(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、記録装置及び媒体搬送装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 11/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B41J11/00 A
(21)【出願番号】P 2020120148
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】品川 洋輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 太賀之
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-051929(JP,A)
【文献】特開2020-049893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する媒体搬送装置であって、
前記記録媒体を給送する給送ローラーと、
給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、
前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの個別または共通の駆動源であるモーターと、
前記モーターの動力を前記給送ローラーと搬送ローラーとのうち少なくとも一方に伝達する動力伝達機構と、
前記モーターを電流制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定し、当該測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
記録媒体を搬送する媒体搬送装置であって、
前記記録媒体を給送する給送ローラーと、
給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、
前記搬送ローラー以外の可動部材と、
モーターと、
前記モーターの動力を前記可動部材に伝達する動力伝達機構と、
前記モーターを電流制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定し、当該測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項3】
前記可動部材は、前記給送ローラーであり、
前記モーターは、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの共通の駆動源であることを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電流のリミット値を、前記動力伝達機構に最も荷重のかかる期間に設定し、当該期間では、前記電流のリミット値を、当該期間以外の期間に予め設定される第1リミット値よりも小さな第2リミット値に設定することを特徴とする請求項1
又は3に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記電流のリミット値を前記第2リミット値に設定する期間は、給送ローラーが駆動される給送期間のうち前記給送ローラーの最大速度域を含む期間であることを特徴とする請求項4に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記モーターの動力によって回転する前記搬送ローラーの回転動力を伝達する第1動力伝達機構と、
前記第1動力伝達機構の回転動力を前記可動部材に伝達する第2動力伝達機構と、
前記第1動力伝達機構と前記第2動力伝達機構とを接続状態と切断状態とに切り換える切換部とを備え、
前記制御部は、前記切換部による切り換え状態に応じて、前記可動部材が駆動される期間のうち少なくとも一部の期間に、前記電流のリミット値として、前記可動部材が駆動されない期間に設定される第1リミット値よりも小さな第2リミット値を設定することを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記可動部材は、前記給送ローラーであり、
前記制御部は、前記給送ローラーが駆動される給送期間に、前記電流のリミット値として、前記搬送ローラーが前記記録媒体を搬送する搬送期間に設定される第1リミット値よりも小さな第2リミット値を設定し、
前記切換部を前記接続状態から前記切断状態に切り換えることで、前記給送期間から前記搬送期間に切り換わると、前記電流のリミット値を、前記第2リミット値から前記第1リミット値に変更することを特徴とする請求項6に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
前記記録媒体に記録する記録ヘッドが設けられるキャリッジを待機位置にロックするロック位置と、前記キャリッジを待機位置から移動可能にロックを解除するロック解除位置との間を移動するロック部材を備え、
前記可動部材は、前記ロック部材であることを特徴とする請求項6に記載の媒体搬送装置。
【請求項9】
前記記録媒体のジャムの復旧操作を行うときに操作される操作部を備え、
前記切換部は、前記記録媒体に記録する記録ヘッドが設けられるキャリッジが前記記録媒体の搬送方向と交差する方向である走査方向に移動する走査経路上の所定の切換位置に移動することで切り換えられる構成であり、
前記可動部材は、前記キャリッジを待機位置にロックするロック位置と、前記キャリッジを待機位置から移動可能にロックを解除するロック解除位置との間を移動するロック部材であり、
前記モーターが前記記録媒体を搬送する回転方向に正転駆動するときに、前記ロック部材は前記ロック位置から前記ロック解除位置へ移動し、
前記制御部は、前記記録媒体のジャムを検出すると、前記キャリッジを前記待機位置に移動させて待機させるとともに、前記ロック部材を前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させ、その後、前記操作部による復旧操作を受け付けると、前記第2リミット値を設定したうえで、前記モーターを正転駆動させて前記ロック部材を前記ロック位置から前記ロック解除位置へ移動させることを特徴とする請求項6に記載の媒体搬送装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記キャリッジのロックが解除されると、前記リミット値を前記第2リミット値から前記第1リミット値に変更することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の媒体搬送装置。
【請求項11】
前記記録媒体を載置する複数の載置部と、
複数の前記載置部に載置される前記記録媒体をそれぞれ給送する複数の前記給送ローラーと、
前記モーターの動力を複数の前記給送ローラーに伝達する複数の給送機構とを備え、
前記制御部は、複数の前記給送ローラーが駆動される複数の前記給送期間に異なる値の前記第2リミット値を設定することを特徴とする請求項5または請求項7に記載の媒体搬送装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記給送ローラーにより給送される前記記録媒体の種類の情報である媒体種情報を取得し、前記媒体種情報に応じて異なる値の
前記第2リミット値を設定することを特徴とする請求項
4、5、7、11のいずれか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項13】
前記記録媒体に記録する記録ヘッドのノズルが開口するノズル面に接触することで前記ノズルを囲む閉空間を形成するキャップと、前記閉空間の空気を吸引して当該閉空間を負圧にするポンプとを有するメンテナンス装置を備え、
前記可動部材は、前記ポンプであることを特徴とする請求項2または請求項6に記載の媒体搬送装置。
【請求項14】
前記記録媒体に記録する記録ヘッドのノズルが開口するノズル面に接触することで前記ノズルを囲む閉空間を形成するキャップと、前記閉空間の空気を吸引して当該閉空間を負圧にするポンプとを有するメンテナンス装置を備え、
前記可動部材は、前記ポンプであり、
前記制御部は、前記モーターを前記記録媒体が搬送されるときの回転方向に正転駆動させて前記ポンプを駆動させることで、前記閉空間を負圧として前記ノズルから液体を強制的に吸引排出させるメンテナンスを行い、
前記モーターの前記測定電流値を測定するときは、前記キャップと前記ノズル面との間に閉空間を形成せずに前記ポンプを駆動させる空吸引を行う請求項2または請求項6に記載の媒体搬送装置。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の媒体搬送装置と、
前記記録媒体に記録する記録ヘッドとを備えることを特徴とする記録装置。
【請求項16】
記録媒体を給送する給送ローラーと、
給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、
前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの個別または共通の駆動源であるモーターと、
前記モーターの動力を前記給送ローラーと前記搬送ローラーとのうち少なくとも一方に伝達する動力伝達機構と、
前記モーターを駆動制御する制御部とを備える媒体搬送装置の制御方法であって、
前記制御部が、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定することと、
前記制御部が、前記測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定することとを備えることを特徴とする媒体搬送装置の制御方法。
【請求項17】
記録媒体を給送する給送ローラーと、
給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、
前記搬送ローラー以外の可動部材と、
モーターと、
前記モーターの動力を前記可動部材に伝達する動力伝達機構と、
前記モーターを駆動制御する制御部とを備える媒体搬送装置の制御方法であって、
前記制御部が、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定することと、
前記制御部が、前記測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定することとを備えることを特徴とする媒体搬送装置の制御方法。
【請求項18】
前記制御部は、前記電流のリミット値を、前記動力伝達機構に最も荷重のかかる期間に設定し、当該期間では、前記電流のリミット値を、当該期間以外の期間に予め設定される第1リミット値よりも小さな第2リミット値に設定することを特徴とする請求項2に記載の媒体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する搬送ローラーと、搬送ローラーを駆動するモーターとを備えた媒体搬送装置、記録装置及び媒体搬送装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、記録媒体を搬送する搬送ローラーと、搬送ローラーを駆動するモーターとを有する媒体搬送装置を備え、搬送ローラーにより搬送される記録媒体に記録する記録装置(画像書込装置)が開示されている。記録装置は、モーターの電流値と閾値とを比較し、記録媒体の搬送状態を判定する判定部を備える。判定部は、モーターの電流値が閾値を超える時間に基づいてジャムを検出する。ジャムが発生すると、モーターは強制的に停止される。例えば、ジャムの検出に使用される閾値には、想定されるモーターの最大負荷(想定最大負荷)に応じた値が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、想定最大負荷に応じた閾値(リミット値)は、例えば、記録装置の累積使用量に応じて変化する最大負荷の平均的な値に応じた値に設定される。記録装置の開梱直後等の使用開始初期段階では、動力伝達機構を構成する歯車等の部品の摺動抵抗や搬送ローラーの摺動抵抗が比較的小さく、モーターにかかる負荷が比較的小さい。そのため、モーターの動力を伝達する動力伝達機構に意図しない負荷がかかった場合、モーターの電流値が閾値を超えなくても、動力伝達機構を構成する歯車等の部品に過大なトルクがかかり部品が破損する可能性があるという課題がある。また、記録装置が備える媒体搬送装置には、モーターの動力で駆動される搬送ローラー以外の可動部材を備えるものがある。この場合、搬送ローラーに限らず可動部材が駆動されるときにも、意図しない負荷がモーターにかかったときにモーターの電流値が閾値を超えなくても、動力伝達機構を構成する部品に過大なトルクがかかり、同様に動力伝達機構を構成する歯車等の部品が破損する可能性があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する媒体搬送装置は、記録媒体を搬送する媒体搬送装置であって、前記記録媒体を給送する給送ローラーと、給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの個別または共通の駆動源であるモーターと、前記モーターの動力を前記給送ローラーと搬送ローラーとのうち少なくとも一方に伝達する動力伝達機構と、前記モーターを電流制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定し、当該測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定する。
【0006】
上記課題を解決する媒体搬送装置は、記録媒体を搬送する媒体搬送装置であって、前記記録媒体を給送する給送ローラーと、給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラー以外の可動部材と、モーターと、前記モーターの動力を前記可動部材に伝達する動力伝達機構と、前記モーターを電流制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定し、当該測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定する。
【0007】
上記課題を解決する記録装置は、上記媒体搬送装置と、前記記録媒体に記録する記録ヘッドとを備える。
上記課題を解決する媒体搬送装置の制御方法は、記録媒体を給送する給送ローラーと、給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの個別または共通の駆動源であるモーターと、前記モーターの動力を前記給送ローラーと前記搬送ローラーとのうち少なくとも一方に伝達する動力伝達機構と、前記モーターを駆動制御する制御部とを備える媒体搬送装置の制御方法であって、前記制御部が、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定することと、前記制御部が、前記測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定することとを備える。
【0008】
上記課題を解決する媒体搬送装置の制御方法は、記録媒体を給送する給送ローラーと、給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラー以外の可動部材と、モーターと、前記モーターの動力を前記可動部材に伝達する動力伝達機構と、前記モーターを駆動制御する制御部とを備える媒体搬送装置の制御方法であって、前記制御部が、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定することと、前記制御部が、前記測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定することとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】カバーを開けた状態にある記録装置を示す斜視図。
【
図3】筐体を取り外した状態にある記録装置を示す斜視図。
【
図4】筐体を取り外した状態にある記録装置を示す平面図。
【
図5】筐体を取り外した状態にある記録装置を示す平面図。
【
図15】第1切換部とキャリッジとを示す部分平面図。
【
図17】モーター電流のリミット値の設定方法を説明するグラフ。
【
図18】モーター電流のリミット値の設定方法を説明するグラフ。
【
図19】給送期間および搬送期間に設定されるリミット値を示すグラフ。
【
図20】復旧操作時に設定されるリミット値を示すグラフ。
【
図21】リミット値設定ルーチンを示すフローチャート。
【
図24】変更例における給送期間および搬送期間に設定されるリミット値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、記録装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1では、記録装置11が水平面上に置かれているものとして、互いに直交する3つの仮想軸を、X軸、Y軸及びZ軸とする。X軸は後述する記録ヘッドの走査方向と平行な仮想軸であり、Y軸は記録時の媒体の搬送方向と平行な仮想軸である。また、Z軸は鉛直方向Z1と平行な仮想軸である。X軸と平行な方向であって記録ヘッドが往復移動する2方向を走査方向Xという。また、走査方向Xは、搬送される記録媒体の幅方向と平行な方向であるので、幅方向Xともいう。Y軸と平行な一方向が、記録ヘッドが記録媒体に記録する記録位置における媒体の搬送方向を指す。なお、Y軸において記録装置11における後述する操作パネル15が配置される面側を前または前面とし、前とは反対側を後または背面ともいう。また、媒体Mが搬送される搬送経路は全域においてY軸と平行である訳ではなく、搬送経路上の媒体Mの位置に応じて搬送方向Y0は変化する。
【0011】
<記録装置の構成>
図1に示す記録装置11は、シリアル記録方式のインクジェットプリンターである。
図1に示すように、記録装置11は、装置本体12と、装置本体12の上部に開閉可能に設けられたカバー13とを備える。記録装置11は、全体として略直方体状をなしている。
【0012】
記録装置11は、前面に操作パネル15を備える。操作パネル15は、記録装置11に対する各種の指示を与えるときに操作される操作ボタンなどを含む操作部と、各種メニューおよび記録装置11の動作状況などを表示する表示部(いずれも図示略)とを有する。また、装置本体12の前面には、電源操作部16が設けられている。なお、表示部をタッチパネルで構成し、タッチパネルで操作される操作機能をもって操作部を構成することも可能である。
【0013】
また、装置本体12の前部右側には、少なくとも1つ(本実施形態では6つ)の液体供給源17(
図2参照)を収容する収容部18が設けられている。収容部18は、各液体供給源17と対応する少なくとも1つ(本実施形態では6つ)の窓部19を有する。窓部19は、透明もしくは半透明の樹脂製であり、ユーザーは窓部19を通じて液体供給源17に収容された液体の液面レベルを外部から視認可能である。
【0014】
また、記録装置11の後部上側には、給送カバー14が開閉可能に設けられている。給送カバー14は後端を中心に回動することで開閉される。装置本体12において
図1に示す閉位置にある給送カバー14の内方には、給送部20が収容されている。給送部20は、用紙等の媒体Mを給送する。給送部20は、媒体Mを載置するための載置部の一例としての給送トレイ22A(
図2参照)を有する。ユーザーは、給送カバー14が開位置にあるときに露出する給送トレイ22Aに記録媒体Mを載置する。
【0015】
装置本体12内には、給送トレイ22Aから給送された記録媒体M(以下、単に「媒体M」ともいう。)に記録を行うための記録部23が収容されている。記録部23は、例えば、シリアル記録方式である。記録装置11は、例えば、シリアルプリンターである。シリアル記録方式の記録部23は、走査方向Xに往復移動可能なキャリッジ24と、キャリッジ24に設けられる記録ヘッド25とを備える。記録ヘッド25が、搬送経路に沿って搬送される媒体Mと対向する面が、複数のノズル(図示略)が開口するノズル面となっている。液体供給源17と記録部23とは液体供給チューブ17A(
図5参照)を通じて接続されており、液体供給源17から液体供給チューブ17Aを通じて記録ヘッド25へ液体が供給される。記録ヘッド25は、キャリッジ24と共に移動しながら複数のノズルから媒体Mに向かって液体を吐出する。
【0016】
また、記録装置11の前面下部には、排出カバー26が開閉可能に設けられている。排出カバー26は下端を中心に回動する。装置本体12において
図1に示される閉位置にある排出カバー26の奥には、記録後の媒体Mを受けるために使用されるスタッカー(図示略)と、記録前の媒体Mが複数枚載置されるカセット27(
図2参照)が収容されている。
【0017】
記録装置11は、各種の制御を司る制御部100を備える。制御部100は、キャリッジ24および記録ヘッド25の制御や、媒体Mの搬送制御、操作パネル15の表示制御、電源制御などを司る。
【0018】
次に、
図2、
図3を参照して記録装置11の内部の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、装置本体12内には、メインフレーム30が幅方向Xに延設されている。メインフレーム30は、キャリッジ24を案内する一対のガイドレール30A(
図3も参照)を有する。一対のガイドレール30Aは、走査方向に沿って互いに平行に延びている。キャリッジ24は、一対のガイドレール30Aにより鉛直方向Z1に2箇所で走査方向Xに移動可能に支持される。キャリッジ24は、一対のガイドレール30Aに案内されることで走査方向に往復移動する。メインフレーム30とキャリッジ24との間には、キャリッジ24を走査方向Xに移動させる移動機構31が設けられている。移動機構31は、例えばベルト駆動方式であり、キャリッジ24の駆動源であるキャリッジモーター32と、走査方向Xに沿って張られた無端状のタイミングベルト33とを備える。キャリッジ24はタイミングベルト33の一部に固定されている。キャリッジモーター32が正逆回転することでタイミングベルト33を介してキャリッジ24は走査方向Xに往復移動する。なお、移動機構31は、ベルト駆動方式以外の公知のリニア駆動方式であってもよい。
【0019】
また、メインフレーム30には、走査方向に沿って延びるリニアエンコーダー34が設けられている。リニアエンコーダー34は、走査方向Xに沿って延びるリニアスケールと、キャリッジ24に取着された光学センサー(図示略)とを備える。光学センサーはリニアスケールの透光スケールを検出し、キャリッジ24の移動量と比例する数のパルスを含む検出パルス信号を出力する。
【0020】
収容部18には、その上部を開閉する供給カバー18aが設けられている。本例では、液体供給源17は、液体が収容されるタンクである。ユーザーは、窓部19を通じて残量が少なくなった液体供給源17があると、カバー13および供給カバー18aを開け、液体ボトルから液体供給源17の注入口(図示略)へ液体を注入する。なお、液体供給源17は、ユーザーが液体ボトルから液体を補充する液体補充方式のタンクに限らず、液体が収容される液体パック(例えばインクパック)または液体カートリッジ(例えばインクカートリッジ)でもよい。また、液体供給源17は、装置本体12に設けられるオフキャリッジタイプであるが、キャリッジ24に搭載されるオンキャリッジタイプでもよい。
【0021】
図3に示されるように、給送部20は、カセット27に積載された媒体Mを給送する第1給送部21と、給送トレイ22Aに載置された媒体Mを給送する第2給送部22とを備える。カセット27は、装置本体12のカバー26を開けた前面に開口する凹状の被挿着部に対してY軸と平行な方向に挿抜可能となっている。ユーザーは、カセット27を装置本体12から搬送方向Yに引き出して媒体Mのセットまたは媒体Mの交換などを行う。ユーザーは媒体Mがセットされたカセット27を被挿着部内に押し込む。
【0022】
給送トレイ22Aには、一対のエッジガイド22Bが設けられている。給送トレイ22Aに載置された媒体Mは、一対のエッジガイド22Bで挟むことで、幅方向Xに位置決めされる。給送部20は、給送トレイ22Aに載置された媒体Mを搬送経路に沿って搬送方向Y0に給送する。本実施形態の記録装置11は、媒体Mを載置する複数の載置部として、カセット27と給送トレイ22Aを備える。また、記録装置11は、複数の載置部に載置された媒体Mをそれぞれ給送する複数の給送部21,22を備える。なお、載置部として、ユーザーが1枚ずつ媒体Mを載置して使用される手差しトレイを設けたり、カセット27の下段に2つ目以降の1つまたは複数のカセットを増設したりしてもよい。載置部は、給送トレイ22A,カセット27、手差しトレイ、2つ目以降のカセットのうち少なくとも2つであり、給送部は少なくとも2つの載置部に載置された媒体Mをそれぞれ給送する少なくとも2つの給送部を備える。
【0023】
図3、
図4に示されるように、記録装置11は、給送部20から給送された媒体Mを搬送方向Y0に搬送する搬送部40を備える。搬送部40は、搬送ローラー対41と排出ローラー対42とを備える。搬送ローラー対41と排出ローラー対42は、搬送方向Y0にこの順番に配置されている。
【0024】
また、記録装置11は、記録部23が記録する部分の媒体Mを支持する媒体支持部材35を備える。媒体支持部材35は、幅方向Xに延びる長尺状の部材であり、最大幅の媒体Mの幅方向全域を支持可能な長さを有する。記録部23は、搬送された媒体Mのうち媒体支持部材35に支持された部分に記録を行う。
【0025】
記録装置11は、キャリッジ24が1回移動して記録ヘッド25が1パス分の記録を行う記録動作と、媒体Mを次の記録位置まで搬送する搬送動作とを交互に繰り返すことで、媒体Mに文字または画像が記録される。なお、記録部23は、ライン記録方式でもよい。ライン記録方式の記録部23は、最大幅の媒体の幅全域に一斉に液体を吐出可能な複数のノズルを有するラインヘッドよりなる記録ヘッド25を備える。一定速度で搬送される媒体Mに対して媒体Mの幅全域を吐出対象としてラインヘッドよりなる記録ヘッド25のノズルから液体を吐出するため、画像等の高速な記録が実現される。
【0026】
図3に二点鎖線で示すキャリッジ24は、記録が行われないときの待機位置であるホーム位置HPに位置する。媒体支持部材35に対して幅方向Xの隣の位置には、ホーム位置HPにあるキャリッジ24と対向する下方位置に、記録ヘッド25のメンテナンスを行うメンテナンス装置60が配置されている。メンテナンス装置60は、キャリッジ24がホーム位置HPにあるときの記録ヘッド25をキャッピングするキャップ61と、記録ヘッド25のノズル面を払拭するワイパー62とを備える。記録ヘッド25がキャップ61によりキャッピングされることで、記録ヘッド25のノズル内のインク等の液体の増粘や乾燥が抑制される。ノズル内の液体が増粘したり、ノズル内の液体に気泡があったり、ノズルが紙粉等の異物により塞がれたりした場合、ノズルの目詰まりによってノズルから液体を正常に吐出できない吐出不良が発生する。
【0027】
メンテナンス装置60は、この種の吐出不良を解消または予防するために、記録ヘッド25のノズルをクリーニングする。メンテナンス装置60は、キャップ61と連通するポンプ63を備える。メンテナンス装置60は、キャップ61が記録ヘッド25のノズル面にノズルを囲む状態で接触するキャッピング状態の下で、ポンプ63を駆動する。ポンプ63が駆動されると、ノズル面とキャップ61との間の閉空間に導入された負圧により、ノズルから液体が強制的に吸引排出される。ノズルから増粘した液体、気泡、紙粉等の異物が強制的に吸引排出されることで、ノズルは吐出不良から回復する。
【0028】
また、記録部23は、媒体Mに記録する記録動作の途中に定期的または不定期にホーム位置HPに移動し、記録ヘッド25の全てのノズルからキャップ61に向かって記録とは関係のない液滴を吐出する空吐出(「フラッシング」ともいう。)を行うことで、記録中の吐出不良を予防する。クリーニングおよび空吐出によってノズルから排出された液体(廃液)は、ポンプ63の駆動により廃液チューブを通じて廃液タンク69に送られる。
【0029】
図4、
図5に示されるように、記録装置11は、前述の第1給送部21と第2給送部22とを備える。第1給送部21は、カセット27に積載された媒体群のうち最上位の1枚の媒体Mを給送する給送ローラーの一例であるピックアップローラー211(
図6参照)を備える。第2給送部22は、給送トレイ22Aに載置された媒体Mを1枚ずつ給送する給送用ローラー221を備える。また、記録装置11は、前述の搬送ローラー対41および排出ローラー対42を備える。記録装置11は、搬送部40の駆動源であるモーターの一例としての搬送モーター46を備える。
【0030】
図4および
図5に示されるように、キャリッジ24はホーム位置HP(
図4)と、反ホーム位置AH(
図5)との間を走査方向Xに移動する。
図4に示されるキャリッジ24の位置がホーム位置HPであり、媒体Mに記録を行い非記録時の待機位置となる。
【0031】
図6に示されるように、記録装置11は、媒体Mを搬送する媒体搬送装置200を備える。媒体搬送装置200は、媒体Mを給送する給送ローラーの一例であるピックアップローラー211と、給送された媒体Mを記録ヘッド25に向けて搬送する搬送ローラーの一例としての搬送駆動ローラー43と、ピックアップローラー211と搬送駆動ローラー43との共通の駆動源である搬送モーター46とを備える。すなわち、搬送モーター46は、給送部20と搬送部40との共通の駆動源である。
【0032】
また、
図6に示されるように、媒体搬送装置200は、搬送モーター46を駆動源とする搬送駆動ローラー43以外の可動部材の一例として、ピックアップローラー211およびロック部材68を備える。ロック部材68は、ホーム位置HPにあるキャリッジ24と係合してキャリッジ24をホーム位置HPにロックする部材である。ロック部材68は、ホーム位置HPにあるキャリッジ24と係合するロック位置と、キャリッジ24と係合しないロック解除位置との間を移動する。
【0033】
また、
図6に示されるように、媒体搬送装置200は、搬送モーター46の動力をピックアップローラー211に伝達する歯車を含む動力伝達機構の一例として第1給送機構70と、搬送モーター46の動力をロック部材68に伝達する歯車を含む動力伝達機構の一例としてメンテナンス機構65とを備える。メンテナンス機構65は、メンテナンス装置60を駆動する歯車機構である。このため、メンテナンス機構65に伝達される動力で可動する、キャップ61、ワイパー62およびポンプ63もそれぞれ可動部材の一例を構成する。さらに、媒体搬送装置200は、搬送モーター46の動力を給送用ローラー221に伝達する歯車を含む動力伝達機構の一例として第2給送機構80を備え、給送用ローラー221も可動部材の一例である。
【0034】
搬送モーター46の動力によって搬送駆動ローラー43が回転する。この搬送駆動ローラー43の回転が、それぞれ第1給送機構70、第2給送機構80およびメンテナンス機構65を介して、ピックアップローラー211、給送用ローラー221およびロック部材68に伝達される。すなわち、搬送モーター46の動力に基づく搬送駆動ローラー43の回転動力が、第1給送機構70を介してピックアップローラー211に伝達されることで、ピックアップローラー211が回転する。また、搬送モーター46の動力に基づく搬送駆動ローラー43の回転動力が、第2給送機構80を介して給送用ローラー221に伝達されることで、給送用ローラー221が回転する。
【0035】
搬送モーター46の動力に基づく搬送駆動ローラー43の回転動力が、メンテナンス機構65を介して伝達されることで、キャップ61、ワイパー62およびロック部材68が昇降する。このとき、キャップ61、ワイパー62およびロック部材68は、搬送モーター46の駆動を受けて上昇及び下降する。また、ポンプ63は、搬送モーター46からの駆動を受けて、キャップ61を通じて空気を吸引するポンプ駆動を行う。なお、キャップ61およびワイパー62の昇降と、ロック部材68の昇降とを切り離し、それぞれ独立に昇降可能な構成としてもよい。例えば、ロック部材68は搬送モーター46の動力で昇降し、キャップ61およびワイパー62は搬送モーター46以外の専用のモーターなどの他のモーターの動力で昇降する構成としてもよい。また、キャップ61およびワイパー62を、下降方向に付勢されるスライダーに支持し、キャリッジ24がホーム位置HPに向かって移動する過程でスライダーと係合しスライダーを付勢力に抗して斜め上方へ移動させることで、キャップ61およびワイパー62を上昇させる機械的な昇降機構を採用してもよい。
【0036】
このように本実施形態の媒体搬送装置200は、
図6に示されるように、搬送モーター46を共通の駆動源とする複数の可動部材の一例として、ピックアップローラー211、給送用ローラー221、ロック部材68、キャップ61、ワイパー62およびポンプ63を備える。そして、媒体搬送装置200は、搬送モーター46の動力をこれらの可動部材に伝達する、第1給送機構70、第2給送機構80およびメンテナンス機構65を備える。搬送モーター46は、
図1に示される制御部100によって駆動制御される。
【0037】
図6に示されるように、媒体搬送装置200は、搬送モーター46の動力が伝達される動力伝達経路の接続と切断とを切り換える切換部の一例としての第1切換部90および第2切換部85を備える。第1切換部90は、キャリッジ24が走査経路上のホーム位置HP寄りに位置に設定された複数の切換位置に移動することで切り換えられる。第1切換部90は、搬送モーター46の動力を、搬送ローラー対41および排出ローラー対42以外の可動部材の一例であるピックアップローラー211またはロック部材68等へ伝達する動力伝達経路の切り換えを行う。第2切換部85は、キャリッジ24が走査経路上の反ホーム位置AH寄りに位置する所定の切換位置に移動することで切り換えられる。第2切換部85がキャリッジ24により押し操作されることで切り換えられると、搬送モーター46の動力を、図示しない上カセットに歯車84を介して動力が伝達される。上カセットは、カセット27の上方に位置し、上カセットには、複数枚の用紙を収容可能であり、カセット27とは独立して装置本体12に対して着脱可能となっている。また、一方側が未装着状態であっても、他方側が装着されていれば、当該装着されているカセットから媒体Mを送り出すことができるようになっている。
【0038】
上カセットは、第1給送部21による媒体Mの給送が可能な給送位置と、給送位置よりも媒体給送方向に沿う+Y軸方向に変位した非給送位置との間を移動可能に設けられており、搬送モーター46の動力あるいは手動による外力を受けて、給送位置と非給送位置とを移動するように構成されている。
【0039】
媒体搬送装置200は、搬送モーター46の動力によって回転する搬送駆動ローラー43の回転動力を伝達する第1動力伝達機構の一例である歯車群50と、歯車群50の回転動力をピックアップローラー211に伝達する第2動力伝達機構の一例としての第1給送機構70とを備える。第1切換部90は、歯車群50と第1給送機構70との接続状態と切断状態とを切り換える。
【0040】
図7に示されるピックアップローラー211は、装置本体12内の支持フレーム(図示略)に揺動軸71を中心に揺動可能に支持された揺動部材72の先端部に回転可能な状態で一対取着されている。揺動部材72には、揺動軸71と平行な幅方向Xに沿って延びる回転軸73が回転可能に支持されている。搬送モーター46の動力は、搬送駆動ローラー43、歯車群50および回転軸73を介して揺動部材72に設けられた歯車列74を介してピックアップローラー211に伝達される。歯車列74は隣同士で噛み合う状態で一列に配列された複数の歯車からなる。回転軸73は歯車列74を構成する最上流の歯車75と連結されている。回転軸73の端部には歯車群76を構成する歯車77が取着されている。
【0041】
また、揺動軸71の回動により揺動部材72の姿勢角が変更される。この揺動軸71は、ねじりばね等の弾性部材(図示略)の弾性力により、ピックアップローラー211を媒体Mに接触する方向に揺動部材72を付勢している。また、カセット27は装置本体12の開口に挿抜可能となっている。記録装置11は、カセット27が装置本体12から抜き取られる過程で、揺動部材72は、ピックアップローラー211がカセット27上の媒体Mから離間する保持位置に移動する機構を有する。そして、カセット27が装置本体12に挿着される過程で、揺動部材72は、離間位置から、ピックアップローラー211が媒体Mに接触する給送位置に移動する。
【0042】
搬送モーター46の動力は動力伝達機構47を介して搬送駆動ローラー43の反ホーム位置AH側の端部である第1端部に固定された歯車51に伝達される。この歯車51の回転により搬送駆動ローラー43は回転する。搬送モーター46が正転駆動されると、搬送駆動ローラー43および排出駆動ローラー45は、媒体Mを搬送方向Y0に搬送可能な方向に正転する。記録装置11の記録中は、搬送モーター46が正転駆動されることで、媒体Mは搬送方向Y0に搬送される。搬送駆動ローラー43には、その軸方向において第1端部近傍に位置する歯車52と、第1端部と反対側の端部である第2端部に位置する歯車53とが固定されている。歯車53は、歯車群50を構成する1つの入力歯車54と噛合する。
【0043】
記録装置11は、搬送モーター46の動力の伝達経路を、キャリッジ24によって切り換え操作される切換部の一例として第1切換部90と第2切換部85とを備える。第1切換部90は、幅方向Xに移動可能に設けられたスライダー91を備える。スライダー91は、弾性部材92の弾性力によってキャリッジ24がホーム位置HPから反ホーム位置AHへ向かう方向である第1方向X1に付勢されている。
【0044】
スライダー91は、キャリッジ24の背面側に突出する突部241(
図15参照)が、キャリッジ24と共に幅方向Xにおいて反ホーム位置AHからホーム位置HPに向かう方向である第2方向X2に移動する過程で当接可能な当接部93を有する。また、スライダー91はその上部に係合部94を有する。係合部94はその背面側で対向する位置に設けられたカム部材95と係合している。また、スライダー91にはその下側に切換歯車96を有している。切換歯車96はスライダー91と共に幅方向Xに移動する。
【0045】
キャリッジ24は、第1切換部90を切り換える切換位置として、待機位置であるホーム位置HPと、ホーム位置HPから第1方向X1へ少しの所定距離だけ離れた給送接続位置SPと、ホーム位置HPと給送接続位置SPとの間の位置である給送切断位置FPとに移動する。キャリッジ24がホーム位置HPにあるとき、スライダー91は、キャリッジ24をホーム位置HPにロックするときの第1切換位置SW1に配置される。キャリッジ24が給送接続位置SPにあるとき、スライダー91は、第1給送部21を駆動させるときの第2切換位置SW2に配置される。キャリッジ24が給送接続位置SPよりも第2方向X2側の位置である給送切断位置FPにあるとき、スライダー91は第3切換位置SW3に位置する。キャリッジ24が第2切換位置SW2よりも第1方向X1側の位置である、媒体Mに記録する記録中の位置にあるとき、スライダー91は弾性部材92の付勢力により待機位置に配置される。
【0046】
図8、
図9は、キャリッジ24が給送接続位置SP(
図4参照)にあるときにスライダー91が第2切換位置SW2に位置する状態を示す。
図8、
図9に示されるように、スライダー91が第2切換位置SW2にあるとき、切換歯車96が給送系の歯車78(
図9参照)と噛合するとともに、カム部材95が第1給送部21を駆動させる給送位置に配置される。
【0047】
図10、
図11は、キャリッジ24が給送切断位置FP(
図4参照)にあるときにスライダー91が第3切換位置SW3に位置する状態を示す。スライダー91が第3切換位置SW3にあるとき、切換歯車96が給送系の歯車78(
図11参照)との噛合を解除するとともに、カム部材95が第1給送部21を駆動させない非給送位置に配置される。
【0048】
図12、
図13は、メンテナンス機構65への動力伝達経路の接続・解除を示す。すなわち、
図12が、メンテナンス機構65への動力伝達経路の接続状態を示し、
図13が、メンテナンス機構65への動力伝達経路の切断状態を示す。メンテナンス装置60は、その駆動機構である前述のメンテナンス機構65を有する。
図12、
図13に示されるように、メンテナンス機構65はスライダー91の切換歯車96と噛合可能な位置に配置された駆動歯車66を含む複数の歯車からなる歯車群67を有する。駆動歯車66はポンプ63の回転軸と一体に回転する。また、歯車群67は、キャップ61を昇降させる昇降機構(図示略)と動力伝達可能な状態で連結されている。
【0049】
図12~
図14に示されるように、キャップ61を支持する支持部61A(
図14参照)には、キャリッジ24をホーム位置HPにロックするためのロック部材68が固定されている。ロック部材68は、キャップ61およびワイパー62と共に昇降可能である。
図14に示されるように、キャリッジ24は、ホーム位置HPにあるときにロック部材68と鉛直方向上側に対向する位置に凹状の被係合部24Aを有する。キャリッジ24がホーム位置HPにある状態でロック部材68が上昇すると、ロック部材68が被係合部24Aと係合し、キャリッジ24をホーム位置HPにロックする。ロック部材68が
図14に二点鎖線で示される下降位置に下降すると、キャリッジ24のロックが解除され、キャリッジ24はホーム位置HPから移動可能な状態になる。
【0050】
記録装置11は、ホーム位置HPに位置するキャリッジ24と係合するロック部材68を備える。ロック部材68は、キャリッジ24に係合するロック位置と、キャリッジ24と係合しないロック解除位置との間を移動する。ロック部材68がロック位置に移動することでキャリッジ24をホーム位置HPに保持する。ロック部材68がロック解除位置に移動することでキャリッジ24はホーム位置HPから移動可能な状態になる。
【0051】
<メンテナンス機構>
メンテナンス機構65は、メンテナンス装置60のうちキャップ61およびワイパー62を昇降させる昇降機構と、ポンプ63を駆動する歯車66とを備える。また、ロック部材68は、キャップ61を昇降させる昇降機構により昇降する。このため、キャリッジ24がホーム位置HPにあるときは、上昇したキャップ61により記録ヘッド25がキャッピングされるとともに、上昇したロック部材68によりキャリッジ24がホーム位置HPにロックされる。
【0052】
図3~
図5に示されるように、搬送部40は、搬送方向Y0において媒体支持部材35を挟む両側のうち上流側に位置する搬送ローラー対41と、下流側に位置する排出ローラー対42(
図4、
図5参照)とを備える。
図3~
図6に示されるように、搬送ローラー対41は、搬送駆動ローラー43と搬送従動ローラー44とで対をなす構成である。詳しくは、搬送ローラー対41は、1本の搬送駆動ローラー43と、搬送駆動ローラー43との間で媒体Mを挟持可能な複数の搬送従動ローラー44との対よりなる。排出ローラー対42は、排出駆動ローラー45(
図6参照)と、排出駆動ローラー45との間で媒体Mを挟持可能な複数の排出従動ローラー(図示略)との対よりなる。なお、排出従動ローラーは、例えば、その外周に沿って複数の歯を有するギザローラーである。
【0053】
図4、
図6に示されるように、記録装置11は、搬送部40の駆動源である搬送モーター46と、搬送モーター46の動力を搬送駆動ローラー43および排出駆動ローラー45(
図6参照)に伝達する動力伝達機構47とを備える。動力伝達機構47は、搬送モーター46の動力を各駆動ローラー43,45に伝達するタイミングベルト48を含むベルト式動力伝達機構である。動力伝達機構47は歯車51を含む。記録装置11には、搬送駆動ローラー43の回転量を検出するロータリーエンコーダー49が設けられている。ロータリーエンコーダー49は、搬送駆動ローラー43の回転軸の端部に固定された回転スケール49Aと、回転スケール49Aの回転量を検出する光学センサー49Bとを備える。ロータリーエンコーダー49は、搬送駆動ローラー43の回転量と比例する数のパルスを含むパルス信号を出力する。
【0054】
<記録装置の電気的構成>
次に、
図16を参照して記録装置11の電気的構成を説明する。制御部100は、記録装置11に対する記録制御を含む各種の制御を行う。制御部100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサーを備える。プロセッサーは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリーを含み、メモリーは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。制御部100は、ソフトウェア処理を行うものに限られない。例えば、制御部100は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行う専用のハードウェア回路(たとえば特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。
【0055】
制御部100には、出力系として、記録ヘッド25、キャリッジモーター32及び搬送モーター46が電気的に接続されている。制御部100は、記録ヘッド25、キャリッジモーター32及び搬送モーター46を制御する。また、制御部100には、入力系として、電源操作部16、媒体検出器28、リニアエンコーダー34およびロータリーエンコーダー49が電気的に接続されている。
【0056】
制御部100は、第1カウンター101、第2カウンター102、演算部103、モーター制御部104、モータードライバー105および不揮発性メモリー106を備える。モータードライバー105は、D/Aコンバーター107(以下、「DAC107」ともいう。)を備える。
【0057】
第1カウンター101は、給送部20により給送された媒体Mの先端が媒体検出器28により検知されたときの媒体Mの位置を原点位置とし、ロータリーエンコーダー49から入力する検出パルス信号のパルスエッジの数を計数することで、媒体Mの先端又は後端の位置に相当する値を計数する。制御部100は、媒体Mの先端又は後端の計数された位置を基に搬送モーター46を制御し、媒体Mの給送、搬送および排出を制御する。
【0058】
第2カウンター102は、キャリッジ24がホーム位置HP側のエンド位置に接触して原点位置に達した時を原点とし、リニアエンコーダー34から入力する検出信号のパルスエッジの数を計数することで、キャリッジ24の原点位置を基準とする走査方向Xの位置であるキャリッジ位置を取得する。制御部100は、キャリッジ位置の計数値を基にキャリッジモーター32を制御することにより、キャリッジ24の速度制御および位置制御を行う。
【0059】
演算部103は、記録装置11を動作せるうえで必要な各種の演算を行う。本実施形態では、演算部103は、第2リミット値Ilim2を算出する演算を行う。また、演算部103は、プログラムPRを実行するうえで必要な各種の設定値などの演算を行う。
【0060】
モーター制御部104は、モータードライバー105に対して電流指令値を出力することで、搬送モーター46を速度制御する。モーター制御部104は、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)指令値をモータードライバー105に出力する。モータードライバー105は、入力したPWM指令値に基づくPWM制御を行うことにより搬送モーター46に供給される電流を制御する。
【0061】
不揮発性メモリー106には、プログラムPRが記憶されている。また、不揮発性メモリー106には、第1リミット値Ilim1および第2リミット値Ilim2が記憶される。第1リミット値Ilim1および第2リミット値Ilim2は、搬送モーター46の電流値を制限する上限値である。制御部100は、搬送モーター46を駆動するときは搬送モーター46に流れる電流をリミット値以下に抑える。詳しくは、モーター制御部104がモータードライバー105に対して出力する電流指令値をリミット値以下に制限する。ここで、第1リミット値Ilim1は予め設定された固定値であり、第2リミット値Ilim2は搬送モーター46の電流測定値に基づいて設定される可変値である。第1リミット値Ilim1は、搬送モーター46の定格電流以下の所定値に設定される。第2リミット値Ilim2は、制御部100が搬送モーター46の駆動中に測定した搬送モーター46の測定電流値Imeaに基づいて設定される。詳しくは、制御部100は、搬送モーター46に駆動中に流れる電流値を測定電流値Imeaとして測定し、測定電流値Imeaに、予め定めたオフセット値Iofを加算することで、搬送モーター46に供給する電流のリミット値を設定する。
【0062】
制御部100は、電源が投入されると、初期化動作を行う。また、毎回の電源投入時または複数回の電源投入につき1回の割合で初期化動作ののち負荷測定モードに入る。負荷測定モードでは、制御部100は搬送モーター46を駆動させて搬送モーター46にかかる負荷を測定する。この負荷測定モードでは、制御部100はキャリッジ24がホーム位置HPに位置し、第1切換部90が第1切換位置SW1にある状態の下で行われる。このため、負荷測定モードでは、ピックアップローラー211および給送用ローラー221が駆動されず、搬送駆動ローラー43および排出駆動ローラー45が駆動されるときに搬送モーター46にかかる負荷が電流値として測定される。
【0063】
制御部100は、搬送モーター46の電流を制御して搬送駆動ローラー43および排出駆動ローラー45の回転速度を制御する。つまり、制御部100は、搬送モーター46の電流を制御することで、搬送ローラー対41および排出ローラー対42が媒体Mを搬送する搬送速度Vpfを制御する。
【0064】
モーター制御部104は、搬送速度制御をフィードバック制御により行う。不揮発性メモリー106には搬送制御用の速度プロファイルデータが記憶されている。速度プロファイルデータは、制御開始位置から単位制御間隔ごとの位置と目標速度との対応関係を示すデータである。不揮発性メモリー106には、複数の異なる目標搬送速度ごとに速度プロファイルデータが記憶されている。記録装置11は、複数の記録モードを備える。記録モードには、記録品質よりも記録速度を優先する標準記録モードおよび記録速度よりも記録品質を優先する高精細記録モードを含む複数種が用意されている。ユーザーは媒体Mの種類に応じた記録モードを選択入力する。モーター制御部104は、受け付けた記録モードに応じた目標搬送速度が決まると、その目標搬送速度に対応する速度プロファイルデータを不揮発性メモリー106から読み出す。モーター制御部104は、速度プロファイルデータに基づいて決定した電流指令値をモータードライバー105に出力する。ここで、速度プロファイルデータには、加速用データと減速用データとが含まれる。モーター制御部104は、加速制御時は加速用の速度プロファイルデータを用い,減速制御時は減速用の速度プロファイルデータを用いる。また、不揮発性メモリー106には、速度プロファイルデータの目標速度と対応する電流指令値が対応付けて記憶されている。
【0065】
モーター制御部104は、制御開始位置から制御間隔ごとの位置をエンコーダー49から入力するパルス検出信号のパルスエッジの数を計数する第1カウンター101から取得する。つまり、モーター制御部104は、第1カウンター101の計数値により制御開始位置を起点とする現在の位置(現搬送位置)を取得する。また、モーター制御部104は、エンコーダー49から入力するパルス検出信号に基づく単位時間当たりのパルスエッジの数から実速度Vrを取得する。フィードバック制御では、モーター制御部104は、実速度Vrと目標速度Vtとの差分ΔVを小さくするように電流指令値を補正する。例えば、搬送負荷が想定負荷よりも小さい場合、実速度Vrと目標速度Vtとの差分ΔV(=Vt-Vr)が負の値をとるので、モーター制御部104は電流指令値を小さく補正する。このときの電流指令値の減分は差分ΔVの値に応じて決められる。また、搬送負荷が想定負荷よりも大きい場合、実速度Vrと目標速度Vtとの差分ΔV(=Vt-Vr)が正の値をとるので、モーター制御部104は電流指令値を大きく補正する。このときの電流指令値の増分は差分ΔVの値に応じて決められる。
【0066】
よって、搬送負荷が想定負荷よりも大きい場合は、電流指令値が大きくなる。搬送モーター46の電流値は、電流指令値によって決まる。このため、制御部100は、モーター制御部104による電流指令値の値から搬送モーター46の電流値を測定できる。負荷測定では、制御部100は、搬送モーター46が目標搬送速度に達した後の定速域においてモーター制御部104が出力する電流指令値から電流値を測定し、測定電流値Imeaとして取得する。例えば、制御部100は、搬送モーター46の定速域における複数点の電流指令値を平均した値から測定電流値Imeaとする。本例では、測定電流値Imeaを電流指令値相当の値として取得する。なお、搬送モーター46の電流値相当の値に換算した測定電流値Imeaを取得してもよい。
【0067】
この負荷測定は、第1給送部21を駆動させるときに第1給送機構70の歯車等の構成要素に過大なトルクをかけないようにするため、搬送モーター46に供給される電流のリミット値を設定するために行われる。この電流のリミット値は、歯車が破損するほどの異常負荷を検出するために用いられる。制御部100は、モーター制御部104が出力する電流指令値がリミット値を超えたことをもって異常負荷を検出し、モーター制御部104に搬送モーター46の駆動を停止させる。
【0068】
従来は、想定している最大負荷を基に電流リミット値を設定していた。このため、記録装置11の購入直後など負荷が小さい使用開始初期段階では、意図しない負荷がかかった場合に歯車が破損するリスクがあった。つまり、搬送モーター46のトルクは、一部が摺動抵抗等によって損失し、残りの一部がローラーや歯車の回転トルクに使用される。記録装置11の使用開始初期段階では、搬送モーター46の出力トルクが同じでも、ローラーや歯車等の摺動抵抗等の損失が相対的に小さいため、歯車等に過大な回転トルクが加わりやすい。また、歯車列のギヤ比によって減速されるほどトルクは大きくなる。このため、搬送モーター46の動力伝達経路上において比較的大きなトルクが加わる歯車は、想定トルクを超える過大なトルクが加わって破損する可能性がある。
【0069】
この一方で、モーター電流のリミット値を低く設定すると、歯車等に加わる過大なトルクを抑制できるものの、トルク不足で媒体Mの搬送動作などの所定の動作を適切に行えない事態を招く可能性がある。このため、歯車等に加わるトルクが過大になることを抑制しつつ、搬送動作などの所定の動作に必要なトルクを確保する必要がある。しかし、搬送モーター46の出力トルクのうち歯車等に加わるトルクおよび所定動作に使用できるトルクは、ローラーや歯車等の回転部品の摺動抵抗等による損失トルクに依存する。この損失トルクは、記録装置11ごとの個体差、記録装置11の累積記録時間、記録頻度、累積記録枚数などに依存する。
【0070】
このため、本実施形態の制御部100は、搬送モーター46を駆動させるときに加わる負荷を電流値として測定し、この測定電流値Imeaに、予め定めたオフセット値Iofを加算することでリミット値を設定する。
【0071】
また、本実施形態では、搬送モーター46を共通の駆動源とする複数の可動部材のうち、特に大きなトルクが加わり易い特定の可動部材の動力伝達機構に合わせてリミット値を設定する。特定の可動部材は、歯車列のギヤ比の関係で大きなトルクが加わり易い歯車を含む動力伝達機構を動力の伝達に利用するものである。本例では、特定の可動部材の1つが、ピックアップローラー211である。ピックアップローラー211の駆動に用いる歯車列のギヤ比の最大値は、搬送駆動ローラー43の駆動に用いる歯車列のギヤ比の最大値よりも大きい。なお、歯車の歯欠けなどの破損に限らず、動力伝達機構が歯車以外の部品を含む場合は、その部品の破損を抑制できる程度のリミット値が設定される。
【0072】
この負荷測定モードにおける負荷測定は、キャリッジ24がホーム位置HPに位置する状態で行われる。つまり、第1切換部90が、搬送駆動ローラー43と第1給送機構70との接続が切断される第1切換位置SW1に切り換えられた状態の下で行われる。
【0073】
制御部100が搬送モーター46に流れる電流を制御することで搬送モーター46を駆動させる。制御部100は、搬送モーター46の駆動中に搬送モーター46を流れる電流値によって搬送モーター46にかかる負荷を測定し、その測定電流値Imeaに、予め定めたオフセット値Iofを加算し、電流のリミット値を設定する。この搬送モーター46の負荷を測定した測定電流値Imeaに基づいて第2リミット値Ilim2が設定される。
【0074】
次に、
図17、
図18を参照して、第2リミット値Ilim2の設定方法について詳細に説明する。ここで、
図17は、記録装置11を開梱して使用を開始した使用開始初期段階における第2リミット値Ilim2の設定方法を示す。また、
図18は、記録装置11が耐用年数近くまで使用されたときの第2リミット値Ilim2の設定方法を示す。
【0075】
本実施形態の記録装置11は、例えば、電源操作部16が操作された電源投入時に搬送モーター46を駆動させて搬送ローラー対41等の駆動によって搬送モーター46にかかる搬送系の負荷を測定する。この測定は、キャリッジ24がホーム位置HPに位置し、第1切換部90が第1切換位置SW1にある状態の下で行われる。これは、第1切換部90が第2切換位置SW2に切り換えた状態の下で搬送モーター46が駆動されると、負荷測定時にカセット27から媒体Mが搬送されてしまうからである。このため、キャリッジ24がホーム位置HPにあって第1切換部90が第1切換位置SW1にある状態の下で負荷測定を行うことで、記録以外の時期に媒体Mが搬送されてしまうことを防止する。
【0076】
図17と
図18に示される2つのグラフは、設定される第2リミット値Ilim2の値が、測定電流値Imeaの値の大小およびオフセット値Iofの値の大小に応じて異なるものの、測定方法は同じである。このため、
図17に示されるグラフに基づいて第2リミット値Ilim2の設定方法について説明する。
【0077】
制御部100は、電源投入時に第1切換部90が非接続状態のまま搬送モーター46を駆動させることで、搬送モーター46にかかる負荷電流を測定電流値Imeaとして取得する。つまり、制御部100は、給送部20が駆動されず搬送部40が駆動される状態の下で、搬送モーター46にかかる負荷電流を測定電流値Imeaとして取得する。そして、演算部103は、この測定電流値Imeaにオフセット値Iofを加算することで、第2リミット値Ilim2を算出する。こうして第2リミット値Ilim2は不揮発性メモリー106に記憶される。
【0078】
ここで、
図17に示されるように、第2リミット値Ilim2は種々のばらつきを含む。このため、第2リミット値Ilim2はばらつき範囲LimA内でばらつく。
図17に示される値Isfは、搬送部40に加え第1給送機構を駆動させるとき必要な搬送モーター46の電流値である。媒体Mをカセット27から確実に給送できるためには、この給送電流値Isfが必要になる。そして、ばらつき範囲LimAの下限値が、給送電流値Isfに対して所定のマージン電流ΔImを加算した値になるように設定されている。
【0079】
また、
図17において、値Ingは、歯車の歯欠けを発生させる電流値を示す。この歯車の歯欠けを発生させる異常電流値Ingは、ばらつき範囲NgA内でばらつく。第2リミット値Ilim2のばらつき範囲の上限値は、異常電流値Ingのばらつき範囲の下限値よりも小さな値になるように、第2リミット値Ilim2は設定されている。
【0080】
また、
図18に示されるグラフでは、記録装置11が耐用年数近くまで使用された結果、搬送モーター46の負荷電流を示す測定電流値Imeaが、
図17に示される初期段階の値よりも増大している。この負荷の増大は、搬送部40を構成する各ローラー対41,42の回転軸の摺動抵抗の増大やローラー自体の摩耗等に起因する。
【0081】
本実施形態では、第2リミット値Ilim2は、第1リミット値Ilim1の電流が搬送モーター46に流れると、ジャム等の異常発生時の過大トルクによって動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損などの不具合が発生する可能性がある期間に設定される。本例では、制御部100は、リミット値を、動力伝達機構に最も荷重のかかる期間に設定する。当該期間では、電流のリミット値を、この期間以外の他の期間に設定される値よりも小さな値が設定される。
【0082】
本例では、異常負荷発生時に動力伝達機構に最も荷重のかかる期間は、ピックアップローラー211が駆動される給送期間STである。ピックアップローラー211が駆動される給送期間STでは、電流のリミット値が、給送期間ST以外の他の期間である搬送期間FTに設定される第1リミット値Ilim1よりも小さな第2リミット値Ilim2が設定される。
【0083】
記録装置11は、媒体Mのジャムの復旧操作を行うときに操作される操作部を備える。本例の記録装置11は、操作パネル15に設けられたタッチパネル式の表示部15Aが操作部の一例を構成する。第1切換部90は、記録ヘッド25が設けられるキャリッジ24が媒体Mの搬送方向Y0と交差する方向である走査方向Xに移動する走査経路上の所定の切換位置に移動することで切り換えられる構成である。本例では、搬送モーター46が媒体Mを搬送する回転方向に正転駆動するときに、ロック部材68はロック位置からロック解除位置へ移動する構成となっている。
【0084】
第2リミット値Ilim2は、歯車の欠損等の部品の破損が発生する可能性がある他の期間にも設定される。本実施形態では、制御部100は、ジャム等の異常が検出すると、搬送モーター46を非常停止させる。制御部100は、ジャムを解消したユーザーが操作部を操作した復旧操作を受け付けると、キャリッジ24を移動させるためにロック部材68をロック解除位置へ移動させてキャリッジ24のロックを解除するキャリッジロック解除動作を行う。このキャリッジロック解除動作期間LT(
図20参照)においても、制御部100は、第2リミット値Ilim2を設定する。これは、ジャム等の異常発生時は、ユーザーがジャムの媒体Mを取り除く除去作業を行うが、ユーザーが媒体Mを除去することなく、操作部を操作して復旧操作を行う場合があるからである。
【0085】
ジャムの媒体Mが残る状態で、搬送モーター46を媒体Mを搬送方向Y0に搬送させる回転方向である正転方向に駆動させる他の動作が行われると、搬送駆動ローラー43がジャムを加速する方向に回転するため、搬送モーター46に過大な電流が流れる。この過大な電流は歯車に過大なトルクを加え、歯車の破損の原因になる。そのため、本実施形態では、ジャムの媒体Mが残る状態で搬送モーター46が正転駆動される可能性のある動作期間においては、搬送モーター46の電流のリミット値を、第1リミット値Ilim1よりも小さな第2リミット値Ilim2に設定する。
【0086】
なお、ジャム等の異常発生時は、記録装置11が電源オフされずに操作パネル15の表示部15Aに異常発生の旨の情報が表示される場合と、記録装置11が強制的に電源オフされる場合とがある。前者の場合、ユーザーは、ジャムの媒体Mを取り除いた後、タッチパネル式の操作部を操作することで復旧操作を行う。また、後者の場合、ユーザーは、ジャムの媒体Mを取り除いた後、電源操作部16を操作することで復旧操作を行う。
【0087】
制御部100は、記録中に媒体Mのジャムを検出すると、キャリッジ24をホーム位置HPに移動させ、キャリッジ24がホーム位置HPに到達すると、搬送モーター46を逆転駆動させることでロック部材68を解除位置からロック位置へ移動させる。これによりキャリッジ24をホーム位置HPにロックした状態で待機させる。制御部100は、表示部15Aにジャム発生の旨とジャムの解消を促す情報を表示する。この情報を見たユーザーは、記録装置11からジャムの媒体Mを取り除くと、電源操作部16または選択操作部を操作する復旧操作を行う。制御部100は、操作部による復旧操作を受け付けると、第2リミット値Ilim2を設定したうえで、搬送モーター46を正転駆動させてロック部材68をロック位置からロック解除位置へ移動させる。また、制御部100は、キャリッジ24のロックが解除されると、電流のリミット値を第2リミット値Ilim2から第1リミット値Ilim1に変更する。
【0088】
図19は、給送期間および搬送期間における電流のリミット値の設定内容を示すグラフである。横軸は媒体Mの搬送位置を示し、左側の縦軸が搬送速度を示し、右側の縦軸が搬送モーター46の電流値を示す。このグラフには、給送速度Vsfと搬送速度Vpfとが示されている。給送期間STでは、ピックアップローラー211および駆動ローラー43,45が駆動される。搬送期間FTでは、ピックアップローラー211と駆動ローラー43,45とのうち駆動ローラー43,45のみが駆動される。なお、記録装置11がシリアルプリンターである場合、記録中は記録媒体Mが間欠搬送されるが、
図19のグラフでは、間欠搬送の領域における加速と減速は無視した波形で描かれている。
【0089】
図19に示されるように、電流のリミット値を小さく変更する期間は、ピックアップローラー211が駆動される給送期間STのうちピックアップローラー211の最大速度域を含む少なくとも一部の期間である。最大速度域とは、給送速度Vsfが最大速度である定速度Vcとなる定速域を指す。
図19に示される例では、電流のリミット値を小さく変更する期間は、ピックアップローラー211が駆動される給送期間STのうちの全期間である。つまり、第1切換部90が第2切換位置SW2に位置する給送期間STに搬送モーター46の電流のリミット値が第2リミット値Ilim2に設定される。
【0090】
制御部100は、可動部材の一例であるピックアップローラー211が駆動される給送期間STのうち少なくとも一部の期間に、ピックアップローラー211が駆動されない期間である搬送期間FTに設定される第1リミット値Ilim1よりも小さな第2リミット値Ilim2を設定する。
【0091】
詳しくは、給送期間STの給送速度Vsfの速度プロファイルは、加速域と定速域と減速域とを含む。電流のリミット値を小さく変更する期間は、給送期間STのうち少なくとも定速域を含む一部の期間であればよい。本例では、
図19に示されるように、加速域と定速域と減速域とを含む給送期間STの全域で、電流のリミット値が第2リミット値Ilim2に設定される。
【0092】
キャリッジ24が給送接続位置SPに移動したときに第1切換部90が第2切換位置SW2に切り換えられる。このとき、カム部材95が給送位置に作動する。カム部材95が給送位置に保持されることで、キャリッジ24が給送接続位置SPを離れても、カム部材95が給送位置にある間は、第1切換部90が第2切換位置SW2に保持される。つまり、スライダー91が第2切換位置SW2に保持される。
【0093】
制御部100は、キャリッジ24の動作によって、第1切換部90を第2切換位置SW2から第3切換位置SW3に切り換えることにより給送期間STから搬送期間FTに切り換える。制御部100は、この切り換えを行うと、電流のリミット値を、第2リミット値Ilim2から第1リミット値Ilim1に変更する。
【0094】
なお、給送期間STは、ピックアップローラー211がカセット27内の記録対象の媒体Mに接触して媒体Mを送り出している期間である。このため、給送期間STは、媒体Mの搬送方向Y0の長さである媒体長に応じて変化する。
【0095】
図19において、給送期間STが終了するときの媒体Mの搬送方向Y0の位置ysは、記録中の媒体Mの後端がピックアップローラー211から外れたときの位置である。制御部100は、第1カウンター101の計数値に基づいて媒体Mが位置ysに達したと判断すると、キャリッジ24の動作によって給送期間STを終了させる。例えば、キャリッジ24が給送接続位置SPよりも第2方向X2側の所定の位置に移動すると、カム部材95の給送位置の保持が解除される。この解除により第1切換部90のスライダー91は待機位置に復帰する。給送期間STの終了によりピックアップローラー211が回転しなくなる。このため、後続の媒体Mがカセット27から給送されることがない。なお、後続の媒体Mを、先行の媒体Mの後端と間隔を開けた状態、または先行の媒体Mの後端部と後続の媒体Mの先端部とを一部重ねた状態で、先行の媒体Mの記録中に後続の媒体Mの給送を開始してもよい。
【0096】
ところで、給送期間ST中に媒体Mのジャムが発生すると、搬送モーター46の電流値が第2リミット値Ilim2を超えるため、その時点で搬送モーター46の駆動が停止される。また、搬送期間FT中に媒体Mのジャムが発生すると、搬送モーター46の電流値が第1リミット値Ilim1を超えるため、その時点で搬送モーター46の駆動が停止される。制御部100は、ジャムを検出して搬送モーター46を非常停止させた場合、キャリッジモーター32を駆動させてキャリッジ24をホーム位置HPに移動させる。そして、制御部100は、搬送モーター46を逆転駆動させることで、ロック部材68をロック解除位置からロック位置へ移動させる。これによりロック部材68がキャリッジ24と係合し、キャリッジ24はホーム位置HPに保持される。ここで、ジャムには、ピックアップローラー211、搬送ローラー対41または排出ローラー対42に媒体Mが詰まり搬送モーター46の電流値がリミット値を超えることで検出されるものと、キャリッジ24が媒体Mと接触してその大きな負荷によってキャリッジモーター32の電流値がリミット値を超えることで検出されるものがある。
【0097】
図20は、ジャム等の異常発生後、ユーザーによる復旧操作を受け付けた後に設定される電流のリミット値を示すグラフである。復旧動作は、搬送に関係のない動作であるが、ロック部材68のキャリッジロック解除動作に搬送モーター46が駆動される。そのため、
図20では、キャリッジロック解除動作を、横軸を搬送位置、左側の縦軸を搬送速度、右側の縦軸を電流値で示すグラフで示されている。
【0098】
このグラフに示されるように、制御部100は、復旧操作を受け付けると、ロック部材68をロック位置からロック解除位置へ移動させるキャリッジロック解除動作が行われる。本実施形態では、ロック部材68は搬送モーター46を駆動源とするため、ロック部材68を駆動させるときに一緒に搬送系の駆動ローラー43,45が駆動される。また、搬送モーター46の非常停止が給送期間STに行われた場合、復旧操作が行われるとき、切換歯車96と歯車78とが噛合している場合がある。この場合、復旧動作のために搬送モーター46が駆動されると、ピックアップローラー211が駆動される。このため、
図20には、給送速度Vsfと搬送速度Vpfとが示されている。
【0099】
復旧動作は、キャリッジ24を往復移動させてその走査経路上にキャリッジ24と干渉するジャムの媒体Mがないことを確認する動作である。復旧操作を受け付けると、まずキャリッジ24に復旧動作を行わせるためにキャリッジ24のロックを解除するキャリッジロック解除動作が行われる。このキャリッジロック解除動作は、搬送モーター46の正転駆動により行われるので、搬送駆動ローラー43、排出駆動ローラー45およびピックアップローラー211のうち少なくとも搬送駆動ローラー43および排出駆動ローラー45が回転する。このとき、ジャムの媒体Mが搬送経路上に残っていると、そのジャムをさらに酷くするとともに搬送モーター46にかかる負荷が増大する。このとき、ピックアップローラー211が駆動可能な状態にあると、キャリッジロック解除動作時に第1給送機構70を構成する歯車に過大なトルクがかかり破損等の可能性がある。そのため、キャリッジロック解除動作期間LTでは、電流のリミット値が給送期間STと同じ第2リミット値Ilim2が設定される。
【0100】
次に、記録装置11の作用について説明する。
記録装置11の電源が投入されると、制御部100は、
図21に示されるリミット値設定ルーチンを実行する。
【0101】
まずステップS11では、制御部100は、搬送モーター46を空転させて負荷電流Imeaを測定する。制御部100は、キャリッジ24がホーム位置HPに位置する状態で搬送モーター46を駆動させる。ホーム位置HPは、第1切換部90の第1切換位置SW1であるので、搬送モーター46が駆動されても、ピックアップローラー211および給送用ローラー221は駆動さない。このため、搬送駆動ローラー43および排出駆動ローラー45は媒体Mを搬送することなく空転する。制御部100は、定速域の電流指令値から搬送モーター46の駆動中の電流値を測定する。このとき、搬送駆動ローラー43、排出駆動ローラー45および搬送系の動力伝達機構の負荷が測定される。測定された負荷電流は、測定電流値Imeaとして取得される。
【0102】
ステップS12では、制御部100は、Ilim2=Imea+Iofにより、第2リミット値Ilim2を算出する。この演算は、制御部100の演算部103が行う。
ステップS13では、制御部100は、Ilim2≦Ilim1であるか否かを判定する。制御部100は、Ilim2≦Ilim1であればステップS14に進み、Ilim2≦Ilim1でなければステップS15に進む。
【0103】
ステップS15では、制御部100は、Ilim2=Ilim1を設定する。つまり、制御部100は、第1リミット値Ilim1を最大値とし、算出した第2リミット値Ilim2が第1リミット値Ilim1を超える場合は、第2リミット値Ilim2を第1リミット値Ilim1に設定する。
【0104】
ステップS14では、制御部100は、Ilim2>Iminであるか否かを判定する。ここで、Iminは第2リミット値の下限値である。制御部100は、Ilim2>Iminであれば、当該ルーチンを終了し、Ilim2>Iminでなければ、ステップS16に進む。
【0105】
ステップS16では、制御部100は、Ilim2=Iminに設定する。つまり、制御部100は、算出した第2リミット値Ilim2が下限値Imin以下である場合は、第2リミット値Ilim2を下限値Iminに設定する。こうしてリミット値設定処理により、第2リミット値Ilim2が設定される。制御部100は、第2リミット値Ilim2を不揮発性メモリー106に記憶する。
【0106】
記録装置11の使用開始初期段階では、
図17に示す第2リミット値Ilim2が設定される。また、記録装置11の耐用期間を終える頃は、
図18に示される第2リミット値Ilim2が設定される。記録装置11を使用するに連れてローラー43,45,211や動力伝達機構の摺動抵抗等が大きくなる。このため、測定電流値Imeaは、記録装置11の累積使用時間が長くなるに連れて大きくなる。また、ピックアップローラー211および給送系の動力伝達機構の負荷は、記録装置11の累積使用時間が長くなるに連れて大きくなる。このため、オフセット値Iofは、記録装置11の累積使用時間が長くなるに連れて段階的に大きな値に設定される。不揮発性メモリー106には、記録装置11の累積使用量を示すパラメーターとオフセット値Iofとの対応関係を示すデータが記憶されている。累積使用量のパラメーターの一例が累積使用時間である。他の例としては、累積記録枚数、累積インク消費量などが挙げられる。制御部100は、記録装置11の累積使用量を計測し、その計測した累積使用量を不揮発性メモリー106に記憶する。制御部100は、測定電流値Imeaの測定時に不揮発性メモリー106から読み出した累積使用量と対応するオフセット値Iofを取得する。そして、制御部100は、測定電流値Imeaに、累積使用時間が長くなるに連れて大きくなる値として測定される。
【0107】
次に、制御部100が実行する記録処理ルーチンについて説明する。制御部100は、記録データPDを受信すると、
図22に示される記録処理ルーチンを実行する。
まずステップS21では、制御部100は、第2リミット値Ilim2を設定する。
【0108】
ステップS22では、制御部100は、キャリッジ24を給送接続位置SPに移動させる。この結果、スライダー91が
図8、
図9に示される第2切換位置SW2に移動し、切換歯車96が歯車78と噛合する。この結果、搬送モーター46の動力がピックアップローラー211に伝達可能な状態に切り換えられる。
【0109】
ステップS23では、制御部100は、搬送モーター46を正転駆動させる。この結果、ピックアップローラー211が回転し、カセット27内の媒体Mのうち最上位の1枚が給送される。媒体Mの先端は給送途中に媒体検出器28により検知される。第1カウンター101は、媒体検出器28が媒体Mの先端を検知した位置を原点としてエンコーダー49から入力する検出パルス信号のパルスエッジの数を計数することで、第1カウンター101に媒体Mの搬送方向Y0の位置である搬送位置に相当する計数値を計数する。媒体Mの先端が搬送ローラー対41に到達するまでは媒体Mはピックアップローラー211によって搬送される。この給送期間STでは、搬送モーター46の電流のリミット値として第2リミット値Ilim2が設定される。媒体Mの先端が搬送ローラー対41に到達すると、それ以降の媒体Mはピックアップローラー211と搬送ローラー対41とによって搬送される。さらにその後、媒体Mは、ピックアップローラー211、搬送ローラー対41および排出ローラー対42によって搬送される。
【0110】
ステップS24では、制御部100は、ジャムが発生したか否かを判定する。この給送期間STでは、制御部100は、電流指令値により指令される電流値が第2リミット値Ilim2を超えることをもってジャムを検出する。そのため、制御部100は、電流指令値により指令される電流値が第2リミット値Ilim2を超えるか否かを判定する。制御部100は、ジャムを検出しなければステップS25に進み、ジャムを検出するとステップS29に進む。
【0111】
ステップS25では、制御部100は記録動作を行う。すなわち、制御部100は、キャリッジモーター32を駆動し、キャリッジ24を走査方向Xに移動させる途中で記録ヘッド25から液体を吐出することで媒体Mに1パス分の記録を行う。
【0112】
ステップS26では、制御部100は、給送が完了したか否かを判定する。すなわち、制御部100は、記録対象の媒体Mの後端がピックアップローラー211から離れたか否かを判定する。ここで、制御部100は、記録データPDに含まれる記録条件情報に基づいて媒体サイズの情報を取得し、媒体サイズから媒体長を取得する。また、制御部100は第1カウンター101の計数値から取得した媒体Mの先端の位置に媒体長を加えた値から媒体Mの後端の位置を取得する。そして、制御部100は、媒体Mの後端の位置がピックアップローラー211を過ぎると、給送が完了したと判定する。つまり、制御部100は、給送期間STが終了したと判定する。制御部100は、給送が完了していなければ、ステップS23に戻り、給送が完了すればステップS27に進む。
【0113】
ステップS27では、制御部100は、電流のリミット値として第1リミット値Ilim1を設定する。
ステップS28では、制御部100は、搬送モーター46を正転駆動する。この結果、媒体Mは、搬送ローラー対41および排出ローラー対42により次の記録位置まで搬送される。
【0114】
ステップS29では、制御部100は、ジャムが発生したか否かを判定する。この搬送期間FTでは、制御部100は、電流指令値により指令される電流値が第2リミット値Ilim2を超えることをもってジャムを検出する。そのため、制御部100は、電流指令値により指令される電流値が第2リミット値Ilim2を超えるか否かを判定する。制御部100は、ジャムを検出しなければステップS30に進み、ジャムを検出するとステップS32に進む。
【0115】
ステップS30では、制御部100は記録動作を行う。すなわち、制御部100は、キャリッジモーター32を駆動し、キャリッジ24を走査方向Xに移動させる途中で記録ヘッド25から液体を吐出することで媒体Mに1パス分の記録を行う。
【0116】
ステップS31では、制御部100は、記録が完了したか否かを判定する。記録が完了していなければ、ステップS28に戻り、ステップS31で記録完了と判定されるまで、搬送動作(S28)とジャム検出(S29)と記録動作(S30)を繰り返す。制御部100は、記録が完了すれば、搬送モーター46を正転駆動して記録後の媒体Mを排出した後、当該ルーチンを終了する。
【0117】
給送期間STと搬送期間FTのどちらかでジャムが検出された場合、制御部100はステップS32の処理を実行する。ステップS32では、制御部100は、搬送モーター46を駆動停止する。この結果、ジャムを検出した場合、搬送モーター46が強制的に駆動停止される。
【0118】
ステップS33では、制御部100は、異常フラグFに「1」をセットする(F=1)。つまり、制御部100は、ジャム等の異常が原因で搬送モーター46を駆動停止した旨の情報を不揮発性メモリー106の所定記憶領域に記憶する。
【0119】
ステップS34では、制御部100は、キャリッジ24をホーム位置HPへ移動させる。すなわち、制御部100は、キャリッジモーター32を駆動してキャリッジ24をホーム位置HPまで移動させる。
【0120】
ステップS35では、制御部100は、搬送モーター46を逆転駆動させてキャリッジ24をロックする。すなわち、制御部100は、搬送モーター46を逆転駆動させることでロック部材68をロック解除位置からロック位置へ移動させる。この結果、
図14に示されるように、ロック部材68がキャリッジ24と係合することで、キャリッジ24がホーム位置HPにロックされる。
【0121】
ステップS36では、制御部100は、復旧操作を促すメッセージを表示部15Aに表示させる。なお、ジャム等の異常検出時は、記録装置11の電源が強制的に遮断される場合がある。
【0122】
ジャムが発生して記録動作が中断されると、表示部15Aに表示されたメッセージを見たユーザーは、ジャムの媒体Mを取り除く。また、電源が強制的に遮断された場合も、ユーザーがジャムの媒体Mを取り除く。そして、ジャムの媒体Mを取り除いた後、表示部15Aに表示されたタッチパネル式のOKボタンを操作したり、電源操作部16を操作したりする復旧操作を行う。この復旧操作を受け付けた制御部100は、
図23に示される復旧処理ルーチンを実行する。
【0123】
以下、
図23を参照しつつ復旧処理について説明する。なお、復旧処理は、キャリッジ24の走査経路上に異物がないことを確認するとともにキャリッジ24の原点位置を設定し直す処理を兼ねる。このため、復旧処理は、復旧操作時のみならず、通常の電源投入時にも実行される。復旧処理時は、異常フラグFが「0」の場合も「1」の場合もある。
【0124】
まずステップS41では、制御部100は、異常フラグF=1であるか否かを判定する。異常フラグF=1でなければステップS42に進み、異常フラグF=1であればステップS44に進む。
【0125】
ステップS42では、制御部100は、第1リミット値Ilim1を設定する。
ステップS43では、制御部100は、搬送モーター46を正転駆動させてキャリッジ24のロックを解除する。すなわち、制御部100は、搬送モーター46を正転駆動させることでロック部材68をロック位置からロック解除位置へ移動させる。この結果、ロック部材68が
図14に2点鎖線で示されるロック解除位置に移動し、キャリッジ24のロックが解除される。
【0126】
ステップS44では、制御部100は、第2リミット値Ilim2を設定する。つまり、搬送モーター46が非常停止した後の復旧操作時は、搬送モーター46の電流のリミット値として第2リミット値Ilim2が設定される。
【0127】
ステップS45では、制御部100は、搬送モーター46を正転駆動させてキャリッジ24のロックを解除する。すなわち、制御部100は、搬送モーター46を正転駆動させることで、ロック部材68をロック位置からロック解除位置へ移動させる。ところで、ユーザーがジャムの媒体Mを除去していないまま、あるいは除去したもののジャムの媒体Mの一部が残ったまま、OKボタンまたは電源操作部16を操作する場合がある。また、ジャム検出による搬送モーター46の非常停止が給送期間ST中に発生した場合、第1切換部90が第2切換位置SW2にある状態の下で搬送モーター46が正転駆動される。この場合、ジャムの媒体Mの少なくとも一部が搬送経路上に残っていると、過大な負荷により搬送モーター46のトルクが過大となる。しかし、異常フラグF=1のときは電流のリミット値が第2リミット値Ilim2に設定されているので、搬送モーター46の電流値が第2リミット値Ilim2を超えれば、搬送モーター46は非常停止される。この結果、復旧処理時に第1給送機構70を構成する歯車の破損等が抑制される。なお、制御部100は、キャリッジロック解除動作の過程で搬送モーター46の電流値を監視し、搬送経路上におけるジャムの媒体Mの有無を検出する。
【0128】
ステップS46では、制御部100は、第1リミット値Ilim1を設定する。
ステップS47では、制御部100は、キャリッジ24を往復移動する。制御部100はキャリッジモーター32を駆動させてキャリッジ24を往復移動させる。制御部100は、このキャリッジ24が往復移動する過程でキャリッジモーター32の電流値が閾値を超えないか否かを監視する。なお、キャリッジ24が往復移動する過程でキャリッジモーター32の電流値がリミット値を超えた場合はキャリッジモーター32を非常停止させる。
【0129】
ステップS48では、制御部100は、異常ありか否かを判定する。すなわち、制御部100は、キャリッジモーター32の電流値が閾値を超えたか否かを判定する。制御部100は、異常があればステップS49に進み、異常がなければステップS50に進む。
【0130】
ステップS49では、制御部100は、復旧操作を促すメッセージを表示部15Aに表示する。
ステップS50では、制御部100は、搬送モーター46を逆転駆動させてキャリッジ24をロックする。すなわち、制御部100は、搬送モーター46を逆転駆動させることで、ロック部材68をロック解除位置からロック位置へ移動させる。こうして復旧処理が異常なく終了すれば、記録装置11は記録データPDを受け付けるまで待機する。なお、異常フラグF=0のときは、通常の電源投入であるので、引き続きその他の初期化動作が行われる。
【0131】
上記実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)媒体搬送装置200は、記録媒体Mを給送するピックアップローラー211と、給送された記録媒体Mを記録ヘッド25に向けて搬送する搬送駆動ローラー43と、ピックアップローラー211と搬送駆動ローラー43との個別または共通の駆動源である搬送モーター46とを備える。さらに、媒体搬送装置200は、搬送モーター46の動力をピックアップローラー211に伝達する動力伝達機構である第1給送機構70と、搬送モーター46を電流制御する制御部100とを備える。制御部100は、搬送モーター46の駆動中の電流値を測定電流値Imeaとして測定し、測定電流値Imeaに、予め定めたオフセット値Iofを加算することで、搬送モーター46に供給する電流のリミット値Ilim2を設定する。この構成によれば、搬送モーター46のその時々の負荷に応じた適切なリミット値Ilim2を設定することができる。このため、搬送モーター46の動力で搬送駆動ローラー43およびピックアップローラー211が駆動されるときに第1給送機構70を構成する歯車の歯欠け等を抑制できるうえ、記録装置11の使用開始初期段階から耐用期間を終えるまで経時変化するその時々の負荷に応じた適切なリミット値Ilim2を設定することができる。よって、媒体搬送装置200の使用によって搬送モーター46にかかる負荷が経時変化しても、第1給送機構70を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を効果的に抑制できる。
【0132】
(2)媒体搬送装置200は、記録媒体Mを給送するピックアップローラー211と、給送された記録媒体Mを記録ヘッド25に向けて搬送する搬送駆動ローラー43と、搬送駆動ローラー43以外の可動部材と、搬送モーター46とを備える。さらに、媒体搬送装置200は、搬送モーター46の動力を可動部材に伝達する動力伝達機構である第1給送機構70と、搬送モーター46を電流制御する制御部100とを備える。制御部100は、搬送モーター46の駆動中の電流値を測定電流値Imeaとして測定し、測定電流値Imeaに、予め定めたオフセット値Iofを加算することで、搬送モーター46に供給する電流のリミット値Ilim2を設定する。この構成によれば、搬送モーター46のその時々の負荷に応じた適切なリミット値Ilim2を設定することができる。このため、搬送モーター46の動力で搬送駆動ローラー43および可動部材が駆動されるときに第1給送機構70を構成する歯車の歯欠けを抑制できるうえ、記録装置11の使用開始初期段階から耐用期間を終えるまで経時変化するその時々の負荷に応じた適切なリミット値Ilim2を設定することができる。よって、媒体搬送装置200の使用によって搬送モーター46にかかる負荷が経時変化しても、第1給送機構70を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を効果的に抑制できる。
【0133】
(3)可動部材は、ピックアップローラー211である。搬送モーター46は、ピックアップローラー211と搬送駆動ローラー43との共通の駆動源である。この構成によれば、搬送モーター46の部品点数を少なくできる。
【0134】
(4)制御部100は、リミット値Ilim2を、動力伝達機構である第1給送機構70に最も荷重のかかる期間に設定し、この期間では、電流のリミット値を、この期間以外の期間に設定される第1リミット値Ilim1よりも小さな第2リミット値Ilim2を設定する。よって、可動部材を駆動させるときに第1給送機構70を構成する歯車等の破損を抑制することができる。また、可動部材を駆動させないときには搬送動作などの所定の動作に必要なトルクを確保できる。
【0135】
(5)可動部材は、ピックアップローラー211である。ピックアップローラー211の駆動に用いる歯車列のギヤ比の最大値は、搬送駆動ローラー43の駆動に用いる歯車列のギヤ比の最大値よりも大きい。第2リミット値Ilim2が設定される期間は、ピックアップローラー211が駆動される給送期間STのうちピックアップローラー211の最大速度域を含む期間である。よって、媒体Mを給送する給送期間STにおいて動力伝達機構である第1給送機構70を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制することができる。
【0136】
(6)媒体搬送装置200は、搬送モーター46の動力によって回転する搬送駆動ローラー43の回転動力を伝達する第1動力伝達機構と、第1動力伝達機構である歯車群50の回転動力を可動部材に伝達する第2動力伝達機構である第1給送機構70と、第1動力伝達機構である歯車群50と第2動力伝達機構である第1給送機構70とを接続状態と切断状態とに切り換える第1切換部90とを備える。制御部100は、第1切換部90による切り換え状態に応じて、可動部材が駆動される期間のうち少なくとも一部の期間に、可動部材が駆動されない搬送期間FTの第1リミット値Ilim1よりも小さな第2リミット値Ilim2を設定する。この構成によれば、可動部材が駆動される期間のうち少なくとも一部の期間では、搬送モーター46の電流が、可動部材が駆動されない期間に設定される第1リミット値Ilim1よりも小さな第2リミット値Ilim2に制限される。よって、可動部材が駆動されるときに第1給送機構70を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制することができる。なお、可動部材がピックアップローラー211である場合、第1動力伝達機構が歯車群50であり、第2動力伝達機構が第1給送機構70である。また、可動部材がロック部材68である場合、第1動力伝達機構が歯車群50であり、第2動力伝達機構がメンテナンス機構65である。
【0137】
(7)可動部材は、ピックアップローラー211である。制御部100は、ピックアップローラー211が駆動される給送期間STに、電流のリミット値として、搬送駆動ローラー43が記録媒体Mを搬送する搬送期間FTに設定される第1リミット値Ilim1よりも小さな第2リミット値Ilim2を設定する。第1切換部90を接続状態から切断状態に切り換えることで、給送期間STから搬送期間FTに切り換わると、電流のリミット値を、第2リミット値Ilim2から第1リミット値Ilim1に変更する。この構成によれば、給送期間STから搬送期間FTに切り換わると、第2リミット値Ilim2から第1リミット値Ilim1へ変更されるので、給送期間STにおける歯車の歯欠け等の不具合の発生を抑制しつつ搬送期間FTに媒体Mの搬送に必要な大きなトルクを確保できる。例えば、搬送モーター46のトルク不足に起因する媒体Mの搬送位置のばらつきを抑制できる。
【0138】
(8)可動部材は、記録ヘッド25が設けられるキャリッジ24を待機位置にロックするロック位置と、キャリッジ24を待機位置から移動可能にロックを解除するロック解除位置との間を移動するロック部材68である。この構成によれば、ロック部材68が駆動されるときに第1給送機構70を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制できる。
【0139】
(9)記録媒体Mのジャムの復旧操作を行うときに操作される電源操作部16またはOKボタン等の操作部を備える。第1切換部90は、記録ヘッド25が設けられるキャリッジ24が記録媒体Mの搬送方向Y0と交差する方向である走査方向Xに移動する走査経路上の所定の切換位置に移動することで切り換えられる構成である。可動部材は、キャリッジ24を待機位置にロックするロック位置と、キャリッジ24を待機位置から移動可能にロックを解除するロック解除位置との間を移動するロック部材68である。搬送モーター46が記録媒体Mを搬送する回転方向に正転駆動するときに、ロック部材68はロック位置からロック解除位置へ移動する。制御部100は、媒体のジャムを検出すると、キャリッジ24を待機位置に移動させて待機させるとともに、ロック部材68を解除位置からロック位置へ移動させ、その後、操作部による復旧操作を受け付けると、第2リミット値Ilim2を設定したうえで、搬送モーター46を正転駆動させてロック部材68をロック位置から解除位置へ移動させる。
【0140】
この構成によれば、ジャムが発生して搬送モーター46の駆動を停止したとき、キャリッジ24を待機位置に移動させるとともにキャリッジ24はロック位置に移動したロック部材68により待機位置に保持される。その後、ジャムの媒体を取り除くなどの復旧作業を行ったユーザーが、記録装置11に対して復旧操作を行う。復旧操作を受け付けた制御部100は、リミット値を第2リミット値Ilim2に設定した後、搬送モーター46を正転駆動させる。このため、仮にジャムの記録媒体Mが取り除かれることなく搬送モーター46が給送時と同じ回転方向に正転駆動されたとしても、搬送モーター46に供給される電流値が第2リミット値Ilim2に制限されるので、第1給送機構70を構成する歯車にかかる負荷が抑制される。よって、ジャム発生後の復旧動作時に第1給送機構70を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制することができる。
【0141】
(10)制御部100は、キャリッジ24のロックが解除されると、リミット値を第2リミット値Ilim2から第1リミット値Ilim1に変更する。この構成によれば、ロックが解除されるときは搬送モーター46が記録媒体Mを搬送する方向に駆動されるが、搬送モーター46の電流を制限するリミット値Ilim2が設定されることで、仮にジャムの記録媒体Mが残っていても、歯車の歯欠け等の不具合の発生を抑制することができる。そのうえ、ロックが解除された後は、搬送モーター46のリミット値が、第2リミット値Ilim2から第1リミット値Ilim1に変更される。例えば、その後、ロック部材68がロック解除位置からロック位置へ移動するロック過程でロック解除過程のときよりも大きなトルクを確保できる。例えば、キャリッジ24をより確実にロックできる。
【0142】
(11)記録装置11は、媒体搬送装置200と、記録媒体Mに記録する記録ヘッド25とを備える。この構成によれば、記録装置11は、媒体搬送装置200を備えるので、媒体搬送装置200と同様の作用効果が得られる。
【0143】
(11)媒体搬送装置200の制御方法は、制御部100が、搬送モーター46の駆動中の電流値を測定電流値Imeaとして測定することと、制御部100が、測定電流値Imeaに、予め定めたオフセット値Iofを加算することで、搬送モーター46に供給する電流のリミット値Ilim2を設定することとを備える。この制御方法によれば、媒体搬送装置200の使用によって搬送モーター46にかかる負荷が経時変化しても、第1給送機構70を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を効果的に抑制できる。
【0144】
なお、上記実施形態は以下に示す変更例のような形態に変更することもできる。さらに、上記実施形態および以下に示す変更例を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできるし、以下に示す変更例同士を適宜組み合わせたものを更なる変更例とすることもできる。
【0145】
・
図24に示されるように、給送期間のうち、定速域と減速域に第2リミット値Ilim2を設定し、加速域にはリミット値Ilim2よりも大きなリミット値Ilim3を第2リミット値として設定してもよい。つまり、可動部材の駆動期間において第2リミット値として複数段階の値を設定してもよい。
図24の例では、加速域は、第1リミット値Ilim1よりも小さな第2リミット値Ilim3に設定されるが、この第2リミット値Ilim3は、定速域の第2リミット値Ilim2よりも大きな値に設定される(Ilim2<Ilim3<Ilim1)。この構成によれば、給送期間における歯欠けを抑制しつつ加速域に必要なトルクを確保できる。また、記録装置11の耐用期間を終える時期は、
図24に二点鎖線で示されるように初期段階の第2リミット値Ilim2よりも大きな値の第2リミット値Ilim21が測定電流値に応じて設定される。よって、記録装置11の使用初期から耐用期間を終えるまで、適切な第2リミット値Ilim2を設定できる。
【0146】
・
図24において、加速域に第1リミット値Ilim1を設定してもよい。
・
図19、
図20、
図24において、給送期間の減速域に第1リミット値Ilim1を設定してもよい。
【0147】
・給送期間は、ピックアップローラー211がカセット27から給送した媒体Mが搬送ローラー対41にニップされるまでの期間または当該期間のうち定速域を含む一部の期間であってもよい。このような給送期間であっても、第2リミット値Ilim2が設定されることで、第1給送機構70を構成する歯車等の部品の破損を抑制できる。
【0148】
・可動部材は、メンテナンス装置60のポンプ63でもよい。媒体搬送装置200は、記録ヘッド25のノズルが開口するノズル面に接触することでノズルを囲む閉空間を形成するキャップ61と、閉空間の空気を吸引して閉空間を負圧にするポンプ63とを有するメンテナンス装置60を備える。可動部材は、ポンプ63であってもよい。この構成によれば、メンテナンス装置60の動力伝達機構であるメンテナンス機構65を構成する歯車等の破損を抑制できる。メンテナンス装置60は、モーターの動力をポンプ63に伝達する動力伝達機構の一例としてメンテナンス機構65を備える。モーターを流れる電流を制限するリミット値を、搬送期間FTに設定される第1リミット値Ilim1よりも、ポンプ駆動期間のうち少なくとも定速域に設定される第2リミット値Ilim2を小さな値に設定してもよい。モーターの電流値測定は、第1切換部90を切り換えずポンプ63を駆動させずに行ってもよいし、第1切換部90を切り換えてポンプ63の空吸引を行ってもよい。ここで、空吸引とは、キャップ61と記録ヘッド25のノズル面とを離間する状態でポンプ63を駆動させる動作である。後者の場合、電流値測定時にポンプ63が駆動されてインク等の液体が記録ヘッド25のノズルから無駄に排出されることがないうえ、得られた測定電流値に、ポンプ63およびメンテナンス機構65の負荷分が含まれるので、より精度の高い第2リミット値Ilim2を設定できる。ポンプ63は、搬送モーター46の正転時に駆動されてもよいし、逆転駆動時に駆動されてもよい。制御部100は、メンテナンスを行うに当たり第2リミット値Ilim2を設定し、ポンプ駆動期間のうち少なくとも一部の期間で、第1リミット値Ilim1よりも小さな第2リミット値Ilim2が設定される。
【0149】
・媒体搬送装置200は、キャップ61とポンプ63とを有するメンテナンス装置60を備える。可動部材は、ポンプ63であってもよい。制御部100は、搬送モーター46を記録媒体Mが搬送されるときの回転方向に正転駆動させてポンプ63を駆動させることで、閉空間を負圧としてノズルから液体を強制的に吸引排出させるメンテナンスを行う。搬送モーター46の測定電流値Imeaを測定するときは、キャップ61をノズル面とを接触させずにポンプ63を駆動させる空吸引を行う。この構成によれば、搬送モーター46の測定電流値Imeaの測定は、空吸引のときに行う。つまり、測定電流値Imeaには、搬送駆動ローラー43を含む搬送系の負荷とポンプ63を駆動するメンテナンス系の負荷とが含まれる。よって、メンテナンス系の負荷をも含むより精度の高い測定電流値Imeaを取得できる。例えば、搬送系の負荷のみを測定し、メンテナンス系の負荷については推定値とし、この推定値を含むオフセット値Iofを加算してリミット値Ilim2を設定することも可能ではある。この場合、推定値を含む分だけ精度は低下する。これに比べてメンテナンス装置60の動力伝達機構であるメンテナンス機構65の負荷も測定できるので、リミット値Ilim2を負荷に応じたより高い精度で設定できる。よって、メンテナンス装置60の動力伝達機構であるメンテナンス機構65を構成する歯車等の破損を抑制できる。
【0150】
・記録媒体Mを載置可能な複数の載置部(給送トレイ22A、カセット27)と、複数の載置部に載置される記録媒体Mをそれぞれ給送する複数の給送ローラー(ピックアップローラー211、給送用ローラー221)と、搬送モーター46の動力を複数の給送ローラーに伝達する複数の給送機構(第1給送機構70、第2給送機構80)とを備える。制御部100は、複数の給送ローラーが駆動される複数の給送期間に異なる値の第2リミット値Ilim2を設定してもよい。この構成によれば、複数の給送機構によって伝達された動力により回転する複数の給送ローラーは、それぞれ異なる給送経路を通って記録媒体を搬送駆動ローラー43まで搬送する。複数の給送機構は、それぞれの構成、給送経路長、給送経路の形状、給送機構の構成部品の摩耗の程度などが異なる。このため、複数の給送機構のうちどの給送機構が選択されて媒体が給送されるかによって、搬送モーター46の負荷は異なる。制御部100は、複数の給送ローラーが駆動される給送期間ごとに異なる値の第2リミット値を設定するので、複数の給送機構ごとに負荷が異なっても、ジャム等の異常発生時に給送機構を構成する歯車等の部品の破損を抑制できるうえ、給送ローラーが給送に必要とするトルクを確保できる。なお、載置部として複数のカセット27が備えられてもよい。
【0151】
・制御部100は、ピックアップローラー211により給送される記録媒体Mの種類の情報である媒体種情報を取得する。媒体種情報に応じた異なる値の第2リミット値を設定してもよい。この構成によれば、記録媒体の種類によって記録媒体がピックアップローラー211によって給送されるときに搬送モーター46にかかる負荷が異なる。制御部100は、ピックアップローラー211により給送される記録媒体Mの種類の情報である媒体種情報を取得する。この媒体種情報に応じて異なる値の第2リミット値を設定する。よって、記録媒体の種類によらず適切なリミット値を設定できる。よって、ピックアップローラー211に動力を伝達する動力伝達機構である第1給送機構70を構成する歯車等の破損をより適切に抑制できる。
【0152】
・可動部材は、記録ヘッド25と媒体支持部材35との間のギャップを媒体種に応じて調整するギャップ調整機構において鉛直方向に移動可能に設けられる記録ヘッド25であってもよい。ギャップ調整機構は、キャリッジ24を支持するガイド軸の両端部に固定されたカム機構を介してガイド軸が搬送モーター46の動力で回転することでキャリッジ24のガイド軸に対する高さ位置が変更される。これにより、記録ヘッド25の高さ位置が変更されることで、記録ヘッド25と媒体支持部材35との間のギャップが調整される。この構成によれば、記録ヘッド25の高さ位置が調整されるギャップ調整期間における歯車の破損等を抑制できる。
【0153】
・モーターを共通の駆動源とする複数の可動部材がある場合、複数の可動部材のそれぞれの駆動期間に設定される各第2リミット値は異なってもよい。例えば、給送ローラーとロック部材68との各駆動期間で設定される第2リミット値の値が異なってもよい。また、給送ローラーとポンプとの各駆動期間で設定される第2リミット値の値が異なってもよい。さらに、給送ローラーとギャップ調整機構における記録ヘッド25との各駆動期間で設定される第2リミット値の値が異なってもよい。
【0154】
・給送部20と搬送部40とがそれぞれ異なるモーターにより駆動されてもよい。すなわち、記録装置11は、給送部20の駆動源としての給送モーターと、搬送部40の駆動源として搬送モーターとを備える。給送モーターの負荷測定時は、給送モーターを駆動すると、給送トレイ22Aまたはカセット27に載置された媒体が給送および搬送されてしまう。このため、ユーザーが測定を希望するときに操作部を操作して記録装置11を測定モードとして行うことが好ましい。モーターの負荷測定のために媒体が給送されるので、実際の給送機構の負荷を含むモーターの負荷を測定することができる。このため、この測定電流値にオフセット値を加算することで、精度の高いリミット値を設定することができる。
【0155】
・前記実施形態では、給送ローラーの一例であるピックアップローラー211およびロック部材68を可動部材としたが、可動部材はピックアップローラー211のみとしたり、ロック部材68のみとしたりしてもよい。前者の場合、給送期間のうち少なくとも一部の期間に測定電流値に基づく第2リミット値を設定することで給送期間における歯車の破損等を抑制できる。また、後者の場合、ロック部材68の駆動期間のうち少なくとも一部の期間に測定電流値に基づく第2リミット値を設定することで、ロック部材68の駆動期間における歯車の破損等を抑制できる。
【0156】
・モーターは、給送ローラーと搬送ローラーとの共通の駆動源である構成に限定されない。給送ローラーと搬送ローラーとを個別に駆動する複数のモーターを備える構成でもよい。
【0157】
・モーターを駆動源とする搬送ローラー以外の可動部材は、ピックアップローラー211およびロック部材68に限定されない。例えば、可動部材は、キャップ61、ワイパー62、ポンプ63、ギャップ調整装置における記録ヘッド25、自動駆動式の排出トレイ機構における排出トレイ、自動カバー開閉機構における排出カバー26、操作パネル角度調整機構における操作パネル15などであってもよい。これらの場合、歯車を含む動力伝達機構は、順番に、キャップ昇降機構、ワイパー払拭機構、ポンプ機構、ギャップ調整機構、トレイ駆動機構、カバー開閉機構、パネル駆動機構となる。例えば、ギャップ調整機構は、記録ヘッド25のノズルが開口するノズル面と媒体支持部材35の支持面35Aとのギャップを調整する機構である。自動駆動式の排出トレイ機構は、モーターの動力で排出トレイを自動で出退させる機構である。自動カバー開閉機構は、装置本体12内に収納された排出トレイを覆う閉状態と排出トレイを露出させる開状態とに、カバーを回動またはスライドにより開閉させる機構である。操作パネル角度調整機構は、操作パネル15の姿勢角度を自動に調整する機構である。例えば、制御部100は、電源投入時に操作パネルを適切な姿勢角に調整し、電源遮断時に操作パネルを収納時の姿勢角に調整する。これらの構成によれば、可動部材が駆動される期間に第2リミット値Ilim2が設定されることで、媒体搬送装置の使用によってモーターにかかる負荷が経時変化しても、適切なリミット値を設定して動力伝達機構を構成する歯車の歯欠け等の不具合の発生を効果的に抑制できる。
【0158】
・給送部20を駆動する専用の給送モーターが設けられた媒体搬送装置でもよい。つまり、給送ローラーの駆動源である給送モーターと搬送ローラーの駆動源である搬送モーター46とが個別に設けられた構成でもよい。この場合、給送モーターが、搬送ローラー以外の他の可動部材と共通の駆動源であってもよい。そして、制御部100は、給送モーターを電流制御することで駆動し、駆動中の給送モーターを流れる電流値を測定電流値Imeaとして測定してもよい。この場合、制御部100は、測定電流値Imeaに予め定められたオフセット値Iofを加算することで、給送モーターに供給する電流のリミット値を設定してもよい。他の可動部材としては、前の項で挙げたものが適用される。
【0159】
・給送モーターを備える構成では、リミット値を設定する対象のモーターは、搬送モーター46に替え、給送モーターでもよい。
・ユーザーが測定モードを選択操作することによりモーターの負荷を測定する負荷測定モードに移行する構成としてもよい。この場合は、切換部を接続状態に切り換えて可動部材の一例である給送ローラー(例えばピックアップローラー211)を駆動させてもよい。この場合、媒体Mに記録することなく媒体Mの給送および搬送のみ行い、モーターの電流値測定後の媒体Mを排出トレイに排出する。この電流値測定では、ピックアップローラー211が駆動されるので、給送期間のより正確な負荷を測定できる。よって、より精度の高いリミット値(例えば第2リミット値Ilim2)を設定することができる。
【0160】
・搬送ローラーが駆動される搬送期間に設定されるリミット値である第1リミット値Ilim1を、測定電流値Imeaに予め定められたオフセット値Iofを加算することで求めてもよい。この場合、リミット値は、第1リミット値Ilim1および第2リミット値Ilim2が設定される構成でもよいし、第1リミット値Ilim1に相当するものが1つだけ設定される構成でもよい。この構成によれば、搬送ローラーが駆動される搬送期間で動力伝達機構を構成する構成部品の破損等の不具合の発生を抑制することができる。
【0161】
・第2リミット値Ilim2を第1リミット値Ilim1よりも大きな値に設定してもよい。この場合、可動部材を駆動する期間で歯車の歯欠けを抑制できる。例えば、搬送モーター46の動力を搬送ローラーに伝達する動力伝達機構47を構成する歯車の破損等を抑制するためにリミット値を一律に低めの固定値に設定する構成に対し、第2リミット値Ilim2をモーターの測定電流値に基づく可変の値に設定することができる。よって、搬送ローラーが駆動される搬送期間では歯車の破損等を抑制しつつ、可動部材が駆動される期間において必要なトルクを確保できる。なお、可動部材の駆動期間では、切換部により搬送ローラーが駆動されない構成が好ましいが、搬送ローラーが駆動される構成であっても、少なくとも搬送期間においては第2リミット値よりも小さな第1リミット値が設定されるため、歯車の破損等が発生しにくい。
【0162】
・負荷測定モードに入る時期は、記録装置11の電源投入時に限定されず、電源投入時に替え、または電源投入時に加え、省電力モードに入る前の時期でもよい。また、電源投入の度にモーターの電流値測定(負荷測定)を行ってもよい。さらに、電源遮断時にモーターの電流値測定を行ってもよい。さらに記録対象の記録媒体Mを給送するときに負荷測定モードに入り、記録対象の記録媒体Mの給送期間に測定した測定電流値Imeaに基づいて搬送モーター46の電流のリミット値を設定してもよい。この場合、記録装置11を最初に使用する1枚目の記録時のみ測定電流値Imeaに基づくリミット値を設定できないものの、2枚目以降の記録時には測定電流値Imeaに基づくリミット値を設定できる。この構成によれば、給送ローラーが駆動された状態の下で測定電流値Imeaを取得できるので、測定電流値Imeaに基づきより精度の高いリミット値を設定できる。
【0163】
・第2給送部22は、ホッパーを有する自動給送部に替え、ユーザーが写真紙等の専用紙を載置する載置部の一例として手挿しトレイを有する構成でもよい。
・搬送部40は、ローラー搬送方式に替え、ベルト搬送方式でもよい。
【0164】
・記録装置11は、記録部23が走査方向Xに往復移動するシリアルプリンターに限定されず、記録部23が主走査方向と副走査方向との2方向に移動可能なラテラル式プリンターでもよい。さらに、記録装置11は、ラインプリンターでもよい。
【0165】
・記録装置11は、読取ユニットを搭載する複合機でもよい。この場合、媒体搬送装置は、記録媒体の一例としての原稿を読み取る読取装置に備えられるものでもよい。また、媒体搬送装置は、シートフィード方式の読取部を備えた読取専用のスキャナー等の読取装置に備えられるものでもよい。このように読取装置の媒体搬送装置は、記録媒体の一例である原稿を給送する給送ローラーと、給送された原稿を読取部に向かって搬送する搬送ローラーと、給送ローラーと搬送ローラーとの個別または共通の駆動源である搬送モーターとを備える。そして、読取装置は、媒体搬送装置と、原稿の画像を読み取る読取部とを備える。このような読取装置においても、搬送モーターの測定電流値にオフセット値を加算して求めたリミット値を設定することで、動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損を抑制できる。
【0166】
・媒体Mは、用紙に限らず、可撓性のプラスチックフィルムや、布帛、不織布などであってもよいし、ラミネートでもよい。
・記録装置11は、用紙等の媒体に記録するプリンターに限定されず、布に印刷する捺染機でもよい。
【0167】
・記録装置11は、インクジェット方式に限定されず、ワイヤインパクト式の記録装置、熱転写式の記録装置であってもよい。
・記録装置は、印刷用のプリンターに限定されない。例えば、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体を吐出し、媒体の一例である基板に電気配線パターン、又は、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)及び面発光などの各種の方式のディスプレイの画素を製造するものでもよい。
【0168】
・本明細書では、モーターが、載置部に載置された記録媒体を記録ヘッドが記録を行う記録領域に向かって搬送するときのモーターの回転方向を正転方向とし、この正転方向へのモーターの回転を正転という。また、モーターの正転方向と反対の方向の回転を逆転といい、そのモーターの逆転する方向を逆転方向という。
【0169】
前記実施形態および変更例から把握される技術思想を、その作用効果と共に以下に記載する。
(A)媒体搬送装置は、記録媒体を搬送する媒体搬送装置であって、前記記録媒体を給送する給送ローラーと、給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの個別または共通の駆動源であるモーターと、前記モーターの動力を前記給送ローラーと搬送ローラーとのうち少なくとも一方に伝達する動力伝達機構と、前記モーターを電流制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定し、当該測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定する。
【0170】
この構成によれば、モーターのその時々の負荷に応じた適切なリミット値を設定することができる。このため、モーターの動力で給送ローラーまたは搬送ローラーが駆動されるときに動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等を抑制できるうえ、記録装置の使用開始初期段階から耐用期間を終えるまで経時変化するその時々の負荷に応じた適切なリミット値を設定することができる。よって、媒体搬送装置の使用によってモーターにかかる負荷が経時変化しても、動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を効果的に抑制できる。
【0171】
(B)媒体搬送装置は、記録媒体を搬送する媒体搬送装置であって、前記記録媒体を給送する給送ローラーと、給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラー以外の可動部材と、モーターと、前記モーターの動力を前記可動部材に伝達する動力伝達機構と、前記モーターを電流制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定し、当該測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定する。
【0172】
この構成によれば、モーターのその時々の負荷に応じた適切なリミット値を設定することができる。このため、モーターの動力で可動部材が駆動されるときに動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損を抑制できるうえ、記録装置の使用開始初期段階から耐用期間を終えるまで経時変化するその時々の負荷に応じた適切なリミット値を設定することができる。よって、媒体搬送装置の使用によってモーターにかかる負荷が経時変化しても、動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を効果的に抑制できる。
【0173】
(C)上記媒体搬送装置において、前記可動部材は、前記給送ローラーであり、前記モーターは、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの共通の駆動源であってもよい。この構成によれば、モーターの部品点数を少なくできる。
【0174】
(D)上記媒体搬送装置において、前記制御部は、前記電流のリミット値を、前記動力伝達機構に最も荷重のかかる期間に設定し、当該期間では、前記電流のリミット値を、当該期間以外の期間に予め設定される第1リミット値よりも小さな第2リミット値に設定してもよい。
【0175】
この構成によれば、動力伝達機構を構成する歯車に最も荷重のかかる期間において、電流のリミット値が、当該期間以外の期間に設定される第1リミット値よりも小さな第2リミット値に設定される。よって、可動部材を駆動させるときに動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制できる。
【0176】
(E)上記媒体搬送装置において、前記可動部材は、前記給送ローラーであり、前記電流のリミット値を前記第2リミット値に設定する期間は、前記給送ローラーが駆動される給送期間のうち前記給送ローラーの最大速度域を含む期間であってもよい。
【0177】
この構成によれば、媒体を給送する給送期間において動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制することができる。
(F)上記媒体搬送装置において、前記モーターの動力によって回転する前記搬送ローラーの回転動力を伝達する第1動力伝達機構と、前記第1動力伝達機構の回転動力を前記可動部材に伝達する第2動力伝達機構と、前記第1動力伝達機構と前記第2動力伝達機構とを接続状態と切断状態とに切り換える切換部とを備え、前記制御部は、前記切換部による切り換え状態に応じて、前記可動部材が駆動される期間のうち少なくとも一部の期間に、前記電流のリミット値として、前記可動部材が駆動されない期間に設定される第1リミット値よりも小さな第2リミット値を設定してもよい。
【0178】
この構成によれば、可動部材が駆動される期間のうち少なくとも一部の期間で、モーターの電流が、可動部材が駆動されないときの第1リミット値よりも小さな第2値リミット値に制限される。よって、可動部材が駆動されるときに動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制することができる。
【0179】
(G)上記媒体搬送装置において、前記可動部材は、前記給送ローラーであり、前記制御部は、前記給送ローラーが駆動される給送期間に、前記電流のリミット値として、前記搬送ローラーが前記記録媒体を搬送する搬送期間に設定される第1リミット値よりも小さな第2リミット値を設定し、前記切換部を前記接続状態から前記切断状態に切り換えることで、前記給送期間から前記搬送期間に切り換わると、前記電流のリミット値を、前記第2リミット値から前記第1リミット値に変更してもよい。
【0180】
この構成によれば、給送期間から搬送期間に切り換わると、第2リミット値から第1リミット値へ変更されるので、給送期間における歯車の歯欠け等の不具合の発生を抑制しつつ搬送期間に媒体の搬送に必要な大きなトルクを確保できる。例えば、モーターのトルク不足に起因する媒体の搬送位置のばらつきを抑制できる。
【0181】
(H)上記媒体搬送装置において、前記記録媒体に記録する記録ヘッドが設けられるキャリッジを待機位置にロックするロック位置と、前記キャリッジを待機位置から移動可能にロックを解除するロック解除位置との間を移動するロック部材を備え、前記可動部材は、前記ロック部材であってもよい。
【0182】
この構成によれば、ロック部材が駆動されるときに動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制できる。
(I)上記媒体搬送装置において、前記記録媒体のジャムの復旧操作を行うときに操作される操作部を備え、前記切換部は、前記記録媒体に記録する記録ヘッドが設けられるキャリッジが前記記録媒体の搬送方向と交差する方向である走査方向に移動する走査経路上の所定の切換位置に移動することで切り換えられる構成であり、前記可動部材は、前記キャリッジを待機位置にロックするロック位置と、前記キャリッジを待機位置から移動可能にロックを解除するロック解除位置との間を移動するロック部材であり、前記モーターが前記記録媒体を搬送する回転方向に正転駆動するときに、前記ロック部材は前記ロック位置から前記ロック解除位置へ移動し、前記制御部は、前記媒体のジャムを検出すると、前記キャリッジを前記待機位置に移動させて待機させるとともに、前記ロック部材を前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させ、その後、前記操作部による復旧操作を受け付けると、前記第2リミット値を設定したうえで、前記モーターを正転駆動させて前記ロック部材を前記ロック位置から前記ロック解除位置へ移動させてもよい。
【0183】
この構成によれば、ジャムが発生してモーターの駆動を停止したとき、キャリッジを待機位置に移動させるとともにキャリッジはロック位置に移動したロック部材により待機位置に保持される。その後、ジャムの媒体を取り除くなどの復旧作業を行ったユーザーが、記録装置に対して復旧操作を行う。復旧操作を受け付けた制御部は、リミット値を第2リミット値に設定した後、モーターを正転駆動させる。このため、仮にジャムの記録媒体が取り除かれることなくモーターが給送時と同じ回転方向に正転駆動されたとしても、モーターに供給される電流値が第2リミット値に制限されるので、動力伝達機構を構成する歯車にかかる負荷が抑制される。よって、ジャム発生後の復旧動作時に動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制することができる。
【0184】
(J)上記媒体搬送装置において、前記制御部は、前記キャリッジのロックが解除されると、前記電流のリミット値を前記第2リミット値から前記第1リミット値に変更してもよい。
【0185】
この構成によれば、ロック部材がロック位置からロック解除位置へ移動するときはモーターが記録媒体を搬送する方向に駆動されるが、モーターの電流を制限する第2リミット値が設定されることで、仮にジャムの記録媒体が搬送経路上に残っていても、歯車の歯欠け等の不具合の発生を抑制できる。そのうえ、ロックが解除された後は、モーターのリミット値が、第2リミット値から第1リミット値に変更される。例えば、その後、ロック部材がロック解除位置からロック位置へ移動するロック過程でロック解除過程のときよりも大きなトルクを確保できる。例えば、キャリッジをより確実にロックできる。
【0186】
(K)上記媒体搬送装置において、前記記録媒体を載置する複数の載置部と、複数の前記載置部に載置された前記記録媒体をそれぞれ給送する複数の前記給送ローラーと、前記モーターの動力を複数の前記給送ローラーに伝達する複数の給送機構とを備え、前記制御部は、複数の前記給送ローラーが駆動される複数の前記給送期間に異なる値の前記第2リミット値を設定してもよい。
【0187】
この構成によれば、複数の給送機構によって伝達された動力により回転する複数の給送ローラーは、それぞれ異なる給送経路を通って記録媒体を搬送ローラーまで搬送する。複数の給送機構は、それぞれの構成、給送経路長、給送経路の形状、給送機構の構成部品の摩耗の程度などが異なる。このため、複数の給送機構のうちどの給送機構が選択されて媒体が給送されるかによって、モーターの負荷は異なる。制御部は、複数の給送ローラーが駆動される給送期間ごとに異なる値の第2リミット値を設定するので、複数の給送機構ごとに負荷が異なっても、ジャム等の異常発生時に給送機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制できるうえ、給送ローラーが給送に必要とするトルクを確保できる。
【0188】
(L)上記媒体搬送装置において、前記制御部は、前記給送ローラーにより給送される前記記録媒体の種類の情報である媒体種情報を取得し、前記媒体種情報に応じて異なる値の第2リミット値を設定してもよい。
【0189】
この構成によれば、記録媒体の種類によって記録媒体が給送ローラーによって給送されるときにモーターにかかる負荷が異なる。制御部は、給送ローラーにより給送される記録媒体の種類の情報である媒体種情報を取得し、この媒体種情報に応じて異なる値の第2リミット値を設定する。よって、記録媒体の種類によらず適切なリミット値を設定できる。よって、給送ローラーに動力を伝達する動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生をより適切に抑制できる。
【0190】
(M)上記媒体搬送装置において、前記記録媒体に記録する記録ヘッドのノズルが開口するノズル面に接触することで前記ノズルを囲む閉空間を形成するキャップと、前記閉空間の空気を吸引して当該閉空間を負圧にするポンプとを有するメンテナンス装置を備え、前記可動部材は、前記ポンプであってもよい。
【0191】
この構成によれば、メンテナンス装置の動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制できる。
(N)上記媒体搬送装置において、前記記録媒体に記録する記録ヘッドのノズルが開口するノズル面に接触することで前記ノズルを囲む閉空間を形成するキャップと、前記閉空間の空気を吸引して当該閉空間を負圧にするポンプとを有するメンテナンス装置を備え、前記可動部材は、前記ポンプであり、前記制御部は、前記モーターを前記記録媒体が搬送されるときの回転方向に正転駆動させて前記ポンプを駆動させることで、前記閉空間を負圧として前記ノズルから液体を強制的に吸引排出させるメンテナンスを行い、前記モーターの前記測定電流値を測定するときは、前記キャップと前記ノズル面との間に閉空間を形成せずに前記ポンプを駆動させる空吸引を行ってもよい。
【0192】
この構成によれば、モーターの測定電流値の測定は、空吸引のときに行う。つまり、測定電流値には、搬送ローラーを含む搬送系の負荷とポンプを駆動するメンテナンス系の負荷とが含まれる。よって、メンテナンス系の負荷をも含むより精度の高い測定電流値を取得できる。例えば、搬送系の負荷のみを測定し、メンテナンス系の負荷については推定値とし、この推定値を含むオフセット値を加算してリミット値を設定することも可能ではある。この場合、推定値を含む分だけ精度は低下する。これに比べてメンテナンス装置の動力伝達機構の負荷も測定できるので、リミット値を負荷に応じたより高い精度で設定できる。よって、メンテナンス装置の動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を抑制できる。
【0193】
(O)記録装置は、上記媒体搬送装置と、前記記録媒体に記録する記録ヘッドとを備える。この構成によれば、記録装置は、媒体搬送装置を備えるので、上記媒体搬送装置と同様の作用効果が得られる。
【0194】
(P)媒体搬送装置の制御方法は、記録媒体を給送する給送ローラーと、給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、前記給送ローラーと前記搬送ローラーとの個別または共通の駆動源であるモーターと、前記モーターの動力を前記給送ローラーと前記搬送ローラーとのうち少なくとも一方に伝達する動力伝達機構と、前記モーターを駆動制御する制御部とを備える媒体搬送装置の制御方法であって、前記制御部が、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定することと、前記制御部が、前記測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定することとを備える。
【0195】
この方法によれば、媒体搬送装置の使用によってモーターにかかる負荷が経時変化しても、動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を効果的に抑制できる。
【0196】
(Q)媒体搬送装置の制御方法は、記録媒体を給送する給送ローラーと、給送された前記記録媒体を搬送する搬送ローラーと、前記搬送ローラー以外の可動部材と、モーターと、前記モーターの動力を前記可動部材に伝達する動力伝達機構と、前記モーターを駆動制御する制御部とを備える媒体搬送装置の制御方法であって、前記制御部が、前記モーターの駆動中の電流値を測定電流値として測定することと、前記制御部が、前記測定電流値に、予め定めたオフセット値を加算することで、前記モーターに供給する電流のリミット値を設定することとを備える。
【0197】
この方法によれば、媒体搬送装置の使用によってモーターにかかる負荷が経時変化しても、動力伝達機構を構成する歯車等の部品の破損等の不具合の発生を効果的に抑制できる。
【符号の説明】
【0198】
11…記録装置、12…装置本体、14…給送カバー、13…カバー、15…操作パネル、16…電源ボタン、17…液体供給源、18…収容部、18a…供給カバー、19…窓部、20…給送部、21…第1給送部、211…可動部材および給送ローラーの一例であるピックアップローラー、22…第2給送部、22A…載置部の一例としての給送トレイ、22B…エッジガイド、221…給送用ローラー、23…記録部、24…キャリッジ、25…記録ヘッド、26…排出カバー、27…載置部の一例としてのカセット、28…媒体検出器、30…メインフレーム、30A…ガイドレール、31…移動機構、32…キャリッジモーター、33…タイミングベルト、34…リニアエンコーダー、35…媒体支持部材、35A…支持面、40…搬送部、41…搬送ローラー対、42…排出ローラー対、43…搬送ローラーの一例としての搬送駆動ローラー、44…搬送従動ローラー、45…排出駆動ローラー、46…搬送モーター、47…動力伝達機構、48…ベルト、49…ロータリーエンコーダー(エンコーダー)、49A…回転スケール、49B…光学センサー、50…歯車群、51…歯車、52…歯車、53…歯車、54…入力歯車、60…メンテナンス装置、61…キャップ、62…ワイパー、63…ポンプ、65…メンテナンス機構、66…歯車、67…歯車群、68…ロック部材、69…廃液タンク、70…第1給送機構、71…揺動軸、72…揺動部材、73…回転軸、74…歯車列、75…歯車、76…歯車群、80…第2給送機構、85…第2切換部、90…切換部の一例としての第1切換部、91…スライダー、92…弾性部材、93…当接部、94…係合部、95…カム部材、96…切換歯車、100…制御部、101…第1カウンター、102…第2カウンター、103…演算部、104…モーター制御部、105…モータードライバー、106…不揮発性メモリー、107…DAC、200…媒体搬送装置、X…走査方向(幅方向)、Y…搬送方向、Y0…搬送方向、Z1…鉛直方向、M…記録媒体(媒体)、HP…待機位置の一例であるホーム位置、AH…反ホーム位置、Ilim1…第1リミット値、Ilim2,Ilim21,Ilim3…第2リミット値、Imea…測定電流値(負荷電流)、Iof…オフセット値、ST…給送期間、FT…搬送期間、LT…キャリッジロック解除動作期間。