(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】衛星信号受信装置、衛星信号受信装置の制御方法、プログラムおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
G01S 19/33 20100101AFI20240717BHJP
G01S 19/34 20100101ALI20240717BHJP
G01S 19/35 20100101ALI20240717BHJP
【FI】
G01S19/33
G01S19/34
G01S19/35
(21)【出願番号】P 2020125763
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】木下 英治
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-042246(JP,A)
【文献】特開2016-148609(JP,A)
【文献】特開2013-228250(JP,A)
【文献】特表2016-540407(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0037650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
G01S 19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1GNSSおよび第2GNSSを併用して測位処理を行う衛星信号受信装置であって、
前記第1GNSSからの第1衛星信号を受信する第1RF受信回路部と、
前記第2GNSSからの第2衛星信号を受信する第2RF受信回路部と、
前記第1衛星信号および前記第2衛星信号を処理するベースバンド処理回路部と、
前記第1RF受信回路部、前記第2RF受信回路部および前記ベースバンド処理回路部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1衛星信号の受信処理を行う第1信号処理部と、
前記第1衛星信号の受信処理の処理結果を含む第1受信状態を取得する受信状態取得部と、
前記第1受信状態に応じて、前記第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定する処理能力決定部と、
前記処理能力で前記第2衛星信号の受信処理を行う第2信号処理部と、
を有することを特徴とする衛星信号受信装置。
【請求項2】
前記第1受信状態は、前記第1衛星信号の受信処理の処理結果として、前記第1GNSSのトラッキング衛星数、前記第1衛星信号の受信信号強度指標、前記第1GNSSの受信衛星配置指標、当該衛星信号受信装置の移動状態、および、前記第1衛星信号に基づく測位状態、のうちの少なくとも1つを含む請求項1に記載の衛星信号受信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1受信状態に応じて、前記第1RF受信回路部に対する間欠駆動制御、ならびに、前記第1RF受信回路部および前記第2RF受信回路部の双方に対する間欠駆動制御のうちのいずれかを選択する請求項1または2に記載の衛星信号受信装置。
【請求項4】
前記第2衛星信号が、第1衛星航法情報と、前記第1衛星航法情報よりも航法情報の送信速度が速い第2衛星航法情報と、を含んでいるとき、
前記制御部は、前記第2RF受信回路部を、第1デューティー比で間欠駆動させるように制御し、
前記第2衛星信号が、前記第2衛星航法情報を含んでいないとき、
前記制御部は、前記第2RF受信回路部を、前記第1デューティー比よりも低い第2デューティー比で間欠駆動させるように制御する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の衛星信号受信装置。
【請求項5】
第1GNSSからの第1衛星信号を受信する第1RF受信回路部と、第2GNSSからの第2衛星信号を受信する第2RF受信回路部と、前記第1衛星信号および前記第2衛星信号を処理するベースバンド処理回路部と、を備え
、前記第1GNSSおよび前記第2GNSSを併用して測位処理を行う衛星信号受信装置の制御方法であって、
前記第1RF受信回路部に前記第1GNSSからの前記第1衛星信号を受信する受信処理を行わせるステップと、
前記第1衛星信号の受信処理の処理結果を含む第1受信状態を取得するステップと、
前記第1受信状態に応じて、前記第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定するステップと、
前記処理能力で、前記第2RF受信回路部に前記第2GNSSからの前記第2衛星信号を受信する受信処理を行わせるステップと、
を有することを特徴とする衛星信号受信装置の制御方法。
【請求項6】
第1GNSSからの第1衛星信号を受信する第1RF受信回路部と、第2GNSSからの第2衛星信号を受信する第2RF受信回路部と、前記第1衛星信号および前記第2衛星信号を処理するベースバンド処理回路部と、に接続されているプロセッサーに、
前記第1RF受信回路部に前記第1GNSSからの前記第1衛星信号を受信する受信処理を行わせ、
前記第1衛星信号の受信処理の処理結果を含む第1受信状態を取得させ、
前記第1受信状態に応じて、前記第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定させ、
前記処理能力で、前記第2RF受信回路部に前記第2GNSSからの前記第2衛星信号を受信する受信処理を行わ
せ、
前記第1GNSSおよび前記第2GNSSを併用して測位処理を行わせる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の衛星信号受信装置を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星信号受信装置、衛星信号受信装置の制御方法、プログラムおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測位用信号を利用した測位システムとしては、GPS(Global Positioning System)が広く知られており、携帯型電話機やカーナビゲーション装置等に利用されている。GPSでは、GPS受信機の計時時刻を用いて、複数のGPS衛星の位置や各GPS衛星から受信装置までの擬似距離等を求め、それに基づいて位置計算を行う。
【0003】
特許文献1には、消費電力の削減のため、位置算出の動作を実行する期間と実行しない期間とを繰り返す間欠的な位置算出動作を行うGPS受信機が開示されている。具体的には、特許文献1には、測位用衛星からの衛星信号を受信するRF(Radio Frequency)受信回路部、および、RF受信回路部で受信された信号を処理するベースバンド処理回路部、を連続駆動させる連続駆動モードと、ベースバンド処理回路部を間欠駆動させるとともに、その駆動期間においてRF受信回路部を間欠駆動させる多段間欠モードと、を少なくとも含み、衛星信号の受信強度に応じて、駆動モードを切り替える受信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、測位システムは、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)という総称で呼ばれることが多くなっている。前述したGPSもGNSSの一種であり、その他に、Beidou、GLONASS、Galileo等の種類が知られている。
【0006】
特許文献1には、例えばGPSのような1種類のGNSSを利用する受信装置が開示されているが、近年では、複数種のGNSSを組み合わせて利用すること、いわゆるマルチGNSSに対応する受信装置が求められている。
【0007】
しかしながら、マルチGNSSでは、より多くの衛星から信号を取得することができ、測位精度の向上や測位可能エリアの拡大といった性能の向上が期待される反面、消費電力の増大を招くという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の適用例に係る衛星信号受信装置は、
第1GNSSおよび第2GNSSを併用して測位処理を行う衛星信号受信装置であって、
前記第1GNSSからの第1衛星信号を受信する第1RF受信回路部と、
前記第2GNSSからの第2衛星信号を受信する第2RF受信回路部と、
前記第1衛星信号および前記第2衛星信号を処理するベースバンド処理回路部と、
前記第1RF受信回路部、前記第2RF受信回路部および前記ベースバンド処理回路部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1衛星信号の受信処理を行う第1信号処理部と、
前記第1衛星信号の受信処理の処理結果を含む第1受信状態を取得する受信状態取得部と、
前記第1受信状態に応じて、前記第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定する処理能力決定部と、
前記処理能力で前記第2衛星信号の受信処理を行う第2信号処理部と、
を有する。
【0009】
本発明の適用例に係る衛星信号受信装置の制御方法は、
第1GNSSからの第1衛星信号を受信する第1RF受信回路部と、第2GNSSからの第2衛星信号を受信する第2RF受信回路部と、前記第1衛星信号および前記第2衛星信号を処理するベースバンド処理回路部と、を備え、前記第1GNSSおよび前記第2GNSSを併用して測位処理を行う衛星信号受信装置の制御方法であって、
前記第1RF受信回路部に前記第1GNSSからの前記第1衛星信号を受信する受信処理を行わせるステップと、
前記第1衛星信号の受信処理の処理結果を含む第1受信状態を取得するステップと、
前記第1受信状態に応じて、前記第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定するステップと、
前記処理能力で、前記第2RF受信回路部に前記第2GNSSからの前記第2衛星信号を受信する受信処理を行わせるステップと、
を有する。
【0010】
本発明の適用例に係るプログラムは、
第1GNSSからの第1衛星信号を受信する第1RF受信回路部と、第2GNSSからの第2衛星信号を受信する第2RF受信回路部と、前記第1衛星信号および前記第2衛星信号を処理するベースバンド処理回路部と、に接続されているプロセッサーに、
前記第1RF受信回路部に前記第1GNSSからの前記第1衛星信号を受信する受信処理を行わせ、
前記第1衛星信号の受信処理の処理結果を含む第1受信状態を取得させ、
前記第1受信状態に応じて、前記第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定させ、
前記処理能力で、前記第2RF受信回路部に前記第2GNSSからの前記第2衛星信号を受信する受信処理を行わせ、
前記第1GNSSおよび前記第2GNSSを併用して測位処理を行わせる。
【0011】
本発明の適用例に係る電子機器は、本発明の適用例に係る衛星信号受信装置を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る衛星信号受信装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すベースバンド処理制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】GPSの衛星航法情報の仕様を示す図である。
【
図4】Beidouの衛星航法情報D1の仕様を示す図である。
【
図5】GPSの衛星航法情報およびBeidouの衛星航法情報D1の送信速度と、衛星航法情報D2の送信速度と、の違いを示す図である。
【
図6】
図1に示す衛星信号受信装置の受信測位動作を説明するフローチャートである。
【
図7】第1受信状態を構成する各要素を指標とし、その指標とその良否を表すスコアとの関係の一例を示す表であって、記憶部に記憶される指標算出テーブルの一例である。
【
図8】第1受信状態の判定基準の一例を示す表であって、記憶部に記憶される指標算出テーブルの一例である。
【
図9】
図6に示す間欠駆動制御処理を説明するフローチャートである。
【
図10】
図9に示す、第1GNSSによる測位に対する間欠駆動制御を説明するフローチャートである。
【
図11】
図9に示す、第2GNSSによる測位に対する間欠駆動制御を説明するフローチャートである。
【
図12】
図9に示す、第2GNSSによる測位に対する間欠駆動制御を説明するフローチャートである。
【
図13】実施形態に係る電子機器である電子時計の回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の衛星信号受信装置、衛星信号受信装置の制御方法、プログラムおよび電子機器の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
1.衛星信号受信装置
実施形態に係る衛星信号受信装置について説明する。
図1は、実施形態に係る衛星信号受信装置の機能構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示す衛星信号受信装置1は、マルチGNSSに対応した装置である。マルチGNSSは、複数種のGNSSを併用する利用形態である。GNSSとしては、例えば、GPS、Beidou、GLONASS、Galileo等が挙げられる。本実施形態に係る衛星信号受信装置1は、一例として、これらの中から任意の2つを組み合わせて利用する。以下、1つ目のGNSSを「第1GNSS」といい、第1GNSSに属する衛星を「第1GNSS衛星」といい、第1GNSS衛星から送出される電波に乗せられている信号を「第1衛星信号」という。また、2つ目のGNSSを「第2GNSS」といい、第2GNSSに属する衛星を「第2GNSS衛星」といい、第2GNSS衛星から送出される電波に乗せられている信号を「第2衛星信号」という。
【0016】
図1に示す衛星信号受信装置1は、RF受信部2と、ベースバンド処理部3と、アンテナ41、42と、を備えている。
【0017】
1.1.RF受信部
図1に示すRF受信部2は、アンテナ41、42を用いて、GNSS衛星からの電波を受信し、受信信号を出力する。具体的には、
図1に示すRF受信部2は、アンテナ41を用いて第1GNSS衛星からの電波を受信する第1受信チャネル21と、アンテナ42を用いて第2GNSS衛星からの電波を受信する第2受信チャネル22と、を備えている。
【0018】
図1に示す第1受信チャネル21は、アンテナ41に接続された第1RF受信回路部212と、第1RF受信回路部212に接続されたサンプリング部214と、を備えている。
【0019】
図1に示す第2受信チャネル22は、アンテナ42に受信された第2RF受信回路部222と、第2RF受信回路部222に接続されたサンプリング部224と、を備えている。
【0020】
第1RF受信回路部212および第2RF受信回路部222は、RF信号の受信回路であり、GNSS衛星からの電波を受信する。第1RF受信回路部212および第2RF受信回路部222の回路構成には、例えば、アンテナ41、42から出力されたRF信号を増幅する増幅回路、RF信号から衛星信号の周波数帯以外の成分を除去するバンドパスフィルター、局部発振信号を混合させてRF信号を中間周波数帯の信号に変換するミキサー回路等が含まれる。
【0021】
サンプリング部214、224は、アナログ・デジタル変換器等を備えている。第1RF受信回路部212および第2RF受信回路部222から出力された受信信号は、サンプリング部214、224において所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換される。変換後のデジタル信号は、ベースバンド処理部3に出力される。
【0022】
なお、RF受信部2は、衛星信号受信装置1が受信するGNSSの種類の数に応じて、3つ以上の受信チャネルを備えていてもよい。また、それに応じて、衛星信号受信装置1は、3つ以上のアンテナを備えていてもよい。
【0023】
ただし、衛星信号受信装置1が対応するGNSSの種類の数と受信チャネルの数とが同数であることは必須ではない。例えば、1つの受信チャネルで2種類以上のGNSS衛星からの電波を受信可能である場合には、GNSSの種類の数に比べて受信チャネルの数が少なくてもよい。
【0024】
1.2.ベースバンド処理部
図1に示すベースバンド処理部3は、RF受信部2から出力された受信信号に対し、キャリアー除去や相関演算等の処理動作を行うことにより、衛星信号を捕捉、追尾する。そして、衛星信号から抽出した時刻データや衛星軌道データ等を利用して、時刻や位置を算出する。
【0025】
図1に示すベースバンド処理部3は、ベースバンド処理回路部31と、制御部であるベースバンド処理制御部32と、を備えている。
【0026】
1.2.1.ベースバンド処理回路部
ベースバンド処理回路部31は、サンプリングメモリー部312と、相関処理部314と、を備えている。
【0027】
サンプリングメモリー部312は、RF受信部2から出力された受信信号が保存される。なお、サンプリングメモリー部312では、GNSSごとに専用の領域が確保されていてもよいし、複数種のGNSSで同一の領域が共用されていてもよい。
【0028】
相関処理部314は、サンプリングメモリー部312に保存されている受信信号とレプリカコードとの相関値を演算する。
【0029】
1.2.2.ベースバンド処理制御部
ベースバンド処理制御部32は、受信処理制御部320と、第1信号処理部321と、第2信号処理部322と、間欠駆動制御部323と、衛星航法情報復号部324と、位置時刻情報演算部325と、記憶部328と、を備えている。
【0030】
受信処理制御部320は、RF受信部2およびベースバンド処理回路部31の動作を制御し、衛星信号の受信処理および測位処理を実行する。
【0031】
第1信号処理部321は、信号検出部3212と、信号追尾部3214と、を備えている。
【0032】
信号検出部3212は、第1RF受信回路部212、サンプリング部214およびサンプリングメモリー部312の動作を制御して、第1GNSS衛星からの電波を受信させ、受信信号をサンプリングメモリー部312に保存させる。その後、相関処理部314の動作を制御して、サンプリングメモリー部312に保存されている受信信号とレプリカコードとの相関値を演算させ、第1衛星信号を検出する検出処理(サーチ処理)を実行する。この検出処理は、検出処理が対象とする周波数範囲が終了するまで実行される。
【0033】
信号追尾部3214は、第1RF受信回路部212、サンプリング部214、サンプリングメモリー部312および相関処理部314の動作を制御して、検出された第1衛星信号を追尾する追尾処理(トラッキング処理)を実行する。
【0034】
第2信号処理部322は、信号検出部3222と、信号追尾部3224と、を備えている。
【0035】
信号検出部3222は、第2RF受信回路部222、サンプリング部224およびサンプリングメモリー部312の動作を制御して、第2GNSS衛星からの電波を受信させ、受信信号をサンプリングメモリー部312に保存させる。その後、相関処理部314の動作を制御して、サンプリングメモリー部312に保存されている受信信号とレプリカコードとの相関値を演算させ、第2衛星信号を検出する検出処理(サーチ処理)を実行する。この検出処理は、検出処理が対象とする周波数範囲が終了するまで実行される。
【0036】
信号追尾部3224は、第2RF受信回路部222、サンプリング部224、サンプリングメモリー部312および相関処理部314の動作を制御して、検出された第2衛星信号を追尾する追尾処理(トラッキング処理)を実行する。
【0037】
なお、RF受信部2およびベースバンド処理部3は、1つの半導体チップに収められていてもよいし、個別の半導体チップに収められていてもよいし、それぞれ複数の半導体チップで構成されていてもよい。
【0038】
間欠駆動制御部323は、RF受信部2およびベースバンド処理回路部31を間欠駆動させるように制御する。
図1に示す間欠駆動制御部323は、受信状態取得部326と、処理能力決定部327と、を備えている。間欠駆動制御部323の各部については、後に詳述する。
【0039】
衛星航法情報復号部324は、追尾している衛星信号から、衛星航法情報やコード情報等のデータを復号する復号処理(デコード処理)を実行する。
【0040】
位置時刻情報演算部325は、復号されたデータに基づいて、演算により時刻情報や位置情報を取得する測位処理を実行する。
【0041】
記憶部328には、ベースバンド処理制御部32の各種機能を実現するための制御プログラム330の他、各種データ等を記憶する。記憶部328に記憶される主要なデータとしては、
図1に示すように、後述するエフェメリスやアルマナックのような衛星軌道データ332、サーチ処理やトラッキング処理に必要なメジャメントデータ334、後述する第1受信状態の判定に用いる指標を算出する指標算出テーブル336等が挙げられる。
【0042】
このうち、メジャメントデータ334は、追尾しているGNSS衛星に係る諸量であり、例えば、コード位相、受信周波数等が挙げられる。
【0043】
1.2.4.ハードウェア構成
図2は、
図1に示すベースバンド処理制御部32のハードウェア構成の一例を示す図である。ベースバンド処理制御部32の動作は、
図2に示すようなハードウェア構成により実現される。
【0044】
ベースバンド処理制御部32は、プロセッサー71、メモリー72および外部インターフェース73の各ハードウェアを備えており、これらは、内部バスまたは専用通信線によって相互に接続されて構成されている。プロセッサー71には、例えばCPU(Central Processing Unit)等が用いられる。メモリー72には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー等が用いられる。外部インターフェース73は、ケーブルを用いるものであっても、無線を用いるものであってもよい。
【0045】
プロセッサー71は、メモリー72に保存されているプログラムを読み出し、これを実行することによって、ベースバンド処理制御部32の動作を実現する。なお、ベースバンド処理制御部32の動作のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよい。
【0046】
2.衛星航法情報の仕様例
次に、衛星航法情報の仕様について説明する。GNSS衛星から送信される電波には衛星信号が乗せられている。この衛星信号には、主としてGNSS衛星の衛星軌道に関する情報(衛星航法情報)が含まれている。以下、一例として、GPSとBeidouの衛星航法情報の仕様について説明する。
【0047】
2.1.GPSの衛星航法情報
図3は、GPSの衛星航法情報の仕様を示す図である。
【0048】
GPSの衛星航法情報は、
図3に示すように、全ビット数が1500ビットのロングフレームを1単位とするデータで構成される。ロングフレームは、それぞれ300ビットの5つのサブフレーム1~5に分割されている。1つのサブフレームのデータは、GPS衛星から6秒で送信される。したがって、1つのロングフレームのデータは、GPS衛星から30秒で送信される。
【0049】
サブフレーム1には、衛星時計補正情報、衛星ヘルス情報等が含まれている。
サブフレーム2には、衛星軌道情報1が含まれ、サブフレーム2には、衛星軌道情報2が含まれている。衛星軌道情報1、2は、エフェメリスと呼ばれ、各GPS衛星の詳細な軌道情報を含んでいる。エフェメリスは、追尾しているGPS衛星から固有の情報として送信されている。そして、追尾しているGPS衛星からエフェメリスを取得することにより、追尾しているGPS衛星の現在位置を算出することができるため、測位処理が可能になる。なお、エフェメリスには、有効期限が設定されており、継続的に測位処理を行うためには、定期的にエフェメリスを取得する必要がある。
【0050】
サブフレーム4には、概衛星軌道情報1および各種補正情報が含まれ、サブフレーム5には、概衛星軌道情報2が含まれている。概衛星軌道情報1、2は、アルマナックと呼ばれ、全GPS衛星の概略軌道情報を含んでいる。アルマナックは、追尾している全GPS衛星から同じ情報として送信されている。なお、サブフレーム4、5のデータは、複数のロングフレームに分割されたデータの一部であり、これらの全データでフルフレームという単位を構成している。
【0051】
サブフレーム1~5には、先頭から30ビットごとに、ワード1~10までのデータが含まれている。このうち、ワード1には、TLM(Telemetry word)データが格納されている。また、ワード2には、HOW(hand over word)データが格納されている。TLMデータおよびHOWデータは、日付情報および時刻情報の取得に用いられる。
【0052】
2.2.Beidouの衛星航法情報
Beidouには、D1とD2の2種類の衛星航法情報がある。D1は非静止衛星から送信され、D2は静止衛星から送信される。
【0053】
図4は、Beidouの衛星航法情報D1の仕様を示す図である。
図5は、GPSの衛星航法情報およびBeidouの衛星航法情報D1の送信速度と、衛星航法情報D2の送信速度と、の違いを示す図である。
【0054】
Beidouの衛星航法情報D1は、
図4に示すように、全ビット数が1500ビットのフレームを1単位とするデータで構成される。サブフレーム4、5のページ数が、GPSよりも少ない以外、衛星航法情報D1の仕様は、GPSの衛星航法情報の仕様とほぼ同様である。
【0055】
GPSの衛星航法情報の送信速度およびBeidouの衛星航法情報D2の送信速度は、
図5に示すように、衛星航法情報D1よりも10倍速いという違いがある。したがって、衛星航法情報D2の1ビットを表す時間は、衛星航法情報D1の1ビットを表す時間の1/10である。
【0056】
3.衛星信号受信装置の受信測位動作
次に、
図1に示す衛星信号受信装置1の受信測位動作について説明する。
【0057】
図6は、
図1に示す衛星信号受信装置1の受信測位動作を説明するフローチャートである。
【0058】
3.1.第1受信状態に応じた第2衛星信号の処理能力制御
ステップS11では、ベースバンド処理制御部32の受信処理制御部320が、RF受信部2およびベースバンド処理回路部31の動作を省電力モードで行うか否かを設定する。ここでは、省電力モードを選択するように設定する。
【0059】
ステップS12では、受信処理制御部320が、RF受信部2に対し、使用するGNSSの設定に応じた受信RFチャネルの選択制御を行う。ここでは、第1受信チャネル21と第2受信チャネル22の2つを用いる。第1受信チャネル21は、第1GNSS衛星からの電波を受信し、第2受信チャネル22は、第2GNSS衛星からの電波を受信する。
【0060】
ステップS13では、第1GNSSの有効なエフェメリス等の衛星航法情報が記憶部328に保存されている場合、受信処理制御部320がこれを読み込む。この衛星航法情報は、前回の受信動作の終了時に取得したものであってもよいし、基地局等から受信したものであってもよい。
【0061】
ステップS14では、第1信号処理部321による第1衛星信号の受信測位処理を開始する。具体的には、まず、ステップS15では、信号検出部3212が、第1衛星信号を検出するサーチ処理を行う。このとき、有効なエフェメリスが保存されていた場合には、そのエフェメリスを用いて第1衛星信号を検出するサーチ処理を行う。一方、有効なエフェメリスが保存されていないものの、サンプリングメモリー部312にアルマナックが保存されていた場合には、そのアルマナックを用いて第1GNSS衛星を検出するサーチ処理を行う。また、エフェメリスもアルマナックも保存されていなかった場合には、所定の順序で第1GNSS衛星を検出するサーチ処理を行う。
【0062】
ステップS16では、信号追尾部3214が、検出した第1衛星信号を追尾するトラッキング処理を行う。そして、衛星航法情報復号部324が、追尾中の第1衛星信号から衛星航法情報を復号するデコード処理を行う。デコード処理で得られた衛星航法情報は、前述した記憶部328に衛星軌道データ332として記憶される。
【0063】
ステップS17では、ステップS11で設定した省電力モードがその時点で有効か否かを判定する。有効でない場合には、ステップS31に移行する。一方、省電力モードが有効である場合には、ステップS18に移行する。
【0064】
ステップS18では、間欠駆動制御部323の受信状態取得部326が、第1衛星信号の受信状態(第1受信状態)を取得する。第1受信状態とは、第1衛星信号の受信や測位の状態を表す要素の良否のことをいう。具体的には、第1GNSSのトラッキング衛星数、第1衛星信号の受信信号強度指標、第1GNSSの受信衛星配置指標、衛星信号受信装置1の移動状態、第1衛星信号に基づく測位状態、等の各要素が挙げられ、前述した第1受信状態は、これらの要素のうちの少なくとも1つについて、その良否を示す情報を含んでいればよい。なお、第1受信状態には、これらの要素、つまり、サーチ処理、トラッキング処理、デコード処理等の処理結果に基づく要素以外に、例えば基地局等から受信した情報に基づく要素を含んでいてもよい。
【0065】
図7は、第1受信状態を構成する各要素を指標とし、その指標とその良否を表すスコアとの関係の一例を示す表であって、前述した記憶部328に記憶される指標算出テーブル336の一例である。各指標のスコアを合計することにより、第1受信状態を定量的に評価し、後述するステップS19、S22における判定の基準に利用することができる。
【0066】
第1GNSSのトラッキング衛星数は、信号追尾部3214が追尾している第1GNSS衛星の衛星数である。追尾している衛星数が6未満である場合、この指標のスコアは0となる。また、追尾している衛星数が6以上9未満である場合、この指標のスコアは1となる。さらに、追尾している衛星数が9以上である場合、この指標のスコアは2となる。
【0067】
第1衛星信号の受信信号強度指標は、第1衛星信号の平均信号対雑音比(平均SNR値)である。平均SNR値が30未満である場合、この指標のスコアは0となる。また、平均SNR値が30以上36未満である場合、この指標のスコアは1となる。さらに、平均SNR値が36以上である場合、この指標のスコアは2となる。
【0068】
第1GNSSの受信衛星配置指標は、第1GNSS衛星の配置の良否を表すPDOP(Position Dilution of Precision)値である。PDOP値が2未満である場合、この指標のスコアは2となる。また、PDOP値が2以上6未満である場合、この指標のスコアは1となる。さらに、PDOP値が6以上である場合、この指標のスコアは0となる。なお、この指標を算出することができない場合、この指標のスコアは0となる。
【0069】
衛星信号受信装置1の移動状態は、追尾中の第1衛星信号のドップラー効果による周波数変化に基づいて算出される。移動状態が静止状態である場合、この指標のスコアは2となる。また、移動状態が低速移動状態である場合、この指標のスコアは1となる。さらに、移動状態が高速移動状態である場合、この指標のスコアは0となる。なお、この指標を算出することができない場合には、この指標のスコアは0となる。
【0070】
第1衛星信号に基づく測位状態は、第1衛星信号による測位の有無である。測位している場合、この指標のスコアは2である。測位していない場合、この指標のスコアは0である。
【0071】
ステップS19では、第1衛星信号の受信状態(第1受信状態)に応じて、間欠駆動制御部323の処理能力決定部327が、第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定する。第1受信状態は、前述したような指標を用いることで、定量的に評価することができる。そこで、ステップS19では、上述した指標の合計スコアに基づいて、第1受信状態の良否を判定する。
【0072】
図8は、第1受信状態の判定基準の一例を示す表であって、前述した記憶部328に記憶される指標算出テーブル336の一例である。
【0073】
第1受信状態を構成する指標の合計スコアが7未満である場合、第1受信状態は「悪い」と判定する。また、合計スコアが7以上9未満である場合、第1受信状態は「普通」と判定する。さらに、合計スコアが9以上である場合、第1受信状態は「良い」と判定する。
【0074】
したがって、ステップS19で、第1受信状態が「良い」と判定した場合、ステップS21に移行する。ステップS21では、第2衛星信号のサーチ処理、トラッキング処理およびデコード処理等の受信処理を停止する。これにより、RF受信部2およびベースバンド処理部3の消費電力を低減することができる。なお、ステップS21で第2衛星信号の受信処理を停止するのではなく、後述するステップS23における受信処理よりも低い処理能力に設定するようにしてもよい。また、第2衛星信号のサーチ処理のみ停止し、トラッキング処理およびデコード処理は実施するようにしてもよい。この場合、消費電力が相対的に大きいサーチ処理を停止することで、消費電力の削減が図られる。
【0075】
このように第1受信状態が「良い」と判定された場合には、第1GNSSだけでも十分な測位性能を得ることができる。このため、測位性能を著しく落とすことなく、第2GNSSによる測位を停止することが可能になる。その結果、衛星信号受信装置1の消費電力の削減を図ることができる。
【0076】
ステップS19で第1受信状態が「良い」以外であると判定した場合、ステップS22に移行する。ステップS22では、第1受信状態が「普通」であるか否かを判定する。「普通」と判定した場合、ステップS23に移行する。ステップS23では、第2衛星信号の受信処理、例えばサーチ処理の処理能力を、最大能力に対して50%に設定する。処理能力とは、第2衛星信号に含まれるコード位相および受信周波数といったメジャメントデータ334を探索するとき、その処理能力のことをいう。具体的には、この処理能力として、サーチ処理を実施する感度域、サーチ処理を行うパワー等が挙げられ、これらのうちの少なくとも一方が含まれていればよい。
【0077】
このうち、サーチ処理を実施する感度域とは、どこまでの信号強度をサーチ対象にするかという設定であり、例えば弱い第2衛星信号を時間をかけて探すより、強い第2衛星信号を短時間で探す方が適当であることも多いため、それを踏まえた設定である。第2衛星信号を探す時間を短くすることにより、消費電力を小さくすることができる。
【0078】
一方、サーチ処理を行うパワーとは、単位時間にどれだけのサーチ処理を実施するかという設定であり、例えばこのパワーを大きくすることで、より早く対象範囲をサーチすることができる。このため、第2衛星信号をより早く検出することができる反面、消費電力が大きくなる。逆に、このパワーを小さくすることで、第2衛星信号を検出する時間は長くなるが、消費電力は小さくなる。
【0079】
なお、ステップS23で設定する処理能力は、50%に限定されず、前述したステップS21における処理能力よりも高ければよい。
【0080】
ステップS24、S25では、ステップS23で決定した処理能力で、第2衛星信号の受信処理を行う。具体的には、ステップS24では、信号検出部3222が、ステップS23で設定した処理能力で、第2衛星信号を検出するサーチ処理を行う。ステップS25では、信号追尾部3224が、検出した第2衛星信号を追尾するトラッキング処理を行う。そして、衛星航法情報復号部324が、追尾中の第2衛星信号から衛星航法情報を復号するデコード処理を行う。デコード処理で得られた衛星航法情報は、前述した記憶部328に衛星軌道データ332として記憶される。なお、サーチ処理ではなく、トラッキング処理を前述した処理能力で行うようにしてもよく、サーチ処理とトラッキング処理の双方を前述した処理能力で行うようにしてもよい。本実施形態では、サーチ処理の処理能力およびトラッキング処理の処理能力の少なくとも一方を指して、「受信処理の処理能力」という。
【0081】
このようにステップS22において第1受信状態が「普通」と判定された場合には、第1GNSSだけでは測位性能がやや不足する場面もあり得るため、第2GNSSによる測位を追加することによって、マルチGNSSによる測位性能の向上を図ることができる。このとき、第2衛星信号のサーチ処理の処理能力を50%に下げることにより、消費電力の削減を同時に達成することができる。
【0082】
一方、ステップS22で第1受信状態が「普通」でないと判定した場合、ステップS26に移行する。ステップS26では、第1受信状態が「悪い」と判定することになる。その後、ステップS27に移行する。ステップS27では、第2衛星信号のサーチ処理の処理能力を100%に設定する。なお、ステップS27における処理能力は、100%に限定されず、前述したステップS23における処理能力よりも高ければよい。
【0083】
ステップS28、S29では、ステップS27で決定した処理能力で、第2衛星信号の受信処理を行う。具体的には、ステップS28では、信号検出部3222が、第2GNSSの第2衛星信号を検出するサーチ処理を行う。このとき、ステップS27で設定した処理能力で、第2衛星信号を検出するサーチ処理を行う。ステップS29では、信号追尾部3224が、検出した第2衛星信号を追尾するトラッキング処理を行う。そして、衛星航法情報復号部324が、追尾中の第2衛星信号から衛星航法情報を復号するデコード処理を行う。デコード処理で得られた衛星航法情報は、前述した記憶部328に衛星軌道データ332として記憶される。なお、サーチ処理ではなく、トラッキング処理を前述した処理能力で行うようにしてもよく、サーチ処理とトラッキング処理の双方を前述した処理能力で行うようにしてもよい。
【0084】
このように第1受信状態が「悪い」と判定された場合には、第1GNSSだけでは測位性能が不足するため、第2GNSSによる測位を追加することにより、マルチGNSSによる測位性能を確保することができる。その後、ステップS31に移行する。
【0085】
3.2.間欠駆動制御
ステップS31では、再び、ステップS11で設定した省電力モードがその時点で有効か否かを判定する。有効でない場合には、ステップS33に移行する。一方、省電力モードが有効である場合には、ステップS32に移行する。
【0086】
ステップS32では、ベースバンド処理制御部32の間欠駆動制御部323により、間欠駆動制御処理を実行する。間欠駆動制御処理では、第1RF受信回路部212、第2RF受信回路部222およびベースバンド処理回路部31を間欠駆動させる。そして、第1受信状態に応じて間欠駆動におけるデューティー比を変化させるように制御する。その結果、測位性能を落とすことなく、消費電力の削減を図ることができる。
【0087】
図9は、
図6に示す間欠駆動制御処理を説明するフローチャートである。
ステップS41では、後述するが、第1GNSSによる測位に対する間欠駆動処理を行う。これにより、第1GNSSによる測位処理において、消費電力の削減を図ることができる。
【0088】
ステップS42では、後述するが、第2GNSSによる測位に対する間欠駆動処理を行う。これにより、第2GNSSによる測位処理において、消費電力の削減を図ることができる。
【0089】
3.2.1.第1GNSSによる測位に対する間欠駆動制御(ステップS41)
図10は、
図9に示す、第1GNSSによる測位に対する間欠駆動制御を説明するフローチャートである。
【0090】
図10に示すステップS51では、受信している第1衛星信号のデコード処理の状態を確認する。続いて、ステップS52では、第1衛星信号の有効なエフェメリスを取得できているか否かを判定する。有効なエフェメリスを取得できているときには、ステップS53において、受信している第1衛星信号のデコードタイミングを確認する。そして、ステップS54に移行する。一方、有効なエフェメリスを取得できていないときには、後述するステップS62に移行する。
【0091】
ステップS54では、ステップS53における確認の結果、エフェメリスをデコードするのに適切なタイミングであるか否かを判定する。そして、エフェメリスをデコードするのに適切なタイミングである場合には、ステップS55において、受信している第1衛星信号の信号強度を確認する。そして、ステップS56に移行する。一方、エフェメリスをデコードするのに適切なタイミングではない場合、例えばエフェメリスを含むサブフレーム以外のサブフレームをデコードするタイミングである場合には、後述するステップS62に移行する。
【0092】
ステップS56では、ステップS55における確認の結果、第1衛星信号の信号強度がデコード可能強度か否かを判定する。デコード可能強度とは、受信している第1衛星信号の衛星航法情報をデコード処理することができる信号強度のことをいう。第1衛星信号の信号強度がデコード可能強度である場合、ステップS57において、ベースバンド処理回路部31の間欠駆動のデューティー比を100%に設定する。これにより、受信している第1衛星信号のデコード処理を行うことができる。その後、ステップS58に移行する。一方、第1衛星信号の信号強度がデコード可能強度未満である場合、デコード処理を行うことができないので、後述するステップS62に移行する。
【0093】
したがって、デコード処理を行う必要があるステップS58以降では、ベースバンド処理の間欠駆動のデューティー比を、例えば100%に設定した状態で、RF処理の間欠駆動制御を実施する。なお、デューティー比とは、間欠駆動の全期間に対するオン期間の割合のこという。
【0094】
一方、後述するステップS62以降では、デコード処理を行う必要がないため、RF処理とベースバンド処理の双方で間欠駆動制御を行う。
【0095】
ステップS58では、第1衛星信号の信号強度が基準信号強度以上か否かを判定する。基準信号強度とは、ステップS59、S61において、間欠駆動制御のデューティー比を切り替えるしきい値となる信号強度のことをいい、事前に定義しておけばよい。第1衛星信号の信号強度が基準信号強度以上である場合、ステップS59において、第1RF受信回路部212による第1衛星信号のRF処理に対する間欠駆動制御を実施する。このとき、信号強度が基準信号強度以上であることから、一例としてデューティー比を50%に設定する。具体的には、衛星航法情報の送信速度に応じて決まる1ビット長の時間が20m秒である場合、20m秒の区間で1m秒おきにオンとオフとを繰り返すように間欠駆動制御を実施する。これにより、実質的な信号強度は半分になるが、ビット単位の情報は取得できるので、デコード処理を行うことが可能になる。なお、このデューティー比は、50%に限定されず、0%超であって、後述するステップS61におけるデューティー比未満であればよい。
【0096】
一方、第1衛星信号の信号強度が基準信号強度未満である場合、ステップS61において、第1RF受信回路部212による第1衛星信号のRF処理に対する間欠駆動制御を実施する。このとき、信号強度が基準信号強度未満であることから、一例としてデューティー比を100%に設定する。
【0097】
これに対し、ステップS62の開始時点では、第1衛星信号の有効なエフェメリスを取得できていない状況にあるので、第1衛星信号のデコード処理を行うことができない。そこで、ステップS62では、受信している第1衛星信号の受信信号強度を確認する。その後、ステップS63では、デコード処理を考慮する必要がないため、RF処理とベースバンド処理の双方で間欠駆動制御を行う。具体的には、受信している第1衛星信号の受信信号強度に応じて間欠駆動のデューティー比を変えるように、第1RF受信回路部212およびベースバンド処理回路部31に対する間欠駆動制御を実施する。
【0098】
ステップS63の間欠駆動制御においては、一例として、第1RF受信回路部212およびベースバンド処理回路部31を、同一のデューティー比で間欠駆動させればよい。具体的には、例えば、第1衛星信号の受信信号強度に応じて、デューティー比を10%~90%まで変化させればよい。そして、受信信号強度が比較的大きい場合には、この範囲でデューティー比を小さくし、受信信号強度が比較的小さい場合には、この範囲でデューティー比を大きくすればよい。これにより、デューティー比に応じた省電力化を図ることができる。
【0099】
なお、第1RF受信回路部212のオン期間は、第1RF受信回路部212に対して電源からの電力供給がなされている状態にある。この状態では、第1RF受信回路部212は、アンテナ41で受信されたRF信号を増幅したり、中間周波数の信号にダウンコンバートしたり、不要な周波数帯域成分をカットしたりするといった回路動作が行われる。なお、第1RF受信回路部212のオン期間には、それに合わせて、サンプリング部214も動作させるようにすればよい。
【0100】
一方、第1RF受信回路部212のオフ期間には、第1RF受信回路部212に対して電力供給がなされていない状態である。この状態では、上記動作が行われない。なお、第1RF受信回路部212のオフ期間には、それに合わせて、サンプリング部214も動作を停止させればよい。
【0101】
また、ベースバンド処理回路部31のオン期間には、第1衛星信号の受信測位処理が行われる。一方、ベースバンド処理回路部31のオフ期間には、第1衛星信号の受信測位処理が行われない。
【0102】
3.2.2.第2GNSSによる測位に対する間欠駆動制御(ステップS42)
図11および
図12は、それぞれ、
図9に示す、第2GNSSによる測位に対する間欠駆動制御を説明するフローチャートである。
【0103】
図11に示すステップS71では、
図6に示すステップS18と同様、第1衛星信号の受信状態(第1受信状態)を取得する。そして、ステップS72では、
図7および
図8に示す表に照らし、第1受信状態が「良い」以外、つまり「普通」または「悪い」と判定した場合には、ステップS73に移行する。一方、第1受信状態が「良い」と判定した場合には、
図12に示すように、第2GNSSによる測位に対する間欠駆動制御を終了する。なお、第2GNSSによる測位動作全体を停止するのではなく、サーチ処理のみ停止し、トラッキング処理およびデコード処理は実施するようにしてもよい。この場合、消費電力が相対的に大きいサーチ処理を停止することで、消費電力の削減が図られる。
【0104】
ステップS73以降では、特に、第2衛星信号がD1とD2の2種類の衛星航法情報を含む場合について説明する。一例として、前述したBeidouには、非静止衛星から送信されるD1と静止衛星から送信されるD2という2種類の衛星航法情報がある。なお、衛星航法情報が1種類である場合には、前述した第1GNSSによる測位に対する間欠駆動制御と同様に行えばよい。
【0105】
ステップS73では、衛星航法情報D1を含む第2衛星信号を受信しているか否かを判定する。受信している場合には、ステップS74において、受信している第2衛星信号に含まれる衛星航法情報D1のデコード処理の状態を取得する。デコード処理の状態とは、衛星航法情報D1の有効なエフェメリスを取得できているか否かをいう。続いて、ステップS75では、受信している第2衛星信号のデコードタイミングを取得する。続いて、ステップS76では、受信している第2衛星信号の信号強度を取得する。その後、ステップS77に移行する。一方、前述したステップS73で、衛星航法情報D1を含む第2衛星信号を受信していない場合には、ステップS77に移行する。
【0106】
ステップS77では、衛星航法情報D2を含む第2衛星信号を受信しているか否かを判定する。受信している場合には、ステップS78において、受信している第2衛星信号に含まれる衛星航法情報D2のデコード処理の状態を取得する。デコード処理の状態とは、衛星航法情報D2の有効なエフェメリスを取得できているか否かをいう。続いて、ステップS79では、受信している第2衛星信号のデコードタイミングを取得する。続いて、ステップS81では、受信している第2衛星信号の信号強度を取得する。その後、
図12に示すステップS82に移行する。一方、前述したステップS77で、衛星航法情報D2を含む第2衛星信号を受信していない場合には、ステップS82に移行する。
【0107】
ステップS82では、衛星航法情報D1、D2の双方において、有効なエフェメリスを取得できているか否かを判定する。有効なエフェメリスを取得できているときには、ステップS83に移行する。一方、衛星航法情報D1、D2の少なくとも一方で有効なエフェメリスを取得できていないときには、後述するステップS93に移行する。
【0108】
ステップS83では、衛星航法情報D1を含む信号と衛星航法情報D2を含む信号のいずれかで、エフェメリスをデコードするのに適切なタイミングであるか否かを判定する。エフェメリスをデコードするのに適切なタイミングである場合には、ステップS84に移行する。一方、エフェメリスをデコードするのに適切なタイミングではない場合には、後述するステップS93に移行する。
【0109】
ステップS84では、衛星航法情報D1を含む信号と衛星航法情報D2を含む信号のいずれかで、信号強度がデコード可能強度であるか否かを判定する。信号強度がデコード可能強度である場合、ステップS85に移行する。一方、信号強度がデコード可能強度未満である場合には、デコード処理を行うことができないので、後述するステップS93に移行する。
【0110】
ステップS85では、ベースバンド処理回路部31の間欠駆動のデューティー比を、例えば100%に設定する。これにより、受信している衛星航法情報D1を含む信号および衛星航法情報D2を含む信号のうちの少なくとも一方についてデコード処理を行うことができる。その後、ステップS86に移行する。
【0111】
このように、デコード処理を行う必要があるステップS86以降では、ベースバンド処理の間欠駆動のデューティー比を、例えば100%に設定した状態で、RF処理の間欠駆動制御を実施する。
【0112】
一方、後述するステップS93以降では、デコード処理を行う必要がないため、RF処理とベースバンド処理の双方で間欠駆動制御を行う。
【0113】
ステップS86では、衛星航法情報D2を含む信号がデコード処理の対象に含まれているか否かを判定する。デコード処理の対象に含まれていない場合、ステップS87において、デコード処理の対象が衛星航法情報D1のみを含む信号であることを確認することになる。そして、ステップS88において、衛星航法情報D1を含む信号の信号強度が基準信号強度以上か否かを判定する。基準信号強度とは、後述するステップS89、S92において、間欠駆動制御のデューティー比を切り替えるしきい値となる信号強度のことをいい、事前に定義しておけばよい。衛星航法情報D1を含む信号の信号強度が基準信号強度以上である場合、ステップS89において、第2RF受信回路部222による第2衛星信号のRF処理に対する間欠駆動制御を実施する。このとき、信号強度が基準信号強度以上であることから、一例としてデューティー比を50%に設定する。具体的には、衛星航法情報D1の送信速度に応じて決まる1ビット長を表す時間が20m秒である場合、20m秒の区間で1m秒おきにオンとオフとを繰り返すように間欠駆動制御を実施する。これにより、実質的な信号強度は半分になるが、ビット単位の情報は取得できるので、デコード処理を行うことが可能になる。なお、このデューティー比は、50%に限定されず、0%超であって、後述するステップS92におけるデューティー比未満であればよい。
【0114】
一方、ステップS86において、衛星航法情報D2を含む信号がデコード処理の対象に含まれている場合には、ステップS91において、デコード処理の対象が、衛星航法情報D2を含む信号のみであるか、または、衛星航法情報D1、D2の双方を含む信号であるか、ということを確認することになる。その後、ステップS92に移行する。
【0115】
ステップS92では、第2RF受信回路部222による第2衛星信号のRF処理に対する間欠駆動制御を実施する。このとき、一例としてデューティー比を100%に設定する。このように設定する理由は、前述した衛星航法情報D2の送信速度が衛星航法情報D1の送信速度よりも速いためである。具体的には、例えばBeidouの場合、衛星航法情報D2の送信速度が500bpsであるため、1ビット長を表す時間が2m秒と短い。このため、前述したステップS89と同様に1m秒おきの間欠駆動制御を行ってしまうと、第2RF受信回路部222から出力される信号が非常に弱くなってしまうという問題がある。したがって、前述したステップS86において、衛星航法情報D2を含む信号がデコード処理の対象に含まれている場合には、ステップS92において、第2RF受信回路部222に対する間欠駆動制御のデューティー比を、ステップS89におけるデューティー比よりも大きい値、例えば100%に設定するのが好ましい。
【0116】
なお、前述したステップS88において、衛星航法情報D1を含む信号の信号強度が基準信号強度未満である場合も、ステップS92に移行する。この場合、衛星航法情報D1を含む信号の信号強度が基準信号強度未満であることから、同様に、第2RF受信回路部222に対する間欠駆動制御のデューティー比を、ステップS89におけるデューティー比よりも大きい値、例えば100%に設定するのが好ましい。
【0117】
なお、ステップS88は、必要に応じて設けられればよく、省略されてもよいが、測位性能の著しい低下を避けるという観点では、ステップS88を設けることが好ましい。
【0118】
以上のように、衛星航法情報D2を含む信号がデコード処理の対象に含まれていない場合には、第2RF受信回路部222に対して間欠駆動制御を実施することにより、消費電力の削減を図ることができる。なお、Beidouの場合、衛星航法情報D2を含む信号は、静止衛星から送信されるため、受信できる地域が限定される。したがって、衛星航法情報D2を含む信号を受信できない地域では、消費電力を効果的に削減することができる。
【0119】
したがって、ステップS86以降のフローは、それ単独で、上記課題を解決することができる。つまり、衛星航法情報D2を含む信号を受信できる地域と、受信できない地域と、の間で、衛星信号受信装置1を頻繁に移動させる場合、上記のようにして間欠駆動制御のデューティー比を切り替えることにより、消費電力を効果的に削減することができるという効果を奏する。
【0120】
次に、ステップS82、S83、S84で分岐したステップS93について説明する。ステップS93の開始時点では、第2GNSSの衛星航法情報D1、D2のいずれかで有効なエフェメリスを取得できていない状況にあるので、第2衛星信号のデコード処理を行うことができない。そこで、ステップS93では、受信している第2衛星信号の受信信号強度を確認する。その後、ステップS94では、デコード処理を考慮する必要がないため、RF処理とベースバンド処理の双方で間欠駆動制御を行う。具体的には、受信している第2衛星信号の受信信号強度に応じて間欠駆動のデューティー比を変えるように、第2RF受信回路部222およびベースバンド処理回路部31に対する間欠駆動制御を実施する。
【0121】
ステップS94の間欠駆動制御は、前述したステップS63の間欠駆動制御と同様にして、第2RF受信回路部222およびベースバンド処理回路部31を間欠駆動させればよい。例えば、第2衛星信号の受信信号強度に応じて、デューティー比を10%~90%まで変化させればよい。そして、受信信号強度が比較的大きい場合には、この範囲でデューティー比を小さくし、受信信号強度が比較的小さい場合には、この範囲でデューティー比を大きくすればよい。これにより、デューティー比に応じた省電力化を図ることができる。以上のようにして、デューティー比に応じた省電力化を図ることができる。
【0122】
なお、第2RF受信回路部222のオン期間は、第2RF受信回路部222に対して電源からの電力供給がなされている状態にある。この状態では、第2RF受信回路部222は、アンテナ42で受信されたRF信号を増幅したり、中間周波数の信号にダウンコンバートしたり、不要な周波数帯域成分をカットしたりするといった回路動作が行われる。なお、第2RF受信回路部222のオン期間には、それに合わせて、サンプリング部224も動作させるようにすればよい。
【0123】
一方、第2RF受信回路部222のオフ期間には、第2RF受信回路部222に対して電力供給がなされていない状態である。この状態では、上記動作が行われない。なお、第2RF受信回路部222のオフ期間には、それに合わせて、サンプリング部224も動作を停止させればよい。
【0124】
また、ベースバンド処理回路部31のオン期間には、第2衛星信号の受信測位処理が行われる。一方、ベースバンド処理回路部31のオフ期間には、第2衛星信号の受信測位処理が行われない。
【0125】
3.3.時刻・位置の演算
図6に示すステップS33では、位置時刻情報演算部325が、メジャメントデータ334および衛星軌道データ332を用い、公知の手法を適用することにより、測位処理を行う。測位処理は、デコード処理の結果、3衛星以上からエフェメリスが取得されることにより、位置情報や時刻情報を算出する。このとき、第1GNSS衛星と第2GNSS衛星とを組み合わせることができる。その結果、より多くの衛星から信号を取得することができるので、測位精度の向上や測位可能エリアの拡大を図ることができる。
【0126】
ステップS34では、受信測位処理を終了するか否かを判定する。受信測位処理を継続する場合には、ステップS15に戻る。一方、受信測位処理を終了する場合には、ステップS35において、その時点で保有しているエフェメリス等の衛星軌道情報を、衛星軌道データ332として記憶部328に記憶させる。その後、受信測位動作を終了する。
【0127】
以上、衛星信号受信装置1の動作について説明したが、衛星信号受信装置1は、前述した第1GNSSおよび第2GNSSに対応する2GNSSタイプであってもよいし、第3GNSS、第4GNSS、・・・にも対応するタイプであってもよい。その場合、対応するGNSSの数に応じて、RF受信部2におけるRF受信チャネルを増やすようにすればよい。
【0128】
また、前述したように、GNSSには様々な種類があるが、これらの組み合わせは特に限定されない。一例として、第1GNSSがGPSであり、第2GNSSがBeidouである組み合わせまたはその反対、第1GNSSがGPSであり、第2GNSSがGLONASSである組み合わせまたはその反対、第1GNSSがGLONASSであり、第2GNSSがBeidouである組み合わせまたはその反対、第1GNSSがGPS+Beidouであり、第2GNSSがGLONASSである組み合わせまたはその反対、等が挙げられる。
【0129】
さらに、全地球航法衛星システムではないものの、静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS)、準天頂衛星のような地域的衛星測位システム(RNSS)も、第1GNSSまたは第2GNSSとして用いることができる。
【0130】
以上のように、本実施形態に係る衛星信号受信装置1は、第1RF受信回路部212と、第2RF受信回路部222と、ベースバンド処理回路部31と、制御部であるベースバンド処理制御部32と、を備えている。このうち、第1RF受信回路部212は、第1GNSSからの第1衛星信号を受信する。また、第2RF受信回路部222は、第2GNSSからの第2衛星信号を受信する。ベースバンド処理回路部31は、第1衛星信号および第2衛星信号を処理する。ベースバンド処理制御部32は、第1RF受信回路部212、第2RF受信回路部222およびベースバンド処理回路部31の動作を制御する。
【0131】
そして、ベースバンド処理制御部32は、第1信号処理部321と、第2信号処理部322と、受信状態取得部326と、処理能力決定部327と、を有している。第1信号処理部321は、第1衛星信号の受信処理を行う。受信状態取得部326は、第1衛星信号の受信処理の処理結果を含む第1受信状態を取得する。処理能力決定部327は、第1受信状態に応じて、第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定する。第2信号処理部322は、処理能力決定部327が決定した処理能力で第2衛星信号の受信処理を行う。
【0132】
このような構成によれば、マルチGNSSに対応し、測位精度の向上や測位可能エリアの拡大といった性能の向上を図りつつ、省電力化を図ることができる。
【0133】
また、本実施形態では、受信状態取得部326が取得する第1受信状態が、第1衛星信号の受信処理の処理結果として、第1GNSSのトラッキング衛星数、第1衛星信号の受信信号強度指標、第1GNSSの受信衛星配置指標、衛星信号受信装置1の移動状態、および、第1衛星信号に基づく測位状態のうちの少なくとも1つを含む。
【0134】
このような構成によれば、第1GNSSに関して取得された、第1GNSSによる測位の精度に影響を及ぼしやすい要素に基づいて、第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定し、その処理能力で第2衛星信号の受信処理を行うことができる。そして、上記要素を用いることで、第1GNSSによる測位精度が十分に高くなると見込めるという状況を精度よく捉えることができ、第2衛星信号の受信処理の処理能力を無駄なく下げることができる。その結果、マルチGNSSに対応しつつ、衛星信号受信装置1の消費電力をより一層削減することができる。
【0135】
また、本実施形態では、間欠駆動制御部323が、受信状態取得部326が取得する第1受信状態に応じて、第1GNSSによる測位に対する間欠駆動制御、ならびに、第1GNSSおよび第2GNSSによる測位に対する間欠駆動制御のうちのいずれかを選択している。換言すれば、ベースバンド処理制御部32は、第1受信状態に応じて、第1RF受信回路部212に対する間欠駆動、ならびに、第1RF受信回路部212および第2RF受信回路部222の双方に対する間欠駆動のうちのいずれかを選択している。
【0136】
このような構成によれば、マルチGNSSに対応する装置であっても、第1受信状態に応じて、第1GNSSによる測位に対する間欠駆動制御と第2GNSSによる測位に対する間欠駆動制御とを的確に切り替えることができる。このため、測位性能を維持しながら、衛星信号受信装置1の消費電力をより一層削減することができる。
【0137】
また、本実施形態では、第2信号処理部322によるデコード処理の対象となる第2衛星信号が、衛星航法情報D1(第1衛星航法情報)と、衛星航法情報D1よりも航法情報の送信速度が速い衛星航法情報D2(第2衛星航法情報)と、を含んでいるとき、ベースバンド処理制御部32が、第1デューティー比の一例である100%で第2RF受信回路部222を間欠駆動させるように制御する。また、第2衛星信号が、衛星航法情報D2を含んでいないとき、ベースバンド処理制御部32は、第1デューティー比よりも低い第2デューティー比の一例である50%で第2RF受信回路部222を間欠駆動させるように制御する。
【0138】
このような構成によれば、例えば、衛星航法情報D1を含む信号を受信することができるものの、衛星航法情報D2を含む信号を受信することができない地域では、第2RF受信回路部222をより低いデューティー比で間欠駆動させることができる。これにより、衛星信号受信装置1の消費電力を効果的に削減することができる。
【0139】
また、本実施形態に係る衛星信号受信装置の制御方法は、第1RF受信回路部212と、第2RF受信回路部222と、ベースバンド処理回路部31と、を備える装置の制御方法である。
【0140】
この制御方法は、第1RF受信回路部212に第1GNSS衛星からの第1衛星信号を受信させる受信処理を行わせるステップS14と、第1衛星信号の受信処理の処理結果を含む第1受信状態を取得するステップS18と、第1受信状態に応じて、第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定するステップS19と、この処理能力で、第2RF受信回路部222に第2GNSS衛星からの第2衛星信号を受信させる受信処理を行わせるステップS21、S23、S27と、を有する。
【0141】
このような制御方法によれば、衛星信号受信装置1をマルチGNSSに対応させ、測位精度の向上や測位可能エリアの拡大といった性能の向上を図りつつ、省電力化を図ることができる。
【0142】
また、本実施形態に係るプログラムは、第1RF受信回路部212と、第2RF受信回路部222と、ベースバンド処理回路部31と、に接続されているプロセッサー71の動作を制御するプログラムである。このプログラムは、第1RF受信回路部212に第1GNSS衛星からの第1衛星信号を受信させる受信処理を行わせ、第1衛星信号の受信処理の処理結果を含む第1受信状態を取得させ、第1受信状態に応じて第2衛星信号の受信処理の処理能力を決定させ、この処理能力で、第2RF受信回路部222に第2GNSSからの第2衛星信号を受信させる受信処理を行わせる。
【0143】
このようなプログラムをプロセッサー71に実行させることにより、衛星信号受信装置1をマルチGNSSに対応させ、測位精度の向上や測位可能エリアの拡大といった性能の向上を図りつつ、省電力化を図ることができる。
【0144】
4.電子機器
次に、実施形態に係る電子機器として、電子時計について説明する。
【0145】
図13は、実施形態に係る電子機器である電子時計の回路構成を示すブロック図である。
【0146】
図13に示す電子時計100は、前述した衛星信号受信装置1と、電子時計制御回路80と、GNSSアンテナ90と、計時装置91と、記憶装置92と、入力装置93と、駆動機構97と、表示装置98と、を備えている。
【0147】
衛星信号受信装置1は、GNSSアンテナ90に接続され、GNSSアンテナ90を介して受信した衛星信号を処理して、時刻情報および位置情報を取得する。
【0148】
電子時計制御回路80は、電子時計100の動作を制御するプロセッサーで構成されている。電子時計制御回路80は、記憶装置92に格納された各種プログラムを実行することで、受信制御部81、タイムゾーン設定部82、時刻修正部83および表示制御部84として機能する。
【0149】
受信制御部81は、衛星信号受信装置1の動作を制御する。タイムゾーン設定部82は、衛星信号受信装置1が取得した位置情報に基づいてタイムゾーンデータを設定する。時刻修正部83は、衛星信号受信装置1が取得した時刻情報、および、タイムゾーン設定部82が設定したタイムゾーンデータに基づいて、時刻データを修正する。表示制御部84は、駆動機構97の動作を制御し、表示装置98の表示内容を制御する。
【0150】
計時装置91は、例えば水晶振動子等を備え、水晶振動子の発振信号に基づく基準信号を用いて時刻データを更新する。
【0151】
入力装置93は、例えばボタン、リューズ等で構成され、それらの操作信号を電子時計制御回路80に出力する。
【0152】
以上、電子機器の一例として電子時計を説明したが、本発明の電子機器としては、これ以外に、ウェアラブル端末、スマートフォン、タブレット端末、携帯型ナビゲーション装置、カーナビゲーション装置、パソコン等が挙げられる。
【0153】
以上、本発明の衛星信号受信装置、衛星信号受信装置の制御方法、プログラムおよび電子機器を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、前記実施形態には、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0154】
1…衛星信号受信装置、2…RF受信部、3…ベースバンド処理部、21…第1受信チャネル、22…第2受信チャネル、31…ベースバンド処理回路部、32…ベースバンド処理制御部、41…アンテナ、42…アンテナ、71…プロセッサー、72…メモリー、73…外部インターフェース、80…電子時計制御回路、81…受信制御部、82…タイムゾーン設定部、83…時刻修正部、84…表示制御部、90…GNSSアンテナ、91…計時装置、92…記憶装置、93…入力装置、97…駆動機構、98…表示装置、100…電子時計、212…第1RF受信回路部、214…サンプリング部、222…第2RF受信回路部、224…サンプリング部、312…サンプリングメモリー部、314…相関処理部、320…受信処理制御部、321…第1信号処理部、322…第2信号処理部、323…間欠駆動制御部、324…衛星航法情報復号部、325…位置時刻情報演算部、326…受信状態取得部、327…処理能力決定部、328…記憶部、330…制御プログラム、332…衛星軌道データ、334…メジャメントデータ、336…指標算出テーブル、3212…信号検出部、3214…信号追尾部、3222…信号検出部、3224…信号追尾部、S11~S19…ステップ、S21~S29…ステップ、S31~S35…ステップ、S41、S42…ステップ、S51~S59…ステップ、S61~S63…ステップ、S71~S79…ステップ、S81~S89…ステップ、S91~S94…ステップ