(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20240717BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20240717BHJP
F16H 61/32 20060101ALI20240717BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20240717BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
F16H61/32
H02P29/00
(21)【出願番号】P 2020113141
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】小塚 健太
(72)【発明者】
【氏名】神尾 茂
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/087513(WO,A1)
【文献】特開2008-039711(JP,A)
【文献】実開平01-112434(JP,U)
【文献】特開2016-023764(JP,A)
【文献】特開2017-110716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60T 1/06
F16H 61/32
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達機構(35)を介して回転体(13,14)にトルクを伝達することにより移動体(10)を走行させる電動モータ(31)と、前記動力伝達機構のロック及びロックの解除を切り替え可能なロック機構(51)と、前記ロック機構を駆動させるアクチュエータ装置(52)とを有する移動体に設けられる制御装置(90)であって、
前記電動モータを制御するモータ制御部(71,101)と、
前記移動体のシフトバイワイヤシステムを制御するシフト制御部(73,102)と、
前記動力伝達機構に付与されているトルクを検出するトルク検出部(66)と、を備え、
前記シフトバイワイヤシステムにおいて切り替え可能なシフトレンジのうち、パーキングレンジを除くシフトレンジを非パーキングレンジとするとき、
前記シフト制御部は、前記シフトバイワイヤシステムのシフトレンジが前記パーキングレンジから前記非パーキングレンジに切り替わることに基づいて、前記ロック機構による前記動力伝達機構のロックが解除されるように前記アクチュエータ装置を駆動し、
前記モータ制御部は、前記シフトバイワイヤシステムのシフトレンジが前記パーキングレンジから前記非パーキングレンジに切り替わることに基づいて、前記トルク検出部の検出トルクに応じて前記電動モータの出力を制御
し、
前記トルク検出部は、前記検出トルクに応じた前記電動モータの出力制御を実行する直前に前記動力伝達機構に付与されているトルクである補正前トルクと、前記検出トルクに応じた前記電動モータの出力制御の実行中に前記動力伝達機構に付与されているトルクである補正中トルクとを検出し、
前記モータ制御部は、前記補正前トルクと前記補正中トルクとの比較に基づいて、前記検出トルクに応じた前記電動モータの出力制御により前記電動モータから出力すべきトルク補正量を学習する
制御装置。
【請求項2】
前記トルク検出部は、前記動力伝達機構に付与されているトルクを直接検出するトルクセンサである
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記モータ制御部は、前記検出トルクが零である場合、あるいは前記検出トルクが所定値未満である場合には、前記検出トルクに応じた前記電動モータの出力制御を実行しない
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記モータ制御部は、
前記トルク補正量の学習として、
前記補正前トルクの絶対値が前記補正中トルクの絶対値よりも大きい場合には、前記トルク補正量をその絶対値が大きくなるように補正し、
前記補正前トルクの絶対値が前記補正中トルクの絶対値よりも小さい場合には、前記トルク補正量をその絶対値が小さくなるように補正する
請求項
1~3のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のシフトレンジを切り替えるためのシフトシステムの一つとして、シフトバイワイヤシステムが知られている。シフトバイワイヤシステムは、車両のシフトレンジ切替機構とシフトレバーとの機械的な連結を排除した上で、シフトレバーの操作状態をセンサにより検出するとともに、検出されたシフトレバーの操作情報に基づいてシフトレンジ切替機構をシフトアクチュエータにより駆動させることによりシフトレンジを切り替えるシステムである。
【0003】
このようなシフトバイワイヤシステムのシフトレンジ切替機構には、シフトレバーがパーキングレンジに操作された際に車輪が回転しないように車輪の動力伝達軸をロックするパーキングロック機構が搭載されている。このパーキングロック機構は、動力伝達軸と一体となって回転するパーキングギアと、シフトレンジ切替機構と一体となって変位するパーキングポールとを備えている。パーキングロック機構では、シフトレバーがPレンジに操作された際にパーキングポールがパーキングギアに噛み合うことにより動力伝達軸の回転をロックする。パーキングポールは、シフトアクチュエータから伝達される動力に基づいて変位する。
【0004】
ところで、車両が坂道で駐車した場合、重力に応じた力が車両の前後方向に作用する。この車両の前後方向に作用する力に基づいて車輪にトルクが加わるため、この車輪のトルクが動力伝達軸を介してパーキングギアに伝達されることにより、パーキングギアとパーキングポールとの噛み合い部分に大きな力が加わるおそれがある。パーキングロック機構では、シフトレバーがパーキングレンジからそれ以外のレンジに操作された場合、パーキングポールによるパーキングギアのロックを解除する必要がある。パーキングギアとパーキングポールとの噛み合い部分に大きな力が加わっている場合、それらを解除するためにシフトアクチュエータに要求されるトルクが大きくなる。これがシフトアクチュエータの大型化を招く要因となっている。
【0005】
そこで、下記の特許文献1に記載の車両では、車両が坂道で駐車していることを検知した場合、電動パーキングブレーキ装置の作動により自動的にパーキングブレーキを作動させることにより、パーキングギアとパーキングポールとの噛み合い部分に加わる力を低下させるようにしている。これにより、シフトアクチュエータに要求されるトルクが小さくなるため、シフトアクチュエータを小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の車両では、車両が坂道で停車した際に車両の停止状態を維持することが可能な制動力を電動パーキングブレーキ装置から発生する必要がある。そのため、想定される坂道の最大勾配(例えば20°の勾配)において車両の停止状態を維持させようとすると、電動パーキングブレーキ装置のアクチュエータに要求される動力が大きくなるため、そのアクチュエータの大型化やコストの増加等が避けられないものとなる。また、そもそも電動パーキングブレーキ装置が搭載されていない車両では、特許文献1に記載されるような構成を利用することが不可能である。
なお、このような課題は、車両に限らず、任意の移動体に共通する課題である。
【0008】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より簡素な構成でアクチュエータ装置に要求される動力を低減することが可能な制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する制御装置(90)は、動力伝達機構(35)を介して回転体(13,14)にトルクを伝達することにより移動体(10)を走行させる電動モータ(31)と、動力伝達機構のロック及びロックの解除を切り替え可能なロック機構(51)と、ロック機構を駆動させるアクチュエータ装置(52)とを有する移動体に設けられる制御装置である。制御装置は、電動モータを制御するモータ制御部(71,101)と、移動体のシフトバイワイヤシステムを制御するシフト制御部(73,102)と、動力伝達機構に付与されているトルクを検出するトルク検出部(66)と、を備える。シフトバイワイヤシステムにおいて切り替え可能なシフトレンジのうち、パーキングレンジを除くシフトレンジを非パーキングレンジとするとき、シフト制御部は、シフトバイワイヤシステムのシフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わることに基づいて、ロック機構による動力伝達機構のロックが解除されるようにアクチュエータ装置を駆動する。モータ制御部は、シフトバイワイヤシステムのシフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わることに基づいて、トルク検出部の検出トルクに応じて電動モータの出力を制御する。
【0010】
この構成によれば、動力伝達機構に付与されているトルクに応じたトルクが電動モータから出力される。これにより、ロック機構のロックを解除するためにアクチュエータ装置に要求される動力を小さくすることができるため、上記の特許文献1に記載されるような電動パーキングブレーキ装置が不要となる。よって、より簡素な構成でアクチュエータ装置に要求される動力を低減することが可能である。
【0011】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の制御装置によれば、より簡素な構成でアクチュエータ装置に要求される動力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態の車両の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態のロック機構の斜視構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態の車両の制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態の車両の制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、坂道に停車している車両に作用する力を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態の車両の制御装置により実行される処理の手順の一部を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態の車両の制御装置により実行される処理の手順の一部を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態の車両の制御装置により用いられる、トルクセンサにより検出されるトルクTdとトルク補正量ΔTとの関係を示すマップである。
【
図9】
図9は、実施形態の車両の制御装置により実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、動力伝達軸のトルクの推移の一例を示すタイムチャートである。
【
図11】
図11(A)~(H)は、第1実施形態の車両における車速、アクセルペダルの踏み込み量、ブレーキペダルの踏み込みの有無、ロック機構の状態、モータジェネレータの出力トルク、ブレーキ装置の制動力、トルクセンサの検出トルク、及び加速度センサの検出加速度の推移を示すタイミングチャートである。
【
図12】
図12は、他の実施形態の車両の制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、車両の制御装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
はじめに、実施形態の制御装置が搭載される車両の概略構成について説明する。
【0015】
図1に示される本実施形態の車両10は、モータジェネレータ31を動力源として走行する、いわゆる電動車両である。本実施形態では、車両10が移動体に相当する。
図1に示されるように、車両10は、ステアリング装置20と、動力システム30と、ブレーキ装置41~44と、シフトバイワイヤ(SBW:Shift By Wire)システム50とを備えている。
【0016】
ステアリング装置20では、運転者がステアリングホイール21を回転操作すると、その際にステアリングホイール21に付与される操舵トルクがステアリングシャフト22を介して転舵機構23に伝達されることにより右前輪11及び左前輪12のそれぞれの転舵角が変更されるように構成されている。ステアリング装置20はアクチュエータ装置24を備えている。アクチュエータ装置24は、ステアリングホイール21に付与される操舵トルクに応じたアシストトルクを付与することにより運転者のステアリング操作を補助する。
【0017】
動力システム30は、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)31と、インバータ装置32と、バッテリ33と、ディファレンシャルギア34とを備えている。
インバータ装置32は、バッテリ33から供給される直流電力を三相交流電力に変換するとともに、変換した三相交流電力をモータジェネレータ31に供給する。
【0018】
モータジェネレータ31は車両10の加速走行時に電動機として動作する。モータジェネレータ31は、電動機として動作する場合、インバータ装置32から供給される三相交流電力に基づいて駆動する。モータジェネレータ31の動力が動力伝達軸35、ディファレンシャルギア34、及びドライブシャフト36を介して右後輪13及び左後輪14に伝達されることにより後輪13,14にトルクが付与されて車両10が加速走行する。
【0019】
モータジェネレータ31は車両10の減速走行時に発電機として動作することが可能である。モータジェネレータ31は、発電機として動作する場合、回生動作することにより発電する。モータジェネレータ31の回生動作により後輪13,14に制動力がそれぞれ付与される。モータジェネレータ31の回生動作により発電される三相交流電力はインバータ装置32により直流電力に変換されてバッテリ33に充電される。
【0020】
このように、本実施形態の車両10では、右後輪13及び左後輪14が駆動輪として機能し、右前輪11及び左前輪12が従動輪として機能する。以下では、便宜上、右後輪13及び左後輪14をまとめて「駆動輪13,14」とも称する。
本実施形態ではモータジェネレータ31が電動モータに相当する。また、動力伝達軸35、ディファレンシャルギア34、及びドライブシャフト36が、モータジェネレータ31の出力トルクを駆動輪13,14に伝達する動力伝達機構に相当する。さらに、駆動輪13,14が回転体に相当する。
【0021】
ブレーキ装置41~44は車両10の車輪11~14にそれぞれ設けられている。ブレーキ装置41~44は、例えば車輪11~14と一体となって回転する回転体と、回転体に対向して配置されるブレーキパッドと、ブレーキパッドに油圧力を付与することにより回転体に対してブレーキパッドを接触及び離間させる油圧回路とを備えている。ブレーキ装置41~44では、油圧回路の油圧力によりブレーキパッドが回転体に接触することにより回転体に摩擦力が付与されて車輪11~14に制動力が付与される。
【0022】
SBWシステム50は、車両10のシフトレバーの操作レンジをセンサにより検出した上で、検出されたシフトレバーの位置に基づいて車両10のシフトレンジをアクチュエータ装置により電気的に切り替えるシステムである。車両10では、シフトレバーの操作レンジがパーキングレンジ、ドライブレンジ、ニュートラルレンジ、及びリバースレンジ等に選択的に切り替え可能となっている。以下では、便宜上、パーキングレンジを除く操作レンジを非パーキングレンジと称する。本実施形態のSBWシステム50は、シフトレバーの操作レンジが非パーキングレンジからパーキングレンジに切り替わったときに動力伝達軸35をロックするとともに、シフトレバーの操作レンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わったときに動力伝達軸35のロックを解除する、いわゆるパーキングロック機能を有している。SBWシステム50は、パーキングロック機能を実現するための構成として、ロック機構51と、アクチュエータ装置52とを備えている。
【0023】
図2に示されるように、ロック機構51は、ディテントプレート510と、ディテントスプリング511とを備えている。ディテントプレート510は、アクチュエータ装置52の出力軸520と一体的に回転する。ディテントスプリング511は、ディテントプレート510の外縁部に形成されている複数の凹部510a,510bのうちのいずれかに嵌まる。
【0024】
ロック機構51は、パーキングギア512と、パーキングポール513と、パーキングロッド514とを更に備えている。パーキングギア512は、
図1に示される動力伝達軸35と一体となって回転する。パーキングポール513は、パーキングギア512に対して接近及び離間することが可能である。パーキングロッド514は、ディテントプレート510に連結されている。
【0025】
ディテントスプリング511が凹部510aに嵌まる回転位置にディテントプレート510が位置している場合、パーキングポール513とパーキングギア512とが噛み合っていないため、動力伝達軸35の回転はロックされていない。以下では、便宜上、ディテントスプリング511が凹部510aに嵌まっているときのロック機構51の状態を「ロック解除状態」と称する。
【0026】
ディテントスプリング511が凹部510bに嵌まる回転位置にディテントプレート510が位置している場合、パーキングロッド514の先端部に設けられる円錐体514aがパーキングポール513の下側に押し込まれることによりパーキングポール513を押し上げる。これにより、パーキングポール513とパーキングギア512とが噛み合うことで、動力伝達軸35の回転がロックされる。以下では、便宜上、ディテントスプリング511が凹部510bに嵌まっているときのロック機構51の状態を「ロック状態」と称する。
【0027】
次に、車両10の電気的な構成について説明する。
図3に示されるように、車両10は、アクセルポジションセンサ60と、車速センサ61と、ブレーキポジションセンサ62と、シフトポジションセンサ63と、回転センサ64と、加速度センサ65と、トルクセンサ66とを備えている。また、車両10は、その各種制御を行う部分として、EV(Electric Vehicle)ECU(Electronic Control Unit)70と、MGECU71と、ブレーキECU72と、SBWECU73とを備えている。これらの要素60~66,70~73により車両10の制御装置90が構成されている。
【0028】
アクセルポジションセンサ60は、車両10のアクセルペダルの踏み込み量を検出するとともに、検出されたアクセルペダルの踏み込み量に応じた信号をEVECU70に出力する。車速センサ61は、車両10の走行速度である車速を検出するとともに、検出された車速に応じた信号をEVECU70及びインバータ装置32に出力する。ブレーキポジションセンサ62は、車両10のブレーキペダルが踏み込まれているか否かを検出するとともに、検出されたブレーキペダルの操作位置に応じた信号をブレーキECU72に出力する。シフトポジションセンサ63は、車両10のシフトレバーの操作レンジを検出するとともに、検出された操作レンジに応じた信号をSBWECU73に出力する。回転センサ64は、
図2に示されるアクチュエータ装置52の出力軸520の回転角を検出するとともに、検出された回転角に応じた信号をSBWECU73に出力する。加速度センサ65は、車両10の進行方向の加速度、換言すれば車両10の前後方向の加速度を検出するとともに、検出された車両10の加速度に応じた信号をインバータ装置32に出力する。トルクセンサ66は、
図1に示されるように動力伝達軸35に設けられており、動力伝達軸35に付与されているトルクを検出するとともに、検出されたトルクに応じた信号をインバータ装置32に出力する。
【0029】
各ECU70~73は、CPUやROM、RAM等を有するマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROMに予め記憶されているプログラムを実行することにより各種制御を実行する。各ECU70~73は、車両10に搭載されたCAN等の車載ネットワーク80を介して各種情報を授受することが可能である。
【0030】
MGECU71はインバータ装置32に設けられている。MGECU71は、インバータ装置32を駆動させてモータジェネレータ31の通電量を変化させることにより、モータジェネレータ31の出力トルクを制御する。具体的には、MGECU71には、モータジェネレータ31の出力トルクの目標値である目標トルクがEVECU70から送信される。MGECU71は、目標トルクに応じたトルクがモータジェネレータ31から出力されるようにインバータ装置32を制御する。また、MGECU71は、車両10の減速時等においては、モータジェネレータ31において回生発電が行われるようにインバータ装置32を制御する。本実施形態では、MGECU71がモータ制御部に相当する。
【0031】
ブレーキECU72は、ブレーキポジションセンサ62により検出されるブレーキペダルの操作位置に基づいてブレーキ装置41~44を駆動させることにより、車両10に制動力を発生させる。
SBWECU73は、シフトポジションセンサ63の出力信号に基づいてシフトレバーの操作レンジを検出するとともに、検出された操作レンジが切り替わったことを検知したとき、切り替え後の操作レンジをSBWシステム50の目標シフトレンジに設定する。そして、SBWECU73は、設定された目標シフトレンジに基づいてアクチュエータ装置52を制御する。例えば、SBWECU73は、目標シフトレンジが非パーキングレンジからパーキングレンジに切り替わった場合には、ロック機構51がロック状態となるようにアクチュエータ装置52を駆動させる。この場合、モータジェネレータ31と駆動輪13,14との間で動力の伝達が不可能な状態となる。一方、SBWECU73は、目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わった場合には、ロック機構51がロック解除状態となるようにアクチュエータ装置52を駆動させる。この場合、モータジェネレータ31と駆動輪13,14との間で動力の伝達が可能となる。
【0032】
このように、本実施形態のSBWECU73は、シフトレバーの操作レンジが非パーキングレンジからパーキングレンジに切り替わることに基づいて動力伝達軸35をロックするとともに、シフトレバーの操作レンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わることに基づいて動力伝達軸35のロックを解除する。本実施形態では、SBWECU73がシフト制御部に相当する。
【0033】
EVECU70は、車両10を統括的に制御する部分である。具体的には、
図4に示されるように、EVECU70は、基本目標トルク演算部700と、目標トルク調停部701とを備えている。
基本目標トルク演算部700は、アクセルポジションセンサ60の出力信号及び車速センサ61の出力信号に基づいてアクセルペダルの踏み込み量AP及び車速VCの情報を取得する。また、基本目標トルク演算部700は、SBWECU73からシフトレバーの操作レンジSPの情報を取得する。基本目標トルク演算部700は、アクセルペダルの踏み込み量AP及び車速VCとから基本目標トルクT10*を演算するための複数のマップを有している。複数のマップは、シフトレバーが操作可能な複数の操作レンジのそれぞれに対応するように予め用意されている。基本目標トルク演算部700は、シフトレバーの操作レンジSPの情報に基づいて複数のマップのうちのいずれを用いるかを決定するとともに、決定したマップからアクセルペダルの踏み込み量AP及び車速VCに基づいて基本目標トルクT10*を演算する。基本目標トルク演算部700は、演算した基本目標トルクT10*を目標トルク調停部701に出力する。
【0034】
目標トルク調停部701は、基本目標トルク演算部700から出力される基本目標トルクT10*と、ブレーキECU72から出力される制動目標トルクT30*とに基づいて目標トルクT20*を設定する。具体的には、目標トルク調停部701は、ブレーキECU72から制動指令が送信されていない場合には、基本目標トルクT10*をそのまま目標トルクT20*に設定する。一方、ブレーキECU72は、ブレーキポジションセンサ62により検出されるブレーキペダルの操作位置BPに基づいてブレーキペダルが踏み込まれたことを検知した場合、制動目標トルクT30*を含む制動指令をEVECU70に送信する。制動目標トルクT30*は、車両10を減速させるためにモータジェネレータ31から出力すべき制動方向のトルクの目標値である。目標トルク調停部701は、ブレーキECU72から制動指令が送信された場合には、基本目標トルクT10*に代えて、制動指令に含まれる制動目標トルクT30*を目標トルクT20*に設定する。目標トルク調停部701は、設定された目標トルクT20*をMGECU71に送信する。
【0035】
MGECU71は、EVECU70から送信される目標トルクT20*に基づいて、モータジェネレータ31の通電制御値を設定するとともに、設定された通電制御値に基づいてインバータ装置32を制御する。これにより、通電制御値に応じた電力がインバータ装置32からモータジェネレータ31に供給されて、目標トルクT20*に応じたトルクがモータジェネレータ31から出力される。
【0036】
ところで、
図5に示されるような登坂路で車両10が停車した場合、路面勾配を「θr」とし、車両に作用している重力を「W」とすると、車両10には、その後進方向の力「W×sin(θr)」が作用することとなる。路面勾配θrは、上り坂の路面の勾配を正の値で示すとともに、下り坂の路面の勾配を負の値で示す。また、車両10が停車した後、シフトレバーの操作レンジがパーキングレンジに操作されると、
図2に示されるロック機構51がロック状態となる。すなわち、パーキングギア512とパーキングポール513とが噛み合った状態となる。
【0037】
車両10の後進方向に「W×sin(θr)」の力が作用することにより駆動輪13,14にトルクが加わるため、そのトルクがドライブシャフト36に加わることにより、ドライブシャフト36が捩れる。このドライブシャフト36の捩れ量に応じたトルクがディファレンシャルギア34及び動力伝達軸35を介してロック機構51に伝達されることにより、ロック機構51のパーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に大きな力が加わる。この場合、その後にシフトレバーの操作レンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに操作されたときに、パーキングギア512からパーキングポール513を外すために必要なアクチュエータ装置52のトルクが大きくなる。これがアクチュエータ装置52の大型化を招く要因となっている。
【0038】
そこで、本実施形態の車両10では、シフトレバーの操作レンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに操作されたときに、パーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に加わっている力を低減させることが可能なトルクをモータジェネレータ31から出力させるとともに、アクチュエータ装置52によりロック機構51をロック状態からロック解除状態に遷移させる。すなわち、ロック機構51を解除する際にモータジェネレータ31及びアクチュエータ装置52を協調制御する。これにより、アクチュエータ装置52に要求されるトルクを低減することができるため、結果としてアクチュエータ装置52を小型化することが可能となる。
【0039】
次に、ロック機構51を解除する際のモータジェネレータ31及びアクチュエータ装置52の協調制御について詳しく説明する。
図4に示されるように、MGECU71は、目標トルク補正部710と、制振制御部711と、通電制御部712とを備えている。
【0040】
目標トルク補正部710は、パーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に加わっている力を低減させることが可能なトルクがモータジェネレータ31から出力されるように、EVECU70から出力される目標トルクT20*を補正する部分である。具体的には、目標トルク補正部710は、
図6及び
図7に示される処理を実行することにより目標トルクT20*を補正する。なお、目標トルク補正部710は、
図6及び
図7に示される処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0041】
図6に示されるように、目標トルク補正部710は、まず、ステップS10の処理として、車速センサ61により検出される車速VCが所定速度Vth未満であるか否かを判断する。所定速度Vthは、車両10が停車しているか否かを判断することができるように予め実験等により設定されており、MGECU71のROMに記憶されている。
【0042】
目標トルク補正部710は、ステップS10の処理で肯定的な判断を行った場合には、すなわち車両10が停車している場合には、ステップS11の処理として、アクセルポジションセンサ60により検出されるアクセルペダルの踏み込み量APに基づいてアクセルペダルが踏み込まれていないか否かを判断する。
【0043】
目標トルク補正部710は、ステップS10の処理又はステップS11の処理で否定的な判断を行った場合には、換言すれば車両10が走行している場合、あるいはアクセルペダルが踏み込まれている場合には、ステップS30の処理として、トルク補正フラグFtを「0」に設定する。トルク補正フラグFtが「0」に設定されている場合、目標トルク補正部710は、基本目標トルク演算部700により演算される目標トルクT20*をそのまま制振制御部711に出力する。また、目標トルク補正部710は、ステップS31の処理として、カウンタCの値を「0」に設定するとともに、ステップS32の処理として、ブレーキECU72に対してブレーキの作動要求を行っている場合にはその要求を停止する。さらに、目標トルク補正部710は、ステップS33の処理として、ディレイ要求フラグFdを「0」に設定した後、
図6及び
図7に示される処理を一旦終了する。
【0044】
目標トルク補正部710は、ステップS10の処理及びステップS11の処理の両方で肯定的な判断を行った場合には、換言すれば車両10が停車しており、且つアクセルペダルが踏み込まれていない場合には、ステップS12の処理として、SBWECU73から取得可能な目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わったか否かを判断する。目標トルク補正部710は、ステップS12の処理で否定的な判断を行った場合には、すなわち目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わっていない場合には、ステップS15の処理として、トルク補正フラグFtが「1」であるか否かを判断する。この際、トルク補正フラグFtは「0」に設定されているため、目標トルク補正部710はステップS15の処理で否定的な判断を行う。よって、目標トルク補正部710はステップS30~S33の処理を実行する。
【0045】
一方、目標トルク補正部710は、ステップS12の処理で肯定的な判断を行った場合には、すなわち目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わった場合には、ステップS13の処理として、トルク補正フラグFtを「1」に設定した後、ステップS14の処理として、ブレーキECU72に対してブレーキ装置の作動を要求する。ブレーキECU72は、MGECU71からブレーキの作動が要求された場合、ブレーキ装置41~44を駆動させることで車両10の停車状態を維持する。このようにブレーキ装置41~44を駆動させる理由は以下の通りである。
【0046】
本実施形態のMGECU71は、ロック機構51のロックを解除する際に、ロック機構51のパーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に加わっている力を低減することが可能なトルクをモータジェネレータ31から出力する。このようにモータジェネレータ31の出力トルクを補正する場合、モータジェネレータ31の出力トルクの絶対値が大きくなると、ロック機構51のロックが解除された際に、モータジェネレータ31の出力トルクが駆動輪13,14に伝達されることにより車両10が前進又は後進する可能性がある。このような車両10の前進又は後進は、運転者の意図しない車両10の挙動であるため、運転者が違和感を覚えるおそれがある。そこで、本実施形態では、このような車両10の意図しない挙動を抑制するために、ブレーキ装置41~44を駆動させることとしている。
【0047】
ステップS13の処理が実行された場合、トルク補正フラグFtが「1」に設定されているため、目標トルク補正部710はステップS15の処理で肯定的な判断を行う。この場合、目標トルク補正部710は、ステップS16の処理として、トルクセンサ66の検出トルクTd、すなわち動力伝達軸35に加わっているトルクが零であるか否かを判断する。ステップS16の処理は、ドライブシャフト36に捩れが発生しているか否かを判定するための処理に相当する。なお、ステップS16の処理は、動力伝達軸35のトルクTdが所定値未満であるか否かを判断する処理であってもよい。この所定値は、動力伝達軸35にトルクが加わっているか否かを判断することができるように予め実験等により設定されており、MGECU71のROMに記憶されている。
【0048】
目標トルク補正部710は、ステップS16の処理で否定的な判断を行った場合、すなわち動力伝達軸35のトルクTdが零でない場合には、ロック機構51の噛み合い部分の力を低減させるためのトルクをモータジェネレータ31から出力させる必要があると判定する。この場合、目標トルク補正部710は、ステップS17の処理として、モータジェネレータ31の目標トルクT20*を補正する。具体的には、目標トルク補正部710は、トルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクTdに基づいて基本トルク補正量ΔTを演算するとともに、演算された基本トルク補正量ΔTに学習値εを加算又は減算した値を目標トルクT20*に設定する。
【0049】
基本トルク補正量ΔTは、パーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に加わっている力を低減させるためにモータジェネレータ31から出力すべきトルクの基準値である。車両10が停車している路面の勾配θrの絶対値が大きくなるほど、ドライブシャフト36の捩れ量が大きくなるため、基本トルク補正量の絶対値|ΔT|をより大きい値に設定する必要がある。また、路面勾配θrが正の値である場合と負の値である場合とでは、換言すれば登坂路である場合と降坂路である場合とでは、基本トルク補正量ΔTの正負の符号が逆転する。
【0050】
一方、ドライブシャフト36に捩れが発生した場合、その捩れ量に応じたトルクが動力伝達軸35に加わる。よって、ドライブシャフト36の捩れ量と、トルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクTdとの間には相関関係がある。そこで、本実施形態では、トルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクTdに基づいて基本トルク補正量ΔTを設定することとしている。
【0051】
具体的には、トルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクTdと基本トルク補正量ΔTとの関係を示すマップとして、例えば
図8に示されるようなマップが予め実験等により求められてMGECU71のROMに記憶されている。目標トルク補正部710は、
図6に示されるステップS17の処理として、トルクセンサ66により検出されるトルクTdから、
図8に示されるマップに基づいて基本トルク補正量ΔTを演算する。
【0052】
ところで、ロック機構51のパーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に加わっている力を低減させるために必要なモータジェネレータ31の出力トルクは、例えばモータジェネレータ31やディファレンシャルギア34の製品のばらつきや経年劣化等の影響により変化する可能性がある。そのため、モータジェネレータ31の目標トルクT20*を、予め定められた基本トルク補正量ΔTに設定するだけの構成の場合、製品のばらつきや経年劣化等の影響を受けて、ロック機構51の噛み合い部分に加わっている力を適切に低減できない可能性がある。
【0053】
そこで、本実施形態のMGECU71は、製品のばらつきや経年劣化等の影響によるトルク補正量の変動量を学習するとともに、その学習値εを基本トルク補正量ΔTに加算又は減算することにより、より精度の高いトルク補正量を演算するようにしている。学習値εは、
図9に示される処理により設定される。目標トルク補正部710は、基本トルク補正量ΔTが正の値である場合、すなわち車両10が登坂路に停車している場合には、基本トルク補正量ΔTに学習値εを加算することにより目標トルクT20*を設定する。一方、目標トルク補正部710は、基本トルク補正量ΔTが負の値である場合、すなわち車両10が降坂路に停車している場合には、基本トルク補正量ΔTから学習値εを減算することにより目標トルクT20*を設定する。なお、
図9に示される処理の具体的な手順については後述する。本実施形態では、「ΔT±ε」が電動モータの出力トルクの補正量に相当する。
【0054】
以上のように、目標トルク補正部710は、ステップS17の処理として、トルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクTdに基づいて基本トルク補正量ΔTを演算するとともに、演算された基本トルク補正量ΔTに学習値εを加算又は減算した値を目標トルクT20*に設定する。本実施形態では、この処理が、トルク検出部の検出トルクに応じた電動モータの出力制御に相当する。以下では、この制御を「トルク補正制御」と称する。目標トルク補正部710は、演算された目標トルクT20*を制振制御部711に出力する。
【0055】
一方、目標トルク補正部710は、ステップS16の処理で肯定的な判断を行った場合、すなわち動力伝達軸35のトルクTdが零である場合には、ロック機構51の噛み合い部分の力を低減させるトルクをモータジェネレータ31から出力させる必要がないと判定する。この場合、目標トルク補正部710は、ステップS18の処理として、目標トルクT20*を零に設定する。目標トルクT20*が零に設定されている場合、MGECU71はトルク補正制御を実行しない。このように、MGECU71は、トルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクTdが零である場合、あるいはそのトルクTdが所定値未満である場合には、トルク補正制御を実行しない。
【0056】
目標トルク補正部710は、ステップS17の処理又はステップS18の処理を実行した場合、ステップS19の処理として、基本トルク補正量の絶対値|ΔT|が所定値Tth以上であるか否かを判断する。本実施形態の車両10では、基本的には、モータジェネレータ31からトルク補正量「ΔT+ε」に応じたトルクが出力されれば、ロック機構51のパーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に加わる力が低減できるため、それらのロックが解除されるようにアクチュエータ装置52を作動させればよい。しかしながら、それらの噛み合い部分に大きな力が加わっている場合には、モータジェネレータ31においてトルク補正量「ΔT+ε」に応じたトルク補正制御が実行された時点で即座にロック機構51のロックを解除すると、ロック機構51のショックを緩和し難い場合がある。
【0057】
具体的には、パーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に加わる力が大きくなると、モータジェネレータ31においてトルク補正量「ΔT+ε」に応じたトルク補正制御が開始された後、それらの噛み合い部分の力が実際に低減されるまでには、ある程度の時間を要する。そのため、モータジェネレータ31のトルク補正制御が開始された時点で即座にロック機構51のロックを解除しようとすると、ロック機構51のショックを緩和できない可能性がある。このような場合には、モータジェネレータ31においてトルク補正量「ΔT+ε」に応じたトルク補正制御が実行された時点から所定時間が経過した後にロック機構51のロックを解除することがショックを低減する上で有効である。
【0058】
そこで、目標トルク補正部710は、基本トルク補正量の絶対値|ΔT|と所定値Tthとを比較することにより、ロック機構51におけるロックの解除を遅延させるか否かを判断する。なお、本実施形態では、ロックの解除に伴いロック機構51に発生するショックと基本トルク補正量の絶対値|ΔT|との関係が実験等により求められている。所定値Tthは、その実験等の結果に基づいて、ロック機構51のロックの解除を遅延させるべきか否かを判定することができる値に予め設定されており、MGECU71のROMに記憶されている。
【0059】
目標トルク補正部710は、基本トルク補正量の絶対値|ΔT|が所定値Tth以上である場合には、ステップS19の処理で肯定的な判断を行って、続くステップS20の処理としてディレイ要求フラグFdを「1」に設定した後、
図7に示されるステップS21以降の処理を実行する。ディレイ要求フラグFdが「1」に設定された場合、MGECU71からSBWECU73にディレイ要求が送信される。SBWECU73は、ディレイ要求が送信されると、目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わった場合であっても、アクチュエータ装置52を駆動させずにロック機構51をロック状態に維持する。
【0060】
一方、目標トルク補正部710は、基本トルク補正量の絶対値|ΔT|が所定値Tth未満である場合には、ステップS19の処理で否定的な判断を行って、ステップS20の処理を実行することなく、
図7に示されるステップS21以降の処理を実行する。この場合、ディレイ要求フラグFdが「0」に設定されているため、MGECU71からSBWECU73にディレイ要求が送信されない。そのため、SBWECU73は、目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わることに基づいてアクチュエータ装置52を駆動させて、ロック機構51をロック状態からロック解除状態に遷移させる。
【0061】
図7に示されるように、目標トルク補正部710は、ステップS21の処理として、カウンタCの値をインクリメントした後、ステップS22の処理として、回転センサ64により検出されるアクチュエータ装置52の回転角θaが所定値θth10未満であるか否かを判断する。所定値θth10は、
図2に示されるロック機構51がロック状態からロック解除状態まで遷移したか否かを判断することができる値に予め設定されており、MGECU71のROMに記憶されている。
【0062】
目標トルク補正部710は、ステップS22の処理で肯定的な判断を行った場合には、すなわちアクチュエータ装置52の回転角θaが所定値θth10未満である場合には、ステップS23の処理として、カウンタCの値が所定のディレイ値Cth未満であるか否かを判断する。ディレイ値Cthは、モータジェネレータ31のトルク補正制御が開始された時点からロック機構51のショックを低減できる程度の所定時間が経過したか否かを判断することができるように予め実験等により設定されており、MGECU71のROMに記憶されている。
【0063】
目標トルク補正部710は、ステップS23の処理で肯定的な判断を行った場合には、すなわちモータジェネレータ31のトルク補正制御が開始された時点から所定時間が経過していない場合には、
図6及び
図8に示される処理を一旦終了する。
一方、目標トルク補正部710は、ステップS22の処理又はステップS23の処理で否定的な判断を行った場合には、すなわちロック機構51がロック状態からロック解除状態まで遷移した場合、あるいはトルク補正制御の開始時点から所定時間が経過した場合には、
図6に示されるステップS30~S33の処理を実行する。この場合、目標トルク補正部710は、ステップS30の処理として、トルク補正フラグFtの値を「1」から「0」に変更する。これによりトルク補正制御の実行が停止される。また、目標トルク補正部710は、ステップS31の処理として、カウンタCの値を「0」にリセットする。さらに、目標トルク補正部710は、ステップS32の処理として、ブレーキECU72に対してブレーキの作動を要求している場合には、その要求を停止する。これによりブレーキ装置41~44の作動が停止する。また、目標トルク補正部710は、ステップS33の処理として、ディレイ要求フラグFdの値を「1」から「0」に変更する。ディレイ要求フラグFdが「0」に設定された場合、MGECU71からSBWECU73にディレイ解除要求が送信される。SBWECU73は、ディレイ解除要求が送信されると、アクチュエータ装置52を駆動させてロック機構51をロック状態からロック解除状態に遷移させる。
【0064】
図4に示されるように、目標トルク補正部710は、
図6に示される処理を通じて設定される目標トルクT20*を制振制御部711に出力する。制振制御部711は、ドライブシャフト36の捩れに基づく振動が抑制されるように目標トルクT20*を補正する制振制御を実行する。例えば、制振制御部711は、目標トルクT20*に対して、ドライブシャフト36の捩り共振の周波数成分を減衰させるノッチフィルタに基づくフィルタリング処理を施す。あるいは、ドライブシャフト36の回転角を検出することが可能なセンサが車両10に設けられている場合、制振制御部711は、そのセンサにより検出されるドライブシャフト36の回転角の推移に基づいてドライブシャフト36の捩り共振を検出するとともに、その振動を打ち消すように目標トルクT20*をフィードバック制御により補正してもよい。目標トルク補正部710は、補正された目標トルクT20*を最終目標トルクT40*として通電制御部712に出力する。
【0065】
通電制御部712は、最終目標トルクT40*に基づいてモータジェネレータ31の通電制御値を演算するとともに、その通電制御値に基づいてインバータ装置32を制御する。これにより通電制御値に応じた電力がインバータ装置32からモータジェネレータ31に供給されて、モータジェネレータ31から、最終目標トルクT40*に応じたトルクが出力される。
【0066】
次に、
図9を参照して、
図6に示されるステップS17の処理で用いられる学習値εの設定処理の手順について説明する。なお、目標トルク補正部710は、
図9に示される処理を所定の周期で繰り返し実行する。また、学習値εの初期値は零に設定されている。
図9に示されるように、目標トルク補正部710は、まず、ステップS40の処理として、SBWECU73から取得可能な目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わったか否かを判断する。目標トルク補正部710は、ステップS40の処理で肯定的な判断を行った場合には、ステップS41の処理として、トルクセンサ66により検出されるトルクを補正前トルクTbとして取得する。補正前トルクTbは、トルク補正制御を実行する直前に動力伝達機構に付与されているトルクに相当する。
【0067】
目標トルク補正部710は、ステップS41に続くステップS42の処理として、回転センサ64により検出されるアクチュエータ装置52の回転角θaが所定値θth11に達したか否かを判断する。所定値θth11は、トルク補正制御の実行中であるか否かを判断することができる値に予め設定されており、MGECU71のROMに記憶されている。目標トルク補正部710は、ステップS42の処理で肯定的な判断を行った場合、すなわちトルク補正制御の実行中である場合には、ステップS43の処理として、トルクセンサ66により検出されるトルクを補正中トルクTaとして取得する。補正中トルクTaは、トルク補正制御の実行中に動力伝達機構に付与されているトルクに相当する。
【0068】
目標トルク補正部710は、ステップS43に続くステップS44の処理として、補正前トルクの絶対値|Tb|が補正中トルクの絶対値|Ta|よりも大きいか否かを判断する。目標トルク補正部710は、ステップS42の処理で肯定的な判断を行った場合には、すなわち補正前トルクの絶対値|Tb|が補正中トルクの絶対値|Ta|よりも大きい場合には、ステップS45の処理として、現在の学習値εに所定値αを加算した値を新たな学習値εに設定した後、
図9に示される処理を一旦終了する。所定値αは、予め定められた正の値であり、例えば「1[Nm]」に設定されている。
【0069】
目標トルク補正部710は、ステップS44の処理で否定的な判断を行った場合には、ステップS46の処理として、補正前トルクTbが補正中トルクTaよりも小さいか否かを判断する。目標トルク補正部710は、ステップS46の処理で肯定的な判断を行った場合には、すなわち補正前トルクの絶対値|Tb|が補正中トルクの絶対値|Ta|よりも小さい場合には、ステップS47の処理として、現在の学習値εから所定値αを減算した値を新たな学習値εに設定した後、
図9に示される処理を一旦終了する。
【0070】
目標トルク補正部710は、ステップS46の処理で否定的な判断を行った場合には、すなわち補正前トルクTbと補正中トルクTaとが一致している場合には、学習値εを補正することなく、
図9に示される処理を一旦終了する。
次に、
図10を参照して、学習値εの学習態様について説明する。
【0071】
例えば車両10が登坂路で停車している場合、
図10に示されるように、トルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクTdは負の値を示す。この場合、時刻t1で目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わったとすると、その時点でトルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクが補正前トルクTbに設定される。その後、時刻t2でロック機構51がロック状態からロック解除状態に遷移したとすると、トルク補正制御が実行されていない場合、図中に二点鎖線m10で示されるように、時刻t2以降、動力伝達軸35のトルクTdが徐々に増加する。その後、ロック機構51がロック解除状態になる時刻t3の時点でトルクセンサ66により検出されるトルクTdが零になる。この場合、ロック機構51のパーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分には、補正前トルクTbに応じた力が加わっていることとなる。これが、ロック機構51を解除するために必要なアクチュエータ装置52のトルクを増大させる要因となる。
【0072】
ところで、時刻t2でロック機構51がロック状態からロック解除状態に遷移する際に、モータジェネレータ31の出力トルクにより動力伝達軸35に補正前トルクTbが付与されている状態を維持することができれば、ロック機構51の解除のために必要なアクチュエータ装置52のトルクを低減できる。すなわち、
図6に示される処理で設定されるトルク補正量「ΔT+ε」が適切な場合には、
図10に実線m11で示されるように、時刻t2以降、動力伝達軸35のトルクTdは補正前トルクTbに維持されることとなる。また、時刻t4でトルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクが補正中トルクTaとして設定される。この場合、補正前トルクTbと補正中トルクTaとが一致しているため、学習値εは補正されない。すなわち、学習値εは、その前回値に維持される。その後、時刻t5でトルク補正制御が終了すると、その後に動力伝達軸35のトルクTdが徐々に増加する。
【0073】
一方、トルク補正量「ΔT+ε」が大きすぎる場合には、補正前トルクTbよりも大きいトルクが動力伝達軸35に付与されることになる。そのため、
図10に一点鎖線m12で示されるように、時刻t2以降、動力伝達軸35のトルクが減少する。この場合、時刻t4で検出される補正中トルクの絶対値|Ta|が補正前トルクの絶対値|Tb|よりも小さい。そのため、現在の学習値εから所定値αを減算する処理が行われることにより新たな学習値εが求められる。結果的に、次回のトルク補正制御で設定されるトルク補正量「ΔT+ε」が小さくなるため、補正中トルクTaを補正前トルクTbに近づけることができる。よって、ロック機構51の解除のために必要なアクチュエータ装置52のトルクを低減することができる。
【0074】
また、トルク補正量「ΔT+ε」が小さすぎる場合には、補正前トルクTbよりも小さいトルクが動力伝達軸35に付与されることになる。そのため、
図10に一点鎖線m13に示されるように、時刻t2以降、動力伝達軸35のトルクが増加する。この場合、時刻t4で検出される補正中トルクの絶対値|Ta|が補正前トルクの絶対値|Tb|よりも大きい。そのため、現在の学習値εに所定値αを加算する処理が行われることにより新たな学習値εが求められる。結果的に、次回のトルク補正制御で設定されるトルク補正量「ΔT+ε」が大きくなるため、補正中トルクTaを補正前トルクTbに近づけることができる。よって、ロック機構51の解除のために必要なアクチュエータ装置52のトルクを低減することができる。
【0075】
このように、本実施形態のMGECU71では、ロック機構51においてロックの解除が行われる都度、学習値εが、補正前トルクTbと補正中トルクTaとを一致させることが可能な値となるように更新される。よって、
図6のステップS17処理で設定されるトルク補正量「ΔT±ε」をより適切な値に設定することができる。
【0076】
次に、本実施形態の車両10の動作例について説明する。
図11(A),(B)に示されるように、時刻t10で車両10が登坂路で停車して車速VC及びアクセルペダルの踏み込み量APが「0」になったとする。このとき、運転者がブレーキペダルを踏み込んでいると、
図11(C)に示されるようにブレーキペダルの踏み込みが検出される。その後、時刻t11でシフトレバーの操作レンジをドライブレンジ等の非パーキングレンジからパーキングレンジに切り替える操作を行うと、
図11(D)に一点鎖線で示されるように、SBWシステム50の目標シフトレンジが非パーキングレンジからパーキングレンジに切り替わる。これにより、
図11(D)に実線で示されるように、ロック機構51がロック解除状態からロック状態に向かって遷移する。その後、
図11(C)に示されるように時刻t12で運転者がブレーキペダルから足を離すと、
図11(F)に示されるようにブレーキ装置41~44の制動力が「0」に向かって変化する。ブレーキ装置41~44の制動力が「0」に近づくほど、車両10の重力に基づく力が駆動輪13,14を介して動力伝達軸35に作用するようになる。そのため、
図11(G)に示されるように、トルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクが負の方向に大きくなる。この動力伝達軸35に作用する負のトルクが、ロック機構51のパーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に大きな力を生じさせる要因となる。なお、
図11(H)に示されるように、加速度センサ65では、車両10が停車している路面の勾配に応じた重力加速度Gaが検出される。
【0077】
その後、運転者が車両10の走行を開始すべく、
図11(C)に示されるように、時刻t20でブレーキペダルを踏み込んだとすると、
図11(F)に示されるように、ブレーキ装置41~44の制動力が増加する。また、運転者が時刻t21でシフトレバーの操作レンジをパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替える操作を行うと、
図11(D)に一点鎖線で示されるように、SBWシステム50の目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わる。このとき、本実施形態の車両10では、
図11(E)に示されるように、時刻t21で目標トルクT20*がトルク補正量「ΔT+ε」に補正される。これにより、モータジェネレータ31の出力トルクが増加する。
【0078】
一方、時刻t21でディレイ要求フラグFdが「1」に設定されている場合、SBWシステム50の目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わったとしても、
図11(D)に実線で示されるように、ロック機構51はロック状態に維持される。そして、時刻t21から、所定の遅延時間Tdeが経過した時刻t22の時点で、ロック機構51がロック状態からロック解除状態に向かって遷移する。所定の遅延時間Tdeは、カウンタCに対して設定されるディレイ値Cthに対応した時間であり、例えば1秒である。
【0079】
なお、時刻t21でディレイ要求フラグFdが「0」に設定されている場合には、
図11(D)に二点鎖線で示されるように、ロック機構51が時刻t21でロック状態からロック解除状態に向かって遷移する。
図11(E)に示されるように、時刻t22の時点でモータジェネレータ31の出力トルクが増加しているため、ロック機構51のパーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に加わっている力が小さくなっている。よって、ロック機構51をロック状態からロック解除状態に向かって遷移させるためにアクチュエータ装置52に要求される力を小さくすることができる。結果的に、ロック機構51をロック解除状態に遷移させる際にロック機構51にショックが発生し難くなるため、
図11(H)に示されるように、加速度センサ65により検出される加速度ACが、二点鎖線で示されるように振動することなく、実線で示されるように推移する。
【0080】
その後、時刻t23の時点でアクチュエータ装置52の回転角θaが所定値θth未満になると、その時点で、目標トルク補正部710は、ロック機構51がロック解除状態になったと判定する。そのため、
図11(E)に示されるように、時刻t23で目標トルクT20*がトルク補正量「ΔT+ε」から「0」に変更される。
【0081】
一方、車両10が急な登坂路で停車しているような場合には、
図11(F)に示されるように、ブレーキ装置41~44の制動力は、SBWシステム50の目標シフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わる時刻t21で増加し始める。その後、トルク補正制御が終了される時刻t24までブレーキ装置41~44の制動力が増加した状態が維持されるため、モータジェネレータ31の出力トルクの補正に起因する車両10の意図しない挙動を抑制することができる。
【0082】
以上説明した本実施形態の車両10の制御装置90によれば、以下の(1)~(5)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)SBWECU73は、SBWシステム50のシフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わることに基づいて、ロック機構51による動力伝達軸35のロックが解除されるようにアクチュエータ装置52を駆動する。MGECU71は、SBWシステム50のシフトレンジがパーキングレンジから非パーキングレンジに切り替わることに基づいて、トルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクTdに応じてモータジェネレータ31の出力トルクを補正するトルク補正制御を実行する。この構成によれば、動力伝達軸35に付与されているトルクTdに応じたトルクがモータジェネレータ31から出力される。これにより、ロック機構51のロックを解除するためにアクチュエータ装置52に要求される動力を小さくすることができるため、上記の特許文献1に記載されるような電動パーキングブレーキ装置が不要となる。よって、より簡素な構成でアクチュエータ装置52に要求される動力を低減することができる。
【0083】
(2)トルクセンサ66は、動力伝達軸35に付与されているトルクを直接検出するトルク検出部として機能する。この構成によれば、動力伝達軸35に付与されているトルクを高い精度で検出することができるため、ロック機構51のパーキングギア512とパーキングポール513との噛み合い部分に加わっている力を低減することが可能なモータジェネレータ31の出力トルクを、より適切に設定することができる。よって、アクチュエータ装置52に要求される動力を、より的確に低減することができる。
【0084】
(3)MGECU71は、トルクセンサ66により検出される動力伝達軸35のトルクTdが零である場合、あるいはそのトルクTdが所定値未満である場合には、トルク補正制御を実行しない。この構成によれば、モータジェネレータ31を駆動させる必要がない状況ではトルク補正制御が実行されないため、モータジェネレータ31の不必要な駆動を回避することができる。
【0085】
(4)トルクセンサ66は、トルク補正制御を実行する直前に動力伝達軸35に付与されているトルクである補正前トルクTbと、トルク補正制御の実行中に動力伝達軸35に付与されているトルクである補正中トルクTaとを検出する。MGECU71は、補正前トルクTbと補正中トルクTaとの比較に基づいて学習値εを設定することにより、トルク補正制御の実行によりモータジェネレータ31から出力すべきトルク補正量「ΔT±ε」を学習する。この構成によれば、トルク補正量「ΔT±ε」を精度良く設定することができる。
【0086】
(5)MGECU71は、トルク補正量の学習として、補正前トルクの絶対値|Tb|が補正中トルクの絶対値|Ta|よりも大きい場合には、学習値εが大きくなるように、換言すればトルク補正量「ΔT±ε」をその絶対値が大きくなるように補正する。また、MGECU71は、補正前トルクの絶対値|Tb|が補正中トルクの絶対値|Ta|よりも小さい場合には、学習値εが小さくなるように、換言すればトルク補正量「ΔT±ε」をその絶対値が小さくなるように補正する。この構成によれば、トルク補正量「ΔT±ε」を精度良く設定することができる。
【0087】
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・
図12に示されるように、インバータ装置32に、モータ制御部101とシフト制御部102とを有するECU100が設けられていてもよい。モータ制御部101は、第1実施形態のMGECU71と同一又は類似の機能を有している。シフト制御部102は、第1実施形態のSBWECU73と同一又は類似の機能を有している。このような構成によれば、第1実施形態の制御装置90のようにMGECU71及びSBWECU73が別々に設けられている構成と比較すると、モータジェネレータ31のトルク補正制御とロック機構51の制御とを連携させる速度を向上させることができる。結果的に、ロック機構51のショックを更に低減することができる。
【0088】
・本開示に記載の制御装置90及びその制御方法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置90及びその制御方法は、1つ又は複数の専用ハードウェア論理回路を含むプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の制御装置90及びその制御方法は、1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ又は複数のハードウェア論理回路を含むプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。専用ハードウェア論理回路及びハードウェア論理回路は、複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により実現されてもよい。
【0089】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0090】
10:車両(移動体)
13,14:車輪(回転体)
31:モータジェネレータ(電動モータ)
35:動力伝達軸(動力伝達機構)
51:ロック機構
52:アクチュエータ装置
66:トルクセンサ(トルク検出部)
71:MGECU(モータ制御部)
73:SBWECU(シフト制御部)
90:制御装置
101:モータ制御部
102:シフト制御部