抑制するために減速していたのでは、揚重作業の効率化を実現することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための揚重支援システムは、揚重物の揺動状態情報を取得する情報取得部及び揚重装置と通信を行なう制御部を備える。そして、前記制御部が、前記情報取得部が取得した揺動状態情報を用いて、前記揚重装置の揚重部から吊り下げた揚重物の位置を特定し、前記揚重物の位置において揺動を検知した場合、前記揺動の振れ幅及び周期を特定し、前記周期に応じた前記振れ幅で、前記揚重部を前記揚重物の上方に配置するための操作を、前記揚重装置において行なう。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、揚重作業において、効率的かつ的確な搬送を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態のシステムの説明図。
図2】実施形態のタワークレーンの説明図。
図3】実施形態のハードウェア構成の説明図。
図4】実施形態の揚重情報記憶部に記録されたデータの説明図。
図5】実施形態の処理手順の説明図。
図6】実施形態の撮影画像における画像認識の説明図。
図7】実施形態の撮影画像における揺動の説明図。
図8】実施形態の揺動の抑制の説明図であって、(a)は揺動がない場合、(b)は揺動が生じた場合、(c)は最大振れ位置となった場合、(d)は旋回操作を行なった場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図8に従って、揚重支援システム、揚重支援方法及び揚重支援プログラムの一実施形態を説明する。本実施形態では、建築現場において、揚重装置(タワークレーン)を利用する場合に用いる揚重支援システムとして説明する。
【0009】
本実施形態では、図1に示すように、制御ユニット10、支援サーバ20、管理端末30を用いる。制御ユニット10は、揚重装置としてのタワークレーンC1に設けられる。
図2に示すように、タワークレーンC1のマストC10の上には、旋回フレームC11が載置されており、旋回フレームC11に運転席C12が設けられている。オペレータの操作によって揚重作業を行なう場合には、タワークレーンC1の運転席C12で、旋回フレームC11の旋回操作やジブC13(ブーム)の起伏(傾斜角)操作、フックC14の上下操作を行なう。そして、ジブC13の揚重部C130からワイヤで吊下げられたフックC14に固定された吊り荷C15を搬送する。なお、遠隔操作や自動運転操作により、オペレータの操作を行なうことも可能である。また、制御ユニット10はタワークレーンC1に設けられている。
【0010】
(ハードウェア構成の説明)
図3を用いて、制御ユニット10、支援サーバ20、管理端末30を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0011】
通信装置H11は、他の装置との間で通信ルートを確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0012】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
記憶部H14は、制御ユニット10、支援サーバ20、管理端末30の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0013】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、制御ユニット10、支援サーバ20、管理端末30における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0014】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0015】
(システム構成)
次に、図1を用いて、揚重支援システムの各機能を説明する。
タワークレーンC1に設けられる制御ユニット10は、撮像装置11及び駆動制御部12を備える。
【0016】
撮像装置11は、タワークレーンC1のジブC13の先端に設けられて、下方の揚重物CL1の動画を撮影する。本実施形態では、ジブC13によって吊り下げられる物を揚重物CL1と呼び、フックC14、吊り荷C15が含まれるが、いずれか一方でもよい。
駆動制御部12は、旋回フレームC11の旋回操作、ジブC13の起伏操作、フックC14の上下操作に応じた駆動制御を行なう。
そして、制御ユニット10は、撮像装置11による動画、駆動制御部12の駆動情報を支援サーバ20に送信する。
【0017】
支援サーバ20は、制御ユニット10から取得した情報を用いて、揚重作業を支援するコンピュータシステムである。この支援サーバ20は、制御部21、揚重情報記憶部22を備える。
【0018】
制御部21は、後述する処理(情報取得段階、認識段階、揺動制御段階、揚重管理段階等を含む処理)を行なう。このための各処理のためのプログラムを実行することにより、制御部21は、情報取得部211、認識部212、揺動制御部213、搬送管理部214等として機能する。
【0019】
情報取得部211は、制御ユニット10、管理端末30から各種情報を取得する。本実施形態では、制御ユニット10からジブC13先端の下方の撮影画像(動画)を、揺動状態情報として取得して仮記憶する。この撮影画像により、吊り荷C15の状態を確認することができる。更に、情報取得部211は、制御ユニット10から、フックC14を吊下げているワイヤの上下操作情報を取得する。この上下操作情報により、ジブC13先端からフックC14までのワイヤの長さ(吊下げ長さL)を特定することができる。また、管理端末30から、管理者によって入力された各種指示情報を取得する。
【0020】
認識部212は、撮影画像において、被写体を認識する処理を実行する。本実施形態では、画像認識処理を用いて、撮影画像においてフックC14を認識する。例えば、フックC14を上方から撮影した撮影画像を教師情報として用いた機械学習により、フックC14を特定する予測モデルを生成して、認識部212に保持させておく。この教師情報においては、フックC14の下方の背景には、吊り荷C15や地上物等を含めた多様な画像を用いることができる。
【0021】
揺動制御部213は、フックC14及び吊り荷C15の揺動を静止させる処理を実行する。本実施形態では、フックC14の揺動状態に応じて、揺動を静止させるための旋回フレームC11の旋回操作やジブC13の起伏操作の調整量を算出する。この揺動制御部213は、揺動の抑制操作の要否を判断するための基準距離に関する情報を保持している。
更に、揺動制御部213は、記憶している下記の周期算出式により、周期Tを算出する。ここでは、吊下げ長さLに対して振幅が十分に小さい場合を想定する。
周期T=2π√〔吊下げ長さL〕/〔重力加速度g〕
なお、周期は、上記算出式を用いて算出する場合に限定されない。例えば、撮影画像からフックC14の振れの方向を観察して周期を計測してもよいし、周期算出式による周期と計測周期とを併用して、両者の統計値を算出してもよい。
【0022】
搬送管理部214は、搬送ルートにより、タワークレーンC1を動作させる。この搬送管理部214は、吊り荷のサイズ(寸法や重量)に応じて、搬送速度(通常速度)を決定するための速度決定テーブルを備える。この速度決定テーブルにおいては、吊り荷C15のサイズが大きい程、遅い搬送速度が設定されている。
【0023】
図4に示すように、揚重情報記憶部22には、制御ユニット10の吊り荷に関する揚重管理データ220が記録される。この揚重管理データ220は、管理端末30から、各種情報を取得した場合に記録される。揚重管理データ220は、作業ID、クレーンID、吊上げ位置、吊下し位置、搬送物に関する情報を含んで構成される。
【0024】
作業IDは、各揚重作業を特定するための識別子に関する情報である。
クレーンIDは、この各揚重作業において用いるタワークレーンC1を特定するための識別子に関する情報である。
【0025】
吊上げ位置情報、吊下し位置情報は、管理者によって指定された吊上げ位置(搬送開始位置)、吊下し位置(搬送目標位置)に関する情報である。
搬送物情報は、揚重対象の資機材を特定するための識別子やサイズに関する情報である。
【0026】
揚重管理データ220には、予定ルート情報221及び実績ルート情報222が関連付けられている。予定ルート情報221は、ルート生成を行なった場合に記録される。実績ルート情報222は、揚重を終了した後で記録される。
予定ルート情報221は、搬送ルートに関する情報である。この予定ルート情報221には、搬送開始位置~搬送目標位置までの搬送ルートのために行なわれるジブC13の起伏操作、旋回フレームC11の旋回操作の操作タイミング及び操作量に関する情報が含まれる。
【0027】
実績ルート情報222は、旋回フレームC11の旋回操作やジブC13の起伏操作、フックC14の上下操作の操作に基づいて、吊り荷C15が通過した実績ルートに関する情報である。
【0028】
図1に示す管理端末30は、建築現場の管理者が用いるコンピュータ端末である。本実施形態では、管理者は、運転席C12のオペレータによる操作の代わりに、管理端末30を用いて、建築現場におけるタワークレーンC1を遠隔操作して揚重作業を指示する。
【0029】
(揚重支援処理)
次に、図5を用いて、上記のように構成された支援サーバ20において、揚重作業時に行なわれる揚重支援方法の処理手順を説明する。
【0030】
まず、支援サーバ20の制御部21は、搬送ルートの設定処理を実行する(ステップS101)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、タワークレーンC1の周囲の構造物が搬送の障害にならない搬送高さを取得する。この搬送高さは、管理端末30を用いての手動により取得することができる。また、制御部21が、建築現場におけるBIM情報や、カメラや3次元センサによる検知情報を取得し、取得した情報に基づいて特定された障害物の高さに対して余裕高さを加算することにより、搬送高さを算出することも可能である。
更に、情報取得部211は、管理端末30に搬送入力画面を出力し、クレーンID、搬送開始位置、搬送目標位置、搬送物に関する情報を取得する。そして、情報取得部211は、作業IDを付与し、管理画面から取得した搬送物情報を含めた揚重管理データ220を揚重情報記憶部22に記録する。
【0031】
そして、情報取得部211は、搬送高さにおける搬送可能エリアにおいて、搬送開始位置~搬送目標位置の搬送ルートを算出する。この搬送ルートの算出には、公知のルート探索アルゴリズムを用いる。このルート探索アルゴリズムとしては、例えば、「A*(A-star)探索アルゴリズム」を用いることができる。このA*探索アルゴリズムは、移動開始位置→搬送開始位置→搬送目標位置までのパスを見つけるグラフ探索問題において、探索の道標となるコスト関数を用いる。コスト関数では、搬送可能エリアを構成する部分領域毎に付与されたコスト(評価値)を用いる。例えば、障害物に近い場合や障害物の重要度が高い場合、評価値を高く設定しておく。そして、スタートからn地点までのコストと、n地点からゴールまでの予想される評価値の合計が低い運搬ルートを特定する。
そして、情報取得部211は、生成した搬送ルートを、予定ルート情報221として、揚重管理データ220に関連付けて揚重情報記憶部22に記録する。
【0032】
制御部21の搬送管理部214は、管理端末30から搬送開始指示を取得した場合、タワークレーンC1の制御ユニット10の駆動制御部12に対して、搬送開始を指示する。この場合、搬送管理部214は、吊り荷C15のサイズに応じて、速度決定テーブルに記録された搬送速度での搬送を指示する。
【0033】
そして、搬送中には、ステップS102~S109の揺動抑制処理を実行する。
この場合、支援サーバ20の制御部21は、画像取得処理を実行する(ステップS102)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、タワークレーンC1の制御ユニット10から、撮像装置11で撮影した撮影画像を取得する。
【0034】
次に、支援サーバ20の制御部21は、揚重位置の特定処理を実行する(ステップS103)。具体的には、制御部21の認識部212は、制御ユニット10から取得した撮影画像(動画の各フレーム画像)において、予測モデルを用いて、フックC14を特定する。そして、フックC14の位置により、その直下の吊り荷C15を特定できる。
図6に示すように、撮像装置11から取得した撮影画像500において、フックC14を特定する。このフックC14の直下に吊り荷C15が存在する。
【0035】
次に、支援サーバ20の制御部21は、振れが許容範囲外かどうかについての判定処理を実行する(ステップS104)。具体的には、制御部21の揺動制御部213は、フックC14の位置が、ジブC13の先端の下方で、直下位置から基準距離内に収まっている場合には、許容範囲内と判定する。
【0036】
フックC14の位置が基準距離内に収まっておらず、振れが許容範囲外と判定した場合(ステップS104において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、振幅の特定処理を実行する(ステップS105)。具体的には、制御部21の揺動制御部213は、撮影画像において、振幅を特定する。ここでは、所定時間の動画において揺動を監視し、ジブC13の先端の吊り下げの直下位置から、揺動の最大ずれ位置までの距離(最大振れ幅)を振幅として特定する。
【0037】
ここでは、旋回方向の振幅及び旋回方向に対する径方向の振幅を算出する。
図7に示すように、振幅SW1は、旋回方向の振幅を示しており、振幅SW2は、径方向の振幅を示している。
【0038】
次に、支援サーバ20の制御部21は、周期の特定処理を実行する(ステップS106)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、制御ユニット10から、吊下げ長さLを取得し、周期算出式を用いて周期Tを算出する。なお、上述の通り、撮影画像からフックC14のゆれの方向を観察して周期を計測してもよいし、周期算出式による周期と計測周期とを併用して、両者の統計値を算出してもよい。
【0039】
次に、支援サーバ20の制御部21は、最大振れ前かどうかについての判定処理を実行する(ステップS107)。具体的には、制御部21の揺動制御部213は、揚重情報記憶部22に記録された予定ルート情報221に基づいて搬送方向(旋回方向又は起伏方向)を特定する。そして、揺動制御部213は、搬送方向と一致するとともに、撮影画像からフックC14を観察し、振れ方向が変わる時点を最大振れ幅になるタイミングとして特定する。そして、揺動制御部213は、直前タイミングが到来したかどうかを確認する。なお、フックC14が楕円軌道で揺動している場合には、旋回方向の直前タイミングと、径方向の直前タイミングとを個別に判定する。
【0040】
最大振れ前でないと判定した場合(ステップS107において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、待機処理を実行する(ステップS108)。具体的には、制御部21の揺動制御部213は、直前タイミングまで待機する。この場合、現在の搬送速度を維持しながら待機する。そして、支援サーバ20の制御部21は、最大振れ前かどうかについての判定処理(ステップS107)以降を繰り返す。
【0041】
一方、直前タイミングが到来し、最大振れ前と判定した場合(ステップS107において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、振れ位置まで加速移動処理を実行する(ステップS109)。具体的には、制御部21の揺動制御部213は、ジブC13の先端が、最大振れ位置の上方になるように、旋回フレームC11の旋回操作やジブC13の起伏操作の調整量を算出する。そして、揺動制御部213は、搬送管理部214に対して、この調整量で、速やかでスムーズな旋回フレームC11の旋回操作やジブC13の起伏操作を指示する。この場合、吊り荷C15が最大振れの位置になるタイミングで、ジブC13の先端が上方に位置するように操作を指示する。なお、この操作は、搬送方向と一致させる場合に限定されるものではなく、運動エネルギが「0」になる最大振れ位置まで、ジブC13の先端を移動させる操作を行なえば、少なくとも揺動を抑制することができる。また、旋回方向の直前タイミングと径方向の直前タイミングとが異なる場合には、旋回操作や起伏操作を個別に行なう。
【0042】
図8(a)に示すように、搬送方向D0において、吊り荷に揺動がない場合には、ジブC13においてワイヤを支持する揚重部C130の直下方向D1に、揚重物CL1(フックC14、吊り荷C15)が存在する。
図8(b)に示すように、揺動が生じた場合、直下方向D1からずれることになる。この場合、揚重物CL1(フックC14、吊り荷C15)は、直下方向D1を中心として振動する。
【0043】
そして、図8(c)に示すように、例えば、搬送ルートの旋回方向で最大振れ位置D2となった場合、図8(d)に示すように、揚重物CL1(フックC14、吊り荷C15)の直上に揚重部C130が配置されるように、加速してジブC13の旋回操作(加速移動操作)を行なう。この場合、ワイヤが鉛直方向になる位置で、円滑に吊り荷C15の搬送速度になるように、旋回操作の速度(加速及び減速)を調整する。これにより、最大振れ位置D2において、直下方向D1が垂直方向に一致し、フックC14、吊り荷C15の振れがなくなり、揺動を静止させることができる。なお、旋回方向だけではなく、径方向についても、同様に、ジブC13の起伏操作により、揺動を抑制する。
【0044】
振れが許容範囲内と判定した場合(ステップS104において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、振幅の特定処理(ステップS105)~振れ位置まで加速移動処理(ステップS109)をスキップする。
次に、支援サーバ20の制御部21は、旋回、起伏操作の終了かどうかについての判定処理を実行する(ステップS110)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、制御ユニット10から駆動情報を取得し、ジブC13の先端が搬送目標位置の上方に到着した場合には旋回、起伏操作の終了を判定する。
【0045】
旋回、起伏操作の終了でないと判定した場合(ステップS110において「NO」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、画像取得処理(ステップS102)以降を繰り返す。
【0046】
一方、旋回、起伏操作の終了と判定した場合(ステップS110において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、荷下ろし処理を実行する(ステップS111)。具体的には、制御部21の搬送管理部214は、搬送目標位置に吊り荷C15が着地するまで、フックC14の降下操作を行なう。そして、搬送管理部214は、旋回フレームC11の旋回操作、ジブC13の起伏操作、フックC14の上下操作に応じて、実際に揚重物CL1(フックC14、吊り荷C15)が通過したルートに関する実績ルート情報222を生成し、揚重管理データ220に関連付けて揚重情報記憶部22に記録する。更に、この実績ルート情報222には、旋回フレームC11の旋回操作、ジブC13の起伏操作、フックC14の上下操作の操作情報を含める。
【0047】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、画像取得処理(ステップS102)、揚重位置の特定処理(ステップS103)を実行する。これにより、効率的に吊り荷C15を特定することができる。
【0048】
(2)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、振れが許容範囲外かどうかについての判定処理を実行する(ステップS104)。これにより、搬送中に生じる大きな揺動を認識することができる。
【0049】
(3)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、振幅の特定処理(ステップS105)、周期の特定処理(ステップS106)を実行する。これにより、吊り荷C15の揺動状態を特定し、振幅及び周期により直近の振れ状態を予測することができる。
【0050】
(4)本実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、周期の特定処理(ステップS106)において、吊下げ長さLを用いる。これにより、周期算出式を用いて、迅速に周期を計算することができる。
【0051】
(5)本実施形態では、揚重情報記憶部22には、予定ルート情報221が記録される。これにより、最大振れ前かどうかについての判定処理(ステップS107)において、搬送方向に基づいて直前タイミングを特定することができる。
【0052】
(6)本実施形態では、直前タイミングが到来し、最大振れ前と判定した場合(ステップS107において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、振れ位置まで加速移動処理を実行する(ステップS109)。これにより、最大振れ位置におけるポテンシャルエネルギを低下させ、揺動を抑制することができる。
【0053】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・上記実施形態では、揚重装置としてタワークレーンを想定したが、揚重において荷振れが生じる揚重装置であれば、タワークレーンに限定されるものではない。
・上記実施形態では、駆動制御部12は、旋回フレームC11の旋回操作、ジブC13の起伏操作、フックC14の上下操作に応じた駆動制御を行なう。人手による楊重作業においても、支援サーバ20の制御部21が、ステップS102~S109の揺動抑制処理を行なうようにしてもよい。
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、搬送ルートの設定処理を実行する(ステップS101)。搬送ルートの設定は、支援サーバ20が行なう場合に限定されるものではなく、手動で行なうようにしてもよい。この場合には、管理端末30において設定された搬送ルートを、揚重情報記憶部22に記録する。
【0055】
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、揚重位置の特定処理を実行する(ステップS103)。吊り荷位置の特定は、フックC14の画像認識を用いる場合に限定されるものではない。例えば、フックC14に加速度センサを付加し、支援サーバ20の制御部21が、この加速度センサから揺動情報を取得するようにしてもよい。また、フックC14に、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)の位置情報取得装置を付加してもよい。また、フックC14ではなく、吊り荷C15の位置を特定するようにしてもよい。
【0056】
・上記実施形態では支援サーバ20の制御部21は、振幅の特定処理を実行する(ステップS105)。振幅の特定には、所定期間の撮影画像を用いる。振幅の特定方法は、これに限定されるものではない。例えば、所定位置(直下位置)における加速度を計測し、この加速度に基づいて、振幅を算出するようにしてもよい。この場合には、加速度に応じた運動エネルギに対応したポテンシャルエネルギの最大振れ幅(振幅)を算出する。
【0057】
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、周期の特定処理を実行する(ステップS106)。周期の特定には、吊下げ長さ、撮影画像における振れの方向の観察を用いるが、これらに限定されるものではない。
・上記実施形態では、撮像装置11を、タワークレーンC1のジブC13の先端に設けた。揚重物CL1の振れを観察できる場所であれば、ジブC13の先端に限定されるものではない。
【0058】
・上記実施形態では、直前タイミングが到来し、最大振れ前と判定した場合(ステップS107において「YES」の場合)、支援サーバ20の制御部21は、振れ位置まで加速移動処理を実行する(ステップS109)。ここでは、揺動抑制処理は、搬送中に継続的に行なう。揺動抑制処理の実行期間は、これに限定されるものではなく、荷下ろしの所定期間前のみに実行してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、支援サーバ20の制御部21は、振れが許容範囲外かどうかについての判定処理を実行する(ステップS104)。ここでは、ジブC13の先端の下方で、直下位置から基準距離内に存在する場合には、許容範囲内と判定する。この基準距離を状況に応じて変更してもよい。例えば、ルート設定時に用いたルートの各位置における評価値により、基準距離を変更してもよい。この場合には、評価値が高い場合に、基準距離を短くしておく。また、搬送目標位置に近い場合には、基準距離を短くしておく。これにより、障害物に近い場所や、搬送目標位置に近い場所において、揺動抑制を促進することができる。
【0060】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(a)前記制御部が、前記情報取得部において、前記揚重部から吊り下げた揚重物の撮影画像を取得し、前記撮影画像の画像認識により、前記揚重物の位置を特定することを特徴とする請求項1に記載の揚重支援システム。
【0061】
(b)前記制御部が、前記揚重装置の揚重部から前記揚重物を吊り下げたワイヤの長さ情報を取得し、前記長さ情報に基づいて周期を算出することを特徴とする請求項1又は(a)に記載の揚重支援システム。
【0062】
(c)前記揚重装置は、前記揚重部を第1軸方向と第2軸方向で揚重物を搬送し、前記制御部が、検知した揺動を前記第1軸方向及び前記第2軸方向に分解し、前記第1軸方向及び前記第2軸方向で操作を行なうことを特徴とする(b)に記載の揚重支援システム。
【0063】
(d)前記第1軸方向の操作を前記揚重部の旋回操作で制御し、前記第2軸方向の操作を前記揚重部の起伏操作で制御することを特徴とする請求項1、(a)~(c)の何れか一項に記載の揚重支援システム。
【符号の説明】
【0064】
A1…搬送可能領域、C1…タワークレーン、C10…マスト、C11…旋回フレーム、C12…運転席、C13…ジブ、C130…揚重部、C14…フック、C15…吊り荷、CL1…揚重物、10…制御ユニット、11…撮像装置、12…駆動制御部、20…支援サーバ、21…制御部、211…情報取得部、212…認識部、213…揺動制御部、214…搬送管理部、22…揚重情報記憶部、30…管理端末。
図1
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図8