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特許7521346印刷装置、印刷装置の制御方法及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷装置の制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20240717BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A45D29/00
B41J3/407
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020156396
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2022050035
(43)【公開日】2022-03-30
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 弘孝
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180560(JP,A)
【文献】特開2012-120759(JP,A)
【文献】特開2019-162332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/00
B41J 3/407
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指の爪に印刷を施す印刷手段と、
印刷対象の指以外の他の指を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記印刷対象の指を判別する判別手段と、
前記印刷対象の指が配置される指載置面を有する印刷台と、を備え、
前記検出手段は、前記指載置面よりも下側の空間に配置され、当該空間に配置される前記他の指について、印刷を行うユーザから見た左右の位置と、上下の高さと、を検出可能に構成され、
前記判別手段は、
前記他の指が前記空間のうち左右いずれの側に位置するかに基づいて、当該他の指が左右いずれの手の指であるかを判別し、
前記他の指の上下の高さに基づいて、当該他の指が親指か親指以外の指かを判別し、
判別した前記他の指以外に含まれる指を、前記印刷対象の指と判別する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
ユーザ操作に基づいて、前記印刷対象の指を予め設定する設定手段と、
前記設定手段に設定された前記印刷対象の指と、前記判別手段に判別された前記印刷対象の指とが対応するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記設定手段に設定されたものと前記判別手段に判別されたものとで前記印刷対象の指が対応しないと判定された場合に、その旨をユーザに報知する報知手段と、
を備える、
ことを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷対象の指は複数である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷対象の指は、右手の親指以外の指と左手の親指か、もしくは左手の親指以外の指と右手の親指である、
ことを特徴とする請求項に記載の印刷装置。
【請求項5】
指の爪に印刷を施す印刷手段を備える印刷装置の制御方法であって、
前記印刷装置は、印刷対象の指以外の他の指を検出する検出手段を備え、
制御手段が、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記印刷対象の指を判別し、
前記検出手段は、前記印刷対象の指が配置される指載置面よりも下側の空間に配置され、当該空間に配置される前記他の指について、印刷を行うユーザから見た左右の位置と、上下の高さと、を検出し、
前記印刷対象の指を判別する工程は、前記他の指が前記空間のうち左右いずれの側に位置するかに基づいて、当該他の指が左右いずれの手の指であるかを判別し、
前記他の指の上下の高さに基づいて、当該他の指が親指か親指以外の指かを判別し、
判別した前記他の指以外に含まれる指を、前記印刷対象の指と判別する工程を含む、
ことを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項6】
指の爪に印刷を施す印刷手段を備える印刷装置の制御プログラムであって、
前記印刷装置は、印刷対象の指以外の他の指を検出する検出手段を備え、
前記検出手段は、前記印刷対象の指が配置される指載置面よりも下側の空間に配置され、当該空間に配置される前記他の指について、印刷を行うユーザから見た左右の位置と、上下の高さと、を検出可能に構成され、
コンピュータを、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記印刷対象の指を判別する判別手段として機能させ
前記判別手段は、
前記他の指が前記空間のうち左右いずれの側に位置するかに基づいて、当該他の指が左右いずれの手の指であるかを判別し、
前記他の指の上下の高さに基づいて、当該他の指が親指か親指以外の指かを判別し、
判別した前記他の指以外に含まれる指を、前記印刷対象の指と判別する、
ことを特徴とする印刷装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷装置の制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指の爪等にネイルデザインの印刷を行う印刷装置(ネイルプリント装置)が知られている。この種の印刷装置では、指を1本ずつ装置内にセットして印刷するものが主流であったが、近年では複数本の指の爪を一時に印刷できるものが開発されてきている。
例えば特許文献1に記載の印刷装置では、複数の指の各々が特定の位置に配置される指ホルダーを用い、印刷対象の指を特定して各指に対応したデザインを印刷できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2003-534083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の指の各々が特定の位置に配置されるように構成すると、装置の大型化を招来してしまう。
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、印刷対象の指を好適に判別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷装置は、
指の爪に印刷を施す印刷手段と、
印刷対象の指以外の他の指を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記印刷対象の指を判別する判別手段と、
前記印刷対象の指が配置される指載置面を有する印刷台と、を備え、
前記検出手段は、前記指載置面よりも下側の空間に配置され、当該空間に配置される前記他の指について、印刷を行うユーザから見た左右の位置と、上下の高さと、を検出可能に構成され、
前記判別手段は、
前記他の指が前記空間のうち左右いずれの側に位置するかに基づいて、当該他の指が左右いずれの手の指であるかを判別し、
前記他の指の上下の高さに基づいて、当該他の指が親指か親指以外の指かを判別し、
判別した前記他の指以外に含まれる指を、前記印刷対象の指と判別する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、印刷対象の指を好適に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る印刷装置の外観を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る印刷装置の模式的な側断面図である。
図3】実施形態に係る印刷装置の制御構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る印刷装置で印刷できる両手の印刷指の組み合わせを示す表である。
図5】実施形態に係る印刷処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る印刷指及び非印刷指の配置例を示す側面図であって、(a)が4本指印刷の場合のもの、(b)が親指印刷の場合のものである。
図7】実施形態に係る印刷指の配置例を示す平面図であって、(a)が左手の4本指と右手の親指を印刷する場合のもの、(b)が左手の親指と右手の4本指を印刷する場合のものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1から図7を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、その制御方法及び制御プログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。
【0009】
図1は、本実施形態に係る印刷装置1の外観を示す斜視図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後(手前と奥)は、印刷装置1に正対したユーザ(操作者)から見た方向であり、図1に示した向きをいうものとする。
【0010】
図1に示すように、印刷装置1は、略略長円柱状に形成された筐体2を有している。
筐体2の上面には、電源スイッチ22、LED表示部23、ディスプレイ24等が配置されている。
電源スイッチ22は、印刷装置1の電源をON/OFFする操作ボタンである。
LED表示部23は、印刷装置1の状態に対応した各色に発光することで、印刷装置1の状態を表示する。
ディスプレイ24は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELD)、その他のフラットディスプレイであり、各種情報が表示される。また、ディスプレイ24は、いわゆるタッチパネル31と一体的に構成されており、ユーザによるタッチ操作を受け付け可能となっている。
なお、ディスプレイ24は、筐体2から着脱可能なスマートフォンやタブレット等の携帯端末としてもよい。
【0011】
筐体2の前面には開閉板25が設けられている。開閉板25は、筐体2の前面下端に設けられたヒンジ(図示省略)を介して、起倒可能なように筐体2に連結されている。
開閉板25は、筐体2の前面に開口した上側開口部11及び下側開口部12を開閉させる。
【0012】
図2は、印刷装置1の模式的な側断面図である。
この図に示すように、上側開口部11及び下側開口部12は、筐体2前面の下側半部に開口しており、その間を隔てる平板状の印刷台13を介して上下に並設されている。
このうち、上側開口部11は、印刷対象の爪を有する指(印刷指U:図6参照)が挿入される空間である。つまり、上側開口部11(印刷台13の上面)には、親指を印刷する場合(以下、「親指印刷」という場合がある)には親指が、親指以外の4本指のいずれか少なくとも1本を印刷する場合(以下、「4本指印刷」という場合がある)には当該4本指が配置される。また、上側開口部11は、両手の指を無理なく挿入可能な幅に形成されている。
【0013】
下側開口部12には、同じ手の印刷指U以外の他の指(非印刷指N:図6参照)が配置される。つまり、下側開口部12(印刷台13よりも下側の空間)には、親指印刷の場合にはその手の親指以外の4本指が、4本指印刷の場合にはその手の親指が配置される。下側開口部12は、両手の非印刷指Nを無理なく挿入可能な幅及び高さに形成されている。
また、下側開口部12には、当該下側開口部12内に配置される非印刷指Nを検出する距離センサ45が設けられている。
【0014】
距離センサ45は、本発明に係る検出手段の一例である。この距離センサ45は、下側開口部12内の後部に配置され、下側開口部12内の非印刷指Nの存在(有無)とその位置(前後左右上下の位置)を検出可能なものであり、本実施形態ではフォトインタラプタ等の光学センサである。ただし、距離センサ45は、下側開口部12内の物体の存在(有無)とその位置を検出可能であって人体に影響のないものであれば、そのセンサ種別等は特に限定されない。
また、距離センサ45は、上下及び左右に複数個(少なくとも上下2段、左右2列の計4個)が配列されている(図2、6、7では一体的に図示)。これにより、下側開口部12内の非印刷指Nについて、その左右の位置と、上下の高さとを検出可能となっており、この検出結果に基づいて印刷指Uが判別される。具体的な判別手法については後述する。
【0015】
また、筐体2内のうち、上側開口部11よりも上側部分には、撮影部50と印刷ヘッド61とが配置されている。この上側部分は上側開口部11と連通している。
このうち、撮影部50は、筐体2の天面(上板の下面)のうち、印刷台13の上面に配置される印刷指Uの爪の上方に配置され、当該爪を撮影する。具体的に、撮影部50は、撮影装置51と照明装置52とを備えており(図3参照)、印刷台13の上面に配置された印刷指Uの爪を照明装置52で照明しつつ撮影装置51で撮影し、印刷指Uの爪の画像である爪画像(爪を含む指の画像)を取得する。
撮影装置51は、例えば、200万画素以上の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラである。また、照明装置52は、例えば白色LED等の照明灯であり、撮影装置51の左右両側に設けられている。
【0016】
印刷ヘッド61は、その下面のインク吐出部から微滴化したインクを印刷対象(爪)の被印刷面に吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のインクジェットヘッドである。印刷ヘッド61は、例えば、イエロー(Y;YELLOW)、マゼンタ(M;MAGENTA)、シアン(C;CYAN)のインクを吐出可能となっている。
【0017】
図3は、印刷装置1の制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、印刷装置1は、上述の距離センサ45や撮影部50のほか、操作部30、表示部40、印刷部60、制御装置80等とを備える。
【0018】
操作部30は、上述の電源スイッチ22やタッチパネル31を備えており、操作されたタッチパネル31の位置等に対応する信号を制御装置80に出力する。
表示部40は、上述のLED表示部23やディスプレイ24を備えており、制御装置80から入力される表示信号に基づいて、LED表示部23を各色で点灯させたり、ディスプレイ24に各種情報を表示したりする。
【0019】
印刷部60は、上述の印刷ヘッド61と、印刷ヘッド61を支持するヘッド移動機構62とを備えている。
ヘッド移動機構62は、筐体2内の上側半部の領域内で、印刷ヘッド61を前後左右の各方向に沿って移動可能に支持している。
【0020】
制御装置80は、図示しないCPU(Central Processing Unit)により構成される制御部81と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有して構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0021】
記憶部82には、印刷装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的に、記憶部82は、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されたプログラム記憶領域821を有する。制御装置80が、プログラム記憶領域821に格納されたプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して実行することによって、印刷装置1の各部が統括制御される。
【0022】
制御部81は、撮影制御部811、爪情報検出部812、印刷データ生成部813、印刷制御部814、表示制御部815、印刷指判別部816等の機能部を備えている。これら各機能部の機能は、制御部81のCPUと記憶部82に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0023】
撮影制御部811は、撮影部50の撮影装置51及び照明装置52を制御し、撮影装置51により、印刷台13上に配置された印刷指Uの爪画像を撮影させる。撮影部50により取得された爪画像の画像データは、記憶部82に記憶される。
【0024】
爪情報検出部812は、爪画像に基づいて、印刷指Uの爪についての爪情報を検出する。本実施形態の爪情報検出部812は、爪情報として、少なくとも爪の輪郭に囲われる爪領域を検出する。
【0025】
印刷データ生成部813は、ユーザが選択したネイルデザインを、爪情報検出部812が検出した爪の輪郭に適合するようにフィッティング(拡大縮小等)して、印刷データを生成する。
【0026】
印刷制御部814は、生成された印刷データに基づいて印刷部60に制御信号を出力し、爪に対してこの印刷データにしたがった印刷を施すように印刷部60の印刷ヘッド61及びヘッド移動機構62等を制御する。
【0027】
表示制御部815は、表示部40を制御し、印刷指Uを撮影した爪画像や、爪の輪郭の画像、印刷すべきネイルデザインの画像パターン、デザイン確認用の印刷プレビュー画像、ユーザに対する指示の画像等をディスプレイ24に表示させる。
【0028】
印刷指判別部816は、距離センサ45の検出結果に基づいて、印刷台13上の印刷指Uを判別する。より詳しくは、後述するように、印刷指判別部816は、距離センサ45の検出結果に基づいて、下側開口部12内の非印刷指Nを検出し、この非印刷指N以外の指(に含まれる指)を印刷指Uとして判別する。
【0029】
なお、ディスプレイ24(タッチパネル31)を筐体2から着脱可能な携帯端末とした場合には、当該携帯端末と装置本体(筐体2)との間で無線LANやBluetooth(登録商標)、Wi-Fi等による無線通信を行うように構成すればよい。ユーザは携帯端末を操作して各種の入力・設定等を行うことで、当該携帯端末と連携して印刷装置1を動作させることができる。
【0030】
続いて、印刷装置1による印刷方法(印刷処理)について説明する。
図4は、印刷装置1で印刷できる両手の印刷指Uの組み合わせを示す表であり、図5は、印刷処理の流れを示すフローチャートである。図6は、印刷指U及び非印刷指Nの配置例を示す側面図であって、(a)が4本指印刷の場合のもの、(b)が親指印刷の場合のものである。図7は、印刷指Uの配置例を示す平面図であって、(a)が左手の4本指と右手の親指を印刷する場合のもの、(b)が左手の親指と右手の4本指を印刷する場合のものである。
【0031】
本実施形態の印刷装置1では、一度に複数本の印刷指Uをセットして一時に印刷することができる。ただし、手を広げたときに親指の爪は他の4本指と異なり側方を向くことから、親指の爪を同じ手の他の4本指と一緒に印刷することはできない。同時に印刷可能な両手の印刷指Uの組み合わせは、一方の手の親指と他方の手の4本指、又は、両手の親指同士である。具体的には、図4に示すような両手の印刷指Uの組み合わせ(片手だけの場合や、1本だけの場合を含む)を一時に印刷可能となっている。
また、本実施形態の印刷処理では、印刷指Uの爪に予め下地塗料が塗られているものとする。この下地塗料は、白色又はこれに近い色のベースコートであり、デザインの印刷を行ったときにインクの発色を際立たせる。また、下地塗料を塗布することにより、爪周辺の皮膚の色(肌色等)との区別もつきやすくなり、爪画像から爪の領域をより正確に認識しやすくなる。
【0032】
図5に示すように、印刷処理が実行されると、まず制御部81は、ユーザ操作に基づいて、爪に印刷したいネイルデザインを選択する(ステップS1)。ユーザは、タッチパネル31等の操作により、所望のネイルデザインを選択する。
次に、制御部81は、ユーザ操作に基づいて、必要に応じて位置やサイズを変えるなどのデザインデータの編集を行う(ステップS2)。
【0033】
次に、制御部81は、ユーザ操作に基づいて、印刷を行う印刷指Uを選択する(ステップS3)。ここでは、どちらの手のどの指を印刷するかが選択され、設定される。設定された印刷指Uの組み合わせは記憶部82に記憶される。
なお、この時点で、どの指の爪にどのデザインを印刷するかが設定されればよく、ステップS1~S3の順番は前後してもよい。
【0034】
次に、制御部81は、ステップS3で選択された印刷指Uの情報に基づいて、印刷指Uのセットパターンを判別する(ステップS4)。具体的に、制御部81は、選択された両手の印刷指Uの組み合わせが、図4のいずれのセットパターンに対応するかを判別する。
【0035】
次に、制御部81は、ステップS4で判別された印刷指Uの組み合わせが、いずれの手の親指及びその他の4本指にも印刷指Uを含まないセットパターン8であるか否かを判定する(ステップS5)。
そして、ステップS4で判別された印刷指Uの組み合わせがセットパターン8であると判定した場合(ステップS5;Yes)、後述のステップS19に処理を移行する。
【0036】
また、ステップS5において、ステップS4で判別された印刷指Uの組み合わせはセットパターン8ではないと判定した場合(ステップS5;No)、制御部81は、初期印刷用のパターンセットを行い(ステップS6)、ステップS4で判別されたセットパターンに対応した指のセットガイダンスをディスプレイ24に表示させる(ステップS7)。
このセットガイダンスでは、印刷指Uの組み合わせに対応した、上側開口部11(印刷台13の上面)に配置される印刷指Uの配置方法(配置位置等)が案内される。セットガイダンスの情報は、各セットパターンに対応付けて予め記憶部82に記憶されており、ステップS4で判別されたセットパターンに対応したものが読み出されて表示される。なお、セットガイダンスでは、下側開口部12に配置される非印刷指Nの配置方法をガイドしてもよい。
【0037】
次に、ユーザが、ステップS7で表示されたセットガイダンスに従って印刷台13上に印刷指Uを配置した後に(ステップS8)、タッチパネル31により印刷開始の入力指示を行う(ステップS9)。
【0038】
ユーザにより印刷開始指示が入力されると、制御部81は、印刷指Uの検出を行う(ステップS10)。
ここでは、印刷指判別部816が、距離センサ45により下側開口部12内の非印刷指Nを検出し、この非印刷指N以外の指(に含まれる指)を印刷指Uとして判別する。
【0039】
このステップS10では、印刷指判別部816は、非印刷指Nの上下の高さに基づいて、当該非印刷指Nが親指か親指以外の4本指かを判別する。
具体的には、例えば図6(a)、(b)に示すように、下側開口部12内に検出された非印刷指Nが親指の場合、当該非印刷指Nが親指以外の4本指の場合に比べ、その高さが低い。そこで、印刷指判別部816は、非印刷指Nが所定の高さ閾値より小さい場合には、当該非印刷指Nを親指と判別し、この高さ閾値以上であった場合には、当該非印刷指Nを親指以外の4本指と判別する。高さ閾値は、親指の高さと4本指の高さの間に設定されていればよい。
そして、印刷指判別部816は、非印刷指Nが親指であった場合には、その手の印刷指Uを親指以外の4本指(の少なくとも1本)と判別し、非印刷指Nが親指以外の4本指であった場合には、その手の印刷指Uを親指と判別する。
【0040】
また、印刷指判別部816は、非印刷指Nが下側開口部12のうち左右いずれの側に位置するかに基づいて、当該非印刷指Nが左右いずれの手の指であるかを判別する。
具体的には、例えば図7(a)に示すように、印刷指判別部816は、4本指の非印刷指Nが下側開口部12の右側にあった場合には当該非印刷指Nを右手HRの指と判別し、右手HRの印刷指URを親指と判別する。また、印刷指判別部816は、親指の非印刷指Nが下側開口部12の左側にあった場合には当該非印刷指Nを左手HLの指と判別し、左手HLの印刷指ULを親指以外の4本指(の少なくとも1本)と判別する。
あるいは、図7(b)に示すように、印刷指判別部816は、親指の非印刷指Nが下側開口部12の右側にあった場合には当該非印刷指Nを右手HRの指と判別し、右手HRの印刷指URを親指以外の4本指(の少なくとも1本)と判別する。また、印刷指判別部816は、4本指の非印刷指Nが下側開口部12の左側にあった場合には当該非印刷指Nを左手HLの指と判別し、左手HLの印刷指ULを親指と判別する。
なお、左右2つの非印刷指Nが検出された場合に、そのうち右側の非印刷指Nを右手の指、左側の非印刷指Nを左手の指と判別してもよい。
【0041】
次に、図5に示すように、制御部81は、ステップS10で検出された印刷指Uの情報に基づいて、印刷台13上の指(手)の配置が正しいか否かを判定する(ステップS11)。
具体的に、制御部81は、ステップS10で検出された印刷指Uが、ステップS3で選択された印刷指Uと対応しているか(セットパターンが合っているか)否かを判定し、対応していない場合に指の配置が正しくないと判定する。
指の配置が正しくないと判定した場合(ステップS11;No)、制御部81は、印刷台13上の指の配置が正しくないことをユーザに警告(報知)するエラーをディスプレイ24に表示する(ステップS12)。そして、制御部81は、上述のステップS7へ処理を移行し、ステップS10で検出された印刷指Uに対応したセットパターンのセットガイダンスをディスプレイ24に表示させる。
【0042】
また、ステップS11において印刷台13上の指の配置は正しいと判定した場合(ステップS11;Yes)、制御部81は、撮影制御部811により、印刷台13上に載置された印刷指Uを撮影部50によって撮影し、その爪画像を取得する(ステップS13)。
そして、制御部81は、爪情報検出部812により、取得した爪画像に基づいて、爪領域(印刷範囲)を検出する(ステップS14)。本実施形態では、下地塗料が塗られた爪部分を爪領域として検出する。
なお、爪領域(印刷領域)は、下地塗料が塗られた部分でなく、爪の輪郭内の領域として検出してもよい。そして、爪の輪郭形状やその位置から、当該爪領域がいずれの指かを特定してもよい。
【0043】
次に、制御部81は、ステップS13で検出された爪領域(印刷範囲)の個数が、ステップS3で選択された印刷指Uの個数と一致するか否かを判定する(ステップS15)。
そして、これらの個数が一致しないと判定した場合(ステップS15;No)、制御部81は、この不一致をユーザに報知するエラーをディスプレイ24に表示をしたうえで(ステップS16)、上述のステップS3へ処理を移行し、印刷指Uの選択からやり直す。
【0044】
また、ステップS13で検出された爪領域の個数が、ステップS3で選択された印刷指Uの個数と一致すると判定した場合(ステップS15;Yes)、制御部81は、印刷データ生成部813により印刷データを生成し(ステップS17)、印刷制御部814により印刷指Uに対して印刷を実行する(ステップS18)。
【0045】
次に、制御部81は、ユーザ操作に基づいて、印刷する指が他に(ステップS18で印刷されたもの以外に)あるか否か判定し(ステップS19)、印刷する指が他にもあると判定した場合には(ステップS19;Yes)、上述のステップS1へ処理を移行する。
また、他に印刷する指が他にはないと判定した場合には(ステップS19;No)、制御部81は、印刷処理を終了する。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、非印刷指Nを検出する距離センサ45の検出結果に基づいて、印刷指Uが判別される。
これにより、複数の指の各々が特定の位置に配置されるように構成するなどして装置の大型化を招来することなく、印刷指Uを好適に判別することができる。
【0047】
また本実施形態によれば、距離センサ45は、非印刷指Nについて、印刷を行うユーザから見た左右の位置と、上下の高さとを検出可能に構成されている。そして、制御部81(印刷指判別部816)は、非印刷指Nが下側開口部12のうち左右いずれの側に位置するかに基づいて、当該非印刷指Nが左右いずれの手の指であるかを判別し、非印刷指Nの上下の高さに基づいて、当該非印刷指Nが親指か親指以外の指かを判別し、判別した非印刷指N以外に含まれる指を印刷指U(印刷対象の指)と判別する。
これにより、印刷指Uを好適に判別できる。
【0048】
また本実施形態によれば、ユーザ操作に基づいて印刷指Uが予め設定され、この設定された印刷指Uと判別された印刷指Uとが対応するか否かが判定され、対応しないと判定された場合にその旨がユーザに報知される。
これにより、印刷指Uを誤ってセットすることが防止される。ひいては、印刷指Uに異なるデザインが印刷されてしまうといった不具合の発生を抑制できる。
【0049】
また本実施形態によれば、印刷指Uが、右手の親指以外の指と左手の親指か、もしくは左手の親指以外の指と右手の親指である。
このように両手を一時に印刷する場合であっても、セットされた印刷指Uが自動で判別されてその正否が確認されるので、ユーザとは別のオペレータのサポートの必要なく、複数本の印刷指Uを好適に印刷できる。
また、爪の向きが異なる親指を同じ手の他の4本指とは別に印刷することにより、印刷ヘッド61からのインクが適正に着弾する向きで全ての指を印刷することができ、印刷品位を担保できる。
【0050】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0051】
例えば、本実施形態では、両手の印刷指がいずれも親指以外の4本指である場合を除くこととしたが(図4参照)、この場合も対応できるようにしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、印刷ヘッド61がインクジェット方式のものであることとしたが、印刷ヘッド61の構成(印刷方式)はこれに限定されず、例えばペンプロッタ方式等、インクジェット方式以外の構成であってもよい。
【0053】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
指の爪に印刷を施す印刷手段と、
印刷対象の指以外の他の指を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記印刷対象の指を判別する判別手段と、
を備える、
ことを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記印刷対象の指が配置される指載置面を有する印刷台を備え、
前記検出手段は、前記指載置面よりも下側の空間に配置され、当該空間に配置される前記他の指を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記検出手段は、前記他の指について、印刷を行うユーザから見た左右の位置と、上下の高さと、を検出可能に構成され、
前記判別手段は、
前記他の指が前記空間のうち左右いずれの側に位置するかに基づいて、当該他の指が左右いずれの手の指であるかを判別し、
前記他の指の上下の高さに基づいて、当該他の指が親指か親指以外の指かを判別し、
判別した前記他の指以外に含まれる指を、前記印刷対象の指と判別する、
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
ユーザ操作に基づいて、前記印刷対象の指を予め設定する設定手段と、
前記設定手段に設定された前記印刷対象の指と、前記判別手段に判別された前記印刷対象の指とが対応するか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記設定手段に設定されたものと前記判別手段に判別されたものとで前記印刷対象の指が対応しないと判定された場合に、その旨をユーザに報知する報知手段と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記印刷対象の指は複数である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項6>
前記印刷対象の指は、右手の親指以外の指と左手の親指か、もしくは左手の親指以外の指と右手の親指である、
ことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
<請求項7>
指の爪に印刷を施す印刷手段を備える印刷装置の制御方法であって、
前記印刷装置は、印刷対象の指以外の他の指を検出する検出手段を備え、
制御手段が、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記印刷対象の指を判別する、
ことを特徴とする印刷装置の制御方法。
<請求項8>
指の爪に印刷を施す印刷手段を備える印刷装置の制御プログラムであって、
前記印刷装置は、印刷対象の指以外の他の指を検出する検出手段を備え、
コンピュータを、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記印刷対象の指を判別する判別手段として機能させる、
ことを特徴とする印刷装置の制御プログラム。
【符号の説明】
【0054】
1 印刷装置
11 上側開口部
12 下側開口部
13 印刷台
24 ディスプレイ
30 操作部
31 タッチパネル
40 表示部
45 距離センサ(検出手段)
50 撮影部
61 印刷ヘッド(印刷手段)
81 制御部
816 印刷指判別部
HL 左手
HR 右手
U 印刷指
N 非印刷指
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7