(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】軟包装用積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 63/02 20060101AFI20240717BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20240717BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240717BHJP
C09J 175/04 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
B29C63/02
B29C65/02
B65D65/40 D
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2020113282
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕清
(72)【発明者】
【氏名】前田 諭志
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/043470(WO,A1)
【文献】特開2020-069791(JP,A)
【文献】特開2019-098285(JP,A)
【文献】特開平11-061083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00 - 63/48
B29C 65/00 - 65/82
B05C 5/00 - 5/04
B05C 7/00 - 21/00
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 -201/10
B65D 65/00 - 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材、印刷層、接着層、及び第2の基材をこの順に備えた軟包装用積層体の製造方法であって、下記工程1、及び工程2を有する、軟包装用積層体の製造方法。
工程1:印刷層が設けられた第1の基材の印刷層上に、ポリオール(A1)と触媒とを含む層(X)を形成する工程
(但し、前記層(X)の厚みが0.1~1.0μmである。)
工程2:前記層(X)上に、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(B)の混合液を塗布し、第2の基材と接触させ圧着する工程
(但し、前記混合液は無溶剤型混合液である。)
【請求項2】
前記ポリオール(A1)は、濃度10質量%酢酸エチル溶液の25℃における粘度が、1~50mPa・sである、請求項
1に記載の軟包装用積層体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオール(A1)の数平均分子量が、5,000~30,000である、請求項1
又は2に記載の軟包装用積層体の製造方法。
【請求項4】
印刷層が設けられた第1の基材の印刷層上に、ポリオール(A1)と触媒と有機溶剤とを含む混合液を塗工した後、有機溶剤を除去して前記層(X)を形成することを特徴とする、請求項1~
3いずれか1項に記載の軟包装用積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の基材が、金属蒸着フィルム、及び金属箔からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~
4いずれか1項に記載の軟包装用積層体の製造方法。
【請求項6】
前記触媒が、金属系触媒、及び3級アミン系触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~
5いずれか1項に記載の軟包装用積層体の製造方法。
【請求項7】
工程1の前に、第1の基材上に印刷層を形成して、印刷層が設けられた第1の基材を得る工程0を含み、工程0、工程1、及び工程2がインラインで行われることを特徴とする、請求項1~
6いずれか1項に記載の軟包装用積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等に用いられる軟包装用積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の軟包装体の製造に使用される接着剤として、無溶剤型の2液硬化型ポリウレタン接着剤が広く用いられている。このような無溶剤型接着剤は、通常、粘度を低く抑えるために低分子量のポリイソシアネートとポリオールとを用いており、初期凝集力が低く、一定時間以上のエージングが必要であり、生産効率の観点からエージング時間の短縮が求められている。
【0003】
しかし、一般的に無溶剤型接着剤は、ポリイソシアネートとポリオールの混合液をロール上に滞留させ、ロールコーターにより基材に塗工されるため、硬化性能を高めるために触媒等を配合すると、ポットライフが著しく短くなり、ロール上で増粘して外観悪化を引き起こすという課題がある。
【0004】
上記課題に対して、特許文献1には、ポリイソシアネートとポリオールとを別々の基材に塗布した後に貼り合わせる技術が開示されている。
また特許文献2には、第1の基材にプラスチック基材にポリオールとポリイソシアネートとの混合液を塗布し、第2の基材に触媒をドット上に形成し、両基材を貼り合わせる技術が開示されている。
【0005】
一方で、低分子量のポリイソシアネートとポリオールを用いる無溶剤接着剤は、エージング中に低分子量成分がインキ層に浸透してインキ層が膨潤し、隠蔽性が低下する場合があることが知られている。特に低分子量のポリイソシアネートはインキ層に浸透しやすく膨潤させやすい傾向にある。インキ層の隠蔽性が低下すると、特に、金属蒸着フィルムや金属箔と貼り合わせた包装材を外側から見た際に、金属蒸着や金属箔が透けてみえるというダーキング現象が発生する。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法では、接着剤に含まれる低分子量成分のインキ層への浸透を防ぐことはできず、ダーキング現象のようなインキ層の隠蔽性低下を抑制することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2019/082683号
【文献】国際公開第2019/167638号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ポットライフを悪化させることなく接着剤の硬化速度を速めることができ、エージング時間が短縮され、且つダーキング現象のような印刷層の隠蔽性低下が抑制された軟包装用積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、第1の基材、印刷層、接着層、及び第2の基材をこの順に備えた軟包装用積層体の製造方法であって、下記工程1、及び工程2を有する、軟包装用積層体の製造方法に関する。
工程1:印刷層が設けられた第1の基材の印刷層上に、ポリオール(A1)と触媒とを含む層(X)を形成する工程
工程2:前記層(X)上に、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(B)の混合液を塗布し、第2の基材と接触させ圧着する工程
【0011】
本発明は、前記層(X)の厚みが、0.1~1.0μmである、上記軟包装用積層体の製造方法に関する。
【0012】
本発明は、前記ポリオール(A1)は、濃度10質量%酢酸エチル溶液の25℃における粘度が、1~50mPa・sである、上記軟包装用積層体の製造方法に関する。
【0013】
本発明は、前記ポリオール(A1)の数平均分子量が、5,000~30,000である、上記軟包装用積層体の製造方法に関する。
【0014】
本発明は、印刷層が設けられた第1の基材の印刷層上に、ポリオール(A1)と触媒と有機溶剤とを含む混合液を塗工した後、有機溶剤を除去して前記層(X)を形成することを特徴とする、上記軟包装用積層体の製造方法に関する。
【0015】
本発明は、前記第2の基材が、金属蒸着フィルム、及び金属箔からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、上記軟包装用積層体の製造方法に関する。
【0016】
本発明は、前記触媒が、金属系触媒、及び3級アミン系触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記軟包装用積層体の製造方法に関する。
【0017】
本発明は、工程1の前に、第1の基材上に印刷層を形成して、印刷層が設けられた第1の基材を得る工程0を含み、工程0、工程1、及び工程2がインラインで行われることを特徴とする、上記軟包装用積層体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ポットライフを悪化させることなく接着剤の硬化速度を速めることができ、エージング時間が短縮され、且つダーキング現象のような印刷層の隠蔽性低下が抑制された軟包装用積層体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、第1の基材、印刷層、ポリオールとポリイソシアネートとの硬化物を含む接着層、及び第2の基材をこの順に備えた軟包装用積層体の製造方法であって、下記工程1、及び工程2を有することを特徴とする。
工程1:印刷層が設けられた第1の基材の印刷層上に、ポリオール(A1)と触媒とを含む層(X)を形成する工程
工程2:前記層(X)上に、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(B)の混合液を塗布し、第2の基材と接触させ圧着する工程
【0020】
本発明における接着層は、ポリオール(A1)及び/又はポリオール(A2)と、ポリイソシアネート(B)との硬化物を含むポリウレタン接着層であって、ポリオール(A1)と触媒とを含む層(X)上に、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(B)の混合液を塗布し、第2の基材を接触させ圧着させ、エージングすることで形成される。
上記工程により、層(X)に含まれる触媒は接着剤層全体に拡散し、硬化剤であるポリイソシアネート(B)は層(X)に浸透して、ポリオール(A2)だけでなくポリオール(A1)とも反応し、ポットライフを悪化させることなく速硬化を達成することができる。さらに、層(X)に浸透したポリイソシアネート(B)は、層(X)に含まれる架橋剤により、速やかにポリオール(A1)と反応して高分子量化するため、インキ層への浸透が抑制され、ダーキング現象のような印刷層の隠蔽性低下を抑えることができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0021】
<工程1>
本発明における層(X)は、ポリオール(A1)と触媒とを含む。
【0022】
[ポリオール(A1)]
ポリオール(A1)は、水酸基を2つ以上有する化合物であればよく、公知のポリオールから選択することができる。このようなポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、又はポリヒドロキシアルカンのほか、
エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール;数平均分子量200~3,000のポリアルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;上記3官能又は4官能の脂肪族アルコールに、上記グリコール若しくはポリオールが付加したポリオール;が挙げられる。
ポリオール(A1)は、基材へのレベリング性と接着性能の観点から、好ましくはポリエーテルポリオール、又はポリエステルポリオールである。
【0023】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、例えば、カルボキシル基成分と水酸基成分とを反応させて得られるポリエステルポリオール;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
上記カルボキシル基成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物が挙げられる。
上記水酸基成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類若しくはそれらの混合物が挙げられる。
上記カルボキシル基成分及び水酸基成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、水酸基とエーテル結合とを分子内に各々2つ以上有する化合物であればよい。このようなポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコールのようなポリアルキレングリコール;ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロック共重合体;プロピレンオキサイド・エチレンオキサイドランダムポリエーテル;が挙げられる。
また、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、シュークローズ等の低分子量ポリオール開始剤に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を付加重合した付加重合体をポリエーテルポリオールとして用いてもよい。
該付加重合体としては、例えば、プロピレングリコールプロピレンオキサイド付加体、グリセリンプロピレンオキサイド付加体、ソルビトール系プロピレンオキサイド付加体、シュークローズ系プロピレンオキサイド付加体が挙げられる。
【0025】
これらのポリオール(A1)は、ポリオール中の水酸基の一部が酸変性された酸変性物であってもよいし、酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入したものや、ジイソシアネートを反応させてウレタン結合を導入したものであってもよい。
上記ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、例えば、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
これらのポリオール(A1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
ポリオール(A1)の数平均分子量は、好ましくは2,000~50,000であり、より好ましくは5,000~30,000である。数平均分子量が5,000以上であると、低分子量ポリイソシアネートのような接着剤成分の染み込みをより効果的に防ぎ、印刷層の隠蔽性低下を抑制できる点で好ましい。
なお本発明において数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて、溶媒としてテトロヒドロフランを用いて測定したポリスチレン換算値として求めることができる。
【0027】
ポリオール(A1)の酸価は、好ましくは0~40mgKOH/g、より好ましくは0~10mgKOH/g、さらに好ましくは0~5mgKOH/gである。ポリオールの水酸基価は、好ましくは1~200mgKOH/g、より好ましくは1~150mgKOH/gである。
【0028】
前記ポリオール(A1)は、酢酸エチルで濃度10質量%に希釈した溶液の25℃における粘度が、1~50mPa・sであることが好ましく、より好ましくは5~50mPa・sである。このような範囲とすることで、印刷層上に0.1~1.0μm程度の薄膜で層(X)を形成することができ、次いで層(X)上に塗布される混合液中の低分子量成分の浸透を制御することができるため好ましい。
【0029】
[触媒]
本発明に使用できる触媒として好ましくは、金属系触媒、及び3級アミン系触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種である。上記金属系触媒としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレートが挙げられる。上記3級アミン系触媒としては、例えば、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリエタノールアミンが挙げられる。
【0030】
[層(X)の形成]
層(X)の形成方法は特に制限されず、公知の方法で形成することができる。層(X)の形成方法としては、例えば、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法が挙げられる。層(X)の厚みは、好ましくは0.1~1.0μmであり、より好ましくは0.1~0.5μmである。
層(X)の厚みを上記範囲とする観点から、層(X)の形成方法として好ましくはグラビアコート法であり、印刷層が設けられた第1の基材の印刷層上に、ポリオール(A1)と触媒と有機溶剤とを含む混合液を、グラビアコーターを用いて塗工し、次いで有機溶剤を除去することで層(X)を形成する方法が好適に用いられる。
【0031】
含んでもよい有機溶剤は特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサンが挙げられる。
【0032】
層(X)中の触媒の含有率は、好ましくは2~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%である。
【0033】
<工程2>
本発明の製造方法は、層(X)上に、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(B)の混合液を塗布し、第2の基材と接触させ圧着する工程を含む。工程2により、層(X)及び混合液に含まれるポリオールとポリイソシアネートとがウレタン架橋を形成し、接着層を形成する。
【0034】
[ポリオール(A2)]
ポリオール(A2)としては、ポリオール(A1)の項の記載を援用できる。ポリオール(A2)の数平均分子量は、好ましくは1,000~10,000であり、より好ましくは1,000~8,000であり、特に好ましくは1,000~5,000である。数平均分子量が1,000以上であると、凝集力が十分であり、10,000以下であると、無溶剤で流動性を持ち、ロールコーターで基材上に塗布することが可能となる。
【0035】
[ポリイソシアネート(B)]
ポリイソシアネート(B)は、ポリオール(A1)及びポリオール(A2)と反応して接着剤を硬化させるものである。このようなポリイソシアネート(B)としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、又は脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、芳香族ポリイソシアネート、又はその誘導体が好適に用いられる。これらポリイソシアネート(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
上記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4'-トルエンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物のような芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエンのような芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;が挙げられる。
【0037】
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4’-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、1,3-キシリレンジイソシアネート又は1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0038】
ポリイソシアネート(B)は、前述の芳香族、又は脂肪族のポリイソシアネートから誘導される誘導体であってもよい。このような誘導体としては、例えば、芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートと公知のポリオールとの反応生成物が挙げられる。
上記公知のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3'-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールのような分子量200未満の低分子ポリオール;ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオールのようなポリオール;が挙げられる。このような公知のポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートと公知のポリオールとの反応時におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは2以上である。
【0039】
ポリイソシアネート(B)として好ましくは、ポリイソシアネートとポリプロピレングリコールとの反応生成物であり、より好ましくは、芳香族ポリイソシアネートとポリプロピレングリコールとの反応生成物である。ポリイソシアネートが芳香族骨格を含むことにより熱耐性が向上し、ヒートシール部折り曲げによる浮き発生を抑制することができるため好ましい。ポリプロピレングリコールの数平均分子量は、好ましくは200~5,000である。
【0040】
ポリイソシアネート(B)におけるイソシアネート基含有率は、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは8~25質量%である。上記範囲内にあることで、ガスバリア性の高いフィルム基材を用いた場合に、より外観の良好な積層体を形成することができる。イソシアネート基の含有率(質量%)は塩酸による滴定で求めることができる。
【0041】
[接着層の形成]
上述のとおり、本発明における接着層は、ポリオール(A1)及び/又はポリオール(A2)と、ポリイソシアネート(B)との硬化物を含むものであって、ポリオール(A1)と触媒とを含む層(X)上に、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(B)の混合液を塗布し、第2の基材を接触させ圧着させ、エージングすることで形成することができる。混合液が無溶剤型であると、本発明の速硬化且つ印刷層の隠蔽性低下といった本発明の効果が顕著となる。
上記混合液は、ポリオール(A2)とポリイソシアネート(B)を公知の方法で混合し撹拌することで製造できる。混合液中のイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは1.2~3.0であり、より好ましくは1.5~2.5である。また、ポリイソシアネート(B)の含有率は、接着性能の観点から、ポリオール(A2)を基準として、好ましくは40~300質量%、より好ましくは70~250質量%である。上記得られた混合液を、例えばノンソルラミネーターを用いて基材上に塗工し、接着層を形成することができる。混合液の塗布量は、好ましくは1.0~4.0g/m2程度である。
【0042】
[その他成分]
前記接着層は、包装体に要求される各種物性を満たすために、ポリオール(A1)(A2)及びポリイソシアネート(B)以外のその他成分を含有してもよい。これらのその他成分は、ポリオール又はポリイソシアネートのいずれに配合してもよいし、ポリオールとポリイソシアネートとを配合する際に添加してもよい。これらのその他成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(シランカップリング剤)
接着層は基材に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。
シランカップリング剤の含有量は、ポリオール(A2)を基準として、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~3質量%である。上記範囲とすることで、金属に対する接着強度を向上することができる。
【0044】
(リン酸又はリン酸誘導体)
接着層は、基材に対する接着強度を向上させる観点から、リン酸又はリン酸誘導体を含有することができる。前記リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸のようなリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸のような縮合リン酸類;が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、例えば、上述のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化したものが挙げられる。該アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリンのような脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールのような芳香族アルコール;が挙げられる。
リン酸又はその誘導体の含有量は、接着層の質量を基準として、好ましくは0.001~10質量%、より好ましくは0.005~5質量%、特に好ましくは0.01~1質量%である。
【0045】
(レベリング剤又は消泡剤)
接着層は、積層体の外観を向上させるため、さらにレベリング剤又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物が挙げられる。
【0046】
(その他の添加剤)
接着層は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤が挙げられる。
【0047】
<軟包装用積層体の製造>
本発明における軟包装用積層体は、第1の基材、印刷層、ポリオールとポリイソシアネートとの硬化物を含む接着層、及び第2の基材をこの順に備えるものであって、下記工程1、及び工程2を有する製造方法により製造されるものであり、好ましくは、工程1の前に、下記工程0を含み、工程0、工程1、及び工程2がインラインで行われることを特徴とする製造方法により製造されるものである。
工程0:第1の基材上に印刷層を形成して、印刷層が設けられた第1の基材を得る工程
工程1:印刷層が設けられた第1の基材の印刷層上に、ポリオール(A1)と触媒とを含む層(X)を形成する工程
工程2:前記層(X)上に、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(B)の混合液を塗布し、第2の基材と接触させ圧着する工程
【0048】
工程0~工程2を全てインラインとすることで、印刷からラミネートまでを一貫して行うことができるだけでなく、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(B)の混合液が無溶剤型であっても、ポットライフを悪化させることなく接着剤の硬化速度を速めることができるため、エージング時間を短縮でき、軟包装用積層体の生産効率を高めることができる。さらに上記軟包装用積層体は、印刷層の隠蔽性低下が抑制されたものとなる。
【0049】
第1の基材は透明基材であり、例えば、従来公知のプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、包装材に一般的に使用されるものが挙げられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)のようなポリエステル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体が挙げられる。プラスチックフィルムの厚みは、好ましくは5~50μmである。
第1の基材は、このようなプラスチックフィルムが複数積層されたものであってもよいし、シリカ又はアルミナのような蒸着層を有する無色透明な蒸着フィルムであってもよい。
【0050】
第2の基材としては、上記第1の基材で挙げたプラスチックフィルムのほか、シーラント基材、金属蒸着フィルム、金属箔が挙げられる。
シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)又は高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。シーラント基材の厚みは、包装材への加工性やヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10~150μmである。
金属蒸着フィルムとしては例えばアルミニウム蒸着フィルムが挙げられ、金属箔としては例えばアルミニウム箔が挙げられる。
第2の基材は、このようなプラスチックフィルム、シーラント基材、金属蒸着フィルム、金属箔が複数積層されたものであってもよい。特に、第2の基材が金属蒸着フィルム及び金属箔からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む場合、本発明の製造方法を用いるとダーキング現象を抑制することができるため好ましい。
【0051】
印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者等の表示、その他等の表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様等の所望の任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、一般的に顔料や染料等の着色剤を含む印刷インキを用いて形成される。印刷層を形成する方法は特に制限されず、例えば、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法が挙げられる。印刷層の厚みは、好ましくは0.1~10μmである。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に指定がない場合は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0053】
〔数平均分子量(Mn)の測定方法〕
数平均分子量(Mn)は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて測定した。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0054】
〔酸価(AV)の測定方法〕
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。酸価は次の(式1)により求めた。(単位:mgKOH/g)。
(式1)酸価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0055】
〔水酸基価(OHV)の測定方法〕
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mLとした溶液)を正確に5mL加え、約1時間撹拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。水酸基価は次の(式2)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
(式2)水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0056】
〔NCO含有率(質量%)の測定方法〕
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mL、及びトルエン10mLを加えて溶解した。次に、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)により求めた。
(式3):NCO(質量%)={(b-a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0057】
<ポリオール(A1)の製造>
(製造例1)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジエチレングリコール(以下、DEGという)を217部、イソフタル酸(以下、IPA)を310.3部、エチレングリコール(以下、EGという)を47.0部、アジピン酸(以下、ADAという)を117.2部仕込み、窒素気流下で攪拌しながら235℃まで昇温した。酸価が25.0mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価2.5mgKOH/g、水酸基価9.3mgKOH/g、数平均分子量約12,000のポリエステルポリオール-1(A1-1)を得た。
【0058】
(製造例2)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、IPAを291部、テレフタル酸(以下、TPAという)を35.8部、ADAを98.5部、EGを59.5部、1,6-ヘキサンジオール(以下、1,6-HDという)を103.6部仕込み、窒素気流下で攪拌しながら240℃まで昇温した。酸価が20.0mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価4.0mgKOH/g、水酸基価18mgKOH/g、数平均分子量約5,000のポリエステルポリオール-2(A1-2)を得た。
【0059】
(製造例3)
ポリエステルポリオール-3(A1-3)として、東洋紡(株)製バイロン630(酸価1.0mgKOH/g、水酸基価5mgKOH/g、数平均分子量約23,000)を使用した。
【0060】
<層(X)形成用組成物の製造>
表1に記載した配合(質量部)に従い、ポリオール(A1)を酢酸エチルで希釈して、固形分濃度10%に調整した溶液を作製し、B型粘度計を用いて25℃での粘度(mPa・s)を測定した。さらに表1に記載した配合(質量部)に従い触媒を混合して層(X)形成用の組成物(X-1)~(X-8)を得た。(X-9)は触媒を酢酸エチルで希釈した組成物である。
【0061】
【0062】
表1中の略称を以下に示す。
DOTL:ジオクチルスズジラウラート
DBTDL:ジブチルスズジラウラート
DBU:ジアザビシクロウンデセン
【0063】
<ポリオール(A2)の製造>
(製造例4)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコールを34部、数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコールを19部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオールを34部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート13部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で5時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認して、数平均分子量1,500のポリエーテルウレタンポリオール(A2-1)を得た。
【0064】
(製造例5)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ジエチレングリコールを46.6部、アジピン酸を53.4部仕込み、窒素気流下で撹拌しながら220℃まで昇温した。酸価が10mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.3mgKOH/g、水酸基価56mgKOH/g、数平均分子量約2,000のポリエステルポリオール-4を得た。
次いで、得られたポリエステルポリオール-4を85部、数平均分子量約400のポリプロピレングリコールを15部の割合で配合し、溶液が均一になるまで撹拌して、ポリエステルポリオールとポリプロピレングリコールとからなるポリオール(A2-2)を得た。
【0065】
(製造例6)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコールを7.3部、ネオペンチルグリコールを36.7部、イソフタル酸を21部、アジピン酸を34.4部仕込み、窒素気流下で攪拌しながら240℃まで昇温した。酸価が5.0mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.3mgKOH/g、水酸基価121mgKOH/g、数平均分子量約2,000のポリエステルポリオール-5(A2-3)を得た。
【0066】
【0067】
表2中の略称を以下に示す。
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール
PPG-400-3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0068】
<ポリイソシアネート(B)の製造>
(製造例7)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコールを6部、数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコールを32部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオールを4部、アジピン酸と1,2-プロパンジオールからなる数平均分子量約2,000のポリエステルポリオール-6を10部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを40部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、ポリイソシアネート樹脂を得た。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネートのビゥレット体を8部追加し、70℃以下で溶液が均一になるまで撹拌して、イソシアネート基含有率が10.7%のポリイソシアネート(B-1)を得た。
【0069】
(製造例8)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコールを20部、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの混合物(以下、液状MDI)を55部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、ついでポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(以下、クルードMDI)を25部追加し、70℃以下で溶液が均一になるまで撹拌して、イソシアネート基含有率が21.5%のポリイソシアネート(B-2)を得た。
【0070】
(製造例9)
HDIビゥレットを25部、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(以下、HDIヌレート)を50部、イソホロンジイソシアネートのヌレート体(以下、IPDIヌレート)を25部反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら50℃~60℃で加熱、攪拌して、イソシアネート基含有率が20.4%のポリイソシアネート(B-3)を得た。
【0071】
【0072】
表3中の略称を以下に示す。
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール
PPG-400-3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
液状MDI:2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物
HDIビゥレット:ヘキサメチレンジイソシアネートのビゥレット体
HDIヌレート:ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体
IPDIヌレート:イソホロンジイソシアネートのヌレート体
クルードMDI:ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物
【0073】
<混合液の製造>
ポリオール(A2)、ポリイソシアネート(B)を表4に記載の配合量で混合し、接着剤混合液1~3を得た。
【0074】
【0075】
<積層体の作製>
[実施例1]
印刷インキ(ink1:東洋インキ(株)製、リオアルファR631白)を、酢酸エチル/IPA混合溶剤(質量比70/30)を用いて、25℃、ザーンカップ#3の粘度が16秒になるように希釈した。厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「エステルフィルムE5102」、以下、PET)上に、希釈した印刷インキを、版深35μmのベタ版を備えたグラビア校正機を用いて、印刷速度150m/分で印刷した後、70℃で乾燥した。印刷層の厚みは0.5~1μmの範囲内とした。
次いで、得られた積層体(第1の基材)の印刷層上に、ドライラミネーターを用いて、層(X)形成用組成物(X-1)を塗工速度150m/分で塗布し、80℃オーブンを通過して乾燥させて、層(X)を形成した。層(X)の厚みは0.1μmであった。
次いで、前記層(X)上に、無溶剤ラミネーターを用いて、ポリオール(A2)及びポリイソシアネート(B)の混合液1を、塗布量2.0g/m2となるように調整し、塗工速度150m/分で塗布した。その後、厚み25μmアルミ蒸着CPPフィルム(東レ社製「2203」、以下、VMCPP)のアルミ蒸着面と、上記得られた積層体の混合液塗布面とを貼り合わせ、PET/印刷層/接着剤層/VMCPPの構成である積層体を得た。
【0076】
[実施例2~15]
表5に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
なお実施例14は、印刷インキとして(ink2:東洋インキ(株)製、LPバイオ R631白)を用いたものであり、実施例15は、第2の基材として、厚み7μmのアルミニウム(AL)箔を用いたものである。
【0077】
[比較例1~3]
表5に示す内容に変更した以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
なお比較例1は、層(X)を形成せずに、第1の基材上に直接混合液を塗布したものであり、比較例2は、触媒を酢酸エチルで希釈したポリオール(A1)を含まない(X-9)を印刷層上に塗布したものである。
比較例3は、まず実施例1と同様にして、PET上に印刷層を形成した。得られた積層体の印刷層上に、混合液1を、実施例1と同様にして塗布した。一方、VMCPP上に、(X-1)を、実施例1と同様にして塗布・乾燥して層(X)を形成した。次いで、混合液塗布面と、層(X)面とを貼り合わせ、PET/印刷層/接着剤層/VMCPPの構成である積層体を得た。
【0078】
<積層体の評価>
得られた積層体について以下の評価を行った。結果を表5に示す
【0079】
〔硬化速度〕
得られた積層体を、接着剤層とVMCPPとの間で剥離し、FT-IRを用いてラミネート直後の接着剤層のイソシアネートピーク(2270cm-1付近)高さを測定した。その後、積層体を30℃下で6時間エージングを行い、エージング後の積層体を同様に接着剤層とVMCPP間で剥離し、FT-IRを用いて接着剤層のイソシアネートピーク高さを測定した。CH3に由来する2980cm-1付近のピークを基準ピークとし、以下の式によりイソシアネート残存率(%)を計算した。
【0080】
【0081】
得られたイソシアネート残存率に基づいて、以下の基準で硬化速度を評価した。
A:イソシアネート残存率が20%未満(次工程移行可能:良好)
B:イソシアネート残存率が20%以上、30%未満(次工程移行可能:使用可能)
C:イソシアネート残存率が30%以上、40%未満(次工程移行不可:使用不可)
D:イソシアネート残存率が40%以上(次工程移行不可:不良)
【0082】
〔ダーキング〕
得られた積層体の白印刷部分について、X-Riteを用いてPET側からの反射濃度(L値)を測定した。数値が大きいほど白色度が高く、ダーキング現象が抑制されていることを示す。測定値から、ダーキングの状態を以下の基準で判断した。
A:L値が70以上(良好)
B:L値が65以上、70未満(使用可能)
C:L値が60以上、65未満(使用不可)
D:L値が60未満(不良)
【0083】
〔接着強度〕
得られた積層体を長さ300mm幅15mmに切り取り試験片とした。インストロン型引張試験機を使用し、25℃の環境下にて、剥離速度300mm/分の剥離速度で引張り、PET/VMPET間のT型剥離強度(N/15mm)を測定した。この試験を5回行い、その平均値を求め以下の基準にて評価した。
A:剥離強度が1.5N/15mm以上(良好)
B:剥離強度が1.0N/15mm以上、1.5N/15mm未満(使用可能)
C:剥離強度が0.5N/15mm以上、1.0N/15mm未満(使用不可)
D:剥離強度が0.5N/15mm未満(不良)
【0084】
【0085】
評価結果によれば、触媒とポリオール(A1)とを含む層(X)上に、ポリオール(A2)とポリイソシアネート(B)とを含む混合液を塗布することにより得られた軟包装用積層体は、触媒効果による硬化速度の促進と、印刷層に接着剤中の低分子量成分が染み込むことで発生しやすい印刷層の隠蔽性低下(ダーキング現象)の抑制効果を示した。
特に実施例3のように混合液に反応性の遅い脂肪族イソシアネートを用いた系においても、硬化速度の促進効果が発現しており、本発明の製造方法は速硬化の観点で非常に有用である。また、触媒層(X)に、数平均分子量が5,000以上のポリオール(A1)を用いた実施例1~12、14、15は、ダーキング現象の抑制に優れていた。
一方、比較例1~3は、無溶剤型の混合液に含まれる低分子量成分が印刷層に浸透することを防ぐことができず、いずれもダーキング現象が発生した。