(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】通信システム、親局装置、子局装置、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/44 20060101AFI20240717BHJP
H04L 12/46 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H04L12/44 Z
H04L12/46 V
(21)【出願番号】P 2020163324
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道又 淳一
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-150345(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0198633(US,A1)
【文献】国際公開第2016/203566(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
H04L 12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局装置と、
前記親局装置とVLANを介して接続される子局装置と、
を備える通信システムであって、
前記親局装置は、
前記子局装置毎に、前記子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDを記憶する記憶部と、
前記子局装置
の通信状態の監視及び前記子局装置の通信に関する設定を行うための特定制御フレームを作成する第1制御部と、
を含み、
前記特定制御フレームは、前記VLAN IDが格納されたVLANタグを含み、
前記VLANタグは、前記特定制御フレームを前記子局装置まで伝送するために用いられ、
前記子局装置は、前記特定制御フレームを処理し、応答フレームを作成する第2制御部を含み、
前記第2制御部は、受信フレームにおけるVLANタグの情報に関わらず、宛先アドレス及びイーサタイプを参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定する、
通信システム。
【請求項2】
前記特定制御フレームは、イーサネットOAM用に予約されたマルチキャスト宛先アドレスを、宛先アドレスとして含む、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記特定制御フレームは、Link OAMに規定されたイーサタイプ、又は、イーサネットOAMに規定されたイーサタイプを含む、
請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記特定制御フレームは、前記イーサタイプのサブタイプとして、OAMのサブタイプを含み、
前記第2制御部は、前記サブタイプをさらに参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定する、
請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記第2制御部は、特定制御フレームに含まれるベンダーコードに基づいて、前記特定制御フレームが真正の特定制御フレームであるか否かを判定する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記特定制御フレームは、真正の特定制御フレームを証明するための証明書情報が格納されるフィールドを含み、
前記第2制御部は、特定制御フレームに含まれる前記フィールドに格納された情報に基づいて、前記特定制御フレームが真正の特定制御フレームであるか否かを判定する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記第2制御部は、前記特定制御フレームの送信元アドレスを宛先アドレスとして含み、前記特定制御フレームのVLANタグと同一のVLANタグを含む前記応答フレームを作成する、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記第1制御部は、前記親局装置とセッションが確立している子局装置のVLAN IDが変更された場合、セッション状態を維持したまま、変更後のVLAN IDが格納されたVLANタグを含む特定制御フレームを作成する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項9】
前記子局装置は、記憶部をさらに含み、
前記第2制御部は、前記親局装置から送信された前記特定制御フレームを受信した場合、受信された前記特定制御フレームに含まれるVLAN IDを前記記憶部に記憶させ、
前記第2制御部は、前記子局装置から前記親局装置へ送信する制御フレームを作成する場合、前記記憶部に記憶された前記VLAN IDが格納されたVLANタグを含む制御フレームを作成する、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項10】
前記特定制御フレームは、Link OAMフレーム又はイーサネットOAMフレームである、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項11】
VLANを介して子局装置と接続される親局装置であって、
前記子局装置毎に、前記子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDを記憶する記憶部と、
前記子局装置
の通信状態の監視及び前記子局装置の通信に関する設定を行うための特定制御フレームを作成する制御部と、
を含み、
前記特定制御フレームは、前記VLAN IDが格納されたVLANタグを含み、
前記VLANタグは、前記特定制御フレームを前記子局装置まで伝送するために用いられ、
前記特定制御フレームを前記子局装置へ送信する前に、前記子局装置に前記VLAN ID
が設定
されておらず、
前記特定制御フレームの前記VLANタグは、前記子局装置において受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かの判定において参照されない、
親局装置。
【請求項12】
VLANを介して親局装置と接続される子局装置であって、
前記親局装置から送信される
、前記子局装置の通信状態の監視及び前記子局装置の通信に関する設定を行うための特定制御フレームを処理し、応答フレームを作成する制御部を備え、
前記特定制御フレームは、前記子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDが格納されたVLANタグを含み、
前記VLANタグは、前記特定制御フレームを前記子局装置まで伝送するために用いられ、
前記制御部は、受信フレームにおけるVLANタグの情報に関わらず、宛先アドレス及びイーサタイプを参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定する、
子局装置。
【請求項13】
VLANを介して親局装置と接続される子局装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
前記親局装置から送信される
、前記子局装置の通信状態の監視及び前記子局装置の通信に関する設定を行うための特定制御フレームを処理し、応答フレームを作成するステップを実行させ、
前記特定制御フレームは、前記子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDが格納されたVLANタグを含み、
前記VLANタグは、前記特定制御フレームを前記子局装置まで伝送するために用いられ、
前記ステップは、受信フレームにおけるVLANタグの情報に関わらず、宛先アドレス及びイーサタイプを参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定することを含む、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信システム、親局装置、子局装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE 802.1Qには、VLAN(仮想ローカルエリアネットワーク)が規定されている(非特許文献1)。VLANでは、1つのネットワークが複数のネットワークセグメントに論理的に分割される。VLANに属する各通信装置のVLAN IDは事前に登録され、フレーム内のVLAN IDによって特定されるVLANに属する通信装置に当該フレームが転送される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】IEEE Standard for Local and metropolitan area networks - Virtual Bridged Local Area Networks,(米),IEEE,2006年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの親局装置と多数の子局装置とをVLANで接続し、親局装置がVLANを介して各子局装置を制御する場合、子局装置において、当該子局装置が属するVLANのVLAN IDが登録されていた。しかし、多数の子局装置のそれぞれに対してVLAN IDを設定する作業は煩雑であり、多くのコストがかかるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る通信システムは、親局装置と、前記親局装置とVLANを介して接続される子局装置と、を備える通信システムであって、前記親局装置は、前記子局装置毎に、前記子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDを記憶する記憶部と、前記子局装置を制御するための特定制御フレームを作成する第1制御部と、を含み、前記特定制御フレームは、前記VLAN IDが格納されたVLANタグを含み、前記子局装置は、前記特定制御フレームを処理し、応答フレームを作成する第2制御部を含み、前記第2制御部は、受信フレームにおけるVLANタグの情報に関わらず、宛先アドレス及びイーサタイプを参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定する。
【0006】
本開示の一態様に係る親局装置は、VLANを介して子局装置と接続される親局装置であって、前記子局装置毎に、前記子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDを記憶する記憶部と、前記子局装置を制御するための特定制御フレームを作成する制御部と、を含み、前記特定制御フレームは、前記VLAN IDが格納されたVLANタグを含み、前記特定制御フレームを前記子局装置へ送信する前に、前記子局装置に前記VLAN IDを設定しない。
【0007】
本開示の一態様に係る子局装置は、VLANを介して親局装置と接続される子局装置であって、前記親局装置から送信される特定制御フレームを処理し、応答フレームを作成する制御部を備え、前記特定制御フレームは、前記子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDが格納されたVLANタグを含み、前記制御部は、受信フレームにおけるVLANタグの情報に関わらず、宛先アドレス及びイーサタイプを参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定する。
【0008】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、VLANを介して親局装置と接続される子局装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、前記親局装置から送信される特定制御フレームを処理し、応答フレームを作成するステップを実行させ、前記ステップは、受信フレームにおけるVLANタグの情報に関わらず、宛先アドレス及びイーサタイプを参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定することを含む。
【0009】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備える親局装置として実現することができるだけでなく、親局装置における特徴的な処理をステップとする方法として実現したり、コンピュータを親局装置として機能させるコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。さらに、本開示は、上記のような特徴的な構成を備える子局装置として実現することができるだけでなく、子局装置における特徴的な処理をステップとする方法として実現したり、コンピュータを子局装置として機能させるコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。本開示は、親局装置の一部又は全部を半導体集積回路として実現したり、子局装置の一部又は全部を半導体集積回路として実現したり、親局装置と子局装置とを含む通信システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、子局装置においてVLANの情報を設定する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】親局装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】親局装置の制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】Information OAMフレームである特定制御フレームの構成の一例を示す図である。
【
図6】Organization Specific OAMフレームである特定制御フレームの構成の一例を示す図である。
【
図7】子局装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】子局装置の制御部のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】実施形態に係る親局装置における動作の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態に係る子局装置における動作の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】イーサネットVSMフレームである特定制御フレームの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
【0013】
(1) 本実施形態に係る通信システムは、親局装置と、前記親局装置とVLANを介して接続される子局装置と、を備える通信システムであって、前記親局装置は、前記子局装置毎に、前記子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDを記憶する記憶部と、前記子局装置を制御するための特定制御フレームを作成する第1制御部と、を含み、前記特定制御フレームは、前記VLAN IDが格納されたVLANタグを含み、前記子局装置は、前記特定制御フレームを処理し、応答フレームを作成する第2制御部を含み、前記第2制御部は、受信フレームにおけるVLANタグの情報に関わらず、宛先アドレス及びイーサタイプを参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定する。子局装置において特定制御フレームの識別にVLANタグが使用されないため、子局装置においてVLANの情報が設定されている必要がない。したがって、VLANの設定作業を軽減することができる。
【0014】
(2) 前記特定制御フレームは、イーサネットOAM(「イーサネット」は登録商標。OAM:Operations, Administration, Maintenance)用に予約されたマルチキャスト宛先アドレスを、宛先アドレスとして含んでもよい。制御フレームをユニキャストで送信する場合、親局装置において子局装置のアドレスを管理しなければならない。Link OAM用に予約されたマルチキャスト宛先アドレスを持つフレームは、L2スイッチ(レイヤ2スイッチ)によって廃棄されるように非特許文献1において規定されているため、VLANネットワークを通ることができない。よって、このようなフレームを特定制御フレームに使用することはできない。そのような廃棄規定がないイーサネットOAM用に予約されたマルチキャスト宛先アドレスを使うことで、親局装置において子局装置のアドレスを管理する必要がなく、VLANの設定作業をより一層軽減することができる。
【0015】
(3) 前記特定制御フレームは、Link OAMに規定されたイーサタイプ、又は、イーサネットOAMに規定されたイーサタイプを含んでもよい。これにより、子局装置は、受信フレームのタイプフィールドに、Link OAMに規定されたイーサタイプ(0x8809)、又は、イーサネットOAMに規定されたイーサタイプ(0x8902)が格納されているか否かに基づいて、特定制御フレームを識別することができる。
【0016】
(4) 前記特定制御フレームは、前記イーサタイプのサブタイプとして、OAMのサブタイプを含み、前記第2制御部は、前記サブタイプをさらに参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定してもよい。子局装置における特定制御フレームの識別に、OAMのサブタイプ(0x03)が使用されることにより、さらに正確な特定制御フレームの識別が可能となる。
【0017】
(5) 前記第2制御部は、特定制御フレームに含まれるベンダーコードに基づいて、前記特定制御フレームが真正の特定制御フレームであるか否かを判定してもよい。これにより、子局装置において不正な特定制御フレームを識別することができ、子局装置が不正に設定されることを抑制することができる。
【0018】
(6) 前記特定制御フレームは、真正の特定制御フレームを証明するための証明書情報が格納されるフィールドを含み、前記第2制御部は、特定制御フレームに含まれる前記フィールドに格納された情報にさらに基づいて、前記特定制御フレームが真正の特定制御フレームであるか否かを判定してもよい。これにより、子局装置において不正な特定制御フレームをより一層正確に識別することができる。
【0019】
(7) 前記第2制御部は、前記特定制御フレームの送信元アドレスを宛先アドレスとして含み、前記特定制御フレームのVLANタグと同一のVLANタグを含む前記応答フレームを作成してもよい。子局装置においてVLAN IDが事前に設定されていなくても、子局装置において応答フレームを作成し、当該応答フレームを子局装置から親局装置へ送信することができる。
【0020】
(8) 前記第1制御部は、前記親局装置とセッションが確立している子局装置のVLAN IDが変更された場合、セッション状態を維持したまま、変更後のVLAN IDが格納されたVLANタグを含む特定制御フレームを作成してもよい。本開示では、子局装置においてVLAN IDを使用せずに特定制御フレームを識別する。したがって、VLAN IDが変更されたとしても、子局装置において親局装置とのセッション状態を変化させる必要がない。上記構成とすることにより、子局装置に割り当てられるVLAN IDが変化した場合に、親局装置と子局装置との間で新たにセッション確立のための通信処理(ハンドシェイク)を行う必要がない。
【0021】
(9) 前記子局装置は、記憶部をさらに含み、前記第2制御部は、前記親局装置から送信された前記特定制御フレームを受信した場合、受信された前記特定制御フレームに含まれるVLAN IDを前記記憶部に記憶させ、前記第2制御部は、前記子局装置から前記親局装置へ送信する制御フレームを作成する場合、前記記憶部に記憶された前記VLAN IDが格納されたVLANタグを含む制御フレームを作成してもよい。これにより、オペレータが子局装置にVLAN IDを設定しなくても、子局装置においてVLANタグを含む制御フレームを作成し、当該制御フレームを子局装置から親局装置へ送信することができる。
【0022】
(10) 前記特定制御フレームは、Link OAMフレーム又はイーサネットOAMフレームであってもよい。これにより、子局装置においてVLANの情報を設定することなく、Link OAMフレーム又はイーサネットOAMフレームを用いて親局装置が子局装置を制御することができる。
【0023】
(11) 本実施形態に係る親局装置は、VLANを介して子局装置と接続される親局装置であって、前記子局装置毎に、前記子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDを記憶する記憶部と、前記子局装置を制御するための特定制御フレームを作成する制御部と、を含み、前記特定制御フレームは、前記VLAN IDが格納されたVLANタグを含み、前記特定制御フレームを前記子局装置へ送信する前に、前記子局装置に前記VLAN IDを設定しない。子局装置においてVLANの情報が設定されないため、VLANの設定作業を軽減することができる。
【0024】
(12) 本実施形態に係る子局装置は、VLANを介して親局装置と接続される子局装置であって、前記親局装置から送信される特定制御フレームを処理し、応答フレームを作成する制御部を備え、前記特定制御フレームは、前記子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDが格納されたVLANタグを含み、前記制御部は、受信フレームにおけるVLANタグの情報に関わらず、宛先アドレス及びイーサタイプを参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定する。子局装置において特定制御フレームの識別にVLANタグが使用されないため、子局装置においてVLANの情報が設定されている必要がない。したがって、VLANの設定作業を軽減することができる。
【0025】
(13) 本実施形態に係るコンピュータプログラムは、VLANを介して親局装置と接続される子局装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、前記親局装置から送信される特定制御フレームを処理し、応答フレームを作成するステップを実行させ、前記ステップは、受信フレームにおけるVLANタグの情報に関わらず、宛先アドレス及びイーサタイプを参照することにより、前記受信フレームが前記特定制御フレームであるか否かを判定することを含む。子局装置において特定制御フレームの識別にVLANタグが使用されないため、子局装置においてVLANの情報が設定されている必要がない。したがって、VLANの設定作業を軽減することができる。
【0026】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0027】
本実施形態では、Link OAMによる通信を行う通信システムについて説明する。
【0028】
[1.通信システムの構成]
図1は、本実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す図である。
図1に示すように、通信システム10は、親局装置1と、子局装置2と、ネットワーク3と、管理サーバ7とを備える。
【0029】
ネットワーク3は、子局装置2と同数のVLANを含む。子局装置2とVLANとは一対一に対応する。各VLANは互いに異なるVLAN IDを有する。つまり、子局装置2のそれぞれには、ユニークなVLAN IDが割り当てられている。本実施形態では、子局装置2には、自装置に割り当てられたVLAN IDが設定されない。ネットワーク3は、少なくとも1つのL2スイッチ4を含む。
【0030】
ネットワーク3は、光ファイバ又は同軸ケーブルなどの通信ケーブルを含む。通信回線の代わりに、無線通信の伝送路を採用することもできる。
通信システム10の上位側に位置する親局装置1は、上位網5と通信可能に接続され、通信システム10の下位側に位置する子局装置2は、下位網6と通信可能に接続されている。下位網6は、例えば、宅内LAN(Local Area Network)又は社内LANなどよりなる。
【0031】
親局装置1及び子局装置2は、イーサネット(登録商標)フレーム、IPパケット等のPDU(Protocol Data Unit)である通信データを送受信可能であり、イーサネットOAMに対応する通信機器である。また、親局装置1及び子局装置2は、IEEE802.3ahに規定するLink OAMの機能を有する。
Link OAMは、対向するイーサネット機器間の物理回線や通信状態の監視などを目的とする、P2P(Point to Point)での利用を前提とするOAM機能であり、制御プロトコルである。
【0032】
親局装置1は、管理サーバ7に接続される。管理サーバ7は、親局装置1に対して種々の指令を送信することができる。
【0033】
[2.親局装置の内部構成]
図2は、親局装置1の内部構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の親局装置1は、上位側インタフェース部11、制御部(第1制御部)12、第1処理部13、第2処理部14、下位側インタフェース部15、上りバッファ16、下りバッファ17、記憶部18、及び外部インタフェース部19を備える。
【0034】
上位側インタフェース部11は、上り方向及び下り方向の電気信号に対して、レイヤ1及びレイヤ2の通信処理を実行する集積回路を含む。
制御部12、第1処理部13及び第2処理部14は、上り方向及び下り方向の通信データに対して、IEEE 802.3ahなどの所定の通信規格に則った通信処理を実行する集積回路(例えば、MACチップ)よりなる。
【0035】
図3は、制御部12のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。具体的な一例では、制御部12は、プロセッサ12aと、ROM(Read Only Memory)からなる不揮発性メモリ12bと、RAM(Random Access Memory)からなる揮発性メモリ12cと、通信データ及び制御信号の入出力を行う入出力部12dとを有する。プロセッサ12aは、例えばCPU(Central Processing Unit)よりなる。
【0036】
不揮発性メモリ12bには、親局プログラム12eが記憶される。親局装置1は、コンピュータを備えて構成され、親局装置1の機能は、前記コンピュータの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムである親局プログラム12eがプロセッサ12aによって実行されることで発揮される。親局プログラム12eは、CD-ROM、フラッシュメモリなどの記録媒体に記憶させることができる。親局プログラム12eは、記録媒体又は通信手段によって流通し、入出力部12dを経由して不揮発性メモリ12bにダウンロードすることが可能である。プロセッサ12aは、親局プログラム12eを実行することができる。プロセッサ12aが親局プログラム12eを実行することにより、親局装置1は後述するような処理を実行することができる。
【0037】
なお、制御部12の構成は上記に限られない。制御部12は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよいし、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスであってもよい。この場合、ASIC又はプログラマブルロジックデバイスは、親局プログラム12eと同様の処理を実行可能に構成される。
【0038】
再び
図2を参照する。第1処理部13及び第2処理部14は、特定の情報処理が可能となるように設計された論理回路デバイスよりなり、例えば、ASIC及びプログラマブルロジッデバイスのうちの少なくとも1つを含む。
【0039】
下位側インタフェース部15は、電気信号又は光信号を送受信する素子を含む通信デバイスよりなる。
下位側インタフェース部15は、ネットワーク3から受信した信号を電気信号よりなる通信データ(フレーム)に変換し、変換した通信データを第1処理部13に出力する。下位側インタフェース部15は、下りバッファ17に通信データがあれば、当該通信データを電気信号又は光信号に変換し、変換した信号をネットワーク3に送出する。
【0040】
第1処理部13は、VLAN判定部13a及び制御フレーム判定部13bの機能を有する。
【0041】
VLAN判定部13aは、受信された通信データ(受信フレーム)がユーザフレームであるか制御フレームであるかを問わず、通信データにVLANタグが含まれているか否かを判定する。さらにVLAN判定部13aは、受信フレームがVLANタグを含んでいる場合、当該受信フレームが転送すべき通信データであるか否かを判定する。記憶部18には転送すべきVLAN IDが登録されたVLANテーブルが記憶されている。VLAN判定部13aは、VLANテーブルを参照し、受信フレームが転送されるべきものであるか否かを判定する。受信フレームが転送されるべき通信データである場合、当該通信データは制御フレーム判定部13bに与えられる。受信フレームが転送されるべき通信データでない場合、当該通信データは廃棄される。
【0042】
制御フレーム判定部13bは、VLAN判定部13aから与えられた受信フレームが制御フレームであるか否かを判定する。制御フレームには、Link OAM、LACP、及びイーサネットOAMそれぞれの通信フレームが含まれる。特に、Link OAMの制御フレームには、Information OAMの制御フレームとOrganization Specific OAMの制御フレームとが含まれる。本実施形態では、Link OAMの制御フレームを、後述のように定義された特定制御フレームとする。制御フレーム判定部13bは、入力された通信データが、特定制御フレームを含む制御フレーム(例えば、特定制御フレーム以外にも、LACPによる制御フレーム等が含まれる)であるか、制御フレーム以外のPDU(Protocol Data Unit)であるかを判定する。
【0043】
第1処理部13は、入力された通信データが制御フレームであると判定された場合に、当該制御フレームを制御部12に出力する。第1処理部13は、入力された通信データが制御フレームでないと判定された場合に、当該通信データを上りバッファ16に出力する。
【0044】
上位側インタフェース部11は、上位網5から受信した伝送信号を通信データに変換し、変換した通信データを第2処理部14に出力する。
上位側インタフェース部11は、上りバッファ16に通信データがあれば、その通信データを伝送信号に変換し、変換した伝送信号を上位網5に送出する。
【0045】
第2処理部14は、VLAN判定部14a及び合流部14bの機能を有する。
【0046】
VLAN判定部14aは、受信された通信データにVLANタグが含まれているか否かを判定する。さらにVLAN判定部14aは、受信データがVLANタグを含んでいる場合、記憶部18のVLANテーブルを参照し、受信データが転送されるべきものであるか否かを判定する。受信データが転送されるべき通信データである場合、当該通信データは合流部14bに与えられる。受信データが転送されるべき通信データでない場合、当該通信データは廃棄される。
【0047】
制御部12は、後述するように特定制御フレームを作成し、当該特定制御フレームを第2処理部14へ出力する。出力された特定制御フレームは、合流部14bに与えられる。制御部12は、特定制御フレーム以外の制御フレーム(例えば、LACPによる制御フレーム)を作成し、合流部14bへ出力することもできる。合流部14bは、制御部12から与えられた制御フレーム(特定制御フレームを含む)を出力する。さらに合流部14bは、VLAN判定部14aから与えられた通信データを出力する。合流部14bから出力された通信データ(制御フレームを含む)は、下りバッファ17に書き込まれる。
【0048】
外部インタフェース部19は、通信線を介して管理サーバ7に接続される。外部インタフェース部19は、管理サーバ7から送信された指令を受信することができる。外部インタフェース部19は、制御部12に接続されている。管理サーバ7から外部インタフェース部19が受信した指令は、制御部12に与えられる。
【0049】
制御部12は、子局装置を制御するための特定制御フレームを作成する。特定制御フレームは、Link OAMフレームである。さらに具体的には、特定制御フレームは、Information OAMフレーム、又は、Organization Specific OAMフレームである。Information OAMフレームはLink OAMフレームの一種であり、Organization Specific OAMフレームもLink OAMフレームの一種である。
【0050】
図4は、Information OAMフレームである特定制御フレームの構成の一例を示す図である。Information OAMフレームは、宛先アドレス101、送信元アドレス102、長さ/タイプ104、サブタイプ105、フラグ106、データ等のフィールドを有する。Link OAMではVLANの使用が想定されていないため、一般的なInformation OAMフレームにはVLANタグが含まれていない。しかし、本実施形態に係る特定制御フレームとしてのInformation OAMレームは、送信元アドレス102と長さ/タイプ104の間に、VLANタグ103のフィールドを有する。なお、
図4の例では、2段のVLANタグフィールドが設けられているが、1段であってもよい。ただし、1段のVLANタグで指定可能なVLAN IDは0-4095であるため、使用されるVLAN IDの数は4096個以下に限られる。
【0051】
宛先アドレス101には、イーサネットOAMのマルチキャスト宛先アドレスが格納される。イーサネットOAM用に予約されるマルチキャスト宛先アドレスは、01-80-C2-00-00-3x(xは16進数で0~Fの中の任意の値)である。Link OAM用に予約されるマルチキャスト宛先アドレス(01-80-C2-00-00-02)が宛先アドレス101に格納されたフレームは、L2スイッチ4(
図1参照)において廃棄されてしまう。これに対して、イーサネットOAMのマルチキャスト宛先アドレスが宛先アドレス101に格納されたフレームは、L2スイッチ4において転送される。したがって、特定制御フレームを目的の子局装置へ送信することができる。
【0052】
送信元アドレス102には、親局装置1のMACアドレスが格納される。
【0053】
VLANタグ103には、VLAN IDが格納される。上述したように、各子局装置2には、ユニークなVLAN IDが割り当てられている。制御部12は、目的の子局装置2に割り当てられたVLAN IDを、特定制御フレームのVLANタグ103に格納する。
【0054】
記憶部18にはVLANリスト18aが記憶されている。VLANリスト18aは、目的の子局装置2に割り当てられたVLAN IDの特定に用いられる。
図5は、VLANリストの一例を示す図である。
図5に示される例では、子局装置2の番号と、2段のVLAN IDとが対応づけられている。つまり、本例では、VLAN ID1及びVLAN ID2を含む二重のVLAN IDが定められている。例えば、制御部12は、#1の子局装置2に特定制御フレームを送信する場合、VLANリスト18aを参照して子局装置番号#1に対応するVLAN ID1及びVLAN ID2として1及び101をそれぞれ特定する。制御部12は、同様に、#2の子局装置2に特定制御フレームを送信する場合、VLANリスト18aを参照して子局装置番号#2に対応するVLAN ID1及びVLAN ID2として1及び102をそれぞれ特定する。制御部12は、特定されたVLAN ID(VLAN ID1及びVLAN ID2)を特定制御フレームのVLANタグ103に格納する。
【0055】
再び
図4を参照する。長さ/タイプ104は、イーサタイプを指定するフィールドである。長さ/タイプ104には、Link OAMに規定されたイーサタイプ「0x8809」が格納される。
【0056】
サブタイプ105には、OAMを示すサブタイプの値「0x03」が格納される。
【0057】
Link OAMのセッションには2つの状態がある。1つの状態はセッションが切断された状態(以下、「セッション切断状態」という)であり、もう1つの状態はセッションが確立された状態(以下、「セッション確立状態」という)である。フラグ106には、親局装置1と子局装置2とのセッションの状態を示す値が格納される。例えば、両装置のセッションが確立していない場合、フラグ106には「40」が格納される。送信装置(この場合は親局装置1)のセッションが確立しており、対向装置(この場合は子局装置2)のセッションが未確立の場合、フラグ106には「72」が格納される。両装置のセッションが確立している場合、フラグ106には「80」が格納される。
【0058】
Information OAMフレームのデータフィールドは、Local Information TLVフィールド、Remote Information TLVフィールド、及びInformation TLV #3フィールドを含む。Local Information TLVフィールドは、OUI(Organizationally Unique Identifier)107、及びVendor Specific Info108の各フィールドを含む。
【0059】
OUI107には、ベンダー固有の識別番号が格納される。Vendor Specific Info108は、ベンダーによって定義される任意の情報が格納される。本実施形態では、Vendor Specific Info108に、暗号化された証明書情報が格納される。
【0060】
図6は、Organization Specific OAMフレームである特定制御フレームの構成の一例を示す図である。Organization Specific OAMフレームは、宛先アドレス201、送信元アドレス202、長さ/タイプ204、サブタイプ205、フラグ206、データ等のフィールドを有する。Information OAMフレームと同様、一般的なOrganization Specific OAMフレームにはVLANタグが含まれていない。しかし、本実施形態に係る特定制御フレームとしてのOrganization Specific OAMレームは、送信元アドレス202と長さ/タイプ204の間に、VLANタグ203のフィールドを有する。
【0061】
宛先アドレス201、送信元アドレス202、VLANタグ203、長さ/タイプ204、サブタイプ205、フラグ206の各フィールドに格納される値は、Information OAMフレームと同様であるので、説明を省略する。
【0062】
Organization Specific OAMフレームのデータフィールドは、OUI207等の複数のフィールドを含む。OUI207には、ベンダー固有の識別番号が格納される。
【0063】
上記のような特定制御フレームは、下位側インタフェース部15からネットワーク3へ送出される(
図2参照)。ネットワーク3に含まれるL2スイッチ4(
図1参照)には、VLAN IDと、当該VLAN IDが割り当てられた子局装置2に接続されたポートの番号とが対応づけて記憶されている。L2スイッチ4は、特定制御フレームに含まれるVLANタグ103,203に格納されたVLAN IDに対応するポートを特定し、当該ポートから特定制御フレームを出力する。特定制御フレームは、当該ポートに接続された子局装置2、すなわちVLAN IDに対応する子局装置2によって受信される。上記のような構成とすることにより、親局装置1において子局装置2のMACアドレスを管理する必要がなく、VLANに関する設定作業が軽減される。
【0064】
[3.子局装置の内部構成]
図7は、子局装置2の内部構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施形態の子局装置2は、下位側インタフェース部21、制御部(第2制御部)22、第1処理部23、第2処理部24、上位側インタフェース部25、上りバッファ26、下りバッファ27、及び記憶部28を備える。
【0065】
下位側インタフェース部21は、上り方向及び下り方向の電気信号に対して、レイヤ1及びレイヤ2の通信処理を実行する集積回路を含む。
制御部22、第1処理部23及び第2処理部24は、上り方向及び下り方向の通信データに対して、IEEE 802.3ahなどの所定の通信規格に則った通信処理を実行する集積回路(例えば、MACチップ)よりなる。
【0066】
図8は、制御部22のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。具体的な一例では、制御部22は、プロセッサ22aと、ROMからなる不揮発性メモリ22bと、RAMからなる揮発性メモリ22cと、通信データ及び制御信号の入出力を行う入出力部22dとを有する。プロセッサ22aは、例えばCPU(Central Processing Unit)よりなる。
【0067】
不揮発性メモリ22bには、子局プログラム22eが記憶される。子局装置2は、コンピュータを備えて構成され、子局装置2の機能は、前記コンピュータの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムである子局プログラム22eがプロセッサ22aによって実行されることで発揮される。子局プログラム22eは、CD-ROM、フラッシュメモリなどの記録媒体に記憶させることができる。子局プログラム22eは、記録媒体又は通信手段によって流通し、入出力部22dを経由して不揮発性メモリ22bにダウンロードすることが可能である。プロセッサ22aは、子局プログラム22eを実行することができる。プロセッサ22aが子局プログラム22eを実行することにより、子局装置2は後述するような処理を実行することができる。
【0068】
なお、制御部22の構成は上記に限られない。制御部22は、例えば、ASICであってもよいし、ゲートアレイ、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスであってもよい。この場合、ASIC又はプログラマブルロジックデバイスは、子局プログラム22eと同様の処理を実行可能に構成される。
【0069】
再び
図7を参照する。第1処理部23及び第2処理部24は、特定の情報処理が可能となるように設計された論理回路デバイスよりなり、例えば、ASIC及びプログラマブルロジックデバイスのうちの少なくとも1つを含む。
【0070】
上位側インタフェース部25は、電気信号又は光信号を送受信する素子を含む通信デバイスよりなる。
上位側インタフェース部25は、ネットワーク3から受信した信号を電気信号よりなる通信データ(フレーム)に変換し、変換した通信データを第1処理部23に出力する。上位側インタフェース部25は、上りバッファ26に通信データがあれば、当該通信データを電気信号又は光信号に変換し、変換した信号をネットワーク3に送出する。
【0071】
第1処理部23は、制御フレーム判定部23a及びVLAN判定部23bの機能を有する。
【0072】
制御フレーム判定部23aは、受信された通信データ(受信フレーム)が特定制御フレームを含む制御フレームであるか否かを判定する。具体的には、制御フレーム判定部23aは、入力された通信データが、Link OAMの制御フレーム(特定制御フレーム)、又はLink OAM以外の制御プロトコル(例えば、LACP)による制御フレームであるか、制御フレーム以外のPDUであるかを判定する。
【0073】
第1処理部23は、入力された通信データが制御フレームであると判定された場合に、当該制御フレームを制御部22に出力する。入力された通信データが制御フレームでないと判定された場合、当該通信データはVLAN判定部23bに与えられる。
【0074】
VLAN判定部23bは、与えられた通信データにVLANタグが含まれているか否かを判定する。さらにVLAN判定部23bは、受信フレームがVLANタグを含んでいる場合、当該受信フレームが転送すべき通信データであるか否かを判定する。記憶部28には転送すべきVLAN IDが登録されたVLANテーブルが記憶されている。VLAN判定部23bは、VLANテーブルを参照し、受信フレームが転送されるべきものであるか否かを判定する。受信フレームが転送されるべき通信データである場合、当該通信データは下りバッファ27に出力される。受信フレームが転送されるべき通信データでない場合、当該通信データは廃棄される。
【0075】
下位側インタフェース部21は、下位網6から受信した伝送信号を通信データに変換し、変換した通信データを第2処理部24に出力する。
下位側インタフェース部21は、下りバッファ27に通信データがあれば、その通信データを伝送信号に変換し、変換した伝送信号を下位網6に送出する。
【0076】
第2処理部24は、VLAN判定部24a及び合流部24bの機能を有する。
【0077】
VLAN判定部24aは、受信された通信データにVLANタグが含まれているか否かを判定する。さらにVLAN判定部24aは、受信データがVLANタグを含んでいる場合、記憶部28のVLANテーブルを参照し、受信データが転送されるべきものであるか否かを判定する。受信データが転送されるべき通信データである場合、当該通信データは合流部24bに与えられる。受信データが転送されるべき通信データでない場合、当該通信データは廃棄される。
【0078】
制御部22は、特定制御フレームが受信された場合、特定制御フレームを処理し、後述するように応答フレームを作成し、当該応答フレームを第2処理部24へ出力する。出力された応答フレームは、合流部24bに与えられる。合流部24bは、制御部22から与えられた特定制御フレームを出力する。さらに合流部24bは、VLAN判定部24aから与えられた通信データを出力する。合流部24bから出力された通信データ(特定制御フレームを含む)は、上りバッファ26に書き込まれる。
【0079】
記憶部28には、直近に受信された特定制御フレームに含まれるVLANタグ103,203に格納されたVLAN IDが記憶される。つまり、子局装置2において特定制御フレームが受信された場合、記憶部28のVLAN IDは、受信された特定制御フレームに含まれるVLAN IDで上書きされる。このVLAN IDは、当該子局装置2に割り当てられたVLAN IDである。つまり、記憶部28には、自装置に割り当てられたVLAN IDが記憶される。
【0080】
子局装置2において、自装置のVLAN ID以外の特定制御フレームのVLANに関する情報は予め記憶されない。子局装置2は、親局装置1から特定制御フレームを受信したとき、自装置に割り当てられたVLAN IDを学習(記憶)する。このため、VLANの設定作業が軽減される。
【0081】
記憶部28には、直近に受信された特定制御フレームに含まれる送信元アドレス102,202に格納されたMACアドレス、すなわち、親局装置1のMACアドレスが記憶される。記憶部28に記憶されたMACアドレスは、応答フレームの作成に使用される。
【0082】
制御部22は、受信フレームにおけるVLANタグの情報に関わらず、宛先アドレス及びイーサタイプを参照することにより、受信フレームが特定制御フレームであるか否かを判定する。この判定において、制御部22は、与えられた受信フレームにおけるVLANタグを参照しない。制御部22は、与えられた受信フレームにおける宛先アドレス及び長さ/タイプのフィールドの値を参照し、宛先アドレスがイーサネットOAMのマルチキャスト宛先アドレスであり、長さ/タイプの値がLink OAMに規定されたイーサタイプ「0x8809」であれば、特定制御フレームであると判定する。子局装置2における特定制御フレームの識別には、サブタイプの値が使用されてもよい。つまり、制御部22は、宛先アドレスがイーサネットOAMのマルチキャスト宛先アドレスであり、長さ/タイプの値が「0x8809」であるのに加え、サブタイプがOAMを示す値「0x03」であれば、受信フレームが特定制御フレームであると判定することができる。
【0083】
制御部22は、特定制御フレームを受信した場合、応答フレームを作成する。応答フレームの種別は、特定制御フレームと同一である。特定制御フレームがInformation OAMフレームである場合、Information OAMフレームである応答フレームが作成される。特定制御フレームがOrganization Specific OAMフレームである場合、Organization Specific OAMフレームである応答フレームが作成される。応答フレームには、特定制御フレームと同様に、VLANタグが含まれる。
【0084】
図4及び
図6を参照する。応答フレームの宛先アドレス101,201には、記憶部28に記憶された親局装置1のMACアドレスが格納される。つまり、応答フレームはユニキャストで送信される。応答フレームの送信元アドレス102,202には、自装置(子局装置2)のMACアドレスが格納される。
【0085】
応答フレームのVLANタグ103,203には、特定制御フレームのVLANタグ103,203に格納されていたVLAN IDと同一のVLAN IDが格納される。つまり、応答フレームのVLANタグ103,203には、自装置に割り当てられたVLAN IDが格納される。さらに、応答フレームの長さ/タイプ104,204及びサブタイプ105,205にも、特定制御フレームの長さ/タイプ104,204及びサブタイプ105,205と同一の値が格納される。つまり、応答フレームの長さ/タイプ104,204には、Link OAMに規定されたイーサタイプ「0x8809」が格納され、サブタイプ105,205には、OAMを示す値「0x03」が格納される。
【0086】
制御部22は、応答フレームのフラグ106,206のフィールドに、その時点におけるセッションの状態を示す値を格納する。例えば、両装置のセッションが確立していない場合、フラグ106,206には「40」が格納される。送信装置(この場合は子局装置2)のセッションが確立しており、対向装置(この場合は親局装置1)のセッションが未確立の場合、フラグ106,206には「72」が格納される。両装置のセッションが確立している場合、フラグ106,206には「80」が格納される。
【0087】
応答フレームがInformation OAMフレームである場合、OUI107及びVendor Specific Info108のそれぞれには、特定制御フレームと同一の値が格納される。つまり、OUI107にはベンダー固有の識別番号が格納され、Vendor Specific Info108には暗号化された証明書情報が格納される(
図4参照)。なお、応答フレームにおけるVendor Specific Info108は、特定制御フレームのVendor Specific Infoと異なる値であってもよい。例えば、応答フレームにおけるVendor Specific Info108に、正当な子局装置であることを証明するための情報が格納されてもよい。
【0088】
応答フレームがOrganization Specific OAMフレームである場合、OUI207には、特定制御フレームと同一の値が格納される。つまり、OUI207にはベンダー固有の識別番号が格納される(
図6参照)。
【0089】
上記のような応答フレームは、上位側インタフェース部25からネットワーク3へ送出される(
図7参照)。応答フレームは、ネットワーク3を介して、宛先アドレスに指定されたMACアドレスを有する親局装置1へ送信される。
【0090】
さらに、制御部22は、応答フレームではない制御フレーム(子局装置2から発せられる制御フレーム。特定制御フレームとは異なる一般の制御フレーム)を作成することができる。この場合、制御部22は、記憶部28に記憶された親局装置1のMACアドレス及び自装置に割り当てられたVLAN IDを使用する。具体的には、制御部22は、Link OAMフレームである制御フレームの宛先アドレス101,201に親局装置1のMACアドレスを格納し、送信元アドレス102,202に自装置2のMACアドレスを格納する(
図4及び
図6参照)。さらに制御部22は、送信元アドレス102,202と長さ/タイプ104,204との間にVLANタグ103,203を追加し、VLANタグ103,203に自装置に割り当てられたVLAN IDを格納する。制御部22は、当該制御フレームの長さ/タイプ104,204に、Link OAMに規定されたイーサタイプ「0x8809」を格納し、サブタイプ105,205に、OAMを示す値「0x03」を格納する。制御部22は、当該制御フレームのフラグ106,206のフィールドに、その時点におけるセッションの状態を示す値を格納する。
【0091】
制御フレームがInformation OAMフレームである場合、OUI107にはベンダー固有の識別番号が格納され、Vendor Specific Info108には暗号化された証明書情報が格納される(
図4参照)。制御フレームがOrganization Specific OAMフレームである場合、OUI207にはベンダー固有の識別番号が格納される(
図6参照)。
【0092】
[4.通信システムの動作]
以下に、本実施形態に係る通信システム10の動作を説明する。
図9は、本実施形態に係る親局装置における動作の手順の一例を示すフローチャートであり、
図10は、本実施形態に係る子局装置における動作の手順の一例を示すフローチャートである。以下の親局装置の動作は、プロセッサ12aが親局プログラム12eを実行することによって実現され、子局装置の動作は、プロセッサ22aが子局プログラム22eを実行することによって実現される。
【0093】
図9を参照する。特定制御フレームの送信は定期的に実行される。親局装置1では、子局装置2毎に、特定制御フレームの送信のための送信タイマと、応答フレームの受信のための受信タイマとを管理する。親局装置1のプロセッサ12aは、送信タイマに特定制御フレームの送信周期に対応した値セットする(ステップS101)。これにより、送信タイマがスタートする。
【0094】
プロセッサ12aは、特定制御フレームの送信条件が満たされているか否かを判定する(ステップS102)。特定制御フレームの送信条件は、以下の3つの事項を含み、3つの事項のいずれか1つ以上が満たされた場合、送信条件が満たされる。
(1)親局装置1が管理サーバ7から子局装置2の設定を指示された。
(2)特定制御フレームの送信がタイムアウトした(送信タイマ満了)。
(3)応答フレームの受信がタイムアウトした(受信タイマ満了)。
【0095】
特定制御フレームの送信条件が満たされていない場合(ステップS102においてNO)、プロセッサ12aは、ステップS102を再度実行する。
【0096】
特定制御フレームの送信条件が満たされている場合(ステップS102においてYES)、プロセッサ12aは、記憶部18に記憶されたVLANリスト18aから、特定制御フレームの送信対象の子局装置2に対応するVLAN IDを読み出す(ステップS103)。
【0097】
次に、プロセッサ12aは、上述した構成の特定制御フレームを作成する(ステップS104)。この特定制御フレームのVLANタグ103,203には、読み出されたVLAN IDが格納される。プロセッサ12aは、作成された特定制御フレームをネットワーク3へ送信する(ステップS105)。プロセッサ12aは、受信タイマに応答フレームの受信期間に対応する値をセットする(ステップS106)。
【0098】
図10を参照する。親局装置1から送信された特定制御フレームは、L2スイッチ4によって対象の子局装置2へ転送される。子局装置2のプロセッサ22aは、特定制御フレームを受信したか否かを判定する(ステップS201)。この処理では、受信フレームが特定制御フレームであるか否かが判定される。判定には、宛先アドレス、長さ/タイプ、及びサブタイプのそれぞれの値が使用される。宛先アドレスがイーサネットOAM用に予約されたマルチキャスト宛先アドレスであり、且つ、長さ/タイプの値がLink OAMに規定されたイーサタイプであり、且つ、サブタイプがOAMを示す値であれば、受信フレームが特定制御フレームであると判定され、それ以外であれば、受信フレームは特定制御フレームではないと判定される。
【0099】
特定制御フレームが受信されていない場合(ステップS201においてNO)、プロセッサ22aは、ステップS201を再度実行する。
【0100】
特定制御フレームが受信された場合(ステップS201においてYES)、プロセッサ22aは、特定制御フレームの種別を判定する(ステップS202)。Information OAMフレームのCodeフィールドには、Information OAMを示す値「0x00」が格納される。Organization Specific OAMフレームのCodeフィールドには、Organization Specific OAMを示す値「0xFE」が格納される。プロセッサ22aは、フレーム内のCodeフィールドを参照し、特定制御フレームの種別がInformation OAMであるか、Organization Specific OAMであるかを判定する。
【0101】
特定制御フレームの種別がInformation OAMである場合(ステップS202において「Information OAM」)、プロセッサ22aは、特定制御フレームが真正なフレームであるか否かを判定する(ステップS203)。この処理では、フレーム内のOUI107及びVendor Specific Info108の値が参照される。子局装置2の記憶部28には、真正なベンダーの識別番号及び真正な証明書情報が格納されている。記憶部28に格納された証明書情報は、復号化された情報である。プロセッサ22aは、フレーム内のOUI107の値と記憶部28に記憶されたベンダーの識別情報とを比較し、一致するか否かを判定する。さらにプロセッサ22aは、フレーム内のVendor Specific Info108の値を復号化し、復号化された値と記憶部28に記憶された証明書情報とを比較し、一致するか否かを判定する。プロセッサ22aは、ベンダーの識別情報及び証明書情報の両方が記憶部28に記憶された値と一致した場合、真正な特定制御フレームであると判定し、ベンダーの識別情報及び証明書情報の少なくとも一方が記憶部28に記憶された値と一致しない場合、不正な特定制御フレームであると判定する。
【0102】
受信された特定制御フレームが真正な特定制御フレームではない場合(ステップS203においてNO)、プロセッサ22aはステップS201へ戻る。
【0103】
受信された特定制御フレームが真正な特定制御フレームである場合(ステップS203においてYES)、プロセッサ22aは、特定制御フレームの送信元アドレス102,202に格納された親局装置1のMACアドレス及びVLANタグ103,203に格納されたVLAN ID(自装置に割り当てられたVLAN ID)を記憶部28に書き込む(ステップ204)。さらにプロセッサ22aは、Information OAMフレームである応答フレームを上述したように作成する(ステップS205)。
【0104】
特定制御フレームの種別がOrganization Specific OAMである場合(ステップS202において「Organization Specific OAM」)、プロセッサ22aは、特定制御フレームが真正なフレームであるか否かを判定する(ステップS206)。この処理では、フレーム内のOUI207の値が参照される。プロセッサ22aは、フレーム内のOUI207の値と記憶部28に記憶されたベンダーの識別情報とを比較し、一致するか否かを判定する。プロセッサ22aは、ベンダーの識別情報が記憶部28に記憶された値と一致した場合、真正な特定制御フレームであると判定し、ベンダーの識別情報が記憶部28に記憶された値と一致しない場合、不正な特定制御フレームであると判定する。
【0105】
受信された特定制御フレームが真正な特定制御フレームではない場合(ステップS206においてNO)、プロセッサ22aはステップS201へ戻る。
【0106】
受信された特定制御フレームが真正な特定制御フレームである場合(ステップS206においてYES)、プロセッサ22aは、特定制御フレームの送信元アドレス102,202に格納された親局装置1のMACアドレス及びVLANタグ103,203に格納されたVLAN ID(自装置に割り当てられたVLAN ID)を記憶部28に書き込む(ステップ207)。
【0107】
プロセッサ22aは、特定制御フレームに含まれる設定情報に応じて、自装置の設定を変更する(ステップS208)。例えば、特定制御フレームのデータフィールドにおいて、ユーザフレーム用のVLAN IDが格納されている場合、プロセッサ22aは、記憶部28に記憶されたVLANテーブルのVLAN IDを更新する。
【0108】
プロセッサ22aは、Organization Specific OAMフレームである応答フレームを上述したように作成する(ステップS209)。例えば、この応答フレームのデータフィールドには、設定の成否の情報が格納される。
【0109】
プロセッサ22aは、作成された応答フレームをネットワーク3へ送信する(ステップS210)。その後、プロセッサ22aは、ステップS201へ戻る。
【0110】
再び
図9を参照する。ステップS106の後、親局装置1のプロセッサ12aは、応答フレームを受信したか否かを判定する(ステップS107)。応答フレームが受信されていない場合(ステップS107においてNO)、プロセッサ12aは、受信タイマがタイムアウト時間に到達した、すなわちタイムアウトしたか否かを判定する(ステップS108)。受信タイマがタイムアウトしていない場合(ステップS108においてNO)、プロセッサ12aはステップS107へ戻る。
【0111】
受信タイマがタイムアウトしている場合(ステップS108においてYES)、プロセッサ12aは、ステップS102へ戻る。この場合、上記の(3)応答フレームの受信がタイムアウトした、が満たされる。したがって、ステップS102においてYESへ進む。
【0112】
応答フレームが受信された場合(ステップS107においてYES)、プロセッサ12aは、応答フレームが真正なフレームであるか否かを判定する(ステップS109)。この処理は、上述したステップS204及びS206と同様であるので、説明を省略する。
【0113】
受信された応答フレームが真正な応答フレームではない場合(ステップS109においてNO)、プロセッサ12aはステップS107へ戻る。
【0114】
受信された応答フレームが真正な応答フレームである場合(ステップS109においてYES)、プロセッサ12aは、応答フレームのVLANタグ103,203に格納されたVLAN IDが、記憶部18に記憶されたVLANリスト18aに登録されているVLAN IDと一致するか否かを判定する(ステップS110)。
【0115】
応答フレームのVLANタグ103,203に格納されたVLAN IDが、VLANリスト18aに登録されているVLAN IDと一致しない場合(ステップS110においてNO)、プロセッサ12aはステップS107へ戻る。
【0116】
応答フレームのVLANタグ103,203に格納されたVLAN IDが、VLANリスト18aに登録されているVLAN IDと一致する場合(ステップS110においてYES)、プロセッサ12aはVLAN IDによって子局装置2を特定する(ステップS111)。さらにプロセッサ12aは、当該子局装置2の状態情報を、応答フレームに含まれる値によって更新する(ステップS112)。さらにプロセッサ12aは、ステップS101に戻る。
【0117】
[5.変形例]
[5-1.第1変形例]
第1変形例では、子局装置2のVLAN IDが変更可能である。例えば、管理サーバ7は、子局装置2のVLAN IDの変更を親局装置1に指示する。このとき、管理サーバ7は、VLAN IDの変更対象の子局装置2の番号と、新たなVLAN IDを指定する。親局装置1のプロセッサ12aは、記憶部18に記憶されたVLANリスト18aにおいて、指定された子局装置の番号に対応するVLAN IDを、新たなVLAN IDに書き換える。
【0118】
親局装置1においては、VLAN IDが変更された子局装置2の状態情報は、VLAN IDの変更の前後で変化しない。例えば、親局装置1と子局装置2とのセッション状態が、両装置のセッションが確立している状態である場合において、VLAN IDの変更されるとき、親局装置1と子局装置2とのセッションが未確立の状態には変更されない。プロセッサ12aは、セッション状態を変更することなく、当該子局装置を送信対象とする特定制御フレームを作成し、当該特定制御フレームを送信することができる。この特定制御フレームのフラグ106,206には、両装置セッションが確立している状態を示す「80」が格納される。これにより、親局装置1と子局装置2との間で新たにセッション確立のための通信処理(ハンドシェイク)を行う必要がない。
【0119】
[5-2.第2変形例]
第2変形例では、特定制御フレームが、Link OAMフレームではなく、イーサネットOAMフレームとされる。具体的な一例では、イーサネットVSM(Vendor Specific OAM Message)フレームが使用される。
【0120】
図11は、イーサネットVSMフレームである特定制御フレームの構成の一例を示す図である。イーサネットVSMフレームは、宛先アドレス301、送信元アドレス302、VLANタグ303、イーサタイプ304、サブタイプ(OpCode)305、及びVendor Specific Data306等のフィールドを有する。Vendor Specific Data306は、上述したLink OAMフレームのフラグ~データの各フィールドと同じフォーマットとされてもよい(図示省略)。
【0121】
親局装置1から送信される特定制御フレームでは、宛先アドレス301に、イーサネットOAMのマルチキャスト宛先アドレス(01-80-C2-00-00-3x)が格納される。さらに、送信元アドレス302には、親局装置1のMACアドレスが格納され、VLANタグ303には、目的の子局装置2に割り当てられたVLAN IDが格納される。イーサタイプ304には、イーサネットOAMに規定されたイーサタイプ「0x8902」が格納され、サブタイプ305には、VSMを示す値「0x51」が格納される。本変形例では、特定制御フレームの識別に、宛先アドレス301、イーサタイプ304、及びサブタイプ305の値が使用される。つまり、宛先アドレス301の値がイーサネットOAMのマルチキャスト宛先アドレスであり、イーサタイプの値がイーサネットOAMに規定されたイーサタイプ「0x8902」であり、サブタイプの値がVSMを示す「0x51」であるフレームは、特定制御フレームと判定される。
【0122】
親局装置1から送信される特定制御フレームでは、Vendor Specific Data306に、上述したフラグ106,206に格納されるセッション状態を示す値と、OUI107に格納されるベンダー固有の識別情報と、Vendor Specific Info108に格納される暗号化された証明書情報が格納される。ベンダー固有の識別情報及び証明書情報は、真正な特定制御フレームであるか否かの判定に用いられる。
【0123】
子局装置2から送信される応答フレームでは、宛先アドレス301に、親局装置1のMACアドレスが格納される。さらに、送信元アドレス302には、応答フレームの送信元の子局装置2(自装置)のMACアドレスが格納される。VLANタグ303、イーサタイプ304、及びサブタイプ305のそれぞれの値は、特定制御フレームと同一である。つまり、VLANタグ303には、自装置に割り当てられたVLAN IDが格納され、イーサタイプ304には、イーサネットOAMに規定されたイーサタイプ「0x8902」が格納され、サブタイプ305には、VSMを示す値「0x51」が格納される。
【0124】
子局装置2から送信される応答フレームにおけるVendor Specific Data306の構成は、特定制御フレームにおけるVendor Specific Data306の構成と同様である。つまり、Vendor Specific Data306に、上述したフラグ106,206に格納されるセッション状態を示す値と、OUI107に格納されるベンダー固有の識別情報と、Vendor Specific Info108に格納される暗号化された証明書情報が格納される。セッション状態としては、その時点における最新の値が格納される。ベンダー固有の識別情報及び証明書情報は、特定制御フレームと同じ値が格納される。ただし、証明書情報は正当な子局装置であることを照明する情報であれば、特定制御フレームと同じ値でなくてもよい。
【0125】
[5-3.その他の変形例]
MACアドレスの前半部分(上位3オクテット)は、ベンダー固有の識別情報である。このMACアドレスに含まれるベンダーの識別情報を、特定制御フレーム(応答フレームを含む)の識別に使用してもよい。この場合、OUI107,207の情報は、特定制御フレームの識別に使用されなくてもよい。
【0126】
上述した実施形態では、子局装置2が受信された特定制御フレームによって自装置のVLAN IDを認識したが、これに限定されない。子局装置2は、特定制御フレーム以外の制御フレームによって自装置のVLAN IDを認識してもよい。
【0127】
上述した実施形態では、Information OAMフレームである特定制御フレームにおいて、Vendor Specific Info108に証明書情報を格納した。この証明書情報には、周知の認証技術を使用することができる。Vendor Specific Info108に格納される情報は証明書情報ではなく、例えばベンダーが定義した情報であってもよいし、Vendor Specific Info108に情報が格納されなくてもよい。
【0128】
[6.効果]
通信システム10は、親局装置1と、子局装置2とを備える。子局装置2は、親局装置1とVLANを介して接続される。親局装置1は、記憶部18と、制御部(第1制御部)12とを含む。記憶部18は、子局装置2毎に、子局装置2が属するVLANを識別するためのVLAN IDを記憶する。制御部12は、子局装置2を制御するための特定制御フレームを作成する。特定制御フレームは、VLAN IDが格納されたVLANタグ103,203を含む。子局装置2は、制御部(第2制御部)22を含む。制御部22は、特定制御フレームを処理し、応答フレームを作成する。制御部22は、受信フレームにおけるVLANタグ103,203の情報に関わらず、宛先アドレス101,201及び長さ/タイプ104,204を参照することにより、受信フレームが特定制御フレームであるか否かを判定する。子局装置2において特定制御フレームの識別にVLANタグ103,203が使用されないため、子局装置2においてVLANの情報が設定されている必要がない。したがって、VLANの設定作業を軽減することができる。
【0129】
特定制御フレームは、イーサネットOAM用に予約されたマルチキャスト宛先アドレスを、宛先アドレスとして含んでもよい。VLANタグの使用が想定されたイーサネットOAMのマルチキャスト宛先アドレスを使用することで、L2スイッチ4で特定制御フレームが廃棄されることなく、VLANタグ103,203で指定されたVLAN IDが割り当てられた子局装置2に特定制御フレームが到達する。よって、親局装置1において子局装置2のアドレスを管理する必要がなく、VLANの設定作業をより一層軽減することができる。
【0130】
特定制御フレームは、Link OAMに規定されたイーサタイプ、又は、イーサネットOAMに規定されたイーサタイプを含んでもよい。これにより、子局装置は、受信フレームの長さ/タイプフィールドに、Link OAMに規定されたイーサタイプ(0x8809)、又は、イーサネットOAMに規定されたイーサタイプ(0x8902)が格納されているか否かに基づいて、特定制御フレームを識別することができる。
【0131】
特定制御フレームは、イーサタイプのサブタイプとして、OAMのサブタイプを含んでもよい。制御部22は、サブタイプをさらに参照することにより、受信フレームが特定制御フレームであるか否かを判定してもよい。子局装置2における特定制御フレームの識別に、OAMのサブタイプ(0x03)が使用されることにより、さらに正確な特定制御フレームの識別が可能となる。
【0132】
制御部22は、特定制御フレームに含まれるベンダーコードに基づいて、特定制御フレームが真正の特定制御フレームであるか否かを判定してもよい。これにより、子局装置2において不正な特定制御フレームを識別することができ、子局装置2が不正に設定されることを抑制することができる。
【0133】
特定制御フレームは、真正の特定制御フレームを証明するための証明書情報が格納されるVendor Specific Infoフィールドを含んでもよい。制御部22は、特定制御フレームに含まれるVendor Specific Infoフィールドに格納された情報にさらに基づいて、特定制御フレームが真正の特定制御フレームであるか否かを判定してもよい。これにより、子局装置2において不正な特定制御フレームをより一層正確に識別することができる。
【0134】
制御部22は、特定制御フレームの送信元アドレス102,202を宛先アドレス101,201として含み、特定制御フレームのVLANタグ103,203と同一のVLANタグ103,203を含む応答フレームを作成してもよい。子局装置2においてVLAN IDが事前に設定されていなくても、子局装置2において応答フレームを作成し、当該応答フレームを子局装置2から親局装置1へ送信することができる。
【0135】
制御部12は、親局装置1とセッションが確立している子局装置2のVLAN IDが変更された場合、セッション状態を維持したまま、変更後のVLAN IDが格納されたVLANタグ103,203を含む特定制御フレームを作成してもよい。本開示では、子局装置2においてVLAN IDを使用せずに特定制御フレームを識別する。したがって、VLAN IDが変更されたとしても、子局装置2において親局装置1とのセッション状態を変化させる必要がない。上記構成とすることにより、子局装置2に割り当てられるVLAN IDが変化した場合に、親局装置1と子局装置2との間で新たにセッション確立のための通信処理(ハンドシェイク)を行う必要がない。
【0136】
子局装置2は、記憶部28をさらに含んでもよい。制御部22は、親局装置1から送信された特定制御フレームを受信した場合、受信された特定制御フレームに含まれるVLAN IDを記憶部28に記憶させてもよい。制御部22は、子局装置2から親局装置1へ送信する制御フレームを作成する場合、記憶部28に記憶されたVLAN IDが格納されたVLANタグ103,203を含む制御フレームを作成してもよい。これにより、オペレータが子局装置2にVLAN IDを設定しなくても、子局装置2においてVLANタグ103,203を含む制御フレームを作成し、当該制御フレームを子局装置2から親局装置1へ送信することができる。
【0137】
特定制御フレームは、Link OAMフレーム又はイーサネットOAMフレームであってもよい。これにより、子局装置2においてVLANの情報を設定することなく、Link OAMフレーム又はイーサネットOAMフレームを用いて親局装置1が子局装置2を制御することができる。
【0138】
親局装置1は、VLANを介して子局装置2と接続される。親局装置1は、記憶部18と、制御部(第1制御部)12とを備える。記憶部18は、子局装置2毎に、子局装置が属するVLANを識別するためのVLAN IDを記憶する。制御部12は、子局装置2を制御するための特定制御フレームを作成する。特定制御フレームは、VLAN IDが格納されたVLANタグ103,203を含む。親局装置1は、特定制御フレームを子局装置2へ送信する前に、子局装置2にVLAN IDを設定しない。子局装置においてVLANの情報が設定されないため、VLANの設定作業を軽減することができる。
【0139】
[7.補記]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0140】
1 親局装置
2 子局装置
3 ネットワーク
4 L2スイッチ
5 上位網
6 下位網
7 管理サーバ
10 通信システム
11 上位側インタフェース部
12 制御部(第1制御部)
12a,22a プロセッサ
12b,22b 不揮発性メモリ
12c,22c 揮発性メモリ
12d,22d 入出力部
12e 親局プログラム
13,23 第1処理部
13a,14a,23b,24a VLAN判定部
13b,23a 制御フレーム判定部
14,24 第2処理部
14b 合流部
15,25 対向側インタフェース部
16,26 上りバッファ
17,27 下りバッファ
18,28 記憶部
18a VLANリスト
19 外部インタフェース部
21 下位側インタフェース部
22 制御部(第2制御部)
22e 子局プログラム
24b 合流部
101,201,301 宛先アドレス
102,202,302 送信元アドレス
103,203,303 VLANタグ
104,204 長さ/タイプ
105,205,305 サブタイプ(OpCode)
106,206 フラグ
107,207 OUI(Organizationally Unique Identifier)
108 Vendor Specific Info
304 イーサタイプ
306 Vendor Specific Data