(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】光通信モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20240717BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240717BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G02B6/42
H05K7/20 D
H05K7/20 G
H05K5/00 A
(21)【出願番号】P 2020160480
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和哉
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】大津 努
(72)【発明者】
【氏名】上岡 正美
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-170809(JP,A)
【文献】特開2012-015488(JP,A)
【文献】特開2016-225510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0113077(US,A1)
【文献】特開2013-110186(JP,A)
【文献】特開2002-026441(JP,A)
【文献】特開2019-191281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26- 6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42- 6/43
H04B 10/40-10/69
H05K 5/00- 5/06
H05K 7/20
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上面側に設けられる光通信デバイスと、
前記基板および前記光通信デバイスを収容するケースと、
前記ケースに取り付けられるヒートシンクと、を備え、
前記ヒートシンクは、前記ヒートシンクを冷却するための冷却エアの流入口としての開口部を有し、
前記光通信デバイスは、第1のデバイスおよび第2のデバイスを含み、
前記第1のデバイスは、前記第2のデバイスよりも、前記
開口部の近くに配置され、
前記基板から前記第1のデバイスの最上部までの高さは、前記基板から前記第2のデバイスの最上部までの高さより高く、
前記第1のデバイスが設けられる第1の領域において前記ヒートシンクは冷却フィンを備えず、前記第2のデバイスが設けられる第2の領域において前記ヒートシンクは冷却フィンを備
え、
前記冷却エアは、前記開口部を通過して流入し、前記ケース内で前記第1のデバイスが設けられる第1の領域から前記第2のデバイスが設けられる第2の領域に向かう方向に流れる
ことを特徴とする光通信モジュール。
【請求項2】
前記冷却フィンは、前記ヒートシンクの上面側に形成され、
前記ヒートシンクの下面は、前記光通信デバイスに熱的に接触する
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信モジュール。
【請求項3】
前記ヒートシンクの上面側にカバーを備え、
前記第1の領域において、前記ヒートシンクと前記カバーとの間に前記冷却エアが流れるスペースが形成され、
前記第2の領域において、前記冷却フィンおよび前記カバーにより前記冷却エアが流れる複数のエア通過孔が形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信モジュール。
【請求項4】
前記ヒートシンクおよび前記カバーは、一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の光通信モジュール。
【請求項5】
前記カバーは、結合手段または導電性材料で前記ヒートシンクに固定される
ことを特徴とする請求項3に記載の光通信モジュール。
【請求項6】
前記第1の領域における前記ヒートシンクと前記基板との間の間隔は、前記第2の領域における前記ヒートシンクと前記基板との間の間隔より大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信モジュール。
【請求項7】
前記ケースの底面側に第2のヒートシンクをさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクを備える光通信モジュールに係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、光送受信モジュール等の光通信モジュールに対して、互換性を確保するための業界標準(MSA:Multi-Source Agreement)が作成されている。例えば、400G光通信モジュールのMSAとして、CFP2、QSFP-DD、OSFP等が普及している。そして、複数のベンダが、MSAに準拠した光通信モジュールを開発している。
【0003】
MSAにおいては、主に、電気インタフェースおよび機械インタフェースが規定されるが、放熱に係わる規定は少ない。すなわち、放熱構造または放熱特性については、設計の自由度が設けられている。
【0004】
尚、光モジュールの放熱構造については、例えば、特許文献1~3に記載されている。また、光モジュールのノイズの輻射を抑制する構造は、例えば、特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】US2016/0066469
【文献】US2019/0215989
【文献】特開2002-026441号公報
【文献】特開2013-051133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、光送受信モジュール等の光通信モジュールに対して幾つかのMSAが作成されているが、光モジュールの機能が追加または変更されることがある。そして、機能を追加または変更すると、光通信モジュールの消費電力が大きくなることがある。この場合、例えば、冷却能力を高めるために、ヒートシンクの形状の変更が必要になることがある。また、機能の追加または変更に応じて、光通信モジュールに実装される部品(例えば、レーザ素子)のサイズが大きくなることがある。この場合も、ヒートシンクの形状の変更が必要になることがある。
【0007】
ところが、光送受信モジュール等の光通信モジュールは、多くのケースにおいて、予め決められたスペース内に挿入されて使用される。例えば、光送受信モジュールは、光伝送装置が備えるスロットに挿入されることが多い。このため、ヒートシンクの形状を自由に変更できないことがある。或いは、冷却エアを流すことで光通信モジュールを冷却するときに、エアフローインピーダンスが大きくなり、放熱特性が悪くなることがある。
【0008】
本発明の1つの側面に係わる目的は、光通信モジュールを効率的に冷却する構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様に係わる光通信モジュールは、基板と、前記基板の上面側に設けられる光通信デバイスと、前記基板および前記光通信デバイスを収容するケースと、前記ケースに取り付けられるヒートシンクと、を備える。前記光通信デバイスは、第1のデバイスおよび第2のデバイスを含む。前記第1のデバイスは、前記第2のデバイスよりも、前記ヒートシンクを冷却するための冷却エアの入力口の近くに配置される。前記基板から前記第1のデバイスの最上部までの高さは、前記基板から前記第2のデバイスの最上部までの高さより高い。前記第1のデバイスが設けられる第1の領域において前記ヒートシンクは冷却フィンを備えず、前記第2のデバイスが設けられる第2の領域において前記ヒートシンクは冷却フィンを備える。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様によれば、光通信モジュールを効率的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】エアフローインピーダンスについて説明する図である。
【
図4】本発明の実施形態に係わる光通信モジュールの一例を示す図である。
【
図5】
図4に示す光送受信モジュールが備えるヒートシンクの断面の形状を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係わる光通信モジュールの第1のバリエーションを示す図である。
【
図7】
図6に示す光送受信モジュールが備えるヒートシンクの断面の形状を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係わる光通信モジュールの第2のバリエーションを示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係わる光通信モジュールの第3のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、光通信モジュールの一例を示す。この例では、光通信モジュールは、光送受信機を含む光送受信モジュールである。
【0013】
図1(a)は、光送受信機の一例を示す。光送受信機は、レーザ光源(LD)1、光集積回路(COSA:coherent optical sub-assembly)2、およびデジタル信号処理機(DSP)3を含む。レーザ光源1、光集積回路2、およびDSP3は、光通信デバイスの一例であり、基板4に実装される。基板4は、例えば、電気信号を伝搬する導体パターンが形成されたプリント基板である。なお、光送受信機は、
図1に示していない他の部品を備えてもよい。例えば、
図1においては、電気信号の入力および出力のための電気コネクタ、および光信号の入力および出力のための光コネクタが省略されている。
【0014】
レーザ光源1は、所定の波長の連続光を生成する。レーザ光源1により生成される連続光は、光送受信機が出力する光信号のキャリア光として使用される。また、連続光は、光信号をコヒーレント受信するためにも使用される。
【0015】
光集積回路2は、光変調器およびコヒーレント光受信器を備える。光変調器は、DSP3から与えられるデータ信号を表す変調光信号を生成する。コヒーレント光受信器は、90度光ハイブリッド回路および受光器を含み、受信光信号の電界情報を表す電気信号を生成する。
【0016】
DSP3は、アプリケーションから与えられるデータからデータ信号を生成して光集積回路2に与える。また、DSP3は、光集積回路2により生成される電界情報からデータを再生する。
【0017】
図1(b)は、
図1(a)に示す光送受信機を含む光送受信モジュールを横から見た図である。ここでは、光送受信モジュールの内部の構造が見えるように、光送受信モジュールのケースが透明に描かれている。
【0018】
光送受信モジュールは、ケース10およびヒートシンク20を備える。ケース10は、
図1に示す光送受信機を収容する。すなわち、レーザ光源1、光集積回路2、およびDSP3は、ケース10に収容される。なお、レーザ光源1には、ヒートシンク5が取り付けられている。
【0019】
ヒートシンク20は、ケース10に取り付けられる。また、ヒートシンク20は、熱伝導率の高い金属材料で形成される。そして、レーザ光源1、光集積回路2、およびDSP3は、ヒートシンク20に熱的に接続される。例えば、ヒートシンク5は、ヒートシンク20に接触して固定される。また、光集積回路2およびDSP3は、熱伝導率の高い材料を介してヒートシンク20に接触する。
【0020】
光送受信モジュールは、多くのケースにおいて、予め決められたスペース内に挿入されて使用される。この例では、光送受信モジュールは、ケージ500に収容される。ケージ500は、例えば、光伝送装置が備えるスロットに相当する。
【0021】
図1(c)は、ヒートシンク20の断面の構成を表す。具体的には、
図1(c)は、
図1(b)に示すA-A断面を表す。なお、
図1(c)においては、ケース10の内部は省略されている。
【0022】
図1(c)に示す例では、ヒートシンク20は、底板21および複数の冷却フィン22から構成される。複数の冷却フィン22は、底板21に対して垂直方向に伸びるように形成される。よって、冷却フィン22どうしの間にそれぞれ溝23が設けられる。なお、ヒートシンク20(すなわち、底板21および複数の冷却フィン22)は、例えば、一体的に形成される。
【0023】
図1(d)に示す例では、
図1(c)に示すヒートシンク20にカバー24が取り付けられている。カバー24は、ヒートシンク20の底板21に対して平行に設けられる。すなわち、底板21とカバー24との間に複数の冷却フィン22が配置される。よって、ヒートシンク20は、複数のエア通過孔25を備えることになる。なお、ヒートシンク20およびカバー24は、一体的に形成されてもよい。
【0024】
光送受信モジュールの動作時には、レーザ光源1、光集積回路2、およびDSP3を冷却するために、不図示のファンにより冷却エアが生成される。冷却エアは、
図1(b)において矢印で示すように、ヒートシンク20に向って供給される。そうすると、この冷却エアは、
図1(c)に示す例では、溝23を通過する。また、
図1(d)に示す例では、冷却エアは、エア通過孔25を通過する。この結果、レーザ光源1、光集積回路2、およびDSP3において発生する熱は、ヒートシンク20を介して効率的に放出される。
【0025】
図2は、光通信モジュールの他の例を示す。
図2に示す光通信モジュールも、光送受信機を含む光送受信モジュールである。また、光送受信モジュールの構造は、
図1および
図2に実質的に同じである。
【0026】
ただし、
図1に示す光送受信モジュールと比較して、
図2に示す光送受信モジュールが備えるレーザ光源1のサイズは大きい。このため、光送受信モジュールは、
図2(a)に示すように、レーザ光源1およびヒートシンク5を収容するためのバルジ部を有する。すなわち、ヒートシンク20は、レーザ光源1およびヒートシンク5が配置される領域において、その高さが小さくなっている。なお、以下の記載では、光送受信モジュール内でレーザ光源1およびヒートシンク5が配置される領域を「LD領域201」と呼ぶことがある。
【0027】
このように、レーザ光源1のサイズが大きくなると、LD領域201においてヒートシンク20の高さが小さくなる。例えば、
図1(c)に示す構造と比較して、
図2(b)に示す構造においては、冷却フィン22の高さが小さくなる。また、
図1(d)に示す構造と比較して、
図2(c)に示す構造においては、エア通過孔25のサイズが小さくなる。なお、
図2(b)および
図2(c)は、
図2(a)に示すB-B断面を表す。
【0028】
図2(a)に示すようにして冷却エアが供給されるときは、LD領域201において、冷却エアが通過する流路の断面積が小さくなる。具体的には、
図2(b)に示す例では、LD領域201において溝23の断面積が小さくなる。
図2(c)に示す例では、LD領域201においてエア通過孔25の断面積が小さくなる。よって、
図2に示す構造では、
図1に示す構造と比較して、エアフローインピーダンスが大きくなってしまう。エアフローインピーダンスは、エアの流れに対する抵抗(すなわち、エアの流れにくさ)を表す。
【0029】
図3は、エアフローインピーダンスについて説明する図である。縦軸は冷却エアの圧力を表し、横軸は冷却エアの流量を表す。
【0030】
ここで、光送受信モジュールは、所定のエアフロー条件の範囲内で設計される。たとえば、光送受信モジュールは、冷却エアの圧力が閾値TH1以下であり、且つ、冷却エアの流量が閾値TH2以下であるときに、光送受信モジュールの温度が所定の閾値温度以下になるように設計される。また、光送受信モジュールは、
図3に示す上限カーブと下限カーブとの間の範囲内で動作することが要求されることがある。
【0031】
他方、光送受信モジュールの構造(または、形状)が変わると、冷却エアの圧力と流量との関係を表す特性カーブが変化する。すなわち、ヒートシンク20の構造が変わると、特性カーブが変化する。具体的には、
図1に示す光送受信モジュールよりも、
図2に示す光送受信モジュールにおいて、エアフローインピーダンスが大きくなる。よって、
図1に示す光送受信モジュールの特性カーブと比較して、
図2に示す光送受信モジュールの特性カーブの方が、上限カーブに近くなる。
【0032】
ここで、冷却エアの圧力が同じであるものとすると、特性カーブが上限カーブに近くなるほど、光送受信モジュールの温度が上昇しやすくなる。換言すると、光送受信モジュールの温度が同じであるものとすると、特性カーブが上限カーブに近くなるほど、冷却エアの圧力を高くする必要がある。したがって、
図2(b)または
図2(c)に示すように、溝23またはエア通過孔25の断面積が小さくなると、冷却効率が悪くなる。
【0033】
<実施形態>
図4は、本発明の実施形態に係わる光通信モジュールの一例を示す。
図4に示す光通信モジュールも、光送受信機を含む光送受信モジュールである。
【0034】
光送受信モジュール100は、レーザ光源(LD)1、光集積回路(COSA)2、およびDSP3を備える。レーザ光源1は、基板4の上面側に設けられる。また、レーザ光源1には、ヒートシンク5が取り付けられている。光集積回路2およびDSP3は、基板4の表面に実装される。そして、レーザ光源1、光集積回路2、DSP3、基板4、およびヒートシンク5は、ケース10に収容される。なお、レーザ光源1(及び、ヒートシンク5)は、ケース10または後述するヒートシンク30に固定されているものとする。
【0035】
ヒートシンク30は、ケース10に取り付けられる。また、ヒートシンク30は、熱伝導率の高い金属材料で形成される。そして、レーザ光源1、光集積回路2、およびDSP3は、ヒートシンク30に熱的に接続される。たとえば、レーザ光源1は、ヒートシンク5および不図示の熱伝導材料を介してヒートシンク30に熱的に接続する。また、光集積回路2およびDSP3は、不図示の熱伝導材料を介してヒートシンク30に熱的に接続する。
【0036】
なお、以下の記載では、レーザ光源1が配置される領域を「LD領域201」と呼ぶことがある。光集積回路2が配置される領域を「COSA領域202」と呼ぶことがある。DSP3が配置される領域を「DSP領域203」と呼ぶことがある。
【0037】
ヒートシンク30の形状は、光送受信モジュール100が準拠する業界標準(MSA)および各光通信デバイス(即ち、レーザ光源1、光集積回路2、およびDSP3)の配置およびサイズに対応して設計されている。この実施例では、LD領域201におけるヒートシンク30の底面と基板4との間の間隔が、COSA領域202およびDSP領域203におけるヒートシンク30の底面と基板4との間の間隔より大きくなるように、ヒートシンク30が形成される。よって、LD領域201のヒートシンク30の厚さH1は、COSA領域202のヒートシンク30の厚さH2およびDSP領域203のヒートシンク30の厚さH3より小さい。なお、
図4に示す例では、H2よりH3の方が大きいが、H2およびH3は互いに同じであってもよい。
【0038】
図5は、
図4に示す光送受信モジュール100が備えるヒートシンク30の断面の形状を示す。なお、
図5においては、ヒートシンク30に加えて、ケース10およびケージ500の一部も描かれている。
【0039】
図5(a)は、
図4に示すC1-C1断面を示す。具体的には、
図5(a)は、冷却エアが流入する側のヒートシンク30の端部(即ち、入力領域204)の断面を示す。入力領域204においては、ヒートシンク30は、開口部38を有する。よって、
図4に示すように冷却エアが供給されると、その冷却エアは、開口部38を通過する。
【0040】
図5(b)は、
図4に示すC2-C2断面を示す。具体的には、
図5(b)は、LD領域201におけるヒートシンク30の断面を示す。LD領域201においては、ヒートシンク30は、プレート31および保持部材36から構成される。プレート31は、平坦な板である。保持部材36は、プレート31の両端に設けられ、後述するカバー34を保持するために設けられている。なお、ヒートシンク30にカバー34が取り付けられない構成では、保持部材36は必ずしも必要ではない。いずれにしても、LD領域201においては、ヒートシンク30は冷却フィンを有していない。
【0041】
図5(c)は、
図4に示すC3-C3断面を示す。具体的には、
図5(c)は、COSA領域202におけるヒートシンク30の断面を示す。COSA領域202においては、ヒートシンク30は、プレート31、冷却フィン32、および保持部材36から構成される。冷却フィン32は、プレート31に対して垂直方向に伸びる複数の突起により構成される。よって、冷却フィン32どうしの間にそれぞれ溝33が設けられる。
【0042】
図5(d)は、
図4に示すC4-C4断面を示す。具体的には、
図5(d)は、DSP領域203におけるヒートシンク30の断面を示す。ヒートシンク30の構造は、COSA領域202およびDSP領域203において実質的に同じである。すなわち、DSP領域203においても、ヒートシンク30は、プレート31、冷却フィン32、および保持部材36から構成される。ただし、COSA領域202およびDSP領域203において冷却フィン32の高さが互いに異なってもよい。この例では、COSA領域202における冷却フィン32の高さh2より、DSP領域203における冷却フィン32の高さh3の方が大きい。
【0043】
このように、光送受信モジュール100においては、レーザ光源1は、光集積回路2およびDSP3よりも、冷却エアの入力口の近くに配置される。また、基板4からレーザ光源1(ここでは、ヒートシンク5を含む)の最上部までの高さは、基板4から光集積回路2またはDSP3の最上部までの高さより高い。そして、レーザ光源1が設けられるLD領域201において、ヒートシンク30は冷却フィンを備えず、光集積回路2およびDSP3が設けられるCOSA領域202およびDSP領域203においては、ヒートシンク30は冷却フィン32を備える。
【0044】
光送受信モジュール100の動作時には、ヒートシンク30を冷却する(即ち、レーザ光源1、光集積回路2、およびDSP3を冷却する)ために、不図示のファンにより冷却エアが生成される。冷却エアは、
図4において矢印で示すように、ヒートシンク30に向って供給される。そうすると、冷却エアは、
図5(a)に示す開口部38を通過する。なお、
図4~
図5に示す実施例では、ヒートシンク30にカバーが取り付けられないものとする。
【0045】
LD領域201においては、冷却エアは、
図5(b)に示すプレート31とケージ500との間のスペースを通過する。また、COSA領域202およびDSP領域203においては、冷却エアは、
図5(c)および
図5(d)に示す溝33を通過する。この結果、レーザ光源1、光集積回路2、およびDSP3において発生する熱は、ヒートシンク30を介して効率的に放出される。
【0046】
ここで、
図2に示す構成では、ヒートシンク20は、LD領域201において冷却フィンを有している。ところが、冷却フィン22は短く、溝23の断面積が小さい。よって、LD領域201において冷却エアに対するエアフローインピーダンスが大きくなり、冷却効率が低下する。
【0047】
これに対して、
図4~
図5に示す光送受信モジュール100では、ヒートシンク30自体の高さH1が小さくなるLD領域201において、ヒートシンク30は冷却フィンを有していない。このため、冷却エアが通過する流路の断面積が大きく、LD領域201において冷却エアに対するエアフローインピーダンスが小さい。したがって、十分な量の冷却エアがLD領域201を通過できる。すなわち、COSA領域202およびDSP領域203に十分な量の冷却エアが供給される。COSA領域202およびDSP領域203においては、ヒートシンク30は冷却フィン32を備える。ただし、冷却フィン32の高さh2、h3が十分に大きく、溝33の断面積が大きい。よって、COSA領域202およびDSP領域203においても、冷却エアに対するエアフローインピーダンスは大きくならない。したがって、レーザ光源1、光集積回路2、およびDSP3において発生する熱は、ヒートシンク30を介して効率的に放出される。
【0048】
<バリエーション>
図6は、本発明の実施形態に係わる光通信モジュールの第1のバリエーションを示す。第1のバリエーションに係わる光送受信モジュール110は、
図4に示す光送受信モジュール100にカバー34を取り付けることで得られる。
【0049】
図7は、
図6に示す光送受信モジュール110が備えるヒートシンク30の断面の形状を示す。
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)、
図7(d)は、ぞれぞれ、
図6に示すC1-C1断面、C2-C2断面、C3-C3断面、C4-C4断面を表す。
【0050】
カバー34は、ヒートシンク30に固定される。ここで、カバー34は、特に限定されるものではないが、例えば、ネジを用いてヒートシンク30に固定される。この場合、ネジは、カバー34をヒートシンク30に固定するための結合手段の一例である。また、カバー34は、所定の導電材料を用いてヒートシンク30に固定されるようにしてもよい。導電材料は、例えば、半田または導電性接着剤である。この場合、光送受信モジュールのノイズの放射が抑制される。なお、カバー34は、ヒートシンク30と同様に、熱伝導率の高い金属材料で形成されることが好ましい。一例としては、カバー34は、ヒートシンク30と同じ材料で形成される。この場合、カバー34もヒートシンクとして機能する。また、ヒートシンク30およびカバー34は、同じ材料で一体的に形成されてもよい。
【0051】
LD領域201においては、
図7(b)に示すように、ヒートシンク30およびカバー34により囲まれるスペースが形成される。そして、冷却エアは、このスペースを通過する。ここで、ヒートシンク30は、LD領域201において冷却フィンを有していない。よって、
図2(c)に示す構造と比較して、光送受信モジュール110においては、LD領域201でのエアフローインピーダンスが小さくなり、冷却効率が改善する。
【0052】
COSA領域202およびDSP領域203では、
図7(c)および
図7(d)に示すように、ヒートシンク30の冷却フィン32およびカバー30により複数のエア通過孔35が形成される。そして、冷却エアは、エア通過孔35を流れる。
【0053】
上記構造の光送受信モジュール110において、ノイズの放射を抑制するために、光送受信モジュール110の外周に沿ってEMIフィンガー41を設けてもよい。EMIフィンガー41は、ケース10の外側およびカバー34の外側に設けられる。また、光送受信モジュール110がケージ500内に挿入されたときには、EMIフィンガー41がケージ500の内壁に接触するように、EMIフィンガー41が設けられる。
【0054】
図8は、本発明の実施形態に係わる光通信モジュールの第2のバリエーションを示す。第2のバリエーションに係わる光送受信モジュール120は、
図6に示す光送受信モジュール110のカバー34に複数の通気孔34aを形成することで実現される。通気孔34aは、例えば、
図6に示すLD領域201に形成される。この構造によれば、冷却効率が向上する。
【0055】
図9は、本発明の実施形態に係わる光通信モジュールの第3のバリエーションを示す。第3のバリエーションに係わる光送受信モジュール130は、
図6に示す光送受信モジュール110にヒートシンク50を取り付けることで実現される。ヒートシンク50は、この例では、ケース10の下側に取り付けられる。すなわち、基板4に対して光通信デバイス(レーザ光源1、光集積回路2、DSP3)が設けられていない側にヒートシンク50が設けられる。この構造によれば、冷却効率が向上する。なお、冷却エアは、ヒートシンク30だけでなく、ヒートシンク50にも供給されることが好ましい。また、ヒートシンク50の形状は、ケージ500の構造に応じて設計される。更に、ヒートシンク50は、
図4に示す光送受信モジュール100に取り付けられてもよい。
【0056】
なお、
図4~
図9に示す実施形態では、光通信モジュールが光送受信モジュールであるが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、例えば、光送信モジュールまたは光受信モジュールに適用されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 レーザ光源(LD)
2 光集積回路(COSA)
3 デジタル信号処理機(DSP)
4 基板
10 ケース
30、50 ヒートシンク
31 プレート
32 冷却フィン
33 溝
34 カバー
34a 通気孔
35 エア通過孔
36 保持部材
41 EMIフィンガー
100、110、120、130 光送受信モジュール