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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020165623
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057393
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240734(JP,A)
【文献】特開2015-058953(JP,A)
【文献】特開平11-171244(JP,A)
【文献】特開2018-172150(JP,A)
【文献】特開2015-123967(JP,A)
【文献】特開2003-327254(JP,A)
【文献】特開2018-058366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に強延伸された基材と、最内層にヒートシール性樹脂層と、を有する積層体からなる包装材の両側端部を、合掌状にヒートシールして縦方向に形成された背貼りシール部と、前記包装材で形成された胴部とを備えた筒状構造を有する包装袋であって、
当該筒状構造の包装袋の一方の端部であって上端シール部が形成される上端部と、
当該筒状構造の包装袋の他方の端部であって下端シール部が形成される下端部と、
を備え、
背貼りシール部は胴部と連結されている根元である基線から端部までの幅を有し、
背貼りシール部のうち、包装袋の前記上端部の側であり且つ背貼りシール部の前記端部には開封のきっかけとなる開封用ノッチが1箇所設けられており、
胴部を形成する包装材には、開封の際、前記開封用ノッチから出発した裂け目を捕捉して誘導するための左右一対の開封誘導線が設けられており、
前記開封誘導線は、脆弱加工によって形成される包装材を貫通しない切目線であり、前記背貼りシール部の基線を中心線として左右対称に形成され、前記開封用ノッチの近傍に設けた始点から出発して、包装袋の略左右幅方向に広がって終点に達し、
前記開封誘導線は、電子レンジ加熱時に内圧により部分的に開口して蒸気抜き部となり、
開封の際の裂け目が、終点以降は基材の縦方向の直進カット性により縦方向に進行して開口部が形成されることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記ヒートシール性樹脂層がC4(ブテン-1)をコモノマーとしてZiegler-Natta系の触媒を用いて共重合したポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記開封誘導線は前記始点から出発して、包装袋の略左右幅方向でかつ斜め下方向に広がり、前記終点は前記開封用ノッチよりも下部側にあることを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記開封誘導線の終点は下部方向に湾曲して終わる形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記開封誘導線の始点は前記開封用ノッチをその先端から延長した線上から離間した位置にあることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項6】
前記積層体の縦方向の腰強度(押し込み量10mm、ループ長50mm)が10mN~40mNであり、前記開口部の形状の幅方向の長さをa、縦方向の長さをbとした時、a/b<1であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項7】
前記ヒートシール性樹脂層の少なくとも一部がポリマーアロイ層を含み、少なくとも下端シール部において、剥離強度が3~20N/15mmであってイージーピール性を有しており、開封の際に前記下端シール部の幅の途中、または全幅を剥離するように開封するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項8】
前記開封誘導線は、レーザー加工によって形成される連続線、破線、点線、またはこれらの組み合わせからなるものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項9】
前記開封誘導線は、前記ヒートシール性樹脂層を貫通しないものであることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムからなる背貼りシール形状の包装袋に関し、特に電子レンジ調理後に内容物を取り出す際に、包装袋に大きな開口部をきれいに形成することができる包装袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済みまたは半調理状態の食品を常温、低温、あるいは冷凍保存可能に包装袋等の包装容器に収容し、開封せずに電子レンジで加熱して、食べられる状態にする食品が知られている。上記の用途に対応した包装袋はいくつか知られている。いずれも積層フィルムを用いて形成されるのが一般的である。また電子レンジで加熱したときに内圧が高まると、積層フィルムの一部に裂け目ができて当該裂け目から水蒸気を放出することにより破裂を防止する様にしたものもある。
【0003】
電子レンジでの調理後、内容物を摂取するためには、皿などの別容器に内容物を移す必要があるが、電子レンジでの加熱後は包装袋も高温になっていて、取り扱いに注意しないとやけどをしたり、取り落としたりする恐れがあるほか、別に皿を用意しなければならず面倒であった。そこで、調理後の包装袋をそのまま利用し、包装袋に大きな開口部を形成して直接内容物を摂取できるようにした包装袋が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には包装袋を形成する積層体に、開口予定部に沿った左右一対の開封誘導線を開封用ノッチ近傍から包装袋の下方の終点まで設けた包装袋が開示され、開封誘導線を設ける手段としてダイカッターやレーザー加工などが例示され、大きな開口幅の開口部を設けることができるとしている。しかし特許文献1の包装袋では開封誘導線を設けるにあたり、以下の課題がある。すなわち、レーザー加工によるハーフカット加工において、製品の流れ方向のほぼ全域に渡る加工を施す必要性があることから、レーザー加工に非常に時間がかかり、量産性が見込めない。またロータリーダイカッター等の刃物加工では、特に薄番手フィルムへのハーフカット加工は刃の高さ精度上難しく、やはり量産性が低い。また、電子レンジ調理適性については配慮されていない。
【0005】
また、特許文献2には、上下方向に易引裂性を有する積層フィルムで形成された、上下方向に延びる内容物を収納する包装袋が開示されているが、左右方向に設けられた開封予備線がノッチ近傍の背シール領域から入れられており、充填機精度により、レーザー加工とノッチの流れ方向での位置がずれた場合、開封ができないという問題がある。またシーラント物性を限定しておらず、手切れ性、電子レンジ加熱時の通蒸適性に配慮されていない。さらに開口したときに捲られた積層フィルムの腰強度が強い場合、開口部を覆うように戻ってしまい、内容物の取り出しができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-123967号公報
【文献】特許第6255830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、包装袋の長手方向に比較的大きな開口幅の開口部を容易に形成し食器として兼用することが可能であり、かつ電子レンジ調理においては通蒸も可能な包装袋およびその製造方法を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一側面は、縦方向に強延伸された基材と、最内層にヒートシール性樹脂層と、を有する積層体からなる包装材の両側端部を、合掌状にヒートシールして背貼りシール部を縦方向に形成した筒状構造を有する包装袋であって、背貼りシール部の上部には、開封のきっかけとなる開封用ノッチが1箇所設けられており、
胴部を形成する包装材には、開封の際、前記開封用ノッチから出発した裂け目を捕捉して誘導するための左右一対の開封誘導線が設けられており、
前記開封誘導線は、脆弱加工によって形成される包装材を貫通しない切目線であり、前記背貼りシール部の基線を中心線として左右対称に形成され、前記開封用ノッチの近傍に設けた始点から出発して、包装袋の略左右幅方向に広がって終点に達し、
前記開封誘導線は、電子レンジ加熱時に内圧により部分的に開口して蒸気抜き部となり、
開封の際の裂け目が、終点以降は基材の縦方向の直進カット性により縦方向に進行して開口部が形成されることを特徴とする包装袋である。
【0009】
上記包装袋おいて、前記ヒートシール性樹脂層がC4(ブテン-1)をコモノマーとしてZiegler-Natta系の触媒を用いて共重合したポリエチレンであって良い。
【0010】
上記包装袋おいて、前記開封誘導線は前記始点から出発して、包装袋の略左右幅方向でかつ斜め下方向に広がり、前記終点は前記開封用ノッチよりも下部側にあって良い。
【0011】
上記包装袋おいて、前記開封誘導線の終点は下部方向に湾曲して終わる形状であって良い。
【0012】
上記包装袋おいて、前記開封誘導線の始点は前記開封用ノッチをその先端から延長した線上から離間した位置にあって良い。
【0013】
上記包装袋おいて、前記積層体の縦方向の腰強度(押し込み量10mm、ループ長50mm)が10mN~40mNであり、前記開口部の形状の幅方向の長さをa、縦方向の長さをbとした時、a/b<1であって良い。
【0014】
上記包装袋おいて、前記ヒートシール性樹脂層の少なくとも一部がポリマーアロイ層を含み、少なくとも下端シール部において、剥離強度が3~20N/15mmであってイージーピール性を有しており、開封の際に前記下端シール部の幅の途中、または全幅を剥離するように開封するものであって良い。
【0015】
上記包装袋おいて、前記開封誘導線は、レーザー加工によって形成される連続線、破線、点線、またはこれらの組み合わせからなるものであって良い。
【0016】
上記包装袋おいて、前記開封誘導線は、前記ヒートシール性樹脂層を貫通しないものであって良い。
【0017】
本発明の別の側面は、以下の工程を含むことを特徴とする上記のいずれかの包装袋の製造方法である。
広幅の包装材を巻取で連続的に作成する工程。
包装材に開封誘導線を形成し、所定の幅にスリットして巻き取る工程。
所定幅の包装材を巻き出し、背貼りシール部を形成する工程。
内容物を収納し、包装袋の天地を熱シールする工程。
背貼りシール部に開封用ノッチを形成する工程。
【発明の効果】
【0018】
本発明の包装袋によれば、レーザー加工によるハーフカット加工と一軸延伸基材を組み合わせることにより、大きな開口面積が得られる開封を実現しながら、加工スピードが極端に遅くならず、量産性にも優れる包装袋が得られる。また、開口面積を広く確保できることから、食器との兼用を実現し、食事や菓子を置いて食べる際の利便性を向上可能である。
【0019】
またシーラント材となるヒートシール性樹脂層を選定する場合には、電子レンジ調理時の通蒸性をより好適なものとすることが可能である。
【0020】
またシーラント材のコシ強度の選定する場合には、開封したフィルムが開口面に戻ることを回避でき、食器としての使用感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の包装袋の一形態の模式平面図である。
図2】開封誘導線の別例を示す模式平面図である。
図3】開封誘導線の別例を示す模式平面図である。
図4】内容物を収納した包装袋を加熱する態様を示す外観模式図である。
図5】内容物を収納した包装袋を開封する態様を示す外観模式図である。
図6】内容物を収納した包装袋を大きく開口させた態様を示す外観模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0023】
図1は、本発明の包装袋の一形態の模式平面図である。本発明の包装袋1は、製造工程上の流れ方向でもある縦方向(図にはMD方向と記す。)に強延伸された基材と、最内層にヒートシール性樹脂層と、を有する積層体からなる包装材2の両側端部を、合掌状にヒートシールして背貼りシール部3を縦方向に形成した筒状構造を有する包装袋である。基材は縦方向に強延伸されていることで縦方向に破断が進みやすい。
【0024】
背貼りシール部3の上部で背貼りシール部3の端部3bには、開封のきっかけとなる、開封用ノッチ4が1箇所設けられている。また縦方向の両端部は内容物を収納後、平坦に押し潰してシールされて上端シール部6a、下端シール部6bとされ包装袋1が密封される。なお図1では背貼りシール部3が左側に倒れた態様とされているが、どちらに倒れた態様とするかは任意である。
【0025】
胴部を形成する包装材2の背貼りシール部3が形成された面には、開封用ノッチ4近傍から出発し包装材2の左右幅方向に進む、包装材の裂け目を捕捉して誘導するための左右一対の開封誘導線5が設けられている。
【0026】
開封誘導線5は、脆弱加工によって形成される、包装材2を貫通しない切目線であり、背貼りシール部3の根元である基線3aを中心線として左右対称に形成され、開封用ノッチ4の近傍に設けた始点sから出発して、斜め下方向に進行し、広がり開始点s2から包装袋の左右幅方向で斜め下方向に広がり、包装袋の左右側端側に設けた終点eに到達する。終点eは開封用ノッチ4よりも下部側となる。
【0027】
開封誘導線5は、包装材2を貫通しない切目線であればよく、ダイカッターやロータリーダイカッター等の刃物を用いる方法や、炭酸ガスレーザー等のレーザー加工機を用いる方法によって形成することができる。
【0028】
開封誘導線5は、包装材2の表面側から形成しても良いし、裏面側から形成しても良いが、レーザー加工機を用いて、包装材の表面側から形成し、最内層のヒートシール性樹脂層を貫通せずに残す方法であれば、安定した品質の製品が得られる。
【0029】
開封誘導線5の形状としては、図1に示したように、始点sから出発して、斜め下方向に進み、広がり開始点s2から左右幅方向でかつ斜め下方向に外側に向って広がり、下部側に湾曲して終点eとなるような形状でも良いし、図2に示したように、始点sから斜め下方向に進み、広がり開始点s2から左右幅方向でかつ斜め下方向に外側に向って広がり、終点eとなるような形状でも良い。ただし終点近傍で下部側に湾曲している形状としたほうが縦方向への切り裂きの進行がしやすく、より好ましい。
【0030】
開封誘導線5は、連続した線でも良いし、図3に示したような破線でも良い。特に図示しないが、点線でも良いし、これらの組み合わせでも良い。
【0031】
開封誘導線5は、開封用ノッチ4からの切り裂きを所定の方向へガイドする機能を有しているが、図にも示したように開封用ノッチ4が形成された背貼りシール部3自体には設けない。背貼りシール部3は包装材2が熱シールされているため、開封誘導線を設けても切裂きの誘導の効果があまり得られないからである。また開封誘導線5は、開封用ノッチ4をその先端から延長した線上からは離間した、ただし開封用ノッチ4の近傍を始点sとしたほうが好ましい。包装袋の製造の工程において、レーザー加工の工程と開封用ノッチ4を設ける工程は別の工程となるため、それぞれの加工のピッチが多少ずれることで始点sの開封用ノッチ4に対する位置が多少ずれても、開封用ノッチ4から開封誘導線5への切り裂きの接続ができなくなる恐れがなく、切り裂きに支障が出ないからである。
【0032】
次に本発明に係る包装袋1に用いる材料について説明する。
包装材2を構成する積層体の層構成としては、縦方向に強延伸されたフィルムを基材とし、最内層にヒートシール性樹脂層を有する以外は、特に限定されない。最も基本的な層構成としては、基材フィルム/ヒートシール性樹脂層からなる構成である。但し、これらを貼り合せるための接着剤層や、印刷層などは当然含まれても良い。
【0033】
上記の2層に追加される層としては、ガスバリア層、中間層などが挙げられる。特殊な用途としては、遮光層、紫外線吸収層などが追加される場合もある。また基材層がガスバリア層を兼ねる場合もある。
【0034】
基材フィルムとしては、通常、印刷加工適性を考慮して、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)や、延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(OPP)、延伸ナイロンフィルム(ONy)等の延伸フィルムが用いられる。
【0035】
ガスバリア層としては、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルム、金属酸化物蒸着フィルム、各種ガスバリア性樹脂フィルム等が使用される。
【0036】
ヒートシール性樹脂層(シーラント)としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が最も一般的なものとして用いることができるが、本発明に係る包装袋の場合には特にC4(ブテン-1)をコモノマーとしてZiegler-Natta系の触媒を用いて共重合したポリエチレンとすると、手切れ性が良く、かつまた電子レンジでの加熱時に、内圧により連続線、破線、点線、またはこれらの組み合わせの形態である開封誘導線5が部分的に破断して開口し、蒸気抜きとして機能する通蒸性がより的確に得られる包装袋とすることができるため、より好ましい。ヒートシール性樹脂層は、樹脂を溶融して基材層に押出して積層してもよいし、フィルムに成形されたものを貼り合せても良い。
【0037】
また包装材2を構成する積層体の縦方向の腰強度(押し込み量10mm、ループ長50mm)を10mN~40mNとして、開口部の形状の幅方向の長さをa、縦方向の長さをbとした時、a/b<1となるようにすると、開封用ノッチ4から開封誘導線5を切り裂き、さらに縦方向に切り裂いて包装袋1に開口部を形成したとき、切り裂かれた積層体で形成される舌状部分が、開口部が形成された側に戻らないため、内容物を包装袋1から直接摂取する際に邪魔にならず好ましい。
【0038】
また舌状部分を残さず、取り去ってしまう場合は、ヒートシール性樹脂層を易剥離性とすることで舌状部分の除去が容易となる。その場合はヒートシール性樹脂層の少なくとも一部がポリマーアロイ層を含み、少なくとも舌状部分の根元側のシール部となる下端シール部6bの剥離強度が3~20N/15mmであり、イージーピール性を有するものとすると好ましい。舌状部分を除去するためには、開封の際に下端シール部6bのシール幅の全幅を剥離するように開封すれば良い。また完全に剥離して取り去らずに途中まで剥離した状態としても、内容物の摂取をより容易にするという点では有効である。
【0039】
上述の様に、開封時に開封誘導線5の終端から背貼りシール部3に平行方向に引き裂き、包装袋1に大きな開口部を形成することができる。これにより、包装袋1を食器代わりに使用して、内容物を直接摂取することができる。
【0040】
包装袋1を開口させる態様を図4図6を用いて具体的に説明する。
図4は包装袋1に内容物を収納して密封し、電子レンジで加熱している状態である。内容物が収納され、また加熱されて内圧が高まり、包装袋1は膨らんだ状態となる。そして内圧が一定以上高まった状態となると、開封誘導線5が部分的に破断して小さな切れ目5aが形成されて蒸気7が噴出し、内圧が高まりすぎて包装袋1が破裂するのを防ぐ。
【0041】
電子レンジでの加熱調理が終了した後、取り出された包装袋は、図5に示す様に、開封用ノッチ4の両側の背貼りシール部3c、3dを摘んで矢印方向に引っ張ることで開封用ノッチ4の先端部分から背貼りシール部3を破断し、さらに包装材2を破断して開封誘導線5に接続し、開封誘導線5を破断してゆくことで包装袋に開口8を形成する。
【0042】
開封誘導線5の破断が終点eまで達した後、背貼りシール部3cをさらに下端シール部6b側に引っ張れば、包装材2は縦方向に破断が進みやすいため縦方向にさらに破断して、図6に示す様に大きな開口部9を形成することができる。そして例えばインナートレイ11に載置された内容物12を直接摂取することが容易にできる。インナートレイ11は必要に応じ設置される。このとき切り裂かれた側の包装材2は舌状部分13となっているが、包装材2を構成する積層体の腰強度を前述の様な値とすることで、舌状部分13が開口部9側に戻ってしまうことがなく、内容物12の摂取に支障がない。
【0043】
以下では、各種の包装袋の試料を作成して評価を行った結果を説明する。
<試験例1>
(試料作成)
・下記の層構成で積層体を作成した(数字は厚さを示す)。
一軸延伸ナイロン(Ny)(ユニアスロン)15μm//LLDPE(KF101、スカイフィルム)40μm
・積層体を背貼りシール部で貼り合わせて筒状とし、筒の一端側を平坦にシールし、他端側を内容物の挿入口とした。
・背貼りシール部の所定位置にIノッチ(直線状の切込み)を加工した。
・上記積層体の背貼りシール部側の面に、外層フィルム側から炭酸ガスレーザーを照射して、内層フィルムを貫通しない脆弱加工線を図1に示す形状で形成した。
・内容物として、開口サイズ140mm×170mm、高さ35mmのPP製シート成型トレーに冷凍炒飯200gを充填したものを収納し、挿入口部分をシールして密封し試料とした。
<試験例2>
・積層体を下記の層構成で作成した以外は試験例1と同様として試料を作成した。
一軸延伸Ny(ユニアスロン)15μm//LLDPE(MCS、東セロ)40μm
<試験例3>
・積層体を下記の層構成で作成した以外は試験例1と同様として試料を作成した。
一軸延伸NY(ユニアスロン)15μm//EPシーラント(7601ED、東レ)30μm
<試験例4>
・積層体を下記の層構成で作成した以外は試験例1と同様として試料を作成した。
一軸延伸PET(エンブレットPC)12μm//LLDPE(KF101)40μm
<試験例5>
・積層体を下記の層構成で作成した。
一軸延伸NY15μm//VM-PET12μ//LLDPE(KF101)50μm
・内容物として、チョコレート菓子80gを直接包装した。
・それ以外は試験例1と同様として試料を作成した。
<試験例6>
・積層体を下記の層構成で作成した。
一軸延伸PET12μm//VM-CPP25μm
・内容物として、チョコレート菓子80gを直接包装した。
・脆弱加工線の形状を図2に示した形状とした。
・それ以外は試験例1と同様として試料を作成した。
<試験例7>
・積層体を下記の層構成で作成した。
一軸延伸NY15μm//LLDPE(KF101、スカイフィルム)40μm
・脆弱加工線の形状を図2に示した形状とした。
・それ以外は試験例1と同様として試料を作成した。
<試験例8>
・積層体を下記の層構成で作成した以外は試験例1と同様として試料を作成した。
二軸延伸PET15μm//NY15μm//LLDPE(XMTN、フタムラ)30μm
<試験例9>
・積層体を下記の層構成で作成した以外は試験例1と同様として試料を作成した。
一軸延伸NY15μm//VM―PET12μm//EPシーラント(7601ED、東レ)30μm
【0044】
(加熱調理条件)
試験例1~4、試験例7~9は電子レンジにて1000Wで3分間加熱した。
(評価内容)

(1)開封性:Iノッチから手で開封した際、脆弱加工線に沿って開封した後、その終点から流れ方向にほぼ水平方向に直線的に開封可能な場合を〇、開封線が大きく曲がり十分な開口幅が得られない、もしくは開封線が広がりすぎて食器として使用できない場合は×とした。
(2)通蒸性:試験例1~4、試験例7~9についてはレンジアップ時に脆弱加工線から通蒸する場合は〇、通蒸しない場合は×とした。
(3)開口保持性:(1)で開封した開封部から手を離した際に、開口部にフィルムが戻らず、内容物の取り出しに十分な開口面積を確保できる場合は〇、開口部にフィルムが戻り邪魔になり内容物が取り出せない場合は×、フィルムの戻りはややあるが内容物の取り出しが可能な場合は△とした。
・結果を表1にまとめる。
【0045】
【表1】
【0046】
試験例1~6においては、いずれも大きな開口部が形成できた。またヒートシール性樹脂層を所定のものとすると、開封性と通蒸性がともに良好なものが得られた。また縦方向の腰強度を所定の値としたものは開口保持性が良好であった。
試験例7~9において開封性が×の結果であった。
試験例7においては、シーラントは試験例1と同様であるが、開封誘導線の終端が湾曲していないため、その分、開封性が良くなかったと考察される。
試験例8においては、基材が2軸延伸されたものであるため、縦方向への切り裂きが直線的に進みにくかった。
試験例9においては、層構成の影響と、シーラントがメタロセン触媒を用いたものであるため、開口保持性と共に開封性が不十分となったと考察される。
【符号の説明】
【0047】
1・・・包装袋
2・・・包装材
3・・・背貼りシール部
4・・・開封用ノッチ
5・・・開封誘導線
6a・・上端シール部
6b・・下端シール部
9・・・開口部
12・・内容物
13・・舌状部分
s・・・始点
e・・・終点
図1
図2
図3
図4
図5
図6