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特許7521408金属検出センサおよびこれを備えた電動把持工具、金属検出方法、金属検出プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】金属検出センサおよびこれを備えた電動把持工具、金属検出方法、金属検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/90 20210101AFI20240717BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20240717BHJP
   B25D 17/10 20060101ALI20240717BHJP
   B23B 45/00 20060101ALI20240717BHJP
   B23B 47/00 20060101ALI20240717BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20240717BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G01N27/90
B25F5/00 C
B25D17/10
B23B45/00 B
B23B47/00 C
G01N27/22 C
G01N33/38
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020209574
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096458
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 亮志
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 康平
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-158491(JP,A)
【文献】特開2005-140596(JP,A)
【文献】特開2006-214936(JP,A)
【文献】特開昭63-225188(JP,A)
【文献】特開平04-038494(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0063679(US,A1)
【文献】特表2005-509535(JP,A)
【文献】特開2019-089165(JP,A)
【文献】特開昭60-089789(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0221325(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102019200323(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
G01N 27/72 - G01N 27/9093
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01V 1/00 - G01V 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物内に含まれる金属を検出する金属検出センサであって、
前記対象物の表面において、前記対象物内に含まれる前記金属の検出強度に応じて変化する検出信号を取得する検出信号取得部と、
前記検出信号取得部において取得された前記検出信号の取得結果に含まれる最大値および最小値に基づいて、前記金属の有無を判定するために使用される上限閾値および下限閾値を設定する閾値設定部と、
前記閾値設定部において設定された前記上限閾値に近い前記検出信号を取得した位置では、前記金属が有ると判定し、前記下限閾値に近い前記検出信号を取得した位置では、前記金属が無いと判定する判定部と、
を備えている金属検出センサ。
【請求項2】
前記閾値設定部において設定された前記上限閾値および前記下限閾値を初期化する初期化処理部を、さらに備えている、
請求項1に記載の金属検出センサ。
【請求項3】
前記閾値設定部において設定された前記上限閾値および前記下限閾値を保存する記憶部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の金属検出センサ。
【請求項4】
前記検出信号取得部における前記検出信号の取得結果に応じて、前記記憶部に保存された前記上限閾値および前記下限閾値を更新する閾値更新部を、さらに備えている、
請求項3に記載の金属検出センサ。
【請求項5】
前記閾値更新部は、前記対象物に対する1回の走査中に、前記上限閾値および前記下限閾値の更新を繰り返し実施する、
請求項4に記載の金属検出センサ。
【請求項6】
前記金属の検出結果を表示する表示部と、
前記表示部を制御する表示制御部と、
をさらに備えている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の金属検出センサ。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記金属の検出強度に応じて異なる色の光を点灯するように、前記表示部を制御する、
請求項6に記載の金属検出センサ。
【請求項8】
前記検出信号取得部において取得された検出信号の最大値と最小値との間を所定間隔で分割した複数のレベルを設定するレベル設定部を、さらに備え、
前記表示制御部は、前記レベル設定部において設定された前記複数のレベルに応じて、前記表示部に表示させる光の色を切り替えるように制御を行う、
請求項6または7に記載の金属検出センサ。
【請求項9】
前記対象物に対する接触を検出する接触検知部を、さらに備えている、
請求項1から8のいずれか1項に記載の金属検出センサ。
【請求項10】
前記接触検知部は、前記対象物に接触するとOFF状態からON状態に移行する接触スイッチである、
請求項9に記載の金属検出センサ。
【請求項11】
前記対象物を加工する電動把持工具の先端に装着されており、前記接触検知部において前記対象物に接触したことを検知すると、前記電動把持工具の先端部から退避させる退避機構を、さらに備えている、
請求項9または10に記載の金属検出センサ。
【請求項12】
前記対象物に対して加工を行う電動把持工具に対して着脱可能に取り付けられる、
請求項1から11のいずれか1項に記載の金属検出センサ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の金属検出センサと、
前記金属検出センサが装着される本体部と、
前記本体部に設けられており、装着された先端工具を駆動する駆動部と、
前記本体部に設けられており、前記駆動部の制御を行う駆動制御部と、
を備えている電動把持工具。
【請求項14】
前記駆動制御部は、前記判定部において前記金属が有ると判定された場合には、前記駆動部の駆動を禁止する、
請求項13に記載の電動把持工具。
【請求項15】
前記駆動制御部は、前記判定部において前記金属が無いと判定された場合には、前記駆動部の駆動を許可する、
請求項13または14に記載の電動把持工具。
【請求項16】
対象物内に含まれる金属を検出する金属検出センサを用いた金属検出方法であって、
前記金属検出センサの検出信号取得部が、前記対象物の表面において、前記対象物内に含まれる前記金属の検出強度に応じて変化する検出信号を取得する検出信号取得ステップと、
前記金属検出センサの閾値設定部が、前記検出信号取得ステップにおいて取得された前記検出信号の取得結果に含まれる最大値および最小値に基づいて、前記金属の有無を判定するために使用される上限閾値および下限閾値を設定する閾値設定ステップと、
前記金属検出センサの判定部が、前記閾値設定ステップにおいて設定された前記上限閾値に近い前記検出信号を取得した位置では、前記金属が有ると判定し、前記下限閾値に近い前記検出信号を取得した位置では、前記金属が無いと判定する判定ステップと、
を備えている金属検出方法。
【請求項17】
対象物内に含まれる金属を検出する金属検出センサの金属検出プログラムであって、
前記金属検出センサの検出信号取得部が、前記対象物の表面において、前記対象物内に含まれる前記金属の検出強度に応じて変化する検出信号を取得する検出信号取得ステップと、
前記金属検出センサの閾値設定部が、前記検出信号取得ステップにおいて取得された前記検出信号の取得結果に含まれる最大値および最小値に基づいて、前記金属の有無を判定するために使用される上限閾値および下限閾値を設定する閾値設定ステップと、
前記金属検出センサの判定部が、前記閾値設定ステップにおいて設定された前記上限閾値に近い前記検出信号を取得した位置では、前記金属が有ると判定し、前記下限閾値に近い前記検出信号を取得した位置では、前記金属が無いと判定する判定ステップと、
を備えている金属検出方法をコンピュータに実行させる金属検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、コンクリート中に含まれる鉄筋等の金属を検出する金属検出センサおよびこれを備えた電動把持工具、金属検出方法、金属検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、コンクリート中に含まれる鉄筋等の埋設物を避けてコンクリートに穴開け加工等を行うために、鉄筋等の金属の位置を検出する金属検出センサが用いられている。
例えば、特許文献1には、壁材の裏側に配置される配線ボックスを壁材の表側から非接触で探知するために、複数の金属センサにおける金属検出結果を用いて判定し、判定結果をユーザに通知する探知装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-号60405公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の探査装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された探査装置では、実際の作業現場における金属の配置や深さ、サイズ等が一定ではないにもかかわらず、固定された閾値を用いて金属の有無を判定しているため、鉄筋等の金属の有無を正確に検出することは困難であった。
具体的には、例えば、コンクリート表面から比較的浅い位置に太い鉄筋が連続して狭い間隔で埋設されている場合には、隣接する鉄筋の検出結果同士が干渉し、鉄筋位置の判断が困難になる(幅広の鉄板が埋設と誤認識する)おそれがある。
【0005】
また、浅い位置の鉄筋の検出に注力すると、深い位置の鉄筋を見逃してしまうため、穴開け作業時に見逃した鉄筋にドリルの刃が当たってしまうおそれがある。
さらに、浅い位置の鉄筋を検出し過ぎず、深い位置の鉄筋も見逃さないようにするためには、検出条件が無数にあるために技術的な難易度が高い。
よって、従来は、熟練度の高い作業者が複数のモードを切り替えて金属を検出していたため、正確な作業の実施は作業者の熟練度に依存するという課題があった。
【0006】
本発明の課題は、作業者の熟練度に関わらず、対象物内に含まれる金属を高精度に検出することが可能な金属検出センサおよびこれを備えた電動把持工具、金属検出方法、金属検出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る金属検出センサは、対象物内に含まれる金属を検出する金属検出センサであって、検出信号取得部と、閾値設定部と、判定部と、を備えている。検出信号取得部は、対象物の表面において、対象物内に含まれる金属の検出強度に応じて変化する検出信号を取得する。閾値設定部は、検出信号取得部において取得された検出信号の取得結果に含まれる最大値および最小値の少なくとも一方に基づいて、金属の有無を判定するために使用される閾値を設定する。判定部は、閾値設定部において設定された閾値を用いて、金属の有無を判定する。
【0008】
ここでは、例えば、コンクリート等の対象物に含まれる鉄筋等の金属を検出可能な金属検出センサであって、コンクリート等の対象物に含まれる鉄筋等の金属の有無を、検出信号の取得結果に基づいて設定された閾値を用いて判定する。
ここで、対象物には、例えば、マンション、ビル、工場等の建設現場のコンクリート、石膏ボード等の壁等が含まれる。
【0009】
また、検出される金属には、例えば、鉄筋コンクリートに含まれる鉄筋、壁内に設置されたアルミニウムやステンレス等の金属が含まれる。
金属の検出は、例えば、検出コイルに電流を流して発生する磁界中に検出体である金属が近づくと金属中に発生する渦電流によって変化する検出コイルのインピーダンスを検出する誘導式、検出対象である金属との間に生じる静電容量の変化を検出する静電容量式、アルミニウム等の非磁性体の検出を行う高周波発振方式等の検出が含まれる。
【0010】
設定される閾値は、例えば、金属の検出強度に応じて変化する検出信号の最大値を上限閾値、最小値を下限閾値とする閾値レンジが設定されてもよいし、最大値を上限閾値として設定してもよいし、最小値を下限閾値として設定してもよい。
また、設定された閾値は、その後、検出信号取得部が取得した検出信号の大小に応じて新たな閾値として更新されながら金属の有無の判定を実施してもよいし、最初に設定された閾値を用いて判定を実施してもよい。
【0011】
これにより、作業現場ごとに対象物内の金属の配列、太さ、連続性等の条件が異なる場合でも、実際に検出対象となる金属を検出した検出信号の最大値および最小値に基づいて設定される閾値を用いて、金属の有無を判定することができる。
よって、固定値とされた閾値を用いた金属の有無の判定と比較して、様々な条件の変化に対応して、適切に金属の有無を判定することができる。
この結果、作業者の熟練度に関わらず、対象物内に含まれる金属を高精度に検出することができる。
【0012】
第2の発明に係る金属検出センサは、第1の発明に係る金属検出センサであって、閾値設定部は、最大値を上限閾値として設定し、最小値を下限閾値として設定する。
これにより、検出信号取得部において取得された検出信号の最大値を上限閾値、最小値を下限閾値とする閾値レンジを設定することで、例えば、上限閾値に近い検出信号を取得した位置では金属が有ると判定し、下限閾値に近い検出信号を取得した位置では金属が無いと判定することができる。
【0013】
第3の発明に係る金属検出センサは、第1または第2の発明に係る金属検出センサであって、閾値設定部において設定された閾値を初期化する初期化処理部を、さらに備えている。
これにより、例えば、初期化スイッチ等が押下されるたびに、閾値設定部において設定された閾値がリセット(初期化処理)される。
よって、作業現場が変わるたびに、例えば、初期化スイッチを操作することで閾値の初期化処理を行うことができるため、現場ごとに新たに設定される閾値を用いて、金属の有無を精度よく判定することができる。
【0014】
第4の発明に係る金属検出センサは、第1から第3の発明のいずれか1つに係る金属検出センサであって、閾値設定部において設定された閾値を保存する記憶部を、さらに備えている。
これにより、閾値設定部において設定された閾値を保存することで、例えば、新たな閾値が設定されるまでの間、その閾値を用いて金属の有無を判定することができる。
【0015】
第5の発明に係る金属検出センサは、第4の発明に係る金属検出センサであって、検出信号取得部における検出信号の取得結果に応じて、記憶部に保存された閾値を更新する閾値更新部を、さらに備えている。
【0016】
これにより、コンクリート等の対象物の表面に沿って移動しながら検出信号を取得することで、記憶部に保存された閾値よりも大きい最大値あるいは閾値よりも小さい最小値を取得した場合には、新たな閾値として更新することができる。
この結果、例えば、新たに設定された更新後の閾値を用いて、金属の有無を判定することができる。
【0017】
第6の発明に係る金属検出センサは、第5の発明に係る金属検出センサであって、閾値更新部は、対象物に対する1回の走査中に、閾値の更新を繰り返し実施する。
これにより、コンクリート等の対象物の表面に沿って移動しながら金属を検出する1回の走査中に、検出信号の最大値および最小値の少なくとも一方に基づいて設定された判定用の閾値を、新たに取得された検出信号の値に基づいて繰り返し更新することで、更新後の閾値を用いて、金属の有無を判定することができる。
【0018】
第7の発明に係る金属検出センサは、第1から第6の発明のいずれか1つに係る金属検出センサであって、金属の検出結果を表示する表示部と、表示部を制御する表示制御部と、をさらに備えている。
これにより、設定された閾値を用いた判定に基づく判定結果が表示部に表示されるように制御することができる。
よって、作業者は、表示部に表示された光の色や文字情報等を確認して、対象物内の金属の有無を認識することができる。
【0019】
第8の発明に係る金属検出センサは、第7の発明に係る金属検出センサであって、表示制御部は、金属の検出強度に応じて異なる色の光を点灯するように、表示部を制御する。
これにより、例えば、金属が有ると判定された場合には赤色の光を点灯させ、金属が無いと判定された場合には緑色の光を点灯させる等の表示制御を実施することで、作業者は、点灯した光の色を確認するだけで、容易に対象物内の金属の有無を認識することができる。
【0020】
第9の発明に係る金属検出センサは、第7または第8の発明に係る金属検出センサであって、検出信号取得部において取得された検出信号の最大値と最小値との間を所定間隔で分割した複数のレベルを設定するレベル設定部を、さらに備えている。表示制御部は、レベル設定部において設定された複数のレベルに応じて、表示部に表示させる光の色を切り替えるように制御を行う。
これにより、検出信号の最大値と最小値との間を複数に分割して設定される複数のレベルに応じて複数の光の色を切り替えて表示することで、作業者は、表示部の光の色に基づいて、金属検出センサからの金属までの距離を推測しながら、適切に作業を実施することができる。
【0021】
第10の発明に係る金属検出センサは、第1から第9の発明のいずれか1つに係る金属検出センサであって、対象物に対する接触を検出する接触検知部を、さらに備えている。
これにより、コンクリート等の対象物に金属検出センサを接触させたことを検出することで、例えば、接触した状態にならない限り、電動把持工具の駆動部の駆動を禁止する等の制御を行うことができる。
【0022】
第11の発明に係る金属検出センサは、第10の発明に係る金属検出センサであって、接触検知部は、対象物に接触するとOFF状態からON状態に移行する接触スイッチである。
これにより、例えば、押圧式の接触スイッチを接触検知部として用いることで、安価な構成により、対象物に対する金属検出センサの接触を検出することができる。
【0023】
第12の発明に係る金属検出センサは、第10または第11の発明に係る金属検出センサであって、対象物を加工する電動把持工具の先端に装着されており、接触検知部において対象物に接触したことを検知すると、電動把持工具の先端部から退避させる退避機構を、さらに備えている。
【0024】
ここで、金属検出センサが装着される電動把持工具には、例えば、ハンマドリル、インパクトドリル、振動ドリル等のように、作業者が手に持った状態でコンクリート等の対象物に対して各種加工を行う電動工具が含まれる。
これにより、金属検出センサが電動把持工具の先端部に装着された状態で金属検出センサが対象物に接触したことを検知すると、電動把持工具の先端部から金属検出センサを自動的に退避させることで、例えば、作業者が加工部分を見やすくなるとともに、ドリル等の先端工具を回転させて穴開け加工を実施した際に生じる粉塵等が金属検出センサに付着することを抑制することができる。
【0025】
第13の発明に係る金属検出センサは、第1から第12の発明のいずれか1つに係る金属検出センサであって、対象物に対して加工を行う電動把持工具に対して着脱可能に取り付けられる。
これにより、電動把持工具に搭載された金属検出センサが本体部に対して着脱可能な状態で用いられることで、必要に応じて金属センサを着脱して使用することができる。
【0026】
第14の発明に係る電動把持工具は、第1から第13の発明のいずれか1つに係る金属検出センサと、金属検出センサが装着される本体部と、本体部に設けられており装着された先端工具を駆動する駆動部と、本体部に設けられており駆動部の制御を行う駆動制御部と、を備えている。
これにより、上述した金属検出センサが装着された状態で電動把持工具を使用することができるため、マーキング作業が不要になるとともに、コンクリート等の対象物の内部に存在する金属に接触することなく金属の有無を作業者に報知して、対象物に対して各種加工を行うことができる。
【0027】
第15の発明に係る電動把持工具は、第14の発明に係る電動把持工具であって、駆動制御部は、判定部において金属が有ると判定された場合には、駆動部の駆動を禁止する。
これにより、判定部において金属が有ると判定されると、その判定結果を駆動部の駆動制御に反映させて、駆動を禁止することができる。
よって、金属が有ると判定されているにもかかわらず、穴開け作業等を実施してドリルの先端が金属に接触する等の問題を回避して、安全性をさらに向上させることができる。
【0028】
第16の発明に係る電動把持工具は、第14または第15の発明に係る電動把持工具であって、駆動制御部は、判定部において金属が無いと判定された場合には、駆動部の駆動を許可する。
これにより、判定部において金属が無いと判定されると、その判定結果を駆動部の駆動制御に反映させて、駆動を許可することができる。
よって、金属が無いと判定された場合に限り、穴開け作業等の実施を許可することで、ドリルの先端が金属に接触する等の問題を回避して、安全性をさらに向上させることができる。
【0029】
第17の発明に係る金属検出方法は、対象物内に含まれる金属を検出する金属検出センサを用いた金属検出方法であって、検出信号取得ステップと、閾値設定ステップと、判定ステップと、を備えている。検出信号取得ステップでは、金属検出センサの検出信号取得部が、対象物の表面において、対象物内に含まれる金属の検出強度に応じて変化する検出信号を取得する。閾値設定ステップでは、金属検出センサの閾値設定部が、検出信号取得ステップにおいて取得された検出信号の取得結果に含まれる最大値および最小値の少なくとも一方に基づいて、金属の有無を判定するために使用される閾値を設定する。判定ステップでは、金属検出センサの判定部が、閾値設定ステップにおいて設定された閾値を用いて、金属の有無を判定する。
【0030】
ここでは、例えば、コンクリート等の対象物に含まれる鉄筋等の金属を検出可能な金属検出センサを用いた金属検出方法であって、コンクリート等の対象物に含まれる鉄筋等の金属の有無を、検出信号の取得結果に基づいて設定された閾値を用いて判定する。
ここで、対象物には、例えば、マンション、ビル、工場等の建設現場のコンクリート、石膏ボード等の壁等が含まれる。
【0031】
また、検出される金属には、例えば、鉄筋コンクリートに含まれる鉄筋、壁内に設置されたアルミニウムやステンレス等の金属が含まれる。
金属の検出は、例えば、検出コイルに電流を流して発生する磁界中に検出体である金属が近づくと金属中に発生する渦電流によって変化する検出コイルのインピーダンスを検出する誘導式、検出対象である金属との間に生じる静電容量の変化を検出する静電容量式、アルミニウム等の非磁性体の検出を行う高周波発振方式等の検出が含まれる。
【0032】
設定される閾値は、例えば、金属の検出強度に応じて変化する検出信号の最大値を上限閾値、最小値を下限閾値とする閾値レンジが設定されてもよいし、最大値を上限閾値として設定してもよいし、最小値を下限閾値として設定してもよい。
また、設定された閾値は、その後、検出信号取得部が取得した検出信号の大小に応じて新たな閾値として更新されながら金属の有無の判定を実施してもよいし、最初に設定された閾値を用いて判定を実施してもよい。
【0033】
これにより、作業現場ごとに対象物内の金属の配列、太さ、連続性等の条件が異なる場合でも、実際に検出対象となる金属を検出した検出信号の最大値および最小値に基づいて設定される閾値を用いて、金属の有無を判定することができる。
よって、固定値とされた閾値を用いた金属の有無の判定と比較して、様々な条件の変化に対応して、適切に金属の有無を判定することができる。
この結果、作業者の熟練度に関わらず、対象物内に含まれる金属を高精度に検出することができる。
【0034】
第18の発明に係る金属検出プログラムは、対象物内に含まれる金属を検出する金属検出センサの金属検出プログラムであって、検出信号取得ステップと、閾値設定ステップと、判定ステップと、を備えている金属検出方法をコンピュータに実行させる。検出信号取得ステップでは、金属検出センサの検出信号取得部が、対象物の表面において、対象物内に含まれる金属の検出強度に応じて変化する検出信号を取得する。閾値設定ステップでは、金属検出センサの閾値設定部が、検出信号取得ステップにおいて取得された検出信号の取得結果に含まれる最大値および最小値の少なくとも一方に基づいて、金属の有無を判定するために使用される閾値を設定する。判定ステップでは、金属検出センサの判定部が、閾値設定ステップにおいて設定された閾値を用いて、金属の有無を判定する。
【0035】
ここでは、例えば、コンクリート等の対象物に含まれる鉄筋等の金属を検出可能な金属検出センサの金属検出プログラムであって、コンクリート等の対象物に含まれる鉄筋等の金属の有無を、検出信号の取得結果に基づいて設定された閾値を用いて判定する。
ここで、対象物には、例えば、マンション、ビル、工場等の建設現場のコンクリート、石膏ボード等の壁等が含まれる。
【0036】
また、検出される金属には、例えば、鉄筋コンクリートに含まれる鉄筋、壁内に設置されたアルミニウムやステンレス等の金属が含まれる。
金属の検出は、例えば、検出コイルに電流を流して発生する磁界中に検出体である金属が近づくと金属中に発生する渦電流によって変化する検出コイルのインピーダンスを検出する誘導式、検出対象である金属との間に生じる静電容量の変化を検出する静電容量式、アルミニウム等の非磁性体の検出を行う高周波発振方式等の検出が含まれる。
【0037】
設定される閾値は、例えば、金属の検出強度に応じて変化する検出信号の最大値を上限閾値、最小値を下限閾値とする閾値レンジが設定されてもよいし、最大値を上限閾値として設定してもよいし、最小値を下限閾値として設定してもよい。
また、設定された閾値は、その後、検出信号取得部が取得した検出信号の大小に応じて新たな閾値として更新されながら金属の有無の判定を実施してもよいし、最初に設定された閾値を用いて判定を実施してもよい。
【0038】
これにより、作業現場ごとに対象物内の金属の配列、太さ、連続性等の条件が異なる場合でも、実際に検出対象となる金属を検出した検出信号の最大値および最小値に基づいて設定される閾値を用いて、金属の有無を判定することができる。
よって、固定値とされた閾値を用いた金属の有無の判定と比較して、様々な条件の変化に対応して、適切に金属の有無を判定することができる。
【0039】
この結果、作業者の熟練度に関わらず、対象物内に含まれる金属を高精度に検出することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係る金属検出センサによれば、作業者の熟練度に関わらず、対象物内に含まれる金属を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の一実施形態に係る金属検出センサを備えた電動把持工具を用いて、鉄筋の有無を検出しながらコンクリートに加工を行う際の状態を示す斜視図。
図2図1の電動把持工具の構成を示す全体斜視図。
図3図2の電動把持工具の構成を示す全体斜視図。
図4図2の電動把持工具の分解斜視図。
図5図3の電動把持工具の分解斜視図。
図6図2等の電動把持工具が備えた金属検出センサの構成を示す分解斜視図。
図7図2等の電動把持工具において設定可能な金属検出モードを示すグラフ。
図8図2等の電動把持工具の制御ブロック図。
図9図2等の電動把持工具を用いた金属検出方法について説明する図。
図10図6の金属検出センサに含まれるレベル設定部によって設定されるレベルテーブルを示す図。
図11】(a)~(f)は、金属の有無を示す判定結果に応じて、図6の金属検出センサの表示部に異なる色の光を点灯させる制御を示す図。
図12】(a)~(h)は、金属の有無を示す判定結果に応じて、図6の金属検出センサの表示部に異なる色の光を点灯させる制御を示す図。
図13】(a)~(d)は、金属の有無を示す判定結果に応じて、図6の金属検出センサの表示部に異なる色の光を点灯させる制御を示す図。
図14図6の金属検出センサを用いた金属検出方法の処理の流れを示すメインフローチャート。
図15図14の初期化処理の詳細な流れを示すフローチャート。
図16図14の最大値・最小値保存処理の詳細な流れを示すフローチャート。
図17図14のレベルテーブル設定処理の詳細な流れを示すフローチャート。
図18図14のレベルLED点灯処理の詳細な流れを示すフローチャート。
図19図1の電動把持工具の動作の流れを示すフローチャート。
図20】本発明の他の実施形態に係る金属検出センサを備えた電動把持工具の構成を示す斜視図。
図21図20の電動把持工具の分解斜視図。
図22】(a)および(b)は、図20の電動把持工具に含まれる退避機構について説明する側面図。
図23図20の電動把持工具の制御ブロック図。
図24】(a),(b),(c)は、本発明の他の実施形態に係る金属検出センサの構成を示す斜視図。
図25図6の金属検出センサが単体で用いられる状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(実施形態1)
本発明の一実施形態に係る金属検出センサ20を備えた電動把持工具10について、図1から図19図25を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明において、先端側とは、電動把持工具10を用いて加工を行う先端工具18aが装着された側を意味しており、後端側とは、先端側とは反対側を意味するものとする。
【0043】
本実施形態に係る電動把持工具10は、例えば、図1に示すように、作業者が手で持った状態でコンクリート(対象物)Wに埋め込まれた鉄筋(金属)の位置を検出しながら、作業を行うハンマドリル(電動把持工具の一種)であって、ドリル等の先端工具18aが装着された先端部18側に、金属検出センサ20が一体化した状態で取り付けられている。
【0044】
電動把持工具10は、図1に示すように、コンクリートWの表面に沿って金属検出センサ20を移動させ、鉄筋W1が埋設された位置に近づくと、後述する表示部24(図6等参照)に点灯させる光の色を変化させることで、作業者に鉄筋W1の有無を報知する。
これにより、作業者は、表示部24に点灯した光の色を見ることで鉄筋W1の有無を認識することができる。よって、先端工具18aの鉄筋W1への接触を回避しつつ、電動把持工具10を用いたコンクリートWに対する穴開け等の作業を実施することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、コンクリートW中に複数の鉄筋W1が格子状に埋め込まれている例を挙げて説明するが、鉄筋W1の本数、太さ、長さ等は、図1に示した構成に限定されるものではない。
ここでは、まず、電動把持工具10の外観構成について、図2から図5を用いて説明する。
【0046】
電動把持工具10は、図2および図3に示すように、本体部11と、金属検出センサ20と、粉塵収集部40とを備えている。
本体部11は、作業時に作業者によって把持される把持部11aと、作業者によって把持されるとモータ(駆動部)14(図8参照)が回転駆動されるトリガスイッチ12aと、電動把持工具10の電力を供給するバッテリ17aと、コンクリートWに対して加工を行う側に配置された先端部18と、を有している。
【0047】
把持部11aは、図2および図3に示すように、本体部11の左側面から突出するように設けられており、電動把持工具10を用いた作業を実施する際に作業者の左手によって把持される。
なお、把持部11aは、作業者に利き手に応じて左右反対に装着されていてもよい。
また、把持部11aの表面には、図3に示すように、金属検出センサ20の初期化処理を手動で行う際に押下されるリセットスイッチ19が設けられている。
【0048】
トリガスイッチ12aは、図2に示すように、本体部11における先端部18とは反対側(後端側)に設けられており、先端工具18aを回転させて作業を実施する際に、作業者によって把持される。
バッテリ17aは、電動把持工具10に含まれる構成に電力を供給する充電可能な二次電池であって、図2および図3に示すように、本体部11における後端側の下部に、交換可能な状態で取り付けられている。
【0049】
先端部18は、図2および図3に示すように、作業時において本体部11におけるコンクリートWに近い側に設けられており、ドリル等の先端工具18aが装着される。そして、先端部18は、トリガスイッチ12aの操作量に応じてモータ14が回転駆動制御されることで、先端工具18aとともに回転駆動される。
金属検出センサ20は、電動把持工具10を用いて穴開け加工等の作業が行われるコンクリートW中の鉄筋W1の有無を検出するために、電動把持工具10の本体部11の先端側に一体化した状態で取り付けられている。そして、金属検出センサ20は、図4および図5に示すように、粉塵収集部40のセンサ取付部43の後端側に形成された凹部に対して、着脱可能な状態で取り付けられる。
【0050】
また、金属検出センサ20は、略円環状の形状を有しており、その中心部分には、ドリル等の先端工具18aが加工時に挿入される作業穴が設けられている。
なお、金属検出センサ20の詳細な構成については、後段にて詳述する。
粉塵収集部40は、例えば、ドリル等の先端工具18aを回転駆動させてコンクリートWに穴開け加工等を実施した際に発生するコンクリートWの粉塵を吸引するために設けられている。具体的には、加工が行われる電動把持工具10の先端側の位置であって金属検出センサ20が装着されるセンサ取付部43に設けられた吸引口43aから、粉塵等を吸引する。
【0051】
粉塵収集部40は、図4および図5に示すように、電動把持工具10の本体部11の下部に着脱可能な状態で取り付けられており、本体部41と、装着部42と、センサ取付部43と、アーム部44と、を有している。
本体部41は、内部に図示しない吸引機構を含む箱型の形状を有しており、吸引口43aからアーム部44を介して吸引した粉塵等を溜める空間が形成されている。本体部41は、加工が行われる先端側に、センサ取付部43およびアーム部44、後端側に装着部42がそれぞれ設けられている。
【0052】
装着部42は、図5に示すように、電動把持工具10の本体部11が装着される部分であって、本体部11を係止した状態で固定する。
センサ取付部43は、図4および図5に示すように、粉塵収集部40の本体部41の先端側に設けられたアーム部44の先端に設けられた略円環状の部分であって、金属検出センサ20が後端側から取り付けられる。センサ取付部43は、略円環状の部分の内周面に形成された吸引口43aを有している。
【0053】
また、センサ取付部43は、略円環状の円環の中心部分に、ドリル等の先端工具18aが挿入される作業穴としての開口43bを有している。
さらに、センサ取付部43の先端側には、金属検出センサ20を用いた鉄筋W1の検出作業時に、コンクリートWに対して接触する接触面46(図2参照)が形成されている。
接触面46には、図2に示すように、センサ取付部43の中心の開口(作業穴)を取り囲むように、4つのローラ46aが回転可能な状態で取り付けられている。
【0054】
これにより、接触面46がコンクリートWの表面に接触した状態で、金属検出センサ20を走査方向(例えば、横方向)へスムーズに移動させることができる。よって、コンクリートWの表面と接触面46との間に摩擦抵抗を生じさせることなく、金属検出センサ20(電動把持工具10)を所望の走査方向へ移動させながら、金属の検出を実施することができる。
【0055】
アーム部44は、内部が空洞の中空部材であって、先端側に設けられたセンサ取付部43の吸引口43aから吸引した粉塵等を本体部41内へ導く。また、アーム部44は、本体部41に対して進退可能な状態で取り付けられている。
これにより、例えば、先端部18に装着された先端工具18aの長さに応じて適切な長さになるように、アーム部44の長さを調整することができる。また、穴開け等の作業を実施する前に金属検出センサ20を用いて鉄筋W1の有無を検出する作業だけを実施する場合や、先端部18への先端工具18aの着脱を行う場合等には、アーム部44を本体部41から引き出すことで、鉄筋W1の検出作業や先端工具18aの交換作業を容易に実施することができる。
【0056】
次に、金属検出センサ20の構成について、図6を用いて説明する。
金属検出センサ20は、図6に示すように、略円環状の形状を有しており、ケース(装着部)21と、センサ部22と、スペーサ23と、表示部24と、カバー25と、を有している。
ケース(装着部)21は、図5に示すように、金属検出センサ20がセンサ取付部43の凹部内に取り付けられる側に配置されている。ケース21は、図6に示すように、金属検出センサ20を構成する部材の中で最も先端側に配置された略円環状の部材であって、本体部21aと、スイッチカバー21bとを有している。
【0057】
本体部21aは、中心に開口を有する略円環状の部材であって、カバー25との間に形成される空間内に、センサ部22、スペーサ23、表示部24を内包する。
スイッチカバー21bは、例えば、本体部21aの外周面に取り付けられたゴム製の部材であって、本体部21aの内部に設けられた初期化スイッチ(図示せず)等を覆う防塵防滴構造を形成する。
【0058】
そして、スイッチカバー21bの部分が押下されると、金属検出センサ20の検出信号を初期化処理することができる。
センサ部22は、図6に示すように、略円環状の本体部22aと、本体部22aの外周面に巻回されたコイル22bとを有している。センサ部22は、コイル22bに電流を流すと形成される磁界中に鉄筋W1が近づくと鉄筋W1に発生する渦電流によって変化するコイルのインピーダンスを検出することで、鉄筋W1を検出する誘導式のセンサである。
【0059】
スペーサ23は、図6に示すように、略円環状の本体部23aを有し、センサ部22と表示部24の基板24aとの間に設けられている。
これにより、スペーサ23は、センサ部22に対する基板24aの金属影響を軽減するとともに、基板24aにおいて発生した熱がセンサ部22へ伝達されることを抑制することができる。
【0060】
表示部24は、図6に示すように、基板24aと8個のフルカラーLED(light emitting diode)24bと、USB(Universal Serial Bus)コネクタ24cと、を有している。8個のフルカラーLED24bは、略円環状の基板24a上に、基板24aの中心に形成された開口に向けて配置されている。LED24bは、センサ部22において検出された鉄筋W1の検出結果を、鉄筋W1までの距離に応じて異なる色(本実施形態では、緑、黄、赤)の光を点灯させることで報知する。
【0061】
例えば、鉄筋W1までの距離が比較的大きい場合には、表示部24は、LED24bに緑色の光を点灯させる。一方、鉄筋W1までの距離が比較的小さい場合には、表示部24は、LED24bに赤色の光を点灯させる。さらに、鉄筋W1までの距離が緑色と赤色の光の点灯時の間である場合には、表示部24は、LED24bに黄色の光を点灯させる。
なお、本実施形態の金属検出センサ20では、表示部24に8個のLED24bが含まれているため、8個すべてのLED24bの点灯色を揃えて点灯してもよいし、鉄筋W1までの距離に応じて、緑、黄、赤の点灯色の数を切り替えながら点灯させてもよい。
【0062】
これにより、作業者は、金属検出センサ20の表示部24に点灯した光の色を確認することで、鉄筋W1までのおおよその距離を認識することができる。
さらに、本実施形態の金属検出センサ20は、例えば、センサ部22による検出の結果、鉄筋W1がないと判定された場合には、LED24bに緑色の光を点灯させた後、トリガスイッチ12aが操作されたことを検知して、LED24bに白色光を点灯させる。
【0063】
この白色光は、トリガスイッチ12aが操作されてモータ14が回転し先端工具18aが回転駆動される際に、加工が行われる位置を明るく照らす補助光として使用される。
これにより、表示部24は、鉄筋W1の検出結果を示すだけでなく、加工が行われる際の加工位置を明るく照らす補助光としての光も点灯させることができる。
USBコネクタ24cには、図25に示すように、バッテリ50等の外部機器と接続するためのUSBケーブル51の一端が接続される。これにより、金属検出センサ20は、USBケーブル51の他端が接続されたバッテリ50から電力供給を受けて、単体で使用することができる。
【0064】
なお、USBケーブル51には、図25に示すように、ケーブルの中央付近に初期化スイッチ52が設けられていてもよい。これにより、USBケーブル51に設けられた初期化スイッチ52を操作した場合でも、金属検出センサ20の初期化処理を行うことができる。
カバー25は、図6に示すように、金属検出センサ20を構成する部材の中で最も後端側に配置された略円環状の部材であって、上述したケース21とともに、金属検出センサ20の外郭を構成する。また、カバー25は、本体部25aとモード表示面25bとを有している。
【0065】
本体部25aは、略円環状の部材であって、内部に、図示しないモード報知用の3個のLEDが実装されている。
モード表示面25bは、本体部25aにおける後端側(作業者側)の面であって、後述する複数の金属検出モードを、異なる色の光を点灯させて表示する。
ここで、本実施形態では、図7に示すように、作業者によって予め選択される3つの金属検出モード(深モード、中モード、浅モード)が設定されている。
【0066】
3つの金属検出モードは、例えば、鉄筋W1が存在するであろうと思われる深さ、鉄筋W1の太さ、本数、間隔等に応じて、判定用の異なる閾値が設定されており、作業者によって選択される。これらの3つのモードの切り替えは、図示しないモード切り替えスイッチによって行われる。
このように、モードごとに異なる閾値が設定されているため、例えば、浅モードが選択された場合には、コンクリートWの表面から比較的浅い位置に存在する鉄筋W1に対する検出精度を向上させることができる。これにより、例えば、コンクリートWの表面から比較的浅い位置に存在する複数の太い鉄筋W1を精度よく検出することができる。
【0067】
また、深モードが選択された場合には、コンクリートWの表面から比較的深い位置に存在する鉄筋W1の検出精度を向上させることができる。これにより、例えば、コンクリートWの表面から深い位置に存在する細い鉄筋W1を精度よく検出することができる。
次に、電動把持工具10の制御ブロックについて、図8を用いて説明する。
電動把持工具10は、上述したように、本体部11と、金属検出センサ20と、粉塵収集部40とを備えている。
【0068】
本体部11は、図8に示すように、操作部12、駆動制御部13、モータ(駆動部)14、信号送受信部15、姿勢検出部16、電源部17およびリセットスイッチ19を有している。
操作部12は、電動把持工具10のトリガスイッチ12aと接続されており、トリガスイッチ12aの操作量を検出して、駆動制御部13へ送信する。
【0069】
駆動制御部13は、操作部12から受信したトリガスイッチ12aの操作量に応じて、モータ14の回転速度を制御する。また、駆動制御部13は、金属検出センサ20の判定部33における判定結果に応じて信号送受信部36から送信される駆動禁止信号または駆動許可信号を受信して、モータ14の駆動を禁止または許可する。
モータ(駆動部)14は、駆動制御部13によって駆動制御されており、先端工具18aが装着された先端部18を回転駆動することで、コンクリートWの表面に穴開け等の加工を行う。
【0070】
信号送受信部15は、金属検出センサ20側の信号送受信部36との間で通信可能であって、金属検出センサ20の判定部33における判定結果等を受信して、駆動制御部13へ送信する。また、信号送受信部15は、本体部11側に設けられたリセットスイッチ19が操作された場合、あるいは姿勢検出部16が電動把持工具10が所定の姿勢になったことを検出した場合に、金属検出センサ20を初期化処理するための初期化信号を金属検出センサ20側へ送信する。
【0071】
姿勢検出部16は、電動把持工具10が所定の姿勢になったことを検出するために設けられた、例えば、ジャイロセンサ等である。姿勢検出部16は、例えば、電動把持工具10が横向きの姿勢から垂直上向きの姿勢に移行したことを検出する。
本実施形態の電動把持工具10では、このように電動把持工具10の特定の姿勢を検出することで、例えば、初期化処理が自動的に実施される。
【0072】
すなわち、金属検出センサ20の検出結果、設定された閾値等を初期化する初期化処理は、リセットスイッチ19を手動で操作することに加えて、姿勢検出部16によって電動把持工具10が所定の姿勢になったことを検出して実施されてもよい。
これにより、例えば、金属検出を行う場所が変わるたびに、作業者が手動でリセットスイッチ19を押下する必要がないため、作業者は初期化したい時に電動把持工具10を所定の姿勢にするだけで、自動的に初期化処理を実施して、新たな場所で鉄筋W1の検出および加工を実施することができる。
【0073】
電源部17は、上述した交換可能なバッテリ17aによって電力を供給する電源であって、本体部11内の構成、金属検出センサ20の構成、粉塵収集部40に対して電力を供給する。
リセットスイッチ19は、上述した把持部11aの根元部分に設けられており、金属検出センサ20の初期化処理を実施する際に押下される手動のスイッチであって、例えば、作業者の左手の親指等で操作される。
【0074】
金属検出センサ20は、図8に示すように、検出信号取得部31、閾値設定・更新部(閾値設定部、閾値更新部)32、判定部33、記憶部34、表示制御部35、表示部24、信号送受信部(禁止信号送信部、許可信号送信部)36、初期化処理部37およびレベル設定部38を有している。
検出信号取得部31は、図6のセンサ部22において検出されたコイル22bのインピーダンスの変化を示す検出信号を取得する。そして、検出信号取得部31は、取得した検出信号を、閾値設定・更新部32とレベル設定部38とにそれぞれ送信する。
【0075】
閾値設定・更新部(閾値設定部、閾値更新部)32は、コンクリートWの表面に沿って金属検出センサ20を移動させながら検出信号取得部31が取得した検出信号の最大値および最小値を、金属検出判定用の上限閾値および下限閾値として設定する(図9参照)。そして、閾値設定・更新部32は、さらにコンクリートWの表面に沿って金属検出センサ20を移動させながら検出信号取得部31が取得した検出信号が、設定済みの上限閾値よりも大きい場合には上限閾値を更新し、設定済みの下限閾値よりも小さい場合には下限閾値を更新する。
【0076】
このような閾値設定・更新部32による上限閾値および下限閾値の更新は、金属検出センサ20を用いた1回の走査中に、設定済みの上限閾値よりも大きい場合、設定済みの下限閾値よりも小さい場合に、繰り返し行われる。
これにより、検出信号取得部31において取得された検出信号に応じて、最新の上限閾値と下限閾値とを用いて鉄筋W1の有無の判定を行うことで、より高精度に鉄筋W1の検出を行うことができる。
【0077】
判定部33は、検出信号取得部31において取得された検出信号に基づいて、閾値設定・更新部32において設定された上限閾値および下限閾値を用いて、鉄筋W1の有無あるいは鉄筋W1までのおおよその距離を判定する。
具体的には、判定部33は、図9に示すように、コンクリートW内に埋設された鉄筋W1の位置を検出するために、例えば、図中左から右に向かって金属検出センサ20が走査されると、金属検出センサ20の移動に伴って、鉄筋W1からの検出強度の変化に応じて検出値が上下動する。
【0078】
このとき、判定部33は、上述した閾値設定・更新部32によって設定された判定用の上限閾値および下限閾値を用いて、鉄筋W1の有無を判定する。
例えば、図9は、コンクリートW内に埋設された複数の鉄筋にW1よって、検出値のピークが連続して現れる合成検出グラフを示している。
図9に示すグラフにおいて、例えば、上限閾値以上の検出値となった位置では、鉄筋W1が存在すると判定する。また、図9に示すグラフにおいて、下限閾値以下の検出値となった位置では、その近傍には鉄筋W1が存在しないと判定する。
【0079】
すなわち、本実施形態では、コンクリートWの表面に沿って金属検出センサ20を移動させながら検出信号取得部31が取得した検出信号を用いて上限閾値と下限閾値を設定・更新しながら、判定部33が、その上限閾値および下限閾値と検出信号とを比較して、鉄筋W1の有無を判定する。
また、図9に示すグラフでは、検出値として最初に現れた最大値がそのまま更新されることなく、上限閾値として設定されている。
【0080】
一方、図9に示すグラフでは、検出値として最初に現れた最小値は、2つ目に現れた最小値の方が小さいために更新され、2つ目の最小値が下限閾値として設定されている。
これにより、判定部33は、例えば、新たに設定された更新後の上限閾値および下限閾値を用いて、金属の有無を判定することができる。
記憶部34は、検出信号取得部31において取得された検出信号、閾値設定・更新部32において設定・更新された上限閾値および下限閾値、判定部33における判定結果等を保存する。
【0081】
表示制御部35は、閾値設定・更新部32において設定・更新された上限閾値および下限閾値を用いて行われた判定部33における判定結果に基づいて、上述した表示部24に含まれる8個のLED24bの点灯色を変化させるように、表示部24を制御する。また、表示制御部35は、後述するレベル設定部38において設定されたレベルテーブルに基づいて、8個のLED24bの点灯色を決定する。
【0082】
例えば、表示制御部35は、初期状態や鉄筋W1が無いと判定された場合には、8個のLED24bに緑色の光を点灯させ、鉄筋W1に近づくにつれて、レベル設定部38において設定されたレベルテーブルに応じて、1または複数のLED24bの点灯色を、緑色、黄色、赤色の順に変化させる。
さらに、鉄筋W1を非検出であって、トリガスイッチ12aがON状態となった場合には、表示制御部35は、8個のLED24bに白色光を点灯させて、コンクリートWの加工面に作業を補助するための白色光を照射する。
【0083】
より詳細には、図9に示すグラフにおいて、表示制御部35は、判定部33における判定結果に基づいて、表示部24のLED24bの点灯色を段階的に変化させることで、作業者に対して鉄筋W1のある位置とない位置とを報知する。
信号送受信部36は、上述したように、電動把持工具10の本体部11側の信号送受信部15と通信可能であって、例えば、金属検出センサ20の判定部33における判定結果等を送信する。また、信号送受信部36は、本体部11側に設けられたリセットスイッチ19が操作された場合や、姿勢検出部16において所定の姿勢を検出した場合に、金属検出センサ20を初期化処理するための初期化信号を本体部11側から受信する。
【0084】
初期化処理部37は、姿勢検出部16における電動把持工具10の姿勢検出の結果、あるいはリセットスイッチ19の操作により、記憶部34に保存された鉄筋W1の検出結果を消去する初期化処理を行う。
レベル設定部38は、検出信号取得部31から受信した検出信号の最大値と最小値との間を複数のレベルに分割したレベルテーブルを設定する。具体的には、レベル設定部38は、例えば、最大値1500、最小値220とすると、図10に示すように、以下の関係式(1)を用いて、16段階のレベルテーブルを設定する。
【0085】
最小値+(最大値-最小値)/16×レベル数 ・・・・・(1)
すなわち、最大値1500と最小値220との間が16分割されると、検出信号の値が大きい(鉄筋W1に近い)方から順に、1500,1420,1340,1260,1180,1100,1020,940,860,780,700,620,540,460,380,300,220という17段階のレベルが設定される。
【0086】
レベル設定部38によって設定されたレベル0~16は、図10に示すように、レベル0が最も鉄筋W1から離れている(鉄筋W1がない)レベルであり、レベル16が最も鉄筋W1から近いレベルである。
レベル0では、図10に示すように、表示制御部35は、8個のLED24bの全てに緑色光を点灯させる。
【0087】
レベル1では、図10に示すように、表示制御部35は、7個のLED24bに緑色光、1個のLED24bに黄色光を点灯させる。
レベル2では、図10に示すように、表示制御部35は、6個のLED24bに緑色光、2個のLED24bに黄色光を点灯させる。
レベル3では、図10に示すように、表示制御部35は、5個のLED24bに緑色光、3個のLED24bに黄色光を点灯させる。
【0088】
レベル4では、図10に示すように、表示制御部35は、4個のLED24bに緑色光、4個のLED24bに黄色光を点灯させる。
レベル5では、図10に示すように、表示制御部35は、3個のLED24bに緑色光、5個のLED24bに黄色光を点灯させる。
レベル6では、図10に示すように、表示制御部35は、2個のLED24bに緑色光、6個のLED24bに黄色光を点灯させる。
【0089】
レベル7では、図10に示すように、表示制御部35は、1個のLED24bに緑色光、7個のLED24bに黄色光を点灯させる。
レベル8では、図10に示すように、表示制御部35は、8個のLED24bの全てに黄色光を点灯させる。
レベル9では、図10に示すように、表示制御部35は、7個のLED24bに黄色光、1個のLED24bに赤色光を点灯させる。
【0090】
レベル10では、図10に示すように、表示制御部35は、6個のLED24bに黄色光、2個のLED24bに赤色光を点灯させる。
レベル11では、図10に示すように、表示制御部35は、5個のLED24bに黄色光、3個のLED24bに赤色光を点灯させる。
レベル12では、図10に示すように、表示制御部35は、4個のLED24bに黄色光、4個のLED24bに赤色光を点灯させる。
【0091】
レベル13では、図10に示すように、表示制御部35は、3個のLED24bに黄色光、5個のLED24bに赤色光を点灯させる。
レベル14では、図10に示すように、表示制御部35は、2個のLED24bに黄色光、6個のLED24bに赤色光を点灯させる。
レベル15では、図10に示すように、表示制御部35は、1個のLED24bに黄色光、7個のLED24bに赤色光を点灯させる。
【0092】
レベル16では、図10に示すように、表示制御部35は、8個のLED24bの全てに赤色光を点灯させる。
これにより、表示制御部35は、検出信号取得部31において取得された検出信号の値が、レベル設定部38において設定されたレベル0からレベル16までの17段階のレベルのどのレベルに対応するのかを参照して、表示部24の8個のLED24bに点灯させる点灯色を設定することができる。
【0093】
次に、図11(a)~図13(d)には、判定部33における判定結果とレベル設定部38において設定されたレベルテーブルとに応じて、表示部24のLED24bの点灯色を切り替える制御について示している。
すなわち、図11(b)は、初期状態または鉄筋W1が近くに存在しない場合の表示であって、表示部24の8個のLED24bが全て緑色の光を点灯させた状態(レベル0)を示している。
【0094】
また、図11(a)は、図11(b)の初期状態等から、上述した作業時の白色光を点灯させた状態を示している。
そして、図11(b)の初期状態から、図11(c)~図11(e)までは、鉄筋W1に近づいて来ているものの、穴開け等の加工が可能なエリアであることを報知するために、8個のLED24bのうち、1個から3個のLED24bの点灯色を緑色から黄色に変化させる(レベル1~3)。
【0095】
具体的には、図11(c)に示す点灯状態(レベル1)では、真下の1個が黄色、その他は緑色、図11(d)に示す点灯状態(レベル2)では、真下から右1個が黄色、その他は緑色、図11(e)に示す点灯状態(レベル3)では、真下から右2個が黄色、その他は緑色である。
作業者は、図11(b)~図11(e)に示す点灯状態となったエリアを、例えば、穴開け等の加工が可能な作業可能エリアとして予め設定することができる。
【0096】
次に、図11(f)では、さらに鉄筋W1がさらに近づいてきて、8個のLED24bのうち、4個のLED24bの点灯色が緑色から黄色に変化した状態(真下から右3個が黄色、その他は緑色)(レベル4)を示している。
これにより、作業者は、図11(f)に示す点灯状態のエリアについては、作業不可エリアとして設定することができる。
【0097】
同様に、図12(a)~図12(d)では、さらに鉄筋W1がさらに近づいてきて、8個のLED24bのうち、5個のLED24bの点灯色が黄色(真下から真上までの5個が黄色、その他は緑色)となった点灯状態(レベル5)から、8個全てのLED24bの点灯色が黄色となった点灯状態(レベル8)を示している。
これにより、作業者は、図12(a)~図12(d)に示す点灯状態のエリアについても同様に、作業不可エリアとして設定することができる。
【0098】
ここからさらに鉄筋W1がさらに近づいていくと、図12(e)~図12(h)に示すように、8個のLED24bのうち、1個から3個のLED24bの点灯色を黄色から赤色に変化させる。
具体的には、図12(e)に示す点灯状態(レベル9)では、真下1個が赤色、その他は黄色、図12(f)に示す点灯状態(レベル10)では、真下から右1個が赤色、その他は黄色、図12(g)に示す点灯状態(レベル11)では、真下から右2個が赤色、その他は黄色、図12(h)に示す点灯状態(レベル12)では、真下から右3個が赤色、その他は黄色である。
【0099】
作業者は、図12(e)~図12(h)に示す点灯状態(レベル9~12)となったエリアについても、穴開け等の加工が不可能な作業不可エリアとして予め設定することができる。
ここからさらに鉄筋W1がさらに近づいていくと、図13(a)~図13(d)に示すように、8個のLED24bのうち、5個から8個全てのLED24bの点灯色を黄色から赤色に変化させる。
【0100】
これにより、作業者は、図13(a)~図13(d)に示す点灯状態(レベル13~16)のエリアについては、特に鉄筋W1からの距離が近い作業不可エリアとして設定することができる。
本実施形態の電動把持工具10では、作業者は、金属検出センサ20における鉄筋W1の検出結果に基づいて変化する表示部24に表示される点灯色を確認することで、検出結果に基づいて穴開け加工等が可能な作業可能エリア(鉄筋W1がないエリア)を特定することができる。よって、作業者は、作業中に鉄筋W1に先端工具18aが接触することを防止しつつ、安全に作業を実施することができる。
【0101】
<金属検出センサ20を用いた金属検出方法>
本実施形態の金属検出センサ20を用いた金属検出方法では、以上のような構成により、図14から図19に示すフローチャートに従って処理を行う。
図14は、金属検出センサ20において行われる初期化処理、レベルテーブル設定処理およびレベルLED点灯処理を含むメインフローを示している。
【0102】
すなわち、ステップS11では、例えば、電源投入時やリセットスイッチ19が押下された場合等に、上述した金属検出センサ20の初期化処理部37において、初期化処理が行われる。具体的には、初期化処理部37は、金属検出センサ20の記憶部34に保存された検出信号、上限閾値および下限閾値、判定結果等を消去する初期化処理を行う。
このとき、表示制御部35は、表示部24の8個のLED24bに、図11(b)に示す初期状態(レベル0)の緑色光を点灯させる。
【0103】
次に、ステップS12では、上述した金属検出センサ20の検出信号取得部31において、Rpデータ(検出信号)が取得される。
次に、ステップS13では、金属検出センサ20の閾値設定・更新部32が、ステップS12において取得されたRpデータの最大値と最小値とを検出して、記憶部34に保存する。
【0104】
次に、ステップS14では、金属検出センサ20のレベル設定部38が、ステップS12において取得されたRpデータの最大値と最小値とを用いて、レベルテーブル設定処理を行う。
次に、ステップS15では、金属検出センサ20の表示制御部35が、ステップS14において設定されたレベルテーブルに基づいて、表示部24の8個のLED24bの点灯色を制御するレベルLED点灯処理を実施する。
【0105】
次に、ステップS16では、リセットスイッチ19が操作されてON状態になったか否かを判定し、ON状態になった場合には、ステップS11へ戻り、再度、初期化処理を行って、例えば、別の場所での金属検出の判定を行う。
一方、リセットスイッチ19がON状態になっていない場合には、ステップS12へ戻り、初期化処理を行わずに、例えば、同じ場所での金属検出の判定を継続して行う。
【0106】
図15は、図14のステップS11の初期化処理の詳細な処理の流れを示している。
すなわち、ステップS21では、鉄筋W1の検出を行うコンクリートWの表面に金属検出センサ20を当接させた状態で、鉄筋W1の検出信号を取得するために、センサ部22のコイル22bの発振を開始する。
次に、ステップS22では、金属検出センサ20の検出信号取得部31が、鉄筋W1の検出度合いを示すRpデータ(検出信号)を取得する。
【0107】
次に、ステップS23およびステップS24では、検出信号取得部31において取得された検出信号の中の最大値と最小値を、それぞれRp最大値、Rp最小値とする。
次に、ステップS25では、レベル設定部38が、ステップS23およびステップS24において設定された最大値と最小値との間を16分割して、表示部24のLED24bの点灯色を切り替えるレベルテーブル設定処理を行い、初期化処理を終了する。
【0108】
図16は、図14のステップS13の最大値・最小値保存処理の詳細な処理の流れを示している。
すなわち、ステップS31では、取得した検出信号の値(Rp値)と、ステップS23において設定されたRp最大値とを比較する。ここで、取得した検出信号のRp値がRp最大値よりも大きい場合には、ステップS32へ進み、Rp最大値以下である場合には、ステップS33へ進む。
【0109】
次に、ステップS32では、ステップS31においてRp最大値よりも大きいと判定されたため、新たに取得した検出信号のRp値を最大値として記憶部34に保存する。
次に、ステップS33では、取得した検出信号の値(Rp値)と、ステップS24において設定されたRp最小値とを比較する。ここで、取得した検出信号のRp値がRp最小値よりも小さい場合には、ステップS34へ進み、Rp最小値以上である場合には、処理を終了する。
【0110】
次に、ステップS34では、ステップS33においてRp最小値よりも小さいと判定されたため、新たに取得した検出信号のRp値を最小値として記憶部34に保存し、処理を終了する。
図17は、図14のステップS14のレベルテーブル設定処理の詳細な処理の流れを示している。
【0111】
すなわち、図17に示すレベルテーブル設定処理では、金属検出センサ20のレベル設定部38が、図16に示す最大値・最小値保存処理において記憶部34に保存されたRp最大値とRp最小値とを用いて、表示部24の8個のLED24bに点灯させる点灯色を決めるレベルテーブル(図10参照)を設定する。
具体的には、レベル設定部38は、上述した関係式(1)を用いて、記憶部34に保存されたRp最大値とRp最小値との間を、レベル0~レベル16として設定する。
【0112】
ステップS41では、レベル設定部38が、Rp最小値をレベル0として設定する。
次に、ステップS42では、レベル設定部38が、上述した関係式(1)を用いて、レベル1を設定する。
次に、ステップS43では、レベル設定部38が、上述した関係式(1)を用いて、レベル2を設定する。
【0113】
以下、同様に、レベル設定部38が、上述した関係式(1)を用いて、レベル3~レベル15までを設定する。
次に、ステップS44では、レベル設定部38が、レベル16を設定し、処理を終了する。
図18は、図14のステップS15のレベルLED点灯処理の詳細な処理の流れを示している。
【0114】
すなわち、図18に示すレベルLED点灯処理では、レベル設定部38によって設定された17段階のレベルテーブルに基づいて、表示制御部35が、表示部24の8個のLED24bの点灯色を設定する。
ステップS51では、判定部33が、金属検出センサ20の検出信号取得部31において取得された検出信号のRp値が、レベル16に対応する値1500(図10参照)よりも大きいか否かを判定する。
【0115】
ここで、取得したRp値がレベル16に対応する値1500よりも大きい場合には、ステップS52へ進み、1500以下である場合には、ステップS53へ進む。
ステップS52では、ステップS51において、取得したRp値がレベル16に対応する値1500よりも大きいと判定されたため、表示制御部35が、レベル16に対応する点灯色として、表示部24の8個のLED24bに全て赤色光を点灯させるように点灯制御して処理を終了する。
【0116】
次に、ステップS53では、ステップS51において、取得したRp値がレベル16に対応する値1500以下と判定されたため、判定部33が、取得された検出信号のRp値が、レベル15に対応する値1420(図10参照)よりも大きいか否かを判定する。
ここで、取得したRp値がレベル15に対応する値1420よりも大きい場合には、ステップS54へ進み、1420以下である場合には、ステップS55へ進む。
【0117】
ステップS54では、ステップS53において、取得したRp値がレベル15に対応する値1420よりも大きいと判定されたため、表示制御部35が、レベル15に対応する点灯色として、表示部24の8個のLED24bの1個に黄色光を、その他7個に赤色光を点灯させるように点灯制御して処理を終了する。
以下、同様に、表示制御部35が、取得された検出信号のRp値が、レベル14~レベル3に対応する値1340~460よりも大きいか否かを判定して、それぞれのレベルに対応する値よりも大きい場合には、表示部24の8個のLED24bの点灯制御を行って処理を終了する。
【0118】
一方、取得された検出信号のRp値が、それぞれのレベルに対応する値以下の場合には、レベル14、レベル13、レベル12、・・・レベル3の順に、それぞれのレベルに対応する値よりも大きいか否かの判定が行われる。
次に、ステップS55では、判定部33が、取得された検出信号のRp値が、レベル2に対応する値380(図10参照)よりも大きいか否かを判定する。
【0119】
ここで、取得したRp値がレベル2に対応する値380よりも大きい場合には、ステップS56へ進み、380以下である場合には、ステップS57へ進む。
ステップS56では、ステップS55において、取得したRp値がレベル2に対応する値380よりも大きいと判定されたため、表示制御部35が、レベル2に対応する点灯色として、表示部24の8個のLED24bの2個に黄色光を、その他6個に緑色光を点灯させるように点灯制御して処理を終了する。
【0120】
次に、ステップS57では、ステップS55において、取得したRp値がレベル2に対応する値380以下と判定されたため、判定部33が、取得された検出信号のRp値が、レベル1に対応する値300(図10参照)よりも大きいか否かを判定する。
ここで、取得したRp値がレベル1に対応する値300よりも大きい場合には、ステップS58へ進み、300以下である場合には、ステップS59へ進む。
【0121】
ステップS58では、ステップS57において、取得したRp値がレベル1に対応する値300よりも大きいと判定されたため、表示制御部35が、レベル1に対応する点灯色として、表示部24の8個のLED24bの1個に黄色光を、その他7個に緑色光を点灯させるように点灯制御して処理を終了する。
次に、ステップS59では、ステップS57において、取得したRp値がレベル1に対応する値300以下と判定されたため、判定部33が取得したRp値はレベル0であると判定し、表示制御部35が、レベル0に対応する点灯色として、表示部24の8個のLED24bの8個全てに緑色光を点灯させるように点灯制御して処理を終了する。
【0122】
<電動把持工具10の動作>
図19は、上述した金属検出センサ20による金属検出方法を実施した後の、電動把持工具10における動作フローを示すフローチャートである。
すなわち、ステップS61では、鉄筋W1の検出を開始するために、鉄筋W1の検出を行うコンクリートWの表面に金属検出センサ20を当接させた状態でセンサ部22のコイル22bの発振を開始して、検出信号取得部31が、センサ部22からRpデータを取得する。
【0123】
次に、ステップS62では、ステップS61において取得したRpデータのRp値と、記憶部34に保存された初期Rp値との差(Rp値-初期Rp値)が、所定の閾値よりも小さいか否かを判定する。
ここで、閾値よりも小さい場合には、ステップS63へ進み、一方、閾値以上である場合には、ステップS66へ進む。
【0124】
次に、ステップS63では、ステップS62において、(Rp値-初期Rp値)<閾値であると判定されたため、判定部33が、鉄筋W1がないと判定する。
次に、ステップS64では、ステップS63において鉄筋W1がないと判定されたため、そのエリアを駆動許可エリアと判断し、表示部24のLED24bに、緑色光を点灯させる。
【0125】
次に、ステップS65では、金属検出センサ20の判定部33における判定結果に基づいて、信号送受信部36が、本体部11のモータ14の駆動を許可するための駆動許可信号(Hi)を本体部11へ送信する。
一方、ステップS66では、ステップS62において、(Rp値-初期Rp値)<閾値ではないと判定されたため、判定部33が、鉄筋W1があると判定する。
【0126】
次に、ステップS67では、ステップS66において鉄筋W1があると判定されたため、そのエリアを駆動禁止エリアと判断し、表示部24のLED24bに、赤色光を点灯させる。
なお、ステップS64における緑色光の点灯制御と、ステップS67における赤色光の点灯制御については、鉄筋W1までの距離(Rp値の大きさ)に応じて、緑色光と赤色光との間に、黄色光を点灯させるように制御してもよい。
【0127】
次に、ステップS68では、金属検出センサ20の判定部33における判定結果に基づいて、信号送受信部36が、本体部11のモータ14の駆動を禁止するための駆動禁止信号(Low)を本体部11へ送信する。
次に、ステップS69では、本体部11側の信号送受信部15が、金属検出センサ20側の信号送受信部36から判定信号(駆動許可信号(Hi)または駆動禁止信号(Low))を受信する。
【0128】
次に、ステップS70において、トリガスイッチ12aが操作されてONになると、ステップS71において、受信した判定信号が、駆動許可信号(Hi)であるか否かを判定する。
ここで、信号送受信部15が受信した判定信号が、駆動許可信号(Hi)である場合には、ステップS72へ進む。一方、受信した判定信号が、駆動禁止信号(Low)である場合には、ステップS75へ進む。
【0129】
次に、ステップS72では、ステップS71において、信号送受信部15が受信した判定信号が駆動許可信号(Hi)であると判定されたため、駆動制御部13がモータ14の駆動を許可する。
次に、ステップS73では、信号送受信部36が駆動許可信号を送信し、かつステップS76においてトリガスイッチ12aが操作されてONになっているため、表示制御部35が、表示部24のLED24bに白色光を点灯させる。
【0130】
次に、ステップS74では、駆動制御部13が、トリガスイッチ12aの操作量に応じて、モータ14の回転数を制御して、先端工具18aを回転駆動する。
これにより、作業者は、鉄筋W1を避けつつコンクリートWへの加工を行う際に、加工部分が白色光によって照らされて明るくされた状態で、作業を実施することができる。
この結果、作業者の作業性と安全性を向上させることができる。
【0131】
一方、ステップS75では、ステップS71における判定の結果、信号送受信部15が受信した判定信号が駆動許可信号(Hi)ではないと判定されたため、信号送受信部15は、駆動禁止信号(Low)を受信したと判断し、モータ14の駆動を不許可として処理を終了する。
これにより、本体部11側の駆動制御部13は、信号送受信部15において受信した駆動禁止信号に基づいて、モータ14の駆動を禁止する。
【0132】
よって、鉄筋W1が近くにある駆動禁止エリアと判断された場合には、本体部11側においてモータ14の駆動を禁止することで、駆動禁止エリアにおいてトリガスイッチ12aが操作されてONになった場合でも、駆動制御部13は、モータ14が回転駆動されないように駆動制御を行うことができる。
この結果、鉄筋W1が近くにある駆動禁止エリアにおいて誤って加工が行われて先端工具18aが鉄筋W1に接触してしまうことを防止することができる。
【0133】
また、本実施形態の電動把持工具10では、金属検出センサ20が先端側に設けられているため、鉄筋W1の検出処理を実施しながら、鉄筋W1を避けながらコンクリートWへの加工を実施することができる。
よって、電動把持工具とは別体で設けられた従来の金属検出センサを用いた鉄筋の検出時と比較して、コンクリートWの表面に墨付け等の作業を実施する必要がない。
【0134】
この結果、従来よりも、鉄筋W1の検出からコンクリートWへの加工までの作業の作業性を向上させることができる。
さらに、金属検出センサ20は、鉄筋W1が近くにあるか否かを、表示部24のLED24bの点灯制御によって報知するため、警告音によって作業者に報知する従来の金属検出センサと比較して、騒がしい作業環境下においても使用することができる。
【0135】
また、電動把持工具10の先端側に金属検出センサ20が一体化した状態で装着されているため、鉄筋W1の検出から加工までの作業を連続して実施することができる。
さらに、本実施形態では、金属検出センサ20において鉄筋W1が近くにあると判定されると、鉄筋W1までの距離に応じて表示部24のLED24bに点灯表示される光の色と数等を段階的に変化させる。
【0136】
これにより、コンクリートWの表面において、例えば、駆動許可エリアから駆動禁止エリアまでを段階的にレベル設定することができる。
ここで、金属検出センサ20における鉄筋W1の有無の判定結果を示すLED24bは、略円環状の金属検出センサ20の内径側(電動把持工具10の先端工具18a側)を向くように配置されている。
【0137】
これにより、作業者の光源直視による目の負担軽減を図るとともに、電動把持工具10を用いた作業時に白色光の点灯させることにより、作業者の作業箇所を明るく照らして視界を確保することができる。
なお、金属検出センサ20は、単体での使用も可能であって、電動把持工具10を用いた穴開け作業と、金属検出センサ20を用いた金属検出とを並行して実施することもできる。
【0138】
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係る 電動把持工具100について、図20から図23を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態の電動把持工具100は、粉塵収集部40が本体部11に取り付けられておらず、金属検出センサ20がホルダ101を介して取り付けられている点で、上記実施形態1とは異なっている。本実施形態において、上記実施形態1と同様の構成については、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0139】
本実施形態の電動把持工具100は、図20に示すように、上記実施形態1の粉塵収集部40を持たない構成であって、ホルダ101を介して、先端側に金属検出センサ20が取り付けられている。
ホルダ101は、図20に示すように、電動把持工具100の本体部11と金属検出センサ20とを一体化するために、本体部11の先端側に取り付けられている。そして、ホルダ101は、図21に示すように、伸縮梁101a、センサ保持部101b、固定部101c、ハーネス口101dおよび把持固定部101eを有している。
【0140】
伸縮梁101aは、本体部11に対して先端側に向かって伸縮可能な部材であって、凹状の内側に、図示しないハーネスを通すための蛇腹部材102が配置されている。
これにより、例えば、先端工具18aの長さに応じて適切な長さになるように、伸縮梁101aの長さを調整することで、例えば、先端部18への先端工具18aの着脱を行う場合には、伸縮梁101aを伸ばすことで、交換作業を容易に実施することができる。
【0141】
センサ保持部101bは、ホルダ101の先端側に設けられており、金属検出センサ20が後端側から装着される。
固定部101cは、電動把持工具100の本体部11に対してホルダ101を固定する部分であって、略円環状の部分に本体部11の先端部18が挿入される。
ハーネス口101dは、ホルダ101の後端に設けられた開口であって、蛇腹部材102を介して金属検出センサ20から図示しないハーネスが引き出される。
【0142】
把持固定部101eは、把持部11aを固定するための部材であって、ホルダ101の長手方向に対して略垂直な方向に延伸して設けられている。
本実施形態の電動把持工具100は、ホルダ101を介して、金属検出センサ20が本体部11と一体化した状態で使用される。
これにより、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0143】
ここで、本実施形態の電動把持工具100は、金属検出センサ20によって鉄筋W1の有無を判定した後、金属検出センサ20が先端工具18aによる加工位置から退避するように構成された電動把持工具200であってもよい。
すなわち、電動把持工具200は、図22(a)および図22(b)に示すように、ホルダ101の先端に配置された金属検出センサ20を下方へ回動(移動)させることで、電動把持工具10の先端工具18aの付近から退避させて穴開け作業を実施する。
【0144】
金属検出センサ20を下方へ退避させる退避機構203は、本体部11とホルダ201との連結部付近に設けられており、図22(a)に示すように、ワイヤ203aを備えている。
また、ホルダ201のセンサ保持部201bには、後端側から金属検出センサ20が取り付けられている。
【0145】
そして、センサ保持部201bの先端側には、コンクリートWの表面に対する接触を検知する接触センサ(接触検知部)202が設けられている。
接触センサ202は、例えば、歪センサやフォトセンサであって、バネ202aを介して、センサ保持部201bの先端側の面に取り付けられており、コンクリートWの表面に接触すると、バネ202aが縮んでOFF状態からON状態へ移行する。
【0146】
また、接触センサ202は、図23に示すように、金属検出センサ20の構成として設けられている。そして、コンクリートWの表面に接触したことを検知すると、退避機構203と連動して、退避機構203が、金属検出センサ20を退避位置へ移動させる。
これにより、退避機構203のワイヤ203aが、張った状態(図22(a)参照)から緩んだ状態(図22(b)参照)となり、ホルダ201の係止が解除されて下向きに回動することで、金属検出センサ20が先端工具18a付近から退避した位置へ移動する。
【0147】
この結果、先端工具18aを用いてコンクリートWを加工する際に、金属検出センサ20への粉塵暴露、振動印加等の負荷を軽減することができる。
なお、本実施形態では、接触センサ202がコンクリートWの表面に接触することで、退避機構203が作動する例を挙げて説明したが、例えば、手動で押しボタンSW等が操作されることにより、金属検出センサ20を電動把持工具10の先端側から退避させてもよい。
また、接触センサ202においてコンクリートWの表面への接触を検知すると、初期化処理部37が、初期化処理を実施してもよい。
【0148】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0149】
(A)
上記実施形態では、金属検出センサ20およびこれを用いた金属検出方法として、本発明を実現した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、上述した金属検出センサを用いた金属検出方法をコンピュータに実行させる金属検出プログラムとして本発明を実現してもよい。
【0150】
この金属検出プログラムは、電動把持工具に搭載されたメモリ(記憶部)に保存されており、CPUがメモリに保存されたプログラムを読み込んで、ハードウェアに各ステップを実行させる。より具体的には、CPUが金属検出プログラムを読み込んで、上述した検出信号取得ステップと、閾値設定ステップと、判定ステップと、を実行することで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、本発明は、このような金属検出プログラムを保存した記録媒体として実現されてもよい。
【0151】
(B)
上記実施形態では、金属検出センサ20の先端側に形成された接触面46に、回転可能な複数のローラ46aが設けられた構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0152】
すなわち、金属検出センサをコンクリートの表面に沿って走査して鉄筋を検出する際の作業性を向上させるため、コンクリート表面との接触面に、摩擦抵抗を低減するための構成や処理が施されていることが好ましい。
例えば、図24(a)に示すように、コンクリートと接触する側の面に、摩擦を低減するための表面処理部121aが形成された金属検出センサ121であってもよい。
【0153】
また、図24(b)に示すように、コンクリートと接触する側の面122aに、コンクリートの表面に当接しながら回転する複数の球体122bが設けられた金属検出センサ122であってもよい。
さらに、図24(c)に示すように、コンクリートと接触する側の面123aに、コンクリートの表面に当接しながら回転する2つのローラ部123bが設けられた金属検出センサ123であってもよい。
上記のいずれの構成であっても、コンクリート表面に沿って金属検出センサを滑らかに移動させることができるため、作業性を向上させることができる。さらに、コンクリートに対して金属検出センサを直接接触させないことで、金属検出センサの耐久性を向上させることができる。
【0154】
(C)
上記実施形態では、閾値設定・更新部32が、検出信号の最大値を上限閾値として設定し、最小値を下限閾値として設定する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、閾値の設定は、検出信号の最大値のみを上限閾値として設定し、金属を検出する判定が行われてもよい。あるいは、検出信号の最小値のみを下限閾値として設定し、金属を検出する判定が行われてもよい。
【0155】
(D)
上記実施形態では、金属検出センサ20による鉄筋W1の検出結果を、緑、黄、赤の3色の光を点灯させることで報知する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0156】
例えば、金属検出センサの検出結果の報知手段としては、上記実施形態のように、異なる色の光で表す手段以外に、文字情報、音声情報等、他の手段によって報知してもよい。
また、上記実施形態では、3色の光を用いて、金属への接近(有無)を報知する例を挙げて説明したが、例えば、2色あるいは4色以上の光を用いて、金属への接近を報知してもよい。
【0157】
(E)
上記実施形態では、金属検出センサ20による鉄筋W1の検出結果を、8個のLED24bに互いに異なる複数の色の光を点灯させることで報知する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、光を点灯させる表示部としては、8個のLEDに限らず、7個以下、9個以上のLEDが用いられてもよいし、LED以外の光源が用いられてもよい。
【0158】
(F)
上記実施形態では、コンクリート中に含まれる鉄筋を検出する方式として、センサ部に含まれるコイルに電流を流して発生する磁界中に検出体である金属が近づくと金属中に発生する渦電流によって変化する検出コイルのインピーダンスを検出する誘導式の金属検出センサを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、検出対象である金属との間に生じる静電容量の変化を検出する静電容量式、アルミニウム等の非金属の検出を行う高周波発振方式等、他の方式を採用した金属検出センサが用いられてもよい。
【0159】
(G)
上記実施形態では、センサ部22に巻回された巻き線型のコイル22bのインピーダンス変化を検出して、鉄筋W1の有無を検出する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、巻き線型ではなく、パターン型のコイルを用いて、インピーダンスの変化を検出し、金属の検出を行ってもよい。
【0160】
(H)
上記実施形態では、金属検出センサ20による検出結果の初期化処理が、電動把持工具10の姿勢検出によって行われる制御と、リセットスイッチ19の押下によって行われる場合とを例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0161】
例えば、金属検出センサによる検出結果の初期化処理は、上記2つの制御のいずれか一方だけが可能な構成であってもよいし、レベルゲージ等のように上記2つの制御以外の手段によって初期化処理が行われてもよい。
また、初期化処理を行うリセットスイッチの位置は、上記実施形態で説明した位置に限らず、リセットスイッチは、電動把持工具あるいは金属検出センサにおける他の位置に設けられていてもよい。
【0162】
(I)
上記実施形態では、金属検出センサ20が、電動把持工具10の本体部11に対して着脱可能な状態で使用される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、金属検出センサが電動把持工具の本体部と着脱不能な状態で一体化された構成であってもよい。
また、金属検出センサは、電動把持工具とは別に、単体で使用されてもよい。
【0163】
(J)
上記実施形態では、電動把持工具10を用いて加工が行われる対象物として、鉄筋が埋め込まれたコンクリートを例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、石膏ボード等の壁材を対象物とし、壁材の内部に含まれる金属を検出しながら各種加工を行う電動把持工具であってもよい。
また、対象物内に存在する金属についても同様に、鉄筋に限らず、フレーム、ボルト等の他の金属製の部材であってもよい。
【0164】
(K)
上記実施形態では、金属検出センサ20が取り付けられる電動把持工具の一例として、ハンマドリルに本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0165】
例えば、本発明の金属検出センサが装着される電動把持工具としては、例えば、インパクトドリル、振動ドリル等、他の電動把持工具であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明の金属検出センサは、コンクリート等の対象物の内部に存在する金属に接触することなく金属の有無を作業者に報知することができるという効果を奏することから、金属を検出しながら作業を行う各種作業工具に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0167】
10 電動把持工具
11 本体部
11a 把持部
12 操作部
12a トリガスイッチ
13 駆動制御部
14 モータ(駆動部)
15 信号送受信部
16 姿勢検出部
17 電源部
17a バッテリ
18 先端部
18a 先端工具
19 リセットスイッチ
20 金属検出センサ
21 ケース
21a 本体部
21b スイッチカバー
22 センサ部
22a 本体部
22b コイル
23 スペーサ
23a 本体部
24 表示部
24a 基板
24b LED
24c USBコネクタ
25 カバー(装着部)
25a 本体部
25b モード表示面
31 検出信号取得部
32 閾値設定・更新部
33 判定部
34 記憶部
35 表示制御部
36 信号送受信部(禁止信号送信部、許可信号送信部)
37 初期化処理部
38 レベル設定部
40 粉塵収集部
41 本体部
42 装着部
43 センサ取付部
43a 吸引口
43b 開口
44 アーム部
46 接触面(接触部)
46a ローラ
50 バッテリ
51 USBケーブル
52 初期化スイッチ
100 電動把持工具
101 ホルダ
101a 伸縮梁
101b センサ保持部
101c 固定部
101d ハーネス口
101e 把持固定部
102 蛇腹部材
121 金属検出センサ
121a 表面処理部
122 金属検出センサ
122a 面
122b 球体
123 金属検出センサ
123a 面
123b ローラ部
200 電動把持工具
201 ホルダ
201b センサ保持部
202 接触センサ(接触検知部)
202a バネ
203 退避機構
203a ワイヤ
W コンクリート(対象物)
W1 鉄筋(金属)
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