(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 13/02 20060101AFI20240717BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20240717BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20240717BHJP
B65H 29/58 20060101ALI20240717BHJP
B65H 3/06 20060101ALI20240717BHJP
B65H 15/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B41J13/02
B41J11/42
B65H5/06 F
B65H5/06 J
B65H29/58 B
B65H3/06 330B
B65H15/00 E
(21)【出願番号】P 2020095923
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2019203776
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 恵亮
(72)【発明者】
【氏名】金丸 真二
(72)【発明者】
【氏名】山田 克己
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063035(JP,A)
【文献】特開2019-064748(JP,A)
【文献】特開2018-203425(JP,A)
【文献】特開2018-193200(JP,A)
【文献】特開2017-136703(JP,A)
【文献】特開2007-084224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0217221(US,A1)
【文献】特開2020-001886(JP,A)
【文献】特開2018-019332(JP,A)
【文献】特開2001-097577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-13/32
B65H 1/00- 3/68
B65H 5/06
B65H 29/58
B65H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録を行う記録ヘッドと、
装置後方に設けられ、引き出し可能に設けられた給紙トレイにセットされた媒体を送り
出す給送ローラーと、
前記給送ローラーと対向する位置に位置する媒体を分離する分離ローラーと、
前記給送ローラーにより送り出された前記媒体を前記記録ヘッドと対向する対向位置に
向けて搬送する搬送ローラーと、
前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの間に設けられ、
前記給送ローラーから搬送さ
れた前記媒体の搬送を補助する補助ローラーと、
前記補助ローラーと対向する位置に位置する従動ローラーを有し、
前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記対向位置における前記媒体と前記
記録ヘッドとの対向方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする記録装
置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記媒体の排出方向において側面視オ
ーバーラップしていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の記録装置において、
前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記搬送ローラーの回転軸の軸方向に
おいて側面視オーバーラップしていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
記録を行う記録ヘッドと、
装置後方に設けられ、引き出し可能に設けられた給紙トレイにセットされた媒体を送り
出す給送ローラーと、
前記給送ローラーにより送り出された前記媒体を前記記録ヘッドと対向する対向位置に
向けて搬送する搬送ローラーと、
前記搬送ローラーに対して前記記録ヘッドとは反対側に設けられ、前記媒体
の表裏を反
転ローラーにより反転させる反転経路と、
前記反転経路と前記搬送ローラーとの間に設けられ、
前記給送ローラーから搬送された
前記媒体の搬送を補助する補助ローラーと、を有し、
前記補助ローラーが前記対向位置における前記媒体と前記記録ヘッドとの対向方向にお
ける前記反転ローラーの中心位置に対して、前記対向方向において側面視オーバーラップ
していることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1に記載の記録装置において、
前記搬送ローラーに対して前記記録ヘッドとは反対側に設けられ、前記媒体の表裏を反
転ローラーにより反転させる反転経路と、
前記反転経路と前記搬送ローラーとの間に設けられ、前記給送ローラーから搬送された
前記媒体の搬送を補助する補助ローラーと、を有し、
前記補助ローラーが前記対向位置における前記媒体と前記記録ヘッドとの対向方向にお
ける前記反転ローラーの中心位置に対して、前記対向方向において側面視オーバーラップ
していることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項
4に記載の記録装置において、
前記補助ローラーは、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの間に設けられ、
前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記対向方向において側面視オーバー
ラップしていることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項6に記載の記録装置において、
前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記媒体の排出方向において側面視オ
ーバーラップしていることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の記録装置において、
前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記搬送ローラーの回転軸の軸方向に
おいて側面視オーバーラップしていることを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セットされた媒体を、記録ヘッドと対向する対向位置に向けて搬送し、記録ヘッドにより記録を行う記録装置が使用されている。例えば、特許文献1には、給紙トレイにセットされたシートをプリンタ部に向けて搬送する画像読取装置が開示されている。このような記録装置のうち、セットされた媒体を、記録ヘッドと対向する対向位置に向けて搬送する搬送ローラーに送り出し、該搬送ローラーで媒体を搬送させ、記録ヘッドにより記録を行う記録装置がある。
特許文献2には、給紙ローラーにより用紙を搬送ローラーに突き当ててスキュー取りした後に、搬送ローラーにより用紙を給紙位置に送る記録装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-19332号公報
【文献】特開2001-097577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セットされた媒体を、記録ヘッドと対向する対向位置に向けて搬送する搬送ローラーに送り出し、該搬送ローラーで媒体を搬送させ、記録ヘッドにより記録を行う記録装置においては、例えば、セットされた媒体の送り出し時などにおいて、媒体の搬送不良が生じる場合があった。例えば補助ローラーなどを追加して設けることで媒体を搬送するローラーの数を増やすことで媒体の搬送不良は減らすことが可能であるが装置が大型化してしまう。例えば、特許文献1の画像読取装置は、具体的な記載は無いものの、図面などから、給紙トレイからプリンタ部までのシートの搬送経路に複数のローラーを備えているように見えるが、このようなローラーの配置では装置が大型化してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の記録装置は、記録を行う記録ヘッドと、セットされた媒体を送り出す給送ローラーと、前記給送ローラーにより送り出された前記媒体を前記記録ヘッドと対向する対向位置に向けて搬送する搬送ローラーと、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの間に設けられ、前記媒体の搬送を補助する補助ローラーと、を有し、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記対向位置における前記媒体と前記記録ヘッドとの対向方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする。
また本発明の記録装置は、記録を行う記録ヘッドと、媒体を前記記録ヘッドと対向する対向位置に向けて搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラーに対して前記記録ヘッドとは反対側に設けられ、前記媒体を反転させる反転経路と、前記反転経路と前記搬送ローラーとの間に設けられ、前記媒体の搬送を補助する補助ローラーと、を有し、前記補助ローラーが前記対向位置における前記媒体と前記記録ヘッドとの対向方向における前記反転経路の中心位置に対して、前記対向方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする。
また本発明の記録装置は、媒体に記録を行う記録ヘッドと、セットされた媒体を送り出す給送ローラーと、前記給送ローラーとの間で媒体をニップするニップ部と、前記給送ローラーにより送り出された媒体を前記記録ヘッドと対向する対向位置に向けて搬送する搬送ローラー対と、を備え、前記給送ローラーによる媒体の送り長さの最大値Lmaxは、前記給送ローラーと前記ニップ部とによる媒体のニップ位置から前記搬送ローラー対による媒体のニップ位置までの経路長L1と、前記搬送ローラー対による媒体のニップ位置から前記記録ヘッドによる記録可能範囲のうち最も上流の位置までの経路長L2とを加算した経路長L3未満であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】本発明の実施例1に係る記録装置の斜視図であって、リア側のオートシートフィーダーを使用する際の状態を表す図。
【
図3】本発明の実施例1に係る記録装置の斜視図であって、フロント側にカセットを引き出した状態を表す図。
【
図4】本発明の実施例1に係る記録装置の斜視図であって、反転ユニットをリア側に引き出した状態を表す図。
【
図5】本発明の実施例1に係る記録装置の側面断面図。
【
図6】本発明の実施例1に係る記録装置の補助ローラー周辺の側面断面図。
【
図7】本発明の実施例1に係る記録装置における補助ローラーとピックユニット回動軸との位置関係を表す側面断面図。
【
図8】本発明の実施例1に係る記録装置のモーター及び駆動輪列などの内部構成を表す斜視図。
【
図9】本発明の実施例1に係る記録装置の補助ローラーの正面断面図。
【
図10】本発明の実施例2に係る記録装置の内部構成を表す斜視図。
【
図11】
図10の記録装置のA-A断面図であって、給送ローラー及び補助ローラーが媒体を挟持していない状態を表す図。
【
図12】
図10の記録装置のA-A断面図であって、給送ローラー及び補助ローラーが媒体を挟持している状態を表す図。
【
図13】
図10の記録装置の給送ローラー及び補助ローラー周辺のB-B断面図であって、給送ローラー及び補助ローラーが媒体を挟持していない状態を表す図。
【
図14】
図10の記録装置の給送ローラー及び補助ローラー周辺のB-B断面図であって、給送ローラー及び補助ローラーが媒体を挟持している状態を表す図。
【
図15】本発明の実施例3に係る記録装置の内部構成を表す斜視図。
【
図16】
図15の記録装置の補助ローラーのC-C断面図であって、補助ローラーが水平状態で媒体を挟持している位置にある状態を表す図。
【
図17】
図15の記録装置の補助ローラーのC-C断面図であって、補助ローラーが水平状態に対して傾いた状態で媒体を挟持している位置にある状態を表す図。
【
図19】記録装置における媒体の搬送経路を模式的に示す図。
【
図20】搬送モーターと各ローラーとの間の動力伝達経路の構成を機能的に示したブロック図。
【
図21】媒体給送時の搬送モーターの制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
第1の態様の記録装置は、記録を行う記録ヘッドと、セットされた媒体を送り出す給送ローラーと、前記給送ローラーにより送り出された前記媒体を前記記録ヘッドと対向する対向位置に向けて搬送する搬送ローラーと、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの間に設けられ、前記媒体の搬送を補助する補助ローラーと、を有し、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記対向位置における前記媒体と前記記録ヘッドとの対向方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの間に媒体の搬送を補助する前記補助ローラーを有することで媒体の搬送不良を抑制でき、該補助ローラーを前記給送ローラーに対して前記対向方向において側面視オーバーラップして配置させることで装置の大型化を抑制できる。
【0009】
第2の態様の記録装置は、第1の態様において、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記媒体の排出方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して前記対向方向だけでなく前記排出方向においても側面視オーバーラップしているので、特に効果的に装置の大型化を抑制できる。
【0011】
第3の態様の記録装置は、第1または第2の態様において、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記搬送ローラーの回転軸の軸方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して前記対向方向だけでなく前記搬送ローラーの回転軸の軸方向においても側面視オーバーラップしているので、特に効果的に装置の大型化を抑制できる。
【0013】
第4の態様の記録装置は、記録を行う記録ヘッドと、媒体を前記記録ヘッドと対向する対向位置に向けて搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラーに対して前記記録ヘッドとは反対側に設けられ、前記媒体を反転させる反転経路と、前記反転経路と前記搬送ローラーとの間に設けられ、前記媒体の搬送を補助する補助ローラーと、を有し、前記補助ローラーが前記対向位置における前記媒体と前記記録ヘッドとの対向方向における前記反転経路の中心位置に対して、前記対向方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記反転経路と前記搬送ローラーとの間に媒体の搬送を補助する前記補助ローラーを有することで媒体の搬送不良を抑制でき、該補助ローラーを対向方向における前記反転経路の中心位置に対して前記対向方向において側面視オーバーラップして配置させることで装置の大型化を抑制できる。
【0015】
第5の態様の記録装置は、第4の態様において、前記反転経路の内側に設けられ、前記反転経路における前記媒体を、前記対向方向における一方側の端部位置から他方側の端部位置まで、回転することで移動させる反転ローラーを有し、前記反転ローラーの回転軸が前記反転経路の中心位置となっていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記回転軸が前記反転経路の中心位置に配置される前記反転ローラーを用いて前記反転経路を簡単に形成できる。
【0017】
第6の態様の記録装置は、第4または第5の態様において、セットされた媒体を送り出す給送ローラーを有し、前記搬送ローラーは、前記給送ローラーにより送り出された前記媒体を前記対向位置に向けて搬送し、前記補助ローラーは、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの間に設けられ、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記対向方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記補助ローラーを前記給送ローラーに対して前記対向方向において側面視オーバーラップして配置させるとともに前記対向方向における前記反転経路の中心位置に対して前記対向方向において側面視オーバーラップして配置させることで装置の大型化を効果的に抑制できる。
【0019】
第7の態様の記録装置は、第6の態様において、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記媒体の排出方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して前記対向方向だけでなく前記排出方向においても側面視オーバーラップしているので、特に効果的に装置の大型化を抑制できる。
【0021】
第8の態様の記録装置は、第6または第7の態様において、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、前記搬送ローラーの回転軸の軸方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して前記対向方向だけでなく前記搬送ローラーの回転軸の軸方向においても側面視オーバーラップしているので、特に効果的に装置の大型化を抑制できる。
【0023】
第9の態様の記録装置は、媒体に記録を行う記録ヘッドと、セットされた媒体を送り出す給送ローラーと、前記給送ローラーとの間で媒体をニップするニップ部と、前記給送ローラーにより送り出された媒体を前記記録ヘッドと対向する対向位置に向けて搬送する搬送ローラー対と、を備え、前記給送ローラーによる媒体の送り長さの最大値Lmaxは、前記給送ローラーと前記ニップ部とによる媒体のニップ位置から前記搬送ローラー対による媒体のニップ位置までの経路長L1と、前記搬送ローラー対による媒体のニップ位置から前記記録ヘッドによる記録可能範囲のうち最も上流の位置までの経路長L2とを加算した経路長L3未満であることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記給送ローラーによる媒体の送り長さの最大値Lmaxは、前記給送ローラーと前記ニップ部とによる媒体のニップ位置から前記搬送ローラー対による媒体のニップ位置までの経路長L1と、前記搬送ローラー対による媒体のニップ位置から前記記録ヘッドによる記録可能範囲のうち最も上流の位置までの経路長L2とを加算した経路長L3未満であるので、媒体を給送する際の、前記記録ヘッドと対向する対向位置での媒体の詰まりを抑制できる。加えて、前記給送ローラーの小型化により、装置全体の小型化を図ることができる。
【0025】
第10の態様は、第9の態様において、前記給送ローラーと前記搬送ローラー対との間に、媒体の搬送を補助する補助ローラーを備え、前記補助ローラーが前記給送ローラーに対して、媒体の排出方向において側面視オーバーラップしていることを特徴とする。
本態様によれば、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの間に媒体の搬送を補助する前記補助ローラーを有することで媒体の搬送不良を抑制でき、該補助ローラーを前記給送ローラーに対して前記対向方向において側面視オーバーラップして配置させることで装置の大型化を抑制できる。
【0026】
第11の態様は、第10の態様において、前記給送ローラーによる媒体の送り経路において前記補助ローラーと前記搬送ローラー対との間に、媒体の通過を検出する媒体検出手段を備え、前記最大値Lmaxは、前記給送ローラーと前記ニップ部とによる媒体のニップ位置から前記媒体検出手段が媒体を検出する位置までの経路長L4未満であることを特徴とする。
【0027】
媒体先端が前記媒体検出手段を通過した後に、何らかの制御の為に前記給送ローラーの動力源の回転方向の切り換えを行うと、歯車の噛み合いのバックラッシ等に起因して、装置の制御手段が把握する媒体先端の位置と、実際の媒体先端の位置とに誤差が生じる場合がある。この様な誤差は本来、媒体の先端を前記媒体検出手段で検出することで修正可能であるが、前記給送ローラーによる媒体の給送動作を終えた後に媒体先端が前記媒体検出手段を通過してしまっていると、修正することができない。この場合、正確な媒体先端位置を把握する為には媒体をバックフィードして媒体先端を前記媒体検出手段の上流まで戻す必要があり、これが原因で媒体に傷や皺を生じさせたり、ジャムを招いたりする虞がある。
しかしながら本態様によれば、前記最大値Lmaxは、前記給送ローラーと前記ニップ部とによる媒体のニップ位置から前記媒体検出手段が媒体を検出する位置までの経路長L4未満であるので、上述の問題を回避することができる。
【0028】
第12の態様は、第11の態様において、前記給送ローラー、前記搬送ローラー対を構成するローラーのうち駆動される搬送駆動ローラー、及び前記補助ローラーの共通の動力源である搬送モーターを備え、前記搬送駆動ローラーは、前記搬送モーターの正転により媒体を下流へ送る回転方向である正転方向に回転し、前記搬送モーターの逆転により媒体を上流へ送る回転方向である逆転方向に回転し、前記搬送モーターから前記給送ローラーへの駆動力の伝達経路に、逆転している前記搬送モーターの駆動力を前記給送ローラーへ伝達し、正転している前記搬送モーターの駆動力を前記給送ローラーへ伝達しない遊星歯車機構が設けられ、前記給送ローラーは、前記搬送モーターの逆転によって媒体を下流へ送る回転方向である正転方向に回転し、前記搬送モーターから前記補助ローラーへの駆動力の伝達経路に、前記搬送モーターの回転方向に拘わらず前記補助ローラーが媒体を下流へ送る回転方向である正転方向に回転させる回転規制手段が設けられていることを特徴とする。
本態様の構成によれば、上述した第11の態様の作用効果を得ることができる。
【0029】
第13の態様は、第12の態様において、前記搬送モーターを制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記搬送モーターを逆転させてセットされた媒体を前記給送ローラーによって給送するステップと、前記搬送モーターを正転させて媒体の先端を前記搬送ローラー対でニップするステップと、前記搬送モーターを逆転させて媒体の先端を前記搬送ローラー対の上流に吐き出すステップと、を含む給送モードを実行可能であることを特徴とする。
本態様によれば、上述した第11の態様の作用効果を得ることができる。
【0030】
第14の態様は、第10から第13の態様のいずれかにおいて、前記補助ローラーとの間で媒体をニップする従動ローラーと、前記ニップ部を前記給送ローラーに向けて押圧する第1押圧部材と、前記従動ローラーを前記補助ローラーに向けて押圧する、前記第1押圧部材とは別部材である第2押圧部材と、を備えることを特徴とする。
【0031】
本態様によれば、前記ニップ部を前記給送ローラーに向けて押圧する第1押圧部材と、前記従動ローラーを前記補助ローラーに向けて押圧する、前記第1押圧部材とは別部材である第2押圧部材と、を備えるので、前記第2押圧部材の押圧力を強くして搬送力を高めても、前記給送ローラーと前記ニップ部との間の媒体のニップ力が高くならず、重送を抑制することができる。即ち、重送の抑制と、媒体の確実な搬送との両立を図ることができる。
【0032】
[実施例1]
以下に、一実施例に係る記録装置について図面を参照して説明する。
図1から
図9で表される実施例1の記録装置1Aは、記録ヘッド2からインクを媒体に吐出して記録するインクジェットプリンターである。媒体の一例としては、記録用紙等のシート材が挙げられる。各図において示すX-Y-Z座標系はY軸方向が装置奥行き方向を示し、X軸方向が装置幅方向を示し、Z軸方向が装置高さ方向を示している。ここで、
図5で表されるように、X軸方向は搬送駆動ローラー3aなどの各種ローラーの回転軸の軸方向に対応し、Y軸方向は媒体の排出方向に対応し、Z軸方向は媒体と記録ヘッド2とが対向する対向位置P1における対向方向に対応する。
【0033】
(記録装置の概略構成)
最初に、記録装置1Aの概略構成について
図1から
図5を参照して説明する。
図5で表されるように、記録装置1Aは、媒体に記録を行う記録ユニット5に加えて、原稿の画像を読み取ることが可能な読取ユニット6を備えている。ただし、本発明は、読取ユニット6を備える構成に限定されない。
【0034】
記録装置1Aは、
図1で表される状態からリアカバー7及びフロントカバー8を開いて給送トレイ9及び排出トレイ10を引き出して
図2で表される状態にすることで、給送トレイ9にセットした媒体に対して記録を行うことが可能な構成になっている。また、
図3で表されるように、フロントカバー8は媒体を載置するカセット11と繋がっており、フロントカバー8ごとカセット11を引き出すことで、カセット11に媒体をセットすることが可能な構成になっている。すなわち、記録装置1Aは、給送トレイ9にセットした媒体に対して記録を行うことが可能な構成になっているとともに、カセット11にセットした媒体に対して記録を行うことが可能な構成になっている。
【0035】
図5において記録装置1Aは、給送トレイ9にセットした媒体に対して記録を行う際、給送ローラー12を回転方向C1に一回転させて媒体を搬送ローラー対3(
図19参照)に送り出す。そして搬送ローラー対3を構成する搬送駆動ローラー3aを回転方向C2に回転させることで媒体を記録ヘッド2と対向する対向位置P1に搬送する。そして搬送駆動ローラー3a及び排出ローラー対15(
図19参照)を構成する排出駆動ローラー15aを回転方向C2に回転させて記録後の媒体を排出トレイ10に排出する。尚、
図19において符号3bは、搬送ローラー対3を構成する搬送従動ローラーであり、媒体は搬送駆動ローラー3aと搬送従動ローラー3bとでニップされる。搬送駆動ローラー3aは、搬送ローラーの一例である。また、符号15bは、排出ローラー対15を構成する排出従動ローラーであり、媒体は搬送駆動ローラー3aと搬送従動ローラー3bとでニップされる。また、符号14で示すローラーは、媒体の浮きを規制するローラーである。
【0036】
図5に戻り、給送ローラー12による媒体の給送経路としての搬送経路は搬送経路R1を構成し、搬送ローラー対3による媒体の搬送経路は搬送経路R4を構成する。以下では、搬送経路R1は給送ローラー12から搬送ローラー対3までの経路とし、搬送経路R4は搬送ローラー対3から下流つまり+Y方向の経路とする。
なお、搬送経路R1における給送ローラー12と対向する位置には分離ローラー13が設けられている。分離ローラー13には、不図示のトルクリミッタにより回転抵抗が付与されており、給送トレイ9に複数の媒体がセットされた場合に給送ローラー12との間で媒体をニップすることで媒体が重送されることを抑制している。分離ローラー13は、給送ローラー12との間で媒体をニップするニップ部の一例である。
【0037】
本実施例の給送ローラー12は、
図5で表されるようにX軸方向から見てD型の形状、別の表現をすると、円柱の円弧面の一部を平面状にした形状をしているが、このような構成に限定されない。例えば、X軸方向から見てO型の形状、別の表現をすると、円柱形状をしていてもよい。D型の形状の給送ローラー12は、一部を平面状にした部分を有するので簡単な構造で離間できるというメリットがあり、O型の形状の給送ローラー12は、小型化が可能になるというメリットがある。
【0038】
給送ローラー12と対向する位置には、支持部材46が設けられている。支持部材46は、展開状態にある給送トレイ9の下部に位置し、給送トレイ9とともにセットされた媒体を支持する。即ち、セットされた媒体の下部が支持部材46に支持され、セットされた媒体の上部が給送トレイ9に支持される。
支持部材46は、上部に位置する揺動軸46a(
図19参照)を中心に揺動可能に設けられ、揺動することにより、支持した媒体を給送ローラー12に接する状態と、支持した媒体を給送ローラー12から離間させる状態とを切り換える。この支持部材46の揺動動作は、不図示の揺動機構によって実現される。
【0039】
給送待機状態では、給送ローラー12は
図5に示す様に外周の平坦部分が支持部材46と対向する状態にあり、また、支持部材46は給送ローラー12から最も離間した状態にある。この状態から給送動作が開始されると、給送ローラー12が回転方向C1に回転を開始し、外周の円弧領域が支持部材46と対向する。またその対向するタイミングに同期する様に支持部材46が揺動し、支持した媒体を給送ローラー12に押圧する。これにより、セットされた媒体のうち最上位のものが給送ローラー12によって下流へと送り出される。
給送ローラー12の回転量は、不図示の回転検出手段により検出可能であり、媒体を給送する際、給送ローラー12は360°回転して停止し、
図5の状態に戻る。また、支持部材46も
図15に示す状態、即ち給送ローラー12から最も離間した状態に戻る。
【0040】
ここで、搬送経路R1における給送ローラー12と搬送ローラー対3との間には、回転方向C1に回転可能な補助ローラー16と、該補助ローラー16に対して対向する位置に設けられた従動ローラー17と、からなるローラー対18が設けられている。記録装置1Aは、搬送経路R1において媒体を搬送させる際、別の表現をすると、ローラー対18の挟持位置に媒体がある際、補助ローラー16を回転方向C1に回転させることで媒体の搬送を補助する。このため、記録装置1Aは、搬送経路R1における媒体の搬送不良を抑制できる。
ここで、「媒体の搬送を補助する」とは、搬送ローラー対3によって対向位置P1に向けて媒体を搬送する際の搬送を補助することに限定されず、例えば、給送ローラー12による媒体の送り出しを補助することなど、搬送ローラー対3以外による媒体の搬送を補助することも含む意味である。すなわち、本明細書での「搬送」とは給送ローラー12による送り出しや搬送ローラー対3による搬送、排出ローラー対15などによる排出など媒体を移動させる動作のすべてを含む意味である。また、搬送経路R1と搬送経路R3の合流点J1と給送ローラー12の間にローラー対18が設けられている。この位置にローラー対18が設けられていることで搬送方向に短い媒体を搬送可能となっている。
【0041】
記録装置1Aは、カセット11にセットした媒体に対して記録を行う際、ピックユニット回動軸20を回動させてピックユニット19のピックアップローラー21を回転方向C2に回転させて、媒体を給送経路としての搬送経路R2を搬送させることで、搬送ローラー対3に送り出す。そして、その後、搬送ローラー対3を構成する搬送駆動ローラー3aを回転方向C2に回転させることで媒体を記録ヘッド2と対向する対向位置P1に搬送する。そして搬送駆動ローラー3a及び排出ローラー対15を構成する排出駆動ローラー15aを回転方向C2に回転させて記録後の媒体を排出トレイ10に排出する。
【0042】
記録装置1Aは、媒体の一方側の面に記録した後、媒体を排出トレイ10に排出する前に該媒体を反転経路としての搬送経路R3を搬送させることで反転させ、該媒体の他方側の面に記録することが可能である。なお、
図5で表されるように、搬送経路R3は搬送経路R2と一部搬送経路が重複しており、この重複した搬送経路には反転ローラー22と、該反転ローラー22と対向する位置に複数の従動ローラー23、24、25及び26が設けられている。そして、Z軸方向における反転ローラー22の回転軸の位置がZ軸方向を基準とする搬送経路R3の中心線L1と重なる。
【0043】
なお、
図4で表されるように、反転ローラー22などを有し搬送経路R3を構成する反転ユニット28は、記録装置1Aから取り外し可能となっている。記録装置1Aは、反転ユニット28の代わりに、反転ユニット28とは別の搬送経路を備えたユニットなどを取り付けることが可能である。
【0044】
本実施例の記録ヘッド2は、X軸方向に沿って移動可能なキャリッジ27に設けられている。記録装置1Aは、X軸方向に沿ってキャリッジ27を往復移動させながら、搬送される媒体に記録ヘッド2からインクを吐出して画像を形成することが可能である。このような構成のキャリッジ27を備えていることにより、記録装置1Aは、所定の搬送量で媒体を搬送させることと、媒体を停止した状態でキャリッジ27をX軸方向に沿って移動させながらインクを吐出させることと、を繰り返し、媒体に所望の画像を形成する。
【0045】
なお、記録装置1Aは、媒体の所定量の搬送とキャリッジ27の往復移動とを交互に繰り返して記録を行う所謂シリアルプリンターである。ただし、X軸方向に沿ってライン状にノズルが形成されたラインヘッドを使用して、連続的に媒体を搬送しながら連続的に記録を行う所謂ラインプリンターであってもよい。
【0046】
上記のように、記録装置1Aは、記録を行う記録ヘッド2と、給送トレイ9にセットされた媒体を送り出す給送ローラー12と、給送ローラー12により送り出された媒体を記録ヘッド2と対向する対向位置P1に向けて搬送する搬送駆動ローラー3aと、媒体の搬送を補助する補助ローラー16と、を有している。また、
図5で表されるように、搬送駆動ローラー3aに対して記録ヘッド2とは反対側の-Y方向には、媒体を反転させる反転経路としての搬送経路R3が設けられている。そして、記録装置1Aの要部である補助ローラー16は、
図5で表されるように、給送ローラー12と搬送駆動ローラー3aとの間の位置であって搬送経路R3と搬送駆動ローラー3aとの間の位置に設けられている。なお、給送ローラー12単独による媒体の搬送速度、補助ローラー16単独による媒体の搬送速度、搬送駆動ローラー3a単独による媒体の搬送速度は、給送ローラー12、補助ローラー16、搬送駆動ローラー3aの順に遅くなる様に設定しても良い。この場合、記録装置1Aの内部において媒体に張力が加わらないように媒体は搬送される。
また或いは、搬送駆動ローラー3a単独による媒体の搬送速度が、補助ローラー16単独による媒体の搬送速度より高速になる様に設定することも好適である。この様に設定することで、補助ローラー16と搬送駆動ローラー3aとの間で媒体の撓みが過剰になることを抑制できる。
【0047】
(補助ローラー)
次に、記録装置1Aの要部である補助ローラー16について、その配置などを
図5並びに
図6から
図9を参照して説明する。なお、本実施例のように、給送ローラー12と搬送駆動ローラー3aとの間、或いは、反転経路である搬送経路R3と搬送駆動ローラー3aとの間に補助ローラー16を設けることで、媒体の搬送不良が生じやすい位置における媒体の搬送精度を効果的に高くすることができる。
【0048】
図6で表されるように、側面視で、補助ローラー16は、給送ローラー12に対して領域S1ぶんだけZ軸方向に側面視オーバーラップしている。別の表現をすると、補助ローラー16が給送ローラー12に対して、対向位置P1における媒体と記録ヘッド2との対向方向において側面視オーバーラップしている。上記のように、記録装置1Aは、給送ローラー12と搬送駆動ローラー3aとの間に媒体の搬送を補助する補助ローラー16を有していることで媒体の搬送不良を抑制できるが、このことに加え、補助ローラー16を給送ローラー12に対してZ軸方向に沿う対向方向において側面視オーバーラップして配置させていることで装置の大型化を抑制している。
尚、本明細書において「側面視」とは、X軸方向から、Y-Z平面での装置の構成を視ることを意味する。
【0049】
また、
図5で表されるように、搬送経路R3の中心線L1は、補助ローラー16に対してZ軸方向に側面視オーバーラップしている。別の表現をすると、補助ローラー16がZ軸方向に沿う対向方向における搬送経路R3の中心位置に対して、該対向方向において領域S3ぶん側面視オーバーラップしている。このため、記録装置1Aは、補助ローラー16を該対向方向における搬送経路R3の中心位置に対して対向方向において側面視オーバーラップして配置させることで装置の大型化を抑制している。特に本実施例の構成においては、補助ローラー16を給送ローラー12に対して対向方向において側面視オーバーラップして配置させるとともに対向方向における搬送経路R3の中心位置に対して対向方向において側面視オーバーラップして配置させることで、効果的に装置の大型化を抑制している。
【0050】
ここで、
図5及び
図6で表されるように搬送経路R3には反転ローラー22が設けられているが、
図5で表されるように反転ローラー22は搬送経路R3の内側に設けられている。そして、
図5で表されるように、反転ローラー22は、搬送経路R3における媒体を、
図5における下側に対応するZ軸方向における一方側の端部位置から
図5における上側に対応する他方側の端部位置まで、回転することで移動させる構成であり、
図5で表されるように該反転ローラー22の回転軸29が反転経路の中心位置となっている。このような構成となっていることで、記録装置1Aは、回転軸29が搬送経路R3の中心位置に配置される反転ローラー22を用いて搬送経路R3を簡単に形成している。また、このような構成となっていることで、補助ローラー16が対向方向における搬送経路R3の中心位置に対して側面視オーバーラップしているか否かの判断が容易になる。
【0051】
また、
図6で表されるように、側面視で、補助ローラー16は、給送ローラー12に対して領域S2ぶんだけY軸方向に側面視オーバーラップしている。別の表現をすると、補助ローラー16が給送ローラー12に対して、Y軸方向に沿う方向である媒体の排出方向において側面視オーバーラップしている。記録装置1Aは、補助ローラー16が給送ローラー12に対してZ軸方向だけでなくY軸方向においても側面視オーバーラップしているので、特に効果的に装置の大型化を抑制している。
【0052】
また、
図7で表されるように、側面視で、補助ローラー16の回転中心位置は、ピックユニット回動軸20の回転中心位置よりも距離L2ぶんだけY軸方向に沿う方向のうちの媒体の排出方向側に配置されている。記録装置1Aは、このような構成となっていることで、カセット11を媒体の排出方向における反対側に深く押し込めることができ、装置の大型化を抑制している。
【0053】
図8で表されるように、記録装置1Aは、駆動輪列31を介して搬送モーター30の駆動力を搬送駆動ローラー3aに伝達して搬送駆動ローラー3aを回転させ、駆動伝達機構32を介して搬送駆動ローラー3aの回転を給送ローラー12及びドライブシャフト33に伝達して給送ローラー12及びドライブシャフト33を回転させる。そして、ドライブシャフト33の回転は補助ローラー16に伝達されて補助ローラー16が回転する。なお、補助ローラー16とともにローラー対18を形成する従動ローラー17は、補助ローラー16の回転に伴い従動的に回転する。このように、記録装置1Aは、ローラー対18のうちの上側のローラーを搬送モーター30の駆動力で駆動する駆動ローラーとしている。このような構成としていることで、駆動伝達機構32など嵩張る構造体を搬送経路R3とは離れた位置に構成でき、装置の大型化を抑制している。
尚、搬送モーター30から各ローラーへの動力伝達経路については、後に更に説明する。
【0054】
また、
図8及び
図9で表されるように、記録装置1Aは、補助ローラー16が給送ローラー12に対して、X軸方向に沿う方向である搬送駆動ローラー3aの回転軸の軸方向において完全にオーバーラップしている。記録装置1Aは、補助ローラー16が給送ローラー12に対してZ軸方向だけでなくX軸方向においてもオーバーラップしているので、特に効果的に装置の大型化を抑制している。また、
図5で表されるように、記録装置1Aは、チューブ44と廃液ボックス45を備えている。そして、補助ローラー16はチューブ44と側面視、高さ方向でオーバーラップしており、また、補助ローラー16は、廃液ボックス45と高さ方向でオーバーラップしている。
【0055】
図9で表されるように、補助ローラー16はX軸方向に沿う回転軸34に通されている。そして、補助ローラー16は回転軸34に沿って壁部35から壁部36までの間を移動方向M1及び移動方向M2に移動可能な構成となっている。なお、補助ローラー16が壁部35から壁部36までの間のどの位置にあっても、補助ローラー16はドライブシャフト33と係合するよう構成されている。記録装置1Aは、媒体の斜行搬送を抑制するスキュー取りとして搬送経路R1において通常の搬送方向とは反対方向に媒体を搬送することが可能であるが、補助ローラー16がX軸方向に沿って移動可能な構成となっていることで、スキュー取りの際に補助ローラー16がX軸方向における配置を調整でき、効果的にスキュー取りを実行できる。
【0056】
[実施例2]
次に、実施例2の記録装置1Bについて、
図10から
図14を用いて説明する。なお、
図10から
図14において上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の記録装置1Bは、上記で説明した実施例1の記録装置1Aと同様の特徴を有しているとともに、下記での説明箇所以外は実施例1の記録装置1Aと同様の形状をしている。
【0057】
図10は、
図11から
図14が記録装置1Bの記録ユニット5におけるどの部分をどのような方向から見たかを表している。
図11及び
図13は、異なる角度から見た同じ状態を表しており、媒体を給送ローラー12及び分離ローラー13並びにローラー対18で挟持していない状態を表している。また、
図12及び
図14は、異なる角度から見た同じ状態を表しており、媒体を給送ローラー12及び分離ローラー13並びにローラー対18で挟持している状態を表している。なお、
図11及び
図12は、媒体と給送ローラー12及び分離ローラー13並びにローラー対18との位置関係が分かりやすいように、媒体の一例としてのカット紙Paを含む図としている。
【0058】
図13及び
図14で表されるように、給送ローラー12のローラー軸37には偏心カム38が設けられている。偏心カム38の下側には、分離ローラー13及び従動ローラー17が設けられたオートシートフィーダーフレーム40が設けられている。オートシートフィーダーフレーム40は、回動軸41を基準に回動可能である。オートシートフィーダーフレーム40には、カム受け39が形成されている。そして偏心カム38は、カム受け39と、接触するよう構成されている。すなわち、記録装置1Bにおいては、回動軸41を基準にオートシートフィーダーフレーム40を回動させることで補助ローラー16と従動ローラー17とを接触及び離間させることができる。
【0059】
記録装置1Bは、このような構成となっていることで、追加のモーターなどを必要とせずに、補助ローラー16と従動ローラー17とを接触及び離間させることができるとともに、給送ローラー12と分離ローラー13とを接触及び離間させることができる。なお、補助ローラー16が離間する事で、搬送駆動ローラー3aによる媒体搬送中の搬送負荷が低減し、記録を行っている際に与える記録への影響が小さくなる。記録装置1Bにおいては、給送トレイ9にセットされた媒体を送り出す際は、給送ローラー12及び分離ローラー13並びにローラー対18としての補助ローラー16及び従動ローラー17で媒体を挟持し、給送トレイ9にセットされた媒体を送り出すとき以外は、給送ローラー12及び分離ローラー13並びにローラー対18としての補助ローラー16及び従動ローラー17を離間する。
【0060】
また、記録装置1Bは、このような構成となっていることで、偏心カム38の形状を調整することで、給送ローラー12と分離ローラー13とによる媒体の挟持タイミングと、補助ローラー16と従動ローラー17とによる媒体の挟持タイミングをずらすことも可能である。ここで、給送ローラー12とは異なるタイミングで補助ローラー16を接触及び離間できることで、搬送補助力を必要な場合に応じて提供する事ができる。補助ローラー16は、給送ローラー12と搬送駆動ローラー3aとの間の距離よりも短い媒体を搬送する際に該媒体と接触することで、短い媒体の搬送が可能になり、長い媒体を搬送するときは離間することで、スキュー取りの際の媒体の撓み空間を広くできる。なお、本実施例においては、記録装置1Bの上側にある給送ローラー12及び補助ローラー16を搬送モーター30の駆動力で駆動する駆動ローラーとしているが、記録装置1Bの下側にある分離ローラー13及び従動ローラー17の位置に対応するローラーを搬送モーター30の駆動力で駆動する駆動ローラーとしてもよい。
【0061】
[実施例3]
次に、実施例3の記録装置1Cについて、
図15から
図18を用いて説明する。なお、
図15から
図18において上記実施例1及び実施例2と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。ここで、本実施例の記録装置1Cは、上記で説明した実施例1の記録装置1Aと同様の特徴を有しているとともに、下記での説明箇所以外は実施例1の記録装置1Aと同様の形状をしている。
【0062】
図15は、
図16から
図18が記録装置1Cの記録ユニット5におけるどの部分をどのような方向から見たかを表している。
図16及び
図17は、同じ角度から見た図であって、スキュー取りをしている際の異なる補助ローラー16の状態を表している。
図16及び
図17は、ローラー対18が媒体を挟持している位置にある状態を表しているが、媒体は省略して表されている。また、
図18は、
図15と同じ角度から見た、
図15の領域Dの拡大図である。
【0063】
図16から
図18で表されるように、記録装置1Cは、補助ローラー16として補助ローラー16A及び16Bの複数の補助ローラーを備えている。そして、補助ローラー16Aに対応する従動ローラー17A、補助ローラー16Bに対応する従動ローラー17Bと、従動ローラー17も複数備えている。ここで、補助ローラー16A及び16Bは、回転軸34を共通にしている。なお、補助ローラー16A及び16Bは、ドライブシャフト33の回転を伝達する補助伝達軸42、回転軸34に取り付けられ補助伝達軸42の回転を回転軸34に伝達する軸ギア43、を介して搬送モーター30の回転駆動力により回転する。
【0064】
ここで、
図16及び
図17を比較するとわかるように、補助ローラー16A及び16Bは、軸ギア43を基準とする回動方向に回動して姿勢を変えることができる。また、実施例1の記録装置1Aの補助ローラー16と同様、X軸方向に沿って壁部35と壁部36との間を移動可能な構成となっている。このような構成となっていることで、実施例1の記録装置1Aの補助ローラー16以上に効果的にスキュー取りを実行できる。補助ローラー16A及び16Bが軸ギア43を基準とする回動方向に回動して姿勢を変えることができる構成となっていることで、媒体が搬送経路R1において斜行した状態で弛んでも補助ローラー16A及び16Bが姿勢を変更することで無理な力をかけることなく媒体を搬送できるためである。
【0065】
なお、本実施例の補助ローラー16はX軸方向に沿ってスライド可能な構成となっているが、X軸方向に沿ってスライドしない構成にしてもよい。X軸方向に沿ってスライドしない構成とすることで、小型化が可能になるとともに、部品点数などを減らせる場合があるためである。
【0066】
[スキュー矯正について]
続いて、上記各実施例における、媒体給送時のスキュー矯正について
図19~
図21を参照して説明する。
先ず、
図19を参照して搬送経路R1における経路長について説明する。
図19において位置J1は、搬送経路R1において、給送ローラー12と分離ローラー13とで媒体をニップするニップ位置である。位置J2は、搬送経路R1において、補助ローラー16と従動ローラー17とで媒体をニップするニップ位置である。位置J3は、媒体検出センサー56が媒体を検出する位置である。尚、媒体検出センサー56は、搬送経路R1において補助ローラー16と搬送ローラー対3との間に設けられた、媒体の通過を検出する媒体検出手段である。
位置J4は、搬送ローラー対3で媒体をニップするニップ位置である。位置J5は、記録ヘッド2による記録可能範囲のうち最も上流の位置である。記録ヘッド2は、X方向及びY方向に沿って不図示のインク吐出ノズルを有しており、位置J5は、Y方向において最も-Y方向に位置するインク吐出ノズルによって記録が行われる位置である。
【0067】
ここで、給送ローラー12によって支持部材46に支持された媒体を送り出す際、給送ローラー12による媒体の送り長さの最大値Lmaxは、給送ローラー12外周の円弧領域12aの周方向長さと、支持部材46にセットされた媒体のうち最上位の媒体が給送ローラー12外周の円弧領域12aに接するタイミング、換言すれば支持部材46にセットされた媒体が給送ローラー12外周の円弧領域12aに接する位置とで規定される。送り出される媒体が、給送ローラー12外周の円弧領域12aの開始位置Sに接したとすると、最大値Lmaxは、円弧領域12aの周方向長さに等しくなる。支持部材46にセットされた媒体のうち最上位の媒体が給送ローラー12外周の円弧領域12aに接するタイミングは、支持部材46を駆動する不図示の駆動機構によって規定される。
そして支持部材46にセットされた媒体のうち最上位の媒体が給送ローラー12外周の円弧領域12aに接するタイミングは、支持部材46に最大積載高さの媒体が積載されている場合に最も早くなる。従ってこの場合の給送ローラー12による媒体の送り長さが、最大値Lmaxとなる。
【0068】
そして給送ローラー12による媒体の送り長さの最大値Lmaxは、給送ローラー12と分離ローラー13とによる媒体のニップ位置J1から搬送ローラー対3による媒体のニップ位置J4までの経路長L1と、搬送ローラー対3による媒体のニップ位置J4から記録ヘッド2による記録可能範囲のうち最も上流の位置J5までの経路長L2とを加算した経路長L3未満に設定されている。換言すれば、給送ローラー12の一回転による媒体給送動作が完了したタイミングで、媒体先端が位置J5に達しない様に構成されている。
【0069】
これにより、給送ローラー12によって媒体を給送する際の、記録ヘッド2と対向する対向位置での媒体の詰まりを抑制できる。加えて、給送ローラー12の小型化により、装置全体の小型化を図ることができる。
更に加えて、媒体を記録開始位置に位置決めする際に、媒体を-Y方向にバックフィードする必要がない。この為、媒体を-Y方向にバックフィードすることに起因して媒体に傷や皺を生じさせたりジャムを招いたりすることがない。
尚、更に本実施形態では、給送ローラー12による媒体の送り長さの最大値Lmaxは、給送ローラー12と分離ローラー13とによる媒体のニップ位置J1から媒体検出センサー56が媒体を検出する位置までの経路長L4未満に設定されているが、これについては後に更に説明する。
【0070】
尚、本実施形態では、名刺やカード等の最小サイズ媒体に対応可能とするために、ニップ位置J1からニップ位置J2までの経路長、ニップ位置J2からニップ位置J4までの経路長、更にニップ位置J4から排出ローラー対15による媒体ニップ位置までの経路長は、上記最小サイズ媒体の長手方向長さよりも短く設定されている。この様に搬送経路R1、R4によって最小サイズ媒体を搬送可能に構成することで、搬送経路R2(
図5参照)を、最小サイズ媒体を考慮して構成する必要がなくなる。
また、少なくともニップ位置J1からニップ位置J2までの経路長と、ニップ位置J2からニップ位置J4までの経路長は、上記最小サイズ媒体の短手方向長さよりも短く設定することが好適である。このことにより、ユーザーが上記最小サイズ媒体のセット方向を間違っても、媒体は搬送ローラー対3までは到達することができ、ユーザーが比較的視認し易い位置、即ち搬送ローラー対3と排出ローラー対15との間で、滞留した媒体を除去することができる。
【0071】
また、ニップ位置J1における給送ローラー12と分離ローラー13との共通接線は、ニップ位置J2における補助ローラー16と従動ローラー17との共通接線と共通であることが好ましい。このことにより、ニップ位置J1から送り出された媒体の先端が、円滑に補助ローラー16と従動ローラー17とでニップされる。
【0072】
続いて、
図20を参照して搬送モーター30から各ローラーへの動力伝達経路の構成について説明する。
搬送モーター30は、搬送駆動ローラー3a、排出駆動ローラー15a、給送ローラー12、補助ローラー16、ピックアップローラー21、のこれらの共通の駆動源である。搬送モーター30は、制御手段としての制御部50により制御される。
【0073】
搬送モーター30から搬送駆動ローラー3a及び排出駆動ローラー15aへは、動力がダイレクトに伝達され、即ち搬送モーター30が正転すると搬送駆動ローラー3a及び排出駆動ローラー15aは正転、つまり
図19の回転方向C2に回転し、搬送モーター30が逆転すると搬送駆動ローラー3a及び排出駆動ローラー15aは逆転、つまり
図19の回転方向C1に回転する。
【0074】
搬送モーター30から補助ローラー16へは、回転規制手段の一例であるワンウェイクラッチ54を介して駆動力が伝達される。ワンウェイクラッチ54により、補助ローラー16は、搬送モーター30の回転方向に拘わらず、常に正転、つまり
図19の回転方向C1に回転する。
【0075】
搬送モーター30から給送ローラー12及びピックアップローラー21へは、駆動伝達切換機構52と遊星歯車機構53とを介して駆動力が伝達される。駆動伝達切換機構52は、遊星歯車機構53へ駆動力を伝達する「駆動入」の状態と、駆動力を伝達しない「駆動切」の状態とを切り換える。そしてこの状態切り換えは、キャリッジ27によって実行される。即ち駆動伝達切換機構52はキャリッジ27の移動可能範囲において印字領域から外れた位置でキャリッジ27と係合可能に構成されている。そしてキャリッジ27が印字領域から外れて駆動伝達切換機構52と係合することで、「駆動入」と「駆動切」の状態切り換えが行われる様に構成されている。
【0076】
駆動伝達切換機構52が「駆動入」の状態にある場合、搬送モーター30の駆動力は遊星歯車機構53に伝達される。遊星歯車機構53は、搬送モーター30が正転する場合、ピックアップローラー21に駆動力を伝達し、搬送モーター30が逆転する場合、給送ローラー12に駆動力を伝達する。換言すれば遊星歯車機構53は、逆転している搬送モーター30の駆動力を給送ローラー12へ伝達し、正転している搬送モーター30の駆動力を給送ローラー12へ伝達しない遊星歯車機構であると言える。
以上の構成により、給送ローラー12によって媒体を給送する際は、搬送モーター30を逆転させることとなる。これにより給送ローラー12と補助ローラー16は、ともに正転、つまり
図19の回転方向C1に回転する。
【0077】
続いて
図21を参照して媒体給送時の搬送モーター30の制御について説明し、またその中で媒体のスキュー矯正について説明する。尚、
図21においてはフローチャートの右隣に、搬送モーター30の回転に伴う各ローラーの回転方向を付記している。
制御部50は、搬送経路R1を用いた媒体の給送を行う場合、先ず駆動伝達切換機構52を「駆動入」の状態にし(ステップS101)、次いで、搬送モーター30を逆転させる(ステップS102)。これにより、給送ローラー12と補助ローラー16は正転即ち
図19の回転方向C1に回転する。またこの際、支持部材46によってセットされた媒体が押し上げられ、給送ローラー12に接し、セットされた媒体のうち最上位の媒体が下流に送り出される。尚このとき、搬送駆動ローラー3aは逆転即ち
図19の回転方向C1に回転する。
【0078】
次いで制御部50は、給送ローラー12が一回転したら(ステップS103においてYes)、搬送モーター30を停止させる(ステップS104)。次いで駆動伝達切換機構52を「駆動切」の状態にし(ステップS105)、搬送モーター30を正転させる(ステップS106)。これにより給送ローラー12は停止した状態で、補助ローラー16は正転即ち
図19の回転方向C1に回転し、また搬送駆動ローラー3aも正転即ち
図19の回転方向C2に回転する。
【0079】
本実施形態において、ステップS106における搬送モーター30の回転開始時点、つまり給送ローラー12の一回転による媒体給送動作が終了した時点では、媒体先端は媒体検出センサー56に到達していない。
つまり給送ローラー12による媒体の送り長さの最大値Lmaxは、給送ローラー12と分離ローラー13とによる媒体のニップ位置J1から媒体検出センサー56が媒体を検出する位置までの経路長L4未満に設定されている。
【0080】
次いで、補助ローラー16による媒体搬送によって媒体検出センサー56が媒体先端を検出すると(ステップS107においてYes)、制御部50は規定ステップ数、搬送モーター30を正転させる(ステップS108)。ここでの規定ステップ数とは、媒体先端が搬送ローラー対3にニップされ、そして更に搬送ローラー対3からある程度下流へ進む為の搬送モーター30の回転量に相当する。
次いで、制御部50は搬送モーター30を規定ステップ数逆転させる(ステップS109)。これにより、媒体先端は搬送ローラー対3の上流に吐き出され、補助ローラー16と搬送ローラー対3との間で媒体に撓みが形成されるとともに、媒体先端が搬送ローラー対3のニップ位置に倣い、スキューが矯正される。
【0081】
以上の様に、制御部50は、搬送モーター30を逆転させてセットされた媒体を給送ローラー12によって給送するステップ(ステップS102)と、搬送モーター30を正転させて媒体の先端を搬送ローラー対3でニップするステップ(ステップS108)と、搬送モーター30を逆転させて媒体の先端を搬送ローラー対3の上流に吐き出すステップ(ステップS109)と、を含む給送モードを実行可能である。
【0082】
ここで、
図20を参照して説明した様に、搬送モーター30と補助ローラー16との間にはワンウェイクラッチ54が介在しており、搬送モーター30の回転方向を切り換える際には、ワンウェイクラッチ54を構成する歯車のバックラッシにより、補助ローラー16は直ちには回転を開始せず、若干のタイムラグが生じる。このタイムラグにより、ステップS109において搬送モーター30が逆転を開始した初期の段階で、補助ローラー16が停止した状態で搬送駆動ローラー3aが逆転する期間が生じる。
【0083】
ここで、上記のタイムラグは一定ではなく、歯車の噛み合い状態の違いによってその都度長さが変化し易い性質がある。そしてこのタイムラグは、ステップS106において搬送モーター30が正転を開始した初期の段階でも生じることとなる。ところが、その際に媒体の先端が媒体検出センサー56を通過して下流に進んでしまっていると、上記のタイムラグによりステップS109つまりスキュー矯正を実行する際における媒体先端の位置にもばらつきが生じる。つまり、制御部50が把握する媒体先端の位置と、実際の媒体先端の位置とに誤差が生じる。これによりスキュー矯正を実行する際の、補助ローラー16と搬送ローラー対3との間の撓み量にもばらつきが生じ、適切なスキュー矯正ができない虞がある。
【0084】
しかしながら上述の通り、ステップS106の開始時点で媒体先端は媒体検出センサー56に到達していないので、位置ばらつきを抑制した状態で媒体先端が搬送ローラー対3の下流に達することができる。その結果、ステップS109即ちスキュー矯正を行う際の、補助ローラー16と搬送ローラー対3との間での媒体の撓み量のばらつきを抑制でき、適切なスキュー矯正ができる。
加えて、媒体先端が媒体検出センサー56を通過した後に、制御部50が把握する媒体先端の位置と、実際の媒体先端の位置とに誤差が生じた場合、媒体をバックフィードし、再び媒体先端を媒体検出センサー56で検出することでも修正可能であるが、この場合、媒体のバックフィードによって媒体に傷や皺を生じさせたり、ジャムを招いたりする虞があるが、本実施形態によればそのような不具合を招く虞がない。
【0085】
尚、本実施形態では、
図19に示す様に分離ローラー13を給送ローラー12に向けて押圧する第1押圧部材47と、従動ローラー17を補助ローラー16に向けて押圧する第2押圧部材48とは別部材である。本実施形態において、第1押圧部材47及び第2押圧部材48は、圧縮コイルばねである。尚、分離ローラー13は給送ローラー12に向けて進退可能に設けられており、従動ローラー17も補助ローラー16に向けて進退可能に設けられている。
以上の構成により、第2押圧部材48の押圧力を強くして搬送力を高めても、給送ローラー12と分離ローラー13との間の媒体のニップ力が高くならず、重送を抑制することができる。即ち、分離ローラー13による重送の抑制と、補助ローラー16による媒体の確実な搬送との両立を図ることができる。
【0086】
なお、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
1…記録装置、1A…記録装置、1B…記録装置、1C…記録装置、2…記録ヘッド、
3…搬送ローラー対、3a…搬送駆動ローラー、3b…搬送従動ローラー、
5…記録ユニット、6…読取ユニット、7…リアカバー、
8…フロントカバー、9…給送トレイ、10…排出トレイ、11…カセット、
12…給送ローラー、13…分離ローラー、14…ローラー、
15…排出ローラー対、15a…排出駆動ローラー、15b…排出従動ローラー、
16…補助ローラー、16A…補助ローラー、16B…補助ローラー、
17…従動ローラー、17A…従動ローラー、17B…従動ローラー、
18…ローラー対、19…ピックユニット、20…ピックユニット回動軸、
21…ピックアップローラー、22…反転ローラー、23…従動ローラー、
24…従動ローラー、25…従動ローラー、26…従動ローラー、27…キャリッジ、
28…反転ユニット、29…回転軸、30…搬送モーター、31…駆動輪列、
32…駆動伝達機構、33…ドライブシャフト、34…回転軸、35…壁部、36…壁部、
37…ローラー軸、38…偏心カム、39…カム受け、
40…オートシートフィーダーフレーム、41…回動軸、42…補助伝達軸、
43…軸ギア、44…チューブ、45…廃液ボックス、
46…支持部材、46a…揺動軸、47…第1押圧部材、48…第2押圧部材、
50…制御部、52…駆動伝達切換機構、53…遊星歯車機構、
54…ワンウェイクラッチ、56…媒体検出センサー、
J1…合流点、L1…搬送経路R3の中心線、L2…距離、P1…対向位置、
Pa…カット紙(媒体)、R1…搬送経路(給送経路)、R2…搬送経路、
R3…搬送経路(反転経路)、R4…搬送経路、S1…領域、S2…領域、S3…領域