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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】配線シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240717BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240717BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240717BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240717BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20240717BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20240717BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H05K1/02 J
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
H05K3/12 610B
H05K3/10 D
H05K3/28 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020122959
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019237
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩孝
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070854(JP,A)
【文献】特開2011-233625(JP,A)
【文献】特開2018-056321(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053160(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/045108(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
C09D 201/00
C09D 7/61
C09D 7/65
H05K 3/12
H05K 3/10
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性基材上に、端子部を含む電気的引き出し線パターン及び導電性を有するラインパターンを設けてなる配線シートであって、
前記ラインパターンの断面形状がアスペクト比2以上であり、
前記端子部を含む電気的引き出し線パターンの、端子部と反対側の端部に、前記ラインパターンの端部が接触して電気的に接続してなり、
前記電気的引き出し線パターンの端部と前記ラインパターンの端部とが接触した部分を少なくとも含む箇所を樹脂で被覆し、伸縮しないように固着してなる、ことを特徴とする配線シート。
【請求項2】
前記電気的引き出し線パターンの端部と前記ラインパターンの端部とが接触した部分を少なくとも含む箇所を被覆する前記樹脂は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、またはアクリル樹脂である、ことを特徴とする請求項1に記載の配線シート。
【請求項3】
前記ラインパターンは、シリコーンと銀とを含む、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線シートを製造する方法であって、
伸縮性基材上に、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ディスペンサ印刷、インクジェット法のいずれかの印刷方法を用いて、端子部を含む電気的引き出し線パターンを形成する工程と、
コーターヘッド又はディスペンサを用いて塗布剤を吐出する手段を用いて、断面形状がアスペクト比2以上のラインパターンを形成する工程と、
を少なくとも備えることを特徴とする配線シートの製造方法。
【請求項5】
前記電気的引き出し線パターンの端部と前記ラインパターンの端部とが接触した部分を少なくとも含む箇所を、樹脂で被覆し固着させる工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の配線シートの製造方法。
【請求項6】
記塗布剤が、無機フィラー又は有機フィラーを分散したバインダーと有機溶剤および添加溶剤からなり、
前記有機溶剤が水溶性である場合は前記添加剤は非水溶性とし、
前記有機溶剤が非水溶性である場合は前記添加剤は水溶性とした、
ことを特徴とする請求項または請求項に記載の配線シートの製造方法
【請求項7】
前記有機溶剤がシリコーンであり、
前記添加溶剤がエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートである、
ことを特徴とする請求項6に記載の配線シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に配置された導電性配線パターンを有する配線シートに関し、特には伸縮性基材を用いた配線シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプリンタブルエレクトロニクス技術分野などにおいて、導電材料や絶縁材料をグラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェットなどの印刷法によって配線パターンを形成する試みがなされている。
【0003】
しかしこれらの技術では、例えば図7に見られるように、印刷パターンの断面形状701が半円形状(いわゆる蒲鉾状)で、かつパターンの幅に比べて高さが低い(アスペクト比が低い)形状の印刷しかできていない。今後要求されるトレンドとしては、印刷断面形状がより矩形で、アスペクト比が高い印刷が望まれている。
【0004】
一般的に使われているストライプ塗布用のコーターヘッドの吐出口は、例えば図8に示すような矩形(もしくは丸形、三角形、凸形、台形、ひし形、M形など)の吐出口801で、数μmから数100μm、あるいは数mmなどの吐出口径で形成される。
【0005】
特に、数μmから数100μmの吐出口径の吐出口801が形成されたコーターヘッドを使用した場合、吐出流路802、吐出口801付近のコーターヘッドと塗布剤806との摩擦によるせん断応力によって、図の矢印で示した吐出流路中央の流速(せん断速度)803と吐出流路壁面の流速(せん断速度)804に差が生じてしまう。
その場合、吐出口径の寸法よりも外側へ広がって吐出されてしまうため、吐出物の形状は、矩形もしくは丸型、三角形、凸形、台形、ひし形、M形などの吐出口形状そのまま維持した形で吐出されずに、外側に膨らんだ丸味を帯びた形状805でライン吐出されてしまう。
【0006】
また、数1000cpから数1000000cpといった高粘度の塗布剤806を用いた場合、数μmから数100μmの吐出口径のコーターヘッドでは塗布剤806との摩擦によるせん断応力が高くなり、吐出できない現象が発生する。
【0007】
そこで、一般的に行われている対処法は、コーターヘッドへの吐出圧力をさらに上げるか、塗布剤806の粘度を下げる為に同じSP値と言われる25℃における溶解度パラメーター値が近い溶剤を添加して使用する。コーターヘッドに限らず、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェットなどと言った印刷法も同様である。
【0008】
しかしこの方法によっても、微細なパターンを要求される分野、例えば微細配線回路を有する配線シートにおいては要求仕様に対して不充分であり、パターン断面が吐出口の形状に忠実な矩形で、かつ高アスペクト比のパターン形成が可能であることが望まれている。
【0009】
矩形でアスペクト比が高いパターンを得ることができると、例えば、導電材料を用いて配線パターンを印刷形成した場合、より矩形に近づけられるので、単純に底辺寸法×高さ寸法のみで断面積を求めることができ、正確な配線抵抗値などを簡単に求めることができる。
また、アスペクト比が高い断面形状(底辺が狭く、高さが高い)であれば、例えば、電
子回路において密集した配線を狭い面積に集約することができ、かつ、配線に流れる電流をより多く流すことが可能となる。
【0010】
そのための手段として、例えば特許文献1では、塗布剤の主溶剤と相反する非水溶性または水溶性の溶剤を添加することによって、塗布装置のコーターヘッドの吐出口の形状を維持して塗布剤が吐出されるという技術が提案されている。
【0011】
しかしながら、上記の方法は塗布剤の構成や塗布装置の吐出方法に関する提案であって、伸縮性の基材上に形成した印刷物において、伸縮後のパターン特性をも安定的に維持できる配線シートが得られるものではなかった。
【0012】
近年、伸縮性の基材に対して、伸縮性の銀、カーボン、CNT、グラフェン、銅等を含むペーストを導電材料として使ったストレッチャブル配線、回路、FPCなどの印刷物が多く用いられているが、この印刷物を伸ばした際に、配線抵抗の変化を少なくできる事が望まれている。
特に、ロボテックス、ヘルスケアなどの分野において、ウレタンやシリコーンなどの伸縮性の基材に導電性の伸縮性を有するインキによる回路形成を行う技術が、センサーなどの分野に使用されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2018-70854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、伸縮性がある導電性インキは、ウレタンやシリコーンといった非導電性の有機系高分子材料からなる基材上への塗布が必須となっており、体積抵抗率においては、数10μΩ・cmから数100μΩ・cmといった範囲の特性に留まっている。
【0015】
従って、例えば、LEDなどある程度の電流量が必要な電子部材を実装した場合、伸縮前は必要な電流量が得られて点灯しても、ある程度伸縮させると電流量が減少して消灯してしまう事が起こる。電流量は、オームの法則である電流(I)=電圧(V)÷抵抗(R)の関係から、電圧が一定として、伸縮性導電性インキで形成された導線の抵抗値(配線抵抗値)が大きくなると、導線に流れる電流値は小さくなり、LEDの点灯に必要な電流が流れなくなり消灯してしまうことになる。
【0016】
また、導線の抵抗値(配線抵抗値)は、導線の長さに比例し、断面積に反比例するから、導線の断面積が大きいほど抵抗値が下がり、多くの電流量を流せる様になる。
もしも、これまで難しかった、例えば線幅100μmの高さ200μm(アスペクト比2)や線幅100μmの高さ700μm(アスペクト比7)といった断面積の大きな伸縮性のある配線を形成できれば、配線幅を大きくせずに導線に流すことが出来る電流量が大きくなるから、伸縮時に変化する例えばLEDの点灯に必要な電流量の下限値や上限値を外れることを回避する事ができる。
【0017】
その為、伸縮性があり、かつ配線抵抗値の変化が小さい配線シートが得られる技術が、今後のストレッチャブル、伸縮性材料で開発されるウエアラブル業界で望まれている。
【0018】
そこで上記問題点に鑑み、本発明は、伸縮性基材基材上においても矩形で高いアスペクト比の断面形状が得られ、かつ、伸縮させても配線抵抗値の変化が小さい配線構造を有する配線シートおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明に係る配線シートは、
伸縮性基材上に、端子部を含む電気的引き出し線パターン及び導電性を有するラインパターンを設けてなる配線シートであって、
前記ラインパターンの断面形状がアスペクト比2以上であり、
前記端子部を含む電気的引き出し線パターンの、端子部と反対側の端部に、前記ラインパターンの端部が接触して電気的に接続してなる。
【0020】
また、本発明に係る配線シートは、
前記電気的引き出し線パターンの端部に前記ラインパターンの端部が接触した部分を少なくとも含む箇所を樹脂で被覆し固着してなるものであってもよい。
【0021】
また、本発明に係る配線シートは、
前記ラインパターンが、コーターヘッド又はディスペンサーを用いて塗布剤を吐出して形成されており、前記塗布剤が、無機フィラー又は有機フィラーを分散したバインダーと有機溶剤および添加溶剤からなり、
前記有機溶剤が水溶性である場合は前記添加剤は非水溶性とし、
前記有機溶剤が非水溶性である場合は前記添加剤は水溶性としたものであってもよい。
【0022】
さらに本発明の配線シートの製造方法は、
伸縮性基材上に、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ディスペンサ印刷、インクジェット法のいずれかの印刷方法を用いて、端子部を含む電気的引き出し線パターンを形成する工程と、
コーターヘッド又はディスペンサを用いて塗布剤を吐出する手段を用いて、断面形状がアスペクト比2以上のラインパターンを形成する工程と、
を少なくとも備える。
【0023】
また、本発明に係る配線シートの製造方法は、
前記電気的引き出し線パターンの端部と前記ラインパターンの端部とが接触した部分を少なくとも含む箇所を、樹脂で被覆し固着させる工程を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高アスペクト比のパターンが形成できる為、導電性インキで形成した場合、断面積を縦×横の寸法のみで精度良く計算することができ、非破壊でかつ安定した電気抵抗値を示す導線を形成できる。
また、基材に対し、垂直に切立った面を形成できる為、ライン吐出の場合、例えば矩形のラインの間隙を極限まで詰めた構造体を作ることができる。
また、アスペクト比(高さ÷底辺)2以上の矩形パターンを形成することができ、狭い幅により多くのライン形成が可能になる。
さらに、これまで難しかった線幅100μmで高さ700μm(アスペクト比7)といった断面積の大きな伸縮性のある配線を形成でき、導線に流すことができる電流量が大きくなり、伸縮時に変化する、例えばLEDの点灯に必要な電流量の下限上限値を外れることを回避する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る伸縮部が高アスペクト比の配線シート概要図。
図2】本発明の実施形態に係る伸縮部が高アスペクト比の配線シート概要図。
図3】本発明の実施形態に係る塗布剤構成の塗布剤を使って吐出した場合の説明図。
図4】本発明の実施形態に係るラインパターンの断面形状を説明する模式図。
図5】本実施形態に係るラインパターンのSEM断面形状観察画像。
図6】本実施形態に係るラインパターンのSEM断面形状観察画像。
図7】従来の印刷パターンの断面形状のSEM観察図。
図8】一般的に使われているストライプ塗布用コーターヘッド吐出の説明図。
図9】一般的な塗布剤構成で吐出した場合の形状のSEM観察断面図。
図10】実施例と比較例の配線シートの伸縮試験による配線抵抗変化の比較図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を以下に詳述する。
【0027】
(配線シート及び製造工程)
本発明に係る配線シートの実施形態を図1及び図2に示し、その製造工程についても説明する。なお本発明はこれらの実施形態に限定するものではなく、材料や配線パターンにも制限はなく、同様な技術的特徴を有する限り本発明に属するものである。また、例示した寸法値などの数値は一例であり、特に限定するものではない。製造条件においても、特に制限はなく、適宜条件を設定してよい。
【0028】
図1に示す配線シート100は、伸縮性基材101上に配線パターンを形成している。配線パターンは、端子部を含む電気的引き出し線102が形成され、その中間領域に複数のラインパターンからなるストライプラインパターン104が形成されている。
ここでストライプラインパターン104は、長手方向の長さを例えば120mmとし、その始端と終端部分が、端子部を含む電気的引き出し線102に対し1mm程重なる位置103に各ラインパターンが重ね合わさるように形成されている。
【0029】
伸縮性基材101の素材は、特に制限はなく、ある程度伸縮性を有する素材であればよい。例えば、シリコンエラストマーフィルムを用いることができる。基材の厚さも同様に、基材の伸縮性が適切な値となるように適宜選定すればよい。
【0030】
続いて図1に示す配線シート100の製造工程を説明する。
まず伸縮性基材101上に、端子部を含む電気的引き出し線102のパターンを印刷によって形成する。印刷方法には特に限定はなく、例えばスクリーン印刷、ステンシル印刷、ディスペンサー、インクジェットなどの公知の印刷方法によって印刷することができる。
【0031】
次に、塗布剤を塗布するためのディスペンスコントローラーと卓上ロボットに搭載したラインコーターヘッドを備えた吐出装置を用意する。
この吐出装置を操作して、ラインコーターヘッドの吐出口を、伸縮性基材101上の所望の位置にアライメントする。本実施形態では、図1に示すように、電気的引き出し線102の中間領域の端部において1mm程重なる位置103にアライメントする。
【0032】
吐出装置のラインコーターヘッドには、例えば縦1000μm×横100μmの矩形の吐出口径を1000μmピッチで10本形成してあり、伸縮性基材101上に、基材面から0.3mm吐出口を離した状態で、吐出圧500キロパスカル、ヘッドスピード100mm/秒で、後述する材料構成の塗布剤を用いて120mm長のストライプラインパターンを吐出することで、ストライプラインパターン104が形成される。そして焼成によって樹脂成分を架橋・硬化させて、高アスペクト比の配線パターンを有する配線シート100が得られる。
【0033】
このような工程により、端子部を含む電気的引き出し線102と、後述する構成の塗布剤を使って縦1000μm×横100μmの吐出口から吐出された縦700μm×横100μmの矩形の断面積を持つアスペクト比7のストライプラインパターン104の始端と終端それぞれ1mmとが重なって、ラインパターン104と電気的引き出し線104とが電気的に接続された状態となる。
【0034】
次に、図2に示す配線シート200は、図1と同様に伸縮性基材101上に配線パターンが形成されているが、電気的引き出し線102とストライプラインパターン104とを重ねた部分を少なくとも含む箇所を、樹脂201で被覆して固着している。
このようにすることで、配線シートの変形によりストライプラインパターンが伸縮しても、電気的引き出し線は伸縮を抑制することができる。
【0035】
図2に示す配線シート200の製造工程を説明する。
伸縮性基材101上に電気的引き出し線102とストライプラインパターン104とを形成するまでの工程は、前述の配線シート100の製造工程と同じである。
次に、焼成による硬化を行った後、端子部を含む電気的引き出し線102の両側端部、すなわち先ほどラインパターン104と重ねた部分を少なくとも含む箇所を、樹脂201で被覆して固着させて、高アスペクト比の配線パターンを有する配線シート200が得られる。
【0036】
樹脂201を基材上で固着させることで、端子部を含む電気的引き出し線102が伸縮しないように固定され、かつ、縦700μm×横100μmの矩形の断面積を持つアスペクト比7のストライプラインパターン104の中央部分202が伸縮する様になる。ここで、樹脂201で被覆しない中央部分202の幅は例えば80mmである。
【0037】
本実施形態に係る配線シートを得るために、高アスペクト比のパターンを形成する方法として、次の構成の塗布剤を用いることができる。以下、塗布剤の構成について詳述する。
【0038】
(塗布剤の構成)
本発明に係る実施形態では、下記構成の塗布剤を用いることが望ましい。
塗布剤の構成は、無機フィラーまたは有機フィラー(顔料)を分散したポリマー(バインダー)と、溶剤(有機溶剤)および必要に応じて添加される添加剤から成り、さらに、前記有機溶剤および添加剤の主溶剤が非水溶性であれば水溶性溶剤を混合し、主溶剤が水溶性であれば非水溶性溶剤を混合したものとする。
【0039】
具体的には、充填剤、印刷用途などに開発された導電材料である銀ペースト、銅ペースト、あるいは導電インキ等のフィラー量が50~99.9%の塗布材料を構成するポリマー(バインダー)を、次のようにして調整する。
まず、分散する溶剤および添加剤の主溶剤の非水溶性または水溶性か否かを調査する。次に、その塗布剤の物性を破壊しない極性の違う溶剤を選定し、この溶剤と主溶剤との組み合わせ、および添加量を調整し、上記フィラーを分散して塗布剤とする。
【0040】
塗布剤の構成成分としては、ポリマー(バインダー)、顔料(着色、防錆、体質、その他機能性顔料など)、溶剤(有機溶剤、水など)および上記の添加剤などである。
【0041】
塗布剤を構成する際に一般的に使われている溶解性パラメーター(Solubility Parameter:SP、またはSP値 以下SP値と略す)の考え方としては、溶媒と溶質間に作用する力を分子間力と仮定した分子間力を凝集力の尺度として、SP値の差が小さい2つの成分は混ざりやすく(溶解度が大きい)、SP値の差が大きい2つの成分は混ざり難い(溶解度が小さい)ことが通説である。
従来はこの考え方により、一般的な印刷用途で使用する塗布剤はSP値の差が小さいポリマー(バインダー)と溶剤(有機溶剤、水など)および添加剤を混合し、商品化、使用
されている。
【0042】
一方、本発明では全く異なる考え方を定義する。つまり、溶解性パラメーターを検討するのではなく、使用する塗布剤の主溶媒、主溶剤が非水溶性溶剤を使用しているのか、水溶性溶剤を使用しているのかを重視した考えである。
【0043】
本発明で用いる塗布剤の構成は、塗布したい塗布剤の主溶剤、主溶剤である有機溶剤が、非水溶性か水溶性かを確認し、非水溶性が主溶剤ならば、水溶性の有機溶剤を添加して使用する。
その考え方の例えとして、ゴム(ポリマー)と油(溶剤)の混合を例にとると、ゴム(ポリマー)と油(溶剤)を混合した場合、ゴムは膨潤する。これは、ゴムの分子間に油が入り込む現象で、油がゴムと混ざりやすければ膨潤し、混ざり難ければ膨潤し難いという事になる。つまり、塗布剤の主溶剤が非水溶性の場合、水溶性の溶剤を添加することで、極性の異なる物質、ここでは非水溶性溶剤と水溶性溶剤は、お互いに混ざり難いという事から、主溶剤が非水溶性溶剤の塗布剤表面に水溶性溶剤が浮き上がった状態が形成されることになる。
【0044】
(溶剤)
一般的に充填剤、印刷法などで使用されるインキの溶剤組成物は、溶剤と下記式(1)で表される化合物(但し、モノヒドロキシステアリン酸を除く)を含む溶剤組成物である。
1-CH2-R2 (1)
(式中、R1はモノヒドロキシアルキル基を示し、R2はカルボキシル基(C(=O)OH)又はアミド基(C(=O)NH2)を示す)
【0045】
前記溶剤としては、例えばn-ヘプタン(SP値:7.3)、n-プロパノール(SP値:11.8)、1,2,5,6-テトラヒドロベンジルアルコール(SP値:11.3)、ジエチレングリコールエチルエーテル(SP値:10.9)、3-メトキシブタノール(SP値:10.9)、トリアセチン(SP値:10.2)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.2)、シクロペンタノン(SP値:10.0)、γ-ブチロラクトン(SP値:9.9)、シクロヘキサノン(SP値:9.9)、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル(SP値:9.8)、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.7)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(SP値:9.7)、1,4-ブタンジオールジアセテート(SP値:9.6)、3-メトキシブチルアセテート(SP値:8.7)、プロピレングリコールジアセテート(SP値:9.6)、乳酸エチルアセテート(SP値:9.6)、ε-カプロラクトン(SP値:9.6)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(SP値:9.5)、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(SP値:9.5)、1,6-ヘキサンジオールジアセテート(SP値:9.5)、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.4)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(SP値:9.4)、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.3)、シクロヘキサノールアセテート(SP値:9.2)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値:9.0)、エチレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:9.0)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:8.9)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:8.9)、メチルアセテート(SP値:8.8)、エチルアセテート(SP値:8.7)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値:8.7)、n-プロピルアセテート(SP値:8.7)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:8.7)、3-メトキシブタノールアセテート(SP値:8.7)、ブチルアセテート(SP値:8.7)、イソプロピルアセテート(SP値:8.5)、テトラヒドロフラン(SP値:8.3)、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(SP値:8.0)、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(SP値:8.0)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(SP値:7.9)、プロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(SP値:7.8)、プロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(SP値:7.8)等を挙げることができる。
【0046】
なお、ここで上げた溶剤の25℃における溶解パラメーター(SP値:Fedors計算値)は7.3~11.8程度であるが、本実施形態ではSP値は選択する溶剤の参考とした位置づけでしかなく、重要なのは、これらの溶剤が非水溶性か水溶性かを判断し、主溶剤の真逆の溶剤を添加する組み合わせである。
【0047】
(非水溶性と水溶性の定義)
非水溶性と水溶性の定義であるが、第4類危険物の水溶性液体についての定義を示す。第4類危険物は、引火性液体である。さらに(1)水に溶けるもの(水溶性)、(2)水に溶けないもの(非水溶性)に分けられる。政令上、次のように定義されている。
【0048】
水溶性液体は、1気圧20℃で同容量の純水との混合液が均一な外観を維持するもので、非水溶性液体は水溶性液体以外のものとし、非水溶性の液体は、水と混合したとき2つの層に分かれる。液体の比重が水より小さければ水の層の上に、比重が水より大きければ水の層より下に、非水溶性の層ができる。水溶性液体の場合、混合すると層が分かれることなく均一になる。
特殊引火物のジエチルエーテルや第1石油類の酢酸エチルなどのように、水にわずかに溶けるものもあるが、定義上、これらは非水溶性に分類される。
【0049】
従って、上記非水溶性及び水溶性の定義をもとに上記溶剤を分類すると、以下のようになる。
【0050】
(水溶性溶剤)
水溶性溶剤は、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値:8.8)、n-プロパノール(SP値:11.8)、1,2,5,6-テトラヒドロベンジルアルコール(SP値:11.3)、ジエチレングリコールエチルエーテル(SP値:10.9)、3-メトキシブタノール(SP値:10.9)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.2)、γ-ブチロラクトン(SP値:9.9)、プロピレングリコール-n-プロピルエーテル(SP値:9.8)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(SP値:9.7)、乳酸エチルアセテート(SP値:9.6)、ε-カプロラクトン(SP値:9.6)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(SP値:9.4)、トリプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.3)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(SP値:9.0)、エチレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:9.0)、酢酸ジエチルエーテル(SP値:9.0)テトラヒドロフラン(SP値:8.3)、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(SP値:8.0)、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(SP値:8.0)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(SP値:7.9)、プロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(SP値:7.8)である。
【0051】
(非水溶性溶剤)
非水溶性溶剤は、トリアセチン(SP値:10.2)、シクロペンタノン(SP値:10.0)、シクロヘキサノン(SP値:9.9)、プロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.7)、1,4-ブタンジオールジアセテート(SP値:9.6)、3-メトキシブチルアセテート(SP値:8.7)、プロピレングリコールジアセテート(SP値:9.6)、1,3-ブチレングリコールジアセテート(SP値:9.5)、ジプロピレングリコール-n-プロピルエーテル(SP値:9.5)、1,6-ヘキサンジオールジアセテート(SP値:9.5)、ジプロピレングリコール-n-ブチルエーテル(SP値:9.4)、シクロヘキサノールアセテート(SP値:9.2)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:8.9)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(SP値:8.9)、メチルアセテート(SP値:8.8)、エチルアセテート(SP値:8.7)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(SP値:8.7)、n-プロピルアセテート(SP値:8.7)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(SP値:8.7)、3-メトキシブタノールアセテート(SP値:8.7)、ブチルアセテート(SP値:8.7)、イソプロピルアセテート(SP値:8.5)、プロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(SP値:7.8)、となる。
【0052】
対象とする塗布剤の主溶剤が水溶性溶剤の場合は、非水溶性溶剤を添加剤として、0.1wt%添加から50wt%添加の範囲で調整を行う。また主溶剤が非水溶性溶剤の場合は、その逆となる。
【0053】
対象とする塗布剤に対して極性の違う溶剤を使用し、その添加量を調整することで作り上げた塗布剤は、例えばこの水溶性溶剤が塗布剤表面に浮き上がった状態で、ストライプ塗布用のコーターヘッドもしくはシリンジによるディスペンサーによる吐出用途に使用される。
【0054】
(塗布剤を用いた吐出物の形状)
図3に、塗布剤を吐出する様子を模式的に示す。吐出する際、吐出流路307及び吐出口306付近のコーターヘッドもしくはディスペンサーノズル、ニードルと塗布剤との界面に、適度な油膜301が形成される。この油膜301によって、界面での摩擦を無くすことができ、せん断応力によって吐出流路中央の流速(せん断速度)303と吐出流路側面の流速(せん断速度)304との差が生じることがなくなる。
【0055】
これによって吐出された塗布液の吐出口形状302は、吐出流路307の吐出口径の寸法と同等か、もしくは吐出量や塗布速度の加減により吐出径が縮小されたり、外側へ広がって吐出(吐出径の拡大)されても、その吐出口形状302は矩形もしくは丸型、三角形、凸形、台形、ひし形、M形などの吐出口形状をそのまま維持した形305で吐出され、前述の図8で示したような、外側に膨らんだ丸味を帯びた形状205でライン吐出される度合いを軽減することができる。
【0056】
図4は、塗布剤を吐出して吐出物を形成した様子を示す。
下記構成の塗布剤を用いて形成した吐出物である矩形パターン407は良好な矩形性が得られ、基材401に対し、垂直に切り立った面402が形成できる。このことから、コーターヘッド等で吐出形成した場合、矩形のラインの間隙403を極限まで狭めた構造体404を形成することができる。
また、このような構造体404では、パターンの高さ405/底辺406の比で表されるアスペクト比が2以上の矩形パターン407を形成することができるため、狭い幅においても短絡することなく、より多くのライン形成が可能である。
実験によれば、図5に示すように、実際にアスペクト比が2の矩形パターンが得られた。
【実施例
【0057】
以下に本発明の実施形態に係る実施例を示す。
【0058】
<実験1.吐出物の断面形状評価>
まず実験1として、下記実施例1および比較例1を行い、塗布剤を用いた吐出物の断面形状を評価した。
【0059】
[実施例1]
本発明の塗布剤構成の有用性について確かめるため、シリコーンをベースとしたシリコーンエラストマーフィルム膜厚200μmを基材とし、シリコーンをベースとした藤倉化成社製のストレッチャブル銀ペースト「ドータイト XA-9476」の導電性塗布剤を用意した。吐出装置は、縦1000μm×横100μmの矩形の吐出口径を1000μmピッチで10本形成したラインコーターヘッドと、武蔵エンジニアリング製の高粘度液体制御可能なディスペンスコントローラーと、XYX軸制御可能な卓上ロボットを備えた装置を用意した。
【0060】
実施例1に用いる塗布剤として、ドータイト XA-9476を主剤として、主剤であるシリコーンは非水溶性である為、これと相反する水溶性溶剤であるエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを添加溶剤として選択し、主剤に対して0.1wt%~50wt%の分量でエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを混合した塗布剤を用意した。
【0061】
次に、この実施例1の塗布剤を使って、上記吐出装置のラインコーターヘッドから、シリコーンエラストマーフィルム上へ、フィルム面から0.3mm吐出口を離した状態で、吐出圧500キロパスカル、ヘッドスピード100mm/秒で120mm長のストライプ状のラインパターンを吐出し、実施例1の吐出物を作製した。
【0062】
その結果、図6のSEM観察によるラインパターン601の断面形状に示されるように、縦横の寸法が1対7の矩形(アスペクト比7)で、底辺および基材に直交する辺、上辺全てにおいてシャープに、かつフラットにライン形成ができた。
【0063】
この結果から、縦1000μm×横100μmの矩形吐出口から実施例1の塗布剤構成である非水溶性と水溶性溶剤の混合塗布剤を吐出することで、吐出流路、吐出口付近のコーターヘッドと塗布剤との摩擦が緩和され、せん断応力による吐出流路中央の流速もしくはせん断速度と吐出流路側面の流速もしくはせん断速度との差が無くなり、吐出口の外側へ広がらずに、吐出口の形状そのままに吐出されたことが判る。
【0064】
[比較例1]
次に、比較例1の塗布剤として銀ペースト「ドータイト XA-9476」のみを使って、ディスペンスコントローラーと卓上ロボットに搭載した縦1000μm×横100μmの矩形の吐出口径を1000μmピッチで10本形成したラインコーターヘッドから、シリコーンエラストマーフィルム上へフィルム面から0.3mm吐出口を離した状態で、吐出圧500キロパスカル、ヘッドスピード100mm/秒で120mm長のストライプラインパターンを吐出し、比較例1の吐出物を作製した。
【0065】
その結果、図9のSEM観察によるパターン901の断面形状に示されるように、吐出口の形状を全く留めず、横にインキが広がった蒲鉾状のラインが形成され、隣どうしのラインが接触してショートすることとなった。
【0066】
この結果から、塗布剤として混合溶媒を混入しないドータイト XA-9476(シリコーン系銀ペースト)を吐出すると、吐出流路、吐出出口付近のコーターヘッドと塗布剤との摩擦によるせん断応力によって、吐出流路中央の流速もしくはせん断速度と吐出流路側面の流速もしくはせん断速度との差が生じることによって、吐出口径の寸法よりも外側へ広がって吐出されてしまうことが判った。
【0067】
<実験2.配線シートの伸縮試験評価>
実験2として下記の実施例2および比較例2を行って配線シートを作製し、配線シートとして伸縮試験による電気的特性の変化を評価した。
【0068】
[実施例2]
実施例2として、実施例1と同様の塗布剤を使って以下の手順により、伸縮部が高アスペクト比の配線パターンを形成した配線シートを形成した。
まず、伸縮性基材であるシリコーンエラストマーフィルム上に、塗布剤としてドータイト XA-9476のみを使って、実施例1と同様の塗布方法により、ストライプストローク120mm分の距離より2mm短い距離のスペース(このスペース内に後述の手順でストライプラインパターンが入る)を空けた端子部を含む電気的引き出し線102を、ストライプラインパターンの始めと終わりの両側が重なる位置に、スクリーン印刷によって線幅200μm、高さ20μmで印刷し、焼成した。
【0069】
次に、この端子部を含む電気的引き出し線102を形成し焼成した基材に対して、さらに次の手順によりストライプラインパターン104を形成した。
【0070】
図1に示すように、ストライプラインパターン104は、ストライプストローク120mm分の始めと終わりが、電気的引き出し線102の両端部に対し1mm程重なる位置103にアライメントした後、実施例1と同様の塗布剤を使って、ディスペンスコントローラーと卓上ロボットに搭載した縦1000μm×横100μmの矩形の吐出口径を1000μmピッチで10本形成したラインコーターヘッドから、シリコーンエラストマーフィルム上へフィルム面から0.3mm吐出口を離した状態で、吐出圧500キロパスカル、ヘッドスピード100mm/秒で120mm長のストライプラインパターンを吐出した。
【0071】
その結果、端子部を含む電気的引き出し線102と、前記塗布剤を使って縦1000μm×横100μmの吐出口から吐出された縦700μm×横100μmの矩形の断面積を持つアスペクト比7のストライプラインパターン104の始めと終わりの端部1mmとが重なって、ラインパターン104と電気的引き出し線102とが電気的に接続された状態となった。
【0072】
さらに、焼成による架橋を行った後、図2に示すように、端子部を含む電気的引き出し線102の両側端部、すなわち先ほどラインパターンと重ねた部分を少なくとも含む箇所を、樹脂201で被覆して固着させた。
これにより、端子部を含む電気的引き出し線102が伸縮しないように固定され、かつ、縦700μm×横100μmの矩形の断面積を持つアスペクト比7のストライプラインパターン104の、樹脂201で被覆しない中央部分202が伸縮する様になった。なお、この中央部分202の幅は80mmである。
【0073】
樹脂201は、特に制限はないが、熱硬化作用あるいは光硬化作用を有する材料、例えばエポキシ樹脂やポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいはアクリル樹脂等の光硬化性樹脂を材料として、適宜選択して用いることができる。
【0074】
(伸縮試験1)
実施例2の配線シートを用いて、引張試験装置にて引っ張り方向がストライプラインパターン吐出方向に平行になるように配線シートの樹脂で固めた部分を咥え、伸縮速度は5mm/秒で、サイクル:50%まで伸長後、0%まで戻した際の配線抵抗変化の挙動を測定し、グラフ化した。
伸縮試験1のグラフを図10(a)に示す。
【0075】
[比較例2]
一方、比較例2として、比較例1と同様の塗布剤を使って、スクリーン印刷法により、端子部を含む電気的引き出し線とストライプラインパターンを線幅200μm厚さ20μmで印刷した以外は実施例2の手順と同様にして、配線シートを用意した。
この比較例2のストライプラインパターンの形状を見ると、従来のスクリーン印刷法で形成したため、パターンのアスペクト比は1未満であることが観察された。
【0076】
(伸縮試験2)
比較例2の配線シートを用いて、引張試験装置にて引っ張り方向がストライプラインパターン吐出方向に平行になるように配線シートの樹脂で固めた部分を咥え、伸縮速度は5mm/秒で、サイクル:50%まで伸長後、0%まで戻した際の配線抵抗変化の挙動を測定し、グラフ化した。
伸縮試験2のグラフを図10(b)に示す。
【0077】
図10(a)と(b)のグラフの結果から、(a)の実施例2の印刷物の方が、(b)の比較例2の印刷物と比べて明らかに伸長率50%に対する配線抵抗値の挙動が小さく、かつ、伸ばしと戻し時の配線抵抗値の差が小さい事が判った。
【0078】
このことから、パターンのアスペクト比が大きくなることによって、銀ペースト等の導電性材料の配線内の接触点数が増大し、伸長率が大きくなっても非接触になる確率が少なくなること、また、伸長部の断面積が大きくなることで、端子部の抵抗値が高くてもそれをカバーできる低抵抗の導線が確保できること、さらにエラストマーの強度が増し、劣化のリスクが減った事が要因と考えられる。
従って、本発明に係る配線シートが有効であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、ストライプ塗布用のコーターヘッドもしくはディスペンサーによる吐出用途に使用する塗布剤の溶剤混合を前述の方法のようにしたことによって、高アスペクト比で伸縮性を有する配線パターンが得られ、伸ばした際の配線抵抗変化を少なくできる導電材料を使ったストレッチャブル配線、回路、FPCなどの印刷物を実現した。
【0080】
また本発明は、例えば、抵抗器、コンデンサー等の小型電子部品、液晶表示素子(LCD)用のカラーフィルター、燃料電池電極、リチウムイオン電池電極、ストレッチャブル電極、センサーなどの構造体を、簡単に、品質よく、コストも安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0081】
100…配線シート
101…伸縮性基材(シリコーンエラストマーフィルム)
102…電気的引き出し線
103…1mm程重なる位置
104…ストライプラインパターン
200…配線シート
201…樹脂
202…ストライプラインパターンの中央部分
301…油膜
302…吐出口形状
303…吐出流路中央の流速(せん断速度)
304…吐出流路側面の流速(せん断速度)
305…吐出口形状をそのまま維持した形
306…吐出口
307…吐出流路
401…基材
402…垂直に切立った面
403…矩形のラインの間隙
404…構造体
405…高さ
406…底辺
407…矩形パターン
501…線幅100μmの高さ200μm(アスペクト比2)の矩形パターン
601…線幅100μmの高さ700μm(アスペクト比7)の矩形パターン
701…蒲鉾状の断面形状
801…吐出口
802…吐出経路
803…吐出流路中央の流速
804…吐出流路壁面の流速
805…外側に膨らんだ丸味を帯びた形状
806…塗布剤
901…横にインキが広がった蒲鉾状のラインで、隣同士がショートしたパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10