(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】バラスト水処理装置
(51)【国際特許分類】
B63B 13/00 20060101AFI20240717BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240717BHJP
【FI】
B63B13/00 Z
C02F1/32
(21)【出願番号】P 2020133222
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敦行
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-225907(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0124687(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0166590(US,A1)
【文献】特表2002-527879(JP,A)
【文献】特許第6529706(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 13/00
B63J 4/00
C02F 1/00 - 1/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通するバラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置であって、
前記流通するバラスト水の処理流量を調整する流量調整手段と、
紫外線照射量を調整可能な紫外線リアクタと、
前記流通するバラスト水の紫外線透過率を取得する透過率取得手段と、
複数の運転モードから選択される1つの運転モードにより前記流量調整手段及び前記紫外線リアクタを制御する制御手段と、を備え、
前記複数の運転モードの各運転モードではそれぞれ、前記紫外線透過率ごとに前記処理流量及び前記紫外線照射量が規定されており、
前記透過率取得手段は、過去の運転データを保持するとともに、当該過去の運転データから現在の紫外線透過率を事前予測し、
前記制御手段は、前記浄化処理前に前記透過率取得手段から前記
予測した紫外線透過率を取得して、当該紫外線透過率を判定基準として適切な運転モードを判定する、バラスト水処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のバラスト水処理装置であって、
前記制御手段は、バラスト動作に費やすことのできる許容処理時間を取得するとともに、当該許容処理時間と、前記透過率取得手段から取得した前記紫外線透過率における処理流量から算出される各運転モードの必要処理時間とを比較する、バラスト水処理装置。
【請求項3】
流通するバラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置であって、
前記流通するバラスト水の処理流量を調整する流量調整手段と、
紫外線照射量を調整可能な紫外線リアクタと、
前記流通するバラスト水の紫外線透過率を取得する透過率取得手段と、
複数の運転モードから選択される1つの運転モードにより前記流量調整手段及び前記紫外線リアクタを制御する制御手段と、を備え、
前記複数の運転モードの各運転モードではそれぞれ、前記紫外線透過率ごとに前記処理流量及び前記紫外線照射量が規定されており、
前記制御手段は、前記浄化処理前に前記透過率取得手段から前記紫外線透過率を取得して、当該紫外線透過率を判定基準として適切な運転モードを判定
し、
前記制御手段はさらに、バラスト動作に費やすことのできる許容処理時間を取得するとともに、当該許容処理時間と、前記透過率取得手段から取得した前記紫外線透過率における処理流量から算出される各運転モードの必要処理時間とを比較する、バラスト水処理装置。
【請求項4】
請求項1~
請求項3の何れかに記載のバラスト水処理装置であって、
前記複数の運転モードにはそれぞれ、処理後のバラスト水をバラストタンクに保持しておく必要のあるタンク保持時間が設定されており、
前記制御手段は、前記紫外線リアクタによる処理後のバラスト水をバラストタンクに貯留してから排出するまでの許容排出時間を取得するとともに、当該許容排出時間と前記タンク保持時間とを比較する、バラスト水処理装置。
【請求項5】
流通するバラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置であって、
前記流通するバラスト水の処理流量を調整する流量調整手段と、
紫外線照射量を調整可能な紫外線リアクタと、
前記流通するバラスト水の紫外線透過率を取得する透過率取得手段と、
複数の運転モードから選択される1つの運転モードにより前記流量調整手段及び前記紫外線リアクタを制御する制御手段と、を備え、
前記複数の運転モードの各運転モードではそれぞれ、前記紫外線透過率ごとに前記処理流量及び前記紫外線照射量が規定されて
いるとともに、処理後のバラスト水をバラストタンクに保持しておく必要のあるタンク保持時間が設定されており、
前記制御手段は、前記浄化処理前に前記透過率取得手段から前記紫外線透過率を取得して、当該紫外線透過率を判定基準として適切な運転モードを判定
し、
前記制御手段はさらに、前記紫外線リアクタによる処理後のバラスト水をバラストタンクに貯留してから排出するまでの許容排出時間を取得するとともに、当該許容排出時間と前記タンク保持時間とを比較する、バラスト水処理装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のバラスト水処理装置であって、
前記複数の運転モードは、第1モードと第2モードとを備え、
前記紫外線透過率が所定値以上の場合の前記処理流量は、前記第2モードよりも前記第1モードが多くなり、
前記紫外線透過率が前記所定値未満の場合の前記処理流量は、前記第1モードよりも前記第2モードが多くなるよう設定されている、バラスト水処理装置。
【請求項7】
請求項1
~請求項6の何れかに記載のバラスト水処理装置であって、
前記透過率取得手段は、前記紫外線透過率を測定する透過率測定センサであり、
前記制御手段は、前記透過率測定センサから前記紫外線透過率を取得する、バラスト水処理装置。
【請求項8】
請求項1
~請求項7の何れかに記載のバラスト水処理装置であって、
前記透過率取得手段は、バラスト水をバラストタンクに貯留することなく排出する予備運転において前記紫外線透過率を取得し、
前記制御手段は、前記透過率取得手段から前記紫外線透過率を取得する、バラスト水処理装置。
【請求項9】
請求項1~
請求項8の何れかに記載のバラスト水処理装置であって、
前記複数の運転モードの何れでも制御可能な場合には、消費電力の少ない運転モードを適切な運転モードと判定する、バラスト水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線リアクタを備えたバラスト水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンカー等の船舶は、積み荷の原油等を降ろした後、再度目的地に向けて航行する際、航行中の船舶のバランスを取るため、通常、バラスト水と呼ばれる水をバラストタンク内に貯留する。このような船舶には、バラスト水の注排水による生態系の破壊を防ぐため、バラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置が設けられている。
【0003】
バラスト水処理装置の一種として、紫外線リアクタを備え、バラスト水中の微生物を紫外線を照射することによって殺滅するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなバラスト水処理装置を用いてバラスト水を浄化処理して貯留し、その後排出する場合、国際海事機関(IMO)やアメリカ沿岸警備隊(USCG)等の機関が定める排出規制を遵守する必要がある。そして、このような排出規制を実効あらしめるため、バラスト水処理装置は、排出規制を遵守した仕様にて所定の機関による型式承認を得なければならない。ただし、同一の排出規制(例えば、USCGの排出規制)についての型式承認を行う承認機関は複数存在しており、同一の排出規制について複数の仕様(運転モード)で型式承認を得ることも可能である。
【0006】
しかしながら、バラスト水処理装置が型式承認を得た複数の運転モードで運転可能な場合であっても、状況に応じて適切な運転モードを選択することは難しかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、複数の運転モードを有する場合に、適切な運転モードを判定することの可能なバラスト水処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、流通するバラスト水を浄化処理するバラスト水処理装置であって、前記流通するバラスト水の処理流量を調整する流量調整手段と、紫外線照射量を調整可能な紫外線リアクタと、前記流通するバラスト水の紫外線透過率を取得する透過率取得手段と、複数の運転モードから選択される1つの運転モードにより前記流量調整手段及び前記紫外線リアクタを制御する制御手段と、を備え、前記複数の運転モードの各運転モードではそれぞれ、前記紫外線透過率ごとに前記処理流量及び前記紫外線照射量が規定されており、前記制御手段は、前記浄化処理前に前記透過率取得手段から前記紫外線透過率を取得して、当該紫外線透過率を判定基準として適切な運転モードを判定する、バラスト水処理装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、バラスト水処理装置が複数の運転モードを備えている場合において、透過率取得手段が紫外線透過率を取得し、制御手段が当該紫外線透過率を取得して判定基準として用いることで、適切な運転モードを判定することができる。そして、判定された適切な運転モードをユーザに提示したり、制御手段が当該運転モードに自動で切り替えることで、状況に応じた適切な運転モードでバラスト水処理装置を運転することが可能となる。
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0011】
好ましくは、前記透過率取得手段は、前記紫外線透過率を測定する透過率測定センサであり、前記制御手段は、前記透過率測定センサから前記紫外線透過率を取得する。
【0012】
好ましくは、前記透過率取得手段は、過去の運転データを保持するとともに、当該過去の運転データから現在の紫外線透過率を事前予測し、前記制御手段は、前記予測した紫外線透過率を取得する。
【0013】
好ましくは、前記透過率取得手段は、バラスト水をバラストタンクに貯留することなく排出する予備運転において前記紫外線透過率を取得し、前記制御手段は、前記透過率取得手段から前記紫外線透過率を取得する。
【0014】
好ましくは、前記制御手段は、バラスト動作に費やすことのできる許容処理時間を取得するとともに、当該許容処理時間と、前記透過率取得手段から取得した前記紫外線透過率における処理流量から算出される各運転モードの必要処理時間とを比較する。
【0015】
好ましくは、前記複数の運転モードにはそれぞれ、処理後のバラスト水をバラストタンクに保持しておく必要のあるタンク保持時間が設定されており、前記制御手段は、前記紫外線リアクタによる処理後のバラスト水をバラストタンクに貯留してから排出するまでの許容排出時間を取得するとともに、当該許容排出時間と前記タンク保持時間とを比較する。
【0016】
好ましくは、前記複数の運転モードは、第1モードと第2モードとを備え、前記紫外線透過率が所定値以上の場合の前記処理流量は、前記第2モードよりも前記第1モードが多くなり、前記紫外線透過率が前記所定値未満の場合の前記処理流量は、前記第1モードよりも前記第2モードが多くなるよう設定されている。
【0017】
好ましくは、前記複数の運転モードの何れでも制御可能な場合には、消費電力の少ない運転モードを適切な運転モードと判定する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバラスト水処理装置10及びこれを船舶のバラスト装置1に導入した様子を示す概念図である。
【
図2】
図1のバラスト水処理装置10の主要構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1のバラスト水処理装置10が適切な運転モードを判定するアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図4】第1モードM1及び第2モードM2において規定される紫外線透過率と処理流量の関係を示すグラフである。
【
図5】
図1のバラスト装置1のバラスト動作時の流路を示す図である。
【
図6】
図1のバラスト装置1のデバラスト動作時の流路を示す図である。
【
図7】
図1のバラスト装置1の予備運転時の流路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0020】
1.バラスト装置1の構成
図1は、本発明の実施形態に係る液体処理装置としてのバラスト水処理装置10を、船舶のバラスト装置1に導入した様子を示す概略図である。本願のバラスト装置1は、バラストタンク2及びバラストポンプ3を備え、バラストポンプ3によりバラストタンク2に対してバラスト水の注排水を行うものである。なお、海水等の船外の水をシーチェストSC1から船内に取り込んで複数のバラストタンク2に注水を行う動作をバラスト動作、バラストタンク2に貯留されたバラスト水を船外排出口SC2から排水する動作をデバラスト動作と呼ぶ。また、本明細書における「バラスト水」について、バラストタンク2に導入(流入)される前又はバラストタンク2から排出(流出)された後に拘わらず、船内に取り込まれた水を全て「バラスト水」と表現する。また、船内に取り込むバラスト水には、海水、淡水、汽水等が含まれるものとする。
【0021】
図1に示すように、バラスト装置1は、各構成要素を接続してバラスト水を流通させるラインLa~ラインLeと、これらのライン上に設けられる開閉弁Va~開閉弁Vfとを備える。ここで、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0022】
各ラインの接続関係を具体的に説明すると、ラインLaは、シーチェストSC1とバラストポンプ3を接続するラインであり、開閉弁Vaを有する。ラインLb及びラインLcは、バラストポンプ3とバラストタンク2を接続するラインである。バラスト水処理装置10がバラストポンプ3とバラストタンク2の間に配置されるため、バラスト水処理装置10よりも上流側をラインLb、バラスト水処理装置10よりも下流側をラインLcとしている。ラインLbは、開閉弁Vbを有し、ラインLcは、開閉弁Vc及び開閉弁Vdを有する。ラインLa~ラインLcを合わせて、バラストラインとも称する。
【0023】
ラインLdは、一端が開閉弁Vaとバラストポンプ3の間の位置においてラインLaと接続され、他端が開閉弁Vcよりもバラストタンク2側においてラインLcと接続される。ラインLdには、開閉弁Veが設置される。ラインLdは、デバラスト動作時に使用されるラインであり、デバラストラインとも称する。ラインLeは、一端がバラスト水処理装置10と開閉弁Vcの間の位置においてラインLcと接続され、他端は船外排出口SC2と接続される。ラインLeには、開閉弁Vfが設置される。
【0024】
なお、上述したバラスト装置1の構成は、本発明に係るバラスト水処理装置10を導入する対象であるバラスト装置の一例を示したに過ぎず、以下に説明するバラスト水処理装置10は、任意の構成のバラスト装置に適用することが可能である。
【0025】
2.バラスト水処理装置10の構成
次に、バラスト水処理装置10の構成を説明する。バラスト水処理装置10は、船内に取り込むバラスト水及び船内から排出するバラスト水を処理してバラスト水中に含まれる微生物・異物の含有量を低減するために導入されるものである。本実施形態のバラスト水処理装置10は、
図1に示すように、バラストポンプ3とバラストタンク2(あるいは船外排出口SC2)の間に設けられる。ここで、バラスト水処理装置10の流路について、ラインLbと接続されるバラストポンプ3側の接続部を上流側接続部P1、ラインLcと接続されるバラストタンク2側の接続部を下流側接続部P2とする。
【0026】
本実施形態のバラスト水処理装置10は、浄化手段として、フィルタによりバラスト水を濾過処理する濾過装置11と、バラスト水に紫外線を照射して微生物を殺菌処理する紫外線リアクタ12とを備える。また、バラスト水処理装置10は、
図2に示すように、流量計13と、紫外線センサ14と、入力装置15と、透過率取得手段16と、制御手段17と、判定結果出力手段18とを備える。なお、濾過装置11は既知の任意の構成を適用することができ、また、濾過装置11を省略することもできる。
【0027】
加えて、バラスト水処理装置10は、
図1に示すように、各構成要素を接続してバラスト水を流通させる第1ラインL1~第5ラインL5と、これらに設置される開閉弁V1~V4と、流量調整手段としての流量調整弁FCVとを備える。
【0028】
第1ラインL1は、浄化手段(濾過装置11及び紫外線リアクタ12)をバイパスして上流側接続部P1と下流側接続部P2を接続するライン(バイパスライン)であり、開閉弁V1を有する。第2ラインL2は、第1ラインL1と濾過装置11とを接続するラインであり、開閉弁V2を有する。第3ラインL3は、濾過装置11と紫外線リアクタ12とを接続するラインであり、開閉弁V3を有する。また、第4ラインL4は、一端が第1ラインL1の第2ラインL2との接続位置よりも下流側の位置であって開閉弁V1よりは上流側の位置に接続され、他端が第3ラインL3の開閉弁V3よりも下流側の位置に接続される。第4ラインL4は開閉弁V4を有する。第5ラインL5は、一端が紫外線リアクタ12に接続され、他端が第1ラインL1の開閉弁V1よりも下流側の位置に接続される。第5ラインL5には、流量計13と、開度調整の可能な流量調整弁FCVとが設けられる(
図2も参照)。
【0029】
紫外線リアクタ12は、図示しない処理槽の内部に複数本の紫外線ランプ12a(
図2参照)が配置されて構成される。紫外線リアクタ12は、処理槽内を流通するバラスト水に対し、紫外線ランプ12aにより紫外線を照射して微生物を殺菌処理するものである。本実施形態の紫外線リアクタ12は、各紫外線ランプ12aのオンオフ及び/又は供給する電力を制御することで、バラスト水へ照射する紫外線の強度を調整可能となっている。
【0030】
流量計13は、紫外線リアクタ12を流通するバラスト水の流量を計測するものである。本実施形態において、流量計13は第5ラインL5に設けられているが、紫外線リアクタ12による殺滅処理を行う際のバラスト水の流路上であれば、他の位置に設けられていても良い。流量計13及び上述した流量調整弁FCVの開度調整により、バラスト水処理装置10を流通するバラスト水の流量(以下、処理流量と呼ぶ)を調整することが可能となる。
【0031】
紫外線センサ14は、紫外線リアクタ12に設置され、紫外線ランプ12aからの紫外線の照度を、バラスト水を介して測定するものである。流量計13により計測されるバラスト水の流量と紫外線センサ14により計測される紫外線の照度とから、単位流量あたりの紫外線の照射量である紫外線照射量が算出される。
【0032】
入力装置15は、船員等のユーザから各種入力を受け付ける装置である。入力装置15の例としては、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に接続されたマウス、キーボードあるいはタッチパネルによる入力が可能なディスプレイ、さらには、音声入力装置等が挙げられる。ただし、ユーザから各種入力を受け取ることが可能であれば、任意のデバイスを用いることができる。ここで、ユーザから受け付ける各種入力とは、船舶の現在位置の情報、貯留する必要のあるバラスト水の総量の情報、船舶の航行先(目的地)の情報、船舶が入港してから出港するまでの時間の情報、停泊中の船舶が出港してから航行先に入港するまでの時間の情報等である。
【0033】
なお、船舶が入港してから出港するまでの時間の情報からは、バラスト動作に費やすことのできる許容処理時間が算出される。また、停泊中の船舶が出港してから航行先に入港するまでの時間からは、処理後のバラスト水をバラストタンクに貯留してから排出するまでの許容排出時間が算出される。入力装置15は、バラスト装置1の動作を制御するバラストコントローラに設置されることが好適である。
【0034】
透過率取得手段16は、紫外線リアクタ12を流通するバラスト水の紫外線透過率を取得するものである。本実施形態において、透過率取得手段16はバラスト水の紫外線透過率を計測可能な透過率測定センサである。透過率測定センサは、バラスト水処理装置10におけるバラスト水の流路上に設ける必要はなく、船舶における海水の取り込みが容易な任意の位置に設置される。
【0035】
制御手段17は、上述した開閉弁Va~Vf、開閉弁V1~V4及び流量調整弁FCVの開閉を制御することにより、バラスト水処理装置10内を流通するバラスト水の流量を調整する。また、制御手段17は、紫外線リアクタ12の紫外線ランプ12aの出力を制御することにより、バラスト水への紫外線照射量を調整する。流量調整弁FCVの開閉制御によるバラスト水の流量の調整及び紫外線リアクタ12の出力制御によるバラスト水への紫外線照射量の調整は、後述する第1モードM1~第3モードM3から選択される1つの運転モードにより行われる。制御手段17は、具体的には、
図2に示すように、情報取得部70と、記憶部71と、判定部72と、動作制御部73とを備える。
【0036】
情報取得部70は、流量計13から流通するバラスト水の流量を取得し、入力装置15に入力された船員からの各種入力を取得し、透過率取得手段16からバラスト水の紫外線透過率を取得する。
【0037】
記憶部71は、各種データを記憶する機能を有する。記憶部71は、第1モードM1~第3モードM3それぞれにおいて紫外線透過率ごとに規定される処理流量及び紫外線照射量を記憶する。また、記憶部71は、後述する第1モードM1のタンク保持時間T1及び第2モードM2のタンク保持時間T2を記憶する。
【0038】
判定部72は、情報取得部70が取得した情報と記憶部71に記憶された情報とから、適切な運転モードを判定する。
【0039】
動作制御部73は、第1モードM1~第3モードM3の何れかの運転モードにより、流量調整弁FCVの開度及び紫外線リアクタ12の紫外線ランプ12aの強度を制御する。これにより、バラスト水の処理流量とバラスト水への紫外線照射量とが調整される。
【0040】
なお、上記構成の制御手段17は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段17の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段17の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0041】
判定結果出力手段18は、制御手段17の判定部72が判定した適切な運転モードをユーザに提示するためのものである。判定結果出力手段18としては、例えばディスプレイ等の表示装置が用いられる。入力装置15がディスプレイを備える場合は、これを共用することも好適である。
【0042】
3.バラスト水処理装置10の動作
本実施形態のバラスト水処理装置10は、第1モードM1~第3モードM3の3つの運転モードを備えている。バラスト水処理装置10は、バラスト動作において実行されるバラスト水の浄化処理の際、まず、モード判定工程によって適切な運転モードを判定した後、判定した運転モードにより浄化工程を実行する。
【0043】
各運転モードでは、紫外線透過率ごとに処理流量及び紫外線照射量が規定されており、紫外線透過率ごとの処理流量及び紫外線照射量は記憶部71に記憶されている。制御手段17は、各運転モードで規定される処理流量及び紫外線照射量で浄化処理が行われるよう、流量調整弁FCVの開度及び紫外線リアクタ12の紫外線ランプ12aの強度を制御する。なお、いずれの運転モードでも、処理流量は、紫外線透過率が高いほど多くなるよう設定されている。これは、同じ紫外線ランプ12aの出力であっても紫外線透過率が高いほど紫外線照射量が多くなるからである。
【0044】
<各運転モードについて>
ところで、本実施形態において、第1モードM1及び第2モードM2は、アメリカ沿岸警備隊(USCG)が定める排出規制を遵守した運転モードである。すなわち、第1モードM1及び第2モードM2は、いずれもアメリカ沿岸警備隊(USCG)が定める機関により型式承認を得た運転モードである。一方、第3モードM3は、国際海事機関(IMO)が定める排出規制を遵守した運転モードであり、国際海事機関(IMO)が定める機関により型式承認を得た運転モードである。したがって、船舶の航行先がアメリカ合衆国又はその近海(以下、海域Aと呼ぶ)である場合は第1モードM1又は第2モードM2で運転し、船舶の航行先が海域Aではない場合は第3モードM3で運転することで、各排出規制が遵守される。
【0045】
また、アメリカ沿岸警備隊(USCG)による排出規制では、一度貯留したバラスト水は、所定時間が経過するまで排出してはならないと定められており、排出してはならない時間は「タンク保持時間」あるいは「ホールディングタイム」と呼ばれている。したがって、第1モードM1及び第2モードM2では、処理後のバラスト水をバラストタンク2に貯留してから排出するまでの時間(以下、許容排出時間と呼ぶ)を所定のタンク保持時間より長くとらなければならない。そして、許容排出時間がタンク保持時間よりも短い場合には、目的地に入港してもタンク保持時間が経過するまではバラスト水を排出することができない。第1モードM1のタンク保持時間T1及び第2モードM2のタンク保持時間T2は、記憶部71に記憶されている。本実施形態において、第1モードM1のタンク保持時間T1は、第2モードM2のタンク保持時間T2よりも長い(T1>T2)。
【0046】
加えて、
図4に示すように、第1モードM1と第2モードM2を比較すると、紫外線透過率が所定値Ux以上の場合の処理流量は、第2モードM2よりも第1モードM1が多くなり、紫外線透過率が所定値Ux未満の場合の処理流量は、第1モードM1よりも第2モードM2が多くなるよう設定されている。すなわち、紫外線透過率の所定値Uxは、第1モードM1と第2モードM2の処理流量の大小が切り替わる値である。さらに、第2モードM2の処理可能な紫外線透過率の下限透過率U2は、第1モードM1の処理可能な紫外線透過率の下限透過率U1よりも小さくなっている。したがって、紫外線透過率が第1モードM1の下限透過率U1以下の場合は、第2モードM2のみバラスト水の浄化処理が可能となる。
【0047】
なお、第1モードM1の消費電力は、第2モードM2の消費電力よりも少なくなっている。
【0048】
以下、
図3を参照して、適切な運転モードを判定するアルゴリズムの一例を説明する。モード判定工程は、船員等がモード判定を要求したタイミング、あるいは船舶が港に入港したタイミングで開始される。
【0049】
<モード判定工程>
モード判定工程では、まず、ステップS1において、制御手段17の情報取得部70は、入力装置15に入力された船舶の次の航行先の情報を取得する。ここで、記憶部71には、航行先の港が海域Aに属するかどうかの情報が記憶されており、入力された船舶の航行先の情報と当該情報とから、判定部72は、航行先が海域Aに属するか否かを判定する。判定部72は、航行先が海域Aであれば、適切な運転モードは第3モードM3であると判定して、モード判定工程を終了する。航行先が海域A以外であれば、次のステップに進む。なお、渡航先が海域Aに属するかどうかを直接、入力装置15に入力させるよう構成することも可能である。
【0050】
次に、ステップS2において、情報取得部70は、透過率取得手段16から現在地における海水の紫外線透過率を取得する。判定部72は、取得した紫外線透過率が第2モードM2の下限透過率U2(
図4参照)未満であるかどうかを判定する。判定部72は、紫外線透過率が第2モードM2の下限透過率U2未満であれば、水質が悪すぎていずれの運転モードでも処理ができないと判定し、判定結果出力手段18によりその旨をユーザに報知する。また、ステップS3において、判定部72は、取得した紫外線透過率が第1モードM1の処理可能な紫外線透過率の下限透過率U1(
図4参照)未満であるかどうかを判定する。判定部72は、紫外線透過率が第1モードM1の下限透過率U1未満であれば第1モードM1では運転できないため(
図4参照)、適切な運転モードは第2モードM2であると判定して、モード判定工程を終了する。紫外線透過率が第1モードM1の下限透過率U1未満でなければ、次のステップに進む。
【0051】
次に、ステップS4において、情報取得部70は、入力装置15に入力された許容排出時間を取得する。また、情報取得部70は、第1モードM1のタンク保持時間T1(第2モードM2のタンク保持時間T2よりも長い)を記憶部71から読み出す。判定部72は、許容排出時間が第1モードM1のタンク保持時間T1未満の場合、つまり、第1モードM1では許容排出時間を超えてバラスト水を保持しなければならない場合は、適切な運転モードはタンク保持時間の短い第2モードM2であると判定して、モード判定工程を終了する。許容排出時間が第1モードM1のタンク保持時間T1よりも長い場合は、次のステップに進む。
【0052】
次に、ステップS5において、判定部72は、透過率取得手段16から取得した紫外線透過率と、第1モードM1と第2モードM2の処理流量の大小が切り替わる所定値Uxとを比較する。判定部72は、紫外線透過率が所定値Ux以上であれば、適切な運転モードはこの範囲において処理流量の多い第1モードM1であると判定して(
図4参照)、モード判定工程を終了する。紫外線透過率が所定値Ux未満であれば、次のステップに進む。
【0053】
次に、ステップS6において、情報取得部70は、入力装置15に入力された許容処理時間を取得する。判定部72は、透過率取得手段16から取得した紫外線透過率に対する第1モードM1及び第2モードM2の処理流量を記憶部71から読み出す。ここで、ステップS2及びステップS4を経てステップS5に進んだ場合の紫外線透過率はP1以上Px未満である。また、判定部72は、取得した単位時間あたりの処理流量と、貯留する必要のあるバラスト水の総量とから、第1モードM1における浄化処理に必要な必要処理時間t1及び第2モードM2における浄化処理に必要な必要処理時間t2を算出する。ここで、
図4に示すように、紫外線透過率が所定値Ux未満の場合の処理流量は、第1モードM1よりも第2モードM2が多いことから、第2モードM2における必要処理時間t2は第1モードM1における必要処理時間t1よりも短い(t1>t2)。そして、許容処理時間が第2モードM2の必要処理時間t2未満である場合は、いずれの運転モードでも許容処理時間内に浄化処理を完了できない。この場合は、その旨を入力装置15によりユーザから処理時間が短いモード(第2モードM2)を選択するか消費電力の少ないモード(第1モードM1)を選択するかの指示を受け付け、ユーザの指示する運転モードを適切な動作モードと判定する。
【0054】
一方、次のステップS7において、許容処理時間が第2モードM2における必要処理時間t2以上であって且つ第1モードM1における必要処理時間t1未満である場合は、第2モードM2でのみ許容処理時間内に浄化処理を完了できるため、最適な運転モードは第2モードM2をであると判定して、モード判定工程を終了する。許容処理時間が第1モードM1における必要処理時間t1以上である場合は、いずれの運転モードでも許容処理時間内に浄化処理を完了できるため、最適な運転モードは消費電力の少ない第1モードM1であると判定する。
【0055】
上述したモード判定工程のステップS1~S7によって何れかのモードが適切な運転モードであると判定された後は、制御手段17は判定された適切な運転モードを判定結果出力手段18によって船員等のユーザに提示する。ユーザは、判定結果出力手段18に提示された判定結果を参考にして、実際にどの運転モードでバラスト動作を行うかを選択し、入力装置15により実行する動作モードを入力する。制御手段17の動作制御部73は、入力された運転モードによって、以下に示すバラスト動作を開始する。なお、判定された適切な運転モードを表示手段に表示させることなく、自動的に判定された運転モードを選択し、バラスト動作を開始するよう構成しても良い。
【0056】
<浄化工程>
次に、判定した運転モードによる浄化工程について説明する。なお、浄化工程の各動作は制御手段17により制御されるが、一部又は全部の動作を、船員により手動に行うことも可能である。
【0057】
図5は、バラスト装置1によるバラスト動作時のバラスト水の流路を示す図である。太線で示されるラインLa~ラインLcがバラスト水の流れる流路であり、この動作時は、バラスト装置1の開閉弁Va~Vdが開かれ、その他の開閉弁Ve,Vfが閉じられる。このとき、バラスト水処理装置10においては、制御手段17の動作制御部73が、開閉弁V2,V3及び流量調整弁FCVを開くとともに、開閉弁V1,V4を閉じる制御を行う。これにより、バラスト水は第1ラインL1の一部、第2ラインL2、第3ラインL3及び第5ラインL5を流通し、濾過装置11及び紫外線リアクタ12を流通する。この際、動作制御部73は、これら濾過装置11及び紫外線リアクタ12の起動命令も出力する。動作制御部73は、流量調整弁FCVの開度と紫外線ランプ12aの強度を制御することで、バラスト水の処理流量とバラスト水への紫外線照射量とを、モード判定工程において選択された運転モードで規定された数値となるよう調整する。このような制御により、バラスト水は、濾過装置11及び紫外線リアクタ12を流通することで浄化され、バラストタンク2に貯留される。
【0058】
なお、
図6は、バラスト装置1のデバラスト動作時の流路を示す図である。太線で示されるラインLaの一部、ラインLb、ラインLcの一部、ラインLd、ラインLeがデバラスト動作時にバラスト水が流れる流路であり、この動作時には、開閉弁Vb,Vd~Vfが開かれ、その他の開閉弁Va,Vcが閉じられる。このとき、バラスト水処理装置10においては、制御手段17の動作制御部73が、開閉弁V4及び流量調整弁FCVを開くとともに、開閉弁V1~V3を閉じる制御を行う。これにより、バラスト水は第1ラインL1の一部、第4ラインL4、第3ラインL3の一部及び第5ラインL5を流通し、濾過装置11をバイパスし、紫外線リアクタ12のみを流通する。また、動作制御部73は、紫外線リアクタ12の起動命令も出力する。バラストタンク2に貯留されていたバラスト水を紫外線リアクタ12に流通させることにより、貯留中に繁殖した微生物・異物を浄化することが可能となる。なお、船外へ排出するバラスト水には濾過装置11による濾過処理を行わないのは、バラストタンク2内のバラスト水は、バラスト動作時に一度濾過処理を行っているためである。
【0059】
4.作用効果
以上のように、本実施形態のバラスト水処理装置10によれば、複数の運転モードを備えていることで、海域又は状況に応じて適切な浄化処理を行うことができる。具体的には、本実施形態のバラスト水処理装置10は透過率取得手段16を備えており、透過率取得手段16により紫外線透過率を取得して制御手段17の判定部72による判定基準として用いることで、バラスト動作において適切な運転モードを判定することができる。
【0060】
例えば、制御手段17の情報取得部70は、透過率取得手段16から現在地における海水の紫外線透過率を取得し、判定部72は、取得した紫外線透過率が第1モードM1の処理可能な紫外線透過率の下限透過率U1(
図4参照)未満であるかどうかを判定する。これにより、第1モードM1では処理することのできない紫外線透過率である場合に適切な動作モードが第2モードM2であると判定することができる(モード判定工程のステップS2参照)。また、例えば、判定部72が紫外線透過率と第1モードM1と第2モードM2の処理流量の大小が切り替わる所定値Uxとを比較する。これにより、第1モードM1と第2モードM2のうち処理流量の多い運転モードを適切な運転モードであると判定することができる(モード判定工程のステップS4参照)。なお、透過率取得手段16として透過率測定センサを備えていれば、バラスト水処理装置10の運転開始前に予め適切な運転モードの判定を行うことができる。
【0061】
加えて、制御手段17の情報取得部70は、入力装置15からユーザの入力した許容処理時間を取得するとともに、判定部72は、当該許容処理時間と、透過率取得手段16から取得した紫外線透過率における処理流量から算出される第1モードM1及び第2モードM2の必要処理時間t1,t2とを比較する。これにより、許容処理時間内にバラスト動作を完了させることの可能な動作モードの判定が可能である(モード判定工程のステップS5参照)。また、この際、いずれの運転モードでも許容処理時間内にバラスト動作を完了させることが可能である場合に、最適な運転モードを消費電力の少ない第1モードM1であると判定すれば、状況に応じて消費電力を低減することも可能となる。
【0062】
また、制御手段17の情報取得部70がバラスト水をバラストタンク2に貯留してから排出するまでの許容排出時間を取得するとともに、判定部72が、当該許容排出時間と第1モードM1のタンク保持時間T1及び第2モードM2のタンク保持時間T2(T1>T2)とを比較することで、許容排出時間内にバラスト水を排出して荷役を開始することの可能な動作モードの判定が可能となっている(モード判定工程のステップS3参照)。
【0063】
5.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0064】
上記実施形態では、バラスト水の透過率を取得する透過率取得手段16として、紫外線リアクタ12とは別の箇所に配置される透過率測定センサが用いられていた。しかしながら、透過率取得手段16として透過率測定センサを設置する代わりに、透過率取得手段16を制御手段17の機能として構成することも可能である。具体的には、制御手段17は、記憶部71に過去の運転データを保持しておき、当該過去の運転データと、GPS装置等によって取得される船舶の現在位置とから現在の紫外線透過率を事前予測することが可能である。ここで、記憶部71が保存する運転データとは、過去のバラスト水処理装置10の運転時の船舶の位置情報と、紫外線ランプ12aの強度と、紫外線センサ14により計測された紫外線ランプ12aが発する紫外線の照度とを対応させたものである。過去に航行した海域(あるいは港)ごとに、紫外線ランプ12aの強度とバラスト水を介した紫外線ランプ12aの照度とからバラスト水の透過率を算出しておくことで、これに基づいて船舶の現在位置から紫外線透過率を事前予測することが可能となる。なお、記憶部71が保存する運転データとして、バラスト水処理装置10のメーカや船舶のオーナ等が管理している複数の船舶が取得した紫外線透過率と位置情報を利用することも可能である。
【0065】
また、透過率取得手段16を制御手段17の機能として構成する例として、バラスト水をバラストタンク2に貯留することなく排出する予備運転(
図7参照)において制御手段17に紫外線透過率を算出させることも可能である。具体的には、予備運転において紫外線ランプ12aを点灯させるとともに、紫外線ランプ12aの強度を紫外線センサ14により計測することで、紫外線ランプ12aの強度と紫外線センサ14により計測された紫外線の照度とから、制御手段17に紫外線透過率を算出させることが可能となる。
【0066】
上記実施形態では、
図3に示すように、モード判定工程は、ステップS1~ステップS7の7つのステップを有していた。しかしながら、モード判定工程は、これらのステップS1~ステップS7のうち、1つ以上のステップを有していなくても良い。例えば、第1モードM1及び第2モードM2の処理可能な紫外線透過率の下限がほぼ同一であれば、ステップS5を有していなくても良い。また、ステップS1~ステップS7のうち、1つのステップのみを有していても良い。
【0067】
また、例えば、バラスト水を貯留してから排出するまでの時間が常に長い場合、すなわち1回の航行距離が常に長い場合には、第1モードM1のタンク保持時間T1及び第2モードM2のタンク保持時間T2が常に許容排出時間よりも小さくなる。したがって、モード判定工程は、ステップS3を有していなくても良い。加えて、上記実施形態の第1モードM1及び第2モードM2にはタンク保持時間T1,T2が設定されていたが、第1モードM1及び第2モードM2にタンク保持時間が設定されていない場合にも、ステップS3は不要である。さらに、許容排出時間の条件の優先順位が低い場合は、まずステップS6,S7の許容処理時間の判定を行い、その後、ステップS4の許容排出時間の判定を行うことも可能である。
【0068】
上記実施形態では、許容排出時間の条件を満たすこと及び許容処理時間の条件を満たすことを、消費電力の条件よりも優先していた。しかしながら、許容処理時間及び許容排出時間内に動作を終わらせるよりも消費電力の低減を優先する場合には、ステップS4及びステップS6,S7にかかわらず、消費電力が少ない運転モードは第1モードM1である旨を判定結果出力手段18に出力し、ユーザに提示しても良い。
【0069】
上記実施形態では、第1モードM1のタンク保持時間T1は、第2モードM2のタンク保持時間T2よりも長かったが(T1>T2)、第1モードM1のタンク保持時間T1が第2モードM2のタンク保持時間T2よりも短いことも考えられる(T1<T2)。この場合は、上記ステップS4において、許容排出時間がT2未満であれば第1モードM1が適切な運転モードであると判定することが好ましい。一般化すると、ステップS4において制御手段17は、第1モードM1のタンク保持時間T1と第2モードM2のタンク保持時間T2のうち長い方のタンク保持時間と許容排出時間を比較し、長い方のタンク保持時間よりも許容排出時間が短ければ、タンク保持時間の短い運転モードを適切な運転モードと判定するのが好適である。
【符号の説明】
【0070】
1 :バラスト装置
2 :バラストタンク
3 :バラストポンプ
4 :制御手段
10 :バラスト水処理装置
11 :濾過装置
12 :紫外線リアクタ
12a :紫外線ランプ
13 :流量計
14 :紫外線センサ
15 :入力装置
16 :透過率取得手段
17 :制御手段
18 :判定結果出力手段
70 :情報取得部
71 :記憶部
72 :判定部
73 :動作制御部
A :海域
FCV :流量調整弁
L1 :第1ライン
L2 :第2ライン
L3 :第3ライン
L4 :第4ライン
L5 :第5ライン
La~Le :ライン
M1 :第1モード
M2 :第2モード
M3 :第3モード
P1 :上流側接続部
P2 :下流側接続部
S1~S7 :ステップ
SC1 :シーチェスト
SC2 :船外排出口
T1,T2 :タンク保持時間
t1,t2 :必要処理時間
U1,U2 :下限透過率
Ux :所定透過率
V1~V4 :開閉弁
Va~Vf :開閉弁