(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B22F 10/14 20210101AFI20240717BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20240717BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20240717BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240717BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240717BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240717BHJP
B22F 10/37 20210101ALI20240717BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20240717BHJP
【FI】
B22F10/14
B29C64/165
B29C64/209
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
B22F10/37
B22F12/50
(21)【出願番号】P 2020125895
(22)【出願日】2020-07-23
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼谷 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】平井 利充
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 薫
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-077152(JP,A)
【文献】特開2016-060197(JP,A)
【文献】特表2008-513252(JP,A)
【文献】国際公開第2019/097255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/16
B22F 10/14
B22F 10/16
B29C 64/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形テーブルと、
前記造形テーブルに粉末層を形成する層形成部と、
前記粉末層における三次元造形物の造形領域にバインダーを含む液体をノズルから吐出
するヘッドと、
前記造形テーブルに対する前記ヘッドの移動と電圧を印加することによる前記ヘッドの
駆動とを制御するとともに、前記造形領域とは異なる位置であるフラッシング位置におい
て前記ヘッドにフラッシング動作を実行させるよう制御する、制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記液体を吐出することなく前記ヘッドを移動する空走時間が閾値未満の場合
は、前記
ヘッドに前記フラッシング動作を実行させず、前記空走時間が前記閾値以上の場合
は、前
記ヘッドに前記フラッシング動作を実行させる第1処理、及び、
前記空走時間が前記閾値未満の場合は、前記ヘッドに第1の前記フラッシング動作を実
行させ、前記空走時間が前記閾値以上の場合は、前記ヘッドに前記第1のフラッシング動
作よりもフラッシング効果が高い第2の前記フラッシング動作を実行させる第2処理、の
いずれかの処理を実行することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載された三次元造形装置において、
前記制御部は、前記三次元造形物の造形データに基づいて前記フラッシング位置での前
記液体の吐出に関するフラッシングデータを生成し、前記フラッシングデータに基づいて
前記ヘッドに
前記フラッシング動作を実行させるよう制御することを特徴とする三次元造
形装置。
【請求項3】
請求項
1または2に記載された三次元造形装置において、
前記第2
のフラッシング動作にお
いて前記ヘッドへ入力される波形の周波数は、前記第
1
のフラッシング動作にお
いて前記ヘッドへ入力される波形の周波数よりも高い
第1条件
、
前記第2
のフラッシング動作における前記ヘッドへの印加電圧は、前記第1
のフラッシ
ング動作における前記ヘッドへの印加電圧よりも高い
第2条件、
前記第2
のフラッシング動作における前記ヘッドからの前記液体の吐出速度は、前記第
1
のフラッシング動作における前記ヘッドからの前記液体の吐出速度よりも速い
第3条件
、
前記第2
のフラッシング動作において前記ヘッドから吐出される前記液体の液滴サイズ
は、前記第1
のフラッシング動作における前記ヘッドから吐出される前記液体の液滴サイ
ズよりも大きい
第4条件、のうち少なくともいずれかの条件を満たすことを特徴とする三
次元造形装置。
【請求項4】
請求項
1から
3のいずれか1項に記載された三次元造形装置において、
前記制御部は、前記三次元造形装置の動作開始時及び動作終了時の少なくともいずれか
に前記第1
のフラッシング動作を実行す
ることを特徴とする三次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載された三次元造形装置において、
前記制御部は、前記粉末層を1層分形成するごとに
、又は、前記フラッシング動作を実
行するごとに前記空走時間の計測開始タイミングをリセットすることを特徴とする三次元
造形装置。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載された三次元造形装置において、
前記ヘッドは、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室に前記液体を供給する供給
路と、循環させるために前記圧力室から前記液体を流入する循環路と、を備えることを特
徴とする三次元造形装置。
【請求項7】
請求項
6に記載された三次元造形装置において、
前記制御部は、単位時間当たりに前記循環路に流入する前記液体の流量をq1とし、単
位時間当たりに前記ノズルから吐出される前記液体の最大流量をq2としたときに、q2
/q1が0.05以上20以下となるよう制御することを特徴とする三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な種類の三次元造形装置が使用されている。このうち、粉末層を形成し、該粉末層における三次元造形物の造形領域にバインダーを含む液体をノズルから吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置がある。例えば、特許文献1には、粉末材料で層を形成し、ラインヘッドのノズルから該層に硬化液を吐出して三次元造形物を製造する三次元造形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される三次元造形装置は、ノズルの硬化液を吐出するフラッシング動作を実行するためのフラッシングステージが形成されている。フラッシング動作によりノズル内の異物が除去される。フラッシング動作は、フラッシング動作の際の制御を簡単にするため、三次元造形物の造形時、すなわち、三次元造形物の造形領域に液体を吐出する際と同様の吐出条件で行われることが一般的である。しかしながら、近年、様々な材料で三次元造形物が製造されるようになっており、様々な粉末が使用されるようになっている。このため、使用される粉末によっては多くの粉末が舞い上がってノズルに混入する場合があった。粉末が舞い上がってノズルに混入する可能性は、粉末層上をヘッドが吐出を伴わない空走状態で移動する時間が長くなるほど高くなる。ノズルに混入した粉末が除去できないと、液体の吐出不良などが生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明の三次元造形装置は、造形テーブルと、前記造形テーブルに粉末層を形成する層形成部と、前記粉末層における三次元造形物の造形領域にバインダーを含む液体をノズルから吐出するヘッドと、前記造形テーブルに対する前記ヘッドの移動と電圧を印加することによる前記ヘッドの駆動とを制御するとともに、前記造形領域とは異なる位置であるフラッシング位置において前記ヘッドにフラッシング動作を実行させるよう制御する、制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体を吐出することなく前記ヘッドを移動する空走時間が閾値未満の場合と前記閾値以上の場合とで、前記フラッシング動作の実行条件を変更することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】一実施例に係る本発明の三次元造形装置を表す概略構成図。
【
図2】
図1の三次元造形装置の液体共有システムを表す概略図。
【
図3】
図1の三次元造形装置のヘッドを表す斜視図。
【
図4】
図1の三次元造形装置のヘッドを表す底面側から見た
図5の一点鎖線Aで切った断面図であって、一部の構成部材を透視して破線で表した図。
【
図5】
図1の三次元造形装置のヘッドを表す
図5の一点鎖線Bで切った側面断面図。
【
図6】
図1の三次元造形装置を用いて行う三次元造形方法のフローチャート。
【
図7】
図6のフローチャートにおけるフラッシング工程を表すフローチャート。
【
図8】
図1の三次元造形装置を用いて行う三次元造形方法を説明するための概略図であって、1層目を形成する様子を表す図である。
【
図9】
図1の三次元造形装置を用いて行う三次元造形方法を説明するための概略図であって、1層目の形成の際と同じ方向に供給ユニットを移動させて2層目を形成する様子を表す図である。
【
図10】
図1の三次元造形装置を用いて行う三次元造形方法を説明するための概略図であって、1層目の形成の際と反対の方向に供給ユニットを移動させて2層目を形成する様子を表す図である。
【
図11】フラッシング動作を実行する場合におけるフラッシング位置の一例を表す図である。
【
図12】フラッシング動作を実行しない場合の一例を表す図である。
【
図13】フラッシング動作を実行する場合におけるフラッシング位置の一例であって、
図11とは別の一例を表す図である。
【
図14】フラッシング動作を実行する場合におけるフラッシング位置の一例であって、
図11及び
図13とは別の一例を表す図である。
【
図15】フラッシング動作を実行する場合におけるフラッシング位置の一例であって、
図11、
図13及び
図14とは別の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
最初に、本発明について概略的に説明する。
上記課題を解決するための本発明の第1の態様の三次元造形装置は、造形テーブルと、前記造形テーブルに粉末層を形成する層形成部と、前記粉末層における三次元造形物の造形領域にバインダーを含む液体をノズルから吐出するヘッドと、前記造形テーブルに対する前記ヘッドの移動と電圧を印加することによる前記ヘッドの駆動とを制御するとともに、前記造形領域とは異なる位置であるフラッシング位置において前記ヘッドにフラッシング動作を実行させるよう制御する、制御部と、を備え、前記制御部は、前記液体を吐出することなく前記ヘッドを移動する空走時間が閾値未満の場合と前記閾値以上の場合とで、前記フラッシング動作の実行条件を変更することを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、空走時間が閾値未満の場合と閾値以上の場合とで、フラッシング動作の実行条件を変更する。このため、例えば、空走時間が長くなり粉末層上をヘッドが空走状態で移動する時間が長くなる場合などに、フラッシング効果が高い条件でヘッド内の液体を排出させることができる。したがって、フラッシング動作を行ってもノズルに混入した粉末が除去できないということを抑制できる。
【0009】
本発明の第2の態様の三次元造形装置は、前記第1の態様において、前記制御部は、前記三次元造形物の造形データに基づいて前記フラッシング位置での前記液体の吐出に関するフラッシングデータを生成し、前記フラッシングデータに基づいて前記ヘッドにフラッシング動作を実行させるよう制御する。
【0010】
本態様によれば、造形データに基づいてフラッシングデータを生成して該フラッシングデータに基づいてヘッドにフラッシング動作を実行させる。造形データからフラッシングデータを生成することでフラッシング動作を適正に実施することができる。
【0011】
本発明の第3の態様の三次元造形装置は、前記第1または第2の態様において、前記制御部は、前記空走時間が閾値未満の場合に前記フラッシング動作を実行させず、前記空走時間が閾値以上の場合に前記フラッシング動作を実行させることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、空走時間が閾値未満の場合はフラッシング動作を実行させない。このため、フラッシング動作が不要な際にもフラッシング動作を実行してしまうことで液体を無駄にすることを効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の第4の態様の三次元造形装置は、前記第1または第2の態様において、前記制御部は、前記空走時間が閾値未満の場合に、前記ヘッドに第1フラッシング動作を実行させ、前記空走時間が前記閾値以上の場合に、前記第1フラッシング動作と異なるフラッシング条件で前記ヘッドに第2フラッシング動作を実行させるよう制御することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、空走時間が閾値未満の場合は第1フラッシング動作を実行させ、空走時間が前記閾値以上の場合は第2フラッシング動作を実行させる。このため、例えば、粉末層上をヘッドが空走状態で移動する空走時間が長くなる場合に、フラッシング効果が高い条件でヘッド内の液体を排出させることが可能になる。したがって、フラッシング動作を行ってもノズルに混入した粉末が除去できないということを抑制できる。
【0015】
本発明の第5の態様の三次元造形装置は、前記第4の態様において、前記第2フラッシング動作における前記ヘッドへ入力される波形の周波数は、前記第1フラッシング動作における前記ヘッドへ入力される波形の周波数よりも高いことを特徴とする。
【0016】
一般的に、造形領域とフラッシング位置との距離が長くなり粉末層上をヘッドが移動する時間が長くなる場合のほうが、ノズルにより多くの粉末が混入し、ノズルに混入した粉末を排出することが困難な場合が多い。しかしながら、本態様によれば、第2フラッシング動作におけるヘッドへ入力される波形の周波数は、第1フラッシング動作におけるヘッドへ入力される波形の周波数よりも高い。ヘッドへ入力される波形の周波数を高くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本態様によれば、空走時間が長くなる場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0017】
本発明の第6の態様の三次元造形装置は、前記第4または第5の態様において、前記第2フラッシング動作における前記ヘッドへの印加電圧は、前記第1フラッシング動作における前記ヘッドへの印加電圧よりも高いことを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、第2フラッシング動作におけるヘッドへの印加電圧は、第1フラッシング動作におけるヘッドへの印加電圧よりも高い。ヘッドへの印加電圧を高くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本態様によれば、空走時間が長くなる場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0019】
本発明の第7の態様の三次元造形装置は、前記第4から第6のいずれか1つの態様において、前記第2フラッシング動作における前記ヘッドからの前記液体の吐出速度は、前記第1フラッシング動作における前記ヘッドからの液体の吐出速度よりも速いことを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、第2フラッシング動作におけるヘッドからの液体の吐出速度は、第1フラッシング動作におけるヘッドからの液体の吐出速度よりも速い。ヘッドからの液体の吐出速度を速くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本態様によれば、空走時間が長くなる場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0021】
本発明の第8の態様の三次元造形装置は、前記第4から第7のいずれか1つの態様において、前記第2フラッシング動作において前記ヘッドから吐出される前記液体の液滴サイズは、前記第1フラッシング動作における前記ヘッドから吐出される前記液体の液滴サイズよりも大きいことを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、第2フラッシング動作においてヘッドから吐出される液体の液滴サイズは、第1フラッシング動作におけるヘッドから吐出される液体の液滴サイズよりも大きい。ヘッドからの液体の吐出量を多くするとノズルに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本態様によれば、空走時間が長くなる場合も、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0023】
本発明の第9の態様の三次元造形装置は、前記第4から第8のいずれか1つの態様において、前記制御部は、前記三次元造形装置の動作開始時及び動作終了時の少なくともいずれかに前記第1フラッシング動作を実行するよう制御することを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、三次元造形装置の動作開始時及び動作終了時の少なくともいずれかに第1フラッシング動作を実行する。このため、三次元造形装置を動作させた際に、ノズルに混入した粉末が原因で液体の吐出不良が生じることを抑制できる。
【0025】
本発明の第10の態様の三次元造形装置は、前記第1から第9のいずれか1つの態様において、前記制御部は、前記粉末層を1層分形成するごとに前記空走時間の計測開始タイミングをリセットすることを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、粉末層を1層分形成するごとに空走時間の計測開始タイミングをリセットする。このため、簡単な制御で、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0027】
本発明の第11の態様の三次元造形装置は、前記第1から第9のいずれか1つの態様において、前記制御部は、前記フラッシング動作を実行するごとに前記空走時間の計測開始タイミングをリセットすることを特徴とする。
【0028】
本態様によれば、フラッシング動作を実行するごとに空走時間の計測開始タイミングをリセットする。このため、フラッシング動作回数を減らすことができるので、液体を無駄にすることを効果的に抑制しつつ、ノズルに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0029】
本発明の第12の態様の三次元造形装置は、前記第1から第11のいずれか1つの態様において、前記ヘッドは、前記ノズルに連通する圧力室と、前記圧力室に前記液体を供給する供給路と、循環させるために前記圧力室から前記液体を流入する循環路と、を備えることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、ヘッドは液体を循環させるための循環路を備えている。このため、液体を循環させることで液体に含有される固形成分の沈降などを抑制でき、該固形成分が沈降することに伴う不具合を抑制できる。
【0031】
本発明の第13の態様の三次元造形装置は、前記第12の態様において、前記制御部は、単位時間当たりに前記循環路に流入する前記液体の流量をq1とし、単位時間当たりに前記ノズルから吐出される前記液体の最大流量をq2としたときに、q2/q1が0.05以上20以下となるよう制御することを特徴とする。
【0032】
本態様によれば、循環路に流入する液体の流量を適正な範囲に制御する。このことで、ノズル内の液体にかかる圧力と外気圧との圧力差が大きくなることを抑制できる。該圧力差が大きくなることを抑制することで、ノズルに粉末が混入することを抑制できる。
【0033】
本発明の第14の態様の三次元造形装置は、前記第13の態様において、前記q2/q1は、0.05であることを特徴とする。
【0034】
本態様によれば、循環路に流入する液体の流量を特に好ましい範囲に制御する。このことで、ノズル内の液体にかかる圧力と外気圧との圧力差が大きくなることを特に効果的に抑制でき、ノズルに粉末が混入することを特に効果的に抑制できる。
【0035】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。
最初に、本発明の三次元造形装置1の一実施例について
図1を参照して説明する。ここで、
図1及び後述する各図における図中のX方向は水平方向であり供給ユニット8の往復移動方向に対応し、このうち、X1方向は往方向、X2方向は復方向に対応する。また、Y方向は水平方向であるとともにX方向と直交する方向であり、ローラー6の回転軸の延びる方向に対応する。また、Z方向は鉛直方向であり、層500の積層方向に対応する。
【0036】
なお、本明細書における「三次元造形」とは、いわゆる立体造形物を形成することを示すものであって、例えば、平板状、いわゆる二次元形状の形状であっても厚さを有する形状を形成することも含まれる。
【0037】
本実施例の三次元造形装置1は、層501、層502、層503、・・・層50nからなる層500を積層することにより三次元造形物を製造する三次元造形装置である。そして、
図1で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、造形テーブル9を有するテーブルユニット10と、三次元造形物の造形材料を造形テーブル9に供給する供給ユニット8と、テーブルユニット10及び供給ユニット8の動作を制御する制御部12と、を備えている。なお、三次元造形装置1は、パーソナルコンピューターなどの外部装置20と電気的に接続されており、外部装置20を介してユーザーからの指示を受け付け可能な構成となっている。
【0038】
造形テーブル9は、制御部12の制御によりZ方向に移動可能な構成となっている。造形テーブル9の造形面9aをテーブルユニット10の上面部10aに対してZ方向において所定の距離だけ低い位置に配置し、造形面9aに供給ユニット8から三次元造形物の造形材料を供給して1層分の層500を形成する。そして、造形テーブル9の所定の距離分の下方への移動と、供給ユニット8からの三次元造形物の造形材料の供給と、を繰り返すことで積層する。
図1は、層501、層502、層503及び層504の4層分の層形成を繰り返して、造形面9a上に三次元造形物の構造体Sを形成した様子を表している。
【0039】
供給ユニット8は、ガイドバー11に沿って、X方向に移動可能な構成となっている。また、供給ユニット8は、金属やセラミックスや樹脂などの粉末を含む造形材料を造形テーブル9に供給する造形材料供給部2を備えている。なお、造形材料供給部2として、X1方向の先頭側端部に形成された造形材料供給部2Aと、X2方向の先頭側端部に形成された造形材料供給部2Bと、を備えている。
【0040】
また、供給ユニット8は、造形テーブル9に供給された造形材料を圧縮して均すことが可能なローラー6を備えている。なお、ローラー6として、X方向における造形材料供給部2Aの隣に形成されたローラー6Aと、X方向における造形材料供給部2Bの隣に形成されたローラー6Bと、を備えている。ここで、造形材料供給部2とローラー6とで、造形テーブル9に粉末層である層500を形成する、層形成部を構成している。なお、供給ユニット8は、ローラー6の代わりに、造形テーブル9に供給された造形材料を均すことが可能なスキージを備えていても構わない。
【0041】
また、供給ユニット8は、造形材料供給部2から供給された造形材料に含まれる粉末を結着するバインダーを含む液体を、三次元造形物の造形領域P1に吐出するヘッド3を備えている。なお、ヘッド3として、X方向におけるローラー6Aの隣に形成されたヘッド3Aと、X方向におけるローラー6Bの隣に形成されたヘッド3Bと、を備えている。ここで、ヘッド3A及びヘッド3Bから吐出される液体は同じ液体であり、ともに、バインダーとして紫外線硬化樹脂を含む液体である。ただし、このような液体に限定されず、熱硬化樹脂をバインダーとして含む液体や、バインダーとしての固体の樹脂が揮発性の溶媒に溶解された状態の液体などを使用してもよい。
【0042】
そして、X方向におけるヘッド3Aとヘッド3Bとの間には、紫外線硬化樹脂を硬化させることが可能な紫外線を照射する紫外線照射部4を備えている。なお、本実施例の供給ユニット8は、紫外線照射部4を1つ備える構成であるが、紫外線照射部4を2つ以上備える構成や、使用する液体の種類などに応じて、紫外線照射部4を備えない構成や、紫外線照射部4の代わりに熱硬化樹脂を硬化させるため或いは溶媒を揮発させるためのヒーターを備える構成などであってもよい。
【0043】
図1で表されるように、本実施例の供給ユニット8は、X方向において構成部材の形状が対称となっている。このため、本実施例の三次元造形装置1は、供給ユニット8をX1方向に移動させつつ三次元造形物の造形動作を実行できるとともに、供給ユニット8をX2方向に移動させつつ三次元造形物の造形動作を実行できる。
【0044】
また、
図1で表されるように、本実施例の三次元造形装置1は、テーブルユニット10に液体受け部5が設けられており、液体受け部5と対向する位置でヘッド3から液体を吐出させてフラッシング動作を実行可能である。すなわち、液体受け部5と対向する位置がフラッシング位置P2であり、このため当然、フラッシング位置P2は三次元造形物の造形領域P1とは異なる位置である。液体受け部5として、液体受け部5Aと、液体受け部5Bと、を備えている。なお、フラッシング位置P2における液体受け部5上の詳細なフラッシングエリアについては後述する。
【0045】
このように、本実施例の三次元造形装置1は、造形テーブル9と、造形テーブル9に粉末層である層500を形成する層形成部としての造形材料供給部2及びローラー6と、層500における三次元造形物の造形領域P1にバインダーを含む液体をノズルNから吐出するヘッド3と、造形テーブル9に対するヘッド3の移動と、電圧を印可することによるヘッド3の駆動と、を制御する制御部12と、を備えている。そして、制御部12は、造形領域P1への液体の吐出後に、造形領域P1とは異なる位置であるフラッシング位置においてヘッド3に電圧を印可して、ノズルNから液体を吐出するフラッシング動作を実行させる。なお、本実施例の三次元造形装置1は、液体受け部5と対向する位置をフラッシング位置P2としているが、このような構成に限定されず、例えば、造形面9a上の造形領域P1とは異なる領域をフラッシング位置P2としてもよい。
【0046】
また、本実施例の三次元造形装置1は、ヘッド3に液体を供給する液体供給システム40を備えている。そこで、以下に、
図2から
図5を参照して、液体供給システム40、並びに、ヘッド3について詳細に説明する。ここで、
図2に示す液体供給システム40は、ヘッド3に液体を供給するための供給流路45aを含む循環部41と、循環部41に液体を補充するための液体補充流路45dを含む補充部42と、によって構成されている。
【0047】
最初に、液体供給システム40について説明する。
図2で表されるように、循環部41は、ヘッド3と、加圧制御用液体タンク43aと減圧制御用液体タンク43bと、加圧制御用ポンプ44aと、減圧制御用ポンプ44bと、流動用ポンプ44cと、電磁弁V1と、を有する。また、循環部41は、加圧制御用液体タンク43aとヘッド3を連結する供給流路45aと、ヘッド3と減圧制御用液体タンク43bを連結する第1循環流路45bと、加圧制御用液体タンク43aと減圧制御用液体タンク43bとを連結する第2循環流路45cと、を有する。ここで、第1循環流路45bには、フィルターF2と、第1循環流路45b中を流れる液体の流量を検出する流量センサー46と、が設けられている。
【0048】
加圧制御用液体タンク43a、加圧制御用ポンプ44a、減圧制御用液体タンク43b、減圧制御用ポンプ44bによって、ヘッド3のノズルNには大気圧から若干負圧が掛かるように差圧制御が行われる。
【0049】
減圧用タンクである減圧制御用液体タンク43bから加圧用タンクである加圧制御用液体タンク43aに液体を流動させる第2循環流路45cには、流動用ポンプ44cと、電磁弁V1が設置されている。ヘッド3における液体吐出動作が実行されるとき、ヘッド3に液体を供給するときは、電磁弁V1を開き、流動用ポンプ44cを動作させて、供給流路45a、第1循環流路45b及び第2循環流路45cにおいて液体を循環させる。
【0050】
補充部42は、液体が収容された交換可能な液体カートリッジ43cと、流動用ポンプ44dと、電磁弁V2と、を有する。また、補充部42は、加圧制御用液体タンク43aと液体カートリッジ43cとを連結する液体補充流路45dを有する。液体カートリッジ43cから加圧制御用液体タンク43aに液体を補充するときは、電磁弁V2を開き、流動用ポンプ44dを動作させて、液体補充流路45dにおいて液体を流させる。
【0051】
次に、ヘッド3の詳細な構成について
図3から
図5を参照して説明する。なお、
図5中の実線の矢印は、ヘッド3の内部での液体の流れる方向を表している。
【0052】
図3に示されるように、ヘッド3は、供給流路45a及び第1循環流路45bと接続されている。ヘッド3の内部に液体を供給する供給流路としての供給流路45a、並びに、ヘッド3の内部の液体を一旦外部に排出して循環させる循環流路としての第1循環流路45bは、ヘッド3の一部を構成しているとみなすことができる。別の表現をすると、ヘッド3は、供給流路45a及び第1循環流路45bを備えている。供給流路45aは供給口33に接続され、第1循環流路45bは排出口34に接続されている。
【0053】
ヘッド3は、
図3から
図5で表されるように、供給口33を有する供給液室31を有し、液体は、供給流路45aから供給口33を介して供給液室31に送られる。また、ヘッド3は、
図4及び
図5で表されるように、フィルターF3を介して供給液室31と通じる個別供給流路37を有し、供給液室31に供給された液体は、個別供給流路37に送られる。
【0054】
ヘッド3は、
図3及び
図5で表されるように、電圧を印加させることでZ方向に沿って変形する圧電素子35を有し、圧電素子35は、Z方向において振動板Dを挟んで圧力室36と反対側の空間に配置されている。
図4及び
図5で表されるように、圧力室36は個別供給流路37と通じており、液体は個別供給流路37から圧力室36に送られる。また、圧力室36にはノズルNが連通しており、圧電素子35が変形することで圧力室36の容積が収縮し、圧力室36中の液体が加圧されることで、ノズルNから液体が吐出する。なお、
図5における下方が鉛直下方向であり、ノズルNからの液体の吐出方向は、重力方向に対応する鉛直下方向である。
【0055】
なお、上記のように、本実施例の三次元造形装置1は、
図2で表される液体供給システム40を備えており、ヘッド3に供給する液体を循環して供給している。このため、圧力室36に一度送られた液体を循環させるため、圧力室36は個別供給流路37に加えて個別循環流路38にも通じている。個別循環流路38は、フィルターF1を介して、排出口34を有する循環液室32と通じている。本実施例の三次元造形装置1は、ヘッド3の内部において、供給流路45a、供給液室31、個別供給流路37、圧力室36、個別循環流路38、循環液室32、第1循環流路45b、と液体を流すことで該液体を循環させている。
【0056】
上記のように、ヘッド3は、ノズルNに連通する圧力室36と、圧力室36にバインダーを含む液体を供給する供給路としての供給流路45a、供給液室31、個別供給流路37と、循環させるために圧力室36からバインダーを含む液体を流入する循環路としての個別循環流路38、循環液室32、第1循環流路45bと、を備えている。ここで、バインダーを含む液体中には固形成分などが含まれている場合があるが、上記のように、ヘッド3はバインダーを含む液体を循環させるための循環路を備えている。このため、該液体を循環させることで該液体に含有される固形成分の沈降などを抑制でき、該固形成分が沈降することに伴う不具合を抑制できる。
【0057】
なお、制御部12は、単位時間当たりに循環路に流入するバインダーを含む液体の流量をq1とし、単位時間当たりにノズルNから吐出されるバインダーを含む液体の最大流量をq2としたときに、q2/q1が0.05以上20以下となるよう制御する。すなわち、本実施例の三次元造形装置1は、循環路に流入するバインダーを含む液体の流量を適正な範囲に制御する。このことで、ノズルN内の液体にかかる圧力と外気圧との圧力差が大きくなることを抑制できる。本実施例の三次元造形装置1は、該圧力差が大きくなることを抑制することで、ノズルNに層500を形成する粉末が混入することを抑制できる。
【0058】
なお、制御部12は、通常状態においては、前記q2/q1を0.05とする。すなわち、本実施例の三次元造形装置1は、循環路に流入するバインダーを含む液体の流量を特に好ましい範囲に制御する。このことで、本実施例の三次元造形装置1は、ノズルN内の液体にかかる圧力と外気圧との圧力差が大きくなることを特に効果的に抑制でき、ノズルNに層500を形成する粉末が混入することを特に効果的に抑制できる。
【0059】
次に、本実施例の三次元造形装置1で使用可能な造形材料についての具体例を説明する。層500を形成する造形材料に含有可能な金属粉末としては、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単体粉末、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金(マルエージング鋼、ステンレス(SUS)、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金)の粉末、これらの混合粉末を、用いることが可能である。
【0060】
また、層500を形成する造形材料に含有可能なセラミックス粉末としては、例えば二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、窒化ケイ素(Si3N4)などを好ましく使用可能である。
【0061】
また、層500を形成する造形材料に含有可能な樹脂粒子、或いは、ヘッド3から造形領域P1に吐出される液体中に含有されるバインダーとしては、例えば、PMMA(アクリル)、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-アクリル酸エステル)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル)、PLA(ポリ乳酸)、PEI(ポリエーテルイミド)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PA(ポリアミド)、EP(エポキシ)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PS(ポリスチレン)、パラフィンワックス、PVA(ポリビニルアルコール)、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレートなどを好ましく使用可能である。また、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂などを単独で或いは組み合わせて用いることができる。さらには、熱可塑性樹脂や、アクリルなどのような不飽和二重結合のラジカル重合を用いるタイプやエポキシなどのカチオン重合を用いるタイプの紫外線硬化性樹脂を用いることもできる。
【0062】
また、ヘッド3から吐出される液体中に含有される溶剤としては、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等)等のイオン液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
次に、本実施例の三次元造形装置1を用いて実行可能な三次元造形方法の一例について、
図8から
図15を参照しつつ、
図6及び
図7のフローチャートを用いて説明する。なお、
図7のフローチャートは、
図6のフローチャートにおけるステップS160のフラッシング工程を具体的に表すフローチャートである。
図6及び
図7のフローチャートで表される本実施例の三次元造形方法は、供給ユニット8や造形テーブル9など三次元造形装置1の各構成部材の制御を制御部12が行うことにより行われる。また、
図8は、層500のうちの1層目である層501を形成する際の一例を表している。また、
図9及び
図10は層500のうちの2層目である層502を形成する際の一例を表している。そして、
図11から
図15は、造形テーブル9に形成される層500、テーブルユニット10の上面部10a、液体受け部5を、ヘッド3のノズルNから液体を吐出可能な領域ごとに区分けしたビットマップデータを表す概念図である。
【0064】
本実施例の三次元造形装置1は、各層500を形成する際に、供給ユニット8をX1方向に移動させて層500を形成することができる。さらに、各層500を形成する際に、奇数段目の層500では供給ユニット8をX1方向に移動させるとともに、偶数段目の層500では供給ユニット8をX2方向に移動させて層500を形成することができる。ここで、
図9は、奇数段目の層500である層501を形成する場合だけでなく、偶数段目の層500である層502を形成する場合も、供給ユニット8をX1方向に移動させて層500を形成する際の一例を表している。一方、
図10は、奇数段目の層500を形成する場合には供給ユニット8をX1方向に移動させるとともに、偶数段目の層500を形成する場合には供給ユニット8をX2方向に移動させることで、層500を形成する際の一例を表している。
【0065】
図6で表されるように、最初に、ステップS110の造形データ入力工程で、製造する三次元造形物の造形データを入力する。三次元造形物の造形データの入力元に特に限定はないが、外部装置20を用いて造形データを三次元造形装置1に入力できる。
【0066】
次に、ステップS120の造形前フラッシング工程で、ヘッド3について造形前フラッシングを行う。ここで、造形前フラッシングは、フラッシング位置である液体受け部5と対向する位置であるフラッシング位置P2にヘッド3を移動し、該フラッシング位置P2で行う。なお、本ステップS120の造形前フラッシング工程は、省略してもよい。
【0067】
次に、ステップS130の層形成工程で、造形材料供給部2から造形材料を造形テーブル9の造形面9aに供給するとともにローラー6で造形材料を圧縮して均すことで層500を形成する。ここで、
図8の一番上の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動して1層目の層501を形成している状態を表している。また、
図9の一番上の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動して2層目の層502を形成している状態を表している。このように、X1方向に供給ユニット8を移動して層500を形成する場合は、造形材料供給部2Aから造形材料を供給するとともにローラー6Aで造形材料を圧縮して均すことで層500を形成する。一方、
図10の一番上の状態で表されるように、X2方向に供給ユニット8を移動して層500を形成する場合は、造形材料供給部2Bから造形材料を供給するとともにローラー6Bで造形材料を圧縮して均すことで層500を形成する。
【0068】
次に、ステップS140の液体吐出工程で、層500における三次元造形物の造形領域P1にバインダーを含む液体をヘッド3のノズルNから吐出する。
図8の上から2番目の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動しつつ層501の造形領域P1に液体をヘッド3のノズルNから吐出している状態を表している。また、
図9の上から2番目の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動しつつ層501の造形領域P1に液体をヘッド3のノズルNから吐出している状態を表している。このように、X1方向に供給ユニット8を移動して層500を形成する場合は、ヘッド3Aから液体を吐出する。一方、
図10の上から2番目の状態で表されるように、X2方向に供給ユニット8を移動して層500を形成する場合は、ヘッド3Bから液体を吐出する。
【0069】
次に、ステップS150の紫外線照射工程で、層500における三次元造形物の造形領域P1に向けて紫外線照射部4から紫外線を照射する。
図8の上から3番目の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動しつつ層501における三次元造形物の造形領域P1に向けて紫外線照射部4から紫外線を照射している状態を表している。また、
図9の上から3番目の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動しつつ層502における三次元造形物の造形領域P1に向けて紫外線照射部4から紫外線を照射している状態を表している。そして、
図10の上から3番目の状態は、X1方向に供給ユニット8を移動しつつ層502における三次元造形物の造形領域P1に向けて紫外線照射部4から紫外線を照射している状態を表している。
【0070】
次に、ステップS160のフラッシング工程で、ヘッド3のフラッシングを行う。ここで、
図8の一番下の状態、並びに、
図9の一番下の状態で表されるように、X1方向に供給ユニット8を移動して層500を形成する際には、液体受け部5Aと対向する側のフラッシング位置P2でヘッド3Aのフラッシングを行う。なお、ヘッド3Aのフラッシングに引き続いて、液体受け部5Aと対向する側のフラッシング位置P2でヘッド3Bのフラッシングも行うことができる。一方、
図10の一番下の状態で表されるように、X2方向に供給ユニット8を移動して層500を形成する際には、液体受け部5Bと対向する側のフラッシング位置P2でヘッド3Bのフラッシングを行う。なお、ヘッド3Bのフラッシングに引き続いて、液体受け部5Bと対向する側のフラッシング位置P2でヘッド3Aのフラッシングも行うことができる。
【0071】
ここで、
図7を参照して、ステップS160のフラッシング工程の詳細について説明する。
図7で表されるように、フラッシング工程を開始すると、最初に、最初に、ステップS1610の造形データ取得工程で、制御部12は、ステップS110の造形データ入力工程で入力した造形データのうちの1層分の層500に対応するスライスデータを取得する。
【0072】
次に、ステップS1620の空走時間算出工程で、ステップS1610の造形データ取得工程で取得した造形データのうちの1層分のビットマップデータであるスライスデータに基づいて制御部12により空走時間Lを算出する。そして、ステップS1630の第1空走時間判断工程で、制御部12により空走時間Lが第1閾値以上か否かを判断する。なお、スライスデータから空走時間Lを算出する構成の代わりに、不図示のタイマーで液体の吐出タイミングの間隔を計測する構成としてもよい。
【0073】
ステップS1630の第1空走時間判断工程で空走時間Lが第1閾値以上と判断された場合は、ステップS1640の第2フラッシング信号生成工程に進み、制御部12により第2フラッシング信号を生成するとともに該第2フラッシング信号により第2フラッシング動作を実行する。そして、ステップS1670の空走時間リセット工程で、空走時間Lに関する情報をリセットし、
図7のフローチャートで表される
図6のステップS160のフラッシング工程を終了する。なお、制御部12はEEROMなどで構成される不図示の不揮発性メモリーを備えており、空走時間Lに関する情報は該不揮発性メモリーに上書きして記憶させておくことが可能である。
【0074】
ステップS1630の第1空走時間判断工程で空走時間Lが第1閾値未満と判断された場合は、ステップS1650の第2空走時間判断工程に進み、制御部12により空走時間Lが第2閾値以上か否かを判断する。ここで、第2閾値は、当然、第1閾値よりも小さい値となっている。ステップS1650の第2空走時間判断工程で空走時間Lが第2閾値未満と判断された場合は、
図7のフローチャートで表される
図6のステップS160のフラッシング工程を終了する。一方、ステップS1650の第2空走時間判断工程で空走時間Lが第2閾値以上と判断された場合は、ステップS1660の第1フラッシング信号生成工程に進み、制御部12により第2フラッシング信号を生成するとともに該第2フラッシング信号により第1フラッシング動作を実行する。そして、ステップS1670の空走時間リセット工程で、空走時間Lに関する情報をリセットし、
図7のフローチャートで表される
図6のステップS160のフラッシング工程を終了する。
【0075】
すなわち、空走時間Lが短くノズルNに粉末がほとんど混入していないと考えられる場合はフラッシング動作をいったん保留する。なお、後述するように、空走時間Lが長くノズルNに粉末が混入している可能性が高いと考えられる場合はフラッシング動作を実行する。なお、
図7のフローチャートで表される
図6のステップS160のフラッシング工程の終了に伴い、
図6のフローチャートにおけるステップS170の造形データ終了有無判断工程に進む。
【0076】
ここで、
図8の上から2番目の状態においては、空走時間Lは空走時間L1となる。また、
図9の上から2番目の状態においては、空走時間Lは空走時間L2Aとなる。そして、
図10の上から2番目の状態においては、空走時間Lは空走時間L2Bとなる。
図8の上から2番目の状態における空走時間L1は、小さく、ステップS1630の第1空走時間判断工程における第1閾値以上である。このため、このような場合は、フラッシングを行わなくてもよいまたは弱いフラッシングで十分であると判断し、ステップS1630の造形面積判断工程の終了後、ステップS1650の第2空走時間判断工程に進む。そして、本実施例の場合では、例えば、ステップS1650の第2空走時間判断工程で、該空走時間L1は第2閾値以上であると制御部12により判断され、ステップS1660の第1フラッシング信号生成工程に進む。一方、
図9の上から2番目の状態における空走時間L2A及び
図10の上から2番目の状態における空走時間L2Bは、小さく、第1閾値未満である。このため、このような場合は、強いフラッシングが必要であると判断し、ステップS1640の第2フラッシング信号生成工程に進む。
【0077】
なお、本実施例の三次元造形装置1は、ヘッド3に複数のノズルNを備えているが、三次元造形物の構造体Sの形成に使用するノズルNの使用数にかかわらず、一律にすべてのノズルNに対して同じ条件で第1フラッシング動作か第2フラッシング動作かのいずれかのフラッシング動作を実行することができる。ただし、このようなフラッシング動作の実行方法に加えて、ノズルNごとに空走時間Lを判断し、ノズルNごとにフラッシング動作を保留するか、第1フラッシング動作を実行するか、第2フラッシング動作を実行するか、を変えることもできる。なお、第1フラッシング動作よりも第2フラッシング動作のほうが強いフラッシング動作に該当するが、どのように第2フラッシング動作を第1フラッシング動作よりも強いフラッシング動作にするかについては後述する。
【0078】
図6のフローチャートに戻り、ステップS170の造形データ終了有無判断工程では、三次元造形装置1の制御部12において、ステップS110で入力した造形データに基づく層500の形成が全て終了したかどうかを判断する。層500の形成が全て終了していないと判断した場合、ステップS130の層形成工程に戻り、次の層500を形成する。一方、層500の形成が全て終了したと判断した場合、ステップS180の脱脂工程に進む。
【0079】
ステップS180の脱脂工程では、バインダーなど、ステップS120の造形前フラッシング工程からステップS170の造形データ終了有無判断工程を繰り返すことで製造された構造体Sの樹脂成分を、外部装置などを用いて脱脂する。なお、脱脂の方法は、加熱することにより樹脂成分を揮発させる方法や、溶剤中に構造体Sを漬けて樹脂成分を溶解させる方法などがあるが、特に限定はない。なお、樹脂製の三次元造形物を製造する場合など、製造する三次元造形物の種類などによっては、本ステップS180の脱脂工程を省略してもよい。
【0080】
そして、ステップS190の焼結工程では、外部装置などを用いてステップS180の脱脂工程で脱脂がなされた構造体Sを加熱して造形材料を焼結する。なお、ステップS180の脱脂工程を実行した後においても構造体Sのバインダーなどの樹脂成分が残存していた場合でも、本ステップS190の焼結工程の実行に伴い該樹脂成分は除去される。そして、本ステップS190の焼結工程の終了に伴い、本実施例の三次元造形物の製造方法を終了する。なお、ステップS180の脱脂工程と同様、製造する三次元造形物の種類などによっては、本ステップS190の焼結工程を省略してもよい。
【0081】
以下に、
図11から
図15を用いて形成する三次元造形物の構造体Sに応じた、ノズルNごとのフラッシング動作方法について説明する。
図11から
図15は、上記のように、層500、上面部10a、液体受け部5を、ヘッド3のノズルNから液体を吐出可能な領域ごとに区分けしたビットマップデータを表す概念図である。別の表現をすると、ノズルNからの液体の吐出単位ごとに、層500、上面部10a、液体受け部5をエリア分けした状態を表している。また、
図11から
図15は、ヘッド3をX1方向に移動させつつ液体を吐出させる場合の液体の吐出エリアと液体の非吐出エリアを表している。なお、図中の黒色エリアは液体の吐出エリアであって吐出データD1に対応し、図中の白色エリアは液体の非吐出エリアであってNULLデータD0に対応している。
【0082】
ここで、造形領域P1を含む層500での液体の吐出に対応する造形領域データDaは、エリアごとに区分けされた、構造体Sの形成に対応して液体を吐出させる吐出データD1と、液体を吐出させないNULLデータD0と、で構成される。すなわち、吐出データD1の領域には液体は吐出されるが、NULLデータD0の領域には液体は吐出されない。造形領域P1を含まない上面部10aでの液体の吐出に対応する空走領域データDbは、エリアごとに区分けされた、NULLデータD0のみで構成される。すなわち、上面部10aには液体は吐出されない。液体受け部5での液体の吐出に対応するフラッシングデータDcは、エリアごとに区分けされた、液体受け部5上のフラッシングエリアに対応する吐出データD1と、液体受け部5上のフラッシングエリアに対応しないNULLデータD0と、で構成される。すなわち、吐出データD1の領域には液体は吐出されるが、NULLデータD0の領域には液体は吐出されない。ここで、造形領域データDa、空走領域データDb及びフラッシングデータDcは、ステップS110の造形データ入力工程で入力した造形データに基づいて、制御部12において生成される。
【0083】
最初に、
図11で表される場合について説明する。
図11は、ヘッド3の各ノズルNを用いて構造体Sに対応するエリアに吐出を行う場合であって、いずれのノズルNも空走時間Lが第1閾値以上の空走時間Laになる場合を表している。このような場合、いずれのノズルNに対しても液体受け部5上においてフラッシング動作を行う。
図11で表される場合においては、ステップS1630の第1空走時間判断工程で空走時間Lが第1閾値以上と判断し、液体受け部5上において、ステップS1640の第2フラッシング信号生成工程に対応する第2フラッシング動作を実行する。
【0084】
次に、
図12で表される場合について説明する。
図12は、
図11と同様、ヘッド3の各ノズルNを用いて構造体Sに対応するエリアに吐出を行う場合であって、いずれのノズルNも空走時間Lが第1閾値未満かつ第2閾値未満の空走時間Lbになる場合を表している。このような場合、いずれのノズルNに対しても液体受け部5上においてフラッシング動作を行わない。
【0085】
次に、
図13で表される場合について説明する。
図13は、
図11及び
図12とは異なり、領域R1、領域R2及び領域R3のノズルNのうちの領域R1のノズルNのみを用いて構造体Sに対応するエリアに吐出を行う場合であって、領域R1のノズルNにおいては空走時間Lが第1閾値未満かつ第2閾値未満になり、領域R2及び領域R3のノズルNにおいては空走時間Lが第1閾値以上になる場合を表している。なお、領域R1、領域R2及び領域R3は、いずれも、層500、上面部10a及び液体受け部5における図中のX方向にわたる帯状の領域に対応する。ここで、このような
図13で表される場合、領域R1のノズルNに対しては液体受け部5上においてフラッシング動作を行わないが、領域R2及び領域R3のノズルNに対しては液体受け部5上において、ステップS1640の第2フラッシング信号生成工程に対応する第2フラッシング動作を実行する。
【0086】
次に、
図14で表される場合について説明する。
図14は、
図11及び
図12と同様、領域R1、領域R2及び領域R3のノズルNのうちのすべての領域のノズルNを用いて構造体Sに対応するエリアに吐出を行う場合であって、領域R1のノズルNにおいては空走時間Lが第1閾値未満かつ第2閾値未満になり、領域R2及び領域R3のノズルNにおいては空走時間Lが第1閾値未満かつ第2閾値以上になる場合を表している。このような場合、領域R1のノズルNに対しては液体受け部5上においてフラッシング動作を行わないが、領域R2及び領域R3のノズルNに対しては液体受け部5上において、ステップS1660の第1フラッシング信号生成工程に対応する第1フラッシング動作を実行する。なお、
図14で表されるように、領域R2及び領域R3において第1フラッシング動作を実行する際、液体受け部5上の領域に対して互い違いに吐出データD1に対応するフラッシングエリアが並ぶようにする。このようにフラッシングエリアを配置することで、液体受け部5に設けられた不図示の吸収体に効率的に液体を吸収させることができ、該液体が液体受け部5からこぼれることを抑制できる。別の表現をすると、液体の液滴サイズを変えることなく液体の吐出位置(フラッシングエリア)及び吐出数を変えることで、液体受け部5に設けられた不図示の吸収体に効率的に液体を吸収させることができる。なお、
図11の液体受け部5上や
図13及び後述の
図15の領域R2及び領域R3で表される第2フラッシング動作でのフラッシングエリアについても、図で表されるように満遍なく配置されている。
【0087】
次に、
図15で表される場合について説明する。
図15は、
図13と同様、領域R1、領域R2及び領域R3のノズルNのうちの領域R1のノズルNのみを用いて構造体Sに対応するエリアに吐出を行う場合であって、領域R1のノズルNにおいては空走時間Lが第1閾値未満かつ第2閾値以上になり、領域R2及び領域R3のノズルNにおいては空走時間Lが第1閾値以上になる場合を表している。このような場合、領域R1のノズルNに対しては液体受け部5上において、ステップS1660の第1フラッシング信号生成工程に対応する第1フラッシング動作を実行し、領域R2及び領域R3のノズルNに対しては液体受け部5上において、ステップS1640の第2フラッシング信号生成工程に対応する第2フラッシング動作を実行する。なお、
図15で表されるように、領域R1において第1フラッシング動作を実行する際、液体受け部5上の領域に対して互い違いに吐出データD1に対応するフラッシングエリアが並ぶようにする。
【0088】
ここで、一旦まとめると、本実施例の三次元造形装置1においては、制御部12は、液体を吐出することなくヘッド3を移動する空走時間Lが閾値未満の場合と閾値以上の場合とで、フラッシング動作の実行条件を変更する。このため、例えば、空走時間Lが長くなり粉末層である層500上をヘッド3が空走状態で移動する時間が長くなる場合などに、フラッシング効果が高い条件でヘッド3内の液体を排出させることができる。したがって、フラッシング動作を行ってもノズルNに混入した粉末が除去できないということを抑制できる。なお、本実施例における「空走時間」とは、少なくともヘッド3のノズルNから液滴が吐出されていない状態において、ヘッド3が粉末層上を移動する時間またはヘッド3が粉末層上に留まっている時間を示している。
【0089】
また、上記のように、造形領域データDa、空走領域データDb及びフラッシングデータDcは、ステップS110の造形データ入力工程で入力した造形データに基づいて、制御部12において生成される。すなわち、制御部12は、三次元造形物の造形データに基づいてフラッシング位置P2でのフラッシングデータDcを生成し、フラッシングデータDcに基づいてヘッド3にフラッシング動作を実行させるよう制御する。このように、造形データからフラッシングデータDcを生成することでフラッシング動作を適正にすることができる。例えば、
図14の領域R2及び領域R3、並びに、
図15の領域R1におけるフラッシング位置P2である液体受け部5で表されるように、液体受け部5に対して均等になるように液体を吐出させることで、液体受け部5に収容される吸収体に効率的に液体を吸収させることができ、フラッシング動作により液体が液体受け部5からこぼれることを抑制できる。
【0090】
また、制御部12は、空走時間Lが閾値としての第2閾値未満の場合にフラッシング動作を実行させず、空走時間Lが閾値としての第1閾値または第2閾値以上の場合にフラッシング動作を実行させる。すなわち、制御部12は、空走時間Lが閾値未満の場合はフラッシング動作を実行させない。このため、本実施例の三次元造形装置1は、フラッシング動作が不要な際にもフラッシング動作を実行してしまうことで液体を無駄にすることを効果的に抑制することができる。
【0091】
また、別の観点から本実施例の三次元造形装置1を説明すると、制御部12は、空走時間Lが第1閾値未満の場合に、ヘッド3に第1フラッシング動作を実行させ、空走時間が第1閾値以上の場合に、第1フラッシング動作と異なるフラッシング条件でヘッド3に第2フラッシング動作を実行させるよう制御する。このため、例えば、粉末層である層500上をヘッド3が空走状態で移動する空走時間Lが長くなる場合に、フラッシング効果が高い条件でヘッド3内の液体を排出させることが可能になる。したがって、フラッシング動作を行ってもノズルNに混入した粉末が除去できないということを抑制できる。
【0092】
ここで、本実施例の三次元造形装置1は、制御部12の制御により、構造体Sの形成に伴うヘッド3からの液体の吐出に伴って空走時間Lの計測開始タイミングをリセットする。さらに、
図7のフローチャートで表されるように、制御部12は、ステップS1640の第2フラッシング信号生成工程、並びに、ステップS1660の第1フラッシング信号生成工程を実行するごとに、ステップS1670の空走時間リセット工程で、空走時間Lに関する情報をリセットする。すなわち、制御部12は、フラッシング動作を実行するごとに空走時間Lの計測開始タイミングをリセットする。別の表現をすると、形成する構造体Sの形状や大きさなどに応じたノズルNの使用タイミングなどによっては、層500を複数層分形成するごとに空走時間Lの計測開始タイミングをリセットする。このため、層500を1層分形成するごとに空走時間Lの計測開始タイミングをリセットする場合に比べてフラッシング動作回数を減らすことができるので、液体を無駄にすることを効果的に抑制しつつ、ノズルNに混入した粉末を効果的に排出することができる。なお、「計測開始タイミング」とは、タイマーなどを用いて実際に計測を開始するタイミングに限定されず、データから制御部12により算出される時間の開始タイミングを含む意味である。
【0093】
ただし、本実施例の三次元造形装置1は、制御部12の制御により、層500を1層分形成するごとに空走時間Lの計測開始タイミングをリセットすることもできる。具体的には、制御部12は、
図7のフローチャートにおいて、ステップS1650の第2空走時間判断工程で空走時間Lが第2閾値未満と判断された場合に、ステップS1670の空走時間リセット工程に進んでから、ステップS160のフラッシング工程を終了するように制御することができる。このような制御をすることで、簡単な制御で、ノズルNに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0094】
なお、本実施例の三次元造形装置1は、空走距離Lが第1閾値以上の場合に第2フラッシング動作を実行させ、空走距離Lが第1閾値かつ第2閾値以上の場合に第1フラッシング動作を実行させ、空走距離Lが第2閾値未満の場合にはフラッシング動作を実行させない。しかしながら、空走距離Lが1つの閾値以上の場合にフラッシング動作を実行させるとともに空走距離Lが該閾値未満の場合にフラッシング動作を実行させない構成としてもよい。さらには、空走距離Lが1つの閾値以上の場合に第2フラッシング動作を実行させるとともに空走距離Lが該閾値未満の場合に第1フラッシング動作を実行させる構成としてもよい。また、さらに多くの閾値を設け、第1フラッシング動作及び第2フラッシング動作以外にも、第1フラッシング動作及び第2フラッシング動作と異なるフラッシング条件でフラッシング動作を行ってもよい。また、空走時間Lが閾値未満の場合と閾値以上の場合とでフラッシング動作の実行条件を変更する構成の代わりに、空走時間Lが閾値以下の場合と閾値を超える場合とでフラッシング動作の実行条件を変更する構成としてもよい。
【0095】
本実施例の三次元造形装置1は、第2フラッシング動作におけるヘッド3へ入力される波形の周波数を、第1フラッシング動作におけるヘッド3へ入力される波形の周波数よりも高くすることができる。ヘッド3へ入力される波形の周波数を高くするとノズルNに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本実施例の三次元造形装置1は、空走時間Lが長くなる場合も、ノズルNに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0096】
また、本実施例の三次元造形装置1は、第2フラッシング動作におけるヘッド3への印加電圧を、第1フラッシング動作におけるヘッド3への印加電圧よりも高くすることができる。ヘッド3への印加電圧を高くするとノズルNに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本実施例の三次元造形装置1は、空走距離Lが長くなる場合も、ノズルNに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0097】
また、本実施例の三次元造形装置1は、ヘッド3への印加電圧やヘッド3に電圧を印加する際の波形を調整することで、第2フラッシング動作におけるヘッド3からの液体の吐出速度を、第1フラッシング動作におけるヘッド3からの液体の吐出速度よりも速くすることができる。ヘッド3からの液体の吐出速度を速くするとノズルNに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本実施例の三次元造形装置1は、空走時間Lが長くなる場合も、ノズルNに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0098】
また、本実施例の三次元造形装置1は、ヘッド3への印加電圧やヘッド3に電圧を印加する際の波形を調整することで、第2フラッシング動作においてヘッド3から吐出される液体の液滴サイズを、第1フラッシング動作におけるヘッド3から吐出される液体の液滴サイズよりも大きくすることができる。ヘッド3からの液体の吐出量を多くするとノズルNに混入した粉末を効果的に排出できるようになるため、本実施例の三次元造形装置1は、空走時間Lが長くなる場合も、ノズルNに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0099】
なお、
図6のフローチャートにおいては、ステップS160の造形前フラッシング工程を実行している。ここでのフラッシング動作は、第1フラッシング動作である。また、ステップS160の造形前フラッシング工程に加えて、あるいは、ステップS160の造形前フラッシング工程の代わりに、ステップS170の造形データ終了有無判断工程の実行後であってステップS180の脱脂工程の実行前に、第1フラッシング動作で造形後フラッシング工程を実行してもよい。すなわち、制御部12は、三次元造形装置1の動作開始時及び動作終了時の少なくともいずれかに第1フラッシング動作を実行するよう制御してもよい。三次元造形装置1の動作開始時及び動作終了時の少なくともいずれかに第1フラッシング動作を実行することで、ノズルNに粉末が混入していない状態で構造体Sの形成を開始することができるためである。したがって、三次元造形装置1を動作させた際に、ノズルNに混入した粉末が原因で液体の吐出不良が生じることを抑制できる。なお、三次元造形装置1の動作開始時及び動作終了時のフラッシング動作を第2フラッシング動作ではなく第1フラッシング動作とすることで、無駄に液体を消費することを抑制できる。
【0100】
また、本実施例の三次元造形装置1では、ヘッド3の移動速度を一定として制御部12がフラッシング動作を制御したが、造形データの印刷品質に応じて制御部12がヘッド3の移動速度を変更しても構わない。例えば、造形物の精度を高くするためにヘッド3の移動速度が遅くなると、ヘッド3が粉末層上を移動する時間は長くなる。したがって、ヘッド3の移動速度によって空走時間が変動する場合においても、制御部12がフラッシング動作を制御することで、ノズルNに混入した粉末を効果的に排出することができる。
【0101】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1…三次元造形装置、2…造形材料供給部(層形成部)、2A…造形材料供給部、
2B…造形材料供給部、3…ヘッド、3A…ヘッド、3B…ヘッド、
4…紫外線照射部、5…液体受け部、5A…液体受け部、5B…液体受け部、
6…ローラー(層形成部)、6A…ローラー、6B…ローラー、8…供給ユニット、
9…造形テーブル、9a…造形面、10…テーブルユニット、10a…上面部、
11…ガイドバー、12…制御部、20…外部装置、31…供給液室(供給路)、
32…循環液室(循環路)、33…供給口、34…排出口、35…圧電素子、
36…圧力室、37…個別供給流路(供給路)、38…個別循環流路(循環路)、
40…液体供給システム、41…循環部、42…補充部、
43a…加圧制御用液体タンク、43b…減圧制御用液体タンク、
43c…液体カートリッジ、44a…加圧制御用ポンプ、44b…減圧制御用ポンプ、
44c…流動用ポンプ、44d…流動用ポンプ、45a…供給流路(供給路)、
45b…第1循環流路(循環路)、45c…第2循環流路、45d…液体補充流路、
46…流量センサー、500…層(粉末層)、
501、502、503、・・・50n…層、D…振動板、D0…NULLデータ、
D1…吐出データ、Da…造形領域データ、Db…空走領域データ、
Dc…フラッシングデータ、F1…フィルター、F2…フィルター、
F3…フィルター、N…ノズル、L…空走時間、L1…空走時間、L2A…空走時間、
L2B…空走時間、La…空走時間、Lb…空走時間、P1…造形領域、
P2…フラッシング位置、R1…領域、R2…領域、R3…領域、S…構造体、
Sa…領域、Sb…領域、V1…電磁弁、V2…電磁弁