(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】炭化珪素エピタキシャル基板の検査方法、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法および炭化珪素エピタキシャル基板の検査装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240717BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20240717BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01L21/66 L
C30B29/36 A
H01L21/66 B
G01N27/00 Z
(21)【出願番号】P 2020208321
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久鍋 秀幸
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518063(JP,A)
【文献】国際公開第2019/038996(WO,A1)
【文献】特開2014-169944(JP,A)
【文献】特開2003-045926(JP,A)
【文献】特開2018-098394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
C30B 29/36
G01N 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程と、
前記主面に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光を照射する工程と、
前記紫外光を照射する工程後、前記主面に電荷を供給したのちプローブを前記主面と非接触の状態で配置し、前記プローブを用いて前記主面の電位を測定する工程とを備え、
前記電荷および前記電位に基づいて、前記炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度を計算する工程とを備え、
前記紫外光を照射する工程においては、前記紫外光の単位面積当たりのフォトン数は30×10
16個/cm
2以上である、炭化珪素エピタキシャル基板の検査方法。
【請求項2】
前記主面は、(000-1)面または(000-1)面に対して8°以下のオフ角で傾斜している、請求項1に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の検査方法。
【請求項3】
前記主面は、(0001)面または(0001)面に対して8°以下のオフ角で傾斜しており、
前記単位面積当たりのフォトン数は、550×10
16個/cm
2以上である、請求項1に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の検査方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の炭化珪素エピタキシャル基板の検査方法を行う工程と、
前記キャリア濃度に基づいて、前記炭化珪素エピタキシャル基板を選別する工程とを備えた、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項5】
主面を有する炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程と、
前記主面に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光を照射する工程と
、
前記紫外光を照射する工程後、前記主面に電荷を供給したのちプローブを前記主面と非接触の状態で配置し、前記プローブを用いて前記主面の電位を測定する工程とを備え、
前記紫外光を照射する工程においては、前記紫外光の単位面積当たりのフォトン数は30×10
16個/cm
2以上である、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法。
【請求項6】
炭化珪素エピタキシャル基板の主面に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光を照射する照射装置部と、
前記主面に電荷を供給したのちプローブを前記主面と非接触の状態で配置し、前記プローブを用いて前記主面の電位を測定する測定装置部とを備
え、
前記紫外光を照射する工程においては、前記紫外光の単位面積当たりのフォトン数は30×10
16
個/cm
2
以上である、炭化珪素エピタキシャル基板の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素エピタキシャル基板の検査方法、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法および炭化珪素エピタキシャル基板の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2018-518063号公報(特許文献1)には、表面電位コロナ帯電を用いて、半導体ドーピング濃度を測定するシステムおよび方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、キャリア濃度を安定的に測定することができる炭化珪素エピタキシャル基板の検査方法、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法および炭化珪素エピタキシャル基板の検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の検査方法は、以下の工程を備えている。主面を有する炭化珪素エピタキシャル基板が準備される。主面に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光が照射される。紫外光を照射する工程後、主面に電荷を供給したのちプローブを主面と非接触の状態で配置し、プローブを用いて主面の電位が測定される。電荷および電位に基づいて、炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度が計算される。紫外光を照射する工程においては、紫外光の単位面積当たりのフォトン数は30×1016個/cm2以上である。
【0006】
本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法は、以下の工程を備えている。主面を有する炭化珪素エピタキシャル基板が準備される。主面に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光が照射される。紫外光を照射する工程においては、紫外光の単位面積当たりのフォトン数は30×1016個/cm2以上である。
【0007】
本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板の検査装置は、照射装置部と、測定装置部とを備えている。照射装置部は、炭化珪素エピタキシャル基板の主面に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光を照射する。測定装置部は、主面に電荷を供給したのちプローブを主面と非接触の状態で配置し、プローブを用いて主面の電位を測定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、キャリア濃度を安定的に測定することができる炭化珪素エピタキシャル基板の検査方法、炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法および炭化珪素エピタキシャル基板の検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の検査装置の測定装置部の構成を示す一部断面模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の検査装置の照射装置部の構成を示す一部断面模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の検査装置の構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の検査方法を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、炭化珪素エピタキシャル基板の構成を示す平面模式図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線に沿った断面模式図である。
【
図7】
図7は、主面に対して紫外光を照射する工程を示す平面模式図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法を概略的に示すフロー図である。
【
図9】
図9は、サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板の第1主面に照射された紫外光の単位面積当たりのフォトン数と、炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度との関係を示す図である。
【
図10】
図10は、サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板の第1主面に照射された紫外光の単位面積当たりのフォトン数と、炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、サンプル3に係る炭化珪素エピタキシャル基板の第1主面に照射された紫外光の単位面積当たりのフォトン数と、炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度との関係を示す図である。
【
図12】
図12は、サンプル4に係る炭化珪素エピタキシャル基板の第1主面に照射された紫外光の単位面積当たりのフォトン数と、炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度との関係を示す図である。
【
図13】
図13は、サンプル5~7に係る炭化珪素エピタキシャル基板の第1主面に照射された紫外光の単位面積当たりのフォトン数と、炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の概要]
まず本開示の実施形態の概要について説明する。本明細書の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示す。結晶学上の指数が負であることは、通常、数字の上に”-”(バー)を付すことによって表現されるが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって結晶学上の負の指数を表現する。
【0011】
(1)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法は、以下の工程を備えている。主面1を有する炭化珪素エピタキシャル基板10が準備される。主面1に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光が照射される。紫外光を照射する工程後、主面1に電荷を供給したのちプローブ113を主面1と非接触の状態で配置し、プローブ113を用いて主面1の電位が測定される。電荷および電位に基づいて、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度が計算される。紫外光を照射する工程においては、紫外光の単位面積当たりのフォトン数は30×1016個/cm2以上である。
【0012】
(2)上記(1)に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法によれば、主面1は、(000-1)面または(000-1)面に対して8°以下のオフ角で傾斜していてもよい。
【0013】
(3)上記(1)に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法によれば、主面1は、主面1は、(0001)面または(0001)面に対して8°以下のオフ角で傾斜していてもよい。単位面積当たりのフォトン数は、550×1016個/cm2以上であってもよい。
【0014】
(4)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の製造方法は、以下の工程を備えている。上記(1)から(3)のいずれかに記載の炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法が行われる。キャリア濃度に基づいて、炭化珪素エピタキシャル基板10が選別される。
【0015】
(5)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の製造方法は、以下の工程を備えている。主面1を有する炭化珪素エピタキシャル基板10が準備される。主面1に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光が照射される。紫外光を照射する工程においては、紫外光の単位面積当たりのフォトン数は30×1016個/cm2以上である。
【0016】
(6)本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置300は、照射装置部200と、測定装置部100とを備えている。照射装置部200は、炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光を照射する。測定装置部100は、主面1に電荷を供給したのちプローブ113を主面1と非接触の状態で配置し、プローブ113を用いて主面1の電位を測定する。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態の詳細について説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0018】
まず、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置の測定装置部100の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置の測定装置部100の構成を示す一部断面模式図である。
【0019】
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置の測定装置部100は、非接触型キャリア濃度測定器である。
図1に示されるように、測定装置部100は、チャック111と、コロナ電極112と、プローブ113とを主に有している。プローブ113は、たとえばケルビンプローブである。チャック111は、炭化珪素エピタキシャル基板10を保持する。チャック111は、導電性材料により構成されている。チャック111は、たとえば電気的に接地されている。チャック111は、基板保持面110を有している。チャック111は、基板保持面110に平行な方向に沿って移動可能であってもよい。
【0020】
コロナ電極112は、チャック111の基板保持面110に対向して配置されている。コロナ電極112は、コロナ電荷を発生する。コロナ電極112の先端は、たとえば円錐状である。コロナ電極112は、炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1に電荷を供給する。コロナ電極112に電圧を印加することで、空気が電離し、電荷が発生する。これにより、炭化珪素エピタキシャル基板10に空乏層が形成される。
【0021】
プローブ113は、チャック111の基板保持面110に対向して配置されている。プローブ113は、炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1から離間して配置される。別の観点から言えば、プローブ113は、非接触プローブである。プローブ113は、炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1の電位(表面ポテンシャル)を測定することができる。プローブ113の先端は、たとえば円柱状である。プローブ113の先端の直径は、たとえば2mmである。
【0022】
測定装置部100は、炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1に電荷を供給したのち、プローブ113を炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1と非接触の状態で配置し、プローブ113を用いて炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1の電位を測定する。測定装置部100は、炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1に供給した電荷と、炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1の電位とに基づいて、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度を算出する演算部(図示せず)を有していてもよい。
【0023】
次に、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置の照射装置部200の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置の照射装置部200の構成を示す一部断面模式図である。
【0024】
図2に示されるように、照射装置部200は、基板保持部201と、紫外光照射部204とを主に有している。基板保持部201は、基板保持面210を有している。基板保持部201は、たとえば基板を保持する台である。基板保持部201は、固定式であってもよいし、可動式であってもよい。基板保持部201は、炭化珪素エピタキシャル基板10を保持した状態で、基板保持面210と平行な方向に移動可能であってもよい。
【0025】
紫外光照射部204は、UVライト203(紫外光ライト)と、ライト保持部202とを有している。UVライト203は、細長い形状を有している。UVライト203の長さは、炭化珪素エピタキシャル基板10の直径よりも大きくてもよい。また、UVライト203の形状は、リング状でもよい。UVライト203は、面発光ライトでもよい。UVライト203の形状は、任意でよい。ライト保持部202は、UVライト203を保持している。UVライト203は、基板保持面210の表面に対向して設けられる。UVライト203は、固定式であってもよいし、可動式であってもよい。UVライト203は、基板保持面210と平行な方向に移動可能であってもよい。
【0026】
紫外光照射部204は、炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1に対して紫外光を照射する。紫外光は、200nm以上400nm以下の波長を有する。紫外光照射部204は、異なる2つの波長の紫外光を照射可能であってもよい。異なる2つの波長は、たとえば254nmおよび365nmである。紫外光照射部204としては、たとえばアズワン社製のSLUV-6を使用することができる。また、紫外光の波長が240nm以上385nm以下であることが特に好ましい。UVライトを安価に入手できるからである。また、紫外光の波長が254nm以上365nm以下であることが特に好ましい。光源の寿命が比較的長く、メンテナンス頻度が少なくなるからである。
【0027】
次に、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置300の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置300の構成を示す模式図である。
図3に示されるように、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置300は、照射装置部200と、測定装置部100と、搬送部310とを主に有している。
【0028】
搬送部310は、照射装置部200と測定装置部100との間に配置されている。搬送部310は、照射装置部200と測定装置部100とを繋いでいる。搬送部310は、照射装置部200と測定装置部100との間において、炭化珪素エピタキシャル基板10を搬送することができる。搬送部310は、たとえば、照射装置部200において炭化珪素エピタキシャル基板10に対する紫外光の照射が完了した後、自動的に炭化珪素エピタキシャル基板10を測定装置部100に搬送することができる。搬送部310は、たとえばベルトコンベアである。
【0029】
図4は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法を示すフロー図である。
図4に示されるように、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法は、主面を有する炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程(S10)と、主面に対して紫外光を照射する工程(S20)と、主面に電荷を供給したのちプローブを主面と非接触の状態で配置し、プローブを用いて主面の電位を測定する工程(S30)と、電荷および電位に基づいて、炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度を計算する工程(S40)と、炭化珪素エピタキシャル基板を選別する工程(S50)とを有している。
【0030】
まず、主面を有する炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程(S10)が実施される。
図5は、炭化珪素エピタキシャル基板10の構成を示す平面模式図である。
図6は、
図5のVI-VI線に沿った断面模式図である。
【0031】
図5および
図6に示されるように、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10は、炭化珪素基板11と、炭化珪素エピタキシャル層12とを有している。炭化珪素エピタキシャル層12は、炭化珪素基板11上にある。炭化珪素エピタキシャル層12は、第1主面1と、第2主面2とを有している。第2主面2は、第1主面1の反対側にある。第2主面2は、炭化珪素基板11に接している。炭化珪素基板11は、第3主面3と、第4主面4とを有している。第4主面4は、第3主面3の反対側にある。第3主面3は、炭化珪素エピタキシャル層12に接している。
【0032】
図5に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板10の厚み方向に見て、炭化珪素エピタキシャル基板10は、外周縁15を有している。外周縁15は、たとえばオリエンテーションフラット13と、円弧状部14とを有している。オリエンテーションフラット13は、第1方向101に沿って延在している。
図5に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板10の厚み方向に見て、オリエンテーションフラット13は直線状である。円弧状部14は、オリエンテーションフラット13に連なっている。炭化珪素エピタキシャル基板10の厚み方向に見て、円弧状部14は、円弧状である。
【0033】
図5に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板10の厚み方向に見て、第1主面1は、第1方向101および第2方向102の各々に沿って延在している。炭化珪素エピタキシャル基板10の厚み方向に見て、第1方向101は、第2方向102に対して垂直な方向である。
【0034】
第1方向101は、たとえば<11-20>方向である。第1方向101は、たとえば[11-20]方向であってもよい。第1方向101は、<11-20>方向を第1主面1に射影した方向であってもよい。別の観点から言えば、第1方向101は、たとえば<11-20>方向成分を含む方向であってもよい。
【0035】
第2方向102は、たとえば<1-100>方向である。第2方向102は、たとえば[1-100]方向であってもよい。第2方向102は、たとえば<1-100>方向を第1主面1に射影した方向であってもよい。別の観点から言えば、第2方向102は、たとえば<1-100>方向成分を含む方向であってもよい。
【0036】
図5に示されるように、炭化珪素基板11の直径(第1幅W1)は、特に限定されないが、たとえば100mm(4インチ)以上である。第1幅W1は、125mm(5インチ)以上でもよいし、150mm(6インチ)以上でもよい。第1幅W1の上限は、特に限定されない。第1幅W1は、たとえば200(8インチ)mm以下であってもよい。
【0037】
なお本明細書において、4インチは、100mm又は101.6mm(4インチ×25.4mm/インチ)のことである。5インチは、125mm又は127.0mm(5インチ×25.4mm/インチ)のことである。6インチは、150mm又は152.4mm(6インチ×25.4mm/インチ)のことである。8インチは、200mm又は203.2mm(8インチ×25.4mm/インチ)のことである。
【0038】
図6に示されるように、第1主面1は、炭化珪素エピタキシャル基板10の表面を構成する。第4主面4は、炭化珪素エピタキシャル基板10の裏面を構成する。炭化珪素基板11を構成する炭化珪素のポリタイプは、たとえば4Hである。炭化珪素エピタキシャル層12を構成する炭化珪素のポリタイプは、たとえば4Hである。
【0039】
炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1は、{0001}面または{0001}面に対して8°以下のオフ角で傾斜していてもよい。具体的には、第1主面1は、(0001)面または(0001)面に対して8°以下のオフ角で傾斜していてもよい。第1主面1は、(000-1)面または(000-1)面に対して8°以下のオフ角で傾斜していてもよい。
【0040】
オフ角の上限は、特に限定されないが、たとえば6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。オフ角の下限は、特に限定されないが、たとえば2°以上であってもよいし、1°以上であってもよい。オフ方向は、特に限定されないが、たとえば<11-20>方向であってもよいし、<0001>方向であってもよい。
【0041】
炭化珪素基板11は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含んでいる。炭化珪素基板11の導電型は、たとえばn型(第1導電型)である。炭化珪素基板11の厚みは、特に限定されないが、たとえば200μm以上500μm以下である。炭化珪素エピタキシャル層12は、たとえば窒素などのn型不純物を含んでいる。炭化珪素エピタキシャル層12の導電型は、たとえばn型である。炭化珪素エピタキシャル層12の厚みは、特に限定されないが、たとえば5μm以上100μm以下である。炭化珪素エピタキシャル層12が含むn型不純物の濃度は、炭化珪素基板11が含むn型不純物の濃度より低くてもよい。
【0042】
炭化珪素エピタキシャル層12のキャリア濃度は、1×1015/cm3以上1×1017/cm3以下することができる。また炭化珪素エピタキシャル層12のキャリア濃度は、特に3×1015/cm3以上5×1016/cm3以下することができる。炭化珪素エピタキシャル層12の導電型は、たとえばn型である。炭化珪素エピタキシャル層12のドーパントは、窒素であることが好ましい。炭化珪素エピタキシャル層12のドーパントは、リンであってもよい。
【0043】
次に、主面に対して紫外光を照射する工程(S20)が実施される。
図2に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板10が基板保持部201に配置される。炭化珪素エピタキシャル基板10の第4主面4は、基板保持面210に接している。紫外光照射部204は、炭化珪素エピタキシャル基板10の上方に配置される。紫外光照射部204のUVライト203は、炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に対向している。第1主面1に対して垂直な方向において、UVライト203と第1主面1との距離(離間距離D)は、たとえば50mmである。
【0044】
図7は、主面1に対して紫外光を照射する工程を示す平面模式図である。
図7に示されるように、第1主面1に対して垂直な方向に見て、紫外光照射部204のUVライト203は、長方形の形状を有している。UVライト203の長手方向の幅(第2幅W2)は、短手方向の幅(第3幅W3)よりも大きい。第2幅W2は、たとえば炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1の直径(第1幅W1)よりも大きい。第2幅W2は、たとえば154mmである。第3幅W3は、第1幅W1よりも小さい。第3幅W3は、たとえば47mmである。紫外光照射部204は、第1主面1に対して垂直な方向に見て、UVライト203の長手方向がオリエンテーションフラット13と平行となるように配置される。
【0045】
紫外光照射部204は、炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に対して紫外光を照射する。紫外光は、200nm以上400nm以下の波長を有する。紫外光の波長は、たとえば365nmである。UVライト203から50mm離れた場所における紫外光の強度は、たとえば1274μW/cm2である。第1主面1に対して紫外光を照射する工程においては、紫外光の単位面積当たりのフォトン数は30×1016個/cm2以上とする。紫外光は、第1主面1に対して、たとえば5分以上照射される。
【0046】
第1主面1が(000-1)面または(000-1)面に対して8°以下のオフ角で傾斜している場合、紫外光の単位面積当たりのフォトン数は、50×1016個/cm2以上であってもよいし、60×1016個/cm2以上であってもよい。紫外光の単位面積当たりのフォトン数の上限は、特に限定されないが、120×1016個/cm2以下であってもよいし、80×1016個/cm2以下であってもよい。
【0047】
第1主面1が(0001)面または(0001)面に対して8°以下のオフ角で傾斜している場合、紫外光の単位面積当たりのフォトン数は、550×1016個/cm2以上であってもよい。紫外光の単位面積当たりのフォトン数の上限は、特に限定されないが、700×1016個/cm2以下であってもよいし、800×1016個/cm2以下であってもよい。紫外光の単位面積当たりのフォトン数の上限は、特に限定されないが、1800×1016個/cm2以下であってもよいし、1200×1016個/cm2以下であってもよい。
【0048】
次に、単位面積当たりのフォトン数の計算方法について説明する。
【0049】
まず、1秒当たりのフォトン数は、以下の数式1として求められる。
【0050】
Ns=(W×λ)÷(h×c) ・・・(数式1)
Ns:1秒当たりのフォトン数(個/秒)
W:UVライトの照射強度(W/cm2)
h:プランク定数=6.626×10-34(J・秒)
c:真空中の光速=2.998×108(m/秒)
λ:光の波長(m)
フォトン数は、以下の数式2として求められる。
【0051】
Nt=Ns×t ・・・(数式2)
Nt:フォトン数(個)
t:光の照射時間(秒)
炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1に照射される単位面積当たりのフォトン数は、以下の数式3として求められる。
【0052】
N=(Nt×W)÷(L×S) ・・・(数式3)
N:主面に照射される単位面積当たりのフォトン数(個/cm2)
W:主面の直径(cm)
L:UVライトの長さ(cm)
S:主面の面積(cm2)
炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1におけるUVライトの照射強度は、たとえば照度計(強度計)を用いて測定される。照度計を用いて、炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1におけるUVライトの照射強度が得られる。
【0053】
照射強度から、以下の数式4を用いてフォトン数が求められる。
【0054】
N
t=(W1×λ)÷(h×c)×t ・・・(数式4)
N
t:フォトン数(個)
W1:主面におけるUVライトの照射強度(W/cm
2)
λ:光の波長(m)
h:プランク定数=6.626×10
-34(J・秒)
c:真空中の光速=2.998×10
8(m/秒)
t:光の照射時間(秒)
次に、主面に電荷を供給したのちプローブを主面と非接触の状態で配置し、プローブを用いて主面の電位を測定する工程(S30)が実施される。
図1に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板10がチャック111に取り付けられる。炭化珪素エピタキシャル基板10の第4主面4は、チャック111の基板保持面110に接する。チャック111は、導電性材料により構成されている。チャック111は、電気的に接地されている。炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1の上方に、コロナ電極112と、プローブ113とが配置される。コロナ電極112は、第1主面1に電荷を供給する。コロナ電極112は、第1主面1から離間している。
【0055】
コロナ電極112に電圧を印加することで、空気が電離し、電荷が発生する。電荷のミラー効果により、炭化珪素エピタキシャル層中のキャリアが移動することで、炭化珪素エピタキシャル層12に空乏層が形成される。プローブ113は、第1主面1と非接触の状態で配置される。プローブ113は、第1主面1から離間している。プローブ113は、たとえば第1主面1の中心の上方に配置される。プローブ113を用いて第1主面1の電位が測定される。以上のように、第1主面1に電荷を供給したのちプローブ113を第1主面1と非接触の状態で配置し、プローブ113を用いて第1主面1の電位が測定される。
【0056】
次に、電荷および電位に基づいて、炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度を計算する工程(S40)が実施される。炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に供給された電荷と、プローブ113によって測定された第1主面1の電位とに基づいて、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度が求められる。
【0057】
炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度は、以下の数式5を用いて求められる。
【0058】
Q2=(2×e×εS×ε0)×(V-Vd)×Nd ・・・(数式5)
Q:コロナ電荷量(C)
e:電荷素量=1.602×10-19(C)
εS:炭化珪素エピタキシャル基板の比誘電率
ε0:真空の誘電率=8.854×10-14(F/cm)
V:プローブで測定された電位(V)
Vd:基準電位(V)
Nd:炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度(cm-3)
次に、炭化珪素エピタキシャル基板を選別する工程(S50)が実施される。具体的には、炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度を計算する工程(S40)において計算されたキャリア濃度が、基準となるキャリア濃度と比較される。炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度を計算する工程(S40)において計算されたキャリア濃度が、基準となるキャリア濃度の範囲内であれば、当該炭化珪素エピタキシャル基板10は、良品と判断される。反対に、炭化珪素エピタキシャル基板のキャリア濃度を計算する工程(S40)において計算されたキャリア濃度が、基準となるキャリア濃度の範囲外であれば、当該炭化珪素エピタキシャル基板10は、不良品と判断される。以上のように、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度に基づいて炭化珪素エピタキシャル基板10が選別される。
【0059】
(炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法)
次に、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の製造方法について説明する。
図8は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板の製造方法を概略的に示すフロー図である。
図8に示されるように、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の製造方法は、主面を有する炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程(S10)と、主面に対して紫外光を照射する工程(S20)とを主に有している。
【0060】
まず、主面を有する炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程(S10)が実施される。本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の製造方法における主面を有する炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程(S10)は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法における主面を有する炭化珪素エピタキシャル基板を準備する工程(S10)と同様である。
【0061】
次に、主面に対して紫外光を照射する工程(S20)が実施される。本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の製造方法における主面に対して紫外光を照射する工程(S20)は、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法における主面に対して紫外光を照射する工程(S20)と同様である。以上により、炭化珪素エピタキシャル基板10が準備される。
【0062】
次に、本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法、炭化珪素エピタキシャル基板10の製造方法および炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置300の作用効果について説明する。
【0063】
炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度を測定する方法として、水銀プローブを用いた接触型の測定方法と、非接触プローブを用いた非接触型の測定方法とがある。非接触型の測定方法は、プローブ113を炭化珪素エピタキシャル基板10に接触させる必要がないため、炭化珪素エピタキシャル基板10にコンタミネーションが発生することを抑制することができるという利点がある。しかしながら、非接触型の測定方法においては、キャリア濃度の再現性が低く、安定的にキャリ濃度を算出することができないという課題があった。
【0064】
発明者らは、上記課題を解決するための方策について鋭意検討の結果、以下の知見を得て、本開示に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法、炭化珪素エピタキシャル基板10の製造方法および炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置300を見出した。具体的には、ある特定の波長の紫外光を炭化珪素エピタキシャル基板10に一定時間照射することで、キャリア濃度が安定的に測定可能であることを見出した。さらに検討を進めたところ、キャリア濃度の安定性は、単位面積当たりの紫外光のフォトン量に依存することが分かってきた。詳細な実験の結果、炭化珪素エピタキシャル基板10に照射される紫外光の単位面積当たりのフォトン数を30×1016個/cm2以上とすることにより、安定的にキャリア濃度を測定可能であることを見出した。
【0065】
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法によれば、主面1を有する炭化珪素エピタキシャル基板10が準備される。主面1に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光が照射される。紫外光を照射する工程後、主面1に電荷を供給したのちプローブ113を主面1と非接触の状態で配置し、プローブ113を用いて主面1の電位が測定される。電荷および電位に基づいて、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度が計算される。紫外光を照射する工程においては、紫外光の単位面積当たりのフォトン数は30×1016個/cm2以上である。これにより、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度を安定的に測定することができる。
【0066】
また本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法によれば、主面1は、(000-1)面または(000-1)面に対して8°以下のオフ角で傾斜していてもよい。これにより、主面1がカーボン面またはカーボン面に対して8°以下のオフ角で傾斜している場合において、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度を安定的に測定することができる。
【0067】
さらに本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法によれば、主面1は、主面1は、(0001)面または(0001)面に対して8°以下のオフ角で傾斜していてもよい。単位面積当たりのフォトン数は、550×1016個/cm2以上であってもよい。これにより、主面1がシリコン面またはシリコン面に対して8°以下のオフ角で傾斜している場合において、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度を安定的に測定することができる。
【0068】
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の製造方法によれば、上記記載の炭化珪素エピタキシャル基板10の検査方法が行われる。キャリア濃度に基づいて、炭化珪素エピタキシャル基板10が選別される。これにより、精度良く、炭化珪素エピタキシャル基板10が選別される。結果として、炭化珪素エピタキシャル基板10の歩留まりが高くなる。
【0069】
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の製造方法によれば、主面1を有する炭化珪素エピタキシャル基板10が準備される。主面1に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光が照射される。紫外光を照射する工程においては、紫外光の単位面積当たりのフォトン数は30×1016個/cm2以上である。これにより、キャリ濃度を安定的に測定することができる炭化珪素エピタキシャル基板10を得ることができる。
【0070】
本実施形態に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の検査装置300は、照射装置部200と、測定装置部100とを有している。照射装置部200は、炭化珪素エピタキシャル基板10の主面1に対して200nm以上400nm以下の波長を有する紫外光を照射する。測定装置部100は、主面1に電荷を供給したのちプローブ113を主面1と非接触の状態で配置し、プローブ113を用いて主面1の電位を測定する。これにより、キャリ濃度を安定的に測定することができる炭化珪素エピタキシャル基板10を得ることができる。
【実施例】
【0071】
(サンプル準備)
サンプル1~7に係る炭化珪素エピタキシャル基板10を準備した。サンプル1~3および5~7に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1は、(000-1)面とした。サンプル4に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1は、(0001)面とした。
【0072】
(実験方法)
図2に示されるように、炭化珪素エピタキシャル基板10が基板保持部201に配置された。紫外光照射部204は、炭化珪素エピタキシャル基板10の上方に配置された。紫外光照射部204のUVライト203は、炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に対向させて配置した。第1主面1に対して垂直な方向において、UVライト203と第1主面1との距離は、50mmとした。
図7に示されるように、第1主面1に対して垂直な方向に見て、紫外光照射部204のUVライト203は、長方形の形状を有している。第2幅W2は、154mmとした。第3幅W3は、47mmとした。紫外光照射部204は、第1主面1に対して垂直な方向に見て、UVライト203の長手方向がオリエンテーションフラットと平行となるように配置された。紫外光照射部204として、アズワン社製のSLUV-6が使用された。
【0073】
サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に対しては、365nmの波長を有する紫外光が照射された。UVライト203は、移動させることなく固定状態とした。紫外光の照射時間を変化させることにより、単位面積当たりのフォトン数を変化させた。
【0074】
サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に対しては、254nmの波長を有する紫外光が照射された。UVライト203は、移動させることなく固定状態とした。紫外光の照射時間を変化させることにより、単位面積当たりのフォトン数を変化させた。
【0075】
サンプル3に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に対しては、365nmの波長を有する紫外光が照射された。UVライト203は、オリエンテーションフラットから第2方向102に沿って移動させた。紫外光の照射時間を変化させることにより、単位面積当たりのフォトン数を変化させた。
【0076】
サンプル4に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に対しては、365nmの波長を有する紫外光が照射された。UVライト203は、移動させることなく固定状態とした。紫外光の照射時間を変化させることにより、単位面積当たりのフォトン数を変化させた。
【0077】
サンプル5に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に対しては、365nmの波長を有する紫外光が照射された。第1主面1における紫外光強度は、498μW/cm2とした。UVライト203と第1主面1との距離(離間距離D)は、8mmとした。紫外光の照射時間を変化させることにより、単位面積当たりのフォトン数を変化させた。
【0078】
サンプル6に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に対しては、365nmの波長を有する紫外光が照射された。第1主面1における紫外光強度は、1274μW/cm2とした。UVライト203と第1主面1との距離(離間距離D)は、5mmとした。紫外光の照射時間を変化させることにより、単位面積当たりのフォトン数を変化させた。
【0079】
サンプル7に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に対しては、365nmの波長を有する紫外光が照射された。第1主面1における紫外光強度は、7963μW/cm2とした。UVライト203と第1主面1との距離(離間距離D)は、2mmとした。紫外光の照射時間を変化させることにより、単位面積当たりのフォトン数を変化させた。
【0080】
(実験結果)
図9は、サンプル1に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に照射された紫外光の単位面積当たりのフォトン数と、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度との関係を示す図である。
図9に示されるように、紫外光の単位面積当たりのフォトン数が少ない場合の炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度は、単位面積当たりのフォトン数が多い場合の炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度よりも高い。紫外光の単位面積当たりのフォトン数が30×10
16個/cm
2以上の場合、キャリア濃度は、紫外光の単位面積当たりのフォトン数によらず、ほぼ一定の値となった。
【0081】
図10は、サンプル2に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に照射された紫外光の単位面積当たりのフォトン数と、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度との関係を示す図である。
図10に示されるように、紫外光の単位面積当たりのフォトン数が少ない場合の炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度は、単位面積当たりのフォトン数が多い場合の炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度よりも高い。紫外光の単位面積当たりのフォトン数が30×10
16個/cm
2以上の場合、キャリア濃度は、紫外光の単位面積当たりのフォトン数によらず、ほぼ一定の値となった。
【0082】
図11は、サンプル3に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に照射された紫外光の単位面積当たりのフォトン数と、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度との関係を示す図である。
図11に示されるように、紫外光の単位面積当たりのフォトン数が少ない場合の炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度は、単位面積当たりのフォトン数が多い場合の炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度よりも高い。紫外光の単位面積当たりのフォトン数が30×10
16個/cm
2以上の場合、キャリア濃度は、紫外光の単位面積当たりのフォトン数によらず、ほぼ一定の値となった。
【0083】
図12は、サンプル4に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に照射された紫外光の単位面積当たりのフォトン数と、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度との関係を示す図である。
図12に示されるように、紫外光の単位面積当たりのフォトン数が少ない場合の炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度は、単位面積当たりのフォトン数が多い場合の炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度よりも高い。紫外光の単位面積当たりのフォトン数が550×10
16個/cm
2以上の場合、キャリア濃度は、紫外光の単位面積当たりのフォトン数によらず、ほぼ一定の値となった。
【0084】
図13は、サンプル5~7に係る炭化珪素エピタキシャル基板10の第1主面1に照射された紫外光の単位面積当たりのフォトン数と、炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度との関係を示す図である。サンプル5~7に係る炭化珪素エピタキシャル基板10は、それぞれ、「○」、「△」および「□」で示している。
図13に示されるように、全ての紫外光強度の場合において、紫外光の単位面積当たりのフォトン数が少ない場合の炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度は、単位面積当たりのフォトン数が多い場合の炭化珪素エピタキシャル基板10のキャリア濃度よりも高い。全ての紫外光強度の場合において、紫外光の単位面積当たりのフォトン数が30×10
16個/cm
2以上の場合、キャリア濃度は、紫外光の強度によらずほぼ一定の値となった。以上の結果より、紫外光の単位面積当たりのフォトン数を30×10
16個/cm
2以上とすることにより、キャリア濃度が安定的に測定できることが確認された。
【0085】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 第1主面(主面)
2 第2主面
3 第3主面
4 第4主面
10 炭化珪素エピタキシャル基板
11 炭化珪素基板
12 炭化珪素エピタキシャル層
13 オリエンテーションフラット
14 円弧状部
15 外周縁
100 測定装置部
101 第1方向
102 第2方向
110,210 基板保持面
111 チャック
112 コロナ電極
113 プローブ
200 照射装置部
201 基板保持部
202 ライト保持部
203 UVライト
204 紫外光照射部
300 検査装置
310 搬送部
D 離間距離
W1 第1幅
W2 第2幅
W3 第3幅