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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】分光カメラ
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/55 20230101AFI20240717BHJP
   G01J 3/26 20060101ALI20240717BHJP
   H04N 23/51 20230101ALI20240717BHJP
【FI】
H04N23/55
G01J3/26
H04N23/51
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020160999
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054037
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 慧
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-212750(JP,A)
【文献】特開2016-031295(JP,A)
【文献】実開平04-116165(JP,U)
【文献】特開2015-158439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/55
G01J 3/26
H04N 23/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一開口、及び第二開口を規定する筐体であって、前記第一開口及び前記第二開口が互いに対向する位置に設けられた筐体と、
前記第一開口に配置される第一光学素子と、
前記第二開口に配置される第二光学素子と、
前記筐体の内部に保持される波長可変干渉フィルターであって、一対の反射膜、及び、一対の前記反射膜の間隔を変更するギャップ変更部を備え、前記第一開口から入射した第一画像光から、一対の前記反射膜の間隔に応じた波長の第二画像光を、前記第二開口に向かって出射させる前記波長可変干渉フィルターと、
前記第二開口から出射された前記第二画像光を撮像する撮像素子と、を備え、
前記第一光学素子は、前記第一画像光の主光線を平行にして、一対の前記反射膜に入射させる入射光学系を構成する、分光カメラ。
【請求項2】
前記筐体の前記撮像素子とは反対側で、前記第一画像光の光路上に第一光学絞りが設けられている、
請求項1に記載の分光カメラ。
【請求項3】
第一開口、及び第二開口を規定する筐体であって、前記第一開口及び前記第二開口が互いに対向する位置に設けられた筐体と、
前記第一開口に配置される第一光学素子と、
前記第二開口に配置される第二光学素子と、
前記筐体の内部に保持される波長可変干渉フィルターであって、一対の反射膜、及び、一対の前記反射膜の間隔を変更するギャップ変更部を備え、前記第一開口から入射した第一画像光から、一対の前記反射膜の間隔に応じた波長の第二画像光を、前記第二開口に向かって出射させる前記波長可変干渉フィルターと、
前記第二開口から出射された前記第二画像光を撮像する撮像素子と、を備え、
前記第二光学素子は、前記第二画像光を前記撮像素子に結像させる結像光学系を構成する、分光カメラ。
【請求項4】
前記筐体と前記撮像素子との間に第二光学絞りが設けられている、
請求項3に記載の分光カメラ。
【請求項5】
前記第一光学素子は、前記第一開口を封止し、
前記第二光学素子は、前記第二開口を封止し、
前記筐体は、前記第一光学素子及び前記第二光学素子により、内部空間が気密に保持されている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の分光カメラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分光カメラは、被写体である対象物からの画像光が入射する入射窓、画像光から所定波長の光を分光する分光素子、及び分光素子により分光された画像光を撮像する撮像素子を備えている。特に、分光素子として、一対の反射膜を有し、かつ反射膜の間の間隔を変更することで、分光波長を選択できるファブリーペローエタロンを用いることが好ましい。このようなファブリーペローエタロンは、小型化及び薄型化を図ることができ、これにより、分光カメラの薄型化及び小型化を図ることができる。
このような、ファブリーペローエタロンを用いた分光カメラで、精度よく所定波長の画像光を撮像するためには、ファブリーペローエタロンに入射する画像光の主光線を平行にする(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の分光カメラでは、ファブリーペローエタロン(波長可変干渉フィルター)の前段に、複数のレンズにより構成された入射光学系を配置し、ファブリーペローエタロンの後段に、複数のレンズにより構成され導光光学系を配置し、さらに結像光学系を配置して画像光を撮像素子に結像させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-212750
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の分光カメラでは、複数のレンズにより、入射光学系、導光光学系、結像光学系が構成され、構成が複雑化するとの課題がある。
特に、近年では、スマートフォンやタブレット端末などの薄型の電子デバイスに分光カメラを搭載することが考案されている。このため、分光カメラの薄型化が要望されているが、上記特許文献1の構成では、複数のレンズ群を用いる必要があって、分光カメラの薄型化を図ることができない。
また、特許文献1に記載の分光カメラでは、入射光学系の中に直接ファブリーペローエタロンが配置されているが、ファブリーペローエタロンの保護のため、当該ファブリーペローエタロンをパッケージ筐体内に保持し、パッケージ筐体を入射光学系に配置することが好ましい。しかしながら、このようなパッケージ筐体を用いる場合、ファブリーペローエタロンを単体で用いる場合に比べて、パッケージ筐体の厚みが大きくなるので、分光カメラの薄型化がさらに困難になるとの課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一態様にかかる分光カメラは、第一開口、及び第二開口を規定する筐体であって、前記第一開口及び前記第二開口が互いに対向する位置に設けられた筐体と、前記第一開口に配置される第一光学素子と、前記第二開口に配置される第二光学素子と、前記筐体の内部に保持される波長可変干渉フィルターであって、一対の反射膜、及び、一対の前記反射膜の間隔を変更するギャップ変更部を備え、前記第一開口から入射した第一画像光から、一対の前記反射膜の間隔に応じた波長の第二画像光を、前記第二開口に向かって出射させる前記波長可変干渉フィルターと、前記第二開口から出射された前記第二画像光を撮像する撮像素子と、を備え、前記第一光学素子は、前記第一画像光の主光線を平行にして、一対の前記反射膜に入射させる入射光学系を構成する。
【0006】
本開示の第二態様にかかる分光カメラは、第一開口、及び第二開口を規定する筐体であって、前記第一開口及び前記第二開口が互いに対向する位置に設けられた筐体と、前記第一開口に配置される第一光学素子と、前記第二開口に配置される第二光学素子と、前記筐体の内部に保持される波長可変干渉フィルターであって、一対の反射膜、及び、一対の前記反射膜の間隔を変更するギャップ変更部を備え、前記第一開口から入射した第一画像光から、一対の前記反射膜の間隔に応じた波長の第二画像光を、前記第二開口に向かって出射させる前記波長可変干渉フィルターと、前記第二開口から出射された前記第二画像光を撮像する撮像素子と、を備え、前記第二光学素子は、前記第二画像光を前記撮像素子に結像させる結像光学系を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第一実施形態のスマートフォンの一例を示す図。
図2】第一実施形態の分光カメラの断面の概略構成を示す模式図。
図3】第一実施形態の光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図。
図4】比較例としての、従来の分光カメラの概略構成を示す図。
図5】第二実施形態の分光カメラの概略構成を示す模式図。
図6】第三実施形態の分光カメラの概略構成を示す模式図。
図7】変形例1にかかる第一光学素子の他の例を示す図。
図8】変形例1にかかる第一光学素子の他の例を示す図。
図9】変形例1にかかる第一光学素子の他の例を示す図。
図10】変形例1にかかる第二光学素子の他の例を示す図。
図11】変形例1にかかる第二光学素子の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第一実施形態]
以下、第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の分光カメラを備えた電子機器を示す図である。本実施形態では、電子機器として、スマートフォン1を例示する。図1は、スマートフォン1の裏側面を示す概略図である。図示は省略するが、当該スマートフォン1は、表側面にタッチパネルを備えたディスプレイを備えており、内部には、スマートフォン1の各種動作を制御するCPU等の制御回路、メモリー等の記憶回路が設けられている。
【0009】
[分光カメラ2の構成]
図2は、本実施形態の分光カメラ2の断面の概略構成を示す模式図である。
スマートフォン1の外装フレーム11には、分光カメラ2に入射する画像光を取り入れる開口窓12が設けられており、当該開口窓12には、カバーガラス13がはめ込まれている。分光カメラ2は、第一光学絞り20、光学フィルターデバイス30、結像光学系50、及び撮像素子40を備える。カバーガラス13を透過した画像光のうち、第一光学絞り20を通過した光は、光学フィルターデバイス30、及び結像光学系50を介して、撮像素子40に結像され、撮像素子40により画像が撮像される。
【0010】
[光学フィルターデバイス30の構成]
図3は、光学フィルターデバイス30の概略構成を示す断面図である。
光学フィルターデバイス30は、波長可変干渉フィルター31と、筐体32と、第一光学素子33と、第二光学素子34と、を含んで構成されている。
【0011】
波長可変干渉フィルター31は、ファブリーペローエタロンであり、互いに対向する一対の反射膜313,314と、一対の反射膜313,314の間隔(ギャップG)を変更するギャップ変更部315を備えている。
例えば、本実施形態では、波長可変干渉フィルター31は、第一反射膜313が設けられる第一基板311と、第二反射膜314が設けられる第二基板312とを備える。第二基板312は、第二反射膜314が設けられる可動部312Aと、可動部312Aを第一基板311に向かう方向に進退可能に保持するダイアフラム部312Bとを備える。そして、第一基板311には、第一電極315Aが設けられ、第二基板312には、第一電極315Aに対向する第二電極315Bが設けられており、これらの第一電極315A及び第二電極315Bにより、ギャップ変更部315である静電アクチュエーターが構成されている。
このような波長可変干渉フィルター31では、第一電極315A及び第二電極315Bの間に電圧を印加することで、静電引力を作用させることができ、電圧値を制御することで、ギャップGの間隔を所望の値に変更することができる。これにより、波長可変干渉フィルター31は、入射光である第一画像光から、所望の波長の第二画像光を透過させることができる。
【0012】
筐体32は、波長可変干渉フィルター31を保持する容器状のケースであり、例えば、図3に示すように、側面部321と、底面部322とを備える。
側面部321は、底面部322から光入射側、つまり、カバーガラス13側に延伸する筒状部材であり、内周面の一部に、波長可変干渉フィルター31の側面が接合されている。側面部321の底面部322とは反対側の開口端面は、カバーガラス13に対向する第一開口部321Aを構成する。そして、側面部321の開口端面には、第一光学素子33が接合されることで、第一開口部321Aが閉塞されている。このように、第一光学素子33のおかげで、第一開口部321Aの開口(第一開口)を介した気体を含む流体の移動が抑制されている。
【0013】
底面部322は、側面部321の第一開口部321Aを構成する開口端面とは反対側に設けられる板状部材であり、第二開口部322Aが設けられている。つまり、筐体32において、第二開口部322Aは、第一開口部321Aに対向する位置に設けられている。第二開口部322Aの開口中心は、波長可変干渉フィルター31の一対の反射膜313,314の中心を通る光軸上に位置する。よって、波長可変干渉フィルター31から出射された第二画像光が、第二開口部322Aから撮像素子40に向かって通過する。
この第二開口部322Aには、第二光学素子34が接合されており、これにより、第二開口部322Aは、閉塞されている。このように、第二光学素子34のおかげで、第二開口部322Aの開口(第二開口)を介した気体を含む流体の移動が抑制されている。
なお、図示は省略するが、底面部322には、波長可変干渉フィルター31の第一電極315Aや第二電極315Bに接続される配線電極が設けられており、当該配線電極は、底面部322または側面部321に設けられた貫通電極を介して外部に引き出されている。
【0014】
以上のように、本実施形態の光学フィルターデバイス30では、筐体32の第一開口部321Aが第一光学素子33により気密封止され、第二開口部322Aが第二光学素子34により気密封止されることで、筐体32の内部空間が気密に密閉されている。そして、この筐体32の内部空間は、大気圧よりも減圧されている。これにより、波長可変干渉フィルター31の反射膜313,314の酸化等による劣化を抑制できる。また、ギャップ変更部315により可動部312Aを変位させる際の空気抵抗を減少させることができるので、可動部312Aの振動を抑制でき、波長可変干渉フィルター31の応答性を良好にできる。すなわち、分光カメラ2により所望の波長の画像光を撮像する場合に、波長可変干渉フィルター31のギャップGを、迅速に当該所望波長に対応した寸法に設定することができ、迅速な撮像処理を実現できる。
【0015】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、第一光学素子33は、第一光学絞り20の開口を通過した第一画像光の主光線を平行にする平行化レンズにより構成されている。つまり、第一光学絞り20は、第一画像光の主光線の光路上に配置されている。
したがって、本実施形態の分光カメラ2では、第一光学絞り20を通過した光(第一画像光)は、第一光学素子33によって主光線が平行とされた後、波長可変干渉フィルター31の一対の反射膜313,314に垂直に入射する。つまり、波長可変干渉フィルター31を透過する第二画像光の波長は、反射膜313,314への入射位置によらず均一となり、ギャップGに応じた均一な波長の第二画像光が撮像素子40に結像されることになる。
【0016】
一方、本実施形態では、第二光学素子34は、平行平板ガラスにより構成されている。したがって、光学フィルターデバイス30から出射された光は、複数のレンズにより構成された結像光学系50により撮像素子40に結像される。
本実施形態では、結像光学系50は、例えば、図2に示すように、第一結像レンズ51、第二結像レンズ52、及び第三結像レンズ53により構成されている。
【0017】
図4に、比較例として、従来の分光カメラ90の概略構成を示す。比較例の分光カメラ90では、波長可変干渉フィルター31が筐体32に格納された光学フィルターデバイス91を用いる。この光学フィルターデバイス91では、第一光学素子92及び第二光学素子93がレンズ機能を有さず、平行平板ガラスにより構成されている。
したがって、波長可変干渉フィルター31に対して、第一画像光の主光線を平行とするために、光学フィルターデバイス91とカバーガラス13との間に、複数のレンズにより構成された入射光学系60が必要となる。
図2及び図4を比較すると分かるように、本実施形態の分光カメラ2では、比較例の分光カメラ90に比べて、入射光学系60の構成が不要となり、その分、分光カメラ2において、カバーガラス13から撮像素子40までの距離を短くでき、つまり、薄型化を図れる。
【0018】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の分光カメラ2は、波長可変干渉フィルター31と、筐体32と、第一光学素子33と、第二光学素子34と、撮像素子40と、を備える。筐体32は、第一開口部321A、及び第二開口部322Aを有し、第一開口部321Aの第一開口及び第二開口部322Aの第二開口が互いに対向する位置に設けられている。波長可変干渉フィルター31は、筐体32の内部に保持されており、一対の反射膜313,314と、一対の反射膜313,314の間隔(ギャップG)を変更するギャップ変更部315とを有する。波長可変干渉フィルター31は、第一開口部321Aを通過した第一画像光から、ギャップGに応じた波長の第二画像光を第二開口部322Aから出射させる。第一光学素子33は、第一開口部321Aに配置されている。第二光学素子34は、第二開口部322Aに配置されている。撮像素子40は、第二開口部322Aから出射された第二画像光を撮像する。そして、第一光学素子33は、第一画像光の主光線を平行にして、波長可変干渉フィルター31の一対の反射膜313,314に入射させるレンズにより構成されている。
【0019】
このような分光カメラ2では、波長可変干渉フィルター31を格納する筐体32の第一開口部321Aに、第一画像光の主光線を平行にするレンズにより構成された第一光学素子33が設けられている。このため、分光カメラ2において、入射光学系として他のレンズを不要にできる。つまり、第一開口部321Aを平板ガラスで閉塞する場合では、波長可変干渉フィルター31に入射させる第一画像光の主光線を平行光にする光学レンズ等により構成された入射光学系60を別途配置する必要がある。これに対し、本実施形態では、これらの入射光学系60を不要にでき、分光カメラ2の薄型化、すなわち、スマートフォン1のカバーガラス13から撮像素子40までの距離を短くできる。
【0020】
本実施形態では、筐体32の撮像素子40とは反対側で、第一画像光の光路上に第一光学絞り20が設けられている。つまり、本実施形態では、カバーガラス13と光学フィルターデバイス30との間に、第一光学絞り20が設けられている。
これにより、第一光学絞り20及び第一光学素子33により、像側テレセントリック光学系を構成することができ、第一光学絞り20を透過した所定の画角の第一画像光の主光線を、一対の反射膜313,314に対して平行にできる。
【0021】
本実施形態では、第一光学素子33が筐体32の第一開口部321Aを封止し、第二光学素子34が第二開口部322Aを封止することで、筐体32は、第一光学素子33及び第二光学素子34により、内部空間が気密に保持されている。
これにより、筐体32の内部への、波長可変干渉フィルター31の反射膜313,314を劣化させるガスの侵入を抑制でき、反射膜313,314の劣化による分光精度の低下を抑制できる。
さらに、本実施形態では、筐体32の内部空間が大気圧よりも減圧されている。このため、波長可変干渉フィルター31を駆動させる際に可動部312Aの応答性が良好となり、分光画像の撮像処理にかかる時間を短縮できる。
【0022】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。
第一実施形態では、光学フィルターデバイス30の第一光学素子33がレンズ機能を有し、第二光学素子34がレンズ機能を有さない例を示した。これに対して、第二実施形態では、第二光学素子34がレンズ機能を有する点で第一実施形態と相違する。
なお、以降の説明にあたり、既に説明した事項に関しては同符号を付し、その説明を省略または簡略化する。
【0023】
図5は、第二実施形態の分光カメラ2Aの概略構成を示す模式図である。
本実施形態の分光カメラ2Aは、第一実施形態と同様、光学フィルターデバイス30Aと、撮像素子40とを備えている。そして、本実施形態では、光学フィルターデバイス30Aと、撮像素子40との間に、第二光学絞り20Aが設けられている。
ここで、本実施形態では、第一光学素子33Aが平行平板ガラスにより構成されている。一方、本実施形態では、第二光学素子34Aが、レンズ機能を有し、例えば、結像レンズとして機能する。
このため、図5示すように、本実施形態では、複数のレンズにより構成された入射光学系60が設けられるものの、結像光学系50を不要にできる。
【0024】
さらに、本実施形態では、光学フィルターデバイス30Aと撮像素子40との間に、第二光学絞り20Aが設けられている。この第二光学絞り20Aは、ピンホールであり、第二光学素子34Aの焦点位置に設けられている。これにより、第二光学素子34A及び第二光学絞り20Aにより、スペイシャルフィルターが構成され、第二画像光内の干渉縞成分を除去した精度高い分光画像を撮像することができる。このような分光カメラ2Aでは、図5に示すように、波長可変干渉フィルター31を透過した第二画像光のうち、第二光学絞り20Aを通過する光は、波長可変干渉フィルター31の反射膜313,314に対して主光線が主直に入射した光である。よって、分光カメラ2Aにおいて、精度の高い分光画像を撮像することができる。
【0025】
なお、本実施形態において、第一光学素子33Aとして、第一実施形態と同様、入射レンズとして機能する第一光学素子33を用いてもよい。
さらに、光学フィルターデバイス30Aと、カバーガラス13との間に、第一光学絞り20が設けられ、像側テレセントリック光学系が構成されていてもよい。
【0026】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態では、第二光学素子34Aは、第二画像光を撮像素子40に結像させる結像レンズにより構成されている。
これにより、本実施形態では、波長可変干渉フィルター31を透過した第二画像光を撮像素子40に結像させる結像光学系50を不要にでき、分光カメラ2の薄型化を図れる。
【0027】
本実施形態の分光カメラ2Aでは、光学フィルターデバイス30Aの筐体32と撮像素子40との間に第二光学絞り20Aが設けられている。
これにより、第二光学絞り20Aと第二光学素子34Aとでスペイシャルフィルターを構成することができ、分光カメラ2Aで分光画像を撮像する際に、干渉縞等を抑制できる。
【0028】
[第三実施形態]
次に第三実施形態について説明する。
第一実施形態では、第一光学素子33により入射光学系が構成され、第二実施形態では、第二光学素子34Aにより結像光学系が構成される例を示した。これに対して、第三実施形態では、光学フィルターデバイスの他に、結像光学系や入射光学系を構成するレンズまたはレンズ群が設けられている点で、第一実施形態及び第二実施形態と相違する。
【0029】
図6は、本実施形態の分光カメラ2Bの概略構成を示す模式図である。
本実施形態では、光学フィルターデバイス30Bの前段及び後段に1つまたは2つ以上のレンズが配置されている。そして、光学フィルターデバイス30Bの前段に設けられた1つまたは2つ以上のレンズと、光学フィルターデバイス30Bの第一光学素子33Bにより、入射光学系60が構成される。また、光学フィルターデバイス30Bの後段に設けられた1つまたは2つ以上のレンズと、光学フィルターデバイス30Bの第二光学素子34Bにより、結像光学系50が構成される。
図6の例では、第一光学素子33Bが、図4に示す第二入射レンズ62として機能する例であり、第一入射レンズ61と第一光学素子33Bとによって、入射光学系60が構成される。また、入射光学系60に第一光学絞り20が設けられることで、第一実施形態と同様、像側テレセントリック光学系が構成される。
また、第二光学素子34Bが、図4に示す第一結像レンズ51として機能する。したがって、第二光学素子34B、第二結像レンズ52、及び第三結像レンズ53、により結像光学系が構成される。
【0030】
本実施形態でも、図6図4とを比較すると分かるように、比較例の第二入射レンズ62、第一結像レンズ51を不要にでき、分光カメラ2Bの薄型化を図ることができる。
【0031】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0032】
[変形例1]
上記第一実施形態及び第三実施形態において、第一光学素子33,33Bを凸型のレンズにより構成する例を示したが、これに限定されない。
図7図9は、第一光学素子の他のレンズの例を示す図である。
例えば、図7に示す第一光学素子33Cのように、筐体32の内部に対して凸となるレンズを用いてもよい。また、図8の第一光学素子33Dのように凹型のレンズを用いてもよい。図8において、筐体32の内部に向けて第一光学素子33Dの凹面が形成される構成としてもよい。さらには、図9に示す第一光学素子33Eのように、フレネルレンズを用いてもよい。このようなフレネルレンズを用いる場合では、第一光学素子33Eの厚みをさらに小さくでき、その分、分光カメラの薄型化を図れる。また、図9において、筐体32の内部に向けて、第一光学素子33Eの凸面が形成されていてもよい。
【0033】
第二光学素子に関しても同様であり、第二実施形態や第三実施形態で示したレンズ形状に限られない。
図10及び図11は、第二光学素子の他の例を示す図である。
例えば、図10に示すように、筐体32の内部に向かって凸となる凸型レンズの第二光学素子34Cを用いてもよい。
また、図11に示す第二光学素子34Dのように凹型レンズを用いてもよい。図11の例では、凹面が撮像素子40に向かう方向に形成されているが、筐体32の内部に向かって凹面が形成される凹型レンズを用いてもよい。
【0034】
[変形例2]
第一実施形態では、入射光学系を構成するレンズ群(例えば第一入射レンズ61や第二入射レンズ62)が不要であり、第二実施形態では、結像光学系を構成するレンズ群(例えば、第一結像レンズ51、第二結像レンズ52、及び第三結像レンズ53)が不要である例を示した。これに対して、筐体32に対して、第一開口部321Aを第一実施形態の第一光学素子33により封止し、第二開口部322Aを第二実施形態の第二光学素子34Aで封止してもよい。この場合、入射光学系、及び結像光学系のレンズ構成をより簡素化でき、分光カメラの薄型化をさらに促進できる。
【0035】
また、上記実施形態では、第一光学素子が第一開口部321Aを気密に封止し、第二光学素子が第二開口部322Aを気密に封止する構成を例示したがこれに限定されない。
例えば、反射膜313,314として劣化しにくい素材を用いた場合であれば、筐体32の内部が気密空間でなくてもよい。
【0036】
さらに、上記実施形態では、筐体32の内部空間が大気圧に対して減圧されているが、これに限定されない。すなわち、上記実施形態では、ギャップ変更部315が静電アクチュエーターにより構成され、静電引力によって可動部312Aを吸引することで、ギャップGを変更した。この場合、ギャップGに空気が存在する場合に、エアダンパとして作用し、応答性が悪化する。これに対して、例えば、第一基板311と第二基板312との間のピエゾ素子を配置し、ピエゾ素子への電圧印加によってピエゾ素子を伸縮させることでギャップGを変更する場合等、空気抵抗の影響が極めて小さい駆動系を用いる場合では、筐体32の内部が大気圧であってもよい。
【0037】
[本発明のまとめ]
本開示の第一態様にかかる分光カメラは、第一開口、及び第二開口を規定する筐体であって、前記第一開口及び前記第二開口が互いに対向する位置に設けられた筐体と、前記第一開口に配置される第一光学素子と、前記第二開口に配置される第二光学素子と、前記筐体の内部に保持される波長可変干渉フィルターであって、一対の反射膜、及び、一対の前記反射膜の間隔を変更するギャップ変更部を備え、前記第一開口から入射した第一画像光から、一対の前記反射膜の間隔に応じた波長の第二画像光を、前記第二開口に向かって出射させる前記波長可変干渉フィルターと、前記第二開口から出射された前記第二画像光を撮像する撮像素子と、を備え、前記第一光学素子は、前記第一画像光の主光線を平行にして、一対の前記反射膜に入射させる入射光学系を構成する。
【0038】
これにより、分光カメラにおいて、第一光学素子を入射光学系の一部、または、第一光学素子により入射光学系を構成することができ、他のレンズの配置量を減らすことができる。よって、分光カメラの薄型化を促進できる。
【0039】
本態様の分光カメラにおいて、前記筐体の前記撮像素子とは反対側で、前記第一画像光の光路上に第一光学絞りが設けられている。
これにより、第一光学絞りと第一光学素子を含む入射光学系とにより、テレセントリック光学系を構成することができる。
【0040】
本態様の第二態様の分光カメラにおいて、第一開口、及び第二開口を規定する筐体であって、前記第一開口及び前記第二開口が互いに対向する位置に設けられた筐体と、前記第一開口に配置される第一光学素子と、前記第二開口に配置される第二光学素子と、前記筐体の内部に保持される波長可変干渉フィルターであって、一対の反射膜、及び、一対の前記反射膜の間隔を変更するギャップ変更部を備え、前記第一開口から入射した第一画像光から、一対の前記反射膜の間隔に応じた波長の第二画像光を、前記第二開口に向かって出射させる前記波長可変干渉フィルターと、前記第二開口から出射された前記第二画像光を撮像する撮像素子と、を備え、前記第二光学素子は、前記第二画像光を前記撮像素子に結像させる結像光学系を構成する。
【0041】
これにより、分光カメラにおいて、第二光学素子を結像光学系の一部、または、第二光学素子により結像光学系を構成することができ、他のレンズの配置量を減らすことができる。よって、分光カメラの薄型化を促進できる。
【0042】
本態様の分光カメラにおいて、前記筐体と前記撮像素子との間に第二光学絞りが設けられている。
これにより、第二光学素子を含む結像光学系と第二光学絞りにより、スペイシャルフィルターを構成することができ、高精度な分光画像を撮像できる。
【0043】
第一態様または第二態様の分光カメラにおいて、前記第一光学素子は、前記第一開口部を封止し、前記第二光学素子は、前記第二開口部を封止し、前記筐体は、前記第一光学素子及び前記第二光学素子により、内部空間が気密に保持されている。
このように、筐体の内部を気密に保持することで、波長可変干渉フィルターの反射膜の劣化を抑制できる。また、筐体の内部を大気圧に対して減圧した状態に維持することができ、これにより、波長可変干渉フィルターにおいて、一対の反射膜の間隔を制御する際に、当該間隔が振動的に変化することを抑制でき、波長可変干渉フィルターの応答性を良好にできる。
【符号の説明】
【0044】
1…スマートフォン、2,2A,2B…分光カメラ、11…外装フレーム、12…開口窓、13…カバーガラス、20…第一光学絞り、20A…第二光学絞り、30,30A,30B…光学フィルターデバイス、31…波長可変干渉フィルター、32…筐体、33,33A,33B,33C,33D,33E…第一光学素子、34,34A,34B,34C,34D…第二光学素子、40…撮像素子、50…結像光学系、51…第一結像レンズ、52…第二結像レンズ、53…第三結像レンズ、60…入射光学系、61…第一入射レンズ、62…第二入射レンズ、312A…可動部、312B…ダイアフラム部、313…第一反射膜、314…第二反射膜、315…ギャップ変更部、315A…第一電極、315B…第二電極、321…側面部、321A…第一開口部、322…底面部、322A…第二開口部、G…ギャップ。


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