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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 11/00 20060101AFI20240717BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20240717BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20240717BHJP
   B60Q 1/00 20060101ALI20240717BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20240717BHJP
   H05B 45/50 20220101ALI20240717BHJP
   F21V 19/00 20060101ALN20240717BHJP
   F21W 102/14 20180101ALN20240717BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240717BHJP
【FI】
B60Q11/00 650D
B60Q11/00 650B
F21V7/00 590
F21V14/04
B60Q1/00 A
B60Q1/00 G
B60Q1/04 D
B60Q11/00 615A
B60Q11/00 610B
H05B45/50
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21W102:14
F21Y115:10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020166510
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057975
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 和則
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 秀丸
(72)【発明者】
【氏名】原尾 卓司
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-009825(JP,A)
【文献】特開2014-000908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 11/00
F21V 7/00
F21V 14/04
B60Q 1/00
B60Q 1/04
H05B 45/50
F21V 19/00
F21W 102/14
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する照射領域に光を照射可能な複数の素子と、前記複数の素子の異常の有無を検出する検出部とを有する車両用灯具と、
前記素子について前記異常が検出された場合に前記異常の発生に関する異常情報を報知する報知部と
を備え、
前記報知部は、前記複数の素子のうち所定の照射領域に光を照射可能な対象素子について前記異常が検出された場合と、前記複数の素子のうち前記対象素子とは異なる非対象素子について前記異常が検出された場合とで異なる内容の前記異常情報を報知する
車両用灯具システム。
【請求項2】
前記報知部は、前記非対象素子について前記異常が検出された場合には、前記異常が検出された前記非対象素子の検出状態に応じて異なる内容の前記異常情報を報知する
請求項1に記載の車両用灯具システム。
【請求項3】
前記検出状態は、前記異常が検出された前記非対象素子の個数について、全部の前記非対象素子の個数に対する割合を含む
請求項2に記載の車両用灯具システム。
【請求項4】
前記検出状態は、隣り合う複数の前記非対象素子について前記異常が検出された場合、隣り合う複数の前記非対象素子の個数又は当該個数に基づいて算出される値を含む
請求項2又は請求項3に記載の車両用灯具システム。
【請求項5】
前記検出状態は、前記対象素子と前記異常が検出された前記非対象素子との距離を含む
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の車両用灯具システム。
【請求項6】
前記所定の照射領域は、前記複数の素子により形成される走行用パターンのうち車両前方視における水平線の左右方向の中央部分に沿った領域である
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車両用灯具システム。
【請求項7】
前記車両用灯具は、前記対象素子についての前記異常が検出された場合、前記複数の素子の全部を、対応する複数の前記照射領域に光を照射しない非照射状態とする
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車両用灯具システム。
【請求項8】
前記車両用灯具は、前記複数の素子のうち前記対象素子とは異なる非対象素子について前記異常が検出された場合には、少なくとも前記対象素子については対応する前記照射領域に光を照射可能な状態を継続させる
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の車両用灯具システム。
【請求項9】
前記複数の素子は、車両搭載状態における水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に複数配置され、
前記対象素子は、前記水平方向の中央部かつ前記垂直方向の下部に配置される
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の車両用灯具システム。
【請求項10】
前記報知部は、車両に設けられる表示装置であり、
前記異常情報は、前記表示装置に表示される
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の車両用灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の複数の素子を個別に制御して車両前方にADB配光パターンを形成する車両用灯具が知られている。このような車両用灯具を用いた車両用灯具システムとして、例えば、複数の素子に短絡、断線等の不具合が生じたか否かを検出し、不具合を検出した場合には車両用灯具への電力供給を停止し又は供給電力を低減する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-9825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の車両用灯具システムでは、複数の素子のうち1つでも不具合が検出されると一律に電力供給が停止されて全消灯となり、車両用灯具ごと交換する必要がある。このため、上記の車両用灯具システムでは、車両用灯具の交換頻度が高くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、車両用灯具の交換頻度を低減することが可能な車両用灯具システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用灯具システムは、対応する照射領域に光を照射可能な複数の素子と、前記複数の素子の異常の有無を検出する検出部とを有する車両用灯具と、前記素子について前記異常が検出された場合に前記異常の発生に関する異常情報を報知する報知部とを備え、前記報知部は、前記複数の素子のうち所定の照射領域に光を照射可能な対象素子について前記異常が検出された場合と、前記複数の素子のうち前記対象素子とは異なる非対象素子について前記異常が検出された場合とで異なる内容の前記異常情報を報知する。
【0007】
また、前記報知部は、前記非対象素子について前記異常が検出された場合には、前記異常が検出された前記非対象素子の検出状態に応じて異なる内容の前記異常情報を報知してもよい。
【0008】
また、前記検出状態は、前記異常が検出された前記非対象素子の個数について、全部の前記非対象素子の個数に対する割合を含んでもよい。
【0009】
また、前記検出状態は、隣り合う複数の前記非対象素子について前記異常が検出された場合、隣り合う複数の前記非対象素子の個数又は当該個数に基づいて算出される値を含んでもよい。
【0010】
また、前記検出状態は、前記対象素子と前記異常が検出された前記非対象素子との距離を含んでもよい。
【0011】
また、前記所定の照射領域は、前記パターンのうち車両前方視における水平線の左右方向の中央部分に沿った領域であってもよい。
【0012】
また、前記車両用灯具は、前記対象素子についての前記異常が検出された場合、前記複数の素子の全部を、対応する複数の前記照射領域に光を照射しない非照射状態としてもよい。
【0013】
また、前記車両用灯具は、前記複数の素子のうち前記対象素子とは異なる非対象素子について前記異常が検出された場合には、少なくとも前記対象素子については対応する前記照射領域に光を照射可能な状態を継続させてもよい。
【0014】
また、前記複数の素子は、車両搭載状態における水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に複数配置され、前記対象素子は、前記水平方向の中央部かつ前記垂直方向の下部に配置されてもよい。
【0015】
また、前記報知部は、車両に設けられる表示装置であり、前記異常情報は、前記表示装置に表示されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両用灯具の交換頻度を低減することが可能な車両用灯具システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態に係る車両用灯具システムの一例を模式的に示す図である。
図2図2は、複数の素子によって形成される走行用パターンの一例を示す図である。
図3図3は、対象素子について異常が検出された場合の一例を示す図である。
図4図4は、非対象素子について異常が検出された場合の一例を示す図である。
図5図5は、非対象素子について異常が検出された場合の他の例を示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係る車両用灯具システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2実施形態に係る車両用灯具システムの光源部の一例を模式的に示す図である。
図8図8は、複数の素子によって形成される走行用パターンの他の例を示す図である。
図9図9は、変形例に係る素子の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両用灯具システムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る車両用灯具システムSYSの一例を模式的に示す図である。図1に示すように、車両用灯具システムSYSは、車両用灯具100と、報知部200とを備える。車両用灯具100は、光源部10と、検出部20と、光源制御部30とを有する。
【0020】
光源部10は、複数の素子11と、基板12とを有する。本実施形態において、複数の素子11は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の半導体型素子である。なお、後述するように、複数の素子11は、DMD(Digital Micromirror Device)等の微小電気機械システムであってもよい。
【0021】
複数の素子11は、基板12上に配置される。複数の素子11は、例えば車両搭載状態における左右方向に並ぶように配置される。本実施形態では、基板12上に複数の素子11が左右方向に一列に配置された構成を例に挙げて説明するが、これに限定されず、後述するように左右方向に複数列に配置された構成であってもよい。図1では、複数の素子11が例えば11個配置された構成を例示しているが、これに限定されず、10個以下又は11個以上であってもよい。
【0022】
以下、複数の素子11を区別する場合、例えば車両搭載状態における左側から順に、素子S1、S2、S3、…、S11と表記する。複数の素子11は、車両前方に走行用パターンPHを形成する。本実施形態において、走行用パターンPHとしては、例えばADBパターン等のハイビームパターンが挙げられる。
【0023】
図2は、複数の素子11によって形成される走行用パターンの一例を示す図である。図2以降に走行用パターンを示す場合において、V-V線がスクリーンの垂直線を示し、H-H線がスクリーンの左右の水平線を示す。走行用パターンPHは、照射領域P1~P11により構成される。照射領域P1~P11は、左右方向に隣り合う照射領域に対して一部が重なり合うように形成される。
【0024】
走行用パターンPHには、所定の照射領域(以下、「所定領域」と表記する)ARが設定される。所定領域ARは、例えば走行用パターンPHのうち主要な部分に設定される。本実施形態において、所定領域ARは、車両前方視における水平線の左右方向の中央部分に沿った所定の照射領域ARが設定される。本実施形態において、所定領域ARは、照射領域P4~P7を含む領域である。照射領域ARは、例えば法規によって照射が必要となる領域、又は、当該法規によって照射が必要となる領域に基づいて設定される視認性及び商品性に寄与する領域である。
【0025】
ここで、図1に示す素子S1は、図2に示す照射領域P1に光を照射する。同様に、素子S2は、照射領域P2に光を照射する。素子S3は、照射領域P3に光を照射する。素子S4は、照射領域P4に光を照射する。素子S5は、照射領域P5に光を照射する。素子S6は、照射領域P6に光を照射する。素子S7は、照射領域P7に光を照射する。素子S8は、照射領域P8に光を照射する。素子S9は、照射領域P9に光を照射する。素子S10は、照射領域P10に光を照射する。素子S11は、照射領域P11に光を照射する。このように、複数の素子11(素子S1~素子S11)は、対応する複数の照射領域P1~P11に光を照射可能である。複数の素子11は、それぞれ対応する照射領域P1~P11に光を照射する照射状態と、当該照射領域P1~P11に光を照射しない非照射状態とを切り替え可能である。本実施形態では、複数の素子11に供給する電流を調整することにより、照射状態と非照射状態とを切り替えることが可能である。
【0026】
また、本実施形態において、複数の素子11は、対象素子11aと非対象素子11bとを含む。本実施形態では、走行用パターンPHのうち所定領域AR(照射領域P4~P7)に光を照射する素子S4~素子S7が対象素子11aとして設定される。この場合、複数の素子11において、対象素子11aとは異なる素子11が非対象素子11bとなる。つまり、本実施形態では、走行用パターンPHのうち左右方向において所定領域ARとは異なる照射領域P1~P3、P8~P11に光を照射する素子S1~S3、S8~S11が非対象素子11bとなる。
【0027】
検出部20は、複数の素子11の異常の有無を検出する。検出部20は、素子11ごとに個別に異常の有無を検出可能である。検出部20は、検出結果を光源制御部30及び報知部200に出力する。
【0028】
光源制御部30は、複数の素子11を制御する。光源制御部30は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)等の記憶装置を有する。光源制御部30は、複数の素子11について、照射状態と非照射状態とを個別に制御することが可能である。複数の素子11の照射及び非照射を個別に制御することにより、例えば先行車、歩行者、対向車等に光を照射しないように個別に素子11を非照射状態とすることが可能である。これにより、先行車、対向車等の眩惑を低減することが可能である。光源制御部30は、対象素子11aについての異常が検出された場合には、複数の素子11の全部を照射領域P1~P11に光を照射しない非照射状態とする。光源制御部30は、非対象素子11bについての異常が検出された場合には、少なくとも対象素子11aについては対応する照射領域P1~P11に光を照射可能な状態を継続させる。
【0029】
報知部200は、検出部20の検出結果に基づいて、複数の素子11について異常が検出された場合に、異常の発生に関する異常情報を報知する。報知部200は、対象素子11aについて異常が検出された場合と、非対象素子11bについて異常が検出された場合とで、異なる内容の異常情報を報知する。
【0030】
本実施形態では、後述するように、対象素子11aについて異常が検出された場合には、車両用灯具100を交換するように警告する内容の第1異常情報を報知することができる。また、非対象素子11bについて異常が検出された場合には、異常が検出された非対象素子11bの検出状態に応じて、例えば車両用灯具100を点検するよう案内する第2異常情報を報知することができる。
【0031】
報知部200は、処理部201と、出力部202とを有する。処理部201は、検出結果を取得し、複数の素子11に異常が生じたか否かを判定する。1つ以上の素子11に異常が生じたと判定した場合、処理部201は、異常が生じた素子11が対象素子11aであるか否かを判定する。異常が生じた素子11が対象素子11aであると判定した場合、処理部201は、出力部202に第1異常情報を出力させる。
【0032】
また、処理部201は、異常が生じた素子11が非対象素子11bであると判定した場合、異常が検出された非対象素子11bの検出状態に応じて第2異常情報を出力部202に出力させることができる。例えば、処理部201は、非対象素子11bの検出状態が所定の条件を満たす場合に、第2異常情報を出力部202に出力させることができる。なお、処理部201は、非対象素子11bの検出状態が所定の条件を満たさない場合には、第2異常情報を出力部202に出力させないようにすることができる。
【0033】
非対象素子11bの検出状態は、例えば全部の非対象素子11b又は全部の素子11の個数に対して、異常が検出された非対象素子11bの個数の割合を含む。この場合、例えば当該割合が閾値以上のときに処理部201が第2異常情報を出力部202に出力させるように構成することができる。
【0034】
また、非対象素子11bの検出状態は、隣り合う複数の非対象素子11bについて異常が検出された場合、隣り合う複数の非対象素子11bの個数又は当該個数に基づいて算出される算出値(上記の割合等)を含む。この場合、例えば当該個数又は算出値が閾値以上のときに処理部201が第2異常情報を出力部202に出力させるように構成することができる。
【0035】
また、非対象素子11bの検出状態は、対象素子11aと異常が検出された非対象素子11bとの距離を含む。この場合、例えば異常が検出された非対象素子11bと対象素子11aとの距離が閾値以下のときに処理部201が第2異常情報を出力部202に出力させるように構成することができる。
【0036】
出力部202は、処理部201からの指示に応じて第1異常情報及び第2異常情報を出力する。出力部202から第1異常情報及び第2異常情報が出力されることにより、車両の運転者等に当該第1異常情報及び第2異常情報が報知される。出力部202としては、例えば車両に設けられる表示装置が挙げられる。この場合、第1異常情報及び第2異常情報は、表示装置に表示される。なお、このような表示装置としては、例えばメーターパネルに設けられる表示パネル又は表示灯、カーナビゲーションシステムにおける地図情報等を表示可能な表示パネル、HUD(ヘッドアップディスプレイ)等が挙げられる。なお、出力部202としては、音声情報を出力するスピーカ等であってもよい。この場合、第1異常情報及び第2異常情報は、音声情報として出力される。
【0037】
図3は、対象素子11aについて異常が検出された場合の一例を示す図である。図3に示すように、例えば対象素子11aである素子S5に短絡、断線等の異常が生じた場合、当該素子S5は、照射領域P5に対して光を照射することができなくなる。このため、照射領域P5は、光が照射されない状態となる。
【0038】
検出部20は、素子S5に異常が生じた旨を検出し、検出結果を光源制御部30及び報知部200に出力する。報知部200において、処理部201は、検出結果に基づいて、対象素子である素子S5に異常が発生したことを判断し、第1異常情報C1を出力部202に表示させる。第1異常情報C1が出力部202に表示されることで、当該第1異常情報Cが車両の運転者等に報知される。図3に示す例において、報知部200は、車両用灯具100が故障し、点検の必要がある旨を示す情報を第1異常情報C1として表示している。光源制御部30は、素子S5に異常が生じた旨の情報を取得した場合、複数の素子11の全部を照射領域P1~P11に光を照射しない非照射状態とする。
【0039】
図4は、非対象素子11bについて異常が検出された場合の一例を示す図である。図4に示すように、例えば非対象素子11bである素子S2に短絡、断線等の異常が生じた場合、当該素子S2は、照射領域P2に対して光を照射することができなくなる。このため、照射領域P2は、光が照射されない状態となる。
【0040】
検出部20は、素子S2に異常が生じた旨を検出し、検出結果を光源制御部30及び報知部200に出力する。報知部200において、処理部201は、検出結果に基づいて、非対象素子11bである素子S2に異常が発生したことを判断し、素子S2の検出状態が所定の条件を満たすか否かを判断する。ここで、所定の条件を、例えば全部の非対象素子11bの個数(7個)に対して、異常が検出された非対象素子11bの個数の割合が20%以上であること、とする。この場合、処理部201は、異常が検出された非対象素子11bの個数が1個であることから、上記の割合は約14%となり、所定の条件を満たさないことになる。処理部201は、非対象素子11bの検出状態が所定の条件を満たさないと判断した場合、第2異常情報を出力部202に出力しないようにすることができる。この場合、光源制御部30は、少なくとも対象素子11aを含む複数の素子11を照射状態に維持しておくことができる。
【0041】
図5は、非対象素子11bについて異常が検出された場合の他の例を示す図である。図5に示すように、例えば非対象素子11bである2つの素子S1、S2に短絡、断線等の異常が生じた場合、当該素子S1、S2は、照射領域P1、P2に対して光を照射することができなくなる。このため、照射領域P1、P2は、光が照射されない状態となる。
【0042】
検出部20は、素子S1、S2に異常が生じた旨を検出し、検出結果を光源制御部30及び報知部200に出力する。報知部200において、処理部201は、検出結果に基づいて、非対象素子11bである素子S1、S2に異常が発生したことを判断し、素子S1、S2の検出状態が所定の条件を満たすか否かを判断する。ここで、所定の条件を、上記同様、全部の非対象素子11bの個数(7個)に対して、異常が検出された非対象素子11bの個数の割合が20%以上であること、とする。この場合、処理部201は、異常が検出された非対象素子11bの個数が2個であることから、上記の割合は約28%となり、所定の条件を満たすことになる。処理部201は、非対象素子11bの検出状態が所定の条件を満たすと判断した場合、第2異常情報C2を出力部202に出力させる。また、この場合、光源制御部30は、複数の素子11を非照射状態とすることができる。なお、この場合、光源制御部30は、例えば対象素子11aについては照射状態を継続し、非対象素子11bについては非照射状態とする制御を行ってもよい。図5に示す例において、報知部200は、車両用灯具100の点検を案内する旨を第2異常情報C2として表示している。第2異常情報C2の内容は、第1異常情報C1の内容に比べて重要度又は緊急度が低い内容となっている。
【0043】
このように、報知部200は、複数の素子11のうち対応素子11aに異常が発生した場合(重要度又は緊急度が高い)と、非対応素子11bに異常が発生して所定の条件を満たす場合(重要度又は緊急度が中程度)と、非対応素子11bに異常が発生して所定の条件を満たさない場合(重要度又は緊急度が低い)とで、重要度又は緊急度が段階的に異なる態様で報知することができる。
【0044】
図6は、本実施形態に係る車両用灯具システムSYSの動作の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、検出部20は、複数の素子11の異常の有無を検出し、検出結果を出力する(ステップS10)。処理部201は、複数の素子11の検出結果に異常が含まれているか否かを検出する(ステップS20)。処理部201は、異常が含まれていないと判定した場合(ステップS20のNo)、ステップS20の判定を再度実行する。
【0045】
処理部201は、ステップS20において異常が含まれていると判定した場合(ステップS20のYes)、対象素子11aの異常であるか否かを判定する(ステップS30)。処理部201は、ステップS30において対象素子11aの異常であると判定した場合(ステップS30のYes)、出力部202に第1異常情報C1を出力させることで当該第1異常情報を報知する(ステップS40)。また、光源制御部30は、複数の素子11の全部を非照射状態として(ステップS50)、処理を終了する。
【0046】
一方、処理部201は、ステップS30において対象素子11aの異常ではないと判定した場合(ステップS30のNo)、非対象素子11bの異常であると判定し、当該非対象素子11bの検出状態が所定の条件を満たすか否かを判定する(ステップS60)。処理部201は、ステップS60において、検出状態が所定の条件を満たすと判定した場合(ステップS60のYes)、出力部202に第2異常情報C2を出力させることで当該異常情報を報知して(ステップS70)、処理を終了する。一方、処理部201は、ステップS60において、検出状態が所定の条件を満たさないと判定した場合(ステップS60のNo)、ステップS20以降の処理を実行させる。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る車両用灯具システムSYSは、対応する照射領域P1~P11に光を照射可能な複数の素子11と、複数の素子11の異常の有無を検出する検出部30とを有する車両用灯具100と、素子11について異常が検出された場合に異常の発生に関する異常情報を報知する報知部200とを備え、報知部200は、複数の素子11のうち所定領域AR(P4~P7)に光を照射可能な対象素子11aについて異常が検出された場合と、複数の素子11のうち対象素子11aとは異なる非対象素子11bについて異常が検出された場合とで異なる内容の異常情報を報知する。
【0048】
この構成によれば、所定領域ARに光を照射する対象素子11aについて異常が検出された場合と、所定領域AR以外に光を照射する非対象素子11bについて異常が検出された場合とで異なる異常情報を報知する構成である。このため、運転者等は、報知された異常情報に基づいて車両用灯具100の交換の必要性を判断することができる。従って、複数の素子11のうち1つでも異常が検出された場合に車両用灯具100を交換させる構成に比べて、運転者等の判断次第で車両用灯具100の交換頻度を低減することができる。
【0049】
本実施形態に係る車両用灯具システムSYSにおいて、報知部200は、非対象素子11bについて異常が検出された場合には、異常が検出された非対象素子11bの検出状態に応じて異なる内容の第2異常情報を報知する。これにより、例えば車両用灯具100の交換の必要性がより低いと判断される場合には第2異常情報を報知しないようにすることができるため、車両用灯具100の交換頻度をより低減することができる。
【0050】
本実施形態に係る車両用灯具システムSYSにおいて、検出状態は、異常が検出された非対象素子11bの個数について、全部の非対象素子11bの個数に対する割合を含む。これにより、非対象素子11bの総数に応じた高精度な検出状態を得ることができる。
【0051】
本実施形態に係る車両用灯具システムSYSにおいて、検出状態は、隣り合う複数の非対象素子11bについて異常が検出された場合、隣り合う複数の非対象素子11bの個数又は当該個数に基づいて算出される値を含む。これにより、異常が検出された非対象素子11bの位置関係に応じた高精度な検出状態を得ることができる。
【0052】
本実施形態に係る車両用灯具システムSYSにおいて、検出状態は、対象素子11aと異常が検出された非対象素子11bとの距離を含む。これにより、異常が検出された非対象素子11bについて、対象素子11aとの位置関係に応じた高精度な検出状態を得ることができる。
【0053】
本実施形態に係る車両用灯具システムSYSにおいて、所定領域ARは、走行用パターンPHのうち車両前方視における水平線の左右方向の中央部分に沿った領域である。これにより、走行用パターンPHの主要な部分に光を照射する素子11に異常が生じた場合、当該異常を確実に報知することができる。
【0054】
本実施形態に係る車両用灯具システムSYSにおいて、車両用灯具100は、対象素子11aについて異常が検出された場合、複数の素子11の全部を、対応する複数の照射領域P1~P11に光を照射しない非照射状態とする。これにより、対象素子11aについての異常が検出された場合、消費電力を低減することができる。
【0055】
本実施形態に係る車両用灯具システムSYSにおいて、複数の素子11は、車両搭載状態における水平方向及び垂直方向の少なくとも一方に配置され、対象素子11aは、水平方向の中央部かつ垂直方向の下部に配置される。
【0056】
本実施形態に係る車両用灯具システムSYSにおいて、報知部200は、車両に設けられる表示装置であり、異常情報は、表示装置に表示される。これにより、運転者等に対して異常情報を視覚的に報知することができる。
【0057】
本実施形態に係る車両用灯具システムSYSにおいて、車両用灯具100は、非対象素子11bについての異常が検出された場合には、少なくとも対象素子11aについては対応する照射領域P1~P11に光を照射可能な状態を継続させる。この構成により、非対象素子11bについて異常が検出された場合に少なくとも対象素子11aについては照射可能な状態が継続される。例えば本実施形態で説明した構成のように、走行用パターンPHを多数に区分して形成する場合、所定領域AR以外の1つの区分に異常があったとしても、走行用パターンPH全体としては影響が少ない場合がある。このような場合、少なくとも対象素子11aについて照射可能な状態を継続することにより、全部の素子11を消灯する構成に比べて、運転者の視認性を向上させることができ、安全に寄与することができる。
【0058】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態に係る車両用灯具システムSYS2の光源部の一例を模式的に示す図である。第2実施形態に係る車両用灯具システムSYS2では、光源部10Aの構成が第1実施形態の光源部10とは異なっており、他の構成については第1実施形態と同様である。以下、光源部10Aの構成を中心に説明する。光源部10Aは、複数の素子11と、基板12とを有する。光源部10Aは、基板12上に複数の素子11が左右方向及び上下方向に沿ってマトリクス状に配置されている。個々の素子11の構成については、第1実施形態と同様である。
【0059】
図8は、複数の素子11によって形成される走行用パターンの他の例を示す図である。走行用パターンPHAは、水平方向及び垂直方向に沿ってマトリクス状に形成される照射領域Pを有する。1つの照射領域Pは、1つの素子11によって形成される。複数の素子11のそれぞれに対応している。各照射領域Pは、左右方向及び上下方向に隣り合う照射領域Pに対して互いに接する又は一部が重なり合うように形成される。
【0060】
図7に示す複数の素子11の配置と、図8に示す複数の照射領域Pの配置とは、対応した位置となっている。複数の素子11は、上記実施形態と同様に、照射状態と非照射状態とを個別に制御可能となっている。図7及び図8に示す態様では、上記実施形態に比べて、走行用パターンPHAが細かく区分された状態となっている。したがって、上記実施形態に比べて、車両前方における走行用パターンPHAの形成範囲を高精細に制御することができるようになっている。
【0061】
複数の素子11は、対象素子11aと非対象素子11bとに区別される。例えば、走行用パターンPHAのうち車両前方視における水平線の左右方向の中央部分に沿った所定領域ARを形成する素子が対象素子11aとなっている。対象素子11aは、マトリクス状に配置される複数の素子11のうち、左右方向の中央部かつ上下方向の下部に配置される。本実施形態において、対象素子11aは、上下方向の最も下の列と、下から2番目の列との2列に亘って設定される。非対象素子11bは、対象素子11aの周囲、つまり、対象素子11aの左右方向の両側及び上下方向の上側に配置される。
【0062】
この構成において、検出部20は、上記実施形態と同様、複数の素子11の異常の有無を検出する。検出部20は、素子11ごとに個別に異常の有無を検出可能である。検出部20は、検出結果を光源制御部30及び報知部200に出力する。
【0063】
報知部200は、検出部20の検出結果に基づいて、対象素子11aについて異常が検出された場合と、非対象素子11bについて異常が検出された場合とで、異なる内容の異常情報を報知する。例えば、上記第1実施形態と同様に、対象素子11aについて異常が検出された場合には、車両用灯具100を交換するように警告する内容の第1異常情報を報知することができる。また、非対象素子11bについて異常が検出された場合には、異常が検出された非対象素子11bの検出状態に応じて、例えば車両用灯具100を点検するよう案内する第2異常情報を報知することができる。
【0064】
上記第1実施形態と同様、非対象素子11bの検出状態は、全部の非対象素子11b又は全部の素子11の個数に対して異常が検出された非対象素子11bの個数の割合を含む。また、非対象素子11bの検出状態は、隣り合う複数の非対象素子11bについて異常が検出された場合、隣り合う複数の非対象素子11bの個数又は当該個数に基づいて算出される算出値(上記の割合等)を含む。この場合、隣り合う方向については、左右方向及び上下方向の両方又は一方とすることができる。また、非対象素子11bの検出状態は、対象素子11aと異常が検出された非対象素子11bとの距離を含む。この場合、距離を算出する基準となる対象素子11aについては、例えば予め1つの対象素子11aを基準として設定してもよいし、異常が検出された非対象素子11bと最も近い距離に配置される素子11を基準としてもよい。
【0065】
また、光源制御部30は、第1実施形態と同様、対象素子11aについての異常が検出された場合には、複数の素子11の全部を照射領域P1~P11に光を照射しない非照射状態とし、対象素子11aとは異なる非対象素子11bについての異常が検出された場合には、少なくとも対象素子11aについては対応する照射領域P1~P11に光を照射可能な状態を継続させる。
【0066】
このように、第2実施形態に係る車両用灯具システムSYS2では、複数の素子11が左右方向及び上下方向にマトリクス状に配置された構成、つまり、第1実施形態の構成に比べて素子11の個数が多くなっている構成において、対象素子11aについて異常が検出された場合と非対象素子11bについて異常が検出された場合とで異なる異常情報を報知する構成である。これにより、第1実施形態の構成に比べて、異常情報の報知頻度、例えば第2異常情報を抑制することができるため、車両用灯具100の交換頻度を更に抑制することができる。また、複数の素子11のうち1つでも異常が検出された場合に車両用灯具100を交換させる構成に比べて、車両用灯具100の交換頻度を更に低減することができるため、車両用灯具100の交換によるコストを一層抑制できる。
【0067】
また、第2実施形態に係る車両用灯具100は、第1実施形態の構成に比べて素子11の個数が多くなっている構成において、対象素子11aについての異常が検出された場合には、複数の素子11の全部を照射領域P1~P11に光を照射しない非照射状態とし、対象素子11aとは異なる非対象素子11bについての異常が検出された場合には、少なくとも対象素子11aについては対応する照射領域P1~P11に光を照射可能な状態を継続させる。このように走行用パターンPHを多数に区分して形成する場合、所定領域AR以外の1つの区分に異常があったとしても、走行用パターンPH全体としては影響が少ない場合がある。このような場合、少なくとも対象素子11aについて照射可能な状態を継続することにより、全部の素子11を消灯する構成に比べて、運転者の視認性を向上させることができ、安全に寄与することができる。
【0068】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記第1実施形態及び第2実施形態では、素子11として半導体型素子を例に挙げて説明したが、これに限定されず、DMD等の微小電気機械システムであってもよい。
【0069】
図9は、変形例に係る素子の構成を模式的に示す図である。図9に示すように、素子41は、反射部材42と、反射部材42の姿勢を切り替える駆動部43とを有する。反射部材42は、反射面42aを有する。反射面42aは、光源50からの光を反射する。駆動部43は、反射部材42の姿勢を切り替えることにより、反射面42aで反射される反射光の向きを変更する。
【0070】
例えば、駆動部43は、反射部材42の姿勢を第1姿勢D1と第2姿勢D2との間で切り替え可能である。第1姿勢D1は、反射面42aが光源50からの光を車両前方の対応する照射領域に向けて反射する姿勢である。第2姿勢D2は、反射面42aが光源50からの光を上記照射領域とは異なる方向に向けて反射する姿勢である。
【0071】
駆動部43により反射部材42の姿勢を第1姿勢D1とすることにより、光源50からの光が反射面42aで反射され、反射光L1が所定の照射領域に照射される。駆動部43により反射面42aの姿勢を第2姿勢D2とすることにより、光源50からの光が反射面42aで反射され、反射光L2が上記照射領域とは異なる方向に向かう。この場合、所定の照射領域には光が照射されない。このように、駆動部43が反射部材42の姿勢を調整することにより、照射領域に光が照射される照射状態と、照射領域に光が照射されない非照射状態とを切り替えることが可能となっている。
【0072】
このような素子41は、第1実施形態に示す構成と同様に左右方向に沿って1列に配置された状態で用いられてもよいし、第2実施形態に示す構成と同様に左右方向及び上下方向に沿ってマトリクス状に配置された状態で用いられてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、異常が発生した素子11が対象素子11aであるか否かの判定、及び非対象素子11bの検出状態が所定の条件を満たすか否かの判定を報知部200の処理部201において行う場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。上記2つの判定の一方又は両方を例えば車両用灯具100側で行い、判定結果を検出結果と共に報知部200側に送信する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
C1…第1異常情報、C2…第2異常情報、L1,L2…反射光、11,41…素子、AR…所定領域、P1~P11…照射領域、PH,PHA…走行用パターン、SYS,SYS2…車両用灯具システム、10,10A…光源部、11a…対象素子、11b…非対象素子、12…基板、20…検出部、30…光源制御部、42…反射部材、42a…反射面、43…駆動部、50…光源、100…車両用灯具、200…報知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9