(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】取付具および取付具の取付方法
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
E04D13/00 K
(21)【出願番号】P 2020147291
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤家 充朗
(72)【発明者】
【氏名】桐林 亨
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-092551(JP,A)
【文献】特開2008-231914(JP,A)
【文献】特開平11-131710(JP,A)
【文献】特開2017-014882(JP,A)
【文献】国際公開第2012/061796(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
E04D 13/10
E04D 13/18
H02S 20/00-20/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根材および下地材を備える屋根に配置され、機器を保持する取付具であって、
前記取付具は、前記機器が取り付けられる取付板と、前記取付板を前記屋根に取り付けるための取付部材と、前記取付板と前記屋根材との間に設けられるプレート部材と、を備え、
前記プレート部材は、前記屋根材と係合するための
複数の係合部
を備
え、
複数の前記係合部は、前記プレート部材が前記屋根材に配置された場合に、複数の前記係合部が前記屋根材に形成される第1開口部の周縁に沿って配置されるように、構成される
取付具。
【請求項2】
屋根材および下地材を備える屋根に配置され、機器を保持する取付具であって、
前記取付具は、前記機器が取り付けられる取付板と、前記取付板を前記屋根に取り付けるための取付部材と、前記取付板と前記屋根材との間に設けられるプレート部材と、を備え、
前記プレート部材は、前記屋根材と係合するための
少なくとも1つの係合部
と、シーリング剤を充填するための注入口とを備える
取付具。
【請求項3】
前記プレート部材は、シーリング剤を充填するための注入口をさらに備える
請求項1に記載の取付具。
【請求項4】
屋根材および下地材を備える屋根に配置され、機器が取り付けられる取付板と、前記取付板を前記屋根に取り付けるためのボルトおよびナットを含む取付部材と、前記取付板と前記屋根材との間に設けられるプレート部材とを備える取付具の取付方法であって、
前記屋根材に第1開口部を形成する第1開口部形成工程と、
前記下地材に前記第1開口部よりも開口面積が小さい第2開口部を形成する第2開口部形成工程と、
前記屋根材と前記下地材との間に形成される空隙部に弾性部材を配置する弾性部材配置工程と、
前記第1開口部および前記第2開口部に前記ボルトを挿通させる取付部材挿通工程と、
前記プレート部材と前記屋根材の前記第1開口部の内面と前記下地材とにより囲まれる充填領域に前記プレート部材の注入口からシーリング剤を充填するシーリング剤充填工程と、
前記ナットにより、前記取付板を屋根に取り付ける取付工程とを含む
取付具の取付方法。
【請求項5】
前記ボルトの中心軸線に沿った前記充填領域の断面において、前記屋根材の第1開口部の内面と前記ボルトの周面との間の長さである第2距離は、前記屋根材の厚さである第1距離の半分の長さよりも長い
請求項4に記載の取付具の取付方法。
【請求項6】
前記プレート部材に防水性を有するシートを被覆する被覆工程をさらに含む
請求項4または5に記載の取付具の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、取付具および取付具の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋根に構造物を取り付けるための取付具が知られている。特許文献1は、屋根に太陽電池モジュールを取り付けるための取付具の一例を開示する。特許文献1に開示される技術では、屋根を構成する下地材およびカラーベストを貫通する取付孔に、取付ボルトを挿入することによって、取付具を屋根に取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記取付具では、取付孔内に防水剤を充填することで屋根から建築物内部への水の浸入を抑制する水密作用を得る。ところで、取付具および取付具に取り付けられた構造物に力が作用することにより、防水剤と取付具との間に水が浸入するほどの隙間が生じる場合がある。この場合、建物内へ漏水する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に関する取付具は、屋根材および下地材を備える屋根に配置され、機器を保持する取付具であって、前記取付具は、前記機器が取り付けられる取付板と、前記取付板を前記屋根に取り付けるための取付部材と、前記取付板と前記屋根材との間に設けられるプレート部材と、を備え、前記プレート部材は、前記屋根材と係合するための係合部を少なくとも1つ備える。
【0006】
上記取付具によれば、取付板は、プレート部材を介して屋根に取り付けられる。プレート部材は、プレート部材の係合部によって屋根材に係合する。これによって、プレート部材は、外からの力によって屋根材が変形する場合において、屋根材に対して位置ずれが生じ難くなる。このようにして、屋根材とプレート部材との間に隙間が形成されることが抑制され、水密作用が向上する。
【0007】
(2)上記(1)の取付具において、複数の前記係合部は、前記プレート部材が前記屋根材に配置された場合に、複数の前記係合部が前記屋根材に形成される第1開口部の周縁に沿って配置されるように、構成される。
【0008】
上記取付具によれば、プレート部材の位置を容易に位置決めできる。
(3)上記(1)または(2)の取付具において、前記プレート部材は、シーリング剤を充填するための注入口をさらに備える。
【0009】
上記取付具によれば、シーリング剤を容易に充填することができる。
(4)本発明に関する取付具の取付方法において、屋根材および下地材を備える屋根に配置され、機器が取り付けられる取付板と、前記取付板を前記屋根に取り付けるためのボルトおよびナットを含む取付部材と、前記取付板と前記屋根材との間に設けられるプレート部材とを備える取付具の取付方法であって、前記屋根材に第1開口部を形成する第1開口部形成工程と、前記下地材に前記第1開口部よりも開口面積が小さい第2開口部を形成する第2開口部形成工程と、前記屋根材と前記下地材との間に形成される空隙部に弾性部材を配置する弾性部材配置工程と、前記第1開口部および前記第2開口部に前記ボルトを挿通させる取付部材挿通工程と、前記プレート部材と前記屋根材の前記第1開口部の内面と前記下地材とにより囲まれる充填領域に前記プレート部材の注入口からシーリング剤を充填するシーリング剤充填工程と、前記ナットにより、前記取付板を屋根に取り付ける取付工程とを含む。
【0010】
上記取付具の取付方法によれば、シーリング剤の充填前に、空隙部に予め弾性部材を配置するため水密作用が向上する。
(5)上記(4)の取付具の取付方法において、前記ボルトの中心軸線に沿った前記充填領域の断面において、前記屋根材の第1開口部の内面と前記ボルトの周面との間の長さである第2距離は、前記屋根材の厚さである第1距離の半分の長さよりも長い。
【0011】
上記取付具の取付方法によれば、ボルトとシーリング剤との接触部分およびシーリング剤と屋根材の第1開口部の内面との接触部分に隙間が生じることを抑制できる。
(6)上記(4)または(5)の取付具の取付方法において、前記プレート部材に防水性を有するシートを被覆する被覆工程をさらに含む。
【0012】
上記取付具の取付方法によれば、水密作用がさらに向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の取付具および取付具の取付方法によれば、水密作用が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の取付具が取り付けられた屋根の図。
【
図5】取付具の取付方法における第1開口部形成工程を示す図。
【
図6】取付具の取付方法における第2開口部形成工程および弾性部材配置工程を示す図。
【
図7】取付具の取付方法における取付部材挿通工程を示す図。
【
図8】取付具の取付方法におけるシーリング剤充填工程を示す図。
【
図9】取付具の取付方法における取付工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
図1~
図9を参照して実施形態の取付具10および取付具10の取付方法について説明する。取付具10は、建築物の屋根100に取り付けられ、図示しない機器を屋根100上で保持する。取付具10は、機器の種類および機器の大きさに応じて建築物の屋根に1つまたは複数設けられる。建築物は、例えば平屋または複数の階により構成される住宅である。機器は、例えば太陽電池モジュールである。屋根100は、例えば水平方向に対して傾斜する勾配屋根である。
【0016】
取付具10を構成する主な構成要素は、機器を取り付けるための構成を備える取付板20、取付板20を屋根100に取り付けるための取付部材30、および、取付板20と屋根材110との間に設けられるプレート部材40である。
【0017】
取付板20は、例えば金属で構成される。取付板20は、取付板本体部21と、機器を支持するための支持部22と、取付部材30が挿通する挿通孔23とを備える。取付板本体部21は、第1主面21A、と第1主面21Aの反対側の面である第2主面21Bとを有する。第1主面21Aは、機器を保持する際に機器と対向する面である。第2主面21Bは、取付具10の取り付け時に屋根材110と対向する面である。
【0018】
支持部22は、図示しない機器取付部材を支持する。機器取付部材は、機器を取付板20に係合させるために、機器に設けられる部材である。機器取付部材は、機器から突出するように設けられる。機器取付部材は、レールのように構成されてもよいし、締結孔を有するブラケットのように構成されてもよい。支持部22は、第1主面21Aに設けられる。支持部22は、第1主面21A上において機器取付部材に応じた構成を備える。本実施形態では、支持部22は、機器取付部材がレール状に構成される場合に、レール状の機器取付部材を収容可能な収容空間22Aを備えるように構成される。別の例では、機器取付部材が締結孔を有するブラケットとして構成される場合、支持部22は、ブラケットの締結孔に挿通するボルトによってブラケットと支持部22とが締結されるように、構成される。
【0019】
挿通孔23は、取付板本体部21を貫通する。挿通孔23は、取付部材30を取り付けることに適した形状および開口面積で形成される。挿通孔23の直径は、ボルト31の直径よりも若干大きい。一例では、第1主面21Aまたは第2主面21Bにおける挿通孔23の形状は、直径8mm以上10mm以下の円形に構成される。
【0020】
取付部材30は、ボルト31、ナット32、および、係止具33を備える。取付部材30は、例えば金属で構成される。ボルト31は、長手方向において、取付板20、プレート部材40、屋根材110および下地材120が重なった積層部分の厚さよりも長くなるように構成される。取付部材30は、例えば、アンカー付きのボルトにより構成される。アンカー付きのボルトによれば、屋根100の片面側から取付板20およびプレート部材40を固定できる。具体的には、ボルト31の第1端部には、ナット32が取り付けられるようにねじが設けられる。ボルト31の第2端部には、係止具33が取り付けられる。係止具33は、本体33Aおよび回転中心軸33Bを備える。本体33Aは、回転中心軸33Bの中心軸線を中心にボルト31に対して回転可能に構成される。一例では、回転中心軸33Bは、本体33Aにおいて、本体33Aの長手方向における中間位置からずれたところに設けられる。このような取付部材30は次のように使用される。鉛直方向に斜めに延びる孔に、ボルト31を挿通する場合、ボルト31の長手方向と本体33Aの長手方向とを一致させた状態で、ボルト31および係止具33を孔に挿し込む。係止具33が孔から出ると、ボルト31をボルト31の中心軸心を中心に回転させて、回転中心軸33Bを水平に配置する。このとき、本体33Aの自重によって、本体33Aは、本体33Aの長手方向が鉛直方向に沿うよう回転し、本体33Aの長手方向がボルト31の長手方向と交差するようになる。このような状態で、ボルト31を挿し込んだ方向と反対方向に引くと、本体33Aが屋根100の裏面側に引っ掛かる。このようにして、ボルト31の第2端部を屋根100の裏面側に係合できる。他の例において、本体33Aは、本体33Aの長手方向とボルト31の長手方向とが交差するような位置で止まるように、付勢部材よって付勢されてもよい。ナット32と係止具33とが取付板20、プレート部材40、屋根材110および下地材120を挟み込むことにより、取付具10が屋根100に固定される。
【0021】
図3に示されるように、プレート部材40は、プレート本体部41と、注入口42、係合部43、および、挿通孔44を備える。プレート本体部41は、屋根材110に設けられる第1開口部111を覆う大きさに構成される。プレート本体部41は、第1主面41Aおよび第1主面41Aと反対側に形成される第2主面41Bを含む。プレート本体部41の第1主面41Aは、屋根100への取付具10の取り付け時に、取付板本体部21の第2主面21Bと接触する面である。プレート本体部41の第2主面41Bは、屋根100への取付具10の取り付け時に、屋根材110の第1主面110Aと接触する面である。プレート部材40を構成する材料は、例えば金属である。別の例では、プレート部材40を構成する材料は、ゴムである。プレート本体部41の形状は、例えば、円形または多角形である。本実施形態において、プレート本体部41の形状は、正六角形である。
【0022】
注入口42は、シーリング剤60を注入するために形成される。注入口42は、プレート本体部41を貫通する。注入口42の形状は、シーリング剤の注入に適した形状および開口面積に構成される。注入口42は、例えば、直径16mmの円形の孔に構成される。
【0023】
係合部43は、プレート部材40と屋根材110とを係合するための構成である。係合部43は、つめ43Aを備える。つめ43Aは係合面を有する。つめ43Aは、第1開口部111の内面111Aとつめ43Aの係合面とが接触することによって、プレート部材40と屋根材110とを係合するように、構成される。つめ43Aは、プレート本体部41の一部分を折り曲げることによって形成される。プレート本体部41において、折り曲げられた部分に対応する場所に、孔43Bが形成される。孔43Bは、プレート本体部41を貫通し、第1主面41Aと第2主面41Bとを繋ぐように構成される。
【0024】
係合部43は、屋根材110の第1開口部111の開口部分に応じて設けられる。係合部43はプレート本体部41に1つまたは複数形成される。本実施形態のプレート部材40は、3個の係合部43を有する。3個の係合部43は、プレート部材40を屋根材110に配置した場合において3個の係合部43が第1開口部111の周縁に沿うように、プレート本体部41に設けられる。複数の係合部43のうちの少なくとも2つは、第1開口部111の中心の点Pに対して、点対称の位置に設けられる。
【0025】
挿通孔44は、取付部材30のボルト31を挿通させる。挿通孔44は、第1主面41Aと第2主面41Bとを繋ぐようにプレート本体部41を貫通する。一例では、挿通孔44の形状および開口面積は、取付板20の挿通孔23の形状および開口面積と等しくなるように構成される。挿通孔44の内面は、ボルト31のねじに係合するように構成されている。具体的には、挿通孔44の内面には、ボルト31のねじに対応するねじが構成されている。
【0026】
屋根100は、図示しない住宅の内部空間を保護する。屋根100は、屋根材110および下地材120を備える。屋根材110および下地材120は、防水性を有する。屋根材110は、釘またはビスで下地材120に固定される。屋根材110と下地材120との間には、空隙部Sが形成される。屋根材110の第1開口部111における空隙部Sには、弾性部材50が配置される。弾性部材50は、断面形状により規定されるOリングまたはVリングである。弾性部材50は、例えばエラストマーにより構成される。エラストマーは、例えばゴムまたはクロロスルホン化ポリエチレンである。
【0027】
屋根材110は、複数の板部材によって構成される。板部材は、例えばスレートにより構成される。スレートは、天然スレートおよび化粧スレートの少なくとも1つを含む。屋根材110は、部分的に重なり合うように配置される。屋根材110の厚さは、例えば12mmである。屋根材110は、第1開口部111を備える。第1開口部111は、屋根材110の第1主面110Aと第2主面110Bとを繋ぐように、複数の板部材を貫通するように構成される。第1開口部111は、例えば、平面視で円形に構成される。
【0028】
下地材120は、屋根材110の下側に積層される。下地材120は、ルーフィング材および野地板を備える。下地材120は、第2開口部121を備える。下地材120の厚さは、例えば12mmである。第2開口部121は、下地材120の第1主面120Aと第2主面120Bとを繋ぐように、下地材120を貫通する。第2開口部121は、例えば、平面視で円形に構成される。
【0029】
第2開口部121は、ボルト31が挿通できる大きさに構成される。第1開口部111は、第2開口部121よりも大きいことが好ましい。一例では、第1開口部111の直径は、第2開口部121の直径よりも大きい。第1開口部111は、ボルト31が第2開口部121に挿通された状態において、第1開口部111の内面111Aとボルト31の周面との間に隙間が形成されるように、構成される。
【0030】
プレート部材40、屋根材110、下地材120、および、弾性部材50により、充填領域Fが形成される。充填領域Fは、ボルト31が挿通された状態でシーリング剤60が充填される領域である。シーリング剤60は、硬化することで防水性および気密性を有する。シーリング剤60は、例えばシリコンまたはウレタンを含む。
【0031】
充填領域Fは、次のように構成されることが好ましい。ボルト31の中心軸線に沿った充填領域Fの断面において、第2距離L2は、第1距離L1の半分の長さよりも長いことが好ましい。第1距離L1は、ボルト31の中心軸線に沿った充填領域Fの断面において、屋根材110の厚さと定義される。第2距離L2は、ボルト31の中心軸線に沿った充填領域Fの断面において、屋根材110の第1開口部111の内面111Aとボルト31の周面との間の長さと定義される。
図2に示されるボルト31の中心軸線に沿った断面において、屋根材110の厚さである第1距離L1と、屋根材110の第1開口部111の内面111Aとボルト31の周面との間の長さである第2距離L2とが略等しくなるように構成されてもよい。一例では、第1距離L1および第2距離L2は、11mm~12mmの範囲に設定される。
【0032】
図4~
図9を参照して、屋根100への取付具10の取付方法について説明する。屋根100への取付具10の取付方法は、複数の工程を含む。複数の工程は、第1開口部形成工程、第2開口部形成工程、弾性部材配置工程、取付部材挿通工程、シーリング剤充填工程、被覆工程、および、取付工程を含む。
【0033】
第1開口部形成工程では、
図4および
図5で示されるように屋根材110の所定の点Pを中心とする第1開口部111を屋根材110に形成する。第1開口部111の形成手段は任意の手段により実行される。任意の手段の一例は、電動工具に設けられたドリルの高速回転である。第1開口部111の形状は、円形である。
【0034】
第1開口部111は、屋根材110の第1主面110Aと第2主面110Bとを繋げる貫通孔として構成される。第1開口部111の直径は、取付部材30のボルト31の直径および屋根材110の厚さに応じて設定される。例えば、第1開口部111の直径は、ボルト31の中心軸線に沿った断面において、ボルト31の周面、プレート部材40の下面、下地材120の上面、および、屋根材110の第1開口部111の内面111Aによって囲まれる領域が正方形に形成されるように、設定される。第1開口部111の直径は、ボルト31の直径と屋根材110の厚さを2倍した値との合計値である。例えば、ボルト31の直径が8mmであり、屋根材の厚さが12mmである場合、第1開口部111の直径は、32mmである。
【0035】
図6に示される第2開口部形成工程では、第1開口部111と同様に所定の点Pを中心とする第2開口部121を下地材120に形成する。第2開口部121の形成手段は任意の手段により実行される。任意の手段の一例は、電動工具に設けられたドリルの高速回転である。第2開口部121の形状は、円形である。
【0036】
第2開口部121は、下地材120を貫通し、下地材120の第1主面120Aと第2主面120Bとを繋ぐように形成される。第2開口部121の直径は、取付部材30のボルト31の直径よりも大きく、係止具33が係止できる程度の大きさに設定される。一例では、第2開口部121の直径は、8mm以上10mm以下の値に設定される。第2開口部121の直径は、第1開口部111の直径よりも小さい。
【0037】
弾性部材配置工程では、屋根材110の第1開口部111において、屋根材110と下地材120との間に形成される空隙部Sに弾性部材50を配置する。弾性部材50は、空隙部Sと充填領域Fとを隔てる。本実施形態では、弾性部材50はゴムにより構成されるOリングである。Oリングの直径は、第1開口部111の直径よりも大きい。Oリングの断面の直径は、空隙部Sの高さ方向の長さに応じて設定される。弾性部材50は、屋根材110と下地材120とに挟まれることで断面形状が潰れるように変形する。
【0038】
図7に示される取付部材挿通工程では、取付部材30のボルト31を第1開口部111および第2開口部121に挿通する。ボルト31を第2開口部121に挿通させる際、係止具33をボルト31に沿うように、回転中心軸33Bを中心に本体33Aを回転させる。これによって、係止具33を取付板20の挿通孔23および下地材120の第2開口部121に通すことが可能となる。係止具33の挿通後、係止具33は回転中心軸33Bを中心に回転する。係止具33は、係止具33の中心軸線がボルト31の中心軸線と交差するように配置され、下地材120の第2主面120Bに接触する。このとき、係止具33が下地材120に引っ掛かり、ボルト31は、挿通方向と反対方向に引き戻されないように維持される。このようにして、ボルト31の挿通後、係止具33により、ボルト31が第2開口部121から抜けることが阻止される。ボルト31にプレート部材40を取り付けた状態で取付部材挿通工程を実施してもよい。また、取付部材挿通工程の実施後に、ボルト31にプレート部材40を取り付けてもよい。この際、第1開口部111の内面111Aとつめ43Aの係合面とが面同士で接触するように、プレート部材40を配置する。
【0039】
図8に示されるシーリング剤充填工程では、プレート部材40の注入口42から充填領域Fにシーリング剤60を注入する。シーリング剤60は、例えば図示しない容器から先端に向かうにつれて細くなるように構成されたチューブTを介して充填領域Fに充填される。別の例では、シーリング剤60は、図示しない容器から直接充填領域Fに充填される。シーリング剤60の充填は、例えば注入口42または係合部43の孔43Bからシーリング剤60が流出する程度まで実行される。
【0040】
被覆工程では、防水性を有するシート70をプレート部材40の第1主面41Aに被覆する。シート70は、例えばブチルテープである。シート70は、プレート部材40の第1主面41Aおよび屋根材110の第1主面110Aに接着される。シート70には、取付部材30を通すための孔が設けられる。
【0041】
取付工程では、ナット32により取付板20をプレート部材40に取り付ける。具体的には、取付板20をプレート部材40の上に配置した上で、ナット32をボルト31に取り付け、ナット32をスパナによって締め付ける。軸力が適度な大きさになるように、ボルト31の長手方向において、ナット32と係止具33との間の距離が調節される。これによって、取付板20、シート70、プレート部材40、屋根材110、および、下地材120が、ナット32と係止具33とによって適度な力で挟持される。
【0042】
本実施形態の取付具10の作用を説明する。
取付板20は、プレート部材40を介して屋根100に取り付けられる。外からの力によって屋根材110が変形すると、屋根材110に対してプレート部材40がずれて、プレート部材40と屋根材110との間に隙間が生じる虞がある。この点、本実施形態では、プレート部材40は、プレート部材40の係合部43によって屋根材110に係合する。これによって、プレート部材40は、外からの力によって屋根材110が変形する場合において、屋根材110に対して位置ずれが生じ難くなる。これによって、屋根材110とプレート部材40との間に隙間が形成されることが抑制される。
【0043】
さらに、本実施形態では、屋根材110には、シーリング剤60が充填される第1開口部111が設けられる。プレート部材40は、第1開口部111を覆うように構成される。プレート部材40の係合部43が第1開口部111に係合することによって、プレート部材40は、第1開口部111を覆うように位置決めされる。プレート部材40は、取付具10によって屋根材110に取り付けられ、第1開口部111にはシーリング剤60が充填される。プレート部材40は、屋根材110の第1開口部111に係合する。プレート部材40と第1開口部111との係合によって第1開口部111が変形し難くなる。このため、外からの力によって屋根材110が変形する場合でも、第1開口部111の形状の変形が抑制され、シーリング剤60の歪も抑制される。このようにして、屋根材110とプレート部材との間に隙間が形成されることが抑制され、水密作用が向上する。
【0044】
本実施形態の取付具10の効果について説明する。
(1)取付具10は、取付板20と、取付部材30と、取付板20と屋根材110との間に設けられるプレート部材40と、を備える。プレート部材40は、屋根材110と係合するための係合部43を少なくとも1つ備える。この構成によれば、取付板20は、プレート部材40を介して屋根100に取り付けられる。プレート部材40は、プレート部材40の係合部43によって屋根材110に係合する。これによって、プレート部材40は、外からの力によって屋根材110が変形する場合において、屋根材110に対して位置ずれが生じ難くなる。このようにして、屋根材110とプレート部材40との間に隙間が形成されることが抑制され、水密作用が向上する。
【0045】
(2)複数の係合部43は、プレート部材40が屋根材110に配置された場合に、複数の係合部43が屋根材110に形成される第1開口部111の周縁に沿って配置されるように、構成される。この構成によれば、プレート部材40の位置を容易に位置決めできる。また、屋根100に対して、プレート部材40の横滑りを抑制できる。
【0046】
(3)プレート部材40が屋根材110に配置された場合に、係合部43は、複数のつめ43Aの係合面と第1開口部111の内面111Aとが面同士で接触するように構成されてもよい。取付板20およびプレート部材40に水平方向に力が作用すると、取付板20およびプレート部材40の横ずれが生じることがある。従来このような横ずれを抑制するために、取付板20およびプレート部材40を横ずれ防止用のビスで固定していた。上記構成によれば、水平方向においてプレート部材40が屋根材110に係合するため、このようなビスを省略できる。また、取付具10の取り付けに必要な工数および資材を減らすことができ、さらに水が浸入する虞がある要素が減るため水密作用が向上する。
【0047】
(4)取付具10において、プレート部材40は、シーリング剤60を充填するための注入口42をさらに備える。この構成によれば、シーリング剤60を容易に充填することができる。
【0048】
(5)取付具10において、プレート部材40の形状は、平面視で六角形である。この構成によって、例えばスパナによりプレート部材40を回転させてボルト31に対する位置を変更する際に、プレート部材40を容易に回転させることができる。
【0049】
(6)弾性部材50は、屋根材110の第1開口部111において、屋根材110と下地材120との間の空隙部Sに配置される。弾性部材50によって空隙部Sが封鎖された充填領域Fが形成されることで水密作用が向上する。また、取付具10の上に機器が配置された場合に、機器の荷重をうけて弾性部材50が変形する。弾性部材50が空隙部Sに配置されることによって、屋根材110の変形が抑制される。これによって、屋根材110の変形に伴って充填領域Fにおいて屋根材110の第1開口部111の内面111Aとシーリング剤60との間に隙間が発生することを抑制できる。このため、水密作用を好適に維持できる。
【0050】
(7)第2開口部121の開口面積は、第1開口部111の開口面積よりも小さい。これによって、ボルト31の移動が第2開口部121によって規制される。このため、下地材120に作用する外力に対してボルト31が移動することが抑制されるため、水密作用が好適に維持される。
【0051】
(8)取付具10は、充填領域Fにおいて第1距離L1と第2距離L2の長さが略等しくなるように構成されてもよい。この場合、ボルト31の中心軸線に沿った断面において、ボルト31、プレート部材40、下地材120、および、屋根材110の第1開口部111の内面111Aによって囲まれる領域が正方形または正方形に近い長方形に形成される。このため、シーリング剤60が充填される容積が確保される。さらに、ボルト31に第1の外力が作用した場合にシーリング剤60が追従することで、特定の箇所に力が作用することが抑制される。これによって、シーリング剤60とボルト31との間、または、シーリング剤60と屋根材110の第1開口部111の内面111Aとの間に隙間が生じ難くなり、水密作用が維持される。
【0052】
(9)取付具の取付方法は、第1開口部形成工程と、第2開口部形成工程と、弾性部材配置工程と、取付部材挿通工程と、シーリング剤充填工程と、取付工程とを含む。弾性部材配置工程では、屋根材110の第1開口部111において、屋根材110と下地材120との間に形成される空隙部Sに弾性部材50を配置する。シーリング剤充填工程では、プレート部材40と屋根材110の第1開口部111の内面111Aと下地材120とにより囲まれる充填領域Fにプレート部材40の注入口42からシーリング剤60を充填する。この構成によれば、シーリング剤60の充填前に、空隙部Sに予め弾性部材50を配置する。空隙部Sに弾性部材50を配置しない場合では、充填領域Fにシーリング剤60を充填したときに空隙部Sが完全に封鎖されないことも生じ得るが、空隙部Sに予め弾性部材50を配置することによって空隙部Sが封鎖されなくなることを抑制できる。このようにして、水密作用を向上できる。
【0053】
(10)取付具10の取付方法において、ボルト31の中心軸線に沿った充填領域Fの断面において、屋根材110の第1開口部111の内面111Aとボルト31の周面との間の長さである第2距離L2は、屋根材110の厚さである第1距離L1の半分の長さよりも長いことが好ましい。
【0054】
第2距離L2が第1距離L1の半分の長さよりも短い場合、ボルト31が軸方向に引っ張られると、ボルト31とシーリング剤60との接触部分に作用するせん断力によってボルト31からシーリング剤60が剥離する虞がある。また、第2距離L2が第1距離L1の半分の長さよりも短い場合、ボルト31が軸方向に引っ張られると、ボルト31とともにシーリング剤60が引っ張られ、シーリング剤60と屋根材110の第1開口部111との接触部分に作用するせん断力によって第1開口部111からシーリング剤60が剥離する虞がある。この点、上記構成によれば、第2距離L2が第1距離L1の半分の長さよりも短い場合に比べて、ボルト31が軸方向に引っ張られる場合に、ボルト31の移動とともにシーリング剤60が十分に変形できるようになり、ボルト31とシーリング剤60との接触部分に作用するせん断力およびシーリング剤60と屋根材110の第1開口部111との接触部分に作用するせん断力が小さくなる。このような作用によって、これら接触部分において剥離が抑制される。このようにして、ボルト31とシーリング剤60との接触部分およびシーリング剤60と屋根材110の第1開口部111との接触部分に隙間が生じることを抑制できる。
【0055】
(11)取付具10の取付方法において、プレート部材40に防水性を有するシート70を被覆する被覆工程をさらに含む。この構成によれば、水密作用がさらに向上する。
(12)取付具10の取付方法において、シーリング剤60をプレート部材40の注入口42から第1開口部111に注入する。シーリング剤60を注入するための充填領域Fが形成されているため、シーリング剤60を過不足なく充填できる。
【0056】
(変形例)
実施形態に関する説明は本発明に従う取付具および取付具の取付方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う取付具および取付具の取付方法は実施形態以外に例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0057】
・シート70と同様の構成によって、取付部材30のナット32を別のシートによって覆うように構成されていてもよい。この例によれば、ナット32から水が浸入する虞を抑制でき、水密作用が向上する。
【0058】
・充填領域Fを構成するプレート本体部41の第2主面41B、第1開口部111の内面111A、下地材120の第1主面120A、および、充填領域Fに存在するボルト31の少なくとも1つに、シーリング剤60を馴染ませるためのプライマーを塗布してもよい。プライマーの塗布によりシーリング剤60のシーリング作用が向上することで、水密作用が向上する。
【符号の説明】
【0059】
10 …取付具
20 …取付板
21 …取付板本体部
21A…第1主面
21B…第2主面
22 …支持部
23 …挿通孔
30 …取付部材
31 …ボルト
32 …ナット
33 …係止具
33A…本体
33B…回転中心軸
40 …プレート部材
41 …プレート本体部
41A…第1主面
41B…第2主面
42 …注入口
43 …係合部
43A…つめ
43B…孔
44 …挿通孔
50 …弾性部材
60 …シーリング剤
70 …シート
100 …屋根
110 …屋根材
110A…第1主面
110B…第2主面
111 …第1開口部
111A…内面
120 …下地材
120A…第1主面
120B…第2主面
121 …第2開口部
F …充填領域
P …点
S …空隙部
T …チューブ
L1 …第1距離
L2 …第2距離