(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02M 26/17 20160101AFI20240717BHJP
F02M 26/41 20160101ALI20240717BHJP
F02M 26/09 20160101ALI20240717BHJP
F02M 26/15 20160101ALI20240717BHJP
F02M 35/10 20060101ALI20240717BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F02M26/17
F02M26/41 301
F02M26/09
F02M26/15
F02M35/10 311E
F02B37/00 302F
(21)【出願番号】P 2020168221
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】黒木 友和
(72)【発明者】
【氏名】松永 礼俊
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-069252(JP,A)
【文献】特開平11-210561(JP,A)
【文献】特開2019-127920(JP,A)
【文献】特開2015-010495(JP,A)
【文献】特開平11-311158(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0035126(US,A1)
【文献】特開2009-041551(JP,A)
【文献】特開2012-107551(JP,A)
【文献】特開平11-210564(JP,A)
【文献】特開2019-132261(JP,A)
【文献】特開2013-238144(JP,A)
【文献】国際公開第2014/170954(WO,A1)
【文献】特開2005-133644(JP,A)
【文献】特開2015-045317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/17
F02M 26/41
F02M 26/09
F02M 26/15
F02M 35/10
F02B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に吸気を供給する吸気通路と、
前記内燃機関の排気を循環する排気循環通路と、
を備え、
前記吸気通路は前記吸気通路の壁面を貫通する貫通孔を有し、
前記排気循環通路は前記貫通孔から前記吸気通路の内周の接線方向かつ下方に延び
、
前記排気循環通路は、前記吸気通路と鋭角を成すように前記吸気通路の上流に向かって接続される、
内燃機関。
【請求項2】
前記吸気通路は、湾曲形状に形成された湾曲部を有し、
前記排気循環通路は湾曲部外側に向かって延びる、
請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記吸気通路に供給される吸気を過給する過給機をさらに備え、
前記排気循環通路は、下方に向けて延びる延設部と、前記延設部から前記貫通孔までを接続する曲部と、を有し、
前記曲部は、前記過給機の回転方向に沿って曲がる、
請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記吸気通路は、前記内燃機関のクランク軸の延設方向に沿って延び、
前記排気循環通路は、前記吸気通路に対し、前記内燃機関のシリンダブロック側にオフセットして配置される、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記内燃機関の排気を浄化する排気浄化装置をさらに備え、
前記排気循環通路は、前記吸気通路から前記排気浄化装置に近づくにつれて下方に傾斜して配置される、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気循環装置を有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出される排ガスの一部を排気循環ガスとして吸気に循環させる排気循環装置を有する内燃機関が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の内燃機関では、シリンダから排出し排気浄化装置を通過した排気の一部を、吸気に導入する。
【0003】
また、特許文献1の排気浄化装置は、排気循環ガスを吸気通路に導入するために、インテークマニホールドに形成される吸気通路に、吸気通路の内周面よりも突出する突起部分が設けられる。特許文献1の排気浄化装置では、突起部分の通路の内周径は、排気循環通路の内周径よりも小さくなっており、内周径の差によってできる段差部分に凝縮水が付着する。これによって、吸気通路に凝縮水が流れ込むことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の内燃機関では、凝縮水が吸気通路に溜まった場合、突起部分は、凝縮水が排気循環通路に戻ることを妨げる。また、特許文献1の内燃機関では、突起部分の通路の内周径は、排気循環通路の内周径よりも小さいため、突起部分の通路を凝縮水が通り難く、排気循環通路へ戻り難い。
【0006】
本開示の課題は、凝縮水が排気循環通路に戻りやすく、排気循環ガスを導入しやすい内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る内燃機関は、吸気通路と、排気循環通路と、を備える。吸気通路は、内燃機関に吸気を供給する。排気循環通路は、内燃機関の排気を循環する。吸気通路は、吸気通路の壁面を貫通する貫通孔を有する。排気循環通路は、貫通孔から吸気通路の内周の接線方向かつ下方に延びる。
【0008】
この内燃機関によれば、排気循環通路が貫通口から吸気通路の内周の接線方向に延びる。このため、吸気通路の内周に付着した凝縮水が吸気通路の流れに沿って排気循環通路に押し戻されやすい。さらに、排気循環通路は、下方に延びるため押し戻された凝縮水が、自重によって滴下する。また、排気循環通路は吸気通路の壁面を貫通する貫通孔と接続されるため、排気循環通路と吸気通路との間の径が大きく変化することなく接続される。これによって、吸気通路に排気循環ガスが導入されやすい。すなわち、この内燃機関によれば、凝縮水が排気循環通路に戻りやすく、排気循環ガスを導入しやすい内燃機関を提供できる。
【0009】
吸気通路は、湾曲形状に形成された湾曲部を有してもよい。排気循環通路は湾曲部外側に向かって延びてもよい。
【0010】
この構成によれば、湾曲部の外側を流れる吸気の方が湾曲部の内側を流れる吸気よりも圧力が高い。このため、圧力の低い湾曲部の内側に向けて排気循環通路が延びる場合に比べ、湾曲部の外側に向けて排気循環通路が延びる場合の方が、凝縮水が入り難くなる。
【0011】
排気循環通路は、吸気通路と鋭角を成すように吸気通路の上流に向かって接続されてもよい。
【0012】
この構成によれば、排気循環通路が吸気通路の吸気の流れ方向に逆らって接続される。これによって、吸気通路内に凝縮水が入りにくい。さらに、吸気通路内に凝縮水が入った場合であっても、吸気通路内の吸気の流れによって押し戻されやすい。
【0013】
内燃機関は、吸気通路に供給される吸気を過給する過給機をさらに備えてもよい。排気循環通路は、下方に向けて延びる延設部と、延設部から貫通孔までを接続する曲部と、を有してもよい。曲部は、過給機の回転方向に沿って曲がってもよい。
【0014】
この構成によれば、吸気通路内に過給機の回転方向に沿った旋回流が発生しやすい。このため、凝縮水は、旋回流によって遠心分離され、排気循環通路へ押し戻されやすい。また、排気循環通路に押し戻された凝縮水は、曲部に衝突して滴下しやすい。これによって、凝縮水の吸気通路への流入を抑制しやすくできるとともに、過給機に凝縮水が衝突することを抑制できる。
【0015】
吸気通路は、内燃機関のクランク軸の延設方向に沿って延びてもよい。排気循環通路は、吸気通路に対し、内燃機関のシリンダブロック側にオフセットして配置されてもよい。
【0016】
この構成によれば、排気循環装置をコンパクトに配置できる。
【0017】
内燃機関は、内燃機関の排気を浄化する排気浄化装置をさらに備えてもよい。排気循環通路は、吸気通路から排気浄化装置に近づくにつれて下方に傾斜して配置されてもよい。
【0018】
この構成によれば、凝縮水が自重によって排気浄化装置の方へ流れる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、凝縮水が排気循環通路に戻りやすく、排気循環ガスを導入しやすい内燃機関を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の実施形態による内燃機関の車両搭載状態の概念図。
【
図5】本開示の実施形態によるインレットフィッチングを示す図。
【
図6】本開示の実施形態によるインレットフィッチングの貫通孔中心付近における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下明細書において、車両の前後方向をQと図面に記し、前方をFと記す。また、車両の車幅方向をPと図面に記し、車両の後方からみて右側をRと記す。さらに、車両の上下方向をGと図面に記し、上方をUと記す。
【0022】
図1および
図2に示すように、内燃機関1は、シリンダブロック2と、シリンダヘッド4と、吸気通路6と、過給機8と、排気浄化装置10と、排気循環通路12と、排気循環バルブ14と、冷却装置16と、冷却液供給通路18と、冷却液排出通路20と、を備える。
【0023】
本実施形態では、内燃機関1は、シリンダブロック2にシリンダ2aが直列に4つ形成される直列4気筒型の内燃機関1である。内燃機関1は、シリンダ2aの配列方向にクランク軸2bが延設される。クランク軸2bは、シリンダブロック2に保持される。しかし、内燃機関1の型式、配列方向は直列型に限定されず、例えば、水平対向型や、V型でもよい。
【0024】
内燃機関1は、車両Cに搭載される。車両Cは、トランスミッション21と、デファレンシャルギヤボックス(動力伝達装置の一例)22と、ヒータ装置24と、を有する。トランスミッション21は、内燃機関1の動力を変速してデファレンシャルギヤボックス22に伝達する。デファレンシャルギヤボックス22は、トランスミッション21から伝達された動力を減速して、ドライブシャフト26を介して車輪Wを駆動する。ヒータ装置24は、内燃機関1に流れる冷却液の熱を用いて車両Cの室内を温める装置である。本実施形態では、ヒータ装置24は、車両Cのダッシュパネル(図示無し)の車両後方に配置される。
【0025】
なお、冷却液は、内燃機関1が冷態始動した場合、内燃機関1、および冷却装置16などを通過することで受熱する。受熱した冷却液は温まり、内燃機関1を暖機するとともに、ヒータ装置24を通過することで室内を温める。
【0026】
一方、内燃機関1が暖機された後は、図示しないサーモスタットが開き、図示しないラジエーターに冷却液が供給されることで、冷却液が冷やされる。ラジエーターを通過した冷却液は、内燃機関1を冷却するとともに、冷却装置16にも供給され、後述する排気循環ガスを冷却する。
【0027】
本実施形態では、内燃機関1が車両Cに対しクランク軸2bの延設方向(以下明細書において、クランク軸延設方向と記す)が車両Cの車幅方向Pに配置される。トランスミッション21は、内燃機関1の左側に配置される。デファレンシャルギヤボックス22は、アルミダイキャストなどを用いて比較的頑強な構造で形成され、トランスミッション21の右側Rに配置される。すなわち、本実施形態の車両Cは、内燃機関1を横置きした前輪駆動型の配置である。
【0028】
シリンダヘッド4は、シリンダブロック2の上部に配置される。シリンダヘッド4は、シリンダ2aに吸気を供給する吸気ポートが形成され、吸気ポートにインテークマニホールド(図示無し)、インタークーラー(図示無し)、および過給機8を介して吸気通路6が接続される。本実施形態では、4つのシリンダ2aから排出された排気が集合する排気集合部4aが、シリンダヘッド4の内部に一体で形成される(
図3参照)。
【0029】
吸気通路6は、湾曲部6hを有する。湾曲部6hは、インレットフィッチング6aによって湾曲形状に形成される。インレットフィッチング6aは、アルミなどの金属部材によって筒状に形成され、内部に吸気通路6が形成される。本実施形態では、インレットフィッチング6aは、車両Cの上方Uから車幅方向Pの右側Rに向けて湾曲形状に形成される。インレットフィッチング6aは、このような形状によって、車両の前方F側から後方に向かって延び、内燃機関1の後方において下方へと向きを変える吸気通路6と、後述するコンプレッサ8bの入口とを円滑に接続する。また、インレットフィッチング6aは、吸気通路6の壁面を貫通する貫通孔6cを有し、ニップル6bの内部を通過した排気循環ガスを吸気通路6に導入する導入部として機能する。
【0030】
このようなインレットフィッチング6aでは、湾曲部6hによって湾曲部6hの外側を流れる吸気の圧力が高く、湾曲部6hの内側を流れる吸気の圧力が低くなる。また、後述するコンプレッサ8bの回転によって、インレットフィッチング6aに形成された吸気通路6にコンプレッサ8bの回転方向に沿った旋回流が発生しやすい。より具体的には、コンプレッサ8bよりも上流の吸気通路6を流れる吸気は、コンプレッサ8bの回転方向に引きずられながらコンプレッサ8bの回転方向に沿った旋回流が発生する。このため、吸気通路6に流入した凝縮水は旋回流によって遠心分離され、吸気通路6の内周Xに向けて飛散しやすい。
【0031】
過給機8は、タービン8aと、タービン8aと同軸上に配置されるコンプレッサ8bと、を有する。タービン8aは、
図3に示すように、排気集合部4aの出口フランジ4bに固定される。本実施形態では、タービン8aは、出口フランジ4bから上方に向けて排気が流れるように取り付けられる。このように、タービン8aを配置することで、内燃機関1が収容されるエンジンルームを覆うフードと内燃機関1との間を通過する走行風によって、タービン8aが冷却されやすい。
【0032】
コンプレッサ8bは、吸気通路6上に配置され、トランスミッション21側からみて、反時計回りに回転する(
図6参照)。コンプレッサ8bの上流側は、上方Uから湾曲部6hによって湾曲したのちクランク軸延設方向(本実施形態では、車幅方向P)に延びるインレットフィッチング6aによって、吸気通路6と接続される。過給機8は、排気集合部4aから流れる排気によってタービン8aが回転することでコンプレッサ8bが回転し、吸気通路6を流れる吸気が過給される。
【0033】
図2に示すように、排気浄化装置10は、過給機8に対してクランク軸延設方向の前側(本実施形態では車幅方向Pの右側)に変位して配置される。なお、クランク軸2bは、一般的にトランスミッション21側が後側と称し、反対側が前側と称する。したがって、本実施形態では、クランク軸延設方向でみた前側は、車幅方向Pの右側に一致し、クランク軸延設方向でみた後側は、車幅方向Pの左側に一致する。
【0034】
排気浄化装置10は、タービン8aの下流に配置され、排気を浄化する。本実施形態では、排気浄化装置10は、触媒部10aと、入口管10bと、出口管10cと、を含む。触媒部10aは、シリンダ2aから排出される一酸化炭素などを浄化する三元触媒が塗布されたハニカム担体が、金属製の管状部材に挿入されて形成される。内燃機関1が冷態始動した場合、触媒部10aは高温となるように制御される。
【0035】
排気浄化装置10は、触媒部10aがシリンダ2aの延設方向(以下明細書においてシリンダ延設方向と記す)に延びる。本実施形態では、シリンダブロック2のシリンダ延設方向が、車両Cの上下方向Gに沿って配置される。したがって本実施形態では、シリンダ延設方向は上下方向Gと略一致する。なお、シリンダブロック2は、シリンダ2aの上方が車両Cの後方にやや傾けて配置されてもよい(
図3参照)。すなわち、本実施形態では、排気浄化装置10は、タービン8aの車幅方向Pの右側R(クランク軸延設方向でみて前側)に入口管10bが配置される。入口管10bは、下方に湾曲して触媒部10aに接続される。触媒部10aは、入口管10bによってタービン8aと右側にオフセットして配置される。出口管10cは、触媒部10aの下方に接続され、左側に向けて湾曲したのち車両後方へと延びる。排気浄化装置10の周囲には、排気浄化装置10の形状に合わせた板状金属部材のヒートプロテクタを設けてもよい。
【0036】
内燃機関1は、排気循環通路12と、排気循環バルブ14と、冷却装置16と、を備えることによって、排気循環装置を構成する。排気循環装置は、シリンダ2aから排出された排気の一部を排気循環ガスとして吸気に循環することで、排気を再燃焼させるために設けられる。内燃機関1は、排気を再燃焼させることで窒素酸化物を低減しつつ、車両Cの燃費を向上させる。本実施形態では、排気循環装置は、排気循環通路12が排気浄化装置10の下流から吸気通路6のコンプレッサ8bの上流に接続される低圧型の排気循環装置である。しかし、排気循環装置はこれに限定されず、排気循環通路12がコンプレッサ8bの下流に接続される高圧型の排気循環装置であってもよい。なお、排気循環は、略してEGR(Exhaust Gas Recirculation)と称される場合もある。
【0037】
排気循環通路12は、吸気通路6から下方に延び、排気浄化装置10に向けて右側Rに曲がる。排気循環通路12は、排気浄化装置10とシリンダブロック2の間を通り、排気浄化装置10の出口管10cに接続される(
図4参照)。排気循環通路12は、吸気通路6から出口管10cに向けて、排気浄化装置10に向かうにつれて、下方に傾斜する。すなわち、排気循環通路12は、右側Rに向かうにつれて、下方に傾斜する。これによって、排気循環ガスが冷却装置16によって冷却されることで発生する凝縮水が、自重によって下方に流れ、吸気通路6に凝縮水が流れることを抑制できる。
【0038】
本実施形態では、排気循環通路12は、
図5に示すように、インレットフィッチング6aから下方に向けて設けられた断面円形のニップル6bによって吸気通路6と接続される。また、排気循環通路12は、
図2に示すように、ニップル6bから排気循環バルブ14までの第1通路12a、排気循環バルブ14から冷却装置16までの第2通路12b、冷却装置内を通過する第3通路12c、および冷却装置16から出口管10cまでの第4通路12dによって構成される。第1通路12a、第2通路12b、第3通路12c、および第4通路12dは、それぞれ断面円形の管である。
【0039】
第1通路12aは、ゴム製のホースと、排気循環バルブ14に取り付けられた金属製のニップルによって形成される。第2通路12bは、アルミなどの金属部材によって形成される。第3通路12cは、冷却装置16の入口フランジ16cから後述する冷却装置16の出口側面16bまでがステンレス製の通路によって形成され、このステンレス製の通路の周囲に冷却装置16が設けられる。第4通路12dは、ステンレス製のパイプによって形成される。排気循環ガスは、排気浄化装置10の出口管10cから第4通路12dに入り、第3通路12c、第2通路12b、第1通路12a、ニップル6bの順に通過して吸気通路6に流れる。
【0040】
図6に示すように、排気循環通路12は、貫通孔6cから吸気通路6の内周Xの接線TL方向かつ下方に延びる。また、排気循環通路12は、吸気通路6に対し、吸気通路6の延設方向と直行する方向(本実施形態では上下方向Gおよび前後方向Qのいずれか一方向または上下方向Gおよび前後方向Qの間の斜め方向)にオフセット(変位)して配置される。このように、排気循環通路12が接線TL方向に沿って延び、吸気通路6の延設方向と直行する方向にオフセットして配置されることによって、吸気通路6に発生する旋回流によって遠心分離された凝縮水が排気循環通路12に押し戻されやすい。
【0041】
図5に示すように、排気循環通路12は、湾曲部6hの外側に向かって延びる。より具体的には、少なくとも貫通孔6cの一部が湾曲部6hの下端近傍に配置される(
図2参照)。排気循環通路12は、貫通孔6cから下方かつ湾曲部6hが上方から右側Rに向けて湾曲する部分の径方向外側(本実施形態では下側)に向かって延びる。このように、排気循環通路12が湾曲部6hの外側に向かって延びることによって、湾曲部6h内に形成される吸気通路6の外側を流れる吸気の圧力によって凝縮水が排気循環通路12に押し戻されやすい。この結果、吸気通路6に凝縮水が流入することを抑制しやすい。さらに、凝縮水は、吸気通路6に流入したとしても、吸気通路6から排気循環通路12に押し戻されやすい。
【0042】
また、排気循環通路12は、吸気通路6と鋭角を成すように吸気通路の上流に向かって接続される。より具体的には、
図2に示すように、吸気通路6の略中央を通る仮想線である吸気通路中央線(二点鎖線Oa参照)と、排気循環通路12の略中央を通る仮想線である排気循環通路中央線(二点鎖線Oe参照)とがなす角度αが鋭角である。これによって、排気循環通路12は、吸気通路6の吸気が流れる方向に逆らって接続され、排気循環通路12を流れる排気循環ガスは、吸気通路6を流れる吸気の流れに逆らって鋭角に導入される。このため、排気循環ガスに含まれる排気循環ガスよりも比重が重い凝縮水は、吸気通路6を流れる吸気の圧力の影響を受けやすくなる。この結果、排気循環ガスに含まれる凝縮水が排気循環通路12に向けて押し戻されやすい。
【0043】
図6に示すように、排気循環通路12のニップル6bは、下方から直線的に延びる延設部6dと、延設部6dから貫通孔6cまでを曲線的に接続する曲部6eと、を有する。すなわち、
図6の断面でみた場合、排気循環通路12は、延設部6dのうち前後方向Qの前側Fにある内周面6fが吸気通路6の内周面6gと交差しないように配置される。排気循環通路12は、延設部6dから貫通孔6cまでが曲部6eによって、内径が大きく変化することなく円滑に接続される。また、排気循環通路12は、吸気通路6に突出することなく、貫通孔6cに接続される。排気循環通路12をこのような配置とすることによって、吸気通路6に凝縮水が流入した場合であっても、凝縮水が排気循環通路12に戻りやすい。本実施形態では、排気循環通路12は、吸気通路6に対しシリンダブロック2側(本実施形態では、車両Cの前後方向Qの前側F)にオフセットして配置される。これによって、内燃機関1の後方にニップル6bが突出することなく、コンパクトに収まる。さらに、内燃機関1と車両Cのダッシュパネル(図示無し)との距離も確保しやすくなり、車両Cの衝突時の安全性が高くなる。
【0044】
また、排気循環ガスが曲部6eを通過する場合、排気循環ガスよりも比重が重い凝縮水は遠心分離され、曲部6eの内周面上部に衝突する。曲部6eの内周面上部に衝突した凝縮水は、自重によって曲部6eの内周面を伝い落ち、排気循環バルブ14に向かう。これによって、凝縮水が吸気通路6に流入することを抑制できる。
【0045】
また、曲部6eは、過給機8のコンプレッサ8bの回転方向に沿って曲げられる。このため、旋回流によって遠心分離された凝縮水が排気循環通路12のニップル6bに流れ込みやすい。これによって、凝縮水が排気循環通路12に戻りやすい。
【0046】
排気循環バルブ14は、排気循環通路12上に配置される。排気循環バルブ14は、吸気通路6に導入する排気循環ガスの量を調整するために設けられる。排気循環バルブ14は、過給機8よりも下方に配置され、排気浄化装置10とクランク軸延設方向(本実施形態では車幅方向P)に並んで配置される。
【0047】
冷却装置16は、排気循環通路12上に配置され、排気循環通路12を流れる排気循環ガスを冷却液によって冷却する熱交換器である。本実施形態では、冷却装置16は、冷却液が流れる通路を設けた四角柱形状のステンレスなどの金属部材によって形成され、入口側面16aと、出口側面16bと、を含む。冷却装置16は、第3通路12cの周囲を覆い、第3通路12cの周囲に冷却液を流すことで排気循環ガスを冷却する。本実施形態では、冷却装置16は、第3通路12cと溶接され、入口フランジ16cから出口側面16bまでが一体で形成される。
【0048】
冷却装置16は、
図2、
図3、および
図4に示すように、長手方向が車幅方向Pに沿って配置され、シリンダブロック2に固定される。冷却装置16は、排気浄化装置10に近づくにつれて入口側面16aがシリンダブロック2に近づくよう傾斜して配置される。すなわち、冷却装置16は、入口側面16aが出口側面16bよりも前後方向Qの前方Fになるように、冷却装置16の長手方向が前後方向Qに傾斜して配置される。
【0049】
冷却装置16の入口側面16aを含む一方側の部分は、排気浄化装置10とシリンダブロック2の間に配置され、出口側面16bを含む他方側の部分は、車両Cの後面からみて(内燃機関1の排気側側面からみて)過給機8と、排気浄化装置10と、排気循環バルブ14と、に囲まれる空間Sに配置される。このような空間Sからは、内燃機関1の上方と車両Cの図示しないエンジンフードの間を通過する走行風が、タービン8aを通過したのち、通り抜ける。このとき排気浄化装置10からの熱も走行風とともに持ち去られる。すなわち、空間Sは走行風を用いた冷却通路の一部となる。空間Sを抜けた走行風は、デファレンシャルギヤボックス22の後方を通過して、車両Cの下部に抜ける。特に、本実施形態の内燃機関1は、排気集合部4aがシリンダヘッド4に一体で形成され、排気集合部4aの出口がタービン8aに接続される。また、排気浄化装置10は、過給機8に対してクランク軸延設方向の前側(本実施形態では車幅方向Pの右側)にオフセットして配置される。これによって、排気集合部4aの代わりにエキゾーストマニホールドを用い、排気浄化装置10がエキゾーストマニホールドに対しクランク軸延設方向にオフセットされず取り付けられる内燃機関(例えば、特許文献1の内燃機関)よりも、過給機8の下方の空間Sに走行風が流れやすい。
【0050】
冷却装置16をこのような配置とすることで、冷却装置16がコンパクトに配置できる。また、内燃機関1の冷態始動時においては、冷却装置16を流れる冷却液は冷えた状態となっている。しかし、冷却装置16が排気浄化装置10の曲面に沿って配置されるため、冷却液が排気浄化装置10から受熱し、冷却液の温度が上昇しやすい。一方、冷却装置16の出口側面16bは空間Sに配置されるため、内燃機関1の暖機後、車両Cの走行中は、走行風によって冷却され、冷却装置16が過度に加熱されることを抑制できる。
【0051】
また、冷却装置16は、クランク軸延設方向(本実施形態では、車幅方向Pと同じ方向)に沿って、排気循環バルブ14、冷却装置16、排気浄化装置10の順に並んで配置される。すなわち、冷却装置16は、車両Cの後面視では排気循環バルブ14と、排気浄化装置10との間に配置される。冷却装置16は、冷却液によって冷却されるため、排気浄化装置10から放出された熱が冷却装置16によって遮断される。この結果、排気循環バルブ14周囲の温度上昇を抑制できる。
【0052】
冷却装置16の下方には、動力伝達装置の一例であるデファレンシャルギヤボックス22が配置される。これによって、車両Cの下方から飛散する石などの飛散物はデファレンシャルギヤボックス22に当たる。したがって、飛散物によって冷却装置16が損傷することを防止できる。
【0053】
冷却液供給通路18は、
図4に示すように、シリンダヘッド4に取り付けられたサーモケース4cから分岐して冷却装置16に接続され、冷却装置16に冷却液を供給する。
図2、
図3および
図4に示すように、冷却液供給通路18は、排気循環バルブ14の右側から後方側をとおり、前方へ向かって延びる。前方に向かって延びた冷却液供給通路18は、冷却装置16と排気浄化装置10の間を通過して、冷却装置16の入口側面16a近傍に配置されるニップルに接続される。内燃機関1が冷態始動した場合、冷却液供給通路18には冷えた冷却液が流れる。しかし、冷却液供給通路18をこのような配置とすることで、冷却液が排気浄化装置10から受熱し温まりやすい。
【0054】
冷却液排出通路20は、
図1に示すように、冷却装置16の出口側面16b近傍からヒータ装置24に接続される。すなわち、内燃機関1が冷態始動した場合、冷却液は、排気浄化装置10の熱によって温められて、ヒータ装置24に流れる。これによって、ヒータ装置24が冷却液の熱を得やすくなり、室内が暖まるまでの時間を短くしやすい。すなわち、ヒータ性能が向上する。特に本実施形態では、過給機8は、タービン8aを有するターボチャージャー型の過給機8である。このような、過給機8では、タービン8aの熱容量が大きく、内燃機関1の始動時の熱がタービン8aに奪われ、ヒータ性能が悪化しやすい。しかし、本実施形態の内燃機関1によれば、冷却装置16が排気浄化装置10から受熱することでヒータ性能が向上しやすい。
【0055】
また、近年の燃費規制の強化によって、吸気通路6に導入する排気循環ガスの導入量が増加しつつある。特に本実施形態の内燃機関1では、過給機8を有するため、過給機8の上流の吸気通路6に排気循環ガスを導入することで、過給機8の下流に排気循環ガスを導入するよりも多くの排気循環ガスを導入できる。しかし、大量の排気循環ガスを吸気に導入する場合、吸気温度の上昇を防止するため、排気循環ガスを冷却する必要がある。排気循環ガスを冷却すると、凝縮水も発生しやすい。さらに、凝縮水がコンプレッサ8bに付着すると、過給機8の故障の原因になりやすい。本実施形態の内燃機関1によれば、凝縮水が吸気通路6に流出することを抑制できるため、凝縮水がコンプレッサ8bに付着することを抑制しやすい。
【0056】
また、排気循環ガスの導入量が増加すると、排気循環通路12の内径が絞られた場合における圧力損失も大きくなる。圧力損失が大きくなると、排気循環ガスが吸気通路6に導入し難くなる。しかし、本実施形態の内燃機関1によれば、延設部6dから貫通孔6cまでが曲部6eによって、内径が大きく変化することなく円滑に接続される。これによって、排気循環ガスの圧力損失が抑制される。この結果、排気循環ガスを吸気通路6に円滑に導入できる。
【0057】
以上説明した通り、本開示によれば、凝縮水が排気循環通路12に戻りやすく、排気循環ガスを導入しやすい内燃機関1を提供できる。
【0058】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0059】
(a)上記実施形態では、車両Cは、内燃機関1を横置きした前輪駆動型の配置を例に説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。内燃機関1、トランスミッション21、およびデファレンシャルギヤボックス22の配置は、例えば、クランク軸延設方向を車両Cの前後方向に配置し内燃機関1を縦置きした車両であってもよい。さらに、車両Cは、デファレンシャルギヤボックス22に、後輪に動力を伝達するトランスファーを設けた4輪駆動車でもよい。また、デファレンシャルギヤボックス22は、トランスミッション21とデファレンシャルギヤを一体で形成したトランスアクスルの筐体の一部であってもよい。
【0060】
(b)上記実施形態では、排気浄化装置10は、三元触媒が塗布される触媒部10aを例に用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。排気浄化装置10は、煤を吸着するガソリンパーティキュレートフィルター、またはディーゼルパーティキュレートフィルターなどの装置であってもよい。
【0061】
(c)上記実施形態では、排気循環通路12を複数の通路に分割する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。排気循環通路12は、排気浄化装置10の出口管10cから吸気通路6までを接続させるように設けられればよい。また、排気循環通路12の各通路に用いた材料は、これに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0062】
(d)上記実施形態では、排気循環通路12は、内燃機関1のシリンダブロック2側にオフセットして配置される例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。オフセットする方向は、シリンダブロック2と反対側であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1:内燃機関,2:シリンダブロック,2a:シリンダ
2b:クランク軸,6:吸気通路
6c:貫通孔,6e:延設部,6f:曲部,6h:湾曲部
8 :過給機,10:排気浄化装置
12:排気循環通路,
P :車幅方向(クランク軸延設方向)
Q :前後方向
G :上下方向(シリンダ延設方向)
TL:接線