(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240717BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G03G15/20 530
G03G21/00 530
(21)【出願番号】P 2020123350
(22)【出願日】2020-07-19
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】大野 匡隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-242429(JP,A)
【文献】特開2018-146675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が転写されたシートを、加熱処理及び加圧処理を行うニップ部に挟み込んで通過させることにより、前記トナー像を前記シートに定着させる定着装置であって、
エアを供給する送風ファンと、
前記送風ファンから供給されるエアを、前記シートの搬送方向下流側から前記ニップ部に向けて吹き出す吹出口が設けられたエアダクトと、
前記吹出口を開閉する第1開閉手段と、
前記送風ファン及び前記第1開閉手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記エアダクトは、少なくとも一部が膨張収縮可能な弾性体で形成され
、
前記制御手段は、前記第1開閉手段が前記吹出口を閉鎖した状態で前記送風ファンを駆動することにより前記弾性体を膨張させ、前記シートの先端が前記ニップ部を通過するタイミングに合わせて前記第1開閉手段を動作させて前記吹出口を開放するシート分離動作を行うことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記シートの種類を判別し、前記シートが特定の種類である場合に、前記シート分離動作を行うことを特徴とする請求項
1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記送風ファンと前記エアダクトとを備えて構成されるシート分離ユニットが前記シートの搬送方向に直交する方向に沿って複数配置され、
前記制御手段は、前記複数のシート分離ユニットを個別に制御することを特徴とする請求項
1又は
2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記シートのサイズに応じて前記複数のシート分離ユニットを個別に制御することを特徴とする請求項
3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記第1開閉手段は、前記シートの搬送方向に直交する方向に沿って前記吹出口を個別に開閉する複数の開閉弁を備え、
前記制御手段は、前記複数の開閉弁を個別に制御することを特徴とする請求項
1乃至
4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記シートのサイズに応じて前記複数の開閉弁を個別に制御することを特徴とする請求項
5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記シートに転写された前記トナー像に応じて前記複数の開閉弁を個別に制御することを特徴とする請求項
5に記載の定着装置。
【請求項8】
トナー像が転写されたシートを、加熱処理及び加圧処理を行うニップ部に挟み込んで通過させることにより、前記トナー像を前記シートに定着させる定着装置であって、
エアを供給する送風ファンと、
少なくとも一部が膨張収縮可能な弾性体で形成され、前記送風ファンから供給されるエアを、前記シートの搬送方向下流側から前記ニップ部に向けて吹き出す吹出口が設けられたエアダクトと、
前記吹出口を開閉する第1開閉手段と、
前記弾性体が膨張状態しているときに前記弾性体を外側から押圧する押圧手段と、
前記送風ファン及び前記押圧手段を制御する制御手段と、
を備え、
前記第1開閉手段は、前記エアダクトの内部の圧力が所定圧力を超えると開放するリリーフ弁であり、
前記制御手段は、前記シートの先端が前記ニップ部を通過するタイミングに合わせて前記押圧手段を駆動して前記弾性体を外側から押圧することにより、前記リリーフ弁に前記所定圧力以上の圧力を作用させて前記リリーフ弁を開放させることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
前記エアダクトには前記送風ファンから供給されるエアをダクト内部に導く導入口が設けられ、
前記導入口を開閉する第2開閉手段、
を更に備え、
前記第2開閉手段は、前記弾性体が所定の状態に膨張したときに前記導入口を閉鎖することを特徴とする請求項1乃至
8のいずれかに記載の定着装置。
【請求項10】
前記送風ファンは、前記第2開閉手段が前記導入口を閉鎖することに伴い、風力を低下させることを特徴とする請求項
9に記載の定着装置。
【請求項11】
前記第2開閉手段が前記導入口を閉鎖しているとき、前記送風ファンから供給されるエアを前記エアダクトとは異なる経路に案内することを特徴とする請求項
9又は
10に記載の定着装置。
【請求項12】
前記エアダクトは、前記ニップ部の近傍において前記シートの搬送方向下流側に設けられ、
前記弾性体は、前記エアダクトにおいて前記ニップ部とは反対側の壁部として設けられることを特徴とする請求項1乃至
11のいずれかに記載の定着装置。
【請求項13】
前記エアダクトの一部は、前記ニップ部を通過した前記シートを案内するガイド部として機能することを特徴とする請求項1乃至
12のいずれかに記載の定着装置。
【請求項14】
シートを所定の搬送路に沿って搬送するシート搬送部と、
前記搬送路に沿って搬送される前記シートが所定位置を通過する際にトナー像を前記シートに転写する画像形成部と、
前記画像形成部によってトナー像が転写された前記シートが搬送される搬送路上に設けられる、請求項1乃至
13のいずれかに記載の定着装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関し、特にトナー像が転写されたシートに対して定着処理を行った後にシートを定着部材から分離させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタやMFP(Multifunction Peripheral)などの電子写真方式の画像形成装置は、トナー像を印刷用紙などのシートに転写した後、シートが定着装置を通過する際に加熱処理及び加圧処理を施すことにより、トナー像をシートに定着させている。トナー像をシートに定着させる定着装置は、シートに対する加熱処理及び加圧処理を施す部材として定着部材を備えている。この定着部材は、例えば、熱源により加熱される定着ローラーと、定着ローラーと接触して加圧する加圧ローラーとを備えた一対のローラーとして構成され、一対のローラーのニップ部に、トナー像が転写されたシートを通過させることにより、トナー像をシートに定着させる。また、定着部材として無端状の定着ベルトを用いるベルト定着装置も知られており、定着ベルトの熱容量が小さいことからウォーミングアップ時間を短縮でき、省エネ性に優れるという利点を有している。
【0003】
上記のような定着装置では、シートに転写されたトナーが溶融してシートに定着する際にトナーが定着部材にも接触するため、溶融したトナーが定着部材の表面にも付着する。近年、画像形成装置においては、多様なニーズに応えるため、様々な種類のシートを通紙できることが求められており、例えば、密度が低く、剛度の低い薄紙では、定着部材に付着した溶融トナーにより、シートが定着部材に巻き付いてしまう虞がある。
【0004】
従来、トナー像を定着させたシートを定着部材から分離するため、種々の技術が提案されている。例えば特許文献1では、分離爪を用いる技術が開示されている。また、特許文献2では、コンプレッサーを用いて高圧のエアをニップ部の搬送方向下流側に吹き付ける技術(以下、「エア分離」という。)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-241557号公報
【文献】特開2007-86132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の分離爪を用いる場合、分離爪が定着部材に圧接しているため、分離爪と定着部材の摺動により、双方の摩耗、破損などを引き起こすといった問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2に記載のエア分離では、シートを確実に分離するため、十分に高圧なエアを所定時間以上吹き付ける必要があり、そのためにコンプレッサーを用いている。しかし、コンプレッサーを用いた場合、コンプレッサーによる高コスト化、装置サイズの大型化、コンプレッサー動作時の騒音や消費電力の増大といった問題がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、比較的小型の送風ファンを用いても、確実に定着部材からシートを分離することができる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、トナー像が転写されたシートを、加熱処理及び加圧処理を行うニップ部に挟み込んで通過させることにより、前記トナー像を前記シートに定着させる定着装置であって、エアを供給する送風ファンと、前記送風ファンから供給されるエアを、前記シートの搬送方向下流側から前記ニップ部に向けて吹き出す吹出口が設けられたエアダクトと、前記吹出口を開閉する第1開閉手段と、前記送風ファン及び前記第1開閉手段を制御する制御手段と、を備え、前記エアダクトは、少なくとも一部が膨張収縮可能な弾性体で形成され、前記制御手段は、前記第1開閉手段が前記吹出口を閉鎖した状態で前記送風ファンを駆動することにより前記弾性体を膨張させ、前記シートの先端が前記ニップ部を通過するタイミングに合わせて前記第1開閉手段を動作させて前記吹出口を開放するシート分離動作を行うことを特徴とする構成である。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1の定着装置において、前記制御手段は、前記シートの種類を判別し、前記シートが特定の種類である場合に、前記シート分離動作を行うことを特徴とする構成である。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2の定着装置において、前記送風ファンと前記エアダクトとを備えて構成されるシート分離ユニットが前記シートの搬送方向に直交する方向に沿って複数配置され、前記制御手段は、前記複数のシート分離ユニットを個別に制御することを特徴とする構成である。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3の定着装置において、前記制御手段は、前記シートのサイズに応じて前記複数のシート分離ユニットを個別に制御することを特徴とする構成である。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかの定着装置において、前記第1開閉手段は、前記シートの搬送方向に直交する方向に沿って前記吹出口を個別に開閉する複数の開閉弁を備え、前記制御手段は、前記複数の開閉弁を個別に制御することを特徴とする構成である。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項5の定着装置において、前記制御手段は、前記シートのサイズに応じて前記複数の開閉弁を個別に制御することを特徴とする構成である。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項5の定着装置において、前記制御手段は、前記シートに転写された前記トナー像に応じて前記複数の開閉弁を個別に制御することを特徴とする構成である。
【0017】
請求項8に係る発明は、トナー像が転写されたシートを、加熱処理及び加圧処理を行うニップ部に挟み込んで通過させることにより、前記トナー像を前記シートに定着させる定着装置であって、エアを供給する送風ファンと、少なくとも一部が膨張収縮可能な弾性体で形成され、前記送風ファンから供給されるエアを、前記シートの搬送方向下流側から前記ニップ部に向けて吹き出す吹出口が設けられたエアダクトと、前記吹出口を開閉する第1開閉手段と、前記弾性体が膨張状態しているときに前記弾性体を外側から押圧する押圧手段と、前記送風ファン及び前記押圧手段を制御する制御手段と、を備え、前記第1開閉手段は、前記エアダクトの内部の圧力が所定圧力を超えると開放するリリーフ弁であり、前記制御手段は、前記シートの先端が前記ニップ部を通過するタイミングに合わせて前記押圧手段を駆動して前記弾性体を外側から押圧することにより、前記リリーフ弁に前記所定圧力以上の圧力を作用させて前記リリーフ弁を開放させることを特徴とする構成である。
【0019】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれかの定着装置において、前記エアダクトには前記送風ファンから供給されるエアをダクト内部に導く導入口が設けられ、前記導入口を開閉する第2開閉手段、を更に備え、前記第2開閉手段は、前記弾性体が所定の状態に膨張したときに前記導入口を閉鎖することを特徴とする構成である。
【0020】
請求項10に係る発明は、請求項9の定着装置において、前記送風ファンは、前記第2開閉手段が前記導入口を閉鎖することに伴い、風力を低下させることを特徴とする構成である。
【0021】
請求項11に係る発明は、請求項9又は10の定着装置において、前記第2開閉手段が前記導入口を閉鎖しているとき、前記送風ファンから供給されるエアを前記エアダクトとは異なる経路に案内することを特徴とする構成である。
【0022】
請求項12に係る発明は、請求項1乃至11のいずれかの定着装置において、前記エアダクトは、前記ニップ部の近傍において前記シートの搬送方向下流側に設けられ、前記弾性体は、前記エアダクトにおいて前記ニップ部とは反対側の壁部として設けられることを特徴とする構成である。
【0023】
請求項13に係る発明は、請求項1乃至12のいずれかの定着装置において、前記エアダクトの一部は、前記ニップ部を通過した前記シートを案内するガイド部として機能することを特徴とする構成である。
【0024】
請求項14に係る発明は、画像形成装置であって、シートを所定の搬送路に沿って搬送するシート搬送部と、前記搬送路に沿って搬送される前記シートが所定位置を通過する際にトナー像を前記シートに転写する画像形成部と、前記画像形成部によってトナー像が転写された前記シートが搬送される搬送路上に設けられる、請求項1乃至13のいずれかに記載の定着装置と、を備えることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、比較的小型の送風ファンを用いる場合であっても、弾性体を膨張させることによって、吹出口からエアを送風ファンの最大静圧で一定時間吹き付けることができるため、確実に定着部材からシートを分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】第1実施形態の定着装置を拡大して示す図である。
【
図3】開閉弁を閉鎖して弾性体を膨張させた状態の定着装置を示す図である。
【
図4】シートを定着ベルトから分離するために吹出口からエアを吹き出している状態の定着装置を示す図である。
【
図5】吹出口から吹き出されるエアの圧力の変化を示す図である。
【
図6】画像形成装置の制御機構を示すブロック図である。
【
図7】制御部によって行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】シートの搬送方向に直交する方向に配置される複数のシート分離ユニットを示す図である。
【
図9】通紙領域の全体を通るシートにトナー像が転写されていない部分が存在する例を示す図である。
【
図10】複数の開閉弁が設けられたシート分離ユニットの一例を示す図である。
【
図11】第3実施形態における定着装置を拡大して示す図である。
【
図12】シートを定着部材から分離するシート分離動作の例を示す図である。
【
図13】第4実施形態における定着装置を拡大して示す図である。
【
図14】開閉弁を閉鎖した状態の定着装置を示す図である。
【
図15】制御部によって行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図16】エアをエアダクトとは異なる経路に流す例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置1の一構成例を示す図である。この画像形成装置は、例えば、コピー機能、スキャン機能及びプリント機能などの複数の機能を備えたMFPとして構成され、プリンタ部2と、スキャナ部3と、操作パネル4とを備えている。プリンタ部2は、スキャナ部3及び操作パネル4の下部に設けられ、
図1ではその内部構造を示している。
【0029】
プリンタ部2は、ユーザーによって印刷ジョブの実行が指示された場合に動作し、印刷用紙などのシートに画像を印刷して出力する。本実施形態のプリンタ部2は、電子写真方式によって印刷用紙などのシートに画像形成を行い、シートに画像を定着させて出力する。スキャナ部3は、ユーザーによってセットされる原稿の画像を光学的に読み取って画像データを生成する。操作パネル4は、ユーザーが画像形成装置1に対する操作を行う際のユーザーインタフェースであり、ユーザーによる各種の設定操作を受け付ける。
【0030】
図1に示すように、プリンタ部2は、装置本体の内部に、制御部5と、シート搬送部6と、画像形成部7と、定着装置8とを備えている。制御部5は、シート搬送部6、画像形成部7及び定着装置8のそれぞれの動作を制御することにより、シートに対して画像形成を行う動作を統括的に制御する。
【0031】
装置本体の内部には、複数の給紙トレイ10,11が設けられている。これら複数の給紙トレイ10,11は、画像形成に使用されるシートを収容しておくためのものである。尚、複数の給紙トレイ10,11には、それぞれ異なる種類のシートを収容しておくことも可能である。また、装置本体の側面には、開閉可能な手差しトレイ12が設けられており、手差しトレイ12を給紙トレイとして用いることも可能である。
【0032】
シート搬送部6は、複数の給紙トレイ10,11及び手差しトレイ12のいずれか1つからシート9を給紙し、装置本体の内部に設けられている所定の搬送路20に沿ってシート9を搬送する。例えば、給紙トレイ10からシート9を給紙する場合、シート搬送部6は、ピックアップローラー13と給紙ローラー14を駆動して給紙トレイ10に収容されているシート束のうちから1枚のシート9を搬送路20に送り出す。また、給紙トレイ11からシート9を給紙する場合、シート搬送部6は、ピックアップローラー15と給紙ローラー16を駆動して給紙トレイ11に収容されているシート束のうちから1枚のシート9を搬送路20に送り出す。また、手差しトレイ12が開放され、その手差しトレイ12に載置されたシート9を給紙する場合、シート搬送部6は、給紙ローラー17を駆動して手差しトレイ12に載置されているシート束のうちから1枚のシート9を搬送路20に送り出す。搬送路20には、シート9を搬送方向(矢印F1で示す方向)の下流側に搬送するために複数の搬送ローラー18,19,21が設けられている。シート搬送部6は、それら搬送ローラー18,19,21を回転駆動することにより、シート9を搬送路20に沿って搬送し、最終的に装置本体の側面に設けられた排紙トレイ22上に排出する。
【0033】
画像形成部7は、搬送路20に沿って搬送されるシート9が所定位置を通過する際に、シート9の一面にトナー像を転写する。この画像形成部7は、駆動ローラー30、従動ローラー31と、中間転写ベルトと、複数の画像形成ユニット33Y,33M,33C,33Kと、二次転写ローラー34とを有している。駆動ローラー30は、搬送路20の近傍位置に設けられ、図示を省略するモーターなどによって回転駆動される。従動ローラー31は、搬送路20から離れた所定位置に設けられる。中間転写ベルト32は、駆動ローラー30と従動ローラー31に掛け渡された無端ベルトであり、駆動ローラー30が回転することに伴い、矢印F2で示す方向に循環移動する。従動ローラー31は、中間転写ベルト32が矢印F2で示す方向に循環移動することに伴い、従動回転する。画像形成ユニット33Y,33M,33C,33Kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成するユニットである。各画像形成ユニット33Y,33M,33C,33Kは、例えば円筒状の感光体ドラムなどで構成される像担持体を備え、その像担持体が中間転写ベルト32の表面に接触した状態に配置される。像担持体は、印刷対象となる画像データに基づいて露光されることにより、その表面に静電潜像を形成する。その静電潜像がトナーによって顕像化されることにより、像担持体は、その表面にトナー像を形成する。そして像担持体は、中間転写ベルト32にそのトナー像を一次転写させる。画像形成ユニット33Y,33M,33C,33Kは、中間転写ベルト32に対してY,M,C,Kの各色のトナー像を順次一次転写してくことにより、中間転写ベルト32の表面上に、画像データに基づくカラー画像を形成する。中間転写ベルト32に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー34の位置を通過する際に、シート搬送部6によって搬送されるシート9に二次転写される。
【0034】
定着装置8は、シート9の搬送方向において画像形成部7の下流側に設けられ、シート9に転写されたトナー像をシート9に定着させる定着処理を行う。定着処理には、シート9に対する加熱処理及び加圧処理が含まれる。定着装置8は、画像形成部7でトナー像が転写されたシート9が通過する際に、シート9に対して加熱処理を行うことでトナーを溶融させ、更に加圧処理を行うことで溶融したトナーをシート9の表面に定着させる。このような定着処理によって画像が定着した状態のシート9が排紙トレイ22に排出される。
【0035】
また、
図1に示すように、搬送路20には、画像形成部7と定着装置8との間の所定位置に、シート9を検知するための検知センサー35が設けられている。この検知センサー35は、トナー像が転写されたシート9が定着装置8に進入する前にシート9を検知する。
【0036】
図2は、本実施形態の定着装置8を拡大して示す図である。定着装置8は、トナー像が転写されたシート9に対して定着処理を行う定着部材40を備えている。定着部材40は、トナー像が転写されたシート9を、ニップ部40aに挟み込んで通過させることにより、シート9に対する加熱処理及び加圧処理を行い、トナー像をシート9に定着させる構成である。定着部材40は、定着ベルト41と、定着ローラー42と、加熱ローラー43と、加圧ローラー44とを備えている。
【0037】
定着ベルト41は、駆動ローラーである定着ローラー42と、従動ローラーである加熱ローラー43との間に掛け渡された無端ベルトであり、定着ローラー42が図中時計回り方向に回転することに伴って時計回り方向に循環移動する。加熱ローラー43の内部にはヒーターなどの熱源45が配置され、この熱源45により加熱ローラー43が加熱されると共に、加熱ローラー43の周囲を循環移動する定着ベルト41も加熱される。
【0038】
加圧ローラー44は、図示しない加圧機構により定着ベルト41を挟んで定着ローラー42に対向する位置に配置され、定着ローラー42の表面に対して圧接するように設けられる。これにより、定着ベルト41と加圧ローラー44との間にはシート9を挟み込んで通紙させるニップ部40aが形成される。この加圧ローラー44は、例えば定着ベルト41が循環移動することに伴い、図中反時計回り方向に従動回転する。シート9がニップ部40aを通過するとき、定着部材40は、定着ベルト41による加熱処理と加圧ローラー44による加圧処理とをシート9に対して同時に行うことができる。これにより、シート9に転写されたトナー像がシート9の表面に定着するのである。尚、
図2では、定着装置8として定着ベルト41を用いる定着ベルト方式を示したが、これに限られるものではなく、定着ローラー42として熱源を備えたローラーを用いることにより、定着ベルト41を用いない2ロール方式であっても構わない。
【0039】
画像形成部7においてシート9に転写されたトナー像は、定着部材40のニップ部40aを通過するとき、定着ベルト41と接触する。そのため、トナーが溶融して定着するときに定着ベルト41に付着してしまい、シート9が定着ベルト41に巻き付いてしまう可能性がある。そのような事態が生じた場合に、シート9を定着ベルト41から分離する必要がある。そのため、定着装置8は、定着部材40の近傍位置に設けられるシート分離ユニット50を備えている。シート分離ユニット50は、定着部材40のニップ部40aを通過したシート9が定着ベルト41に貼り付いてしまった場合に、シート9を定着ベルト41から分離するためのユニットである。本実施形態におけるシート分離ユニット50は、エア分離方式により、シート9を定着ベルト41の表面から分離する。
【0040】
シート分離ユニット50は、シート9の搬送方向の下流側の定着部材40の近傍位置に設けられ、定着部材40のニップ部40aの下流側で定着ベルト41の表面に向かってエアを吹き付ける構成である。このシート分離ユニット50は、エアを供給する送風ファン51と、送風ファン51から供給されるエアをシートの搬送方向下流側から定着部材40のニップ部40aに向けて吹き出す吹出口55が設けられたエアダクト52とを備えている。送風ファン51は、例えば定着装置8の上部に設けられる遠心ファンによって構成され、定着装置8の上部のエアを矢印F3で示すように吸引して遠心方向にエアを送り出す。エアダクト52は、送風ファン51の周囲と取り囲み、送風ファン51から供給されるエアを矢印F4で示すように定着部材40のニップ部40aに向けて案内し、ダクト先端に設けられた吹出口55からニップ部40aに向けてエアを吹き出すように構成される。
【0041】
このシート分離ユニット50は、エアダクト52の内側であって吹出口55の近傍位置に、吹出口55を開閉する開閉手段である開閉弁56を備えている。開閉弁56は、例えば電磁弁などによって構成される。この開閉弁56は、吹出口55を閉鎖すると、吹出口55からエアが吹き出さないようにエアダクト52の内部を密閉する。言い換えると、シート分離ユニット50は、開閉弁56を開放することにより、定着部材40のニップ部40aにエアを吹き出すことができる構造である。そのため、トナー像が転写されたシート9の先端が定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングに合わせて開閉弁56を開放することにより、シート9の先端を定着ベルト41から分離することができる。
【0042】
シート分離ユニット50のエアダクト52は、エアの流路を形成する壁部53の少なくとも一部が膨張収縮可能な弾性体54によって形成される。例えば、弾性体54は、ゴムなどの伸縮性のある材料によって形成されたシート状の部材である。エアダクト52は、弾性体54以外の壁部53は、樹脂成形などによって形成され、変形しない壁部である。弾性体54は、樹脂成形などによって形成された壁部53に設けられる開口部に嵌め込まれ、エアダクト52の内部を密閉する状態に装着される。このような弾性体54は、例えば、エアダクト52において定着部材40とは反対側に位置する壁部53の一部として設けられる。
【0043】
また、エアダクト52は、吹出口55の近傍に位置する壁部53の一部を、ニップ部40aを通過したシート9を下流側の搬送路20へ案内するガイド部57として機能させるようにしている。これにより、エアダクト52とは別にガイド部材を設ける必要がなくなるので、省スペース化やコストダウンが可能である。
【0044】
更に、定着装置8は、定着部材40のニップ部40aを通過したシート9が搬送される搬送路20の所定位置に、シート9を検知する検知センサー38を備えている。この検知センサー38は、定着部材40のニップ部40aを通過することによってトナー像が定着したシート9をニップ部40aの下流側の所定位置で検知する。
【0045】
次に、シート分離ユニット50の動作について説明する。
図3は、開閉弁56を閉鎖して弾性体54を膨張させた状態の定着装置8を示す図であり、
図4は、シート9を定着ベルト41から分離するために吹出口55からエアを吹き出している状態の定着装置8を示す図である。まず、シート分離ユニット50は、吹出口55からエアを吹き出す前に、
図3に示すように、開閉弁56を閉鎖してエアダクト52の内部を密閉する。その状態で、シート分離ユニット50は、送風ファン51を駆動することで、エアダクト52の内部にエアを供給する。これにより、エアダクト52の内部の圧力が増加する。そのため、エアダクト52に設けられた弾性体54は、
図3に示すように、ゴム風船の如く膨張変形する。すなわち、弾性体54は、送風ファン51の最大静圧と釣り合う状態となるまで膨張変形する。このとき、弾性体54は、定着部材40とは反対側に位置する壁部53の一部として設けられているため、エアダクト52の外側に向かって膨張変形したとしても、定着部材40と干渉することがない。
【0046】
その後、シート分離ユニット50は、
図4に示すように、トナー像が転写されたシート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aから排出されるタイミングに合わせて開閉弁56を開放する。これにより、エアダクト52の吹出口55からエアがニップ部40aに向けて吹き出される。このとき、シート分離ユニット50は、送風ファン51の最大静圧でエアを一定時間吹き付けることが可能であり、シート9の先端9aを定着ベルト41の表面から分離することができる。つまり、弾性体54は、送風ファン51の最大静圧と釣り合う状態まで膨張した後、開閉弁56の開放に伴い、エアダクト52の内部圧力を保持しつつ収縮していくので、エアダクト52の吹出口55から高圧のエアを一定時間吹き出すことができる。
【0047】
図5は、吹出口55から吹き出されるエアの圧力の変化を示す図である。本実施形態のようにエアダクト52の少なくとも一部に弾性体54が用いられている場合、吹出口55から吹き出されるエアの圧力は、図中実線C1で示すように変化する。すなわち、タイミングT0で開閉弁56が開放されると、シート分離ユニット50は、吹出口55から一定時間の間、送風ファン51の最大静圧でエアを吹き出すことができる。その後、弾性体54が萎んでしまうと、エアの圧力は低下することになる。このように本実施形態のシート分離ユニット50は、吹出口55から一定時間の間、吹出口55から高圧のエアを吹き出すことができるので、シート9を定着ベルト41から良好に分離することができるのである。
【0048】
これに対し、エアダクト52の少なくとも一部に弾性体54が用いられていない場合、吹出口55から吹き出されるエアの圧力は、図中破線C2で示すように変化する。この場合、タイミングT0で開閉弁56が開放されると、瞬間的に最大静圧でエアを吹き出すことができるものの、その直後にエアの圧力は低下してしまうことになる。そのため、エアダクト52の少なくとも一部に弾性体54が用いられていない場合は、シート9を定着ベルト41から分離する能力が低く、シート9が定着ベルト41に巻き付いてしまう可能性がある。
【0049】
したがって、本実施形態のシート分離ユニット50は、エアダクト52の内部に開閉弁56を設けると共に、エアダクト52の少なくとも一部を弾性体54で形成することにより、比較的小型の送風ファン51を用いる場合であっても、シート9を定着ベルト41から良好に分離することが可能であり、コンプレッサーのような大型の送風手段を用いる必要がないことから、低コストや装置の小型化を実現可能であると共に、消費電力や騒音を低減することもできるという利点がある。
【0050】
次に、画像形成装置1の制御機構について説明する。
図6は、画像形成装置1の制御機構を示すブロック図である。尚、
図6では、主としてプリンタ部2を制御する制御機構を例示している。画像形成装置1の制御部5は、操作パネル4又は通信インタフェース60を介して印刷ジョブを取得し、その印刷ジョブを実行する。尚、通信インタフェース60は、画像形成装置1をLANなどのネットワークに接続し、ネットワークに接続された外部装置と通信を行うものである。
【0051】
制御部5は、所定のプログラムを実行することにより、ジョブ制御部61及び分離動作制御部62として機能する。ジョブ制御部61は、ユーザーによって指定された印刷ジョブの実行を制御する。すなわち、ジョブ制御部61は、印刷ジョブに基づいて、シート搬送部6、画像形成部7及び定着装置8を駆動することにより、ユーザーによって指定されたシート9の給紙搬送を行い、シート9が所定位置を通過する際にシート9にトナー画像を転写し、定着装置8においてトナー画像が転写されたシート9に定着処理を行って排出させる動作を制御する。
【0052】
また、ジョブ制御部61は、ユーザーによって指定されたシート9の種類を判別し、シート9の種類に応じた動作を行うように制御する。例えば、シート9を搬送する際の最適な搬送速度は、シート9の種類に応じて異なるため、ジョブ制御部61は、シート9の種類に応じた搬送速度を設定し、シート搬送部6を駆動する。シート9の種類に関する情報は、操作パネル4に対してユーザーが手動操作で入力するものであっても良いし、通信インタフェース60を介して受信する印刷ジョブのジョブ設定に含まれる情報であっても良い。ジョブ制御部61は、操作パネル4又は通信インタフェース60から取得する情報に基づいてシート9の種類を特定する。
【0053】
分離動作制御部62は、ジョブ制御部61によって印刷ジョブが実行される場合に機能し、定着装置8に設けられているシート分離ユニット50を動作させることにより、印刷ジョブの実行中にシート9を定着ベルト41から分離するシート分離動作を制御する。具体的に説明すると、分離動作制御部62は、シート9が搬送される搬送路20に設けられている検知センサー35,38の検知結果に基づいて、搬送中のシート9の位置を検知し、シート9の位置に応じて定着装置8に設けられている送風ファン51及び開閉弁56の動作を制御する。つまり、分離動作制御部62は、定着装置8に設けられたシート分離ユニット50を制御するための制御手段である。この分離動作制御部62は、画像形成装置1の全体的な動作を制御する制御部5に実装されるものに限られない。例えば、分離動作制御部62は、定着装置8に実装されるものであっても構わない。
【0054】
分離動作制御部62は、ジョブ制御部61によって特定されるシート9の種類に応じて、シート分離動作を行う必要があるか否かを判断し、シート分離動作を行う必要があると判断した場合に、送風ファン51及び開閉弁56の動作を制御する。例えば、シート9が剛度の低い薄紙や普通紙である場合は、シート9が定着ベルト41に巻き付く現象が生じやすい。特に薄紙の場合は普通紙よりも定着ベルト41に巻き付きやすいという特性がある。そのため、シート搬送部6によって搬送されるシート9が普通紙や薄紙である場合、分離動作制御部62は、シート分離動作を行う必要があると判断し、印刷ジョブの実行中にシート分離動作を行う。これに対し、シート9が剛度の高い厚紙である場合は、シート9が定着ベルト41に巻き付き難い。そのため、シート搬送部6によって搬送されるシート9が厚紙である場合、分離動作制御部62は、印刷ジョブの実行中にシート分離動作を行う必要がないと判断する。この場合、印刷ジョブの実行中にシート分離動作は行われない。
【0055】
図7は、制御部5によって行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。尚、
図7に示す処理手順は、主として、制御部5の分離動作制御部62によって行われる処理である。分離動作制御部62は、ジョブ制御部61によって印刷ジョブの実行が開始されると(ステップS10)、開閉弁56を動作させてエアダクト52の吹出口55を閉鎖する(ステップS11)。続いて、分離動作制御部62は、搬送されるシート9の種類を判別し(ステップS12)、シート9の種類に基づいてシート分離動作を行う必要があるか否かを判断する(ステップS13)。例えば、シート9が薄紙である場合、分離動作制御部62は、シート分離動作を行う必要があると判断する。また、シート9が厚紙である場合、分離動作制御部62は、シート分離動作を行う必要がないと判断する。シート分離動作を行う必要がないと判断した場合(ステップS13でNO)、分離動作制御部62による処理は終了する。この場合、印刷ジョブの実行中に、送風ファン51及び開閉弁56は駆動されない。
【0056】
シート分離動作を行う必要があると判断した場合(ステップS13でYES)、分離動作制御部62は、送風ファン51を駆動する(ステップS14)。これにより、エアダクト52の弾性体54は、送風ファン51の最大静圧と釣り合う状態となるまで膨張変形する。
【0057】
その後、分離動作制御部62は、トナー像が転写されたシート9の先端9aがニップ部40aを通過するタイミングであるか否かを判断する(ステップS15)。例えば、画像形成部7と定着装置8との間に配置された検知センサー35から定着部材40のニップ部40aまでの距離が既知であり、またシート9の搬送速度も既知である。そのため、分離動作制御部62は、検知センサー35によってシート9の先端9aが検知されたタイミングに基づいてシート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングを予測することが可能である。したがって、分離動作制御部62は、検知センサー35によってシート9の先端9aが検知されたタイミングから時間計測を開始し、そのシート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングとなったか否かを判断する。そして分離動作制御部62は、シート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングとなるまで待機する(ステップS15でNO)。
【0058】
シート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングとなった場合(ステップS15でYES)、分離動作制御部62は、開閉弁56を動作させてエアダクト52の吹出口55を開放する(ステップS16)。このとき、既にエアダクト52の弾性体54は、エアダクト52の内側の圧力が送風ファン51の最大静圧となるまで膨張変形している。そのため、分離動作制御部62によって開閉弁56が開放されると、エアダクト52の吹出口55は、エアを送風ファン51の最大静圧で一定時間吹き出すことができるため、シート9の先端9aを定着ベルト41の表面から分離することができる。
【0059】
また、定着ベルト41からシート9の先端9aを分離した後、吹出口55から吹き出されるエアは、
図4に示すように、定着ベルト41とシート9との間に進入するため、シート9の先端9aから後端部分も定着ベルト41から分離していくことができる。また、定着ベルト41から分離されたシート9の先端9aは、吹出口55から吹き出されるエアによって定着ベルト41の移動方向とは反対方向に案内される。このとき、エアダクト52の吹出口55の近傍に形成されたガイド部57(
図2、
図3参照)は、シート9の先端9aを下流側の搬送路20に案内することができる。
【0060】
その後、分離動作制御部62は、シート9の後端がニップ部40aを通過したか否かを判断する(ステップS17)。例えば、分離動作制御部62は、定着部材40の下流側に設けられた検知センサー38がシート9の後端を検知することに伴い、シート9の後端がニップ部40aを通過したと判断することができる。ただし、これに限られるものではなく、例えば、分離動作制御部62は、シート9のサイズ及び搬送速度に基づき、画像形成部7と定着装置8との間の検知センサー35がシート9の先端9aを検知した後、シート9の後端が定着部材40のニップ部40aを通過するまでに要する時間を算出し、その時間を計測することによって、シート9の後端がニップ部40aを通過したか否かを判断するようにしても構わない。この場合、定着部材40の下流側に検知センサー38を設ける必要がなくなるため、更なるコスト削減及び小型化を実現することができる。
【0061】
分離動作制御部62は、シート9の後端がニップ部40aを通過したと判断した場合(ステップS17でYES)、開閉弁56を動作させて吹出口55を再び閉鎖する(ステップS18)。これにより、次のシート9を定着ベルト41から分離するための準備動作が開始され、エアダクト52の弾性体54は、送風ファン51の最大静圧と釣り合う状態となるまで再び膨張変形する。
【0062】
また、分離動作制御部62は、印刷ジョブの実行が終了したか否かを判断する(ステップS19)。印刷ジョブの実行が終了していない場合(ステップS19でNO)、分離動作制御部62による処理は、上述したステップS15に戻る。この場合、分離動作制御部62は、後続するシート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングに合わせて開閉弁56を動作させて吹出口55を開放するシート分離動作を繰り返す。また、印刷ジョブの実行が終了した場合(ステップS19でYES)、分離動作制御部62は、送風ファン51を停止させ(ステップS20)、全ての処理を終了する。
【0063】
以上のように本実施形態の定着装置8は、エアを供給する送風ファン51と、送風ファン51から供給されるエアを、シート9の搬送方向下流側から定着部材40のニップ部40aに向けて吹き出す吹出口55が設けられたエアダクト52と、吹出口55を開閉する開閉弁56とを備えており、エアダクト52の少なくとも一部が膨張収縮可能な弾性体54で形成されている。このような構成によれば、開閉弁56が吹出口55を閉鎖した状態で送風ファン51を動作させると、弾性体54を膨張変形させることにより、エアダクト52の内部に送風ファン51の最大静圧と同じ圧力のエアを溜めることが可能である。その状態で、開閉弁56を開放すると、弾性体54は収縮しながらエアダクト52の内部の圧力を保持しつつエアを押し出すことができるため、吹出口55は送風ファン51の最大静圧でエアを一定時間の間、定着部材40のニップ部40aに吹き付けることが可能である。それ故、本実施形態の定着装置8は、送風ファンが比較的小型のファンであっても、確実に定着部材40からシート9を分離することが可能であり、コスト、騒音及び消費電力の点で従来よりも優れている。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態で説明したシート分離ユニット50がシート9の搬送方向に直交する方向に複数配置されている構成例について説明する。尚、本実施形態における画像形成装置1及び定着装置8の基本的な構成は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0065】
図8は、シート9の搬送方向に直交する方向に配置される複数のシート分離ユニット50a,50b,50cを示す図である。
図8において、シート9は、例えばXYZ三次元座標系で示すY方向に搬送される。Y方向に搬送されるシート9のサイズは様々である。複数のシート分離ユニット50a,50b,50cは、画像形成装置1において通紙可能な最大サイズのシート9が通過する通紙領域R1の全体にエアを吹き付けることができるように、シート9の搬送方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に沿って、互いに隣接した状態に設けられる。
【0066】
印刷ジョブの実行に伴い、シート搬送部6が搬送路20に送り出すシート9は、必ずしも最大サイズとは限らず、最大サイズよりも小さいサイズであることが多い。シート搬送部6は、最大サイズよりも小さいサイズのシート9を搬送するとき、
図8に示すように、通紙領域R1の中央位置でシート9を搬送する。このようにシート搬送部6によって搬送されるシート9が最大サイズよりも小さい場合、分離動作制御部62は、シート9を定着部材40から分離するときに、シート9の搬送方向と直交する方向に配置された全てのシート分離ユニット50a,50b,50cを動作させる必要がないケースが生じ得る。
図8に示す例の場合、通紙領域R1の中央に配置されたシート分離ユニット50bは、シート9が通過する領域に対してエアを吹き付けることが可能であるのに対し、通紙領域R1の両端に設けられたシート分離ユニット50a,50cは、シート9が通過する領域に対してエアを吹き付けることができない。そのため、分離動作制御部62は、通紙領域R1の中央に設けられたシート分離ユニット50bだけを動作させれば、シート9を定着部材40から正常に分離することが可能である。この場合、分離動作制御部62は、通紙領域R1の両端に設けられたシート分離ユニット50a,50cを動作させないことで、消費電力や騒音を低減することができるという利点がある。
【0067】
そこで、本実施形態の分離動作制御部62は、シート9の搬送方向と直交する方向に配置される複数のシート分離ユニット50a,50b,50cを個別に制御することができるように構成される。以下、分離動作制御部62による制御の例を幾つか説明する。
【0068】
分離動作制御部62は、ジョブ制御部61によって印刷ジョブの実行が開始されると、シート搬送部6によって搬送されるシート9のサイズを判別し、シート9のサイズに基づいて複数のシート分離ユニット50a,50b,50cのうちからシート分離動作を行わせるシート分離ユニット50を決定する。その後、分離動作制御部62は、決定したシート分離ユニット50に対して、第1実施形態で説明した制御を行うことにより、シート9を定着部材40から分離するシート分離動作を行う。例えば、
図8に示すように、シート9が通紙領域R1の中央部分だけを通過する場合、分離動作制御部62は、シート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングに合わせてシート分離ユニット50bの開閉弁56を開放し、シート9を定着部材40から分離する。
【0069】
また、分離動作制御部62は、シート9のサイズだけではなく、シート9に対するトナー像の分布状態を判別し、トナー像が存在する領域にエアを吹き付けることが可能なシート分離ユニット50を動作させるようにしても良い。
図9は、通紙領域R1の全体を通るシート9にトナー像が転写されていない部分が存在する例を示す図である。
図9に示す例では、シート分離ユニット50aがエアを吹き付けることができる領域にトナー像が転写されておらず、シート分離ユニット50b,50cがエアを吹き付けることができる領域にトナー像が転写されている。このような場合、シート分離ユニット50aがエアを吹き付ける領域ではシート9が定着部材40に貼り付く現象は生じず、シート分離ユニット50b,50cがエアを吹き付ける領域だけにシート9が定着部材40に貼り付く現象が発生する。
【0070】
そこで、分離動作制御部62は、ジョブ制御部61によって印刷ジョブの実行が開始されると、シート搬送部6によって搬送されるシート9のサイズと、印刷対象となる画像データとを解析し、シート9に対してトナー像が転写される領域を特定する。そして分離動作制御部62は、トナー像が転写された領域に応じて、複数のシート分離ユニット50a,50b,50cのうちからシート分離動作を行わせるシート分離ユニット50を決定する。その後、分離動作制御部62は、決定したシート分離ユニット50に対して、第1実施形態で説明した制御を行うことにより、シート9を定着部材40から分離するシート分離動作を行う。
図9の例では、シート分離ユニット50b,50cだけを動作させることでシート9を定着部材40から正常に分離することができる。
【0071】
また、分離動作制御部62は、シート分離ユニット50の位置をシート9が通過する度に、次のシート9に対してトナー像が転写される領域を特定し、シート分離動作を行わせるシート分離ユニット50を決定する処理を繰り返し行うことで、シート9ごとにトナー像が転写されていない領域が変わる場合であっても正常に各シート9を定着部材40から分離することができる。
【0072】
上記においては、分離動作制御部62が、シート9のサイズや、シート9に転写されるトナー像に基づいて、複数のシート分離ユニット50a,50b,50cのうちからシート分離動作を行わせるシート分離ユニット50を決定する例を説明したが、1つのシート分離ユニット50の内側に複数の開閉弁56が設けられている場合には、それら複数の開閉弁56を個別に制御することも可能である。
【0073】
図10は、複数の開閉弁56が設けられたシート分離ユニット50の一例を示す図である。このシート分離ユニット50は、エアダクト52の内側において、シート9の搬送方向と直交する方向に配置される複数の仕切り壁58を備えている。これら複数の仕切り壁58は、吹出口55の近傍位置まで延設され、吹出口55を複数の領域に区切っている。そのため、エアダクト52の内部を流れるエアは、仕切り壁58によって区切られた流路を流れ、吹出口55から吹き出す。エアダクト52の内部に形成される各流路には、開閉弁56が個別に設けられている。つまり、エアダクト52の内部には複数の開閉弁56が設けられていることになる。
【0074】
分離動作制御部62は、
図10に示すシート分離ユニット50を動作させるときには、シート9のサイズや、シート9におけるトナー像の転写領域に基づいて、複数の開閉弁56のうち、定着部材40に貼り付く可能性のある領域にエアを吹き付けることが可能な開閉弁56を動作させて吹出口55を開放することにより、シート9を定着部材40から適切に分離することができる。
【0075】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0076】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態では、エアダクト52の内側に設けられる開閉弁56が電磁弁などで構成される例を説明した。しかし、開閉弁56を電磁弁などで構成すると、開閉弁56を動作させるための機構が複雑化すると共に、開閉弁56として送風ファン51の風圧に耐えられる強度を有するものを用いることが必要となり、開閉弁56が大型化してしまい、結果としてエアダクト52のサイズをある程度大きくしなければならなくなる。そこで、本実施形態では、エアダクト52をよりコンパクトに実現できるようにするため、開閉弁56として、エアダクト52の内部の圧力が送風ファン51の最大静圧となった時点では開放されず、送風ファン51の最大静圧よりも高い所定圧以上となった場合に自動開放されるリリーフ弁を採用する例について説明する。
【0077】
図11は、本実施形態における定着装置8を拡大して示す図である。この定着装置8において、定着部材40の下流側に設けられるシート分離ユニット50は、エアダクト52の内部に、リリーフ弁によって構成された開閉弁56を備えている。リリーフ弁は、エアダクト52の内部の圧力が所定圧力以上となった場合に、エアダクト52の吹出口55を開放する。逆に言うと、リリーフ弁は、エアダクト52の内部の圧力が所定圧力未満のときには吹出口55を閉鎖した状態を保持する。このようなリリーフ弁は、開閉動作に電気的制御を必要としないため、電磁弁に比べると省スペースでエアダクト52内に取り付けることができる。そのため、本実施形態のエアダクト52は、第1実施形態で説明したものよりもコンパクトに実現することが可能であり、定着装置8及び画像形成装置1の小型化に寄与する。
【0078】
また、本実施形態の定着装置8は、エアダクト52の弾性体54の外側の位置に、ソレノイドなどで構成される押圧部材70を備えている。この押圧部材70は、送風ファン51が駆動してエアダクト52の内部にエアが供給され、弾性体54が送風ファン51の最大静圧と釣り合う状態まで膨張した状態のときに、エアダクト52の外側からエアダクト52の内側に向けて弾性体54を押圧することができる位置に設けられる。この押圧部材70は、分離動作制御部62によって制御される。
【0079】
図12は、シート9を定着部材40から分離するシート分離動作の例を示す図である。分離動作制御部62は、トナー像が転写されたシート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングに合わせて押圧部材70を動作させる。その結果、
図12に示すように、押圧部材70は、膨張した弾性体54を外側から内側に押し込み、エアダクト52の内部の圧力を所定圧力以上に上昇させる。その結果、リリーフ弁で構成される開閉弁56が吹出口55を開放し、定着部材40のニップ部40aに向けてエアを吹き付けてシート9の先端9aを定着部材40から分離する。つまり、分離動作制御部62は、押圧部材70を作動させて膨張した弾性体54をエアダクト52の内側に押し込むことにより、適切なタイミングで開閉弁56を作動させてシート9を定着部材40から分離する。
【0080】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1又は第2実施形態で説明したものと同様である。
【0081】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図13は、第4実施形態における定着装置8を拡大して示す図である。本実施形態における定着装置8が、第1実施形態で説明したものと異なる点は、エアダクト52の上部に、送風ファン51から供給されるエアをエアダクト52の内側に導く導入口74が設けられており、その導入口74を開閉する開閉弁(第2開閉弁)59を備える点である。開閉弁59は、例えば電磁弁などによって構成される。この開閉弁59は、導入口74を閉鎖すると、エアダクト52の内部を密閉する。
図13では、開閉弁59が導入口74を開放した状態を示している。この開放状態のときに、送風ファン51が駆動されると、送風ファン51から供給されるエアがエアダクト52内に導かれ、エアダクト52内の圧力を上昇させると共に、弾性体54を膨張変形させる。
【0082】
また、定着装置8の上部には、エアダクト52に供給されないエアを流すための流路75が設けられている。
図13に示すように、開閉弁59が導入口74を開放しているとき、開閉弁59は、流路75を閉鎖した状態となる。
【0083】
本実施形態の分離動作制御部62は、ジョブ制御部61によって印刷ジョブの実行が開始されると、開閉弁(第1開閉弁)56を閉鎖すると共に、開閉弁(第2開閉弁)59を開放した状態で送風ファン51を駆動する。その結果、エアダクト52の内部にエアが供給され、弾性体54を膨張させることができる。そして弾性体54が送風ファン51の最大静圧に釣り合う状態まで膨張すると、分離動作制御部62は、開閉弁59を閉じて導入口74を閉鎖する。
【0084】
図14は、開閉弁59を閉鎖した状態の定着装置8を示す図である。開閉弁59を閉鎖することにより、エアダクト52の内部は、送風ファン51の最大静圧を維持した状態で保持される。また、弾性体54は、膨張した状態を保持する。そのため、分離動作制御部62は、開閉弁59が導入口74を閉鎖した状態になると、送風ファン51による風力を低下させることが可能であり、消費電力を低減することができる。このとき、分離動作制御部62は、送風ファン51を停止させるようにしても良い。
【0085】
その後、分離動作制御部62は、トナー像が転写されたシート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングに合わせて開閉弁56を開放することで、シート9を定着部材40から分離する。
【0086】
図15は、制御部5によって行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。尚、
図15に示す処理手順は、主として、制御部5の分離動作制御部62によって行われる処理である。分離動作制御部62は、ジョブ制御部61によって印刷ジョブの実行が開始されると(ステップS30)、開閉弁56を動作させてエアダクト52の吹出口55を閉鎖する(ステップS31)。続いて、分離動作制御部62は、搬送されるシート9の種類を判別し(ステップS32)、シート9の種類に基づいてシート分離動作を行う必要があるか否かを判断する(ステップS33)。シート分離動作を行う必要がないと判断した場合(ステップS33でNO)、分離動作制御部62による処理は終了する。この場合、印刷ジョブの実行中に、シート分離動作は行われない。
【0087】
シート分離動作を行う必要があると判断した場合(ステップS33でYES)、分離動作制御部62は、送風ファン51を駆動する(ステップS34)。これにより、エアダクト52の弾性体54は、送風ファン51の最大静圧と釣り合う状態となるまで膨張変形する。
【0088】
その後、分離動作制御部62は、エアダクト52内の圧力が送風ファン51の最大静圧に達したか否かを判断する(ステップS35)。この判断は、例えばエアダクト52の内部に圧力センサーを設けておき、その圧力センサーが検知する圧力に基づいて行うようにしても良い。また、送風ファン51の性能は既知であるため、分離動作制御部62は、送風ファン51の駆動を開始してから所定時間が経過した場合に、エアダクト52内の圧力が送風ファン51の最大静圧に達したと判断するようにしても良い。また、エアダクト52の外側に、弾性体54の変位量を検知するセンサーを設けておき、そのセンサーによって弾性体54の膨張量を測定し、弾性体54が所定の膨張状態となった場合に、エアダクト52内の圧力が送風ファン51の最大静圧に達したと判断するようにしても良い。
【0089】
分離動作制御部62は、エアダクト52内の圧力が送風ファン51の最大静圧に達したと判断すると(ステップS35でYES)、開閉弁59を閉鎖し(ステップS36)、送風ファン51を停止させる(ステップS37)。これにより、消費電力を低減することができる。
【0090】
その状態で、分離動作制御部62は、トナー像が転写されたシート9の先端9aがニップ部40aを通過するタイミングであるか否かを判断する(ステップS38)。その結果、未だそのタイミングに至っていない場合(ステップS38でNO)、分離動作制御部62は、シート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングとなるまで待機する。
【0091】
シート9の先端9aが定着部材40のニップ部40aを通過するタイミングとなった場合(ステップS38でYES)、分離動作制御部62は、再び送風ファン51を駆動し(ステップS39)、開閉弁59を開放する(ステップS40)。また、分離動作制御部62は、開閉弁56を動作させてエアダクト52の吹出口55を開放する(ステップS41)。これにより、シート9の先端9aを定着部材40から分離することができる。
【0092】
その後、分離動作制御部62は、シート9の先端9aがニップ部40aを通過したか否かを判断する(ステップS42)。例えば、分離動作制御部62は、定着部材40の下流側に設けられた検知センサー38がシート9の先端9aを検知することに伴い、シート9の先端9aがニップ部40aを通過したと判断することができる。分離動作制御部62は、シート9の先端9aがニップ部40aを通過したと判断すると(ステップS42でYES)、開閉弁56を動作させて吹出口55を再び閉鎖する(ステップS43)。これにより、次のシート9を定着ベルト41から分離するための準備動作が開始され、エアダクト52の弾性体54は、送風ファン51の最大静圧と釣り合う状態となるまで再び膨張変形する。
【0093】
このように本実施形態では、第1実施形態とは異なり、シート9の先端9aがニップ部40aを通過した場合に、分離動作制御部62が開閉弁56を閉鎖するようにしている。すなわち、シート9の先端9aが下流側の搬送路20に対して正常に進入していれば、シート9の後端側は自然に搬送路20に進入していくと考えられることから、ニップ部40aに対するエアの吹き付けを早い段階で停止させるようにしている。これにより、シート9の後端側がエアの吹き付けによってばたついてしまうことを抑制することができる。例えば、シート9の後端がばたついてしまうと、ジャムの発生要因となるが、本実施形態ではそのようなジャムの発生を抑制することができる。
【0094】
ただし、上記のようにニップ部40aに対するエアの吹き付けを早い段階で停止させるものに限られず、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、シート9の後端がニップ部40aを通過したと判断できるまでエアの吹き付けを継続させるようにしても構わない。
【0095】
続いて、分離動作制御部62は、印刷ジョブの実行が終了したか否かを判断する(ステップS44)。印刷ジョブの実行が終了していない場合(ステップS44でNO)、分離動作制御部62による処理は、上述したステップS35に戻り、上述した処理を繰り返す。一方、印刷ジョブの実行が終了した場合(ステップS44でYES)、分離動作制御部62による処理が終了する。
【0096】
以上のように本実施形態の定着装置8は、エアダクト52に送風ファン51から供給されるエアをエアダクト52の内側に導く導入口74が設けられており、弾性体54が所定の状態に膨張したときに開閉弁59によって導入口74を閉鎖することが可能な構成である。このような構成によれば、送風ファン51は、開閉弁59が導入口74を閉鎖することに伴い、風力を低下させることが可能であるため、印刷ジョブの実行中の消費電力を低減することができるという利点がある。
【0097】
ただし、開閉弁59が導入口74を閉鎖しているとき、必ずしも送風ファン51の風力を低下させるものに限られない。例えば、開閉弁59が導入口74を閉鎖すると、送風ファン51から供給されるエアは、
図16において矢印F5で示すように、流路75を流れるようになる。そのため、この流路75を定着装置8の周辺で冷却の必要な部分に導くように構成すれば、送風ファン51を冷却用ファンとしても活用することができるようになる。したがって、分離動作制御部62は、開閉弁59が導入口74を閉鎖している状態でも送風ファン51の駆動を継続させ、エアをエアダクト52とは異なる流路75に案内することで定着装置8の動作中に定着装置8の周辺を冷却することができるという利点がある。
【0098】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1、第2又は第3実施形態で説明したものと同様である。
【0099】
(変形例)
以上、本発明に関する好ましい幾つかの実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記各実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0100】
例えば上記実施形態では、画像形成装置1がMFPとして構成される場合を例示した。しかし、画像形成装置1は、MFPとして構成されるものに限られない。すなわち、画像形成装置1は、プリント機能のみを備えたプリンタであっても構わない。
【0101】
また、上記実施形態では、画像形成装置1がシート9に対してカラー画像を形成可能なカラー機である場合を例示したが、これに限られず、画像形成装置1はモノクロ機であっても構わない。
【符号の説明】
【0102】
1 画像形成装置
2 プリンタ部
5 制御部(制御手段)
6 シート搬送部
7 画像形成部
8 定着装置
9 シート
40 定着部材
40a ニップ部
50(50a,50b,50c) シート分離ユニット
51 送風ファン
52 エアダクト
53 壁部
54 弾性体
55 吹出口
56 開閉弁(第1開閉手段)
57 ガイド部
59 開閉弁(第2開閉手段)
70 押圧部材(押圧手段)
74 導入口