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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】歯車加工方法及び歯車加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23F 19/06 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B23F19/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020195739
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084109
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 友和
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-142015(JP,A)
【文献】実開昭54-065092(JP,U)
【文献】実開平02-085528(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第10329413(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第104907637(CN,A)
【文献】特開2022-084107(JP,A)
【文献】特開平02-218523(JP,A)
【文献】特開平02-292121(JP,A)
【文献】特開平10-109224(JP,A)
【文献】特開平09-285915(JP,A)
【文献】特開2001-269816(JP,A)
【文献】特開平10-180542(JP,A)
【文献】特開平08-025500(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112122715(CN,A)
【文献】特表2014-530117(JP,A)
【文献】特表昭60-501052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00-23/12
B23C 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め歯形が形成された歯車形の工作物に対して、前記歯形の歯溝における歯面を加工する歯車加工方法であって、
前記工作物の回転軸線と切削工具の回転軸線とを平行に配置した状態で前記工作物と前記切削工具とを同期回転させることにより前記工作物に対して前記切削工具の刃先を所定軌跡に沿って移動させ、各前記歯溝における前記歯面の一方を、前記歯面の歯先から歯底に向かって加工する歯面加工工程と、
前記歯面の加工終点に到達した時に、前記切削工具の刃先を、前記歯溝の内部空間において前記歯面との非接触位置であって前記所定軌跡から異なる一時退避位置に移動させる一時退避工程と、
前記歯溝の内部空間において前記切削工具の刃先を前記一時退避位置から前記所定軌跡に復帰させる復帰工程と、
前記所定軌跡に復帰した後に、前記切削工具の刃先を前記所定軌跡に沿って移動させ、前記切削工具の刃先を前記歯溝の内部空間から前記歯溝の外に退避させる退避工程と、
を備える、歯車加工方法。
【請求項2】
前記一時退避工程は、前記歯面加工工程において前記歯面の加工終点に到達した時に、前記切削工具の刃先を、前記歯溝の内部空間において前記工作物の周方向に相対移動させることにより、前記一時退避位置に移動させる、請求項1に記載の歯車加工方法。
【請求項3】
前記所定軌跡は、サイクロイド曲線であり、
前記歯面は、インボリュート曲線であり、
前記歯面加工工程は、前記サイクロイド曲線のうち前記インボリュート曲線に近似する部分を用いて、前記歯面を加工する、請求項1又は2に記載の歯車加工方法。
【請求項4】
前記歯面加工工程は、
前記工作物と前記切削工具の回転速度比、前記切削工具の刃先径、前記工作物に対する前記切削工具の回転位相調整量を設定することにより、
前記サイクロイド曲線のうち前記インボリュート曲線に近似する部分を用いて、前記歯面を加工する、請求項3に記載の歯車加工方法。
【請求項5】
前記一時退避工程は、前記歯面加工工程及び前記退避工程に比べて、前記工作物の回転速度に対する前記切削工具の相対的な回転速度を遅くし、
前記復帰工程は、前記歯面加工工程及び前記退避工程に比べて、前記工作物の回転速度に対する前記切削工具の相対的な回転速度を早くする、請求項1-4の何れか1項に記載の歯車加工方法。
【請求項6】
前記一時退避工程及び復帰工程は、前記工作物の回転軸線に対して前記切削工具の回転軸線を相対的に往復移動させる、請求項1-4の何れか1項に記載の歯車加工方法。
【請求項7】
予め歯形が形成された歯車形の工作物に対して、前記歯形の歯溝における歯面を加工する歯車加工装置であって、
切削工具と、
前記工作物と前記切削工具とを制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記工作物の回転軸線と前記切削工具の回転軸線とを平行に配置した状態で前記工作物と前記切削工具とを同期回転させることにより前記工作物に対して前記切削工具の刃先を所定軌跡に沿って移動させ、各前記歯溝における前記歯面の一方を、前記歯面の歯先から歯底に向かって加工する歯面加工部と、
前記歯面の加工終点に到達した時に、前記切削工具の刃先を、前記歯溝の内部空間において前記歯面との非接触位置であって前記所定軌跡から異なる一時退避位置に移動させ一時退避部と、
前記歯溝の内部空間において前記切削工具の刃先を前記一時退避位置から前記所定軌跡に復帰させる復帰部と、
前記所定軌跡に復帰した後に、前記切削工具の刃先を前記所定軌跡に沿って移動させ、前記切削工具の刃先を前記歯溝の内部空間から前記歯溝の外に退避させる退避部と、
を備える、歯車加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車加工方法及び歯車加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、工作物の回転軸線と切削工具の回転軸線とを平行に配置した状態で工作物と切削工具とを同期回転させることにより、切削工具の刃先軌跡をサイクロイド曲線とし、インボリュート曲線の歯面を切削加工することが記載されている。特許文献2には、スカイビングカッタによる歯車加工を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第10329413号明細書
【文献】特開2020-19096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の切削方法は、特許文献2に記載のスカイビング加工に比べて、高速な切削速度を得ることができる。当該切削方法は、歯車の歯面を歯先から歯底に向かって加工し、歯面の歯底寄りの加工終点にて折り返す。この折り返しによって、歯面の歯底付近にバリが残りやすい。特に、歯面の歯底付近まで加工しようとすると、よりバリが残りやすい。
【0005】
本発明は、高速の切削速度による加工において、歯面にバリが残ることを抑制する歯車加工方法及び歯車加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1.歯車加工方法)
歯車加工方法は、予め歯形が形成された歯車形の工作物に対して、前記歯形の歯溝における歯面を加工する歯車加工方法であって、前記工作物の回転軸線と切削工具の回転軸線とを平行に配置した状態で前記工作物と前記切削工具とを同期回転させることにより前記工作物に対して前記切削工具の刃先を所定軌跡に沿って移動させ、各前記歯溝における前記歯面の一方を、前記歯面の歯先から歯底に向かって加工する歯面加工工程と、前記歯面の加工終点に到達した時に、前記切削工具の刃先を、前記歯溝の内部空間において前記歯面との非接触位置であって前記所定軌跡から異なる一時退避位置に移動させる一時退避工程と、前記歯溝の内部空間において前記切削工具の刃先を前記一時退避位置から前記所定軌跡に復帰させる復帰工程と、前記所定軌跡に復帰した後に、前記切削工具の刃先を前記所定軌跡に沿って移動させ、前記切削工具の刃先を前記歯溝の内部空間から前記歯溝の外に退避させる退避工程とを備える。
【0007】
上記歯車加工方法によれば、歯面加工工程の次に、切削工具の刃先を、所定軌跡から異なる一時退避位置に移動させる。この一時退避動作によって、歯面の加工終点付近にバリが残ることを抑制できる。その後、切削工具の刃先は、復帰工程にて所定軌跡に復帰し、所定軌跡に沿って歯溝の内部空間から退避する。従って、次の加工においては、切削工具の刃先は、再び所定軌跡に沿って移動することにより、歯面加工工程を実施できる。
【0008】
つまり、工作物の回転軸線と切削工具の回転軸線とを平行に配置した状態で工作物と切削工具とを同期回転させることにより、高速な切削速度を得ることができると共に、一時退避工程によってバリが残ることを抑制できる。
【0009】
(2.歯車加工装置)
歯車加工装置は、予め歯形が形成された歯車形の工作物に対して、前記歯形の歯溝における歯面を加工する歯車加工装置であって、切削工具と、前記工作物と前記切削工具とを制御する制御装置とを備える。
【0010】
前記制御装置は、前記工作物の回転軸線と前記切削工具の回転軸線とを平行に配置した状態で前記工作物と前記切削工具とを同期回転させることにより前記工作物に対して前記切削工具の刃先を所定軌跡に沿って移動させ、各前記歯溝における前記歯面の一方を、前記歯面の歯先から歯底に向かって加工する歯面加工部と、前記歯面の加工終点に到達した時に、前記切削工具の刃先を、前記歯溝の内部空間において前記歯面との非接触位置であって前記所定軌跡から異なる一時退避位置に移動させ一時退避部と、前記歯溝の内部空間において前記切削工具の刃先を前記一時退避位置から前記所定軌跡に復帰させる復帰部と、前記所定軌跡に復帰した後に、前記切削工具の刃先を前記所定軌跡に沿って移動させ、前記切削工具の刃先を前記歯溝の内部空間から前記歯溝の外に退避させる退避部とを備える。上記歯車加工装置によれば、上記歯車加工方法と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】工作機械を示す図である。
図2】工作物及び切削工具を示す図である。
図3】第一例の切削工具を示す斜視図である。
図4】第二例の切削工具を示す斜視図である。
図5】制御装置を示す機能ブロック図である。
図6】工作物に対して切削工具の工具刃の相対的な動作軌跡を示す図である。
図7】工作物に対して切削工具の工具刃の刃先の相対的な動作軌跡を示す図である。
図8】第一例の制御方法を示すグラフである。
図9】第二例の制御方法を示すグラフである。
図10】第四例の制御方法を示すグラフである。
図11】第五例の制御方法を示すグラフである。
図12】加工条件決定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.工作物)
切削前の工作物は、外周面又は内周面に歯形が形成された歯車形である。つまり、切削前の工作物は、予め歯形が形成されている。そして、歯形の歯溝における歯面が切削部位である。切削後の歯面は、インボリュート曲線に形成されている。つまり、予め形成された歯面を切削することにより、歯厚を薄くしつつ、インボリュート曲線の仕上げ形状を形成する。なお、切削前の歯面は、インボリュート曲線としても良いし、インボリュート曲線でない形状としても良い。
【0013】
また、工作物Wの歯形は、歯すじ方向が工作物Wの回転軸線に平行としても良いし、歯すじ方向が工作物Wの回転軸線に対して角度を有するようにしても良い。前者の工作物Wの歯面Wbは、平歯車の歯面となり、後者の工作物Wの歯面Wbは、はすば歯車の歯面となる。
【0014】
(2.工作機械1の例)
工作物Wである歯車の歯面を切削する歯車加工装置である工作機械1は、切削工具Tと工作物Wとを相対的に移動させることにより、切削工具Tによって歯面の切削を行う装置である。さらに、対象の工作機械1は、切削工具Tと工作物Wとを相対的に移動させるための複数の構造体により構成される。対象の工作機械1は、例えば、マシニングセンタを例にあげる。
【0015】
工作機械1の例について、図1を参照して説明する。本例においては、工作機械1は、工具交換を可能なマシニングセンタを例にあげる。特に、工作機械1としてのマシニングセンタは、本例における歯面の切削の他に、ギヤスカイビング加工やホブ加工等によって、工作物Wに予め歯形を切削加工するようにしても良い。工作機械1としてのマシニングセンタは、横形マシニングセンタを基本構成とする。なお、工作機械1は、上記構成を例にあげるが、立形マシニングセンタ等、他の構成を適用することができる。
【0016】
図1に示すように、工作機械1は、例えば、相互に直交する3つの直進軸(X軸,Y軸,Z軸)を駆動軸として有する。ここで、切削工具Tの回転軸線(工具主軸の回転軸線に等しい)の方向をZ軸方向と定義し、Z軸方向に直交する2軸をX軸方向及びY軸方向と定義する。図1においては、水平方向をX軸方向とし、鉛直方向をY軸方向とする。さらに、工作機械1は、さらに、切削工具Tと工作物Wとの相対姿勢を変更するための2つの回転軸(B軸及びCw軸)を駆動軸として有する。また、工作機械1は、切削工具Tを回転するための回転軸としてのCt軸を有する。
【0017】
つまり、工作機械1は、自由曲面を加工可能な5軸加工機(工具主軸(Ct軸)を考慮すると6軸加工機となる)である。ここで、工作機械1は、B軸(基準状態においてY軸回りの回転軸)及びCw軸(基準状態においてZ軸回りの回転軸)を有する構成に代えて、A軸(基準状態においてX軸回りの回転軸)及びB軸を有する構成としてもよいし、A軸及びCw軸を有する構成としてもよい。
【0018】
工作機械1において、切削工具Tと工作物Wとを相対的に移動させる構成は、適宜選択可能である。本例では、工作機械1は、切削工具TをY軸方向及びZ軸方向に直動可能とし、工作物WをX軸方向に直動可能とし、さらに工作物WをB軸回転及びCw軸回転可能とする。また、切削工具Tは、Ct軸回転可能である。
【0019】
工作機械1は、ベッド10と、工作物保持装置20と、工具保持装置30とを備える。ベッド10は、略矩形状等の任意の形状に形成されており、床面に設置される。工作物保持装置20は、工作物Wをベッド10に対して、X軸方向に直動可能とし、B軸回転及びCw軸回転可能とする。工作物保持装置20は、X軸移動テーブル21と、B軸回転テーブル22と、工作物主軸装置23とを主に備える。
【0020】
X軸移動テーブル21は、ベッド10に対してX軸方向に移動可能に設けられる。具体的に、ベッド10には、X軸方向(図1前後方向)へ延びる一対のX軸ガイドレールが設けられ、X軸移動テーブル21は、図示しないリニアモータ又はボールねじ機構によって駆動されることにより、一対のX軸ガイドレールに案内されながらX軸方向へ往復移動する。
【0021】
B軸回転テーブル22は、X軸移動テーブル21の上面に設置され、X軸移動テーブル21と一体的にX軸方向へ往復移動する。また、B軸回転テーブル22は、X軸移動テーブル21に対し、B軸回転可能に設けられる。B軸回転テーブル22には、図示しない回転モータが収納され、B軸回転テーブル22は、回転モータに駆動されることでB軸回転可能となる。
【0022】
工作物主軸装置23は、B軸回転テーブル22に設置され、B軸回転テーブル22と一体的にB軸回転する。工作物主軸装置23は、工作物主軸基台23a、工作物主軸ハウジング23b、及び、工作物主軸23cを備える。工作物主軸基台23aは、B軸回転テーブル22の上面に固定されている。
【0023】
工作物主軸ハウジング23bは、工作物主軸基台23aに固定され、B軸中心線に直交するCw軸中心線を中心とする円筒内周面を有する。工作物主軸23cは、工作物主軸ハウジング23bに回転可能に支持される。工作物主軸23cには、工作物Wが着脱可能に保持される。つまり、工作物主軸23cは、工作物Wを工作物主軸ハウジング23bにCw軸回りに回転可能に保持し、工作物Wと一体的に回転する。
【0024】
工作物主軸ハウジング23bの内部には、工作物主軸23cを回転させる回転モータ(図示せず)と、工作物主軸23cの回転角度を検出するエンコーダ等の検出器(図示せず)が設けられる。このように、工作物保持装置20は、工作物Wを、ベッド10に対して、X軸方向へ移動可能とし、且つ、B軸回りに回転可能及びCw軸回りに回転可能とする。
【0025】
工具保持装置30は、コラム31と、サドル32と、工具主軸装置33とを主に備える。コラム31は、ベッド10に対してZ軸方向に移動可能に設けられる。具体的に、ベッド10には、Z軸方向(図1左右方向)へ延びる一対のZ軸ガイドレールが設けられ、コラム31は、図示しないリニアモータ又はボールねじ機構によって駆動されることにより、一対のZ軸ガイドレールに案内されながらZ軸方向へ往復移動する。
【0026】
サドル32は、コラム31における工作物W側の側面(図1の左側面)であって、Z軸方向に直交する平面に平行な側面に配置される。このコラム31の側面には、Y軸方向(図1の上下方向)へ延びる一対のY軸ガイドレールが設けられ、サドル32は、図示しないリニアモータ又はボールねじ機構に駆動されることで、Y軸方向へ往復移動する。
【0027】
工具主軸装置33は、サドル32に設置されると共に、サドル32と一体的にY軸方向へ移動する。工具主軸装置33は、工具主軸ハウジング33aと、工具主軸33bとを備える。工具主軸ハウジング33aは、サドル32に固定され、Z軸に平行なCt軸中心線を中心とする円筒内周面を有する。工具主軸33bは、工具主軸ハウジング33aに回転可能に支持される。工具主軸33bには、切削工具Tが着脱可能に保持される。つまり、工具主軸33bは、切削工具Tを工具主軸ハウジング33aにCt軸回転可能に保持し、切削工具Tと一体的に回転する。
【0028】
工具主軸ハウジング33aの内部には、工具主軸33bを回転させる工具回転モータ(図示せず)と、工具主軸33bの回転角度を検出するエンコーダ等の検出器(図示せず)とが設けられる。このように、工具保持装置30は、切削工具Tを、ベッド10に対して、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能とし、且つ、Ct軸回転可能に保持する。
【0029】
(3.切削工具Tの詳細構成)
(3-1.第一例の切削工具Tの詳細構成)
切削工具Tの構成について、図2及び図3を参照して説明する。第一例の切削工具Tは、歯すじ方向が工作物Wの回転軸線に平行な工作物Wの歯溝Waにおける歯面Wbを切削する回転工具である。工作物Wの回転軸線Cwと切削工具Tの回転軸線Ctとが平行に配置される。この状態で、切削工具Tは、工作物Wに対して同期回転させることにより、工作物Wである歯車の歯面Wbを切削する。
【0030】
切削工具Tは、工具本体Taと、工具刃Tbとを備える。工具本体Taは、例えば、円柱状に形成され、中心軸線が工具主軸33bのCt軸中心線に一致するように工具主軸33bに保持される。工具本体Taは、例えば、鋼材により形成される。
【0031】
工具刃Tbは、工具本体Taの先端に設けられ、工具本体Taの径方向外方に突出するように設けられている。工具刃Tbは、例えば、超硬により形成されている。工具刃Tbは、板状に形成されている。つまり、工具刃Tbは、切削工具Tの軸直角断面において、切削工具Tの径方向に延在する板状に形成されている。特に本例においては、工具刃Tbは、板状の面法線方向から見た場合に、台形に形成されている。ただし、工具刃Tbの当該形状は、台形に限られず、長方形に形成されるようにしても良い。
【0032】
第一例の切削工具Tは、歯すじ方向が工作物Wの回転軸線に平行な歯面Wbを切削する場合を対象とするため、切削工具Tの工具刃Tbは、板の延在方向が工具本体Taの中心軸線に平行となるように設けられている。
【0033】
従って、工具刃Tbは、切削工具Tの径方向外方の先端面Tb1と、切削工具Tの周方向を向く側面Tb2とを備える。そして、工具刃Tbにおいて、工作物Wの歯面Wbの切削を行う部位は、先端面Tb1と側面Tb2との稜線部分Tb3(刃先)である。
【0034】
ここで、図2においては、工作物Wは外歯車を例示するが、内歯車とすることもできる。この場合、切削工具Tは、内歯車である工作物Wの内側に位置し、切削工具Tの回転軸線Ctは、工作物Wの回転軸線Cwに対して偏心している。
【0035】
(3-2.第二例の切削工具Tの詳細構成)
第二例の切削工具Tの構成について、図4を参照して説明する。第二例の切削工具Tは、歯すじ方向が工作物Wの回転軸線に対して角度を有する歯面Wbを切削する回転工具である。つまり、第二例の切削工具Tは、はすば歯車の歯面を切削する工具である。
【0036】
切削工具Tの工具刃Tbは、工作物Wの歯面Wbのねじれ角に対応する切削工具Tのねじれ角の線上に沿って設けられている。工具刃Tbは、工作物Wの歯面Wbのねじれ角に対応する切削工具Tの線上に沿った三次元状の曲面の側面Tb2を有する。
【0037】
(4.制御装置50の構成)
上述した工作機械1の制御装置50の機能ブロック構成について、図5を参照して説明する。制御装置50は、加工条件記憶部51、歯面加工部52、一時退避部53、復帰部54、退避部55を備える。
【0038】
加工条件記憶部51は、切削工具Tにより工作物Wの歯面Wbを切削する際の加工条件を記憶する。加工条件とは、切削工具Tの回転速度、工作物Wの回転速度、工作物Wの回転軸線Cwに対する切削工具Tの回転軸線Ctの相対的な位置、工作物Wの回転位相に対する切削工具Tの相対的な回転位相等が含まれる。
【0039】
歯面加工部52、一時退避部53、復帰部54及び退避部55は、加工条件記憶部51に記憶された加工条件に基づいて、モータ等の駆動装置60を制御する。後述にて詳細に説明するが、歯面加工部52は、所定軌跡に沿って工具刃Tbを歯溝Waに進入させながら、歯面Wbを歯先から歯底に向かって加工する制御を行う。
【0040】
一時退避部53は、歯面Wbの加工終点に到達した時に、工具刃Tbの刃先Tb3を、歯溝Waの内部空間において歯面Wbとの非接触位置である一時退避位置に移動させる制御を行う。復帰部54は、工具刃Tbの刃先Tb3を一時退避位置から所定軌跡に復帰させる制御を行う。退避部55は、工具刃Tbの刃先Tb3を、所定軌跡に沿って移動させて、歯溝Waの外に退避させる制御を行う。
【0041】
(5.切削方法)
切削工具Tによる工作物Wの歯面Wbの切削方法について、図6及び図7を参照して説明する。図6の二点鎖線は、図2に示すように、工作物Wが時計回りに回転し、切削工具Tが反時計回りに回転する場合において、工作物Wを固定したと仮定した場合の切削工具Tの工具刃Tbの動作軌跡を示す。
【0042】
つまり、工具刃Tbは、A1→A2→A3→A4→A5→A6→A7の順に移動する。切削工具Tは反時計回りに回転しているため(図2参照)、工具刃Tbの姿勢は、A1からA7に行くに従って、工具刃Tbの基端(図6の上端)に対して工具刃Tbの刃先Tb3が反時計回りに移動する。そして、切削工具Tは、工作物Wの回転に同期して回転するため、切削工具Tの回転軸線が、工作物Wに対してほぼ公転することになる。従って、工具刃Tbの位置及び姿勢が、図6に示すように、工作物Wに対して変化する。
【0043】
図7において、太実線が、工作物Wに対して切削工具Tの工具刃Tbの刃先Tb3の相対的な動作軌跡である。つまり、図7に示すように、工作物Wの回転軸線Cwと切削工具Tの回転軸線Ctとを平行に配置した状態で、工作物Wと切削工具Tとを同期回転させる。A1→A2→A3に示すように、工作物Wに対して工具刃Tbの刃先Tb3を所定軌跡に沿って移動させている。所定軌跡は、サイクロイド曲線となる。この動作の最中に、工具刃Tbの刃先Tb3は、歯溝Waにおける歯面Wbの一方を、歯面Wbの歯先から歯底に向かって加工する(歯面加工工程)。この歯面加工工程は、図5に示す制御装置50における歯面加工部52により制御される。
【0044】
A3にて、歯面Wbの加工終点に到達する。続いて、A3→A4に示すように、歯面Wbの加工終点に到達した時に、工具刃Tbの刃先Tb3を、歯溝Waの内部空間において歯面Wbとの非接触位置であって、所定軌跡(サイクロイド曲線)から異なる一時退避位置に移動させる(一時退避工程)。詳細には、工具刃Tbの刃先Tb3を、歯溝Waの内部空間において工作物Wの周方向に相対移動させることにより、工具刃Tbの刃先Tb3を、一時退避位置に移動させる。この一時退避工程は、図5に示す制御装置50における一時退避部53により制御される。
【0045】
続いて、A4→A5に示すように、歯溝Waの内部空間において、工具刃Tbの刃先Tb3を、一時退避位置から所定軌跡(サイクロイド曲線)に復帰させる(復帰工程)。A5における復帰位置は、所定軌跡(サイクロイド曲線)上において、歯面Wbの加工終点のA3における位置とは異なる位置である。より詳細には、A5における復帰位置は、所定軌跡(サイクロイド曲線)において、A3における加工終点の位置に対して、工具刃Tbの刃先Tb3が歯溝Waの歯底から離れた方向に位置する。さらに、A5における復帰位置は、歯面Wbに非接触である。復帰工程は、図5に示す制御装置50における復帰部54により制御される。
【0046】
続いて、工具刃Tbの刃先Tb3が所定軌跡に復帰した後に、A5→A6→A7に示すように、工具刃Tbの刃先Tb3を所定軌跡に沿って移動させ、刃先Tb3を歯面Wbに非接触とし、刃先Tb3を歯溝Waの内部空間から歯溝Waの外に退避させる(退避工程)。退避工程は、図5に示す制御装置50における退避部55により制御される。
【0047】
ここで、工作物Wの歯面Wbは、インボリュート曲線であるのに対して、工具刃Tbの刃先Tb3の軌跡は、サイクロイド曲線である。そのため、歯面加工工程では、工具刃Tbの刃先Tb3の軌跡であるサイクロイド曲線のうち、歯面Wbのインボリュート曲線に近似する部分を用いて、歯面Wbが切削される。このことは、工作物Wと切削工具Tの回転速度比、切削工具Tの工具刃Tbの刃先径、工作物Wに対する切削工具Tの回転位相調整量を設定することにより、実現される。
【0048】
また、図6及び図7には、1つの歯溝Waにおける一方の歯面Wbを切削する場合を示した。この動作を、全ての歯溝Waにて行うことにより、全ての歯溝Waにおける一方の歯面Wbを切削することができる。さらに、他方の歯面Wbについては、工作物Wと切削工具Tの回転方向を逆転させることにより、実質的に同様に切削することができる。
【0049】
上述した切削方法によれば、歯面加工工程の次に、工具刃Tbの刃先Tb3を、所定軌跡(サイクロイド曲線)から異なる一時退避位置に移動させる。この一時退避動作によって、歯面Wbの加工終点付近にバリが残ることを抑制できる。その後、工具刃Tbの刃先Tb3は、復帰工程にて所定軌跡であるサイクロイド曲線に復帰し、所定軌跡に沿って歯溝Waの内部空間から退避する。従って、次の加工においては、工具刃Tbの刃先Tb3は、再び所定軌跡に沿って移動することにより、歯面加工工程を実施できる。
【0050】
つまり、工作物Wの回転軸線Cwと切削工具Tの回転軸線Ctとを平行に配置した状態で工作物Wと切削工具Tとを同期回転させることにより、高速な切削速度を得ることができると共に、一時退避工程によってバリが残ることを抑制できる。
【0051】
(6.制御例)
(6-1.制御例の基本)
上述の切削方法にて説明したように、A1→A2→A3→A5→A6→A7における刃先Tb3の軌跡は、サイクロイド曲線である。そして、A3→A4→A5における刃先Tb3の軌跡は、サイクロイド曲線からずれている。そこで、サイクロイド曲線の軌跡を基準動作として、一時退避工程及び復帰工程における動作は、基準動作に対して補正することにより、上記動作を実現する。以下に、複数の制御方法の例について説明する。
【0052】
(6-2.第一例の制御方法)
第一例の制御方法について、図8を参照して説明する。第一例の制御方法では、常に、切削工具Tの回転速度を一定の速度Vtとする。そして、工作物Wの回転速度を、歯面加工工程(T1~T2)及び退避工程(T4~T5)では基準速度Vwとし、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)にて基準速度Vwから変動させる。
【0053】
具体的には、一時退避工程(T2~T3)にて、工作物Wの回転速度を、基準速度Vwに対して早くする。つまり、一時退避工程(T2~T3)は、歯面加工工程(T1~T2)及び退避工程(T4~T5)に比べて、工作物Wの回転速度に対する切削工具Tの相対的な回転速度を遅くしている。
【0054】
復帰工程(T3~T4)にて、工作物Wの回転速度を、基準速度Vwに対して遅くする。つまり、復帰工程(T3~T4)は、歯面加工工程(T1~T2)及び退避工程(T4~T5)に比べて、工作物Wの回転速度に対する切削工具Tの相対的な回転速度を早くしている。このように、工作物Wの回転速度を変動させることで、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)の動作を実現できる。
【0055】
(6-3.第二例の制御方法)
第二例の制御方法について、図9を参照して説明する。第二例の制御方法では、常に、工作物Wの回転速度を一定の速度Vwとする。そして、切削工具Tの回転速度を、歯面加工工程(T1~T2)及び退避工程(T4~T5)では基準速度Vtとし、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)にて基準速度Vtから変動させる。
【0056】
具体的には、一時退避工程(T2~T3)にて、切削工具Tの回転速度を、基準速度Vtに対して遅くする。つまり、一時退避工程(T2~T3)は、歯面加工工程(T1~T2)及び退避工程(T4~T5)に比べて、工作物Wの回転速度に対する切削工具Tの相対的な回転速度を遅くしている。
【0057】
復帰工程(T3~T4)にて、切削工具Tの回転速度を、基準速度Vtに対して早くする。つまり、復帰工程(T3~T4)は、歯面加工工程(T1~T2)及び退避工程(T4~T5)に比べて、工作物Wの回転速度に対する切削工具Tの相対的な回転速度を早くしている。このように、切削工具Tの回転速度を変動させることで、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)の動作を実現できる。
【0058】
(6-4.第三例の制御方法)
一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)にて、第一例では、工作物Wの回転速度のみを変動させ、第二例では、切削工具Tの回転速度のみを変動させた。この他に、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)にて、工作物Wの回転速度及び切削工具Tの回転速度を変動させるようにしても良い。
【0059】
ただし、一時退避工程(T2~T3)は、歯面加工工程(T1~T2)及び退避工程(T4~T5)に比べて、工作物Wの回転速度に対する切削工具Tの相対的な回転速度を遅くする必要がある。また、復帰工程(T3~T4)は、歯面加工工程(T1~T2)及び退避工程(T4~T5)に比べて、工作物Wの回転速度に対する切削工具Tの相対的な回転速度を早くする必要がある。
【0060】
(6-5.第四例の制御方法)
第四例の制御方法について、図10を参照して説明する。第四例の制御方法では、常に、切削工具Tの回転軸線CtのX軸位置を一定の位置Xtとする。そして、工作物Wの回転軸線CwのX軸位置を、歯面加工工程(T1~T2)及び退避工程(T4~T5)では基準位置Xwとし、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)にて基準位置Xwから変動させる。
【0061】
具体的には、一時退避工程(T2~T3)にて、工作物Wの回転軸線CwのX軸位置を、基準位置Xwに対して移動することで、刃先Tb3を歯面Wbの加工終了位置から離間させる。復帰工程(T3~T4)にて、工作物Wの回転軸線CwのX軸位置を、基準位置Xwに対して移動することで、所定軌跡(サイクロイド曲線)に復帰させる。このように、工作物Wの回転軸線CwのX軸位置を往復移動させることで、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)の動作を実現できる。
【0062】
なお、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)において、工作物Wの回転軸線Cwと切削工具Tの回転軸線Ctとは平行を維持した状態で往復移動する。そして、上記では、X軸位置の移動を例に説明したが、加工位置と軸構成とに応じた方向に移動すれば良い。
【0063】
(6-6.第五例の制御方法)
第五例の制御方法について、図11を参照して説明する。第五例の制御方法では、常に、工作物Wの回転軸線CwのX軸位置を一定の位置Xwとする。そして、切削工具Tの回転軸線CtのX軸位置を、歯面加工工程(T1~T2)及び退避工程(T4~T5)では基準位置Xtとし、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)にて基準位置Xtから変動させる。
【0064】
具体的には、一時退避工程(T2~T3)にて、切削工具Tの回転軸線CtのX軸位置を、基準位置Xtに対して移動することで、刃先Tb3を歯面Wbの加工終了位置から離間させる。復帰工程(T3~T4)にて、切削工具Tの回転軸線CtのX軸位置を、基準位置Xtに対して移動することで、所定軌跡(サイクロイド曲線)に復帰させる。このように、切削工具Tの回転軸線CtのX軸位置を往復移動させることで、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)の動作を実現できる。
【0065】
(6-7.第六例の制御方法)
一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)にて、第四例では、工作物Wの回転軸線Cwのみを往復移動させ、第五例では、切削工具Tの回転軸線Ctのみを往復移動させた。この他に、一時退避工程(T2~T3)及び復帰工程(T3~T4)にて、工作物Wの回転軸線Cw及び切削工具Tの回転軸線Ctを往復移動させるようにしても良い。
【0066】
(7.加工条件決定処理)
加工条件決定処理について、図12を参照して説明する。上述したように、工具刃Tbの刃先Tb3のサイクロイド曲線のうち、歯面Wbのインボリュート曲線に近似する部分を見つける必要がある。さらに、サイクロイド曲線のうち、工具刃Tbの刃先Tb3が、歯面Wbの歯先から歯底に向かって切削するような工作物Wと切削工具Tの位置関係とする必要がある。さらに、工作物Wにおいて複数の歯溝Waの全てについて、歯面Wbを切削する必要がある。これらのことを実現するために、以下に説明するような加工条件決定処理にて、加工条件が決定される。
【0067】
図12に示すように、切削工具Tの刃数を決定する(ステップS1)。例えば、図2に示す切削工具Tは、1個の刃数である。刃数は、例えば、1個、2個、3個が好適である。次に、工作物Wと切削工具Tとの回転速度比を決定する(ステップS2)。つまり、工具刃Tbが全ての歯面Wbを切削できる条件を決定する。工具刃Tbにより、全ての歯面Wbを1回ずつ切削するための回転速度比を決定する。
【0068】
次に、工具刃Tbの刃先径の初期値を入力する(ステップS3)。次に、工作物Wを固定した条件で、回転速度比、工具刃Tbの刃先径を用いて、工具刃Tbの刃先Tb3をサイクロイド運動軌跡として算出する(ステップS4)。
【0069】
次に、工具刃Tbの刃先Tb3の軌跡であるサイクロイド曲線が、インボリュート曲線である歯面Wbに一致するか否かを判定する(ステップS5)。一致しなければ(S5:No)、工具刃Tbの刃先径を変更する(ステップS6)。そして、ステップS4,S5を繰り返す。
【0070】
ステップS5にて一致する場合には(S5:Yes)、そのときの工具刃Tbの刃先径を決定する(ステップS7)。決定された工具刃Tbの刃先径、且つ、回転速度比を用いれば、歯面Wbが存在する工作物Wの径方向範囲において、工具刃Tbの刃先Tb3のサイクロイド曲線の一部分と、インボリュート曲線である歯面Wbとが近似することになる。
【0071】
次に、工具刃Tbの刃先Tb3の軌跡が、歯面Wbの歯先から歯底に向かって切削するように、回転位相調整量を決定する(ステップS8)。工作物Wの回転位相と切削工具Tの回転位相との関係によっては、工具刃Tbが、歯溝Waの内部空間に歯面Wbに非接触で進入した後、歯面Wbに非接触で歯溝Waの内部空間から退避する場合がある。また、回転位相によっては、工具刃Tbが、歯溝Waの内部空間に進入する際に歯面Wbに非接触で、歯溝Waの内部空間から退避する際に歯面Wbに接触する場合がある。さらには、回転位相によっては、工具刃Tbが歯溝Waに進入できずに、歯に衝突する場合がある。そこで、図6及び図7にて示したような動作を実現するような回転位相調整量を決定する。このようにして、加工条件が決定される。
【0072】
上述した歯車加工方法によれば、歯面Wbの一方面のみの切削ではあるが、スカイビング加工やホブ加工に比べて、切削速度を高速とすることができる。従って、小径の切削工具Tを用いたとしても、高精度に歯面Wbを切削することができる。特に、内歯車の切削加工においては、切削工具Tの外径に制約があるため、効果的である。
【符号の説明】
【0073】
1:工作機械、10:ベッド、20:工作物保持装置、21:X軸移動テーブル、22:B軸回転テーブル、23:工作物主軸装置、23a:工作物主軸基台、23b:工作物主軸ハウジング、23c:工作物主軸、30:工具保持装置、31:コラム、32:サドル、33:工具主軸装置、33a:工具主軸ハウジング、33b:工具主軸、50:制御装置、51:加工条件記憶部、52:歯面加工部、53:一時退避部、54:復帰部、55:退避部、60:駆動装置、Ct:回転軸線、Cw:回転軸線、T:切削工具、Ta:工具本体、Tb:工具刃、Tb1:先端面、Tb2:側面、Tb3:刃先、W:工作物、Wa:歯溝、Wb:歯面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12