(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電池監視システム、車両、電池監視装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240717BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20240717BHJP
【FI】
H01M10/48 Z
H01M50/20
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2020212313
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志水 修
(72)【発明者】
【氏名】越井 貴也
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-218666(JP,A)
【文献】特開2010-237175(JP,A)
【文献】特開2019-114437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 -10/48
H01M 50/20
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックと、当該電池パックに含まれる電池セルの状態を監視する電池監視装置とを備える電池監視システムであって、
前記電池パックは、
前記電池セルの電池情報を取得する取得部と、
取得した前記電池情報を記憶する第1記憶部と、
前記第1記憶部に記憶された電池情報を前記電池監視装置に送信する第1通信部とを備え、
前記電池監視装置は、
前記第1通信部から送信された前記電池情報を受信する第2通信部と、
前記受信した電池情報を記憶する第2記憶部と、
電池パック製造時における電池の状態を示す初期電池情報を記憶する第3記憶部と
、 前記第2記憶部に記憶されている前記電池情報が前記初期電池情報と一致する場合は、前記電池パックが新しい電池パックに交換されたと判定する判定部と、
を備える、電池監視システム。
【請求項2】
前記電池監視装置は、前記判定部によって前記電池パックが交換されたと判定された場合、当該判定結果に基づく所定の処理を実行する、請求項1に記載の電池監視システム。
【請求項3】
前記電池監視装置は、
前記第2通信部が第1のタイミングで受信した前記電池情報を記憶する第4記憶部を更に備え、
当該第4記憶部に電池情報が記憶された後、当該第1のタイミングとは異なる第2のタイミングで、前記判定部によって前記電池パックが交換されたと判定された場合、当該第4記憶部に記憶されている前記電池情報を当該第2のタイミングで前記第2通信部が受信した電池情報で更新する、請求項2に記載の電池監視システム。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の電池監視システムを搭載した、車両。
【請求項5】
電池パックに含まれる電池セルの状態を監視する電池監視装置であって、
前記電池パックから電池情報を取得する取得部と、
電池パック製造時における電池の状態を示す初期電池情報を記憶する初期情報記憶部と、
前記電池情報と前記初期電池情報とが一致するか否かを判定し、一致する場合は電池パックが交換されたと判定する判定部とを備える、電池監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等に搭載される電池パックを監視する電池監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される電池パックおよびその使用状態等を監視する電池監視ECU(Electronic Control Unit )が知られている。また、電池パックの使用状態の把握に関して、RFIDタグを電池パック外部に取り付け、廃棄回収時に必要となる各種情報を記憶させる技術も知られている(例えば特許文献1)。この技術では、電池パックの交換が行われた場合、使用済みの電池パックの情報をRFIDタグから読み出し、廃棄作業等に利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のRFIDタグを用いる方法では、使用済みの電池パックに係る使用状態の情報は把握できるが、その一方で、電池パックと通信して監視する電池監視ECUは、電池パックが新品に交換されても、その交換の発生自体は速やかに把握できないという課題がある。電池パック交換後に放充電による電池容量計測を行って電池パックが新品に交換されたか否かを確認することはできるが、この放充電はある程度の時間を要するものであるため、電池パックの交換後、車両を速やかにユーザに返却することができない。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、コストをかけずに電池パックの状態を監視でき、また、新品の電池パックの交換発生を速やかに判定できる電池監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、電池パックと、当該電池パックに含まれる電池セルの状態を監視する電池監視装置とを備える電池監視システムである。電池パックは、電池セルの電池情報を取得する取得部と、電池情報を記憶する第1記憶部と、第1記憶部に記憶された電池情報を電池監視装置に送信する第1通信部とを備える。電池監視装置は、電池情報を受信する第2通信部と、受信した電池情報を記憶する第2記憶部と、電池パック製造時における電池の状態を示す初期電池情報を記憶する第3記憶手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電池監視システムによれば、電池パックに対するコストを抑えつつ電池パックの状態を監視することができ、また、新品の電池パックの交換が発生したことを速やかに把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る電池監視システムの機能ブロック図
【
図2】電池パック記憶部25に記憶されるデータの一例
【
図4】電池パック記憶部25に初期値として記憶される内容(初期電池情報)の一例
【
図5】本実施形態に係る電池情報取得処理の詳細を示すフローチャート
【
図6】本実施形態に係る交換判定処理の詳細を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の概要を説明する。電池パックに自身の電池状態を示す電池情報を記憶しておく記憶部を設ける。また、電池監視ECUに、新品の電池パックにおける電池状態を示す初期電池情報を記憶させておく。更に、電池パックの製造時、電池パックの上記記憶部に上記電池情報の初期値としてこの初期電池情報を記憶させる。そして、所定のタイミングで、電池パックの記憶部の電池情報と電池監視ECUに記憶されている初期電池情報値とを比較する。電池パック交換直後の状態では、双方とも一致する結果となるため、これによって新品の電池パックへの交換が発生したことを判定できる。
【0010】
(実施形態)
以下、一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<構成>
図1に、本実施形態における電池監視システムの機能ブロック図を示す。当該電池監視システムは、電池監視装置(以下では電池監視ECUと称する)10および電池パック20を備える。電池監視ECU10は、電池パック20の状態を監視し、過放電防止制御等の各種の制御を行う。また、電池監視ECU10は、必要に応じて他のECU(図示せず)と通信し、電池パックの状態を示す所定の情報を他のECUに送信することも可能である。本実施形態では、電池監視システムが乗用車などの車両に搭載された例を説明する。
【0011】
電池監視ECU10は、ECU制御部11と、ECU通信部12と、ECU記憶部13とを含む。ECU制御部11は、ECU通信部12およびECU記憶部13と電気的に接続されている。ECU通信部12は、後述の電池パック通信部24と通信可能に接続され、当該電池パック通信部24との間で所定のデータの送受信を行う。ECU記憶部13は、読み書き可能な所定の記憶媒体(RAM等)を備え、後述する本実施形態の処理で用いる各種の情報が記憶される。ECU制御部11は、電池監視ECU10の各種動作を制御する。具体的にはECU制御部11は、ECU通信部12を介して電池パック20から電池情報を取得し、ECU記憶部13に記憶される情報を更新する。更に、ECU制御部11は、ECU記憶部13に記憶されている情報を用いて、電池パックが新しい電池パックに交換されたことを判定する(判定部)。
【0012】
次に、電池パック20について説明する。電池パック20は、電池セル21と、センサ部22と、電池パック制御部23と、電池パック通信部24と、電池パック記憶部25とを含む。電池セル21は、放電によって、図示しない電動機やその他の各機器に電力を供給したり、当該電動機の回生制動によって得られた電力(回収したエネルギー)を充電したりする。センサ部22は、電池セル21の状態を所定の周期で検知し、検知結果を電池パック制御部23に出力する。電池パック記憶部25は、読み書き可能な所定の記憶媒体(RAM等)を備えている。電池パック制御部23は、上記センサ部22からの出力に基づき、電池セル21の状態を示す各種情報を後述の電池パック側電池情報251として電池パック記憶部25に記憶する。また、電池パック制御部23は、ECU制御部11からの要求に応じて、電池パック通信部24を介して電池パック側電池情報251を電池監視ECU10に送信する。電池パック通信部24は、ECU通信部12と通信可能に接続され、当該ECU通信部12との間で所定のデータの送受信を行う。
【0013】
以下、本実施形態に係る処理の詳細について説明する。
【0014】
[使用データについて]
<電池パック記憶部に記憶される情報>
本実施形態の処理において用いられる各種情報に関して説明する。まず、電池パック記憶部25に記憶されるデータについて説明する。
図2は、電池パック記憶部25に記憶される情報の一例を示すメモリマップである。電池パック記憶部25には、電池パック側電池情報251が記憶される。電池パック側電池情報251は、センサ部22で検知された電池セル21の情報や各種状態を示す情報である。電池パック側電池情報251には、例えば、電池内部抵抗値、電池使用時間、電池識別情報、初期容量値等を示す情報が記憶される。これらの情報は、電池パックの使用状況に応じて変化していくものである。
【0015】
なお、電池パック20の製造時において、当該電池パック側電池情報251には、次のような情報が初期値として書き込まれる。この情報は、新品の全ての電池パックに対してその製造時に書き込まれる情報でもある。
図4に、当該初期値として書き込まれる情報の具体例を示す。ここでは一例として、電池パック側電池情報251に含まれる情報項目数が10個である場合を例に挙げる。より具体的には、80バイトの情報であって、8バイトずつの区切りで各情報項目を記憶する例を挙げる。各情報項目は、例えば上記の電池内部抵抗値、電池使用時間等である。そして、本実施形態では、新品状態を示す値として、1~9番目の情報項目については、“0x00000000”(オールゼロ)が各情報項目に設定される。そして、最後の10番目の情報項目については、“0xAAAAAAAA”という値が設定される。当該新品状態を示す値は、全ての新品の電池パック20に対して、その製造時に書き込まれるものである。なお、当該10番目の情報項目に設定される値については、後ほど補足する。
【0016】
<ECU記憶部に記憶される情報>
次に、ECU記憶部13に記憶される情報について説明する。
図3は、ECU記憶部13に記憶される情報の一例を示すメモリマップである。ECU記憶部13には、ECU側電池情報131、交換判定用情報132、初期電池情報133が記憶される。
【0017】
ECU側電池情報131は、電池パック20から取得した電池パック側電池情報251の内容を記憶した情報である。当該ECU側電池情報131のデータ構造については、上記
図4で示した電池パック側電池情報251と同じ構造である。上記電池監視ECU10は、当該ECU側電池情報131に基づいて、過放電防止制御等の各種制御が実行できる。なお、電池パック20の交換直後の状態では、当該ECU側電池情報131には交換前の電池パック20に係る情報が残っているため、(交換直後における)電池パック側電池情報251との内容は異なり得る状態となり得る。
【0018】
交換判定用情報132は、後述する処理において、電池パック20から出力された電池パック側電池情報251の内容を一時的に記憶した情報である。当該交換判定用情報132のデータ構造は、上述した電池パック側電池情報251と同じデータ構造である。当該交換判定用情報132は、後述する処理において、電池パック20が交換されたか否かを判定するために用いられる。
【0019】
初期電池情報133は、新品状態の電池パック20の電池状態を示す情報である。そのデータ構造は、上述した電池パック側電池情報251と同じデータ構造である。また、電池監視ECU10の製造時に、当該初期電池情報133の情報内容として、上述の電池パック側電池情報251の初期値と同じ内容(上記
図4参照)が記憶される。当該初期電池情報133と、電池パック20の電池パック側電池情報251とを比較し、これが一致すれば、電池パック20が新品状態であること、すなわち、電池パック交換が発生したことを判定することができる。
【0020】
ここで、当該初期電池情報133の情報内容に関して補足する。本実施形態では、上記電池パック側電池情報251の初期値、および、当該初期電池情報133に含まれる10個の情報項目のうち、最後の一つについては、“0x00000000”ではなく、 “0xAAAAAAAA”という値が設定される。これは、電池パック側電池情報251が、いわゆるRAM化け等によって別の値に化ける現象が発生する可能性を考慮したものである。例えば、電池パック側電池情報251を電池パック記憶部25から読み出した際等に、何らかの要因で当該データの内容が全て“0”に化けてしまう場合があり得る。このような場合、仮に、ECU記憶部13に記憶される上記初期電池情報133の内容が全て“0x00000000”であるとすると、RAM化けによって変化したデータ内容と一致することになる。その結果、電池パック20を実際は交換していないにも関わらず、電池監視ECU10において、交換されたものとして誤判定される可能性がある。そこで、本実施形態では、上記初期電池情報133の内容について、全ての情報項目を“0x00000000”とはせず、一部の情報項目について“0x00000000”ではないデータを持たせている(当然、電池パック20の製造時にも、最後の情報項目が“0x00000000”ではない初期電池情報133の内容が電池パック記憶部25に書き込まれることになる)。そして、この情報項目も含めた一致判定を行うことにより、RAM化け等に起因する誤判定が発生することを防ぐことができる。
図4の例で言うと、1~9番目の情報項目が“0x00000000”、10番目の情報項目は“0xAAAAAAAA”、という内容で一致すると、電池パック20の交換が発生したと判定できることになる。
【0021】
なお、新品状態から脱した電池パック20においては、電池セル21の使用状態の変化に応じて電池パック側電池情報251の内容が更新され得る。この場合、上記
図4における10番目の情報項目については、その使用目的はどのようなものもよい。例えば、上記9番目の情報項目の検証用の情報(例えばハッシュ値等)を記憶して適宜用いるようにしてもよい。
【0022】
<電池情報取得処理>
次に、本実施形態に係る電池情報取得処理について説明する。
図5は、当該電池情報取得処理の詳細を示すフローチャートである。当該処理は、電池監視ECU10側が電池セル21の使用状態を把握するための処理である。より具体的には、電池監視ECU10側において、電池パック側電池情報251の内容を取得し、ECU側電池情報131に記憶するための処理である。当該処理は、例えば、車両システムの起動処理の完了後、シャットダウン指示が出されるまでの間における所定のタイミングで実行され得る。以下、当該電池情報取得処理が実行されるタイミングのことを第1のタイミングと呼ぶ。
【0023】
(ステップS1):ECU制御部11は、ECU通信部12を介して、電池パック側電池情報251の送信要求を電池パック制御部23に出力する。そして、これに応じて電池パック20から送信された電池パック側電池情報251を受信する。
【0024】
(ステップS2):ECU制御部11は、上記受信した電池パック側電池情報251を、ECU側電池情報131として記憶する。
【0025】
上記の処理によって、電池パック20(電池セル21)の使用状態を示す情報(電池使用時間、電池内部抵抗値等)がECU側電池情報131として記憶される。換言すれば、電池パック記憶部25と同じ値がECU側電池情報131に記憶される。ECU制御部11は、ECU側電池情報131に基づいて、電池パック20の使用状態を把握することができる。
【0026】
<交換判定処理>
次に、本実施形態に係る電池パックの交換判定処理(以下、単に交換判定処理と呼ぶ)の詳細を説明する。
図6は、当該交換判定処理の詳細を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、当該交換判定処理の実行タイミングについては、上記第1のタイミングと異なる第2のタイミングで実行されるものとする。当該第2のタイミングの一例として、本実施形態では、車両システムの起動時における「起動処理」の一環として実行される場合を例とする。電池パック交換が行われた場合を想定すると、工場等において電池パック交換が行われた後、車両システムが起動されたタイミングで、当該交換判定処理が実行され得る。これにより、従来のような電池パック交換後の充放電を行わずとも、速やかに電池パックが交換されたことを判定できる。
【0027】
なお、上記第2のタイミングについては、上記のようなタイミングに限らない。他の実施形態では、車両システムのシャットダウン時の処理の一環として当該交換判定処理が実行されてもよい。この場合は、工場等において電池パック交換が行われた後、一旦車両システムが起動され、その後、車両システムのシャットダウン操作が行われたときに、終了処理(シャットダウン処理)の一環として、当該交換判定処理が実行され得る。また、更に他の実施形態では、第1のタイミングと同じタイミングで上記交換判定処理を実行するようにしてもよい。
【0028】
(ステップS11):ECU制御部11は、ECU通信部12を介して、電池パック側電池情報251の送信要求を電池パック制御部23に出力する。そして、これに応じて電池パック20から送信された電池パック側電池情報251を受信し、交換判定用情報132として記憶する。
【0029】
(ステップS12):ECU制御部11は、上記交換判定用情報132の内容と、ECU記憶部13に記憶されている初期電池情報133とを比較し、その内容が一致するか否かを判定する。
【0030】
なお、一致判定に用いる情報に関して、本実施形態では全ての情報項目を用いる例を挙げるが、他の実施形態では、一部の情報だけ用いるようにしてもよい。例えば電池内部抵抗値および上述した
図4における10番目の情報項目(誤判定の発生を防ぐための情報)だけを比較して判定してもよい。
【0031】
(ステップS3):ステップS2の判定の結果、一致すると判定された場合は(ステップS2でYES)、電池パック20の交換が行われたと考えられる。そのため、ECU制御部11は、ECU側電池情報131の内容を上記交換判定用情報132の内容で更新する。つまり、ECU側電池情報131として記憶される内容が、交換前の電池パックの情報から交換後の電池パックの情報に置き換わることになる。これにより、電池パックが交換されているにもかかわらず、電池監視ECU10が交換前の電池パックの使用状態に基づいて所定の処理を行ってしまうことを防ぐことができる。
【0032】
(ステップS4):一方、ステップS2の判定の結果、一致していないと判定された場合は(ステップS2でNO)、電池パック20の交換は行われていないと考えられる。この場合は、ECU制御部11は、上記のような更新は行わない。その結果、ECU側電池情報131の内容はそのまま維持される。
【0033】
以上で、本実施形態に係る電池交換判定処理は終了する。
【0034】
<効果>
このように、本実施形態では、電池パック20に電池パック記憶部25を備え、これに電池セルの状態を示す電池情報を記憶させるよう構成している。これにより、例えば電池パックの外部にRFIDタグ等の態様で情報を持たせる場合に比べ、電池パックの構造をよりコンパクトなものとしつつ、電池情報を活用することができる。
【0035】
また、本実施形態では、新品状態の電池パックの状態を示す初期電池情報をECU記憶部13に記憶させている、また、これと同じ内容を電池パック20の製造時に初期値として電池パック記憶部25に書き込むようにしている。そして、電池パックの交換後、電池監視ECUと電池パック20との通信が行われたタイミングで、電池パック記憶部25の電池情報と、上記初期電池情報を比較している。電池パックの交換が発生している場合、両者が一致することになり、交換が発生したと判定することができる。そのため、交換後の電池パックの充放電を行うことなく電池パック20の交換発生を速やかに判定できる(そして、当該交換に伴う所定の処理を車両システムに実行させることができる)ため、電池パック20の交換後、ユーザに車両を速やかに返却することも可能となる。
【0036】
[変形例]
なお、上述した構成を用いて、電池パック20ではなく電池監視ECU10自体の交換発生を判定することも可能である。電池監視ECU10は、その製造時に、ECU記憶部13のECU側電池情報131の初期値として、全ての情報項目について“0x00000000“が設定される。そのため、電池監視ECU10自体が交換された場合は、ECU側電池情報131の記憶内容が初期状態になり、電池パック側電池情報251と一致しない状態となり得る。そこで、例えば車両システムの起動時の処理の一環として、ECU側電池情報131と電池パック側電池情報とを比較する処理を行い、一致しない場合は、電池監視ECU10が交換されたと判定することもできる。これにより、電池監視ECU自体の交換を判定するための情報を電池監視システム以外のシステムに係るECUに記憶させるための余計なコストがかかることを防ぐことも可能となる。
【0037】
また、他の実施形態では、上記交換判定用情報132を用いない構成としてもよい。この場合は、上述した電池情報取得処理の結果、更新されたECU側電池情報131の内容と上記初期電池情報133とを比較し、一致すれば、電池パックが交換されたと判定して所定の処理を実行するような構成としてもよい。
【0038】
また、上記初期電池情報133に関しては、その内容を更新可能な構成としてもよい。例えば新しい仕様の電池パック20がリリースされ、所定の時期以降の電池パック交換作業においては当該新しい仕様の電池パックに交換されるというような場合を想定する。そして、当該新しい仕様の電池パックにおける新品状態を示す値が、以前の電池パックのものとは異なる場合を想定する。この場合に、当該交換作業と同時に、またはこれに先立って、上記初期電池情報133の内容を当該新しい仕様の電池パックに係る新品状態を示す値に更新可能な構成としてもよい。
【0039】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、電池監視システムだけでなく、プロセッサとメモリを備えた電池監視システムの電池監視装置が実行する方法、その方法の制御プログラム、その制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記録媒体、あるいは電池監視システムを搭載した車両などとして捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示技術は、電池パックの状態を監視するためのシステムに利用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 電池監視ECU
11 ECU制御部
12 ECU通信部
13 ECU記憶部
20 電池パック
21 電池セル
22 センサ部
23 電池パック制御部
24 電池パック通信部
25 電池パック記憶部