(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】移動空間提供システム
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20240717BHJP
G06Q 10/10 20230101ALI20240717BHJP
【FI】
B60R11/02 S
G06Q10/10
(21)【出願番号】P 2020119958
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】日比野 清栄
(72)【発明者】
【氏名】山内 克仁
(72)【発明者】
【氏名】林 伸樹
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-137203(JP,A)
【文献】特開2005-095408(JP,A)
【文献】特開2009-040368(JP,A)
【文献】特開2008-126818(JP,A)
【文献】特開2020-107220(JP,A)
【文献】特開2016-192050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
G06Q 10/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上を走行すると共に、複数のユーザーが滞在するように構成された内部空間と、前記内部空間に配置され、前記複数のユーザーが着席する複数のシートと、を有する移動体と、
前記内部空間内で前記複数のユーザーそれぞれに割り当てられたパーソナル空間を制御するように構成された処理装置と、
を備え、
前記複数のシートのそれぞれは、クッション用加速度センサが配置されたシートクッションと、バック用加速度センサが配置されたシートバックと、を有し、
前記処理装置は、
前記複数のユーザーそれぞれの姿勢に関する情報及び前記複数のユーザーそれぞれの生体情報の少なくとも一方を含む推定用情報を取得するように構成された取得部と、
前記取得部が取得した前記推定用情報に基づいて前記複数のユーザーそれぞれの疲労レベルを推定するように構成された推定部と、
前記推定部が推定した前記疲労レベルに基づいて、前記複数のユーザーそれぞれの前記パーソナル空間の音響モードを切り替えるように構成された空間切替部と、
を有し、
前記取得部は、前記複数のユーザーそれぞれの姿勢に関する情報として、前記クッション用加速度センサ及び前記バック用加速度センサの出力を取得し、
前記推定部は、
前記クッション用加速度センサ及び前記バック用加速度センサの出力に基づく入力データと、あるユーザーの姿勢に係る情報に基づく教師データとによる機械学習により構築された学習モデルを用いて、前記複数のユーザーそれぞれの疲労レベルを推定するように構成される、移動空間提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載の移動空間提供システムであって、
前記空間切替部は、あるユーザーの前記疲労レベルが予め定められた範囲にあるとき、このユーザーの前記パーソナル空間を、周囲の音が低減される音響モードに切り替えるように構成される、移動空間提供システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の移動空間提供システムであって、
前記空間切替部は、あるユーザーの前記疲労レベルが予め定められた範囲にあるとき、このユーザーの前記パーソナル空間を、このユーザーをリラックスさせる音又は音楽が提供される音響モードに切り替えるように構成される、移動空間提供システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移動空間提供システムであって、
前記空間切替部は、あるユーザーの前記疲労レベルが予め定められた範囲にあるとき、このユーザーの前記パーソナル空間を、前記移動体の目的地又は現在地に関するガイド音声が提供される音響モードに切り替えるように構成される、移動空間提供システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の移動空間提供システムであって、
前記推定部は、前記取得部が取得した前記推定用情報に基づいて前記複数のユーザーそれぞれの尿意又は便意の有無を推定するように構成され、
前記空間切替部は、あるユーザーの尿意又は便意が前記推定部によって有ると推定されたとき、このユーザーの前記パーソナル空間に、このユーザーを集中させるコンテンツを提供するように構成される、移動空間提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動空間提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の位置情報と、ユーザーの行動パターンとに基づいて、サービス情報を提供する情報配信システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のシステムは、個別のユーザーに対してサービスを提供することはできるが、複数のユーザーに対するサービスの提供は想定されていない。
【0005】
本開示の一局面は、複数のユーザーが滞在する移動空間に付加価値を与えられる移動空間提供システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、地上を走行すると共に、複数のユーザーが滞在するように構成された内部空間(21)を有する移動体(2)と、内部空間(21)内で複数のユーザーそれぞれに割り当てられたパーソナル空間を制御するように構成された処理装置(3)と、を備える移動空間提供システム(1)である。
【0007】
処理装置(3)は、複数のユーザーそれぞれの姿勢に関する情報及び複数のユーザーそれぞれの生体情報の少なくとも一方を含む推定用情報を取得するように構成された取得部(31)と、取得部(31)が取得した推定用情報に基づいて複数のユーザーそれぞれの疲労レベルを推定するように構成された推定部(32)と、推定部(32)が推定した疲労レベルに基づいて、複数のユーザーそれぞれのパーソナル空間の音響モードを切り替えるように構成された空間切替部(33)と、を有する。
【0008】
このような構成によれば、移動体(2)に滞在している複数のユーザーそれぞれの疲労の大きさ(つまり疲労レベル)に合わせた音響モードを設定することができる。そのため、疲労しているユーザーへの疲労回復措置、疲労していないユーザーへのコンテンツ提供等のサービスによって、複数のユーザーが滞在する移動空間に付加価値を与えられる。
【0009】
本開示の一態様では、空間切替部(33)は、あるユーザーの疲労レベルが予め定められた範囲にあるとき、このユーザーのパーソナル空間を、周囲の音が低減される音響モードに切り替えるように構成されてもよい。このような構成によれば、疲労の大きいユーザーを睡眠に誘導して、疲労の回復を図ることができる。
【0010】
本開示の一態様では、空間切替部(33)は、あるユーザーの疲労レベルが予め定められた範囲にあるとき、このユーザーのパーソナル空間を、このユーザーをリラックスさせる音又は音楽が提供される音響モードに切り替えるように構成されてもよい。このような構成によれば、疲労が蓄積し始めているユーザーの疲労の増大を抑制することができる。
【0011】
本開示の一態様では、空間切替部(33)は、あるユーザーの疲労レベルが予め定められた範囲にあるとき、このユーザーのパーソナル空間を、移動体(2)の目的地又は現在地に関するガイド音声が提供される音響モードに切り替えるように構成されてもよい。このような構成によれば、疲労の少ないユーザーに対して有益となるガイド情報が提供されるので、ユーザーの満足度を高めることができる。
【0012】
本開示の一態様では、推定部(32)は、取得部(31)が取得した推定用情報に基づいて複数のユーザーそれぞれの尿意又は便意の有無を推定するように構成されてもよい。空間切替部(33)は、あるユーザーの尿意又は便意が推定部(32)によって有ると推定されたとき、このユーザーのパーソナル空間に、このユーザーを集中させるコンテンツを提供するように構成されてもよい。このような構成によれば、尿意又は便意を有するユーザーの意識を尿意又は便意から逸らすことができる。
【0013】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態における移動空間提供システムを示す模式的な構成図である。
【
図4】
図4は、シートにおけるユーザーの姿勢と加速度センサの出力との対応について説明する模式図である。
【
図5】
図5は、
図1の処理装置が実行する処理を概略的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す移動空間提供システム1は、観光ツアー(つまり団体旅行)に参加している複数のユーザーに観光ガイドを提供しつつ、ユーザーを目的地(つまり観光地)へ運ぶシステムである。移動空間提供システム1は、移動体2と、処理装置3とを備える。
【0016】
<移動体>
移動体2は、動力により地上を自走可能な乗物である。移動体2は、
図2に示すように、複数のユーザーが同時に滞在するように構成された内部空間21と、内部空間21に配置され、複数のユーザーが着席する複数のシート25を有する。移動体2の具体例としては、観光バスが挙げられる。
【0017】
また、
図1に示すように、移動体2は、検出装置22と、空間制御装置23とを有する。移動体2は、目的地まで自動走行してもよいし、ユーザー以外のドライバーによって手動で目的地まで運転されもよい。
【0018】
(検出装置)
検出装置22は、移動体2内(つまり内部空間21)における複数のユーザーそれぞれの姿勢に関する情報及び生体情報を検出するように構成されている。
【0019】
検出装置22は、
図3に示すように、第1クッション用加速度センサ22A、第2クッション用加速度センサ22B、及びバック用加速度センサ22Cと、カメラ22Dと、ウェアラブルデバイス22Eとを備える。
【0020】
第1クッション用加速度センサ22A、第2クッション用加速度センサ22B、及びバック用加速度センサ22Cは、それぞれ、3軸加速度センサであり、3次元の加速度データを出力可能に構成されている。
【0021】
第1クッション用加速度センサ22A、第2クッション用加速度センサ22B、及びバック用加速度センサ22Cは、内部空間21に配置された複数のシート25それぞれに配置されている。
【0022】
第1クッション用加速度センサ22A、第2クッション用加速度センサ22B、及びバック用加速度センサ22Cは、必要に応じて、3軸の角速度(つまり、ロール角速度、ピッチ角速度、及びヨー角速度)の検出機能を有してもよい。
【0023】
第1クッション用加速度センサ22A及び第2クッション用加速度センサ22Bは、シートクッション251の幅方向に互いに離間して、つまり左右方向に並んでシート25のシートクッション251の内部に埋められている。
【0024】
具体的には、第1クッション用加速度センサ22Aは、シートクッション251の幅方向中心よりも左側に配置されている。第2クッション用加速度センサ22Bは、シートクッション251の幅方向中心よりも右側に配置されている。第1クッション用加速度センサ22A及び第2クッション用加速度センサ22Bは、それぞれ、ユーザーのヒップポイント(つまり大腿骨の最外部)と重なるように配置されている。
【0025】
バック用加速度センサ22Cは、シート25のシートバック252の内部に埋められている。バック用加速度センサ22Cは、シートバック252の幅方向中央に配置されている。
【0026】
カメラ22Dは、シート25に着席したユーザーの姿勢を撮影する3次元カメラである。カメラ22Dは、ユーザーの体の向きを画像として取得し、処理装置3に出力する。検出装置22は、全てのユーザーの姿勢を撮影する1つのカメラ22Dを有してもよいし、1又は複数のユーザーの姿勢をそれぞれ撮影する複数のカメラ22Dを有してもよい。
【0027】
ウェアラブルデバイス22Eは、例えばリストバンド型の電子機器であり、複数のユーザーがそれぞれ装着する。ウェアラブルデバイス22Eは、装着者の脈拍、心拍、体温、発汗量等の生体情報を検出可能なセンサを内蔵している。
【0028】
(空間制御装置)
図1に示す空間制御装置23は、内部空間21内の複数のシート25それぞれを取り囲むパーソナル空間S(
図2参照)を制御するように構成されている。
【0029】
パーソナル空間Sは、シート25に着席した1人のユーザーに割り当てられた空間であり、移動体2が目的地に到着するまでユーザーが過ごす空間である。内部空間21には、シート25の数と同じ数のパーソナル空間Sが存在している。
【0030】
また、1つのパーソナル空間Sは、隣接するパーソナル空間Sと連通している。つまり、パーソナル空間Sは、開放された空間である。ただし、パーソナル空間Sの一部は、パーティション等によって物理的に仕切られていてもよい。
【0031】
空間制御装置23は、パーソナル空間Sの音響モードを切り替える機能と、パーソナル空間S内でシート25を移動又は変形させる機能と、パーソナル空間Sにコンテンツを提供する機能とを有する。
【0032】
パーソナル空間Sの音響モードは、例えば、
図2に示す移動体2に取り付けられたスピーカ26、又はシート25に内蔵されたスピーカ27A,27Bによって切り替えられる。具体的には、空間制御装置23は、各スピーカから出力される音、音声、又は音楽を選択することで、音響モードを切り替える。
【0033】
また、空間制御装置23は、内部空間21の床に対する、回転、リクライニング、リフト等によるシート25の姿勢の調整を行うことによって、シート25を移動又は変形させる。
【0034】
さらに、空間制御装置23は、シート25に着席したユーザーに映像、音声等によって構成されるコンテンツを提供する。コンテンツは、パーソナル空間Sに配置されるか、又はユーザーに装着されたディスプレイ、スピーカ等の機器によって提供される。
【0035】
<処理装置>
処理装置3は、内部空間21内で複数のユーザーそれぞれに割り当てられたパーソナル空間Sを制御するように構成されている。処理装置3は、取得部31と、推定部32と、空間切替部33とを有する。
【0036】
処理装置3は、例えばプロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。処理装置3は、移動体2の内部に設置されている。ただし、処理装置3の一部は、移動体2の外部(つまり地上設備)に設置されてもよい。
【0037】
(取得部)
取得部31は、検出装置22が検出した、複数のユーザーそれぞれの姿勢に関する情報及び複数のユーザーそれぞれの生体情報の少なくとも一方を含む推定用情報を取得するように構成されている。取得部31は、推定用情報を推定部32に出力する。
【0038】
(推定部)
推定部32は、推定用情報に基づいて、複数のユーザーそれぞれの疲労レベルを推定するように構成されている。
【0039】
推定部32は、取得部31が取得したユーザーの姿勢に関する情報に基づいて、ユーザーの姿勢を推定する。さらに、推定部32は、推定した姿勢と取得部31が取得した生体情報とを組み合わせてユーザーそれぞれの疲労レベルを推定する。
【0040】
以下、推定部32によるユーザーの姿勢の推定手順の一例を説明する。この例では、推定部32は、機械学習により構築された学習モデルを用いて各加速度センサの出力からユーザーの姿勢を推定する。
【0041】
この学習モデルは、第1クッション用加速度センサ22A、第2クッション用加速度センサ22B、及びバック用加速度センサ22Cの出力に基づく入力データと、ユーザーの姿勢に係る情報に基づく教師データ(つまりラベルデータ)とによる機械学習により構築される。
【0042】
学習モデルは、教師あり機械学習によって構築される分類器(つまり分類モデル)であり、例えば多層ニューラルネットワークで構成される。多層ニューラルネットワークの例としては、例えば、CNN(Convolution Neural Network)、DNN(Deep Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)等が挙げられる。
【0043】
なお、学習モデルは、多層ニューラルネットに限定されず、ニューラルネットワーク以外の学習モデルが用いられてもよい。例えば、SVC(サポートベクターマシンによるクラス分類)、ランダムフォレスト等のアルゴリズムを用いて学習モデルが構築されてもよい。
【0044】
学習モデルの機械学習では、入力データとして、各加速度センサの出力(つまり、3次元の加速度、又は3次元の加速度に3次元の角速度を加えた加速度データ)を用いる。また、教師データとして、ユーザーの姿勢パターンを示す一定数の姿勢ラベルを用いる。
【0045】
学習モデルを生成する学習ステップでは、多数のラベル付きデータを機械学習装置(図示省略)に分析させる。ラベル付きデータは、加速度データに、対応する姿勢ラベルを付けたデータである。機械学習装置は、多数のラベル付きデータから加速度データを複数のラベルに分類するための特徴量を学習し、学習モデルを構築する。
【0046】
学習モデルの構築は、機械学習装置を用いて行われる。機械学習装置によって構築された学習モデルは、処理装置3の記憶部に出力される。なお、機械学習装置は処理装置3に組み込まれていてもよい。
【0047】
図4に示すように、例えば、前傾の姿勢P1から、直立の姿勢P2にユーザーUの姿勢が遷移する場合、推定部32は、姿勢ラベルを教師データとした学習モデルに遷移時の各加速度センサの出力Oを入力し、「直立」という姿勢ラベルを入力データに付与する。これにより、「直立」というユーザーUの姿勢が推定される。
【0048】
一方で、推定部32は、カメラ22Dの映像に基づいてユーザーの姿勢を推定してもよい。さらに、推定部32は、上述した学習モデルによる姿勢の推定と、カメラ22Dの映像に基づく姿勢の推定とを組み合わせてもよい。つまり、推定部32は、2つの推定方法の組み合わせによる補完を行ってもよい。
【0049】
推定部32は、姿勢の推定後、推定した姿勢に対応する数値と生体情報に含まれる数値とに対する積分、平均等の演算に基づいて、少なくとも1つの第1ユーザー特徴量を算出する。第1ユーザー特徴量は、例えば、ユーザーの特定の方向への動き、ユーザーの特定の部位の動きの大きさ等を表すパラメータである。
【0050】
推定部32は、第1ユーザー特徴量ごとに予め設定された閾値を用いて、各ユーザーの疲労スコアを算出する。具体的には、推定部32は、第1ユーザー特徴量がその第1ユーザー特徴量に対して設定された閾値を超えたか判定し、閾値を超えた場合にユーザーの疲労スコアを増加させる。また、推定部32は、特定の第1ユーザー特徴量が閾値よりも小さい場合に疲労スコアを減少させてもよい。
【0051】
また、推定部32は、推定用情報に基づいて算出した第2ユーザー特徴量を用いて、複数のユーザーそれぞれの尿意又は便意の有無を推定する。第2ユーザー特徴量は、第1ユーザー特徴量とは異なる演算によって算出される。推定部32は、例えば、第2ユーザー特徴量が設定された閾値を超えた場合に、ユーザーが尿意又は便意を有すると推定する。
【0052】
推定部32は、算出した疲労スコアを疲労レベルの推定値として空間切替部33に出力する。また、推定部32は、推定した尿意又は便意の有無を空間切替部33に出力する。さらに、推定部32は、推定用情報に基づいてユーザーそれぞれの興奮スコア(つまり興奮レベルの推定値)を算出し、空間切替部33に出力してもよい。
【0053】
(空間切替部)
図1に示す空間切替部33は、推定部32が推定した疲労レベルに基づいて、複数のユーザーそれぞれのパーソナル空間の音響モードを切り替えるように構成されている。
【0054】
具体的には、空間切替部33は、複数のユーザーの1人である第1ユーザーの疲労レベルが予め定められた第1範囲にあるとき(例えば疲労レベルが第1閾値を超えたとき)、第1ユーザーのパーソナル空間を、睡眠モードに切り替える。
【0055】
睡眠モードでは、空間制御装置23によって第1ユーザーのパーソナル空間が周囲の音が低減される第1音響モードに切り替えられる。また、睡眠モードでは、空間制御装置23によって第1ユーザーが着席しているシート25が睡眠に適した姿勢に調整される。
【0056】
第1音響モードでは、空間制御装置23は、例えば周囲のノイズをキャンセルする音をスピーカから出力する。空間制御装置23は、眠りを誘う音又は音楽を出力してもよい。また、空間制御装置23は、物理的な消音装置等によってパーソナル空間の周囲の音を低減してもよい。
【0057】
睡眠モードでは、空間制御装置23は、移動体2が目的地に近づいた時点で、第1ユーザーを心地よく覚醒させるために、音又は音楽の出力、シート25の姿勢の変形等を行ってもよい。
【0058】
空間切替部33は、第1ユーザーの疲労レベルが、第1範囲よりも小さい予め定められた第2範囲にあるとき(例えば疲労レベルが第1閾値以下、かつ第2閾値を超えたとき)、第1ユーザーのパーソナル空間を、リラックスモードに切り替える。
【0059】
リラックスモードでは、空間制御装置23によって第1ユーザーのパーソナル空間が第1ユーザーをリラックスさせる音又は音楽が提供される第2音響モードに切り替えられる。また、リラックスモードでは、空間制御装置23によって第1ユーザーが着席しているシート25が第1ユーザーをリラックスさせる姿勢に調整される。
【0060】
第2音響モードでは、空間制御装置23は、例えば落ち着いた音楽をスピーカから出力する。また、空間制御装置23は、第2音響モードに合わせて、リラックス効果のある映像をパーソナル空間に提供してもよい。
【0061】
空間切替部33は、第1ユーザーの疲労レベルが、第2範囲よりも小さい予め定められた第3範囲にあるとき(例えば疲労レベルが第2閾値以下のとき)、第1ユーザーのパーソナル空間を、ガイドモードに切り替える。
【0062】
ガイドモードでは、空間制御装置23によって移動体2の目的地又は現在地に関するガイド音声が提供される第3音響モードに切り替えられる。第3音響モードでは、空間制御装置23は、音声ガイドをスピーカから出力する。
【0063】
音声ガイドは、空間制御装置23が生成する機械音声、又は移動体2に搭乗しているバスガイド(つまりコンダクター)の音声によって構成される。
【0064】
また、空間切替部33は、第1ユーザーの尿意又は便意が推定部32によって有ると推定されたとき、第1ユーザーのパーソナル空間に、空間制御装置23によって第1ユーザーを集中させるコンテンツを提供する。コンテンツの提供は、移動体2が目的地又は休憩地点に到着するまで継続される。
【0065】
上述したパーソナル空間におけるモードの切り替え及びコンテンツの提供は、内部空間21に滞在している第1ユーザー以外の残りのユーザーに対しても同様に実行される。つまり、空間切替部33によって、全てのパーソナル空間において個別にモードの切り替え及びコンテンツの提供が実行される。
【0066】
空間切替部33は、推定された疲労レベルに加えて、推定された興奮レベル(つまり推定部32が算出した興奮スコア)を用いて、パーソナル空間のモードを切り替えてもよい。例えば、空間切替部33は、疲労レベルが高く、かつ興奮レベルも高い場合には、睡眠モードに代えてリラックスモードにパーソナル空間を切り替えてもよい。
【0067】
[1-2.処理]
以下、
図5のフロー図を参照しつつ、処理装置3が実行する処理の一例について説明する。なお、以下の処理は、全てのユーザーに対して行われる。
【0068】
本処理では、処理装置3は、最初に、ユーザーの推定用情報を取得する(ステップS110)。次に、処理装置3は、推定用情報に基づいてユーザーの疲労レベルを推定する(ステップS120)。
【0069】
疲労レベルの推定後、処理装置3は、疲労レベルが第1範囲にあるか否か判定する(ステップS130)。疲労レベルが第1範囲にあるとき(S130:YES)、処理装置3は、パーソナル空間を睡眠モードに切り替え(ステップS140)、処理を終了する。
【0070】
疲労レベルが第1範囲にないとき(S130:NO)、処理装置3は、疲労レベルが第2範囲にあるか否か判定する(ステップS150)。疲労レベルが第2範囲にあるとき(S150:YES)、処理装置3は、パーソナル空間をリラックスモードに切り替え(ステップS160)、処理を終了する。
【0071】
疲労レベルが第1範囲及び第2範囲のどちらにもないとき(S150:NO)、処理装置3は、パーソナル空間をガイドモードに切り替え(ステップS170)、処理を終了する。
【0072】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)移動体2に滞在している複数のユーザーそれぞれの疲労の大きさ(つまり疲労レベル)に合わせた音響モードを設定することができる。そのため、疲労しているユーザーへの疲労回復措置、疲労していないユーザーへのコンテンツ提供等のサービスによって、複数のユーザーが滞在する移動空間に付加価値を与えられる。
【0073】
(1b)疲労レベルに基づいて周囲の音が低減される音響モードにパーソナル空間を切り替えることで、疲労の大きいユーザーを睡眠に誘導して、疲労の回復を図ることができる。
【0074】
(1c)疲労レベルに基づいてユーザーをリラックスさせる音又は音楽が提供される音響モードにパーソナル空間を切り替えることで、疲労が蓄積し始めているユーザーの疲労の増大を抑制することができる。
【0075】
(1d)疲労レベルに基づいてガイド音声が提供される音響モードにパーソナル空間を切り替えることで、疲労の少ないユーザーに有益となるガイド情報が提供される。そのため、ユーザーの満足度を高めることができる。
【0076】
(1e)尿意又は便意が有ると推定されたユーザーのパーソナル空間にコンテンツを提供することで、尿意又は便意を有するユーザーの意識を尿意又は便意から逸らすことができる。
【0077】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0078】
(2a)上記実施形態の移動空間提供システム1において、上述したパーソナル空間のモードは一例である。空間切替部33は、必ずしも上述した3つのモードにパーソナル空間を切り替えなくてもよい。また、空間切替部33は、上述したモード以外のモードにパーソナル空間を切り替えてもよい。
【0079】
(2b)上記実施形態の移動空間提供システム1において、推定部32は、必ずしもユーザーの尿意又は便意の有無を推定しなくてもよい。つまり、空間切替部33は、必ずしもユーザーの尿意又は便意の有無に基づいてコンテンツを提供しなくてもよい。
【0080】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0081】
1…移動空間提供システム、2…移動体、3…処理装置、21…内部空間、
22…検出装置、22A…第1クッション用加速度センサ、
22B…第2クッション用加速度センサ、22C…バック用加速度センサ、
22D…カメラ、22E…ウェアラブルデバイス、23…空間制御装置、
25…シート、26…スピーカ、27A,27B…スピーカ、31…取得部、
32…推定部、33…空間切替部、251…シートクッション、
252…シートバック。